説明

無線ドアフォンシステム

【課題】 従来のドアフォンシステムは玄関先のドアフォンと家屋内の通話機器との接続方式は、機器ごとに固有のインターフェースであり両者が一体となってはじめて作動できる不便さや有線接続のため配線工事が面倒であった。カメラ付きのドアフォンが普及してきているが、犯罪防止面や外出先から来訪者情報を知る、通話機器で電話の通話もできるなどの配慮が不満足であった。
【解決手段】 ドアフォンと通話機器間にデジタル無線通信方式を使いパソコンとの接続性を高め、また、通話機器の親機にハードデイスクのような大容量記憶装置を設けて映像や音声を記録できるようにするとともに、画像解析を行い、来訪者の映像情報を解析するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ドアフォンシステムに関し、詳しくは、一般家屋の玄関先に設置されて来訪者が用いるドアフォンと、家屋内に置かれて居住者が用いる通話機器とを無線接続し、利便性を向上した無線ドアフォンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
家屋の玄関先に設置され、その家屋への来訪者と居住者とが通話するドアフォンシステムは、近年カメラ付きのものが普及してきて、さらに、特許文献1にあるように、カメラで捕らえた来訪者の顔情報を予め登録されたものと照合し、電子錠システムとリンクできるようにしたものがある。
【0003】
しかし、ドアフォンを無線化して設置の容易性を改善したものや、ドアフォンの盗難防止を考慮したもの、来訪者(不審者を含む)の情報を管理し報告できるもの、顔情報の照合だけで開錠することへの不安感を改良したもの、カメラ映像をより鮮明にするための工夫がなされたものなど、実用上のさらなる改善が施されたものはないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2003−18587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば玄関先に設置されるドアフォンと家屋内に置かれる通話機器との間の通信は機器固有のインターフェース方式となっており、かつ有線接続されているため、家屋の建築時に予め考慮しておかないと配線がむきだしになってしまい、見栄えが悪いという問題がある。また、このような設置方式であると、引越ししたら使えなくなる場合が多い。
【0006】
また、家屋内に置かれる通話機器はリビングルームの壁などに固定されているため、来訪者があると、居住者は応答するために通話機器まで足を運ぶ必要があり、たとえば入浴中に来訪者があると、応答できず留守状態になってしまう。
【0007】
また、従来のドアフォンシステムでは玄関先での挙動不審者の動きを把握することもできない。
【0008】
本発明は上記の点にかんがみてなされたもので、ドアフォンと家屋内の通話機器との間を無線接続し、また、家屋内の通話機器を持ち運び可能にすることによって、設置を容易にするとともに使い勝手を向上し、実用上のさらなる改善が施された無線ドアフォンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の目的を達成するために、ドアフォンと通話機器間を、パソコンLANで使われているような高速のデジタル無線方式で接続する。
【0010】
また本発明は、通話機器を携帯電話機のような形状にして持ち運びを容易にし、人が家の何処にいても(たとえば風呂、洗面所、庭先、寝室、台所など)来訪者と通話できるようにしている。
【0011】
また本発明は、居住者が留守中に訪れた来訪者や、玄関先での挙動不審者の情報は、外部から電話で聞けたり、インターネットで見ることができるようにしている。
【0012】
また本発明は、玄関の開錠には、居住者の指紋と顔画像の両者をチェックすることができ、これによって確実性を向上している。
【0013】
また本発明は、玄関先に設置したドアフォンが盗まれたときは(取付け位置から外されたときは)、大きな警報音を発生することができ、これによって犯罪防止に貢献することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、家屋内に人がいながら、ドアフォンの呼び出し音であるピンポン音に気付かず、居留守状態になってしまうことを防止できる。
【0015】
