説明

形状計測装置

【課題】太陽電池ウェハの表面及び裏面の形状のみならず、太陽電池ウェハの厚みを高速に算出する。
【解決手段】光源121,131は太陽電池ウェハの表面及び裏面に光切断線CLを照射する。カメラ122,132は太陽電池ウェハが所定距離搬送される都度、測定試料500の表面及び裏面の光切断線画像を連続撮像する。計測データ算出部123,133は角光切断線画像から光切断線CLが現れている重心座標を表面計測データ及び裏面計測データとして算出する。高さデータ算出部143は、表面計測データ及び裏面計測データから太陽電池ウェハの表面及び裏面の高さデータを算出する。厚みデータ算出部146は、太陽電池ウェハの表面及び裏面の高さデータから太陽電池ウェハの厚みデータを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池ウェハの外観検査項目である厚さを高速かつ自動的に測定する形状計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来太陽電池ウェハ(ウェハと略す)の外観検査は人による目視検査が行われてきたが、近年の太陽電池市場の拡大や太陽電池ウェハの検査時の人によるウェハ破損の低減等、様々な理由から高速自動検査装置が検討されている。既にレーザ変位計を使い、ウェハ表裏両面の1〜3ラインの凹凸を測定し、その変位差から厚さを検査する装置が開発され、実用化されている。しかしながら、ウェハ表裏面の全面の厚さを検査する装置は開発されていない。
【0003】
特許文献1には、被測定物の上下両側に光学式距離計を配置し、光学式距離計の配置間隔と2つの距離計の測定値とから被測定物の厚みを求める装置が開示されている。具体的には、1台の光学式距離計は2台の投光器と1台の撮像系とを備え、被測定面に対し異なる方向から2つの光ビームを交差させるように照射し、2つの光スポットの間隔ΔXと光スポットの中心位置Xcとを求める。そして、被測定面が角度θだけ傾くと中心位置Xcの位置が変化することを利用して、中心位置Xcの変化量から角度θを検出する。そして、上側の光学式距離計で得られた間隔ΔXから上側の光学式距離計と上側の被測定面との距離を求め、下側の光学式距離計で得られた間隔ΔXから下側の光学式距離計と下側の被測定面との距離を求め、被測定物の計測厚みt´を求める。そして、計測厚みt´をt´×cosθにより補正し、実厚みtを求めることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、被測定物の傾き角度や捩れ角度を考慮して被測定物の厚みを正確に求める技術が開示されている。具体的には、被測定物の上下両面の高さを、上接触子及び下接触子にてそれぞれ測定する。そして、下接触子において位置haで測定したときの被測定物の高さと、位置hb(|ha―hb|=Δd)において被測定物を測定したときの高さとの差Δhを求める。そして、被測定物の傾き角度θ=arctan(Δh/Δd)を求める。そして、上接触子の高さと下接触子の高さの差から求めた測定厚さt´を、実厚さt=t´×cosθで補正し、実厚さtを求めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−189389号公報
【特許文献2】特開2006−30044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法は被測定物の厚みが一定の場合に限ったものであり、厚みが変動した場合に対応できていない。したがって、位置に応じて厚みが異なる太陽電池ウェハの厚みを正確に算出することができない。また、特許文献1では、1ラインのみの断面形状が計測されているため、太陽電池ウェハの全面の厚みを算出し、算出した厚みの分布を評価することができない。
【0007】
特許文献2では、被測定物の両面を上接触子と下接触子とを接触させることで厚みが求められているため、太陽電池ウェハの全面の厚みを高速に求めることはできない。
【0008】
本発明の目的は、太陽電池ウェハの表面及び裏面の形状のみならず、太陽電池ウェハの厚みを高速に算出することができる形状計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明による形状計測装置は、太陽電池ウェハを搬送する搬送部と、前記太陽電池ウェハの表面及び裏面に対して斜め方向から前記太陽電池ウェハの搬送方向と交差する方向に光切断線を照射し、前記太陽電池ウェハの表面及び裏面を連続撮像し、前記太陽電池ウェハの表面計測データ及び裏面計測データを取得する計測データ取得部と、前記計測データ取得部により取得された表面計測データ及び裏面計測データに基づいて、前記太陽電池ウェハの表面の各位置の高さデータ及び裏面の各位置の高さデータを算出する高さデータ算出部と、前記高さデータ算出部により算出された前記太陽電池ウェハの表面の高さデータ及び裏面の高さデータに基づいて、前記太陽電池ウェハの各位置の厚みデータを算出する厚みデータ算出部とを備える。
【0010】
この構成によれば、太陽電池ウェハの表面及び裏面の高さデータを用いて太陽電池ウェハの厚みを計測しているため、太陽電池ウェハの表面及び裏面の形状のみならず、太陽電池ウェハの厚みも得ることができる。そのため、ソーマークに加えて厚みを用いて太陽電池ウェハの良否を判定することができる。また、太陽電池ウェハの表面及び裏面を同時に連続撮像して表面計測データ及び裏面計測データが得られているため、太陽電池ウェハの高さデータ及び厚みデータを高速に求めることができる。
【0011】
(2)前記高さデータ算出部は、前記計測データ取得部が、表面及び裏面が平坦な平坦サンプルを計測することで取得した表面及び裏面の高さデータと、前記太陽電池ウェハと同じ厚みを持つ厚みが既知の厚みサンプルを計測することで取得した表面及び裏面の高さデータと基づいて、標準表面高さデータ及び標準裏面高さデータを算出し、前記標準表面高さデータ及び前記標準裏面高さデータに基づいて、表面傾き補正パラメータ及び裏面傾き補正パラメータを算出するパラメータ算出部と、前記高さデータ算出部により算出された前記太陽電池ウェハの表面の高さデータ及び裏面の高さデータを前記表面傾き補正パラメータ及び前記裏面傾き補正パラメータを用いて補正し、補正表面高さデータ及び補正裏面高さデータを算出する高さデータ補正部とを更に備え、前記厚みデータ算出部は、前記補正表面高さデータ及び前記補正裏面高さデータに基づいて、前記厚みデータを算出することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、平坦サンプル及び厚みサンプルを計測することで標準表面高さデータ及び標準裏面高さデータが予め算出されている。そして、太陽電池ウェハを測定する際は、この標準表面高さデータ及び標準裏面高さデータを用いて太陽電池ウェハの表面及び裏面の高さデータが補正され、補正後の表面及び裏面の高さデータである補正表面高さデータ及び補正裏面高さデータを用いて厚みデータが算出される。その結果、太陽電池ウェハの厚みデータを精度良く求めることができる。
【0013】
(3)前記標準表面高さデータは、前記平坦サンプルの表面の高さデータを、前記厚みサンプルの表面の高さデータから差し引くことで算出され、前記標準裏面高さデータは、前記平坦サンプルの裏面の高さデータを、前記厚みサンプルの裏面の高さデータから差し引くことで算出されることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、厚みサンプルの表面の高さデータから搬送部の傾斜やレーザの彎曲に伴う高さデータのずれが除去された標準表面高さデータを得ることができる。また、厚みサンプルの裏面の高さデータから搬送部の傾斜やレーザの彎曲に伴う高さデータのずれが除去された標準裏面高さデータを得ることができる。
【0015】
(4)前記搬送部は、前記太陽電池ウェハ、前記平坦サンプル、及び前記厚みサンプルをそれぞれ測定試料とし、前記測定試料を一定の搬送速度で搬送し、前記計測部は、前記測定試料が一定距離搬送される都度、前記測定試料を撮像し、前記高さデータ算出部は、前記測定試料の搬送方向の表面及び裏面の高さデータの変化から前記測定試料の表面及び裏面の傾きを算出し、算出した表面及び裏面の傾きに基づいて、搬送方向に対する計測ポイントが一定間隔になるように、前記測定試料の表面及び裏面の高さデータを補正することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、測定試料の表面及び裏面の傾斜による計測ポイントが一定の間隔になるように、高さデータを補正することができる。
