説明

携帯端末、車載用通信機器及びこれらを用いた車両内通信システム

【課題】車両内無線通信システムにおいて、携帯機器中のICカードをより簡便に利用可能にするとともに、車載器間の情報の交換性も向上させる。
【解決手段】携帯端末10のICカード11は、携帯電話ホルダ20のICインターフェース22と情報を交換する。該情報は、携帯電話ホルダ20の無線通信インターフェース23を介して、車載器50に送信される。携帯電話ホルダ20と車載器50間の通信可能距離は、携帯電話ホルダ20と携帯端末10の間の通信可能距離より長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末と車両内における車載器の無線通信又は複数の車載器間の無線通信を可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の情報のやり取りを外部空間と車両内部との間でも簡便にするため、携帯電話等の携帯端末と車両内に設けられた車載器の間で情報交換を可能とする技術が提案されてきている。このような技術が特に要求されている分野としては、渋滞発生を回避するため、有料道路の利用料金を自動収受するETC(Electronic Toll Collection)システムがある。
【0003】
このETCシステムには、有料道路を利用する車両に塔載されるETC車載器が用いられている。ETC車載器のETCアンテナは、料金所近傍に設けられた路側アンテナとの間で電波の送受信を行うようになっている。その結果、有料道路の利用料金が自動的に収受されるようになっている。
【0004】
近年、ETCシステムにおいて、携帯電話の如き携帯端末を利用する技術が提案されている。図9は特許文献1に開示されたこのようなECTシステム41の例を示す。ETCシステム41はETC車載器21と携帯電話32とから構成され、有料道路を利用する車両に塔載されている。
【0005】
ETC用車載器21は、ETCアンテナ30と、ETC情報表示部24と、操作部25と、ETC処理部113と、制御部114と、変復調部115及び送受信部116を備えている。
【0006】
また、携帯電話32は、SAM部112、マイコン121及び内蔵メモリ122を備えている。SAM部112は、処理された受信データの暗号を解読して個人情報に変換し、その個人情報をマイコン121に送るようになっている。また、SAM部112は、マイコン121から送られた個人情報を暗号化して、携帯電話装着部22及びケーブル61を介してETC車載器21に送るようになっている。
【0007】
ECTシステム搭載車両がETC車線を通過した場合、路側アンテナからETCアンテナ30に対して電波が送信される。その電波はETCアンテナ30によって電波信号に変換され、送受信部116に送られる。電波信号は変復調部115によって送信信号に復調され、制御部114に送られる。送信信号はETC処理部113によって受信データに変換され、ケーブル61及び携帯電話装着部22を介してSAM部112に送られる。受信データは、SAM部112で解読されることによって個人情報に変換され、マイコン121に送られる。そして、その個人情報は、マイコン121によって内蔵メモリ122に書き込まれる。その結果、料金所51を通過したことが携帯電話32に記録される。尚、ETC情報表示部24には、利用料金のデータ等を含む各種情報が表示されるようになっており、操作部25への操作により、携帯電話32の各種情報がETC情報表示部24に表示される。
【特許文献1】特開2002−42192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の如きETCシステムにおいては、携帯電話装着部22及びケーブル61を介して情報の送受信を行なうこととしている。このようなシステムにおいては、ICカードを携帯する煩わしさの解消、ICカード紛失時の不正利用防止を十分に図れるとは言い難い。さらに、このようなケーブル接続システムでは機器の取り扱いが不便であり、必ずしも使い勝手のよいものとはいえない。また、同文献にはブルートゥース(Bluetooth)、IrDA(Infrared Data Association)等の無線通信を、ETC車載器21と携帯電話32との間の通信に用いることも提案されているが、実情を考慮した具体的な構成は提示されていない。また、複数の車載用機器の間で個人情報のやり取りを行ないたい場合もあるが、このような機能を実現するための技術は提案されていない。
【0009】
