説明

気相成長装置

【課題】基板を保持する基板ホルダー、該基板ホルダーを回転自在に保持するサセプタ、及び該サセプタを回転自在に保持するサセプタ保持機構が備えられた気相成長装置であって、基板の入れ替え及びサセプタの脱着が容易な気相成長装置を提供する。
【解決手段】サセプタを、該基板ホルダーを保持する円盤状部材、及び円盤状部材から分離できるリング状部材からなる構成とし、サセプタを回転自在に保持する保持機構の一部を該リング状部材に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作性に優れた気相成長装置に関し、さらに詳細には、基板の入れ替えが容易な気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶膜を基板上に成長する方法には、化学的気相成長(CVD)法等の方法があり、基板加熱を伴うCVD法には熱CVD法等が知られている。
近年、高温条件(例えば1000℃以上)で基板を加熱して行なう気相成長工程が増加しており、青色若しくは紫外LED又は青色若しくは紫外レーザーダイオードを製作するためのIII族窒化物半導体の気相成長工程もその一つである。例えば、III族窒化物半導体結晶膜の成長は、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、またはトリメチルアルミニウム等の有機金属ガスをIII族金属源として、アンモニアを窒素源として用い、1000℃以上の高温に加熱されたシリコン(Si)、サファイア(Al)または窒化ガリウム(GaN)等の基板上に結晶膜を気相成長する熱CVD法により行われることがある。
【0003】
気相成長装置には、基板の結晶成長面を上向きに配置するもの(フェイスアップ型)、基板の結晶成長面を下向きに配置するもの(フェイスダウン型)がある。また、1バッチあたり1枚の基板上に結晶膜を成長させる気相成長装置があるが、生産性を向上するために1バッチあたり複数枚の基板上に結晶膜を成長させる気相成長装置も知られている。
また、均一な膜厚及び膜質を得るには、基板を自公転させながら基板上に結晶膜を成長させることが有効である。例えば、複数の基板ホルダーを原料ガス導入部の周囲またはガス流の下流側に設けた気相成長装置において、回転自在に保持されたサセプタの上に基板ホルダーを回転自在に保持し、サセプタの回転により基板を公転させ、さらに基板ホルダーの回転により基板を自転させることにより、各基板間及び同一基板面内において均一な膜厚及び膜質を得ることができる。
【0004】
このような気相成長装置におけるサセプタ保持機構としては、特許文献1に示すように、サセプタを支持する架台、該架台の上面に設けられたベアリング溝、サセプタの下面に設けられたベアリング溝、及びベアリング溝に挟持されたベアリングボールを備えたものが挙げられる。また、サセプタが外部からの回転駆動力の伝達を受けるための構造としては、特許文献1〜4に示すように、サセプタの外周に設けられた歯車を介して伝達する方法を備えたものが挙げられる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−175992号公報
【特許文献2】特開2010−219225号公報
【特許文献3】特開2010−232624号公報
【特許文献4】特開2011−18895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
気相成長装置においては、気相成長が完了し基板を回収する際には、気相成長装置からサセプタを取り外して別の場所で冷却した後、サセプタから基板を取り外して回収することが多い。これは新規の基板を搭載したサセプタを、すぐに気相成長装置に取り付けて効率よく気相成長を行なうためである。しかしながら、特許文献1のようなベアリングボールを利用したサセプタ保持機構を備えた気相成長装置では、サセプタの気相成長装置からの取り外し時及びサセプタの気相成長装置への取り付け時に、ベアリングボールがベアリング溝から脱落する虞があるため、その際には精度の高い操作が要求される。尚、特許文献1〜4のようなサセプタの外周に設けられた歯車を介して回転駆動力を伝達する構成を備えた気相成長装置の場合には、さらに歯車を噛み合せる操作を行なう必要もある。
