説明

施設特定システム及び施設特定装置

【課題】複数の視線方向から乗員が注視する施設を正確に特定することが可能な施設特定システム及び施設特定装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置4において記憶されたナビ地図データ58に基づいて検出された注視点から所定の検索距離内に位置する施設を検索し、該当する施設を運転者の注視する施設として特定するとともに、ナビゲーション装置4において運転者の注視点から最大の検索距離内に施設が検索できなかった場合には、地図配信センタ2において記憶された基本地図データ14に基づいて検出された注視点から所定の検索距離内に位置する施設を検索し、該当する施設を運転者の注視する施設として特定するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員が注視する施設を特定する施設特定システム及び施設特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載用のナビゲーション装置、PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話機などの携帯情報機器、パーソナルコンピュータ等では、地図情報として一般道路及び高速道路等の道路や施設名称等を各種記憶デバイスに記憶するか、又はサーバ等からダウンロードすることにより、利用者に対して所望のエリアの地図を表示することが可能となっている。
【0003】
更に、従来のナビゲーション装置等では地図を表示するのみでなく、利用者の利便性をより向上させる為に、表示された道路の近辺に存在する施設(ショッピングセンタ、レストラン等)に関する情報(施設名称、提供する料理の種類、営業時間等)を案内することについても行われていた。しかし、車両周辺に施設が多数ある場合に、その全ての施設についての案内を行うことは乗員にとって煩わしいものとなっていた。
【0004】
そこで、乗員が案内を必要とする施設を特定する技術として、例えば特開平11−288341号公報には、乗員の視線方向を検出し、その視線方向から乗員の注視する施設を乗員が案内を必要とする施設として特定して、その施設の案内を行うナビゲーション装置について記載されている。
【特許文献1】特開平11−288341号公報(第4頁〜第6頁、図8、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、日本全国においては毎年新しい施設が建設されたり、営業を開始している。また、これに伴って、既存の施設が取り壊されたり、場所を移転したりもする。その際、ナビゲーション装置に記憶される地図情報が生成された後に新しく建設された(又は営業を開始した)施設に関する情報は、その地図情報に登録されていないという問題が生じる。そこで、このような不具合を回避するために、ナビゲーション装置が記憶する地図情報を定期的に更新することが行われているが、この地図情報の更新は常に全てのユーザが実行するわけではない。従って、古いバージョン地図情報を記憶したままのナビゲーション装置も多数存在する。
【0006】
そして、前記した特許文献1に記載されたナビゲーション装置で行われる施設の特定には、ナビゲーション装置に記憶されている地図情報が用いられるが、上述したようにナビゲーション装置には常に最新の地図情報が記憶されているとは限らない。従って、ナビゲーション装置に記憶されている地図情報が生成された時より後に建設された(又は営業を開始した)施設を運転者が注視していた場合には、その施設は検索の対象にならないため、乗員が注視する施設を正しく特定することができなかった。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、ナビゲーション装置に記憶されている地図情報が古いバージョンの地図情報であったとしても、乗員が注視する施設を正確に特定することが可能とした施設特定システム及び施設特定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る施設特定システム(1)は、ナビゲーション装置(4)と、前記ナビゲーション装置と通信を行う情報センタ(2)とを有し、車両の乗員が注視する施設を特定する施設特定システムにおいて、前記ナビゲーション装置は、地図上における施設の位置を含む地図情報を記憶するナビ地図情報記憶手段(56)と、車両の乗員の視線方向を異なるタイミングで複数検出する視線方向検出手段(33)と、前記視線方向検出手段により検出された乗員の複数の視線方向から乗員の注視点を検出する注視点検出手段(33)と、前記ナビ地図情報記憶手段に記憶された地図情報を用いて、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から所定の検索距離内にある施設を検索するナビ施設検索手段(33)と、前記ナビ施設検索手段によって前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から前記検索距離内に施設が検索できなかった場合に、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点の位置情報を情報センタに送信する注視点情報送信手段(33)と、を備え、前記情報センタ(2)は、地図上における施設の位置を含む地図情報を記憶するセンタ地図情報記憶手段(11)と、前記注視点情報送信手段によって前記乗員の注視点の位置情報が送信された場合に、前記センタ地図情報記憶手段に記憶された地図情報を用いて、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から所定の検索距離内にある施設を検索するセンタ施設検索手段(10)と、を備え、前記ナビ施設検索手段又は前記センタ施設検索手段によって検索された施設を乗員の注視する施設として特定することを特徴とする。
尚、「異なるタイミング」とは、時間を基準としたタイミングでも良いし、車両の走行距離を基準としたタイミングでも良い。また、乗員の操作に基づくタイミングでも良い。
【0009】
また、請求項2に係る施設特定システム(1)は、請求項1に記載の施設特定システムであって、前記情報センタ(2)は、前記センタ施設検索手段(10)によって前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から前記検索距離内に施設が検索できた場合に、検索された施設を含む所定範囲の地図情報を更新する為の地図更新情報を前記ナビゲーション装置(4)へ送信する更新情報送信手段(10)を備え、前記ナビゲーション装置は、前記更新情報送信手段によって送信された地図更新情報を用いて前記ナビ地図情報記憶手段に記憶された地図情報の内、前記所定範囲の地図情報を更新する地図更新手段(33)を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る施設特定システム(1)は、請求項1又は請求項2に記載の施設特定システムであって、前記注視点検出手段(33)は、前記乗員の複数の視線方向が交差する地点を乗員の注視点として検出することを特徴とする。
