説明

熱交換器の伝熱管破損検出装置及び方法

【課題】伝熱管の破損の有無及び破損箇所を高精度且つ短時間に検出できること。
【解決手段】蒸気発生器10における伝熱管11の破損の有無を確認するために、伝熱管の外管と内管の隙間を流れるHeガスが、伝熱管の破損箇所から漏出したことを検出するガス漏出第1検出器16、ガス漏出第2検出器18と、伝熱管の破損箇所を特定するために、伝熱管11を挟んで対向配置された中性子発生装置33と中性子検出イメージセンサ34とを有し、中性子発生装置33から放出された中性子が、外管と内管の隙間を流れて破損箇所から漏出したHe3ガスにより吸収され、そのときの中性子の影を中性子検出イメージセンサ34が2次元画像として検出するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の伝熱管破損検出装置及び方法に係り、特に、高速増殖炉において熱交換器として機能する蒸気発生器に適用されて好適な熱交換器の伝熱管破損検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器における伝熱管の破損検出を行なうためには、渦流探傷(渦電流探傷とも称する)検査法や内挿式超音波探傷法等が検討されている。これらの方法では、処理量は多くても、5mの長さの伝熱管を1日に600本までしか検査できない。伝熱管の本数が多くなり長さも長くなると、亀裂等の破損箇所を特定するのに更に長時間を要する。
【0003】
実際の渦流探傷検査法では、作業員が熱交換器を解体して伝熱管を1本1本丁寧に検査しなければならず、かなりの時間を要する。現在の石油精製・石油化学・一般化学プランなどでは、一般的な熱交換器の伝熱管の寿命を予測する方法として、サンプリング検査法が広く適用されている。しかし、このサンプリング検査法では、サンプリングの対象外となった箇所については検査が実際に行われていないため、熱交換器を再組み立てした後の運転時に異常となるリスクを伴う。また、このように熱交換器を解体して検査することは、液体金属ナトリウムと蒸気とを用いた高速増殖炉の蒸気発生器では、金属ナトリウムが液体であることから、適用が困難であると考えられる。
【0004】
渦流探傷法以外の非破壊検査の方法として、X線やγ線を用いた透過試験法や、特許文献1に記載のCT法がある。CT法は、放射線を利用したCT(コンピューター・トモグラフィ)処理によって伝熱管群を画像化して、伝熱管の欠陥を検出するものである。伝熱管が複雑に多数本存在する場合には、これらの伝熱管が重なり合うため、透過試験法では画像から破損部分を判断することが難しく、CT法により、断面から異常箇所を検出する方法が適していると考えられる。
【0005】
また、現状の液体金属ナトリウムと蒸気との間で熱交換を行なう高速増殖炉の蒸気発生器では、特許文献2に記載のように、液体金属ナトリウムを扱う上で、蒸気発生器の伝熱管を2重伝熱管とし、外管と内管の隙間にHeガスを正圧で流し、外管に破損が生じた場合に、Heガスが液体金属ナトリウム側に移行するので、液体金属ナトリウム中のHe濃度を検出することで外管の破損を確認する。また、内管に破損が生じた場合には、外管と内管の隙間に流れたHeガス中に内管の内側の蒸気が流入するので、Heガス中の湿分濃度を検出することで内管の破損を確認する。
【特許文献1】特開2005−140791号公報
【特許文献2】特開2000−130965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載のCT法では、熱交換器全体が直径5m以上もある体系で放射線を用いても、放射線の透過量に対する亀裂等の欠陥部分での変化量が少ないので、欠陥の検出が困難である。しかも、スライスされる伝熱管の断面の分解能を高く設定すると測定時間が膨大になり、現状のセンサ技術との組み合わせでは実用的でないと判断せざるを得ない。
【0007】
また、特許文献2に記載の蒸気発生器における伝熱管破損検出方法では、蒸気発生器の伝熱管から微小漏出が生じた場合、例えば液体金属ナトリウムの流速が速いときには、サンプリングされるHeガス量が極微小量になって、伝熱管の破損検出精度が低下してしまう。従って、伝熱管に欠陥が生じてからHeガスの検出までに長時間を要することになる。しかも、伝熱管の破損の有無は確認できても、その破損箇所の特定が困難である。
【0008】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、伝熱管の破損の有無及び破損箇所を高精度且つ短時間に検出できる熱交換器の伝熱管破損検出装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る熱交換器の伝熱管破損検出装置は、多数本の伝熱管のそれぞれが外管と内管からなる2重伝熱管であり、前記外管の外側を流れる第1流体と、前記内管の内側を流れる第2流体との間で熱交換を行なう熱交換器であって、前記伝熱管の破損の有無を確認するために、前記外管と前記内管の隙間を流れる第1検出ガスが、前記伝熱管の破損箇所から漏出したことを検出するガス漏出検出器と、前記伝熱管の前記破損箇所を特定するために、前記伝熱管を挟んで対向配置された中性子発生装置と中性子検出イメージセンサとを有し、前記中性子発生装置から放出された中性子が、前記外管と前記内管の隙間を流れて前記破損箇所から漏出した第2検出ガスにより吸収され、そのときの中性子の影を前記中性子検出イメージセンサが2次元画像として検出することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る熱交換器の伝熱管破損検出方法は、多数本の伝熱管のそれぞれが外管と内管からなる2重伝熱管であり、前記外管の外側を流れる第1流体と、前記内管の内側を流れる第2流体との間で熱交換を行なう熱交換器であって