説明

無段変速機の変速操作装置

【課題】主変速装置として無段変速可能な変速装置を採用しても、作業に適した車速域に素早く移行させようとする。
【解決手段】エンジン(16)の回転を走行装置(13,13)へ伝達する無段変速装置(3)を設け、第1の変速操作部(20,42)によって高低車速の低速側から順に高速に移行するように設けられた車速帯を選択設定し、第2の変速操作部(21u,21d、47u,47d)によって当該選択された車速帯の範囲で増減速するよう構成した無段変速機の変速操作装置の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種作業車両に搭載されて走行連動する静油圧式無段変速機(HST)、この静油圧式無段変速機と機械式変速機を組み合わせた液圧機械式変速装置(HMT)などの無段変速機における変速操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から農業用トラクタにおいて、例えばHSTを設けて走行装置を駆動する構成としているが、このHSTを主変速機構とし該主変速機構のほかに副変速機構を設ける形態がある。ところで、これら主・副変速機構は夫々別々の操作レバーによって変速操作される構成とされ、異なる作業形態、例えばプラウ作業、ロータリ耕耘作業など、によって車速表を確認しながらいちいち適正車速を得るため、上記主・副変速装置の各操作レバーを操作する必要がある。ところで特開平2−27265号公報には、変速操作で選択した変速位置のエンジン定格時の車速が表示されるために、作業速を容易に確認でき、変速位置の選択を的確に行うことができ、車速を表示する技術が開示され、車速の把握の容易化が図れるが、適正車速であるか否かの判定はオペレータに頼らざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−27265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主変速装置として無段変速可能な変速装置を採用するため、細かい車速を実現できる反面、作業に適した車速域に素早く移行することができない構成となっている。
【0005】
また、主変速装置として無段変速装置を構成するため、操作レバーの前後揺動範囲で任意に設定でき所望の車速を得られるようレバー操作域は無段階操作可能に構成されるため、オペレータにとって適正な車速域を作業の度毎にいちいち探さねばならない煩わしさがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記の課題を解決しようとするもので次の技術的手段を講じた。
【0007】
即ち、請求項1に記載の発明は、エンジン(16)の回転を走行装置(13,13)へ伝達する無段変速装置(3)を設け、第1の変速操作部(20,42)によって高低車速の低速側から順に高速に移行するように設けられた車速帯を選択設定し、第2の変速操作部(21u,21d、42u,42d)によって当該選択された車速帯の範囲で増減速するよう構成した無段変速機の変速操作装置の構成とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、エンジン(16)の回転を走行装置(13,13)へ伝達する主・副変速装置(40,41)を設け、主変速装置(40)は無段変速装置に構成すると共に副変速装置(41)はギヤ連動による有段変速装置に構成し、上記主・副変速装置(40,41)によって形成される全変速車速域を複数に設定した車速帯にて区分し第1の変速操作部(42)によってこの複数の車速帯のいずれかを選択設定し、第2の変速操作部(42u,42d)によって当該選択された車速帯の範囲で増減速するよう構成した無段変速機の変速操作装置の構成とする。
【0009】
請求項1および請求項2の構成によると、オペレータは、まず第1変速操作部によって所望の車速帯に設定することにより、必要な変速段を絞り込むことができ、次いで第2変速操作部の操作によって所望の変速状態を得る。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1及び請求項2に記載の構成において、第1変速操作部はレバーガイド(24,43)に沿わせて変速操作するレバー(20,42)に構成し、第2変速操作部は第1変速操作部(20,42)の握り操作部に設けた増・減速スイッチ(21u,21d、47u,47d)によって構成する。
