説明

液晶表示パネルおよびその製造方法

【課題】従来よりも簡単なプロセスで光配向処理が可能な液晶表示パネルの製造方法およびそのような製造方法によって製造され得る液晶表示パネルを提供する。
【解決手段】 ガラス基板11を用意する工程と、ガラス基板11の第1主面に第1方位に延びる埋め込み配線12a、12bを形成する工程と、埋め込み配線が形成されたガラス基板11の第1主面の上に光配向膜18を形成する工程と、第2主面側から第1方位に略直交する第2方位に傾斜した方向から光配向膜の第1領域18A1または18A2にのみ選択的に直線偏光を照射することによって、光配向膜の第1領域のプレチルト方向を規定する工程と、配向膜28を有するガラス基板21を用意する工程と、誘電異方性が負の液晶材料を含む液晶層30を間に介して光配向膜18と配向膜28とが互いに対向するようにガラス基板11とガラス基板21とが貼り合わせられた液晶セルを作製する工程とを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示パネルの製造方法において、液晶分子のプレチルト方向を設定する方法として光配向法が注目されている(例えば、非特許文献1)。光配向法は、光配向膜に偏光を照射することによってプレチルト方向を設定するものである。光配向法は、従来のラビング法と異なり非接触プロセスなので、静電気の発生等の問題が生じないと言う利点を有している。
【0003】
一方、液晶表示パネルの視野角特性を改善する技術として、マルチドメイン技術が利用されている。マルチドメイン技術とは、1つの画素内に、液晶分子の配向方向が互いに異なる複数のドメイン(液晶ドメインと同意)を形成し、複数のドメインの視野角特性を平均化することによって、画素の視野角特性を改善するというものである。
【0004】
光配向法を用いて、画素内に複数のドメインを形成するためには、光配向処理を複数回行う必要があり、プロセスが煩雑化する。例えば、フォトマスクを用いて画素内の一部の領域にのみ選択的に光を照射することによって所定のプレチルト方向を付与した後、他のフォトマスクを用いて画素内の他の一部の領域にのみ選択的に光を照射することによって他のプレチルト方向を付与することになる。従って、複数のフォトマスクを用意する必要が生じるとともに、フォトマスクのアライメント精度によってドメインが形成される位置がばらつくという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1は、液晶表示パネルを構成する基板上にブロック(スペーサとして利用され得る)を形成し、このブロックをフォトマスクとして利用することを特徴とする光配向法を開示している。
【0006】
特許文献1に記載の光配向法を用いると、フォトマスクの枚数を減らすことができるとともに、基板上に形成されたブロックに対して自己整合的に光配向処理を行うことができるという利点が得られる。
【特許文献1】特開2001−296526号公報
【特許文献2】特開2003−66864号公報
【非特許文献1】「液晶の光配向」、市村國宏著、米田出版、2007年3月発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いると、基板上に形成したブロックが液晶分子の配向を乱すという問題がある。また、ブロックが液晶材料の注入を阻害するので注入に長時間を要する等の問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、従来よりも簡単なプロセスで光配向処理が可能な液晶表示パネルの製造方法およびそのような製造方法によって製造され得る液晶表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液晶表示パネルの製造方法は、第1および第2主面を有する第1のガラス基板を用意する工程(a)と、前記第1のガラス基板の前記第1主面に、第1方位に延びる埋め込み配線を形成する工程(b)と、前記埋め込み配線が形成された前記第1のガラス基板の前記第1主面の上に光配向膜を形成する工程(c)と、前記第2主面側から、前記第1方位に略直交する第2方位に傾斜した方向から前記光配向膜の第1領域にのみ選択的に直線偏光を照射することによって、前記光配向膜の前記第1領域のプレチルト方向を規定する工程(d)と、配向膜を有する第2のガラス基板を用意する工程(e)と、誘電異方性が負のネマチック液晶材料を含む液晶層を間に介して前記光配向膜と前記配向膜とが互いに対向するように前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とが貼り合わせられた液晶セルを作製する工程(f)とを包含する。なお、「方位」は平面内の方向を指し、極角(仰角)成分を含まない。
【0010】