【0017】
(5)前記パラメータ算出部は、前記標準裏面高さデータの近似裏平面をz2(=a2x+b2y+c2)とおき、前記標準裏面高さデータを用いて係数a2,b2,c2を算出し、算出した係数a2,b2,c2を裏面傾き補正パラメータとして算出し、ある平面をz1(=a1x+b1y+c1)とおき、(前記標準表面高さデータ−z1)−(前記標準裏面高さデータ−z2)=前記厚みサンプルの厚みデータとなるように前記係数a1,b1,c1を求め、求めた前記係数a1,b1,c1を前記表面傾き補正パラメータとして算出することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、平坦サンプルの表面を基準面としたときの厚みサンプルの高さデータの大局的な傾きを示す平面と、平坦サンプルの裏面を基準面としたときの厚みサンプルの高さデータの大局的な傾きを示す平面とが厚みサンプルの既知の厚みデータの間隔を持って繋がれる。
【0019】
(6)前記高さデータ補正部は、前記太陽電池ウェハの表面の高さデータから前記平坦サンプルの表面の高さデータを差し引き、差し引いた値から更に前記平面z1を差し引くことで前記補正表面高さデータを求め、前記太陽電池ウェハの裏面の高さデータから前記平坦サンプルの裏面の高さデータを差し引き、差し引いた値から更に前記近似裏平面z2を差し引くことで前記補正裏面高さデータを求めることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、太陽電池ウェハの表面及び裏面の高さデータから平坦サンプルの表面及び裏面の高さデータが差し引かれているため、太陽電池ウェハの表面及び裏面の高さデータから搬送部の傾斜による高さデータずれ及び光切断線の彎曲による高さデータずれを除去することができる。
【0021】
そして、平坦サンプルの表面及び裏面の高さデータが差し引かれた太陽電池ウェハの表面及び裏面の高さデータは、更に、平面z1及び近似裏平面z2から差し引かれている。
【0022】
よって、平面z1を基準とする太陽電池ウェハの表面の高さデータ=近似裏平面を基準とする太陽電池ウェハの裏面の高さデータ+厚みデータによって表される。したがって、太陽電池ウェハの厚みを正確に求めることができる。
【0023】
(7)前記計測データ取得部は、一定速度で搬送される前記太陽電池ウェハの表面に光切断線を照射する表面照射部と、一定速度で搬送される前記太陽電池ウェハの裏面に光切断線を照射する裏面照射部と、前記表面照射部により光切断線が照射された前記太陽電池ウェハの表面を上方から一定周期で連続的に撮像する表面撮像部と、前記裏面照射部により光切断線が照射された前記太陽電池ウェハの裏面を下方から一定周期で連続的に撮像する裏面撮像部とを備えることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、太陽電池ウェハを挟んで、上下に表面照射部及び裏面照射部が設けられ、かつ、上下に表面撮像部及び裏面撮像部が設けられているため、太陽電池ウェハの表面及び裏面を同時に計測することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、太陽電池ウェハの表面及び裏面の高さデータを用いて太陽電池ウェハの厚みを計測しているため、太陽電池ウェハの表面及び裏面の形状のみならず、太陽電池ウェハの厚みも得ることができる。そのため、ソーマークに加えて厚みを用いて太陽電池ウェハの良否を判定することができる。また、太陽電池ウェハの表面及び裏面を同時に連続撮像して表面計測データ及び裏面計測データが得られているため、太陽電池ウェハの高さデータ及び厚みデータを高速に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(A)は本発明の実施の形態による形状計測装置の全体構成図である。(B)は(A)の変形例である。
【図2】本発明の実施の形態による形状計測装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態による形状計測装置が標準サンプルを測定する際の処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態による形状計測装置がウェハを測定する際の処理を示したフローチャートである。
【図5】(A)、(B)は、裏面傾き補正パラメータ及び表面傾き補正パラメータの算出処理の説明図である。
【図6】(A)は本発明の実施の形態による形状計測装置の側面の模式図であり、(B)は(A)の測定ステージの近傍の拡大図である。
【図7】測定試料の表面又は裏面の高さデータの測定結果を示したグラフであり、左側の縦軸は測定により得られた高さデータ(μm)を示し、右側の縦軸は測定ステージの載置面に対する測定試料の角度を示している。
【図8】厚みが一定の測定試料が傾斜している場合における光切断線の計測ポイントのずれを示した図である。
【図9】t´=200μmの測定値に対する、角度φと補正後の厚みtとの関係を示したグラフである。
【図10】厚みが一定でない測定試料が傾斜している場合における光切断線の計測ポイントのずれを示した図である。
【図11】(A)はφ2=φ1+0.005度の場合の角度φ1に対する実厚みKの関係を示したグラフG11と、角度φ1に対する実厚みK−計測厚みK´の関係を示したグラフG12とを表している。(B)はφ2=φ1+0.1度の場合の角度φ1に対する実厚みKの関係を示したグラフG13と、角度φ1に対する実厚みK−計測厚みK´の関係を示したグラフG14とを表している。
【図12】高さデータ算出部により行われる計測ポイントずれ補正の説明図である。
【図13】高さデータ算出部により行われる計測ポイントずれ補正の説明図である。
【図14】高さデータの算出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図15】探索処理の詳細を示すフローチャートである。
【図16】重心算出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図17】図14のフローチャートの処理を時系列で示したタイミングチャートである。
【図18】探索処理と重心算出処理との処理の流れを概念的に示した図である。
【図19】光切断線画像の一例を示した図である。
【図20】iライン目における最大輝度画素を中心としたときの輝度値の分布を示したグラフである。
【図21】高さデータを算出する処理の説明図である。
【図22】光源とカメラとの設置状態を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施の形態における形状計測装置について説明する。図1(A)は、本発明の実施の形態による形状計測装置の全体構成図である。図1(A)に示すように、本形状計測装置は、光源121(表面照射部の一例)、光源131(裏面照射部の一例)、カメラ122(表面撮像部の一例)、カメラ132(裏面撮像部の一例)、及び搬送ベルト3等を備えている。
【0028】
図1(A)において、y方向は搬送ベルト3による測定試料500の搬送方向を示している。また、x方向はy方向と直交し、かつ水平面と平行な方向を示している。z方向は、x方向とy方向とのそれぞれに直交する高さ方向を示している。本実施の形態では、測定試料500として、標準サンプル510、及び太陽電池ウェハ(以下、“ウェハ”と記述する)520が存在する。標準サンプル510としては、表面及び裏面が平坦な平坦サンプル511と、厚みが既知である厚みサンプル512とが存在する。
【0029】
つまり、本形状計測装置は、平坦サンプル511及び厚みサンプル512を測定して、後述する表面傾き補正パラメータ及び裏面傾き補正パラメータを予め求めておく。そして、測定対象となるウェハ520を測定し、ウェハ520の表面及び裏面の高さデータを求め、求めた高さデータを表面傾き補正パラメータ及び裏面傾き補正パラメータを用いて補正し、ウェハ520の各位置の厚みデータを求める。
【0030】
平坦サンプル511及び厚みサンプル512としては、測定対象となるウェハ520の表面積と同じ表面積を持つものを採用し、例えば、150mm角の表面積を持つものを採用する。また、厚みサンプル512としては、測定対象となるウェハ520と同程度の厚みを持つものを採用し、例えば200μmの厚みを持つものを採用する。なお、平坦サンプル511として、厚みが200μmのものを用意すれば、平坦サンプル511と厚みサンプル512とを個別に用意する必要はない。
