説明

感光性樹脂組成物、SAWフィルタ及びその製造方法

【課題】 溶剤現像に対応可能であり、低温硬化可能であり、吸水率が十分に低く、耐湿熱性に優れ、厚膜でも解像度に優れ、硬化物が高いガラス転移温度を有する感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)ポリアミック酸と、(B)重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有し、上記(B)重合性化合物が、分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を含む、感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、SAWフィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高集積化、小型化が進むことで、急速な大容量化、低コスト化を実現している。その中で、携帯電話のノイズ除去などに用いられるSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタは、現状、製造においてセラミックの加工がなされていることから高コストであること、構造上の制限から小型化・低背化が困難なことが問題となっている(下記特許文献1〜4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−244785号公報
【特許文献2】特開平8−204482号公報
【特許文献3】特開2003−8395号公報
【特許文献4】特開2004−64732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題を解決するため、製造の低コスト化・短時間化を達成するため、セラミック代替材として、フォトリソグラフィにより容易に加工できる感光性樹脂材料の開発が望まれている(上記特許文献3及び4参照)。
【0005】
SAWフィルタは、圧電基板の表面に櫛歯状のアルミ電極(Inter Digital Transducer、IDT電極と称される)を持っており、この櫛歯状のアルミ電極が形成されている部分は、表面弾性波を伝搬するために中空空間である必要がある。そのため、感光性樹脂がセラミックの代替となるには、中空空間を形成するために厚膜を形成できる必要がある。
【0006】
また、SAWフィルタ製造工程において、上記アルミ電極がフォトリソグラフィ時の現像液にさらされる場合がある。このとき、アルカリ現像液を使用すると、アルミ電極が腐食するという問題が起こることから、有機溶剤を用いて溶剤現像可能な感光性樹脂が求められている。さらに、上記アルミ電極の腐食を防止するという点から、感光性樹脂は、吸水率が低く、高温時の耐湿性(以下、「耐湿熱性」という)に優れることが要求される。
【0007】
また、上記アルミ電極は、200℃を越える高温において帯電し、製品の特性に影響を及ぼすことから、低温硬化可能な感光性樹脂が求められている。
【0008】
高耐熱性、高信頼性を有する感光性樹脂としては、感光性ポリイミド系材料が考えられるが、硬化温度が250〜350℃と高く、また、10μm以上の厚さの膜を形成困難であるといった問題がある。
【0009】
一方、30μm程度の厚膜の形成が可能であり且つ硬化温度が150℃程度である感光性樹脂として、エポキシ系感光性樹脂が挙げられる。しかし、エポキシ系感光性樹脂は、一般に吸水率が高く、ポリイミドと比べて十分な耐湿熱性が得られないため、高温での透湿によりアルミ電極の腐食が発生するという問題がある。
【0010】
これらの問題を解決するため、200℃程度の低温硬化が可能で吸水率が低く、厚膜形成や溶剤現像が可能な感光性樹脂の開発が進められている。しかし、上記の問題は改善できても、硬化物のガラス転移温度の低下や現像時の解像度低下といった新たな問題が生じている。ガラス転移温度が低いと、SAW素子を含む中空構造が樹脂封止されるときに中空潰れの原因になることがあり、モールド耐性が不十分となりやすい。また、解像度が低いと、ファインパターンが形成できなかったり、現像残渣が発生したりといった問題が生じることとなる。
【0011】
本発明は、以上のような従来の課題を解決するためになされたものであって、溶剤現像に対応可能であり、低温硬化可能であり、吸水率が十分に低く、耐湿熱性に優れ、厚膜でも解像度に優れ、硬化物が高いガラス転移温度を有する感光性樹脂組成物、それを用いたSAWフィルタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)ポリアミック酸と、(B)重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有し、上記(B)重合性化合物が、分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を含む、感光性樹脂組成物を提供する。
【0013】
かかる感光性樹脂組成物は、SAWフィルタの形成用途に特に好適に用いられる。上記感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体である(A)ポリアミック酸を含む上記構成を有することにより、その樹脂硬化物は、吸水率が十分に低く、優れた耐湿熱性を得ることができる。また、上記(A)ポリアミック酸を用いることで、その樹脂硬化物は優れた耐熱性・剛直性を得ることができる。また、上記構成を有する上記感光性樹脂組成物は、解像度良く厚膜形成が可能である。更に、上記感光性樹脂組成物は、(B)重合性化合物として、分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を含むことで、光硬化後の樹脂が十分な耐溶剤性を発現でき、有機溶剤を用いた溶剤現像が可能となる。また、上記感光性樹脂組成物は、上記分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を含有することで、比較的低温(例えば200℃以下)で硬化可能となり、SAWフィルタ製造工程においてアルミ櫛歯電極の帯電を抑制することができる。また、上記感光性樹脂組成物は、上記分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を含有することで、硬化物が高いガラス転移温度を有し、封止樹脂のモールド圧に十分に耐えることができる。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記(B)重合性化合物は、上記分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物として、下記一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化1】



[式(1)中、R、R及びRは各々独立に、2価の有機基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。]
【0015】
かかる感光性樹脂組成物は、(B)重合性化合物として上記一般式(1)で表される化合物を含むことにより、より優れた解像度が得られるとともに、硬化物がより高いガラス転移温度を有し、より十分なモールド耐性が得られる。
【0016】
また、上記一般式(1)中、Rは置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基又は下記一般式(2)で表される基であり、R及びRは各々独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいピリジレン基又は炭素数1〜10の枝分かれしていてもよいアルキレン基であることが好ましい。
【化2】



[式(2)中、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化3】



のいずれかを示し、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子を示し、m1及びn1は各々独立に、1〜4の整数を示す。なお、m1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、n1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【0017】
かかる感光性樹脂組成物は、より優れた解像度が得られるとともに、硬化物がより高いガラス転移温度を有し、より十分なモールド耐性が得られる。
【0018】
また、本発明の感光性樹脂組成物において、上記(B)重合性化合物は、上記分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物として、オキサゾリン基含有化合物とカルボキシル基含有化合物及び/又はフェノール性水酸基含有化合物とを反応させて得られる、アミド結合を有するジ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物は、より優れた解像度が得られるとともに、硬化物がより高いガラス転移温度を有し、より十分なモールド耐性が得られる。
【0019】
また、本発明の感光性樹脂組成物において、上記(A)ポリアミック酸は、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物を含むことが好ましい。
【化4】



