説明

放射線撮像パネルを構成する光導電層および放射線撮像パネル

【課題】 放射線画像情報を静電潜像として記録する放射線撮像パネルを構成する光導電層を、感度が高く、環境負荷の小さい光導電性材料からなるものとする。
【解決手段】 放射線画像情報を静電潜像として記録する放射線撮像パネルを構成する光導電層であって、この光導電層をZnO焼結体からなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線などの放射線撮像装置に適用して好適な放射線撮像パネルに関し、詳しくは、放射線撮像パネルを構成する光導電層に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療用X線撮影において、被験者の受ける被爆線量の減少、診断性能の向上等のために、X線に感応する光導電層を感光体として用い、この光導電層にX線により形成された静電潜像を、光或いは多数の電極で読み取って記録するX線撮像パネルが知られている。これらは、周知の撮影法であるTV撮像管による間接撮影法と比較して高解像度である点で優れている。
【0003】
上述したX線撮像パネルは、この撮像パネル内に設けられた電荷生成層にX線を照射することによって、X線エネルギーに相当する電荷を生成し、生成した電荷を電気信号として読み出すようにしたものであって、上記光導電層は電荷生成層として機能する。この光導電層を構成する材料として例えば特許文献1〜3にはZnOが使用されている。
【0004】
また、特許文献4および5には、エネルギー分離性の優れたエネルギーサブトラクション画像を形成するための無機材料の一例としてZnOを用いることが記載されている。さらに、特許文献6には陽極、陰極が光導電層上にある放射線撮像パネルにおいて、光導電層の一例としてZnOを用いることが記載されている。
【特許文献1】特開平11−211832号
【特許文献2】特開平11−218758号
【特許文献3】特開2000−253313号
【特許文献4】特開2001−249182号
【特許文献5】特開2001−257331号
【特許文献6】WO2002−063340号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ZnOは環境負荷が小さいという利点を有するが、上記特許文献1〜3に記載されている光導電層はいずれも塗布法によって形成されているため、放射線吸収効率が劣り感度が低いという問題がある。放射線吸収効率を高くするためには、この光導電層を厚く形成すればよいが、膜厚を厚くすると読取速度が低下するとともに、潜像形成後少なくとも読出しを開始してから終了するまでの間、光導電層に高圧を印加するため、暗電流が増加し、暗電流による電荷が潜像電荷に加算され、低線量域でのコントラストを低下させるという問題がある。また、高圧を印可するためにデバイスを劣化させやすく、耐久性が低下したり、電気ノイズを発生しやすくなる。
【0006】
特許文献4,5に記載の光導電層も塗布法によって形成されているため上述の問題がある上、これらに記載の光導電層はエネルギーサブトラクション画像を形成するための特殊なものであって、複雑な構成からなるため製造コストがかかる。特許文献6に記載の光導電層はスパッタ法あるいはレーザーアブレーション蒸着法で形成されているが、スパッタ法あるいはレーザーアブレーション蒸着法で所望の放射線吸収率を得られるような層厚とするには相当の時間がかかるため、放射線撮像パネルの製造コストアップとなる。また、特許文献6に記載の光導電層は二次元検出器には不向きな構成であり、画素の微細化が技術的に困難である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、感度が高く、環境負荷の小さい、ZnOからなる光導電層、およびこの光導電層を備えた放射線撮像パネルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光導電層は、放射線画像情報を静電潜像として記録する放射線撮像パネルを構成する光導電層であって、該光導電層がZnO焼結体からなることを特徴とするものである。
【0009】
前記光導電層の充填率は80%以上であることが好ましい。ここで、充填率は光導電層のZnOの重量を体積で割って算出した密度とZnO固有の密度(5.66g/cm3)の比より算出されるものである。なお、焼結体の場合、バインダ等は気化しているため、光導電層そのものの重量を光導電層のZnOの重量とみなすことができる。