【0031】
しかしながら、厚みを200μm程度に薄くすると反り等が発生するため、ウェハ520と同程度の厚みを持つ平坦サンプル511を作成するのは容易ではなく、コストが嵩む。そこで、本実施の形態では、ウェハ520よりも大きな厚みを持つが表面及び裏面が平坦な平坦サンプル511と、ウェハ520と同程度の厚みサンプル512とを用いている。
【0032】
光源121は、測定試料500の表面において、カメラ122が光切断線画像を撮像する領域内に向けて、扇状に拡がるように光を照射する。つまり、光源121は、一定速度で搬送される測定試料500の表面に光切断線CLを照射する。光源131は、一定速度で搬送される測定試料500の裏面において、カメラ132が光切断線画像を撮像する領域内に向けて、扇状に拡がるように光を照射する。つまり、光源131は、測定試料500の裏面に光切断線CLを照射する。
【0033】
本実施の形態では、光切断線CLは、例えばy方向の座標が所定の位置y1に位置し、長手方向がx方向とほぼ平行になるように形成されている。このように、光切断線CLによって測定試料500の表面及び裏面の幅方向(x方向)の全域に光切断線CLが照射されるため、搬送ベルト3により測定試料500をy方向に一定速度で搬送し、かつ、カメラ122,132で光切断線画像を連続撮像することで、測定試料500の表面及び裏面の全域の高さデータを高速に得ることができる。
【0034】
なお、光源121,131は、それぞれ、円筒状の筐体を備え、筐体の内部には、例えば半導体レーザと、光学系とが設けられている。光学系は、半導体レーザの射出側に設けられ、半導体レーザから射出されるレーザ光を扇状に広げて射出させる。
【0035】
支持部材41は、測定ステージ600よりも上流側に配置され、光源121が測定ステージ600の幅方向(x方向)の中心に位置するように光源121を支持する。そして、支持部材41は、光源121が斜め上方向から測定ステージ600の表面に対して光を照射し、x方向から見たときの光軸701に対する光の仰角θが一定の角度になるように、光源121を支持する。
【0036】
測定ステージ600は、測定試料500と同様のサイズを持つ矩形状の領域であり、図6(A)に示すように、測定試料500の真下に位置している。
【0037】
支持部材43は、測定ステージ600よりも下流側に配置され、光源131が測定ステージ600の幅方向(x方向)の中心に位置するように光源131を支持する。そして、支持部材43は、光源131が斜め下方向から測定ステージ600の裏面に対して光を照射し、x方向から見たときの光軸702に対する光の仰角θが一定の角度になるように、光源131を支持する。つまり、光源121,131の仰角は等しくされている。
【0038】
カメラ122は、光軸701が測定ステージ600の重心に位置し、かつ、z方向と平行になるように、測定ステージ600の上側に配置されている。そして、カメラ122は、光切断線CLが照射された測定試料500の表面を上方から一定周期で連続的に撮像し、光切断線画像を取得する。
【0039】
カメラ132は、光軸702が測定ステージ600の重心に位置し、かつ、z方向と平行になるように、測定ステージ600の下側に配置されている。そして、カメラ132は、光切断線CLが照射された測定試料500の裏面を下方から一定周期で連続的に撮像し、光切断線画像を取得する。
【0040】
本実施の形態では、カメラ122,132は、それぞれ、x方向及びy方向の画角が同一である。また、カメラ122,132は、測定ステージ600からの距離がほぼ等距離となる位置に配置されている。そのため、カメラ122,132が撮像する光切断線画像は同一サイズの矩形画像になる。
【0041】
ここで、カメラ122,132は、所定のフレームレート(例えば250fps)で、画像を撮像することができるCMOSカメラにより構成され、撮像した光切断線画像のアナログの画像データをデジタルの画像データに変換する。
【0042】
搬送ベルト3は、y方向を長手方向とする無端ベルトであり、x方向に一定の間隔を設けて一対配置されている。そして、搬送ベルト3は、測定試料500をy方向に向けて一定の速度で搬送する。このように、一対の搬送ベルト3,3をx方向に一定の間隔設けることで、測定試料500の表面及び裏面を同時に計測することができる。
【0043】
支持部材42は、測定ステージ600のy方向の中心において立設され、カメラ122,132を支持する。
【0044】
なお、図1(A)では、光源121を測定ステージ600の上流側に配置し、光源131を測定ステージ600の下流側に配置したが、これに限定されない。すなわち、図1(B)に示すように、光源131を測定ステージ600の上流側に配置し、光源121を測定ステージ600の下流側に配置してもよい。
【0045】
図2は、本発明の実施の形態による形状計測装置のブロック図である。図2に示すように、形状計測装置は、搬送部110、計測データ取得部120,130、制御部140、パラメータ記憶部150、及び操作部160を備えている。
【0046】
搬送部110は、図1に示す搬送ベルト3,3及び搬送ベルト3,3をそれぞれ、張架する搬送ローラ、及び搬送ローラを駆動させるモータ等を備えている。そして、搬送部110は、搬送制御部141の制御の下、搬送ローラが一定の角速度で回転され、搬送ベルト3,3が一定の速度で回転される。
【0047】
計測データ取得部120は、図1(A)に示す光源121及びカメラ122を備えると共に、カメラ122に内蔵された計測データ算出部123を備えている。そして、計測データ取得部120は、測定試料500の表面に対して斜め上方向から光切断線CLを照射し、測定試料500の表面の表面計測データを取得する。
【0048】
計測データ取得部130は、図1(A)に示す光源131及びカメラ132を備えると共に、カメラ132に内蔵された計測データ算出部133を備えている。そして、計測データ取得部130は、測定試料500の裏面に対して斜め下方向から光切断線CLを照射し、測定試料500の表面の表面計測データを取得する。
【0049】
計測データ算出部123は、カメラ122により撮像された各光切断線画像に対し、探索処理と重心算出処理とを実行することで、表面計測データを算出する。ここで、探索処理は、光切断線画像において、搬送方向と平行に複数のラインを設定し、各ラインの最大輝度画素を探索する処理である。重心算出処理は、探索処理により探索された各ラインの最大輝度画素を基に、各ラインの最大輝度画素の重心座標をサブピクセル単位で算出する処理である。そして、計測データ算出部123は、重心算出処理により得られた重心座標を表面計測データとして算出する。
【0050】
計測データ算出部133は、計測データ算出部123と同様、カメラ132により撮像された各光切断線画像に対し、探索処理及び重心算出処理を実行し、裏面計測データを算出する。
【0051】
制御部140は、例えばコンピュータにより構成され、本形状計測装置の全体制御を司る。具体的には、制御部140は、搬送制御部141、計測制御部142、高さデータ算出部143、パラメータ算出部144、高さデータ補正部145、及び厚みデータ算出部146を備えている。
【0052】
搬送制御部141は、搬送ベルト3が一定の搬送速度で駆動されるように搬送部110を制御する。ここで、搬送速度としては、光切断線CLのY方向の幅をαとすると、カメラ122〜132の周期が1/250=0.004sであり、α/0.004に設定すると、測定試料500を隙間無く走査することができるため、例えばα/0.004に設定すればよい。なお、ウェハ520は、ソーマークの方向がy方向となるように搬送部110に載置されるものとする。したがって、ウェハ520は、ソーマークの方向に沿って搬送され、ソーマークの方向とほぼ直交する方向に光切断線CLが照射されることになる。
【0053】
計測制御部142は、計測データ取得部120,130を制御する。具体的には、計測制御部142は、カメラ122,132が一定のフレームレート(例えば、250fps)で光切断線画像を撮像するようにカメラ122,132を制御する。また、計測制御部142は、光源121,131が所定光量の光を照射するように光源121,131を制御する。
【0054】
