抗片頭痛薬及び鎮吐薬の輸送用被覆経膣デバイス並びに片頭痛及び嘔吐の治療方法
膣粘膜を通じて子宮及び/又は全身循環に抗片頭痛薬又は鎮吐薬を輸送するための経膣デバイス。該デバイスは、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合したキャップ、フォーム、フィルム又はストリップを形成する流体不浸透性材料の一層又は数層によって少なくとも部分的に被覆されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の輸送用被覆経膣デバイス並びに片頭痛及び吐気の治療方法に関する。膣タンポン、膣タンポン状フォーム又は別の経膣デバイスのような経膣デバイスは、抗片頭痛薬又は鎮吐薬又はこれらの組み合わせを含む組成物を添合した流体不浸透性被覆材料の一層又は数層によって全体に又は部分的に被覆されており、該組成物は前記薬物を膣粘膜を通して子宮及び/又は全身循環に輸送するために処方されている。特に、本発明は、前記薬物又はその組合せを含む組成物を添合した層、キャップ、カップ又はストリップを形成するフィルム、フォーム、キセロゲル又はフィルムのような流体不浸透性材料の一層又は数層によって全体又は部分的に被覆されたタンポン、タンポン状フォーム又はタンポン状デバイスのような経膣デバイスを用いる抗片頭痛薬又は鎮吐薬の子宮又は全身循環への標的輸送に関する。
【0002】
片頭痛及び/又は吐気の治療方法は、粘膜接着剤組成物を含む流体不浸透性層で被覆した経膣デバイスを膣に挿入する工程を備え、この場合前記組成物を前記不浸透性被覆層から子宮周辺に放出し、前記薬剤を経粘膜的に直接子宮及び/又は全身循環に輸送する。薬剤が子宮近傍に位置する不浸透性層内に濃縮されるので、不浸透性層は薬物放出の量的に更なる制御を可能にする。更に、不浸透性層は、デバイスの非薬物混入部分への薬物の再吸収を防ぎ、また該層が通常は子宮近傍のデバイスの近接端部に位置しているので、該薬物の子宮近傍の膣粘膜への接触を最大化することを保障する。かかる特徴は、経口投与に必要な薬物の濃度よりも低濃度で、従ってより低い全身濃度で片頭痛又は吐気を治療することを可能にし、また経口使用に必要な高濃度の抗片頭痛薬及び鎮吐薬によって引き起こされる副作用から患者を保護する。
【背景技術】
【0003】
片頭痛は、一時的な発作が頻発する慢性的な症状である。患者間でその特徴が異なるなかなか予測できない病気である。かかる予測不能性及びばらつきは、独身患者に見られる片頭痛発作でもまた観察される。片頭痛の最も際だった特徴は、嘔吐並びに音及び光に対する極度の敏感さを伴う又は伴わない頭痛及び吐気に伴って起きる潜在的な身体障害である(非特許文献1)。症状のばらつき及び複雑さゆえ、片頭痛持ちの患者の効果的な処置が課題になっている。
【0004】
“主要な頭痛”と見られている片頭痛は、女性に男性の約3倍の頻度で起こる。片頭痛の発生率は地理的に大きく変化し、東南アジアの1.5%から西洋諸国の14%にまで及んでいる(非特許文献2,3及び4)。
【0005】
患者への抗片頭痛薬及び鎮吐薬の経口的な全身投与は、一つには片頭痛が嘔吐を伴うことが多く、経口投与した薬物がその効能を取り得る前に嘔吐されてしまうため、あまりうまくいっていなかった。片頭痛及び/又は吐気を治療するための唯一実現可能な投与経路は、静脈投与又は別の注射可能な投与である。これらは、一般に診療所又は病院への訪問を必要とする。従って、片頭痛又は吐気をうまく治療できないのは、薬効よりもむしろ輸送方法に基づく。
【0006】
膣粘膜を介して子宮及び/又は全身循環への経膣薬物輸送経路が本発明者等によって発見され、例えば特許文献1、2、3、4、及び5に開示されており、これら全てをここに引用して援用する。
【0007】
上記特許文献及び出願書類に記載された経膣輸送経路には依然として改善の必要があり、これは特に効果的な定量薬物輸送に関する。
【0008】
従って、本発明は、抗片頭痛薬及び鎮吐薬の膣粘膜を介した子宮又は全身循環への直接的な改善された経粘膜的な輸送に関するもので、経膣デバイスの近位部を被覆した一つ又はそれ以上の不浸透層内での薬物のより定量化隔離により更に効果的になる。
【0009】
それゆえ、本発明の主目的は、ストリップ若しくは着脱可能なキャップ又はカップを形成するフィルム、フォーム又はキセロゲルの流体不浸透性層によって被覆されるか、又は近位部が被覆されたタンポン、タンポン状フォーム又は別の経膣デバイスのような経膣デバイスを提供することにあり、この場合前記不浸透層が抗片頭痛薬又は鎮吐薬若しくはこれらの組み合わせを含む粘膜接着剤組成物を更に備え、前記組成物が前記層から膣粘膜を介して子宮及び/全身循環へほぼ定量的に放出、輸送される。
【0010】
【非特許文献1】頭痛、第39巻、1999年、p.720-727
【非特許文献2】GRIM、頭痛、第12巻、1992年、p.229
【非特許文献3】JAMA、第267巻、1992年、p.64-69
【非特許文献4】薬物経済学、第11巻、1997年、p.1-10(補遺.1)
【特許文献1】米国特許第6,086,909号公報
【特許文献2】米国特許第6,197,327号公報
【特許文献3】米国特許第6,572,874号公報
【特許文献4】米国特許継続出願番号10/600,849
【特許文献5】米国特許継続出願番号10/349,029
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明の一態様は、ストリップ若しくは着脱可能なカップ又はキャップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルのような不浸透性材料の一層又は数層で完全に又は部分的に被覆され、該層に治療量及び/又は一時的軽減量の抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を完全に又は部分的に添合した経膣デバイスである。
【0012】
本発明の他態様は、着脱可能なキャップ、カップ又はストリップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルのような流体不浸透性材料の一層又は数層によって被覆され、該層に膣壁を介して子宮及び/又は全身循環へ輸送するための治療量及び/又は一時的軽減量の抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む組成物を添合した経膣タンポン、タンポン状フォーム又は別の経膣デバイスである。
【0013】
本発明の更なる他態様は、着脱可能なキャップ、カップ又はストリップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルのような流体不浸透性材料の一層又は数層によって完全に又は子宮近位部が被覆され、該層に抗片頭痛薬又は鎮吐薬若しくはその組み合わせを含む粘膜接着剤組成物を添合した経膣デバイスを用いる子宮又は全身循環への薬物の標的輸送方法である。
【0014】
本発明の更なる他態様は、着脱可能なキャップ、カップ又はストリップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルのような流体不浸透性材料の一層又は数層によって近位部が被覆され、該層に抗片頭痛薬又は鎮吐薬若しくはその組み合わせ、又は片頭痛薬もしくは鎮吐薬の何れかと他の治療に効果的な薬剤もしくは製薬上適合した賦型剤との組み合わせを含む粘膜接着剤組成物を添合した膣タンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスを用いる子宮又は全身循環への薬物の標的輸送方法である。
【0015】
本発明のまた更なる態様は、経膣デバイスの近位部を被覆する不浸透性層に添合した抗片頭痛薬又は鎮吐薬若しくはこれらの組み合わせを含む粘膜接着剤組成物であり、この場合流体不浸透性被覆材料の不浸透性層が、着脱可能なキャップ、カップ又はストリップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルであり、前記組成物を上記層から定量的に放出して有効量の抗片頭痛薬又は鎮吐薬を子宮内に又は直接全身循環に輸送し、これによって消化管を迂回する。
【0016】
本発明のまた更なる態様は、経膣デバイスを被覆する不浸透性層に添合するための粘膜接着剤組成物であり、この場合該組成物が麦角アルカロイド、麦角アルカロイド誘導体、抗ヒスタミン剤、バルビツレート、非ステロイド抗炎症薬、鎮痛剤、セロトニン拮抗薬、ニューロキニン−1拮抗薬、カンナビノイド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)拮抗薬、ステロイド、交感神経用作用薬、鎮静剤及び抗てんかん薬からなる群から選択した抗片頭痛薬又は鎮吐薬、又はこれとメトクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、CP55940、SR144528、アプレピタント、シクリジン、プロメタジン、BIBN-4096BS、及びSB-(+)-273779からなる群より選択した鎮吐薬との組み合わせ及び/又は更に他の治療上効果的な薬剤もしくは薬剤上適合する賦型剤との組み合わせとを備える。
【0017】
本発明のまた更なる態様は、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴスチン、ブタルビタール、フェノバルビタール、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラク、イブプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、アセチルサリチル酸、フルルビプロフェン、トルフェナム酸、ブトルファノール、メペリジン、メタドン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ラザトリプタン、ゾルミトリプタン、アルモトリプタン、エレトリプタン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、イソメテプテン、クロルプロマジン、ジアゼパム、ドロペリドール、バルプロ酸、ガバペンチン、トピラメート、ジバルプロックスナトリウムからなる群より選択した抗片頭痛薬、又はメクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、CP55940、SR144528、アプレピタント、シクリジン、及びプロメタジン、BIBN-4096BS及びSB- (+) -273779からなる群より選択した鎮吐薬、又はそれらの組み合わせ、若しくはこれらと更に他の治療上効果的な薬剤との組み合わせを備える粘膜接着剤組成物である。
【0018】
本発明の他態様は、片頭痛又は例えば伝染病、妊娠、中毒、手術、放射線治療若しくは化学療法薬の投与のような他の健康状態に付随した片頭痛及び頭痛の痛み、吐気並びに嘔吐を治療、処置及び制御する方法であり、該方法は膣粘膜に粘膜接着剤組成物を添合した一層又は数層の不浸透性被覆材料で被覆又は部分的に被覆した経膣デバイスを接触させる工程を備え、ここで該組成物が麦角アルカロイド、麦角アルカロイド誘導体、抗ヒスタミン剤、バルビツレート、非ステロイド抗炎症薬、鎮痛剤、セロトニン拮抗薬、ニューロキニン−1拮抗薬、カンナビノイド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)拮抗薬、ステロイド、交感神経用作用薬、鎮静剤及び抗てんかん薬からなる群より選択した坑片頭痛薬またはこれと鎮吐薬との組み合わせ及び/又は更なる他の治療上効果的な薬剤もしくは薬剤上適合する賦型剤との組み合わせを含むもので、また薬剤を膣粘膜に又は膣粘膜を介して定量的に、制御された、急速又は緩徐に、持続的若しくはパルス的に輸送し得る時間前記デバイスと膣粘膜との接触を維持する工程を備え、ここで前記組成物が更に少なくとも一つの粘膜接着剤及び/又は一つの脂肪親和性もしくは親水性の担体及び/又は一つの浸透エンハンサー及び/又は任意の別の薬剤上適合する賦型剤を含む。
【0019】
本発明の更に他の態様は、片頭痛もしくは他の病気や体調に付随した片頭痛もしくは頭痛及び/又は吐気及び嘔吐に苦しんでいる女性患者を治療するための方法であり、該方法が粘膜接着剤組成物又は該組成物を添合した膣内デバイスを膣粘膜に接触させる工程を備え、前記粘膜接着剤組成物が少なくとも一つの抗片頭痛薬及び/又は一つの鎮吐薬を含む。
【0020】
本発明の更に他の態様は、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の輸送用粘膜接着剤組成物であり、該組成物が0.00001から45mg/体重1kg、好ましくは0.001から15mg/体重1kg、最も好ましくは0.1から8mg/体重1kgの単位量形態で、特に限定されないが、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴスチン、ブタルビタール、フェノバルビタール、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラク、イブプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、アセチルサリチル酸、フルルビプロフェン、トルフェナム酸、ブトルファノール、メペリジン、メタドン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ラザトリプタン、ゾルミトリプタン、アルモトリプタン、エレトリプタン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、イソメテプテン、クロルプロマジン、ジアゼパム、ドロペリドール、バルプロ酸、ガバペンチン、トピラメート、ジバルプロックスナトリウムからなる群より選択した抗片頭痛薬、又はメクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、CP55940、SR144528、アプレピタント、シクリジン、及びプロメタジン、BIBN-4096BS及びSB- (+) -273779からなる群より選択した鎮吐薬若しくはこれらの組み合わせ、又は更に他の治療上効果的な薬物及び/又は膣粘膜を通して女性患者に薬物を輸送するのに適した薬剤上適合した賦型剤との組み合わせを含み、前記組成物が主として有効量の抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬と、薬剤の膣粘膜に及びそれを介した輸送のために前記組成物の膣粘膜への接着を促進する少なくとも一つの粘膜接着剤と、又は少なくとも粘膜接着剤及び/又は浸透エンハンサー及び/又は脂肪親和性もしくは親水性の担体を含む混合物との組み合わせからなる。
【0021】
本発明の更に別の態様は、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の膣輸送用経膣デバイスであり、該デバイスが着脱可能なキャップ、カップ又はストリップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルの層によって完全に又は部分的に被覆された膣タンポン、膣タンポン状フォーム、膣リング、膣ペッサリー、膣スポンジ又は膣タブレットであり、前記層に少なくとも一つの抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む組成物が添合されてあり、該組成物が粉末、クリーム、ローション、錠剤、カプセル、軟膏、座薬、リポソーム懸濁液、マイクロエマルジョン、生体接着剤微粒子又はマイクロカプセル、生体接着剤のナノ粒子もしくはナノカプセル、溶液、エマルジョン又はゲルとして処方される。
【0022】
本発明の更に別の態様は、賦型剤と組み合わせた抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物であり、該賦型剤が飽和脂肪酸の半合成グリセリドのような脂肪親和性担体、平均分子量6000のポリエチレングリコール、平均分子量1500のポリエチレングリコール、平均分子量400のポリエチレングリコール、状々な大きさのいくつかの繰り返し単位からなるブロック重合体、これらの共重合体又はこれらの混合物のような親水性担体、アルギン酸塩、ペクチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体等の粘膜接着剤、胆汁酸塩、有機溶媒、エトキシジグリコール、エステル交換ストーンオイル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノール、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレン大豆ステロールエーテル、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジオレエート、ポリオキシエチレングリセリルラウレート、ポリオキシエチレングリセリルオレエート、プロピレングリコールオレエート、プロピレングリコールステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレントリステアレート、ポリオキシエチレン水素化キャスター油、ポリオキシエチレンアーモンドオイル、ポリオキシエチレンアプリコット実油、ポリオキシエチレンカプリリックグリセリド又はポリオキシエチレンカプリックグリセリド、ラウロイルマクロゴールグリセリド、ポリオキシエチレンオレエート又はポリオキシエチレングリセリルステアレートのような浸透エンハンサーからなる群より選択される。
【0023】
本発明の更に他の態様は、薬剤上適合した賦型剤を含む粘膜接着剤組成物であり、該賦型剤が脂肪親和性担体又は親水性担体、浸透エンハンサー及び粘膜接着剤で、この場合脂肪親和性又は親水性担体が約60から90重量%の量で存在し、粘膜接着剤が約5から25重量%の量で存在し、浸透エンハンサーが約5から20重量%の量で存在する。
【0024】
本発明の更に他の態様は、約75%の脂肪親和性担体(スポサイア(SUPPOCIRE)(登録商標))、約10%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び約15%のエトキシグリコール(トランスキュトール(TRANSCUTOL)(登録商標))を含む組成物である。
【0025】
本発明の更に他の態様は、抗片頭痛薬又は鎮吐薬の子宮又は全身循環への輸送用タンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスであり、該タンポン、フォーム又はデバイスが抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合した流体不浸透性材料からなる永続的な又は脱着可能なキャップ又はカップで被覆された子宮近傍に位置するキャップ又はカップ状部分を備える。
【0026】
本発明の更に他の態様は、高濃度の抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を含むリム又はストリップを更に備える流体不浸透性被覆材料で被覆された子宮近傍に位置する脱着可能な又は永続的に取り付けたキャップもしくはカップを具えるタンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスである。
【0027】
本発明の更に他の態様は、永続的な又は脱着可能なリムで囲まれた子宮近傍に位置する流体不浸透性キャップ又はカップを具えるタンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスであり、前記リムが子宮頸部の円蓋領域に延在する指を有し、該キャップ、カップ又は指の先のいずれかが少なくとも一つの抗片頭痛薬又一つの鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を備える。
【0028】
本発明の更に他の態様は、体温で溶けるワックスのような温度感受性材料で近位端を完全に又は部分的に被覆したタンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスであり、前記材料が少なくとも一つの抗片頭痛薬又は一つの鎮吐薬をその中に懸濁して備え、この場合前記タンポン又はデバイスが更に流体不浸透性の分解可能な又は分解不可能な薄く柔軟で非多孔性の材料の一層又はいくつかの層によって覆われており、該材料としては例えば、プラスチックフィルム、被覆ガーゼ、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、合成ポリマー又はそのアルギン酸塩のような多糖類との組み合わせ、デキストラン、セルロース、コラーゲン、アルブミン又はゼラチンのようなタンパク質、或いはポリラクチド、ポリグリコリド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酪酸、ポリバレリン酸、ポリラクチド−コ−カプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリオルソエステル及びこれらの混合物及び共重合体のようなポリヒドロキシ酸、又はポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸及びこれらの誘導体のような非分解性ポリマー、又は該デバイスを被覆するか又は該デバイスをスカートのように取り囲むか又は膣の周りに接触した際に傘のように開くその他の適切な不浸透性材料がある。
【0029】
本発明の更に他の態様において、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物は、一定の、制御された又は持続的に制御された放出形態の生態接着剤微粒子、クリーム、錠剤、ソフトゲルカプセル、ローション、軟膏、溶液、ゲル又は熱可逆性ゾルゲルとして処方され、経膣デバイス、タンポン又はタンポン状フォームの不浸透性材料被膜に位置し、取り付けられ、又は取り入れられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(定義)
ここで使われている様に:
“薬物”、“活性化合物”、“化学物質”、“活性成分”又は“剤”は、片頭痛、吐気又は吐気及び/又は嘔吐とともに起きる他の身体的な状態を治療、処置又は制御するのに適した治療上効果的な化合物を意味する。
【0031】
“薬剤”又は“治療薬”は、抗片頭痛薬、鎮吐薬、この両方の混合物又はその他の治療上有効な製薬上適合した薬剤を意味する。
【0032】
“抗片頭痛薬”は、片頭痛に付随した病理生理学上の症状を軽減する薬物を投与することによる片頭痛の治療に関連する及び適した薬剤を意味する。
【0033】
“鎮吐薬”又は“抗嘔吐薬”は、一般に片頭痛若しくは注射、中毒、化学療法、放射線治療、妊娠、手術又は吐気を催させる薬の投与のような他の病気もしくは体調に付随した吐気及び/又は嘔吐を部分的又は完全に抑制するのに適した薬物を意味する。
【0034】
“近位端”は、タンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスを挿入した際に子宮及び膣の上壁に最も近接位置した膣の端を意味する。
【0035】
“遠位端”は、膣にタンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスを挿入した際に子宮及び膣の上壁から離れて位置する経膣デバイスの末端を意味する。
【0036】
“経膣デバイス”は、ペッサリー、スポンジ、錠剤、リング又は一般に膣に挿入可能な他の構造物のような膣タンポン、分解可能な又は分解しない膣フォーム、分解可能な又は分解しないタンポン状フォーム若しくは他の経膣デバイスを意味する。
【0037】
“製薬上の成分”又は“賦型剤”は、本発明の粘膜接着剤組成物に添加した薬理学的に不活性で製薬上適合した化合物を意味する。該成分又は賦型剤は薬理学的特性を持たない。
【0038】
“迅速な輸送”は、粘膜接着剤組成物からの薬の初期の即座で迅速な放出及び輸送を意味する。一般に、迅速な輸送は、粘膜接着剤組成物又はデバイスからの薬の放出及び血漿への薬の輸送における時間依存減少に従う。
【0039】
“持続的な輸送”は、処方物又はデバイスからの薬物の持続した且つ途切れない放出、並びに持続的な状式で薬等を輸送することを意味する。持続的な輸送を迅速な輸送の前に行ってもよい。
【0040】
“パルス的輸送”は、断続的間隔での薬の放出及び輸送を意味する。かかるパルス的輸送は、例えば、可溶性の不活性被覆層に介在させた個々の層中で薬を処方することによるか、又は異なった製薬上の成分を使用することによって提供することができる。
【0041】
“化学療法”は、ガン細胞に対して細胞停止作用及び/又は細胞毒性を示す化学物質又は薬物を用いて病気を治療することに関する化学物質を用いたガンの治療を意味する。
【0042】
“エステル交換ストーンオイル”は、植物油に含まれるグリセリドのグリセロールの一部を異なった長さのポリオキシエチレングリコールで置換することによってエトキシ化した植物油を意味する。かかる置換の結果、親水的な性質を生じる。エステル交換ストーンオイルの例は、ラブラフィル(LABRAFIL)(登録商標)、特にラブラフィル(登録商標)M1944 CSであり、ガッテフォッセ(Gattefosse)から市販されている。
【0043】
“粘膜”又は“粘膜組織”は、外科手術をせずに身体外から接触可能な表面上皮組織を意味する。
【0044】
“粘膜用組成物”又は“粘膜接着剤組成物”は、粘膜組織に投与してかかる粘膜組織に接着させるのに適した組成物を意味する。
【0045】
“浸透エンハンサー”は、粘膜障壁を経た薬剤の輸送を促進し、粘膜上皮へ、その中に、並びにそれを介して薬物の質量輸送を増大させる化合物を意味する。
【0046】
(発明の詳細な説明)
本発明は、治療量及び/又は一時的軽減量の抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合した一層、複数層、キャップ、カップ、単独ストリップ又は複数ストリップとして経膣デバイスに永続的に又は脱着可能に取り付けたフィルム、フォーム、フィルム、キセロゲル又は他の不浸透性材料のような流体不浸透性被覆材料で不浸透的にシールされた近位端を備えるタンポン、タンポン状フォーム又は他の型の経膣デバイスのような経膣デバイスが、片頭痛及び吐気を制御又は治療するために前記薬物を子宮及び/又は全身循環に輸送するのに適した手段を示すという発見に基づいている。
【0047】
従って、本発明は、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬、又はこれらの組み合わせを含む粘膜接着剤組成物を添合するか又は付着させた流体不浸透性被覆材料の一層又は数層によって完全に又は少なくとも部分的に被覆した経膣デバイスを用いて、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を子宮及び/又は全身循環に標的輸送することに関する。かかる経膣デバイスにより、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を直接子宮又は全身循環に輸送することができ、また片頭痛又は吐気を経口投与に必要なものよりも低い濃度の抗片頭痛薬又は鎮吐薬によって治療でき、それ故、より低い全身濃度及びより少ない副作用をもたらす。
【0048】
更に本発明は、薬物を好ましくは抗片頭痛薬又は鎮吐薬の輸送用膣内タンポン又はタンポン状フォーム若しくは他の経膣デバイスを用いて膣内に又は経膣的に投与する場合、子宮が該薬の子宮及び全身循環への優先的摂取を可能にし、これにより初回通過の肝劣化及び解毒を迂回することができるという発見に基づく。
【0049】
本発明は、これまで認識されていなかったいくつかの利点を提供する。近位端で流体不浸透性材料で被覆された経膣デバイスが更に薬物を備える粘膜接着剤組成物を含む場合、粘膜接着剤組成物から放出された薬が該デバイスの末端多孔質の非被覆部分に吸収されるのを防止して、薬の全量を経粘膜的な吸収に利用可能にする。更に、粘膜接着剤組成物をワックスのような温度感受性担体に組み込む場合、該担体が膣に挿入した際に溶けて組成物及び薬を放出する。かかる条件下で、薬物の全量を含む粘膜接着剤組成物が放出され、子宮に最も近い上方の膣壁に輸送され、ここで粘膜接着剤組成物の特性により該組成物が前記膣壁に被着し、薬が膣壁を通して子宮及び/又は全身循環に輸送される。したがって、本発明は、流体不浸透性被覆物、すなわち層に付着又は添合された粘膜接着剤組成物として処方された薬のほぼ全量を放出及び輸送するという薬物の定量的に一層有効な輸送を可能にする。
【0050】
本発明による経粘膜膣輸送システムは、頭痛、吐気又は嘔吐に苦しむ女性患者に抗片頭痛薬及び/又は制吐薬(鎮吐薬)を輸送するための実行可能な選択肢を提供する。経口経路とは異なり、ここに記載した経膣薬剤輸送システムを用いた抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の投与は、嘔吐反射を刺激しないため、片頭痛を伴う嘔吐を減ずる。更に、膣粘膜を通じて経粘膜的に輸送された薬は、初回通過の肝解毒及び劣化を迂回して全身循環系に入る。その結果、かかる投与の経路は、初回通過の実質的な肝代謝を受けて、薬の大部分を不活性化される抗片頭痛薬及び鎮吐薬を含む薬にとって特に有利である。
【0051】
片頭痛は一般に激しい頭痛、吐気及び嘔吐を伴うので、この種の薬物輸送は特に片頭痛の治療に適している。吐気及び嘔吐が経口による効果的な片頭痛の治療を妨げる。その理由は、患者が薬を吸収し苦痛及び吐気に必要とされる緩和を達成するに十分な時間胃に薬を保持しておくことができないためである。従って、吐気及び嘔吐を伴う片頭痛及び他の体調を治療するための経口による薬物輸送は、実際に輸送された薬物量について予測不能であり、また効果が薄い。更に、女性は普段から月経の制御にタンポン等の経膣デバイスを挿入することに通常なれており、片頭痛症状を治療上制御するためのかかる代替輸送経路を、劇的な精神的苦痛無しに受容することが期待される。
【0052】
本発明の方法は、薬物の投与が女性患者の同様の症状を緩和する場合、片頭痛症状を治療及び処置するため、また薬物によって引き起こされる吐気、化学療法、放射線治療、手術後の吐気、手術前の投薬、月経前症候群(PMS)、月経、妊娠、授乳及び更年期障害のような他の症状に伴う吐気を処置するための抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の輸送用の新規で且つ更に有効な経路を提供する。該方法は、吐気を催している患者の消化管への薬物投与を回避し、初回通過の過剰な肝代謝から薬剤を保護し、抗嘔吐薬及び/又は鎮吐薬の急速又は緩徐で、持続的又はパルス的輸送を可能にし、血液循環中のかかる薬剤の治療上効果的な濃度をずっと少ない薬物量により達成する。
【0053】
