説明

産業用ロボット

【課題】大きな搬送対象物や高価な搬送対象物の搬送に適した産業用ロボットを提供すること。
【解決手段】産業用ロボットは、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドが連結されるアームと、アームを支持する支持部材と、支持部材を上下動させる上下駆動機構と、上下駆動機構を制御する制御部80とを備えている。上下駆動機構は、上下駆動機構を停止させるための2個のブレーキ機構24を備え、制御部80は、2個のブレーキ機構24を制御するブレーキ制御部84を備えている。ブレーキ制御部84は、2個のブレーキ機構24を段階的に作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送対象物を搬送する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の搬送対象物を搬送する産業用ロボットが広く利用されている。この種の産業用ロボットとして、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドを保持するアームと、アームを上下動させるボールネジとを備える産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の産業用ロボットでは、ボールネジに1台のモータが連結されており、ボールネジはモータで駆動されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−102886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶ディスプレイ用ガラス基板等のように、産業用ロボットによって搬送される搬送対象物の中には、年々、大型化するものがある。また、露光装置で使用されるマスクのように、産業用ロボットによって搬送される搬送対象物の中には、年々、高額化するものもある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、大きな搬送対象物や高価な搬送対象物の搬送に適した産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドが連結されるアームと、アームを支持する支持部材とを備えるとともに、支持部材を上下動させる上下駆動機構および/または支持部材を水平方向に移動させるための水平駆動機構および/または上下方向を軸方向とする所定の中心軸を中心に支持部材を回転させるための回転駆動機構と、上下駆動機構および/または水平駆動機構および/または回転駆動機構を制御する制御部とを備え、上下駆動機構および/または水平駆動機構および/または回転駆動機構は、上下駆動機構および/または水平駆動機構および/または回転駆動機構を停止させるための複数のブレーキ機構を備え、制御部は、複数のブレーキ機構を制御するブレーキ制御部を備え、ブレーキ制御部は、複数のブレーキ機構を段階的に作動させることを特徴とする。
【0007】
本発明の産業用ロボットでは、上下駆動機構、水平駆動機構および/または回転駆動機構が複数のブレーキ機構を備えている。そのため、たとえば、1個のブレーキ機構が破損しても他のブレーキ機構によって、上下駆動機構、水平駆動機構および/または回転駆動機構を停止させることができる。したがって、本発明では、大きな搬送対象物や高価な搬送対象物であっても安全に搬送することが可能になる。また、本発明では、ブレーキ制御部が、複数のブレーキ機構を段階的に作動させている。そのため、上下駆動機構、水平駆動機構および/または回転駆動機構が複数のブレーキ機構を有する場合であっても、上下駆動機構、水平駆動機構および/または回転駆動機構に生じる制動力を段階的に大きくしていくことが可能になる。したがって、上下駆動機構、水平駆動機構および/または回転駆動機構の急制動を防止することが可能になり、その結果、ハンドからの搬送対象物の落下を防止することが可能になる。
【0008】
本発明において、ブレーキ制御部は、複数のブレーキ機構のそれぞれの作動開始タイミングをずらすことが好ましい。このように構成すると、上下駆動機構、水平駆動機構および/または回転駆動機構に生じる制動力を徐々に大きくすることが可能になる。したがって、上下駆動機構、水平駆動機構および/または回転駆動機構の急制動を確実に防止して、ハンドからの搬送対象物の落下を確実に防止することが可能になる。
【0009】
本発明において、産業用ロボットは、複数のブレーキ機構として複数の上下ブレーキ機構を有する上下駆動機構を備え、制御部は、ブレーキ制御部として複数の上下ブレーキ機構を制御する上下ブレーキ制御部を備え、上下ブレーキ制御部は、複数の上下ブレーキ機構を段階的に作動させることが好ましい。
【0010】
このように構成すると、たとえば、1個の上下ブレーキ機構が破損しても他の上下ブレーキ機構によって、上下駆動機構を停止させることができる。すなわち、支持部材を停止させて、ハンドおよびアームの落下を防止することができる。したがって、大きな搬送対象物や高価な搬送対象物であっても安全に搬送することができる。また、メンテナンス時に、たとえば、1個の上下ブレーキ機構を取り外す場合であっても、他の上下ブレーキ機構で支持部材を所定位置に停止させることが可能になる。そのため、上下駆動機構のメンテナンスが容易になる。さらに、上下駆動機構が複数のブレーキ機構を有する場合であっても、上下駆動機構の急制動を防止することが可能になるため、ハンドからの搬送対象物の落下を防止することが可能になる。
【0011】
本発明において、上下駆動機構は、たとえば、上下ブレーキ機構と同じ数の上下駆動用モータを備え、複数の上下ブレーキ機構のそれぞれは、複数の上下駆動用モータのそれぞれに連結されている。この場合には、上下ブレーキ機構によって、複数の上下駆動用モータを個別にかつ確実に停止させることが可能になる。
【0012】
本発明において、産業用ロボットは、複数の上下駆動用モータのそれぞれの回転速度を検出するための複数の速度検出機構を備えることが好ましい。このように構成すると、速度検出機構によって、複数の上下駆動用モータの異常を個別に検出することが可能になる。すなわち、複数の速度検出機構で検出される回転速度に大きな差異が生じるか否かを検出することで、複数の上下駆動用モータの異常を個別に検出することが可能になる。また、1台でも上下駆動用モータの異常が検出された場合には、上下ブレーキ機構によって、上下駆動機構を停止させることができる。したがって、上下駆動用モータに異常が生じても、支持部材を安全に停止させることができる。
【0013】
本発明において、上下駆動機構は、たとえば、複数の上下ブレーキ機構が連結される1台の上下駆動用モータを備えている。この場合には、複数の上下ブレーキ機構による大きな制動力で1個の上下駆動用モータを確実に停止させることが可能になる。