高さデータ算出部143は、計測データ算出部123により算出された表面計測データと、光源121の仰角θとを基に、光切断線CLの照射位置に対応する1列分の測定試料500の高さデータを算出する処理を繰り返し実行することで、測定試料500の表面の各位置の高さデータを算出する。また、高さデータ算出部143は、計測データ算出部133により算出された裏面計測データに対しても、表面計測データと同様の処理を行い、測定試料500の裏面の各位置の高さデータを算出する。
【0055】
また、高さデータ算出部143は、測定試料500の搬送方向の表面及び裏面の高さデータの変化から測定試料500の表面及び裏面の傾きを算出し、算出した表面及び裏面の傾きに基づいて、搬送方向に対する計測ポイントが一定間隔になるように、測定試料500の表面及び裏面の高さデータを補正する計測ポイントずれ補正を行う。
【0056】
図12、図13は、高さデータ算出部143により行われる計測ポイントずれ補正の説明図である。本実施の形態では、y方向に対して一定の間隔dで配列された計測ポイントMP(0),MP(1),MP(2),・・・における測定試料500の高さを得ることを目的としている。しかしながら、測定試料500の表面が測定ステージ600に対して傾きを持っていると、測定試料500に対する光の照射位置が計測ポイントMP(0),MP(1),MP(2),・・・に一致せず、ずれてしまう。図12の例では、時刻t=0において、測定試料500には計測ポイントMP(0)に光が照射され、高さデータz0が算出されている。次に、測定試料500が間隔dだけ搬送された時刻t=1において、計測ポイントMP(1)の高さデータz1を求めたいが、測定試料500の傾斜により光の照射位置が計測ポイントMP´(1)となるため、計測ポイントがMP(1)からMP´(1)にずれている。
【0057】
更に、測定試料500が間隔dだけ搬送された時刻t=2において、計測ポイントMP(2)の高さデータz2を求めたいが、測定試料500の傾斜により光の照射位置が計測ポイントMP´(2)となるため、計測ポイントがMP(2)からMP´(2)にずれている。
【0058】
そこで、高さデータ算出部143は、上記の計測ポイントMP(0)〜MP(1)のずれを修正するために、図13に示すように計測ポイントMP´(1)と次の計測ポイントである計測ポイントMP´(2)との傾きを求め、その傾きを用いて線形補間することで計測ポイントMP(1)の高さデータz1を求めている。
【0059】
具体的には、高さデータ算出部143は、式(1)を用いて、計測ポイントMP(1)の高さデータz1を求めている。
【0060】
z1=((z2´−z1´)/d2)・(d−d1)+z1´ (1)
高さデータ算出部143は、他の計測ポイントMPについても式(1)を用いて高さデータを補正する。
【0061】
これにより、測定試料500が傾いていても、一定の間隔dでy方向に配列された計測ポイントMP(0),MP(1),MP(2),・・・の高さデータz0,z1,z2,・・・が得られる。その結果、測定試料500の傾きによる計測ポイントのずれを除去することができる。
【0062】
図2に戻り、パラメータ算出部144は、高さデータ算出部143により算出された厚みサンプル512の表面の高さデータから平坦サンプル511の表面の高さデータを差し引き、標準表面高さデータを算出する。
【0063】
また、パラメータ算出部144は、高さデータ算出部143により算出された厚みサンプル512の裏面の高さデータから平坦サンプル511の裏面の高さデータを差し引き、標準裏面高さデータを算出する。
【0064】
そして、パラメータ算出部144は、標準裏面高さデータの近似裏平面をz2(=a2x+b2y+c2)とおき、係数a2,b2,c2を裏面傾き補正パラメータとして算出する。また、パラメータ算出部144は、ある平面をz1(=a1x+b1y+c1)とおき、標準表平面高さデータ−z1=標準裏面高さデータ−z2=厚みサンプル512の厚みデータとなるように係数a1,b1,c1を求め、求めた係数a1,b1,c1を表面傾き補正パラメータとして算出する。なお、裏面傾き補正パラメータ、表面傾き補正パラメータは、パラメータ記憶部150に記憶される。
【0065】
高さデータ補正部145は、高さデータ算出部143により算出されたウェハ520の表面の高さデータ及び裏面の高さデータを表面傾き補正パラメータ及び裏面傾き補正パラメータを用いて補正し、補正表面高さデータ及び補正裏面高さデータを算出する。
【0066】
具体的には、高さデータ補正部145は、ウェハ520の表面の高さデータから平坦サンプル511の表面の高さデータを差し引き、差し引いた値から更に平面z1を差し引くことで補正表面高さデータを求める。
【0067】
また、高さデータ補正部145は、ウェハ520の裏面の高さデータから平坦サンプル511の裏面の高さデータを差し引き、差し引いた値から更に近似裏平面z2を差し引いくことで補正裏面高さデータを求める。
【0068】
厚みデータ算出部146は、補正表面高さデータ及び補正裏面高さデータに基づいて、ウェハ520の各位置の厚みデータを算出する。
【0069】
操作部160は、種々の操作ボタンや表示パネルを含み、オペレータからの操作入力を受け付けると共に、測定試料500の測定結果等を表示する。
【0070】
次に、本発明の実施の形態による形状計測装置の課題について説明する。図6(A)は、本発明の実施の形態による形状計測装置の側面の模式図であり、図6(B)は、図6(A)の測定ステージ600の近傍の拡大図である。図7は、測定試料500の表面又は裏面の高さデータの測定結果を示したグラフであり、左側の縦軸は測定により得られた高さデータ(μm)を示し、右側の縦軸は測定ステージ600の載置面601に対する測定試料500の角度を示している。また、縦軸は測定試料500の移動距離(mm)を示し、移動距離=0は測定を開始したとき測定試料500のy方向における位置を示している。グラフ71は角度を示し、グラフ72は高さデータを示している。
【0071】
図6(B)に示すように搬送ベルト3は、測定ステージ600付近において、測定ステージ600に向かうにつれて高さが徐々に上昇し、測定ステージ600の上で平坦となり、測定ステージ600から離れるにつれて高さが徐々に減少するというような台形状となる。
【0072】
よって、測定試料500は、載置面601に対して右斜め上に傾斜して搬送され、次に、載置面601に対して平行に搬送され、次に、右斜め下に傾斜して搬送される。測定試料500に照射される光切断線CLの測定ステージ600に対する高さは、測定試料500が載置面601に対して右斜め上に傾斜して搬送される間は徐々に減少し、測定試料が載置面601に対して平行に搬送されている間はほぼ一定になり、測定試料500が載置面601に対して右斜め下に傾斜して搬送される間は徐々に増大する。
【0073】
そのため、図7のグラフ72に示すように、測定試料500の高さデータは、移動距離が増大するにつれて、下に凸のバスタブ状の曲線を描いて変化する。なお、グラフ72の高さデータの微小なゆらぎは搬送ベルト3のガタツキ等に起因している。このように、搬送部110が傾斜していると、測定試料500の高さデータを正確に測定することができなくなる。
【0074】
図8は、厚みが一定の測定試料500が傾斜している場合における計測ポイントMPのずれを示した図である。図8において、仰角θは光源121,131からの光の向きとカメラ122,132の光軸701,702とのなす角度を示している。角度φは載置面601に対する測定試料500の傾斜角度を示している。
【0075】
この場合、測定試料500は載置面601に対して角度φ傾斜しているため、計測ポイントMPはy方向の上流側の位置である計測ポイントMP´にずれてしまう。その結果、測定試料500の厚みは本来の厚みであるtではなくt´にずれてしまう。図8において、t´は、式(2)により表される。
【0076】
t´=((1/cosφ-1)/(tanθ・tanφ+1)+1)・t (2)
よって、測定試料500の本来の厚みであるtは、式(3)で表される。
【0077】
t=((sinφ・tanθ+cosφ)/(sinφ・tanθ+1))・t (3)
図7に示すグラフ71から測定試料500の載置面601に対する傾きは−0.5度〜+0.5度の範囲内であるため、厚みの誤差、つまり、(計測値(t´)―実値(t))は、−0.01μm〜+0.01μm以内となる。
【0078】
図9は、t´=200μmの測定値に対する、角度φと補正後の厚みtとの関係を示したグラフである。図9では、θ=80,82,84,86,88度のそれぞれについてのφとtとの関係を示すグラフが描かれている。φ=−0.5度〜+0.5度の範囲内において、厚みの誤差が0.01μm以内であることが分かる。