ETCシステムが抱える課題は、以下の内容に本質的な課題点があると考えられる。ETCシステムはICカードを使った決済システムであるが、車載機器へICカードを装着したままにした運用は、車上荒らしなど車両被害の二次的被害を招く可能性があり好ましくない。従って、この課題対応のために、ICカードを乗降の度に挿抜してもらう習慣づけ、ETC搭載車両として狙われにくくするなどの配慮がされているが、本質的な対応策は未だ提示されていない。また、乗降時のICカード挿抜の煩わしさは、前述の発明では、携帯電話の装着に置換わっているのみで、本質的な改善は行われていない。本発明は、ユーザが常時利用する携帯電話等の携帯端末を使用し、無線通信に基づく車両内通信システムを実現するための車載用通信機器及びこれを用いた車両内通信システムを提供することにより、上述したようなETCシステムの持つ本来の課題を解決することを目的とする。さらには、このようなシステム用の携帯端末、料金等の決済態様の多様性にも対応可能なシステム、機器をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
近年、携帯端末にはICカードが搭載されるものが増えてきた。このようなICカードとして、接触型ICカードに加えて他サービスシステムへの対応として、非接触型ICカードを搭載するものも増えている。
【0011】
そこで本発明は、車両内に設置された車載器との無線通信が可能な携帯端末を提供する。当該携帯端末は、ICカードと、前記車載器によって提供される課金サービスに伴う課金情報を含む無線通信データを、前記車載器との間で送受信可能な近距離無線送受信インターフェースと、前記近距離無線送受信インターフェースを介して得られる前記課金情報を前記ICカードに保持する制御部と、を備える。このような構成により、ICカードを搭載した携帯端末を車載器の課金サービスにおける決済装置として、簡便に利用することが可能となる。
【0012】
また、前記近距離無線送受信インターフェースには、前記無線通信データに基づき、前記車載器を認証する認証部を設けることができる。このような構成により、無線通信の秘密保持、セキュリティ度を向上させることができる。
【0013】
また、前記近距離無線送受信インターフェースは、第1の車載器と無線通信可能な第1の送受信部と、第2の車載器と無線通信可能な第2の送受信部とを設けることができ、この場合前記第1の送受信部の無線通信方式と前記第2の送受信部の無線通信方式が異なる。前記第1の送受信及び前記第2の送受信部の無線通信方式として、ブルートゥース(Bluetooth)、IrDA(Infrared Data Association)、UWB(Ultra Wide Band)、ZigBee、特定小電力無線等がある。このような構成により、複数の車載器毎の無線通信が可能となる。
【0014】
ところで、上述したICカードに利用される無線電波の通信可能距離は短いため、車両内で他の車載器との通信を実現するには難しいことが多い。
【0015】
そこで、更に本発明は、携帯端末を利用し、車両内での無線通信を実現する車両内無線通信システムに適用される車載用通信機器を提供する。この車載用通信機器は、前記携帯端末の非接触型ICカードと通信可能な第1の送受信部と、前記車両内に配置された車載器と無線通信可能で、かつ前記第1の送受信部で用いられる無線通信方式よりも通信距離が長い無線通信方式を用いる第2の送受信部と、を備える。この構成下においては、車載用通信機器または携帯端末が、非接触型ICカードからの無線電波を、通信距離のより長い電波に変換することとなる。したがって、携帯端末を車載用通信機器の近傍に設置することにより、携帯端末に内蔵されたICカード機能を車両内無線通信システムにおいて利用することが可能となり、利便性が向上することとなる。
【0016】
また、車載用通信機器においては、前記車両内に配置された他の車載器と無線通信可能な第3の送受信部を更に設けることができる。この場合、前記第2の送受信部の無線通信方式と前記第3の送受信部の無線通信方式は、互いに異なる近距離無線通信を用いることができる。尚、無線通信の方式として、ブルートゥース、IrDA、UWB、ZigBee、特定小電力無線等等の近距離無線通信を採用することが考えられるが、機器(車載用通信機器及び車載器)の配置位置の自由度を高めるために必要とされる程度の距離を確保できるものであれば、特に方式の種類は限定されない。
【0017】
上述の構成により、複数の車載器の無線通信方式が異なる場合であっても、上述の車載用通信機器を用いることにより、1台の携帯端末と複数の車載器の通信が可能となる。また、複数の車載器間の通信も可能となる。
【0018】
上述の車載用通信機器は、前記携帯端末を保持可能な携帯端末保持装置に適用され得る。また、前記携帯端末と、上記車載用通信機器と、前記車載器としてのカーナビゲーション装置又はETC車載器を組み合わせて車両内無線通信システムが構成される。
【0019】
第2に本発明は、第1の車載器と、第2の車載器と、前記第1の車載器及び前記第2の車載器を無線通信により中継する中継部を有する携帯端末と、を備える車両内無線通信システムを提供する。
【0020】
上述の構成により、複数の車載器の無線通信方式が異なる場合であっても、携帯端末を介した複数の車載器間の通信が可能となる。
