画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体
【課題】 タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、検査の安定化および高精度化を図ることができる画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体を提供する。
【解決手段】 制御部12は、タイヤ回転方向に直交する方向のラインごとに、取込画像の各画素の濃度を、各画素が含まれるライン上の平均濃度に変換して、濃度射影変換する。次に、濃度射影変換が行われた画像に対して、タイヤの回転方向のラインのうちの1つのライン上の画素について、フーリエ展開する。フーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開し、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度と濃度射影変換によって求めた射影変換濃度との差分濃度を求め、差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定して、コード露出欠陥検出処理を行う。
【解決手段】 制御部12は、タイヤ回転方向に直交する方向のラインごとに、取込画像の各画素の濃度を、各画素が含まれるライン上の平均濃度に変換して、濃度射影変換する。次に、濃度射影変換が行われた画像に対して、タイヤの回転方向のラインのうちの1つのライン上の画素について、フーリエ展開する。フーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開し、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度と濃度射影変換によって求めた射影変換濃度との差分濃度を求め、差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定して、コード露出欠陥検出処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理が行われた画像に基づいて被検査物の欠陥検査を行う画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体に関し、より詳細には、自動車用タイヤに代表される工業製品の表面に形成される直線性を有する欠陥、特にコード露出欠陥を、画像処理を行うことによって検査することができる画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤおよびゴム製品等に代表される工業製品を対象とする画像処理装置、たとえば工業製品の検査を行う検査装置は、検査対象物をカメラなどの撮影装置によって撮影し、撮影した画像に基づいて欠陥検査を行う。
【0003】
タイヤの製法には、たとえば、金型に押しつけて加硫する方法がある。具体的には、ビード部品、ナイロン、テキスタイル、スチールコードが入ったゴムシート、およびゴム生地を順番にタイヤドラムに巻きつけて、それらを、ブラダーと呼ばれるゴム風船で内側からタイヤの形に膨らまして、金型に押しつけて加硫する。加硫時のブラダーとタイヤとの間の空気を抜くために、ブラダーに溝が掘られており、その溝の形状がタイヤに転写される。このタイヤに転写される溝の形状は、斜め方向の固定パターンであり、「ブラダーグルーブ」と呼ばれる。「ブラダーグルーブ」は、タイヤ内側のセンター部には形成されない。センター部とは、タイヤ回転方向に直交する方向での中央部である。
【0004】
タイヤを製造するときに、タイヤの内側には、欠陥ではないが画像処理を用いて欠陥検査を行う上でノイズとなる成分を生じさせる非欠陥部が形成される。非欠陥部は、たとえば、上述したブラダーグルーブの他、内面離型剤、成型切手、および刻印文字などの表面形状がある。
【0005】
さらに、タイヤを製造するときに、タイヤの内側には、欠陥、たとえば直線性を有する欠陥(以下「線状欠陥」という)が形成されることがある。表1は、線状欠陥を分類したものである。
【0006】
【表1】
【0007】
線状欠陥は、コード露出欠陥および凹凸欠陥を含む。コード露出欠陥には、タイヤ内部のコードが表面に露出する故障があり、また、凹凸欠陥には、内面凹あるいは内面凸と呼ばれる故障があり、それぞれ表1に示した発生原因で発生する。コードとは、プライコードのことであり、ラジアル状(放射状)に貼り付けられているナイロン素材、ポリエステル素材もしくはスチール素材のものである。
【0008】
図14は、コード露出欠陥が形成されたタイヤ内側を撮影した画像の例を示す図である。図14(a)に示した画像100は、凹凸が少なく、広範囲に広がるコード露出欠陥101を示す画像であり、図14(b)に示した画像110は、凹凸が大きく、局所的に形成されるコード露出欠陥111を示す画像である。コード露出欠陥は、ゴムが薄くなって形成されるものである。図14(a)および図14(b)には、それぞれブラダーグルーブ102,112が示されている。
【0009】
第1の従来の技術として、特許文献1に記載されるタイヤ検査装置がある。このタイヤ検査装置は、波形処理の一種であるウェーブレット変換を用いてコード露出欠陥を検出するものである。ウェーブレット変換は、時間的に特徴が変化する信号の解析を可能にする周波数解析の変換処理である。すなわち、タイヤの位置を時間に対応させて、時間と周波数とを座標軸とする平面で、固有の広がりを有するウェーブレット(小さい波)を拡大縮小そして平行移動して足し合わせることによって、入力された信号波形を表現するものである。撮影信号は、コード露出欠陥に特有の周波数を中心周波数とする数値フィルタであるアナライジングウェーブレットによってウェーブレット変換され、変換結果に基づいてコード露出欠陥の判定が行われる。
【0010】
第2の従来の技術として、濃度射影平均を前処理とする2値化処理によって、または微分画像を2値化して微小エッジを除去した後、ハフ(Hough)変換を行うことによって、凹凸の直線性を検出する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−333531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、第1の従来の技術は、波形パターンであるウェーブレットおよび検査位置を変えて、取り込み画像と一致する欠陥があるか否かを検査するマッチング方法であるので、計算コストが非常に大きいという問題がある。第2の従来の技術は、タイヤの種類、たとえばタイヤの径、幅、および扁平率、タイヤの表面の状態、ならびに照明の位置関係が、画像に影響を与えるので、検査の安定性に欠け、検査精度も低いという問題がある。
【0013】
また、コード露出欠陥検査を行う第1の従来の技術と、凹凸の直線性を検出するための第2の従来の技術とでは、検査方法が異なるので、それぞれに検査時間が必要であり、タクトタイムがそれらの検査時間に大きく依存する。
【0014】
本発明の目的は、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、検査の安定化および検査精度の向上を図ることができる画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の処理を行う画像処理装置で実行される画像処理方法であって、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開工程と、
フーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分を、コード露出帯域の周波数成分と、コード露出帯域の周波数成分を除いた残余の周波数成分とに判定する周波数判定工程と、
