説明

有機半導体素子およびその製造方法

【課題】本発明は、製造時におけるソース電極およびドレイン電極の劣化を好適に防止することができ、優れたスイッチング機能を有する有機半導体素子およびその製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】基材と、上記基材上に形成されたゲート電極と、上記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層と、上記ゲート絶縁層上に形成され、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極と、上記ソース電極および上記ドレイン電極上に形成され、酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層と、少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極の間のチャネル領域に形成可能なパターン形状を有し、有機半導体材料を含む有機半導体層と、上記有機半導体層上のみに形成され、真空紫外光に対する遮光性を有する遮光材料を含むVUV遮蔽層とを有することを特徴とする有機半導体素子を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造時におけるソース電極およびドレイン電極の劣化を好適に防止することができ、優れたスイッチング機能を有する有機半導体素子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
TFTに代表される半導体トランジスタは、近年、ディスプレイ装置の発展に伴ってその用途を拡大する傾向にある。このような半導体トランジスタは、半導体材料を介して電極が接続されていることにより、スイッチング素子としての機能を果たすものである。
【0003】
従来、上記半導体トランジスタに用いられる半導体材料としては、シリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)やインジウムガリウム砒素(InGaAs)などの無機半導体材料が用いられてきた。近年、普及が拡大している液晶表示素子のディスプレイ用TFTアレイ基板にもこのような無機半導体材料を用いた半導体トランジスタが用いられている。
【0004】
一方、上記半導体材料としては、有機化合物からなる有機半導体材料も知られている。有機半導体材料は、上記無機半導体材料に比べて安価に大面積化が可能であること、フレキシブルなプラスチック基板上に形成できること、さらに機械的衝撃に対して安定であることという利点を有している。したがって、このような有機半導体材料を対象として、電子ペーパー代表されるフレキシブルディスプレイ等の次世代ディスプレイ装置への応用などを想定した研究が活発に行われている。
【0005】
このような有機半導体材料が用いられた有機半導体トランジスタを作製する際には、通常、有機半導体層をパターン状に形成することが必要とされる。従来、パターン状に有機半導体層を形成する方法としては、フォトレジスト法が主に用いられてきた(例えば、特許文献1)。しかしながら、フォトレジスト法は、有機半導体材料からなる層を所望のパターンに精度良くパターニングできる点においては優れているが、工程が煩雑であるため生産性に乏しいという問題点があった。
【0006】
このような問題点に対し、特許文献2にはインクジェット法を用いて有機半導体層を形成することによって有機半導体トランジスタを作製する方法が開示されている。インクジェット法はインクジェットヘッドを用いて微量のインクを所定の位置に吐出することによって有機半導体層を形成する方法であり、微細にパターニングされた有機半導体層を、高生産性で形成することができる点において優れた方法である。
【0007】
ところで、一般的に半導体トランジスタは、ゲート電圧を印加することによって上記半導体材料からなる層の界面の電荷量を変化させることにより、ドレイン電流を制御してスイッチング機能を発揮させるものである。ここで、半導体トランジスタに十分なスイッチング機能を発揮させるためには、オン、オフ時のドレイン電流の比(オンオフ比)が大きいことが望ましいものである。これは、オンオフ比が大きい場合は僅かなゲート電圧の変化で大きなドレイン電流の変化を得ることができるからである。しかしながら、上述した有機半導体トランジスタは、従来の無機半導体トランジスタに比べてオンオフ比が小さいといった問題がある。
【0008】
一般的に、オンオフ比が小さくなる原因としては、オン電流が低いこと、あるいは、オフ電流が高いことが挙げられるが、上述した有機半導体トランジスタにおいては特にオフ電流が高いことに問題があった。
【0009】
有機半導体トランジスタのオフ電流が高い原因としては種々の要因が考えられるが、その原因の一つとして、有機半導体材料からなる有機半導体層を微細なパターン状に形成することが困難であるため、有機半導体層の面積が必要以上に大きくなってしまうことが挙げられる。このため、有機半導体トランジスタの作製に際しては、有機半導体層を上記ソース電極とドレイン電極との間にのみ形成し、有機半導体層の面積を小さくすることがオフ電流を低下させるために有用な手段になる。
【0010】
そこで、特許文献3においては、真空紫外光を用いて有機半導体層をパターン状にエッチングすることにより有機半導体層を形成する方法が開示されている。この方法は、従来の有機半導体層の形成方法に比べて有機半導体層の面積を小さくすることが可能である点で優れた方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−58497号公報
【特許文献2】特開2003−347552号公報
【特許文献3】特開2008−244262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、有機半導体トランジスタにおいては、有機半導体層を介してソース電極およびドレイン電極が接続されるものであることから、ソース電極およびドレイン電極に用いられる電極材料としては、有機半導体層との電気的な接続性が高いものであることが好ましい。また、ソース電極およびドレイン電極の電極材料については、有機半導体トランジスタの構造によってもスイッチング機能に対する寄与の仕方が異なるものである。
このようなソース電極およびドレイン電極の電極材料として、有機半導体トランジスタがボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有する場合は、銀を主成分とする金属材料を好適に用いることができることが知られている。
【0013】
しかしながら、銀を主成分とする金属材料からなるソース電極およびドレイン電極を有する場合において、上述した真空紫外光を用いた有機半導体層の形成方法を行った場合は、真空紫外光の影響により、上記ソース電極およびドレイン電極が酸化されてしまうことから、電極性能が低下してしまうといった問題があった。なお、真空紫外光の影響によるソース電極およびドレイン電極の酸化は、他の金属材料を用いた場合に比べて上記銀を主成分とする金属材料を用いた場合に顕著に生じる現象である。
【0014】
そこで、本発明者は上記問題点に鑑みて、鋭意検討を行った結果、銀を主成分とする金属材料の酸化は、高エネルギー光である紫外領域の光、とりわけ高エネルギーである真空紫外光が照射されること、および、金属材料表面が酸素と接触していることの2つの条件が揃うことにより初めて起こるものであることを見出し、さらに、上記金属材料を用いたソース電極およびドレイン電極の表面において酸素を遮蔽すれば、上記ソース電極およびドレイン電極の酸化が生じないことを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0015】
すなわち、本発明は、製造時におけるソース電極およびドレイン電極の劣化を好適に防止することができ、優れたスイッチング機能を有する有機半導体素子およびその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、基材と、上記基材上に形成されたゲート電極と、上記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層と、上記ゲート絶縁層上に形成され、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極と、上記ソース電極および上記ドレイン電極上に形成され、酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層と、少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極の間のチャネル領域に形成可能なパターン形状を有し、有機半導体材料を含む有機半導体層と、上記有機半導体層上のみに形成され、真空紫外光に対する遮光性を有する遮光材料を含むVUV遮蔽層とを有することを特徴とする有機半導体素子を提供する。
【0017】
本発明によれば、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極上に酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層が形成されていることから、有機半導体素子の製造時において有機半導体層をパターン状にエッチングして形成する際に照射される真空紫外光によって、上記ソース電極およびドレイン電極が酸化されて劣化することを防止することが可能となる。したがって、有機半導体層との電気的な接続性の高いソース電極およびドレイン電極を有し、かつ必要最小限の面積で形成された有機半導体層を有することが可能となることから、優れたスイッチング機能を有する有機半導体素子とすることができる。
【0018】
本発明においては、上記電極保護層が、導電性を有する材料からなることが好ましい。有機半導体素子に外部入出力電極を形成してソース電極またはドレイン電極と接続させる場合において、外部入出力電極を電極保護層に接触させることにより、外部入出力電極およびソース電極またはドレイン電極を接続させることが可能となることから、電極保護層が絶縁性を有する材料からなる場合に比べて、容易に外部入出力電極およびソース電極またはドレイン電極を接続させることができるからである。
