説明

情報配信装置

【課題】この発明は、情報配信装置において、ユーザが走行した履歴を元に目的地を推定する際の推定精度を向上し、目的地周辺や走行ルート沿いの適切な情報を配信することを可能とし、ユーザが十分に満足できる情報の提供を可能とすることを目的とする。
【解決手段】この発明は、通信手段を介して情報提供装置から情報を受信し情報表示装置に表示する制御手段とを備えた情報配信装置において、過去の走行ルート履歴と過去の走行パターン履歴とを記憶する記憶装置を備え、過去の走行ルート履歴から目的地を推定する第一推定手段と、過去の走行パターン履歴から走行パターンの共起関係を利用して目的地を推定する第二推定手段とを用いて、目的地を推定する目的地推定手段を備え、制御手段は、目的地推定手段により推定された目的地近辺と、目的地までの走行ルート沿いとの情報を情報表示装置に表示させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は情報配信装置に係り、特に、ユーザが走行した履歴を元に目的地を推定し、この推定した目的地に合わせた情報を配信することができる情報配信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の情報配信装置には、車両を目的地に向かって運転している際に、目的地への走行ルートを配信するととも、通信を使って外部情報を収集し、走行ルートや目的地周辺の情報を配信するものがある。このような情報配信装置としては、ユーザの履歴から目的地を推定するものがある。
【特許文献1】特開2005−249606号公報
【特許文献2】特開2005−181020号公報
【特許文献3】特開2002−328035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記従来の特許文献1に開示される情報配信装置においては、ユーザが到達する到着地を推定し、これに合わせた情報(交通情報、広告情報)を配信している。この情報配信装置では、単純に出発地から到着地までを一回の走行ルートとしてその履歴を保存し、出発地から過去の走行履歴と一致しているものを検索して目的地を推定している。
しかし、この情報配信装置は、出発から到着地までの走行履歴だけを元に目的地を推定するため、精度が低いという問題がある。例えば、普段において道路の混雑状況によって道を変更するときなどは、結局目的地は同じである。その場合、一回の走行ルートのルートマッチングでは、他の目的地への走行ルートと混同して推定率を下げる原因となる問題がある。
また、出発地において目的地を推定する場合は、まだ走行前の段階であってルートマッチングできないでいるため、曜日と時間とによる頻度でしか推定できず、推定精度を向上することができない問題がある。
また、リンクした地点を使った目的地の推定を行っている情報配信装置もあるが、これはルートマッチングとあまり変わらないため、推定精度の向上に大きな効果を望めない問題がある。
【0004】
この発明は、通信を使って外部情報を収集し、情報を選別してユーザに配信する情報配信装置において、ユーザが走行した履歴を元に目的地を推定する際の推定精度を向上し、目的地周辺や走行ルート沿いの適切な情報を配信することを可能とし、ユーザが十分に満足できる情報の提供を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、情報を表示する情報表示装置と、情報提供装置と通信する通信手段と、この通信手段を介して前記情報提供装置から情報を受信し前記情報表示装置に表示する制御手段とを備えた情報配信装置において、過去の走行ルート履歴と過去の走行パターン履歴とを記憶する記憶装置を備え、過去の走行ルート履歴から目的地を推定する第一推定手段と、過去の走行パターン履歴から走行パターンの共起関係を利用して目的地を推定する第二推定手段とを用いて、目的地を推定する目的地推定手段を備え、前記制御手段は、前記目的地推定手段により推定された目的地近辺と、目的地までの走行ルート沿いとの情報を前記情報表示装置に表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明の情報配信装置は、2つの推定手段を用いて目的地を推定しているので、正確な目的地の推定が可能となり、目的地の推定精度を向上させることができ、これにより、目的地周辺や走行ルート沿いの適切な情報を送信して情報表示装置に表示させることが可能となり、ユーザが十分に満足できる情報を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明は、目的地の推定精度を向上させて適切な情報の配信を可能とする目的を、2つの推定手段を用いて目的地を推定することによって実現するものである。