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、基板を保持する基板ホルダー、該基板ホルダーを回転自在に保持するサセプタ、及び該サセプタを回転自在に保持するサセプタ保持機構が備えられた気相成長装置において、基板の入れ替え時に、サセプタの気相成長装置からの取り外し及び気相成長装置への取り付けを容易にできる気相成長装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、このような課題を解決すべく鋭意検討した結果、前述のような気相成長装置において、該サセプタを、基板ホルダーを保持する円盤状部材、及びベアリング溝(サセプタ保持機構の一部)を有するリング状部材からなる構成とし、該円盤状部材と該リング状部材が容易に分離できるように設定することにより、基板の入れ替え時に、サセプタ全体ではなく、ベアリング溝を有しない円盤状部材の取り付け取り外しのみを行なえばよいことを見出し、本発明の気相成長装置に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、基板を保持する基板ホルダー、該基板ホルダーを回転自在に保持するサセプタ、及び該サセプタを回転自在に保持するサセプタ保持機構が備えられた気相成長装置であって、サセプタが、基板ホルダーを保持する円盤状部材、及び円盤状部材から分離できるリング状部材を有し、該リング状部材にサセプタ保持機構の一部が設けられていることを特徴とする気相成長装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気相成長装置は、基板の入れ替え時に、ベアリングボールがベアリング溝から脱落する虞がないため、精度の高い操作が要求されず、サセプタ(基板ホルダーを保持する円盤状部材)の気相成長装置からの取り外し及び気相成長装置への取り付けを容易に行なうことができる。その結果、基板の入れ替え時間を短縮することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、基板を保持する基板ホルダー、該基板ホルダーを回転自在に保持するサセプタ、及び該サセプタを回転自在に保持するサセプタ保持機構が備えられた気相成長装置に適用される。以下、本発明の気相成長装置を、図1〜図7に基づいて詳細に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。尚、図1は、本発明の気相成長装置の一例を示す垂直断面構成図であり、図2〜4は、図1に示した気相成長装置のベアリング溝近辺の構成例を示す部分拡大図(A部)であり、図5は、図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面B−B)であり、図6は、図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面C−C)であり、図7は、本発明の気相成長装置に用いられるサセプタの一例を示す上面図である。
【0012】
本発明は、図1に示すように、基板1を保持する基板ホルダー2、該基板ホルダー2を回転自在に保持するサセプタ3、及び該サセプタ3を回転自在に保持するサセプタ保持機構が備えられた気相成長装置であって、図2に示すように、サセプタ3が、基板ホルダーを保持する円盤状部材21、及び円盤状部材21から分離できるリング状部材22を有し、該リング状部材にサセプタ保持機構の一部(図2においてはベアリング溝18)が設けられている気相成長装置である。
【0013】
尚、本発明における前記のようなサセプタの構成は、反応容器の中央部に原料ガス導入部が設けられた図1に示すような気相成長装置のほか、特開2002−261021号公報に記載されているような反応容器の端部に原料ガス導入部が設けられた気相成長装置(横型気相成長装置)等にも適用することができる。また、本発明のサセプタの構成は、サセプタの外周に設けられた歯車を介してサセプタを回転させる図2及び3に示すような気相成長装置のほか、反応容器の中央部に設けられた回転駆動軸によりサセプタを回転させる気相成長装置にも適用することができる。
【0014】
また、本発明におけるサセプタ保持機構は、図2〜4に示すように、サセプタ3を支持する架台20、該架台20の上面に設けられたベアリング溝18、リング状部材の下面に設けられたベアリング溝18、及びこれらのベアリング溝に挟持されるベアリングボール17を含む部材から構成される。
【0015】
以下、本発明の気相成長装置の細部について説明する。
図1に示すように、基板1は、成長面を下向きにした状態で基板ホルダー2により保持されている。基板ホルダー2は、直径が2インチ、3インチ、4インチ又は6インチの基板を1枚保持できるが、特にこれらの大きさの基板に限定されない。ここで、ヒータ5からの熱を基板1へ均一に伝達するために、均熱板16を設けてもよい。サセプタ3は、サセプタの対面4とともに反応炉6を形成し、反応炉6は、反応容器19に収められ密封されている。サセプタ3は、6〜15個の基板ホルダー2を保持できることが好ましいが、特に限定されない。反応炉6において、サセプタ3とサセプタの対面4の間隙は、8mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましいが、特にこれらの大きさの間隙に限定されない。