【0019】
また本発明は、基材と、上記基材上に形成されたゲート電極と、上記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層とを有する有機半導体素子用基材を用い、上記ゲート絶縁層上に形成され、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極、並びに、上記ソース電極および上記ドレイン電極上に形成され、酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層からなる電極積層体を形成する電極積層体形成工程と、上記ゲート絶縁層上に、有機半導体材料を含む有機半導体層形成用層を形成する有機半導体層形成用層形成工程と、少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極の間のチャネル領域に形成された上記有機半導体層形成用層上に、真空紫外光に対する遮光性を有する遮光性材料を含むVUV遮蔽層をパターン状に形成するVUV遮蔽層形成工程と、上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層上に真空紫外光を照射することにより、上記VUV遮蔽層が形成されていない部位の上記有機半導体層形成用層をエッチングして有機半導体層を形成する有機半導体層エッチング工程とを有することを特徴とする有機半導体素子の製造方法を提供する。
【0020】
本発明によれば、電極積層体形成工程において、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極上に酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層を形成することが可能となることから、有機半導体層エッチング工程において真空紫外光を用いて有機半導体層をエッチングして形成する際に、真空紫外光によって上記ソース電極およびドレイン電極が酸化されて劣化することを防止することが可能となる。よって、有機半導体層との電気的な接続性の高いソース電極およびドレイン電極を形成し、かつ必要最小限の面積で有機半導体層を形成することが可能となることから、優れたスイッチング機能を有する有機半導体素子を製造することができる。
【0021】
本発明においては、上記電極積層体形成工程では、導電性を有する材料を用いて電極保護層を形成し、上記有機半導体層エッチング工程後に上記有機半導体素子の各層を覆い、かつ上記ソース電極または上記ドレイン電極のいずれか一方の電極上の一部に開口部を有する外部入出力電極用絶縁層を形成する外部入出力電極用絶縁層形成工程と、上記外部入出力電極用絶縁層上に外部入出力電極を形成し、かつ上記開口部内で上記外部入出力電極と上記ソース電極または上記ドレイン電極のいずれか一方の電極上に形成された上記電極保護層とが接触するように外部入出力電極を形成する外部入出力電極形成工程とを有することが好ましい。電極保護層が導電材料を用いて形成されていることから、外部入出力電極と上記ソース電極または上記ドレイン電極のいずれか一方の電極上に形成された電極保護層とが接触するように表面電極を形成することにより、外部入出力電極および上記ソース電極または上記ドレイン電極のいずれか一方の電極を接続させることが可能となる。よって、電極保護層が絶縁性を有する材料から形成される場合に比べて、上記電極間の接続を簡便に行うことが可能となることから、有機半導体素子の製造効率をより高いものとすることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極上に酸素を遮蔽する電極保護層を有することから、上記有機半導体素子の製造時において真空紫外光を用いて所望のパターンにエッチングして有機半導体層を形成した場合も、ソース電極およびドレイン電極の劣化が生じにくいといった効果を奏する。よって、優れた電極特性を有するソース電極およびドレイン電極を有し、かつ有機半導体層を必要最小限の面積で形成することが可能となることからオフ電流を小さくすることが可能となるため、優れたスイッチング機能を有する有機半導体素子とすることが可能となるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の有機半導体素子の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機半導体素子の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の有機半導体素子の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の有機半導体素子の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の有機半導体素子の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機半導体素子の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の有機半導体素子の形成方法におけるソース電極・ドレイン電極形成工程および電極保護層形成工程の一例を示す工程図である。
【図8】本発明の有機半導体素子の形成方法における有機半導体層形成工程、VUV遮蔽層形成工程、および有機半導体層エッチング工程の一例を示す工程図である。
【図9】本発明の有機半導体素子の形成方法における有機半導体層形成工程、VUV遮蔽層形成工程、および有機半導体層エッチング工程の一例を示す工程図である。
【図10】本発明の有機半導体素子の形成方法における外部入出力電極用絶縁層形成工程、および外部入出力電極形成工程の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の有機半導体素子およびその製造方法について説明する。
【0025】
A.有機半導体素子
まず、本発明の有機半導体素子について説明する。
本発明の有機半導体素子は、基材と、上記基材上に形成されたゲート電極と、上記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層と、上記ゲート絶縁層上に形成され、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極と、上記ソース電極および上記ドレイン電極上に形成され、酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層と、少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極の間のチャネル領域に形成可能なパターン形状を有し、有機半導体材料を含む有機半導体層と、上記有機半導体層上のみに形成され、真空紫外光に対する遮光性を有する遮光材料を含むVUV遮蔽層とを有することを特徴とするものである。
【0026】
なお、「真空紫外(Vacuum Ultra Violet)光」とは、波長が10nm〜200nmの範囲内である紫外線を指す。「真空紫外光」ついて詳しくは、「B.有機半導体素子の製造方法」の項で説明する。
【0027】
また、以下の説明において、「有機半導体トランジスタ」とは、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体層を指すものである。また本発明の有機半導体素子は、ボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機半導体トランジスタを有するものである。
【0028】
本発明の有機半導体素子について図を用いて説明する。
図1は、本発明の有機半導体素子の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の有機半導体素子10は、基材1と、基材1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2を覆うように形成されたゲート絶縁層3と、ゲート絶縁層3上に形成され、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極4およびドレイン電極5と、ソース電極4およびドレイン電極5上に形成され、酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層6と、少なくともソース電極4およびドレイン電極5の間のチャネル領域Xに形成可能なパターン形状を有し、有機半導体材料を含む有機半導体層7と、有機半導体層7上のみに形成され、真空紫外光に対する遮光性を有する遮光材料を含むVUV遮蔽層8とを有するものである。
【0029】
本発明は、銀を主成分とする金属材料の酸化は、高エネルギー光である紫外領域の光、とりわけ高エネルギーである真空紫外光が照射されること、および、金属材料表面が酸素と接触していることの2つの条件が揃うことにより起こることを見出した点に特徴を有するものである。
【0030】
ここで、上記2つの条件が揃うことにより銀を主成分とする金属材料の酸化が生じる理由については明らかではないが次のように考えられる。
はじめに紫外領域の光の照射により上記銀を主成分とする金属材料周囲の酸素が励起されてオゾン等の酸素の活性種が発生する。次に、発生した酸素の活性種の酸化力により銀(Ag)が酸化され、酸化銀(AgO)が生じると考えられる。ここで、紫外領域の光の中でも、とりわけ高エネルギー光である真空紫外光においては、多量の酸素の活性種が生成され、銀の酸化が急速に進行すると考えられる。
【0031】
本発明によれば、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極上に酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層が形成されていることから、有機半導体素子の製造時において有機半導体層をパターン状にエッチングして形成する際に照射される真空紫外光によって、上記ソース電極およびドレイン電極が酸化されて劣化することを防止することが可能となる。したがって、有機半導体層との電気的な接続性の高いソース電極およびドレイン電極を有し、かつ必要最小限の面積で形成された有機半導体層を有することが可能となることから、優れたスイッチング機能を有する有機半導体素子とすることができる。