上記のように第1変速操作部で必要な車速帯を選択するときは、機体を停止状態でレバー操作を行い、機体を発進させた後は第2変速操作部の増・減速スイッチ操作に基づき所望の変速状態を得ることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、第2変速操作部の増・減速スイッチ(21u,21d、47u,47d)操作による無段変速装置(3,40)の変速は、所定速度段毎に設定してなる。従って、無段変速装置を採用しながらも車速帯を選択すると、以後の詳細設定は有段設定できるものであるから、所定段への移行が円滑である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4において、選択設定される車速帯を複数の作業モード用車速帯と単一の路上走行モードとに設定し、このうち作業モード用車速帯での増・減速スイッチ操作(21u,21d、47u,47d)による変速は所定有段設定とし、路上走行モードの車速帯での増・減速スイッチ(21u,21d、47u,47d)操作による変速は無段階に設定できるよう構成する。このように構成すると、作業モードでは第1変速操作具による複数の車速帯のなかからも素早い車速設定が可能となり、一方路上走行モードではオペレータの熟練度等に見合う極め細かい車速設定が可能となって利便性が高い。
【発明の効果】
【0013】
請求項1又は請求項2に記載の発明によると、オペレータは、まず第1変速操作部(20,42)によって所望の車速帯に設定することにより、必要な変速段を絞り込むことができ、次いで第2変速操作部(21u,21d、47u,47d)の操作によって所望の変速状態を得ることができ、第1変速操作具による操作を行うと、無段変速装置の全域に渡る調整を制限でき、容易迅速に所望の車速を得られる。
【0014】
請求項3に記載の発明によると、第1変速操作具で必要な車速帯を選択するときは、機体を停止状態でレバー操作を行い、機体を発進させた後は第2変速操作具の増・減速スイッチ(21u,21d、47u,47d)操作に基づき所望の変速状態を得るもので、単一レバーの把持操作をもって変速操作ができ、操作性が向上する。
【0015】
請求項4に記載の発明は、無段変速装置を採用しながらも車速帯を選択すると、以後の詳細設定は有段設定できるものであるから、所定段への移行が円滑となる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、作業モードでは第1変速操作部(20,42)による複数の車速帯のなかからも素早い車速設定が可能となり、一方路上走行モードではオペレータの熟練度等に見合う極め細かい車速設定が可能となり、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トラクタ側面図
【図2】要部の概要説明図
【図3】静油圧式無段変速装置の操作部側面図
【図4】同上の平面図
【図5】同上の背面図
【図6】車速−変速位置関係グラフ(A)、車速帯一例を示すグラフ(B)
【図7】レバーガイドの一例を示す平面図
【図8】制御ブロック図
【図9】異なる例を示す要部の概要説明図
【図10】同上の車速−変速位置関係グラフ(A)、車速帯一例を示すグラフ(B)
【図11】レバーガイドの他の例を示す平面図
【図12】制御ブロック図
【図13】フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【0019】
農業用トラクタ10は、図外ロータリ耕耘機等の作業機を車両後部に装着する形態であり、図1、及び図2に示すように、車体フレーム11の前部に左右一対の前輪12,12を軸架し、後部に左右の後輪13,13をそれぞれ軸装して構成している。そして、操縦座席14は、車体フレーム11の後部寄りに配置して設け、その前方位置にステアリングハンドル15を設けて操舵可能に構成している。
【0020】
そして、エンジン16は、車体フレーム11の前部に搭載し、中間伝動ケース17に後述の静油圧式無段変速装置3を内装し、後部ミッションケース18内のデフ機構19を介して左右後輪13を駆動する構成である。
【0021】
つぎに、静油圧式無段変速装置3について説明する。
【0022】
まず、静油圧式無段変速装置3は、油圧ポンプと油圧モータとから構成され、一方の油圧ポンプをエンジン16に伝動可能に接続し、他方の油圧モータをミッションケース18のデフ機構19に回転動力を出力するように接続して構成している。
【0023】
そして、静油圧式無段変速装置3は、油圧ポンプから油圧モータに作動油を循環しながらポンプ側のトラニオン軸7の操作により斜板が調節されると、作動油が変更調節され、正・逆回転の切替と増減速の調節とができる構成としている。
【0024】
このように構成された静油圧式無段変速装置3は、図1、乃至図3に示すように、前記中間伝動ケース17内に設け、前述のとおり後部ミッションケース18に回転動力を入力する構成としている。そして、取付けベース4は、図面に示すように、一枚の板状に形成し、前記静油圧式無段変速装置3、及び中間伝動ケース17から外側に離れた位置に縦方向に配置し、中間伝動ケース17に複数個の取付けボルト30によって支持した構成としている。
【0025】
そして、制御モータ5は、図3、乃至図5に示すように、前記取付けベース4の内側、すなわち、取付けベース4と中間伝動ケース17との間に位置させてベース4に取り付けている。そして、操作装置6は、操作軸6aと操作歯車6bとから構成し、操作軸6aを取付けベース4に貫通して軸受け支持し、一方側(内側)を前記制御モータ5に伝動可能に接続し、他方(外側)に操作歯車6bを軸着して構成している。