頭痛、吐気及び嘔吐を治療及び処置する方法は、片頭痛の始まる前後、手術前、月経期又は妊娠の間に、或いは頭痛、吐気及び嘔吐の現れる前後に、本発明の経膣デバイスに取り入れた治療上効果的な量の適切な抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を投与することからなる。経膣デバイスの少なくとも一部分を被覆する不浸透性層に付着又は添合された粘膜接着剤組成物は、該経膣デバイスに取り付けて膣内に導入され、膣粘膜に密接させ、粘膜を介して子宮及び/又は全身循環に直接吸収、輸送する。
【0054】
ここに記載したように膣経路による抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の投与は、血液系の初回通過循環中に肝臓によって除去される投与薬物の部分を減少させ、更に薬物の治療上の効果を高める。
【0055】
I.抗片頭痛薬又は鎮吐薬の経膣輸送方法
抗片頭痛薬又は鎮吐薬の経膣輸送方法は、少なくとも一つの抗嘔吐薬又は一つの鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合又は付着させた流体不浸透性材料の一層又は数層で少なくとも部分的に被覆された経膣デバイスの調製を備える。該粘膜接着剤組成物は抗片頭痛薬及び鎮吐薬の混合物を含んでもよく、また付加的に且つ任意に他の治療上の薬剤及び/又は他の薬剤上適合した賦型剤を含んでもよい。
【0056】
一般に、粘膜接着剤組成物は、活性な抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を膣粘膜を介して子宮及び/又は全身循環に吸収するに必要な時間該組成物を膣壁への接着することができる少なくとも一つの粘膜接着剤を含む。かかる抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の輸送は経口投与せずに起こり、従って頭痛、痛み、吐気及び嘔吐の治療並びに処置のために抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を経口投与する際に一般的に生じる治療により誘導される嘔吐を排除する。頭痛、光感受性、痛み、吐気及び嘔吐は、片頭痛に付随した主たる症状であるばかりか、他の体調や症状にも付随するもので、例えば、化学療法薬の投与の結果として放射線治療後、手術前後、月経期間、妊娠、授乳、及び更年期の間等にも生じる。
【0057】
A.経膣輸送の利点
片頭痛及び/又は頭痛、吐気及び嘔吐の症状を処置するのに用いる現存の治療上の試みは、主として経口の、経静脈の、経鼻の又は経直腸のドラッグデリバリーシステムに依っている。残念ながら、片頭痛患者の消化管を通じた薬物の投与は、嘔吐を取り除くと言うよりもむしろ刺激しており、結果として、かかる症状の治療に不適切であった。その一方で、非経口的な筋肉注射又は皮下注射、スプレー式点鼻薬、又は直腸座薬の挿入を用いて片頭痛患者への薬物の経口投与時に直面する問題及び困難を迂回する。この点において、注射による方法は通常医療施設への訪問及び訓練を受けた健康管理の専門家の助力を必要とし、一方直腸からの投与形態の挿入では、多くの患者が不愉快さ及び/又は感情的な不快さを感じている。片頭痛治療用の鼻からの輸送システムは、痛み及び吐気の緩和を達成するために必要な薬物量が相当量の薬物の初回通過による肝失活を考慮するように調整する必要があり、従って肝臓での代謝に高い耐性のある薬物のみに効果的であるので、部分的に成功しているだけである。
【0058】
経膣輸送経路は、診療所又は病院で熟練した健康管理の専門家に面会する必要なしに、患者の制御環境下における急速又は緩徐で、持続的又はパルス的な薬物輸送を可能にする。本発明の粘膜接着剤組成物及び経膣デバイスを用いると、効果的な量の所望治療薬を、片頭痛患者の経口薬投与後によく起きる嘔吐を防いでいる間に全身循環系に再現可能な方法により輸送することができ、また注射剤による不都合な効果や要求の全てを取り除く。更に、膣粘膜を通じて輸送された薬物の血液循環は肝臓による初回通過循環を迂回するため、経膣輸送の薬物量は経口投与される薬物のものに較べて実質的により少ない。この点で、膣からの輸送は何倍も有効である。
【0059】
従って、本発明は、抗片頭痛薬及び鎮吐薬を経口、非経口及び鼻から投与する間に、頭痛又は吐気に苦しんでいる患者に観察される副作用及び制限を克服するこれら薬剤の改善された輸送経路の発見に関する。経膣デバイスの流体不浸透性層に付着又は添合した特別に処方した粘膜接着剤組成物を用いて、治療薬物の輸送を直接膣粘膜に集中させることによる女性患者の解剖学的利点を利用している。
【0060】
それゆえ、本発明に係わる抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の最近開発された経膣輸送方法は、かかる薬物の全身への輸送における重要な改善及び片頭痛治療並びに上述した他の病気及び症状に付随した頭痛、吐気及び嘔吐に至る症状の治療の重要な進歩を示している。
【0061】
B.抗片頭痛薬及び鎮吐薬
抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の経膣輸送は、前記抗片頭痛薬又は鎮吐薬の粘膜接着剤組成物への処方、経膣デバイスの少なくとも一部分を被覆する流体不浸透性材料の一層、複数層、ストリップ、カップ又はキャップへの該組成物の添合或いは付着、並びに該経膣デバイスの膣への導入を備える。
【0062】
本発明に使用するのに適した抗片頭痛薬の例は、麦角アルカロイド、麦角アルカロイド誘導体、抗ヒスタミン剤、バルビツール酸塩、非ステロイド抗炎症薬、鎮痛剤、セロトニン拮抗薬、ニューロキニン−1拮抗薬、カンナビノイド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)拮抗薬、ステロイド、交感神経用作用薬、鎮静剤及び抗てんかん薬のタイプである治療薬である。
【0063】
本発明による片頭痛治療に有用な抗片頭痛薬は、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴスチン、ブタルビタール、フェノバルビタール、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラク、イブプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、アセチルサリチル酸、フルルビプロフェン、トルフェナム酸、ブトルファノール、メペリジン、メタドン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ラザトリプタン、ゾルミトリプタン、アルモトリプタン、エレトリプタン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、イソメテプテン、クロルプロマジン、ジアゼパム、ドロペリドール、バルプロ酸、ガバペンチン、トピラメート及びジバルプロックスナトリウム等からなる群より選択される。
【0064】
本発明による吐気の治療に有用な特定の鎮吐薬は、メトクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、アプレピタント、シクリジン及びプロメタジンからなる群より選択される。
【0065】
抗片頭痛薬又は鎮吐薬は、それぞれ単独又は組合わせて若しくは他の治療上効果的な薬剤又は製薬上適合した賦型剤と組み合わせて処方し、輸送することができる。一般に、該薬物は少なくとも一つの粘膜接着剤、一つの担体及び一つの浸透性薬剤と組み合わせて処方される。
【0066】
抗片頭痛薬又鎮吐薬は、その治療効果を行使するに十分な量、通常は約0.00001から約45mg/体重1kg、好ましくは約0.001から15mg/体重1kg、さらに好ましくは約0.1から8mg/体重1kgで存在する。
【実施例】
【0067】
C.抗片頭痛薬及び鎮吐薬の経膣輸送の確認
膣粘膜を通じた抗片頭痛薬及び鎮吐薬の経粘膜的な輸送により、治療上有用な全身の血漿濃度を生じる。その結果、膣への投与は、片頭痛及び吐気のそれぞれの治療に有益な効果を有する薬剤の経口服用への実現可能な代案を示す。
【0068】
本発明による方法の実現可能性を確認するため、一連の生体内での薬物動態に関する検討を、メスのニュージーランドホワイト種ウサギを用いて行った。抗片頭痛薬であるスマトリプタンの溶液及び鎮吐薬であるメトクロプラミドの溶液を、耳周縁の静脈に注射することによって又はゴムチューブを用いて経口的に胃に、また薬物を座薬に組み込むことによって経膣的に投与した後、所定時間毎に動物から血漿サンプルを回収し、感度のよい分析方法を用いて薬物濃度を定量分析した。
【0069】
モデル依存的な薬物動態の分析を用いて、最大血漿濃度(cmax)、最大血漿濃度に到達するに必要な時間(tmax)、無限大に外挿した薬物の総体露曝量(AUC∞)、及び半減期(t1/2)のような関連した薬物動態のパラメーターを計算する。全ての検討は、別々の動物で少なくとも三回繰り返し、薬物動態の算出をウィンノンリン4.1(WinNonlin 4.1)を用いて実行した。
【0070】
抗片頭痛薬であるスマトリプタンに関する結果を図1A及び1Bに示す。
【0071】
図1Aは、経膣投与によるメスのニュージーランドホワイト種ウサギにおける抗片頭痛薬であるスマトリプタンの薬物動態を説明するグラフである。各動物は、体重1kg当たり0.7mgのスマトリプタンを溶液として受容した。白丸は静脈注射後の血漿濃度を示し、黒四角は薬物溶液の経口投与後の血漿中で測定した対応する薬物濃度を示す。実験は三種の異なった動物で行い、結果を平均±標準偏差で示す。図1Bは、親脂肪性の輸送デバイスを膣に挿入した後のメスのニュージーランドホワイト種ウサギにおける抗片頭痛薬であるスマトリプタンの全身性の血漿濃度を示す。各動物に体重1kg当たり0.7mgのスマトリプタンを受容させ、等量のスマトリプタン溶液の経口投与後に同様の実験で測定されたCmaxに対して血漿濃度を標準化した。実験を三羽の別々の動物で行い、結果を平均±標準偏差で示す。
【0072】
これらの検討において、体重1kg当たり0.7mgのスマトリプタンの投与量を使用した。分析のために、かかる一回分に微量の[3H]を補い、これを用いて流体シンチレーションカウンターにより血漿の薬物濃度を定量した。結果は平均±標準偏差で示す。
【0073】
図1Aは、薬物溶液の非経口的注入がほぼ直ちに高血漿濃度となり、これが191±6分の見かけのt1/2で急激に下がることを示す。治療上、15.4±4.5μg/mlのCmaxを有する初期高濃度は、片頭痛及びそれに付随した症状の効果的な緩和の速やかな開始を示唆する。しかしながら、該薬物を血流中にボーラスとして投与するため、より長い作用期間を支持する持続性の輸送ではない。代謝による全身循環からスマトリプタンの除去及び腎排泄が、注入後の抗片頭痛効果の時間が決まる支配的な機構である。
【0074】
その一方、経口投与では、ウサギ内でのスマトリプタンの全身血清濃度が非常にゆっくりと上昇する。このことは、薬物が消化管から上皮障壁を越えて粘膜組織の血管に物理的に移動するために必要な吸収段階を動力学的に明確に示している。イオン化、脂肪親和性、及び流体力学的半径を含む薬物分子の物理化学的な性質が吸収速度を決める。
【0075】
2つの全身性プロファイルの比較は、スマトリプタンの経口投与が非経口的注入に較べて抗片頭痛薬の効果を遅らせることを明確に示す。投与薬剤の静脈及び口からの両経路に関して評価したTmax値は、経口投与後のスマトリプタンの最大効果が少なくとも100の因数だけ遅れることを示し、このことは治療上劇的に不利である。
【0076】
静脈経路及び経口経路経て投与された同じ服用量に対する体への総露曝量は、それぞれの時間/血漿濃度曲線下の総面積により示されているように、大きく異なる。算出されたAUC∞は、それぞれ経口投与で958±163μg×分/ml、非経口投与で10868±90μg×分/ml(約11倍高い)である。経口投与の見かけのt1/2は1210±163分で、静脈からのデータから計算されたものに較べてかなり長く、除去よりも吸収が経口投与後の該薬物の薬物動態的な律速段階になることを示唆している。
【0077】
抗片頭痛薬の経膣投与の治療上の可能性をよく使われる経口投与と比較するために、スマトリプタン組成物を含む親脂肪性の経膣デバイスの挿入後に測定したスマトリプタンの全身血漿レベルを経口投与後に得られた最大濃度に標準化した。結果を図1Bに示す。該表示おいて、直線は該薬物の膣粘膜及び口腔粘膜を通したそれぞれの吸収に関する同様の速度過程を示している。しかしながら、このプロファイルの初期ピークは、本明細書に記載したような経膣デバイスを用いるスマトリプタンの経膣投与が、従来の経口投与に較べて、全身循環への該薬物の更に迅速な輸送をもたらすことを強く示唆している。経膣投与に対して算出されたTmaxは〜15分であり、経口経路と比べた場合に、本方法が抗片頭痛薬の効果が約6倍速く始まりうることを暗示する。この治療上の利点は、前述の静脈注射後のボーラス効果に匹敵する可能性がある。同量投与後のスマトリプタンの体への全露曝量が、経口投与後に測定された値の<5%である。これは、不完全な吸収のため、経口輸送方法に関するよりも多量の抗片頭痛薬を経膣輸送デバイスに取り入れることが必要になる。経膣輸送後の0.7mg/kgに対して計算されたAUC∞は23.0±0.1μg×分/mlであった。
【0078】
抗片頭痛薬であるスマトリプタンで行ったのと同様の検討を、鎮吐薬の経膣輸送での値を明らかにするために実行した。この治療分野のモデル薬物としてメトクロプラミドを選択した。結果を図2A及び2Bに示す。
【0079】
図2Aは、メスのニュージーランドホワイト種ウサギにおける鎮吐薬であるメトクロプラミドの静脈内投与後の血漿濃度を示す。0.5mgの薬物溶液を無菌食塩水の溶液として調製し(0.9%;重量/重量)、耳周縁の静脈を通じて全身循環に注射した。血漿サンプルを6時間回収し、高速液体クロマトグラフィーを用いて薬物の分析をした。結果を血漿±標準誤差(n=4)の平均値として示す。図2Bは、メスのニュージーランドホワイト種ウサギにおけるメトクロプラミドの経膣投与後の標準化した血漿濃度を示す。血漿サンプルを選択的高速液体クロマトグラフ法を用いて該薬剤の分析をして、静脈内投与後と同じ時間点で測定したメトクロプラミド濃度に標準化した。実験は三羽の別々の動物で行い、結果を平均±標準誤差で示す。
【0080】
三羽のメスのニュージーランドホワイト種ウサギに、経静脈、経口及び経膣で0.05-0.1mg/体重1kgで投与した。血液サンプルを種々の時間点で取り出し、血漿濃度を、インターナショナルジャーナルオブクリニカルアンドファルマコロジカルセラピー(Int. J. Clin. Pharmacol. Ther.)、40巻、2002年、p.169-174、に記載されている選択的高速液体クロマトグラフ法を用いて定量した。モデル依存的な薬物動態のパラメーターを、ウィンノンリン4.1(WinNonlin 4.1)を用いる時間/血漿濃度のデータから計算した。
【0081】
0.9%食塩水で調製したメトクロプラミド溶液の静脈内注射により、平均血漿濃度が直ちに60ng/mlに達した(図2A)。一次分配及び除去段階の結果、84±38分の見かけt1/2を有する血漿濃度の単相下り勾配を生じた。AUC∞で測定された体への総露曝量は、3845±1415ng×分/mLであった。同投与量の経口投与の結果、非経口投与後の測定結果(データは示さない)に較べて平均で30倍低いピーク血漿濃度を生じた。このことは、鎮吐薬の消化管から全身循環への輸送が効率的ではないことを暗示する。嘔吐している患者が概して経口投薬形態を飲み込むために大きな困難を経験しているという更なる面倒な事態を考慮すれば、メトクロプラミドのような鎮吐薬の経口輸送が治療上望ましくないことが明白になる。しかしながら、サポサイアSA2(SUPPOCIRE AS2)のような脂肪親和性の塩基、粘膜接着剤ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び浸透エンハンサーであるエトキシジグリコールからなる経膣輸送デバイスにかかる薬物を含めることは、女性患者の消化管を炎症させることを迂回し、また治療上十分な投与量を全身循環に輸送するためのユニークな機会を提供する。
【0082】
図2Bに示す経膣から投与されたメトクロプラミドの結果は、上述したようなデバイスを用いて経膣輸送されたメトクロプラミドの血漿中のレベルが静脈注射後に測定されたそれぞれの薬物のレベルに近いことを明確に示す。図2Bに示されるプロファイルは、経膣投与後にメトクロプラミドに関して測定した実際の血漿レベルを非経口投与後の時間に相当するレベルに標準化することによって成した。その結果として、経膣投与10分後に現れる初期濃度は、被検体相互のばらつきの範囲内で非経口投与後の血漿レベルと同等である。治療上、このことは、薬物を注入する要求なしに嘔吐に苦しむ患者に多大な利点をもたらすことができる。
【0083】
上述した検討は、経膣輸送の抗片頭痛薬及び鎮吐薬の実現可能性及び利点を明確に示している。明らかに、かかる経膣輸送は、経口投与よりも迅速且つ長時間に渡ってより多量の薬物を供給する。静脈内投与での必要条件、不便さ及び侵襲性と比較すれば、抗片頭痛薬及び鎮吐薬の経膣輸送による利点が明らかである。
【0084】
II.抗片頭痛薬及び鎮吐薬の経膣輸送用デバイス
タンポン、フォーム、タンポン状フォーム、スポンジ、ペッサリー又はリングのような本発明の経膣デバイスは、前記デバイスに対する改良を提供する。特に、好ましくは膣タンポン又は分解性もしくは非分解性タンポン状フォームである本発明のデバイスは、流体不浸透性材料の層によって完全に又は好ましくはその近位端において部分的にだけ被覆されている。
【0085】
流体不浸透性材料をデバイスに一つの層若しくは異なった材料の一層又は数層に充填したいくつかの層として塗布することができ、これはタンポンの近位部を被覆するキャップ又はカップ、或いはタンポンを取り囲む流体不浸透性材料のストリップ又はリムを形成することができる。膣タンポン又は膣フォームは多孔質材料、通常綿又はポリマーからなるので、タンポンの少なくとも近位部、通常近位端を被覆する流体不浸透性材料は、多孔質材料を不浸透性層で被覆された材料から分離し、また流体不浸透性被覆内でかかる多孔質材料の近位部を隔離している。一層、複数層、一ストリップ、数ストリップ、キャップ又はカップであろうと無かろうと、該流体不浸透性被覆には、粘膜接着剤組成物を添合するか、或いはかかる組成物を種々の方法で該流体不浸透性被覆に付着する。
【0086】
デバイス全体の被覆は、粘膜接着剤組成物のデバイスの多孔質部分への吸収を防ぐ。デバイスの部分的被覆は、薬物をより小さな範囲に隔離でき、また粘膜接着剤組成物のデバイスの多孔質部分への吸収を防ぐ。従って、デバイスの多孔質部分への再吸収による薬物の損失が除かれるか、又は実質的に減少する。更に、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物をデバイスの近位部に塗布した流体不浸透性被膜中に隔離しているので、これをデバイスから粘膜上皮組織がより薬物吸収しやすい子宮周辺に優先的に放出する。従って、薬物をより定量的に膣粘膜に輸送し、粘膜薬剤の存在により被着させ、吸収促進剤及び/又は浸透エンハンサーの存在により粘膜を介して子宮及び/又は全身循環に輸送する。脂肪親和性又は親水性の担体が、薬物の粘膜表面への親和性を更に修飾し、薬物の表面露曝性を高める。
【0087】
A.被覆経膣デバイス
本発明の経膣デバイスは、膣タンポン、分解性又は非分解性膣タンポン状のフォーム、膣フォーム、膣スポンジ、膣リング又は膣ペッサリーで、不浸透性の被覆層によって完全に又は少なくとも部分的に被覆されており、該被覆層はこれに添合又は付着した粘膜組成物からデバイスの本体を分離する。最も好ましい実施態様は膣タンポン又はタンポン状のフォームである。
【0088】
1.膣タンポン
経膣薬物輸送用の好ましい一実施態様は膣タンポンである。該膣タンポンは一般に市販されている膣タンポンで、その上方近位部分、通常約三分の一又は二分の一の部分、すなわち膣壁に接触する部分を本発明に従って被覆されている。タンポンの近位端を、該タンポンの上部近位頂端部分の周りに一層、複数層、キャップ、カップ又はストリップを形成する流体不浸透性被膜によって被覆するか、或いは別に調製された流体不浸透性層、キャップ、カップまたはストリップとしてタンポンに付着する。しかしながら、タンポン全体を所要に応じて流体不浸透性被膜で被覆することができ、次いで該組成物をタンポンの全体若しくは近位部又は先端に付着させる。
【0089】
2.膣フォーム
他の好ましい実施態様は、膣内で完全に又は部分的に分解し得るか、或いは非分解性とし得るタンポン状の膣フォームである。しかし、該フォームはタンポン状構造と異なった形でもよい。
【0090】
経膣デバイスとして用いるフォームは、固体構造物の特定の形又は半固体又は液体製剤に予備形成する。後者2つは、組成物を都合よく取り入れ得るフォーム層、ストリップ、カップ又はキャップを形成する粘膜接着剤組成物用の容器として使用することができる。
【0091】
膣フォームは、分解性であろうと非分解性であろうと、経膣デバイスとして使用されようとその被覆に使用されようと、ポリマーマトリクス中に多孔性を導入する当業者に周知の方法、すなわち、凍結乾燥、空気混和、フリーズドライ、炭化水素鋳型、塩又は微粒子の洗脱、ゲル又は溶媒による鋳造、気体膨張、焼結、高分散相エマルジョンの重合、並びに三次元ポリマー印刷のような自由な形態の形成技術によって調製される。フォームを作るのに最も好ましい方法は凍結乾燥であり、その詳細が2003年6月30日出願の継続出願シリアル番号第10/600,849号に記載されている。
【0092】
凍結乾燥したフォームは、連続気泡で、高表面積で、生物分解性又は非分解性の構造物であり、状々なポリマー、好ましくは親水性ポリマーから製造できる。フォーム材料は、所望の用途により調整しうる制御された化学的及び物理的性質によって特徴付けられる。調整できる性質としては、親水性、流体吸収速度、劣化プロファイル及び溶解速度があり、その目安はフォームの完全溶解に必要な時間である。
【0093】
一般に、凍結乾燥したフォームは、基質材料として働く下記の適切なポリマー、好ましくは親水性ポリマー又はこれらの混合物を1から10%(重量/重量)の溶液を調製するために必要な量でメタノール、エタノール、グリセリン、塩化メチレン、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、グリコフロール、セチルアルコール、ジフルオロエタン、イソプロピルアルコール、好ましくは精製水のような水性又は非水性溶媒中で溶解することによって調製する。或いは、薬剤及び添加剤を含むポリマー溶液を、酢酸、シクロヘキサン、アセトニトリル、tert-ブタノール、エタノール及びイソプロパノール中で、又は水性溶媒と非水性溶媒の混合物中で調製してもよい。
【0094】
本発明のフォーム組成物を調製するための基質材料は、疎水性又は好ましくは親水性のポリマーである。かかるポリマーは、単一で又はそれぞれ組み合わせて使用してもよい。二又はいくつかのポリマー混合物である場合、これらをそれぞれ種々の濃度及び割合で使用することができる。
【0095】
特に限定しない基質ポリマーのリストには、セルロース及びセルロース誘導体、微晶性のセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジビニルグリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドが含まれる。他の可能なポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリメタクリル酸、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタメート、ポリプロピレンフマレート、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリ−1−ビニル−2−ピロリジノン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、ポリスチレン−ジビニルベンゼン、ポリ−ビス−p−カルボキシ−フェノキシプロパン−co−セバシン酸のようなポリ無水化物、ポリ−β−ヒドロキシブチレート又はポリ−β−ブチロラクトンのようなポリヒドロキシアルカノエート、並びにテトラエチルオルトシリケート及びジメチルジエトキシシランのようなアルキル基置換シリカゲルが挙げられる。
【0096】
フォームの製造に適した親水性ポリマーの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム塩、ペクチン、ゼラチン、コラーゲン、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー、カルボポール等のアクリル酸系ポリマー、ノベオン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、キトサン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキシド、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、カラヤガム等のポリサッカライドガム、ポリアクリルアミド、ポリカーボフィル、デキストラン、キサンタンガム、ポリアクリルアミド、架橋ポリメチルビニルエーテル−co−無水マレイン酸、市販のゲントレッツ(Gentrez)(登録商標)、ゼラチン、コーンスターチ及びこれらの混合物が挙げられる。
【0097】
フォーム形成に適した疎水性ポリマーの例は、特にポリプロピレンオキシド、ポリアミド、ポリスチレン及びポリメタクリル酸である。
【0098】
膣内で種々の機構によってより小さなユニット又はポリマーに分解されるタンポン状膣フォームは、分解性フォームに分類される。かかるタイプのフォームは、その分解を制御し、分解性膣フォームに付着した被膜からの薬剤の完全放出に必要な時間と一致するか又は超えている限り好ましい。
【0099】
非分解性膣フォームは、三次元構造の分解耐性のフォームである。単独で用いるか或いは生体分解性ポリマーフォームで被覆してもよい非生体分解性ポリマーの限定されない典型例としては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸及びこれらの単独の誘導体又はこれらの共重合混合物が挙げられる。
【0100】
分解性又は非分解性の両フォームは、フォームピロー、チューブ、シリンダー、球、錠剤又はリング(デバイス)又はフィルム、シート又はビーズ或いはその他の好ましい形態(被膜)を含む経膣デバイス又はその被膜として使用するに適した大きさの範囲及び種々の形態で、多孔性をポリマーマトリックスに導入する当業者に周知の適切な方法を用いて調製できる。
【0101】
経膣デバイスとしてのフォームは、タンポン、タンポン状シリンダー、ストリップ、パッド、ピロー、チューブ、球、錠剤又はリング又は所望のその他の形態のようなデバイスに予備形成するか、或いは、従来の膣タンポン、タンポン状デバイス、ペッサリー、リング、ストリップ、パッド、ピロー、シート、チューブ、球又は錠剤のような異なった材料よりなる更に複雑な経膣デバイスの表面への被膜として、前記被膜フォームで被覆したフィルム、シート又はビーズとして適用してもよい。かかる形態においては、該フォームを以下の被覆の項でより詳細に記載するように、粘膜接着剤組成物用容器として適用する。
【0102】
3.膣スポンジ
タンポン状デバイスの他の例は膣スポンジである。所望の抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜組成物を、薬物の無い円筒状のポリウレタン膣スポンジ上を被覆する流体不浸透性シリコーンマトリックス中に添合することができる。
【0103】
4.膣リング
本発明の放出が制御されたドラッグデリバリーシステムに適合する他の例は膣リングである。膣リングは、通常輸送すべき薬剤を含む別のエラストマー層で被覆された不活性なエラストマーのリングからなる。該リングを、利用者が所定位置に容易に挿入し、7日までの所望の期間置き、その後取り除くことができる。該リングは抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む固体又は中空体でもよく、また薬物を放出する多孔質材料で被覆してもよい。該リングは、状況に応じて薬物を含まない第三の速度制御エラストマー外層を備えることができる。また、この第三の層は、二重放出リング用の第二の薬物を含むことができる。かかる薬物をシリコーンエラストマーリングを通じてポリエチレングリコール中に取り入れて輸送すべき薬物用の容器として作用させることができる。
【0104】
5.他の経膣デバイス
膣ペッサリー、膣シリンダー、膣錠剤、膣カプセル、膣パッド、膣パッチ、膣座薬又は膣チューブが、本発明で使用できる薬物輸送システムの他の例である。かかるシステムは、これまで膣避妊具の輸送用に使用されており、また文献中に頻繁に記載されている。
【0105】
同様に、かかる他のタイプの経膣デバイスも子宮に面した側又はその端部で流体不浸透性被膜によって被覆されている。例えば、ペッサリー又はリングは子宮に面した側を被覆し、もう一方の側を未被覆のまま残すことができ、またスポンジ又はパッドは子宮に最も近い部分を被覆し、もう一方の側を例えば月経の血液に対する多孔質の吸収体とすることができる。
【0106】
経膣デバイスを乾燥又は湿潤形態で提供するか、或いは挿入の前に湿らせてもよい。
【0107】
6.図の詳細な説明
女性生殖器系に対する本発明の経膣デバイスの種々の実施態様を、特に限定しない例として膣タンポン又はフォームを用いて図3−15に示す。
【0108】
図3は、直立姿勢での子宮及び膣を含む女性生殖器の一部の断面図である。図4は、その側断面図である。子宮2は、子宮腔4を囲み、子宮頸部5で頸管又は頸部口6を介して開口する筋肉質の器官である。膣8は、小陰唇12及び大陰唇14から子宮頸部5に通じる筋肉質の管10で定義される。膣8の壁に付随する局部の脈管構造は、子宮筋脈管系及びリンパ系に通じている。
【0109】
図5は、膣8内での経膣デバイス16の位置を示す。膣タンポンに代表される経膣デバイスは、その上部の近位部分で粘膜接着剤組成物を添合した流体不浸透性フィルム被膜17で被覆されている。タンポンの非被覆多孔質部分18が、該タンポンの遠位端に見られる。その粘膜接着特性により、薬物及び組成物を被膜から膣に放出し、膣粘膜に接着し、膣の血管及びリンパ系を通じて子宮に輸送される。生理学的に、かかる概念は、例えば米国特許第6,086,909号に記載された動物実験で文書化され、確かめられており、ここに引用して援用する。
【0110】
図6−13は、本発明によって片頭痛及び吐気を治療するために抗片頭痛薬又は鎮吐薬を子宮又は全身循環に輸送するのに使用できる本発明の経膣デバイスの各種実施態様を示す。
【0111】