【0021】
前記中継部は、前記第1の車載器と無線通信可能な第1の送受信部と、前記第2の車載器と無線通信可能な第2の送受信部とから構成されうる。この場合、前記第1の送受信部の無線通信方式と前記第2の送受信部の無線通信方式は異なる。無線通信方式としては、ブルートゥース、IrDA、UWBなどが考えられる。更に、前記第1の車載器及び前記第2の車載器は、カーナビゲーション装置又はETC車載器から構成され得る。
【0022】
更に本発明は、携帯端末と、車両内に設置され前記携帯端末と無線通信が可能な車載器と、少なくとも前記車載機に設けられ、前記車両の位置を特定する位置特定部と、を備え、ETCゲートの位置と前記位置特定部により特定された車両の現在位置との距離が所定の範囲内にあるとき、前記携帯端末と前記車載器との無線通信が確立される車両内無線通信システムをも提供する。
【0023】
更に本発明は、複数の携帯端末と、車両内に設置され前記携帯端末と無線通信が可能であり、かつ前記各携帯端末を登録可能な車載器と、を備え、前記車載器によって提供される課金サービスに伴う決済処理が、前記各携帯端末と前記車載器の間で無線通信により実行可能であり、前記車載器は前記各携帯端末を識別し、各携帯端末毎に個別の決済処理条件に従って決済処理を行なう車両内無線通信システムをも提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、携帯機器中のICカードをより簡便に利用可能にするとともに、車載器間の情報の交換性も向上させる車両内無線通信システムを実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態における車両内無線通信システムの一例としてのETCシステムの概要を図1に示す。ETCシステムは車両の室内に搭載され、携帯電話10と、車載用通信機器としての携帯電話ホルダ(携帯端末保持装置)20と、カーナビゲーション装置(第1の車載器)30と、ETC車載器(第2の車載器)40とから構成される。ETCシステムは、例えばフロントウィンドウ200に配置されたETCアンテナを介し、有料道路の料金所からETC情報を受信する。携帯電話10は、グローブボックス400の前面に取り付けられた携帯電話ホルダ20に対して着脱可能に装着されるようになっている。カーナビゲーション装置30はダッシュボード300の下側に取り付けられ、ETC車載器40はダッシュボード300上方に取り付けられている。
【0027】
近年、携帯電話10に非接触型ICカードを搭載し、所定のリーダライタとの無線通信により、料金決済等の各種操作を行なわれる技術が提案されてきている。このような携帯電話10を上述のETCシステムに用いるに際しては、非接触型ICカードに料金決済の記録が保持される。この場合、携帯電話10と車載器30,40を接続するケーブルを省略することが可能となる。また、車載器がリーダライタとして機能する。
【0028】
しかしながら、このような非接触ICカードを用いた通信は、カードと車載器(リーダライタ)の間の距離を数cm程度に短縮させる必要がある。しかしながら、車両内部空間には他の各種機器が配置され、車載器30,40と携帯電話10を接近させて配置するには設計上制約があり、非接触型ICカードを用いたETCシステムを実現することは難しい。
【0029】
上述のような課題を解決するため、本発明のETCシステムには、車載用通信機器としての携帯電話ホルダ20が使用されている。図2はETCシステムのブロック図を示す。尚、図2において、図1のカーナビゲーション装置30と、ETC車載器40は、ブロック図にて表わされる主要構成図は同一であるため、一つの車載器50にて示されている。
【0030】
携帯電話10は、ICカード11と、表示部12と、操作部13とを備える。表示部12は液晶ディスプレイ等から構成され、着信通知表示、着信待ち受け表示、電池残量表示や時刻表示等種々の表示を行なう。操作部13は十字キーやテンキー等種々のキーやボタンから構成され、ユーザからの操作を受け付ける。
【0031】
ICカード11は、一般的な非接触型ICチップより構成され、類似するものとして「無線タグ」、「RFID(Radio Frequency Identification)」、「電子荷札」等と呼ばれるものもあるが、本発明ではその詳細な構成は限定されない。一般的に、ICカード11は、外部のリーダライタから情報を送受信する送受信制御部、読み書き制御部、メモリ及び電源部等が半導体集積回路化されて、チップ上に形成され、構成されている。一般的に、電源部は、受信された無線電波の電力を利用して、直流電圧を発生するため、たとえ携帯端末10の電源がオフの状態でも、無線電波を受信してICカード11は起動可能である。ICカード11は、携帯電話10内に固定配置されてもよいし、携帯電話10に着脱可能な記録媒体形式にて構成してもよい。
【0032】