【0026】
そして、トラニオン軸7は、図面に示すように、前記静油圧式無段変速装置3から外側に延長して前記取付けベース4を貫通させてベース4の外側まで延長して軸受け支持し、先端部位に変速歯車7aを軸着した構成としている。この場合、トラニオン軸7は、制御モータ5側の操作軸6aと平行状態を保って取付けベース4に軸受して設け、先端の大径とした変速歯車7aを、操作軸6aの小径の操作歯車6bに噛合させて設け、前記制御モータ5から出力される操作力がトラニオン軸7に伝達される構成としている。
【0027】
そして、制御モータ5は、操縦席の近傍に配置される操作レバー20及び増・減速スイッチ21u、21dの操作に基づき連動設定されるポテンショメータからなる角度設定器22の設定角度θが角度0から最大のθmの範囲に亘り変化するに基づき、トラニオン軸7を中立位置から最高速側に回動すべく連動構成される。また、23は操作レバー20の近傍に配置する前後進切替スイッチで、前進側と後進側とに切替自在に設けられ、同じく制御モータ5の回動を司る。
【0028】
上記操作レバー20及び増・減速スイッチ21u,21dは、第1、第2変速操作部を示し、これらの設定入力信号に基づき制御部25は、前記制御モータ5を回転駆動する構成である。即ち、上記角度設定器22の設定角度θは、速度小から大に亘って、超低速作業用LL、低速作業L、中速作業M、高速作業H、最高速を含む路上走行HHの車速帯を選択するように予め設定されている(図5)。そして、これら各車速帯の選択は、第1変速操作部としての操作レバー20を予め設定したレバーガイド24に沿わせて選択操作することによって実行できる構成としている。なお、各車速帯域での作業例について、超低速作業域ではトレンチャや畔塗り作業、低速作業域ではロータリ耕耘作業、中速作業域では代掻き作業、高速作業域ではプラウ作業が代表的である。また、前記各車速帯域のうち作業車速LL,L,M,Hでは車速帯を互いにオーバーラップさせて選択車速に幅を持たせている。
【0029】
上記レバーガイド24は略直線的に構成され、車速帯は高低車速の低速側から順に高速に移行するように配置されている。また、レバーガイド24は直状の操作移行部と段差24aを有した操作移行部を配し、特に作業車速帯域Hから路上走行車速帯域HHに移行する部分には段差24aを設けて一気に移行できないようにして誤操作防止を図っている。また作業車速帯のうち、低速作業車速帯と中速作業車速帯との間においても段差24bを設けて同様の効果を図るものである。
【0030】
上記操作レバー20の選択によって設定された車速帯域において、該操作レバー20の握り部20aに配置された第2変速操作部である増・減速スイッチ21u,21dを操作することによって段階的に操作しうる構成である。即ち、増・減速スイッチ21u又は21dの押し操作で、設定角度θは変わらずとも、制御モータ5を予め設定した単位分回動させる構成とし、上記高低5つの車速帯の各範囲内では所定段数の増・減速操作を行なうことができる構成としている。なお車速帯毎に増・減できる段数を変更設定するようになっている。
【0031】
上記の設定車速帯域のうち、路上走行HHを選択すると、アクセル操作と連動して変速する構成となっている。アクセルペダルや手動アクセルレバー操作などのアクセル操作に伴い、変速段数を高低に自動変速するもので、上記制御部25は、操作レバー20の路上走行車速域への位置検出、アクセルセンサ26によるアクセル状態検出、を入力することによって、増減変速の要否を判定し所定に増速又は減速する構成である。この増減速の範囲は前記増・減速スイッチ21u,21dによって設定する単位速度に基づくものでもよく、さらに極め細かく無段階的に設定できる構成でもよい。このように構成すると、アクセル操作に基づき必要に応じて変速制御できわめて便利である。
【0032】
上記のアクセルセンサ26等による変速制御において、機体のブレーキ操作を検出すると、路上走行の設定車速帯域HHに関わらず、車速0の状態に制御される構成である。また、路上走行の車速帯域HH設定を継続して車体を発進するときは、予め設定する規定速度V1を得るように変速制御される構成である。ここで、規定速度V1は、走行トルクを伝えて前進し得る速度段に設けられる。
【0033】
また、制御部25は次の機能を備える。操作レバー20による車速帯域への操作のうち、路上走行以外の作業車速を選択したときには、各車速帯域LL,L,M,Hでの第2変速操作による変速段数の累積使用時間Σtnを算出して記憶する。次回当該車速帯域を選択設定するときは累積使用時間Σtnの最も長い変速段を採用する構成である。このように構成すると、毎回適正変速段数を設定する煩わしさをなくして操作性を向上する。
【0034】
