説明

焼結体及びセラミックコンデンサ並びにこれらの製造方法

【課題】1100℃以下の低温焼成でも、緻密で欠陥のない焼結体及びセラミックコンデンサ並びにこれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】焼結体は、主成分としてチタン酸バリウムを含み、この主成分に添加された副成分として、K、B、Si、Mgの各元素および希土類元素を含む、または副成分として、Al、Cu、Si、Mn、Mgの各元素および希土類元素を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックコンデンサの誘電層材料として好適な焼結体とその製造方法、及びセラミックコンデンサとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、積層セラミックコンデンサにおいて、誘電体層の材料として、チタン酸バリウムがよく用いられている。また、内部電極の材料としては、PtやPb合金が用いられることもあるが、高価であるため、比較的安価なNiやNi合金等の卑金属がよく用いられるようになってきている。例えば、特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−89224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
NiやNi合金を内部電極に用いた場合には、Niの球状化収縮による内部電極の切れやデラミネーション(層間剥離)などを抑制する観点から、焼成温度は1100℃以下にするのが望ましい。しかし、現状の材料では、1100℃以下の低温焼成では焼結しない、もしくは緻密な焼結体を得ることが困難であった。
【0005】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、1100℃以下の低温焼成でも、緻密で欠陥のない焼結体及びセラミックコンデンサ並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の焼結体は、主成分としてチタン酸バリウムを含み、この主成分に添加された副成分として、K、B、Si、Mgの各元素および希土類元素を含むことを特徴としている。
【0007】
また、本発明の焼結体は、主成分としてチタン酸バリウムを含み、この主成分に添加された副成分として、Al、Cu、Si、Mn、Mgの各元素および希土類元素を含むことを特徴としている。
【0008】
主成分(チタン酸バリウム)に対して、上述したような副成分を添加することで、1100℃以下の低温焼成でも焼結可能であり、また緻密な焼結体が得られる。
【0009】
また、本発明のセラミックコンデンサは、複数の電極と、これら電極間に設けられ、主成分(チタン酸バリウム)と上述の副成分とを含む誘電体層と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
誘電体層の低温焼成が可能になることで、電極の球状化収縮による電極の切れやデラミネーションなどの構造欠陥を抑制できる。
【0011】
また、本発明の焼結体の製造方法は、チタン酸バリウムに、副成分の原料として、Kの化合物と、Bの化合物と、Siの化合物と、Mgの化合物と、希土類元素の化合物とを添加して焼成することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の焼結体の製造方法は、チタン酸バリウムに、副成分の原料として、Alの化合物と、Cuの化合物と、Siの化合物と、Mnの化合物と、Mgの化合物と、希土類元素の化合物とを添加して焼成することを特徴としている。
【0013】
また、本発明のセラミックコンデンサの製造方法は、チタン酸バリウムに、副成分の原料として、Kの化合物と、Bの化合物と、Siの化合物と、Mgの化合物と、希土類元素の化合物とを添加したものを用いてシート状の誘電体層を形成する工程と、複数の誘電体層の間に電極を介在させてこれらを積層する工程と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