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0008】
図1〜図16は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は車載用の情報配信装置である。情報配信装置1は、車両側装置2と外部の情報提供装置3とからなる。情報配信装置1は、主に、車両側装置2の内部から車両情報等の各種情報を車両側装置2の外部の情報提供装置3に送信し、この情報提供装置3がデータの収集・蓄積や情報の選択を行い、さらに、車両側装置2の内部で、データの送信や情報の表示を行う。
前記車両側装置2は、情報表示装置(ナビゲーションシステム)4と、この情報表示装置4に接続されたGPSアンテナ5と、情報の表示や通信など処理する制御手段6と、この制御手段6に接続された通信手段7とを備えている。
前記情報表示装置4は、情報を表示することのできる表示パネル8を備え、この表示パネル8に表示された情報を運転者等のユーザが操作するための操作ボタン9を備えている。情報表示装置4は、GPSアンテナ5から車両の現在位置情報を受信して、その位置情報を制御手段6に送信するとともに、表示パネル8に車両の位置や地図などのナビゲーションデータ(道路案内情報)を表示し、ナビゲーションデータ以外に制御手段6で作成された表示データを表示パネル8に表示することができる。情報表示装置4は、通常の操作ボタン9aと、表示パネル8上のタッチ式の操作ボタン9bとの2種類の操作ボタン9で、表示パネル8の表示状態を操作することができる。
前記GPSアンテナ5は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)での車両の現在位置情報を受信するものであり、車両の現在位置情報を情報表示装置4に取得させるために用いられる。
前記制御手段6は、情報の表示や通信などの制御する中央演算処理部10と、通信手段7を介して車両側装置2の外部の情報提供装置3とデータ通信を行う無線通信機能部11と、情報提供装置3及び情報表示装置4から得られた情報から情報表示装置4に表示させる表示データを作成する表示データ作成部12と、操作ボタン9の操作を処理する操作ボタン処理部13とを備えている。
制御手段6は、情報表示装置4から現在位置情報や操作ボタン9の操作情報を受信し、表示パネル8に表示させる現在位置の表示データの作成や操作ボタン9の操作内容を処理をするとともに、通信手段7を介して情報提供装置3とデータを受信し、この受信したデータを表示パネル8に表示させる。
前記通信手段7は、無線通信カード等の通信機器からなり、車両側装置2の内部の制御手段6と車両側装置2の外部の情報提供装置3との間で携帯無線やLAN無線等により移動体通信を可能とする。
前記車両側装置2の外部の情報提供装置3は、車両側装置2の外部の情報センタとしての機能を有し、処理装置としての情報データサーバ14と、記憶装置としての情報データベース15とを備えている。
前記情報データサーバ14は、車両側装置2からの要求やデータを通信手段7を介して受信し、情報データベース15にアクセスしてデータを読み書きするデータ処理手段16と、情報データベース15に蓄積された広告情報をユーザに配信するために選別する広告選別手段17と、この広告選別手段17により選別された広告情報を情報データベース15から読み出して車両側装置2に配信する広告配信手段18とを備えている。前記情報データベース15は、情報を蓄積するものであり、配信する広告情報のデータを蓄積する広告情報蓄積部19を備えている。
前記情報配信装置1は、情報提供装置3の情報データベース15に蓄積された情報を情報データサーバ14により選別し、通信手段7を介して車両側装置2の制御手段6に配信し、この配信された情報を制御手段6の中央演算処理部10により情報表示装置4の表示パネル8に表示させる。
制御手段6は、図2に示すよう、表示パネル8の表示画面20に複数の例えば第1情報〜第5情報の見出し画面21とこれら見出し画面21に対応する選択の操作ボタン9bとを表示させるとともに、図3に示すように、表示画面20に第1情報の詳細画面22と戻るの操作ボタン9bとを表示させる。
制御手段6は、図2において、ユーザが通常の操作ボタン9aあるいは表示画面20の操作ボタン9bにより第1情報の見出し画面21を選択する操作をすると、図3に示すように、表示画面20に第1情報の詳細画面22と戻るの操作ボタン9bとを表示させる。