[式(3)中、Arは下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される4価の有機基を示し、Arは下記一般式(6)、下記一般式(7)、下記一般式(8)又は下記一般式(9)で表される2価の有機基を示し、kは1以上の整数を示す。なお、kが2以上の場合、複数存在するAr及びArはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化5】



[式(4)中、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化6】



(R13は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)のいずれかを示し、R11及びR12は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m2及びn2は各々独立に、1〜3の整数を示す。なお、m2が2以上の場合、複数存在するR11は同一でも異なっていてもよく、n2が2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよい。]
【化7】



[式(5)中、Xは炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R14及びR15は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m3及びn3は各々独立に、1〜3の整数を示す。なお、m3が2以上の場合、複数存在するR14は同一でも異なっていてもよく、n3が2以上の場合、複数存在するR15は同一でも異なっていてもよい。]
【化8】



[式(6)中、Yは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化9】



(R13は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)のいずれかを示し、R16及びR17は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、p及びqは各々独立に、1〜4の整数を示す。なお、pが2以上の場合、複数存在するR16は同一でも異なっていてもよく、qが2以上の場合、複数存在するR17は同一でも異なっていてもよい。]
【化10】



[式(7)中、Zは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化11】



(R13は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)のいずれかを示し、R18、R19、R20及びR21は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、r、s、t及びuは各々独立に、1〜4の整数を示す。なお、rが2以上の場合、複数存在するR18は同一でも異なっていてもよく、sが2以上の場合、複数存在するR19は同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するR20は同一でも異なっていてもよく、uが2以上の場合、複数存在するR21は同一でも異なっていてもよい。]
【化12】



[式(8)中、R22は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、vは1〜3の整数を示す。なお、vが2以上の場合、複数存在するR22は同一でも異なっていてもよい。]
【化13】



[式(9)中、Zは単結合又は2価の有機基を示し、Y及びYは各々独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示す。]
【0020】
かかる感光性樹脂組成物は、(A)ポリアミック酸として上記一般式(3)で表される構造を有する化合物を含むことにより、得られる樹脂硬化物の吸水率をより低減させることができる。また、かかる感光性樹脂組成物は、露光時の感度に優れ、厚膜でより解像度よく像形成を行うことができる。
【0021】
ここで、上記一般式(9)中の上記Zは、下記一般式(10)、下記一般式(11)又は下記一般式(12)で表される2価の有機基であることが好ましい。
【化14】



[式(10)中、R23は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w1は1〜4の整数を示す。なお、w1が2以上の場合、複数存在するR23は同一でも異なっていてもよい。]
【化15】



[式(11)中、R24は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w2は1〜4の整数を示す。なお、w2が2以上の場合、複数存在するR24は同一でも異なっていてもよい。]
【化16】



[式(12)中、R25は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w3は1〜4の整数を示す。なお、w3が2以上の場合、複数存在するR25は同一でも異なっていてもよい。]
【0022】
かかる感光性樹脂組成物は、(A)ポリアミック酸として上記一般式(10)、(11)及び(12)で表される構造のうちの少なくとも一種の構造を有する化合物を含むことにより、得られる樹脂硬化物の吸水率をより低減させることができる。
【0023】
本発明はまた、上記本発明の感光性樹脂組成物からなる樹脂硬化物を備えるSAWフィルタを提供する。かかるSAWフィルタは、その構成材料である樹脂硬化物が上記本発明の感光性樹脂組成物からなるものであるため、吸水率が十分に低く、優れた耐湿熱性を得ることができ、電極の腐食を十分に抑制することができる。また、ガラス転移温度が高く、優れた耐モールド圧性を持ち、中空潰れを十分に抑制することができる。
【0024】
本発明は更に、基板上に、上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層し、該感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめ、次いで、上記感光性樹脂組成物層の上記露光部以外の部分を有機溶剤系の現像液を用いて除去した後、上記感光性樹脂組成物層の上記露光部を熱硬化させて樹脂硬化物を形成する工程を含む、SAWフィルタの製造方法を提供する。かかる製造方法によれば、上記本発明の感光性樹脂組成物を用いているため、有機溶媒を用いた溶剤現像が可能であり、厚膜で解像度よく像形成が可能であるとともに、比較的低温(例えば200℃以下)で硬化して樹脂硬化物を形成することができるうえ、硬化物は高いガラス転移温度を有する。そのため、SAWフィルタの製造工程での電極の腐食や帯電、樹脂封止時の中空潰れを十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、溶剤現像に対応可能であり、低温硬化可能であり、吸水率が十分に低く、耐湿熱性に優れ、ガラス転移温度が高く、厚膜で解像度よく像形成が可能な感光性樹脂組成物、それを用いたSAWフィルタ及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0027】
(感光性樹脂組成物)
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリアミック酸(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)重合性化合物(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)光重合開始剤(以下、場合により「(C)成分」という)と、を含有し、上記(B)重合性化合物が、分子内にアミド結合およびエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を含むものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0028】
(A)ポリアミック酸は、例えば、(a1)テトラカルボン酸二無水物成分と(a2)ジアミン成分とを反応させて得ることができる。
【0029】
上記(a1)テトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸無水物、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物,3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物(4,4’−オキシジフタル酸二無水物)、2,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ノナン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]デカン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]トリデカン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]テトラデカン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ペンタデカン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]−2−メチルデカン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]−2−メチルオクタン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]−2−エチルペンタデカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ドデカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]デカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]トリデカン二無水物、2,2−ビス[3,5−ジエチル−4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ペンタデカン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]シクロヘキサン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]プロピルシクロヘキサン二無水物、1,1−ビス[4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル]ヘプチルシクロヘキサン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、4,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
上記(a2)ジアミン成分としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−チレンビス(シクロヘキシルアミン)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(3−アミノフェニル)エーテル、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’−ジアミノジエチルスルフィド、2,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、o−トルイジンスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ジアミノジベンジルスルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、1,2−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,5−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,3−ジアミノ−2−フェニルナフタレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、1−メトキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジメチルベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジメチルベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−メチルベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、1,4−ビス(2−メトキシ−4−アミノペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、o−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)デカフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(5−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタ−1−エン−3−イン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
ここで、(a1)テトラカルボン酸二無水物成分及び(a2)ジアミン成分のどちらか若しくは両方の主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を含有させれば、低温硬化性、可撓性、低吸水率、低反り性及び熱圧着時のレジスト濡れ性を実現することができる。
【0032】
また、(a1)テトラカルボン酸二無水物成分及び(a2)ジアミン成分のどちらか若しくは両方の主鎖に脂環式の炭化水素基及び/又は芳香族基を含有させれば、耐熱性をより向上させることができる。
【0033】
また、(A)ポリアミック酸は、ポリアルキレンオキシ基等のエーテル結合を含まないことが好ましい。エーテル結合は、高温で結合が壊れやすく、そのため、樹脂の耐熱性(5%質量減少温度)が低下する要因となる。さらに、エーテル結合を有すると、吸水し易く、絶縁特性(HAST)等に悪影響を及ぼす要因ともなる。このようなエーテル結合を含まない炭素数5〜20のアルキレン基を有するポリアミック酸としては、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0034】
【化17】