【0011】
更に、請求項4に係る施設特定装置(4)は、地図上における施設の位置を含む地図情報を記憶するナビ地図情報記憶手段(33)と、車両の乗員の視線方向を異なるタイミングで複数検出する視線方向検出手段(33)と、前記視線方向検出手段により検出された乗員の複数の視線方向から乗員の注視点を検出する注視点検出手段(33)と、前記ナビ地図情報記憶手段に記憶された地図情報を用いて、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から所定の検索距離内にある施設を検索するナビ施設検索手段(33)と、前記ナビ施設検索手段によって前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から前記検索距離内に施設が検索できなかった場合に、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点の位置情報を情報センタに送信する注視点情報送信手段(33)と、前記情報センタにおいて実行された検索結果に基づいて、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から所定の検索距離内にある施設に関する情報を取得する施設情報取得手段(33)と、を有し、前記施設情報取得手段によって情報を取得した施設を乗員の注視する施設として特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記構成を有する請求項1に記載の施設特定システムによれば、ナビゲーション装置において先ず施設の検索を行い、ナビゲーション装置において施設が検索できなかった場合には、更に情報センタで施設の検索を行うので、ナビゲーション装置に記憶されている地図情報が古いバージョンの地図情報であったとしても、情報センタに記憶された最新の地図情報に基づいて乗員が注視する施設を正確に特定することが可能となる。従って、例えば乗員の注視する施設を案内する際には、乗員にとって不要な施設情報については案内を抑制することができる。また、乗員の注視する施設をナビゲーション装置の目的地に設定する場合には、乗員の希望する目的地を複雑な操作を課すことなく設定することができ、利便性が向上する。
【0013】
また、請求項2に記載の施設特定システムによれば、ナビゲーション装置において施設が検索できなかったエリアの地図情報を新たな地図情報に更新するので、ナビゲーション装置に記憶されている地図情報が古いバージョンの地図情報であった場合には、乗員の注視する施設の特定と共に地図情報の更新も合わせて行うことが可能となる。
【0014】
また、請求項3に記載の施設特定システムによれば、乗員が同一の施設を注視し続けている場合において、乗員の複数の視線方向から乗員の注視する施設を確実に特定する事が可能となる。
【0015】
更に、請求項4に記載の施設特定装置によれば、施設特定装置において先ず施設の検索を行い、施設特定装置において施設が検索できなかった場合には、更に情報センタで施設の検索を行うので、施設特定装置に記憶されている地図情報が古いバージョンの地図情報であったとしても、情報センタに記憶された最新の地図情報に基づいて乗員が注視する施設を正確に特定することが可能となる。従って、例えば乗員の注視する施設を案内する際には、乗員にとって不要な施設情報については案内を抑制することができる。また、乗員の注視する施設をナビゲーション装置の目的地に設定する場合には、乗員の希望する目的地を複雑な操作を課すことなく設定することができ、利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る施設特定システムについて具体化した第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
先ず、第1実施形態に係る施設特定システム1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は第1実施形態に係る施設特定システム1を示した概略構成図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る施設特定システム1は、地図配信センタ2と、全国の各道路を走行する車両3と、車両3に設置されるナビゲーション装置(施設特定装置)4とから基本的に構成されている。
【0018】
ここで、地図配信センタ2は、定期的にナビゲーション装置4に記憶された古いバージョンの地図データを新設された新規道路を含む新たなバージョンの地図データへと更新する為の更新データの生成、並びに生成した更新データの車両3への配信を行う配信センタである。更に、第1実施形態に係る地図配信センタ2では、後述のようにナビゲーション装置4で車両3の運転者の注視する施設が検索できなかった場合に、地図配信センタ2の備える地図データに基づいて運転者の注視する施設の検索を行う。
尚、更新データとしてはナビゲーション装置4に記憶された地図データを全て書き換えて更新する(以下、全更新という)為の全更新データと、地図データの特定エリアのみを書き換えて更新する(以下、差分更新という)差分更新データの2種類がある。
【0019】
また、車両3は全国の各道路を走行する車両であり、車載機としてナビゲーション装置4を備える。そして、第1実施形態に係る施設特定システム1では、後述のように車両3の運転者が注視する施設を特定することを特徴とする。尚、地図配信センタ2と通信可能にある車両3は複数台である必要はなく、1台のみであっても良い。
【0020】
また、ナビゲーション装置4は車両3に設置され、格納する地図データに基づいて自車位置周辺の地図を表示したり設定された目的地までの経路の探索及び案内を行う車載機である。ここで、地図配信センタ2とナビゲーション装置4は予め車両に搭載されたDCMや携帯電話機等の車両用の通信モジュール5(以下、単に通信モジュール5という)を用いて双方向に通信可能に構成されており、両者間で運転者の注視点の位置情報、運転者の注視する施設として特定された施設の案内情報及び差分更新データ等の各種情報を送受信する。
