説明

熱処理装置

【課題】縦型の熱処理炉内に混入するパーティクルを低減し、基板(ウエハ)へのパーティクル付着を抑えることができる技術を提供すること。
【解決手段】ウエハボート3を縦型の熱処理炉2内に、当該熱処理炉の下方側に形成された炉口20から搬入し、熱処理を行う装置において、前記ウエハボート3が前記熱処理炉2の下方側に位置しているときに、前記炉口20を塞ぐ蓋体61を設ける。この蓋体61は前記炉口20を塞ぐ位置と開く位置との間で移動自在に設けられており、蓋体61が前記炉口20を塞ぐ位置から外れているときに、当該蓋体61の上面のパーティクルをクリーニングノズル7により吸引して除去する。このため、次に蓋体61が炉口20を塞いだ時に、熱処理炉2内に持ち込まれるパーティクル量を低減できるので、ウエハへのパーティクル付着を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハ等の基板を基板保持具に搭載して縦型熱処理炉に搬入し、所定の熱処理を行う熱処理装置において、基板へのパーティクルの付着を抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の一つとして、多数の半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)に対して一括(バッチ)で熱処理を行う縦型熱処理装置がある。この熱処理装置では、ウエハを棚状に保持したウエハボートを熱処理炉内にロードし、多数枚のウエハに対して同時に熱処理を行った後、ウエハボートを熱処理炉からアンロードすることが行われている。
【0003】
前記熱処理炉は下方側が開口しており、ウエハボートをボートエレベータにて上昇させることによって、ウエハボートを熱処理炉内にロードするように構成されている。この際、熱処理炉の開口部は、ボートエレベータに一体に設けられた蓋体により塞がれるようになっている。また、特許文献1に記載されるように、ウエハボートをアンロードしたときには、熱処理炉内の熱の放出を抑えるために、前記開口部は前記蓋体とは別個に設けられたシャッタ部により塞がれるように構成されている。
【0004】
ところで、熱処理炉内に微小な塵埃(パーティクル)が存在すると、熱処理炉内ではウエハのバッチ処理が行われているため、多数枚のウエハがパーティクルにより汚染されることになり、製品の歩留まりを著しく低下させてしまう。このため、熱処理炉の下方側のローディングエリアにおいては、横方向に流れる清浄な気流を形成することにより、雰囲気の清浄度を高めている。また、熱処理炉の内部に対しては、熱処理炉内にクリーニングガスを供給して定期的にクリーニングを行っている。このクリーニングは、熱処理炉にて成膜処理を行うと、熱処理炉の内壁にも膜が堆積し、この膜厚が大きくなると、膜が剥がれてパーティクルの原因となることから、熱処理炉内に堆積した膜を除去するために行うものである。しかしながら、ウエハWへのパーティクルの付着量をさらに抑えて、製品の歩留まりを向上させるために、熱処理炉内のパーティクルをより一層低減することが要求されている。
【0005】
ところで、特許文献2には、化学的気相成長装置において、触媒体ホルダの開口部をシャッタにより閉じたときに、反応室内にクリーニングガスを導入してクリーニングする技術が記載されている。従ってこの例のクリーニングは、熱処理炉内のクリーニングに相当し、この手法によっても本発明の課題を解決することは困難である。
【0006】
【特許文献1】特開2003−297769号公報(図1)
【特許文献2】特開2000−150498号公報(段落0028、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、その目的は、熱処理炉内に混入するパーティクルを低減し、基板へのパーティクル付着を抑えることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明の熱処理装置は、複数の基板が棚状に保持された基板保持具を縦型の熱処理炉内に、当該熱処理炉の下方側に形成された開口部から搬入し、基板に対して熱処理を行う装置において、
前記熱処理炉の下方側に位置するローディング室と、
このローディング室内に設けられ、熱処理炉内と熱処理炉の下方側との間で前記基板保持具を昇降させる保持具昇降機構と、
前記基板保持具が前記熱処理炉の下方側に位置しているときに、前記開口部を塞ぐ蓋体と、
前記蓋体を、前記開口部を塞ぐ位置と、前記開口部を開く位置との間で移動させる蓋体移動機構と、
前記ローディング室内に設けられ、前記蓋体が前記開口部を塞ぐ位置から外れているときに、当該蓋体の上面のパーティクルを吸引して除去するパーティクル除去機構と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の基板が棚状に保持された基板保持具を縦型の熱処理炉内に、当該熱処理炉の下方側に形成された開口部から搬入し、基板に対して熱処理を行う装置において、前記基板保持具が熱処理炉の下方側に位置しているときに、当該熱処理炉の開口部を塞ぐ蓋体を設け、この蓋体が前記開口部を塞ぐ位置から外れているときに、当該蓋体の上面のパーティクルを吸引して除去している。このため、次に蓋体が前記熱処理炉の開口部を塞いだ時に、当該熱処理炉内に持ち込まれるパーティクル量を低減できるので、基板へのパーティクル付着を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる縦型熱処理装置の一実施の形態の全体構成を示す平面図である。
【図2】前記縦型熱処理装置を側方側から見た縦断面図である。
【図3】前記縦型熱処理装置を後方側から見た縦断面図である。
【図4】前記縦型熱処理装置に設けられる熱処理炉、ウエハボート、蓋体及びクリーニングノズルを示す概略斜視図である。