周波数判定工程でコード露出帯域の周波数成分を除いた残余の周波数成分を、逆フーリエ展開する逆フーリエ展開工程と、
濃度変換工程で求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開工程で求めた逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求める差分濃度算出工程と、
差分濃度算出工程で求めた差分濃度について、コード露出に相当する差分濃度であるか否かを判定するコード露出判定工程と、
コード露出判定工程で判定された差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定工程とを含むことを特徴とする画像処理方法である。
【0016】
また本発明は、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、
前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、
前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向に対して予め定める角度範囲内の複数の角度の方向であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記線状模様は、ブラダーグルーブであることを特徴とする。
また本発明は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換手段と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開手段と、
フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分とコード露出帯域の周波数成分を除いた周波数成分とに判定する周波数判定手段と、
周波数判定手段によって判定された残余の周波数成分を逆フーリエ展開する逆フーリエ展開手段と、
濃度変換手段によって求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度との差分濃度を求める差分濃度算出手段と、
差分濃度算出手段によって求めた差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定手段とを含むことを特徴とする画像処理装置である。
【0019】
また本発明は、コンピュータを、
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換手段、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開手段、
フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分とコード露出帯域の周波数成分を除いた周波数成分とに判定する周波数判定手段、
周波数判定手段によって判定された残余の周波数成分を逆フーリエ展開する逆フーリエ展開手段、
濃度変換手段によって求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度との差分濃度を求める差分濃度算出手段、および
差分濃度算出手段によって求めた差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定手段として機能させるためのプログラムである。
また本発明は、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フーリエ展開のヒストグラムでコード露出の候補を抽出し、射影変換濃度と逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求め、この差分濃度について一定以上の大きさの部分の積算値よってコード露出を判定するので、コード露出が連続している場合および局所的に存在している場合のいずれであっても、コード露出検査の弊害となるタイヤ表面のブラダーグルーブ、内面離型剤、表面形状といったノイズを除去して、高精度でコード露出欠陥を検出することができる。
【0021】
また、フーリエ展開処理、逆フーリエ展開処理および差分処理をこの順序で実行するので、検査対象物の種類、検査対象物の表面の状態、および検査時における検査対象物への照明の影響などを排除して、検査の安定化を図ることができる。
【0022】
したがって、画像処理によって、検査対象物であるたとえばタイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、直線性に特徴のあるコード露出欠陥を検出することができ、検査の安定化および高精度化を図ることができる。
【0023】
また本発明によれば、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向であるので、コード露出欠陥の直線性の方向がタイヤ回転方向と一致するとき、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、検査の安定化を図ることができる。
【0024】
また本発明によれば、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向に対して予め定める角度範囲内の複数の角度の方向であるので、コード露出欠陥の直線性の方向がタイヤ回転方向と一致しなくても、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、検査の安定化を図ることができる。
【0025】
また本発明によれば、前記線状模様は、ブラダーグルーブであるので、取込画像からブラダーグルーブを除去して、コード露出欠陥を検出することができる。
【0026】
また本発明によれば、フーリエ展開のヒストグラムでコード露出の候補を抽出し、射影変換濃度と逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求め、この差分濃度について一定以上の大きさの部分の積算値よってコード露出を判定するので、コード露出が連続している場合および局所的に存在している場合のいずれであっても、コード露出検査の弊害となるタイヤ表面のブラダーグルーブ、内面離型剤、表面形状といったノイズを除去して、高精度でコード露出欠陥を検出することができる。
【0027】
また、フーリエ展開処理、逆フーリエ展開処理および差分処理をこの順序で実行するので、検査対象物の種類、検査対象物の表面の状態、および検査時における検査対象物への照明の影響などを排除して、検査の安定化を図ることができる。画像処理によって、たとえば、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、コード露出欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0028】
また本発明によれば、プログラムによって、コンピュータを、濃度変換手段、フーリエ展開手段、周波数判定手段、逆フーリエ展開手段、差分濃度算出手段、および刻印文字判定手段として機能させることができる。
【0029】
また本発明によれば、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態である画像処理装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】濃度射影変換を説明するための図である。