【0010】
本発明の放射線撮像パネルは、放射線画像情報を静電潜像として記録するZnO焼結体からなる光導電層を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光導電層は、放射線画像情報を静電潜像として記録する放射線撮像パネルを構成する光導電層であって、該光導電層がZnO焼結体からなるので、ZnO密度を高く形成することが可能であり、発生電荷の捕集効果を大きくすることができ感度を向上させることができる。また、光導電層の空隙が少ないので電子の移動が速く、移動度が大きいので低電圧印可が可能であり、応答時間の早い放射線撮像パネルを製造することができる。さらに、ZnOは毒性がなく環境負荷も小さいため、製造の際に回収ライン等が必要ないため製造コストを抑えることが可能である。
【0012】
特に、従来、ZnOを塗布法で形成した場合には、バインダで分散されて実質的な密度が低下することで発生電荷の捕集効果が低く、画像の粒状性が悪いといった問題があったが、本発明のZnO焼結体からなる光導電層はバインダを含まないので、このような問題を解消することができる。加えて、バインダを含まないため放射線耐性が高く、耐久性に優れる。また、蒸着法によって形成した場合には、放射線吸収効率を高くするため光導電層を厚く形成する必要があり、コスト高となる問題があったが、蒸着法に比較して低コストで製造することが可能である。
【0013】
また、光導電層の充填率を80%以上とすることによって、発生電荷の捕集効果をさらに大きくすることが可能となり感度を向上させることができる。また、電気ノイズを小さくすることができるため、粒状性のよい画像を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のZnO焼結体からなる光導電層の製造方法としては、市販のZnO粉体を高圧プレス機でプレスすることで膜化し、得られた膜を焼結させるプレス焼結法、上記ZnO粉体をバインダを用いて塗布してグリーンシート(バインダを含んだ膜)を作製し、このグリーンシートを焼成して脱バインダ化及び粉末の焼結化を行う方法(以下、グリーンシート法)、真空中でこのZnO粉体をキャリアガスで巻き上げて、そのZnO粉体の混じったキャリアガスを真空中で支持体に吹き付けてZnO粉体を堆積させエアロゾルデポジション法(AD法)で製膜した後焼結する方法などの公知の方法を用いることができる。
【0015】
なお、グリーンシート法ではバインダを用いるが、このバインダは焼結によって完全に消失し、焼結後のZnO焼結体に残存することはない。バインダとしては、セルロースアセテート、ポリアルキルメタアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等を好ましくあげることができる。
【0016】
ZnO粉末は、フランス法によるZnO粒子、塩化亜鉛、硫化亜鉛などから溶液反応によって作製される湿式法によるZnO粒子、亜鉛鉱を直接加熱して作製されるアメリカ法によるZnO粒子、いずれの製法によるものであってもよい。
【0017】
本発明では、酸素欠損、亜鉛格子間イオンが含まれない化学量論の一致したZnOが好ましく用いることができる。酸化亜鉛は、ドープされていてもよいし、ドープされていなくてもよい。
【0018】
光導電層の層厚は好ましくは10〜1000μm、さらには100〜800μmであることが好ましい。光導電層の層厚が10μmよりも薄い場合にはX線吸収率が低下し感度の向上は望めず、一方、1000μmよりも厚い場合にはX線吸収量は飽和によってこれ以上増加しない上に、発生した電荷が電極に到達するまで長い距離を移動することになり、途中でトラップされ失活して、捕集効率が低下してしまい、却って画像が劣化してしまうことになる
放射線撮像パネルには、放射線を直接電荷に変換し電荷を蓄積する直接変換方式と、放射線を一度CsIなどのシンチレータで光に変換し、その光をa−Siフォトダイオードで電荷に変換し蓄積する間接変換方式があるが、本発明の光導電層は前者の直接変換方式に用いるものである。なお、放射線としてはX線の他、γ線、α線、β線などについて使用することが可能である。
【0019】
また、本発明の光導電層は、光の照射により電荷を発生する半導体材料を利用した放射線画像検出器により読み取る、いわゆる光読取方式にも、放射線の照射により発生した電荷を蓄積し、その蓄積した電荷を薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)などの電気的スイッチを1画素ずつON・OFFすることにより読み取る方式(以下、TFT方式という)にも用いることができる。