【図5】前記クリーニングノズルを示す幅方向の断面図である。
【図6】前記クリーニングノズルを示す概略斜視図である。
【図7】前記クリーニングノズルを示す長さ方向の縦断面図である。
【図8】本発明の作用を説明するための平面図である。
【図9】本発明の作用を説明するための側面図である。
【図10】本発明の作用を説明するための側面図である。
【図11】本発明の作用を説明するための側面図である。
【図12】本発明の作用を説明するための側面図である。
【図13】本発明の作用を説明するための平面図である。
【図14】本発明の作用を説明するための平面図である。
【図15】本発明の縦型熱処理装置の他の例を示す平面図である。
【図16】本発明の前記他の例を示す概略斜視図である。
【図17】本発明の前記他の例を示す側面図である。
【図18】本発明のクリーニングノズルの他の例を示す平面図である。
【図19】本発明のクリーニングノズルのさらに他の例を示す平面図である。
【図20】本発明のクリーニングノズルのさらに他の例を示す幅方向の断面図である。
【図21】本発明のパーティクル除去機構の他の例を示す斜視図である。
【図22】本発明の蓋体開閉機構の他の例を示す斜視図である。
【図23】パーティクルの検証実験の結果を示す特性図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明に係る縦型熱処理装置の一実施の形態について説明する。図1は前記縦型熱処理装置の内部を示す平面図であり、以降、図1において、紙面奥側を前方側、紙面手前側を後方側、図1中X方向を左右方向、図1中Y方向を前後方向として説明を続ける。図2は前記縦型熱処理装置を右側方側から見た縦断面図、図3は後方側から見た縦断面図である。図中1は装置の外装体を構成する筐体であり、この筐体1内には、基板であるウエハWを収納したキャリアCを装置に対して搬入、搬出するための搬入搬出領域S1と、キャリアC内のウエハを搬送して後述の熱処理炉内に搬入するためのローディング室であるローディングエリアS2と、が設けられている。搬入搬出領域S1とローディングエリアS2とは隔壁11により仕切られており、搬入搬出領域S1は大気雰囲気とされ、ローディングエリアS2は例えば清浄乾燥気体雰囲気(パーティクル及び有機成分が少なく、露点−60℃以下の空気)とされている。
【0012】
前記搬入搬出領域S1は、手前側の第1の領域12と奥側の第2の領域13とからなり、第1の領域12には、キャリアCを載置するための第1の載置台14が設けられている。キャリアCとしては、例えば直径300mmのウエハWが複数枚例えば25枚棚状に配列されて収納され、前面の図示しない取り出し口が蓋体により塞がれた密閉型のFOUPが用いられる。前記第2の領域13には第2の載置台15とキャリア保管部16が設けられると共に、キャリアCを第1の載置台14、第2の載置台15並びにキャリア保管部16の間で搬送するキャリア搬送機構17が設けられている。図1中10は、キャリアC内とローディングエリアS2とを連通する開口部であり、18は当該開口部10の扉、19はキャリアCの蓋体を開閉する蓋開閉機構である。
【0013】
前記ローディングエリアS2の奥側上方には、下端が炉口20として開口する縦型の熱処理炉2が設けられている。前記炉口20は本発明の開口部をなすものである。この熱処理炉2には、例えば図4に示すように、当該熱処理炉2内に処理ガスを供給するための処理ガス供給路2Aと、この熱処理炉2内の雰囲気を排気するための排気路2Bとが接続されている。これら処理ガス供給路2A及び排気路2Bは夫々図示しない処理ガス供給源及び排気機構に接続されている。なお、図1〜図3においては、図示の便宜上、処理ガス供給路2A及び排気路2Bを省略している。
【0014】
また、前記ローディングエリアS2内には、例えば2基のウエハボート3(3A,3B)が設けられている。これらウエハボート3(3A,3B)は、夫々多数枚のウエハWを棚状に配列保持する基板保持具をなすものであり、例えば石英により構成されている。ここで、ウエハボート3について図4を参照して簡単に説明すると、天板31と底板32との間に例えば4本の支柱33が設けられており、この支柱33に形成された図示しない溝部にウエハWの周縁部が保持されて、例えば100枚のウエハWを所定の間隔で上下に配列して保持できるように構成されている。前記底板32の下部には支持部34が設けられている。
【0015】
そして、ローディングエリアS2内には、保持具昇降機構をなすボートエレベータ41が設けられている。このボートエレベータ41は、上下方向に伸びるガイドレール43に沿って移動機構42により昇降自在に構成され、その上には、前記熱処理炉2の蓋体21と断熱材22とがこの順序で設けられている。前記断熱材22は例えば石英等により構成されており、その上にウエハボート3が搭載されるようになっている。
【0016】
こうしてウエハボート3は、ボートエレベータ41により熱処理炉2内のロード位置とアンロード位置との間で昇降されるようになっている。前記ロード位置とは、ウエハボート3が熱処理炉2内に搬入され、熱処理炉2の炉口20を蓋体21が覆う処理位置であり、前記アンロード位置とは、ウエハボート3が熱処理炉2の下方側に搬出される位置(図2〜図4に示す位置)である。
【0017】
また、ローディングエリアS2には、ウエハボート3を載置するための第1のステージ44及び第2のステージ45と、これらボートエレベータ41、第1のステージ44及び第2のステージ45の間でウエハボート3の移載を行うボート搬送機構46が設けられている。このボート搬送機構46は、ウエハボート3の支持部34を載置する保持アーム47が、昇降自在、水平軸周りに回転自在、進退自在に構成されている。なお図2では図示の便宜上、ボート搬送機構46を省略している。