ある実施形態において、前記第2主面側から、前記第2方位と略180°異なる第3方位に傾斜した方向から前記光配向膜の前記第1領域に隣接する第2領域に直線偏光を照射することによって、前記光配向膜の前記第2領域のプレチルト方向を前記第1領域のプレチルト方向と略180°異なる方向に規定する工程(g)をさらに包含する。
【0011】
ある実施形態において、前記工程(d)において、前記第1領域のプレチルト方向を前記第2方位に規定する。
【0012】
ある実施形態において、前記配向膜として、プレチルト方向を規定しない垂直配向膜を用いる。
【0013】
ある実施形態において、前記第1のガラス基板の前記第1主面に、ゲートバスライン、ソースバスラインおよびTFTを形成する工程をさらに含み、前記埋め込み配線は前記ゲートバスラインである。ゲートバスラインと平行に延びるCSバスラインを形成する工程をさらに包含し、前記埋め込み配線はCSバスラインを含んでもよい。
【0014】
本発明の液晶表示パネルは、行および列を有するマトリクス状に配列された複数の画素と、TFT基板と、対向基板と、前記TFT基板と前記対向基板との間に設けられた、誘電異方性が負のネマチック液晶材料を含む液晶層とを有し、前記TFT基板は、ガラス基板と、前記ガラス基板に形成されたゲートバスラインと、ソースバスラインと、前記ゲートバスラインおよび前記ソースバスラインに接続されたTFTと、光配向膜とを有し、前記対向基板は、プレチルト方向を規定しない垂直配向膜を有し、前記ゲートバスラインは前記ガラス基板に埋設されており、前記液晶層は前記複数の画素のそれぞれにおいて、前記ゲートバスラインに平行な境界で分割された2つのドメインを有し、前記2つのドメイン内の前記光配向膜の近傍の液晶分子の配向方位は前記ゲートバスラインと略直交し、且つ、互いに略180°異なる。
【0015】
ある実施形態において、前記2つのドメインの、前記光配向膜に接している液晶分子は、電圧無印加時において、前記境界に向かって前記光配向膜から立ち上がっている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、TFT基板に形成された埋め込み配線をフォトマスクとして用いて光配向処理を行うことができるので、簡単なプロセスで光配向処理ができる。また、フォトマスクとして利用される配線は埋め込まれているので、液晶分子の配向を乱さない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明による実施形態を説明するが、本発明は例示する実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1に、本発明による実施形態の液晶表示パネル100の構造を模式的に示す。図1には、液晶表示パネル100の行および列を有するマトリスク状に配列された複数の画素の内の1つの画素に対応する部分の構造を模式的に示す。図1(a)は模式的な平面図であり、図1(b)は図1(a)中のB−B’線に沿った模式的な断面図である。
【0019】
液晶表示パネル100は、TFT基板10と、対向基板20と、TFT基板10と対向基板20との間に設けられた、誘電異方性が負のネマチック液晶材料を含む液晶層30とを有する。
【0020】
TFT基板10は、ガラス基板11と、ガラス基板11に形成されたゲートバスライン12aと、ソースバスライン(不図示)と、ゲートバスライン12aおよびソースバスラインに接続されたTFT(不図示)と、画素電極15(副画素電極15aおよび15b)と、光配向膜18とを有している。
【0021】
TFTは、ゲートバスライン12aと同じ導電層から形成されたゲート電極(不図示)と、ゲート電極を覆うゲート絶縁膜13と、ゲート絶縁膜13上にゲート電極と対向するように形成された半導体層(不図示)と、ソースバスラインと同じ導電層から形成されたソース電極およびドレイン電極(いずれも不図示)とを有しており、これらはパッシベーション膜14で覆われている。画素電極15はパッシベーション膜14上に形成されており、コンタクトホール(不図示)においてドレイン電極と接続されている。
【0022】
さらに、TFT基板10は、ゲートバスライン12aと同じ導電膜で形成されたCSバスライン12bを有している。CSバスライン12bは、良く知られているように、画素を構成する液晶容量と電気的に並列に接続される補助容量(Storage Capacitor)の一方の電極に接続されている。また、CSバスライン12bはゲートバスライン12aと平行(行方向)に延びるように設けられている。
【0023】
ここで例示する液晶表示パネル100においては、1つの画素が2つの副画素(図1(a)中、ゲートバスライン12aの上側と下側)に分割されている。具体的には、画素電極15が2つの副画素電極15aと副画素電極15bとで構成されており、副画素電極15aおよび15bはそれぞれ対向電極25と液晶層30とで副画素ごとに液晶容量を形成する。ソースバスラインは2つの副画素に共通であり、TFTは2つの副画素のそれぞれに対応して設けられている。2つのTFTのゲートは共通のゲートバスライン12aに接続されている。