【0035】
一般式(3)中、Arは下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される4価の有機基を示し、Arは下記一般式(6)、下記一般式(7)、下記一般式(8)又は下記一般式(9)で表される2価の有機基を示し、kは1以上の整数を示す。なお、kが2以上の場合、複数存在するAr及びArはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0036】
【化18】



【0037】
一般式(4)中、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化19】



(R13は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)のいずれかを示し、R11及びR12は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m2及びn2は各々独立に、1〜3の整数を示す。なお、m2が2以上の場合、複数存在するR11は同一でも異なっていてもよく、n2が2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよい。
【0038】
【化20】



【0039】
一般式(5)中、Xは炭素数5〜20のアルキレン基を示すが、好ましくは炭素数6〜12のアルキレン基を示す。また、R14及びR15は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示す。更に、m3及びn3は各々独立に、1〜3の整数を示す。なお、m3が2以上の場合、複数存在するR14は同一でも異なっていてもよく、n3が2以上の場合、複数存在するR15は同一でも異なっていてもよい。
【0040】
【化21】



【0041】
一般式(6)中、Yは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化22】



(R13は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)のいずれかを示し、R16及びR17は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、p及びqは各々独立に、1〜4の整数を示す。なお、pが2以上の場合、複数存在するR16は同一でも異なっていてもよく、qが2以上の場合、複数存在するR17は同一でも異なっていてもよい。
【0042】
【化23】



【0043】
一般式(7)中、Zは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化24】



(R13は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)のいずれかを示し、R18、R19、R20及びR21は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、r、s、t及びuは各々独立に、1〜4の整数を示す。なお、rが2以上の場合、複数存在するR18は同一でも異なっていてもよく、sが2以上の場合、複数存在するR19は同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するR20は同一でも異なっていてもよく、uが2以上の場合、複数存在するR21は同一でも異なっていてもよい。
【0044】
【化25】



【0045】
一般式(8)中、R22は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、vは1〜3の整数を示す。なお、vが2以上の場合、複数存在するR22は同一でも異なっていてもよい。
【0046】
【化26】



【0047】
一般式(9)中、Zは単結合又は2価の有機基を示すが、好ましくは下記一般式(10)、(11)又は(12)で表される2価の有機基を示す。また、Y及びYは各々独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示すが、好ましくは炭素数6〜16のアルキレン基を示す。Zが下記一般式(10)、(11)及び/又は(12)で表される基である上記一般式(9)の構造を有するポリアミック酸を用いることにより、低温硬化性(例えば200℃以下)、低反り性、耐熱性(5%質量減少温度)、絶縁性及び低吸水性をより向上させることができる。
【0048】
【化27】



【0049】
一般式(10)中、R23は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w1は1〜4の整数を示す。なお、w1が2以上の場合、複数存在するR23は同一でも異なっていてもよい。
【0050】
【化28】



【0051】
一般式(11)中、R24は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w2は1〜4の整数を示す。なお、w2が2以上の場合、複数存在するR24は同一でも異なっていてもよい。
【0052】
【化29】



【0053】
一般式(12)中、R25は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w3は1〜4の整数を示す。なお、w3が2以上の場合、複数存在するR25は同一でも異なっていてもよい。
【0054】
また、上述した主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を有する(a1)テトラカルボン酸二無水物成分としては、下記一般式(13)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【化30】



[式(13)中、Xは炭素数5〜20のアルキレン基を示す。]
【0056】
上記一般式(13)で表される化合物としては、例えば、ペンタメチレンビストリメリテート二無水物、ヘキサメチレンビストリメリテート二無水物、ヘプタメチレンビストリメリテート二無水物、オクタメチレンビストリメリテート二無水物、ノナメチレンビストリメリテート二無水物、デカメチレンビストリメリテート二無水物、ドデカメチレンビストリメリテート二無水物等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
上述した主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を有する(a2)ジアミン成分としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、下記一般式(14)、(15)又は(16)で表される化合物などが挙げられる。
【0058】
【化31】



[式(14)中、Y及びYは各々独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R23は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w1は1〜4の整数を示す。なお、w1が2以上の場合、複数存在するR23は同一でも異なっていてもよい。]
【0059】
【化32】



[式(15)中、Y及びYは各々独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R24は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w2は1〜4の整数を示す。なお、w2が2以上の場合、複数存在するR24は同一でも異なっていてもよい。]
【0060】
【化33】