【図3】欠陥のないタイヤ内側の取込画像30およびそれを濃度射影変換した変換画像31の一例を示す図である。
【図4】線状欠陥のあるタイヤ内側の取込画像35およびそれを濃度射影変換した変換画像36の一例を示す図である。
【図5】フーリエ展開の補充の仕方を説明するための図である。
【図6】フーリエ周波数ヒストグラムを示す図である。
【図7】周波数判定結果の具体例を示す図である。
【図8】自己相関値を説明するための図である。
【図9】相関差分値を説明するための図である。
【図10】ピーク位置およびピーク間隔を説明するための図である。
【図11】回転射影変換を説明するための図である。
【図12】制御部12が実行するコード露出欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】コード露出判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】凹凸欠陥およびコード露出欠陥が形成されたタイヤ内側を撮影した画像の例を示す図であり、図14(a)に示した画像100は、凹凸が少なく、広範囲に広がるコード露出欠陥101を示す画像であり、図14(b)に示した画像110は、凹凸が大きく、局所的に形成されるコード露出欠陥111を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の一実施形態である画像処理装置1の構成を示すブロック図である。画像処理装置1は、たとえばゴム、金属もしくは樹脂からなる成型品の表面検査を、画像処理を用いて検査する検査装置であり、以下、タイヤを検査する検査装置である画像処理装置1を例に説明する。本発明に係る画像処理方法は、たとえば画像処理装置1で実行される。
【0032】
画像処理装置1は、入力部11、制御部12、記憶部13および出力部14を含んで構成される。入力部11は、たとえばマウスおよびキーボードなどの入力装置、ならびに照明部および撮影部からなる撮影装置を含んで構成される。入力装置は、たとえば検査の開始および終了を指示する情報、および検査の条件などの情報を入力する装置であり、入力部11は、入力装置によって入力された情報を制御部12に送る。
【0033】
撮影装置は、タイヤの内側をライトなどの照明部によって照明し、照明光が照射されているタイヤ表面をカメラなどの撮影部によって撮影する。撮影装置は、タイヤの内側を1度に撮影することができないので、タイヤの内側の表面の位置を移動して順次撮影する。入力部11は、撮影装置によって撮影したタイヤの内側の表面の画像を制御部12に送る。
【0034】
制御部12は、たとえば中央処理装置(Central Processing Unit;略称CPU)によって構成され、記憶部13に記憶されるプログラムを実行することによって、入力部11および出力部14を制御し、本発明に係る線状欠陥検出処理を行う後述する複数の機能を実現する。記憶部13は、たとえば半導体メモリあるいはハードディスク装置などによって構成される読み書き可能な記憶装置であり、制御部12で実行されるプログラムおよび制御部12で用いられる情報を記憶する。
【0035】
出力部14は、情報を出力するディスプレイなどの表示装置あるいはプリンタなどの印刷装置によって構成され、制御部12から受け取る情報を出力する。あるいは、着脱可能な記録媒体への情報の読み書きが可能な記録再生装置、他の画像処理装置と情報の送受信を行う通信装置などを、入力装置兼出力装置とすることも可能である。制御部12は、入力部11から受け取る画像に基づいて線状欠陥の有無を判定し、判定結果に基づく検査結果を出力部14に出力する。
【0036】
制御部12は、線状欠陥、特にコード露出欠陥検出処理を第1〜第8ステップの8つのステップで処理する。制御部12は、第1ステップで「濃度射影変換」処理を行い、第2ステップで「フーリエ展開」処理を行い、第3ステップで「周波数判定」処理を行い、第4ステップで「逆フーリエ展開」処理を行い、第5ステップで「濃度差分」処理を行い、第6ステップで「コード露出判定」処理を行い、第7ステップで「刻印文字判定」処理を行い、第8ステップで「傾き変動」処理を行う。
【0037】
入力部11の撮影装置から受け取る画像(以下「取込画像」という)は、記憶部13に記憶される。取込画像は、予め定める第1の方向であるタイヤ回転方向と、タイヤ回転方向に垂直な方向とに配列された画素から構成される。すなわち、画素は、タイヤ回転方向に平行な複数のラインと、タイヤ回転方向に直交する方向に平行な複数のラインとの交点に配置されている。取込画像は、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様、たとえばブラダーグルーブが形成された画像である。ブラダーグルーブは、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様である。
【0038】
制御部12は、記憶部13に記憶されるプログラムを実行することによって、濃度変換手段、フーリエ展開手段、周波数算出手段、逆フーリエ手段、濃度差分算出手段、コード露出判定手段、刻印文字判定手段および傾き変動処理手段などの機能を実現する。第1ステップは、濃度変換手段によって実行され、第2ステップは、フーリエ展開手段によって実行され、第3ステップは、周期算出手段によって実行され、第4ステップは、逆フーリエ展開手段によって実行され、第5ステップは、濃度差分算出手段によって実行され、第6ステップは、コード露出判定手段によって実行され、第7ステップは、刻印文字判定手段によって実行され、第8ステップは、傾き変動処理手段によって実行される。
【0039】
[第1ステップ](濃度射影変換)
第1ステップでは、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換は、1つの方向のライン上の画素の濃度を、そのライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換することである。具体的には、制御部12は、タイヤ回転方向に直交する方向のラインごとに、取込画像の各画素の濃度を、各画素が含まれるライン上の画素の濃度を平均した濃度に変換する。取込画像に照明による濃度むらがある場合は、取込画像から濃度むらを除去した画像に対して濃度射影変換を行う。濃度むらの除去方法については、特に限定されない。
【0040】
図2は、濃度射影変換を説明するための図である。図2(a)は、濃度射影変換を行う対象の取込画像20の一例である。取込画像20を構成する画素のうち、白色部分を構成する画素の濃度は、黒色部分を構成する画素の濃度よりも高い値を示す。取込画像20の横方向がX方向であり、縦方向がY方向である。図2(b)は、取込画像20のX方向のラインごとに、画素の濃度を加算した値を示すグラフ21である。すなわち、グラフ21は、取込画像20をX方向のラインごとに、画素の濃度を加算した値を示す。グラフ21の横方向が取込画像20のX方向のラインごとに画素の濃度を加算した合計であり、縦方向が取込画像20のY方向である。平均濃度は、各画素が含まれるライン上の画素の濃度を加算した濃度を、各画素を含むライン上の画素数で除算した値である。制御部12は、各画素の濃度を、各画素が含まれるラインの平均濃度に変換する。
【0041】
図3は、欠陥のないタイヤ内側の取込画像30およびそれを濃度射影変換した変換画像31の一例を示す図である。図3(a)は、取込画像30を示し、取込画像30には、ブラダーグルーブ301が示されている。取込画像30の横方向がタイヤ回転方向であり、取込画像30の縦方向がタイヤ回転方向に直交する方向である。ブラダーグルーブ301は、加硫時にタイヤに形成された複数の溝であり、取込画像30では、右上から左下への斜め方向の溝として示されている。図3(b)は、取込画像20の各画素の濃度を、縦方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換した変換画像31である。