【0032】
以下、本発明の有機半導体素子の各構成について説明する。
【0033】
1.電極保護層
本発明における電極保護層は、上記ソース電極およびドレイン電極上に形成され、酸素に対する遮蔽性を有するものである。
【0034】
上記電極保護層の酸素遮蔽性としては、有機半導体素子の製造時に照射される真空紫外光による上記ソース電極およびドレイン電極の酸化を防止することが可能な程度であれば特に限定されない。具体的には、電極保護層の酸素透過率が、温度23℃、湿度90%の条件下において1cc/m/day・atm以下であることが好ましい。なお、上記酸素透過率は、酸素ガス透過率測定装置(モダンコントロール(株)製、OX−TRAN 2/20:商品名)を用いて測定した値である。
【0035】
(1)電極保護層の材料
本発明における電極保護層の材料としては、ソース電極およびドレイン電極上に上述した酸素遮蔽性を示す電極保護層を形成することが可能な材料であれば特に限定されない。上記電極保護層の材料としては、絶縁性を有する材料であってもよく、導電性を有する材料であってもよい。以下、それぞれについて説明する。
【0036】
(i)絶縁性を有する材料
上記電極保護層の材料が絶縁性を有する材料である場合、具体的には絶縁性無機材料と樹脂材料を挙げることができる。
【0037】
上記電極保護層の材料が絶縁性無機材料である場合、具体的な絶縁性無機材料としては、無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物を挙げることができる。具体的に、無機酸化物としては、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリム、酸化リチウム、酸化カリウム等が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素等が挙げられる。また、無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。ソース電極およびドレイン電極上に均質な電極保護層を形成することが可能となり、良好な酸素遮蔽性を示す電極保護層とすることが可能となるからである。
【0038】
またこの場合、電極保護層の厚みとしては、酸素遮蔽性を所望のものとすることができれば特に限定されるものではなく、上述した材料により適宜選択される。通常は5nm〜5000nmの範囲内であり、好ましくは5nm〜500nmの範囲内である。また、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を用いた場合は、10nm〜300nmの範囲内であることがより好ましい。上記厚みが上記範囲に満たない場合は、十分な酸素遮蔽性を示さない可能性があるからである。また、上記厚みが上記範囲を超える場合は、電極保護層を形成する材料、時間等が多くかかることから、本発明の有機半導体素子の製造効率を低下させてしまう可能性があるからである。また、上記厚みが上記範囲を超える場合は、電極保護層にクラックを生じやすくなるため、十分な酸素遮蔽性を示すことが困難となる可能性があるからである。
【0039】
上記電極保護層の形成方法としては、所望の酸素遮蔽性を示す電極保護層を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。例えば、ゲート絶縁層上に予めパターン状に形成されたソース電極およびドレイン電極上に上述した電極保護層の材料を用いて、金属マスクを用いた蒸着法等や、エッチング処理等を用いてパターン状に製膜することにより電極保護層を形成してもよく、ゲート絶縁層上全面にソース電極およびドレイン電極に用いられる金属材料を用いて金属材料層を形成し、金属材料層上全面に上記電極保護層を製膜した後、所定のパターン状にエッチングすることにより、電極保護層を形成してもよい。
上記電極保護層の製膜方法としては、所望の酸素遮蔽性を示す電極保護層を形成することが可能な方法であれば特に限定されず、一般的な無機材料層の製膜方法と同様とすることができる。具体的には、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。
【0040】
一方、電極保護層が樹脂材料である場合、具体的な樹脂材料としては、一般的な樹脂材料を用いることができる。具体的には、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の絶縁性有機材料等が挙げられる。
【0041】
またこの場合、電極保護層の厚みとしては、ソース電極およびドレイン電極上に形成でき、かつ所望の酸素遮蔽層を示すことが可能な程度であれば特に限定されず、電極保護層に用いられる樹脂材料に応じて適宜調整される。
【0042】
ここで、電極保護層が樹脂材料からなる場合は、真空紫外光が照射されることにより電極保護層自体がダメージを受け、真空紫外光を照射している間に膜厚が減少する場合がある。この場合も、真空紫外光による有機半導体層のエッチング終了時までソース電極およびドレイン電極上に電極保護層が存在する程度の膜厚とすることで、所望の酸素遮蔽性を発揮することができる。したがって、この場合は有機半導体層のエッチングレート等を考慮して電極保護層の厚みが調整される。
【0043】
上記電極保護層の形成方法としては、所望の酸素遮蔽性を示す電極保護層を形成することが可能な方法であれば特に限定されず、一般的な樹脂層の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0044】
(ii)導電性を有する材料
上記電極保護層の材料が導電性を有する材料である場合、具体的には、カーボン、金属材料、ITO、IZOなどの酸化物材料等を挙げることができる。本発明においては、なかでも金属材料であることが好ましい。金属材料を用いることにより、ソース電極およびドレイン電極上に、より緻密な層を形成することが可能となり、酸素遮蔽性に優れた電極保護層とすることができるからである。
【0045】
上記電極保護層の材料が金属材料である場合、具体的な金属材料としては、上述した酸素透過率を有する層を形成することが可能であれば特に限定されないが、銀とイオン化傾向の近い金属であることが好ましい。上記電極保護層は銀を主成分とする金属材料から構成されるソース電極およびドレイン電極上に接するように形成されるものであることから、銀に対してイオン化傾向が離れた金属を用いた場合は、ソース電極およびドレイン電極が酸化される可能性があるからである。
このような金属としては、具体的には、Ti、Cr、Mo、Cu、Fe等を挙げることができる。また、本発明においては、上述したなかでも、Ti、Cr、Moであることが好ましい。これらの金属を用いることにより、本発明の有機半導体素子に外部入出力電極を形成し、ドレイン電極上に形成された電極保護層と接続させた場合に、優れた導電性を示すことが可能となる。
【0046】
上記電極保護層の厚みとしては、ソース電極およびドレイン電極上に形成可能であり、かつ、所望の酸素遮蔽性を示すことが可能な程度の厚みであれば特に限定されない。具体的には、上述した絶縁性無機材料を用いた電極保護層の厚みと同様とすることができる。
【0047】
上記電極保護層の形成方法としては、所望の酸素遮蔽性を示す電極保護層を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。具体的には、上述した絶縁性無機材料を用いた電極保護層の製膜方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0048】
(iii)電極保護層の材料
本発明における電極保護層の材料としては、上述したように絶縁性を有する材料、導電性を有する材料のいずれも用いることが可能である。本発明においては、なかでも、上記電極保護層が、導電性を有する材料からなることが好ましい。有機半導体素子に外部入出力電極を形成してソース電極またはドレイン電極のいずれか一方と接続させる場合において、外部入出力電極を電極保護層に接触させることにより、外部入出力電極およびソース電極またはドレイン電極を接続させることが可能となることから、電極保護層が絶縁性を有する材料からなる場合に比べて、容易に外部入出力電極およびソース電極またはドレイン電極を接続させることができるからである。
【0049】
(2)電極保護層
本発明における電極保護層のパターン形状としては、ソース電極およびドレイン電極上に形成することが可能であり、本発明の有機半導体素子の製造時に照射される真空紫外光によりソース電極およびドレイン電極が酸化されて劣化してしまうことを防止することができ、かつ、ソース電極およびドレイン電極の間のチャネル領域においてソース電極およびドレイン電極と有機半導体層とが接触することが可能となるような形状であれば特に限定されない。
【0050】
例えば、図1に示すように、ソース電極4およびドレイン電極5の上面のみに電極保護層6が形成されていてもよく、図2に示すように、ソース電極4およびドレイン電極5の上面と、ソース電極4およびドレイン電極5のチャネル領域X側とは反対側のソース電極4およびドレイン電極5の側面に電極保護層6が形成されていてもよい。また、図1、図2に示すように、本発明の有機半導体素子10は、通常、ソース電極4およびドレイン電極5のチャネル領域X側の側面には電極保護層6が形成されていないものである。
【0051】
また上記電極保護層としては、単層であってもよく、複数層であってもよい。
【0052】
2.ソース電極・ドレイン電極
本発明におけるソース電極およびドレイン電極は、銀を主成分とする金属材料から構成されるものである。また、上記ソース電極およびドレイン電極はゲート絶縁層上に形成されるものであり、通常は、ソース電極およびドレイン電極間に所望のチャネル領域を有するようにゲート電極上に形成されるものである。
【0053】
なお、「銀を主成分とする金属材料」とは、上記金属材料を用いたソース電極およびドレイン電極と有機半導体層との優れた電気的な接続性を損なうことがない程度に銀を含有する金属材料であれば特に限定されない。具体的には、金属材料の全質量に対する銀の含有量が、60質量%以上、好ましくは70質量%〜99質量%の範囲内、より好ましくは90質量%〜99質量%の範囲内である金属材料を指すものとする。なお、上記銀の含有量については、例えば、X線マイクロアナライザー、オージェ電子分光分析による金属材料表面の元素特定および定量により求めることができる。