また、第1実施形態に係るナビゲーション装置4は、地図配信センタ2から差分更新データが送信された場合には、送信された差分更新データに基づいて格納する地図データの更新を行う。
【0021】
続いて、施設特定システム1を構成する地図配信センタ2について図2を用いてより詳細に説明する。図2は第1実施形態に係る施設特定システム1の構成を示したブロック図である。
【0022】
地図配信センタ2は、図2に示すようにサーバ(センタ施設検索手段、更新情報送信手段)10と、サーバ10に接続された情報記録部としてのセンタ側地図情報DB(センタ地図情報記憶手段)11と、バージョン管理DB12と、センタ側通信装置13とを備える。
【0023】
サーバ10は、サーバ10の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM22、制御プログラムが記録されたROM23等の内部記憶装置を備えている。また、CPU21はROM23に記憶された各種プログラムに基づいて、ナビゲーション装置4から送信された運転者の注視点の位置情報とセンタ側地図情報DB11に記憶された基本地図データ14に基づいて運転者の注視する施設を検索する施設検索処理、検索された施設を運転者の注視する施設として特定する施設特定処理、古いバージョンの地図データを新しいバージョンの地図データに更新する差分更新データを生成する更新データ生成処理、生成した差分更新データを要求のあったナビゲーション装置4に対して配信する地図データ配信処理等を行う。
【0024】
また、センタ側地図情報DB11には、外部からの入力データや入力操作に基づいて生成され、ナビゲーション装置4に記憶されたナビ地図データを更新する際の基本となる地図データである基本地図データ14がバージョン毎に区分されて記憶されている。ここで、バージョンとは地図データが作成された時期を特定する為の作成時期情報であり、バージョンを参照することによって地図データが作成された時期を特定することが可能となっている。また、センタ側地図情報DB11には、基本地図データ14に基づいてサーバ10により生成され、ナビゲーション装置4に格納された地図データの一部を新たなバージョンの地図データへと差分更新する為の差分更新データ15についてもそれぞれバージョン毎に区分されて記憶されている。
【0025】
ここで、基本地図データ14は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要なデータが記録されている。具体的には、道路(リンク)形状に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ(POI(Point of Interest)情報)、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイに描画するための画像描画データ等から構成されている。
【0026】
ここで、特に、第1実施形態に係る地図配信センタ2に記憶される施設データについて図3を用いて説明する。
図3に示すように施設データは、地図上に位置する各種施設について、識別情報としての施設IDと、施設の位置を特定する位置座標(x、y)と、施設のジャンル(飲食店、イタリア料理、中華料理、書店、コンビニ等)と、施設の営業時間等が記憶される。
そして、後述するようにサーバ10は施設データの特に施設の位置座標に基づいて、運転者が注視する施設を特定する。また、運転者が注視する施設が特定された場合には、その施設に関するジャンルや営業時間等に関する情報をナビゲーション装置4に送信する。
【0027】
一方、バージョン管理DB12には、各ナビゲーション装置4に格納されているナビ地図データのバージョンに関する情報が記録されている。
【0028】
更に、センタ側通信装置13はナビゲーション装置4とネットワーク8を介して通信を行う為の通信装置である。ここで、ネットワーク8としては、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット、携帯電話回線網、電話回線網、公衆通信回線網、専用通信回線網、インターネット等の通信回線網等の通信系を使用することができる。そして、放送衛星によるCS放送、BS放送、地上波ディジタルテレビ放送、FM多重放送等を利用する通信系を使用することもできる。更に、高度道路交通システム(ITS)において利用されるノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)、狭域通信システム(DSRC)等の通信系を使用することもできる。
【0029】
次に、第1実施形態に係る施設特定システム1を構成するナビゲーション装置4の概略構成について図4を用いて説明する。図4は第1実施形態に係るナビゲーション装置4の構成を示したブロック図である。
【0030】
図4に示すように第1実施形態に係るナビゲーション装置4は、自車の現在位置を検出する現在位置検出部31と、各種のデータが記録されたデータ記録部32と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(視線方向検出手段、注視点検出手段、ナビ施設検索手段、地図更新手段)33と、操作者からの操作を受け付ける操作部34と、操作者に対して自車周辺の地図や施設に関する施設情報を表示する液晶ディスプレイ35と、経路案内に関する音声ガイダンスや施設に関する案内音声を出力するスピーカ36と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ37と、地図配信センタ2等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール5と、運転者の発話音声を解析する音声認識部38とから構成されている。また、ナビゲーションECU33には、自車の走行速度を検出する車速センサ40と、運転者の発話音声を録取するマイク41と、車内で運転者の顔を撮像する車内カメラ42が接続される。
【0031】
以下に、ナビゲーション装置4を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部31は、GPS51、地磁気センサ52、距離センサ53、ステアリングセンサ54、方位検出部としてのジャイロセンサ55、高度計(図示せず)等からなり、現在の自車の位置、方位等を検出することが可能となっている。
【0032】
また、データ記録部32は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB56、後述のナビゲーションECU33により検出された運転者の視線方向を累積的に記憶する視線方向DB57、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0033】