ICカード11は、銀行口座番号、課金サービスの有効期限等の個人契約情報を保有している。ユーザからの操作または車載器からの指示により、携帯電話10はICカード11から無線通信(例えば13.56MHz帯)を放ち、ICカード11内部に保有する情報を、無線により近距離に対して送信する。この無線通信の送受信可能範囲は数mm〜数cmである。
【0033】
携帯電話ホルダ20は、図2に示すように、樹脂成形された筐体内に収納された制御部21と、ICカードインターフェース(第1の送受信部)22と、無線通信インターフェース(第2の送受信部)23と、充電用回路25とを備える。制御部21は、CPU等各種の演算処理回路、演算処理回路によって実行される各種プログラムを記憶するメモリ、プログラム実行時のワークエリアとなるメモリ等を含み、携帯電話ホルダの各種の処理を制御する。
【0034】
ICカードインターフェース22は、携帯電話10の非接触型ICカード11との間で、無線により上述の個人契約情報を受信する。ICカード11から個人契約情報を受信すると、制御部21は、受信した情報を無線通信インターフェース23から、無線通信(例えば数mまで送信可能な2.45GHz帯)により、カーナビゲーション装置30及びETC車載器40に送信する。また、無線通信インターフェース23が、カーナビゲーション装置30及びETC車載器40から発信された無線通信により携帯電話10への通知情報および指示情報を受信すると、制御部21は受信した情報(無線通信データ)を、ICカードインターフェース22から無線通信により携帯電話10のICカード11へ送信する。充電用回路25は接触端子を有し、携帯電話ホルダ20に保持された携帯電話10の充電端子と接触して、携帯電話10の電池を充電する。
【0035】
図2に示すように、カーナビゲーション装置30、ETC車載器40を含む車載器50は、制御部51、情報表示部52、操作部53と、送受信インターフェース55から構成される。
【0036】
制御部51は、CPU等各種の演算処理回路、演算処理回路によって実行される各種プログラムを記憶するメモリ、プログラム実行時のワークエリアとなるメモリ等を含み、車載器50の各種の処理を制御する。情報表示部52は液晶ディスプレイ等から構成され、カーナビゲーション装置30においては地図表示等(図1の52a)が、ETC車載器40においては利用料金等(図1の52b)が表示される。操作部53(図1の53a及び53b)はロータリースイッチやスライドキーなど種々のメカニカルスイッチや、液晶ディスプレイ上のタッチボタン等により構成され、ユーザからの操作を受け付ける。また、車載器本体とは別個に設けられたリモコン上に設けることもできる。
【0037】
次に、本発明のETCシステムにおける料金決済(課金サービスの提供)の動作について、車載器50の動作を中心にして図3を用いて説明する。ユーザは、車載器50の提供する課金サービスの提供を受ける場合、車載器50の操作部53から利用開始の旨の操作を入力する。この操作入力があったか否かを制御部51は判定する(ステップS101)。制御部51は入力があったと判定すると(ステップS101;YES)、制御部51は情報表示部52上に、ユーザに対し個人契約情報を必要とする旨の個人情報要求を表示させる(ステップS102)。
【0038】
上述の要求を見たユーザは、携帯電話10の操作部13から所定の入力を行い、この入力を受けたICカード11は無線通信にて個人情報を携帯電話ホルダ20に発信する。個人情報を受信した携帯電話ホルダ20は、無線通信にて車載器50に個人情報を発信する。
【0039】
一方、ステップS102の後、車載器50の制御部51は、携帯電話ホルダ20から送信される無線通信を待つモードに入る(ステップS103;NO)。一定時間経過しても無線通信を受信しない場合(ステップS104;YES)、制御部51は個人契約情報の送信指示を、携帯電話ホルダ20に対して、送受信インターフェース55から送信し(ステップS105)、個人契約情報の送信を携帯電話ホルダ20に対し要求する。携帯電話ホルダ20が該情報を保持していれば、車載器50に返送する。
【0040】
そして、ステップS103にて、送受信インターフェース55を介して携帯電話ホルダ20から送信された無線通信を正常に受信した場合、制御部51はその情報が個人契約情報か否かを判別する(ステップS106)。個人契約情報が正しく受信できなかった場合は(ステップS106;NO)、ユーザに通知するために、制御部51は再送要求を情報表示部52に表示させる。
【0041】
正しく個人契約情報を受信した場合(ステップS106;YES)、制御部51は課金サービスが使用可能になった旨を情報表示部52に表示させる(ステップS108)。以降、制御部51は自動的に、または操作部53から受け付けた操作により、車載器50の提供する課金サービスをユーザに提供する。ユーザの課金サービスの利用が終了次第(ステップS109;YES)、制御部51は課金情報を送受信インターフェース55から無線通信により、携帯電話ホルダ20へ送信する。これを受けた携帯電話ホルダ20は、ICインターフェース22から携帯電話10へ課金情報を送信し、携帯電話10のICカード11は課金情報を保持する。