【0054】
上記ソース電極およびドレイン電極の厚みとしては、電極として機能する程度の厚みであれば特に限定されないが、具体的には、0.01μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、特に0.03μm〜1μmの範囲内であることが好ましく、さらに0.05μm〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。
【0055】
なお、上記ソース電極およびドレイン電極は、互いに同一の高さで形成されたものであってもよく、あるいは、互いに異なる高さで形成されたものであってもよい。
【0056】
また本発明におけるチャネル領域は、本発明によって製造される有機半導体素子の用途等に応じて適宜選択されるものであり、特に限定されるものではない。
本発明におけるチャネル領域の幅としては、チャネル領域内に有機半導体層を形成することが可能な程度の幅であれば特に限定されないが、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に3μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、さらに5μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
【0057】
上記ソース電極およびドレイン電極の形成方法としては、所望の電極機能を有するソース電極およびドレイン電極を形成することが可能であれば特に限定されない。例えば、蒸着法等を用いてゲート絶縁層上全面に上述した金属材料からなる金属材料層を形成した後、パターンエッチングすることにより、ソース電極およびドレイン電極を形成する方法や、金属マスクを用いて上記金属材料をパターン状にすることにより、所望のパターン形状を有するソース電極およびドレイン電極をゲート絶縁層上に直接形成する方法等を挙げることができる。また、上記方法以外にも、例えばリフトオフ法等を用いることもできる。
なお、上記金属材料層またはソース電極およびドレイン電極の形成方法としては、一般的な金属材料からなる電極の形成方法と同様とすることができる。具体的には、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。
【0058】
3.VUV遮蔽層
本発明におけるVUV遮蔽層は、上記有機半導体層上のみに形成され、真空紫外光に対する遮光性を有する遮光材料を含むものである。また、有機半導体層の経時劣化を防止する保護機能を有するものである。
また、VUV遮蔽層は、通常、有機半導体層全面に形成されているものである。
【0059】
上記VUV遮蔽層の遮光性としては、VUV遮蔽層が形成された部位の有機半導体層が、本発明の有機半導体素子の製造時に照射される真空紫外光によって劣化されない程度であれば特に限定されるものではない。したがって、上記遮光性の程度については、本発明の有機半導体層の製造時に照射される真空紫外光の波長に応じて適宜決定すればよい。なかでも本発明によって形成されるVUV遮蔽層は、上記真空紫外光の透過率が10%以下であることが好ましく、特に3%以下であることが好ましく、さらには1%以下であることが好ましい。上記真空紫外光に対する透過率が上記範囲内であることにより、有機半導体層の劣化を好適に防止することができるからである。
【0060】
上記VUV遮蔽層に用いられる遮光性材料としては、有機半導体層の製造時に照射される真空紫外光に対する所定の遮光性を有し、かつ、有機半導体層が空気中の酸素等に曝露されることを防止する等の所望の保護機能を有するVUV遮蔽層を形成できるものであれば特に限定されるものではない。このような遮光性材料としては、遮光性樹脂材料、および、所望の保護機能を有する樹脂材料と上記遮光性を有する遮光剤とが混合されたものを挙げることができる。本発明においては、このような遮光性材料のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでも上記遮光性樹脂材料を用いることが好ましい。上記遮光性樹脂材料は、単独で上記遮光性と上記保護機能とを備えるVUV遮蔽層を形成することができるため、製造コストの面において有利だからである。
【0061】
上記遮光性樹脂材料としては、例えば、PVP、PVA、PMMA、PS、ポリエチレンオキサイド(PEO)、水系エポキシ樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド、および、カルド系樹脂等を挙げることができる。
【0062】
なお、本発明においては、上記遮光性樹脂材料を1種類のみ用いてもよく、または、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0063】
本発明において、上記VUV遮蔽層のパターン形状としては、有機半導体層上のみに形成可能なパターン形状であれば特に限定されない。
ここで、本発明におけるVUV遮蔽層は、本発明の有機半導体素子の製造時において、真空紫外光を用いて有機半導体層をパターン状にエッチングして形成する際に、真空紫外光に対するマスクとして用いることが可能なものである。よって、上記VUV遮蔽層のパターン形状としては有機半導体層のパターン形状と同一であることが好ましい。
なお、有機半導体層のパターン形状については後述するため、ここでの説明は省略する。
【0064】
また、上記VUV遮蔽層の厚みとしては、有機半導体素子の製造時に照射される真空紫外光に対して所定の遮光性、および有機半導体トランジスタの保護機能を所望の程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、100μm以下であることが好ましく、特に0.1μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、さらには0.3μm〜1μmの範囲内であることが好ましい。
【0065】
本発明におけるVUV遮蔽層の形成方法としては、有機半導体層上のみに所望のパターン形状でVUV遮蔽層を形成することが可能であれば特に限定されない。このような方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法や、インクジェット法、スクリーン印刷法、パッド印刷法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、およびグラビア・オフセット印刷法等の印刷法を挙げることができる。
【0066】
4.有機半導体層
本発明における有機半導体層は、少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極の間のチャネル領域に形成可能なパターン形状を有するものである。また、上記有機半導体層は、有機半導体材料を含むものであり、本発明の有機半導体素子において有機半導体トランジスタに半導体特性を付与するものである。
また、本発明における有機半導体層は、真空紫外光を用いてエッチングすることにより、上述したパターン形状にパターニングされたものである。
【0067】
上記有機半導体材料としては、所望の半導体特性を備える有機半導体層を得ることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に有機半導体トランジスタに用いられる有機半導体材料を用いることができる。このような有機半導体材料としては、例えば、π電子共役系の芳香族化合物、鎖式化合物、有機顔料、有機ケイ素化合物等を挙げることができる。より具体的には、ペンタセン等の低分子系有機半導体材料、および、ポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)等のポリピロール類、ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン等のポリチオフェン類、ポリイソチアナフテン等のポリイソチアナフテン類、ポリチェニレンビニレン等のポリチェニレンビニレン類、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)等のポリアニリン類、ポリアセチレン等のポリアセチレン類、ポリジアセチレン、ポリアズレン等のポリアズレン類等の高分子系有機半導体材料を挙げることができる。
【0068】
なお、本工程に用いられる有機半導体材料は1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
【0069】
また、本発明における有機半導体層のパターン形状としては、少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極の間のチャネル領域に形成可能なパターン形状であり、かつ真空紫外光を用いてエッチングすることにより形成することが可能なパターン形状であれば特に限定されない。例えば、図1に示すように、チャネル領域Xのみに有機半導体層7を形成可能なパターン形状であってもよく、図3に示すように、チャネル領域X、並びに、ソース電極4およびドレイン電極5上の電極保護層6上に有機半導体層7を形成可能なパターン形状であってもよい。本発明においては、なかでも、チャネル領域のみに有機半導体層を形成可能なパターン形状であることが好ましい。有機半導体層の形成面積を必要最小限の面積とすることが可能となることから、オフ電流が小さく、優れたスイッチング特性を示す有機半導体素子とすることが可能となるからである。
【0070】
また、有機半導体層がチャネル領域のみに形成可能なパターン形状である場合、有機半導体層の厚みと、ソース電極およびドレイン電極並びに電極保護層の積層体(以下、単に電極積層体と称して説明する場合がある。)の厚みとの位置関係としては、有機半導体層上のみにVUV遮蔽層を形成することが可能な位置関係であれば特に限定されず、例えば図1に示すように、有機半導体層7の厚みが電極積層体の厚みよりも大きくなるように形成されていてもよく、図4(a)に示すように、有機半導体層7の厚みが電極積層体の厚みと同一であってもよく、図4(b)に示すように、有機半導体層7の厚みが電極積層体の厚みよりも小さくなるように形成されていてもよい。