【0024】
CSバスライン12bは、2つの副画素のそれぞれに対応して設けられており、TFTがオフにされた後にCSバスライン12bから供給される電圧(例えば振動電圧)によって、2つの副画素の液晶容量に印加される実効電圧を異ならせるように構成されている(例えば特開2004−62146号公報)。このように、1つの画素が表示すべき輝度を2以上の副画素の輝度の平均として表示する構造(「マルチ画素構造」と言われることがある)は、視野角特性の観点から好ましいが、本発明の実施形態の液晶表示パネルは、これに限定されない。
【0025】
対向基板20は、ガラス基板21と、カラーフィルタ層22と、対向電極25と、配向膜28とを有している。ここで、配向膜28は、プレチルト方向を規定しない垂直配向膜である。カラーフィルタ層22は、ブラックマトリクス23を含む。ブラックマトリクス23は、液晶表示パネル100の表示面法線からみたときにTFT基板10のソースバスラインおよびTFTと重なるように設けられている。
【0026】
ここで、TFT基板10が有するゲートバスライン12aおよびCSバスライン12bは、ガラス基板11に埋設されている。このガラス基板11に埋設されたゲートバスライン12aおよびCSバスライン12b(これらを「埋め込み配線」ということがある。)をフォトマスクとして利用することによって、光配向膜18に光配向処理が成されている。光配向処理の詳細は後述する。
【0027】
図1(a)に示すように、光配向処理が施された光配向膜18によって、各副画素内に2つのドメイン18A1と18B1およびドメイン18A2、18B2が形成されている(配向分割されているということもある)。各副画素が有する2つのドメイン間の境界は、何れもゲートバスライン12a(およびCSバスライン12b)に平行である。
【0028】
また、2つのドメイン(18A1と18B1または18A2、18B2)内の光配向膜18の近傍の液晶分子30aの配向方位(プレチルト方向)は、図1(a)中に、コーン30Aおよび30Bで示すように、ゲートバスライン12aと略直交し、且つ、互いに略180°異なっている。なお、コーン30Aおよび30Bのそれぞれは、対向基板20側から液晶層30を観察した際に、液晶分子30aの観察者側に近い端をコーンの底面として図示している。従って、液晶表示パネル100における各副画素が有する2つのドメインは境界に向かって光配向膜18から立ち上がっている。
【0029】
なお、対向基板20が有する配向膜28は、配向処理が施されていない垂直配向膜であり、図1(b)に模式的に示したように、配向膜28の近傍の液晶分子30aは配向膜28の表面にほぼ垂直に配向する。但し、液晶分子30aは配向が連続になるように配向するので、配向膜28の近傍の液晶分子30aは対向する光配向膜18による液晶分子30aの配向方位と整合するように配向する。従って、各ドメイン18A1、18B1、18A2、18B2の液晶分子30aは、液晶層30に電圧が印加されると、それぞれコーン30A、30Bで示された方位に倒れる。コーン30A、30Bはそれぞれ各ドメインのディレクタの方位をも示している。
【0030】
液晶表示パネル100は、図1(a)に示したTFT基板10、対向基板20および液晶層30で構成される液晶セルの両側に、偏光板および位相差板を有している。図1(b)においてTFT基板10および対向基板20を挟むように一対の偏光板が配置されている。一対の偏光板は、偏光軸(透過軸)が図1(a)に一対の両矢印(破線は下側偏光板の偏光軸)で示したように、互いに直交するように(クロスニコルに)配置されている。各ドメインのディレクタの方位は、一対の偏光板の偏光軸が成す角を二等分する。位相差板の構成は、例えば、TFT基板10と下側の偏光板との間に、液晶層30側から順に、Cプレート(面法線方向に進相軸を有する負の一軸性位相差板)とTAC層と有している。また、対向基板20と上側の偏光板との間に、液晶層30側から順に、Aプレート(面内に遅相軸を有する正の一軸性位相差板)とTAC層と有している。
【0031】
液晶表示パネル100は例えば以下のようにして製造することができる。
【0032】
まず、ガラス基板11を用意し、ガラス基板11の一方の主面に、公知の方法で、ゲートバスライン、ソースバスライン、CSバスラインおよびTFTなどの回路要素を形成する。このとき、第1方位に延びる埋め込み配線を形成する。ここでは、行方向に延びるゲートバスライン12aおよびCSバスライン12bを埋め込み配線とする。埋め込み配線は、例えば特許文献2に記載されている方法で形成することができる。なお、ゲートバスラインには一般にソースバスラインよりも抵抗が低いことが要求されるので、ゲートバスラインはソースバスラインよりも幅が広い。ゲートバスラインを埋め込み配線とすると、厚さを大きくし、幅を狭くできるので、画素の開口率を広くできるという利点も得られる。