[式(16)中、Y及びYは各々独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R25は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w3は1〜4の整数を示す。なお、w3が2以上の場合、複数存在するR25は同一でも異なっていてもよい。]
【0061】
上記一般式(15)で表される化合物としては、[3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)]シクロヘキセン(商品名「Versamine551」、コグニスジャパン(株)社製)が市販品として入手可能である。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
本発明に用いる(A)ポリアミック酸は、低温硬化性(例えば200℃以下)、低吸水性及び耐湿熱性の向上の観点から、上述のように、(a1)テトラカルボン酸二無水物成分と(a2)ジアミン成分との反応によって得られる、主鎖に炭素数5〜20のアルキレン基を有する化合物であることが好ましく、中でも、炭素数6〜16のアルキレン基を有する化合物であることがより好ましく、炭素数7〜14のアルキレン基を有する化合物であることが特に好ましい。炭素数が5未満のアルキレン基を有する場合では、得られる樹脂硬化物の吸水率、弾性率が上昇する傾向があり、炭素数が20を超えるアルキレン基を有する場合では、得られる樹脂硬化物の耐熱性等が低下する傾向がある。
【0063】
本発明に用いる(A)ポリアミック酸は、例えば、ほぼ等モルの(a1)テトラカルボン酸二無水物成分と(a2)ジアミン成分とを有機溶媒中で80℃以下、好ましくは60℃以下の反応温度にて1〜12時間付加重合反応させて得られる。
【0064】
上記(a1)テトラカルボン酸二無水物成分と、上記(a2)ジアミン成分とを反応させる際の溶媒としては、例えば、含窒素系溶剤類(N,N’−ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジエチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチレンホスホアミドN−メチルピロリドン等)、ラクトン類(γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等)、脂環式ケトン類(シクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン等)、エーテル類(3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテート等)などが挙げられる。これらの中でも、溶解性及び反応性の観点から、環状エステル系溶剤もしくは含窒素系溶剤類が好ましく、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
上記(a1)テトラカルボン酸二無水物成分と(a2)ジアミン成分との組み合わせは、最終硬化後のポリイミド樹脂膜(樹脂硬化物)の耐熱性、機械的特性、電気的特性を考慮して選択することが好ましい。
【0066】
また、(A)ポリアミック酸の接着性を向上させるために、(A)ポリアミック酸にアミノフェノール又はその誘導体を導入することが好ましい。アミノフェノール及びその誘導体としては、例えば、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール等が挙げられる。これらの中でも、接着性の観点から、m−アミノフェノールが好ましい。
【0067】
アミノフェノール又はその誘導体を導入する際の導入量は、(A)ポリアミック酸100モルに対して0.1〜10モルであることが好ましく、1〜5モルであることがより好ましく、2〜3モルであることが特に好ましい。アミノフェノール又はその誘導体の導入量が0.1モル未満では接着性の向上効果が不十分となる傾向があり、10モルを超えると現像性及び保存安定性が低下する傾向がある。
【0068】
(A)成分であるポリアミック酸の重量平均分子量は、10000〜60000であることが好ましく、20000〜50000であることがより好ましい。重量平均分子量が10000未満では硬化膜が脆くなる傾向があり、60000を超えると現像性が低下する傾向がある。
【0069】
感光性樹脂組成物において、(A)ポリアミック酸の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、20〜80質量部であることが好ましく、30〜60質量部であることがより好ましい。この含有量が20質量部未満であると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、現像性が低下する傾向にあり、含有量が80質量部を超えると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、解像度が低下したり、低温でのイミド化率が低下する傾向にある。
【0070】
本発明の感光性樹脂組成物において、(B)重合性化合物は、アミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を含むものである。このアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物において、分子内のアミド結合基数は2〜12であることが好ましく、4〜8であることがより好ましい。また、このアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物において、分子内のエチレン性不飽和基の数は、2〜6であることが好ましい。これらの条件を満たすことにより、アミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物は、(A)ポリアミック酸との相溶性及び現像性のバランスが良くなる傾向がある。なお、分子内のアミド基数が2未満であると、硬化物のガラス転移温度が低下する傾向があり、12を超えると、現像性が低下する傾向がある。また、分子内のエチレン性不飽和基の数が2未満であると、現像性が低下する傾向がある。
【0071】
上記分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0072】
【化34】



[式(1)中、R、R及びRは各々独立に、2価の有機基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。]
【0073】
上記一般式(1)で表される重合性化合物は、オキサゾリン基含有化合物とカルボキシル基含有化合物及び/又はフェノール性水酸基含有化合物とを反応させて得られる、アミド結合を有するジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。かかる上記一般式(1)で表される重合性化合物は、例えば、下記一般式(17)で表されるビスオキサゾリンと、1分子中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物と、(メタ)アクリル酸とを反応させることにより得ることができる。
【化35】



【0074】
一般式(17)中、Yは2価の有機基を示すが、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいピリジレン基、又は炭素数1〜10の枝分かれしていてもよいアルキレン基であることが好ましい。また、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。
【0075】
上記一般式(17)で表されるビスオキサゾリンとしては、例えば、2,2’−(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリン、2,6−ビス(4−イソプロピル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2−2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2−2’−イソプロピリデンビス(4−ターシャリーブチル−2−オキサゾリン)等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
上記1分子中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物としては、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシジメチルナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらの中でも特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
上述した分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
フェノール性水酸基含有化合物及び/又はカルボキシル基含有化合物とオキサゾリン基含有化合物との反応は、反応温度50〜200℃で行うのが好ましい。反応温度が50℃未満では反応が遅くなり、反応温度が200℃では副反応が多く生じてしまい好ましくない。場合により、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶剤中で反応を行ってもよい。
【0079】
また、(B)重合性化合物は、上述した分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物以外の他の重合性化合物を含んでいてもよい。他の重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマー、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、フタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用される。
【0080】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用される。
【0081】
ここで、「EO」とはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。また、「PO」とはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。
【0082】
上記グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂(a)と、(メタ)アクリル酸(b)と、を反応させて得られるエポキシアクリレート化合物などが挙げられる。また、上記エポキシアクリレート化合物のOH基に、テトラヒドロフタル酸無水物等の酸無水物を反応させて得られる酸変性エポキシアクリレート化合物を用いることもできる。このような酸変性エポキシアクリレート化合物としては、例えば、EA−6340(新中村化学製、商品名)が商業的に入手可能である。
【0083】
上記ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物;EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート;EO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート;カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート;ジオール化合物などが挙げられる。
【0084】
これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0085】
(B)重合性化合物において、分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物の含有量は、解像度、低吸水性及び耐湿熱性をより良好なものとする観点から、(B)重合性化合物全量を基準として40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。
【0086】
感光性樹脂組成物において、(B)重合性化合物の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、20〜80質量部であることが好ましく、40〜70質量部であることがより好ましい。この含有量が20質量部未満であると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、解像度が低下する傾向があり、含有量が80質量部を超えると、含有量が上記範囲内にある場合と比較して、耐湿熱性が低下する傾向にある。
【0087】
本発明における(C)成分である光重合開始剤は、活性光線により遊離ラジカルを生成するものであれば特に制限はなく、例えば、芳香族ケトン、アシルフォスフィンオキサイド、オキシムエステル類、キノン類、ベンゾインエーテル化合物、ベンジル誘導体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、アクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物が挙げられる。
【0088】
芳香族ケトンとしては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(すなわちミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンが挙げられる。
【0089】
アシルフォスフィンオキサイドとしては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシドが挙げられる
【0090】
オキシムエステル類としては、例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]が挙げられる。
【0091】
キノン類としては、例えば、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノンが挙げられる。
【0092】
ベンゾインエーテル化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルが挙げられる。
【0093】
ベンジル誘導体としては、例えば、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタールが挙げられる。
【0094】
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2−(2−クロロフェニル)−1−〔2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニル−1,3−ジアゾール−2−イル〕−4,5−ジフェニルイミダゾール等の2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾー
ル二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
【0095】
アクリジン誘導体としては、例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンが挙げられる。
【0096】
(C)光重合開始剤は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。入手可能な(C)光重合開始剤としては、例えば、イルガキュア−369、イルガキュア−907、イルガキュア−651、イルガキュア−819、イルガキュア−OXE−01(以上、いずれもチバスペシャリティーケミカルズ(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0097】
上述した(C)光重合開始剤の中でも、特に光硬化性の向上や高感度化の観点から、アシルフォスフィンオキサイドが好ましい。アシルフォスフィンオキサイドとしては、下記一般式(18)で表される化合物が好ましい。
【0098】
【化36】