なお、ソース電極およびドレイン電極の厚みが異なる場合は、厚みの小さい方の電極積層体が上述した関係を示すものとする。
なお、図4(a)、(b)は本発明の有機半導体素子の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については図1において説明した符号と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0071】
本発明においては、なかでも、有機半導体層の厚みが電極積層体の厚みよりも大きくなるように形成されていることが好ましい。有機半導体層を十分な半導体特性を有する厚みで形成することが可能であり、また有機半導体層上のみに形成されるVUV遮蔽層についても、所望のパターン形状に形成しやすいからである。
【0072】
また上記有機半導体層の厚みは、上記有機半導体材料の種類等に応じて所望の半導体特性を備える有機半導体層を得ることができる範囲であれば特に限定されない。なかでも上記有機半導体層の厚みは、1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、特に5nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、さらに20nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より厚いと本発明の有機半導体素子において、電流オフ時においても回り込み電流によってドレイン電流が生じ、これに起因してオフ電流が大きくなってしまう場合があるからである。一方、厚みが上記範囲より薄いと、有機半導体材料の種類によっては有機半導体層の半導体特性が不足してしまう可能性があるからである。
【0073】
本発明の有機半導体層の形成方法としては、半導体特性を有する有機半導体層を真空紫外光を用いてエッチングすることにより所望のパターン状に形成することが可能な方法であれば特に限定されない。
本発明においては、例えば、有機半導体材料をゲート絶縁層上全面に塗布して有機半導体層形成用層を形成し、次いでVUV遮蔽層を所望のパターン形状で有機半導体層形成用層上に形成した後、真空紫外光をVUV遮蔽層および有機半導体層形成用層上に照射することにより、VUV遮蔽層が形成されていない部位の有機半導体層形成用層をエッチングすることにより、所望のパターン形状を有する有機半導体層を形成する方法を好適に用いることができる。
【0074】
なお、上記有機半導体層形成用層の形成方法としては、例えば、上記有機半導体材料が溶媒に可溶なものである場合は、上記有機半導体材料を溶媒に溶解して有機半導体層形成用塗工液を調製した後、これを有機半導体層形成用塗工液を上記基板上に塗工する方法によって形成することができる。この場合の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、LB法、ディップコート法、スプレーコート法、ブレードコート法、およびキャスト法等を挙げることができる。
一方、上記有機半導体材料が溶媒に不溶なものである場合は、例えば、真空蒸着法等のドライプロセスによって形成することができる。
【0075】
5.ゲート絶縁層
本発明におけるゲート絶縁層は、後述するゲート電極を覆うように形成され、上記ソース電極およびドレイン電極と、ゲート電極とを絶縁する機能を有するものである。
【0076】
本工程に用いられるゲート絶縁層を構成する材料としては、所望の絶縁性を有する絶縁性材料であれば特に限定されるものではない。このような絶縁性材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の有機材料や、SiO、SiNx、Al等の無機材料を挙げることができる。本工程においては、これらのいずれの絶縁性材料であっても好適に用いることができる。
【0077】
なお、本工程に用いられる絶縁性材料は1種類であってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
【0078】
本工程に用いられるゲート絶縁層を形成する方法としては、例えば、上記絶縁性材料として有機材料を用いる場合には、有機材料を溶媒に溶解させたゲート絶縁層形成用塗工液を調製し、これを上記ゲート電極を覆うように塗工する方法を挙げることができる。また、上記絶縁性材料として無機材料を用いる場合は、例えば、CVD法等を挙げることができる。
【0079】
6.ゲート電極
次に、本発明におけるゲート電極について説明する。上記ゲート電極は、所望の導電性を有する導電性材料からなるものであれば特に限定されるものではない。このような導電性材料としては、このような導電性材料としては、例えば、Ag、Au、Ta、Ti、Al、Zr、Cr、Nb、Hf、Mo、Mo−Ta合金、ITO、IZO、および、PEDOT/PSS等の導電性高分子を挙げることができる。
【0080】
また、上記ゲート電極を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法や金属ナノ粒子を塗布・焼結して形成する塗布法等を挙げることができる。パターン状のゲート電極を形成する方法としては、上述した方法によって基板上の全面にゲート電極を形成した後、これをパターニングする方法や、または、基板上に直接パターン状のゲート電極を形成する方法を挙げることができる。ここで、上記ゲート電極をパターニングする方法としては、通常、リソグラフィー法が用いられ、なかでもフォトリソグラフィー法が好適に用いられる。一方、上記パターン状のゲート電極を直接形成する方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法等の印刷法や、マスク蒸着法等が好適に用いられる。
【0081】
7.基材
本発明における基材は、上述した各層を支持するものである。
上記基材としては所定の自己支持性を備えるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の有機半導体素子の用途等に応じて任意の機能を有する基材を用いることができる。このような基材としては、ガラス基材等の可撓性を有さないリジット基材、および、プラスチック樹脂からなるフィルム等の可撓性を有するフレキシブル基材を挙げることができる。ここで、上記プラスチック樹脂としては、例えば、PET、PEN、PES、PI、PEEK、PC、PPSおよびPEI等を挙げることができる。
【0082】
また、上記基材は単一層からなるものであってもよく、または、複数の層が積層された構成を有するものであってもよい。複数の層が積層された構成を有する基材としては、例えば、上記プラスチック樹脂からなる基材上に、金属材料からなるバリア層が積層された構成を有するものを例示することができる。ここで、上記プラスチック樹脂からなる基材は、本発明の有機半導体素子を可撓性を有するフレキシブルなものにできるという利点を有する反面、表面に損傷を受けやすいという欠点を有することが指摘されている。しかしながら、上記バリア層が積層された基材を用いることにより、上記プラスチック樹脂からなる基材を用いる場合であっても、上記のような欠点を解消することができるという利点がある。
【0083】
上記基材の厚みは、通常、1mm以下であることが好ましく、なかでも50μm〜700μmの範囲内であることが好ましい。
ここで、本工程に用いられる基材が複数の層が積層された構成を有するものである場合、上記厚みは各層の厚みの総和を意味するものとする。
【0084】
8.その他の構成
本発明の有機半導体素子は、上述した各構成を有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な構成を適宜追加することが可能である。
以下、このような構成について説明する。
【0085】
外部入出力電極用絶縁層・および外部入出力電極
本発明の有機半導体素子10は、図5に示すように、外部入出力電極用絶縁層9および外部入出力電極20を有することができる。ここで、外部入出力電極用絶縁層9は、有機半導体素子10の各層を覆うように形成されるものであり、ソース電極4およびドレイン電極5のうち外部入出力電極20と接続しない方の電極(図5においては、ソース電極4)と、外部入出力電極20とを絶縁するために設けられるものである。また、外部入出力電極20は、外部入出力電極絶縁層9上に形成されるものであり、本発明の有機半導体素子10が種々の装置の構成に用いられた際に、上記種々の装置の駆動に用いられるものである。
【0086】
また、本発明の有機半導体素子において、電極保護層が導電性材料からなる場合は、図5に示すように、外部入出力電極用絶縁層9がソース電極4またはドレイン電極5のいずれか一方の電極(図5においては、ドレイン電極5)上の一部に開口部を有し、外部入出力電極20が、開口部内でソース電極4またはドレイン電極5のいずれか一方の電極(図5においては、ドレイン電極5)上の電極保護層6と接触するように形成されていることが好ましい。これにより、外部入出力電極20およびソース電極4またはドレイン電極5を容易に接続することができるからである。
【0087】
上記外部入出力電極用絶縁層が上記開口部を有する場合は、ソース電極またはドレイン電極のいずれか一方の電極上に上記開口部を有していればよい。なお、上記開口部の形状、大きさ等については、本発明の有機半導体素子の用途等に応じて適宜選択することができる。
【0088】
上記外部入出力電極用絶縁層については、一般的な有機半導体素子に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0089】
また、上記外部入出力電極については、一般的な有機半導体素子に用いられるものと同様とすることができる。
例えば、本発明の有機半導体素子を表示装置の表示媒体の駆動に用いる場合は、表示電極(出力電極)を挙げることができる。また、本発明の有機半導体素子を圧力センサーや温度センサーに用いる場合は、入力電極を挙げることができる。
また、上記外部入出力電極の材料としては、Al、Ti、Cr、Cu等の金属材料とITO、IZO等の酸化物材料、カーボンペーストや銀ペースト等のペースト材料もしくはPEDOT/PSS等の導電性高分子材料が挙げられる。