また本発明によれば、居住者と来訪者との通話やカメラに映った挙動不審者の映像はすべて録画されているため、犯罪防止に貢献することができる。
【0016】
また本発明によれば、ドアフォンと通話機器との間の通信方式としては一般に普及しているデジタル無線通信方式を採用しているため、ドアフォン単独、また通話機器単独での商品形態があり得て、また引越ししても使えるなど便利になる。
【0017】
また本発明によれば、ドアフォンに大容量の電池を搭載すれば配線を一切必要とせず、設置の容易性が増す。
【0018】
また本発明によれば、ドアフォンに配線が不要であるがゆえに起こりやすい盗難に対しても、犯人映像の記録や警報音を鳴らすなどの対策が可能であり、これによって犯罪の未然防止や盗難時の捜査への協力など犯罪対策に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
本発明による電話機システムは、図1に示すように、家屋内の居住者が携帯する子機1と、所定の場所に設置しておく親機2と、家屋の玄関先に設置するドアフォン3とから構成され、子機1と親機2とはアンテナ100および200を介して通信し、また親機2とドアフォン3とはアンテナ200および300を介して通信し、それぞれ情報の授受および機器の制御を行う。なお、本実施例では、家屋内の通話機器を子機1と親機2とで構成している。
【0021】
図2はドアフォン3の構成を示すブロック図である。
【0022】
無線通信部31は、CDMAやTDMAのような信号の多重化機能、無線通信方式を実行するモデム、高周波無線回路を含み、アンテナ300を介して無線電波を送出あるいは受信する。本実施例では、無線通信部31はアンテナ300と別体であるものとしているが、無線通信部31がアンテナ300を含むものであってもかまわない。
【0023】
本発明におけるドアフォンシステムの無線通信方式として、IEEE802.11b方式は、通信速度、電波出力、セキュリテイにおいて充分な方式であるが、デジタル無線通信方式であれば、どの方式でもよく、PHS方式でもよい。
【0024】
通信制御部(CCU)32は、ドアフォン3のカメラ38やマイクロフォン40からの映像信号や音声信号、子機1からの音声信号、また電話会話の音声信号、さらに、日時情報など、ドアフォン3を利用した通話や電話会話に付随する管理情報やその他メンテナンス情報などを、別途定められる通信プロトコル方式に従って信号を組み立てたり、分解する回路である。
【0025】
アナログデジタル変換回路(ADC)35は、ビデオエンコーダ(VENCODE)35aを有し、映像信号のアナログデジタル変換を行うとともに音声信号のアナログデジタル変換およびそれらの逆変換を行う。このアナログデジタル変換回路(ADC)35は、また、物体センサ39からのアナログ出力信号のデジタル変換も行う。
【0026】
カメラ部38は、2次元イメージセンサ(CCD)38bおよび、このCCD38bによって撮影する際に、被写体がCCD38bのできるだけ中心部に写るようにしたり、被写体ができるだけ大きく写るようズーム機構を実行するモータ38aとを有する。
【0027】
またドアフォン3は、来訪者が居住者と通話するためのマイクロフォン40およびスピーカ41を有し、そのほかにも、来訪者すなわち来客や不審者の存在を事前察知するための赤外線センサなどを利用した物体センサ39、玄関先を照らす玄関備え付けの照明ランプだけでは光量不足で被写体が撮影されないときのために用いられるランプ37、ドアフォン3が玄関先への設置状態から取り外されたとき、それを検知すると、たとえば「泥棒、泥棒、、、」といった大きな音を発生する異常警報音発生部42を有し、さらには、電源である電池34や電池34を充電するための充電回路33を有する。
【0028】
図3は、家屋内に設ける通話機器のうちの子機1の構成を示すブロック図である。
【0029】
無線通信部11は、CDMAやTDMAのような信号の多重化機能、無線通信方式を実行するモデム、高周波無線回路を含み、アンテナ100を介して無線電波を送出あるいは受信する。本実施例では、無線通信部11はアンテナ100と別体であるものとしているが、無線通信部11がアンテナ100を含むものであってもかまわない。CCU12は、ドアフォン3のCCU32と同じものである。また、AD・DA13の機能は音声信号のアナログデジタル変換・逆変換を行うものである。
【0030】