次いで、変速装置として主・副変速装置を備える作業車両の場合について説明する。上記の実施例では、静油圧式無段変速装置単体において複数の車速帯域に設定できる構成としたが、この静油圧式無段変速装置3を主変速装置40とし、有段(例えば2段)の副変速装置を構成する場合においても同様である。即ち、副変速装置41として高・低2段に変速する構成である。この副変速装置41と主変速装置40との無段変速によって、図9(A)の変速位置−車速関係グラフに示す車速を得ることができる。これらの2本で現される車速のうち範囲を設定して、超低速ll、低速l、中速m、高速h及び路上走行速hhに区分して切替できる構成とし、変速操作レバー42によってレバーガイド43に沿って切替え出来る構成としている。
【0035】
副変速装置41の高低変速は制御部25からの切替信号を受けてシリンダ機構44の伸縮作動によって行なう構成とし、その切替制御は高・低切替信号の入力によって油路を切り替える切替バルブ45をもって行う構成である。高・低制切替信号の入力は制御部25からの指令信号に基づくものであり、レバーガイド43毎に設ける各変速位置センサ46a,46b,46c,46d及び46eに基づくものである。なお、上記高低切替の際には主クラッチを油圧クラッチ形態に構成するなどして一旦クラッチ切状態としておき自動的に高または低に切り替えるものである。
【0036】
変速操作レバー42が操作され変速位置センサ46aがオンに操作されると、超低速の車速帯llを選択できるもので、副変速は低の状態に自動設定され、主変速は予め設定された範囲を変速操作レバー42の握り部42aに設けた増・減速スイッチ47u,47dによって変速しうる。同様に、変速位置センサ46bがオンすると、副変速は低の状態に自動設定され主変速は範囲lを変速設定できる。以下変速位置センサ46cがオンする状態では副変速は高に自動切り替わり主変速は範囲mで増減速され、センサ46dでは副変速高、主変速は範囲hを、センサ46eでは副変速高、主変速は範囲hhで変速操作できるものである。
【0037】
上記のように、変速操作レバー42の設定に基づき、副変速は適正な変速位置に自動設定され、主変速は予め設定した適性範囲をもって増減変速できる構成であるから、変速位置を複数の作業形態及び路上走行に対応させておくことで、握り部42aの増・減変速スイッチ47u,47dの操作をもって、簡単容易に目的の作業速度あるいは路上走行速度を得ることができる。
【0038】
主・副変速装置40,41を備えて複合的に車速帯域を設定する上記第2の実施例において、主変速装置40を増・減速する構成については、前記第1の実施例の増減スイッチ21u,21d操作によって制御モータ5の角度を設定する構成に順じるものとなっている。すなわち、各変速位置センサ46a〜46eのいずれかがオンすると各設定速度範囲ll〜hhが選択され、この範囲に見合う増減速度に変更できるよう制御モータ5が回動される構成である。
【0039】
第2の実施例における変速操作レバー42、及び増・減変速スイッチ47u,47dにおける複合の設定速度範囲、即ち車速帯域ll〜hhで夫々に変速できるものとなる。この例におけるレバーガイド43は前後及び左右操作を伴い、副変速が低を選択設定されるときのガイド部は左半部に集中し、副変速が高に設定されるときは右半部に集中する構成として、手前側から前方に向け速度が速くなるよう設定している。このように、副変速の高・低切替えをそろえておくことによって、誤操作を来たさず、操作系の配置構成にとっても一方側に高速側を他方側に低速側をそろえることができ有利である。
【0040】
上記第2の実施例において、主変速は段階的に変速できるように構成してもよく、無段階に変速できる形態でもよい。また、第1実施例におけるように、変速操作レバーの各作業速毎に使用変速段の累積時間を記憶させて次回の当該変速段ではこれを採用することによって操作の向上が図れる。
【0041】
第2の実施例において、副変速を高・低に切り替える際には、パワーシフト機構として各変速段毎に油圧クラッチを介在させる構成としておく。このように構成すると、クラッチペダル切操作を伴わずともよいため、上記のように主クラッチをいちいち切り操作せずともよいため便利である。パワーシフトに代えて伝動系に油圧クラッチを介在し、主クラッチの切り操作を必要としないで高低変速する構成でもよい。
【0042】
図12は、上記の主クラッチの切り操作をなくして副変速を高低変速する際の主変速制御の一例を示す。前回作業の累積時間Σtnを記憶して、当該変速位置に変速操作レバー42を操作するとき(ステップ101)、前回の当該変速位置における主変速各段の累積時間を呼び出し(ステップ102)、最長時間におけるシフト位置、即ちメモリ変速位置を選択する(ステップ103)。ここで、主変速装置の速度が速い側にかつ、副変速が高速側にシフトされようとの条件のもとでは(ステップ104、105)、主変速をシフトせずそのままの位置とする(ステップ107)。所謂ノークラッチで変速する場合には、減速側へ車速が変化すると違和感を伴うがこれを解消する。