【0018】
さらに、ローディングエリアS2には、例えば第1のステージ44に隣接してウエハ搬送機構48が設けられている。このウエハ搬送機構48は、例えば第1のステージ44上のウエハボート3、ボートエレベータ上41のウエハボート3及び第2の載置台15上のキャリアCの間でウエハの移載を行うものである。ウエハ搬送機構48は、ウエハWを保持する複数枚例えば5枚のフォーク49と、これらフォーク49を進退自在に支持する搬送基体49aとを備えており、この搬送基体49aは、鉛直軸回りに回転自在及び昇降自在に構成されている。
【0019】
さらに、ローディングエリアS2における熱処理炉2以外の領域には、例えば熱処理炉2の開口部近傍の高さ位置に天井部23が形成されている。また、ローディングエリアS2の左右方向の一方側の側面には、フィルタユニット5が設けられている。このフィルタユニット5は、図3に示すように、フィルタ部51と通気空間52とを備えており、この通気空間52は、ローディングエリアS2の底板24の下方に形成された通気室25と連通するように構成されている。
【0020】
前記通気室25の一端側には第1のファン53及び第1のゲートバルブ54が設けられている。また、その他端側は第2のゲートバルブ55及び第2のファン56を介して工場の排気設備に接続されている。図1及び図3中26は、底板24に形成された排気口である。
【0021】
さらに、ローディングエリアS2における前記天井部23の近傍には、熱処理炉2の炉口20を塞ぐための蓋体61を備えた蓋体開閉機構6が設けられている。前記蓋体61は、例えば熱処理炉2後にウエハボート3がアンロードされたときに、当該熱処理炉2の炉口20を塞ぐために設けられており、例えばステンレスにより前記炉口20を塞ぐ大きさに形成されている。
【0022】
この蓋体開閉機構6は、図4に示すように、蓋体61を支持する支持部材62と、蓋体61を、前記炉口20を塞ぐ位置と、炉口20を開く位置との間で移動させる蓋体移動機構63と、を備えている。前記炉口20を開く位置とは、この例では炉口20の側方の位置であり、ここを待機位置としている。また、前記蓋体移動機構63は、例えば支持部材62の基端側を昇降自在に支持する昇降機構63Aと、前記昇降機構63Aを鉛直軸まわりに回転させる回転機構63Bとを組み合わせて構成されている。この蓋体移動機構63は、図3に示すように、例えば筐体1の側壁部に設けられた載置部材64上に設けられている。
【0023】
ここで、前記待機位置は、前記炉口20の下方側の側方であって、当該炉口20と、回転機構63Bを中心とする同心円状に隣接する位置である。そして、蓋体61は前記待機位置から回転機構63Bにより炉口20の下方側まで旋回し、次いで、昇降機構63Aにより上昇することにより、炉口20を塞ぐ位置に移動することになる。なお、図1及び図2では蓋体61は待機位置にあり、図3では炉口20を塞ぐ位置にある様子を示している。この際、前記蓋体開閉機構6は、ローディングエリアS2内において、例えばウエハボート3のロード及びアンロードや、ウエハボート3のステージ44,45及び断熱材22間の移動を妨げずに、蓋体61を前記待機位置と炉口20を塞ぐ位置との間で移動できるように構成されている。
【0024】
さらに、ローディングエリアS2には、前記蓋体61の上面のパーティクルを吸引して除去するためのパーティクル除去機構として、クリーニングノズル7が設けられている。前記蓋体61の上面とは、熱処理炉2の炉口20を塞いだときに、熱処理炉2内の雰囲気に接する面のことである。
【0025】
この例のクリーニングノズル7は、蓋体61の上面とは接触しない状態で、当該上面側の雰囲気を前記吸引孔72により吸引するように構成され、さらに蓋体61の上面にガスを供給しながら吸引するようになっている。つまり、蓋体61の上面にガスを吹き付けて、当該表面のパーティクルをガスの加圧によって蓋体61上面から浮上させ、より吸引しやすい状態に設定して吸引排気するように構成されている。このようなクリーニングノズル7は、例えば図5〜図7に示すように、蓋体61の直径よりも長く伸びるように、例えばステンレスやアルミニウムにより構成されたノズル本体71を備えている。そして、ノズル本体71の内部には、その長さ方向に沿って排気室72と、ガス供給室73,73とが設けられている。また、ノズル本体71の下面にはノズル本体71の長さ方向に沿って前記排気室72に連通する吸引孔72aが形成されると共に、ノズル本体71の長さ方向に沿って前記ガス供給室73,73に連通するガス供給孔73a,73aが形成されている。
【0026】
この例では、ノズル本体71の幅方向の中央に前記吸引孔72aが形成され、この吸引孔72aの両側にガス供給孔73a,73aが夫々形成されている。また、これら吸引孔72a及びガス供給孔73a,73aの長さは、例えば蓋体61の直径よりも大きく設定されている。なお、前記吸引孔72a及びガス供給孔73a,73aとして設けられた孔部を、前記ノズル本体71の長さ方向に沿って多数配列するようにしてもよい。さらに、ノズル本体71を構成する壁部の内部には、冷却媒体を通流させるための冷媒流路74が形成されている。
【0027】
前記ノズル本体71は、ノズル移動機構75により、前記待機位置にある蓋体61に対して移動自在に構成されている。こうして、このノズル本体71の移動により、蓋体61の上面側の雰囲気が前記吸引孔72aにより吸引されるようになっている。この例では、ノズル移動機構75は、回転機構75Aと昇降機構75Bとを組み合わせて構成されており、ノズル本体71の基端側が、昇降及び回転自在な駆動軸76により昇降機構75Bに接続され、当該昇降機構75Bは回転機構75Aに接続されている。前記昇降機構75Bはクリーニングノズル7を蓋体61に対して相対的に接離させる接離機構をなすものである。