また、本発明のセラミックコンデンサの製造方法は、チタン酸バリウムに、副成分の原料として、Alの化合物と、Cuの化合物と、Siの化合物と、Mnの化合物と、Mgの化合物と、希土類元素の化合物とを添加したものを用いてシート状の誘電体層を形成する工程と、複数の誘電体層の間に電極を介在させてこれらを積層する工程と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、焼結体の品質を損なわずに、従来よりも低温での焼成が可能になる。この結果、製造コストを下げることができ、また、電極の球状化収縮を抑制してコンデンサの容量低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るセラミックコンデンサの断面構造を例示する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る焼結体は、主成分として、チタン酸バリウム(BaTiO)を含み、この主成分に添加された副成分として、K、B、Si、Mgの各元素および希土類元素を含む。希土類元素は、例えば、Y、Dy、Hoから選ばれる1種以上の元素である。また、副成分として、その他の元素、例えばBa、Mnなどを含んでいてもよい。
【0019】
このような焼結体は、チタン酸バリウムに、副成分の原料として、KとBの水和物と、Siの化合物と、Mgの化合物と、希土類元素の化合物とを添加し、これを還元性雰囲気で焼成することで得られる。チタン酸バリウムは、例えば、酸化チタンの粉末と炭酸バリウムの粉末とを混合して熱処理する固相法にて合成することができる。なお、固相法に限らず、水熱法、シュウ酸法、ゾルゲル法などによりチタン酸バリウムを合成してもよい。
【0020】
本実施形態に係る焼結体によれば、主成分(チタン酸バリウム)に対して、上述のような副成分を添加することで、1100℃以下の低温焼成でも焼結が可能になり、また、緻密な焼結体が得られた。さらに、低温での焼成により、製造コストの低減も図れる。
【0021】
図1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサの断面構造を例示する模式断面図である。
【0022】
このセラミックコンデンサは、対向する内部電極2間に、上述の主成分及び副成分を含む誘電体層1が設けられた構造を有する。これは、上述の主成分及び副成分を含むものをシート状に成形したグリーンシートの片面に内部電極2を形成し、これを複数枚積層して焼成することで得られる。また、この積層体の側面には、内部電極2の端部に接続された外部電極3、4が設けられている。
【0023】
内部電極2や外部電極3、4の材料としては、Cu、Ni、W、Mo等の金属もしくはこれらの合金、In−Ga、Ag、Ag−10Pd合金等、または、カーボン、グラファイト、カーボンとグラファイトの混合物等を用いることができる。
【0024】
内部電極2は、例えば、上記の主たる材料からなる粉末に、有機バインダ、分散剤、有機溶剤、必要に応じて還元剤等を所定量加えた後に混練し、所定の粘度とした導電ペーストを、グリーンシートの片面に所定のパターンとなるように印刷し、還元雰囲気中で焼成することにより形成される。内部電極2としては、比較的安価なNiまたはNi合金が望ましい。
【0025】
また、外部電極3、4としては、低抵抗で安価であることからCuが望ましい。外部電極3、4は、内部電極2及び誘電体層1からなる積層体に対して、その外側面に塗布法などを用いて形成される。
【0026】
本実施形態に係るセラミックコンデンサによれば、1100℃以下の低温焼成が可能になることから、特にNiやNi合金を内部電極2に用いた場合でも、Niの球状化収縮を抑制でき、これに起因する電極の切れやデラミネーションなどの構造欠陥を防げる。これにより、コンデンサの容量低下を抑制できる。
【0027】
次に、本実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一例について説明する。
【0028】
まず、誘電体層の主成分BaTiOの原料として、BaCO、TiOを、BaTiOにおけるBa/Ti比が1.000〜1.011の範囲内となるように秤量して、調合する。
【0029】
次に、上記主成分の化合物をボールミルに入れ、水を加えて湿式で約20時間混合・粉砕を行いスラリーとする。そして、このスラリーを脱水・乾燥し、1000℃以上で仮焼した後、粉砕して、平均粒子径が0.2μm未満となるように整粒した。なお、平均粒径は、走査型電子顕微鏡によって粉末を観察し、100個の粒子の粒子径を測長して求めた。
【0030】