、前記外管と前記内管の隙間を流れる第1検出ガスが、前記伝熱管の破損箇所から漏出したことをガス漏出検出器が検出することで、前記伝熱管の破損の有無を確認し、前記伝熱管に破損があった場合に、前記中性子発生装置から放出された中性子が、前記外管と前記内管の隙間を流れて前記破損箇所から漏出した第2検出ガスにより吸収され、そのときの中性子の影を、前記中性子発生装置と前記伝熱管を挟んで対向配置された中性子検出イメージセンサが2次元画像として検出することで、前記伝熱管の前記破損箇所を特定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る熱交換器の伝熱管破損検出装置及び方法によれば、伝熱管の外管と内管の隙間を流れる第1検出ガスが伝熱管の破損箇所から漏出したことをガス漏出検出器が検出することで、伝熱管の破損の有無を確認し、中性子発生装置からの中性子が、外管と内管の隙間を流れて破損箇所から漏出した第2検出ガスにより吸収され、そのときの中性子の影を中性子検出イメージセンサが検出することで、伝熱管の破損箇所を特定するので、伝熱管の破損の有無及び破損箇所を高精度及び短時間に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。但し、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
[A]第1の実施の形態(図1〜図8)
図1は、本発明に係る熱交換器の伝熱管破損検出装置における第1の実施の形態が適用された高速増殖炉の蒸気発生器における伝熱管破損検出装置を示す概略構成図である。図2は、図1のII矢視図である。図5は、図2における多数本の伝熱管へ、この伝熱管の破損を検出するための検出ガスを供給するガス供給ラインを示す管路図である。図7は、図1の伝熱管破損検出装置を示す斜視図である。
【0014】
図1に示す高速増殖炉の蒸気発生器10は熱交換器として機能し、図2及び図3に示すように、多数本の螺旋形状の伝熱管11を有する。各伝熱管11は、図4に示すように、外管12と内管13からなる2重伝熱管である。前記蒸気発生器10では、外管12の外側を流れる第1流体としての液体金属ナトリウムNaと、内管13の内側を流れる第2流体としての水または蒸気Wとの間で熱交換が行われ、内管13内の水Wは液体金属ナトリウムNaの熱によって蒸気となり、この蒸気Wが蒸気タービンへ導かれて発電に供される。
【0015】
伝熱管11の外管12と内管13との隙間14に、伝熱管11の破損の有無を確認するために、第1検出ガスとしてのHeガスが正圧で流れる。つまり、外管12が破損した場合には、高速で大量に流れる液体金属ナトリウムNa中にHeガスが漏出する。このHeガスは、液体金属ナトリウムNaよりも軽いため、この液体金属ナトリウムNa中では泡となって上昇するが、液体金属ナトリウムNaの流速が速いため、Heガスの泡も液体金属ナトリウムNaと共に流れる。図1に示すように、蒸気発生器10において液体金属ナトリウムNaの流出管15に設けられたガス漏出第1検出器16が、サンプリングした液体金属ナトリウムNa中のHeの濃度を検出することで、Heガスの液体金属ナトリウムNaへの漏出を検出し、これにより伝熱管11の外管12の破損が確認される。
【0016】
また、伝熱管11の内管13が破損した場合には、内管13内を流れる水または蒸気W中へHeガスが漏出する。蒸気発生器10において蒸気Wの流出管17に設けられたガス漏出第2検出器18が、サンプリングした蒸気W中のHe濃度を検出することで、Heガスの蒸気Wへの漏出を検出し、これにより内管13の破損が確認される。
【0017】
尚、ガス漏出第2検出器18は、外管12と内管13との隙間14を流れるHeガスの圧力を検出して、その圧力の低下によりHeガスの漏出を検出して内管13の破損を確認するものでも良く、または、伝熱管14の上記隙間14内のHeガス中へ流入する内管13内の水または蒸気の濃度(湿分濃度)を検出することで、内管13の破損を確認するものでもよい。
【0018】
上述のようにしてガス漏出第1検出器16またはガス漏出第2検出器18により伝熱管11の外管12または内管13の破損が確認されたときに、高速増殖炉の運転が安全に停止される。しかし、上述の構成のみでは、どの伝熱管11のどの箇所が破損したかを特定することができない。そこで、まず、蒸気発生器10における多数本の伝熱管11のうち、どの伝熱管11が破損したかを探索する構成について説明する。
【0019】
図2〜図4に示す蒸気発生器10内の多数本の伝熱管11におけるそれぞれの外管12と内管13の隙間14へHeガス、または第2検出ガスとしてのHe3ガス(後述)を供給するガス供給ライン20は、図5に示すように、Heガスのガスボンベ21、He3ガスのガスボンベ22にそれぞれ切換弁23、24を介して連通された第1ヘッダ25に接続されて、それぞれに流量調整弁26Aを備えた複数本の第1ガス供給管26と、それぞれの第1ガス供給管26に連通された第2ヘッダ27に接続されて、それぞれに流量調整弁28Aを備えた複数本の第2ガス供給管28と、それぞれの第2ガス供給管28に連通された第3ヘッダ29に接続されて、それぞれに流量調整弁30Aを備えた複数本の第3ガス供給管30と、以下同様に、図示しないが、第(n−1)ガス供給管に連通された第n(n:自然数)ヘッダに接続されて、それぞれに流量調整弁を備えた複数本の第nガス供給管と、伝熱管11の外管12と内管13の隙間14に接続された端末ガス供給管31とを有して構成される。このように、第1ガス供給管26、第2ガス供給管28、第3ガス供給管30、…第nガス供給管、…端末ガス供給管31は、ツリー構造に構成されている。
【0020】