また、上記外部入出力電極の形成方法としては、一般的な電極の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0090】
(2)パッシベーション層
本発明の有機半導体層10は、図6(a)、(b)に示すように、パッシベーション層30を有することができる。ここで、パッシベーション層30は、空気中に存在する水分や酸素の作用により有機半導体層7が劣化することを防止する層であり、通常は、有機半導体素子10の各層を覆うように形成されるものである。また、図6(b)に示すように、有機半導体素子10が、外部入出力電極用絶縁層9および外部入出力電極20を有する場合は、パッシベーション層30は、通常、外部入出力電極用絶縁層9および外部入出力電極20を覆うように形成される。
【0091】
本発明においては、上述したVUV遮蔽層も、空気中に存在する水分や酸素の作用により有機半導体層が劣化することを防止する機能を有するものであるが、パッシベーション層を有することにより、さらに上記有機半導体層の劣化を防止することが可能となることから、経時的な劣化の少ない高性能な有機半導体素子とすることができる。
【0092】
上記パッシベーション層を構成する材料としては、空気中の水分や酸素を透過しにくく、上記有機半導体層の劣化を所望の程度に防止できるものであれば特に限定されるものではない。このような材料としては、例えば、アクリル樹脂やフッ素系樹脂等を挙げることができる。
【0093】
また、上記パッシベーション層の厚みは、パッシベーション層を構成する材料等に依存して決定されるものであるが、通常、0.1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、なかでも5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに10μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0094】
上記パッシベーション層の形成方法としては、所望の有機半導体層の劣化防止機能を有するパッシベーション層を形成することが可能な方法であれば特に限定されず、一般的な有機半導体素子のパッシベーション層を形成する際に用いられる方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0095】
9.有機半導体素子の用途
本発明の有機半導体素子の用途としては、例えば、TFT方式を用いる表示装置のTFTアレイ基板として用いることができる。このような表示装置としては例えば、液晶表示装置、電気泳動表示装置、および、有機EL表示装置等を挙げることができる。
また、上記有機半導体素子は、温度センサーや圧力センサ−等に用いることもできる。
【0096】
10.有機半導体素子の製造方法
本発明の有機半導体素子の製造方法としては、上記構成を有する有機半導体素子を製造できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、後述する「B.有機半導体素子の製造方法」の項において説明する方法を用いることができる。
【0097】
B.有機半導体素子の製造方法
次に、本発明の有機半導体素子の製造方法について説明する。
本発明の有機半導体素子の製造方法は、基材と、上記基材上に形成されたゲート電極と、上記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層とを有する有機半導体素子用基材を用い、上記ゲート絶縁層上に形成され、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極、並びに、上記ソース電極および上記ドレイン電極上に形成され、酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層からなる電極積層体を形成する電極積層体形成工程と、上記ゲート絶縁層上に、有機半導体材料を含む有機半導体層形成用層を形成する有機半導体層形成用層形成工程と、少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極の間のチャネル領域に形成された上記有機半導体層形成用層上に、真空紫外光に対する遮光性を有する遮光性材料を含むVUV遮蔽層をパターン状に形成するVUV遮蔽層形成工程と、上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層上に真空紫外光を照射することにより、上記VUV遮蔽層が形成されていない部位の上記有機半導体層形成用層をエッチングして有機半導体層を形成する有機半導体層エッチング工程とを有することを特徴とする有機半導体素子の製造方法である。
【0098】
ここで、本発明の有機半導体素子の製造方法について図を用いて説明する。
図7(a)〜(d)、および図8(a)〜(d)は本発明の有機半導体素子の製造方法の一例を示す工程図である。
まず、本発明における電極積層体形成工程について説明する。電極積層体形成工程においては、まず、図7(a)に示すように、基材1と、基材1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2を覆うように形成されたゲート絶縁層3とを有する有機半導体素子用基材10’を準備する。次に、図7(b)に示すように、ゲート絶縁層3上全面に銀を主成分とする金属材料を含む金属材料層45を形成する。次に、図7(c)に示すように、金属材料層45全面に電極保護層6を形成する。次に図7(d)に示すように、エッチング処理等により金属材料層45および電極保護層6をパターニングして、ソース電極4およびドレイン電極5、並びに電極保護層6からなる電極積層体を形成する。
なお、電極積層体形成工程においては、図示はしないが、ソース電極およびドレイン電極をパターン状に形成した後、ソース電極およびドレイン電極上に電極保護層を形成してもよい。
【0099】
次に、有機半導体層形成用層形成工程について説明する。有機半導体層形成用層形成工程においては、図8(a)に示すように、ゲート絶縁層3上に有機半導体材料を含む有機半導体層形成用層7’を形成する。
【0100】
次に、VUV遮蔽層形成工程について説明する。VUV遮蔽層形成工程においては、図8(b)に示すように、少なくともソース電極4およびドレイン電極5の間のチャネル領域Xに形成された有機半導体層形成用層7’上に、真空紫外光に対する遮光性を有する遮光性材料を含むVUV遮蔽層8をパターン状に形成する。
【0101】
次に、有機半導体層エッチング工程について説明する。有機半導体層エッチング工程においては、図8(c)に示すように、VUV遮蔽層8および有機半導体層形成用層7’上に真空紫外光100を照射することにより、VUV遮蔽層8が形成されていない部位の有機半導体層形成用層7’をエッチングして有機半導体層7を形成する。
【0102】
本発明においては、上述した各工程を行うことにより、図8(d)に示すような有機半導体素子10を形成することができる。
なお、図8(a)〜(d)において説明していない符号については、図1および図7(a)〜(d)等と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0103】
また、本発明においては、有機半導体層形成用層形成工程において、図9(a)に示すように、ゲート絶縁層3上に電極保護層6の表面が露出するように有機半導体層7’を形成し、VUV遮蔽層形成工程においては、図9(b)に示すように、チャネル領域Xに形成された有機半導体層形成用層7’を覆うように電極保護層6上にVUV遮蔽層8をパターン状に形成して、図9(c)に示すように有機半導体層エッチング工程を行うことで、図9(d)に示すような有機半導体素子10を形成してもよい。
なお、図9(a)〜(d)において説明していない符号については、図8(a)〜(d)で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0104】
本発明によれば、電極積層体形成工程において、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極上に酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層を形成することが可能となることから、有機半導体層エッチング工程において真空紫外光を用いて有機半導体層をエッチングして形成する際に、真空紫外光によって上記ソース電極およびドレイン電極が酸化されて劣化することを防止することが可能となる。よって、有機半導体層との電気的な接続性の高いソース電極およびドレイン電極を形成し、かつ必要最小限の面積で有機半導体層を形成することが可能となることから、優れたスイッチング機能を有する有機半導体素子を製造することができる。
【0105】
以下、本発明の有機半導体素子の製造方法における各工程について説明する。
【0106】
1.電極積層体形成工程
本発明における電極積層体形成工程は、基材と、上記基材上に形成されたゲート電極と、上記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層とを有する有機半導体素子用基材を用い、上記ゲート絶縁層上に形成され、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極、並びに、上記ソース電極および上記ドレイン電極上に形成され、酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層からなる電極積層体を形成する工程である。
【0107】
本工程に用いられる電極積層体の形成方法としては、所望のパターン形状を有し、かつ各層の厚みが所望のものとなるように、電極積層体を形成することが可能な方法であればよく、図7(a)〜(d)に示すように、ソース電極4およびドレイン電極5と、電極保護層6とを同時に形成する方法であってもよく、図示はしないが、ソース電極およびドレイン電極と電極保護層とを別々に形成する方法であってもよい。
電極積層体の形成方法については、電極保護層の材料に応じて適宜選択することができる。