ここで、地図情報DB56は、ナビゲーション装置4の走行案内、経路探索、地図表示に使用されるナビ地図データ58が記憶される。
ここで、ナビ地図データ58は前記した基本地図データ14と同様に経路案内及び地図表示に必要な各種情報から構成されており、例えば、道路(リンク)形状に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、図3に示す施設に関する施設データ(POI(Point of Interest)情報)、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイ35に描画するための画像描画データ等から構成されている。
【0034】
そして、後述するようにナビゲーションECU33は施設データの特に施設の位置座標に基づいて、運転者が注視する施設を特定する。また、運転者が注視する施設が特定された場合には、その施設に関するジャンルや営業時間等に関する情報を液晶ディスプレイ35に表示したり、音声でスピーカ36から出力することにより運転者に施設の案内を行う。
また、ナビ地図データ58は、全国の全エリアの地図データを一括で更新する全更新、又は特定のエリアのみの地図データを更新する差分更新のいずれかによって更新される。尚、全更新及び差分更新の具体的な更新処理の方法については、既に公知の技術であるので、ここでは説明を省略する。
【0035】
また、視線方向DB57は、運転者の視線方向の検出結果が検出時刻とともに記憶されるDBである。具体的には、車内カメラ42で撮像した撮像画像に基づいてナビゲーションECU33により検出された運転者の視線方向が、車両方位に対する相対角度(視線角度)によって相対的に特定され、GPS51やジャイロセンサ55等によって検出された現在時刻、車両の現在位置、方位とともに視線方向データとして記憶される。尚、運転者の視線方向は絶対方位によって特定しても良い。
【0036】
ここで、特に、第1実施形態に係るナビゲーション装置4の視線方向DB57に記憶される視線方向データについて図5の具体例を用いて説明する。
図5では、車両71が道路72を走行中の場合において、所定のタイミングでの車両71を運転する運転者73の視線方向Eを特定する視線方向データを示す。そして、視線方向データは、現在の時刻(視線方向Eを検出した時刻)と、車両の現在位置(X,Y)と、車両の絶対方位φと、車両方位に対する運転者73の視線方向Eの相対角度(視線角度)θとから構成される。そして、上記視線方向データに基づいて運転者73の絶対的な視線方向Eが特定可能となる。
【0037】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)33は、目的地が選択された場合に現在位置から目的地までの誘導経路を設定する誘導経路設定処理、ナビ地図データ58に基づいて運転者の注視する施設を特定する施設特定処理等のナビゲーション装置4の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU61、並びにCPU61が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM62、制御用のプログラムのほか、施設特定処理プログラム(図6、図7参照)等が記録されたROM63、ROM63から読み出したプログラムを記録するフラッシュメモリ64等の内部記憶装置を備えている。
【0038】
操作部34は、走行開始時の現在位置を修正し、案内開始地点としての出発地及び案内終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。また、ナビゲーション装置4で音声認識を開始する際に操作されるトークスイッチも操作部34に含まれる。
そして、ナビゲーションECU33は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部34は液晶ディスプレイ35の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0039】
また、液晶ディスプレイ35には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在位置から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。更に、第1実施形態では、運転者の注視する施設の施設情報についても表示される。
【0040】
また、スピーカ36は、ナビゲーションECU33からの指示に基づいて誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。更に、第1実施形態では、運転者の注視する施設に関する案内音声についても出力される。
【0041】
また、DVDドライブ37は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB56の更新等が行われる。
【0042】
また、通信モジュール5は、地図配信センタ2、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等から送信された、差分更新データ、渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0043】
また、音声認識部38は、操作部34のトークスイッチがONされている間にマイク41によって録取された音声を解析する装置である。そして、第1実施形態に係るナビゲーション装置4では、音声認識部38によって運転者の発声した音声が認識されたことをトリガとして、運転者の注視する施設の特定が行われる。
【0044】
一方、車速センサ40は、車両の車輪の回転に応じて車速パルスを発生させ、車両の移動距離や車速を検出可能とするセンサである。
【0045】
また、マイク41は、音を電気信号に変換する機器であり、電気信号に変換された音は音声認識部38へと送信される。ここで、マイク41はインストルメントパネルの上面に取り付けられ、集音方向が運転席方向となるように設置される。
【0046】
また、車内カメラ42は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、インストルメントパネルの上面に取り付けられ、視線方向を運転席に向けて設置される。そして、運転席に座った運転者の顔を撮像する。また、ナビゲーションECU33は後述するように撮像された撮像画像から運転者の視線方向を検出し、検出した運転者の視線方向から運転者が注視する施設を特定する。