前記第1ガス供給管26は第1番目のガス供給管であり、蒸気発生器10内の多数本の伝熱管11を複数の第1番目の群毎にまとめてHeガスまたはHe3ガスを供給する。即ち、図6(A)の蒸気発生器10における全ての伝熱管11を複数(例えば4つ)の第1番目の群A1〜A4に区画したとき、複数本(例えば4本)の第1ガス供給管26のそれぞれは、これらの各群A1〜A4に属する伝熱管11の隙間14へHeガスまたはHe3ガスを供給する。
【0021】
図5に示す前記第2ガス供給管28は第2番目のガス供給管であり、第1番目の各群A1〜A4における多数本の伝熱管11を複数の第2番目の群毎にまとめてHeガスまたはHe3ガスを供給する。即ち、図6(A)の第1番目の各群A1〜A4における例えば群A1の伝熱管11を複数(例えば4つ)の第2番目の群B1〜B4に区画したとき、複数本(例えば4本)の第2ガス供給管28のそれぞれは、これらの各群B1〜B4に属する伝熱管11の隙間14へHeガスまたはHe3ガスを供給する。第1番目の他の群A2〜A4のそれぞれに属する伝熱管11についても同様に、複数(例えば4つ)の第2番目の群B5〜B8、B9〜B12、B13〜B16(共に不図示)に区画し、複数本の第2ガス供給管28のそれぞれは、これらの各群B5〜B16のそれぞれに属する伝熱管11の隙間14へHeガスまたはHe3ガスを供給する。
【0022】
図5に示す前記第3ガス供給管30は第3番目のガス供給管であり、第2番目の各群B1〜B16における多数本の伝熱管11を複数の第3番目の群毎にまとめてHeガスまたはHe3ガスを供給する。即ち、図6(B)の第2番目の各群B1〜B16における例えば群B1の伝熱管11を複数(例えば2つ)の第3番目の群C1、C2に区画したとき、複数本(例えば2本)の第3ガス供給管30のそれぞれは、これらの各群C1、C2に属する伝熱管11へHeガスまたはHe3ガスを供給する。第2番目の他の群B2〜B16のそれぞれに属する伝熱管11についても同様に、複数(例えば2つ)の第3番目の群C3〜C32(不図示)に区画し、複数本の第3ガス供給管30のそれぞれは、これらの各群C3〜C32のそれぞれに属する伝熱管11へHeガスまたはHe3ガスを供給する。
【0023】
図示しない第nガス供給管は第n番目のガス供給管であり、第(n−1)の番目の各群における多数本の伝熱管11を複数の第n番目の群毎にまとめてHeガスまたはHe3ガスを供給する。
【0024】
本実施の形態において、破損した伝熱管11がどれであるかを探索する際には、図5に示すように、ツリー構造に構成された上述の第1ガス供給管26、第2ガス供給管28、第3ガス供給管30、…第nガス供給管などのそれぞれの流量調整弁26A、28A、30Aなどを、ガス漏出第1検出器16及びガス漏出第2検出器18からの信号に連動して制御装置32が遠隔操作する。
【0025】
つまり、制御装置32は、まず、高速増殖炉の運転中と同様に、切換弁23を開操作し、切換弁24を閉操作して、第1ガス供給管26、第2ガス供給管28及び第3ガス供給管30等を介し、第1番目の全ての群A1〜A4に属する伝熱管11の外管12と内管13の隙間14へガスボンベ21内のHeガスを供給する。
【0026】
次に制御装置32は、第1番目の群A1〜A4のうちで、ガス漏出第1検出器16またはガス漏出第2検出器18により漏出を検出した第1番目の群(例えば図6(A)の群A1)に連なる下位の第2番目の群(例えば図6(B)の群B1〜B4)へHeガスを供給し、これらの第2番目の群B1〜B4のうちで、ガス漏出第1検出器16またはガス漏出第2検出器18により漏出を検出した群(例えば群B1)に連なる下位の第3番目の群(例えば図6(C)の群C1及びC2)へHeガスを供給し、これを繰り返すことで破損してHeガスが漏出した伝熱管11を探索する。
【0027】
具体的には、全ての流量調整弁26が開操作されて第1番目の群A1〜A4の全ての伝熱管11の隙間14へHeガスが供給されているときに、ガス漏出第1検出器16またはガス漏出第2検出器18がHeガスの漏出を検出した場合、制御装置32は、流量調整弁26Aのいずれか一つを順次開操作して、第1番目の群A1〜A4のうちいずれか一つの群の伝熱管11の隙間14へHeガスを供給し、いずれの群の伝熱管11へHeガスを供給しているときにガス漏出第1検出器16またはガス漏出第2検出器18がHeガスの漏出を検出したかを判定する。
【0028】
仮に、群A1の伝熱管11の隙間14へHeガスを供給しているときにガス漏出第1検出器16またはガス漏出第2検出器18がHeガスの漏出を検出したと判定したとき、制御装置32は次に、第2番目の群B1〜B16のうち、第1番目の群A1に連なる下位の群B1〜B4に対応する流量調整弁28Aのいずれか一つを順次開操作して、これらの第2番目の群B1〜B4のいずれか一つの群の伝熱管11の隙間14へHeガスを供給する。そして、制御装置32は、群B1〜B4のいずれの群の伝熱管11へHeガスを供給しているときにガス漏出第1検出器16またはガス漏出第2検出器18がHeガスの漏出を検出したかを判定する。
【0029】
仮に、群B1の伝熱管11の隙間14へHeガスを供給しているときにガス漏出第1検出器16またはガス漏出第2検出器18がHeガスの漏出を検出したと判定したとき、次に制御装置32は、第3番目の群C1〜C32のうち、第2番目の群B1に連なる下位の群C1、C2に対応する流量調整弁30Aのいずれか一つを順次開操作して、これらの第3番目の群C1、C2のいずれか一つの群の伝熱管11の隙間14へHeガスを供給する。そして、制御装置32は、群C1、C2のいずれの群の伝熱管11へHeガスを供給しているときにガス漏出第1検出器16またはガス漏出第2検出器18がHeガスの漏出を検出したかを判定する。
【0030】
上述の操作を繰り返すことにより、制御装置32は、外管12または内管13が破損してHeガスが漏出した伝熱管11を絞り込んで探索する。このとき、破損した伝熱管が同時に複数本存在する場合にも、絞り込みのルートを複数実行することで、複数本の破損伝熱管11を探索することが可能となる。