【0020】
まず、前者の光読取方式に用いられる放射線撮像パネルを例にとって説明する。図1は本発明の光導電層を有する放射線撮像パネルの一実施の形態を示す断面図を示すものである。
【0021】
この放射線撮像パネル10は、後述する記録用の放射線L1に対して透過性を有する第1の導電層1、この導電層1を透過した放射線L1の照射を受けることにより導電性を呈する記録用放射線導電層2、導電層1に帯電される電荷(潜像極性電荷;例えば負電荷)に対しては略絶縁体として作用し、かつ、電荷と逆極性の電荷(輸送極性電荷;上述の例においては正電荷)に対しては略導電体として作用する電荷輸送層3、後述する読取用の読取光L2の照射を受けることにより導電性を呈する読取用光導電層4、電磁波L2に対して透過性を有する第2の導電層5を、この順に積層してなるものである。
【0022】
ここで、導電層1および5としては、例えば、透明ガラス板上に導電性物質を一様に塗布したもの(ネサ皮膜等)が適当である。電荷輸送層3としては、導電層1に帯電される負電荷の移動度と、その逆極性となる正電荷の移動度の差が大きい程良く、ポリN−ビニルカルバゾール(PVK)、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1'−ビフェニル〕−4,4'−ジアミン(TPD)やディスコティック液晶等の有機系化合物、或いはTPDのポリマー(ポリカーボネート、ポリスチレン、PVK)分散物,Clを10〜200ppmドープしたa−Se等の半導体物質が適当である。特に、有機系化合物(PVK,TPD、ディスコティック液晶等)は光不感性を有するため好ましく、また、誘電率が一般に小さいため電荷輸送層3と読取用光導電層4の容量が小さくなり読み取り時の信号取り出し効率を大きくすることができる。
【0023】
読取用光導電層4には、a−Se,Se−Te,Se−As−Te,無金属フタロシアニン,金属フタロシアニン,MgPc( Magnesium phtalocyanine),VoPc(phaseII of Vanadyl phthalocyanine),CuPc(Cupper phtalocyanine)等のうち少なくとも1つを主成分とする光導電性物質が好適である。
【0024】
記録用放射線導電層2には、本発明のZnO焼結体からなる光導電層を使用する。すなわち、本発明の光導電層は記録用放射線導電層である。
【0025】
続いて、静電潜像を読み取るために光を用いる方式について簡単に説明する。図2は放射線撮像パネル10を用いた記録読取システム(静電潜像記録装置と静電潜像読取装置を一体にしたもの)の概略構成図を示すものである。この記録読取システムは、放射線撮像パネル10、記録用照射手段90、電源50、電流検出手段70、読取用露光手段92並びに接続手段S1、S2とからなり、静電潜像記録装置部分は放射線撮像パネル10、電源50、記録用照射手段90、接続手段S1とからなり、静電潜像読取装置部分は放射線撮像パネル10、電流検出手段70、接続手段S2とからなる。
【0026】
放射線撮像パネル10の導電層1は接続手段S1を介して電源50の負極に接続されるとともに、接続手段S2の一端にも接続されている。接続手段S2の他端の一方は電流検出手段70に接続され、放射線撮像パネル10の導電層5、電源50の正極並びに接続手段S2の他端の他方は接地されている。電流検出手段70はオペアンプからなる検出アンプ70aと帰還抵抗70b とからなり、いわゆる電流電圧変換回路を構成している。
【0027】
導電層1の上面には被写体9が配設されており、被写体9は放射線L1に対して透過性を有する部分9aと透過性を有しない遮断部(遮光部)9bが存在する。記録用照射手段90は放射線L1を被写体9に一様に曝射するものであり、読取用露光手段92は赤外線レーザ光やLED、EL等の読取光L2を図3中の矢印方向へ走査露光するものであり、読取光L2は細径に収束されたビーム形状をしていることが望ましい。
【0028】
以下、上記構成の記録読取システムにおける静電潜像記録過程について電荷モデル(図3)を参照しながら説明する。図2において接続手段S2を開放状態(接地、電流検出手段70の何れにも接続させない)にして、接続手段S1をオンし導電層1と導電層5との間に電源50による直流電圧Edを印加し、電源50から負の電荷を導電層1に、正の電荷を導電層5に帯電させる(図3(A)参照)。これにより、放射線撮像パネル10には導電層1と5との間に平行な電場が形成される。