【0108】
なお、本工程に用いられるソース電極およびドレイン電極や電極保護層の材料、形成方法、ならびに本工程において形成されるソース電極およびドレイン電極や電極保護層については、上述した「A.有機半導体素子」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0109】
2.有機半導体層形成用層形成工程
本発明における有機半導体層形成用層形成工程は、上記ゲート絶縁層上に、有機半導体材料を含む有機半導体層形成用層を形成する工程である。
【0110】
本工程において形成される有機半導体層形成用層の厚みについては、所望の半導体特性を有する有機半導体層を形成することが可能であれば特に限定されず、本発明の製造方法により製造される有機半導体素子の用途等に応じて適宜選択することができる。
【0111】
本工程に用いられる有機半導体材料および有機半導体層形成用層の形成方法等については、上述した「A.有機半導体素子」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0112】
3.VUV遮蔽層形成工程
本発明におけるVUV遮蔽層形成工程は、少なくとも上記ソース電極および上記ドレイン電極の間のチャネル領域に形成された上記有機半導体層形成用層上に、真空紫外光に対する遮光性を有する遮光性材料を含むVUV遮蔽層をパターン状に形成する工程である。
【0113】
本工程に用いられるVUV遮蔽層の材料、形成方法、および本工程において形成されるVUV遮蔽層については、上述した「A.有機半導体素子」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0114】
なお、本工程においては、図9(b)に示すように、チャネル領域Xに形成された有機半導体層形成用層7’を覆うように電極保護層6上にVUV遮蔽層8を形成することも可能である。この場合は、上述した有機半導体層形成用層形成工程において、図9(a)に示すように、ゲート絶縁層3上に電極保護層6の表面が露出するように有機半導体層形成用層7’が形成される。
またこの場合も、本工程に用いられるVUV遮蔽層の材料、形成方法等や、本工程において形成されるVUV遮蔽層のパターン形状以外の構造については、上述した「A.有機半導体素子」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0115】
4.有機半導体層エッチング工程
本発明における有機半導体層エッチング工程は、上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層上に真空紫外光を照射することにより、上記VUV遮蔽層が形成されていない部位の上記有機半導体層形成用層をエッチングして有機半導体層を形成する工程である。
【0116】
本工程においては、上記VUV遮蔽層が本工程に用いられる真空紫外光のマスクとしての機能を果たすため、単に真空紫外光を照射することによって容易に有機半導体層をパターニングすることができる。
また、本工程においては、上記VUV遮蔽層をマスクとして用いてパターニングするため、本工程においてパターニングされる有機半導体層のパターンは、上記VUV遮蔽層が形成されているパターンと同一になる。
【0117】
上述したように、本工程においては、真空紫外光を上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層上に照射することによって、上記VUV遮蔽層が形成されていない部位の有機半導体層形成用層を除去する方法が用いられる。ここで、上記「真空紫外光」とは、波長が10nm〜200nmの範囲内である紫外線を意味するが、本工程に用いられる真空紫外光としては、上記有機半導体層形成用層を所望の時間内に除去できる波長を有するものであれば特に限定されるものではなく、上記有機半導体層形成用層を構成する有機半導体材料の種類に応じて適切な波長の真空紫外光を用いればよい。なかでも本工程に用いられる真空紫外光は、波長が10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、特に126nm〜193nmの範囲内であることが好ましく、さらに172nmであることが好ましい。このような波長範囲の真空紫外光を用いることにより、上記有機半導体層形成用層を構成する有機半導体材料の種類に関わらず、本工程において有機半導体層形成用層を短時間でパターニングすることが可能になるからである。
【0118】
本工程において、真空紫外光の照射に用いられる光源としては、例えば、エキシマランプ、低圧水銀ランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0119】
また、本工程における真空紫外光の照射量としては、本工程において上記有機半導体層形成用層を除去できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、上記有機半導体層形成用層を構成する有機半導体材料の種類や、上記真空紫外光の波長等によって適宜調整すればよい。
【0120】
本工程において、上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層上に真空紫外光を照射する方法としては、上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層上に均一な照射量で真空紫外光を照射できる方法であれば特に限定されない。このような照射方法としては、例えば、上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層の全面を同時に照射する方法、および、光源または上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層が形成された基板の少なくとも一方を移動させながら、上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層の全面を順次に照射する方法を挙げることができる。なかでも本工程においては後者の方法を用いることが好ましい。その理由は次の通りである。
すなわち、真空紫外光は指向性のない分散光であるため、上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層の全面を同時に照射する方法では、例えば、大面積の上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層に真空紫外光を照射する場合に、中央部と端部とで真空紫外光の照射量に差が生じてしまう可能性がある。しかしながら、上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層の全面を順次に照射する方法によれば、たとえ大面積の上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層に真空紫外光を照射する場合であっても、全面に対して均一に真空紫外光を照射することが容易になるからである。
【0121】
また本工程においては、上記順次に照射する方法のなかでも、上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層が形成された基板を固定し、上記光源を移動させながら照射する方法を用いることが好ましい。このような方法によれば、大面積の上記VUV遮蔽層および上記有機半導体層形成用層に均一に真空紫外光を照射することが容易になるからである。
【0122】
なお、本工程に用いられる真空紫外光の光源は、1つであってもよく、または、複数個を用いてもよい。また、複数個の光源を用いる場合において、本工程における真空紫外光の照射方法として光源を移動させながら照射する方法を用いる場合は、複数個の光源を同時に移動させてもよく、または、個別に移動させてもよい。
【0123】
5.その他の工程
本発明の有機半導体素子の製造方法は、上述した各工程を有する製造方法であれば特に限定されず、必要な工程を適宜選択して追加することができる。
【0124】
ここで、上述した電極積層体形成工程において、導電性材料を用いて電極保護層が形成された場合は、図10(a)に示すように、有機半導体層エッチング工程後に有機半導体素子10の各層を覆い、かつドレイン電極5上の一部に開口部を有する外部入出力電極用絶縁層9を形成する外部入出力電極用絶縁層形成工程と、図10(b)に示すように、外部入出力電極用絶縁層9上に外部入出力電極20を形成し、かつ開口部内で外部入出力電極20とドレイン電極5上に形成された電極保護層6とが接触するように外部入出力電極20を形成する外部入出力電極形成工程とを有することが好ましい。電極保護層に絶縁性材料を用いた場合に比べ、外部入出力電極を容易に接続することが可能となるからである。
なお、図示はしないが、外部入出力電極用絶縁層形成工程においては、外部入出力電極用絶縁層がソース電極上の一部に開口部を有するように形成されてもよく、外部入出力電極形成工程においては、外部入出力電極とソース電極上に形成された電極保護層とが接触するように外部入出力電極が形成されてもよい。
また、図10(a)、(b)は本発明の有機半導体素子の製造方法における外部入出力電極用絶縁層形成工程および外部入出力電極形成工程の一例を示す概略断面図である。
【0125】
以下、外部入出力電極用絶縁層形成工程および外部入出力電極形成工程について説明する。
【0126】
(1)外部入出力電極用絶縁層形成工程
本発明における外部入出力電極用絶縁層形成工程は、上記有機半導体層エッチング工程後に上記有機半導体素子の各層を覆い、かつ上記ソース電極または上記ドレイン電極のいずれか一方の電極上の一部に開口部を有する外部入出力電極用絶縁層を形成する工程である。
なお、本工程に用いられる外部入出力電極用絶縁層の材料、外部入出力電極用絶縁層の形成方法、および本工程において形成される外部入出力電極用絶縁層については上述した「A.有機半導体素子」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0127】
(2)外部入出力電極形成工程