制御手段6は、図3において、ユーザが通常の操作ボタン9aあるいは戻るの操作ボタン9bにより戻る操作をすると、図2に示す表示画面20に戻して複数の第1情報〜第5情報の見出し画面21を表示させる。
【0009】
この情報配信装置1は、図1に示すように、過去の走行ルート履歴と過去の走行パターン履歴とを記憶する記憶装置として、前記情報データベース15に、車両の過去の走行ルート履歴の情報を記憶して蓄積する走行ルート履歴蓄積部23と、ユーザの過去の走行パターン履歴の情報を記憶して蓄積する走行パターン履歴蓄積部24とを備えている。
走行ルート履歴は、出発点の位置(緯度、経度)と日付と時刻、走行中の位置(緯度、経度)、到着点の位置(緯度、経度)と日付と時刻、走行距離を蓄積して記憶している履歴である。走行パターン履歴は、出発地からスタートして再び出発地へ戻って来るまでの経路を、通過地点名と、前記通過地点の通過順序とを含めて記憶している履歴である。
前記情報提供装置3には、目的地推定手段25を備えている。目的地推定手段25は、過去の走行ルート履歴から目的地を推定する第一推定手段26と、過去の走行パターン履歴から走行パターンの共起関係を利用して目的地を推定する第二推定手段27とを用いて、目的地を推定する。ここで、共起関係とは、A、B、Cというイベントがあるとすると、Aの後にはBが起きる(A→B)といった順序関係を考慮したイベントの組を指す。
前記共起関係は、車両の現在地と目的地候補地とについての共起距離と共起度とから構成されている。前記共起度は、対数尤度を用いて算出している。対数尤度は、共起の強さを計る指標の1つである。
前記制御手段6は、目的地推定手段25により推定された目的地近辺と、目的地までの走行ルート沿いとの情報を情報表示装置4に表示させる。
【0010】
次に、この実施例の作用を説明する。
この情報配信装置1は、広告情報やイベント情報を配信するものであり、情報を配信する際に、ユーザの状況にあった情報、例えば、現在地の近くや推定された目的地や手操作により設定された目的地の近くの情報を配信することを可能にする。
情報提供装置1は、図4(A)に示すように、車両側装置2の制御手段6によるシステム全体の流れにおいて(A1)、車両にユーザが乗車してイグニションキーをアクセサリ位置に回してオン(ACC_ON)すると(A2)、情報配信と表示が行われ(A3)、情報閲覧などの操作データを情報データサーバ14に送信し(A4)、イグニションキーをアクセサリ位置から回してオフ(ACC_OFF)したか否かを判断する(A5)。
この判断(A5)がNO場合は、情報配信と表示(A3)に戻る。この判断(A5)がYESの場合は、プログラムを終了する(A6)。
また、情報配信装置1は、図4(B)に示すように、情報提供装置3の情報データサーバ14による情報選別において(B1)、選別するタイミングか否かを判断する(B2)。
この判断(B2)がNOの場合は、この判断(B2)を繰り返す。この判断(B2)がYESの場合は、現在地の近辺の広告、推定された(または設定された)目的地の近辺の広告を選別し(B3)、プログラムを終了する(B4)。
前記車両側装置2の制御手段6と情報提供装置3の情報データサーバ14とは、情報配信と表示(A3)と、現在地や目的地の近辺の広告の選別(B3)との間で情報が利用されている。制御手段6により配信された情報(A3)は、情報データサーバ14において現在地や目的地の近辺の広告の選別(B3)に利用される。情報データサーバ14により選別された現在地や目的地の近辺の広告は、制御手段6において表示(A3)に利用される。
【0011】
この情報配信装置1による目的地の推定を、図5〜図8に沿って説明する。
図5に示すように、目的地の推定の全体の流れは、1回の走行の流れにおいて(C1)、車両が出発すると(C2)、自宅位置Sを出発地点として設定し(C3)、ルートマッチング(走行ルートの似合う組み合わせ)による目的地の推定を行い(C4)、共起関係を用いた目的地の推定を行う(C5)。
ルートマッチングによる目的地の推定(C4)は、目的地推定手段25の第一推定手段26によって、過去の走行ルート履歴から目的地を推定することにより行われる。共起関係を用いた目的地推定(C5)は、目的地推定手段25の第二推定手段27によって、過去の走行パターン履歴から走行パターンの共起関係を利用して目的地を推定することにより行われる。
【0012】