次に、上記主成分に対して、KO・2B・5HO、BaCO、MgO、Mn、SiO、Re(Reは、Y、Dy、Hoから選ばれる1種以上の元素)の各化合物の粉末を各々秤量し、これらの化合物をボールミルに入れ、トルエン−エタノール混合溶剤、ポリビニルブチラール系バインダおよび可塑剤とともに適度な粘度になるまで混合し、ドクターブレード法によりグリーンシートを作製した。
【0031】
次に、各グリーンシート上に、Ni粉末からなる導電ペーストを用いて内部電極を所定形状にスクリーン印刷した後、その導電ペーストが印刷されたグリーンシートを複数積層し、熱圧着して一体化し、積層体を作製した。
【0032】
そして、その積層体を空気中にて加熱することで有機バインダを除去した後、1100℃の還元性雰囲気で2時間焼成した後、さらに1000℃のNガス雰囲気中で2時間再酸化処理し、この後、内部電極が露出している積層体の端面部に外部電極を焼き付け、図1に例示される構造が得られる。
【0033】
次に、表1に、誘電体層の組成を様々に変えた実施例1〜11及び比較例A〜Kについての各種評価結果を示す。
【表1】

【0034】
実施例1〜11及び比較例A〜Kにおいて、誘電体層一層あたりの厚さは5μmで、有効誘電体層は10層とした。また、一層あたりの内部(対向)電極面積は、0.91×10−6[mm]である。
【0035】
比誘電率εは、温度25[℃]、周波数1[kHz]、電圧2.5[V]の条件で、LCRメーターを用いて静電容量を測定し、この測定によって得られた静電容量、誘電体層の厚さ、及び内部電極面積から算出した。
【0036】
誘電損失tanδは、上記比誘電率と同一条件下で、LCRメーターを用いて測定した。
【0037】
絶縁抵抗Rは、25℃の条件下で、実施例1〜11及び比較例A〜Kの各積層セラミックコンデンサに、直流100[V]の電圧を3分間印加し測定した。
【0038】
容量変化率は、実施例1〜11及び比較例A〜Kの各積層セラミックコンデンサを恒温層に入れ、−55℃から85℃の各温度において、周波数1[kHz]、電圧2.5[V]の条件で、LCRメーターを用いて静電容量を測定し、25℃の静電容量に対する静電容量の変化を求めることによって得た。この静電容量の変化率から、EIA(Electronic Industries Association)のX5R規格(−55℃から85℃の容量変化率(25℃基準)がプラスマイナス15%)の適合性を判断した。
【0039】
また、「焼結しない」とは、厚さ40μmのグリーンシートを複数枚重ねて厚さ1mmになるようにし、その後1cm角に切断し焼成して得た密度測定用サンプルにて密度を測定し、これが5.7以下の密度の場合に、「焼結しない」とした。
【0040】
表1において、1列目の項目は、誘電体層の主成分BaTiOにおけるBa/Ti比を表す。
【0041】
また、副成分における、K、B、Si、Mg、Y、Dy、Hoの各数値は、主成分(BaTiO)100モル部に対して、K化合物のKに換算したモル部、B化合物のBに換算したモル部、Si化合物のSiに換算したモル部、Mg化合物のMgに換算したモル部、Y化合物のYに換算したモル部、Dy化合物のDyに換算したモル部、Ho化合物のHoに換算したモル部、をそれぞれを表す。
【0042】
表1の結果より、Ba/Ti比が1.000より小さい比較例Iは、比誘電率が低く、またX5R規格に不適合であった。Ba/Ti比が1.011より大きい比較例Hは、比誘電率が低かった。したがって、Ba/Ti比は、1.000〜1.011が望ましい。
【0043】
また、主成分100モル部に対するK化合物のKに換算した割合が0.25モル部より小さい比較例Aは、1100℃では焼結しなかった。K化合物のKに換算した割合が1.00モル部より大きい比較例Bは、比誘電率が低く、またX5R規格に不適合であった。同じくK化合物のKに換算した割合が1.00モル部より大きい比較例Eは、比誘電率が低かった。したがって、主成分100モル部に対するK化合物のKに換算した割合は、0.25〜1.00モル部が望ましい。
【0044】
また、主成分100モル部に対するB化合物のBに換算した割合が0.50モル部より小さい比較例A及び比較例Cは、1100℃では焼結しなかった。B化合物のBに換算した割合が2.00モル部より大きい比較例B及び比較例Dは、比誘電率が低く、またX5R規格に不適合であった。したがって、主成分100モル部に対するB化合物のBに換算した割合は、0.50〜2.00モル部が望ましい。
【0045】