【0028】
また、前記排気室72は、図7に示すように、バルブV1を備えた排気路72bを介して吸引排気機構である排気ポンプ72cに接続され、前記ガス供給室73はバルブV2を備えた供給路73bを介してガス供給源73cに接続されている。このガス供給源73cからは例えば25℃に温度調整されたエアや窒素(N)ガス等のガスが供給される。さらに、前記冷媒流路74には、当該冷媒流路74に冷却媒体例えば冷却水を供給するための供給路74a及び当該冷媒流路74から冷却媒体を排出するための排出路74bが設けられている。これら供給路74a及び排出路74bは冷却水の供給源74cに接続され、所定温度に調整された冷却水をノズル本体71の冷媒流路74に循環供給するように構成されている。なお、図7では、図示の煩雑化を防ぐために、冷却水の供給源74cには供給路74aのみが接続されるように描いているが、実際には排出路74bも接続されている。
【0029】
例えば前記排気路72b、ガス供給路73b、冷却水の供給路74a及び排出路74bは、例えばノズル本体71の昇降及び回転移動を妨げないようにフレキシブルに構成されると共に、例えば駆動軸76、昇降機構75B及び回転機構75Aの内部を通って筐体1の外部へ引き回され、夫々排気ポンプ72Cや供給源73C,74Cに接続されるように構成されている。このように、既述の排気路72b等の配管系を駆動軸76、昇降機構75B及び回転機構75Aの内部を通過させることにより、これらへの熱影響を抑えることもできる。
【0030】
さらに、待機位置にあるノズル移動機構75は、熱影響を抑えるために、その周囲をカバー部材78により覆われている。このカバー部材78は例えばステンレスにより構成され、その内部には冷媒流路77が形成されている。この冷媒流路77には、供給路77a及び排出路77bにより冷却媒体である冷却水の供給源74cから冷却水が循環供給されるように構成されている。この例では、カバー部材78を介してノズル移動機構75が天井部23に取り付けられている。なお、図1、図2及び図4では図示の煩雑化を抑えるために、カバー部材78については省略している。本実施の形態では、ノズル本体71に設けられた冷媒流路74及びカバー部材78は、夫々冷却機構をなすものである。
【0031】
このようなクリーニングノズル7は、図8に示すように、蓋体61が待機位置にあるときに、例えば当該蓋体61の一端側の開始位置(図8中実線にて示す位置)にノズル本体71が位置するように設けられる。そして、ここから回転機構75Aを回転させることにより、ノズル本体71をその基端側の駆動軸76を中心として約90度回転させた終了位置まで移動させることによって、前記吸引孔72aが蓋体61の上面全体をスキャンするように構成されている。
【0032】
また、クリーニングノズル7は、昇降機構75Bにより、蓋体61のパーティクル除去を行うために蓋体61に接近するクリーニング位置と、当該クリーニング位置の上方側であって、蓋体61から離隔する退避位置との間で昇降自在に構成されている。前記クリーニング位置とは、例えばノズル本体71の吸引孔72aの先端(下端)と、蓋体61の上面との間の距離が1mm程度の位置であり、前記退避位置とは、ノズル本体71の吸引孔72aの先端と、蓋体61の上面との間の距離が5mm程度の位置である。通常、クリーニングノズル7は待機位置にて待機しており、この例における待機位置とは、前記開始位置の上方側の退避位置をいう。
【0033】
さらに、前記縦型熱処理装置には制御部100が設けられている。この制御部100は例えばコンピュータからなり、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部を備えていて、前記プログラムには制御部100から縦型熱処理装置の各部に制御信号を送り、後述の搬送順序を進行させるように命令(各ステップ)が組み込まれている。前記プログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等の記憶部に格納されて制御部100にインストールされる。
【0034】
また、制御部100は、例えばボートエレベータ41による熱処理炉2へのウエハボート3のロードやアンロード、蓋体開閉機構6による蓋体61の開閉動作や、クリーニングノズル7による蓋体61のクリーニング処理時の吸引排気やガス供給の開始や終了のタイミングを制御するように、各部へ制御信号を出力する機能を有する。
【0035】
続いて、前記縦型熱処理装置におけるウエハWの流れについて簡単に説明する。この縦型熱処理装置のローディングエリアS2内では、例えば大気ガスを通流させることにより、当該ローディングエリアS2内のパーティクルを除去している。つまり、第1のファン53を装置稼働中は常時回転させておくと共に、第1のゲートバルブ54及び第2のゲートバルブ55を開いて、第2のファン56を駆動する。こうして、図示しない大気の導入路を介して例えば20℃〜30℃の大気を取り入れると共に、排気を行う。これにより、ローディングエリアS2では、装置の外部から取り込まれた大気が、フィルタユニット5側から当該フィルタユニット5に対向する側壁に向けて流れ、排気口26から通気室25へ通気する。この通気室25内の大気は、その大部分が装置の外部へ排出される一方、その一部は第1のファン53の駆動により、再びフィルタユニット5の通気空間52に向けて流れていく。そして、フィルタユニット5により、清浄状態を維持した気体として再びローディングエリアS2に供給される。
【0036】
