説明

欠陥ログの検出方法及び検出装置

【課題】欠陥ログを確実に検出する。
【解決手段】巻取り機の前段にあるバキュームロール上を走行する原紙に対して高周波照明を照射するとともに、その照射部分の所定位置を幅方向に沿って線状に高速度カメラで連続撮影し、この撮影された線状の原紙画像を画像処理装置に取り込むとともに撮影順に順次連続的に合成して原紙画像を形成し、この合成された原紙画像に基づいて欠陥を検出する欠陥ログの検出方法により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥の内在する欠陥ログを検出する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパー等の原紙は、抄紙後にログと呼ばれる巻物にされるが、抄紙不良等によって原紙に穴あき部分が形成されていたり、紙力・紙厚等の紙質のバラツキや原紙を紙管に巻取る際に付着した糊等に起因して、原紙が流れ方向に連続的に破れるサケ、原紙の幅方向に折り重なったダブリなどの欠陥が発生することがあり、欠陥の内在する欠陥ログが形成されることがある。
このような欠陥ログは後段の製造ラインから排除する必要があるため、ログ形成にあたっては、欠陥ログの検出を行うこととしている。
従来、欠陥ログを検出するにあたっては、巻取りロール前段に位置するロール面を走行する原紙をカメラ等で平面的に撮影し、この撮影画像を解析することで原紙の欠損・サケ・ダブリ等の欠陥を検出することで行っていた。
【特許文献1】特開2004−007717
【特許文献2】特開2004−056752
【特許文献3】特開2003−288596
【特許文献4】特開平11−094766
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ロール面上を走行する原紙を平面的に撮影すると、曲面を平面として撮影することになるがゆえ、部分的な光の強弱の影響(乱反射)を受けて、欠陥を正確に検出できないことがある。
そこで、本発明の主たる課題は、乱反射等の影響なく、精度よく原紙の欠損・サケ・ダブリ等に代表される欠陥を検出できることとし、もって欠陥の内在する欠陥ログを確実に検出する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明及びその作用効果は次記載のとおりである。
<請求項1記載の発明>
巻取り機の前段にあるロール上を走行する原紙に対して照明を照射するとともに、
その照射部分の所定位置を幅方向に沿って線状に高速度カメラで連続撮影し、
この撮影された線状の原紙画像を画像処理装置に取り込み、
この取り込まれた線状の原紙画像を撮影順に順次連続的に合成して原紙画像を形成し、
この合成された原紙画像に基づいて欠陥を検出する、
ことを特徴とする欠陥ログの検出方法。
【0005】
<請求項2記載の発明>
巻取り機の前段にあるロール上を走行する原紙に対して15000〜45000Hzで高周波照明を照射するとともに、
その照射されているロール上の所定位置を幅方向に沿って線状に高速度カメラにより分解能5000〜15000スキャン/秒で連続撮影し、
この撮影された線状の原紙画像を画像処理装置に取り込み、
この取り込まれた線状の原紙画像を撮影順に順次連続的に合成して原紙画像を形成し、
この合成された原紙画像に基づいて欠陥を検出する、
ことを特徴とする欠陥ログの検出方法。
【0006】
<請求項3記載の発明>
ログ巻取り機の前段のロール上を走行する原紙に対して高周波照明を照射する照射装置と
高周波照明の照射部位の所定位置を幅方向に沿って線状に撮影する高速度カメラと、
前記高速度カメラで撮影された画像を取り込み、かつ、撮影順に連続的に合成する画像処理装置と、
合成された画像に基づいて欠陥を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする欠陥ログの検出装置。
【0007】
<請求項4記載の発明>
前記照明装置が15000〜45000ショット/秒の高周波照明装置であり、前記高速度カメラが、分解能5000〜15000スキャン/秒の高速度カメラである、請求項3記載の欠陥ログ検出装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、欠陥ログを正確に検出することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次いで、本発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に詳述する。図1は、本実施形態の欠陥ログ検出装置の概略を示す図である。図1において、符号10は巻き取り装置、20は巻き取り装置で巻き取られた原紙(ログ)、30はバキュームロール、40は照明装置、50は高速度カメラ、60は画像処理装置である。