【0079】
図8では、測定試料500の厚みが一定である場合について説明した。しかしながら、測定対象となるウェハ520の厚みは搬送方向に一定でなく、多少の変動がある。図10は、厚みが一定でない測定試料500が傾斜している場合における光切断線CLの計測ポイントMPのずれを示した図である。
【0080】
図10では、測定試料500の表面の載置面601に対する角度をφ1、裏面の載置面601に対する角度をφ2としている。この場合、表面の計測ポイントMP(1)はMP´(1)にずれ、裏面の計測ポイントMP(2)はMP´(2)にずれる。よって、表面の高さデータの測定値h1´は式(4)で表される。また、裏面の高さデータの測定値h2´は式(5)で表される。
【0081】
h1´=(d・tanφ1/(tanθ・tanφ1+1))+h (4)
h2´=d・tanφ2/(tanθ・tanφ2+1) (5)
よって、h1´−h2´により計測厚みK´が求められる。
【0082】
このように、測定試料500の表面及び裏面の傾きがそれぞれ異なる場合、単純にh1´−h2´により計測厚みK´を求めただけでは、計測ポイントMP(2)における法線方向の実厚みKを求めることができない。
【0083】
この実厚みKは式(6)で表される。
【0084】
|h+d・(tanφ2-tanφ1)/(tanφ1・tanφ2+1)|(tan2φ2+1)1/2 (6)
ここで、φ1,φ2は、式(4)、(5)から得られ、dは計測ポイントの間隔であり既知であり、hも既知とすると、実厚みKが得られる。
【0085】
図11(A)は、φ2=φ1+0.005度の場合の角度φ1に対する実厚みKの関係を示したグラフG11と、角度φ1に対する実厚みK−計測厚みK´の関係を示したグラフG12とを表している。
【0086】
図11(B)は、φ2=φ1+0.1度の場合の角度φ1に対する実厚みKの関係を示したグラフG13と、角度φ1に対する実厚みK−計測厚みK´の関係を示したグラフG14とを表している。
【0087】
図11(A)、(B)において、左側の縦軸は実厚みKを示し、右側の縦軸は実厚みK−計測厚みK´を示し、横軸はφ1を示している。グラフG11,G13に示すように、φ1が0から離れるにつれて、実厚みKは減少していることが分かる。また、グラフG12,G14に示すように、φ1が−0.5度から0.5度に向けて増大するにつれて、実厚みK−計測厚みK´が減少していることが分かる。
【0088】
図11(A)、(B)に示すように、φ1、φ2の差が0.05度、0.1度のいずれにおいても、φ1が−0.5〜+0.5の範囲内の傾きを持つとき、厚みの変動は0.01μm以内となっていることが分かる。
【0089】
本実施の形態では、図6(B)に示す搬送ベルト3の傾斜による高さデータのずれ(以下、ずれ(1)と記述する。)、及び図10、図13に示す計測ポイントのずれに起因する高さデータのずれ(以下、ずれ(2)と記述する。)を補正することを課題とする。また、光源121,131に含まれる光学系の特性により光切断線CLが円弧状に彎曲して照射されることがある。この場合、測定試料500の高さデータが本来の高さデータからずれてしまう。本実施の形態では、この光切断線CLの彎曲に起因する高さデータのずれ(以下、ずれ(3)と記述する。)も補正することを課題としている。
【0090】
次に、本実施の形態による形状計測装置の動作について説明する。図3は、本発明の実施の形態による形状計測装置が標準サンプル510を測定する際の処理を示すフローチャートである。まず、平坦サンプル511が測定ステージ600に向けて搬送され、平坦サンプル511に光切断線CLが照射され、平坦サンプル511が間隔d搬送される都度、カメラ122,132により光切断線画像が撮像される。
【0091】
そして、計測データ算出部123,133は、各光切断線画像から平坦サンプル511の表面計測データ及び裏面計測データを求め、高さデータ算出部143は、表面計測データ及び裏面計測データから平坦サンプル511の表面及び裏面の各位置の高さデータを算出する(S1)。
【0092】
次に、高さデータ算出部143は、S1で求めた平坦サンプル511の表面及び裏面の各位置の高さデータに対して計測ポイントずれ補正を行う(S2)。
【0093】
これにより、ずれ(2)を補正することができる。これにより、所定行×所定列で配列された各計測ポイントの高さデータが得られる。
【0094】
次に、厚みサンプル512が測定ステージ600に向けて搬送され、厚みサンプル512に光切断線CLが照射され、厚みサンプル512が間隔d搬送される都度、カメラ122,132により光切断線画像が撮像される。そして、計測データ算出部123,133は、各光切断線画像から厚みサンプル512の表面計測データ及び裏面計測データを求め、高さデータ算出部143は、厚みサンプル512の表面及び裏面の各位置の高さデータを算出する(S3)。
【0095】
次に、高さデータ算出部は、S3で求めた厚みサンプルの表面及び裏面の各位置の高さデータに対して計測ポイントずれ補正を行う(S4)。これによりずれ(2)が補正される。
【0096】
次に、パラメータ算出部144は、S4で計測ポイントずれ補正が行われた厚みサンプル512の表面の各位置の高さデータから、S2で計測ポイントずれ補正が行われた平坦サンプル511の表面の各位置の高さデータを差し引き、標準表面高さデータを算出する(S5)。これにより、平坦サンプル511の表面を基準面としたときの厚みサンプル512の表面の高さデータが得られる。また、これにより、厚みサンプル512の高さデータからずれ(1)、ずれ(3)が除去される。つまり、厚みサンプル512の表面の高さデータ及び平坦サンプル511の表面の高さデータは共に、ずれ(1)、ずれ(3)の影響を受けている。したがって、厚みサンプル512の表面の高さデータ−平坦サンプル511の表面の高さデータにより、ずれ(1)、ずれ(3)の影響が相殺され、ずれ(1)、ずれ(3)が除去される。
【0097】
なお、厚みサンプル512の各位置の高さデータから平坦サンプル511の各位置の高さデータを差し引くとは、厚みサンプル512及び平坦サンプル511において、同一座標の計測ポイントの高さデータを差し引くことを意味する。なお、以下において、高さデータや厚みデータに施される処理は座標を同一とする高さデータ及び厚みデータに対して実施されるものとする。
【0098】
次に、パラメータ算出部144は、S4で計測ポイントずれ補正が行われた厚みサンプル512の裏面の各位置の高さデータから、S2で計測ポイントずれ補正が行われた平坦サンプル511の裏面の各位置の高さデータを差し引き、標準裏面高さデータを算出する(S6)。これにより、平坦サンプル511の裏面を基準面としたときの厚みサンプル512の裏面の高さデータが得られ、かつ、ずれ(1)、ずれ(3)が補正される。
【0099】
次に、パラメータ算出部144は、標準裏面高さデータの近似裏平面z2を算出する。図5(A)、(B)は、裏面傾き補正パラメータ及び表面傾き補正パラメータの算出処理の説明図である。
【0100】
S5で求められた標準表面高さデータは大局的には図5(A)の面A1のように分布しているものとする。また、S6で求められた標準裏面高さデータは大局的には図5(B)の面A2のように分布しているものとする。したがって、近似裏平面z2は面A2のように表される。
【0101】
このように、面A1と面A2との傾きが異なっているのは、平坦サンプル511の表面を基準面としたときの厚みサンプル512の表面の大局的な傾きと、平坦サンプル511の裏面を基準面としたときの厚みサンプル512の大局的な傾きとがずれるために生じる。そして、この傾きのずれは、厚みサンプル512の搬送ベルト3への置き方や、光源121,131の位置や、カメラ122,132の位置等に起因して発生する。
【0102】
そこで、本実施の形態では、まず、標準裏面高さデータから、式(7)に示すように最小二乗法により近似裏平面z2(=a2・x+b2・y+c2)を求める。
【0103】
E=Σ(z2−a2・x−b2・y−c2) (7)
そして、Eが最小となる係数a2,b2,c2を裏面傾き補正パラメータとして求める。
【0104】
具体的には、∂E/∂a2=0,∂E/∂b2=0,∂E/∂c2=0となる係数a2,b2,c2を求める。
【0105】