また、主成分100モル部に対するSi化合物のSiに換算した割合が1.10モル部より小さい比較例Fは、1100℃では焼結しなかった。Si化合物のSiに換算した割合が1.90モル部より大きい比較例Gは、比誘電率が低く、またX5R規格に不適合であった。したがって、主成分100モル部に対するSi化合物のSiに換算した割合は、1.10〜1.70モル部が望ましい。
【0046】
また、主成分100モル部に対する希土類元素(Y、Dy、Ho)化合物の希土類元素(Y、Dy、Ho)に換算した割合が0.70モル部より小さい比較例Jは、1100℃では焼結しなかった。希土類元素化合物の希土類元素に換算した割合が1.60モル部より大きい比較例Kは、比誘電率が低かった。したがって、主成分100モル部に対する希土類元素化合物の希土類元素に換算した割合は、0.70〜1.60モル部が望ましい。
【0047】
なお、上述の望ましい条件をすべて満足する実施例1〜11について、主成分100モル部に対するMg化合物のMgに換算した割合は、1.00〜1.70モル部の範囲内であった。
【0048】
以上の結果より、主成分のBa/主成分のTi比が1.000〜1.011であり、主成分100モル部に対して、K化合物のKに換算した割合が0.25〜1.00モル部、B化合物のBに換算した割合が0.50〜2.00モル部、Si化合物のSiに換算した割合が1.10〜1.70モル部、Mg化合物のMgに換算した割合が1.00〜1.70モル部、希土類元素化合物の希土類元素に換算した割合が0.70〜1.60モル部であることが望ましい。これを満足する実施例1〜11では、1100℃以下でも正常に焼結し、高い比誘電率が得られ、かつX5R規格にも適合する。
【0049】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0050】
本発明の第2の実施形態に係る焼結体は、主成分として、チタン酸バリウム(BaTiO)を含み、この主成分に添加された副成分として、Al、Cu、Si、Mn、Mgの各元素および希土類元素を含む。希土類元素は、例えば、Y、Dy、Hoから選ばれる1種以上の元素である。また、副成分として、その他元素、例えばBaなどを含んでいてもよい。
【0051】
このような焼結体は、チタン酸バリウムに、副成分の原料として、Alの化合物と、Cuの化合物と、Siの化合物と、Mnの化合物と、Mgの化合物と、希土類元素の化合物とを添加し、これを還元性雰囲気で焼成することで得られる。チタン酸バリウムは、例えば、酸化チタンの粉末と炭酸バリウムの粉末とを混合して熱処理する固相法にて合成することができる。なお、固相法に限らず、水熱法、シュウ酸法、ゾルゲル法などによりチタン酸バリウムを合成してもよい。
【0052】
本実施形態に係る焼結体によれば、主成分(チタン酸バリウム)に対して、上述のような副成分を添加することで、1100℃以下の低温焼成でも焼結が可能になり、また、緻密な焼結体が得られた。さらに、低温での焼成により、製造コストの低減も図れる。
【0053】
第2の実施形態に係るセラミックコンデンサの断面構造は、第1の実施形態と同様であり、図1に例示されるように、対向する内部電極2間に、上述の主成分及び副成分を含む誘電体層1が設けられた構造を有する。
【0054】
そして、第2の実施形態に係るセラミックコンデンサにおいても、1100℃以下の低温焼成が可能になることから、特にNiやNi合金を内部電極2に用いた場合でも、Niの球状化収縮を抑制でき、これに起因する電極の切れやデラミネーションなどの構造欠陥を防げる。これにより、コンデンサの容量低下を抑制できる。
【0055】
次に、第2の実施形態に係るセラミックコンデンサの製造方法の一例について説明する。
【0056】
まず、誘電体層の主成分BaTiOの原料として、BaCO、TiOを、BaTiOにおけるBa/Ti比が1.000〜1.008の範囲内となるように秤量して、調合する。
【0057】
次に、上記主成分の化合物をボールミルに入れ、水を加えて湿式で約20時間混合・粉砕を行いスラリーとする。そして、このスラリーを脱水・乾燥し、1000℃以上で仮焼した後、粉砕して、平均粒子径が0.2μm未満となるように整粒した。なお、平均粒径は、走査型電子顕微鏡によって粉末を観察し、100個の粒子の粒子径を測長して求めた。
【0058】
次に、上記主成分に対して、Al、CuO、BaCO、MgO、Mn、SiO、Re(Reは、Y、Dy、Hoから選ばれる1種以上の元素)の各化合物の粉末を各々秤量し、これらの化合物をボールミルに入れ、トルエン−エタノール混合溶剤、ポリビニルブチラール系バインダおよび可塑剤とともに適度な粘度になるまで混合し、ドクターブレード法によりグリーンシートを作製した。