前記ルートマッチングによる目的地の推定(C4)は、図9に示すように、地図を升目状に区切り、走行位置の緯度、経度をその升目に当てはめて、それを走行ルートとする。
ルートマッチングによる目的地の推定においては、例えば、車両が、図9に示す地図上において、升目を「1」から「13」のように走行したとすると、図10に示すようなパラメータを使用して、
1)出発地点「1」での目的地推定
2)走行中「2」〜「12」の目的地推定
3)到着した後「13」の処理
を行う。
【0013】
1)出発地点「1」での目的地推定においては、
(1)過去の走行履歴の中で「1」を出発したルートを、AVAILABLE_DAYとAVAILABLE_RECORDNUMの籟囲内で抽出する。
(2)出発する曜日と時間で最も頻度が高い走行ルートの到着地を目的地と推定する。
の処理を行う。
【0014】
これらより、スコアを、
スコア=(頻度+同じ曜日頻度+同じ時刻頻度)*INITlAL_P0INT
の式により求める。
【0015】
頻度は、図11に示すように、情報データベース15の走行ルート履歴蓄積部22から読み込む。走行ルート履歴蓄積部22には、走行履歴ID、出発地点、出発時刻、到着地点、到着時刻、走行ルート(緯度、経度)、が蓄積されている。この走行ルート履歴蓄積部22は、車両側装置2内に設けることも可能である。
なお、頻度は、HINDO_MAX以上を値として取らない。
また、MIN_SCOREに満たないスコアの場合は、目的地の候補としない。
【0016】
2)走行中「2」〜「12」の目的地推定においては、
(1)出発してから升目の数がMASUME_MIN以上経過していることを確認する。
(2)過去の走行ルート履歴の中でMATCH_NUMの数だけ走行ルートが一致しているものを、AVAILABLE_DAYとAVAILABLE_RECORDNUMの範囲内で抽出する。
(3)もし、今回、今までの候補の中が一致しなかった場合は、NOMATCH_P0INTを減点する。
の処理を行う。
【0017】
これらより、スコアを、
スコア=今までのスコア+NEW_FINDING_POINT*(進んだ升目数/2)
の式により求める。
【0018】
3)到着した後「13」の処理においては、
(1)今までの過去のルートと一致したものがあるかをみる。升目が一致した割合がSAVERATE_T0_RM以上なら、過去の走行ルートと一致したとみなす。それ以外は、新規ルートとしてデータベースに登録する。
の処理を行う。
【0019】
これより、前記図5のルートマッチングによる目的地の推定(C4)においては、図6に示すように、ルートマッチングによる目的地の推定が開始されると(D1)、出発地か否かを判断する(D2)。
この判断(D2)がYESの場合は、出発地からの目的地の推定を行い(D3)、推定の結果を共起関係の推定(C5)に渡し(D4)、プログラムを終了する(D5)。この判断(D2)がNOの場合は、升目をMASUME_MINの個数まで進んだか否かを判断する(D6)。
この判断(D6)がNOの場合は、プログラムを終了する(D5)。この判断(D6)がYESの場合は、升目をMASUME_CNTの個数だけ進んだか否かを判断する(D7)。
この判断(D7)がNOの場合は、プログラムを終了する(D5)。この判断(D7)がYESの場合は、走行中の目的地の推定を行い(D8)、推定の結果を共起関係の推定(C7)に渡し(D4)、プログラムを終了する(D5)。
【0020】
図6に示すルートマッチングによる目的地の推定のプログラムを終了(D5)後は、前記図5のプログラムに戻り、ルートマッチングによる目的地の推定結果が出たか否かを判断する(C6)。
この判断(C6)がNOの場合は、処理(C4)に戻る。この判断(C6)がYESの場合は、推定の結果を共起関係を用いた目的地の推定(C5)に渡す(C7)。
【0021】
共起関係を用いた目的地の推定(C5)においては、推定を行うタイミングを、出発したときと、図9に示す地図上において決められた個数の升目を移動したときとする。基本的には、出発点、到着点から推定するものだが、この実施例では升目を移動したときにも行う。それは、出発した時だけでは推定頻度が少なくなり、推定の確率が下がってしまうのを防ぐためである。
共起関係を用いた目的地の推定(C5)においては、共起関係から目的地候補を作成するために、ステップ1〜3の手順を採っている。