【0042】
図4は、線状欠陥のあるタイヤ内側の取込画像35およびそれを濃度射影変換した変換画像36の一例を示す図である。図4(a)は、取込画像35を示し、取込画像35には、ブラダーグルーブ351および線状欠陥352の部分画像が示されている。図4(b)は、取込画像35の各画素の濃度を、縦方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換した変換画像36である。線状欠陥352に対応する位置に、周囲よりも暗い部分を含む部分画像362が示されている。
【0043】
濃度射影変換を行うことによって、濃度射影変換を行う方向以外の方向のノイズを緩和することができる。コード露出欠陥および凹凸欠陥は、タイヤ回転方向に直交する方向の直線性に特徴を有するので、濃度射影変換を行うことによって、タイヤ回転方向に直交する方向以外の方向のノイズ、たとえばブラダーグルーブおよび内面離型剤などのノイズを緩和することができる。
【0044】
[第2ステップ](フーリエ展開)
第2ステップでは、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。具体的には、制御部12は、濃度射影変換が行われた画像に対して、予め定める第1の方向、たとえばタイヤの回転方向のラインのうちの1つのライン上の画素について、画素の位置を変数xとし、各画素の濃度を関数f(x)として、フーリエ展開する。フーリエ展開した関数をF(x)とし、濃度の関数f(x)が0≦x≦1で求められたとすると、F(x)は、式(1)によって算出される。
F(x)=a0/2+Σ{an ×cos(n×π×x/L)
+bn×sin(n×π×x/L)} …(1)
【0045】
ここで、Σは、数列の総和を表す記号であり、総和Σの範囲は、n=1から無限大までの整数であるが、実際には、nの値は、いずれかの値で打ち切る必要がある。nは、欠陥の周波数、つまり欠陥の個数であり、nの値は、良品サンプルに関するデータをどこまで展開して復元することできるかによって定められる。
【0046】
また、係数anおよび係数bnは、それぞれ式(2),(3)によって求められる。
an=1/l×∫f(x)×cos(n×π×x/L)dx …(2)
bn=1/l×∫f(x)×sin(n×π×x/L)dx …(3)
ここで、∫は積分記号であり、積分∫の範囲は、−1≦x≦1である。
【0047】
式(1)での計算は、0≦x≦1の範囲でしか行っていないので、−1≦x<0の範囲のフーリエ展開を補充する必要がある。補充の仕方は、限定されるものではなく、どのように補充してもよい。
【0048】
図5は、フーリエ展開の補充の仕方を説明するための図である。図5(a)は、0≦x≦1で、f(x)=cxなる関数を示すグラフ41である。cは、係数である。図5(b)は、補充するための第1の関数f1(x)を示すグラフ42である。関数f1(x)は、−1≦x<0の範囲で、f1(x)=c(x+1)であり、0≦x≦1で、f1(x)=f(x)である。図5(c)は、補充するための第2の関数f2(x)を示すグラフ43である。関数f2(x)は、−1≦x<0の範囲で、f2(x)=−cxであり、0≦x≦1で、f2(x)=f(x)である。図5(d)は、補充するための第3の関数f3(x)を示すグラフ44である。関数f3(x)は、−1≦x≦1の範囲で、f3(x)=c(x+1)である。
【0049】
式(1)の右辺が連続関数の和であり、グラフ42に示した不連続な第1の関数f1(x)の値に収束しないので、xの範囲を0≦x≦1の範囲から−1≦x≦1の範囲に変えたグラフ44に示した第3の関数f3(x)で補充することもできる。いずれの関数を用いて補充するかは特に限定されないが、図5(c)に示した第2の関数f2(x)がよく用いられる。
【0050】
制御部12は、式(2)および式(3)で求めた係数から振幅「2×√(an2+bn2)」を求める。√は、平方根の演算記号である。
【0051】
[第3ステップ](周波数判定)
図6は、フーリエ周波数ヒストグラムを示す図である。フーリエ周波数ヒストグラムは、横軸が周波数であり、縦軸は振幅である。図6(a)は、コード露出欠陥のない場合のフーリエ周波数ヒストグラム51であり、図6(b)は、コード露出欠陥のある場合のフーリエ周波数ヒストグラム52である。
【0052】
フーリエ周波数ヒストグラム51には、ブラダーグルーブの周波数で振幅の高い部分511が示され、フーリエ周波数ヒストグラム52には、ブラダーグルーブの周波数で振幅の高い部分521、およびコード露出欠陥の周波数で振幅の高い部分522が示されている。コード露出欠陥の周波数で振幅の高い部分522は、ブラダーグルーブの周波数で振幅の高い部分521よりも高い周波数である。フーリエ周波数ヒストグラム51の部分512には、コード露出欠陥の周波数で振幅の高い部分はない。
【0053】
第3ステップでは、制御部12は、周波数判定処理を行う。具体的には、制御部12は、濃度射影変換を行う前の取込画像から自己相関値を算出し、算出した自己相関値の変動周期(以下「変動間隔」ともいう)を求めることによって、ブラダーグルーブの本数を算出する。
【0054】
ブラダーグルーブのように周期的変化に特徴がある画像の場合、自己相関値も周期的に変動する。したがって、自己相関値の変動間隔を求めることによって、ブラダーグルーブ本数を算出することができる。ブラダーグルーブ本数の算出は、第1〜第5手順で算出される。制御部12は、第1手順で、自己相関値を算出し、第2手順で、相関差分値を算出し、第3手順で、相関差分値のピーク位置を検出し、第4手順で、相関差分値のピーク間隔を算出し、第5手順で、ブラダーグルーブの本数を算出する。
【0055】
第1手順では、制御部12は、取込画像内に予め定める矩形のテンプレート領域を設定し、テンプレート領域内の画素と、テンプレート領域を移動させた領域中の画素との間の自己相関値を算出する。
【0056】
図7は、周波数判定結果の具体例を示す図である。コード露出の場合、前述の図6に示すように、フーリエ周波数ヒストグラムにはおおよその傾向が現れる。この性質を利用し、取込画像54の対象領域55について、周波数範囲56(図7の例では、40〜255)、強度下限57(図7の例では、030)および累積強度58(図7の例では、0035)によって、大まかに判定することができる。具体的には、周波数ヒストグラムの指定周波数範囲、たとえば「40」のデータについて、強度下限、たとえば「30」からの超過分を累計し、累計値、つまり累計強度が指定しきい値、たとえば「35」を超えた場合、コード露出等と判定する。
【0057】
強度に関しては、高周波数範囲のピーク値によって判定し、コード露出欠陥あり(NG)ならピーク値を超えた分のスペクトル値を累積加算し、NG強度の積算値によって判定する。この強度は、振幅(=√[an2+bn2])である。このような周波数判定では、コード露出以外に後述するように刻印文字が検出される。
【0058】
図8は、自己相関値を説明するための図である。対象領域61は、取込画像のうち、自己相関値を算出する画像の矩形の領域であり、図8の縦方向であるY方向の縦寸法が「H」であり、かつ図7の横方向であるX方向の横寸法が「W」である。テンプレート領域66は、A方向の縦寸法が「HT」であり、B方向の横寸法が「WT」である。対象領域61の左上の位置をXY座標の原点とする。
【0059】