【0033】
このようにして得られたTFT基板10のほぼ全面を覆うように光配向膜18を形成し、光配向処理を行う。本実施形態の液晶表示パネルの製造方法の特徴の一つは、光配向処理をTFT基板10の裏面(光配向膜18が形成された主面と反対側)から光照射することによって行うことにある。
【0034】
TFT基板10の光配向膜18に対する光配向処理は以下のようにして行うことが出来る。図2(a)および(b)を参照して、光配向処理の方法を説明する。
【0035】
図2(a)に模式的に示すように、光配向膜18に対してガラス基板11を介して裏面から光照射を行う。
【0036】
光の入射角θは、光配向膜18の法線に対して、例えば約45°とする。光の入射方位は、ゲートバスライン12aおよびCSバスライン12bが延びる方向(行方向)に直交する方位(列方向)である。ガラス基板11側から照射される光は埋め込み配線であるゲートバスライン12aおよびCSバスライン12bに遮られるので、ゲートバスライン12aとCSバスライン12bとの間の領域(副画素)の半分の領域だけが照射される。図2(a)に示した例では、副画素内の光配向膜18の左半分だけが選択的に光照射される。この後、ゲートバスライン12aおよびCSバスライン12bの反対側(図2(a)中左側)から光照射を行うことによって、副画素内の光配向膜18の右半分だけが選択的に光照射される。このようにして、副画素内の光配向膜18に、プレチルト方向が略180°異なる2つの領域を形成することができる。もちろん、必要に応じて一方の領域にのみ光配向処理を施してもよい。
【0037】
光配向膜18としては、図2(b)に示すように、直線偏光(紫外線)を照射することによって、入射光線に直交する方向に液晶分子30aをプレチルトさせる配向規制力を発現するものを用いる。このような材料として、例えば、図2(c)に示すような化学構造を有する材料が知られている(非特許文献1)。このような材料を用いると、光配向処理のための光の入射方向にプレチルト方向を規定することができる。すなわち、図2(b)に示すように、図中の右側から光照射することよって、液晶分子30aを右側にプレチルトさせることができる。このとき、直線偏光としてP波(偏光方向が入射面内にある)を用いると、より良好な配向を得ることができる。
【0038】
このようにして得られたTFT基板10と、別途用意した配向膜を有する対向基板20とを用いて液晶セルを作製する。液晶セルは、誘電異方性が負のネマチック液晶材料を含む液晶層を間に介して光配向膜18と配向膜28とが互いに対向するように作製する。液晶材料は、真空注入法を用いて液晶セルを形成してから注入してもよいし、滴下注入法を用いて液晶セルを作製する前に何れか一方の基板に付与してもよい。
【0039】
光配向膜18に対する光配向処理は、上述したように、ガラス基板11の裏面側から行われる。従って、光配向膜18に対する光配向処理は、液晶セルを組み立て後に行ってもよい。また、液晶表示パネルを完成した後に、配向不良が発見された場合、再び光配向処理を行うことによって配向不良を修復することが出来る。但し、再度の光配向処理に際しては偏光板を除去する必要がある。
【0040】
次に、図3を参照して、本発明による実施形態の他の液晶表示パネル200の構造とその製造方法を説明する。
【0041】
図3(a)は、図1(a)と同様、液晶表示パネル200の行および列を有するマトリスク状に配列された複数の画素の内の1つの画素に対応する部分の構造を模式的に示す平面図である。液晶表示パネル200は、各副画素に形成されている2つのドメインの配置が逆であること以外は、液晶表示装置100と同じである。液晶表示装置100と共通する構成要素は共通の参照符号で示し、ここでは説明を省略する。また、液晶表示パネル200の図3(a)中のB−B’線に沿った断面構造は、光配向膜18上の液晶分子30aのプレチルト方向が図1(b)と逆同様であること以外は液晶表示装置100と同じであるので断面図は省略する。
【0042】
図3(a)に示すように、液晶表示パネル200の副画素の2つのドメイン(18A1と18B1または18A2、18B2)内の光配向膜18の近傍の液晶分子30aの配向方位(プレチルト方向)は、図1(a)に示した液晶表示パネル100とは逆であり、2つのドメインは境界に向かって光配向膜18から倒れている。
【0043】
このような配向分割構造は、光配向膜18に対して以下のように光配向処理を施すことによって得ることができる。
【0044】