【0042】
上述したように、ICカード11とICインターフェース22間で使用されている無線通信の伝送距離は短いため、本発明の携帯電話ホルダ20がない場合、ICカード11、すなわち携帯電話10を車載器50の近傍に置く必要がある。しかしながら、車両内という機器の配置に制約がある空間では、車載器50の近傍に携帯電話10を固定する設備を常に配置することができるとは限らない。また、使用の度に、ユーザが、特に運転中のユーザが携帯電話10を車載器50の近くまで持っていくことは不便である。
【0043】
しかしながら、上述した本発明の構成では、携帯電話ホルダ20が、ICカード11からの無線通信方式(数mm〜数cmの通信可能距離)を、より通信距離の長い無線通信方式(数mの通信可能距離)に変換することとなる。したがって、携帯電話10を固定する設備(携帯電話ホルダ)の配置位置の自由度が高まり、携帯機器中のICカードを用いたETCシステムの利便性が向上することとなる。
【0044】
尚、携帯電話ホルダ20と車載器50の間の通信方式として、ブルートゥース(Bluetooth)、IrDA(Infrared Data Association)、UWB(Ultra Wide Band)等の近距離無線通信を採用することが考えられるが、機器の配置位置の自由度を高めるために必要とされる程度の距離を確保できるものであれば、特に方式の種類は限定されない。
【0045】
(第2の実施の形態)
上述の実施形態では複数の車載器を構成するカーナビゲーション装置30と、ETC車載器40が、車両室内に配置されている。そして携帯電話ホルダ20との間で、ブルートゥースやIrDAやUWB等の無線通信を介して情報のやり取りが行なわれる。
【0046】
カーナビゲーション装置30と、ETC車載器40が互いに異なる通信方式(異なる通信規格)を採用している場合は、両者に同時に情報を送信し、両者から同時に情報を受信することは困難となる。例えば、カーナビゲーション装置30がブルートゥース方式を採用し、ETC車載器40がIrDA方式を採用し、携帯電話ホルダ20がブルートゥース方式を採用している場合、携帯電話ホルダ20とETC車載器40との間の無線通信は不可能となってしまう。また、カーナビゲーション装置30とETC車載器40との間の通信も実現できない。
【0047】
また、複数の車載用機器の間で個人情報のやり取りを行ないたい場合もある。しかしながら、各車載機器の無線通信規格が異なる場合、このような車両内での複数機器間の通信を実現することは難しい。
【0048】
図4は、本実施形態のETCシステムのブロック図を示す。本実施形態では、カーナビゲーション装置30がブルートゥース方式を採用しており、ブルートゥース送受信インターフェース55aを有する。一方、ETC車載器40がIrDA方式を採用しており、IrDA送受信インターフェース55bを有する。
【0049】
本実施形態では、携帯電話10が、ICカード11と、表示部12と、操作部13と、制御部14と、近距離無線送受信インターフェース(ユニット)17とを備える。ICカード11と、表示部12と、操作部13は図2のものと同じである。また、制御部14は、携帯電話10の全体の動作を制御するもので、所定のプログラムによって動作するプロセッサ(図示せず)を主体に構成される。制御部14は、プロセッサによって実行される各種プログラムを記憶するメモリ、プログラム実行時のワークエリアとなるメモリ、携帯電話の各種設定データを記憶するメモリ等の各種メモリ(図示せず)を含んでいる。
【0050】
近距離無線送受信インターフェース17は、制御部14の制御下、カーナビゲーション装置30、ETC車載器40との間で、課金サービスに伴う課金情報や、車載器のID(Identification)等を含む無線通信データのやり取りを行なうユニットであり、ブルートゥースインターフェース(第1の送受信部)15a、IrDAインターフェース(第2の送受信部)15bの二つのインターフェースを備えている。ブルートゥースインターフェース15aとIrDAインターフェース15bとから、カーナビゲーション装置30とETC車載器40を中継する中継部が構成される。従って、携帯電話10のICカード11は、当該二つのインターフェース各々を介して、カーナビゲーション装置30とETC車載器40の双方と同時に通信をすることが可能となる。さらには、携帯電話10を媒介として(ブルートゥースインターフェース15aとIrDAインターフェース15bからなる中継部を介して)、カーナビゲーション装置30とETC車載器40が通信を行なうことも可能となる。これにより、情報の共有性、交換性が向上する。ICカード11への課金情報のやり取りは、ブルートゥースインターフェース(第1の送受信部)15aやIrDAインターフェース(第2の送受信部)15bのインターフェースを介して行われるため、ICカード11は非接触型ICカード、接触型ICカードのどちらでも良い。