【0043】
なお、図12において、クラッチペダルの操作の有無によって操作があると判定されたときは(ステップ106)、特定作業への移行とみなされるから、累積時間Σtnに対応する変速(メモリ変速)に切り替わる(ステップ108)。なお、ステップ105で副変速低に切り替わる場合には、変速前車速より変速後車速が大に設定されると(ステップ109)、クラッチペダル操作がないときは、主変速をそのままとし、クラッチペダル操作があるときは、制御モータ回転制御がなされて変速制御される。ステップ109で変速後車速が小と判定されるときも同様に変速制御される(ステップ110)。
【0044】
符号35はトラニオンセンサで、図1、及び図2に示すように、トラニオン軸7の下方に取り付け、トラニオン軸7の回動角度位置を検出する構成としている。即ち、トラニオン軸7と一体に設けるL型ピン35aを、ポテンショメータ35b側から延出し先端をU型に形成した係合部35cに係合させてトラニオン軸7の角度変化をポテンショメータ35bに連繋する構成である。該トラニオンセンサ35の検出結果に基づき中立復帰状態を確認する構成としている。
【0045】
また符合36はニュートラルアームで、図1に示すように、トラニオン軸7から上方に延長して設けられる。該ニュートラルアーム36の上部にピン36aを突設し、夫々に同長の長孔38,38を形成した左右の作動杆37L,37Rを係合して構成している。そして、作動杆37L,37Rは、図1に示すように、端部に連結した操作ワイヤー39L,39Rを介してブレーキペダル40に接続して構成している。
【0046】
上記のように構成されるから、ブレーキペダル40の非操作状態では、ニュートラルアーム36が各長孔38,38で許容される範囲で変速歯車7aに追従して回動でき、一方ブレーキペダル40を踏んだとき、強制的にニュートラル位置に戻すことができる構成となっており、制御モータ5が故障しても静油圧式無段変速装置3の安全が確保できるものとなっている。
【符号の説明】
【0047】
3 無段変速装置
13 後輪(走行装置)
16 エンジン
20 第1変速操作部
40 主変速装置
41 副変速装置
42 第1変速操作部
21u,21d 第2変速操作部
47u,47d 第2変速操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(16)の回転を走行装置(13,13)へ伝達する無段変速装置(3)を設け、第1の変速操作部(20,42)によって高低車速の低速側から順に高速に移行するように設けられた車速帯を選択設定し、第2の変速操作部(21u,21d、47u,47d)によって当該選択された車速帯の範囲で増減速するよう構成した無段変速機の変速操作装置。
【請求項2】
エンジン(16)の回転を走行装置(13,13)へ伝達する主・副変速装置(40,41)を設け、主変速装置(40)は無段変速装置に構成すると共に副変速装置(41)はギヤ連動による有段変速装置に構成し、上記主・副変速装置(40,41)によって形成される全変速車速域を複数に設定した車速帯にて区分し第1の変速操作部(42)によってこの複数の車速帯のいずれかを選択設定し、第2の変速操作部(42u,42d)によって当該選択された車速帯の範囲で増減速するよう構成した無段変速機の変速操作装置。
【請求項3】
第1変速操作部はレバーガイド(24,43)に沿わせて変速操作するレバー(20,42)に構成し、第2変速操作部は第1変速操作部(20,42)の握り操作部に設けた増・減速スイッチ(21u,21d、47u,47d)によって構成する請求項1または請求項2に記載の無段変速機の変速操作装置。
【請求項4】
第2変速操作部の増・減速スイッチ(21u,21d、47u,47d)操作による無段変速装置(3,40)の変速は、所定速度段毎に設定してなる請求項3に記載の無段変速機の変速操作装置。
【請求項5】
選択設定される車速帯を複数の作業モード用車速帯と単一の路上走行モードとに設定し、このうち作業モード用車速帯での増・減速スイッチ操作(21u,21d、47u,47d)による変速は所定有段設定とし、路上走行モードの車速帯での増・減速スイッチ(21u,21d、47u,47d)操作による変速は無段階に設定できるよう構成する請求項4に記載の無段変速機の変速操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−42367(P2011−42367A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267627(P2010−267627)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2005−219713(P2005−219713)の分割
【原出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】