子機1には、デイスプレイ18と操作ボタン部17とが設けられており、このデイスプレイ18および操作ボタン部17は今日の携帯電話機の形状と似たものであり、たとえば、デイスプレイ18は2次元表示が可能な2インチ程度のカラー液晶表示デバイスであり、操作ボタン部17は電話番号や文字入力のためのテンキー、メニュー選択のための上下左右の4個のスクロールボタン、決定ボタン、通話開始ボタン、通話終了ボタン、そのほか数個の補助ボタンより成る。
【0031】
これら操作ボタン部17およびデイスプレイ18は、ユーザーインターフェース回路16に接続されている。このユーザーインターフェース回路16は、ビデオデコーダ(VDECODE)16aを有し、CCU12から得られるカメラ38の映像信号をデイスプレイ18に表示する。
【0032】
子機1は、図示してないが、一般の電話機の子機あるいは携帯電話機のように、電源を供給する受台の上に置かれ、子機1がこの受台の上に置かれているときは子機1の充電回路(図示せず)が作動している。
【0033】
また、子機1のために専用の受台を用意せず、親機2にこの受台機能を持たせてもよい。ただし、親機2は、操作部を有しないため部屋の片隅に設置される場合も多かろうゆえに、親機2が子機1に電源供給する電源受台機能を備えても実用的には不便ゆえ、子機1専用の受台を置いた方がよかろう。
【0034】
これらは、現実的には、商品構成として、親機2に子機1の受台を設けて子機1専用の受台を用意しないケース、親機2に受台を設けずに子機1専用の受台を用意するケース、親機2に受台を設け、さらに子機1専用の受台も設け、複数の子機1を用意するケースなどが考えられよう。
【0035】
図4は、家屋内に設ける通話機器のうちの親機2の構成を示すブロック図である。
【0036】
ドアフォン3側の来訪者と通話するだけならば、図2のドアフォン3と図3の子機1との間で無線通信することによって通話可能であり、図4の親機2の存在は必ずしも必要ではないが、通話機器の用途がドアフォンの通話機器のほかに一般の電話回線に接続する電話機能を有する方がより利便性に富むし、来訪者の履歴管理など多種の情報管理を行うためにも親機2の存在が必要である。したがって本実施例の無線ドアフォンシステムでは親機2の存在を含めて説明する。
【0037】
図4において、電話網制御回路(NCU)21は、電話局との発呼・着呼の制御を行う。AD/DA(アナログデジタル変換器)22は、電話音声のアナログデジタル変換と、発呼の際に電話番号(デジタル情報)からアナログダイアルトーンの発生、着呼の際にアナログダイアルトーンから電話番号(デジタル情報)への変換を行う。
【0038】
無線通信部24は、CDMAやTDMAのような信号の多重化機能、無線通信方式を実行するモデム、高周波無線回路を含み、アンテナ200を介して無線電波を送出あるいは受信する。本実施例では、無線通信部24はアンテナ200と別体であるものとしているが、無線通信部24がアンテナ200を含むものであってもかまわない。CCU23は、図2のドアフォン3、図3の子機1のものと同じ機能を有すが、後述する機能23aと23bも必要に応じてあわせもっている。
【0039】
HD27は電話での通話情報、ドアフォンで通話した情報(映像と音声)を記録する不揮発性記憶装置としてのハードデイスクである。HD27には通話情報のほか、通信に関する履歴、アドレス帳データや、留守番電話機相当の音声情報も記録蓄積されている。
【0040】
CODEC25は、通話情報をHD27に記録するために、音声情報や映像情報を圧縮符号化(再生の際は復号化)を行うものである。HD27の記憶容量が40ギガバイトとしたとき、CODEC25による音声データのデータ圧縮率が8分の1程度なら、音声データに限っていえば、1万時間相当の蓄積が可能である。
【0041】
HD27に記録した情報は後記のメンテナンスモードで消去したりすることができる。また、親機2ではLANインターフェース回路28を備えているので、LAN接続された外部のパソコン等に対して、HD27に記録した情報等を転送することもできるし、無線通信部24を介して外部に転送することもできる。
【0042】
また親機2ではHD27と連動する画像解析回路26が設けられている。この画像解析回路26は、ドアフォン3で撮影された映像から被写体が何であるのかを特定する機能を有する。撮影された映像から、被写体が人間かどうか、人間なら男か女かの推定、どんな洋服を着ていたか(スーツか作業着かなど)、メガネをかけていたかどうか、などの認識、予め設定登録した顔写真を引用し、カメラに映った映像からその人が誰であるかの特定を行う。