本実施形態にかかる欠陥ログ検出方法は、巻取り機10の前段にあるバキュームロール30上を走行する原紙Pに対して照明装置40から照明を照射するとともに、その照射部分の所定位置を幅方向に沿って線状に高速度カメラ50で連続撮影し、この撮影された線状の原紙画像を画像処理装置60に取り込み、この取り込まれた線状の原紙画像を撮影順に順次連続的に合成して原紙画像を形成し、この合成された原紙画像に基づいて欠陥を検出するのであり、代表的に図示例の装置を用いる。
【0010】
本発明は、原紙Pについて特に限定していないが、トイレットペーパーに好適に採用しうるものであり、以下、主にトイレットペーパーを例に説明する。
本実施形態の欠陥ログの検出方法は、抄紙工程後段のいわゆるログ20に巻き取る巻き取り工程に比較的に近い前段にて行い、それより前段の抄紙工程については、特に限定されない。従って、原料パルプ等から各種抄紙機を用いて適宜の抄紙を行えばよく、その原料パルプや添加薬品などについても、特に限定されることはなく、既知の方法を採用しうる。
図示の形態は、巻き取り装置10の直前位置のバキュームロール30において、欠陥ログの検出をすることとしている。検出位置は直前位置のバキュームロール30に限られないが、直前のほうが検出後の欠陥発生の率を小さくでき、より欠陥ログ検出の精度が高まるので望ましい。また、本形態は、好適な例としてバキュームロール上で検出しているが、一般的な吸引機能を有さないロール上で検出するように構成することも可能である。
なお、本発明においては、巻取り機の形態については特に限定されない。
【0011】
本形態にかかる方法は、上述のとおり、まずバキュームロール30上を走行する原紙Pに対して照明を照射する。これにより紙面上に照明光以外の光の影響を低減され、後述のカメラ撮影の精度が向上されるとともに、紙面上の欠陥部分と非欠陥部分との明暗等がはっきりとして、画像解析の精度が向上される。
ここで、照射する照明は、撮影カメラ50のスキャン速度以上の照射速度(周波数)の高周波照明が適し、具体的には15000〜45000Hz、好適には25000〜35000Hz、特に好適には30000Hzの高周波照明とするのが望ましく、少なくともこの照射速度であれば精度よく高速度カメラでの撮影することが可能である。
また、照明の明るさ、例えば光度などは、高速度カメラの仕様に応じて選択することができ、例えば、照射部分と光源との距離、撮影部位における照度、高速度カメラの仕様等に応じて適宜設計する。
用いうる照明装置40としては、高周波照明であれば、高周波点灯電源(例えば、ダイナテック株式会社製)で光源としての蛍光灯(例えば、LH110F:ダイナテック株式会社製)を点灯させる高周波照射装置が好適であるが、その他、LED照明装置、キセノンランプ等の既知の照明装置を用いることが可能である。
【0012】
一方、本形態にかかる方法は、バキュームロール30上を走行する原紙Pに対して高周波照明を照射するとともに、その照射されているロール上の所定位置を幅方向に沿って線状に高速度カメラ50により連続的に撮影する。撮影する所定位置はロール上において前記照明が照射されている部位であれば特に限定されない。
ただし、撮影は原紙Pの幅方向全体に及ぶ範囲で行う。従って、幅方向長さは原紙幅(ログ長)による。ログ幅は所望の製品毎に異なるものなので特に限定されるものではない。本形態のようにトイレットペーパーであれば、概ね1〜10mの範囲に収まり、通常は2〜5m、殆どは4m±50cm程度である。この範囲であれば本発明の利益は享受できる。
撮影幅は実質的に線状であるが、具体的には原紙流れ方向に0.1〜5.0mm、好適には0.2〜2.0mm程度の長さを有する。この程度であれば乱反射の影響を受けることはほとんどなく、十分な精度で欠陥検出することが可能である。なお、具体的な数値は、操業速度、用いる高速度カメラの仕様により選択する。
線状に撮影することで、広範に撮影する場合と比較して乱反射等による影響が小さくなる。特に、バキュームロール30上を撮影する場合、曲面を平面的に一度に広範に撮影すると、カメラから遠い部分と近い部分とで明暗が現れる画像となり、また照明の反射が部分的に相違したり、乱反射の影響を受けやすくなり、安定した画像を得ることが極めて難しい。本発明では、上記のとおり線状に分断して撮影するので、乱反射等に起因する撮影画像の乱れはない。
【0013】
ここで、撮影に使用する高速度カメラ50は一台に限らず、複数台使用してもよい。原紙流れ方向に複数台設置してもよいし、原紙の幅方向に複数台並設してもよい。その数は1台が制御しやすく好適だが、これに限定されることはない。