【0014】
本発明において、上下駆動機構は、上下駆動用モータに連結され支持部材を上下動させるボールネジと、ボールネジの回転速度を検出するためのネジ側速度検出機構と、上下駆動用モータの回転速度を検出するためのモータ側速度検出機構とを備えることが好ましい。このように構成すると、ネジ側速度検出機構とモータ側速度検出機構とによって、上下駆動機構の異常を確実に検出することが可能になる。すなわち、モータ側速度検出機構での検出結果に基づいて算出されるボールネジの回転速度と、ネジ側速度検出機構で検出されるボールネジの回転速度との差から、上下駆動機構の異常を確実に検出することが可能になる。また、上下駆動機構の異常が検出された場合には、上下ブレーキ機構によって、上下駆動機構を停止させることができる。したがって、上下駆動機構に異常が生じても、支持部材を安全に停止させることができる。
【0015】
本発明において、産業用ロボットは、複数のブレーキ機構として複数の水平ブレーキ機構を有する水平駆動機構を備え、制御部は、ブレーキ制御部として複数の水平ブレーキ機構を制御する水平ブレーキ制御部を備え、水平ブレーキ制御部は、複数の水平ブレーキ機構を段階的に作動させることが好ましい。このように構成すると、たとえば、1個の水平ブレーキ機構が破損しても他の水平ブレーキ機構によって、水平駆動機構を停止させることができる。したがって、大きな搬送対象物や高価な搬送対象物であっても安全に搬送することができる。また、水平駆動機構が複数のブレーキ機構を有する場合であっても、水平駆動機構の急制動を防止することが可能になるため、ハンドからの搬送対象物の落下を防止することが可能になる。
【0016】
本発明において、水平駆動機構は、たとえば、水平ブレーキ機構と同じ数の水平駆動用モータを備え、複数の水平ブレーキ機構のそれぞれは、複数の水平駆動用モータのそれぞれに連結されている。この場合には、水平ブレーキ機構によって、複数の水平駆動用モータを個別にかつ確実に停止させることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明にかかる産業用ロボットでは、大きな搬送対象物や高価な搬送対象物を適切に搬送することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
[実施の形態1]
(産業用ロボットの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる産業用ロボット1の平面図である。図2は、図1のE−E方向から産業用ロボット1を示す図である。図3は、図1のF−F方向から産業用ロボット1を示す図である。
【0020】
実施の形態1にかかる産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である液晶ディスプレイ用ガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送するためのロボットである。本形態のロボット1は、特に大型の基板2の搬送に適した大型のロボットであり、たとえば、1辺が約3mの略正方形状の基板2を搬送する。
【0021】
このロボット1は、図1〜図3に示すように、基板2が搭載される2個のハンド3と、2個のハンド3のそれぞれが先端側に連結される2本のアーム4と、2本のアーム4を支持する本体部5と、本体部5を水平方向に移動可能に支持するベース部材6とを備えている。本体部5は、2本のアーム4の基端側を支持するとともに上下動可能な支持部材7と、支持部材7を上下方向に移動可能に支持するための柱状部材8と、本体部5の下端部分を構成するとともにベース部材6に対して水平移動可能な基台9と、柱状部材8の下端が固定されるとともに基台9に対して旋回可能な旋回部材10とを備えている。
【0022】
上述のように、本形態のロボット1は、大型のロボットである。たとえば、ロボット1の高さは約7mであり、支持部材7の上下方向のストローク(移動量)は約5mである。また、たとえば、ハンド3の水平方向のストロークは約5.5mである。
【0023】
ハンド3は、基板2を搭載するための複数の爪部12を備えている。バンド3の基端は、アーム4の先端に回動可能に連結されている。アーム4は、2個の関節部13を有し、全体として伸縮するように構成されている。また、アーム4の基端は、支持部材7に固定されている。
【0024】
本形態では、2個のハンド3と2本のアーム4とが上下方向に重なるように配置されている。すなわち、本形態のロボット1は、ダブルアームタイプのロボットである。なお、ロボット1は、1個のハンド3と1本のアーム4とを備えるシングルアームタイプのロボットであっても良い。
【0025】
また、ロボット1は、支持部材7を上下動させる上下駆動機構16(図4参照)と、本体部5を水平方向へ移動させる水平駆動機構17(図7参照)と、基台9に対して旋回部材10を旋回させる回転駆動機構18(図7参照)とを備えている。以下、上下駆動機構16、水平駆動機構17および回転駆動機構18の構成、および、その周辺部分の構成を説明する。
【0026】
(上下駆動機構およびその周辺部の構成)
図4は、図1のF−F方向から支持部材7および上下駆動機構16を示す図である。図5は、図4のG−G方向から支持部材7、柱状部材8および上下駆動機構16を示す図である。図6は、図4のH−H方向から上下駆動機構16を示す図である。
【0027】
上下駆動機構16は、図5に示すように、柱状部材8の側方(図5における柱状部材8の下方)に配置されている。この上下駆動機構16は、2台の上下駆動用モータ20と、2台の上下駆動用モータ20のそれぞれに連結される2個の減速機21とを備えている。図4に示すように、1台の上下駆動用モータ20、2個の減速機21および1台の上下駆動用モータ20が上からこの順番で移動部材7に固定されている。
【0028】
また、上下駆動機構16は、2個の減速機21のそれぞれの出力軸に固定される上下駆動用ピニオンとしての2個のピニオン(小歯車)22と、2個のピニオン22と噛み合う上下駆動用ラックとしてのラック23とを備えている。この2個のピニオン22とラック23とによって、支持部材7は上下方向に移動する。さらに、上下駆動機構16は、上下駆動機構16を停止させるための(すなわち、支持部材7を停止させるための)2個の上下ブレーキ機構24を備えている。
【0029】
また、ロボット1は、図5に示すように、支持部材7を上下方向に案内するためのガイド部25を備えている。ガイド部25は、ガイドレール26とガイドレール26に係合するガイドブロック27とから構成されている。なお、柱状部材8は、上下方向を長手方向とする細長い略角柱状に形成され、支持部材7は、ブロック状に形成されている。
【0030】