【0016】
本発明において、サセプタの構成は、(1)サセプタの外周に設けられた歯車を介してサセプタを回転させる気相成長装置、(2)反応容器の中央部に設けられた回転駆動軸によりサセプタを回転させる気相成長装置により異なった構成となる。すなわち、前記(1)の気相成長装置においては、図2に示すように、基板ホルダーを保持する円盤状部材21、ベアリング溝18を有するリング状部材22、及び歯車25からなる構成、前記(2)の気相成長装置においては、図4に示すように、基板ホルダーを保持する円盤状部材21、及びベアリング溝18を有するリング状部材22からなる構成となる。また、前記(1)の気相成長装置においては、図3に示すように、リング状部材22を、互いに分離できるベアリング溝部23と歯車部24からなる構成とすることができる。
【0017】
円盤状部材21は、通常はリング状部材22の上に容易に分離できるように設置される。例えば図2〜4に示すように、嵌め合わせによる構造とし、基板の入れ替え時に、円盤状部材21のリング状部材22からの取り外し、及び円盤状部材21のリング状部材22への取り付けが容易にできるようにされる。さらに詳細には、円盤状部材21は、ベアリング溝部23の内周下部に設けた突出部で支持されるようにベアリング溝部23と嵌め合される。このような構成とすることにより、基板の入れ替え時に、ベアリングボール溝18の箇所でサセプタ3が架台20から分離されることがなくなるので、ベアリングボール17がベアリング溝18から脱落することを防止できる。
【0018】
尚、本発明における円盤状部材21は、前記のような機能を発揮できる形態であれば特に形状等に限定はなく、例えば、基板ホルダーを挿入するための孔、中央部の孔を設けることができるほか、円盤状に類似する形状とすることができる。また、リング状部材22も前記と同様に、リングに類似する形状とすることができる。
【0019】
また、図3に示すような構成において、リング状部材22は、ベアリング溝部23の外周下部に設けた突出部の上面と歯車部24の内周上部に設けた突出部の下面を重ね合せることにより、ベアリング溝部23を歯車部24に嵌合して形成される。ベアリング溝部23を歯車部24に嵌合したときに、ベアリング溝部23及び歯車部24の間には半径方向の隙間が形成されてもよい。ベアリング溝部23及び歯車部24は任意の結合手段で結合されてよく、結合手段としては、螺旋、ボルト及びナット、ピン、嵌め合わせ等が挙げられるが、これらの結合手段に限定されることはない。例えば、ベアリング溝部23及び歯車部24を螺旋26で固定する場合には、螺旋26を通す貫通穴を歯車部24に設け、螺旋26を固定する螺旋穴をベアリング溝部23に設け、螺旋26を貫通穴に通してから螺旋穴に固定する。歯車部24の外周には歯車25が設けられ、サセプタの歯車25はサセプタ回転板15の外周に設けられた歯車と噛み合わされ、回転駆動力の伝達を受ける。サセプタ3は前述のサセプタ保持機構により回転自在に保持されているので、サセプタ回転板15からの回転駆動力により回転する。尚、本発明の気相成長装置には、円盤状部材21をリング状部材22から容易に分離させることができる昇降機構28を設けることができる。
【0020】
円盤状部材21は、直径300〜1000mm、厚さ5〜30mmの円盤状であることが好ましいが、特に限定されることはない。リング状部材22を構成するベアリング溝部23の内周円の半径は、円盤状部材21の半径と等しいか、0〜10mm大きい(突出部を除く)ことが好ましい。ベアリング溝部23のリングの半径方向の幅は、10〜50mm(突出部を除く)であることが好ましく、厚さ5〜30mmであることが好ましい。歯車部24の内周円の半径は、ベアリング溝部23の外周円の半径より5〜40mm(突出部を除く)大きいことが好ましく、歯車部24のリングの半径方向の幅は、10〜50mm(突出部を除く)であることが好ましく、ベアリング溝部23と同等の厚さであることが好ましい。各突出部は、任意の箇所で均等に半径方向に5〜30mm突出し、厚さ2〜15mmであることが好ましいが、この大きさ及び厚さに限定されることはない。ベアリング溝部23を歯車部24に嵌合したときに生じる半径方向の隙間の大きさは、任意の場所において均等に1〜10mmがより好ましいが、この大きさに限定されることはない。尚、ベアリング17は、直径3〜10mmの球形であることが好ましい。ベアリング溝18の鉛直方向の断面は、半円形、三角形又は四角形であることが好ましいが、特に限定されない。