【0047】
続いて、前記構成を有する第1実施形態に係るナビゲーション装置4及び地図配信センタ2においてナビゲーションECU33及びサーバ10が実行する施設特定処理プログラムについて図6及び図7に基づき説明する。図6及び図7は第1実施形態に係る施設特定処理プログラムのフローチャートである。ここで、施設特定処理プログラムは、運転者が注視する施設を特定するプログラムである。尚、以下の図6及び図7にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置4が備えているRAM62やROM63、及び地図配信センタ2が備えているRAM22やROM23に記憶されており、CPU61又はCPU21により所定間隔(例えば200ms毎)で実行される。
【0048】
先ず、図6及び図7に基づいてナビゲーション装置4のCPU61が実行する施設特定処理プログラムについて説明すると、先ずステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU61はメモリの初期化などの初期化処理を実行する。
【0049】
次に、S2でCPU61は運転者の注視する施設の特定を開始する開始トリガが入力されたか否かを判定する。ここで、第1実施形態では、トークスイッチがONされて運転者による発話を音声認識部38で認識した場合に開始トリガが入力されたと判定する。尚、トークスイッチがONされたことのみを開始トリガの入力の条件としても良い。また、特定の発話内容(例えば、「あの店は?」)を認識したことを開始トリガの入力の条件としても良い。
【0050】
その結果、開始トリガが入力されたと判定された場合(S2:YES)にはS3へと移行する。一方、開始トリガが入力されていないと判定された場合(S2:NO)には、開始トリガが入力されるまで待機する。
【0051】
S3においてCPU61は、GPS51により自車の現在位置(仮にA地点とする)での位置座標(X1,Y1)を検出するとともに、地磁気センサ52やジャイロセンサ55により自車の絶対方位φ1を検出する。
更に、S3でCPU61は自車の現在位置(A地点)での運転者の視線方向Eを検出する。具体的には、車内カメラ42によって運転席に座った運転者の顔を撮像し、撮像画像に所定の画像処理を施すことによって運転者の顔の向きや瞳孔の位置を検出する。そして、検出された運転者の顔の向きや瞳孔の位置、車内カメラ42の設置位置や設置角度から運転者の視線方向Eを検出する。尚、視線方向Eは図8に示すように自車方位φ1に対する相対角度(視線角度)θ1によって相対的に特定される。
【0052】
そして、S4でCPU61は、前記S3で検出された自車位置(X1,Y1)、自車方位φ1、視線角度θ1を含むA地点での視線方向データを視線方向DBに記憶する。
【0053】
続いて、S5でCPU61は所定時間T(例えば2sec)待機する。
【0054】
そして、S6においてCPU61は、GPS51により自車の現在位置(仮にB地点とする)での位置座標(X2,Y2)を検出するとともに、地磁気センサ52やジャイロセンサ55により自車の絶対方位φ2を検出する。
更に、S6でCPU61は自車の現在位置(B地点)での運転者の視線方向Eを検出する。具体的には、車内カメラ42によって運転席に座った運転者の顔を撮像し、撮像画像に所定の画像処理を施すことによって運転者の顔の向きや瞳孔の位置を検出する。そして、検出された運転者の顔の向きや瞳孔の位置、車内カメラ42の設置位置や設置角度から運転者の視線方向Eを検出する。尚、視線方向Eは図8に示すように自車方位φ2に対する相対角度(視線角度)θ2によって相対的に特定される。また、上記S3及びS6が視線方向検出手段の処理に相当する。
【0055】
そして、S7でCPU61は、前記S6で検出された自車位置(X2,Y2)、自車方位φ2、視線角度θ2を含むB地点での視線方向データを視線方向DB57に記憶する。
【0056】
その後、S8でCPU61は、前記S4で記憶されたA地点での視線方向データと前記S7で記憶されたB地点での視線方向データとに基づいて、運転者が注視する注視点C(XX,YY)を検出する。具体的に、第1実施形態では図8に示すように運転者が同一の注視点Cを見続けると仮定し、異なるタイミング(第1実施形態では2sec間隔)で検出されたA地点とB地点での運転者の視線方向E,Eが交差する地点の座標を、三角測量による位置測定技術を用いて算出する。そして、算出された地点を運転者が注視する注視点C(XX,YY)として検出する。尚、上記S8が注視点検出手段の処理に相当する。
【0057】
続いて、S9でCPU61は、前記S8で検出された注視点Cと、ナビ地図データ58から取得した注視点周辺の施設の位置座標に基づいて、注視点Cから所定の検索距離以内(例えば、10m〜50m)にある施設を検索する。尚、検索距離は初期段階では最も短い最短距離(例えば10m)であり、その後に検索範囲(注視点Cを中心に半径を検索距離とした円形範囲)内に施設が位置しないと判定された場合に後述のように最大距離(例えば50m)まで徐々に拡大される(S13)。尚、上記S9がナビ施設検索手段の処理に相当する。
【0058】
そして、S10でCPU61は、注視点Cから現在の検索距離以内で施設が検索できたか否か判定する。その結果、現在の検索距離で施設が検索できたと判定された場合(S10:YES)には、S11へと移行する。
【0059】
S11においてCPU61は、前記S9で検索された施設を運転者の注視する施設として特定する。そして、特定した施設に対する案内を液晶ディスプレイ35やスピーカ36を用いて行う(S12)。また、特定した施設をナビゲーション装置4の目的地に設定しても良い。
【0060】
ここで、図9及び図10を用いて上記S9〜S11で実行される運転者の注視する施設の検索処理及び特定処理について、より詳細に説明する。
図9は注視点Cを中心とした検索範囲75内に一の施設のみが位置する場合を示した図である。そして、図9に示す状況で前記S9の施設の検索処理が行われると、注視点Cを中心とした検索範囲75内において施設(B)のみが検索される。従って、前記S11では施設(B)が運転者の注視する施設として特定される。
【0061】
図10は注視点Cを中心とした検索範囲75内に2以上の施設が位置する場合を示した図である。そして、図10に示す状況で前記S9の施設の検索処理が行われると、注視点Cを中心とした検索範囲75内において施設(A)と施設(B)が検索される。従って、前記S11では施設(A)と施設(B)が運転者の注視する施設として特定される。尚、検索範囲内に2以上の施設が位置する場合には、注視点に最も近い施設(図10では施設(B))のみを運転者の注視する施設として特定しても良い。