一方、図示しない自動搬送ロボットにより第1の搬送台14に載置されたキャリアCは、FOUP搬送機構17により第2の載置台15に搬送され、隔壁11の開口部10に気密に当接される。この後、蓋開閉機構19によりキャリアCから蓋体が取り外され、続いて、例えば窒素ガスがキャリアC内に向けて吹き出されて、キャリアC内及びキャリアCと扉18との間の空間が窒素ガスにより置換される。その後、扉18、蓋開閉機構19及び蓋体が例えば上昇して開口部10から退避し、キャリアC内とローディングエリアS2とが連通した状態となる。
【0037】
一方、ローディングエリアS2では、例えば第1のウエハボート3Aを第1のステージ44に、第2のウエハボート3Bを第2のステージ45に夫々載置しておく。そして、第1のステージ44では、ウエハ搬送機構48により、前記第1のウエハボート3Aに対してキャリアC内のウエハWが順次取り出されて移載される。次いで、当該ウエハボート3Aは、ボート搬送機構46により、第1のステージ44からボートエレベータ41の断熱材22上に移載された後、ボートエレベータ41が上昇して熱処理炉2内のロード位置に搬入される(図9参照)。こうして、熱処理炉2の炉口20はボートエレベータ41上の蓋体21により閉じられ、熱処理炉2内にガス供給路2Aから所定の処理ガスを供給されると共に、熱処理炉2内を排気路2Bを介して排気して所定の圧力に維持される。そして、熱処理炉2内では当該ウエハボート3Aに搭載されたウエハWに対して、例えば400〜1000℃の温度で熱処理例えばCVD、アニール処理、酸化処理などが行われる。
【0038】
一方、図9に示すように、ウエハボート3Aが熱処理炉2内に搬入されるタイミングでは、例えば前記蓋体開閉機構6の蓋体61及び前記クリーニングノズル7は共に前記待機位置にある。そして、例えばウエハボート3Aが熱処理炉2内に搬入されてから所定時間経過後、前記クリーニングノズル7を前記待機位置からクリーニング位置まで下降させて、当該ノズル7を待機位置にある蓋体61の上面に接近させる。次いで、図10に示すように、例えばウエハボート3Aが熱処理炉2内に搬入されている間に、クリーニングノズル7からガスを蓋体61に向けて供給すると共に吸引しながら、クリーニングノズル7を既述のように開始から終了位置まで移動させて、蓋体61の上面のパーティクルを除去するクリーニング処理を行う。
【0039】
このクリーニング処理では、約200℃の蓋体61の上面に、ガス供給孔73aから例えば25℃のガスが吹き付けられるので、蓋体61に付着したパーティクルが、熱膨張差による剥離効果と、ガスの加圧によって蓋体61上面から浮き上がる。そして、蓋体61の上面近傍に設けられた吸引孔72aによって、蓋体61の上面近傍の雰囲気が吸引されているため、蓋体61上面から浮上したパーティクルが吸引孔72aに吸い込まれていく。こうして、蓋体61の上面近傍の雰囲気が吸引孔72aにより吸引されるように、クリーニングノズル7をスキャンさせることによって、蓋体61上面のパーティクルが吸引除去される。なお、蓋体61のクリーニングを行うタイミングは、蓋体61が前記炉口20を塞ぐ位置から外れているときであればよく、ウエハボート3をアンロードした後であってもよい。
【0040】
熱処理炉2内にて所定の熱処理が行われたウエハボート3Aは、ボートエレベータ41を下降させることにより、前記アンロード位置まで移動される。そして、ウエハボート3Aがアンロード位置に下降した後、蓋体開閉機構6の蓋体61により熱処理炉2の炉口20が塞がれる。つまり、図11に示すように、蓋体開閉機構6の回転機構63Aにより待機位置にある蓋体61を炉口20の下方側まで旋回移動させた後、昇降機構63Bにより炉口20を塞ぐ位置まで上昇させる。このように、ウエハボート3Aのアンロード後に熱処理炉2の炉口20を蓋体61により塞ぐことによって、高熱状態の熱処理炉2からのローディングエリアS2内への熱の放出が抑えられる。
【0041】
前記アンロードされたウエハボート3Aは、ボート搬送機構46により、例えば一旦第2のステージ45に搬送される。そして、例えば第1のステージ44上にてウエハWが搭載されたウエハボート3Bがボートエレベータ41上に搬送された後、ウエハボート3Aが第1のステージ44に搬送されて、熱処理後のウエハWはウエハ移載機構48によりキャリアC内に移載される。
【0042】
そして、ウエハボート3Bが熱処理炉2内にロードされる直前に、蓋体61を逆の動作で前記待機位置まで移動させて、前記熱処理炉2の炉口20を開く。この際、蓋体61は熱処理炉2の熱により高温状態となっているので、クリーニングノズル7は既述のクリーニング処理が終了した後、前記待機位置に退避させておく。こうして、炉口20を開いてから、図12に示すように、ボートエレベータ41を上昇させてウエハボート3Bを熱処理炉2内に搬入する。次いで、例えばウエハボート3Bが熱処理炉2内に搬入されてから所定時間経過後、つまり蓋体61からの放熱がある程度治まってから、前記クリーニングノズル7を前記待機位置からクリーニング位置まで下降させる。そして、既述のように、蓋体61の上面のパーティクルを吸引除去するクリーニング処理を行う。このように、ウエハボート3Bが熱処理炉2内に搬入されてから所定時間経過後にクリーニング処理を開始するのは、蓋体61の温度が降温してから、クリーニング処理を開始してクリーニングノズル7への熱影響を防ぐためである。
【0043】
このような実施の形態によれば、熱処理炉2の炉口20を塞ぐ蓋体61の上面のパーティクルを、蓋体61により炉口20を塞ぐ前にクリーニングノズル7により吸引除去しているので、熱処理炉2内に混入するパーティクル量を低減することができる。このため、熱処理炉2内での熱処理の間にウエハWに付着するパーティクル量を低減することができ、製品の歩留まりの低下を抑えることができる。
【0044】