【0099】
上記式(18)中、R31、R32及びR33は各々独立に1価の有機基を示し、h、i及びjは各々独立に0〜5の整数を示す。ここで、R31、R32及びR33で示される1価の有機基としては、炭化水素基が好ましく、炭素数1〜20の炭化水素基がより好ましい。かかる炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基が更に好ましい。また、h、i及びjの組み合わせとしては、hが0、iが0、jが3であることが好ましい。
【0100】
上記一般式(18)で表される化合物は、例えば、イルガキュア−819(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0101】
上述した(C)光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明において、レジスト形状を良好にできる観点からは、アシルフォスフィンオキサイドと、オキシムエステル類とを併用することが特に好ましい。
【0102】
感光性樹脂組成物において、(C)光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。(C)光重合開始剤の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、感光性樹脂組成物の感度が低下したり、相溶性が低下したりする傾向にある。
【0103】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、更に(D)架橋剤を加えてもよい。(D)架橋剤としては、特に制限されないが、エポキシ化合物、ブロック化イソシアネート化合物、オキサジン化合物、メチロール化合物、メラミン化合物などが挙げられる。エポキシ化合物として具体的には、HP−4032D(商品名、大日本インキ工業株式会社製、ナフタレン型エポキシ樹脂)が好ましい。また、ブロック化イソシアネート化合物として具体的には、BL−3175(商品名、住化バイエルウレタン株式会社製、ブロック化イソシアネート)が好ましい。オキサジン化合物としては、P−d型ベンゾオキサジン(商品名、四国化成工業株式会社製)が好ましい。また、メチロール化合物としては、TML−BPAF(商品名、本州化学工業株式会社製)が好ましい。メラミン化合物としてはニカラックMW−30HM(商品名、三和ケミカル社製)が好ましい。これらの架橋剤を添加すると、硬化後の感光性樹脂組成物の基板への密着性をより向上させることができ、架橋密度が向上し、剛直性や耐湿熱性が向上する。これらの(D)架橋剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0104】
感光性樹脂組成物に(D)架橋剤を含有させる場合、その含有量は、(A)ポリアミック酸100質量部に対して、5〜40質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。(D)架橋剤の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、キュア(硬化)後の硬化膜が脆くなったり、解像度が低下する傾向がある。
【0105】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、更に(E)増感剤を加えることができる。(E)増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’−カルボニルビス(ジエチルアミノクマリン)などが挙げられる。(E)増感剤としては、感光性樹脂組成物の感度、及び、溶剤との相溶性等の観点から、クマリン類が好ましく、クマリン102(商品名、アクロス社製)が特に好ましい。これらの(E)増感剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0106】
感光性樹脂組成物における(E)増感剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として0.1〜1質量%であることが好ましい。(E)増感色素の含有量が上記範囲を外れると、含有量が上記範囲内である場合と比較して、感光性樹脂組成物の感度が低下したり、溶剤との相溶性が低下する傾向がある。
【0107】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述した(A)ポリアミック酸、(B)重合性化合物、(C)光重合開始剤、必要に応じて用いられる(D)架橋剤、並びに、必要に応じて用いられる(E)増感剤を、溶媒とともに混合することにより得ることができる。
【0108】
このときに用いられる溶媒としては特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを主成分とする極性溶媒や、γ−ブチロラクトンなどの溶媒が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0109】
また、感光性樹脂組成物には、必要に応じて、感光性樹脂組成物と基板との接着性を向上させるために、接着助剤を添加してもよい。接着助剤としては、例えば、γ−グリシドキシシラン、アミノシラン、γ−ウレイドシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。
【0110】
(SAWフィルタ及びその製造方法)
図1は、本発明のSAWフィルタの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、SAWフィルタ100は、基板10と、該基板10上に形成された櫛形電極20と、基板10上の櫛形電極20が形成されている部分に中空空間を形成するためのリブ部30及び蓋部40と、櫛形電極20に電気的に接続された配線50と、を備えている。そして、リブ部30及び蓋部40は、本発明の感光性樹脂組成物からなる樹脂硬化物で構成されている。
【0111】
上記基板10としては、例えば、タンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板、ガリウム砒素基板等の圧電性基板が用いられる。上記櫛形電極20の材質としては、例えば、アルミニウム等が用いられる。上記配線50の材質としては、例えば、鉛−スズ、はんだ等が用いられる。
【0112】
次に、上記SAWフィルタ100の製造方法について説明する。図2(a)〜(c)は、本発明のSAWフィルタ100の製造方法の好適な一実施形態を示す工程図である。
【0113】
まず、図2(a)に示すように、櫛形電極20が形成された基板10上に本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層32を積層する。
【0114】
ここで、感光性樹脂組成物の塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、浸漬塗布、ロールコーティングなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
また、感光性樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートなどの有機フィルムに塗布し、乾燥して溶剤を除去することによりドライフィルムレジストとし、それを基板10に貼り付けることも可能である。
【0116】
塗布膜厚は、塗布手段、感光性樹脂組成物の固形分濃度及び粘度等によって異なるが、通常、乾燥後の被膜(感光性樹脂組成物層)の膜厚が1〜300μmになるように塗布される。乾燥後の被膜の膜厚が1〜300μmになるようにするためには、本発明の感光性樹脂組成物を溶剤で溶解させ、粘度を1〜50Pa・sに調節することが好ましく、20〜40Pa・sに調節することがより好ましい。また、感光性樹脂組成物の固形分濃度は、20〜70質量%にすることが好ましく、30〜60質量%にすることがより好ましい。得られる被膜の膜厚が300μmを超えると、解像度が低下する傾向がある。
【0117】
基板10上に感光性樹脂組成物を塗布した後、被膜を乾燥して、感光性樹脂組成物層32を得る。乾燥は、オーブン、ホットプレートなどを使用し、60〜120℃の範囲で1分〜1時間行うことが好ましい。
【0118】
次に、図2(a)に示すように、必要に応じて所望のパターンを有するネガマスク60を介して感光性樹脂組成物層32の所定部分に活性光線を照射し、露光部を光硬化せしめる。
【0119】
ここで、露光に用いられる活性光線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。これらの中でも特に、紫外線、可視光線が好ましい。
【0120】
次に、図2(b)に示すように、感光性樹脂組成物層32の露光部以外の部分(未露光部)を有機溶剤系の現像液を用いて除去することによりパターンを形成した後、感光性樹脂組成物層32の露光部を熱硬化させ、樹脂硬化物からなるリブ部30を形成する。
【0121】
ここで、現像液としては、N−メチルピロリドン、エタノール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートのような有機溶剤を使用することができる。これらの中でも、アルミ配線の腐食をより確実に防ぐために、感光性樹脂組成物層32の現像には、シクロヘキサノンを用いることが好ましい。
【0122】
また、現像後、必要に応じて、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールや、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテートなどでリンスすることが好ましい。
【0123】
現像後の熱硬化(キュア)は、温度を選択して段階的に昇温しながら1〜2時間実施することが好ましい。熱硬化は、120〜200℃で行うことが好ましい。加熱温度を段階的に昇温する場合、例えば、120℃、150℃、180℃で各20分間熱処理した後、200℃で60分間熱処理を行うことが好ましい。
【0124】
次に、図2(c)に示すように、リブ部30上に蓋部40を設けて中空構造を形成する。以上の工程を経て、SAWフィルタの中空構造作製を完了する。
【0125】
ここで、蓋部40は、例えば、予め本発明の感光性樹脂組成物を成膜してフィルム化したものを用いて作製することができる。すなわち、このフィルム化した感光性樹脂組成物を、リブ30の上部に貼り付けしてから、露光、現像、熱硬化して蓋部40を形成することができる。
【0126】
また、蓋部40とリブ部30との接着は、例えば、ロールラミネーターを用いた熱圧着による接着等により行うことができる。
【0127】
なお、蓋部40は、本発明の感光性樹脂組成物以外の材料で構成されたものであってもよい。但し、蓋部40は、耐湿熱性に優れ、且つ、吸水率の低い材料で構成されていることが好ましい。また、蓋部40としては、セラミック等の封止用基板を用いることもできる。本発明の感光性樹脂組成物により形成されたパターンは、少なくともSAWフィルタの中空構造形成用のリブ材に用いられる。
【0128】
上記のように作製されたSAWフィルタは、封止材により封止される。上記封止は、一般的に以下の工程で行うが、これに限定されるものではない。
【0129】
(1)SAWフィルタを成形金型にセットする。(2)成形機のポットに固形状の封止材タブレットをセットする。(3)金型温度170〜180℃の条件で封止材を溶融し、圧力をかけて金型に流し込む(モールド)。(4)30〜120秒間加圧して封止材が熱硬化後に金型を開き、成形品を取り出すことで、SAWフィルタの封止が完了する。
【0130】
この際に、蓋部40及び/又はリブ部30は、金型温度170〜180℃でのモールド耐性が要求される。すなわち、蓋部40及び/又はリブ部30を感光性樹脂組成物で作製した場合、蓋部40及び/又はリブ部30は、170〜180℃の温度で変形しないことが望ましく、そのような特性を得るためには、蓋部40及び/又はリブ部30のガラス転移温度が180℃以上であることが好ましい。また、180℃における弾性率は、100MPa以上であることが好ましく、200MPa以上であることがより好ましく、300MPa以上であることが特に好ましい。180℃における弾性率の上限は特に限定されないが、実用的な観点からは10GPa以下である。
【0131】
以上のように、本発明によれば、SAWフィルタ製造工程において、溶剤現像液を用いたフォトリソグラフィにより圧電基板に厚膜リブパターンを一括形成でき、さらにその上からフィルム状に形成した感光性樹脂組成物の硬化物(もしくは、セラミック等の封止用基板)で封止することにより、中空構造を形成することができる。また、この中空空間内は周囲の樹脂組成物により防湿されるため、アルミ電極の腐食を抑制することができる。
【実施例】
【0132】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の合成例において、ポリアミック酸の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して求めた。
【0133】
[ポリアミック酸の合成]
(合成例1)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに、バーサミン551(商品名、[3,4−ビス(1−アミノヘプチル)−6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)]シクロヘキセン、コグニスジャパン社製)を15.73g(0.028mol)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン3.54g(0.014mol)、及び、N−メチルピロリドン30.0gを加えて室温で15分間攪拌した。次に、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート)二無水物22.24g(0.043mol)、及び、N−メチルピロリドン30.00gの混合溶液を15分間かけて添加した。添加終了後、得られた混合液を60℃まで昇温し、8時間攪拌することで、ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液を得た。得られた溶液中の固形分は40質量%であり、ポリアミック酸の重量平均分子量は29000、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.7であった。なお、「バーサミン551」は、下記式(19)で表される化合物及び/又は下記式(19)で表される化合物の不飽和部が水添された化合物を含むジアミン化合物である。
【0134】
【化37】