次に、パラメータ算出部144は、標準裏面高さデータ−近似裏平面z2を求める。これにより、図5(B)に示すように、近似裏平面z2がx−y平面上の平面A4に設定され、平面A4を基準面としたときの厚みサンプル512の裏面の高さデータが得られる。
【0106】
次に、パラメータ算出部144は、ある平面を平面z1(=a1・x+b1・y+c1)とおき、(標準表面高さデータ−z1)−(標準裏面高さデータ−z2)=既知の厚みデータとなるように、係数a1,b1,c1を求める(S8)。この係数a1,b1,c1が表面傾き補正パラメータである。
【0107】
ここで、既知の厚みデータとは、厚みサンプル512の各位置に対して予め割り付けられた厚みデータである。この厚みデータは位置ごとに同じ値を持っていても良いし、異なる値を持っていても良い。
【0108】
これにより、平面A4を基準面としたときの厚みサンプル512の裏面の高さデータに既知の厚みデータを加えた値に、更に平面z1を基準面としたときの標準表面高さデータを加えた値が厚みサンプル512の表面の高さデータとして算出される。その結果、図5(B)に示すように、近似裏平面z2に対してほぼ既知の厚みデータ程度、z方向側に離間した位置に厚みサンプル512の表面の高さデータの基準面である平面z1を設定することができる。
【0109】
なお、表面傾き補正データを算出するに際しては、変数がa1,b1,c1の3つであるため、少なくとも3点の厚みデータ、標準裏面高さデータ、及び標準表面高さデータを用いればよい。
【0110】
図3に戻り、パラメータ算出部144は、S7で求めた裏面傾き補正パラメータ(a2,b2,c2)及びS8で求めた表面傾き補正パラメータ(a1,b1,c1)をパラメータ記憶部150に記憶させる。
【0111】
次に、ウェハ520を測定する際の処理について説明する。図4は、本発明の実施の形態による形状計測装置がウェハ520を測定する際の処理を示したフローチャートである。
【0112】
まず、ウェハ520が測定ステージ600に向けて搬送され、ウェハ520に光切断線CLが照射され、ウェハ520が間隔d搬送される都度、カメラ122,132により光切断線画像が撮像される。そして、高さデータ算出部143は、各切断線画像からウェハ520の表面及び裏面の各位置の高さデータを算出する(S21)。
【0113】
次に、高さデータ算出部143は、S21で算出されたウェハ520の表面の高さデータから図3のS1で求めた平坦サンプル511の表面の高さデータを差し引く(S22)。これにより、平坦サンプル511の表面を基準面としたときのウェハ520の表面の高さデータが得られる。また、これにより、ずれ(1)、ずれ(3)が補正される。つまり、ウェハ520の表面の高さデータ及び平坦サンプル511の表面の高さデータは共に、ずれ(1)、ずれ(3)の影響を受けている。したがって、ウェハ520の表面の高さデータ−平坦サンプル511の表面の高さデータにより、ずれ(1)、ずれ(3)の影響が相殺され、ずれ(1)、ずれ(3)が除去される。
【0114】
次に、高さデータ算出部143は、S21で算出されたウェハ520の裏面の高さデータから平坦サンプル511の裏面の高さデータを差し引く(S23)。これにより、平坦サンプル511の裏面を基準面としたときのウェハ520の裏面の高さデータが得られる。また、これにより、S22と同様、ずれ(1)、ずれ(3)が除去される。
【0115】
次に、高さデータ算出部143は、S22で求めた表面の高さデータ及びS23で求めた裏面の高さデータに対して計測ポイントずれ補正を行う(S24)。これにより、ずれ(2)が除去される。
【0116】
次に、高さデータ補正部145は、S24で計測ポイントずれ補正が行われた表面の高さデータから平面z1を差し引き、補正表面高さデータを算出する(S25)。これにより、平面z1を基準面としたときのウェハ520の高さデータが得られる。
【0117】
次に、高さデータ補正部145は、S24で計測ポイントずれ補正が行われた裏面の高さデータから近似裏平面z2を差し引き、補正裏面高さデータを算出する(S26)。これにより、近似裏平面z2を基準面としたときのウェハ520の高さデータが得られる。
【0118】
次に、高さデータ補正部145は、補正表面高さデータ−補正裏面高さデータにより、ウェハ520の厚さデータを算出する(S27)。なお、平面z1は、既知の厚みデータをマイナスの厚み成分として持っている。よって、S25で表面の高さデータ−平面z1で得られる補正表面高さデータは既知の厚みデータの値を持っている。したがって、S27で補正表面高さデータ−補正裏面高さデータを算出することで、既知の厚みデータを考慮したウェハ520の厚さデータが得られる。
【0119】
次に、図3のS1、S3、図4のS21の高さデータの算出処理の詳細について説明する。図14は、高さデータの算出処理の詳細を示すフローチャートである。図14において、カメラ122,132は、それぞれX枚の光切断線画像を連続撮像するものとする。まず、搬送制御部141により搬送部110が駆動され、測定試料500の搬送が開始される(S141)。
【0120】
次に、カメラ122,132は、測定試料500を撮像し、1フレーム目の光切断線画像の画像データを取得する(S142(1))。
【0121】
図19は、光切断線画像の一例を示した図である。なお、図19に示す光切断線画像は、x方向(垂直方向)の画素数がM個、y方向(搬送方向)の画素数N個、つまり、M行×N列の画像データであるものとする。また、各画素の画素値は、例えば0〜255の256階調で表される。以下、画素値のことを輝度値と記述する。
【0122】
図19に示すようにx方向に沿って線状の光切断線CLが現れていることが分かる。図14に戻り、S142(2)において、カメラ122,132は、測定試料500を撮像し、2フレーム目の光切断線画像の画像データを取得する。これと同時に、計測データ算出部123,133は、1フレーム目の光切断線画像の画像データに対して探索処理を実行する。
【0123】
S142(3)において、カメラ122,132は、測定試料500を撮像し、3フレーム目の光切断線画像の画像データを取得する。これと同時に、計測データ算出部123,133は、2フレーム目の光切断線画像の画像データに対して、探索処理を実行し、光切断線画像の各ラインの最大輝度画素を探索する。これと同時に、計測データ算出部123,133は、1フレーム目の光切断線画像に対して、重心算出処理を実行し、各ラインの最大輝度画素の重心座標をサブピクセル単位で算出する。
【0124】
S142(3)が終了した時点で、1フレーム目に現れた光切断線CLに対応する1列目の重心座標が得られる。
【0125】
以後、S142(4)〜S142(X)まで、S142(3)と同様の処理が繰り返し実行される。S142(X)が終了した時点で、1列目〜X−2列目の重心座標が得られる。
【0126】
S142(X+1)においては、カメラ122,132による撮像が終了されているため、探索処理及び重心処理のみが実行され、X−1列目の重心座標が得られる。
【0127】
S142(X+2)においては、探索処理も終了されているため、重心算出処理のみが実行され、X列目の重心座標が得られる。
【0128】
以上のパイプライン処理より、カメラ122,132が1フレームの光切断線画像を撮像する期間が経過する度に、1列分の重心座標が得られる。
【0129】
図15は、探索処理の詳細を示すフローチャートである。まず、計測データ算出部123,133は、カメラ122,132が現在撮像している現フレームの1つ前のフレームの光切断線画像を処理対象の光切断線画像として設定する(S151)。
【0130】
次に、計測データ算出部123,133は、光切断線画像上に設定する各ラインのライン番号を示すための変数iに0を代入し、iを初期化する(S152)。この場合、図19に示すように、光切断線画像上に、y方向に沿って1本のラインが設定されていることが分かる。なお、i=0が図19に示す光切断線画像の第1行目を表し、i=1が図19に示す光切断線画像の第2行目を表すというように、1本のラインは光切断線画像の1行に対応し、変数iは、光切断線画像の各行と対応付けられている。
【0131】
次に、計測データ算出部123,133は、iライン目において、輝度が最大となる画素である最大輝度画素を探索する(S153)。この場合、計測データ算出部123,133は、図19に示すiライン目において、例えば左端の画素から右端の画素を順次に注目画素として設定していくことで最大輝度画素を探索していく。具体的には、まず、左端の画素を注目画素として設定し、その輝度値及び座標を図略のバッファに格納する。ここで、座標としては、左端の画素から何番目の画素であるかを示す整数値を採用することができる。