ここで、蓋体61に付着したパーティクルの除去が、熱処理炉2内へのパーティクル混入を抑えるために有効であることは、後述の実施例によっても明らかである。この理由について、本発明者は次のように捉えている。つまり、蓋体61上にはウエハW表面や熱処理炉2の内壁に成膜された膜の膜剥がれに由来するパーティクルが存在する。また、熱処理炉2をクリーニングガスによりクリーニングする際に、腐食性の大きいクリーニングガスに曝されて劣化したウエハボート3の材料である石英に由来するパーティクルも堆積している。
【0045】
このように、蓋体61にパーティクルが付着している状態で、次の熱処理を行うと、熱処理炉2内は既述のように排気されているため、ウエハボート3上のウエハWから見ると、ウエハWの上流側にパーティクルの発生源が存在することになる。このため、熱処理時に、蓋体61上のパーティクルが、熱処理炉2内の排気による圧力差によって巻き上げられ、ウエハWに付着するものと推察される。
【0046】
また、本実施の形態のクリーニングノズル7は、蓋体61上面側の雰囲気を吸引することにより、蓋体61上面のパーティクルを除去している。このため、パーティクルをローディングエリアS2内に飛散させず除去することができる。さらに、クリーニングノズル7は蓋体61の上面と接触しないので、クリーニングノズル7を移動させても蓋体61上面を傷つけるおそれがなく、蓋体61から離れていることから、蓋体61からの熱影響を受けにくい。
【0047】
さらにまた、蓋体61が待機位置にあるときに、パーティクルの除去を行うことができるので、当該パーティクルの除去のための時間を別個に確保する必要が無く、スループット低下を抑えられる。
【0048】
さらにまた、本実施の形態のクリーニングノズル7は、ノズル本体71内に冷媒流路74を備えると共に、冷媒流路77を備えたカバー部材78によりノズル移動機構75を覆っている。このため、熱処理炉2の近傍にクリーニングノズル7を設ける場合であっても、ノズル本体71やノズル移動機構75が冷却されているので、熱変形等の熱による悪影響の発生を抑えることができる。
【0049】
さらにまた、本実施の形態はノズル本体71を蓋体61に対して接離自在に設け、蓋体61が熱処理炉2から離したばかりで高温であるときにはノズル本体71を蓋体61から離隔させ、蓋体61の温度がある程度下がってからノズル本体71を蓋体61に接近させてクリーニング処理を行っている。このため、クリーニング時には蓋体61に近づけて吸引しやすい状態に設定しているので、クリーニングノズル7への熱影響をできるだけ抑えた状態で、効率よくパーティクル除去を行うことができる。
【0050】
以上において、前記クリーニング処理は、図13に示すように、クリーニングノズル7を、蓋体61の一端側から他端側に向けて移動させることによって、蓋体61の上面側の雰囲気を吸引孔72aにより吸引して行うようにしてもよい。また、図14に示すように、蓋体61の中心とクリーニングノズル7の中心Oとが揃うように配置し、前記クリーニングノズル7の中心Oを回転中心として回転させることにより、蓋体61の上面側の雰囲気を吸引孔72aにより吸引してクリーニング処理を行うようにしてもよい。
【0051】
続いて、他の実施の形態について図15〜図17を用いて説明する。この例は、クリーニングノズル7を固定して設け、蓋体61側を移動させることによって、蓋体61の上面側の雰囲気をクリーニングノズル7の吸引孔72aにより吸引するものである。この例のクリーニングノズル7は、熱処理炉2の下方側と蓋体61の待機位置との間を移動する蓋体61の移動路の上方側に設けられている。このクリーニングノズル7は、回転機構75Aを設けない他は上述の実施の形態と同様に構成され、例えばクリーニング処理を行うクリーニング位置と、この処理位置の上方側の待機位置との間で昇降機構75Bにより昇降自在に構成されている。
【0052】
また、クリーニングノズル7は、蓋体61が炉口20の下方側の位置と待機位置との間で旋回移動したときに、蓋体61がクリーニングノズル7の吸引孔72aの下方側を通過し、蓋体61の移動に伴って、当該蓋体61の上面側の雰囲気が吸引孔72aにより吸引されるように、クリーニングノズル7の設置位置、形状及び大きさ等が設定されている。
【0053】
このような構成では、例えば蓋体61が熱処理炉2の炉口20を塞ぐ位置から待機位置に移動するまでは、クリーニングノズル7は前記待機位置にある。そして、例えば蓋体61が再び待機位置から炉口20の下方側に移動するときに、クリーニングノズル7がクリーニング位置まで下降すると共に、ガス供給孔73aからのガスの吐出及び吸引孔72aからの吸引排気を開始するように、制御部100から各部に制御信号が出力されるように構成されている。これにより、図16及び図17に示すように、蓋体61が前記待機位置から炉口20の下方側に移動する間に、クリーニングノズル7の下方側を通過して、蓋体61の上面に付着したパーティクルがクリーニングノズル7により吸引除去される。
【0054】
また、クリーニングノズル7Aは、例えば図18に示すように、平面形状が円弧を描く形状であってもよいし、例えば図19に示すように、平面形状が環状であってもよい。これらクリーニングノズル7A,7Bのノズル本体71は、平面形状が異なる以外は、上述のクリーニングノズル7と同様に構成されている。このクリーニングノズル7A,7Bと蓋体61とは相対的に移動すればよく、クリーニングノズル7A,7B側を固定して設け、蓋体61が例えば待機位置から熱処理炉2の炉口20の下方側に移動するときにクリーニング処理を行うようにしてもよい。また、蓋体61が待機位置にあるときに、クリーニングノズル7A,7B側を移動させてクリーニング処理を行うようにしてもよい。
【0055】