本発明における外部入出力電極形成工程は、上記外部入出力電極用絶縁層上に外部入出力電極を形成し、かつ上記開口部内で上記外部入出力電極と上記ソース電極または上記ドレイン電極のいずれか一方の電極上に形成された上記電極保護層とが接触するように外部入出力電極を形成する工程である。
なお、本工程に用いられる外部入出力電極の材料、外部入出力電極の形成方法、および本工程において形成される外部入出力電極については上述した「A.有機半導体素子」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0128】
(3)パッシベーション層形成工程
本発明におけるパッシベーション層形成工程は、有機半導体素子の各層を覆うようにパッシベーション層を形成する工程である。
なお、本工程に用いられるパッシベーション層の材料、外部入出力電極の形成方法、および本工程において形成されるパッシベーション層については上述した「A.有機半導体素子」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0129】
6.有機半導体素子
本発明の有機半導体素子の製造方法により製造される有機半導体素子は、ボトムゲート・ボトムコンタクト型の有機トランジスタを有するものである。なお、上記有機半導体素子については、「A.有機半導体素子」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0130】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0131】
以下、本発明について、実施例を挙げて説明する。
【0132】
(実施例1)
ガラス基材上全面にAl(厚み150nm)をスパッタ蒸着し、次に、Alスパッタ膜上にてポジ型フォトレジストをスピンコートにて塗布し、フォトマスクを用いた露光および現像工程を経て、レジスト層をパターニングした。エッチング処理を施して、レジスト層が形成されていない部位のAlスパッタ膜をエッチングした後、レジスト層を除去した。これにより、ゲート電極を形成した。
次に、ゲート電極上に紫外線感光性アクリル系樹脂をスピンコートし、フォトマスクを介した露光及びアルカリ現像工程を行い、ゲート絶縁層のパターニングを行った。次いで150℃のオーブンにて加熱硬化させ、ゲート絶縁層(膜厚1μm)を形成した。
【0133】
次に、ゲート絶縁層上にポジ型フォトレジストをスピンコートにて塗布し、フォトマスクを用いた露光および現像工程を経て、ソース電極およびドレイン電極形成領域のフォトレジストを除去した。次いで、Ag(膜厚50nm)をスパッタ蒸着し、続いて電極保護層としてCr(膜厚20nm)を積層させて全面にAg/Cr薄膜を形成した。次いで、アセトンに浸漬させた状態で超音波浴槽にてフォトレジスト及びフォトレジスト上のAg/Cr薄膜を除去し、ソースおよびドレイン電極(W=20μm、L=700μm)を形成した。
【0134】
次に、チオフェン系ポリマーをモノクロロベンゼン溶液に固形分濃度1wt%にて溶解させた有機半導体溶液を準備し、ソース・ドレイン電極を形成した表面にスピンコートにて膜厚50nmの有機半導体層を全面に形成した。次いで、紫外線感光性アクリル系樹脂を有機半導体層上にスピンコートし、フォトマスクを介した露光及びアルカリ現像工程を行い、トランジスタチャネル領域上にアクリル系樹脂をパターニングした。次いで150℃のオーブンにて加熱硬化させ、トランジスタチャネル領域上にアクリル系樹脂からなるVUV遮蔽層を形成した。
【0135】
次に、大気下で真空紫外線(波長172nm、照度3mW/cm)を60秒間照射し、VUV遮蔽層で覆われている以外の領域の有機半導体をエッチング除去し、半導体のパターニングを行った。このとき、真空紫外光の照射によるソース・ドレイン電極に用いた銀の変色は観察されず、三菱化学アナリテック社製 MCP−T370の4端針測定によるソース・ドレイン電極の表面抵抗率は、照射前後で変化は見られず1.1Ω/□であった。
【0136】
次に、紫外線感光性アクリル系樹脂をスピンコートし、フォトマスクを介した露光及びアルカリ現像工程を行い、外部入出力電極導通部のスルーホールのパターニングを行った。次いで150℃のオーブンにて加熱硬化させ、外部入出力電極用絶縁層(膜厚10μm)を形成した。
次に、カーボンペーストをスクリーン印刷にてパターン印刷および120℃のオーブンにて焼成を行い、外部入出力電極(膜厚5μm)を形成した。この工程にて、外部入出力電極とトランジスタのソース・ドレイン電極のどちらか一方と導通させた。
【0137】
作製したトランジスタ素子をソース・ドレイン電圧−50V、ゲート電圧を50V〜−50Vで変化させて電流−電圧特性を真空中、遮光下で測定した結果、トランジスタ移動度は2.0×10−2cm/Vs、オンオフ比は約6桁と見積もられた。
【0138】
(比較例1)
上記実施例1と同様にガラス基材を用い、ソース・ドレイン電極形成時に電極保護層を設けずに、Ag(膜厚40nm)単層にて作製する以外は上記実施例1と同様にトランジスタ素子を作製した。
有機半導体層パターニング時の真空紫外光照射後にソース・ドレイン電極は黒色に変色し、Agの酸化が観られた。また、実施例1と同様にソース・ドレイン電極の表面抵抗率を測定すると、照射前では1.1Ω/□であったが照射後には1.5×10Ω/□と配線抵抗が増加し、実施例1と比較するとAgの酸化によりソース・ドレイン電極の劣化が観られた。
【0139】
(比較例2)
上記実施例1と同様にガラス基材を用い、ソース・ドレイン電極形成時に電極保護層を設けずに、Ag(膜厚40nm)単層にて作製する以外は上記実施例1と同様にソース・ドレイン電極形成工程まで作製した。
次に、実施例1と同様のチオフェン系ポリマーをインクジェットにてソース・ドレイン電極間にパターン塗布し、膜厚50nmの有機半導体層を形成した。
次に、紫外線感光性アクリル系樹脂をスピンコートし、フォトマスクを介した露光及びアルカリ現像工程を行い、外部入出力電極導通部のスルーホールのパターニングを行った。次いで150℃のオーブンにて加熱硬化させ、外部入出力電極用絶縁層(膜厚10μm)を形成した。
次に、カーボンペーストをスクリーン印刷にてパターン印刷および120℃のオーブンにて焼成を行い、外部入出力電極(膜厚5μm)を形成した。この工程にて、外部入出力電極とトランジスタのソース・ドレイン電極のどちらか一方と導通させた。
【0140】
作製したトランジスタ素子をソース・ドレイン電圧−50V、ゲート電圧を50V〜−50Vで変化させて電流−電圧特性を真空中、遮光下で測定した結果、トランジスタ移動度は2.0×10−2cm/Vs、オンオフ比は約6桁と見積もられ、実施例1と同様のトランジスタ性能を示した。このことから、ソース・ドレイン電極上に電極保護層を設けた場合においてもトランジスタ性能が劣化しないことが示された。
【符号の説明】
【0141】
1 … 基材
2 … ゲート電極
3 … ゲート絶縁層
4 … ソース電極
5 … ドレイン電極
6 … 電極保護層
7 … 有機半導体層
7’ … 有機半導体層形成用層
8 … VUV遮蔽層
10 … 有機半導体素子
10’ … 有機半導体素子用基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上に形成され、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極上に形成され、酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層と、
少なくとも前記ソース電極および前記ドレイン電極の間のチャネル領域に形成可能なパターン形状を有し、有機半導体材料を含む有機半導体層と、
前記有機半導体層上のみに形成され、真空紫外光に対する遮光性を有する遮光材料を含むVUV遮蔽層と
を有することを特徴とする有機半導体素子。
【請求項2】
前記電極保護層が、導電性を有する材料からなることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体素子。
【請求項3】
基材と、前記基材上に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層とを有する有機半導体素子用基材を用い、前記ゲート絶縁層上に形成され、銀を主成分とする金属材料を含むソース電極およびドレイン電極、並びに、前記ソース電極および前記ドレイン電極上に形成され、酸素に対する遮蔽性を有する電極保護層からなる電極積層体を形成する電極積層体形成工程と、
前記ゲート絶縁層上に、有機半導体材料を含む有機半導体層形成用層を形成する有機半導体層形成用層形成工程と、
少なくとも前記ソース電極および前記ドレイン電極の間のチャネル領域に形成された前記有機半導体層形成用層上に、真空紫外光に対する遮光性を有する遮光性材料を含むVUV遮蔽層をパターン状に形成するVUV遮蔽層形成工程と、
前記VUV遮蔽層および前記有機半導体層形成用層上に真空紫外光を照射することにより、前記VUV遮蔽層が形成されていない部位の前記有機半導体層形成用層をエッチングして有機半導体層を形成する有機半導体層エッチング工程と
を有することを特徴とする有機半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記電極積層体形成工程では、導電性を有する材料を用いて電極保護層を形成し、
前記有機半導体層エッチング工程後に前記有機半導体素子の各層を覆い、かつ前記ソース電極または前記ドレイン電極のいずれか一方の電極上の一部に開口部を有する外部入出力電極用絶縁層を形成する外部入出力電極用絶縁層形成工程と、
前記外部入出力電極用絶縁層上に外部入出力電極を形成し、かつ前記開口部内で前記外部入出力電極と記ソース電極または前記ドレイン電極のいずれか一方の電極上に形成された前記電極保護層とが接触するように外部入出力電極を形成する外部入出力電極形成工程とを有することを特徴とする請求項3に記載の有機半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−216564(P2012−216564A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78829(P2011−78829)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】