【0021】
サセプタ回転駆動器13からの回転駆動力は、磁性流体シールを用いて反応容器19に対して回転自在に封止されたサセプタ回転駆動軸14に伝達される。サセプタ回転板15はサセプタ回転駆動軸14のサセプタ側先端に固定され、サセプタ回転板15の外周に設けられた歯車とサセプタ3の歯車25が噛み合わさることによりサセプタ3に回転駆動力が伝達される。これによりサセプタ3が回転し、サセプタ3上に配置された基板ホルダー2は公転する。気相成長反応中は、基板ホルダー2を常時公転させることが好ましい。
サセプタ回転駆動軸14は、直径10〜50mmの円柱状であることが好ましいが、特に限定されない。サセプタ回転板15は、直径50〜200mm、厚さ3〜20mmの円盤状を有することが好ましいが、特に限定されることはない。尚、サセプタ回転板15の歯車およびサセプタ3の歯車25は、平歯車構造を有することが好ましいが、特に限定されることはない。
【0022】
基板1は公転に加えて自転によって回転されてもよい。基板ホルダー2は、基板ホルダー2の下面及び円盤状部材21の上面に刻まれたベアリング溝18により挟持されたベアリングボール17を介して、円盤状部材21の上に回転自在に保持される。基板ホルダー回転駆動器9からの回転駆動力は、まず、磁性流体シールを用いて反応容器19に対して回転自在に封止された基板ホルダー回転駆動軸10に伝達される。基板ホルダー回転駆動軸10の基板ホルダー回転板側の先端には複数本のツメ11が設けられており、ツメ11が、基板ホルダー回転板12の上面に設けられた差込口29に差し込まれることにより脱着可能に噛み合わさり、回転駆動力が基板ホルダー回転板12に伝達される。基板ホルダー回転板12は、基板ホルダー回転板12の下面及び円盤状部材21の上面に刻まれたベアリング溝18により挟持されたベアリングボール17を介して、円盤状部材21により回転自在に保持されている。基板ホルダー2は、原料ガス導入部7の周囲に設けられており、基板ホルダー回転板12の外周に設けられた歯車と各基板ホルダー2の外周に設けられた歯車が噛み合わさることにより各基板ホルダー2に回転駆動力が伝達され、各基板ホルダー2は自転により回転する。
【0023】
基板ホルダー回転板12は、直径100〜500mm、厚さ3〜20mmの円盤状であることが好ましいが、特に限定されない。基板ホルダー回転駆動軸10は、直径10〜50mmの円柱状であることが好ましいが、特に限定されない。尚、基板ホルダー回転板12の歯車および基板ホルダー2の歯車は、平歯車構造を有することが好ましいが、特に限定されることはない。
【0024】
反応炉6の中心部には原料ガス導入部7が設けられ、原料ガスは、原料ガス導入部7から放射状に吹き出し、基板1の成長面に対して水平に供給される。気相成長反応は、反応炉6において、ヒータ5により基板1を加熱しながら、原料ガス導入部7から原料ガスを供給することにより行われ、基板1の成長面には結晶膜が形成される。気相成長反応に用いられた原料ガスは、そのまま反応ガスとして反応ガス排出部8から排出される。気相成長反応中、基板ホルダー2は、サセプタ3の回転により常時公転させることが好ましく、サセプタ3及び基板ホルダー2の回転により常時自転及び公転させることがより好ましい。サセプタ3及び基板ホルダー2の回転方向及び回転速度は、それぞれ、サセプタ回転駆動器13及び基板ホルダー回転駆動器9の回転方向及び回転速度を変化させることにより、任意に設定することができる。各基板間において均一な膜厚及び膜質を得るためには、各基板ホルダー2を反応炉の中心に対して同一円周上に配置して、原料ガス導入部からの距離を等しくすることが好ましいが、特に限定されない。
【0025】
基板ホルダー2、基板ホルダー回転板12、サセプタ回転板15、円盤状部材21及びリング状部材22は、カーボン系材料又はカーボン系材料をセラミック材料でコーティングしたものが好ましいが、特に限定されない。基板ホルダー回転駆動軸10、ツメ11及びサセプタ回転駆動軸14は、金属、合金、金属酸化物、カーボン系材料、セラミック系材料、カーボン系材料をセラミック材料でコーティングしたもの、又はこれらの組み合わせが好ましいが、特に限定されない。ベアリング17は、セラミック材料であることが好ましいが、特に限定されない。ここで、合金の例には、ステンレス又はインコネルがあるが、特に限定されない。カーボン系材料の例には、カーボン、パイオロリティックグラファイト(PG)、グラッシカーボン(GC)等があるが、特に限定されない。セラミックス系材料の例には、アルミナ、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)、窒化ホウ素(BN)等があるが、特に限定されない。