【0043】
したがって、この画像解析回路26は、カメラに映った映像から、「X時Y分に、メガネをかけた女の人が来て、3回ピンポンを押し30秒待って帰りました」とか、「H時M分に、Zさんがきましたが、ピンポンも押さずに10秒して帰りました」とか、「A時B分にカメラの前に鳥が飛んできました」とかの報告を、HD27に出力する。この報告情報は後記するメンテナンスモードを用いてチェックすることができるし、外出先から本実施例の親機2に電話することによってその報告を聞くこともできるし、その報告を写真や映像とともに、ホームページにアップロードしたり、電子メールで報告させるように設定しておけば、外出先のパソコンで見ることもできる。
【0044】
ホームページへのアップロードや電子メール送信は、親機2とLAN接続されているパソコンにLANインターフェース回路38を介して行う方法と、親機2から直接サーバーへ情報を送る行う方法がある。親機2から直接行うには、TCP/IPプロトコルやHTTPプロトコルの実行モジュール23bをCCU23に付加しておくことが必要である。
【0045】
また、外出先からの電話で報告を聞けるようにするには、HD27内のデジタル情報からそれを音声に変換する音声合成回路23aがCCU23に必要である。
【0046】
来訪者がドアフォン3に触れると、タッチセンサ36がそれを検知し、ドアフォン3は来訪者のあることを知り、「ピンポン」音が蓄えられているCCU32からADC35を介し、その音がスピーカ41から発せられる。と同時に、来訪者があるという情報が、CCU32、無線通信部31を介し親機2の無線通信部24、CCU23へと伝えられ親機2は来訪者のあることを知る。なお、タッチセンサを使わず、従来から使われている押しボタンを使用してもよい。
【0047】
親機2は子機1にそのことを知らせるため、カメラ38で得られる映像情報を、ドアフォン3のCCD38b→ADC35→CCU32→無線通信部31→親機2の無線通信部24→CCU23→無線通信部24→子機1の無線通信部11→CCU12→ユーザーインターフェース回路16→ディスプレイ18のルートで子機1のデイスプレイ18上に表示する(図5(a)参照、なお、図5(a)、図5(b)および図5(b)はデイスプレイ18上に表示される内容の一例を示す図である。)。
【0048】
音声情報は、子機1からドアフォン3へは、マイクロフォン14→AD・DA13→CCU12→無線通信部11→親機2の無線通信部24→CCU23→無線通信部24→ドアフォン3の無線通信部31→CCU32→ADC35→スピーカ41のルートで情報が流れ、ドアフォン3から子機1には、マイクロフォン40→ADC35→CCU32→無線通信部31→親機2の無線通信部24→CCU23→無線通信部24→子機1の無線通信部11→CCU12→AD・DA13→スピーカ15のルートで情報が流れる。
【0049】
なお、情報の流れるルートで子機1とドアフォン3との直接通話にせず、親機2を中継しているのは、親機2のHD27内に交信履歴や通話内容の全てを記録できるようにしておくためである。
【0050】
ところで、来訪者がドアフォン3に触れてタッチセンサ36がそれを検出したときに居住者が子機1で電話中であったときには、子機1のボタン操作で、親機2のCCU23あるいはHD27に蓄えられているメッセージたとえば「ただいま電話中です。少しお待ち下さい」をドアフォン3のスピーカ41に送り出力することも、メンテナンスモードを用いて設定しておくことも可能である。
【0051】
子機1で電話中であるかどうかによらず、もちろん、子機1に対して何も操作しなければ、望まれざる来客を無視することもできる。子機1に写った映像を見て無視することはよく使われる方法であろう。
【0052】
子機1に写った来客の映像が見難いときは、「角度」ボタンや「ズーム」ボタン(図5(a)参照)を押すことでモータ38aによってCCD38bを移動させて見やすくすることができる。
【0053】