この考え方は、自宅Sから自宅Sに帰るまでに立ち寄った目的地の共起パターンと現在の車両の走行経路とを比較することで、目的地候補を選択するものである。過去に蓄積した共起パターンの中からどの共起パターンを使って目的地候補を決めるのかを、以下の3つステップ1〜3で行う。なお、各ステップ1〜3は、ステップ1よりもステップ2が下位、ステップ2よりもステップ3が下位となっており、各ステップ1〜3でそれぞれ目的地を推測し、上位のステップで目的地候補が挙がらなかった場合にのみ、下位のステップで処理を行う。
1)、ステップ1では、走行経路の順序が完全に一致するものを抽出する。
2)、ステップ2では、1ステップだけ経路の誤差があるが、走行経路の順序が一致するものを抽出する。
3)、ステップ3では、走行経路の順序が一致するものを抽出する。
【0022】
1)、ステップ1においては、
出発地(自宅S)からの軌跡が完全に一致するものを抽出する。
例:今、[S]→[1]→[2]と通ってきた場合、
(1)[S]→[1]→[2]→であれば、
次の目的地はSと見る。
(2)[S]→[1]→[2]→→Sであれば、
次の目的地は3と見る。
(3)[S]→[1]→[2]→→Sであれば、
次の目的地は1と見る。
【0023】
2)、ステップ2においては、
出発地(自宅S)を除いた軌跡が完全に一致するものを抽出する。
例:今、[S]→[1]→[2]と通ってきた場合、
(4)[S]→3→[1]→[2]→であれば、
次の目的地はSと見る。
(5)[S]→1→3→1→[1]→[2]→→Sであれば、
次の目的地は4とみる。
【0024】
3)、ステップ3においては、
通ってきた場所がある、パターンを抽出する。とにかく、ルートの中にその場所が含まれていればよい。
例:今、[S]→[1]→[2]と通ってきた場合、
(6)[S]→[1]→4→[2]→→Sであれば、
次の目的地は3と見る。
(7)[S]→[1]→3→[2]→であれば、
次の目的地はSとみる。
(8)[S]→3→[1]→3→[2]→→Sであれば、
次の目的地は4とみる。
【0025】
目的地候補の絞込みについては、以下の処理を行う。
目的地候補と車両の現在地との直接的な繋がりの強さは、共起パターン内における共起度と共起距離から推定する。ある地点とある地点が一度共起しただけでは、それらの間に繋がりがあるとは限らないが、共起の回教が大きく、かつ共起パターン内で両地点が近ければ、強い繋がりがある可能性が高い。
各ステップ1〜3とも、現在地と目的地候補地との共起距離と共起度を用いて、最終的な目的地を決定する。ステップ2・3では、基本的に目的地候補となる場所は車両の現在地よりも後に出現するすべての場所、つまり、選択された共起パターンの内、車両の現在地よりも後に出現するすべての場所を目的地候補とする。目的地候補と車両の現在地との共起距離は、次のように定義している。
【0026】
共起距離=Σ(1/|i−j|)
i:共起パターン内での現在の車両の位置
j:目的地候補に挙がった共起パターン内の位置
【0027】
選択された共起パターンの内、ある1つの共起パターン内で現在地がi番目にあり、目的地候補がj番目にあった場合、|i−j|が定数L以下であれば、現在地と目的地候補とは距離|i−j|で共起しているとする。今回は、定数Lは5とした。ただし、重複を除くために、距離が最小の目的地候補としている。このとき、現在地と目的地候補との共起距離は、選択されたすべての共起パターンについて、距離の逆数を加算した値とする。
共起関係の強さに関しては、共起の確かさをはかる指標としてMI−scoreやt−scoreがよく用いられているが、MI−scoreはめったに起こらない事象を強調しすぎる性質があり、t−scoreは高頻度の事象に高い値を与える性質を持つため、対数尤度のG−scoreを用いた。G−scoreは、対象規模が少なくても、また、事象の頻度が少ない場合でも、共起関係を適切に比較できる性質を持っている。G−scoreの計算方法は、次の通りになっている。G−scoreの要素a、b、c、d、Nの意味は、図12に示す通りである。
【0028】
共起度=G−score/2=alog(aN/(a+b)(a+c))+blog(bN/(a+b)(b+d))+clog(cN/(a+c)(c+d))+dlog(dN/(b+d)(c+d))
【0029】
ここで、Nは全共起パターンの頻度であり、a、b、c、dは、共起パターン集合の頻度と目的地候補を含む共起パターン集合の頻度との重なりを示す。
頻度は、図13に示すように、情報データベース15の走行パターン履歴蓄積部24から読み込む。走行パターン履歴蓄積部24には、出発地からスタートして再び出発地へ戻って来るまでの経路を、通過地点名と、前記通過地点の通過順序とを含めたデータとして、パターン番号、パターン、頻度、が蓄積されている。共起距離と共起度は、このパターンの頻度を使って算出される。この走行パターン履歴蓄積部24は、車両側装置2内に設けることも可能である。