【0026】
特に、基板ホルダー2、基板ホルダー回転板12、サセプタ回転板15、円盤状部材21及びリング状部材22は、SiCコートカーボン、ベアリング17は、アルミナであることが好ましく、基板ホルダー回転駆動軸10は、基板ホルダー回転駆動器側部分をインコネル製とし、基板ホルダー回転板側部分をSiCコートカーボン製とし、螺旋等で両者を固定することにより一体化したものが好ましく、ツメ11は、SiCコートカーボン製で、基板ホルダー回転駆動軸の基板ホルダー回転板側部分の端面にあらかじめ一体として形成されていることが好ましい。サセプタ回転駆動軸14は、ステンレス製であることが好ましい。
尚、図1〜7においては、本発明の気相成長装置の一例(フェイスダウン型)を示したが、本発明は、フェイスアップ型の気相成長装置にも適用することができる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
(気相成長装置の製作)
図1、図3、図5〜7に示すような気相成長装置を製作した。直径3インチのサファイア基板を1枚保持可能である基板ホルダー2(SiCコートカーボン製)8個と、基板ホルダー回転板12(SiCコートカーボン製、直径200mm、厚さ15mm)を、円盤状部材21(SiCコートカーボン製、直径600mm、厚さ20mm、3インチの基板を8枚保持可能)により、ベアリング17を介して保持し、基板ホルダー2と基板ホルダー回転板12の平歯車を噛み合わせた。
【0029】
リング状部材22は、SiCコートカーボン製であり、内周円の直径が600mm(突出部を除く)、外周円の直径が640mm(突出部を除く)、厚さが20mmのリング状のベアリング溝部23と、内周円の直径が680mm(突出部を除く)、外周円の直径が720mm、厚さが20mmのリング状の歯車部24から構成され、ベアリング溝部23の外周下部及び内周下部、並びに歯車部24の内周上部には、それぞれ、任意の場所で均等に半径方向に15mm、厚さ10mmの突出部を設けた。ベアリング溝部23の外周下部に設けた突出部の上面と歯車部24の内周上部に設けた突出部の下面を重ね合わせることにより、ベアリング溝部23を歯車部24に嵌合してリング状部材22を形成した。このとき、ベアリング溝部23と歯車部24の間の任意の場所で均等に、半径方向に5mmの隙間が形成された。さらに、歯車部24の突出部に直径8mmの貫通穴を角度30°の間隔で12個設け、直径5mmのカーボン製の螺旋26をこの貫通穴に通してから、リング状部材23外周下部の突出部に設けた螺旋穴に固定することにより、歯車部24をベアリング溝部23に固定した。さらに、円盤状部材21を、ベアリング溝部23の内周下部に設けた突出部で支持するようにリング状部材22に嵌合し、サセプタ3を形成した。
【0030】
サセプタ回転駆動軸14は、直径20mm、長さ300mmのステンレス製とし、サセプタ回転板15は、直径100mm、厚さ20mmのSiCコートカーボン製とし、カーボン製の螺旋でサセプタ回転駆動軸14のサセプタ側先端に固定した。また、サセプタの対面4、及び基台20はカーボン製とし、反応容器19はステンレス製とした。
【0031】
(基板の設置)
このように製作された気相成長装置において、基板ホルダー2を保持したままの円盤状部材21を、昇降機構28を用いてリング状部材22から分離させて反応容器19から取り出した。ベアリング溝部23及び架台20の間のベアリングボール17は挟持された状態のまま維持され、歯車部24の噛み合わせは噛み合わされた状態のまま維持されていた。基板1(直径3インチ、サファイア)を基板ホルダー2に設置し、基板1及び基板ホルダー2を保持した円盤状部材21を昇降機構28によりリング状部材22に嵌合して設置し、サセプタ3を形成した。
【0032】
(気相成長実験)
このようにして基板を設置した気相成長装置を用いて、基板1の表面に窒化ガリウム(GaN)を成長させた。まず、基板ホルダー回転駆動器9及びサセプタ回転駆動器13を稼働させて、基板の自転(10rpm)及び公転(1rpm)を開始した。なお、すべての成長が終了するまで、基板の自転及び公転をこれらの速度で継続し、反応容器内を大気圧に保った。次に、原料ガス導入部から水素を流しながら基板の温度を1050℃まで昇温させ、基板のクリーニングを行った。続いて、ヒータ温度を510℃まで下げて、原料ガスとしてトリメチルガリウム(TMG)とアンモニア、キャリアガスとして水素を用いて、基板上にGaNからなる膜厚20μmのバッファー層の成長を行い、バッファー層成長後に、TMGのみ供給を停止し、ヒータ温度を1050℃まで上昇させた。その後、原料ガス導入部から、TMGとアンモニアの他に、キャリアガスとして水素と窒素を供給して、アンドープGaNの成長を1時間行った。