【0029】
次に記録用照射手段90から放射線L1を被写体9に向けて一様に曝射する。放射線L1は被写体9の透過部9aを透過し、さらに導電層1をも透過する。放射線導電層2はこの透過した放射線L1を受け導電性を呈するようになる。これは放射線L1の線量に応じて可変の抵抗値を示す可変抵抗器として作用することで理解され、抵抗値は放射線L1によって電子(負電荷)とホール(正電荷)の電荷対が生じることに依存し、被写体9を透過した放射線L1の線量が少なければ大きな抵抗値を示すものである(図3(B)参照)。なお、放射線L1によって生成される負電荷(−)および正電荷(+)を、図面上では−または+を○で囲んで表している。
【0030】
放射線導電層2中に生じた正電荷は放射線導電層2中を導電層1に向かって高速に移動し、導電層1と放射線導電層2との界面で導電層1に帯電している負電荷と電荷再結合して消滅する(図3(C),(D)を参照)。一方、放射線導電層2中に生じた負電荷は放射線導電層2中を電荷輸送層3に向かって移動する。電荷輸送層3は導電層1に帯電した電荷と同じ極性の電荷(本例では負電荷)に対して絶縁体として作用するものであるから、放射線導電層2中を移動してきた負電荷は放射線導電層2と電荷輸送層3との界面で停止し、この界面に蓄積されることになる(図3(C),(D)を参照)。蓄積される電荷量は放射線導電層2中に生じる負電荷の量、即ち、放射線L1の被写体9を透過した線量によって定まるものである。
【0031】
一方、放射線L1は被写体9の遮光部9bを透過しないから、放射線撮像パネル10の遮光部9bの下部にあたる部分は何ら変化を生じない( 図3(B)〜(D)を参照)。このようにして、被写体9に放射線L1を曝射することにより、被写体像に応じた電荷を放射線導電層2と電荷輸送層3との界面に蓄積することができるようになる。なお、この蓄積せしめられた電荷による被写体像を静電潜像という。
【0032】
次に静電潜像読取過程について電荷モデル(図4)を参照しつつ説明する。接続手段S1を開放し電源供給を停止すると共に、S2を一旦接地側に接続し、静電潜像が記録された放射線撮像パネル10の導電層1および5を同電位に帯電させて電荷の再配列を行った後に(図4(A)参照)、接続手段S2を電流検出手段70側に接続する。
【0033】
読取用露光手段92により読取光L2を放射線撮像パネル10の導電層5側に走査露光すると、読取光L2は導電層5を透過し、この透過した読取光L2が照射された光導電層4は走査露光に応じて導電性を呈するようになる。これは上記放射線導電層2が放射線L1の照射を受けて正負の電荷対が生じることにより導電性を呈するのと同様に、読取光L2の照射を受けて正負の電荷対が生じることに依存するものである(図4(B)参照)。なお、記録過程と同様に、読取光L2によって生成される負電荷(−)および正電荷(+)を、図面上では−または+を○で囲んで表している。
【0034】
電荷輸送層3は正電荷に対しては導電体として作用するものであるから、光導電層4に生じた正電荷は蓄積電荷に引きつけられるように電荷輸送層3の中を急速に移動し、放射線導電層2と電荷輸送層3との界面で蓄積電荷と電荷再結合をし消滅する(図4(C)参照)。一方、光導電層4に生じた負電荷は導電層5の正電荷と電荷再結合をし消滅する(図4(C)参照)。光導電層4は読取光L2により十分な光量でもって走査露光されており、放射線導電層2と電荷輸送層3との界面に蓄積されている蓄積電荷、即ち静電潜像が全て電荷再結合により消滅せしめられる。このように、放射線撮像パネル10に蓄積されていた電荷が消滅するということは、放射線撮像パネル10に電荷の移動による電流Iが流れたことを意味するものであり、この状態は放射線撮像パネル10を電流量が蓄積電荷量に依存する電流源で表した図4(D)のような等価回路でもって示すことができる。
【0035】
このように、読取光L2を走査露光しながら、放射線撮像パネル10から流れ出す電流を検出することにより、走査露光された各部(画素に対応する)の蓄積電荷量を順次読み取ることができ、これにより静電潜像を読み取ることができる。なお、本放射線検出部動作については特開2000-105297号等に記載されている。
【0036】