ここでは、光配向膜18としては、図3(b)に示すように、直線偏光(紫外線)を照射することによって、入射光線に平行な方向に液晶分子30aをプレチルトさせる配向規制力を発現するものを用いる。このような材料として、例えば、図3(c)に示すXとしてシンナメート基またはクマリン基のように二量化する化学構造を有する材料が知られている(非特許文献1)。このような材料を用いると、光配向処理のための光の入射方向と180°異なる方向にプレチルト方向を規定することができる。すなわち、図3(b)に示すように、図中の右側から光照射することよって、液晶分子30aを左側にプレチルトさせることができる。
【0045】
次に、図4を参照して、液晶表示パネル100および200の視角特性を説明する。図4(a)および(b)はそれぞれ液晶表示パネル100および200の透過率の上下方向(図1(a)および図3(a)のB−B’線に沿った面内、時計の文字盤の12時−6時方向)における視角(極角)依存性を示している。即ち、埋め込み配線の延びる行方向に直交する列方向における視角特性を示している。ここでは、画素のサイズが600μ×200μ(列方向長さ×行方向長)で、埋め込み配線の深さを約300μmとし、入射角θを45°で光配向処理を施した場合を例示する。
【0046】
図4(a)と図4(b)との比較から明らかなように、液晶表示パネル100に比較して、液晶表示パネル200では、視角の絶対値が45°を超えると透過率が極端に低下する。視角の絶対値が45°を超えると、2つのドメインのうちの一方を通過する光は埋め込み配線によって遮られるので、表示に寄与しなくなる。ここで図1(b)を参照すると、液晶表示パネル100の液晶層30が有する2つのドメインの内、視角を傾けたときに表示に寄与しなくなる方のドメインの液晶分子30aは傾けた視角方向に向いて傾斜している(コーンの底面が視角方向を向いている)液晶分子30aである。視角方向に向いて傾斜している液晶分子30aの見かけの屈折率異方性は小さいので、表示に対する影響は小さい。図1(a)を参照して説明すると、視角をB−B’線に沿ってB方向に倒していくと、ドメイン18A1および18A2が表示に寄与しなくなる。このときのドメイン18A1および18A2の液晶分子30aの見掛けの屈折率異方性は、ドメイン18B1および18B2の液晶分子30aの見掛けの屈折率異方性よりも小さいので、表示への寄与は小さい。
【0047】
これに対し、液晶表示パネル200では、液晶表示パネル100とは逆に、視角を傾けたときに表示に寄与しなくなる方のドメインの液晶分子30aは傾けた視角方向と逆むきに傾斜している。図3(a)を参照して説明すると、視角をB−B’線に沿ってB方向に倒していくと、ドメイン18B1および18B2が表示に寄与しなくなる。このときドメイン18B1および18B2の液晶分子30aの見掛けの屈折率異方性は、ドメイン18A1および18A2の液晶分子30aの見掛けの屈折率異方性よりも大きいので、表示への寄与が大きい。すなわち、液晶表示パネル200では、視角の絶対値が45°を超えると、表示への寄与が大きい方のドメイン18B1および18B2が表示に寄与しなくなるため、透過率が極端に低下することになる。
【0048】
従って、広い視野角を得るためには液晶表示パネル100が好ましく、狭い視野角を得るためには液晶表示パネル200が好ましいと言える。液晶表示パネルの用途に応じていずれかを選択すればよい。
【0049】
次に、図5(a)〜(d)を参照して、液晶表示パネル100および200の副画素電極の好ましい形状について説明する。図5(a)は液晶表示パネル100’の1つの画素の構造を説明するための平面図であり、図5(b)は液晶表示パネル200’の1つの画素の構造を説明するための平面図である。液晶表示パネル100’および200’は副画素電極の形状以外はそれぞれ液晶表示パネル100および200と同じである。また、図中に、一対の偏光板の偏光軸(透過軸)を一対の両矢印(破線は下側偏光板の偏光軸)で示している。図6、図7についても同じである。
【0050】
図5(a)に示した液晶表示パネル100’の副画素電極15a’が矩形であるのに対し、液晶表示パネル100aの副画素電極15aは図5(c)に示すように2つのドメインの境界線部が膨れた6角形である。図5(a)に示すように、副画素電極15a’が矩形の場合、2つのドメインの境界だけでなく、副画素電極15a’の列方向のエッジに沿って暗線DLが形成される。これは、液晶分子のプレチルト方向が副画素電極15a’のエッジ部に生成される斜め電界(フリンジ電界)の方向に対して90°以上の角度をなす場合に液晶分子の配向が捩じれ、偏光板の吸収軸(偏光軸と直交)と平行に配向する液晶分子が存在するためである。これに対し、副画素電極15aは、列方向に対してαだけ傾斜したエッジを有しており、その結果、上記暗線DLの生成が抑制されている。αは1°以上45°未満であることが好ましい。
【0051】