【0033】
(円盤状部材の取り外し)
以上のようにGaNを成長させた基板を回収するために、基板1及び基板ホルダー2を保持したままの円盤状部材21を、昇降機構28を用いてリング状部材22から分離させて反応容器19から取り出した。リング状部材22及び架台20の間のベアリングボール17は挟持された状態のまま維持され、リング状部材22の歯車部24の噛み合わせは噛み合わされた状態のまま維持されていた。基板1を回収したところ、GaNの成長が確認された。
このように、本発明の気相成長装置により、基板を保持する円盤状部材の気相成長装置からの取り外し及び気相成長装置への取り付けを容易に行なうことができた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、熱CVD法等のための気相成長装置として好適であり、例えば、青色又は紫外の発光ダイオード又はレーザーダイオード等の製造に用いられるIII族窒化物半導体の気相成長装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の気相成長装置の一例を示す垂直断面構成図
【図2】図1に示した気相成長装置のベアリング溝近辺の構成例を示す部分拡大図(A部)
【図3】図1に示した気相成長装置のベアリング溝近辺の構成例を示す部分拡大図(A部)
【図4】図1に示した気相成長装置のベアリング溝近辺の構成例を示す部分拡大図(A部)
【図5】図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面B−B)である。
【図6】図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面C−C)である。
【図7】本発明の気相成長装置に用いられるサセプタの一例を示す上面図である
【符号の説明】
【0036】
1 基板
2 基板ホルダー
3 サセプタ
4 サセプタの対面
5 ヒータ
6 反応炉
7 原料ガス導入部
8 反応ガス排出部
9 基板ホルダー回転駆動器
10 基板ホルダー回転駆動軸
11 ツメ
12 基板ホルダー回転板
13 サセプタ回転駆動器
14 サセプタ回転駆動軸
15 サセプタ回転板
16 均熱板
17 ベアリングボール
18 ベアリング溝
19 反応容器
20 架台
21 円盤状部材
22 リング状部材
23 ベアリング溝部
24 歯車部
25 歯車
26 螺旋
27 蛇腹管
28 昇降機構
29 差込口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板ホルダー、該基板ホルダーを回転自在に保持するサセプタ、及び該サセプタを回転自在に保持するサセプタ保持機構が備えられた気相成長装置であって、サセプタが、基板ホルダーを保持する円盤状部材、及び円盤状部材から分離できるリング状部材を有し、該リング状部材にサセプタ保持機構の一部が設けられていることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
サセプタ保持機構が、サセプタを支持する架台、該架台の上面に設けられたベアリング溝、リング状部材の下面に設けられたベアリング溝、及びベアリング溝に挟持されるベアリングボールを含む部材から構成される請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
リング状部材に設けられたサセプタ保持機構の一部がベアリング溝である請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項4】
リング状部材が、外周に外部からの回転駆動力の伝達を受ける歯車が設けられ、下面にベアリング溝が設けられている請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項5】
リング状部材の歯車部とベアリング溝部が分離できる請求項4に記載の気相成長装置。
【請求項6】
リング状部材の歯車部とベアリング溝部が螺旋により結合された請求項5に記載の気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−16549(P2013−16549A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146482(P2011−146482)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000229601)日本パイオニクス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】