図6は本発明のタンポンデバイスに付着した流体不浸透性層を有する子宮頸部5に隣接した膣領域の断面図である。タンポンデバイス22は、遠位端が綿のような非被覆繊維材料24からなり、また近位端26の被覆部が添合した組成物28を含むカップ29の形状の環状に位置する流体不浸透性層からなる円筒状の吸収体タンポンである。タンポンデバイス27の近位端を膣8の上方上皮組織18及び膣粘膜を通じた薬物輸送用の膣円蓋20にもたれるように置き、これと組成物28が接触している。組成物28を不浸透性層被覆材料に添合することができるが、カップ内側の空孔に置いた適当な輸送成分からなる粉末、溶解座薬、フォーム、ペースト又はゲルとすることができる。
【0112】
図7は、図6に示したタンポンデバイスを有する子宮頸部5に隣接した膣領域の断面図である。図7に断面で示すように、カップ31は該カップの壁に添合した粘膜接着剤組成物37を含んでもよく、又は該組成物をカップ内孔内にカプセル、粉末、ゲル、クリームもしくはその他の適切な形態として挿入又は載置してもよい。流体不浸透性カップ31を膣粘膜に対して押し込み、その最近位部に位置させ、ここで薬物を放出する。図示実施態様において、タンポンデバイス32は、例えばカップ内孔に挿入したカプセルから抗片頭痛薬又は鎮吐薬を輸送するために、子宮頸部口6に通じる非多孔性チューブ34を備える。もちろん、かかるチューブは該実施態様において任意の機構である。
【0113】
図8は、子宮頸部5に隣接した膣領域の断面図であり、流体不浸透性被膜で被覆されたキャップを形成するタンポン状フォームデバイスの代替配置を示し、ここで組成物をタンポン本体から不浸透性層53で不浸透的に分離された多孔性フォームキャップ55に添合する。キャップ55の全体又はその上部の近位部56のみに粘膜接着剤組成物を添合してもよく、或いはこれを本発明の組成物で被覆してもよい。
【0114】
図9は子宮頸部5に隣接した膣領域の断面図で、流体不浸透性被膜53で被覆され、錠剤、カプセル、溶解性剤薬又はゲルカプセルのような組成物67を被膜内に載置又は膣に最も隣接し膣への放出に有効な被膜に添合してなるタンポン62を示す。
【0115】
図10は、子宮頸部5の周りの膣円蓋20に伸びる突出指76を有する流体不浸透性キャップを含むタンポンデバイス72を備えた子宮頸部5に隣接した膣領域の断面図である。指76の先端部は、膣表面の更に離れた領域に輸送され得る高濃度の粘膜接着剤組成物75を含む。
【0116】
図11は、本発明の製薬上の組成物を含むスコップ型のゲルカプセル85を添合した流体不浸透性の脱着可能なキャップ88を取り付けたタンポンデバイス80を示す。スコップ型の多孔性フォーム部85は、環状の形をしているが、子宮頸部5を完全に取り囲まない。その代わりに、スコップ型の多孔性フォーム部は、後膣円蓋20に割り込むように設計された尖った先端部81を有する。スコップ型の多孔性フォーム部85は、スコップ型の多孔性フォーム部87の全長に沿って粘膜接着剤組成物を膣壁に輸送するように設計されている。
【0117】
一般に、流体不浸透性被覆の層、ストリップ、カップ又はキャップで被覆されたタンポンデバイスを膣粘膜の内壁に接触するように置き、粘膜接着剤組成物中に存在する治療上不活性な賦型剤、すなわち親脂肪性又は親水性担体、浸透エンハンサー及び粘膜接着剤化合物が薬物の局部膜管構造への放出及び吸収を容易にするように作用する。この結果、より高濃度の薬物が子宮及び/又は全身循環に輸送される。
【0118】
図3−11に見られる本発明の実施態様は、標準長のタンポン状デバイスを含んでもよく、或いは標準タンポンより長く或いは短くしてタンポンデバイスが該デバイスの形状に応じて膣壁又は子宮頸部に近接又は当接することを容易にすることができる。
【0119】
タンポンデバイスの上述した形状又は他の形状への特徴づけは、本発明の経膣デバイス及び粘膜接着剤組成物を隣接膣壁上皮に接触させる任意形状、形態もしくは型のデバイスのおおよその記述に過ぎず、また膣上皮及び外頸部表面に一致するあらゆる形状を本発明の範囲内に含めることを意図していることは、当業者には直ちに明らかになるであろう。更に、ここに用いる用語が本発明をかかるデバイスの使用に限定するものでない。
【0120】
B.粘膜接着剤組成物の経膣デバイスへの付着又は添合
抗片頭痛薬又は鎮吐薬及びそれらの成分を含む粘膜接着剤組成物を、次のセクションに別々に記載する。このセクションでは、経膣デバイスを被覆又は付着した不浸透性の層、キャップ、カップ又はストリップへの前記組成物の付着或いは添合のみを扱う。
【0121】
抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を、前記流体不浸透性被膜、或いはキャップ、カップ又はストリップに付着又は添合する。一般に、粘膜接着剤組成物は粘膜接着剤及び/又は親脂肪性又は親水性担体及び/又は浸透エンハンサー及び/又は吸収促進剤を更に含む。かかる組成物は、膣上皮への長期接触を維持するに十分な厚さを有するペースト、粉末、溶液、エマルジョン、クリーム、又はゲルとすることができる。或いは、粘膜接着剤組成物を不浸透性被膜、座薬、スポンジ、錠剤、カプセル又は例えば生体接着剤粒子の溶液、ローションもしくは懸濁液に含浸させた他の吸収剤材料として処方できる。薬剤を膣内皮に効果的に輸送する薬物輸送システムのいかなる形態も、本発明の範囲内に含めることを意図する。
【0122】
粘膜接着剤組成物は、輸送手段又は構造体として働く不浸透性の層、キャップ、カップ又はストリップに添合するか、その表面又は中に載置するか、或いは付着させる。薬物含有組成物を、不浸透性層への付着前に又は経膣デバイスへの付着前にかかる構造体に添合することができ、或いは経膣デバイス又は作成済みの膣タンポン又は重合性膣フォームの表面又は他の経膣デバイスを部分的に又は全体的に被覆することによって添合することができる。
【0123】
流体不浸透性層で被覆した経膣デバイスを使用する場合、組成物をデバイスに添合する多くの方法がある。例えば、組成物は、被覆層又は複数被覆層の一つに添合することができ、タンポンを覆うキャップに添合することができ、タンポンの近位部を囲む流体不浸透性キャップ、前記層に載置又は付着したゲル状カプセル又は生体接着性容器、キャップ、若しくは経膣デバイスの近位端近部を被覆するカップ又はストリップに添合することができる。或いは、薬物をタンポンの先端に位置する粉末状の材料の形態とすることができる。また、例えば薬物を製薬上適合した担体に溶解し、該薬物溶液を繊維に吸収させることによって、該薬物をタンポン先端の繊維に吸収させることができる。更に、薬物を該デバイスの近位端、すなわち先端に塗布した被覆材料に溶解すること及び/又はタンポンに付着した流体不浸透性被膜の周りに置くことができる。或いは、薬物を、タンポンの先端と共同して置かれた挿入可能な座薬、或いはタンポンデバイスに付着又は脱着可能に付着したキャップ内もしくはキャップ上に添合することができる。
【0124】
粘膜接着剤組成物を溶着させる一手段としては、該デバイスに濃縮した薬剤を含む不浸透性層被覆材料をスプレーするか、又は別の方法としてまずデバイスに不浸透性被膜をスプレーし、その後薬物を含む第二の層をスプレー又は追加するもしくは粘膜接着剤組成物を含む予備成形したキャップ、カップ又はストリップを取り付けることである。経膣デバイスを被覆するに適した方法は、被膜をピルに適用するのに用いる方法と類似する。
【0125】
或いは、ポリマー溶液中で調製した油中水形又は水中油形エマルジョンを真空下予備成形フォームの足場を介して進めるエマルジョン被覆によって、組成物を不浸透性の層又はカップ、キャップ又はストリップに添合することができる。溶媒蒸発の後、薬物含有ポリマーフィルムを構造体層、キャップ、カップ又はストリップ中に添合する。かかるエマルジョン被覆の処理パラメーターは当業者に周知であり、これら構造体中からの抗片頭痛薬及び鎮吐薬の安定性及び放出を最適化するために必要なあらゆるタイプの方法、添加物及び装置も、本発明の範囲内であることが意図されている。
【0126】
C.流体不浸透性層
流体不浸透性材料は、持続性薬剤貯留物として働き、処方に応じて、膣粘膜への長時間にわたる連続的且つとぎれのない薬物の輸送を提供する粘膜接着剤組成物を添合した一層、複数層、キャップ、又はストリップとしてデバイスに適用される。
【0127】
経膣デバイスは、流体不浸透性層で全体的に又は部分的に被覆される。不浸透層被膜をデバイスの近位端に適用するのが好ましい。かかる被膜は、体温で溶解するワックスのような温度感受性材料、又はプラスチックフィルム、被覆したガーゼ、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、合成ポリマー又はそのアルギン酸塩、デキストラン、セルロースのようなポリサッカライドの組み合わせ、アルブミンもしくはゼラチンのようなコラーゲン又はタンパク質、或いはポリラクチド、ポリグリコリドのようなポリヒドロキシ酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酪酸、ポリバレリン酸、ポリラクチド−co−カプロラクトン、ポリアンヒドライド、ポリオルソエステル、及びこれらの混合物およびコポリマーのような一層もしくは数層の流体不浸透性の分解性或いは非分解性の薄く柔軟な非多孔性の材料、或いはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、及びこれらの誘導体のような非分解性ポリマー、或いはデバイスの一部分を一層、一ストリップもしくは数層もしくは複数ストリップで被覆するか、デバイスの一部分を流体不浸透性のカップもしくはキャップで覆うか、デバイスをスカート状の流体不浸透性被覆で囲むか、又は膣の周囲に当接した際に傘のように開くその他の如何なる適切な流体不浸透性材料とすることができる。
【0128】
一実施態様においては、流体不浸透性層それ自体に粘膜接着性組成物を添合する。他の実施態様においては、不浸透層は経膣デバイスの非被覆部分を被膜もしくは粘膜接着剤組成物を含む構造体から隔離するための分離障壁としてのみ使用される。両代案とも、層若しくは永続的に付着した又は取り外し可能なカップ、キャップ又はストリップ又はその他の層を経膣デバイスの非被覆部分から分離する。該デバイスの被覆部分のみを上皮組織と接触させるのが好ましい。
【0129】
不浸透性層被膜を、持続性膜、フォーム、フィルム又はシートとして経膣デバイスに適用してもよい。更に、かかる不浸透性層被膜を、フィルム、フィルム、フォーム、シート、ビーズ、マイクロカプセル、ナノカプセル及び本発明の粘膜接着剤組成物を都合よく含み、膣粘膜に接触した際に該組成物を都合良く放出することができる如何なる処方物の他の層で被覆してもよい。
【0130】
これらフィルム、箔、フォーム又はシートの調製に適した生体分解性のポリマーは、バルク又は表面侵食により薬物を放出し得るように設計することが好ましく、天然又は合成ポリマー単独、又は限定されない典型例としてアルギン酸塩、デキストラン、セルロース、コラーゲンのようなポリサッカライド及びその化学的誘導体、アルブミン及びゼラチンのようなタンパク質及びそのコポリマー及び混合物、ポリラクチド、ポリグリコリド及びそのコポリマーのようなポリヒドロキシ酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酪酸、ポリバレリン酸、ポリラクチド−co−カプロラクトン、ポリアンヒドライド、ポリオルソエステル及びこれらの混合物およびコポリマーとの組み合わせが挙げられる。
【0131】
本発明のフィルム、フォーム、箔又はシートの物理的及び化学的性質は、その使用目的を最適化するように調整することができ、添合された抗片頭痛薬及び鎮吐薬の放出速度を制御することによって達成される。輸送デバイスからの薬物放出は、膣上皮へ又は膣上皮を介した薬物の即時かつ制御された、急速な、緩徐な、持続性の又はパルス的輸送を導く拡散又は侵食若しくはその両方の組み合わせにより生じさせることができる。
【0132】
薬物放出の速度は、薬物の物理的性質、フィルム、フィルム、フォーム又はシートの組成、及び投与位置での周囲の媒質に左右される。
【0133】
タンポンデバイスからの薬物の放出は、タンポンデバイスの典型的な使用長さに対し適切な子宮内薬物濃度を付与するように時間を調節すべきであり、通常1−8時間である。しかし、例えば膣フォーム又は膣スポンジのような分解性デバイスを使用する場合、薬物の放出時間をフォームの分解時間と一致させるように調節できる。
【0134】
上記方法は、組成物中に存在する薬物がタンポンに吸収され、それゆえ輸送するために利用できなくなることを防ぐ。流体不浸透性障壁が存在する場合、組成物は膣粘膜に一部のみに輸送され部分的にタンポンに吸収される代わりに、膣粘膜に定量的に吸収される。キャップは、適切な抗片頭痛又は鎮吐薬を含む本発明の組成物を含む錠剤、ゲルカプセル又はペレット用の容器としても使用することができる。
【0135】
III.粘膜接着剤組成物
抗片頭痛薬又は鎮吐薬の経粘膜的輸送用の本発明の粘膜接着剤組成物は、通常4つの必須成分からなる。かかる成分は、治療上の所望の効果を達成する抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬、膣上皮と組成物との密着接触を提供する粘膜接着剤、薬物の膣粘膜への表面露曝の強化を保証する親脂肪性又は親水性担体、及び薬物の膣上皮障壁を通した粘膜下組織及び全身血液循環への輸送を容易にする浸透エンハンサーである。
【0136】
粘膜接着剤組成物は、一般に治療上の単位投与量で処方され、セクションI.Aにすでに記載したものから選択した抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む。該組成物は、一般に約0.00001から約45mg/体重1kg、好ましくは約0.001から15mg/体重1kg、最も好ましくは0.1から8mg/体重1kgの抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬、組成物の膣粘膜への被着を促進する約0.1から25%の粘膜接着性薬剤、薬物の経膣粘膜の輸送を保証する約5から約30%の浸透エンハンサー、及び薬物の輸送手段として働く約40から約95%の親脂肪性又は親水性担体を含み、状況に応じて放出された薬剤の全身血液循環への輸送を増加させるための約0から約30%、好ましくは約1から5%の可溶化剤を含む。
【0137】
また、経膣輸送に適する他の薬剤上適合する賦型剤、例えば緩衝液、充填剤、安定化剤、乳化剤、及びかかる目的に有用であるとして当業者に周知である他の賦型剤を加えてもよい。
【0138】
本発明の処方に用いる如何なる成分及び/又は賦型剤は、経口使用に承認された賦型剤の全てが膣の使用について承認される及び/又は適合するわけではないことへの理解とともに、ヒトへの使用に承認されること、また膣への使用に適合していることが必要である。
【0139】
粘膜接着剤組成物は、溶液、ゲル、クリーム、ローション、軟膏、フォーム、フィルム、座薬、リポソーム懸濁液、マイクロエマルジョン、カプセル、錠剤、微粒子、マイクロカプセル、ナノ粒子、又はナノカプセルとして処方され、各処方物を経膣デバイスの流体不浸透性の層、キャップ、ストリップ内に添合するか、又はそれに付着するかのいずれかである。
【0140】
上記のように処方された粘膜接着剤組成物を経膣デバイスの流体不浸透性の層、キャップ又はストリップに添合するか、又はかかる層、キャップ又はストリップの被膜として使用できる。或いは、該組成物をスポンジ、フォーム、フィルム、錠剤、カプセル、リング、粘膜接着剤パッチ又はイオン泳動システムに添合し、これらの何れか一つを流体不浸透性キャップ内に載置するか又は流体不浸透性のストリップ又は層に付着することができる。本発明の経膣デバイスはすでにセクションIIに記載してある。
【0141】
抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を膣粘膜に又は膣上皮を介して経粘膜的に全身循環へ有効に輸送する如何なる形態の薬物輸送システムも、本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0142】
A.粘膜接着剤組成物の成分
粘膜接着剤組成物の個々の成分は、抗片頭痛薬又は鎮吐薬、粘膜接着剤、親脂肪性又は親水性担体及び浸透エンハンサー又は吸収促進剤である。
【0143】
1.抗片頭痛薬及び鎮吐薬
片頭痛治療薬剤は、頭痛の治療、処置及び制御に有効な薬学的に活性な化合物であり、既に記載している。
【0144】
本発明の粘膜接着剤組成物において、抗片頭痛薬及び鎮吐薬が0.00001から約45mg/体重1kg、好ましくは約0.001から15mg/体重1kg、最も好ましくは0.1から8mg/体重1kgの範囲の投与量で存在する。例えば、典型的な投与量は、エルゴタミンで約0.05から約1.5mg/kg(1日に3回服用)、ジクロフェナクナトリウムで約0.5から約4mg/kg(1日に2回服用)、スマトリプタンで約0.2から約10mg/kg・1日、ゾルミトリプタンで約0.1から7mg/kg・1日、メトクロプラミドで約0.1から1.0mg/kg・1回、パークロロペラジンで0.3から2.5mg/kg・1回、オンダンセトロンで約0.3から4mg/kg・1回、ドロナビノールで約0.05から0.5mg/kg(1日に2回服用)、及びプロペタジンで0.15から1.3mg/kg・1回の範囲である。他の抗片頭痛薬又は鎮吐薬の適切な投与量は、薬学の情報源から容易に入手できる。
【0145】
前記組成物において抗片頭痛薬又は鎮吐薬を単独又は二種以上の混合物で、若しくは抗片頭痛薬及び鎮吐薬の混合物混合物として、及び/又は他の製薬上有効な薬剤又は適合する製薬上の賦型剤と組み合わせて処方する。
【0146】
2.粘膜接着剤
本発明の経膣輸送用の粘膜接着剤組成物は、必須成分として粘膜接着剤を含む。粘膜接着剤は、組成物又は薬剤の粘膜への接着を促進することによって、該組成物又は組成物から放出された薬剤の粘膜表面への密接且つ広範な接触を可能にする。粘膜接着剤は、セルロース誘導体のようなポリマー化合物が好ましいが、天然ゴム、アルギン酸塩、ペクチン又はこれらの類似のポリマーでもよい。最も好ましいセルロース誘導体は、ダウケミカル社から市販されている商品名メトセル(METHOCEL)(登録商標)として入手できるヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0147】
粘膜接着剤は、約0.1から約25重量%、好ましくは約1.5から約15重量%、及び最も好ましくは約1.5-5重量%で存在する。
【0148】
3.吸収促進剤
粘膜接着剤組成物は、更に吸着促進剤を約2から約30重量%の量で含む。吸収促進剤は薬物の膣粘膜への浸透及び透過、すなわち、その膣粘膜を通じた全身性血液循環への移動を保証する。
【0149】
吸収促進剤は、ガッテフォッセから市販されているラブラソール(登録商標)として既知のポリエチレングリコール カプリル/カプリングリセリドのような不燃性グリコールエステル誘導体、プロピレングリコールのオレイン酸エステルのグリセロールエステルでのグリコール誘導体、及びインペリアルケミカルズ工業から市販されているアルラセル(ARLACEL)(登録商標)186として既知のグリセロールを含む。特に、不燃性グリコールエーテル誘導体が好ましく、商品名トランスキュトール(TRANSCUTOL)(登録商標)として既知のガッテフォッセから市販されているエトキシジグリコール、又は例えばガッテフォッセから市販されているラブラフィル M 1944CS等のエステル交換ストーンオイルが最も好ましい。エステル交換ストーンオイルは、植物油中に含まれるグリセリドのグリセロール或る部分をポリオキシエチレングリコールで置換することによりエトキシ化された植物油である。
【0150】
4.親脂肪性及び親水性担体
更に、本発明の組成物は、薬物の親和性に応じて、使用する抗片頭痛薬又は鎮吐薬に適合する脂肪親和性又は親水性の担体の何れかを含む。かかる担体は、一般に約30から約95重量%存在する。
【0151】
担体は薬物との親和性が低い化合物から選択される。従って、親脂肪性の担体が親水性の片頭痛薬又は鎮吐薬の処方に対し適しており、また親水性の担体が親脂肪性の抗片頭痛薬又は鎮吐薬の処方に対し適している。
【0152】
i.親脂肪性担体
親水性の薬物との使用に好ましい親脂肪性の担体としては、あらゆる中鎖トリグリセリド及び/又は脂肪酸、特に8から18炭素の炭素鎖を有する飽和モノグリセリド、飽和ジグリセリド又は飽和トリグリセリド、或いはこれらの混合物が挙げられる。親脂肪性担体の例は、商品名サッポサイア(SUPPOCIRE)(登録商標) AS2 又はCS2として既知て、また市販されている飽和グリセリド、及び例えばガッテフォッセ、ウエストウッド、ニュージャージーから市販されている関連化合物である。
【0153】
ii.親水性担体
好ましい親水性の担体としては、例えばシグマ/アルドリッチ、セントルイス、ミズーリから市販されているPEG6000/PEG1500、PEG 6000/PEG 1500/PEG 400、PEG 6000/PEG 400又はPEG8000/PEG1500のような分子量が約200から8000のポリエチレングリコール若しくはその誘導体又は混合物が挙げられる。
【0154】
5.浸透エンハンサー
本発明の組成物は、薬物もしくはその混合物、又は薬物含有溶液もしくは懸濁液の表面物性を変えることによって薬物又はその混合物の浸透性の改善を促進する化合物である浸透エンハンサーを更に含んでもよい。従って、これら化合物はある意味で安定化剤として働く。浸透エンハンサーの例は、非イオン性界面活性剤である。
【0155】
浸透エンハンサーは、必要に応じて約1%から約30%の量で添加することができる。
【0156】
6.可溶化剤
また、組成物は状況に応じて、例えば、複合体形成可溶化剤、クエン酸、エチレンジアミン−4酢酸、メタ−リン酸塩ナトリウム、コハク酸、尿素、シクロデキストリン、ポリビニレンピロリドン、ジエチルアンモニウム−オルト−ベンゾエートのような可溶化剤、又はツイン及びスパンス、例えばツイン80のようなミセル形成可溶化剤を含む。本発明の組成物に有用な他の可溶化剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−アルキルエーテル、n−アルキルアミンn−オキシド、ポロキサマー、有機溶媒、リン脂質及びシクロデキストリンである。
【0157】
可溶化剤は約0.1%から約30%の量で添加することができる。
【0158】
7.追加の賦型剤
本発明の組成物は、必要に応じて充填剤、乳化剤、安定化剤、緩衝剤及びその他適切なもののような他の賦型剤を更に含むことができる。これら賦型剤の例は、イソステアリルステアレート、イソプロピルミリステート、グリセリン、ミネラルオイル、ポリカーボフィル、カーボマー934P又は940、水素化パーム油、グリセリド、水酸化ナトリウム、ソルビン酸、及び精製水である。
【0159】
B.好ましい処方
上述した範囲内で本発明の成分を含む全ての処方物が、本発明の範囲内にあることを意図している。ここに好ましい処方として示した少数の組成物は単なる好適例であり、決して本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0160】
親水性の抗片頭痛薬又は鎮吐薬用の好ましい処方は、薬物約0.01-10重量%、親脂肪性担体約60-90重量%、粘膜接着剤約0.1-25重量%、吸収促進剤約1-25重量%、及び状況に応じて浸透エンハンサーもしくは可溶化剤を通常1-30重量%含む。
【0161】
親脂肪性薬物用の好ましい処方は、薬物約0.01-10重量%、親水性担体約30-90重量%、粘膜接着剤約0.1-25重量%、吸収促進剤1−25重量%、及び状況に応じて可溶化剤及び/又は浸透エンハンサー約1-30重量%を含む。
【0162】
本発明の一好適実施態様においては、0.01-10%の薬物を、約60-90重量%の親脂肪性担体、約1.5-20%の粘膜接着剤、約10-20%の吸収促進剤、約0-30%の可溶化剤、及び約1−30%の浸透エンハンサー等の他の成分と処方する。
【0163】
本発明の他の好適実施態様においては、0.01-10%の薬物を、約60-90重量%の親水性担体、約1.5−約20%の粘膜接着剤、約10−15%の吸収促進剤、及び状況に応じて0−30%の可溶化剤及び/又は約1−30%の浸透エンハンサーとの混合物として処方する。
【0164】
本発明の他の好適実施態様においては、処方物が0.01-10%の親水性薬物、75%の親脂肪性担体サッポサイア(登録商標)AS2、2%のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び15%のエトキシジグリコール(トランスキュトール(登録商標))を含む。
【0165】
本発明の他の好適実施態様においては、処方物が0.01-10%の親脂肪性薬物、75%の親水性担体PEG6000/PEG1500、2%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び15%のエトキシジグリコール(トランスキュトール(登録商標))を含む。
【0166】
C.親水性又は親脂肪性の抗片頭痛薬及び鎮吐薬を処方する方法
親脂肪性又は親水性の抗片頭痛薬又は鎮吐薬又は膜流出系阻害剤は以下の方法を用いて処方される。
【0167】
親水性薬物用処方物を調製する一般的な方法においては、親脂肪性担体を45-50℃で加熱した容器内において溶かす。かき混ぜながら粘膜接着剤を担体に加える。好適な親水性の薬物を浸透エンハンサー及び可溶化剤と組み合わせた吸収促進剤中で溶解する。この混合物を担体/粘膜接着剤の懸濁液に加える。最終処方物を所望の大きさ及び形状の型に注ぎ込むか、又は本発明のデバイスに添合する。該型を4-6℃の冷蔵庫内に貯蔵する。
【0168】
親脂肪性薬物を含む処方物を調製するための一般的な方法においては、親水性担体を加熱した容器内において製造業者推奨の適温で溶かす。かき混ぜながら粘膜接着剤を担体に加える。好適な親脂肪性の薬物を吸収促進剤中で溶解し、状況に応じて可溶化剤と組み合わせた浸透エンハンサーを加える。この混合物を担体/粘膜接着剤の懸濁液と混合する。最終処方物を所望の大きさ及び形状の型に注ぎ込むか、又は本発明のデバイスに添合する。その後、最終処方物を4-6℃の冷蔵庫内に置く。
【0169】
D.持続性放出
一実施態様においては、粘膜接着剤組成物を持続性及び制御された薬物放出システムとして処方できる。
【0170】
制御された且つ持続性の放出のために処方された抗片頭痛薬又は鎮吐薬は、迅速な、緩徐な、連続的な放出用に、又はパルス的輸送用に処方される。
【0171】
持続性の放出又は輸送とは、薬物又はデバイスからの持続的且つ途切れのない薬物の放出を意味し、この場合薬物をマトリクス、微粒子、生体接着性粒子、リポソーム懸濁液又はかかる放出用に通常用いる他の系の何れか中で処方する。
【0172】
パルス的放出又は輸送は、断続的な間隔での薬物の輸送である。かかるパルス的輸送は、例えば薬物を、連続輸送に関して記載したようなマトリクス、微粒子、生体接着性粒子、リポソーム懸濁液又は他の系中で処方して、例えば溶解性被膜の層のような薬物を含まない不活性な層を介在させた個々の流体不浸透性層に添合することによるか、或いは薬物を別の処方薬剤に処方することによって提供することができる。持続性輸送用の方法及び処方薬剤は当業者に既知である。
【0173】
制御された放出用の薬物輸送システムは、数時間又はそれ以上に渡って薬物の膣粘膜への放出を制御できなければならない。このことは、当業者に既知のヒドロゲル形成ポリマー又は非侵食性マトリクス等のような時間放出添加剤の添加によって達成される。
【0174】
更に、膣のpHが変化する月経期中には、薬剤輸送システムはpHを安定化し吸収を促進する緩衝剤を含んでもよい。
【0175】
E.生体接着性システム及びマイクロエマルジョン
生体接着性微粒子又は生体接着性ナノ粒子は、本発明で使用するための流体不浸透性層に添合するのに適した別の膣内薬物輸送システムを構成する。
【0176】
生体接着性システム及びマイクロエマルジョンは、特に経膣粘膜輸送に適した処方物である。
【0177】
マイクロエマルジョンは、ラブラソール(登録商標)、プルロール(登録商標)イソステアレート(ガッテフォッセ)のような薬学的に適合する表面活性剤、イソプロパノール又はエタノールのような補助溶媒及び水を含むことができる。上述した成分の一つ又はそれ以上を含むマイクロエマルジョンは、抗片頭痛薬又は鎮吐薬の生体利用効率を改善することを示した。
【0178】
生体接着性システムは、ヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロース誘導体及びポリアクリル酸を利用する。これらは、一度適切な処方中に収納すると、最大5日間に渡って抗片頭痛薬又は鎮吐薬を放出する。このシステムは、流体不浸透性の層、キャップ又はストリップに容易に添合される多相の流体又は半固体の製剤を表す。微粒子又はナノ粒子は膣壁に付着し、数時間にわたって薬物を放出する。かかるシステムの多くは、米国特許第4,756,907号及び第6,200,590号公報に記載してあるように、ここに引用して援用する経鼻用に設計されているが、膣用に容易に修正できる。生体接着性システムは、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を充填した微粒子又はナノ粒子を含むことができ、また薬物の溶解性及び/又は摂取を高めるための界面活性剤を含んでもよい。微粒子は1-100μmの直径を有するが、ナノ粒子は10-1000nmの直径を有する。微粒子及びナノ粒子は、当業者に既知の方法により、澱粉、ゼラチン、アルブミン、コラーゲン又はデキストランから調製できる。
【0179】
上述した全ての処方選択物を、ここに記載した経膣デバイスの流体不浸透性層、キャップ又はストリップに有利に添合することができる。
【0180】
生体接着性錠剤は経粘膜的な輸送に適した別の薬物輸送システムである。かかる生体接着性システムは、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリアクリル酸を使用する。これらは、一度適切な処方物中に置くと、最大5日間に渡って薬物を放出する。本発明の錠剤は座薬又はタンポンの形をしているので、膣壁と錠剤表面又は本発明の経膣デバイスに添合するのに適するような形状との間で最大の接触を達成する。
【0181】
また、生体接着性システムにおいて処方物された薬物を経膣デバイスに添合し得るクリーム、ローション、フォーム、ペースト、軟膏、マクロエマルジョン、リポソーム懸濁液及びゲルに添合してもよい。これらの賦型剤中で薬剤を調製するための方法は、文献の至る所で見出すことができる。
【0182】
本発明の組成物に用いるのに適した無毒の薬学的に適合する賦型剤は、薬剤処方の当業者には明白で、その例がレミントン(REMINGTON)著、製薬学の科学と実践、第20版、A.R.ゲンナロ(A.R. Gennaro)編、2000年、に記載されている。適切な担体の選択は、所望の特定の経膣投薬形態の的確な性質、例えば抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬をクリーム、ローション、フォーム、軟膏、ペースト、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム懸濁液、微粒子、ナノ粒子、又はゲルに処方すべきかどうか、また抗片頭痛薬又は鎮吐薬の物理的性質に依存する。