【0062】
一方、現在の検索距離では施設が検索できないと判定された場合(S10:NO)には、検索距離を所定距離(例えば10m)だけ拡張する(S13)。
【0063】
更に、S14においてCPU61は、その拡張された検索距離が最大距離(例えば50m)を越えたか否か判定する。そして、検索距離が最大距離を越えたと判定された場合(S14:YES)には、図7のS15へと移行する。
【0064】
ここで、図11は運転者が注視する施設を特定できない場合を示した図である。図11に示すように、検索距離が最大距離となった状態で検索範囲75内にいずれの施設も位置しない場合では、前記S9の施設の検索処理によってはいずれの施設(A)〜(C)も検索されない。従って、運転者の注視する施設は特定されない。
【0065】
尚、検索距離の最大値は、運転者の視野角と車両から注視点までの距離によって決定される。ここで、図12は検索距離の最大値の決定方法について示した図である。
図12に示すように、車両71を運転する運転者73の視野角が2αであって、車両71から注視点Cまでの距離がLである場合には、検索距離の最大値は“L×tanα”と決定する。尚、運転者の視野角又は車両から注視点までの距離のいずれか一方のみに基づいて検索距離の最大値を決定しても良い。
【0066】
それに対して、前記S14において検索距離が最大距離を越えていないと判定された場合(S14:NO)にはS9へと戻り、拡張した検索距離に基づいて、再度、施設の検索が行われる。
【0067】
次に、図7のS15でCPU61は、前記S8で検出された運転者の注視点C(XX,YY)の位置情報を地図配信センタ2へと通信モジュール5を介して送信する。尚、上記S15が注視点情報送信手段の処理に相当する。
【0068】
その後、S16でCPU61は、地図配信センタ2から送信された施設案内データと差分更新データを受信する。ここで、施設案内データは後述する地図配信センタ2で実行される処理(S102〜S104)によって運転者の注視する施設として特定された施設に関する案内情報である。また、差分更新データは同じく地図配信センタ2で実行される処理によって運転者の注視する施設として特定された施設を含むエリア(具体的には施設を中心とし、半径が最大検索距離(図12参照)の円内)のナビ地図データ58を新しいバージョンの地図データに更新する為のデータである。尚、地図配信センタ2でも運転者の注視する施設が検索できなかった場合には施設案内データのみ送信される。尚、上記S16がナビ施設情報取得手段の処理に相当する。

【0069】
次に、S17においてCPU61は、前記S16で受信した施設案内データに基づいて、地図配信センタ2において運転者の注視する施設として特定された施設に対する案内を液晶ディスプレイ35やスピーカ36を用いて行う。尚、地図配信センタ2においても運転者の注視する施設が特定できなかった場合には、該当する施設が無い旨の案内を行う。また、地図配信センタ2において特定された施設をナビゲーション装置4の目的地に設定しても良い。
【0070】
続いて、S18では前記S16で受信した差分更新データを用いて地図情報DB56に格納されたナビ地図データ58の差分更新処理を行う。その結果、ナビ地図データ58は、地図配信センタ2によって運転者の注視する施設として特定された施設を含む新たな地図データへと更新される。尚、上記S18の処理は前記S16で差分更新データを受信していない場合には行われない。また、上記S18が地図更新手段の処理に相当する。
【0071】
次に、図7に基づいて地図配信センタ2のCPU21が実行する施設特定処理プログラムについて説明すると、先ずS101において、CPU21は前記S15でナビゲーション装置4から送信された運転者の注視点C(XX,YY)の位置情報を受信する。
【0072】
続いて、S102でCPU21は、前記S101で受信した注視点Cと、基本地図データ14から取得した注視点周辺の施設の位置座標に基づいて、注視点Cから所定の検索距離以内にある施設を検索する。尚、検索距離は初期段階では最も短い最短距離であり、その後に検索範囲(注視点Cを中心に半径を検索距離とした円形範囲)内に施設が位置しないと判定された場合に最大距離まで徐々に拡大される。尚、上記地図配信センタ2が実行する施設の検索処理の具体的内容については、既に説明したナビゲーション装置4が実行する施設の検索処理(S9、S10、S13、S14)と同様の処理であるので、省略する。また、上記S102がセンタ施設検索手段の処理に相当する。
【0073】
次に、S103でCPU21は、施設が検索できたか否か判定する。その結果、施設が検索できたと判定された場合(S103:YES)には、S104へと移行する。
【0074】
S104においてCPU21は、前記S102で検索された施設を運転者の注視する施設として特定する。そして、特定した施設に対する案内データ(例えば、施設名称や施設ジャンル等)を地図データ14に基づいて作成する(S105)。
【0075】
その後、S106においてCPU21は、前記S104で特定された施設を含むエリア(具体的には施設を中心とし、半径が最大検索距離(図12参照)の円内)を新しいバージョンの地図情報に更新する為に必要となる差分更新データをセンタ側地図情報DB11から取得する。
【0076】
そして、S107においてCPU21は、前記S105で作成された施設案内データと、前記S106で取得した差分更新データを該当のナビゲーション装置4へと送信する。それに対して、施設案内データ及び差分更新データを受信したナビゲーション装置4は、前記したように運転者の注視する施設についての案内を行うとともに、ナビ地図データ58の更新を行う(S17、S18)。尚、上記S107が更新情報送信手段の処理に相当する。
【0077】
一方、前記S103で施設が検索できないと判定された場合(S103:NO)には、該当する施設が無い旨を案内する案内データを作成し(S108)、該当のナビゲーション装置4へと送信する(S107)。
【0078】