【0059】
次に、各グリーンシート上に、Ni粉末からなる導電ペーストを用いて内部電極を所定形状にスクリーン印刷した後、その導電ペーストが印刷されたグリーンシートを複数積層し、熱圧着して一体化し、積層体を作製した。
【0060】
そして、その積層体を空気中にて加熱することで有機バインダを除去した後、1100℃の還元性雰囲気で2時間焼成した後、さらに1000℃のNガス雰囲気中で2時間再酸化処理し、この後、内部電極が露出している積層体の端面部に外部電極を焼き付け、図1に例示される構造が得られる。
【0061】
次に、表2に、誘電体層の組成を様々に変えた実施例12〜24及び比較例L〜Xについての各種評価結果を示す。
【表2】

【0062】
実施例12〜24及び比較例L〜Xにおいて、誘電体層一層あたりの厚さは5μmで、有効誘電体層は10層とした。また、一層あたりの内部(対向)電極面積は、0.91×10−6[mm]である。
【0063】
比誘電率εは、温度25[℃]、周波数1[kHz]、電圧2.5[V]の条件で、LCRメーターを用いて静電容量を測定し、この測定によって得られた静電容量、誘電体層の厚さ、及び内部電極面積から算出した。
【0064】
誘電損失tanδは、上記比誘電率と同一条件下で、LCRメーターを用いて測定した。
【0065】
絶縁抵抗Rは、25℃の条件下で、実施例12〜24及び比較例L〜Xの各積層セラミックコンデンサに、直流100[V]の電圧を3分間印加し測定した。
【0066】
容量変化率は、実施例12〜24及び比較例L〜Xの各積層セラミックコンデンサを恒温層に入れ、−55℃から85℃の各温度において、周波数1[kHz]、電圧2.5[V]の条件で、LCRメーターを用いて静電容量を測定し、25℃の静電容量に対する静電容量の変化を求めることによって得た。この静電容量の変化率から、EIA(Electronic Industries Association)のX5R規格(−55℃から85℃の容量変化率(25℃基準)がプラスマイナス15%)の適合性を判断した。
【0067】
また、「焼結しない」とは、厚さ40μmのグリーンシートを複数枚重ねて厚さ1mmになるようにし、その後1cm角に切断し焼成して得た密度測定用サンプルにて密度を測定し、これが5.7以下の密度の場合に、「焼結しない」とした。
【0068】
表2において、1列目の項目は、誘電体層の主成分BaTiOにおけるBa/Ti比を表す。
【0069】
また、副成分における、Al、Cu、Si、Mn、Mg、Y、Dy、Hoの各数値は、主成分(BaTiO)100モル部に対して、Al化合物のAlに換算したモル部、Cu化合物のCuに換算したモル部、Si化合物のSiに換算したモル部、Mn化合物のMnに換算したモル部、Mg化合物のMgに換算したモル部、Y化合物のYに換算したモル部、Dy化合物のDyに換算したモル部、Ho化合物のHoに換算したモル部、をそれぞれ表す。
【0070】
表2の結果より、Ba/Ti比が1.000より小さい比較例Tは、X5R規格に不適合であった。Ba/Ti比が1.008より大きい比較例Xは、1100℃では焼結しなかった。したがって、Ba/Ti比は、1.000〜1.008が望ましい。
【0071】
また、主成分100モル部に対するAl化合物のAlに換算した割合が0.15モル部より小さい比較例Lは、1100℃では焼結しなかった。Al化合物のAlに換算した割合が0.50モル部より大きい比較例Oは、比誘電率が低かった。したがって、主成分100モル部に対するAl化合物のAlに換算した割合は、0.15〜0.50モル部が望ましい。
【0072】
また、主成分100モル部に対するCu化合物のCuに換算した割合が0.10モル部より小さい比較例Nは、1100℃では焼結しなかった。Cu化合物のCuに換算した割合が0.70モル部より大きい比較例Mは、絶縁抵抗が低く、またX5R規格に不適合であった。したがって、主成分100モル部に対するCu化合物のCuに換算した割合は、0.10〜0.70モル部が望ましい。
【0073】
また、主成分100モル部に対するSi化合物のSiに換算した割合が1.30モル部より小さい比較例Sは、1100℃では焼結しなかった。Si化合物のSiに換算した割合が1.90モル部より大きい比較例Rは、X5R規格に不適合であった。したがって、主成分100モル部に対するSi化合物のSiに換算した割合は、1.30〜1.90モル部が望ましい。