【0030】
前記共起距離と前記共起度との積をとった値が各目的地候補のスコアとなり、最大値をとる目的地候補を共起関係で推定された目的地と決定する。但し、起点となっている自宅Sの推定は、ルートマッチングによる推定でのみ推定可能としている。前記共起距離、共起度、スコアの算出の具体例を説明する。
図14に示す走行パターン履歴を有する例において、A→Bと走行し、現在B地点にいる場合における目的地候補の決定を説明する。この場合、選択されたパターンは「A→B」であるので、パターン1、2、3が該当する。選択されたパターン以外は、パターン4、5が該当する。
情報配信装置1は、まず、ステップ1を用いて目的地候補を選択する。
この例の場合A→Bと走行し、現在B地点にいるわけだから、ステップ1を用いる要件である「出発地からの軌跡が完全に一致するもの」を満たすパターンが存在する(図14のパターン1、2、3)。すなわち、目的地候補として、CとDを抽出する。
ここで、ステップ1ですでに目的地候補が挙げられたため、ステップ2以下はこの例の場合は行わない。
【0031】
まず、ステップ1において、二つの目的地候補の共起距離を算出する。
Cの共起距離は、パターン1のCの位置はBから1つ目、パターン3ではCの位置はBから1つ目なので、
Cの共起距離=パターン1の共起距離+パターン3の共起距離=1/1+1/1=2
となる。
【0032】
また、Dの共起距離は、パターン2よりD1位置はBから1つ目なので1、またパターン3においてBからDは2つ目なので1/2、これより、
Dの共起距離=1/1+1/2=3/2=1.5
となる。
【0033】
次に、ステップ1において、共起度を求める。
前述したように、共起度を算出するのに、前述図12に示す要素表を備えた対数尤度のG−scoreを用いている。
共起距離の候補に挙がったCの共起度は、図12に示す対数尤度のG−scoreの要素表に当てはめると、図15に示すようになる。よって、Cの共起度は、図15に示す式1のように算出される。
したがって、Cの目的地候補のスコアは、
Cの共起距離=2
Cの共起度=1.497903206429854=約1.50
であるので、
スコア=共起距離*共起度=2*1.50=3.00
となる。
【0034】
同様に、Dの共起度は、図12に示す対数尤度のG−scoreの要素表に当てはめると、図16に示すようになる。ここで、選択されたパターンは、パターン2、3である。よって、Dの共起度は、図16に示す式2のように算出される。
したがって、Dの目的地候補のスコアは、
Dの共起距離=1.5
Dの共起度=0.24811661969932386=約0.25
であるので、
スコア=1.5*O.25=0.38
となる。
【0035】
よって、ステップ1を用いて、挙げられた目的地候補のスコアは、
C:共起距離=2、共起度=1.50、スコア=3.0
D:共起距離=1.5、共起度=0.25、スコア=0.38
であるので、この例の場合の目的地は、Cと決定する。
なお、この例の場合は、ステップ1で候補が挙がったため、その時点で今回の候補はCと結論づけする。もし、ステップ1で候補が挙がらなかった場合は、ステップ2、3に進み、共起距離、共起度、スコアの算出を行う。
【0036】
これより、前記図5の共起関係を用いた目的地の推定(C5)においては、図7に示すように、共起関係を用いた目的地の推定が開始されると(E1)、出発地か否かを判断する(E2)。
この判断(E2)がYESの場合は、ステップ1において自宅Sからの軌跡が完全に一致するものを抽出し(E3)、ステップ2において自宅Sを除いた軌跡が完全に一致するものを抽出し(E4)、ステップ3において通ってきた場所を含むパターンを抽出する(E5)。
前記(E3)〜(E5)のステップ1、2、3で出た候補にスコアを付け(スコアはステップの優先度と頻度とで算出する)(E6)、前記ルートマッチングで推定された目的地と、この共起関係で推定された目的地とを比較して推定目的地を決定し(E7)、プログラムを終了する(E8)。
前記判断(E2)がNOの場合は、決められた升目数を通過したか否かを判断する(E9)。この判断(E9)がYESの場合は、決められた升目移動地点を記憶し(E10)、ステップ1の処理(E3)に進む。この判断(E9)がNOの場合は、プログラムを終了する(E8)。
【0037】