以上詳細に説明した通り、第1実施形態に係る施設特定システム1及びナビゲーション装置4では、異なる2以上のタイミングにおいて車両を運転する運転者の複数の視線方向を車内カメラ42の撮像画像から検出し(S3、S6)、検出された運転者の複数の視線方向が交差する地点から運転者の注視点を検出し(S8)、先ず、ナビゲーション装置4において記憶されたナビ地図データ58に基づいて検出された注視点から所定の検索距離内に位置する施設を検索し、該当する施設を運転者の注視する施設として特定する(S9〜S14)。また、ナビゲーション装置4において運転者の注視点から最大の検索距離内に施設が検索できなかった場合には、地図配信センタ2において記憶された基本地図データ14に基づいて検出された注視点から所定の検索距離内に位置する施設を検索し、該当する施設を運転者の注視する施設として特定する(S102〜S104)ので、ナビゲーション装置4に記憶されている地図情報が古いバージョンの地図情報であったとしても、地図配信センタ2に記憶された最新の地図情報に基づいて運転者が注視する施設を正確に特定することが可能となる。従って、例えば運転者の注視する施設を案内する際には、運転者にとって不要な施設情報については案内を抑制することができる。また、運転者の注視する施設をナビゲーション装置4の目的地に設定する場合には、運転者の希望する目的地を複雑な操作を課すことなく設定することができ、利便性が向上する。
また、ナビゲーション装置4において施設が検索できなかったエリアの地図情報を新たな地図情報に更新する(S18)ので、ナビゲーション装置4に記憶されている地図情報が古いバージョンの地図情報であった場合には、運転者の注視する施設の特定と共に地図情報の更新も合わせて行うことが可能となる。
また、視線方向の交点を運転者の注視点として検出するので、運転者が同一の施設を注視し続けている場合において、運転者の複数の視線方向から運転者の注視する施設を確実に特定する事が可能となる。
【0079】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係る施設特定システムについて図13を用いて説明する。尚、以下の説明において上記図1乃至図12の第1実施形態に係る施設特定システム1の構成と同一符号は、前記第1実施形態に係る施設特定システム1等の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0080】
この第2実施形態に係る施設特定システムの概略構成は、第1実施形態に係る施設特定システム1とほぼ同じ構成である。また、各種制御処理も第1実施形態に係る施設特定システム1とほぼ同じ制御処理である。
【0081】
但し、第2実施形態に係る施設特定システムでは、ナビゲーション装置4において運転者の注視点から最大の検索距離内に施設が検索できなかった場合に、注視点を含む所定範囲のエリアを新しいバージョンの地図情報に更新し、再度、ナビゲーション装置4が施設の検索を行う点で第1実施形態に係る施設特定システム1と異なっている。
【0082】
以下に、第2実施形態に係る施設特定システムを構成するナビゲーション装置4においてナビゲーションECU33が実行する施設特定処理プログラムについて図13に基づき説明する。図13は第2実施形態に係る施設特定処理プログラムのフローチャートである。尚、以下の図13にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置4が備えているRAM62やROM63に記憶されており、CPU61により所定間隔(例えば200ms毎)で実行される。
【0083】
ここで、S201〜S214の処理は、前述した第1実施形態に係るナビゲーション装置4が実行する施設特定処理プログラムのS1〜S14(図6)と同様の処理であるので、説明は省略する。
【0084】
そして、S215においてCPU61は、後述のS216の処理によってナビ地図データ58が既に更新されているか否か判定する。そして、ナビ地図データ58が更新済みであると判定された場合(S215:YES)にはS212へと移行し、該当する施設が無い旨を案内する(S212)。一方、ナビ地図データ58が更新されていないと判定された場合(S215:NO)には、S216へと移行する。
【0085】
S216においてCPU61は、地図配信センタ2に対して前記S208で検出された注視点Cを含むエリア(具体的には注視点Cを中心とし、半径が最大検索距離(図12参照)の円内)のナビ地図データ58を新しいバージョンの地図データに更新する。具体的には、更新要求を地図配信センタ2へ送信し、その要求に応じて地図配信センタ2から配信された差分更新データに基づいて注視点Cを含むエリアを新しいバージョンの地図情報に更新する。その後、S209へと戻り、更新されたナビ地図データ58に基づいて、再度、施設の検索を行う。
【0086】
以上詳細に説明した通り、第2実施形態に係る施設特定システム及びナビゲーション装置4では、異なる2以上のタイミングにおいて車両を運転する運転者の複数の視線方向を車内カメラ42の撮像画像から検出し(S203、S206)、検出された運転者の複数の視線方向が交差する地点から運転者の注視点を検出し(S208)、ナビ地図データ58に基づいて検出された注視点から所定の検索距離内に位置する施設を検索し(S209)、運転者の注視点から最大の検索距離内に施設が検索できなかった場合には、検出された注視点を含むエリアの地図情報を新たなバージョンの地図情報へと更新し(S216)、再度施設の検索を行うので、ナビゲーション装置4に記憶されている地図情報が古いバージョンの地図情報であったとしても、新たに更新した最新の地図情報に基づいて運転者が注視する施設を正確に特定することが可能となる。従って、例えば運転者の注視する施設を案内する際には、運転者にとって不要な施設情報については案内を抑制することができる。また、運転者の注視する施設をナビゲーション装置4の目的地に設定する場合には、運転者の希望する目的地を複雑な操作を課すことなく設定することができ、利便性が向上する。
【0087】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では運転者の注視した施設を検出することとしているが、運転者以外でも助手席や後部座席に着座する乗員の注視した施設を検出することとしても良い。
【0088】
また、第1実施形態及び第2実施形態では運転者の視線方向を検出するA地点とB地点は、所定時間(例えば、2sec)だけ時刻の異なるタイミングとしているが、所定距離(例えば、100m)だけ走行距離の異なるタイミングとしても良い。また、運転者の操作に基づいてA地点とB地点を特定しても良い。
【0089】
また、第1実施形態及び第2実施形態ではナビ地図データ58の更新を行う場合に、該当エリアの全地図データを更新することとしているが、施設に関するデータのみを更新するようにしても良い。
【0090】
また、第1実施形態では、地図配信センタ2で運転者の注視する施設の検索を行う場合に、地図配信センタ2が運転者が注視する施設の特定についても行う(S104)こととしているが、S102で実行した施設の検索結果のみをナビゲーション装置4へと送信し、運転者が注視する施設の特定はナビゲーション装置4で行うようにしても良い。
【0091】