上下駆動用モータ20は、上下駆動用モータ20の回転速度を検出するための速度検出機構(図示省略)を備えている。この速度検出機構は、たとえば、円板状に形成されたスリット板と、スリット板を挟んだ状態で対向配置される発光素子および受光素子とから構成されている。
【0031】
図6に示すように、上下駆動用モータ20の出力軸には、プーリ28が固定されている。また、減速機21の入力軸には、プーリ28よりも径の大きなプーリ29が固定されている。プーリ28、29には、ベルト30が架け渡されており、上下方向で隣接配置される上下駆動用モータ20と減速機21とがこのベルト30によって連結されている。
【0032】
ラック23は、上下方向を長手方向として柱状部材8に固定されている(図5参照)。上述のように、本形態では、支持部材7の上下方向のストロークが長い。すなわち、ラック23の長さは長い。そのため、本形態では、ラック23は、複数のラック片を繋ぎ合わせることで形成されている。なお、1個のラック片の長さは、2個のピニオン22の配置ピッチよりも長くなっている。
【0033】
上下ブレーキ機構24は、図6等に示すように、プーリ29に隣接するように減速機21の入力軸に取り付けられている。すなわち、2個の上下ブレーキ機構24のそれぞれは、プーリ28、29およびベルト30を介して2台の上下駆動用モータ20のそれぞれに連結されている。
【0034】
この上下ブレーキ機構24は、いわゆる無励磁作動型のブレーキであり、コイルが収納されるケース体と、ケース体に固定されるサイドプレートと、ケース体に対して軸方向に移動可能に配置されるアマーチュアと、サイドプレートとアマーチュアとの間に配置されるとともに減速機21の入力軸に固定されるブレーキディスクと、アマーチュアをブレーキディスクに向かって付勢する圧縮コイルバネとを備えている。上下ブレーキ機構24では、コイルが通電状態となると、アマーチュアがケース体に吸引されて、ブレーキディスクが解放される。また、コイルへの通電が停止されると、圧縮コイルバネの付勢力でアマーチュアとサイドプレートとの間にブレーキディスクが挟まれて、減速機21に急激にブレーキがかかる。なお、1個の上下ブレーキ機構24は、基板2、ハンド3、アーム4および支持部材7等を含む上下方向に移動する部分を十分に停止させることができる制動力を有している。
【0035】
ガイドレール26は、上下方向を長手方向として柱状部材8に固定されている(図5参照)。本形態では、2本のガイドレール26が柱状部材8に固定されている。具体的には、図5の左右方向に平行な2つの柱状部材8の取付面のそれぞれにガイドレール26が固定されている。また、図5の下側に配置されるガイドレール26は、ラック23に隣接するように固定されている。
【0036】
ガイドブロック27は、支持部材7に固定されている。具体的には、支持部材7の、アーム4の固定面(図5の右端面)に直交する面に、ガイドブロック27が固定されており、ガイドブロック27は、図5の上下方向の外側からガイドレール26に係合している。
【0037】
なお、本形態では、図5に示すように、柱状部材8にカバー部材31が固定されている。このカバー部材31は、図5の上下方向からガイドレール26を覆うように配置されている。
【0038】
(水平駆動機構およびその周辺部の構成)
図7は、図2のJ部の内部構成を説明するための図である。図8は、図3のK−K方向から水平駆動機構17等の構成を説明するための図である。図9は、図8のL−L方向から水平駆動機構17の構成を説明するための図である。
【0039】
水平駆動機構17は、図7に示すように、図7における基台9の左端側に配置されている。この水平駆動機構17は、2台の水平駆動用モータ40を備えている。図8に示すように、2台の水平駆動用モータ40は、図8の左右方向で隣接するように配置されている。また、2台の水平駆動用モータ40のそれぞれは、基台9に固定された2個のブラケット52のそれぞれに固定されている。2個のブラケット52のそれぞれには、図8、図9に示すように、回転軸53が軸受54を介して回転可能に保持されている。2本の回転軸53は、図8の左右方向で隣接するように配置されている。
【0040】
また、水平駆動機構17は、2本の回転軸53のそれぞれの下端に固定される水平駆動用ピニオンとしての2個のピニオン42と、2個のピニオン42と噛み合う水平駆動用ラックとしてのラック43とを備えている。この2個のピニオン42とラック43とによって、基台9は水平方向へ移動する。さらに、水平駆動機構17は、水平駆動機構17を停止させるための(すなわち、基台9を停止させるための)2個の水平ブレーキ機構44を備えている。
【0041】
また、ロボット1は、基台9を水平方向に案内するためのガイド部45を備えている。ガイド部45は、ガイドレール46とガイドレール46に係合するガイドブロック47とから構成されている。また、ベース部材6は、図7、図8に示すように、細長い2本のレール状部材51を備えている。このレール状部材51は、図7の左右方向に所定の間隔をあけた状態で平行に配置されている。
【0042】
水平駆動用モータ40は、水平駆動用モータ40の回転速度を検出するための速度検出機構(図示省略)を備えている。この速度検出機構は、たとえば、円板状に形成されたスリット板と、スリット板を挟んだ状態で対向配置される発光素子および受光素子とから構成されている。
【0043】
図9に示すように、水平駆動用モータ40の出力軸には、プーリ48が固定されている。また、回転軸53の上端側には、プーリ48よりも径の大きなプーリ49が固定されている。プーリ48、49には、ベルト50が架け渡されており、図8の上下方向で隣接配置される水平駆動用モータ40と回転軸53とがこのベルト50によって連結されている。
【0044】
ラック43は、図8に示すように、レール状部材51の上面に固定されている。本形態では、基台9の移動量が大きいため、ラック43の長さは長い。そのため、ラック43は、複数のラック片を繋ぎ合わせることで形成されている。
【0045】
水平ブレーキ機構44は、図9に示すように、プーリ48に隣接するように水平駆動用モータ40の出力軸に取り付けられている。この水平ブレーキ機構44は、上下ブレーキ機構24と同様にいわゆる無励磁作動型のブレーキであり、上下ブレーキ機構24と同様に構成されている。すなわち、水平ブレーキ機構44では、コイルが通電状態となると、アマーチュアがケース体に吸引されて、ブレーキディスクが解放される。また、コイルへの通電が停止されると、圧縮コイルバネの付勢力でアマーチュアとサイドプレートとの間にブレーキディスクが挟まれて、水平駆動用モータ40に急激にブレーキがかかる。
【0046】
ガイドレール46は、図8に示すように、レール状部材51の上面に固定されている。本形態では、2本のレール状部材51のそれぞれの上面にガイドレール46が固定されている。また、図8の上側に配置されるガイドレール46は、ラック43に隣接するように固定されている。ガイドブロック47は、図7に示すように、図7の左右方向における基台9の両端部に固定されている。このガイドブロック47は、上側からガイドレール46に係合している。