さらに、前記クリーニングノズル7,7A,7Bは、少なくとも蓋体61の上面側の雰囲気を吸引できる構造であればよく、必ずしも蓋体61上面へのガス供給は必要ではない。さらにまた、蓋体61の上面に向けてガス供給を行うときには、例えば図20にクリーニングノズル7A(7B)を示すように、クリーニングノズル7A(7B)の相対的移動方向の前方側(進行側)にガス供給室73、後方側に排気室72を形成するようにしてもよいし、図示はしないがクリーニングノズル7A(7B)の相対的移動方向の前方側(進行側)に排気室72、後方側にガス供給室73を形成するようにしてもよい。また、ガス供給室73には超音波発生手段を設けるようにしてもよい。
【0056】
さらにまた、パーティクル除去機構は、パーティクルを吸引して除去する構成であればよく、図21に示すように、待機位置にある蓋体61の上方側に、例えば蓋体61よりも平面形状が大きく扁平な吸引排気室81を前記蓋体61と対向するように設け、蓋体61の上面近傍の雰囲気を吸引することにより、蓋体61に付着したパーティクルを除去するようにしてもよい。図21中82は、吸引排気室61の下面に形成された吸引孔である。この際、図21に点線で示すように、蓋体61の上面に向けてガスを供給するガス供給部82を設けるようにしてもよい。また、例えば吸引排気室71を蓋体61よりも平面形状が小さく構成した場合等には、パーティクル除去機構を移動機構により前記蓋体61に対して移動自在に構成してもよい。
【0057】
さらにまた、図21に示すタイプのパーティクル除去機構及びパーティクルを吹き飛ばして除去するタイプのパーティクル除去機構は、いずれも当該パーティクル除去機構を冷却する冷却機構を備えるように構成してもよいし、これらパーティクル除去機構を蓋体に対して相対的に接離させる接離機構を備えるようにしてもよい。
【0058】
さらにまた、蓋体61の移動機構84は、図22に示すように、蓋体61を待機位置から炉口20の下方側位置まで水平方向に進退移動させる進退機構84Aと、蓋体61を昇降させる昇降機構84Bとを組み合わせて設けたものであってもよい。また、蓋体61は待機位置から炉口20の下方側に水平移動する構成に限らず、例えば蓋体61を炉口20の下方側に略垂直に立てるようにして待機させるようにしてもよいし、蓋体61を一旦炉口20の下方側に略垂直に立ててから、クリーニング対象となる面が下側を向くように水平にして待機させるようにしてもよい。この場合には、例えば夫々待機位置にあるときに、パーティクル除去機構により既述のクリーニング処理が行われる。
【0059】
さらにまた、接離機構として蓋体61の昇降機構を利用するようにしてもよい。例えば蓋体61は炉口20を塞ぐときの高さ位置よりも下降させてから旋回移動または水平移動するように構成されているが、この移動時の高さ位置を、クリーニングノズル7に接近する高さ位置と、クリーニングノズル7から離隔する高さ位置とに設定自在に構成する。そして、蓋体61の温度が高いときには、クリーニングノズル7から離隔する高さ位置にて移動し、クリーニング処理を行うときにはクリーニングノズル7に接近する高さ位置に設定するように構成してもよい。
【0060】
さらにまた、クリーニング処理は、蓋体61が炉口20を塞ぐ位置から外れているときであれば、どのようなタイミングで行うようにしてもよい。蓋体61が炉口20を塞ぐ位置から外れているときとは、蓋体61が炉口20の下方側にある場合も含まれる。従って、炉口20を塞いでいた蓋体61が待機位置に戻り、この待機位置から再び炉口20を塞ぐ間であれば、どのタイミングで行うようにしてもよい。さらに、蓋体61が炉口20を塞ぐ位置から外れているときに、定期的に蓋体61のクリーニングを行なうようにしてもよい。
【0061】
さらに、冷却機構はパーティクル除去機構を冷却できる構成であれば、上述の構成に限らず、例えばパーティクル除去機構に冷却ガスを吹き付けることによって冷却する構成であってもよい。但しクリーニングノズル及びパーティクル除去機構には、図20にクリーニングノズルを例にして示すように、必ずしも冷媒流路等の冷却機構を設ける必要はない。
【0062】
また、クリーニングノズル及びパーティクル除去機構には、必ずしもこれらを蓋体61に対して相対的に接離させる接離機構を設ける必要はない。さらにまた、パーティクル除去機構及び蓋体61の双方を移動させながら、蓋体61のクリーニング処理を行うようにしてもよい。
【0063】
さらに、蓋体61が炉口20を塞ぐタイミングは、熱処理炉2が加熱され、かつウエハボート3がアンロードされた場合に限らず、ウエハボート3が熱処理炉2にロードされていない場合には、常時蓋体61により炉口20を塞ぐようにしてもよい。さらにまた、ウエハボート3が熱処理炉2にロードされたときに炉口20を塞ぐ処理用の蓋体と、ウエハボート3が熱処理炉2にアンロードされたときに炉口20を塞ぐ蓋体として、共通の蓋体を用いるようにしてもよい。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
上述の図1〜図3に示す縦型熱処理装置を用い、パーティクルとして二酸化チタン(TiO)の粉末を熱処理炉2内に強制的に付着させ、ウエハWへのパーティクルの付着状況について検証した。この際、熱処理炉2内に供給路2Aを介してNガスを供給する一方、熱処理炉2内を排気路2Bを介して排気して、熱処理炉内2の圧力を変え、実験を行った。また、パーティクルを蓋体61の上面に付着させた場合(実施例1−1)、ウエハボート3の底板32に付着させた場合(実施例1−2)、熱処理炉2の排気路2B内に付着させた場合(実施例1−3)について、夫々ウエハWのパーティクル数を測定した。
【0065】
この結果を図23に示す。図23中横軸は、熱処理炉2内の圧力とローディングエリアS2の圧力との圧力差、縦軸は1枚のウエハWに付着した0.1μm以上の大きさのパーティクル数を夫々示している。この際、前記圧力差は熱処理炉2内の圧力からローディングエリアS2内の圧力を差し引いて求められるものであり、圧力差が−5Torr(666.6Pa)とは、ローディングエリアS2内の圧力が熱処理炉2よりも5Torr低いことを意味している。また、図中□は実施例1−1、◇は実施例1−2、△は実施例1−3のデータを夫々示している。