来訪者との通話は「開始」ボタン(図5(a)参照)を押すことで始まる。ドアフォン3が有する物体センサ39は、誰かがドアフォン3に触らなくても、ドアフォン3付近に人らしい動きがあればそれを検知することができる。ADC35では物体センサ39からのセンサ情報によって、人影あるいは物影があると検知されると、その情報はCCU32に送られ、カメラ38を駆動するとともに、CCD38bの出力は、CCD38b→ADC35→CCU32→無線通信部31→親機2の無線通信部24→CCU23の情報ルートをたどりHD27での記録を開始する。このとき、子機1のデイスプレイ18にも「物影あり」が表示される(図示せず)。通常では、来訪者がドアフォン3にタッチするので、「物影あり」の表示の後にピンポン音が鳴り、デイスプレイ18には「来客あり」が表示されることになる(図5(a)参照)。
【0054】
夜間などで玄関先の照明では、光量不足でカメラ映像が見難いときは、子機1の操作ボタン部17に設けた補助ボタンのひとつを照明ボタンと設定しておくことでランプ37を点灯することができる。ランプ37をドアフォン3に具備せず、別途設置されている玄関ランプへ点灯の指示信号を出力するようにしてもよい。そのため、物体センサ39により物影が検知された時点あるいはタッチセンサ36による検出があった時点から、カメラ38の映像信号出力に基づいて親機2の画像解析回路26で被写体への照度を測定し、少ないと判断したらCCU23にそのことを伝え、自動的にランプを点灯する指示が出される。また、子機1の操作ボタン部17より直接点灯指示を出してもよい。そのときの信号の流れは、子機の操作ボタン部17→ユーザーインターフェース回路16→CCU12→無線通信部11→親機2の無線通信部24→CCU23となる。
【0055】
本ドアフォンを用いた会話や電話会話は自動的にHD27に録画・記録されるが、録画(映像と音声の記録)の開始は、ドアフォンの物体センサ39で「物影あり」が判断されてから、あるいはタッチセンサ36でタッチされたことを検知した時点からであり、録画の終了は、物体センサ39でセンスされた後、タッチセンサがタッチされず来訪者との会話が始まらなかったときは、物体センサ39が物影をセンスしなくなって一定時間が経過した後に録画終了し、タッチセンサ36がタッチされ会話が開始されたときは、来客との会話が終了した時点で録画を終了する。また電話会話のときは、音声のみの記録になるが、記録の開始は、NCU21で呼が設定されたと判断されたとき(要するに「もし、もし」が始まる直前)、記録の終了は会話終了時(終了ボタンが押された時)である。
【0056】
玄関先におかれるドアフォン3は、それごと盗難の可能性がある。特に無線通信を行うため配線の必要がない本実施例のドアフォン3はその危険度が大きい。
【0057】
そこで、本実施例のドアフォン3では、そのために異常警報音発生部42を設けており、設置場所から外されることをセンスする(検知する)手段(たとえばマイクロスイッチを利用し、取り付け面との保持状態をセンスするのが簡便な方法であるが、そのほかにもいろいろな方法が採れる)で、外されたことを検知すると、大音量で「泥棒、泥棒、、、、」という声(この声はCCU32に蓄えられている)がスピーカ41より流れる。
【0058】
もちろん、電池34による電源供給が続く限り、犯罪者の映像が、ドアフォン3に近づいた時点から電池34が消耗するまで親機2に送信される。電池34は、少なくとも、その音量を発生するに必要な電力が、充電回路33より常時充電されている。
【0059】
この異常警報音は、ドアフォン3が取り外された状態であっても、設置時や修理点検時のような場合に発生すると困るので、そのために、異常警報音発生部42を動作可能にする指示(一般には設置完了し実稼動状態に入ったとき)がなされた後に発生可能となる。
【0060】
この動作可能指示は、たとえば子機1からメンテナンスモードを用いて行い、指示信号は、子機1の操作ボタン部17→ユーザーインターフェース回路16→CCU12→無線通信部11→親機2の無線通信部24→CCU23→ドアフォン3の無線通信部31→CCU32のルートで出される。
【0061】
ところで、電池34を大容量の電池にすることによって充電回路33は不要となり、ドアフォン3を完全にワイアレスドアフォンとすることができるが、その場合、電池34の残量をいつでもチェックできるよう、電池34の残量の情報をCCU32に送っておき、ある限界を超えたら、たとえばドアフォン3の表面に置かれた発光ダイオード(図示せず)を点灯させたり、子機1のデイスプレイ18上に「電池交換」の表示を出したりして(図示せず)電池交換を促すようにするのがよい。
【0062】