かかる高速度カメラ50は、原紙流れ速度以上で移動する被写体を撮影可能な撮影能力を有する範囲で、照明装置との関係を考慮して既知の高速度CCDカメラ製品などの中から適宜選択することができる。データ処理が容易である点を考慮すれば、画像をデジタルデータとして記録するものが適する。より具体的には、2048画素LINECCDカメラ、TI2048TS(株式会社エクセル製)に、ED14mm、F2.8のレンズ(株式会社ニコン製)を組み合わせた高速度カメラが好適である。
なお、本発明及び明細書中における画像とは、画像をデジタルデータ化したものも含む意味である。
【0014】
撮影方式は、ロータリープリズム式、ロータリーミラー式、オンチップメモリ式、高速度ビデオ(テープ式)、高速度ビデオ(ICメモリ式)などを採り得るが、操業時間を通して連続撮影する必要上、高速度ビデオが適する。
用いる高速度カメラ50の撮影分解能は、好適には8000〜11000スキャン/秒、特に好適には9000〜10000スキャン/秒、特には9500〜9700スキャン/秒である。
スキャン速度が5000スキャン/秒であると乱反射の影響を受けやすくなり、また、現実的な操業速度を考慮すれば、15000スキャン/秒を超えても効果の向上があまり見込めなくなる。
本形態では、上記のようにバキュームロール30上を走行する原紙Pに照明を照射して、高速度カメラで撮影することとしている。バキュームロール30上では、原紙が吸引及び緊張によってロール面に密着されるので、原紙の不要な動きが規制され、照射光の反射が安定し、撮影環境が安定となって測定が正確になされる作用効果がもたらされる。
【0015】
ここで、本形態の装置においては、装置を保護するとともに安定した撮影環境を得るべく、高速度カメラ50及び照明装置40への紙粉・塵等の堆積を防止する紙粉除去手段70,70…を設けている。
紙粉除去手段を設けることで、カメラレンズと撮影部位との間に紙粉堆積物が落下等して、原紙面以外の不必要な被写体が撮影され検出精度が低下することが防止される。
かかる紙粉除去手段は、特に限定されないが、図示例の紙粉除去手段は、高速度カメラや照明装置を設置するボックス内へ、エアを適宜の速度で供給して、ボックス内への紙粉混入を防止するエアパージ装置70,70…である。
紙粉除去共手段としては、その他例えば、高速度カメラ及び照明装置に対して適宜の流速でエアを散布する構成とした装置、エア散布により飛ばされた粉塵を吸引する吸引手段を追加的に設けた構成をとる装置、カメラレンズと撮影部位との間にエア散布をして当該空間への紙粉の浮遊を排除するように構成した装置も挙げられる。
【0016】
一方、高速度カメラ50で撮影した画像は画像処理装置60にて処理される。高速度カメラ50から画像処理装置60へのデータDの転送は既知の技術による。記録媒体を介してもよいが、好適にはケーブルで装置同士を直接接続して連続的にデータ転送するのがよい。
画像処理装置60においては、高速度カメラ50で撮影した線状の原紙画像を連続的に連結して合成する処理を行う。かかる処理により実際には曲面に沿っているロール上の原紙を、擬似的に平面に引き伸ばした画像が得られる。
画像処理装置60において画像を取り扱うためのフォーマットや、具体的な合成処理方法は、既知に技術を用いる。例えば、パーソナルコンピューター等の汎用コンピューターに部品(マイクロテクニカ社製:MTPPI−DCL、MTPPI−DC2等)を組み込み、さらにこの種の処理ソフト等を読み込ませて用いてもよいし、専用の画像処理装置(マイクロテクニカ社製:MT−PPC)を用いてもよい。
【0017】
他方、本発明では、上記の合成画像に基づいてログの欠陥を検出する。検出自体は、装置を用いてもよいし、操作者による合成画像の視覚認識によってもよい。
装置を用いるのであれば、画像処理装置60と一体的な装置により行ってもよいし、別体の汎用コンピューター及びこの種のソフト、さらには別体の専用装置を用いてもよい。図示例では検出装置は、画像処理装置と一体的な構成としている。
本願発明は合成画像に基づき欠陥を検出することに意義があり、具体的な検出方法は特に限定されず、画像に基づいて欠陥検出する既知の方法を採ることができるが、サケ・ダブリ等の欠陥が混入した場合には、正常部と異常部に光の反射量の差が発生するため、例えば、装置を用いるのであれば、画像の明暗、色度、白色度、反射率等、視覚認識などに基づいて検出することが可能である。
より詳細に示せば、予め正常な原紙表面の白色度、明度、色度、反射率等を正常値として設定しておき、画像処理装置にて合成画像を得るとともにこの合成画像から原紙表面の白色度、明度、色度、反射率を算出して、前記正常値と比較する。比較の結果、許容数値範囲から外れるものを欠陥部分として判断し、この原紙部分が通過したのちのログを欠陥ログとして判断する。なお、比較項目は、適宜である。一項目でもよいし複数項目としてもよい。