【0135】
(合成例2)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに、バーサミン551を19.61g(0.035mol)及びN−メチルピロリドン30gを加えて室温で15分間攪拌した。次に、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート)二無水物20.39g(0.039mol)、及び、N−メチルピロリドン30.00gの混合溶液を15分間かけて添加した。添加終了後、得られた混合液を60℃まで昇温し、8時間攪拌することで、ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液を得た。得られた溶液中の固形分は40質量%であり、ポリアミック酸の重量平均分子量は33000、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は3.4であった。
【0136】
(合成例3)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン12.89g(0.052mol)、m−アミノフェノール0.11g(0.001mol)、及び、γ−ブチロラクトン10.0gを加えて40℃で15分間攪拌した。次に、4,4’−オキシジフタル酸二無水和物16.44g(0.053mol)、及び、γ−ブチロラクトン29.66mLの混合溶液を15分間かけて添加した。添加終了後、60℃まで昇温し、5時間攪拌することで、ポリアミック酸のγ−ブチロラクトン溶液を得た。得られた溶液中の固形分は40質量%であり、ポリアミック酸の重量平均分子量は36000、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.8であった。
【0137】
(合成例4)
1Lの4つ口セパラブルフラスコに、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン128.90g(0.42mol)、1,12−ドデカンジアミン20.00g(0.10mol)、m−アミノフェノール1.09g(0.01mol)、及び、γ−ブチロラクトン100.0gを加えて50℃で15分間攪拌した。次に、4,4’−オキシジフタル酸二無水和物164.40g(0.53mol)、及び、γ−ブチロラクトン371.6gの混合溶液を15分間かけて添加した。添加終了後、60℃まで昇温し、5時間攪拌することで、ポリアミック酸のγ−ブチロラクトン溶液を得た。得られた溶液中の固形分は40質量%であり、ポリアミック酸の重量平均分子量は32000、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は2.0であった。
【0138】
(分子量測定)
合成例1〜4で合成したポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して求めた。GPCの条件を以下に示す。
【0139】
(GPC条件)
検出器:LV4000 UV Detector(日立製作所社製、商品名)
ポンプ:L6000 Pump(日立製作所社製、商品名)
C−R4A Chromatopack(島津製作所製、商品名)
カラム:Gelpack GL−S300MDT−5(計2本)(日立化成工業社製、商品名)
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)+LiBr(0.03mol/L)+HPO(0.06mol/L)
流量:1mL/分
【0140】
[実施例1〜5及び比較例1〜5]
上記各合成例で合成した(A)ポリアミック酸の溶液、(B)重合性化合物、及び、(C)光重合開始剤を、それぞれ下記表1に示した配合割合(質量部)で混合し、実施例1〜5及び比較例1〜5の感光性樹脂組成物の溶液を得た。なお、表1中の数字は固形分の質量部を示している。また、表1中の各成分は、以下に示すものである。
【0141】
BPA−BDAM(合成品、アミドアクリレート)、
TMCH−5R(商品名、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジメタノール、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートから合成されたウレタンアクリルオリゴマー、日立化成工業株式会社製)、
FA−129A(商品名、1,9−ノナンジオールジアクリレート、日立化成工業株式会社製)、
DPE−6A(商品名、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、共栄社化学株式会社製)、
EA−6340(商品名、酸変性エポキシアクリレート、中村化学工業株式会社製)、
I−819(商品名、ビスアシルフォスフィンオキサイド、チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)。
【0142】
ここで、BPA−BDAMは以下の方法で合成したものである。温度計、撹拌装置の付いた1リットルの反応容器に、1,3−フェニレンビスオキサゾリン380.0g(2.0mol)とビスフェノールA228.0g(1.0mol)とを入れ、150℃で10時間撹拌した。その後、メトキノン(500ppm)とメタクリル酸140.0g(2.0mol)とを加えて100℃で6時間撹拌し、ジメチルアセトアミド190gを滴下して、さらに100℃で6時間撹拌し、酸価が1.1mgKOH/gになったところで撹拌を止めて、光重合性不飽和化合物である下記式(20)で表される化合物(BPA−BDAM)の溶液を得た。得られた溶液の固形分は80質量%であった。
【0143】
【化38】