ドアフォン3の映像信号を伝送するのに必要なビットレートは、QVGAサイズの画素(320*280)で、1秒間に10フレームの映像を送るとすると、3MBPSに近くなる。デジタル無線通信方式としてパソコンで広く普及しているIEEEE.802.11bを採用したとすると、伝送可能ではあるが、データ圧縮することが望ましい。データ圧縮方式としてはMPEG4やH.264方式がある。映像信号圧縮のための符号化回路は、ADC35に設ければよい。この符号化回路は、図2ではADC35内にVENCODE35aとして示した。
【0063】
一方、この符号化に対応する復号化を行う復号化回路は、子機1のユーザーインターフェース回路26内に設ければよい。この復号化回路は、図3のユーザーインターフェース回路16内にVDECODE16aとして示した。
【0064】
ところで、ドアフォン3の備える指紋センサ43は、指先をこのセンサ43にのせることで別途設置されている電子錠への開錠指示信号を送ることができる。指紋センサ43からの指紋センサ出力信号を、HD27に予め登録されている居住者の指紋情報と照合し、一致すれば、電子錠を開く。
【0065】
指紋だけの照合に不安があれば、カメラ映像で捉えた顔画像を、予め登録されている居住者の顔データとも照合し、指紋が一致するとともに顔も一致したときにのみ、開錠指示を出力するという方法もよい。
【0066】
なお、指紋や顔画像の一致は、親機2の画像解析回路26で判断され、開錠指示信号はCCU23から出力される。また本実施例では指紋センサを用いた例で説明しているが、今日の生体認証技術の進歩は目覚しく、瞳の虹彩センサや静脈センサなど各種の生体認証素子が実用に供されるようになっているので、実際にどのセンサを用いるかは、システムが必要とする信頼度やコストを勘案しながら決めればよい。
【0067】
上記の説明においては、ドアフォン3からのカメラ映像信号は、ADC35の中でデータ圧縮されているということで説明しているが、データ圧縮されないときは、ADC35内のVENCODE35aと子機1のユーザーインターフェース回路26内のVDECODE16aは不要になる。しかし、HD27に映像データを記録蓄積するにはデータ圧縮することが望ましく、そのときは親機2のCODEC25が音声情報のデータ圧縮だけでなく映像情報の圧縮復号機能も有する。
【0068】
本実施例のドアフォンシステムの子機1を用いて一般の電話をかけるときの操作は、子機1を取り上げ、図5(c)に示す表示例の「ダイアル」を選択して決定ボタンを押す。すると、ユーザーインターフェース回路16に蓄えられているダイアル先の候補が表示されるので(図示せず)、かけたい相手にカーソルを合わせて決定を押す(もちろん、いきなりテンキーからダイアル入力してもよい)と、そのダイアル情報がCCU12、無線通信部11を経て、親機2のAD・DA22に到達し、ダイアル先電話番号に対応したダイアルトーンを作成し、NCU21に送る。
【0069】
続いて、子機1の操作者が「開始ボタン」(図5(c)参照)を押すことで、NCU21からは発呼操作が自動的に行われ、前記ダイアルトーンが電話回線上に送出される。
【0070】
その後、電話局からくる呼び出し音や通話中の場合のビジートーン、相手側の声はAD/DA22を経て、相手先の電話番号とともにCCU23、無線通信部24を経て子機1に届き、子機1では、無線通信部11、CCU12、AD・DA13を経てスピーカ15で聞くことができる。電話をかけた人すなわち子機1の操作者の声は、マイクロフォン14から逆の信号経路で親機のNCU21に届き、電話回線上に送出される。
【0071】
通話情報は、デフォルト設定で、またはユーザによる選択設定で「自動的にHD27に記憶」を選んでいるときは、すべてが自動的に記憶される。通話の終了は「終了」ボタン(図5(c)参照)を押すことによって行われる。
【0072】
また、電話がかかってきたときは、前記した電話をかけるときとほぼ同様の信号の流れになる。
【0073】
すなわち、相手先の電話番号情報が電話局からダイアルトーンで知らされ、その情報は、AD/DA22でデジタル情報として出力され、HD27に予め登録されているアドレス帳にあれば登録されている個人情報名が子機1に届きデイスプレイ18上に表示される(図5(b)参照)。同時に子機1のスピーカ15からは、呼び出し音が鳴り、開始ボタンを押すことで通話が始まる。
【0074】
ところで、本実施例のドアフォンシステムは、図5(c)に示す「メンテナンス」を押すことでメンテナンスモードに入る。
【0075】