制御部12は、対象領域61内の任意の位置にテンプレート領域66を設定する。テンプレート領域66の寸法HTは、対象領域61の寸法Hと一致し、テンプレート領域66の横寸法WTは、対象領域61の横寸法Wよりも小さい。次に、制御部12は、テンプレート領域66をX方向に移動させた位置に、相関値算出領域67を設定する。相関値算出領域67は、テンプレート領域66と同一の寸法であり、縦寸法が「HT」、横寸法が「WT」である。縦寸法および横寸法は、画素数で表される。
【0060】
制御部12は、テンプレート領域66と相関値算出領域67とを重ね合わせて、各画素の相関値を算出する。テンプレート領域66中の画素の位置を、テンプレート領域66の左上の位置を原点とする相対座標系で表して、座標(i,j)とし、相関値算出領域67の左上の画素の位置をXY座標系で座標(x,y)とすると、相関値算出領域67中の画素の位置は、XY座標系で(x+i,y+j)となる。
【0061】
本実施形態では、テンプレート領域66の画素の濃度と、相関値算出領域67の画素の濃度との相関値を、正規化相関法を用いて算出する。具体的には、テンプレート領域66の座標(i,j)の画素の濃度をT(i,j)とし、相関値算出領域67の座標(x+i,y+j)の画素の濃度を、I(x+i,y+j)とすると、相関値R(x,y)は、正規化相関法による式(4)で算出される。制御部12は、相関値算出領域67を対象領域61内でX方向に順次1画素ずつ移動させて、正規化相関値を算出する。
【0062】
【数1】
【0063】
ここで、R(x,y)は、正規化相関値(以下、単に「相関値」ともいう)であり、「IH」は、相関値算出領域67内の画素の濃度の平均値であり、「TH」は、テンプレート領域66内の画素の濃度の平均値であり、x∈{0,1,2,…,W−WT}、y∈{0,1,2,…,H−HT}、i∈{0,1,2,…,WT−1}、j∈{0,1,2,…,HT−1}である。
【0064】
式(4)に示すように、相関値R(x,y)は、各画素の濃度から濃度の平均値を引いた値の相関となっているので、取込画像の濃度が変動したとしても、相関値R(x,y)を安定して算出することができる。式(4)を展開すると、式(5)が得られる。
【0065】
【数2】
【0066】
ここで、「N」は、テンプレート領域のサイズであり、N=WT×HTである。
相関値R(x,y)は、−1≦R(x,y)≦1の範囲の値となり、R(x,y)=「1」が完全一致を示し、R(x,y)=「−1」が完全不一致、すなわち相関値算出領域67の画像がテンプレート領域66の画像の反転画像であることを示し、R(x,y)=「0」が無相関であることを示す。また、相関値R(x,y)は、整数として表現するために、たとえば「10,000」などの定数を乗じた値を、相関値として用いることがある。すなわち、−1.0〜1.0の範囲にある小数値を整数化するために1万倍している。
【0067】
また、本実施形態では、制御部12は、対象領域61内の任意の位置にテンプレート領域66を設定するが、他の実施形態では、たとえば対象領域61内のX方向中央部にテンプレート領域66を設定して、相関値を算出する構成であってもよい。
【0068】
第2手順では、制御部12は、第1手順で算出されたテンプレート領域66内の画素の自己相関値と、X方向に予め定める間隔をあける画素との自己相関値とを差分処理して相関差分値を算出する。具体的には、制御部12は、自己相関値R(x,y)から、式(6)を用いて相関差分値D(x,y)を算出する。
D(x,y)=R(x+Δx,y)−R(x,y) …(6)
【0069】
ここで、差分幅Δxは、予め定める間隔であり、たとえば「5」である。相関差分値は、自己相関値よりもフラットな値であるので、算出した相関差分値を用いて、ブラダーグルーブの本数の算出を容易かつ確実に行うことができる。フラットとは、グラフで表したとき、上昇下降が明確であり、ノイズに妨げられ難いという意味である。
【0070】
図9は、相関差分値を説明するための図である。図9(a)は、入力部11の撮影装置によって撮影された取込画像70を示す図である。図9(b)は、取込画像70内のグラフ71を抜き出した図である。取込画像70内にグラフ71が含まれているが、判別し難いので図9(b)に抜き出して示している。
【0071】
取込画像70には、対象領域61とテンプレート領域66とが示されている。グラフ71には、相関差分値のピーク位置の検出に用いる閾値である相関差分値閾値73、自己相関値を示す波形74、および相関差分値を示す波形75が示される。グラフ71において、横軸は、画素のX方向の位置を示し、縦軸は、自己相関値の値を示している。
【0072】
第3手順では、制御部12は、第2手順で算出された各相関差分値のピーク位置、すなわち極大位置を検出する。制御部12は、図8(b)に示したグラフ71内の相関差分値閾値73を上下方向に動的に移動させて、相関差分値の波形75が相関差分値閾値73のラインを超える位置を、相関差分値のピーク位置と判定する。第4手順では、制御部12は、第3手順で検出されたテンプレート領域中のピーク位置のうち、互いに隣接する各ピーク位置の間隔の平均値を算出する。
【0073】
図10は、ピーク位置およびピーク間隔を説明するための図である。図10(a)は、相関差分値の波形の一例であるグラフ81を示す図である。図10(b)は、グラフ81中の領域82を拡大して示す図である。
【0074】
グラフ81には、相関差分値の波形75、相関差分値閾値73、波形75の最大値83、ピーク位置84、および隣接するピーク位置の間隔であるピーク間隔Tが示されている。グラフ81の横軸は、相関差分値を算出した画素の位置Xであり、縦軸は、相関差分値Dである。相関差分値閾値73は、たとえば波形の最大値83に対する閾値の比率として閾値比率を設定することによって、「(相関差分値閾値73)=(波形の最大値83)×(閾値比率)」によって算出される。
【0075】
図10(b)には、ピーク位置84と、波形75が相関差分値閾値73を超えた位置である立上がり位置86と、波形75が相関差分値閾値73を下回った位置である立下がり位置87とが示されている。制御部12は、ピーク位置84を、「(ピーク位置84)={(立上がり位置86)+(立下がり位置87)}/2」によって算出する。さらに制御部12は、複数のピーク位置84のうち、互いに隣接するピーク位置84の間隔をそれぞれ算出してピーク間隔Tを求める。制御部12は、複数のピーク間隔Tの平均値を算出する。
【0076】
第5手順では、では、制御部12は、第4手順で算出したピーク間隔の平均値に基づいて、取込画像内のブラダーグルーブの合計本数を算出し、算出したブラダーグルーブの合計本数から取込画像中のブラダーグルーブの周期を算出する。
【0077】
他の実施形態では、制御部12は、第5手順での処理が終わった後、第1手順に戻り、テンプレート領域66をX方向に移動させて、新たにテンプレート領域66を設定して、再び第1〜第5手順の処理を行ってもよい。テンプレート領域66を移動させて、相関値を複数回算出するので、最初に設定したテンプレート領域66にゴミなどの異物が付着していても、新たなテンプレート領域66に異物が付着していなければ、ブラダーグルーブの本数を正確に算出することができる。したがって、制御部12は、ブラダーグルーブの本数の算出を、確実に行うことができる。
【0078】
表2は、フーリエ周波数による対象の分類を示す表である。欠陥部は、周波数が「1〜(z−1)」Hzである凹凸欠陥、および周波数が「40〜150」Hzであるコート゛露出欠陥である。非欠陥部は、周波数が「1〜(z−1)」Hzであるジョイント(凸ライン)および内面離型剤垂れ、周波数が「z〜39」Hzであるブラダーグルーブ、ならびに周波数が「40〜150」Hzである散布状内面離型剤および刻印文字である。周波数zは、ブラダーグルーフ゛の本数によって決まる値である。ブラダーグルーフ゛の本数がタイヤの種類およびカメラの角度によって異なるため、ブラダーグルーブ本数算出処理で算出した本数をzの値とする。