【0144】
【表1】



【0145】
<耐溶剤性の評価>
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、110℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚30μm、サイズ10mm×10mmの感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層を形成した試験基板について、ウシオ電機社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて露光量600mJ/cmで感光性樹脂組成物層の露光を行い、光硬化させた。次いで、この感光性樹脂組成物層の硬化膜が形成されたシリコン基板を1cm角にカットして試験片を得た。この試験片を、有機溶剤系現像液であるシクロヘキサノンに浸漬し、光硬化後の感光性樹脂組成物層(レジスト)の剥離及び膨潤の有無を確認することで、下記の基準に基づいて耐溶剤性を評価した。その結果を表2に示す。
A:5分経過後もレジストの剥離及び膨潤がない。
B:1〜5分の間にレジストが剥離及び/又は膨潤した。
C:1分以内にレジストが剥離及び/又は膨潤した。
【0146】
<解像度の評価>
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、110℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚30μmの感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層を形成した試験基板について、ホール径80μmφの開口パターンを有するネガマスクを介して、ウシオ電機社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて露光量600mJ/cmで感光性樹脂組成物層の露光を行った。この試験基板を、有機溶剤系現像液であるシクロヘキサノンに5分間浸漬して現像を行った。現像後のレジストパターンを観察し、下記の基準に基づいて耐溶剤性を評価した。その結果を表2に示す。
A:ホール径80μmφが開口しており、現像後残渣もない。
B:ホール径80μmφは開口しているが、現像後残渣がある。
C:ホール径80μmφが開口していない。
【0147】
<ガラス転移温度及び弾性率の測定>
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、110℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚30μmの感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層を形成した試験基板について、ウシオ電機社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて露光量600mJ/cmで感光性樹脂組成物層の露光を行い、光硬化させた。得られた感光性樹脂組成物層の硬化膜をシリコン基板から剥離し、剥離した硬化膜のガラス転移温度(Tg)をセイコー社製TMA−120で測定した。なお、ガラス転移温度の測定は、Extention:10g、5℃/min、試料サイズ:1cm丈×2mm幅の条件にて行った。また、剥離した硬化膜の弾性率を粘弾性試験器(TA instruments社製、商品名:RSA−III)により測定した。なお、弾性率の測定は、試験モード:引張り、試験温度:室温〜300℃、昇温速度:5℃/min、試験周波数:1Hz、チャック間距離:20mmの条件にて行った。これらの結果を表2に示す。
【0148】
<耐湿熱性の評価>
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、110℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚30μmの感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層を形成した試験基板について、ウシオ電機社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて露光量600mJ/cmで感光性樹脂組成物層の露光を行い、光硬化させた。その後、感光性樹脂組成物層を、120℃で40分間、続いて200℃で60分間加熱して硬化させた。この試験基板を、121℃、100%RH、2気圧の条件下に200時間放置した後、硬化膜の外観を目視にて評価し、更に接着性をJIS K5400(1990年)に準拠した碁盤目試験にて評価した。評価基準は以下の通りである。その結果を表2に示す。
【0149】
(外観)
A:硬化膜に濁り、剥離、膨れ、クラックが見られない。
B:硬化膜に若干の濁り、剥離、膨れ、クラックの、どれか一つでも見られる。
C:硬化膜に濁り、剥離、膨れ、クラックの、どれか一つでも見られる。
【0150】
(碁盤目試験)
テープ剥離後の残マス数が、
A:100/100(剥離無し)。
B:≧90/100(1〜10マスの剥離)。
C:<90/100(剥離が10マスよりも多い)。
【0151】
<吸水率の測定>
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、アプリケーターを用いて、厚さ1mmのガラス板上に均一に塗布し、110℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚30μmの感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層を形成した試験基板について、ウシオ電機社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて露光量600mJ/cmで感光性樹脂組成物層の露光を行い、光硬化させた。その後、感光性樹脂組成物層を、120℃で40分間、続いて200℃で60分間加熱して硬化させた。この試験基板を精製水に24時間浸漬し、浸漬前後での質量変化から下記式(I)により吸水率を求め、その値から下記の基準に基づいて吸水率を評価した。その結果を表2に示す。
吸水率(%)=(浸漬後硬化膜質量−浸漬前硬化膜質量)/(浸漬前硬化膜質量)×100 (I)
A:吸水率<0.8%。
B:0.8%≦吸水率≦1.2%。
C:吸水率>1.2%。
【0152】
【表2】