次に、後者のTFT方式の放射線撮像パネルについて説明する。この放射線撮像パネルは、図5に示すように放射線検出部100とアクティブマトリックスアレイ基板(以下AMA基板)200が接合された構造となっている。図6に示すように放射線検出部100は大きく分けて放射線入射側から順に、バイアス電圧印加用の共通電極103と、検出対象の放射線に感応して電子−正孔対であるキャリアを生成する光導電層104と、キャリア収集用の検出電極107とが積層形成された構成となっている。共通電極の上層には放射線検出部支持体を有していてもよい。
【0037】
光導電層104は本発明のZnO焼結体からなる光導電層である。共通電極103や検出電極107は、例えばITO(インジウム錫酸化物)や、AuあるいはPtなどの導電材料からなる。バイアス電圧の極性に応じて、正孔注入阻止層、電子注入阻止層が共通電極103や検出電極107に付設されていてもよい。
【0038】
AMA基板200の各部の構成について簡単に説明する。AMA基板200は図7に示すように、画素相当分の放射線検出部105の各々に対して電荷蓄積容量であるコンデンサ210とスイッチング素子としてTFT220とが各1個ずつ設けられている。支持体102においては、必要画素に応じて縦1000〜3000×横1000〜3000程度のマトリックス構成で画素相当分の放射線検出部105が2次元配列されており、また、AMA基板200においても、画素数と同じ数のコンデンサ210およびTFT220が、同様のマトリックス構成で2次元配列されている。光導電層で発生した電荷はコンデンサ210に蓄積され、光読取方式に対応して静電潜像となる。TFT方式においては、放射線で発生した静電潜像は電荷蓄積容量に保持される。
【0039】
AMA基板200におけるコンデンサ210およびTFT220の具体的構成は、図6に示す通りである。すなわち、AMA基板支持体230は絶縁体であり、その表面に形成されたコンデンサ210の接地側電極210aとTFT220のゲート電極220aの上に絶縁膜240を介してコンデンサ210の接続側電極210bとTFT220のソース電極220bおよびドレイン電極220cが積層形成されているのに加え、最表面側が保護用の絶縁膜250で覆われた状態となっている。また接続側電極210bとソース電極220bはひとつに繋がっており同時形成されている。コンデンサ210の容量絶縁膜およびTFT220のゲート絶縁膜の両方を構成している絶縁膜240としては、例えば、プラズマSiN膜が用いられる。このAMA基板200は、液晶表示用基板の作製に用いられるような薄膜形成技術や微細加工技術を用いて製造される。
【0040】
続いて放射線検出部100とAMA基板200の接合について説明する。検出電極107とコンデンサ210の接続側電極210bを位置合わせした状態で、両基板100、200を銀粒子などの導電性粒子を含み厚み方向のみに導電性を有する異方導電性フィルム(ACF)を間にして加熱・加圧接着して貼り合わせることで、両基板100、200が機械的に合体されると同時に、検出電極107と接続側電極210bが介在導体部140によって電気的に接続される。
【0041】
さらに、AMA基板200には、読み出し駆動回路260とゲート駆動回路270とが設けられている。読み出し駆動回路260は、図7に示すように、列が同一のTFT220のドレイン電極を結ぶ縦(Y)方向の読み出し配線(読み出しアドレス線)280に接続されており、ゲート駆動回路270は行が同一のTFT220のゲート電極を結ぶ横(X)方向の読み出し線(ゲートアドレス線)290に接続されている。なお、図示しないが、読み出し駆動回路260内では、1本の読み出し配線280に対してプリアンプ(電荷−電圧変換器)が1個それぞれ接続されている。このように、AMA基板200には、読み出し駆動回路260とゲート駆動回路270とが接続されている。ただし、AMA基板200内に読み出し駆動回路260とゲート駆動回路270とを一体成型し、集積化を図ったものも用いられる。
【0042】
なお、上述の放射線検出器100とAMA基板200とを接合合体させた放射線撮像装置による放射線検出動作については例えば特開平11-287862号などに記載されている。
以下に本発明の放射線撮像パネルを構成する光導電層の実施例を示す。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