【0079】
【表2】
【0080】
欠陥の色は黒いが、内面離型剤垂れおよび散布状内面離型剤の色は白であるので、内面離型剤垂れおよび散布状内面離型剤は、別処理で、色によって欠陥判定が行われる。また、ジョイント(凸ライン)および刻印文字についても別途欠陥判定が行われる。ブラダーグルーブ以外の非欠陥部については、制御部12が第1ステップからの処理を行う前に、予め欠陥検査が行われ、ブラダーグルーブ以外の非欠陥部を有するタイヤについてはすでに除外されている。
【0081】
本実施形態では、ブラダーグルーブ本数の算出による周波数判定を第2ステップの後で行っているが、第2ステップの前で行ってもよいし、第1ステップの前で行ってもよい。
【0082】
[第4ステップ](逆フーリエ展開)
第4ステップでは、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行う。具体的には、制御部12は、フーリエ展開処理でフーリエ展開された中周波〜高周波数範囲(=40〜150)の周波数成分から、周波数判定処理で算出されたブラダーグルーブの周期を表す周波数成分を除去し、残余の周波数成分を逆フーリエ展開して射影変換濃度を再度生成する。すなわち、式(1)で求めた関数F(x)の項のうち、周波数z〜39Hzの項を除いて逆フーリエ展開する。この逆フーリエ展開によって、ブラダーグルーブが除去され、欠陥部を残した画像を得ることができる。
【0083】
[第5ステップ](濃度差分)
第5ステップでは、制御部12は、欠陥検出処理を行う。具体的には、制御部12は、第1ステップで求めた射影変換濃度と第4ステップで求めた逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求める。これが、欠陥部の射影変換濃度である。
【0084】
[第6ステップ](コード露出判定)
第6ステップでは、第5ステップで求めた差分濃度について、式(7)によって差分平均値を求める。
差分平均値=差分濃度合計/差分濃度データ数 …(7)
【0085】
次に、各画素の濃度が、式(7)で算出した差分平均値に上限許容値を加算した上限閾値以下であり、かつ差分平均値に下限許容値を減じた下限閾値以上であれば、欠陥ではない(OK)と判定し、上限閾値を超え、かつ下限閾値未満であれば、コード露出欠陥である可能性あり(NG)と判定して、次の処理を実行する。前記差分平均値に対する上限許容値および下限許容値は、たとえば40にそれぞれ選ばれる。
【0086】
すなわち、前述の第5ステップで求めた差分濃度について、絶対値(差分絶対値)を求め、さらにこの差分絶対値の最大位置を求める。
【0087】
次に、前記差分絶対値について、最大位置に上限許容値を加算した上限最大位置以下であり、かつ最大位置から下限許容値を減じた下限最大位置以上の範囲に存在する差分絶対値の和を求め、この差分絶対値の和が上限閾値以下であれば、コード露出欠陥ではない(OK)と判定し、上限閾値を超えると、コード露出欠陥あり(NG)と判定する。前記最大位置に対する上限許容値および下限許容値は、たとえば20にそれぞれ選ばれる。また、前記最大位置に対する上限許容値は、たとえば1000に選ばれる。
【0088】
[第7ステップ](刻印文字判定)
前述の第6ステップにおいて、コード露出欠陥ありと判定された場合、コード露出欠陥ありと判定された部分を基準テンプレートとして横方向に相関値を求める。この相関値に周期性が見られる場合は、コード露出欠陥と判定し、周期性が見られない場合は刻印文字と判定する。
【0089】
[第8ステップ](傾き変動)
制御部12は、第1〜第6ステップによるコード露出欠陥検出処理で、濃度射影変換を行う傾きをタイヤ回転方向に直交する方向として実行したが、コード露出欠陥の方向が、タイヤ回転方向に直交する方向に一致するとは限らず、若干傾いている可能性がある。コード露出欠陥の方向と、濃度射影変換を行う方向とが一致していないと、第1〜第6ステップによるコード露出欠陥検出処理では、コード露出欠陥を検出することができない。
【0090】
そこで、制御部12は、濃度射影変換を行う方向を、タイヤ回転方向に直交する方向に対して傾けて、第1〜第6ステップによるコード露出欠陥検出処理を実行する。この場合、フーリエ展開を行うラインの方向も同じ角度だけ傾けてフーリエ展開する。傾ける角度は、予め定める角度範囲、たとえば±5度の範囲である。濃度射影変換を行う方向をタイヤ回転方向に直交する方向に対して傾けて、濃度射影変換を行うことを、以下、回転射影変換という。
【0091】
図11は、回転射影変換を説明するための図である。取込画像90の横方向がタイヤ回転方向であり、取込画像90の縦方向がタイヤ回転方向に直交する方向である。タイヤ回転方向に直交する方向をD1方向と、濃度射影変換を行う方向をD2方向とし、D1方向に対するD2方向の角度をK度とする。シフト幅W1は、取込画像90の上端部および下端部において、D1方向の画素とD2方向の画素との間の距離であり、1画素単位で表される。取込画像90のD1方向の画素数をMとすると、tanK=W1/(M/2)である。
【0092】
制御部12は、最初、シフト幅W1=0で、第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を実行し、次に、シフト幅W1に「1」を加算して、第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を実行し、以後、K=5になるまで、シフト幅W1に「1」を順次加算して、第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を繰り返し実行する。角度0度〜角度−K度についても同様に計算する。D2方向のラインが、図10の横方向で隣接する2つの画素を通る場合は、画素の中心位置がD2方向のラインに最も近い画素をD2方向のライン上にある画素として回転射影変換を行う。
【0093】
上述した実施形態では、制御部12は、取込画像全体について、回転射影変換を行って、第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を繰り返し実行したが、第1ステップの濃度射影変換で、取込画像全体について濃度射影変換を行うと、濃度を加算する画素数が多いために欠陥部が消されてしまう可能性がある。そこで、取込画像を、タイヤ回転方向に切断して、タイヤ回転方向に直交する方向に複数のブロックに分割し、ブロックごとに、回転射影変換を行って、第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を繰り返し実行することが好ましい。この場合、各ブロックが、対象領域61に対応する。
【0094】
図12は、制御部12が実行するコード露出欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。入力部11の入力装置から検査の開始を指示する情報が入力され、制御部12が入力部11の撮影装置から取込画像を受け取ると、ステップA1に移る。
【0095】
濃度変換工程であるステップA1では、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、上述した第1ステップでの処理である。フーリエ展開工程であるステップA2では、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。フーリエ展開処理は、上述した第2ステップでの処理である。周波数判定工程であるステップA3では、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、上述した第3ステップでの処理である。