【0051】
さらに近距離無線送受信インターフェース17は、ブルートゥースインターフェース15a、IrDAインターフェース15b各々に対応した認証部16a、16bを備える。これらの認証部は、無線通信の相手方が正しい無線通信の相手であるか否かを、車載器のID等を含む無線通信データに基づき認証することにより、無線傍受等の不正行為により情報が漏洩するのを防止する役割を果たす。認証部16aはブルートゥース通信のデータから相手方がカーナビゲーション装置30であるか否かを認証し、認証が正しくなされた場合のみ、ブルートゥースインターフェース15aとブルートゥース送受信インターフェース55aの間で無線通信が実行可能となる。同様に、認証部16bはIrDA通信のデータから相手方がETC車載器40であるか否かを認証し、認証が正しくなされた場合のみ、IrDAインターフェース15bとIrDA送受信インターフェース55bの間で無線通信が実行可能となる。
【0052】
携帯電話10の制御部14は、課金情報を含む認証された無線通信データを車載器から受信したとき、課金情報をICカード11に保持する。従って、第1の実施形態のような車載用通信機器(携帯電話ホルダ)を別途用意する必要がなくなる。更にIrDAインターフェース15b、IrDA送受信インターフェース55bの代わりに、ブルートゥース(図8参照)やUWBなどの無線通信方式を適用すれば、携帯電話を例えば所有者のポケットの中に入れたままでも良く、取出して別の場所に設置する必要も無くなる。ブルートゥースやUWBは、IrDAに比べ通信距離が長いからである。従って、ICカードの挿抜忘れに準ずる携帯端末の車内忘れ防止効果も向上する。また、携帯端末としての携帯電話10が、カーナビゲーション装置30、ETC車載器40と直接通信可能となることにより、これらの機器の車両内における設置の自由度が更に向上する。さらに、認証機構を設けることにより、不正な情報へのアクセスを排除することが可能となる。
【0053】
図5は第2実施形態のETCシステムの変形例であり、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせた構成である。本例では、携帯電話ホルダ20が、ICインターフェース(第1の送受信部)22に加え、ブルートゥースインターフェース(第2の送受信部)23a、IrDAインターフェース(第3の送受信部)23bを備えている。従って、携帯電話10のICカード11は、携帯電話ホルダ20の当該二つのインターフェースを介して、カーナビゲーション装置30とETC車載器40の双方と同時に通信をすることが可能となる。さらには、携帯電話ホルダ20を媒介として、カーナビゲーション装置30とETC車載器40が通信を行なうことも可能となる。
【0054】
図6も第2実施形態のETCシステムの変形例である。本変形例では、カーナビゲーション装置30、ETC車載器40の各々に車載機器間送受信インターフェース57a,57bが設けられ、これらの間で通信(有線、無線いずれでもよい)が可能となっている。そして、携帯電話のIrDAインターフェース15bとETC車載器40のIrDA送受信インターフェース55bが通信可能である。この場合、破線で示すようにカーナビゲーション装置30のブルートゥース送受信インターフェース55aが省略できる。もちろん、携帯電話のブルートゥースインターフェース15aとカーナビゲーション装置30のブルートゥース送受信インターフェース55aを通信可能とし、ETC車載器40のIrDA送受信インターフェース55bを省略してもよい。
【0055】
(第3の実施の形態)
図7は第3の実施形態のETCシステムのブロック図を示し、上述した実施形態の構成に加えて、位置特定部18が携帯電話10に、位置特定部58a及びゲート位置情報蓄積部59aがカーナビゲーション装置30にそれぞれ設けられている。位置特定部18、位置特定部58aには、一般的にGPS(全地球測位システム:Global Positioning System)が用いられるが、携帯電話基地局や無線LAN AP(アクセスポイント)などを基準に地理的な所在を特定できるシステムであれば任意のものを使用できる。また、ゲート位置情報蓄積部59aは、機器内に保持された位置情報データベースによって構成しても良いし、携帯電話網などの通信網を介してのサーバー支援型の検索システムでも良く、前述の位置特定部18、位置特定部58aにより求められた機器の現在位置に基づき、道路のETCゲートに対する相対位置関係を求めることができる情報を取得するものである。
【0056】