【0047】
(回転駆動機構およびその周辺部分の構成)
図10は、図1に示す旋回部材10の平面図である。図11は、図10のM−M断面の断面図である。
【0048】
回転駆動機構18は、図10、図11に示すように、旋回部材10の旋回中心となる中心軸CLの周りに配置されている。この回転駆動機構18は、2台の回転駆動用モータ60を備えている。図10に示すように、2台の回転駆動用モータ60は、中心軸CLに対して点対称に配置され、旋回部材10の中心部に固定されている。また、回転駆動機構18は、旋回部材10の中心部に固定される減速機61を備えている。さらに、回転駆動機構18は、回転駆動機構18を停止させるための(すなわち、旋回部材10を停止させるための)1個の回転ブレーキ機構64を備えている。なお、旋回部材10は、細長いブロック状の部材であり、一端側(図10の左端側)に柱状部材8の下端が固定されている。
【0049】
回転駆動用モータ60は、回転駆動用モータ60の回転速度を検出するための速度検出機構(図示省略)を備えている。この速度検出機構は、たとえば、円板状に形成されたスリット板と、スリット板を挟んだ状態で対向配置される発光素子および受光素子とから構成されている。
【0050】
図11に示すように、回転駆動用モータ60の出力軸には、出力歯車68が固定されており、2個の出力歯車68が減速機61の入力歯車69と噛み合っている。この2個の出力歯車68と入力歯車69を含む減速機61とによって、旋回部材10は、基台9に対して旋回する。すなわち、旋回部材10の中心部には減速機61の出力側が固定されており、減速機61を介して伝達される回転駆動用モータ60の動力で、旋回部材10は、基台9に対して旋回する。
【0051】
回転ブレーキ機構64は、図11に示すように、旋回部材10の中心部に軸受74を介して回転可能に保持される回転軸73の上端に固定されている。回転軸73の下端には、減速機61の入力歯車69と噛み合う歯車70が固定されている。また、回転ブレーキ機構64は、図10に示すように、中心軸CLを中心に回転駆動用モータ60を90°回転させた位置に配置されている。
【0052】
この回転ブレーキ機構64は、上下ブレーキ機構24と同様にいわゆる無励磁作動型のブレーキであり、上下ブレーキ機構24と同様に構成されている。すなわち、回転ブレーキ機構64では、コイルが通電状態となると、アマーチュアがケース体に吸引されて、ブレーキディスクが解放される。また、コイルへの通電が停止されると、圧縮コイルバネの付勢力でアマーチュアとサイドプレートとの間にブレーキディスクが挟まれて、入力歯車69に急激にブレーキがかかる。
【0053】
(制御部の構成)
図12は、図1に示す産業用ロボット1の制御部80およびその関連部分のブロック図である。なお、図12では、上下駆動機構16、水平駆動機構17および回転駆動機構18の制御に関連する制御部80の構成が図示されている。
【0054】
制御部80は、図12に示すように、上下駆動機構16、水平駆動機構17および回転駆動機構18の制御に関連する構成として、2台の上下駆動用モータ20を制御する上下モータ制御部81と、2台の水平駆動用モータ40を制御する水平モータ制御部82と、2台の回転駆動用モータ60を制御する回転モータ制御部83と、2個の上下ブレーキ機構24を制御する上下ブレーキ制御部84と、2個の水平ブレーキ機構44を制御する水平ブレーキ制御部85と、1個の回転ブレーキ機構64を制御する回転ブレーキ制御部86とを備えている。また、制御部80には、制御指令部87が接続されている。
【0055】
上下モータ制御部81は、2台の上下駆動用モータ20のうちの一方の上下駆動用モータ20を速度制御とトルク制御とによって制御し、他方の上下駆動用モータ20をトルク制御によって制御する。すなわち、上下モータ制御部81は、一方の上下駆動用モータ20に対しては、この上下駆動用モータ20の速度検出機構からの出力に基づくフィードバック制御とこの上下駆動用モータ20の電流値を制御するトルク制御とを行い、他方の上下駆動用モータ20に対しては、この上下駆動用モータ20の速度検出機構からの出力に基づくフィードバック制御を行わずにこの上下駆動用モータ20の電流値を制御するトルク制御を行う。
【0056】
水平モータ制御部82は、2台の水平駆動用モータ40のうちの一方の水平駆動用モータ40を速度制御とトルク制御とによって制御する。また、水平モータ制御部82は、他方の水平駆動用モータ40の停止前には、一方の水平駆動用モータ40と同様に、他方の水平駆動用モータ40を速度制御とトルク制御とによって制御するが、他方の水平駆動用モータ40の停止前を除くその他のときには、他方の水平駆動用モータ40をトルク制御によって制御する。
【0057】
すなわち、水平モータ制御部82は、他方の水平駆動用モータ40の停止前を除くその他のときには、他方の水平駆動用モータ40に対して、この水平駆動用モータ40の速度検出機構からの出力に基づくフィードバック制御を行わずにトルク制御を行う。また、水平モータ制御部82は、他方の水平駆動用モータ40の停止前には、他方の水平駆動用モータ40に対して、この水平駆動用モータ40の速度検出機構からの出力に基づくフィードバック制御を行って、2個のピニオン42とラック43との間のバックラッシがなくなるように、他方の水平駆動用モータ40の回転速度を制御する。
【0058】
同様に、回転モータ制御部83は、2台の回転駆動用モータ60のうちの一方の回転駆動用モータ60を速度制御とトルク制御とによって制御する。また、回転モータ制御部83は、他方の回転駆動用モータ60の停止前には、一方の回転駆動用モータ60と同様に、他方の回転駆動用モータ60を速度制御とトルク制御とによって制御するが、他方の回転駆動用モータ60の停止前を除くその他のときには、他方の回転駆動用モータ60をトルク制御によって制御する。
【0059】
すなわち、回転モータ制御部83は、他方の回転駆動用モータ60の停止前を除くその他のときには、他方の回転駆動用モータ60に対して、この回転駆動用モータ60の速度検出機構からの出力に基づくフィードバック制御を行わずにトルク制御を行う。また、回転モータ制御部83は、他方の回転駆動用モータ60の停止前には、他方の回転駆動用モータ60に対して、この回転駆動用モータ60の速度検出機構からの出力に基づくフィードバック制御を行って、2個の出力歯車68と入力歯車69との間のバックラッシがなくなるように、他方の回転駆動用モータ60の回転速度を制御する。
【0060】