【0031】
上述のように破損してHeガスが漏出した伝熱管11を探索した後に、この破損した伝熱管11の破損個所を特定する構成について説明する。
【0032】
図1〜図3及び図7に示すように、この構成では、破損したまたは破損の可能性が高い伝熱管11の破損個所を特定するために、蒸気発生器10内の多数本の伝熱管11を挟んで、中性子発生装置33と中性子検出イメージセンサ34とが対向して配置されると共に、図5の切換弁24が開操作され、切換弁23が閉操作されて、ガスボンベ22内のHe3ガスが、第1ガス供給管26、第2ガス供給管28及び第3ガス供給管30などを経て、蒸気発生器10の多数本の伝熱管11における外管12と内管13の隙間14内へ供給される。
【0033】
前記中性子発生装置33は中性子を放出する。また、He3はHeの同位体であり、中性子を吸収し、且つβ線を放出する特性を有する。中性子発生装置33から放出された中性子は、伝熱管11の隙間14を流れ破損箇所から漏出して泡となったHe3ガスにより吸収される。前記中性子検出イメージセンサ34は、伝熱管11の隙間14を流れるHe3ガスと漏出して泡となったHe3ガスにより吸収された中性子の影を、液体金属ナトリウムNaを透過した中性子と共に2次元画像として検出する。
【0034】
通常、Heは中性子に対して吸収係数がほとんどゼロであるが、He3は、熱中性子に対する吸収断面積が1×10バーンであり、中性子を多量に吸収する。これに対し、液体金属ナトリウムNaは熱中性子に対する吸収断面積が3バーン程度であり、中性子の吸収が少なく、中性子は液体金属ナトリウムNaを透過する。従って、伝熱管11の外管12と内管13との隙間14にHe3ガスを流すことで、その流れた部分はHe3ガスが中性子を吸収して影となり、伝熱管11の破損箇所から漏出して泡となったHe3ガスも、中性子を吸収して影となって中性子検出イメージセンサ34に検出される。
【0035】
中性子検出イメージセンサ34の実際の2次元画像中には、図8(A)に示すように、中性子を吸収する伝熱管11等の構造物の影も同時に撮影されてしまう。そこで、中性子検出イメージセンサ34からの2次元画像を取り込む制御装置32は、伝熱管11の外管12と内管13の隙間14にHe3ガスを流す前に得られた中性子検出イメージセンサ34による2次元画像(図8(B))を基準画像とし、伝熱管11の外管12と内管13の隙間14にHe3ガスを流したときに得られた中性子検出イメージセンサ34による2次元画像(図8(A))に対して上記基準画像との差分処理を行い、He3ガスを流したときの変化のみを表示した画像(図8(C))を得る。
【0036】
この図8(C)には、図8(B)に表れた伝熱管11の影35が消去され、伝熱管11の隙間14内を流れるHe3ガスの影36と、伝熱管11の破損箇所から泡となって漏出したHe3ガスの影37のみが表示されている。このHe3ガスの泡の影37の位置、大きさ、流れ方向などから、伝熱管11の破損箇所の位置、寸法、性状などを検出することが可能となる。
【0037】
ここで、図1〜図3及び図7に示す前記中性子検出イメージセンサ34は、高感度で撮影時間が短い中性子検出用イメージインテンシファイアが好ましい。この中性子検出イメージセンサ34の撮影範囲は一般に蒸気発生器10の側面視領域よりも小さいため、蒸気発生器10内の伝熱管11における破損個所を検出するためには、中性子発生装置33と中性子検出イメージセンサ34とを対にした状態で移動させる必要があり、このために駆動装置38が設けられている。
【0038】
尚、伝熱管11の破損個所を検出する際には、液体金属ナトリウムNa中に漏出したHe3ガスの泡が鉛直上方へ流れるように、液体金属ナトリウムNaの流速を高速増殖炉の通常運転時よりも遅くする。更に、伝熱管11の内管13内へ漏出したHe3ガスを効率良く検出するために、中性子を吸収する水または蒸気を内管13内から除去して、この内管13内を中性子が透過しやすくしておく。
【0039】
前記駆動装置38は、特に図7に示すように、蒸気発生器10の底部周囲に設けられた回転可能なターンテーブル39と、このターンテーブル39に立設された複数本、例えば4本の支柱40と、これらの支柱40に昇降可能に設けられた昇降スライダ41と、一対の昇降スライダ41間に架け渡されたレール42と、各レール42に対し水平方向に移動可能なスライダ43とを有して構成され、スライダ43の一方に中性子発生装置33が、他方に中性子検出イメージセンサ34がそれぞれ設置される。中性子発生装置33及び中性子検出イメージセンサ34は、スライダ43によって蒸気発生器10の水平方向に、昇降スライダ41によって蒸気発生器10の鉛直方向に、ターンテーブル39によって蒸気発生器10の水平断面における回転方向に、それぞれ移動可能に設けられ、蒸気発生器10における伝熱管11の破損箇所に対応した位置に接近して位置付けられる。
【0040】
前記中性子発生装置33及び中性子検出イメージセンサ34は、制御装置32によって、中性子検出イメージセンサ34により検出された2次元画像による画像判定に連動して移動するよう制御される。つまり、蒸気発生器10の伝熱管11から漏出したHe3ガスの泡は、蒸気発生器10の上部へ向かって上昇するため、制御装置32は、中性子発生装置33及び中性子検出イメージセンサ34を、昇降スライダ41の動作によって蒸気発生器10の例えば最上位置に位置付ける。次に制御装置32は、スライダ43、ターンテーブル39を動作させて、中性子発生装置33及び中性子検出イメージセンサ34を水平方向に移動させ、蒸気発生器10の水平断面において回転させて、He3ガスの泡を検出する。更に、制御装置32は、その位置から昇降スライダ41を動作させて、中性子発生装置33及び中性子検出イメージセンサ34を鉛直下方へ移動させ、He3ガスの泡の発生箇所を検出して、伝熱管11の破損個所を特定する。