【0183】
上記粘膜接着剤組成物は、通常片頭痛又は頭痛、吐気又は嘔吐の治療用抗片頭痛薬及び鎮吐薬からなる群から選択される唯一の薬物を含むけれども、かかる組成物は、例えば鎮痛剤、抗ウイルス剤、かゆみ止め、副腎皮質ステロイド及び主薬剤の治療効果を高め得る他の薬剤のような別の薬剤又はその組み合わせを更に含むことができる。
【0184】
上記全ての生体接着性システムは、直接又は経膣デバイスを介して投与することができる。
【0185】
IV.抗片頭痛薬/鎮吐薬の輸送方法
本発明の方法は、吐気及び嘔吐の症状を除去及び減少させるため抗片頭痛薬及び鎮吐薬の効果的な輸送のために開発され、特にその輸送に適合する。抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の広範囲な初回通過による肝失活を迂回するため、抗片頭痛薬及び鎮吐薬の効き目が更に高められる。
【0186】
片頭痛に付随した主要な症状であり、またこの症状に限定されず、上記に詳述したように化学療法薬の投与もしくは手術のような他の健康状態によっても生じ得る頭痛、吐気及び嘔吐を治療、処置及び制御するために有用な方法は、膣腔裏の膣粘膜を抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合した経膣デバイスと接触させる工程を備える。該組成物は、麦角アルカロイド及びその誘導体、抗ヒスタミン剤、バルビツレート、非ステロイド抗炎症薬、鎮痛剤、セロトニン拮抗薬、ニューロキニン−1拮抗薬、カンナビノイド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)拮抗薬、ステロイド、交感神経用作用薬、鎮静剤及び抗てんかん薬からなる群から選択した少なくとも一つの抗片頭痛薬又は一つの鎮吐薬を単独で、若しくは他の抗片頭痛薬又は鎮吐薬との組み合わせ、或いは他の治療薬剤又は製薬上適合する賦型剤と組み合わせたものからなり、該組成物又はデバイスと膣粘膜との接触が、膣粘膜に又は膣粘膜を通して薬物を迅速又は緩徐に、持続的又はパルス的に輸送することができ、かつ片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の治療投与量を輸送するために必要な時間維持される。かかる時間は一般に数分から数時間である。
【0187】
輸送経路は、経粘膜輸送用経膣デバイスの流体不浸透性の一層もしくは数層に添合した粘膜接着剤組成物を利用し、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬と、経膣輸送のために任意に加えた粘膜接着剤、担体、浸透エンハンサー及び可溶化賦型剤との組合わせの輸送を備える。
【0188】
更に、一つ以上の治療上の薬剤又は苦痛緩和剤を、抗片頭痛薬又は鎮吐薬の粘膜接着剤組成物に添加することができ、及び/又は頭痛、吐気及び嘔吐の治療、処置もしくは制御に適したあらゆる他の薬剤上適合する活性物質を添加することもできる。全ての組み合わせ及び変形が本発明の範囲内であることを意図している。
【0189】
従って、本方法は、炎症を抑え、鎮痛効果を有し、脳血流量を調節する薬剤、及びその他の治療上活性な薬剤と組み合わせた抗片頭痛薬又は鎮吐薬の輸送も含む。
【0190】
本方法は、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を経膣デバイスの流体不浸透性層、キャップ又はストリップ内に添合するか或いは付着させ、該経膣デバイスを膣に挿入することによって実施する。該粘膜接着剤組成物を溶液、ゲル、クリーム、ローション、軟膏、フォーム、フィルム、座薬、リポソーム懸濁液、ミクロエマルジョン、カプセル、錠剤、微粒子、マイクロカプセル、ナノ粒子、ナノカプセルとして処方する。かかる目的に適合したデバイスは膣タンポン、膣リング、膣ペッサリー、膣スポンジ、膣タブレット、膣カプセル、膣パッチ、膣イオン泳動システム又は膣カップからなる群から選択される。
【0191】
粘膜接着剤組成物と膣粘膜との直接の接触は、効果的な治療に繋がる薬物の即時迅速もしくは緩徐で、広範囲な持続的又は断続的なパルス輸送を可能にする。経膣デバイスの流体不浸透性層に付着又は添合した粘膜接着剤組成物は、片頭痛又は吐気の全身的治療に治療上必要な投与量だけの抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を使用することを可能にする。
【0192】
上述した経粘膜的な薬物輸送用の方法は、膣上部及び子宮が門脈型の循環又は静脈道及びリンパ管の何れかによる特有の血流特性を有し、膣粘膜から直接全身血液循環への薬剤の優先的な輸送及び供給を可能にし、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の大部分が代謝による実質的な失活及び除去を受ける消化管及び肝臓を迂回するという考えに基づいている。
【0193】
経膣概念の最も具体的な説明は、米国特許第6,086,909号、第6,197,327号、第6,461,779 Bl号及び第6,572,874号に記載されているように、本発明者等によっていくつかのタイプの薬物で実現されており、ここに引用して援用する。適切に処方された抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬が、上記特許に記載されたのと同様な方法で膣壁を経て輸送される。
【0194】
有用性
本発明は、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を女性患者の子宮又は全身循環に輸送するのに有用である。本発明はこれまで認識されていない幾つかの改良を提供する。ここに新たに記載した試みは、製薬組成物がタンポンの多孔質部分に吸収されて薬物輸送に利用できないのを防ぐ。かかる新規の試みは、抗片頭痛薬又は鎮吐薬の子宮又は全身循環への更に効果的な輸送を提供する。組成物のごく一部が膣粘膜に輸送され、一部がタンポンに吸収される代わりに、組成物から放出された薬物の全量が膣粘膜への吸収に利用できる。
【0195】
実際には、本発明の組成物又はデバイスである薬物輸送システムが、片頭痛又は吐気の診断の下に適用又は投与される。通常、かかる治療は頭痛、吐気又は嘔吐を治療し、この状態を維持するか或いは更なる増大を防ぐために必要なだけ継続される。
【0196】
実施例1、スマトリプタンの膣座薬の調製
本例は、膣内座薬の調製又は流体不浸透性被覆への添合方法を説明する。
【0197】
スマトリプタン(グローバルトレードアライアンス、スコッツデール、アリゾナ)の投与量は20mgであった。膣座薬を投与の24時間前に処方し、調製した。座薬の4つの基本成分は、蒸留水(15重量%)、サッポサイアAS2X(ガッテフォッセ、ウエストウッド、ニュージャージー)(67.5重量%)、粘膜接着剤のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(ダウケミカルズ、ミッドランド、ミシシッピーからメトセル(登録商標)K、HPMC K15Mとして得た)(1.5重量%)、及び浸透エンハンサーのトランスキュトール(登録商標)(15重量%)であった。
【0198】
8つの座薬を製造するために、サッポサイア10.8グラム、MPMC240mg、トランスキュロール2.4グラム及び計算された薬物量を計量した。サッポサイアを50℃の水浴内において使い捨ての100mlポリプロピレンビーカー内で懸濁して溶解した。該溶液を完全に溶解するまでかき混ぜた。その後、HPMC及びトランスキュロールを添加し混合した。最後に、薬物を2.4グラムの蒸留水と共に添加した。十分に混合した後、暖かい座薬塊をアデルフィグループオブカンパニー(ウエストサセックス、英国)から入手できる市販のニッケルメッキした真ちゅう製座薬型に素早く注ぎ込んだ。座薬は使用時まで冷蔵保管した。
【0199】
実施例2、メトクロプラミドの膣座薬の調製
本例は、不浸透性被覆に添合するための含メトクロプラミド膣座薬の調製を説明する。
【0200】
メトクロプラミドハイドロクローライドは、ICNバイオケミカルズ社(コスタメッサ、カリフォルニア)から市販されている。座薬一服当たり50mgからなる膣座薬を、スマトリプタン座薬に関して記載した手順と同じ方法を用いて調製した。かかる処方中の製薬上の賦型剤組成物は、サッポサイア AS2X(66重量%)、HPMC(1.5重量%)、及び蒸留水(15重量%)であった。
【0201】
他の片頭痛薬又は鎮吐薬を含む座薬を、賦型剤を含めてそれらの量を変化させる以外、同様の方法で調製する。
【0202】
実施例3、ジクロフェナクナトリウムの膣座薬の調製
本例は、不浸透性被膜への添合用親水性ジクロフェナク膣座薬を調製する方法を説明する。
【0203】
7.18グラムのポリエチレングリコール(PEG)3350 及び3.86グラムのPEG6000(フィッシャーサイエンティフィック、ピッツバーグ、ペンシルバニア)の二成分混合物を水浴上で溶解した。均質なPEG溶液にトリエタノールアミン400mg(シグマ/アルドリッチ、セントルイス、ミズーリ)を加えた。別の容器内で、ジクロフェナクナトリウム400mg(スペクトラムケミカルズアンドラボラトリープロダクツ、ガーデナ、カルフォルニア)をトランスキュロール2.4グラムに溶解し、これを更に蒸留水2.4グラムで希釈した。撹拌下、両溶液を混合し冷却した。適当な粘度に達した後、等分した座薬塊をニッケルメッキした真鍮型に充填した。
【0204】
実施例4、プロメタジンの膣フィルムの調製
本例は、不浸透性被膜への添合用膣フィルム組成物を調製する方法を説明する。
【0205】
100mlのガラスビーカー中で、240mgの塩酸プロメタジン(スペクトラムケミカルズアンドラボラトリープロダクツ、ガーデナ、カルフォルニア)を2グラムの蒸留水及び1.5グラムのトランスキュロールに溶解した。かかる薬物溶液を、500mgのアルギン酸ナトリウム塩(カーボマー(CarboMer)社、ウエストブローフ、マサチューセッツ)及び8グラムの水からなる重合性アルギン酸溶液と混合した。手動式カマッグTLCプレート被覆機(カマッグサイエンティフィック社、ウィルミントン、ノースカロライナ)を用いて厚さ約1mmの薄膜を調製した。
【0206】
実施例5、メトクロプラミドの膣フォームの調製
本例は、薬用膣フォームの調製を説明する。
【0207】
メトクロプラミドハイドロクローライド(ICNバイオケミカルズ社、コスタメサ、カルフォルニア)をPEG400(10重量%、フィッシャーサイエンティフィック、ピッツバーグ、ペンシルバニア)及びトランスキュロール(15重量%)の混合物中に溶解した。別の容器中で、4.5重量%のアルギン酸ナトリウム塩を蒸留水(70重量%)中に溶解した。両溶液を混合し、5mlの等分物をプラスチックのシリンジ中に充填した。-80℃での完全凍結後、サンプルをシリンジの型から取り出し、凍結乾燥させて薬用膣フォームを形成した。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】図1Aは、経膣投与によるメスのニュージーランドホワイト種ウサギ中での抗片頭痛薬スマトリプタンの薬物動態を示すグラフである。各動物は体重1kg当たり0.7mgのスマトリプタンを受容した。白丸は静脈注射による血漿濃度を示し、黒四角は経口服用後の対応する薬物の血漿濃度を示す。結果を平均±標準偏差で表す。図1Bは、親脂肪性経膣輸送デバイスの膣挿入後のメスのニュージーランドホワイト種ウサギ中での抗片頭痛薬スマトリプタンの全身性血漿濃度を示す。各動物は体重1kg当たり0.7mgのスマトリプタンを受容し、血漿濃度は同一量のスマトリプタンを経口投与した後の同様の実験で測定されたCmaxに標準化した。検討を三羽の別々の動物で実行し、結果を平均±標準偏差で表す。
【図2】図2Aは、静脈注射後のメスのニュージーランドホワイト種ウサギ中での鎮吐薬メトクロプラミドの血漿濃度を示す。0.5mgのメトクロプラミドを含む薬物溶液を無菌生理食塩水(0.9%;重量/重量)中で調製し、耳周縁部の静脈を通して全身循環に注射した。血漿サンプルを6時間回収し、HPLCを用いて薬物の分析をした。結果を平均血漿±標準誤差(n=4)で表す。図2Bは、経膣投与後のメスのニュージーランドホワイト種ウサギ中での標準化したメトクロプラミドの血漿濃度を示す。血漿サンプルの薬物を選択的高速液体クロマトグラフ法を用いて分析し、静脈注射で用いたものと同じ時間点で測定したメトクロプロパミド濃度に標準化した。実験を三羽の別々の動物で実行し、結果を平均±標準偏差で表す。
【図3】図3は、直立状態での子宮及び膣を含む女性器官の一部の断面図である。
【図4】図4は、子宮及び膣を含む女性器官の一部の側断面図である。
【図5】図5は、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合又は付着してなる流体不浸透性キャップで覆われた膣タンポン又はタンポン状フォームデバイスの位置を示す。
【図6】図6は、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合した不浸透性材料の一層又は数層で被覆された膣タンポン又はタンポン状フォームデバイスの一実施態様における位置を示す、子宮頸部に隣接した膣領域の側断面図である。
【図7】図7は、デバイスを粘膜接着剤組成物を含む材料から分離する流体不浸透性材料の層で覆われ、該不浸透性材料が膣粘膜の近位部に近接して置いたデバイスの薬用近位部の周りでスカート状の保護部を形成してなる膣タンポン又はタンポン状フォームデバイスの位置を示す。
【図8】図8は、流体不浸透性被膜で被覆されたタンポン又はタンポン状フォームデバイスのもう一つの実施態様を示し、この場合粘膜接着剤組成物を不浸透性層によってタンポン本体から分離された多孔性フォームキャップに添合し、本デバイスに用いたフォーム材料がフォームキャップの形成に用いたフォームデバイス材料と異なる。
【図9】図9は、流体不浸透性材料によって近位端が部分的に被覆されたタンポンを示し、この場合タンポン又はタンポン状フォームの近位端に抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合し、該組成物を錠剤、座薬又はゲルカプセルとして処方する。
【図10】図10は、突出指を有するキャップを形成する流体不浸透性材料によって被覆されたタンポン又はタンポン状フォームデバイスを示し、該キャップ又は指にのみ抗片頭痛薬もしくは鎮吐薬を含む粘膜接着性組成物を添合する。
【図11】図11は、本発明の粘膜接着剤組成物を含むスコップ状ゲルカプセルを添合したキャップを形成する材料の流体不浸透性層によって、近位端で部分的に被覆されたタンポン又はタンポン状フォームデバイスを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の輸送用被覆経膣デバイス並びに片頭痛及び吐気の治療方法に関する。膣タンポン、膣タンポン状フォーム又は別の経膣デバイスのような経膣デバイスは、抗片頭痛薬又は鎮吐薬又はこれらの組み合わせを含む組成物を添合した流体不浸透性被覆材料の一層又は数層によって全体に又は部分的に被覆されており、該組成物は前記薬物を膣粘膜を通して子宮及び/又は全身循環に輸送するために処方されている。特に、本発明は、前記薬物又はその組合せを含む組成物を添合した層、キャップ、カップ又はストリップを形成するフィルム、フォーム、キセロゲル又はフィルムのような流体不浸透性材料の一層又は数層によって全体又は部分的に被覆されたタンポン、タンポン状フォーム又はタンポン状デバイスのような経膣デバイスを用いる抗片頭痛薬又は鎮吐薬の子宮又は全身循環への標的輸送に関する。
【0002】
片頭痛及び/又は吐気の治療方法は、粘膜接着剤組成物を含む流体不浸透性層で被覆した経膣デバイスを膣に挿入する工程を備え、この場合前記組成物を前記不浸透性被覆層から子宮周辺に放出し、前記薬剤を経粘膜的に直接子宮及び/又は全身循環に輸送する。薬剤が子宮近傍に位置する不浸透性層内に濃縮されるので、不浸透性層は薬物放出の量的に更なる制御を可能にする。更に、不浸透性層は、デバイスの非薬物混入部分への薬物の再吸収を防ぎ、また該層が通常は子宮近傍のデバイスの近接端部に位置しているので、該薬物の子宮近傍の膣粘膜への接触を最大化することを保障する。かかる特徴は、経口投与に必要な薬物の濃度よりも低濃度で、従ってより低い全身濃度で片頭痛又は吐気を治療することを可能にし、また経口使用に必要な高濃度の抗片頭痛薬及び鎮吐薬によって引き起こされる副作用から患者を保護する。
【背景技術】
【0003】
片頭痛は、一時的な発作が頻発する慢性的な症状である。患者間でその特徴が異なるなかなか予測できない病気である。かかる予測不能性及びばらつきは、独身患者に見られる片頭痛発作でもまた観察される。片頭痛の最も際だった特徴は、嘔吐並びに音及び光に対する極度の敏感さを伴う又は伴わない頭痛及び吐気に伴って起きる潜在的な身体障害である(非特許文献1)。症状のばらつき及び複雑さゆえ、片頭痛持ちの患者の効果的な処置が課題になっている。
【0004】
“主要な頭痛”と見られている片頭痛は、女性に男性の約3倍の頻度で起こる。片頭痛の発生率は地理的に大きく変化し、東南アジアの1.5%から西洋諸国の14%にまで及んでいる(非特許文献2,3及び4)。
【0005】
患者への抗片頭痛薬及び鎮吐薬の経口的な全身投与は、一つには片頭痛が嘔吐を伴うことが多く、経口投与した薬物がその効能を取り得る前に嘔吐されてしまうため、あまりうまくいっていなかった。片頭痛及び/又は吐気を治療するための唯一実現可能な投与経路は、静脈投与又は別の注射可能な投与である。これらは、一般に診療所又は病院への訪問を必要とする。従って、片頭痛又は吐気をうまく治療できないのは、薬効よりもむしろ輸送方法に基づく。
【0006】
膣粘膜を介して子宮及び/又は全身循環への経膣薬物輸送経路が本発明者等によって発見され、例えば特許文献1、2、3、4、及び5に開示されており、これら全てをここに引用して援用する。
【0007】
上記特許文献及び出願書類に記載された経膣輸送経路には依然として改善の必要があり、これは特に効果的な定量薬物輸送に関する。
【0008】
従って、本発明は、抗片頭痛薬及び鎮吐薬の膣粘膜を介した子宮又は全身循環への直接的な改善された経粘膜的な輸送に関するもので、経膣デバイスの近位部を被覆した一つ又はそれ以上の不浸透層内での薬物のより定量化隔離により更に効果的になる。
【0009】
それゆえ、本発明の主目的は、ストリップ若しくは着脱可能なキャップ又はカップを形成するフィルム、フォーム又はキセロゲルの流体不浸透性層によって被覆されるか、又は近位部が被覆されたタンポン、タンポン状フォーム又は別の経膣デバイスのような経膣デバイスを提供することにあり、この場合前記不浸透層が抗片頭痛薬又は鎮吐薬若しくはこれらの組み合わせを含む粘膜接着剤組成物を更に備え、前記組成物が前記層から膣粘膜を介して子宮及び/全身循環へほぼ定量的に放出、輸送される。
【0010】
【非特許文献1】頭痛、第39巻、1999年、p.720-727
【非特許文献2】GRIM、頭痛、第12巻、1992年、p.229
【非特許文献3】JAMA、第267巻、1992年、p.64-69
【非特許文献4】薬物経済学、第11巻、1997年、p.1-10(補遺.1)
【特許文献1】米国特許第6,086,909号公報
【特許文献2】米国特許第6,197,327号公報
【特許文献3】米国特許第6,572,874号公報
【特許文献4】米国特許継続出願番号10/600,849
【特許文献5】米国特許継続出願番号10/349,029
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明の一態様は、ストリップ若しくは着脱可能なカップ又はキャップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルのような不浸透性材料の一層又は数層で完全に又は部分的に被覆され、該層に治療量及び/又は一時的軽減量の抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を完全に又は部分的に添合した経膣デバイスである。
【0012】
本発明の他態様は、着脱可能なキャップ、カップ又はストリップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルのような流体不浸透性材料の一層又は数層によって被覆され、該層に膣壁を介して子宮及び/又は全身循環へ輸送するための治療量及び/又は一時的軽減量の抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む組成物を添合した経膣タンポン、タンポン状フォーム又は別の経膣デバイスである。
【0013】
本発明の更なる他態様は、着脱可能なキャップ、カップ又はストリップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルのような流体不浸透性材料の一層又は数層によって完全に又は子宮近位部が被覆され、該層に抗片頭痛薬又は鎮吐薬若しくはその組み合わせを含む粘膜接着剤組成物を添合した経膣デバイスを用いる子宮又は全身循環への薬物の標的輸送方法である。
【0014】
本発明の更なる他態様は、着脱可能なキャップ、カップ又はストリップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルのような流体不浸透性材料の一層又は数層によって近位部が被覆され、該層に抗片頭痛薬又は鎮吐薬若しくはその組み合わせ、又は片頭痛薬もしくは鎮吐薬の何れかと他の治療に効果的な薬剤もしくは製薬上適合した賦型剤との組み合わせを含む粘膜接着剤組成物を添合した膣タンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスを用いる子宮又は全身循環への薬物の標的輸送方法である。
【0015】
本発明のまた更なる態様は、経膣デバイスの近位部を被覆する不浸透性層に添合した抗片頭痛薬又は鎮吐薬若しくはこれらの組み合わせを含む粘膜接着剤組成物であり、この場合流体不浸透性被覆材料の不浸透性層が、着脱可能なキャップ、カップ又はストリップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルであり、前記組成物を上記層から定量的に放出して有効量の抗片頭痛薬又は鎮吐薬を子宮内に又は直接全身循環に輸送し、これによって消化管を迂回する。
【0016】
本発明のまた更なる態様は、経膣デバイスを被覆する不浸透性層に添合するための粘膜接着剤組成物であり、この場合該組成物が麦角アルカロイド、麦角アルカロイド誘導体、抗ヒスタミン剤、バルビツレート、非ステロイド抗炎症薬、鎮痛剤、セロトニン拮抗薬、ニューロキニン−1拮抗薬、カンナビノイド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)拮抗薬、ステロイド、交感神経用作用薬、鎮静剤及び抗てんかん薬からなる群から選択した抗片頭痛薬又は鎮吐薬、又はこれとメトクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、CP55940、SR144528、アプレピタント、シクリジン、プロメタジン、BIBN-4096BS、及びSB-(+)-273779からなる群より選択した鎮吐薬との組み合わせ及び/又は更に他の治療上効果的な薬剤もしくは薬剤上適合する賦型剤との組み合わせとを備える。
【0017】
本発明のまた更なる態様は、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴスチン、ブタルビタール、フェノバルビタール、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラク、イブプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、アセチルサリチル酸、フルルビプロフェン、トルフェナム酸、ブトルファノール、メペリジン、メタドン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ラザトリプタン、ゾルミトリプタン、アルモトリプタン、エレトリプタン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、イソメテプテン、クロルプロマジン、ジアゼパム、ドロペリドール、バルプロ酸、ガバペンチン、トピラメート、ジバルプロックスナトリウムからなる群より選択した抗片頭痛薬、又はメクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、CP55940、SR144528、アプレピタント、シクリジン、及びプロメタジン、BIBN-4096BS及びSB- (+) -273779からなる群より選択した鎮吐薬、又はそれらの組み合わせ、若しくはこれらと更に他の治療上効果的な薬剤との組み合わせを備える粘膜接着剤組成物である。
【0018】
本発明の他態様は、片頭痛又は例えば伝染病、妊娠、中毒、手術、放射線治療若しくは化学療法薬の投与のような他の健康状態に付随した片頭痛及び頭痛の痛み、吐気並びに嘔吐を治療、処置及び制御する方法であり、該方法は膣粘膜に粘膜接着剤組成物を添合した一層又は数層の不浸透性被覆材料で被覆又は部分的に被覆した経膣デバイスを接触させる工程を備え、ここで該組成物が麦角アルカロイド、麦角アルカロイド誘導体、抗ヒスタミン剤、バルビツレート、非ステロイド抗炎症薬、鎮痛剤、セロトニン拮抗薬、ニューロキニン−1拮抗薬、カンナビノイド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)拮抗薬、ステロイド、交感神経用作用薬、鎮静剤及び抗てんかん薬からなる群より選択した坑片頭痛薬またはこれと鎮吐薬との組み合わせ及び/又は更なる他の治療上効果的な薬剤もしくは薬剤上適合する賦型剤との組み合わせを含むもので、また薬剤を膣粘膜に又は膣粘膜を介して定量的に、制御された、急速又は緩徐に、持続的若しくはパルス的に輸送し得る時間前記デバイスと膣粘膜との接触を維持する工程を備え、ここで前記組成物が更に少なくとも一つの粘膜接着剤及び/又は一つの脂肪親和性もしくは親水性の担体及び/又は一つの浸透エンハンサー及び/又は任意の別の薬剤上適合する賦型剤を含む。
【0019】
本発明の更に他の態様は、片頭痛もしくは他の病気や体調に付随した片頭痛もしくは頭痛及び/又は吐気及び嘔吐に苦しんでいる女性患者を治療するための方法であり、該方法が粘膜接着剤組成物又は該組成物を添合した膣内デバイスを膣粘膜に接触させる工程を備え、前記粘膜接着剤組成物が少なくとも一つの抗片頭痛薬及び/又は一つの鎮吐薬を含む。
【0020】
本発明の更に他の態様は、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の輸送用粘膜接着剤組成物であり、該組成物が0.00001から45mg/体重1kg、好ましくは0.001から15mg/体重1kg、最も好ましくは0.1から8mg/体重1kgの単位量形態で、特に限定されないが、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴスチン、ブタルビタール、フェノバルビタール、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラク、イブプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、アセチルサリチル酸、フルルビプロフェン、トルフェナム酸、ブトルファノール、メペリジン、メタドン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ラザトリプタン、ゾルミトリプタン、アルモトリプタン、エレトリプタン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、イソメテプテン、クロルプロマジン、ジアゼパム、ドロペリドール、バルプロ酸、ガバペンチン、トピラメート、ジバルプロックスナトリウムからなる群より選択した抗片頭痛薬、又はメクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、CP55940、SR144528、アプレピタント、シクリジン、及びプロメタジン、BIBN-4096BS及びSB- (+) -273779からなる群より選択した鎮吐薬若しくはこれらの組み合わせ、又は更に他の治療上効果的な薬物及び/又は膣粘膜を通して女性患者に薬物を輸送するのに適した薬剤上適合した賦型剤との組み合わせを含み、前記組成物が主として有効量の抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬と、薬剤の膣粘膜に及びそれを介した輸送のために前記組成物の膣粘膜への接着を促進する少なくとも一つの粘膜接着剤と、又は少なくとも粘膜接着剤及び/又は浸透エンハンサー及び/又は脂肪親和性もしくは親水性の担体を含む混合物との組み合わせからなる。
【0021】
本発明の更に別の態様は、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の膣輸送用経膣デバイスであり、該デバイスが着脱可能なキャップ、カップ又はストリップを形成する不浸透性のフィルム、フォーム、フィルム又はキセロゲルの層によって完全に又は部分的に被覆された膣タンポン、膣タンポン状フォーム、膣リング、膣ペッサリー、膣スポンジ又は膣タブレットであり、前記層に少なくとも一つの抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む組成物が添合されてあり、該組成物が粉末、クリーム、ローション、錠剤、カプセル、軟膏、座薬、リポソーム懸濁液、マイクロエマルジョン、生体接着剤微粒子又はマイクロカプセル、生体接着剤のナノ粒子もしくはナノカプセル、溶液、エマルジョン又はゲルとして処方される。
【0022】