図5(b)に示した液晶表示パネル200’の副画素電極15c’が矩形であるのに対し、図5(d)に示す副画素電極15cは2つのドメインの境界線部が窪んだ6角形である。図5(b)に示すように、副画素電極15c’が矩形の場合、2つのドメインの境界だけでなく、副画素電極15c’の行方向および列方向のエッジに沿って暗線DLが形成される。これに対し、副画素電極15cは、列方向に対してβだけ傾斜したエッジを有しており、その結果、列方向のエッジに沿った上記暗線DLの生成が抑制されている。βは1°以上45°未満であることが好ましい。
【0052】
図5(c)および(d)に示したように、副画素電極の列方向に延びるエッジ(行方向の幅を規定するエッジ)を列方向に対して1°以上45°未満の角度(α、β)だけ傾斜させると、副画素電極のエッジの近傍の液晶分子は斜め電界の影響を受けるものの、図中にコーンで示した方向にほぼ平行に配向するので、偏光板の吸収軸と平行に配向する液晶分子は存在せず、暗線DLは生成しない。このことはサンプルを試作し、実験的に確かめた。
【0053】
次に、図6(a)〜(c)を参照して、本発明による他の実施形態の液晶表示パネル300Aおよび300Bの構造および製造方法を説明する。
【0054】
液晶表示パネル300Aおよび300Bは、TFT基板側だけでなく対向基板側にも光配向膜を有し、それぞれに対して裏面照射によって光配向処理が施されている。液晶表示パネル300Aおよび300Bが有する対向基板(図1(b)の対向基板20に相当する)のブラックマトリクス23Aは埋め込み構造を有している。この埋め込みブラックマトリクス23Aを用いて対向基板側の光配向膜(図1(b)の配向膜28に相当する)に光配向処理が施されている。
【0055】
図6(a)に示す液晶表示パネル300Aにおいて、TFT基板の光配向膜には、図3(b)に示した方法で埋め込み配線(ゲートバスライン12aおよびCSバスライン12b)をフォトマスクとして利用して光配向処理が施されており、対向基板の光配向膜に対しても、図3(b)に示した方法で、埋め込みブラックマトリクス23Aをフォトマスクとして利用して光配向処理が施されている。その結果、各副画素は4つのドメインに分割されている。各ドメインの液晶層の厚さ方向の中央付近の液晶分子の配向方向は、コーンで示すように、一対の光配向膜によって規定される互いに直交する2つのプレチルト方向を2等分する方向である。
【0056】
一方、図6(b)に示す液晶表示パネル300Bにおいて、TFT基板の光配向膜には、図2(b)に示した方法で埋め込み配線(ゲートバスライン12aおよびCSバスライン12b)をフォトマスクとして利用して光配向処理が施されており、対向基板の光配向膜に対しても、図2(b)に示した方法で、埋め込みブラックマトリクス23Aをフォトマスクとして利用して光配向処理が施されている。その結果、各副画素は4つのドメインに分割されている。
【0057】
液晶表示パネル300Aおよび300Bは、液晶表示パネル100および200と同様に、ガラス基板の裏面から光配向処理を行っているが、液晶表示パネルを完成した後に配向不良が発見された場合、再び光配向処理を行っても配向不良を修復することが出来ない。これは図6(c)に示すように、TFT基板の裏面から光照射を行うと、対向基板側の光配向膜にも光が照射されるため、対向基板側の光配向膜による配向分割が得られなくなってしまうからである。
【0058】
このように対向基板側にも光配向膜を用いる場合には、液晶セルに組み立てる前にそれぞれの光配向膜に対して光配向処理を行う必要がある。さらに、対向基板は通常カラーフィルタ層を有し、カラーフィルタ層は紫外線を吸収するので、対向基板の光配向膜に裏面から光照射する場合には、カラーフィルタ層を有しない構成とする必要がある。もちろん、対向基板にカラーフィルタ層を設けなくとも、フィールドシーケンシャル駆動法を採用するなどによってカラー表示を行うことができる。
【0059】
また、液晶表示パネル300Aおよび300Bは、TFT基板の埋め込み配線に加えて対向基板に埋め込みブラックマトリクス23Aを有するので、視野角が上下方向だけでなく、左右方向においても制限されるので、視野角特性は、液晶表示パネル100および200よりも劣る。
【0060】
次に、図7および図8を参照して、本発明によるさらに他の実施形態の液晶表示パネル400Aおよび400Bの構造および製造方法を説明する。
【0061】
液晶表示パネル400Aおよび400Bは、TFT基板側は先の実施形態と同様に裏面照射によって光配向処理が施されているが、対向基板にはおもて面照射によって光配向処理が施されている。
【0062】