これより、前記推定目的地の決定(E7)においては、図8に示すように、推定目的地の決定が開始されると(F1)、共起関係で推定された目的地が前記ルートマッチングと同じ目的地であるか否かを判断する(F2)。
この判断(F2)がYESの場合は、ルートマッチングで出た結果を推定目的地とし(F3)、プログラムを終了する(F4)。この判断(F2)がNOの場合は、ルートマッチングで自宅を選択しているか否か判断する(F5)。
この判断(F5)がYESの場合は、ルートマッチングで出た結果を推定目的地とし(F3)、プログラムを終了する(F4)。この判断(F5)がNOの場合は、ルートマッチングの候補1位と2位との差がpポイント以上離れているか否か判断する(F6)。
この判断(F6)がYESの場合は、ルートマッチングで出た結果を推定目的地とし(F3)、プログラムを終了する(F4)。この判断(F6)がNOの場合は、共起関係で出た目的地を推定目的地とし(F7)、プログラムを終了する(F4)。
【0038】
図8に示す推定目的地の決定のプログラムが終了(F4)し、前記図7に示すプログラムの終了(E8)後は、前記図5のプログラムに戻り、目的地に到着したか否かを判断する(C8)。
この判断(C8)がYESの場合は、自宅Sに戻ってきたか否かを判断する(C9)。この判断(C9)がYESの場合は、自宅Sから自宅Sまでの到着地を記録し、共起関係のパターンとし、頻度も記録し(C10)、プログラムを終了する(C11)。
前記判断(C8)がNOの場合は、X升目毎に走行ルートを記憶し(C12)、ルートマッチングによる目的地の推定(C4)と共起関係を用いた目的地の推定(C5)とに戻る。前記判断(C9)がNOの場合は、S→1→2…のように、到着地のIDを足して記憶し(C13)、プログラムを終了する(C11)。
【0039】
このように、この情報配信装置1は、情報データベース15の走行ルート履歴蓄積部23に、走行ルート履歴として、出発地、到着地、出発時刻、到着時刻、走行ルート(緯度、経度)を蓄積し、走行パターン履歴蓄積部24に、走行パターン履歴として、出発地からスタートして再び出発地へ戻って来るまでの経路を、通過地点名と、通過地点の通過順序とを含めて蓄積している。
情報配信装置1は、第一推定手段26によるルートマッチングを利用した目的地の推定だけではなく、ある地点(ここでは自宅)を起点にして、その地点から他の到着点を経て、ある地点(自宅)に戻ってくるまでを一つの走行パターンとして記録し、それを使用して目的地の推定を行うものであり、ここでは共起関係を利用した目的地の推定を第二推定手段27により行っている。共起関係には、共起度と共起距離とを使用している。共起関係の推定は、ステップ1〜3の段階的な方法で行っている。
情報配信装置1は、共起関係のパターンから、様々な計算方法を用いて目的地の推定を行うことにより、過去の走行履歴に含まれているデータをさらに有効に使い、より精度の高い目的地の推定を可能にしている。また、この情報配信装置1は、従来の目的地の推定のためのパラメータ以外に、より多くのパラメータ(図10参照)を用いることで、さらに推定精度の向上を図っている。
これにより、この情報配信装置1は、ルートマッチングだけでは捕らえられないユーザの目的地を推定することができる。例えば、その日による経路の違いでも、結局向かうところは同じである場合に有効となる。また、この情報配信装置1は、一回だけの走行ではその走行の目的地だけしか候補に上げられないが、共起関係を利用することでさらに先の目的地も推定することが可能になり、出発地点からも目的地の推定を可能にする。
【0040】
このように、この情報配信装置1は、目的地推定手段25の2つの第一・第二推定手段26・27を用いて目的地を推定しているので、正確な目的地の推定が可能となり、目的地の推定精度を向上させることができ、これにより、目的地周辺や走行ルート沿いの適切な情報を送信して情報表示装置4に表示させることが可能となり、ユーザが十分に満足できる情報を提供することができる。
前記共起関係は、車両の現在地と目的地候補地とについての共起距離と共起度とから構成されていることにより、共起関係の強さ(車両の現在地と目的地候補地との繋がりの強さ)を二つのパラメータを用いて算出しているので、目的地推定のための精度の高いデータ比較を行うことができる。
前記共起度は、対数尤度を用いて算出していることにより、過去の走行パターン数が少ない場合においても、共起関係を適切に比較することができ、目的地推定の精度を高めることができる。