【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明のSAWフィルタの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明のSAWフィルタの製造方法の好適な一実施形態を示す工程図である。
【符号の説明】
【0154】
10…基板、20…櫛形電極、30…リブ部、32…感光性樹脂組成物層、40…蓋部
50…配線、100…SAWフィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミック酸と、(B)重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有し、
前記(B)重合性化合物が、分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)重合性化合物が、前記分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物として、下記一般式(1)で表される化合物を含む、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【化1】



[式(1)中、R、R及びRは各々独立に、2価の有機基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。]
【請求項3】
前記一般式(1)中、Rは置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基又は下記一般式(2)で表される基であり、R及びRは各々独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいピリジレン基又は炭素数1〜10の枝分かれしていてもよいアルキレン基である、請求項2記載の感光性樹脂組成物。
【化2】



[式(2)中、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化3】



のいずれかを示し、R及びRは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子を示し、m1及びn1は各々独立に、1〜4の整数を示す。なお、m1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよく、n1が2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項4】
前記(B)重合性化合物が、前記分子内にアミド結合及び2以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物として、オキサゾリン基含有化合物とカルボキシル基含有化合物及び/又はフェノール性水酸基含有化合物とを反応させて得られる、アミド結合を有するジ(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)ポリアミック酸が、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】



[式(3)中、Arは下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される4価の有機基を示し、Arは下記一般式(6)、下記一般式(7)、下記一般式(8)又は下記一般式(9)で表される2価の有機基を示し、kは1以上の整数を示す。なお、kが2以上の場合、複数存在するAr及びArはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【化5】



[式(4)中、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化6】



(R13は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)のいずれかを示し、R11及びR12は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m2及びn2は各々独立に、1〜3の整数を示す。なお、m2が2以上の場合、複数存在するR11は同一でも異なっていてもよく、n2が2以上の場合、複数存在するR12は同一でも異なっていてもよい。]
【化7】



[式(5)中、Xは炭素数5〜20のアルキレン基を示し、R14及びR15は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、m3及びn3は各々独立に、1〜3の整数を示す。なお、m3が2以上の場合、複数存在するR14は同一でも異なっていてもよく、n3が2以上の場合、複数存在するR15は同一でも異なっていてもよい。]
【化8】



[式(6)中、Yは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化9】



(R13は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)のいずれかを示し、R16及びR17は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、p及びqは各々独立に、1〜4の整数を示す。なお、pが2以上の場合、複数存在するR16は同一でも異なっていてもよく、qが2以上の場合、複数存在するR17は同一でも異なっていてもよい。]
【化10】



[式(7)中、Zは単結合、−O−、−S−、−SO−、−CH−、
【化11】



(R13は炭素数5〜20のアルキレン基を示す。)のいずれかを示し、R18、R19、R20及びR21は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、r、s、t及びuは各々独立に、1〜4の整数を示す。なお、rが2以上の場合、複数存在するR18は同一でも異なっていてもよく、sが2以上の場合、複数存在するR19は同一でも異なっていてもよく、tが2以上の場合、複数存在するR20は同一でも異なっていてもよく、uが2以上の場合、複数存在するR21は同一でも異なっていてもよい。]
【化12】



[式(8)中、R22は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、vは1〜3の整数を示す。なお、vが2以上の場合、複数存在するR22は同一でも異なっていてもよい。]
【化13】



[式(9)中、Zは単結合又は2価の有機基を示し、Y及びYは各々独立に炭素数5〜20のアルキレン基を示す。]
【請求項6】
前記一般式(9)中の前記Zが、下記一般式(10)、下記一般式(11)又は下記一般式(12)で表される2価の有機基である、請求項5記載の感光性樹脂組成物。
【化14】



[式(10)中、R23は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w1は1〜4の整数を示す。なお、w1が2以上の場合、複数存在するR23は同一でも異なっていてもよい。]
【化15】



[式(11)中、R24は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w2は1〜4の整数を示す。なお、w2が2以上の場合、複数存在するR24は同一でも異なっていてもよい。]
【化16】



[式(12)中、R25は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、w3は1〜4の整数を示す。なお、w3が2以上の場合、複数存在するR25は同一でも異なっていてもよい。]
【請求項7】
SAWフィルタの形成に用いられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる樹脂硬化物を備えるSAWフィルタ。
【請求項9】
基板上に、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層し、該感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめ、次いで、前記感光性樹脂組成物層の前記露光部以外の部分を有機溶剤系の現像液を用いて除去した後、前記感光性樹脂組成物層の前記露光部を熱硬化させて樹脂硬化物を形成する工程を含む、SAWフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−145522(P2010−145522A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319933(P2008−319933)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】