図7(a)に示す液晶表示パネル400Aにおいて、TFT基板の光配向膜には、図3(b)に示した方法で埋め込み配線(ゲートバスライン12aおよびCSバスライン12b)をフォトマスクとして利用して光配向処理が施されている。一方、対向基板の光配向膜には、図8(a)に示す方法で、光配向膜のおもて面から(ガラス基板を介することなく)光を照射する。ブラックマトリクス23は埋め込み構造を有しない。この光配向膜の材料としては、液晶分子30aを入射光線に平行な方向に液晶分子30aをプレチルトさせる配向規制力を発現するものを用いる(図3(c)参照)。対向基板の光配向膜に対する光の照射方向は図7(a)中に破線の矢印で示した方向である。TFT基板の光配向膜によるプレチルト方向と対向基板の光配向膜によるプレチルト方向とが90°異なるので、液晶層の厚さ方向の中央付近の液晶分子のプレチルト方向はこれらを二等分する方向となっている(図7(a)中のコーン参照)。その結果、各副画素にプレチルト方向が180°異なる2つのドメインが形成される。
【0063】
一方、図7(b)に示す液晶表示パネル400Bにおいて、TFT基板の光配向膜には、図2(b)に示した方法で埋め込み配線(ゲートバスライン12aおよびCSバスライン12b)をフォトマスクとして利用して光配向処理が施されている。一方、対向基板の光配向膜には、図8(b)に示す方法で、光配向膜のおもて面から(ガラス基板を介することなく)光を照射する。ブラックマトリクス23は埋め込み構造を有しない。このような材料として、例えば、図2(c)に示すような化学構造を有する材料が知られている(非特許文献1)。このような材料を用いると、光配向処理のための光の入射方向にプレチルト方向を規定することができる(非特許文献1)。対向基板の光配向膜に対する光の照射方向は図7(b)中に破線の矢印で示した方向である。TFT基板の光配向膜によるプレチルト方向と対向基板の光配向膜によるプレチルト方向とが90°異なるので、液晶層の厚さ方向の中央付近の液晶分子のプレチルト方向はこれらを二等分する方向となっている(図7(b)中のコーン参照)。その結果、各副画素にプレチルト方向が180°異なる2つのドメインが形成される。
【0064】
液晶表示パネル400Aおよび400Bは、液晶表示パネル300Aおよび300Bのように、埋め込みブラックマトリクスを有していないので、左右方向の視野角範囲が広い。但し、液晶表示パネル400Aおよび400Bは液晶表示パネル300Aおよび300Bと同様に、液晶表示パネルを完成した後に配向不良が発見された場合、再び光配向処理を行っても配向不良を修復することが出来ない。これは図7(c)に示すように、TFT基板の裏面から光照射を行うと、対向基板側の光配向膜にも光が照射されるため、対向基板側の光配向膜による配向分割が得られなくなってしまうからである。
【0065】
液晶表示パネル400Aおよび400Bの製造プロセスにおいても、液晶セルを組み立てる前にそれぞれの光配向膜に対して光配向処理を行う必要がある。液晶表示パネル300Aおよび300Bでは、対向基板の光配向膜に裏面から光照射するので、カラーフィルタ層を有しない構成とする必要があるが、液晶表示パネル400Aおよび400Bでは、対向基板の光配向膜におもて面から光照射を行うので、カラーフィルタ層を有する構成にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、液晶表示パネルに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)および(b)は本発明による実施形態の液晶表示パネル100の1つの画素を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)中のB−B’線に沿った断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、液晶表示パネル100の製造方法を説明するための図であり、(a)は液晶表示パネル100の模式的な断面図であり、(b)は光配向処理方向を示す模式図であり、(c)は光配向膜材料の化学構造を示す図である。
【図3】(a)は本発明による実施形態の他の液晶表示パネル200の1つの画素を示す模式的な平面図であり、(b)は光配向処理方向を示す模式図であり、(c)は光配向膜材料の化学構造を示す図である。
【図4】(a)および(b)はそれぞれ液晶表示パネル100および200の透過率の上下方向における視角(極角)依存性を示すグラフである。
【図5】(a)は液晶表示パネル100’の1つの画素の構造を説明するための平面図であり、(b)は液晶表示パネル200’の1つの画素の構造を説明するための平面図であり、(c)は液晶表示パネル100の副画素電極15aを示す平面図であり、(d)は液晶表示パネル200の副画素電極15cを示す平面図である。
【図6】(a)および(b)は、本発明による他の実施形態の液晶表示パネル300Aおよび300Bの1つの画素を示す模式的な平面図であり、(c)は液晶表示パネル300Aの画素に再度光配向処理を行った場合の配向状態を示す模式図である。