【0132】
次に、右隣の画素を注目画素として設定し、注目画素の輝度値の方がバッファに格納した輝度値以上の場合は、バッファを注目画素の輝度値及び座標で更新する。一方、注目画素の輝度値の方がバッファに格納した輝度値未満の場合は、バッファに格納した輝度値及び座標を更新しない。このような処理を繰り返し行い、最終的にバッファに格納されている座標を最大輝度画素の座標ypとして決定し、iライン目の最大輝度画素が探索される。
【0133】
なお、求められたiライン目の最大輝度画素の座標ypは変数iと対応付けられて図略のバッファに格納される。
【0134】
次に、計測データ算出部123,133は、全ラインについて、最大輝度画素の座標ypを求める処理が終了した場合(S154でYES)、処理をリターンさせ、全ラインについて、最大輝度画素の座標ypを求める処理が終了していない場合(S154でNO)、iを1インクリメントさせ(S155)、処理をS153に戻す。
【0135】
つまり、計測データ算出部123,133は、S153〜S155の処理を繰り返すことで、図19に示す光切断線画像の全ラインの最大輝度画素の座標ypを求めるのである。
【0136】
図16は、重心算出処理の詳細を示すフローチャートである。まず、計測データ算出部123,133は、カメラ122,132が現在撮像している現フレームの2つ前のフレームの光切断線画像を処理対象の光切断線画像として設定する(S161)。
【0137】
次に、計測データ算出部123,133は、探索処理と同様にして変数iに0を代入し、iを初期化する(S162)。次に、計測データ算出部123,133は、iライン目において探索した最大輝度画素を中心として、左右にn個の周辺画素を抽出し、最大輝度画素と2n個の周辺画素とを用いて、iライン目の最大輝度画素の重心座標ysubを求める(S163)。
【0138】
図20は、iライン目における最大輝度画素を中心としたときの輝度値の分布を示したグラフである。図20では、座標ypが最大輝度画素の座標であり、右に8個、左に8個の合計17個の画素の輝度値の分布が示されている。
【0139】
そして、計測データ算出部123,133は、例えば下記の式を用いて、最大輝度画素の重心座標を求める。
【0140】
【数1】

【0141】
但し、ysubは最大輝度画素の重心座標を示し、yjはiライン目における第j番目の画素の座標を示し、kjはyjの輝度値を示し、ypは最大輝度画素の座標を示し、kpは最大輝度画素の輝度値を示し、nは周辺画素を特定するためのインデックスである。
【0142】
これにより、iライン目において、最大輝度画素の重心座標ysubが1画素以下の小数点つき値、つまりサブピクセル単位で求まることになる。なお、計測データ算出部123,133は、最大輝度画素の重心座標ysubを小数点の何桁目までを求めるかを予め定めておき、最大輝度画素の重心座標ysubがその桁数を超えると、四捨五入、切り捨て、又は切り上げる等の処理を行えばよい。
【0143】
図20の例では、実線で示すグラフのピークのyの値が最大輝度画素の重心座標ysubとなる。なお、図20の例では、周辺画素の個数をn=8としたが、これは一例であり、1以上であれば計算量が膨大とならない範囲で適宜、別の値を採用してもよい。
【0144】
図16に戻り、計測データ算出部123,133は、全ラインについて、最大輝度画素の重心座標ysubを求める処理が終了した場合(S164でYES)、処理をリターンさせ、全ラインについて、重心座標ysubを求める処理が終了していない場合(S164でNO)、iを1インクリメントさせ(S165)、処理をS163に戻す。
【0145】
つまり、計測データ算出部123,133は、S163〜S165の処理を繰り返すことで、図20に示す光切断線画像の全ラインの最大輝度画素の重心座標ysubを求めるのである。
【0146】
なお、全ラインの最大輝度画素の重心座標ysubは、光切断線画像のフレーム番号と、変数iと対応付けられて図略のバッファに格納される。また、計測データ算出部123が求めた測定試料500の表面の重心座標ysubが表面計測データに該当し、計測データ算出部133が求めた測定試料500の重心座標ysubが裏面計測データに該当する。
【0147】
図17は、図14のフローチャートの処理を時系列で示したタイミングチャートである。図17に示す期間T1〜T(X+2)は、それぞれ、カメラ122,132が1フレームの光切断線画像を撮像するために要する時間、すなわち、フレーム周期を表している。
【0148】
期間T1においては、図14に示すS142(1)が実行され、1フレーム目の光切断線画像が撮像されている。期間T2においては、図14に示すS142(2)が実行され、2枚目のフレームの光切断線画像の撮像と、1フレーム目の光切断線画像の探索処理とが同時に行われている。
【0149】
期間T3においては、図14に示すS142(3)が実行され、3フレーム目の光切断線画像の撮像と、2フレーム目の光切断線画像の探索処理と、1フレーム目の光切断線画像の重心算出処理とが同時に行われている。
【0150】
以後、期間T(X)まで、現フレームの光切断線画像の撮像と、1つ前のフレームの光切断線画像の探索処理と、2つ前のフレームの光切断線画像の重心算出処理とが同時に行われ、1期間が経過する毎に、1列分の最大輝度画素の重心座標ysubが算出される。
【0151】
図18は、探索処理と重心算出処理との処理の流れを概念的に示した図である。図18に示す縦軸は時間軸を示し、カメラ122,132のフレーム周期毎に目盛りが刻まれている。なお、上述したように、カメラ122,132のフレームレートは250fpsであるため、フレーム周期は4msecとなる。なお、図18では、1フレームの光切断線画像に設定されるライン数はi=0〜479の480本とされている。
【0152】
期間T(n)において、測定試料500が撮像され、nフレーム目の光切断線画像が取得されている。次に、期間T(n+1)において、左側に向けて停止することなく一定速度で搬送されている測定試料500が撮像され、n+1フレーム目の光切断線画像が取得されている。次に、期間T(n+2)において、左側に向けて停止することなく一定速度で搬送されている測定試料500が撮像され、n+2フレーム目の光切断線画像が取得されている。
【0153】
そして、期間T(n)において、n−1フレーム目の光切断線画像に対し、i=0〜479本のラインが設定され、各ラインの最大輝度画素が探索されると同時に、n−2フレーム目の光切断線画像に対し、i=0〜479本のラインが設定され、各ラインの最大輝度画素の重心座標ysubが算出されている。
【0154】
また、期間T(n+1)、T(n+2)においても、期間T(n)と同様の処理が実行される。よって、期間T(n)が経過する毎に、i=0〜479の最大輝度画素の重心座標ysubが得られる。
【0155】
図14に戻り、S143において、高さデータ算出部143は、計測データ算出部123,133により算出された1フレームの光切断線画像について算出された1列分の最大輝度画素の重心座標ysubのそれぞれを下記の式に代入し、高さデータを算出し、算出した高さデータを変数iの順番で配列することで、1列分の高さデータを算出する。
【0156】
h(μm)=R・ysub・cosθ/sinθ
但し、hは高さデータを示し、Rは視野分解能を示し、θは光源121,131の仰角を示す。
【0157】
図21は、高さデータを算出する処理の説明図である。図22は、光源121とカメラ122との設置状態を模式的に示した図である。図21に示す四角形は光切断線画像を示し、四角形内に示す太線は全ラインの最大輝度画素の重心座標ysubにより描かれる光切断線CL´を示している。
【0158】
図22に示すように、光源121の仰角はz方向を基準としてθに設定されている。そして、光源121から照射された光がカメラ122に入射する位置は、測定試料500の高さに応じて図10に示すy方向に前後することになる。よって、最大輝度画素の重心座標ysubを上記の式に代入することで、測定試料500の表面の各位置における高さデータを求めることができる。
【0159】
なお、図21において、光切断線画像の縦方向の長さをML(μm)、横方向の長さをNL(μm)とし、縦方向のピクセル数をM、横方向のピクセル数をNとすると、視野分解能Rは、R=NL/Nとなる。