メンテナンスモードとは、前記した異常警報音発生部42の動作を可能にする指示とか、操作部を一切所有しない親機2の初期設定や設定変更、電話アドレス帳の更新、録画した内容の再生とか、外部のパソコンへの転送、物体センサ39、指紋センサ43さらにCCD38bの感度設定、録画条件の設定(たとえば、通話終了ボタンで録画が終了したものは自動的に消去する、など)を行う。
【0076】
これらの設定は、子機1のデイスプレイ18と操作ボタン部17で行うわけが、その操作法は携帯電話機で使われている方法と同じような操作の流れで実行できるので、詳細な説明は省略する。この操作は、子機1を使用せず、LANコネクタあるいは無線で接続された外部のパソコンからも設定可能である。
【0077】
なお、上述の説明では、図2、図3および図4において機能ブロック図を参照して実施例を説明しているが、実際には、本発明のドアフォンシステムは、マイクロコンピュータ、ROM、RAM、必要に応じて専用LSIを備えるという、多くの電子機器が採用している一般的な構成で実現される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明によるドアフォンシステムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示したドアフォンの構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した子機の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示した親機の構成を示すブロック図である。
【図5】(a)〜(c)は子機のディスプレイに現れる操作画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 子機
2 親機
3 ドアフォン
11、24、31 無線通信部
12、23、32 通信制御部
13、22、35 アナログデジタル変換器
14、40 マイクロフォン
15、41 スピーカ
16 ユーザーインターフェース回路
17 操作ボタン部
18 ディスプレイ
21 電話網制御回路
25 CODEC
26 画像解析回路
27 ハードディスク
28 LANインターフェース回路
33 充電回路
34 電池
36 タッチセンサ
37 ランプ
38 カメラ
39 物体センサ
42 異常警報音発生部
43 指紋センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信部、通信制御部、カメラ部、マイクロフォン、スピーカおよび異常音発生部を有することを特徴とするドアフォン。
【請求項2】
請求項1に記載のドアフォンに無線接続され、無線通信部、通信制御部、画像解析回路および不揮発性記憶装置を有することを特徴とする親機。
【請求項3】
前記画像解析回路の解析結果を前記不揮発性記憶装置に記憶するとともに、その結果を外出先から取り出せるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の親機。
【請求項4】
周囲の物体を検出する物体センサをさらに有することを特徴とする請求項1に記載のドアフォン。
【請求項5】
生体認証素子をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のドアフォン。
【請求項6】
ランプ点灯指示手段をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の親機。
【請求項7】
電子錠への開錠指示手段をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の親機。
【請求項8】
請求項1に記載のドアフォンと、請求項2に記載の親機と、マイクロフォン、スピーカ、無線通信部、通信制御部、操作ボタン部および2次元デイスプレイデバイスを有する子機とで構成されることを特徴とする無線ドアフォンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−32998(P2006−32998A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204094(P2004−204094)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(500352339)株式会社ベルパーク (3)
【Fターム(参考)】