【0074】
また、主成分100モル部に対するMn化合物のMnに換算した割合が0.10モル部より小さい比較例Pは、1100℃では焼結しなかった。Mn化合物のMnに換算した割合が0.50モル部より大きい比較例Qは、比誘電率が低かった。したがって、主成分100モル部に対するMn化合物のMnに換算した割合は、0.10〜0.50モル部が望ましい。
【0075】
また、主成分100モル部に対するMg化合物のMgに換算した割合が1.00モル部より小さい比較例Vは、1100℃では焼結しなかった。Mg化合物のMgに換算した割合が2.00モル部より大きい比較例Uは、1100℃では焼結しなかった。したがって、主成分100モル部に対するMg化合物のMgに換算した割合は、1.00〜2.00モル部が望ましい。
【0076】
また、主成分100モル部に対する希土類元素(Y、Dy、Ho)化合物の希土類元素に換算した割合が0.80モル部より小さい比較例Xは、1100℃では焼結しなかった。希土類元素化合物の希土類元素に換算した割合が1.60モル部より大きい比較例Wは、1100℃では焼結しなかった。したがって、主成分100モル部に対する希土類元素化合物の希土類元素に換算した割合は、0.80〜1.60モル部が望ましい。
【0077】
以上の結果より、主成分のBa/主成分のTi比が1.000〜1.008であり、主成分100モル部に対して、Al化合物のAlに換算した割合が0.15〜0.50モル部、Cu化合物のCuに換算した割合が0.10〜0.70モル部、Si化合物のSiに換算した割合が1.30〜1.90モル部、Mn化合物のMnに換算した割合が0.10〜0.50モル部、Mg化合物のMgに換算した割合が1.00〜2.00モル部、希土類元素化合物の希土類元素に換算した割合が0.80〜1.60モル部であることが望ましい。これを満足する実施例12〜24では、1100℃以下でも正常に焼結し、高い比誘電率が得られ、かつX5R規格にも適合する。
【符号の説明】
【0078】
1 誘電体層
2 内部電極
3,4 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分として、チタン酸バリウムを含み、
前記主成分に添加された副成分として、Al、Cu、Si、Mn、Mgの各元素および希土類元素を含むことを特徴とする焼結体。
【請求項2】
前記主成分のBa/前記主成分のTi比が、1.000〜1.008であり、
前記主成分100モル部に対して、
前記Alが、0.15〜0.50モル部、
前記Cuが、0.10〜0.70モル部、
前記Siが、1.30〜1.90モル部、
前記Mnが、0.10〜0.50モル部、
前記Mgが、1.00〜2.00モル部、
および前記希土類元素が、0.80〜1.60モル部
の割合で含まれることを特徴とする請求項1記載の焼結体。
【請求項3】
複数の電極と、前記電極間に設けられた誘電体層と、を備えたセラミックコンデンサであって、
前記誘電体層は、主成分としてチタン酸バリウムを含み、かつ前記主成分に添加された副成分として、Al、Cu、Si、Mn、Mgの各元素および希土類元素を含むことを特徴とするセラミックコンデンサ。
【請求項4】
チタン酸バリウムに、副成分の原料として、Alの化合物と、Cuの化合物と、Siの化合物と、Mnの化合物と、Mgの化合物と、希土類元素の化合物とを添加して焼成することを特徴とする焼結体の製造方法。
【請求項5】
チタン酸バリウムに、副成分の原料として、Alの化合物と、Cuの化合物と、Siの化合物と、Mnの化合物と、Mgの化合物と、希土類元素の化合物とを添加したものを用いてシート状の誘電体層を形成する工程と、
複数の前記誘電体層の間に電極を介在させてこれらを積層する工程と、
を備えたことを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−36083(P2012−36083A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194638(P2011−194638)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【分割の表示】特願2005−365811(P2005−365811)の分割
【原出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】