【0041】
以上のように構成されたことから、本実施の形態によれば次の効果(1)〜(4)を奏する。
【0042】
(1)蒸気発生器10における伝熱管11の外管12と内管13の隙間14を流れるHeガスが伝熱管11の破損個所から漏出したことをガス漏出第1検出器16、ガス漏出第2検出器18が検出することで、伝熱管11の破損の有無を確認し、また中性子発生装置33からの中性子が、外管12と内管13の隙間14を流れて破損個所から漏出したHe3ガスにより吸収され、そのときの中性子の影を中性子検出イメージセンサ34が検出することで、伝熱管11の破損個所を特定する。これらのことから、伝熱管11の破損の有無及び破損個所を高精度且つ短時間に検出できる。
【0043】
(2)蒸気発生器10における多数本の伝熱管11を複数の第1番目の群A1〜A4毎にまとめてHeガスを供給し、第1番目の各郡A1〜A4における多数本の伝熱管11を複数の第2番目の群B1〜B16毎にまとめてHeガスを供給し、以下同様に、第(n−1)番目の各群における多数本の伝熱管11を複数の第n番目の群毎にまとめてHeガスを供給し、漏出を確認した群(例えば群A1)に連なる下位の郡(例えば群B1〜B4)に属する伝熱管11における外管12と内管13の隙間14へHeガスを供給することで、破損してHeガスが漏出した伝熱管11を探索する。この結果、蒸気発生器10の全ての伝熱管11に対して個別に破損の有無を確認して、破損した伝熱管11を探索する場合に比べ、破損した伝熱管11の探索の効率を大幅に向上させることができる。
【0044】
(3)蒸気発生器10における伝熱管11の外管12と内管13の隙間14にHe3ガスを流す前に得られた中性子検出イメージセンサ34による2次元画像を基準画像とし、伝熱管11の外管12と内管13の隙間14にHe3ガスを流したときに得られた中性子検出イメージセンサ34による2次元画像に対して前記基準画像との差分処理を行い、He3ガスを流したときの変化のみを表示可能としたので、He3による中性子の吸収を高感度に検出でき、伝熱管11の破損個所を容易に特定できる。
【0045】
(4)ターンテーブル39、昇降スライダ41及びスライダ43を備える駆動装置38が、制御装置32による制御によって、中性子検出イメージセンサ34により検出された2次元画像による画像判定に連動して、中性子発生装置33及び中性子検出イメージセンサ34を移動させる。このため、この駆動装置38によって、He3ガスの泡の発生箇所を追跡することができる。更に、中性子検出イメージセンサ34を伝熱管11の破損個所に接近させ、この中性子検出イメージセンサ34により破損箇所を拡大して撮影できる。これらのことから、伝熱管11の破損個所を効率良く特定することができる。
【0046】
[B]第2の実施の形態(図9、図10)
図9は、本発明に係る熱交換器の伝熱管破損検出装置における第2の実施の形態が適用された高速増殖炉の蒸気発生装置における伝熱管破損検出装置のガス漏出検出器の一例を示し、(A)がガス漏出第1検出器の構成図、(B)がガス漏出第2検出器の構成図である。図10は、本発明に係る熱交換器の伝熱管破損装置における第2の実施の形態が適用された高速増殖炉の蒸気発生器における伝熱管破損検出装置のガス漏出検出器の他の例を示し、(A)がガス漏出第1検出器の構成図、(B)がガス漏出第2検出器の構成図である。この第2の実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0047】
本実施の形態は、高速増殖炉の運転中に蒸気発生器10の伝熱管11における外管12と内管13の隙間14へHeガスを流し、ガス漏出第1検出器16A及びガス漏出第2検出器18A、またはガス漏出第1検出器16B及びガス漏出第2検出器18Bを用いて伝熱管11の破損が確認され、高速増殖炉が停止された後、伝熱管11の隙間14へHe3ガスを流し、ガス漏出第1検出器16A及びガス漏出第2検出器18A、またはガス漏出第1検出器16B及びガス漏出第2検出器18Bを用いて、どの伝熱管11が破損したかを探索するものである。ここで、ガス漏出第1検出器16A及びガス漏出第2検出器18Aが、Heの濃度検出部(不図示)の他に放射線検出部45(図9)を有し、ガス漏出第1検出器16B及びガス漏出第2検出器18Bが、Heの濃度検出部(不図示)の他に、中性子源46及び中性子検出器47(図10)を有して構成されている。
【0048】
HeガスからHe3ガスへの切換は、図5に示す切換弁24を開操作し、切換弁23を閉操作することで、ガスボンベ22内のHe3ガスを第1ガス供給管26、第2ガス供給管28、第3ガス供給管30などを経て蒸気発生器10の多数本の伝熱管11における外管12と内管13の隙間14へ供給する。
【0049】
図1及び図9に示すように、蒸気発生器10における液体金属ナトリウムNaの流出管15に設けられたガス漏出第1検出器16Aは、伝熱管11の外管12の破損個所から液体金属ナトリウムNa中に漏出したHe3ガスが放出するβ線を検出する前記放射線検出部45を有する。また、蒸気発生器10において蒸気Wが流出する流出管17に設けられたガス漏出第2検出器18Aは、伝熱管11の内管13の破損個所から蒸気W中に漏出したHe3ガスが放出するβ線を検出する前記放射線検出部45を有する。これらの放射線検出部45がβ線を検出することで、液体金属ナトリウムNaまたは蒸気W中に漏出したHe3の濃度が検出される。
【0050】