【0096】
ステップA4では、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行い、フーリエ展開処理でフーリエ展開された中周波〜高周波数範囲の周波数成分から、周波数判定処理で算出されたブラダーグルーブの周期を表す周波数成分を除去し、残余の周波数成分を逆フーリエ展開して射影変換濃度を再度生成する。この逆フーリエ展開によって、ブラダーグルーブが除去され、欠陥部を残した画像を得ることができる。
【0097】
ステップA5では、制御部12は、欠陥検出処理を行い、第1ステップで求めた射影変換濃度と第4ステップで求めた逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求める。次に、ステップA6では、ステップA5で求めた差分濃度について、前述の式(7)によって差分平均値を求める。
【0098】
ステップA7では、前述のステップA6において、コード露出欠陥ありと判定された場合、コード露出欠陥ありと判定された部分を基準テンプレートとして横方向に相関値を求める。この相関値に周期性が見られる場合は、コード露出欠陥と判定し、周期性が見られない場合は刻印文字と判定する。
【0099】
ステップA8において、コード露出欠陥の方向がタイヤ回転方向に直交する方向に一致するとは限らず、若干傾いている可能性があるため、制御部12は、濃度射影変換を行う方向を、タイヤ回転方向に直交する方向に対して傾けて、第1〜第6ステップによるコード露出欠陥検出処理を実行する。
【0100】
ステップA8では、制御部12は、傾き範囲が終了したか否かを判定する。第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図10に示した角度Kが−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行していないとき、傾き範囲は終了していないと判定し、ステップA1に戻る。第1〜第5ステップによるコード露出欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図11に示した角度Kが−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行したとき、傾き範囲が終了したと判定し、ステップA9に進む。ステップA9では、制御部12は、全ブロック終了したか否かを判定する。全ブロック終了していなければ、ステップA1に戻り、全ブロック終了していれば、コード露出欠陥検出処理を終了する。
【0101】
図13は、コード露出判定処理の手順を示すフローチャートである。ステップB1で、前述のステップA5で求めた差分濃度について、前述の式(7)によって差分平均値(=差分濃度合計/差分濃度データ数)を求める。次に、ステップB2で、各画素の濃度が差分平均値に上限許容値を加算した上限閾値以下であり、かつ差分平均値に下限許容値を減じた下限閾値以上であるか否かを判定する。各画素の濃度が差分平均値に上限許容値を加算した上限閾値以下であり、かつ差分平均値に下限許容値を減じた下限閾値以上であれば、ステップB3で欠陥ではない(OK)と判定し、上限閾値を超え、かつ下限閾値未満であれば、コード露出欠陥である可能性あり(NG)と判定して、次のステップB4に移る。
【0102】
前記ステップB4では、前述のステップB2で求めた差分濃度について、絶対値(差分絶対値)を求め、さらにこの差分絶対値の最大位置を求める。次に、ステップB5で、前記差分絶対値について、最大位置に上限許容値を加算した上限最大位置以下であり、かつ最大位置から下限許容値を減じた下限最大位置以上の範囲に存在する差分絶対値の和を求める。ステップB6では、前述のステップB5で求めた差分絶対値の和が上限閾値以下であれば、ステップB3でコード露出欠陥ではない(OK)と判定し、上限閾値を超えると、ステップB7でコード露出欠陥あり(NG)と判定する。
【0103】
上述した実施形態では、制御部12が記憶部13に記憶されるプログラムをコンピュータによって実行することによって、入力部11および出力部14を制御するとともに、上述した機能を実現するが、上述した機能を実現するためのプログラムは、記憶部13に記憶されることに限定されるものではなく、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体は、たとえば図示しない外部記憶装置としてプログラム読取装置を画像処理装置1に設け、そこに記録媒体を挿入することによって読取り可能な記録媒体であってもよいし、あるいは他の装置の記憶装置であってもよい。
【0104】
いずれの記録媒体であっても、記憶されているプログラムがコンピュータからアクセスされて実行される構成であればよい。あるいはいずれの記録媒体であっても、プログラムが読み出され、読み出されたプログラムが、記憶装置のプログラム記憶エリアに記憶されて、そのプログラムが実行される構成であってもよい。
【0105】
画像処理装置1と分離可能に構成される記録媒体は、たとえば磁気テープ/カセットテープなどのテープ系の記録媒体、フレキシブルディスク/ハードディスクなどの磁気ディスクもしくはCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)/MO(Magneto Optical disk)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disk)/CD−R(Compact
Disk Recordable)/ブルーレイディスクなどの光ディスクのディスク系の記録媒体、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系の記録媒体、またはマスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)/フラッシュROMなどの半導体メモリを含む固定的にプログラムを担持する記録媒体であってもよい。
【0106】
また、画像処理装置1を通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して上記プログラムを供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、たとえば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、VAN(Value Added Network)、CATV(Community Antenna Television)通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、または衛星通信網など通信ネットワークが利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、たとえば、IEEE1394、USB(Universal Serial Bus)、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDA(Infrared Data Association)あるいはリモートコントロールで用いられる赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(High
Data Rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網などの無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0107】