【0066】
この結果により、蓋体61にパーティクルを付着させた場合(実施例1−1)が最もウエハW表面のパーティクル数が多くなることが認められた。また、いずれの実施例においても、ローディングエリアS2内と熱処理路2内の圧力差が小さい場合は、前記圧力差が大きい場合よりもウエハWに付着するパーティクル数が少なくなることが認められた。この際、パーティクルの閾値を1枚のウエハWに対して100個と設定すると、パーティクル数が前記閾値以下になる圧力差は、実施例1−1では0〜3Torr(0〜400Pa)であり、他の実施例に比べて、この圧力差が小さいことが確認された。
【0067】
これらのことから、蓋体61にパーティクルを付着させた場合(実施例1−1)は、最もウエハWにパーティクルが付着しやすく、ローディングエリアS2内と熱処理炉2内の圧力差が大きくなると、よりウエハWにパーティクルが付着しやすい状態になることが認められる。このため、本発明のように蓋体61を閉じる前に、当該蓋体61に付着したパーティクルを吸引除去することは、ウエハWのパーティクル汚染を抑えるために有効であることが理解される。
(実施例2)
図1に示す熱処理炉2において、熱処理炉2の内壁に形成された膜の累積膜厚が4μmとなったときに、当該熱処理炉2にクリーニングガスを供給して所定のクリーニング処理を行い、その後、蓋体61に付着したパーティクルの検証を行った。前記クリーニング処理は、第1のクリーニング処理と第2のクリーニング処理の2段階とした。第1のクリーニング処理では、クリーニングガスとしてフッ素(F)ガスとフッ化水素(HF)ガスとを1:1の流量で供給し、圧力:150Torr(20kPa)、温度:300℃の下、240分間クリーニングを行った。また、第2のクリーニング処理では、クリーニングガスとしてフッ素ガスとフッ化水素ガスとを3:1の流量で供給すると共に、窒素(N)ガスも供給し、3種のガスを合わせて3slmの流量で供給した。そして、圧力:150Torr(20kPa)、温度:475℃の下、80分間クリーニングを行った。
【0068】
また、パーティクルの検証については次のように行った。先ず、蓋体61の上面に、その中心から外周まで径方向に沿ってカーボンテープを貼着してから剥がし、当該テープに蓋体61のパーティクルを付着させた。こうして、テープの長さ方向に約3cm毎に8か所のポイントを設定し、夫々の箇所について光学顕微鏡写真を撮像した。またテープの付着物について、電子線マイクロ分析(EPMA)による元素分析を行った。
【0069】
この結果、光学顕微鏡写真による観察では、蓋体61の外周近傍では異物が確認されなかったものの、その他のポイントでは異物が観察された。そして、EPMA分析の結果、異物としては、窒化ケイ素や、ケイ素化合物と有機物の混合物、有機物、窒素を含む有機物などが含まれる可能性があることが認められた。これにより、蓋体61に付着したパーティクルは、成膜された膜が剥がれたものや、石英製のウエハボート3の劣化によりパーティクルとなったもの等であると推察される。
【符号の説明】
【0070】
W 半導体ウエハ
C FOUP
2 熱処理炉
3A,3B ウエボート
41 ボートエレベータ
6 蓋体開閉機構
61 蓋体
移動機構
7 クリーニングノズル
71 ノズル本体
72a 吸引孔
75 ノズル移動機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板が棚状に保持された基板保持具を縦型の熱処理炉内に、当該熱処理炉の下方側に形成された開口部から搬入し、基板に対して熱処理を行う装置において、
前記熱処理炉の下方側に位置するローディング室と、
このローディング室内に設けられ、熱処理炉内と熱処理炉の下方側との間で前記基板保持具を昇降させる保持具昇降機構と、
前記基板保持具が前記熱処理炉の下方側に位置しているときに、前記開口部を塞ぐ蓋体と、
前記蓋体を、前記開口部を塞ぐ位置と、前記開口部を開く位置との間で移動させる蓋体移動機構と、
前記ローディング室内に設けられ、前記蓋体が前記開口部を塞ぐ位置から外れているときに、当該蓋体の上面のパーティクルを吸引して除去するパーティクル除去機構と、を備えたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記パーティクル除去機構は、前記蓋体の上面側の雰囲気を吸引するための吸引孔が形成されたクリーニングノズルを備えたことを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記パーティクル除去機構を冷却する冷却機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記パーティクル除去機構を前記蓋体に対して移動させる移動機構を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記パーティクル除去機構を蓋体に対して相対的に接離させる接離機構を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の熱処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2013−26504(P2013−26504A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161025(P2011−161025)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】