また、他の態様としては、図1及び図10に示すように、蒸気発生器10における液体金属ナトリウムNaの流出管15に設けられたガス漏出第1検出器16Bは、中性子源46及び中性子検出器47を備え、伝熱管11の外管12の破損個所から液体金属ナトリウムNa中に漏出したHe3ガスによって、中性子源46から放出された中性子が吸収されたとき、残りの中性子を中性子検出器47が検出することで、液体金属ナトリウムNa中のHe3の濃度を検出する。また、蒸気発生器10における蒸気Wの流出管17に設けられたガス漏出第2検出器18Bは、中性子源46及び中性子検出器47を備え、伝熱管11の内管13の破損個所から蒸気W中に漏出したHe3ガスによって、中性子源46から放出された中性子が吸収されたとき、残りの中性子を中性子検出器47が検出することで、蒸気W中のHe3の濃度を検出する。
【0051】
従って、本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態の効果(1)〜(4)と同様な効果を奏するほか、次の効果(5)を奏する。
【0052】
(5)ガス漏出第1検出器16A及びガス漏出第2検出器18Aが、He3ガスから放出されるβ線を検出してHe3の濃度を検出し、またガス漏出第1検出器16B及びガス漏出第2検出器18Bが、He3ガスが吸収する中性子に基づいてHe3の濃度を検出する。このため、本実施形態では、前記実施形態のガス漏出第1検出器16、ガス漏出第2検出器18がHeの濃度を検出する場合に比べて、He3の濃度検出の検出感度を向上させることができる。この結果、蒸気発生器10における伝熱管11のうち、ガス漏出第1検出器16A及びガス漏出第2検出器18A、またはガス漏出第1検出器16B及びガス漏出第2検出器18Bを用いて行なう破損した伝熱管11の探索を確実且つ容易に実現できる。
【0053】
[C]第3の実施の形態(図11)
図11は、本発明に係る熱交換器の伝熱管破損検出装置における第3の実施の形態が適用された高速増殖炉の蒸気発生器における伝熱管破損検出装置において、破損個所の概略位置を求めるための説明図であり、(A)が蒸気発生器内の伝熱管の概略管路図、(B)がHe3ガスへの切換時点とHe3の濃度検出時点のタイミングチャートである。この第3の実施の形態において、前記第1及び第2の実施の形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0054】
この第3の実施の形態においても、蒸気発生器10(図1)におけるどの伝熱管11が破損しているかを探索する際に、伝熱管11の外管12と内管13の隙間14へHeガスに代えてHe3ガスが供給され、He3の濃度が、放射線検出部45(図9)を備えたガス漏出第1検出器16A及びガス漏出第2検出器18Aにより、または中性子源46及び中性子検出器47(図10)を備えたガス漏出第1検出器16B及びガス漏出第2検出器18Bにより、それぞれ第2の実施の形態と同様にして検出される。更に、本実施の形態では、探索された破損伝熱管11の破損箇所の概略位置を制御装置32が、He3ガスの切換時点からガス漏出第1検出器16A、16Bまたはガス漏出第2検出器18A、18BによるHe3の濃度検出時点までの時間に基づいて検出する。
【0055】
つまり、制御装置32は、図11に示すように、ガスボンベ22内のHe3ガスを第1ガス供給管16、第2ガス供給管28などを経て蒸気発生器10の多数本の伝熱管11における外管12と内管13の隙間14へ、切換弁24を瞬時に開操作し、切換弁23を瞬時に閉操作してパルス状に切り換えて流す。図11(B)の符号Eは、He3ガスがパルス状に流れたときの波形を示し、この時点をt0とする。次に制御装置32は、ガス漏出第1検出器16A、16Bまたはガス漏出第2検出器18A、18B、例えばガス漏出第1検出器16A、16Bが蒸気発生器10の液体金属ナトリウムNa中のHe3の濃度変化(後述の波形F1、F2)をそれぞれ検出した時点t1、t2を計測する。図11(B)中の符号F1は、伝熱管11の下流部Pが破損したときにガス漏出第1検出器16A、16Bにより検出されたHe3の濃度変化を示す波形である。また、符号F2は、伝熱管11の上流部Qが破損したときにガス漏出第1検出器16A、16Bにより検出されたHe3の濃度変化を示す波形である。
【0056】
一般に、蒸気発生器10において多数本の伝熱管11の外管12と内管13の隙間14を流れるHe3ガスの流速は、蒸気発生器10内を流れる液体金属ナトリウムNaの流速よりも速いため、蒸気発生器10内の伝熱管11の下流部Pが破損した場合、He3ガスへの切換時点t0からガス漏出第1検出器16A、16BによりHe3の濃度変化が検出される時点t1までの時間T1は短時間となる。これに対し、蒸気発生器10内の伝熱管11の上流部Qが破損した場合には、He3ガスへの切換時点t0からガス漏出第1検出器16A、16BによりHe3の濃度変化が検出される時点t2までの時間T2は、漏出したHe3ガスが流速の遅い液体金属ナトリウムNaの流れに乗るため長時間となる。
【0057】
従って、制御装置32は、蒸気発生器10内の伝熱管11における複数の破損箇所の各位置と、各破損個所からHe3ガスが漏出したときに、He3ガスへの切換時点からガス漏出第1検出器16A、16BによるHe3の濃度変化検出時点までの時間との関係を試験等により予め測定し、校正値として保存しておく。そして、制御装置32は、He3ガスへの切換時点t0からガス漏出第1検出器16A、16BによりHe3の濃度変化が検出された時点t1、t2までの時間T1、T2を実際に求め、この時間T1、T2を予め求めた前記校正値と比較することで、He3ガスが漏出した伝熱管11の破損箇所の概略位置を検出することが可能となる。
【0058】
尚、本実施の形態では、ガス漏出第1検出器16A、16Bが液体金属ナトリウムNa中のHe3の濃度変化を検出する場合を述べたが、伝熱管11の外管12と内管13の隙間14を流れるHe3ガスの流速よりも遅い流速の水または蒸気W中へHe3ガスが漏出したとき、この内管13の内側を流れる水または蒸気W中のHe3の濃度変化を、ガス漏出第2検出器18A、18Bにより検出する場合についても同様である。