本発明の更に別の態様は、賦型剤と組み合わせた抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物であり、該賦型剤が飽和脂肪酸の半合成グリセリドのような脂肪親和性担体、平均分子量6000のポリエチレングリコール、平均分子量1500のポリエチレングリコール、平均分子量400のポリエチレングリコール、状々な大きさのいくつかの繰り返し単位からなるブロック重合体、これらの共重合体又はこれらの混合物のような親水性担体、アルギン酸塩、ペクチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体等の粘膜接着剤、胆汁酸塩、有機溶媒、エトキシジグリコール、エステル交換ストーンオイル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノール、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレン大豆ステロールエーテル、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジオレエート、ポリオキシエチレングリセリルラウレート、ポリオキシエチレングリセリルオレエート、プロピレングリコールオレエート、プロピレングリコールステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレントリステアレート、ポリオキシエチレン水素化キャスター油、ポリオキシエチレンアーモンドオイル、ポリオキシエチレンアプリコット実油、ポリオキシエチレンカプリリックグリセリド又はポリオキシエチレンカプリックグリセリド、ラウロイルマクロゴールグリセリド、ポリオキシエチレンオレエート又はポリオキシエチレングリセリルステアレートのような浸透エンハンサーからなる群より選択される。
【0023】
本発明の更に他の態様は、薬剤上適合した賦型剤を含む粘膜接着剤組成物であり、該賦型剤が脂肪親和性担体又は親水性担体、浸透エンハンサー及び粘膜接着剤で、この場合脂肪親和性又は親水性担体が約60から90重量%の量で存在し、粘膜接着剤が約5から25重量%の量で存在し、浸透エンハンサーが約5から20重量%の量で存在する。
【0024】
本発明の更に他の態様は、約75%の脂肪親和性担体(スポサイア(SUPPOCIRE)(登録商標))、約10%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び約15%のエトキシグリコール(トランスキュトール(TRANSCUTOL)(登録商標))を含む組成物である。
【0025】
本発明の更に他の態様は、抗片頭痛薬又は鎮吐薬の子宮又は全身循環への輸送用タンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスであり、該タンポン、フォーム又はデバイスが抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合した流体不浸透性材料からなる永続的な又は脱着可能なキャップ又はカップで被覆された子宮近傍に位置するキャップ又はカップ状部分を備える。
【0026】
本発明の更に他の態様は、高濃度の抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を含むリム又はストリップを更に備える流体不浸透性被覆材料で被覆された子宮近傍に位置する脱着可能な又は永続的に取り付けたキャップもしくはカップを具えるタンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスである。
【0027】
本発明の更に他の態様は、永続的な又は脱着可能なリムで囲まれた子宮近傍に位置する流体不浸透性キャップ又はカップを具えるタンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスであり、前記リムが子宮頸部の円蓋領域に延在する指を有し、該キャップ、カップ又は指の先のいずれかが少なくとも一つの抗片頭痛薬又一つの鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を備える。
【0028】
本発明の更に他の態様は、体温で溶けるワックスのような温度感受性材料で近位端を完全に又は部分的に被覆したタンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスであり、前記材料が少なくとも一つの抗片頭痛薬又は一つの鎮吐薬をその中に懸濁して備え、この場合前記タンポン又はデバイスが更に流体不浸透性の分解可能な又は分解不可能な薄く柔軟で非多孔性の材料の一層又はいくつかの層によって覆われており、該材料としては例えば、プラスチックフィルム、被覆ガーゼ、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、合成ポリマー又はそのアルギン酸塩のような多糖類との組み合わせ、デキストラン、セルロース、コラーゲン、アルブミン又はゼラチンのようなタンパク質、或いはポリラクチド、ポリグリコリド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酪酸、ポリバレリン酸、ポリラクチド−コ−カプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリオルソエステル及びこれらの混合物及び共重合体のようなポリヒドロキシ酸、又はポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸及びこれらの誘導体のような非分解性ポリマー、又は該デバイスを被覆するか又は該デバイスをスカートのように取り囲むか又は膣の周りに接触した際に傘のように開くその他の適切な不浸透性材料がある。
【0029】
本発明の更に他の態様において、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物は、一定の、制御された又は持続的に制御された放出形態の生態接着剤微粒子、クリーム、錠剤、ソフトゲルカプセル、ローション、軟膏、溶液、ゲル又は熱可逆性ゾルゲルとして処方され、経膣デバイス、タンポン又はタンポン状フォームの不浸透性材料被膜に位置し、取り付けられ、又は取り入れられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(定義)
ここで使われている様に:
“薬物”、“活性化合物”、“化学物質”、“活性成分”又は“剤”は、片頭痛、吐気又は吐気及び/又は嘔吐とともに起きる他の身体的な状態を治療、処置又は制御するのに適した治療上効果的な化合物を意味する。
【0031】
“薬剤”又は“治療薬”は、抗片頭痛薬、鎮吐薬、この両方の混合物又はその他の治療上有効な製薬上適合した薬剤を意味する。
【0032】
“抗片頭痛薬”は、片頭痛に付随した病理生理学上の症状を軽減する薬物を投与することによる片頭痛の治療に関連する及び適した薬剤を意味する。
【0033】
“鎮吐薬”又は“抗嘔吐薬”は、一般に片頭痛若しくは注射、中毒、化学療法、放射線治療、妊娠、手術又は吐気を催させる薬の投与のような他の病気もしくは体調に付随した吐気及び/又は嘔吐を部分的又は完全に抑制するのに適した薬物を意味する。
【0034】
“近位端”は、タンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスを挿入した際に子宮及び膣の上壁に最も近接位置した膣の端を意味する。
【0035】
“遠位端”は、膣にタンポン、タンポン状フォーム又は他の経膣デバイスを挿入した際に子宮及び膣の上壁から離れて位置する経膣デバイスの末端を意味する。
【0036】
“経膣デバイス”は、ペッサリー、スポンジ、錠剤、リング又は一般に膣に挿入可能な他の構造物のような膣タンポン、分解可能な又は分解しない膣フォーム、分解可能な又は分解しないタンポン状フォーム若しくは他の経膣デバイスを意味する。
【0037】
“製薬上の成分”又は“賦型剤”は、本発明の粘膜接着剤組成物に添加した薬理学的に不活性で製薬上適合した化合物を意味する。該成分又は賦型剤は薬理学的特性を持たない。
【0038】
“迅速な輸送”は、粘膜接着剤組成物からの薬の初期の即座で迅速な放出及び輸送を意味する。一般に、迅速な輸送は、粘膜接着剤組成物又はデバイスからの薬の放出及び血漿への薬の輸送における時間依存減少に従う。
【0039】
“持続的な輸送”は、処方物又はデバイスからの薬物の持続した且つ途切れない放出、並びに持続的な状式で薬等を輸送することを意味する。持続的な輸送を迅速な輸送の前に行ってもよい。
【0040】
“パルス的輸送”は、断続的間隔での薬の放出及び輸送を意味する。かかるパルス的輸送は、例えば、可溶性の不活性被覆層に介在させた個々の層中で薬を処方することによるか、又は異なった製薬上の成分を使用することによって提供することができる。
【0041】
“化学療法”は、ガン細胞に対して細胞停止作用及び/又は細胞毒性を示す化学物質又は薬物を用いて病気を治療することに関する化学物質を用いたガンの治療を意味する。
【0042】
“エステル交換ストーンオイル”は、植物油に含まれるグリセリドのグリセロールの一部を異なった長さのポリオキシエチレングリコールで置換することによってエトキシ化した植物油を意味する。かかる置換の結果、親水的な性質を生じる。エステル交換ストーンオイルの例は、ラブラフィル(LABRAFIL)(登録商標)、特にラブラフィル(登録商標)M1944 CSであり、ガッテフォッセ(Gattefosse)から市販されている。
【0043】
“粘膜”又は“粘膜組織”は、外科手術をせずに身体外から接触可能な表面上皮組織を意味する。
【0044】
“粘膜用組成物”又は“粘膜接着剤組成物”は、粘膜組織に投与してかかる粘膜組織に接着させるのに適した組成物を意味する。
【0045】
“浸透エンハンサー”は、粘膜障壁を経た薬剤の輸送を促進し、粘膜上皮へ、その中に、並びにそれを介して薬物の質量輸送を増大させる化合物を意味する。
【0046】
(発明の詳細な説明)
本発明は、治療量及び/又は一時的軽減量の抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合した一層、複数層、キャップ、カップ、単独ストリップ又は複数ストリップとして経膣デバイスに永続的に又は脱着可能に取り付けたフィルム、フォーム、フィルム、キセロゲル又は他の不浸透性材料のような流体不浸透性被覆材料で不浸透的にシールされた近位端を備えるタンポン、タンポン状フォーム又は他の型の経膣デバイスのような経膣デバイスが、片頭痛及び吐気を制御又は治療するために前記薬物を子宮及び/又は全身循環に輸送するのに適した手段を示すという発見に基づいている。
【0047】
従って、本発明は、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬、又はこれらの組み合わせを含む粘膜接着剤組成物を添合するか又は付着させた流体不浸透性被覆材料の一層又は数層によって完全に又は少なくとも部分的に被覆した経膣デバイスを用いて、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を子宮及び/又は全身循環に標的輸送することに関する。かかる経膣デバイスにより、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を直接子宮又は全身循環に輸送することができ、また片頭痛又は吐気を経口投与に必要なものよりも低い濃度の抗片頭痛薬又は鎮吐薬によって治療でき、それ故、より低い全身濃度及びより少ない副作用をもたらす。
【0048】
更に本発明は、薬物を好ましくは抗片頭痛薬又は鎮吐薬の輸送用膣内タンポン又はタンポン状フォーム若しくは他の経膣デバイスを用いて膣内に又は経膣的に投与する場合、子宮が該薬の子宮及び全身循環への優先的摂取を可能にし、これにより初回通過の肝劣化及び解毒を迂回することができるという発見に基づく。
【0049】
本発明は、これまで認識されていなかったいくつかの利点を提供する。近位端で流体不浸透性材料で被覆された経膣デバイスが更に薬物を備える粘膜接着剤組成物を含む場合、粘膜接着剤組成物から放出された薬が該デバイスの末端多孔質の非被覆部分に吸収されるのを防止して、薬の全量を経粘膜的な吸収に利用可能にする。更に、粘膜接着剤組成物をワックスのような温度感受性担体に組み込む場合、該担体が膣に挿入した際に溶けて組成物及び薬を放出する。かかる条件下で、薬物の全量を含む粘膜接着剤組成物が放出され、子宮に最も近い上方の膣壁に輸送され、ここで粘膜接着剤組成物の特性により該組成物が前記膣壁に被着し、薬が膣壁を通して子宮及び/又は全身循環に輸送される。したがって、本発明は、流体不浸透性被覆物、すなわち層に付着又は添合された粘膜接着剤組成物として処方された薬のほぼ全量を放出及び輸送するという薬物の定量的に一層有効な輸送を可能にする。
【0050】
本発明による経粘膜膣輸送システムは、頭痛、吐気又は嘔吐に苦しむ女性患者に抗片頭痛薬及び/又は制吐薬(鎮吐薬)を輸送するための実行可能な選択肢を提供する。経口経路とは異なり、ここに記載した経膣薬剤輸送システムを用いた抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の投与は、嘔吐反射を刺激しないため、片頭痛を伴う嘔吐を減ずる。更に、膣粘膜を通じて経粘膜的に輸送された薬は、初回通過の肝解毒及び劣化を迂回して全身循環系に入る。その結果、かかる投与の経路は、初回通過の実質的な肝代謝を受けて、薬の大部分を不活性化される抗片頭痛薬及び鎮吐薬を含む薬にとって特に有利である。
【0051】
片頭痛は一般に激しい頭痛、吐気及び嘔吐を伴うので、この種の薬物輸送は特に片頭痛の治療に適している。吐気及び嘔吐が経口による効果的な片頭痛の治療を妨げる。その理由は、患者が薬を吸収し苦痛及び吐気に必要とされる緩和を達成するに十分な時間胃に薬を保持しておくことができないためである。従って、吐気及び嘔吐を伴う片頭痛及び他の体調を治療するための経口による薬物輸送は、実際に輸送された薬物量について予測不能であり、また効果が薄い。更に、女性は普段から月経の制御にタンポン等の経膣デバイスを挿入することに通常なれており、片頭痛症状を治療上制御するためのかかる代替輸送経路を、劇的な精神的苦痛無しに受容することが期待される。
【0052】
本発明の方法は、薬物の投与が女性患者の同様の症状を緩和する場合、片頭痛症状を治療及び処置するため、また薬物によって引き起こされる吐気、化学療法、放射線治療、手術後の吐気、手術前の投薬、月経前症候群(PMS)、月経、妊娠、授乳及び更年期障害のような他の症状に伴う吐気を処置するための抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の輸送用の新規で且つ更に有効な経路を提供する。該方法は、吐気を催している患者の消化管への薬物投与を回避し、初回通過の過剰な肝代謝から薬剤を保護し、抗嘔吐薬及び/又は鎮吐薬の急速又は緩徐で、持続的又はパルス的輸送を可能にし、血液循環中のかかる薬剤の治療上効果的な濃度をずっと少ない薬物量により達成する。
【0053】
頭痛、吐気及び嘔吐を治療及び処置する方法は、片頭痛の始まる前後、手術前、月経期又は妊娠の間に、或いは頭痛、吐気及び嘔吐の現れる前後に、本発明の経膣デバイスに取り入れた治療上効果的な量の適切な抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を投与することからなる。経膣デバイスの少なくとも一部分を被覆する不浸透性層に付着又は添合された粘膜接着剤組成物は、該経膣デバイスに取り付けて膣内に導入され、膣粘膜に密接させ、粘膜を介して子宮及び/又は全身循環に直接吸収、輸送する。
【0054】
ここに記載したように膣経路による抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の投与は、血液系の初回通過循環中に肝臓によって除去される投与薬物の部分を減少させ、更に薬物の治療上の効果を高める。
【0055】
I.抗片頭痛薬又は鎮吐薬の経膣輸送方法
抗片頭痛薬又は鎮吐薬の経膣輸送方法は、少なくとも一つの抗嘔吐薬又は一つの鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合又は付着させた流体不浸透性材料の一層又は数層で少なくとも部分的に被覆された経膣デバイスの調製を備える。該粘膜接着剤組成物は抗片頭痛薬及び鎮吐薬の混合物を含んでもよく、また付加的に且つ任意に他の治療上の薬剤及び/又は他の薬剤上適合した賦型剤を含んでもよい。
【0056】
一般に、粘膜接着剤組成物は、活性な抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を膣粘膜を介して子宮及び/又は全身循環に吸収するに必要な時間該組成物を膣壁への接着することができる少なくとも一つの粘膜接着剤を含む。かかる抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の輸送は経口投与せずに起こり、従って頭痛、痛み、吐気及び嘔吐の治療並びに処置のために抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を経口投与する際に一般的に生じる治療により誘導される嘔吐を排除する。頭痛、光感受性、痛み、吐気及び嘔吐は、片頭痛に付随した主たる症状であるばかりか、他の体調や症状にも付随するもので、例えば、化学療法薬の投与の結果として放射線治療後、手術前後、月経期間、妊娠、授乳、及び更年期の間等にも生じる。
【0057】
A.経膣輸送の利点
片頭痛及び/又は頭痛、吐気及び嘔吐の症状を処置するのに用いる現存の治療上の試みは、主として経口の、経静脈の、経鼻の又は経直腸のドラッグデリバリーシステムに依っている。残念ながら、片頭痛患者の消化管を通じた薬物の投与は、嘔吐を取り除くと言うよりもむしろ刺激しており、結果として、かかる症状の治療に不適切であった。その一方で、非経口的な筋肉注射又は皮下注射、スプレー式点鼻薬、又は直腸座薬の挿入を用いて片頭痛患者への薬物の経口投与時に直面する問題及び困難を迂回する。この点において、注射による方法は通常医療施設への訪問及び訓練を受けた健康管理の専門家の助力を必要とし、一方直腸からの投与形態の挿入では、多くの患者が不愉快さ及び/又は感情的な不快さを感じている。片頭痛治療用の鼻からの輸送システムは、痛み及び吐気の緩和を達成するために必要な薬物量が相当量の薬物の初回通過による肝失活を考慮するように調整する必要があり、従って肝臓での代謝に高い耐性のある薬物のみに効果的であるので、部分的に成功しているだけである。
【0058】
経膣輸送経路は、診療所又は病院で熟練した健康管理の専門家に面会する必要なしに、患者の制御環境下における急速又は緩徐で、持続的又はパルス的な薬物輸送を可能にする。本発明の粘膜接着剤組成物及び経膣デバイスを用いると、効果的な量の所望治療薬を、片頭痛患者の経口薬投与後によく起きる嘔吐を防いでいる間に全身循環系に再現可能な方法により輸送することができ、また注射剤による不都合な効果や要求の全てを取り除く。更に、膣粘膜を通じて輸送された薬物の血液循環は肝臓による初回通過循環を迂回するため、経膣輸送の薬物量は経口投与される薬物のものに較べて実質的により少ない。この点で、膣からの輸送は何倍も有効である。
【0059】
従って、本発明は、抗片頭痛薬及び鎮吐薬を経口、非経口及び鼻から投与する間に、頭痛又は吐気に苦しんでいる患者に観察される副作用及び制限を克服するこれら薬剤の改善された輸送経路の発見に関する。経膣デバイスの流体不浸透性層に付着又は添合した特別に処方した粘膜接着剤組成物を用いて、治療薬物の輸送を直接膣粘膜に集中させることによる女性患者の解剖学的利点を利用している。
【0060】
それゆえ、本発明に係わる抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の最近開発された経膣輸送方法は、かかる薬物の全身への輸送における重要な改善及び片頭痛治療並びに上述した他の病気及び症状に付随した頭痛、吐気及び嘔吐に至る症状の治療の重要な進歩を示している。
【0061】
B.抗片頭痛薬及び鎮吐薬
抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の経膣輸送は、前記抗片頭痛薬又は鎮吐薬の粘膜接着剤組成物への処方、経膣デバイスの少なくとも一部分を被覆する流体不浸透性材料の一層、複数層、ストリップ、カップ又はキャップへの該組成物の添合或いは付着、並びに該経膣デバイスの膣への導入を備える。
【0062】
本発明に使用するのに適した抗片頭痛薬の例は、麦角アルカロイド、麦角アルカロイド誘導体、抗ヒスタミン剤、バルビツール酸塩、非ステロイド抗炎症薬、鎮痛剤、セロトニン拮抗薬、ニューロキニン−1拮抗薬、カンナビノイド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)拮抗薬、ステロイド、交感神経用作用薬、鎮静剤及び抗てんかん薬のタイプである治療薬である。
【0063】
本発明による片頭痛治療に有用な抗片頭痛薬は、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴスチン、ブタルビタール、フェノバルビタール、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラク、イブプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、アセチルサリチル酸、フルルビプロフェン、トルフェナム酸、ブトルファノール、メペリジン、メタドン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ラザトリプタン、ゾルミトリプタン、アルモトリプタン、エレトリプタン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、イソメテプテン、クロルプロマジン、ジアゼパム、ドロペリドール、バルプロ酸、ガバペンチン、トピラメート及びジバルプロックスナトリウム等からなる群より選択される。
【0064】
本発明による吐気の治療に有用な特定の鎮吐薬は、メトクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、アプレピタント、シクリジン及びプロメタジンからなる群より選択される。
【0065】
抗片頭痛薬又は鎮吐薬は、それぞれ単独又は組合わせて若しくは他の治療上効果的な薬剤又は製薬上適合した賦型剤と組み合わせて処方し、輸送することができる。一般に、該薬物は少なくとも一つの粘膜接着剤、一つの担体及び一つの浸透性薬剤と組み合わせて処方される。
【0066】
抗片頭痛薬又鎮吐薬は、その治療効果を行使するに十分な量、通常は約0.00001から約45mg/体重1kg、好ましくは約0.001から15mg/体重1kg、さらに好ましくは約0.1から8mg/体重1kgで存在する。
【実施例】
【0067】
C.抗片頭痛薬及び鎮吐薬の経膣輸送の確認
膣粘膜を通じた抗片頭痛薬及び鎮吐薬の経粘膜的な輸送により、治療上有用な全身の血漿濃度を生じる。その結果、膣への投与は、片頭痛及び吐気のそれぞれの治療に有益な効果を有する薬剤の経口服用への実現可能な代案を示す。
【0068】
本発明による方法の実現可能性を確認するため、一連の生体内での薬物動態に関する検討を、メスのニュージーランドホワイト種ウサギを用いて行った。抗片頭痛薬であるスマトリプタンの溶液及び鎮吐薬であるメトクロプラミドの溶液を、耳周縁の静脈に注射することによって又はゴムチューブを用いて経口的に胃に、また薬物を座薬に組み込むことによって経膣的に投与した後、所定時間毎に動物から血漿サンプルを回収し、感度のよい分析方法を用いて薬物濃度を定量分析した。
【0069】
モデル依存的な薬物動態の分析を用いて、最大血漿濃度(cmax)、最大血漿濃度に到達するに必要な時間(tmax)、無限大に外挿した薬物の総体露曝量(AUC∞)、及び半減期(t1/2)のような関連した薬物動態のパラメーターを計算する。全ての検討は、別々の動物で少なくとも三回繰り返し、薬物動態の算出をウィンノンリン4.1(WinNonlin 4.1)を用いて実行した。
【0070】
抗片頭痛薬であるスマトリプタンに関する結果を図1A及び1Bに示す。
【0071】
図1Aは、経膣投与によるメスのニュージーランドホワイト種ウサギにおける抗片頭痛薬であるスマトリプタンの薬物動態を説明するグラフである。各動物は、体重1kg当たり0.7mgのスマトリプタンを溶液として受容した。白丸は静脈注射後の血漿濃度を示し、黒四角は薬物溶液の経口投与後の血漿中で測定した対応する薬物濃度を示す。実験は三種の異なった動物で行い、結果を平均±標準偏差で示す。図1Bは、親脂肪性の輸送デバイスを膣に挿入した後のメスのニュージーランドホワイト種ウサギにおける抗片頭痛薬であるスマトリプタンの全身性の血漿濃度を示す。各動物に体重1kg当たり0.7mgのスマトリプタンを受容させ、等量のスマトリプタン溶液の経口投与後に同様の実験で測定されたCmaxに対して血漿濃度を標準化した。実験を三羽の別々の動物で行い、結果を平均±標準偏差で示す。
【0072】
これらの検討において、体重1kg当たり0.7mgのスマトリプタンの投与量を使用した。分析のために、かかる一回分に微量の[3H]を補い、これを用いて流体シンチレーションカウンターにより血漿の薬物濃度を定量した。結果は平均±標準偏差で示す。
【0073】
図1Aは、薬物溶液の非経口的注入がほぼ直ちに高血漿濃度となり、これが191±6分の見かけのt1/2で急激に下がることを示す。治療上、15.4±4.5μg/mlのCmaxを有する初期高濃度は、片頭痛及びそれに付随した症状の効果的な緩和の速やかな開始を示唆する。しかしながら、該薬物を血流中にボーラスとして投与するため、より長い作用期間を支持する持続性の輸送ではない。代謝による全身循環からスマトリプタンの除去及び腎排泄が、注入後の抗片頭痛効果の時間が決まる支配的な機構である。
【0074】
その一方、経口投与では、ウサギ内でのスマトリプタンの全身血清濃度が非常にゆっくりと上昇する。このことは、薬物が消化管から上皮障壁を越えて粘膜組織の血管に物理的に移動するために必要な吸収段階を動力学的に明確に示している。イオン化、脂肪親和性、及び流体力学的半径を含む薬物分子の物理化学的な性質が吸収速度を決める。
【0075】
2つの全身性プロファイルの比較は、スマトリプタンの経口投与が非経口的注入に較べて抗片頭痛薬の効果を遅らせることを明確に示す。投与薬剤の静脈及び口からの両経路に関して評価したTmax値は、経口投与後のスマトリプタンの最大効果が少なくとも100の因数だけ遅れることを示し、このことは治療上劇的に不利である。
【0076】
静脈経路及び経口経路経て投与された同じ服用量に対する体への総露曝量は、それぞれの時間/血漿濃度曲線下の総面積により示されているように、大きく異なる。算出されたAUC∞は、それぞれ経口投与で958±163μg×分/ml、非経口投与で10868±90μg×分/ml(約11倍高い)である。経口投与の見かけのt1/2は1210±163分で、静脈からのデータから計算されたものに較べてかなり長く、除去よりも吸収が経口投与後の該薬物の薬物動態的な律速段階になることを示唆している。
【0077】
抗片頭痛薬の経膣投与の治療上の可能性をよく使われる経口投与と比較するために、スマトリプタン組成物を含む親脂肪性の経膣デバイスの挿入後に測定したスマトリプタンの全身血漿レベルを経口投与後に得られた最大濃度に標準化した。結果を図1Bに示す。該表示おいて、直線は該薬物の膣粘膜及び口腔粘膜を通したそれぞれの吸収に関する同様の速度過程を示している。しかしながら、このプロファイルの初期ピークは、本明細書に記載したような経膣デバイスを用いるスマトリプタンの経膣投与が、従来の経口投与に較べて、全身循環への該薬物の更に迅速な輸送をもたらすことを強く示唆している。経膣投与に対して算出されたTmaxは〜15分であり、経口経路と比べた場合に、本方法が抗片頭痛薬の効果が約6倍速く始まりうることを暗示する。この治療上の利点は、前述の静脈注射後のボーラス効果に匹敵する可能性がある。同量投与後のスマトリプタンの体への全露曝量が、経口投与後に測定された値の<5%である。これは、不完全な吸収のため、経口輸送方法に関するよりも多量の抗片頭痛薬を経膣輸送デバイスに取り入れることが必要になる。経膣輸送後の0.7mg/kgに対して計算されたAUC∞は23.0±0.1μg×分/mlであった。
【0078】
抗片頭痛薬であるスマトリプタンで行ったのと同様の検討を、鎮吐薬の経膣輸送での値を明らかにするために実行した。この治療分野のモデル薬物としてメトクロプラミドを選択した。結果を図2A及び2Bに示す。
【0079】
図2Aは、メスのニュージーランドホワイト種ウサギにおける鎮吐薬であるメトクロプラミドの静脈内投与後の血漿濃度を示す。0.5mgの薬物溶液を無菌食塩水の溶液として調製し(0.9%;重量/重量)、耳周縁の静脈を通じて全身循環に注射した。血漿サンプルを6時間回収し、高速液体クロマトグラフィーを用いて薬物の分析をした。結果を血漿±標準誤差(n=4)の平均値として示す。図2Bは、メスのニュージーランドホワイト種ウサギにおけるメトクロプラミドの経膣投与後の標準化した血漿濃度を示す。血漿サンプルを選択的高速液体クロマトグラフ法を用いて該薬剤の分析をして、静脈内投与後と同じ時間点で測定したメトクロプラミド濃度に標準化した。実験は三羽の別々の動物で行い、結果を平均±標準誤差で示す。
【0080】
三羽のメスのニュージーランドホワイト種ウサギに、経静脈、経口及び経膣で0.05-0.1mg/体重1kgで投与した。血液サンプルを種々の時間点で取り出し、血漿濃度を、インターナショナルジャーナルオブクリニカルアンドファルマコロジカルセラピー(Int. J. Clin. Pharmacol. Ther.)、40巻、2002年、p.169-174、に記載されている選択的高速液体クロマトグラフ法を用いて定量した。モデル依存的な薬物動態のパラメーターを、ウィンノンリン4.1(WinNonlin 4.1)を用いる時間/血漿濃度のデータから計算した。
【0081】
0.9%食塩水で調製したメトクロプラミド溶液の静脈内注射により、平均血漿濃度が直ちに60ng/mlに達した(図2A)。一次分配及び除去段階の結果、84±38分の見かけt1/2を有する血漿濃度の単相下り勾配を生じた。AUC∞で測定された体への総露曝量は、3845±1415ng×分/mLであった。同投与量の経口投与の結果、非経口投与後の測定結果(データは示さない)に較べて平均で30倍低いピーク血漿濃度を生じた。このことは、鎮吐薬の消化管から全身循環への輸送が効率的ではないことを暗示する。嘔吐している患者が概して経口投薬形態を飲み込むために大きな困難を経験しているという更なる面倒な事態を考慮すれば、メトクロプラミドのような鎮吐薬の経口輸送が治療上望ましくないことが明白になる。しかしながら、サポサイアSA2(SUPPOCIRE AS2)のような脂肪親和性の塩基、粘膜接着剤ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び浸透エンハンサーであるエトキシジグリコールからなる経膣輸送デバイスにかかる薬物を含めることは、女性患者の消化管を炎症させることを迂回し、また治療上十分な投与量を全身循環に輸送するためのユニークな機会を提供する。
【0082】
図2Bに示す経膣から投与されたメトクロプラミドの結果は、上述したようなデバイスを用いて経膣輸送されたメトクロプラミドの血漿中のレベルが静脈注射後に測定されたそれぞれの薬物のレベルに近いことを明確に示す。図2Bに示されるプロファイルは、経膣投与後にメトクロプラミドに関して測定した実際の血漿レベルを非経口投与後の時間に相当するレベルに標準化することによって成した。その結果として、経膣投与10分後に現れる初期濃度は、被検体相互のばらつきの範囲内で非経口投与後の血漿レベルと同等である。治療上、このことは、薬物を注入する要求なしに嘔吐に苦しむ患者に多大な利点をもたらすことができる。