上下ブレーキ制御部84は、制御指令部87から支持部材7の停止信号が入力されると、2個の上下ブレーキ機構24を段階的に作動させる。すなわち、制御指令部87から支持部材7の停止信号が入力されると、上下ブレーキ制御部84は、一方の上下ブレーキ機構24の作動開始タイミングと他方の上下ブレーキ機構24の作動開始タイミングとが変わるように(ずれるように)、2個の上下ブレーキ機構24を作動させる。
【0061】
具体的には、上下ブレーキ制御部84は、他方の上下ブレーキ機構24の作動開始タイミングが一方の上下ブレーキ機構24の作動開始タイミングよりも遅れるように、2個の上下ブレーキ機構24を作動させる。すなわち、まず、一方の上下ブレーキ機構24が作動を開始するとともに、この一方の上下ブレーキ機構24が作動している状態で、他方の上下ブレーキ機構24が作動を開始するように、上下ブレーキ制御部84は、2個の上下ブレーキ機構24を作動させる。より具体的には、上下ブレーキ制御部84は、他方の上下ブレーキ機構24のコイルへの通電を停止するタイミング(またはコイルへの通電が実際に止まるタイミング)が一方の上下ブレーキ機構24のコイルへの通電を停止するタイミング(またはコイルへの通電が実際に止まるタイミング)よりも遅れるように、2個の上下ブレーキ機構24のコイルへの通電を停止する。
【0062】
同様に、水平ブレーキ制御部85は、制御指令部87から基台9の停止信号が入力されると、2個の水平ブレーキ機構44を段階的に作動させる。すなわち、制御指令部87から基台9の停止信号が入力されると、水平ブレーキ制御部85は、一方の水平ブレーキ機構44の作動開始タイミングと他方の水平ブレーキ機構44の作動開始タイミングとが変わるように(ずれるように)、2個の水平ブレーキ機構44を作動させる。
【0063】
具体的には、水平ブレーキ制御部85は、他方の水平ブレーキ機構44の作動開始タイミングが一方の水平ブレーキ機構44の作動開始タイミングよりも遅れるように、2個の水平ブレーキ機構44を作動させる。すなわち、まず、一方の水平ブレーキ機構44が作動を開始するとともに、この一方の水平ブレーキ機構44が作動している状態で、他方の水平ブレーキ機構44が作動を開始するように、水平ブレーキ制御部85は、2個の水平ブレーキ機構44を作動させる。より具体的には、水平ブレーキ制御部85は、他方の水平ブレーキ機構44のコイルへの通電を停止するタイミング(またはコイルへの通電が実際に止まるタイミング)が一方の水平ブレーキ機構44のコイルへの通電を停止するタイミング(またはコイルへの通電が実際に止まるタイミング)よりも遅れるように、2個の水平ブレーキ機構44のコイルへの通電を停止する。なお、水平ブレーキ制御部85は、制御指令部87から基台9の停止信号が入力されたときに、2個の水平ブレーキ機構44を同時に作動させても良い。
【0064】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、上下駆動機構16は、2個の上下ブレーキ機構24を備えている。そのため、たとえば、一方の上下ブレーキ機構24が破損しても他方の上下ブレーキ機構24によって、上下駆動機構16を停止させることができる。すなわち、支持部材7を停止させて、ハンド3およびアーム4の落下を防止することができる。したがって、本形態では、大きな基板2であっても安全に搬送することができる。また、メンテナンス時に一方の上下ブレーキ機構24を取り外す場合であっても、他方の上下ブレーキ機構24で支持部材7を所定位置に停止させることができる。そのため、上下駆動機構16のメンテナンスが容易になる。
【0065】
また、本形態では、2個の上下ブレーキ機構24を段階的に作動させており、上下駆動機構16に生じる制動力を段階的に大きくしている。そのため、上下駆動機構16の急制動を防止することができる。したがって、上下駆動機構16が2個の上下ブレーキ機構24を備えていても、支持部材7が急停止することに起因して生じ得るハンド3からの基板2の落下を防止することができる。
【0066】
本形態では、2個の上下ブレーキ機構24のそれぞれが、プーリ28、29とベルト30とを介して2台の上下駆動用モータ20のそれぞれに連結されている。そのため、上下ブレーキ機構20によって、2台の上下駆動用モータ20を個別にかつ確実に停止させることができる。
【0067】
本形態では、2台の上下駆動用モータ20のそれぞれが速度検出機構を備えている。そのため、2個の速度検出機構で検出される回転速度の差が所定値以上になっているか否かを検出することで、上下駆動用モータ20の異常を検出することが可能になる。また、上下駆動用モータ20の異常が検出された場合には、上下ブレーキ機構24によって、上下駆動機構16を停止させることができる。したがって、上下駆動用モータ20に異常が生じても、支持部材7を安全に停止させることができる。
【0068】
本形態では、水平駆動機構17は、2個の水平ブレーキ機構44を備えている。そのため、たとえば、一方の水平ブレーキ機構44が破損しても他方の水平ブレーキ機構44によって、水平駆動機構17を停止させることができる。すなわち、本体部5を停止させることができる。したがって、大きな基板2であっても安全に搬送することができる。また、本形態では、2個の水平ブレーキ機構44を段階的に作動させており、水平駆動機構17に生じる制動力を段階的に大きくしている。そのため、水平駆動機構17の急制動を防止することができる。したがって、水平駆動機構17が2個の水平ブレーキ機構44を備えていても、本体部5が急停止することに起因して生じ得るハンド3からの基板2の落下を防止することができる。
【0069】
本形態では、2個の水平ブレーキ機構44のそれぞれが、2台の水平駆動用モータ40のそれぞれの出力軸に連結されている。そのため、水平ブレーキ機構40によって、2台の水平駆動用モータ40を個別にかつ確実に停止させることができる。
【0070】
[実施の形態2]
図13は、本発明の実施の形態2にかかる産業用ロボット101の平面図である。図14は、図13のN−N方向から産業用ロボット101を示す図である。図15は、図13のP−P方向から産業用ロボット101を示す図である。図16は、図13に示す柱状部材108および上下駆動機構116の構成を説明するための図である。図17は、図16のQ部の拡大図である。図18は、図16のR−R方向から上下駆動機構116を示す図である。
【0071】
実施の形態2にかかる産業用ロボット101(以下、「ロボット101」とする。)は、露光装置で使用される高価なマスク102を搬送するためのロボットである。すなわち、実施の形態1のロボット1によって搬送される搬送対象物が大型の基板2であったのに対し、実施の形態2のロボット101によって搬送される搬送対象物は高価なマスク102である。
【0072】