【0160】
そして、高さデータ算出部143は、光切断線CL´上の重心座標ysubについて求めたM個の高さデータhを1列に配列する。これにより、測定試料500の1列分の高さデータが得られる。
【0161】
図14に戻り、S144において、高さデータ算出部143は、求めた1列分の高さデータをフレーム番号順に配列することで、測定試料500の表面及び裏面の全面の高さデータを算出する。
【0162】
図14の例では光切断線画像のフレーム数はX枚であるため、1列分の高さデータがX個配列された高さデータが得られる。以上により、測定試料500の表面及び裏面の高さデータが得られる。本実施の形態では、特にウェハ520を測定対象としている。ウェハ520は柱状のインゴットを長手方向と直交する方向に切断することで製造される。そのため、ウェハ520にはソーマークと呼ばれる筋状の凹凸が表面及び裏面に現れる。このソーマークはウェハ520の表面及び裏面においてほぼ平行に現れる。ウェハ520の良否を判定する際にはこのソーマークがどの程度現れているかを知る必要がある。
【0163】
本形状計測装置は、上記のようにウェハ520の表面及び裏面の全域の高さデータを求めているため、ウェハ520に現れるソーマークを評価することができる。また、本形状計測装置は、図14に示すように、ウェハ520の表面及び裏面の撮像と探索処理と重心算出処理とをパイプライン的に実行している。そのため、ウェハ520の表面及び裏面の全域の撮像が終了するのとほぼ同時に、表面計測データ及び裏面計測データが得られ、リアルタイムにウェハ520の表面及び裏面の高さデータを算出することができる。
【0164】
また、本形状計測装置は、ウェハ520の表面及び裏面の高さデータを用いてウェハ520の厚みを計測しているため、ウェハ520の表面及び裏面の形状のみならず、ウェハ520の厚みも得ることができる。そのため、ソーマークに加えて厚みを用いてウェハ520の良否を判定することができる。
【0165】
上記説明では、標準サンプル510を平坦サンプル511と厚みサンプル512とを分けたが、厚みがウェハ520と同程度の平坦なサンプルを作成した場合、このサンプルを標準サンプル510として採用すればよい。
【0166】
この場合、標準サンプル510の表面及び裏面の高さデータは、平坦サンプル511の表面及び裏面の高さデータと、厚みサンプル512の表面及び裏面の高さデータとを表すことになるので、標準表面高さデータ及び標準裏面高さデータは0となる。
【0167】
したがって、高さデータ補正部145は、ウェハ520の表面の高さデータから標準サンプル510の表面の高さデータを差し引いて補正表面高さデータを求め、ウェハ520の裏面の高さデータから標準サンプル510の裏面の高さデータを差し引いて補正裏面高さデータを求めればよい。
【0168】
また、上記の説明では、標準サンプル510を用いて厚みデータを算出したが、これに限定されず、ウェハ520の表面及び裏面の高さデータを求め、表面の高さデータ−裏面の高さデータによりウェハ520の厚みを求めても良い。
【符号の説明】
【0169】
3,3 搬送ベルト
110 搬送部
120,130 計測データ取得部
121,131 光源
122,132 カメラ
123,133 計測データ算出部
140 制御部
141 搬送制御部
142 計測制御部
143 高さデータ算出部
144 パラメータ算出部
145 高さデータ補正部
150 パラメータ記憶部
160 操作部
500 測定試料
510 標準サンプル
511 平坦サンプル
512 厚みサンプル
520 ウェハ
600 測定ステージ
601 載置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される太陽電池ウェハの表面及び裏面に対して斜め方向から前記太陽電池ウェハの搬送方向と交差する方向に光切断線を照射し、前記太陽電池ウェハの表面及び裏面を連続撮像し、前記太陽電池ウェハの表面計測データ及び裏面計測データを取得する計測データ取得部と、
前記計測データ取得部により取得された表面計測データ及び裏面計測データに基づいて、前記太陽電池ウェハの表面の各位置の高さデータ及び裏面の各位置の高さデータを算出する高さデータ算出部と、
前記高さデータ算出部により算出された前記太陽電池ウェハの表面の高さデータ及び裏面の高さデータに基づいて、前記太陽電池ウェハの各位置の厚みデータを算出する厚みデータ算出部とを備える形状計測装置。
【請求項2】
前記高さデータ算出部は、前記計測データ取得部が、表面及び裏面が平坦な平坦サンプルを計測することで取得した表面及び裏面の高さデータと、前記太陽電池ウェハと同じ厚みを持つ厚みが既知の厚みサンプルを計測することで取得した表面及び裏面の高さデータと基づいて、標準表面高さデータ及び標準裏面高さデータを算出し、
前記標準表面高さデータ及び前記標準裏面高さデータに基づいて、表面傾き補正パラメータ及び裏面傾き補正パラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記高さデータ算出部により算出された前記太陽電池ウェハの表面の高さデータ及び裏面の高さデータを前記表面傾き補正パラメータ及び前記裏面傾き補正パラメータを用いて補正し、補正表面高さデータ及び補正裏面高さデータを算出する高さデータ補正部とを更に備え、
前記厚みデータ算出部は、前記補正表面高さデータ及び前記補正裏面高さデータに基づいて、前記厚みデータを算出する請求項1記載の形状計測装置。
【請求項3】
前記標準表面高さデータは、前記平坦サンプルの表面の高さデータを、前記厚みサンプルの表面の高さデータから差し引くことで算出され、
前記標準裏面高さデータは、前記平坦サンプルの裏面の高さデータを、前記厚みサンプルの裏面の高さデータから差し引くことで算出される請求項2記載の形状計測装置。
【請求項4】
前記搬送部は、前記太陽電池ウェハ、前記平坦サンプル、及び前記厚みサンプルをそれぞれ測定試料とし、前記測定試料を一定の搬送速度で搬送し、
前記計測部は、前記測定試料が一定距離搬送される都度、前記測定試料を撮像し、
前記高さデータ算出部は、前記測定試料の搬送方向の表面及び裏面の高さデータの変化から前記測定試料の表面及び裏面の傾きを算出し、算出した表面及び裏面の傾きに基づいて、搬送方向に対する計測ポイントが一定間隔になるように、前記測定試料の表面及び裏面の高さデータを補正する請求項3記載の形状計測装置。
【請求項5】
前記パラメータ算出部は、
前記標準裏面高さデータの近似裏平面をz2(=a2x+b2y+c2)とおき、前記標準裏面高さデータを用いて係数a2,b2,c2を算出し、算出した係数a2,b2,c2を裏面傾き補正パラメータとして算出し、
ある平面をz1(=a1x+b1y+c1)とおき、
(前記標準表面高さデータ−z1)−(前記標準裏面高さデータ−z2)=前記厚みサンプルの厚みデータとなるように前記係数a1,b1,c1を求め、求めた前記係数a1,b1,c1を前記表面傾き補正パラメータとして算出する請求項3又は4記載の形状計測装置。
【請求項6】
前記高さデータ補正部は、
前記太陽電池ウェハの表面の高さデータから前記平坦サンプルの表面の高さデータを差し引き、差し引いた値から更に前記平面z1を差し引くことで前記補正表面高さデータを求め、
前記太陽電池ウェハの裏面の高さデータから前記平坦サンプルの裏面の高さデータを差し引き、差し引いた値から更に前記近似裏平面z2を差し引くことで前記補正裏面高さデータを求める請求項5記載の形状計測装置。
【請求項7】
前記計測データ取得部は、
一定速度で搬送される前記太陽電池ウェハの表面に光切断線を照射する表面照射部と、
一定速度で搬送される前記太陽電池ウェハの裏面に光切断線を照射する裏面照射部と、
前記表面照射部により光切断線が照射された前記太陽電池ウェハの表面を上方から一定周期で連続的に撮像する表面撮像部と、
前記裏面照射部により光切断線が照射された前記太陽電池ウェハの裏面を下方から一定周期で連続的に撮像する裏面撮像部とを備える請求項1〜6のいずれかに記載の形状計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−242138(P2012−242138A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109836(P2011−109836)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】