【0083】
上述した検討は、経膣輸送の抗片頭痛薬及び鎮吐薬の実現可能性及び利点を明確に示している。明らかに、かかる経膣輸送は、経口投与よりも迅速且つ長時間に渡ってより多量の薬物を供給する。静脈内投与での必要条件、不便さ及び侵襲性と比較すれば、抗片頭痛薬及び鎮吐薬の経膣輸送による利点が明らかである。
【0084】
II.抗片頭痛薬及び鎮吐薬の経膣輸送用デバイス
タンポン、フォーム、タンポン状フォーム、スポンジ、ペッサリー又はリングのような本発明の経膣デバイスは、前記デバイスに対する改良を提供する。特に、好ましくは膣タンポン又は分解性もしくは非分解性タンポン状フォームである本発明のデバイスは、流体不浸透性材料の層によって完全に又は好ましくはその近位端において部分的にだけ被覆されている。
【0085】
流体不浸透性材料をデバイスに一つの層若しくは異なった材料の一層又は数層に充填したいくつかの層として塗布することができ、これはタンポンの近位部を被覆するキャップ又はカップ、或いはタンポンを取り囲む流体不浸透性材料のストリップ又はリムを形成することができる。膣タンポン又は膣フォームは多孔質材料、通常綿又はポリマーからなるので、タンポンの少なくとも近位部、通常近位端を被覆する流体不浸透性材料は、多孔質材料を不浸透性層で被覆された材料から分離し、また流体不浸透性被覆内でかかる多孔質材料の近位部を隔離している。一層、複数層、一ストリップ、数ストリップ、キャップ又はカップであろうと無かろうと、該流体不浸透性被覆には、粘膜接着剤組成物を添合するか、或いはかかる組成物を種々の方法で該流体不浸透性被覆に付着する。
【0086】
デバイス全体の被覆は、粘膜接着剤組成物のデバイスの多孔質部分への吸収を防ぐ。デバイスの部分的被覆は、薬物をより小さな範囲に隔離でき、また粘膜接着剤組成物のデバイスの多孔質部分への吸収を防ぐ。従って、デバイスの多孔質部分への再吸収による薬物の損失が除かれるか、又は実質的に減少する。更に、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物をデバイスの近位部に塗布した流体不浸透性被膜中に隔離しているので、これをデバイスから粘膜上皮組織がより薬物吸収しやすい子宮周辺に優先的に放出する。従って、薬物をより定量的に膣粘膜に輸送し、粘膜薬剤の存在により被着させ、吸収促進剤及び/又は浸透エンハンサーの存在により粘膜を介して子宮及び/又は全身循環に輸送する。脂肪親和性又は親水性の担体が、薬物の粘膜表面への親和性を更に修飾し、薬物の表面露曝性を高める。
【0087】
A.被覆経膣デバイス
本発明の経膣デバイスは、膣タンポン、分解性又は非分解性膣タンポン状のフォーム、膣フォーム、膣スポンジ、膣リング又は膣ペッサリーで、不浸透性の被覆層によって完全に又は少なくとも部分的に被覆されており、該被覆層はこれに添合又は付着した粘膜組成物からデバイスの本体を分離する。最も好ましい実施態様は膣タンポン又はタンポン状のフォームである。
【0088】
1.膣タンポン
経膣薬物輸送用の好ましい一実施態様は膣タンポンである。該膣タンポンは一般に市販されている膣タンポンで、その上方近位部分、通常約三分の一又は二分の一の部分、すなわち膣壁に接触する部分を本発明に従って被覆されている。タンポンの近位端を、該タンポンの上部近位頂端部分の周りに一層、複数層、キャップ、カップ又はストリップを形成する流体不浸透性被膜によって被覆するか、或いは別に調製された流体不浸透性層、キャップ、カップまたはストリップとしてタンポンに付着する。しかしながら、タンポン全体を所要に応じて流体不浸透性被膜で被覆することができ、次いで該組成物をタンポンの全体若しくは近位部又は先端に付着させる。
【0089】
2.膣フォーム
他の好ましい実施態様は、膣内で完全に又は部分的に分解し得るか、或いは非分解性とし得るタンポン状の膣フォームである。しかし、該フォームはタンポン状構造と異なった形でもよい。
【0090】
経膣デバイスとして用いるフォームは、固体構造物の特定の形又は半固体又は液体製剤に予備形成する。後者2つは、組成物を都合よく取り入れ得るフォーム層、ストリップ、カップ又はキャップを形成する粘膜接着剤組成物用の容器として使用することができる。
【0091】
膣フォームは、分解性であろうと非分解性であろうと、経膣デバイスとして使用されようとその被覆に使用されようと、ポリマーマトリクス中に多孔性を導入する当業者に周知の方法、すなわち、凍結乾燥、空気混和、フリーズドライ、炭化水素鋳型、塩又は微粒子の洗脱、ゲル又は溶媒による鋳造、気体膨張、焼結、高分散相エマルジョンの重合、並びに三次元ポリマー印刷のような自由な形態の形成技術によって調製される。フォームを作るのに最も好ましい方法は凍結乾燥であり、その詳細が2003年6月30日出願の継続出願シリアル番号第10/600,849号に記載されている。
【0092】
凍結乾燥したフォームは、連続気泡で、高表面積で、生物分解性又は非分解性の構造物であり、状々なポリマー、好ましくは親水性ポリマーから製造できる。フォーム材料は、所望の用途により調整しうる制御された化学的及び物理的性質によって特徴付けられる。調整できる性質としては、親水性、流体吸収速度、劣化プロファイル及び溶解速度があり、その目安はフォームの完全溶解に必要な時間である。
【0093】
一般に、凍結乾燥したフォームは、基質材料として働く下記の適切なポリマー、好ましくは親水性ポリマー又はこれらの混合物を1から10%(重量/重量)の溶液を調製するために必要な量でメタノール、エタノール、グリセリン、塩化メチレン、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、グリコフロール、セチルアルコール、ジフルオロエタン、イソプロピルアルコール、好ましくは精製水のような水性又は非水性溶媒中で溶解することによって調製する。或いは、薬剤及び添加剤を含むポリマー溶液を、酢酸、シクロヘキサン、アセトニトリル、tert-ブタノール、エタノール及びイソプロパノール中で、又は水性溶媒と非水性溶媒の混合物中で調製してもよい。
【0094】
本発明のフォーム組成物を調製するための基質材料は、疎水性又は好ましくは親水性のポリマーである。かかるポリマーは、単一で又はそれぞれ組み合わせて使用してもよい。二又はいくつかのポリマー混合物である場合、これらをそれぞれ種々の濃度及び割合で使用することができる。
【0095】
特に限定しない基質ポリマーのリストには、セルロース及びセルロース誘導体、微晶性のセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジビニルグリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドが含まれる。他の可能なポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリメタクリル酸、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタメート、ポリプロピレンフマレート、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリ−1−ビニル−2−ピロリジノン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、ポリスチレン−ジビニルベンゼン、ポリ−ビス−p−カルボキシ−フェノキシプロパン−co−セバシン酸のようなポリ無水化物、ポリ−β−ヒドロキシブチレート又はポリ−β−ブチロラクトンのようなポリヒドロキシアルカノエート、並びにテトラエチルオルトシリケート及びジメチルジエトキシシランのようなアルキル基置換シリカゲルが挙げられる。
【0096】
フォームの製造に適した親水性ポリマーの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム塩、ペクチン、ゼラチン、コラーゲン、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー、カルボポール等のアクリル酸系ポリマー、ノベオン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、キトサン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキシド、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、カラヤガム等のポリサッカライドガム、ポリアクリルアミド、ポリカーボフィル、デキストラン、キサンタンガム、ポリアクリルアミド、架橋ポリメチルビニルエーテル−co−無水マレイン酸、市販のゲントレッツ(Gentrez)(登録商標)、ゼラチン、コーンスターチ及びこれらの混合物が挙げられる。
【0097】
フォーム形成に適した疎水性ポリマーの例は、特にポリプロピレンオキシド、ポリアミド、ポリスチレン及びポリメタクリル酸である。
【0098】
膣内で種々の機構によってより小さなユニット又はポリマーに分解されるタンポン状膣フォームは、分解性フォームに分類される。かかるタイプのフォームは、その分解を制御し、分解性膣フォームに付着した被膜からの薬剤の完全放出に必要な時間と一致するか又は超えている限り好ましい。
【0099】
非分解性膣フォームは、三次元構造の分解耐性のフォームである。単独で用いるか或いは生体分解性ポリマーフォームで被覆してもよい非生体分解性ポリマーの限定されない典型例としては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸及びこれらの単独の誘導体又はこれらの共重合混合物が挙げられる。
【0100】
分解性又は非分解性の両フォームは、フォームピロー、チューブ、シリンダー、球、錠剤又はリング(デバイス)又はフィルム、シート又はビーズ或いはその他の好ましい形態(被膜)を含む経膣デバイス又はその被膜として使用するに適した大きさの範囲及び種々の形態で、多孔性をポリマーマトリックスに導入する当業者に周知の適切な方法を用いて調製できる。
【0101】
経膣デバイスとしてのフォームは、タンポン、タンポン状シリンダー、ストリップ、パッド、ピロー、チューブ、球、錠剤又はリング又は所望のその他の形態のようなデバイスに予備形成するか、或いは、従来の膣タンポン、タンポン状デバイス、ペッサリー、リング、ストリップ、パッド、ピロー、シート、チューブ、球又は錠剤のような異なった材料よりなる更に複雑な経膣デバイスの表面への被膜として、前記被膜フォームで被覆したフィルム、シート又はビーズとして適用してもよい。かかる形態においては、該フォームを以下の被覆の項でより詳細に記載するように、粘膜接着剤組成物用容器として適用する。
【0102】
3.膣スポンジ
タンポン状デバイスの他の例は膣スポンジである。所望の抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜組成物を、薬物の無い円筒状のポリウレタン膣スポンジ上を被覆する流体不浸透性シリコーンマトリックス中に添合することができる。
【0103】
4.膣リング
本発明の放出が制御されたドラッグデリバリーシステムに適合する他の例は膣リングである。膣リングは、通常輸送すべき薬剤を含む別のエラストマー層で被覆された不活性なエラストマーのリングからなる。該リングを、利用者が所定位置に容易に挿入し、7日までの所望の期間置き、その後取り除くことができる。該リングは抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む固体又は中空体でもよく、また薬物を放出する多孔質材料で被覆してもよい。該リングは、状況に応じて薬物を含まない第三の速度制御エラストマー外層を備えることができる。また、この第三の層は、二重放出リング用の第二の薬物を含むことができる。かかる薬物をシリコーンエラストマーリングを通じてポリエチレングリコール中に取り入れて輸送すべき薬物用の容器として作用させることができる。
【0104】
5.他の経膣デバイス
膣ペッサリー、膣シリンダー、膣錠剤、膣カプセル、膣パッド、膣パッチ、膣座薬又は膣チューブが、本発明で使用できる薬物輸送システムの他の例である。かかるシステムは、これまで膣避妊具の輸送用に使用されており、また文献中に頻繁に記載されている。
【0105】
同様に、かかる他のタイプの経膣デバイスも子宮に面した側又はその端部で流体不浸透性被膜によって被覆されている。例えば、ペッサリー又はリングは子宮に面した側を被覆し、もう一方の側を未被覆のまま残すことができ、またスポンジ又はパッドは子宮に最も近い部分を被覆し、もう一方の側を例えば月経の血液に対する多孔質の吸収体とすることができる。
【0106】
経膣デバイスを乾燥又は湿潤形態で提供するか、或いは挿入の前に湿らせてもよい。
【0107】
6.図の詳細な説明
女性生殖器系に対する本発明の経膣デバイスの種々の実施態様を、特に限定しない例として膣タンポン又はフォームを用いて図3−15に示す。
【0108】
図3は、直立姿勢での子宮及び膣を含む女性生殖器の一部の断面図である。図4は、その側断面図である。子宮2は、子宮腔4を囲み、子宮頸部5で頸管又は頸部口6を介して開口する筋肉質の器官である。膣8は、小陰唇12及び大陰唇14から子宮頸部5に通じる筋肉質の管10で定義される。膣8の壁に付随する局部の脈管構造は、子宮筋脈管系及びリンパ系に通じている。
【0109】
図5は、膣8内での経膣デバイス16の位置を示す。膣タンポンに代表される経膣デバイスは、その上部の近位部分で粘膜接着剤組成物を添合した流体不浸透性フィルム被膜17で被覆されている。タンポンの非被覆多孔質部分18が、該タンポンの遠位端に見られる。その粘膜接着特性により、薬物及び組成物を被膜から膣に放出し、膣粘膜に接着し、膣の血管及びリンパ系を通じて子宮に輸送される。生理学的に、かかる概念は、例えば米国特許第6,086,909号に記載された動物実験で文書化され、確かめられており、ここに引用して援用する。
【0110】
図6−13は、本発明によって片頭痛及び吐気を治療するために抗片頭痛薬又は鎮吐薬を子宮又は全身循環に輸送するのに使用できる本発明の経膣デバイスの各種実施態様を示す。
【0111】
図6は本発明のタンポンデバイスに付着した流体不浸透性層を有する子宮頸部5に隣接した膣領域の断面図である。タンポンデバイス22は、遠位端が綿のような非被覆繊維材料24からなり、また近位端26の被覆部が添合した組成物28を含むカップ29の形状の環状に位置する流体不浸透性層からなる円筒状の吸収体タンポンである。タンポンデバイス27の近位端を膣8の上方上皮組織18及び膣粘膜を通じた薬物輸送用の膣円蓋20にもたれるように置き、これと組成物28が接触している。組成物28を不浸透性層被覆材料に添合することができるが、カップ内側の空孔に置いた適当な輸送成分からなる粉末、溶解座薬、フォーム、ペースト又はゲルとすることができる。
【0112】
図7は、図6に示したタンポンデバイスを有する子宮頸部5に隣接した膣領域の断面図である。図7に断面で示すように、カップ31は該カップの壁に添合した粘膜接着剤組成物37を含んでもよく、又は該組成物をカップ内孔内にカプセル、粉末、ゲル、クリームもしくはその他の適切な形態として挿入又は載置してもよい。流体不浸透性カップ31を膣粘膜に対して押し込み、その最近位部に位置させ、ここで薬物を放出する。図示実施態様において、タンポンデバイス32は、例えばカップ内孔に挿入したカプセルから抗片頭痛薬又は鎮吐薬を輸送するために、子宮頸部口6に通じる非多孔性チューブ34を備える。もちろん、かかるチューブは該実施態様において任意の機構である。
【0113】
図8は、子宮頸部5に隣接した膣領域の断面図であり、流体不浸透性被膜で被覆されたキャップを形成するタンポン状フォームデバイスの代替配置を示し、ここで組成物をタンポン本体から不浸透性層53で不浸透的に分離された多孔性フォームキャップ55に添合する。キャップ55の全体又はその上部の近位部56のみに粘膜接着剤組成物を添合してもよく、或いはこれを本発明の組成物で被覆してもよい。
【0114】
図9は子宮頸部5に隣接した膣領域の断面図で、流体不浸透性被膜53で被覆され、錠剤、カプセル、溶解性剤薬又はゲルカプセルのような組成物67を被膜内に載置又は膣に最も隣接し膣への放出に有効な被膜に添合してなるタンポン62を示す。
【0115】
図10は、子宮頸部5の周りの膣円蓋20に伸びる突出指76を有する流体不浸透性キャップを含むタンポンデバイス72を備えた子宮頸部5に隣接した膣領域の断面図である。指76の先端部は、膣表面の更に離れた領域に輸送され得る高濃度の粘膜接着剤組成物75を含む。
【0116】
図11は、本発明の製薬上の組成物を含むスコップ型のゲルカプセル85を添合した流体不浸透性の脱着可能なキャップ88を取り付けたタンポンデバイス80を示す。スコップ型の多孔性フォーム部85は、環状の形をしているが、子宮頸部5を完全に取り囲まない。その代わりに、スコップ型の多孔性フォーム部は、後膣円蓋20に割り込むように設計された尖った先端部81を有する。スコップ型の多孔性フォーム部85は、スコップ型の多孔性フォーム部87の全長に沿って粘膜接着剤組成物を膣壁に輸送するように設計されている。
【0117】
一般に、流体不浸透性被覆の層、ストリップ、カップ又はキャップで被覆されたタンポンデバイスを膣粘膜の内壁に接触するように置き、粘膜接着剤組成物中に存在する治療上不活性な賦型剤、すなわち親脂肪性又は親水性担体、浸透エンハンサー及び粘膜接着剤化合物が薬物の局部膜管構造への放出及び吸収を容易にするように作用する。この結果、より高濃度の薬物が子宮及び/又は全身循環に輸送される。
【0118】
図3−11に見られる本発明の実施態様は、標準長のタンポン状デバイスを含んでもよく、或いは標準タンポンより長く或いは短くしてタンポンデバイスが該デバイスの形状に応じて膣壁又は子宮頸部に近接又は当接することを容易にすることができる。
【0119】
タンポンデバイスの上述した形状又は他の形状への特徴づけは、本発明の経膣デバイス及び粘膜接着剤組成物を隣接膣壁上皮に接触させる任意形状、形態もしくは型のデバイスのおおよその記述に過ぎず、また膣上皮及び外頸部表面に一致するあらゆる形状を本発明の範囲内に含めることを意図していることは、当業者には直ちに明らかになるであろう。更に、ここに用いる用語が本発明をかかるデバイスの使用に限定するものでない。
【0120】
B.粘膜接着剤組成物の経膣デバイスへの付着又は添合
抗片頭痛薬又は鎮吐薬及びそれらの成分を含む粘膜接着剤組成物を、次のセクションに別々に記載する。このセクションでは、経膣デバイスを被覆又は付着した不浸透性の層、キャップ、カップ又はストリップへの前記組成物の付着或いは添合のみを扱う。
【0121】
抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を、前記流体不浸透性被膜、或いはキャップ、カップ又はストリップに付着又は添合する。一般に、粘膜接着剤組成物は粘膜接着剤及び/又は親脂肪性又は親水性担体及び/又は浸透エンハンサー及び/又は吸収促進剤を更に含む。かかる組成物は、膣上皮への長期接触を維持するに十分な厚さを有するペースト、粉末、溶液、エマルジョン、クリーム、又はゲルとすることができる。或いは、粘膜接着剤組成物を不浸透性被膜、座薬、スポンジ、錠剤、カプセル又は例えば生体接着剤粒子の溶液、ローションもしくは懸濁液に含浸させた他の吸収剤材料として処方できる。薬剤を膣内皮に効果的に輸送する薬物輸送システムのいかなる形態も、本発明の範囲内に含めることを意図する。
【0122】
粘膜接着剤組成物は、輸送手段又は構造体として働く不浸透性の層、キャップ、カップ又はストリップに添合するか、その表面又は中に載置するか、或いは付着させる。薬物含有組成物を、不浸透性層への付着前に又は経膣デバイスへの付着前にかかる構造体に添合することができ、或いは経膣デバイス又は作成済みの膣タンポン又は重合性膣フォームの表面又は他の経膣デバイスを部分的に又は全体的に被覆することによって添合することができる。
【0123】
流体不浸透性層で被覆した経膣デバイスを使用する場合、組成物をデバイスに添合する多くの方法がある。例えば、組成物は、被覆層又は複数被覆層の一つに添合することができ、タンポンを覆うキャップに添合することができ、タンポンの近位部を囲む流体不浸透性キャップ、前記層に載置又は付着したゲル状カプセル又は生体接着性容器、キャップ、若しくは経膣デバイスの近位端近部を被覆するカップ又はストリップに添合することができる。或いは、薬物をタンポンの先端に位置する粉末状の材料の形態とすることができる。また、例えば薬物を製薬上適合した担体に溶解し、該薬物溶液を繊維に吸収させることによって、該薬物をタンポン先端の繊維に吸収させることができる。更に、薬物を該デバイスの近位端、すなわち先端に塗布した被覆材料に溶解すること及び/又はタンポンに付着した流体不浸透性被膜の周りに置くことができる。或いは、薬物を、タンポンの先端と共同して置かれた挿入可能な座薬、或いはタンポンデバイスに付着又は脱着可能に付着したキャップ内もしくはキャップ上に添合することができる。
【0124】
粘膜接着剤組成物を溶着させる一手段としては、該デバイスに濃縮した薬剤を含む不浸透性層被覆材料をスプレーするか、又は別の方法としてまずデバイスに不浸透性被膜をスプレーし、その後薬物を含む第二の層をスプレー又は追加するもしくは粘膜接着剤組成物を含む予備成形したキャップ、カップ又はストリップを取り付けることである。経膣デバイスを被覆するに適した方法は、被膜をピルに適用するのに用いる方法と類似する。
【0125】
或いは、ポリマー溶液中で調製した油中水形又は水中油形エマルジョンを真空下予備成形フォームの足場を介して進めるエマルジョン被覆によって、組成物を不浸透性の層又はカップ、キャップ又はストリップに添合することができる。溶媒蒸発の後、薬物含有ポリマーフィルムを構造体層、キャップ、カップ又はストリップ中に添合する。かかるエマルジョン被覆の処理パラメーターは当業者に周知であり、これら構造体中からの抗片頭痛薬及び鎮吐薬の安定性及び放出を最適化するために必要なあらゆるタイプの方法、添加物及び装置も、本発明の範囲内であることが意図されている。
【0126】
C.流体不浸透性層
流体不浸透性材料は、持続性薬剤貯留物として働き、処方に応じて、膣粘膜への長時間にわたる連続的且つとぎれのない薬物の輸送を提供する粘膜接着剤組成物を添合した一層、複数層、キャップ、又はストリップとしてデバイスに適用される。
【0127】
経膣デバイスは、流体不浸透性層で全体的に又は部分的に被覆される。不浸透層被膜をデバイスの近位端に適用するのが好ましい。かかる被膜は、体温で溶解するワックスのような温度感受性材料、又はプラスチックフィルム、被覆したガーゼ、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、合成ポリマー又はそのアルギン酸塩、デキストラン、セルロースのようなポリサッカライドの組み合わせ、アルブミンもしくはゼラチンのようなコラーゲン又はタンパク質、或いはポリラクチド、ポリグリコリドのようなポリヒドロキシ酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酪酸、ポリバレリン酸、ポリラクチド−co−カプロラクトン、ポリアンヒドライド、ポリオルソエステル、及びこれらの混合物およびコポリマーのような一層もしくは数層の流体不浸透性の分解性或いは非分解性の薄く柔軟な非多孔性の材料、或いはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、及びこれらの誘導体のような非分解性ポリマー、或いはデバイスの一部分を一層、一ストリップもしくは数層もしくは複数ストリップで被覆するか、デバイスの一部分を流体不浸透性のカップもしくはキャップで覆うか、デバイスをスカート状の流体不浸透性被覆で囲むか、又は膣の周囲に当接した際に傘のように開くその他の如何なる適切な流体不浸透性材料とすることができる。
【0128】
一実施態様においては、流体不浸透性層それ自体に粘膜接着性組成物を添合する。他の実施態様においては、不浸透層は経膣デバイスの非被覆部分を被膜もしくは粘膜接着剤組成物を含む構造体から隔離するための分離障壁としてのみ使用される。両代案とも、層若しくは永続的に付着した又は取り外し可能なカップ、キャップ又はストリップ又はその他の層を経膣デバイスの非被覆部分から分離する。該デバイスの被覆部分のみを上皮組織と接触させるのが好ましい。
【0129】
不浸透性層被膜を、持続性膜、フォーム、フィルム又はシートとして経膣デバイスに適用してもよい。更に、かかる不浸透性層被膜を、フィルム、フィルム、フォーム、シート、ビーズ、マイクロカプセル、ナノカプセル及び本発明の粘膜接着剤組成物を都合よく含み、膣粘膜に接触した際に該組成物を都合良く放出することができる如何なる処方物の他の層で被覆してもよい。
【0130】
これらフィルム、箔、フォーム又はシートの調製に適した生体分解性のポリマーは、バルク又は表面侵食により薬物を放出し得るように設計することが好ましく、天然又は合成ポリマー単独、又は限定されない典型例としてアルギン酸塩、デキストラン、セルロース、コラーゲンのようなポリサッカライド及びその化学的誘導体、アルブミン及びゼラチンのようなタンパク質及びそのコポリマー及び混合物、ポリラクチド、ポリグリコリド及びそのコポリマーのようなポリヒドロキシ酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酪酸、ポリバレリン酸、ポリラクチド−co−カプロラクトン、ポリアンヒドライド、ポリオルソエステル及びこれらの混合物およびコポリマーとの組み合わせが挙げられる。
【0131】
本発明のフィルム、フォーム、箔又はシートの物理的及び化学的性質は、その使用目的を最適化するように調整することができ、添合された抗片頭痛薬及び鎮吐薬の放出速度を制御することによって達成される。輸送デバイスからの薬物放出は、膣上皮へ又は膣上皮を介した薬物の即時かつ制御された、急速な、緩徐な、持続性の又はパルス的輸送を導く拡散又は侵食若しくはその両方の組み合わせにより生じさせることができる。
【0132】
薬物放出の速度は、薬物の物理的性質、フィルム、フィルム、フォーム又はシートの組成、及び投与位置での周囲の媒質に左右される。
【0133】
タンポンデバイスからの薬物の放出は、タンポンデバイスの典型的な使用長さに対し適切な子宮内薬物濃度を付与するように時間を調節すべきであり、通常1−8時間である。しかし、例えば膣フォーム又は膣スポンジのような分解性デバイスを使用する場合、薬物の放出時間をフォームの分解時間と一致させるように調節できる。
【0134】
上記方法は、組成物中に存在する薬物がタンポンに吸収され、それゆえ輸送するために利用できなくなることを防ぐ。流体不浸透性障壁が存在する場合、組成物は膣粘膜に一部のみに輸送され部分的にタンポンに吸収される代わりに、膣粘膜に定量的に吸収される。キャップは、適切な抗片頭痛又は鎮吐薬を含む本発明の組成物を含む錠剤、ゲルカプセル又はペレット用の容器としても使用することができる。
【0135】
III.粘膜接着剤組成物
抗片頭痛薬又は鎮吐薬の経粘膜的輸送用の本発明の粘膜接着剤組成物は、通常4つの必須成分からなる。かかる成分は、治療上の所望の効果を達成する抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬、膣上皮と組成物との密着接触を提供する粘膜接着剤、薬物の膣粘膜への表面露曝の強化を保証する親脂肪性又は親水性担体、及び薬物の膣上皮障壁を通した粘膜下組織及び全身血液循環への輸送を容易にする浸透エンハンサーである。
【0136】
粘膜接着剤組成物は、一般に治療上の単位投与量で処方され、セクションI.Aにすでに記載したものから選択した抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む。該組成物は、一般に約0.00001から約45mg/体重1kg、好ましくは約0.001から15mg/体重1kg、最も好ましくは0.1から8mg/体重1kgの抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬、組成物の膣粘膜への被着を促進する約0.1から25%の粘膜接着性薬剤、薬物の経膣粘膜の輸送を保証する約5から約30%の浸透エンハンサー、及び薬物の輸送手段として働く約40から約95%の親脂肪性又は親水性担体を含み、状況に応じて放出された薬剤の全身血液循環への輸送を増加させるための約0から約30%、好ましくは約1から5%の可溶化剤を含む。
【0137】
また、経膣輸送に適する他の薬剤上適合する賦型剤、例えば緩衝液、充填剤、安定化剤、乳化剤、及びかかる目的に有用であるとして当業者に周知である他の賦型剤を加えてもよい。
【0138】
本発明の処方に用いる如何なる成分及び/又は賦型剤は、経口使用に承認された賦型剤の全てが膣の使用について承認される及び/又は適合するわけではないことへの理解とともに、ヒトへの使用に承認されること、また膣への使用に適合していることが必要である。
【0139】
粘膜接着剤組成物は、溶液、ゲル、クリーム、ローション、軟膏、フォーム、フィルム、座薬、リポソーム懸濁液、マイクロエマルジョン、カプセル、錠剤、微粒子、マイクロカプセル、ナノ粒子、又はナノカプセルとして処方され、各処方物を経膣デバイスの流体不浸透性の層、キャップ、ストリップ内に添合するか、又はそれに付着するかのいずれかである。
【0140】
上記のように処方された粘膜接着剤組成物を経膣デバイスの流体不浸透性の層、キャップ又はストリップに添合するか、又はかかる層、キャップ又はストリップの被膜として使用できる。或いは、該組成物をスポンジ、フォーム、フィルム、錠剤、カプセル、リング、粘膜接着剤パッチ又はイオン泳動システムに添合し、これらの何れか一つを流体不浸透性キャップ内に載置するか又は流体不浸透性のストリップ又は層に付着することができる。本発明の経膣デバイスはすでにセクションIIに記載してある。
【0141】
抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を膣粘膜に又は膣上皮を介して経粘膜的に全身循環へ有効に輸送する如何なる形態の薬物輸送システムも、本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0142】
A.粘膜接着剤組成物の成分
粘膜接着剤組成物の個々の成分は、抗片頭痛薬又は鎮吐薬、粘膜接着剤、親脂肪性又は親水性担体及び浸透エンハンサー又は吸収促進剤である。
【0143】
1.抗片頭痛薬及び鎮吐薬
片頭痛治療薬剤は、頭痛の治療、処置及び制御に有効な薬学的に活性な化合物であり、既に記載している。
【0144】