このロボット101は、図13〜図15に示すように、マスク102が搭載されるハンド103と、ハンド103が連結されるアーム104と、アーム104を支持する本体部105と、本体部105を水平方向に移動可能に支持するベース部材106とを備えている。本体部105は、アーム104を支持するとともに上下動可能な支持部材107と、支持部材107を上下方向に移動可能に支持するための柱状部材108と、本体部105の下端部分を構成するとともにベース部材106に対して水平移動可能な基台109と、柱状部材108の下端が固定されるとともに基台109に対して旋回可能な旋回部材110とを備えている。また、ロボット101は、アーム104の傾きを調整するための傾き調整機構111と、支持部材107を上下動させる上下駆動機構116(図16参照)とを備えている。
【0073】
ハンド103は、基板2を搭載するための2本の爪部112を備えている。バンド103は、アーム104に対して図13の左右方向に相対移動可能となるように、アーム104に保持されている。アーム104は、細長い直方体状に形成されており、その中心部分が、支持部材107に支持されている。傾き調整機構111は、アーム104と支持部材107との連結部分に配置されている。この傾き調整機構111は、図14の左右方向に対するアーム104の傾きを調整する。
【0074】
上下駆動機構116は、1台の上下駆動用モータ120と、上下駆動用モータ120が連結される1本のボールネジ121とを備えている。図16に示すように、上下駆動用モータ120は、柱状部材108の上端側に固定されている。また、ボールネジ121は、上下方向を長手方向として、柱状部材108に取り付けられている。具体的には、柱状部材108の上下両端側に固定される2個の軸受122にボールネジ121が回転可能に支持されている。
【0075】
また、上下駆動機構116は、ボールネジ121に螺合して上下動するナット部材123を備えている。ナット部材123は、支持部材107に固定されている。本形態では、ボールネジ121とナット部材123とによって、支持部材107は上下方向に移動する。さらに、上下駆動機構116は、上下駆動機構116を停止させるための(すなわち、支持部材107を停止させるための)2個の上下ブレーキ機構124を備えている。なお、上下駆動機構116は、ボールネジ121を中心とするナット部材123の回転を防止するための共回り防止部(図示省略)を備えている。
【0076】
上下駆動用モータ120は、上下駆動用モータ120の回転速度を検出するための速度検出機構(図示省略)を備えている。この速度検出機構は、たとえば、円板状に形成されたスリット板と、スリット板を挟んだ状態で対向配置される発光素子および受光素子とから構成されている。また、ボールネジ121の下端側には、ボールネジ121の回転速度を検出するための速度検出機構131が取り付けられている。この速度検出機構は、たとえば、円板状に形成されボールネジ121に固定されるスリット板と、スリット板を挟んだ状態で対向配置される発光素子および受光素子とから構成されている。
【0077】
本形態では、上下駆動用モータ120が有する速度検出機構は、上下駆動用モータ120の回転速度を検出するためのモータ側速度検出機構である。また、ボールネジ121の下端側に取り付けられている速度検出機構131は、ボールネジ121の回転速度を検出するためのネジ側速度検出機構である。
【0078】
図17に示すように、上下駆動用モータ120の出力軸には、プーリ128が固定されている。また、ボールネジ121の上端には、プーリ128よりも径の大きなプーリ129が固定されている。プーリ128、129には、ベルト130が架け渡されており、上下駆動用モータ120とボールネジ121とがベルト130によって連結されている。
【0079】
2個の上下ブレーキ機構124は、図17に示すように、プーリ129に隣接するようにボールネジ121の上端側に取り付けられている。すなわち、2個の上下ブレーキ機構124は、プーリ128、129およびベルト130を介して上下駆動用モータ120に連結されている。
【0080】
上下ブレーキ機構124は、実施の形態1の上下ブレーキ機構24と同様に構成されている。すなわち、上下ブレーキ機構124では、コイルが通電状態となると、アマーチュアがケース体に吸引されて、ボールネジ121に固定されるブレーキディスクが解放される。また、コイルへの通電が停止されると、圧縮コイルバネの付勢力でアマーチュアとサイドプレートとの間にブレーキディスクが挟まれて、ボールネジ121に急激にブレーキがかかる。なお、1個の上下ブレーキ機構124は、基板102、ハンド103、アーム104および支持部材107等を含む上下方向に移動する部分を十分に停止させることができる制動力を有している。
【0081】
実施の形態1のロボット1と同様に、本形態のロボット101は、制御部(図示省略)を備えている。この制御部は、上下駆動機構116の制御に関連する構成として、上下駆動用モータ120を制御する上下モータ制御部と、2個の上下ブレーキ機構124を制御する上下ブレーキ制御部とを備えている。
【0082】
本形態の上下ブレーキ制御部は、実施の形態1の上下ブレーキ制御部84と同様に、制御指令部から支持部材107の停止信号が入力されると、2個の上下ブレーキ機構124を段階的に作動させる。すなわち、制御指令部から支持部材107の停止信号が入力されると、上下ブレーキ制御部は、一方の上下ブレーキ機構124の作動開始タイミングと他方の上下ブレーキ機構124の作動開始タイミングとが変わるように(ずれるように)、2個の上下ブレーキ機構124を作動させる。
【0083】
具体的には、上下ブレーキ制御部は、他方の上下ブレーキ機構124の作動開始タイミングが一方の上下ブレーキ機構124の作動開始タイミングよりも遅れるように、2個の上下ブレーキ機構124を作動させる。すなわち、まず、一方の上下ブレーキ機構124が作動を開始するとともに、この一方の上下ブレーキ機構124が作動している状態で、他方の上下ブレーキ機構124が作動を開始するように、上下ブレーキ制御部は、2個の上下ブレーキ機構124を作動させる。より具体的には、上下ブレーキ制御部は、他方の上下ブレーキ機構124のコイルへの通電を停止するタイミング(またはコイルへの通電が実際に止まるタイミング)が一方の上下ブレーキ機構124のコイルへの通電を停止するタイミング(またはコイルへの通電が実際に止まるタイミング)よりも遅れるように、2個の上下ブレーキ機構124のコイルへの通電を停止する。
【0084】
以上説明したように、本形態では、上下駆動機構116は、2個の上下ブレーキ機構124を備えている。そのため、一方の上下ブレーキ機構124が破損しても他方の上下ブレーキ機構124によって、上下駆動機構116を停止させることができ、支持部材107を停止させて、ハンド103およびアーム104の落下を防止することができる。したがって、本形態では、高価なマスク102であっても安全に搬送することができる。また、メンテナンス時に一方の上下ブレーキ機構124を取り外す場合であっても、他方の上下ブレーキ機構124で支持部材107を所定位置に停止させることができるため、上下駆動機構116のメンテナンスが容易になる。