高純度化学研究所製5NZnOを、エヌピーエーシステム社製プレス機にて、100MPaの圧力を印加して成型した。この成型体をサファイアセッター上に置いて、焼結温度1250℃で焼結をおこなった。焼結後の膜厚は約500μm厚であった。この焼結体を、藤倉化成製導電性ペーストドータイトに用いてAl基板に接合した。
【0044】
(実施例2)
実施例1において、焼結温度を1200℃に変更した以外は実施例1と同様にして焼結体を作製した。
【0045】
(比較例)
高純度化学研究所製5NZnOをポリエステルバインダ(東洋紡製:バイロン300)と重量比9:1でメチルエチルケトン溶媒を用いて混合分散させ、ドクターブレード法でAl基板に塗布し、乾燥後約500μm膜厚の塗布膜を得た。
【0046】
実施例1、2および比較例で得られた光導電層に上部電極として金を60nmの厚みでスパッタした。これに、X線光電流信号をタングステン菅球にて電圧80kVの条件で、10mRのX線を0.1秒間照射し、電圧を印加した条件(印可電圧は電場0.5V/μmに相当するように印可)で生じたパルス上の光電流を電流増幅器で電圧に変換し、デジタルオシロスコープで測定した。得られた電流・時間カーブより、X線照射時間の範囲において積分し、発生荷電量として測定した。また、暗電流は、X線未照射の暗所中において、光電流測定と同じ方法で電流値として測定した。
【0047】
結果を表1に示す。なお、発生電荷量は上記方法により測定された比較例の発生電荷量を100とした相対値により、暗電流は上記方法により測定された比較例の暗電流を1とした相対値により示した。また、空間充填率は、実施例は、基板上の光導電層の重量を体積で割って算出した密度とZnO固有の密度の比より、比較例は、バインダとZnOの重量比と体積比を補正した膜の密度を用いて算出した。詳細には、予め塗布に用いるバインダの重量(p)と乾燥時の固有密度(x)、並びにZnO粉末の重量(q)と固有密度(y)を求めておき、ZnOのみの占める密度を(ZnO重量)/(全体の体積)=q/(p/x+q/y)により求め、最後に該密度をZnO固有の密度で除することによって算出した。
【表1】

【0048】
表1から明らかなように、本発明のZnO焼結体からなる光導電層は、塗布法で作製した光導電層に比較して、実施例1において約15倍、実施例2において約10倍、発生電荷の捕集効果が高かった。
【0049】
以上のように、本発明のZnO焼結体からなる光導電層は、発生電荷の捕集効果が大きいために感度が高く、電気ノイズが小さいため粒状性のよい画像を得ることが可能である。また、耐久性に優れるとともに、毒性がなく、環境負荷も小さいという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の光導電層を有する放射線撮像パネルの一実施の形態を示す断面図
【図2】放射線撮像パネルを用いた記録読取システムの概略構成図
【図3】記録読取システムにおける静電潜像記録過程を電荷モデルにより示した図
【図4】記録読取システムにおける静電潜像読取過程を電荷モデルにより示した図
【図5】放射線検出器とAMA基板の合体状態を示す概略模式図
【図6】AMA基板の等価回路を示す電気回路図
【図7】放射線検出部の画素分を示す概略断面図
【符号の説明】
【0051】
1 導電層
2 記録用放射線導電層
3 電荷輸送層
4 読取用光導電層
5 導電層
10 放射線撮像パネル
70 電流検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像情報を静電潜像として記録する放射線撮像パネルを構成する光導電層であって、該光導電層がZnO焼結体からなることを特徴とする光導電層。
【請求項2】
前記光導電層の充填率が80%以上であることを特徴とする請求項1記載の光導電層。
【請求項3】
放射線画像情報を静電潜像として記録する、請求項1または2記載のZnO焼結体からなる光導電層を備えたことを特徴とする放射線撮像パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−5625(P2007−5625A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185109(P2005−185109)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【復代理人】
【識別番号】100111040
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 淑子
【Fターム(参考)】