【0059】
従って、本実施の形態によれば、前記第1及び第2の実施の形態の効果(1)〜(5)と同様な効果を奏するほか、次の効果(6)を奏する。
【0060】
(6)He3ガスへの切換時点t0から、ガス漏出第1検出器16A、16Bまたはガス漏出第2検出器18A、18BによるHe3の濃度変化検出時点t1、t2…までの時間T1、T2、…に基づいて、蒸気発生器10内の伝熱管11における破損箇所の概略位置が検出されるので、中性子発生装置33及び中性子検出イメージセンサ34を用いて後に実施する伝熱管11の破損箇所の特定を、迅速かつ効率的に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る熱交換器の伝熱管破損検出装置における第1の実施の形態が適用された高速増殖炉の蒸気発生器における伝熱管破損検出装置を示す概略構成図。
【図2】図1のII矢視図。
【図3】図2のIII矢視図
【図4】図3の伝熱管(2重伝熱管)を、一部を破断して示す側面図。
【図5】図2における多数本の伝熱管へ、この伝熱管の破損を検出するための検出ガスを供給するガス供給ラインを示す管路図。
【図6】図2における多数本の伝熱管の水平断面であり、(A)は伝熱管の第1番目の各群A1〜A4を示す説明図、(B)は伝熱管の第2番目の各群B1〜B4を示す説明図、(C)は伝熱管の第3番目の各群C1、C2を示す説明図、(D)は図6(C)の第3番目の群C1を示す説明図。
【図7】図1の伝熱管破損検出装置を示す斜視図。
【図8】図1の中性子検出イメージセンサによる撮影画像を示し、(A)はHe3ガスを流したときの撮影画像図、(B)はHe3ガスを流す前の撮影画像図、(C)は(A)の画像から(B)の画像を差し引いたときの画像図。
【図9】本発明に係る熱交換器の伝熱管破損検出装置における第2の実施の形態が適用された高速増殖炉の蒸気発生装置における伝熱管破損検出装置のガス漏出検出器の一例を示し、(A)はガス漏出第1検出器の構成図、(B)はガス漏出第2検出器の構成図。
【図10】本発明に係る熱交換器の伝熱管破損装置における第2の実施の形態が適用された高速増殖炉の蒸気発生器における伝熱管破損検出装置のガス漏出検出器の他の例を示し、(A)はガス漏出第1検出器の構成図、(B)はガス漏出第2検出器の構成図。
【図11】本発明に係る熱交換器の伝熱管破損検出装置における第3の実施の形態が適用された高速増殖炉の蒸気発生器における伝熱管破損検出装置において、破損個所の概略位置を求めるための説明図であり、(A)は蒸気発生器内の伝熱管の概略管路図、(B)はHe3ガスへの切換時点とHe3の濃度検出時点とのタイミングチャート。
【符号の説明】
【0062】
10 蒸気発生器(熱交換器)
11 伝熱管
12 外管
13 内管
14 隙間
16、16A、16B ガス漏出第1検出器
18、18A、18B ガス漏出第2検出器
26 第1ガス供給管
28 第2ガス供給管
30 第3ガス供給管
26A、28A、30A 流量調整弁
32 制御装置
33 中性子発生装置
34 中性子検出イメージセンサ
37 影
38 駆動装置
45 放射線検出部
46 中性子源
47 中性子検出器
Na 液体金属ナトリウム(第1流体)
W 水または蒸気(第2流体)
A1〜A4 第1番目の群
B1〜B4 第2番目の群
C1、C2 第3番目の群
t0 He3ガスへの切換時点
t1、t2 He3の濃度変化検出時点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本の伝熱管のそれぞれが外管と内管からなる2重伝熱管であり、前記外管の外側を流れる第1流体と、前記内管の内側を流れる第2流体との間で熱交換を行なう熱交換器であって、
前記伝熱管の破損の有無を確認するために、前記外管と前記内管の隙間を流れる第1検出ガスが、前記伝熱管の破損箇所から漏出したことを検出するガス漏出検出器と、
前記伝熱管の前記破損箇所を特定するために、前記伝熱管を挟んで対向配置された中性子発生装置と中性子検出イメージセンサとを有し、
前記中性子発生装置から放出された中性子が、前記外管と前記内管の隙間を流れて前記破損箇所から漏出した第2検出ガスにより吸収され、そのときの中性子の影を前記中性子検出イメージセンサが2次元画像として検出することを特徴とする熱交換器の伝熱管破損検出装置。
【請求項2】
多数本の伝熱管におけるそれぞれの外管と内管の隙間へ第1または第2検出ガスを供給するガス供給ラインは、
多数本の前記伝熱管を複数の第1番目の群毎にまとめて前記第1または第2検出ガスを供給し、それぞれに流量調整弁を備えた複数の第1番目のガス供給管と、
前記第1番目の各群における多数本の前記伝熱管を複数の第2番目の群毎にまとめて前記第1または第2検出ガスを供給し、それぞれに流量調整弁を備えた複数の第2番目のガス供給管と、
以下同様に、第(n−1)番目の各群における多数本の前記伝熱管を複数の第n(n:自然数)番目の群毎にまとめて前記第1または第2検出ガスを供給し、それぞれに流量調整弁を備えた複数の第n番目のガス供給管とを有し、
このようなツリー構造の第1番目から第n番目までの前記ガス供給管の前記流量調整弁をガス漏出検出器の信号に連動させて操作して、漏出を検出した前記群に連なる前記下位の群の前記伝熱管における前記外管と前記内管の隙間へ前記第1または第2検出ガスを供給し、破損して前記第1または第2検出ガスが漏出した前記伝熱管を探索するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の伝熱管破損検出装置。
【請求項3】
前記伝熱管の外管と内管の隙間に、放射線を放出する第2検出ガスが流れ、