【図7】(a)および(b)は、本発明によるさらに他の実施形態の液晶表示パネル400Aおよび400Bの1つの画素を示す模式的な平面図であり、(c)は液晶表示パネル400Aの画素に再度光配向処理を行った場合の配向状態を示す模式図である。
【図8】(a)および(b)は、光配向膜におもて面から光照射することによる光配向処理方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0068】
10 TFT基板
11、21 ガラス基板
12a ゲートバスライン
12b CSバスライン(補助容量配線)
13 ゲート絶縁膜
14 パッシベーション膜
15 画素電極
15a、15b、15c、15d、15a’、15c’ 副画素電極
18 光配向膜
18A1、18A2、18B1、18B2 ドメイン
20 対向基板
28 配向膜
30 液晶層
30a 液晶分子
30A、30B コーン
100、200、300、400 液晶表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2主面を有する第1のガラス基板を用意する工程(a)と、
前記第1のガラス基板の前記第1主面に、第1方位に延びる埋め込み配線を形成する工程(b)と、
前記埋め込み配線が形成された前記第1のガラス基板の前記第1主面の上に光配向膜を形成する工程(c)と、
前記第2主面側から、前記第1方位に略直交する第2方位に傾斜した方向から前記光配向膜の第1領域にのみ選択的に直線偏光を照射することによって、前記光配向膜の前記第1領域のプレチルト方向を規定する工程(d)と、
配向膜を有する第2のガラス基板を用意する工程(e)と、
誘電異方性が負のネマチック液晶材料を含む液晶層を間に介して前記光配向膜と前記配向膜とが互いに対向するように前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とが貼り合わせられた液晶セルを作製する工程(f)と、
を包含する、液晶表示パネルの製造方法。
【請求項2】
前記第2主面側から、前記第2方位と略180°異なる第3方位に傾斜した方向から前記光配向膜の前記第1領域に隣接する第2領域に直線偏光を照射することによって、前記光配向膜の前記第2領域のプレチルト方向を前記第1領域のプレチルト方向と略180°異なる方向に規定する工程(g)をさらに包含する、請求項1に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項3】
前記工程(d)において、前記第1領域のプレチルト方向を前記第2方位に規定する、請求項1または2に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項4】
前記配向膜として、プレチルト方向を規定しない垂直配向膜を用いる、請求項1から3のいずれかに記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項5】
前記第1のガラス基板の前記第1主面に、ゲートバスライン、ソースバスラインおよびTFTを形成する工程をさらに含み、
前記埋め込み配線は前記ゲートバスラインである、請求項1から4のいずれかに記載の液晶表示パネルの製造方法。
【請求項6】
行および列を有するマトリクス状に配列された複数の画素と、
TFT基板と、
対向基板と、
前記TFT基板と前記対向基板との間に設けられた、誘電異方性が負のネマチック液晶材料を含む液晶層と、
を有し、
前記TFT基板は、ガラス基板と、前記ガラス基板に形成されたゲートバスラインと、ソースバスラインと、前記ゲートバスラインおよび前記ソースバスラインに接続されたTFTと、光配向膜とを有し、
前記対向基板は、プレチルト方向を規定しない垂直配向膜を有し、
前記ゲートバスラインは前記ガラス基板に埋設されており、前記液晶層は前記複数の画素のそれぞれにおいて、前記ゲートバスラインに平行な境界で分割された2つのドメインを有し、
前記2つのドメイン内の前記光配向膜の近傍の液晶分子の配向方位は前記ゲートバスラインと略直交し、且つ、互いに略180°異なる、液晶表示パネル。
【請求項7】
前記2つのドメインの、前記光配向膜に接している液晶分子は、電圧無印加時において、前記境界に向かって前記光配向膜から立ち上がっている、請求項6に記載の液晶表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−282366(P2009−282366A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135220(P2008−135220)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】