【0085】
また、本形態では、2個の上下ブレーキ機構124を段階的に作動させており、上下駆動機構116に生じる制動力を段階的に大きくしている。そのため、上下駆動機構116の急制動を防止することができる。したがって、上下駆動機構116が2個の上下ブレーキ機構124を備えていても、支持部材107が急停止することに起因して生じ得るハンド103からのマスク102の落下を防止することができる。
【0086】
本形態では、上下駆動機構116は、2個の上下ブレーキ機構124が連結される1台の上下駆動用モータ120を備えている。そのため、2個の上下ブレーキ機構124による大きな制動力で1個の上下駆動用モータ120を確実に停止させることができる。
【0087】
本形態では、上下駆動機構116は、上下駆動用モータ120の回転速度を検出するための速度検出機構と、ボールネジ121の回転速度を検出するための速度検出機構131とを備えている。そのため、上下駆動用モータ120の速度検出機構からの出力に基づいて算出されるボールネジ121の回転速度と、速度検出機構131で検出されるボールネジ121の回転速度との差が所定値以上になっているか否かを検出することで、上下駆動機構116の異常を確実に検出することができる。また、上下駆動機構116の異常が検出された場合には、上下ブレーキ機構124によって、上下駆動機構116を停止させることができる。したがって、上下駆動機構116に異常が生じても、支持部材107を安全に停止させることができる。
【0088】
[他の実施の形態]
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0089】
実施の形態1では、上下ブレーキ機構24は、減速機21の入力軸に取り付けられている。この他にもたとえば、上下ブレーキ機構24は、上下駆動用モータ20の出力軸や減速機21の出力軸に取り付けられても良い。また、上下方向を長手方向とする細長い板状のブレーキ板が柱状部材8に固定されるとともに、支持部材7とともに上下動するサイドプレートとアマーチュアとがこのブレーキ板を挟んだ状態で配置されることで、上下ブレーキ機構が構成されても良い。すなわち、上下ブレーキ機構は、上下駆動用モータ20に連結されていなくても良い。
【0090】
同様に、実施の形態1では、水平ブレーキ機構44は、水平駆動用モータ40の出力軸に取り付けられているが、水平ブレーキ機構44は、回転軸53に取り付けられても良い。また、水平方向を長手方向とする細長い板状のブレーキ板がレール状部材51に固定されるとともに、基台9とともに水平移動するサイドプレートとアマーチュアとがこのブレーキ板を挟んだ状態で配置されることで、水平ブレーキ機構が構成されても良い。すなわち、水平ブレーキ機構は、水平駆動用モータ40に連結されていなくても良い。
【0091】
また、実施の形態2では、上下ブレーキ機構124は、ボールネジ121の上端側に取り付けられているが、上下ブレーキ機構124は、上下駆動用モータ120の出力軸に取り付けられても良い。また、上下方向を長手方向とする細長い板状のブレーキ板が柱状部材108に固定されるとともに、支持部材107とともに上下動するサイドプレートとアマーチュアとがこのブレーキ板を挟んだ状態で配置されることで、上下ブレーキ機構が構成されても良い。
【0092】
上述した形態では、上下駆動機構16、116は、2個の上下ブレーキ機構24、124を備えている。この他にもたとえば、上下駆動機構16、116は、3個以上の上下ブレーキ機構24、124を備えていても良い。この場合には、上下ブレーキ制御部84は、3個以上の上下ブレーキ機構24、124のそれぞれの作動開始タイミングがずれるように、上下ブレーキ機構24、124を作動させても良い。すなわち、上下ブレーキ制御部84は、3個以上の上下ブレーキ機構24、124の作動を順番に開始しても良い。また、この場合には、3個以上の上下ブレーキ機構24、124をいくつかのグループに分けるとともに、このグループごとの作動開始タイミングがずれるように(グループごとに順番に作動が開始されるように)、上下ブレーキ制御部84が上下ブレーキ機構24、124を作動させても良い。
【0093】
なお、3個以上の上下ブレーキ機構24、124のそれぞれの作動開始タイミングがずれるように、上下ブレーキ制御部84が上下ブレーキ機構24、124を作動させる場合には、上下駆動機構16、116に生じる制動力を徐々に大きくすることができる。そのため、上下駆動機構16、116の急制動を確実に防止して、ハンド3、103からの搬送対象物の落下を確実に防止することが可能になる。
【0094】
同様に、水平駆動機構17は、3個以上の水平ブレーキ機構44を備えていても良い。この場合には、水平ブレーキ制御部85は、3個以上の水平ブレーキ機構44のそれぞれの作動開始タイミングがずれるように、水平ブレーキ機構44を作動させても良い。また、この場合には、3個以上の水平ブレーキ機構44をいくつかのグループに分けるとともに、このグループごとの作動開始タイミングがずれるように、水平ブレーキ制御部85が水平ブレーキ機構44を作動させても良い。
【0095】
また、実施の形態1においては、上下駆動機構16または水平駆動機構17の一方が2個のブレーキ機構24、44を備えているのであれば、他方の駆動機構が備えるブレーキ機構24、44は、1個であっても良い。
【0096】
実施の形態1では、回転駆動機構18は、1個の回転ブレーキ機構64を備えているが、回転駆動機構18は、複数の回転ブレーキ機構64を備えていても良い。この場合には、回転ブレーキ制御部86は、複数の回転ブレーキ機構64のそれぞれの作動開始タイミングがずれるように、回転ブレーキ機構64を作動させても良い。また、この場合には、複数の回転ブレーキ機構64をいくつかのグループに分けるとともに、このグループごとの作動開始タイミングがずれるように、回転ブレーキ制御部86が回転ブレーキ機構64を作動させても良い。
【0097】
上述した形態では、上下ブレーキ機構24、124、水平ブレーキ機構44および回転ブレーキ機構64は、いわゆる無励磁作動型のブレーキである。この他にもたとえば、上下ブレーキ機構24、124、水平ブレーキ機構44および/または回転ブレーキ機構64は、コイルへの通電時にサイドプレートとアマーチュアとによってブレーキディスクが挟まれ、コイルへの通電が停止されると圧縮コイルバネの付勢力でブレーキディスクが解放されるように構成されたブレーキであっても良い。また、上下ブレーキ機構24、124、水平ブレーキ機構44および/または回転ブレーキ機構64は、圧縮空気によってアマーチュアが作動するように構成されたエアブレーキであっても良い。
【0098】