ガス漏出検出器は、前記外管と前記内管の破損箇所から漏出した前記第2検出ガスからの放射線を検出する放射線検出部を備え、この放射線の検出により、漏出した前記第2検出ガスの濃度を検出するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の伝熱管破損検出装置。
【請求項4】
前記伝熱管の外管と内管の隙間に、中性子を吸収する第2検出ガスが流れ、
ガス漏出検出器は、中性子源と中性子検出部を備え、前記中性子源から放出された中性子が前記第2検出ガスにより吸収されたときの残りの中性子を前記中性子検出部が検出することで、漏出した前記第2検出ガスの濃度を検出するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の伝熱管破損検出装置。
【請求項5】
前記伝熱管の外管と内管の隙間に、第1検出ガスから第2検出ガスをパルス状に切り換えて流し、このときの切換時点からガス漏出検出器により第2検出ガスが検出される時点までの時間を、予め求めた校正値と比較することで、前記第2検出ガスが漏出した前記伝熱管の破損箇所の概略位置を求めるよう構成されたことを特徴とする請求項3または4に記載の熱交換器の伝熱管破損検出装置。
【請求項6】
前記中性子検出イメージセンサが、高感度で撮影時間の短い中性子検出用イメージインテンシファイアであることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の伝熱管破損検出装置。
【請求項7】
前記伝熱管の外管と内管の隙間に第2検出ガスを流す前に得られた中性子検出イメージセンサによる2次元画像を基準画像とし、前記外管と前記内管の隙間に前記第2検出ガスを流したときに得られた前記中性子検出イメージセンサによる2次元画像に対して前記基準画像との差分処理を行い、前記第2検出ガスを流したときの変化のみを表示可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の伝熱管破損検出装置。
【請求項8】
前記中性子発生装置と中性子検出イメージセンサは駆動装置により、熱交換器の水平方向と、前記熱交換器の鉛直方向と、前記熱交換器の水平断面における回転方向との少なくとも1方向に移動可能に設けられて、前記熱交換器の伝熱管における破損箇所に対応する位置に位置づけられるよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の伝熱管破損検出装置。
【請求項9】
前記駆動装置は、中性子検出イメージセンサにより検出された2次元画像による画像判定に連動して中性子発生装置及び前記中性子検出イメージセンサを移動させるよう構成されたことを特徴とする請求項8に記載の熱交換器の伝熱管破損検出装置。
【請求項10】
前記第1検出ガスがHeガスであり、第2検出ガスが、Heガスの同位体であって、放射線としてのベータ線を放出し、且つ中性子を吸収可能なHe3ガスであることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の伝熱管破損検出装置。
【請求項11】
前記熱交換器が高速増殖炉の蒸気発生器であり、第1流体が液体金属ナトリウムであり、第2流体が水であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の伝熱管破損検出装置。
【請求項12】
多数本の伝熱管のそれぞれが外管と内管からなる2重伝熱管であり、前記外管の外側を流れる第1流体と、前記内管の内側を流れる第2流体との間で熱交換を行なう熱交換器であって、
前記外管と前記内管の隙間を流れる第1検出ガスが、前記伝熱管の破損箇所から漏出したことをガス漏出検出器が検出することで、前記伝熱管の破損の有無を確認し、
前記伝熱管に破損があった場合に、前記中性子発生装置から放出された中性子が、前記外管と前記内管の隙間を流れて前記破損箇所から漏出した第2検出ガスにより吸収され、そのときの中性子の影を、前記中性子発生装置と前記伝熱管を挟んで対向配置された中性子検出イメージセンサが2次元画像として検出することで、前記伝熱管の前記破損箇所を特定することを特徴とする熱交換器の伝熱管破損検出方法。
【請求項13】
多数本の伝熱管におけるそれぞれの外管と内管の隙間へ第1または第2検出ガスを供給する際に、
多数本の前記伝熱管を複数の第1番目の群毎にまとめて前記第1または第2検出ガスを供給し、
漏出を確認した前記第1番目の群における多数本の前記伝熱管を複数の第2番目の群毎にまとめて前記第1または第2検出ガスを供給し、
以下同様に、漏出を確認した第(n−1)番目の群における多数本の前記伝熱管を複数の第n(n:自然数)番目の群毎にまとめて前記第1または第2検出ガスを供給し、
漏出を検出した前記群に連なる前記下位の群の前記伝熱管における前記外管と前記内管の隙間へ前記第1または第2検出ガスを供給して、破損して前記第1または第2検出ガスが漏出した前記伝熱管を探索することを特徴とする請求項12に記載の熱交換器の伝熱管破損検出方法。
【請求項14】
前記第1検出ガスがHeガスであり、第2検出ガスが、Heガスの同位体であって、中性子を吸収可能なHe3ガスであることを特徴とする請求項12に記載の熱交換器の伝熱管破損検出方法。
【請求項15】
前記熱交換器が高速増殖炉の蒸気発生器であり、第1流体が液体金属ナトリウムであり、第2流体が水であることを特徴とする請求項12に記載の熱交換器の伝熱管破損検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−78459(P2010−78459A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247143(P2008−247143)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】