また、第1実施形態では、地図配信センタ2は前記S107において施設案内データと差分更新データとを同時にナビゲーション装置4へ送信することとしているが、差分更新データを取得(S106)する前に施設案内データのみを先にナビゲーション装置4へ送信するようにしても良い。それによって、運転者が施設を注視してから該当施設を案内するまでのタイムラグを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1実施形態に係る施設特定システムを示した概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る施設特定システムの構成を示したブロック図である。
【図3】地図配信センタ及びナビゲーション装置に記憶される施設データの一例を示した図である。
【図4】第1実施形態に係るナビゲーション装置の概略構成図である。
【図5】視線方向DBに記憶される視線方向データの一例を示した図である。
【図6】第1実施形態に係る施設特定処理プログラムのフローチャートである。
【図7】第1実施形態に係る施設特定処理プログラムのフローチャートである。
【図8】運転者の注視点の検出方法を説明した説明図である。
【図9】注視点を中心とした検索範囲内に一の施設のみが位置する場合を示した図である。
【図10】注視点を中心とした検索範囲内に2以上の施設が位置する場合を示した図である。
【図11】運転者が注視する施設を特定できない場合を示した図である。
【図12】検索距離の最大値の決定方法について示した図である。
【図13】第2実施形態に係る施設特定処理プログラムのフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
1 施設特定システム
2 地図配信センタ
3 車両
4 ナビゲーション装置
10 サーバ
11 センタ側地図情報DB
33 ナビゲーションECU
56 地図情報DB
21、61 CPU
22、62 RAM
23、63 ROM


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション装置と、前記ナビゲーション装置と通信を行う情報センタとを有し、車両の乗員が注視する施設を特定する施設特定システムにおいて、
前記ナビゲーション装置は、
地図上における施設の位置を含む地図情報を記憶するナビ地図情報記憶手段と、
車両の乗員の視線方向を異なるタイミングで複数検出する視線方向検出手段と、
前記視線方向検出手段により検出された乗員の複数の視線方向から乗員の注視点を検出する注視点検出手段と、
前記ナビ地図情報記憶手段に記憶された地図情報を用いて、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から所定の検索距離内にある施設を検索するナビ施設検索手段と、
前記ナビ施設検索手段によって前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から前記検索距離内に施設が検索できなかった場合に、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点の位置情報を情報センタに送信する注視点情報送信手段と、
を備え、
前記情報センタは、
地図上における施設の位置を含む地図情報を記憶するセンタ地図情報記憶手段と、
前記注視点情報送信手段によって前記乗員の注視点の位置情報が送信された場合に、前記センタ地図情報記憶手段に記憶された地図情報を用いて、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から所定の検索距離内にある施設を検索するセンタ施設検索手段と、
を備え、
前記ナビ施設検索手段又は前記センタ施設検索手段によって検索された施設を乗員の注視する施設として特定することを特徴とする施設特定システム。
【請求項2】
前記情報センタは、
前記センタ施設検索手段によって前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から前記検索距離内に施設が検索できた場合に、検索された施設を含む所定範囲の地図情報を更新する為の地図更新情報を前記ナビゲーション装置へ送信する更新情報送信手段を備え、
前記ナビゲーション装置は、
前記更新情報送信手段によって送信された地図更新情報を用いて前記ナビ地図情報記憶手段に記憶された地図情報の内、前記所定範囲の地図情報を更新する地図更新手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の施設特定システム。
【請求項3】
前記注視点検出手段は、前記乗員の複数の視線方向が交差する地点を乗員の注視点として検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の施設特定システム。
【請求項4】
地図上における施設の位置を含む地図情報を記憶するナビ地図情報記憶手段と、
車両の乗員の視線方向を異なるタイミングで複数検出する視線方向検出手段と、
前記視線方向検出手段により検出された乗員の複数の視線方向から乗員の注視点を検出する注視点検出手段と、
前記ナビ地図情報記憶手段に記憶された地図情報を用いて、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から所定の検索距離内にある施設を検索するナビ施設検索手段と、
前記ナビ施設検索手段によって前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から前記検索距離内に施設が検索できなかった場合に、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点の位置情報を情報センタに送信する注視点情報送信手段と、
前記情報センタにおいて実行された検索結果に基づいて、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から所定の検索距離内にある施設に関する情報を取得する施設情報取得手段と、を有し、
前記施設情報取得手段によって情報を取得した施設を乗員の注視する施設として特定することを特徴とする施設特定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−85750(P2009−85750A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255306(P2007−255306)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】