好適な検出方法は、合成画像を256階調程度のグレースケール化することとし、その画像中における予め設定した階調以上又は以下の階調部分の比率が、所定値以上又は以下となったときに、欠陥部分があるとして判断するようにする。
また、図示例の本形態では、画像処理装置で合成処理した画像を、モニター上に映し出すようにしており、操作する者が視覚的にも欠陥を認識して検出できるように構成されている。
【0018】
本発明は検出方法であるので、検出によって目的は達成されるが、好適には上述の方法により欠陥が検出された場合に、これに応じて欠陥ログを後段の製造ラインから外すようにするのがよい。
好適には、前記検出装置にて、当該欠陥原紙が検出された場合に、この検出装置等から自動的に後段の製造ラインから当該原紙を含むログを外すように指示する信号を送信し、これに応じて欠陥ログがラインから外れるように製造ラインを構成し、自動的に欠陥ログがラインから外れるようにするのがよい。
その他、欠陥が検出された場合に、巻き取り機10に巻き取り中止の信号を送信するように構成し、これに応じて巻き取り機10が停止するように構成してもよい。さらに、ログ端面などに欠陥原紙を含むことを視覚的に認識できる印を付与するように構成してもよい。
なお、装置にたよらず操作人の視覚認識に基づく操作によって、ログ巻取りの中止等の前記各信号を発信できるように構成し、かかる操作人によって欠陥ログをラインから外せるようにしてもよい。
以上詳述のとおり、本形態の欠陥ログ検出方法及び装置によれば、精度よく欠陥ログを検出でき、もって、巻不良の発生後、迅速に製造系外へ排出することができ、また巻不良の発生を即時に認識でき、もって操業性の向上が図られる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、トイレットペーパーなどの紙に限らず、フィルムシート、布などの連続するシートを巻き取って巻物とする製造工程に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の検出装置の概要を示す模式図である。
【符号の説明】
【0021】
10…巻き取り装置、20…巻き取り装置で巻き取られた原紙(ログ)、30…バキュームロール、40…照明装置、50…高速度カメラ、60…画像処理装置、61…モニター、70…エアパージ装置。D…画像データ、S…欠陥検出信号、P…原紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取り機の前段にあるロール上を走行する原紙に対して照明を照射するとともに、
その照射部分の所定位置を幅方向に沿って線状に高速度カメラで連続撮影し、
この撮影された線状の原紙画像を画像処理装置に取り込み、
この取り込まれた線状の原紙画像を撮影順に順次連続的に合成して原紙画像を形成し、
この合成された原紙画像に基づいて欠陥を検出する、
ことを特徴とする欠陥ログの検出方法。
【請求項2】
巻取り機の前段にあるロール上を走行する原紙に対して15000〜45000Hzで高周波照明を照射するとともに、
その照射されているロール上の所定位置を幅方向に沿って線状に高速度カメラにより分解能5000〜15000スキャン/秒で連続撮影し、
この撮影された線状の原紙画像を画像処理装置に取り込み、
この取り込まれた線状の原紙画像を撮影順に順次連続的に合成して原紙画像を形成し、
この合成された原紙画像に基づいて欠陥を検出する、
ことを特徴とする欠陥ログの検出方法。
【請求項3】
ログ巻取り機の前段のロール上を走行する原紙に対して高周波照明を照射する照射装置と
高周波照明の照射部位の所定位置を幅方向に沿って線状に撮影する高速度カメラと、
前記高速度カメラで撮影された画像を取り込み、かつ、撮影順に連続的に合成する画像処理装置と、
合成された画像に基づいて欠陥を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする欠陥ログの検出装置。
【請求項4】
前記照明装置が15000〜45000ショット/秒の高周波照明装置であり、前記高速度カメラが、分解能5000〜15000スキャン/秒の高速度カメラである、請求項3記載の欠陥ログ検出装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−134107(P2008−134107A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319324(P2006−319324)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】