前記記憶装置の情報データベース15には、走行パターン履歴として、出発地からスタートして再び出発地へ戻って来るまでの経路を、通過地点名と、前記通過地点の通過順序とを含めて記憶していることにより、目的地の推定時における精度を向上させるためのツールとして用いるのに有効である。
【0041】
なお、この発明は、上述の実施例に限定されず、種々応用改変が可能であることは勿論である。
例えば、上述実施例においては、情報配信装置1を車両に搭載したが、携帯電話などの移動体であれば実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明の情報配信装置は、車両が走行する際の目的地の推定精度を向上させて、ユーザが充分に満足できる情報を提供することができるものであり、他の移動体についても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】情報配信装置のシステム構成図である。
【図2】情報表示装置の表示パネルを示す図である。
【図3】表示を切り換えた情報表示装置の表示パネルを示す図である。
【図4】(A)は車両側装置の情報処理のフローチャート、(B)は情報提供装置の情報処理のフローチャートである。
【図5】目的地推定の全体のフローチャートである。
【図6】ルートマッチングによる目的地推定のフローチャートである。
【図7】共起関係を用いた目的地推定のフローチャートである。
【図8】推定目的地の決定のフローチャートである。
【図9】地図を升目状に区切った走行経路を説明する図である。
【図10】目的地推定で使用されるパラロータを説明する図である。
【図11】走行ルート履歴情報を説明する図である。
【図12】対数尤度の要素を説明する図である。
【図13】走行パターン履歴情報を説明する図である。
【図14】走行パターン履歴情報の具体例を説明する図である。
【図15】図14のパターン1及びパターン3によるCの走行パターン履歴情報の具体例を説明する図である。
【図16】図14のパターン2によるDの走行パターン履歴情報の具体例を説明する図である。
【符号の説明】
【0044】
1 情報配信装置
2 車両側装置
3 情報提供装置
4 情報表示装置
5 GPSアンテナ
6 制御手段
7 通信手段
8 表示パネル
9 操作ボタン
10 中央演算処理部
11 無線通信機能部
12 表示データ作成部
13 操作ボタン処理部
14 情報データサーバ
15 情報データベース
16 データ処理手段
17 広告選別手段
18 広告配信手段
19 広告情報蓄積部
23 走行ルート履歴蓄積部
24 走行パターン履歴蓄積部
25 目的地推定手段
26 第一推定手段
27 第二推定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示する情報表示装置と、情報提供装置と通信する通信手段と、この通信手段を介して前記情報提供装置から情報を受信し前記情報表示装置に表示する制御手段とを備えた情報配信装置において、過去の走行ルート履歴と過去の走行パターン履歴とを記憶する記憶装置を備え、過去の走行ルート履歴から目的地を推定する第一推定手段と、過去の走行パターン履歴から走行パターンの共起関係を利用して目的地を推定する第二推定手段とを用いて、目的地を推定する目的地推定手段を備え、前記制御手段は、前記目的地推定手段により推定された目的地近辺と、目的地までの走行ルート沿いとの情報を前記情報表示装置に表示させることを特徴とする情報配信装置。
【請求項2】
前記共起関係は、車両の現在地と目的地候補地とについての共起距離と共起度とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の情報配信装置。
【請求項3】
前記共起度は、対数尤度を用いて算出していることを特徴とする請求項2に記載の情報配信装置。
【請求項4】
前記走行パターン履歴は、出発地からスタートして再び出発地へ戻って来るまでの経路を、通過地点名と、前記通過地点の通過順序とを含めて記憶している履歴であることを特徴とする請求項1に記載の情報配信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−271305(P2007−271305A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94036(P2006−94036)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【出願人】(503065807)
【出願人】(504085613)
【出願人】(505363282)
【Fターム(参考)】