本発明の粘膜接着剤組成物において、抗片頭痛薬及び鎮吐薬が0.00001から約45mg/体重1kg、好ましくは約0.001から15mg/体重1kg、最も好ましくは0.1から8mg/体重1kgの範囲の投与量で存在する。例えば、典型的な投与量は、エルゴタミンで約0.05から約1.5mg/kg(1日に3回服用)、ジクロフェナクナトリウムで約0.5から約4mg/kg(1日に2回服用)、スマトリプタンで約0.2から約10mg/kg・1日、ゾルミトリプタンで約0.1から7mg/kg・1日、メトクロプラミドで約0.1から1.0mg/kg・1回、パークロロペラジンで0.3から2.5mg/kg・1回、オンダンセトロンで約0.3から4mg/kg・1回、ドロナビノールで約0.05から0.5mg/kg(1日に2回服用)、及びプロペタジンで0.15から1.3mg/kg・1回の範囲である。他の抗片頭痛薬又は鎮吐薬の適切な投与量は、薬学の情報源から容易に入手できる。
【0145】
前記組成物において抗片頭痛薬又は鎮吐薬を単独又は二種以上の混合物で、若しくは抗片頭痛薬及び鎮吐薬の混合物混合物として、及び/又は他の製薬上有効な薬剤又は適合する製薬上の賦型剤と組み合わせて処方する。
【0146】
2.粘膜接着剤
本発明の経膣輸送用の粘膜接着剤組成物は、必須成分として粘膜接着剤を含む。粘膜接着剤は、組成物又は薬剤の粘膜への接着を促進することによって、該組成物又は組成物から放出された薬剤の粘膜表面への密接且つ広範な接触を可能にする。粘膜接着剤は、セルロース誘導体のようなポリマー化合物が好ましいが、天然ゴム、アルギン酸塩、ペクチン又はこれらの類似のポリマーでもよい。最も好ましいセルロース誘導体は、ダウケミカル社から市販されている商品名メトセル(METHOCEL)(登録商標)として入手できるヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0147】
粘膜接着剤は、約0.1から約25重量%、好ましくは約1.5から約15重量%、及び最も好ましくは約1.5-5重量%で存在する。
【0148】
3.吸収促進剤
粘膜接着剤組成物は、更に吸着促進剤を約2から約30重量%の量で含む。吸収促進剤は薬物の膣粘膜への浸透及び透過、すなわち、その膣粘膜を通じた全身性血液循環への移動を保証する。
【0149】
吸収促進剤は、ガッテフォッセから市販されているラブラソール(登録商標)として既知のポリエチレングリコール カプリル/カプリングリセリドのような不燃性グリコールエステル誘導体、プロピレングリコールのオレイン酸エステルのグリセロールエステルでのグリコール誘導体、及びインペリアルケミカルズ工業から市販されているアルラセル(ARLACEL)(登録商標)186として既知のグリセロールを含む。特に、不燃性グリコールエーテル誘導体が好ましく、商品名トランスキュトール(TRANSCUTOL)(登録商標)として既知のガッテフォッセから市販されているエトキシジグリコール、又は例えばガッテフォッセから市販されているラブラフィル M 1944CS等のエステル交換ストーンオイルが最も好ましい。エステル交換ストーンオイルは、植物油中に含まれるグリセリドのグリセロール或る部分をポリオキシエチレングリコールで置換することによりエトキシ化された植物油である。
【0150】
4.親脂肪性及び親水性担体
更に、本発明の組成物は、薬物の親和性に応じて、使用する抗片頭痛薬又は鎮吐薬に適合する脂肪親和性又は親水性の担体の何れかを含む。かかる担体は、一般に約30から約95重量%存在する。
【0151】
担体は薬物との親和性が低い化合物から選択される。従って、親脂肪性の担体が親水性の片頭痛薬又は鎮吐薬の処方に対し適しており、また親水性の担体が親脂肪性の抗片頭痛薬又は鎮吐薬の処方に対し適している。
【0152】
i.親脂肪性担体
親水性の薬物との使用に好ましい親脂肪性の担体としては、あらゆる中鎖トリグリセリド及び/又は脂肪酸、特に8から18炭素の炭素鎖を有する飽和モノグリセリド、飽和ジグリセリド又は飽和トリグリセリド、或いはこれらの混合物が挙げられる。親脂肪性担体の例は、商品名サッポサイア(SUPPOCIRE)(登録商標) AS2 又はCS2として既知て、また市販されている飽和グリセリド、及び例えばガッテフォッセ、ウエストウッド、ニュージャージーから市販されている関連化合物である。
【0153】
ii.親水性担体
好ましい親水性の担体としては、例えばシグマ/アルドリッチ、セントルイス、ミズーリから市販されているPEG6000/PEG1500、PEG 6000/PEG 1500/PEG 400、PEG 6000/PEG 400又はPEG8000/PEG1500のような分子量が約200から8000のポリエチレングリコール若しくはその誘導体又は混合物が挙げられる。
【0154】
5.浸透エンハンサー
本発明の組成物は、薬物もしくはその混合物、又は薬物含有溶液もしくは懸濁液の表面物性を変えることによって薬物又はその混合物の浸透性の改善を促進する化合物である浸透エンハンサーを更に含んでもよい。従って、これら化合物はある意味で安定化剤として働く。浸透エンハンサーの例は、非イオン性界面活性剤である。
【0155】
浸透エンハンサーは、必要に応じて約1%から約30%の量で添加することができる。
【0156】
6.可溶化剤
また、組成物は状況に応じて、例えば、複合体形成可溶化剤、クエン酸、エチレンジアミン−4酢酸、メタ−リン酸塩ナトリウム、コハク酸、尿素、シクロデキストリン、ポリビニレンピロリドン、ジエチルアンモニウム−オルト−ベンゾエートのような可溶化剤、又はツイン及びスパンス、例えばツイン80のようなミセル形成可溶化剤を含む。本発明の組成物に有用な他の可溶化剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−アルキルエーテル、n−アルキルアミンn−オキシド、ポロキサマー、有機溶媒、リン脂質及びシクロデキストリンである。
【0157】
可溶化剤は約0.1%から約30%の量で添加することができる。
【0158】
7.追加の賦型剤
本発明の組成物は、必要に応じて充填剤、乳化剤、安定化剤、緩衝剤及びその他適切なもののような他の賦型剤を更に含むことができる。これら賦型剤の例は、イソステアリルステアレート、イソプロピルミリステート、グリセリン、ミネラルオイル、ポリカーボフィル、カーボマー934P又は940、水素化パーム油、グリセリド、水酸化ナトリウム、ソルビン酸、及び精製水である。
【0159】
B.好ましい処方
上述した範囲内で本発明の成分を含む全ての処方物が、本発明の範囲内にあることを意図している。ここに好ましい処方として示した少数の組成物は単なる好適例であり、決して本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0160】
親水性の抗片頭痛薬又は鎮吐薬用の好ましい処方は、薬物約0.01-10重量%、親脂肪性担体約60-90重量%、粘膜接着剤約0.1-25重量%、吸収促進剤約1-25重量%、及び状況に応じて浸透エンハンサーもしくは可溶化剤を通常1-30重量%含む。
【0161】
親脂肪性薬物用の好ましい処方は、薬物約0.01-10重量%、親水性担体約30-90重量%、粘膜接着剤約0.1-25重量%、吸収促進剤1−25重量%、及び状況に応じて可溶化剤及び/又は浸透エンハンサー約1-30重量%を含む。
【0162】
本発明の一好適実施態様においては、0.01-10%の薬物を、約60-90重量%の親脂肪性担体、約1.5-20%の粘膜接着剤、約10-20%の吸収促進剤、約0-30%の可溶化剤、及び約1−30%の浸透エンハンサー等の他の成分と処方する。
【0163】
本発明の他の好適実施態様においては、0.01-10%の薬物を、約60-90重量%の親水性担体、約1.5−約20%の粘膜接着剤、約10−15%の吸収促進剤、及び状況に応じて0−30%の可溶化剤及び/又は約1−30%の浸透エンハンサーとの混合物として処方する。
【0164】
本発明の他の好適実施態様においては、処方物が0.01-10%の親水性薬物、75%の親脂肪性担体サッポサイア(登録商標)AS2、2%のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び15%のエトキシジグリコール(トランスキュトール(登録商標))を含む。
【0165】
本発明の他の好適実施態様においては、処方物が0.01-10%の親脂肪性薬物、75%の親水性担体PEG6000/PEG1500、2%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び15%のエトキシジグリコール(トランスキュトール(登録商標))を含む。
【0166】
C.親水性又は親脂肪性の抗片頭痛薬及び鎮吐薬を処方する方法
親脂肪性又は親水性の抗片頭痛薬又は鎮吐薬又は膜流出系阻害剤は以下の方法を用いて処方される。
【0167】
親水性薬物用処方物を調製する一般的な方法においては、親脂肪性担体を45-50℃で加熱した容器内において溶かす。かき混ぜながら粘膜接着剤を担体に加える。好適な親水性の薬物を浸透エンハンサー及び可溶化剤と組み合わせた吸収促進剤中で溶解する。この混合物を担体/粘膜接着剤の懸濁液に加える。最終処方物を所望の大きさ及び形状の型に注ぎ込むか、又は本発明のデバイスに添合する。該型を4-6℃の冷蔵庫内に貯蔵する。
【0168】
親脂肪性薬物を含む処方物を調製するための一般的な方法においては、親水性担体を加熱した容器内において製造業者推奨の適温で溶かす。かき混ぜながら粘膜接着剤を担体に加える。好適な親脂肪性の薬物を吸収促進剤中で溶解し、状況に応じて可溶化剤と組み合わせた浸透エンハンサーを加える。この混合物を担体/粘膜接着剤の懸濁液と混合する。最終処方物を所望の大きさ及び形状の型に注ぎ込むか、又は本発明のデバイスに添合する。その後、最終処方物を4-6℃の冷蔵庫内に置く。
【0169】
D.持続性放出
一実施態様においては、粘膜接着剤組成物を持続性及び制御された薬物放出システムとして処方できる。
【0170】
制御された且つ持続性の放出のために処方された抗片頭痛薬又は鎮吐薬は、迅速な、緩徐な、連続的な放出用に、又はパルス的輸送用に処方される。
【0171】
持続性の放出又は輸送とは、薬物又はデバイスからの持続的且つ途切れのない薬物の放出を意味し、この場合薬物をマトリクス、微粒子、生体接着性粒子、リポソーム懸濁液又はかかる放出用に通常用いる他の系の何れか中で処方する。
【0172】
パルス的放出又は輸送は、断続的な間隔での薬物の輸送である。かかるパルス的輸送は、例えば薬物を、連続輸送に関して記載したようなマトリクス、微粒子、生体接着性粒子、リポソーム懸濁液又は他の系中で処方して、例えば溶解性被膜の層のような薬物を含まない不活性な層を介在させた個々の流体不浸透性層に添合することによるか、或いは薬物を別の処方薬剤に処方することによって提供することができる。持続性輸送用の方法及び処方薬剤は当業者に既知である。
【0173】
制御された放出用の薬物輸送システムは、数時間又はそれ以上に渡って薬物の膣粘膜への放出を制御できなければならない。このことは、当業者に既知のヒドロゲル形成ポリマー又は非侵食性マトリクス等のような時間放出添加剤の添加によって達成される。
【0174】
更に、膣のpHが変化する月経期中には、薬剤輸送システムはpHを安定化し吸収を促進する緩衝剤を含んでもよい。
【0175】
E.生体接着性システム及びマイクロエマルジョン
生体接着性微粒子又は生体接着性ナノ粒子は、本発明で使用するための流体不浸透性層に添合するのに適した別の膣内薬物輸送システムを構成する。
【0176】
生体接着性システム及びマイクロエマルジョンは、特に経膣粘膜輸送に適した処方物である。
【0177】
マイクロエマルジョンは、ラブラソール(登録商標)、プルロール(登録商標)イソステアレート(ガッテフォッセ)のような薬学的に適合する表面活性剤、イソプロパノール又はエタノールのような補助溶媒及び水を含むことができる。上述した成分の一つ又はそれ以上を含むマイクロエマルジョンは、抗片頭痛薬又は鎮吐薬の生体利用効率を改善することを示した。
【0178】
生体接着性システムは、ヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロース誘導体及びポリアクリル酸を利用する。これらは、一度適切な処方中に収納すると、最大5日間に渡って抗片頭痛薬又は鎮吐薬を放出する。このシステムは、流体不浸透性の層、キャップ又はストリップに容易に添合される多相の流体又は半固体の製剤を表す。微粒子又はナノ粒子は膣壁に付着し、数時間にわたって薬物を放出する。かかるシステムの多くは、米国特許第4,756,907号及び第6,200,590号公報に記載してあるように、ここに引用して援用する経鼻用に設計されているが、膣用に容易に修正できる。生体接着性システムは、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を充填した微粒子又はナノ粒子を含むことができ、また薬物の溶解性及び/又は摂取を高めるための界面活性剤を含んでもよい。微粒子は1-100μmの直径を有するが、ナノ粒子は10-1000nmの直径を有する。微粒子及びナノ粒子は、当業者に既知の方法により、澱粉、ゼラチン、アルブミン、コラーゲン又はデキストランから調製できる。
【0179】
上述した全ての処方選択物を、ここに記載した経膣デバイスの流体不浸透性層、キャップ又はストリップに有利に添合することができる。
【0180】
生体接着性錠剤は経粘膜的な輸送に適した別の薬物輸送システムである。かかる生体接着性システムは、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリアクリル酸を使用する。これらは、一度適切な処方物中に置くと、最大5日間に渡って薬物を放出する。本発明の錠剤は座薬又はタンポンの形をしているので、膣壁と錠剤表面又は本発明の経膣デバイスに添合するのに適するような形状との間で最大の接触を達成する。
【0181】
また、生体接着性システムにおいて処方物された薬物を経膣デバイスに添合し得るクリーム、ローション、フォーム、ペースト、軟膏、マクロエマルジョン、リポソーム懸濁液及びゲルに添合してもよい。これらの賦型剤中で薬剤を調製するための方法は、文献の至る所で見出すことができる。
【0182】
本発明の組成物に用いるのに適した無毒の薬学的に適合する賦型剤は、薬剤処方の当業者には明白で、その例がレミントン(REMINGTON)著、製薬学の科学と実践、第20版、A.R.ゲンナロ(A.R. Gennaro)編、2000年、に記載されている。適切な担体の選択は、所望の特定の経膣投薬形態の的確な性質、例えば抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬をクリーム、ローション、フォーム、軟膏、ペースト、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム懸濁液、微粒子、ナノ粒子、又はゲルに処方すべきかどうか、また抗片頭痛薬又は鎮吐薬の物理的性質に依存する。
【0183】
上記粘膜接着剤組成物は、通常片頭痛又は頭痛、吐気又は嘔吐の治療用抗片頭痛薬及び鎮吐薬からなる群から選択される唯一の薬物を含むけれども、かかる組成物は、例えば鎮痛剤、抗ウイルス剤、かゆみ止め、副腎皮質ステロイド及び主薬剤の治療効果を高め得る他の薬剤のような別の薬剤又はその組み合わせを更に含むことができる。
【0184】
上記全ての生体接着性システムは、直接又は経膣デバイスを介して投与することができる。
【0185】
IV.抗片頭痛薬/鎮吐薬の輸送方法
本発明の方法は、吐気及び嘔吐の症状を除去及び減少させるため抗片頭痛薬及び鎮吐薬の効果的な輸送のために開発され、特にその輸送に適合する。抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の広範囲な初回通過による肝失活を迂回するため、抗片頭痛薬及び鎮吐薬の効き目が更に高められる。
【0186】
片頭痛に付随した主要な症状であり、またこの症状に限定されず、上記に詳述したように化学療法薬の投与もしくは手術のような他の健康状態によっても生じ得る頭痛、吐気及び嘔吐を治療、処置及び制御するために有用な方法は、膣腔裏の膣粘膜を抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合した経膣デバイスと接触させる工程を備える。該組成物は、麦角アルカロイド及びその誘導体、抗ヒスタミン剤、バルビツレート、非ステロイド抗炎症薬、鎮痛剤、セロトニン拮抗薬、ニューロキニン−1拮抗薬、カンナビノイド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)拮抗薬、ステロイド、交感神経用作用薬、鎮静剤及び抗てんかん薬からなる群から選択した少なくとも一つの抗片頭痛薬又は一つの鎮吐薬を単独で、若しくは他の抗片頭痛薬又は鎮吐薬との組み合わせ、或いは他の治療薬剤又は製薬上適合する賦型剤と組み合わせたものからなり、該組成物又はデバイスと膣粘膜との接触が、膣粘膜に又は膣粘膜を通して薬物を迅速又は緩徐に、持続的又はパルス的に輸送することができ、かつ片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の治療投与量を輸送するために必要な時間維持される。かかる時間は一般に数分から数時間である。
【0187】
輸送経路は、経粘膜輸送用経膣デバイスの流体不浸透性の一層もしくは数層に添合した粘膜接着剤組成物を利用し、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬と、経膣輸送のために任意に加えた粘膜接着剤、担体、浸透エンハンサー及び可溶化賦型剤との組合わせの輸送を備える。
【0188】
更に、一つ以上の治療上の薬剤又は苦痛緩和剤を、抗片頭痛薬又は鎮吐薬の粘膜接着剤組成物に添加することができ、及び/又は頭痛、吐気及び嘔吐の治療、処置もしくは制御に適したあらゆる他の薬剤上適合する活性物質を添加することもできる。全ての組み合わせ及び変形が本発明の範囲内であることを意図している。
【0189】
従って、本方法は、炎症を抑え、鎮痛効果を有し、脳血流量を調節する薬剤、及びその他の治療上活性な薬剤と組み合わせた抗片頭痛薬又は鎮吐薬の輸送も含む。
【0190】
本方法は、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を経膣デバイスの流体不浸透性層、キャップ又はストリップ内に添合するか或いは付着させ、該経膣デバイスを膣に挿入することによって実施する。該粘膜接着剤組成物を溶液、ゲル、クリーム、ローション、軟膏、フォーム、フィルム、座薬、リポソーム懸濁液、ミクロエマルジョン、カプセル、錠剤、微粒子、マイクロカプセル、ナノ粒子、ナノカプセルとして処方する。かかる目的に適合したデバイスは膣タンポン、膣リング、膣ペッサリー、膣スポンジ、膣タブレット、膣カプセル、膣パッチ、膣イオン泳動システム又は膣カップからなる群から選択される。
【0191】
粘膜接着剤組成物と膣粘膜との直接の接触は、効果的な治療に繋がる薬物の即時迅速もしくは緩徐で、広範囲な持続的又は断続的なパルス輸送を可能にする。経膣デバイスの流体不浸透性層に付着又は添合した粘膜接着剤組成物は、片頭痛又は吐気の全身的治療に治療上必要な投与量だけの抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬を使用することを可能にする。
【0192】
上述した経粘膜的な薬物輸送用の方法は、膣上部及び子宮が門脈型の循環又は静脈道及びリンパ管の何れかによる特有の血流特性を有し、膣粘膜から直接全身血液循環への薬剤の優先的な輸送及び供給を可能にし、抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬の大部分が代謝による実質的な失活及び除去を受ける消化管及び肝臓を迂回するという考えに基づいている。
【0193】
経膣概念の最も具体的な説明は、米国特許第6,086,909号、第6,197,327号、第6,461,779 Bl号及び第6,572,874号に記載されているように、本発明者等によっていくつかのタイプの薬物で実現されており、ここに引用して援用する。適切に処方された抗片頭痛薬及び/又は鎮吐薬が、上記特許に記載されたのと同様な方法で膣壁を経て輸送される。
【0194】
有用性
本発明は、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を女性患者の子宮又は全身循環に輸送するのに有用である。本発明はこれまで認識されていない幾つかの改良を提供する。ここに新たに記載した試みは、製薬組成物がタンポンの多孔質部分に吸収されて薬物輸送に利用できないのを防ぐ。かかる新規の試みは、抗片頭痛薬又は鎮吐薬の子宮又は全身循環への更に効果的な輸送を提供する。組成物のごく一部が膣粘膜に輸送され、一部がタンポンに吸収される代わりに、組成物から放出された薬物の全量が膣粘膜への吸収に利用できる。
【0195】
実際には、本発明の組成物又はデバイスである薬物輸送システムが、片頭痛又は吐気の診断の下に適用又は投与される。通常、かかる治療は頭痛、吐気又は嘔吐を治療し、この状態を維持するか或いは更なる増大を防ぐために必要なだけ継続される。
【0196】
実施例1、スマトリプタンの膣座薬の調製
本例は、膣内座薬の調製又は流体不浸透性被覆への添合方法を説明する。
【0197】
スマトリプタン(グローバルトレードアライアンス、スコッツデール、アリゾナ)の投与量は20mgであった。膣座薬を投与の24時間前に処方し、調製した。座薬の4つの基本成分は、蒸留水(15重量%)、サッポサイアAS2X(ガッテフォッセ、ウエストウッド、ニュージャージー)(67.5重量%)、粘膜接着剤のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(ダウケミカルズ、ミッドランド、ミシシッピーからメトセル(登録商標)K、HPMC K15Mとして得た)(1.5重量%)、及び浸透エンハンサーのトランスキュトール(登録商標)(15重量%)であった。
【0198】
8つの座薬を製造するために、サッポサイア10.8グラム、MPMC240mg、トランスキュロール2.4グラム及び計算された薬物量を計量した。サッポサイアを50℃の水浴内において使い捨ての100mlポリプロピレンビーカー内で懸濁して溶解した。該溶液を完全に溶解するまでかき混ぜた。その後、HPMC及びトランスキュロールを添加し混合した。最後に、薬物を2.4グラムの蒸留水と共に添加した。十分に混合した後、暖かい座薬塊をアデルフィグループオブカンパニー(ウエストサセックス、英国)から入手できる市販のニッケルメッキした真ちゅう製座薬型に素早く注ぎ込んだ。座薬は使用時まで冷蔵保管した。
【0199】
実施例2、メトクロプラミドの膣座薬の調製
本例は、不浸透性被覆に添合するための含メトクロプラミド膣座薬の調製を説明する。
【0200】
メトクロプラミドハイドロクローライドは、ICNバイオケミカルズ社(コスタメッサ、カリフォルニア)から市販されている。座薬一服当たり50mgからなる膣座薬を、スマトリプタン座薬に関して記載した手順と同じ方法を用いて調製した。かかる処方中の製薬上の賦型剤組成物は、サッポサイア AS2X(66重量%)、HPMC(1.5重量%)、及び蒸留水(15重量%)であった。
【0201】
他の片頭痛薬又は鎮吐薬を含む座薬を、賦型剤を含めてそれらの量を変化させる以外、同様の方法で調製する。
【0202】
実施例3、ジクロフェナクナトリウムの膣座薬の調製
本例は、不浸透性被膜への添合用親水性ジクロフェナク膣座薬を調製する方法を説明する。
【0203】
7.18グラムのポリエチレングリコール(PEG)3350 及び3.86グラムのPEG6000(フィッシャーサイエンティフィック、ピッツバーグ、ペンシルバニア)の二成分混合物を水浴上で溶解した。均質なPEG溶液にトリエタノールアミン400mg(シグマ/アルドリッチ、セントルイス、ミズーリ)を加えた。別の容器内で、ジクロフェナクナトリウム400mg(スペクトラムケミカルズアンドラボラトリープロダクツ、ガーデナ、カルフォルニア)をトランスキュロール2.4グラムに溶解し、これを更に蒸留水2.4グラムで希釈した。撹拌下、両溶液を混合し冷却した。適当な粘度に達した後、等分した座薬塊をニッケルメッキした真鍮型に充填した。
【0204】
実施例4、プロメタジンの膣フィルムの調製
本例は、不浸透性被膜への添合用膣フィルム組成物を調製する方法を説明する。
【0205】
100mlのガラスビーカー中で、240mgの塩酸プロメタジン(スペクトラムケミカルズアンドラボラトリープロダクツ、ガーデナ、カルフォルニア)を2グラムの蒸留水及び1.5グラムのトランスキュロールに溶解した。かかる薬物溶液を、500mgのアルギン酸ナトリウム塩(カーボマー(CarboMer)社、ウエストブローフ、マサチューセッツ)及び8グラムの水からなる重合性アルギン酸溶液と混合した。手動式カマッグTLCプレート被覆機(カマッグサイエンティフィック社、ウィルミントン、ノースカロライナ)を用いて厚さ約1mmの薄膜を調製した。
【0206】
実施例5、メトクロプラミドの膣フォームの調製
本例は、薬用膣フォームの調製を説明する。
【0207】
メトクロプラミドハイドロクローライド(ICNバイオケミカルズ社、コスタメサ、カルフォルニア)をPEG400(10重量%、フィッシャーサイエンティフィック、ピッツバーグ、ペンシルバニア)及びトランスキュロール(15重量%)の混合物中に溶解した。別の容器中で、4.5重量%のアルギン酸ナトリウム塩を蒸留水(70重量%)中に溶解した。両溶液を混合し、5mlの等分物をプラスチックのシリンジ中に充填した。-80℃での完全凍結後、サンプルをシリンジの型から取り出し、凍結乾燥させて薬用膣フォームを形成した。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】図1Aは、経膣投与によるメスのニュージーランドホワイト種ウサギ中での抗片頭痛薬スマトリプタンの薬物動態を示すグラフである。各動物は体重1kg当たり0.7mgのスマトリプタンを受容した。白丸は静脈注射による血漿濃度を示し、黒四角は経口服用後の対応する薬物の血漿濃度を示す。結果を平均±標準偏差で表す。図1Bは、親脂肪性経膣輸送デバイスの膣挿入後のメスのニュージーランドホワイト種ウサギ中での抗片頭痛薬スマトリプタンの全身性血漿濃度を示す。各動物は体重1kg当たり0.7mgのスマトリプタンを受容し、血漿濃度は同一量のスマトリプタンを経口投与した後の同様の実験で測定されたCmaxに標準化した。検討を三羽の別々の動物で実行し、結果を平均±標準偏差で表す。
【図2】図2Aは、静脈注射後のメスのニュージーランドホワイト種ウサギ中での鎮吐薬メトクロプラミドの血漿濃度を示す。0.5mgのメトクロプラミドを含む薬物溶液を無菌生理食塩水(0.9%;重量/重量)中で調製し、耳周縁部の静脈を通して全身循環に注射した。血漿サンプルを6時間回収し、HPLCを用いて薬物の分析をした。結果を平均血漿±標準誤差(n=4)で表す。図2Bは、経膣投与後のメスのニュージーランドホワイト種ウサギ中での標準化したメトクロプラミドの血漿濃度を示す。血漿サンプルの薬物を選択的高速液体クロマトグラフ法を用いて分析し、静脈注射で用いたものと同じ時間点で測定したメトクロプロパミド濃度に標準化した。実験を三羽の別々の動物で実行し、結果を平均±標準偏差で表す。
【図3】図3は、直立状態での子宮及び膣を含む女性器官の一部の断面図である。
【図4】図4は、子宮及び膣を含む女性器官の一部の側断面図である。
【図5】図5は、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合又は付着してなる流体不浸透性キャップで覆われた膣タンポン又はタンポン状フォームデバイスの位置を示す。
【図6】図6は、抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合した不浸透性材料の一層又は数層で被覆された膣タンポン又はタンポン状フォームデバイスの一実施態様における位置を示す、子宮頸部に隣接した膣領域の側断面図である。
【図7】図7は、デバイスを粘膜接着剤組成物を含む材料から分離する流体不浸透性材料の層で覆われ、該不浸透性材料が膣粘膜の近位部に近接して置いたデバイスの薬用近位部の周りでスカート状の保護部を形成してなる膣タンポン又はタンポン状フォームデバイスの位置を示す。
【図8】図8は、流体不浸透性被膜で被覆されたタンポン又はタンポン状フォームデバイスのもう一つの実施態様を示し、この場合粘膜接着剤組成物を不浸透性層によってタンポン本体から分離された多孔性フォームキャップに添合し、本デバイスに用いたフォーム材料がフォームキャップの形成に用いたフォームデバイス材料と異なる。
【図9】図9は、流体不浸透性材料によって近位端が部分的に被覆されたタンポンを示し、この場合タンポン又はタンポン状フォームの近位端に抗片頭痛薬又は鎮吐薬を含む粘膜接着剤組成物を添合し、該組成物を錠剤、座薬又はゲルカプセルとして処方する。
【図10】図10は、突出指を有するキャップを形成する流体不浸透性材料によって被覆されたタンポン又はタンポン状フォームデバイスを示し、該キャップ又は指にのみ抗片頭痛薬もしくは鎮吐薬を含む粘膜接着性組成物を添合する。
【図11】図11は、本発明の粘膜接着剤組成物を含むスコップ状ゲルカプセルを添合したキャップを形成する材料の流体不浸透性層によって、近位端で部分的に被覆されたタンポン又はタンポン状フォームデバイスを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性患者に抗片頭痛薬又は鎮吐薬を輸送するための経膣デバイスであって、
前記経膣デバイスが膣タンポン、膣タンポン状フォーム、膣フォーム、膣リング、膣ペッサリー、膣スポンジ、膣シリンダー、膣タブレット、膣カプセル、膣パッド、膣パッチ、膣座薬、膣ペレット又は膣チューブであり、
前記経膣デバイスが流体不浸透性被膜の層、ストリップ、キャップ又はカップで被覆されるか或いは結合し、該被膜に粘膜接着剤組成物を添合するか又は前記組成物を被膜に付着するか若しくは被膜内に挿入し、
前記粘膜接着剤組成物が約0.00001から約45mg/体重1kgの抗片頭痛薬又は鎮吐薬、約30から約95%の親脂肪性又は親水性の担体、約0.1から約25%の粘膜接着剤及び約5から約30%の吸収促進剤を備え、
前記抗片頭痛薬がエルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴスチン、ブタルビタール、フェノバルビタール、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラク、イブプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、アセチルサリチル酸、フルルビプロフェン、トルフェナム酸、ブトルファノール、メペリジン、メタドン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ラザトリプタン、ゾルミトリプタン、アルモトリプタン、エレトリプタン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、イソメテプテン、クロルプロマジン、ジアゼパム、ドロペリドール、バルプロ酸、ガバペンチン、トピラメート及びジバルプロックスナトリウムからなる化合物の単独又は組合わせ、若しくは鎮吐薬との組み合わせから選択され、また前記鎮吐薬がメクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、アプレピタント、シクリジン及びプロメタジンの単独又は組み合わせ、若しくは抗片頭痛薬との組み合わせからなる群より選択され、