この構成下では、位置特定部が、各々の位置すなわち車両の現在位置を特定可能なため、車両が所定の距離の範囲内でETCゲートに接近した際、携帯電話のIrDAインターフェース15bとETC車載器40のIrDA送受信インターフェース55bの間で無線接続を初めて確立し、開始することが可能となる。すなわち、携帯電話10の制御部14、ETC車載器40の制御部51bは、それぞれ位置特定部18、位置特定部58a(カーナビゲーション装置30から車載機器間送受信インターフェース57a,57bを経由して受信)から位置情報データを受信し、IrDAインターフェース15b、IrDA送受信インターフェース55bの無線通信の開始、終了を制御する。この際、認証部16b、認証部56bは相互の機器認証を行なう。
【0057】
この無線認証・接続は、ICカード決済処理手順が開始される前に完了する。この実施形態によれば、ETCゲート付近で無線接続を開始すればよく、常時無線接続しなくとも良いため、電池動作する携帯端末機器として省電力化が期待できる。しかも、ETCシステムとしては、車両通過時の車両速度をできる限り制限しない方が望ましいため、ETCシステム処理時間は短い必要がある。従来のICカードリーダに比べて、無線接続処理に変更すると接続時間などの処理が増えることが予測できるが、本実施形態ではこの時間的課題についても配慮できる構成となる。
【0058】
(第4の実施の形態)
上述の実施形態では、ICカード機能を有する携帯端末(携帯電話)1台に対し、複数の車載機器が情報を送受信する関係を示したが、図8に示した実施形態の様に、本発明は携帯端末が複数台の環境においても適用可能である。
【0059】
たとえば、車両を運用するユーザは、(イ)、(ロ)・・・など携帯電話に応じて複数人登録される場合が想定される。そして、(イ)、(ロ)が同乗した際の料金の決済ルールについても配慮しておく必要がある。そこで、本実施形態においては、決済条件処理部54bをETC車載器40に設ける。そして、この決済条件処理部54bに設定される決済条件は、ユーザの操作部53bの操作による制御部51bの決済条件処理部54bに対する制御処理により、設定可能である。もしくは、決済条件選択部19を各携帯電話10に設け、無線通信を通じて決済処理部54bの決済条件を制御することも可能である。この場合、ユーザは操作部13を操作し、制御部14が決済条件選択部19に対し選択処理を施し、この選択結果が無線通信によりETC車載器40に送信される。
【0060】
この決済処理条件設定により、ETC車載器40は各携帯端末を識別することが可能となる。また、各携帯端末毎に個別の決済処理条件に従って決済処理を行なうことも可能である。この際、同意を得た携帯端末を1つだけ決済可能な端末として選択設定しても良いし、複数選択しても良い。複数選択の場合は、既存にはない1つの決済に複数のICカード決済するものであり、割り勘のような決済方法までの拡張性を実現することが可能である。
【0061】
上述の実施形態では、携帯電話を携帯端末の例として述べたが、携帯端末として、PHS、PDA等他の端末を利用することができるのはもちろんである。
【0062】
上述のICカードで処理される課金情報とは、課金金額自体の情報はもとより、その他に課金に付随する付加情報(乗降ゲート情報・日付・時間など)も含まれる。また、課金金額に代わる伝票番号などにより参照可能な情報により、本発明のシーケンスでは処理されず、別の処理により参照できる情報なども含むものである。
【0063】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の車載用通信機器によれば、車両内無線通信システムにおいて、携帯機器中のICカード機能をより簡便に利用可能にするとともに、車載器間の情報の交換性も向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のETCシステムを備える車両の内部を示す図
【図2】第1の実施形態のETCシステムの構成を示すブロック図
【図3】ETCシステムの動作を示すフローチャート
【図4】第2の実施形態のETCシステムの構成を示すブロック図
【図5】第2の実施形態の変形例のETCシステムの構成を示すブロック図
【図6】第2の実施形態の他の変形例のETCシステムの構成を示すブロック図
【図7】第3の実施形態のETCシステムの構成を示すブロック図
【図8】第4の実施形態のETCシステムの構成を示すブロック図
【図9】従来のETCシステムの構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0066】
10 携帯電話
11 ICカード
12 表示部
13 操作部
20 携帯電話ホルダ
21 制御部
22 ICインターフェース
23 無線通信インターフェース
25 充電用回路
30 カーナビゲーション装置
40 ETC車載器
50 車載器
51 制御部
52 情報表示部
53 操作部