実施の形態1では、上下駆動機構16、水平駆動機構17および回転駆動機構18は、2台の駆動用モータ20、40、60を備えている。この他にもたとえば、上下駆動機構16、水平駆動機構17および/または回転駆動機構18は、3台以上の駆動用モータ20、40、60を備えていても良い。また、上下駆動機構16、水平駆動機構17および回転駆動機構18が備える駆動用モータ20、40、60の数は、1台であっても良い。
【0099】
実施の形態1では、ロボット1は、上下駆動機構16と水平駆動機構17と回転駆動機構18とを備えている。この他にもたとえば、ロボット1は、上下駆動機構16、水平駆動機構17および回転駆動機構18の中から任意に選択される2個あるいは1個の駆動機構のみを備えていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる産業用ロボットの平面図である。
【図2】図1のE−E方向から産業用ロボットを示す図である。
【図3】図1のF−F方向から産業用ロボットを示す図である。
【図4】図1のF−F方向から支持部材および上下駆動機構を示す図である。
【図5】図4のG−G方向から支持部材、柱状部材および上下駆動機構を示す図である。
【図6】図4のH−H方向から上下駆動機構を示す図である。
【図7】図2のJ部の内部構成を説明するための図である。
【図8】図3のK−K方向から水平駆動機構等の構成を説明するための図である。
【図9】図8のL−L方向から水平駆動機構の構成を説明するための図である。
【図10】図1に示す旋回部材の平面図である。
【図11】図10のM−M断面の断面図である。
【図12】図1に示す産業用ロボットの制御部およびその関連部分のブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態2にかかる産業用ロボットの平面図である。
【図14】図13のN−N方向から産業用ロボットを示す図である。
【図15】図13のP−P方向から産業用ロボットを示す図である。
【図16】図13に示す柱状部材および上下駆動機構の構成を説明するための図である。
【図17】図16のQ部の拡大図である。
【図18】図16のR−R方向から上下駆動機構を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
1、101 ロボット(産業用ロボット)
2 基板(搬送対象物)
3、103 ハンド
4、104 アーム
7、107 支持部材
16、116 上下駆動機構
17 水平駆動機構
18 回転駆動機構
20、120 上下駆動用モータ
24、124 上下ブレーキ機構(ブレーキ機構)
40 水平駆動用モータ
44 水平ブレーキ機構(ブレーキ機構)
80 制御部
84 上下ブレーキ制御部(ブレーキ制御部)
85 水平ブレーキ制御部(ブレーキ制御部)
102 マスク(搬送対象物)
121 ボールネジ
131 速度検出機構(ネジ側速度検出機構)
CL 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物が搭載されるハンドと、前記ハンドが連結されるアームと、前記アームを支持する支持部材とを備えるとともに、
前記支持部材を上下動させる上下駆動機構および/または前記支持部材を水平方向に移動させるための水平駆動機構および/または上下方向を軸方向とする所定の中心軸を中心に前記支持部材を回転させるための回転駆動機構と、前記上下駆動機構および/または前記水平駆動機構および/または前記回転駆動機構を制御する制御部とを備え、
前記上下駆動機構および/または前記水平駆動機構および/または前記回転駆動機構は、前記上下駆動機構および/または前記水平駆動機構および/または前記回転駆動機構を停止させるための複数のブレーキ機構を備え、
前記制御部は、複数の前記ブレーキ機構を制御するブレーキ制御部を備え、
前記ブレーキ制御部は、複数の前記ブレーキ機構を段階的に作動させることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記ブレーキ制御部は、複数の前記ブレーキ機構のそれぞれの作動開始タイミングをずらすことを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
複数の前記ブレーキ機構として複数の上下ブレーキ機構を有する前記上下駆動機構を備え、
前記制御部は、前記ブレーキ制御部として複数の前記上下ブレーキ機構を制御する上下ブレーキ制御部を備え、
前記上下ブレーキ制御部は、複数の前記上下ブレーキ機構を段階的に作動させることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記上下駆動機構は、前記上下ブレーキ機構と同じ数の上下駆動用モータを備え、
複数の前記上下ブレーキ機構のそれぞれは、複数の前記上下駆動用モータのそれぞれに連結されていることを特徴とする請求項3記載の産業用ロボット。
【請求項5】
複数の前記上下駆動用モータのそれぞれの回転速度を検出するための複数の速度検出機構を備えることを特徴とする請求項4記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記上下駆動機構は、複数の前記上下ブレーキ機構が連結される1台の上下駆動用モータを備えることを特徴とする請求項3記載の産業用ロボット。
【請求項7】
前記上下駆動機構は、前記上下駆動用モータに連結され前記支持部材を上下動させるボールネジと、前記ボールネジの回転速度を検出するためのネジ側速度検出機構と、前記上下駆動用モータの回転速度を検出するためのモータ側速度検出機構とを備えることを特徴とする請求項6記載の産業用ロボット。
【請求項8】
複数の前記ブレーキ機構として複数の水平ブレーキ機構を有する前記水平駆動機構を備え、
前記制御部は、前記ブレーキ制御部として複数の前記水平ブレーキ機構を制御する水平ブレーキ制御部を備え、
前記水平ブレーキ制御部は、複数の前記水平ブレーキ機構を段階的に作動させることを特徴とする請求項1から7いずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項9】
前記水平駆動機構は、前記水平ブレーキ機構と同じ数の水平駆動用モータを備え、
複数の前記水平ブレーキ機構のそれぞれは、複数の前記水平駆動用モータのそれぞれに連結されていることを特徴とする請求項8記載の産業用ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−52055(P2010−52055A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216543(P2008−216543)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】