前記経膣デバイスを流体不浸透性被覆で完全に又は部分的に被覆し、該デバイスを部分的に被覆する際には不浸透性層被膜をデバイスの近位端に適用し、
前記被膜を前記デバイス上にフィルム、フォーム、フィルム、シート、ビーズ及びキセロゲルとして適用し、
前記流体不浸透性被覆材料が、分解性又は非分解性で水に可溶又は不溶性のポリマー、ワックス、プラスチックフィルム、被覆ガーゼ、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、合成ポリマーのみ又はこれとアルギン酸塩との組み合わせ、デキストラン、セルロース、セルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、キトサン、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、ポリエチレンオキシド−co−プロピレンオキシド、ポリアクリル酸、コラーゲン、アルブミン又はゼラチン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酪酸、ポリバレリン酸、ポリアクチド−co−カプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリオルソエステル、これら単独、これらの組み合わせ、これらのコポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸及びこれらの誘導体からなる群より選択され、
前記経膣デバイスを片頭痛、吐気及び嘔吐の症状の治療又は軽減に必要な時間膣内に維持することを特徴とする抗片頭痛薬又は鎮吐薬の輸送用経膣デバイス。
【請求項2】
前記デバイスが膣タンポン又はタンポン状フォームである請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスがその近位端で流体不浸透性材料によって部分的に被覆されている請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
前記被膜に抗片頭痛薬又は鎮吐薬、抗片頭痛薬及び鎮吐薬の混合物、及び製薬上適合した賦型剤を含む粘膜接着剤組成物を添合するか、或いは該組成物を被膜に付着する請求項3記載のデバイス。
【請求項5】
前記組成物を前記デバイスに付着し、膣粘膜と物理的に接触するように構成する請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
前記被覆が流体不浸透性材料の一又は複数の層、カップ、キャップ又はストリップからなり、前記材料がポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物、エチレン−プロピレンのコポリマー、可塑化したポリ塩化ビニル及びシリコーンゴムからなる群から選択され、前記デバイスにフィルム、フォーム、フィルム、シート、ビーズ及びキセロゲルとして適用される請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
前記キャップ、カップ又はストリップを永続的に取り付けるか、別々又は取り外し可能にする請求項5記載のデバイス。
【請求項8】
前記キャップ、カップ又はストリップを取り付けるか又は取り外し可能にし、前記粘膜接着剤組成物をフォーム、フィルム、座薬、錠剤、カプセル又は微粒子もしくはナノ粒子を含むカプセルとして処方し、前記キャップ、カップ又はストリップに付着又は挿入し、膣粘膜及び子宮頸部と物理的に接触するように構成する請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
前記層、ストリップ、キャップ又はカップを前記デバイスに取り付け、前記粘膜接着剤組成物を溶液、粉末、クリーム、ローション、微粒子、ナノ粒子、エマルジョン、リポソーム懸濁液流体、生体接着性のシステム又はマイクロエマルジョンとして処方し、前記層、ストリップ、キャップ又はカップに添合し、膣粘膜及び子宮頸部と物理的に接触するように構成する請求項7記載のデバイス。
【請求項10】
抗片頭痛薬又は鎮吐薬の経膣輸送に適した前記粘膜接着剤組成物が、約0.00001から約45mg/体重1kgの抗片頭痛薬又は鎮吐薬、約30から約95%の親脂肪性又は親水性担体、約0.1から約25%の粘膜接着剤を含み、膣粘膜に適用する前記組成物の量が、片頭痛、吐気又は嘔吐の治療に治療上効果的な量の薬剤を子宮又は全身循環へ輸送するに十分なものとする請求項9記載のデバイス。
【請求項11】
前記粘膜接着剤組成物が粘膜接着剤、浸透エンハンサー、親脂肪性又は親水性担体及び吸収促進剤を含む請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記粘膜接着剤が約1.5から約15重量%で存在するヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロース誘導体、天然ゴム、アルギン酸又はペクチンであり、
前記吸収促進剤が約2から約30重量%で存在するエトキシジグリコール、ポリエチレングリコール カプリル/カプリングリセリド、プロピレングリコール及びグリセロールのオレイン酸エステルを有するグリコール誘導体、並びにエステル交換ストーンオイルであり、
前記親脂肪性担体が約30から95重量%で存在する8から18炭素の炭素鎖を有する脂肪酸の飽和モノ、ジもしくはトリグリセリド又はその混合物であり、親水性担体が約30から約95重量%で存在する分子量約200から8000のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体もしくは混合物、PEG 6000/PEG 1500、 PEG 6000/PEG 1500/PEG 400、又はPEG 6000/PEG 400、又はPEG 8000/PEG 1500である請求項11記載のデバイス。
【請求項13】
前記抗片頭痛薬又は鎮吐薬が約0.05から約1.5mg/体重1kg(1日に3回服用)の範囲のエルゴタミン、約0.5から約4mg/kg(1日に2回服用)の範囲のジクロフェナクナトリウム、約0.2から約10mg/kg・1日の範囲のスマトリプタン、約0.1から7mg/kg・1日の範囲のゾルミトリプタン、約0.1から1.0mg/kg・1回服用の範囲のメトクロプラミド、0.3から2.5mg/kg・1回服用の範囲のパークロロペラジン、約0.3から4mg/kg・1回の範囲のオンダンセトロン、約0.05から0.5mg/kg(1日に2回服用)の範囲のドロナビノール、及び0.15から1.3mg/kgの範囲のプロペタジンである請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
前記キャップ又はカップがテーパー状で、タンポンデバイスに自己接着する請求項13記載のデバイス。
【請求項15】
前記キャップ又はカップが前記タンポンデバイスに取り付けるための内部隆起又はフックを有する請求項14記載のデバイス。
【請求項16】
片頭痛、中毒、伝染病、化学療法、放射線治療、手術、妊娠又は更年期に付随した片頭痛及び頭痛、吐気又は嘔吐を治療するにあたり、
a)かかる治療の必要な女性患者に、粘膜接着剤組成物を添合するか又は該組成物は付着若しくは挿入した流体不浸透性被膜の層、ストリップ、キャップ又はカップで被覆された経膣デバイスを経膣的に投与する工程と
b)片頭痛、吐気及び嘔吐の症状の治療又は軽減に必要な時間だけ膣内に前記経膣デバイスを維持する工程とを備え、
前記経膣デバイスが膣タンポン、膣タンポン状フォーム、膣フォーム、膣リング、膣ペッサリー、膣リング、膣スポンジ、膣シリンダー、膣タブレット、膣カプセル、膣パッド、膣パッチ、膣座薬又は膣チューブであり、
前記粘膜接着剤組成物が約0.00001から約45mg/体重1kgの抗片頭痛薬又は鎮吐薬、約30から約95%の親脂肪性又は親水性の担体、約0.1から約25%の粘膜接着剤及び約5から約30%の吸収促進剤を備え、
前記抗片頭痛薬がエルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴスチン、ブタルビタール、フェノバルビタール、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラク、イブプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、アセチルサリチル酸、フルルビプロフェン、トルフェナム酸、ブトルファノール、メペリジン、メタドン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ラザトリプタン、ゾルミトリプタン、アルモトリプタン、エレトリプタン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、イソメテプテン、クロルプロマジン、ジアゼパム、ドロペリドール、バルプロ酸、ガバペンチン、トピラメート及びジバルプロックスナトリウムからなる化合物の単独又は組合わせ、若しくは鎮吐薬との組み合わせから選択され、また前記鎮吐薬がメクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、アプレピタント、シクリジン及びプロメタジンの単独又は組み合わせ、若しくは抗片頭痛薬との組み合わせからなる群より選択され、
前記経膣デバイスを流体不浸透性被覆で完全に又は部分的に被覆し、該デバイスを部分的に被覆する際には不浸透性層被膜をデバイスの近位端に適用し、
前記被膜を前記デバイス上にフィルム、フォーム、フィルム、シート、ビーズ及びキセロゲルとして適用し、
前記流体不浸透性被覆材料が、分解性又は非分解性で水に可溶又は不溶性のポリマー、ワックス、プラスチックフィルム、被覆ガーゼ、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、合成ポリマーのみ又はこれとアルギン酸塩との組み合わせ、デキストラン、セルロース、セルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、キトサン、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、ポリエチレンオキシド−co−プロピレンオキシド、ポリアクリル酸、コラーゲン、アルブミン又はゼラチン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酪酸、ポリバレリン酸、ポリアクチド−co−カプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリオルソエステル、これら単独、これらの組み合わせ、これらのコポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸及びこれらの誘導体からなる群より選択されることを特徴とする片頭痛及び頭痛、吐気又は嘔吐の治療方法。
【請求項17】
前記粘膜接着性組成物を溶液、粉末、クリーム、ローション、微粒子、ナノ粒子、エマルジョン、リポソーム懸濁液流体、生体接着性システム又はマイクロエマルジョンとして処方して流体不浸透性層に添合するか、或いはフォーム、フィルム、座薬、錠剤、カプセル、又はマイクロ粒子もしくはナノ粒子を含むカプセルとして処方して流体不浸透性層に付着又は挿入する請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記組成物を片頭痛の始まった時又は吐気中に投与する請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記片頭痛の治療が、約0.05から約1.5mg/体重1kg(1日に3回服用)の範囲のエルゴタミン、約0.5から約4mg/kg(1日に2回服用)の範囲のジクロフェナクナトリウム、約0.2から約10mg/kg・1日の範囲のスマトリプタン、約0.1から7mg/kg・1日の範囲のゾルミトリプタン、約0.1から1.0mg/kg・1回服用の範囲のメトクロプラミド、0.3から2.5mg/kg・1回の範囲のパークロロペラジン、約0.3から4mg/kg・1回服用の範囲のオンダンセトロン、約0.05から0.5mg/kg(1日に2回服用)の範囲のドロナビノール、及び0.15から1.3mg/kgの範囲のプロペタジンからなる組成物の投与を備える請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記粘膜接着剤組成物が、粘膜接着剤、浸透エンハンサー、親脂肪性又は親水性担体及び吸収促進剤を更に含み、
前記粘膜接着剤が、約1.5から約15重量%で存在するヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロース誘導体、天然ゴム、アルギン酸塩又はペクチンであり、
前記吸収促進剤が、約2から約30重量%で存在するエトキシジグリコール、ポリエチレングリコール カプリル/カプリングリセリド、プロピレングリコール及びグリセロールのオレイン酸エステルを有するグリコール誘導体、又はエステル交換ストーンオイルであり、
親脂肪性担体が、約30から約95重量%で存在する8から18炭素の炭素鎖を有する脂肪酸の飽和モノー、ジーもしくはトリグリセリド、又はこれらの混合物であり、親水性担体が、約30から約95重量%で存在する分子量約200から8000のポリエチレングリコール(PEG)又はこの誘導体もしくは混合物、PEG 6000/PEG 1500、 PEG 6000/PEG 1500/PEG 400、又はPEG 6000/PEG 400、又はPEG 8000/PEG 1500であることを特徴とする請求項19記載のデバイス。
【請求項1】
女性患者に抗片頭痛薬又は鎮吐薬を輸送するための経膣デバイスであって、
前記経膣デバイスが膣タンポン、膣タンポン状フォーム、膣フォーム、膣リング、膣ペッサリー、膣スポンジ、膣シリンダー、膣タブレット、膣カプセル、膣パッド、膣パッチ、膣座薬、膣ペレット又は膣チューブであり、
前記経膣デバイスが流体不浸透性被膜の層、ストリップ、キャップ又はカップで被覆されるか或いは結合し、該被膜に粘膜接着剤組成物を添合するか又は前記組成物を被膜に付着するか若しくは被膜内に挿入し、
前記粘膜接着剤組成物が約0.00001から約45mg/体重1kgの抗片頭痛薬又は鎮吐薬、約30から約95%の親脂肪性又は親水性の担体、約0.1から約25%の粘膜接着剤及び約5から約30%の吸収促進剤を備え、
前記抗片頭痛薬がエルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴスチン、ブタルビタール、フェノバルビタール、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラク、イブプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、アセチルサリチル酸、フルルビプロフェン、トルフェナム酸、ブトルファノール、メペリジン、メタドン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ラザトリプタン、ゾルミトリプタン、アルモトリプタン、エレトリプタン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、イソメテプテン、クロルプロマジン、ジアゼパム、ドロペリドール、バルプロ酸、ガバペンチン、トピラメート及びジバルプロックスナトリウムからなる化合物の単独又は組合わせ、若しくは鎮吐薬との組み合わせから選択され、また前記鎮吐薬がメクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、アプレピタント、シクリジン及びプロメタジンの単独又は組み合わせ、若しくは抗片頭痛薬との組み合わせからなる群より選択され、
前記経膣デバイスを流体不浸透性被覆で完全に又は部分的に被覆し、該デバイスを部分的に被覆する際には不浸透性層被膜をデバイスの近位端に適用し、
前記被膜を前記デバイス上にフィルム、フォーム、フィルム、シート、ビーズ及びキセロゲルとして適用し、
前記流体不浸透性被覆材料が、分解性又は非分解性で水に可溶又は不溶性のポリマー、ワックス、プラスチックフィルム、被覆ガーゼ、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、合成ポリマーのみ又はこれとアルギン酸塩との組み合わせ、デキストラン、セルロース、セルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、キトサン、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、ポリエチレンオキシド−co−プロピレンオキシド、ポリアクリル酸、コラーゲン、アルブミン又はゼラチン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酪酸、ポリバレリン酸、ポリアクチド−co−カプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリオルソエステル、これら単独、これらの組み合わせ、これらのコポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸及びこれらの誘導体からなる群より選択され、
前記経膣デバイスを片頭痛、吐気及び嘔吐の症状の治療又は軽減に必要な時間膣内に維持することを特徴とする抗片頭痛薬又は鎮吐薬の輸送用経膣デバイス。
【請求項2】
前記デバイスが膣タンポン又はタンポン状フォームである請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスがその近位端で流体不浸透性材料によって部分的に被覆されている請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
前記被膜に抗片頭痛薬又は鎮吐薬、抗片頭痛薬及び鎮吐薬の混合物、及び製薬上適合した賦型剤を含む粘膜接着剤組成物を添合するか、或いは該組成物を被膜に付着する請求項3記載のデバイス。
【請求項5】
前記組成物を前記デバイスに付着し、膣粘膜と物理的に接触するように構成する請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
前記被覆が流体不浸透性材料の一又は複数の層、カップ、キャップ又はストリップからなり、前記材料がポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物、エチレン−プロピレンのコポリマー、可塑化したポリ塩化ビニル及びシリコーンゴムからなる群から選択され、前記デバイスにフィルム、フォーム、フィルム、シート、ビーズ及びキセロゲルとして適用される請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
前記キャップ、カップ又はストリップを永続的に取り付けるか、別々又は取り外し可能にする請求項5記載のデバイス。
【請求項8】
前記キャップ、カップ又はストリップを取り付けるか又は取り外し可能にし、前記粘膜接着剤組成物をフォーム、フィルム、座薬、錠剤、カプセル又は微粒子もしくはナノ粒子を含むカプセルとして処方し、前記キャップ、カップ又はストリップに付着又は挿入し、膣粘膜及び子宮頸部と物理的に接触するように構成する請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
前記層、ストリップ、キャップ又はカップを前記デバイスに取り付け、前記粘膜接着剤組成物を溶液、粉末、クリーム、ローション、微粒子、ナノ粒子、エマルジョン、リポソーム懸濁液流体、生体接着性のシステム又はマイクロエマルジョンとして処方し、前記層、ストリップ、キャップ又はカップに添合し、膣粘膜及び子宮頸部と物理的に接触するように構成する請求項7記載のデバイス。
【請求項10】
抗片頭痛薬又は鎮吐薬の経膣輸送に適した前記粘膜接着剤組成物が、約0.00001から約45mg/体重1kgの抗片頭痛薬又は鎮吐薬、約30から約95%の親脂肪性又は親水性担体、約0.1から約25%の粘膜接着剤を含み、膣粘膜に適用する前記組成物の量が、片頭痛、吐気又は嘔吐の治療に治療上効果的な量の薬剤を子宮又は全身循環へ輸送するに十分なものとする請求項9記載のデバイス。
【請求項11】
前記粘膜接着剤組成物が粘膜接着剤、浸透エンハンサー、親脂肪性又は親水性担体及び吸収促進剤を含む請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記粘膜接着剤が約1.5から約15重量%で存在するヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロース誘導体、天然ゴム、アルギン酸又はペクチンであり、
前記吸収促進剤が約2から約30重量%で存在するエトキシジグリコール、ポリエチレングリコール カプリル/カプリングリセリド、プロピレングリコール及びグリセロールのオレイン酸エステルを有するグリコール誘導体、並びにエステル交換ストーンオイルであり、
前記親脂肪性担体が約30から95重量%で存在する8から18炭素の炭素鎖を有する脂肪酸の飽和モノ、ジもしくはトリグリセリド又はその混合物であり、親水性担体が約30から約95重量%で存在する分子量約200から8000のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体もしくは混合物、PEG 6000/PEG 1500、 PEG 6000/PEG 1500/PEG 400、又はPEG 6000/PEG 400、又はPEG 8000/PEG 1500である請求項11記載のデバイス。
【請求項13】
前記抗片頭痛薬又は鎮吐薬が約0.05から約1.5mg/体重1kg(1日に3回服用)の範囲のエルゴタミン、約0.5から約4mg/kg(1日に2回服用)の範囲のジクロフェナクナトリウム、約0.2から約10mg/kg・1日の範囲のスマトリプタン、約0.1から7mg/kg・1日の範囲のゾルミトリプタン、約0.1から1.0mg/kg・1回服用の範囲のメトクロプラミド、0.3から2.5mg/kg・1回服用の範囲のパークロロペラジン、約0.3から4mg/kg・1回の範囲のオンダンセトロン、約0.05から0.5mg/kg(1日に2回服用)の範囲のドロナビノール、及び0.15から1.3mg/kgの範囲のプロペタジンである請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
前記キャップ又はカップがテーパー状で、タンポンデバイスに自己接着する請求項13記載のデバイス。
【請求項15】
前記キャップ又はカップが前記タンポンデバイスに取り付けるための内部隆起又はフックを有する請求項14記載のデバイス。
【請求項16】
片頭痛、中毒、伝染病、化学療法、放射線治療、手術、妊娠又は更年期に付随した片頭痛及び頭痛、吐気又は嘔吐を治療するにあたり、
a)かかる治療の必要な女性患者に、粘膜接着剤組成物を添合するか又は該組成物は付着若しくは挿入した流体不浸透性被膜の層、ストリップ、キャップ又はカップで被覆された経膣デバイスを経膣的に投与する工程と
b)片頭痛、吐気及び嘔吐の症状の治療又は軽減に必要な時間だけ膣内に前記経膣デバイスを維持する工程とを備え、
前記経膣デバイスが膣タンポン、膣タンポン状フォーム、膣フォーム、膣リング、膣ペッサリー、膣リング、膣スポンジ、膣シリンダー、膣タブレット、膣カプセル、膣パッド、膣パッチ、膣座薬又は膣チューブであり、
前記粘膜接着剤組成物が約0.00001から約45mg/体重1kgの抗片頭痛薬又は鎮吐薬、約30から約95%の親脂肪性又は親水性の担体、約0.1から約25%の粘膜接着剤及び約5から約30%の吸収促進剤を備え、
前記抗片頭痛薬がエルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴスチン、ブタルビタール、フェノバルビタール、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、ケトロラク、イブプロフェン、ピロキシカム、ナプロキセン、アセチルサリチル酸、フルルビプロフェン、トルフェナム酸、ブトルファノール、メペリジン、メタドン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ラザトリプタン、ゾルミトリプタン、アルモトリプタン、エレトリプタン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、イソメテプテン、クロルプロマジン、ジアゼパム、ドロペリドール、バルプロ酸、ガバペンチン、トピラメート及びジバルプロックスナトリウムからなる化合物の単独又は組合わせ、若しくは鎮吐薬との組み合わせから選択され、また前記鎮吐薬がメクロプラミド、プロクロルペラジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、ナビロン、ドロナビノール、レボナントラドール、アプレピタント、シクリジン及びプロメタジンの単独又は組み合わせ、若しくは抗片頭痛薬との組み合わせからなる群より選択され、
前記経膣デバイスを流体不浸透性被覆で完全に又は部分的に被覆し、該デバイスを部分的に被覆する際には不浸透性層被膜をデバイスの近位端に適用し、
前記被膜を前記デバイス上にフィルム、フォーム、フィルム、シート、ビーズ及びキセロゲルとして適用し、
前記流体不浸透性被覆材料が、分解性又は非分解性で水に可溶又は不溶性のポリマー、ワックス、プラスチックフィルム、被覆ガーゼ、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、合成ポリマーのみ又はこれとアルギン酸塩との組み合わせ、デキストラン、セルロース、セルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、キトサン、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、ポリエチレンオキシド−co−プロピレンオキシド、ポリアクリル酸、コラーゲン、アルブミン又はゼラチン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酪酸、ポリバレリン酸、ポリアクチド−co−カプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリオルソエステル、これら単独、これらの組み合わせ、これらのコポリマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸及びこれらの誘導体からなる群より選択されることを特徴とする片頭痛及び頭痛、吐気又は嘔吐の治療方法。
【請求項17】
前記粘膜接着性組成物を溶液、粉末、クリーム、ローション、微粒子、ナノ粒子、エマルジョン、リポソーム懸濁液流体、生体接着性システム又はマイクロエマルジョンとして処方して流体不浸透性層に添合するか、或いはフォーム、フィルム、座薬、錠剤、カプセル、又はマイクロ粒子もしくはナノ粒子を含むカプセルとして処方して流体不浸透性層に付着又は挿入する請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記組成物を片頭痛の始まった時又は吐気中に投与する請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記片頭痛の治療が、約0.05から約1.5mg/体重1kg(1日に3回服用)の範囲のエルゴタミン、約0.5から約4mg/kg(1日に2回服用)の範囲のジクロフェナクナトリウム、約0.2から約10mg/kg・1日の範囲のスマトリプタン、約0.1から7mg/kg・1日の範囲のゾルミトリプタン、約0.1から1.0mg/kg・1回服用の範囲のメトクロプラミド、0.3から2.5mg/kg・1回の範囲のパークロロペラジン、約0.3から4mg/kg・1回服用の範囲のオンダンセトロン、約0.05から0.5mg/kg(1日に2回服用)の範囲のドロナビノール、及び0.15から1.3mg/kgの範囲のプロペタジンからなる組成物の投与を備える請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記粘膜接着剤組成物が、粘膜接着剤、浸透エンハンサー、親脂肪性又は親水性担体及び吸収促進剤を更に含み、
前記粘膜接着剤が、約1.5から約15重量%で存在するヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロース誘導体、天然ゴム、アルギン酸塩又はペクチンであり、
前記吸収促進剤が、約2から約30重量%で存在するエトキシジグリコール、ポリエチレングリコール カプリル/カプリングリセリド、プロピレングリコール及びグリセロールのオレイン酸エステルを有するグリコール誘導体、又はエステル交換ストーンオイルであり、
親脂肪性担体が、約30から約95重量%で存在する8から18炭素の炭素鎖を有する脂肪酸の飽和モノー、ジーもしくはトリグリセリド、又はこれらの混合物であり、親水性担体が、約30から約95重量%で存在する分子量約200から8000のポリエチレングリコール(PEG)又はこの誘導体もしくは混合物、PEG 6000/PEG 1500、 PEG 6000/PEG 1500/PEG 400、又はPEG 6000/PEG 400、又はPEG 8000/PEG 1500であることを特徴とする請求項19記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−506687(P2008−506687A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521543(P2007−521543)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/024581
【国際公開番号】WO2006/017238
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(503014528)ユーエムディー, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/024581
【国際公開番号】WO2006/017238
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(503014528)ユーエムディー, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
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