55 送受信インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に設置された車載器との無線通信が可能な携帯端末であって、
ICカードと、
前記車載器によって提供される課金サービスに伴う課金情報を含む無線通信データを、前記車載器との間で送受信可能な近距離無線送受信インターフェースと、
前記近距離無線送受信インターフェースを介して得られる前記課金情報を前記ICカードに保持する制御部と、
を備える携帯端末。
【請求項2】
請求項1記載の携帯端末であって、
前記近距離無線送受信インターフェースは、前記無線通信データに基づき、前記車載器を認証する認証部を含む、携帯端末。
【請求項3】
請求項1に記載の携帯端末であって、
前記近距離無線送受信インターフェースは、第1の車載器と無線通信可能な第1の送受信部と、第2の車載器と無線通信可能な第2の送受信部と、を備え、
前記第1の送受信部の無線通信方式と前記第2の送受信部の無線通信方式が異なる、携帯端末。
【請求項4】
請求項3に記載の車両内無線通信システムであって、
前記第1の送受信及び前記第2の送受信部の無線通信方式が、ブルートゥース、IrDA、UWBのうち少なくとも1つである、携帯端末。
【請求項5】
携帯端末を利用し、車両内での無線通信を実現する車両内無線通信システムに適用される車載用通信機器であって、
前記携帯端末の非接触型ICカードと通信可能な第1の送受信部と、
前記車両内に配置された車載器と無線通信可能で、かつ前記第1の送受信部で用いられる無線通信方式よりも通信距離が長い無線通信方式を用いる第2の送受信部と、を備える車載用通信機器。
【請求項6】
請求項5に記載の車載用通信機器であって、
前記車両内に配置された他の車載器と無線通信可能な第3の送受信部を更に備え、
前記第2の送受信部の無線通信方式と前記第3の送受信部の無線通信方式が異なる、車載用通信機器。
【請求項7】
請求項6に記載の車載用通信機器であって、
前記第2の送受信部の無線通信方式及び第3の送受信部の無線通信方式には互いに異なる近距離無線通信を適用する、車載用通信機器。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項に記載の車載用通信機器であって、
当該車載用通信機器が、前記携帯端末を保持可能な携帯端末保持装置である、車載用通信機器。
【請求項9】
前記携帯端末と、
請求項5ないし8のいずれか1項記載の車載用通信機器と、
前記車載器としてのカーナビゲーション装置又はETC車載器の少なくともいずれか1つとを備える車両内無線通信システム。
【請求項10】
第1の車載器と、
第2の車載器と、
前記第1の車載器及び前記第2の車載器を無線通信により中継する中継部を有する携帯端末と、を備える車両内無線通信システム。
【請求項11】
請求項10に記載の車両内無線通信システムであって、
前記中継部は、前記第1の車載器と無線通信可能な第1の送受信部と、前記第2の車載器と無線通信可能な第2の送受信部と、を備え、
前記第1の送受信部の無線通信方式と前記第2の送受信部の無線通信方式が異なる、車両内無線通信システム。
【請求項12】
請求項11に記載の車両内無線通信システムであって、
前記第1の送受信及び前記第2の送受信部の無線通信方式が、ブルートゥース、IrDA、UWBのうち少なくとも1つである、車両内無線通信システム。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれか1項記載の車両内無線通信システムであって、
前記第1の車載器及び前記第2の車載器は、カーナビゲーション装置又はETC車載器のうち少なくともいずれか1つである、車両内無線通信システム。
【請求項14】
携帯端末と、
車両内に設置され前記携帯端末と無線通信が可能な車載器と、
少なくとも前記車載機に設けられ、前記車両の位置を特定する位置特定部と、を備え、
ETCゲートの位置と前記位置特定部により特定された車両の現在位置との距離が所定の範囲内にあるとき、前記携帯端末と前記車載器との無線通信が確立される車両内無線通信システム。
【請求項15】
複数の携帯端末と、
車両内に設置され前記携帯端末と無線通信が可能であり、かつ前記各携帯端末を登録可能な車載器と、を備え、
前記車載器によって提供される課金サービスに伴う決済処理が、前記各携帯端末と前記車載器の間で無線通信により実行可能であり、
前記車載器は前記各携帯端末を識別し、各携帯端末毎に個別の決済処理条件に従って決済処理を行なう車両内無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−352850(P2006−352850A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136453(P2006−136453)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】