このように、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様、すなわちコード露出欠陥を有する検査対象物を撮像した画像の処理を行う画像処理装置1によって画像処理を実行するにあたって、図12に示したステップA1では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。図12に示したステップA2では、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、図12に示したステップA1で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。図12に示したステップA3では、前記線状模様の周期を算出する。図12に示したステップA4では、図12に示したステップA2でフーリエ展開された周波数成分から、図12に示したステップA3で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する。そして、逆フーリエ展開された画素に予め定める濃度範囲に含まれない濃度の画素があると、欠陥があると判定する。
【0108】
したがって、画像処理によって、たとえば、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、コード露出欠陥など直線性に特徴のある欠陥を検出することができ、検査の安定化および高精度化を図ることができる。
【0109】
さらに、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向であるので、コード露出欠陥の直線性の方向がタイヤ回転方向と一致するとき、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、検査の安定化を図ることができる。
【0110】
このように、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向に対して予め定める角度範囲内の複数の角度の方向であるので、コード露出欠陥の直線性の方向がタイヤ回転方向と一致しなくても、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、検査の安定化を図ることができる。
【0111】
さらに、前記線状模様は、ブラダーグルーブであるので、取込画像からブラダーグルーブを除去して、コード露出欠陥を検出することができる。
【0112】
さらに、濃度変換手段は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される検査対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。フーリエ展開手段は、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。周期算出手段は、前記線状模様の周期を算出する。逆フーリエ展開手段は、フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分から、周波数算出工程で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する。そして、欠陥検出手段は、逆フーリエ展開手段によって逆フーリエ展開された画素に予め定める濃度範囲に含まれない濃度の画素があると、欠陥があると判定する。
【0113】
したがって、画像処理によって、たとえば、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、コード露出欠陥など直線性に特徴のある欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0114】
さらに、プログラムによって、コンピュータを、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換手段、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開手段、フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分とコード露出帯域の周波数成分を除いた周波数成分とに判定する周波数判定手段、周波数判定手段によって判定された残余の周波数成分を逆フーリエ展開する逆フーリエ展開手段、濃度変換手段によって求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度との差分濃度を求める差分濃度算出手段、および差分濃度算出手段によって求めた差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定手段として機能させることができる。
【0115】
さらに、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として提供することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 画像処理装置
11 入力部
12 制御部
13 記憶部
14 出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理が行われた画像に基づいて被検査物の欠陥検査を行う画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体に関し、より詳細には、自動車用タイヤに代表される工業製品の表面に形成される直線性を有する欠陥、特にコード露出欠陥を、画像処理を行うことによって検査することができる画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤおよびゴム製品等に代表される工業製品を対象とする画像処理装置、たとえば工業製品の検査を行う検査装置は、検査対象物をカメラなどの撮影装置によって撮影し、撮影した画像に基づいて欠陥検査を行う。
【0003】
タイヤの製法には、たとえば、金型に押しつけて加硫する方法がある。具体的には、ビード部品、ナイロン、テキスタイル、スチールコードが入ったゴムシート、およびゴム生地を順番にタイヤドラムに巻きつけて、それらを、ブラダーと呼ばれるゴム風船で内側からタイヤの形に膨らまして、金型に押しつけて加硫する。加硫時のブラダーとタイヤとの間の空気を抜くために、ブラダーに溝が掘られており、その溝の形状がタイヤに転写される。このタイヤに転写される溝の形状は、斜め方向の固定パターンであり、「ブラダーグルーブ」と呼ばれる。「ブラダーグルーブ」は、タイヤ内側のセンター部には形成されない。センター部とは、タイヤ回転方向に直交する方向での中央部である。
【0004】
タイヤを製造するときに、タイヤの内側には、欠陥ではないが画像処理を用いて欠陥検査を行う上でノイズとなる成分を生じさせる非欠陥部が形成される。非欠陥部は、たとえば、上述したブラダーグルーブの他、内面離型剤、成型切手、および刻印文字などの表面形状がある。
【0005】
さらに、タイヤを製造するときに、タイヤの内側には、欠陥、たとえば直線性を有する欠陥(以下「線状欠陥」という)が形成されることがある。表1は、線状欠陥を分類したものである。
【0006】
【表1】
【0007】
線状欠陥は、コード露出欠陥および凹凸欠陥を含む。コード露出欠陥には、タイヤ内部のコードが表面に露出する故障があり、また、凹凸欠陥には、内面凹あるいは内面凸と呼ばれる故障があり、それぞれ表1に示した発生原因で発生する。コードとは、プライコードのことであり、ラジアル状(放射状)に貼り付けられているナイロン素材、ポリエステル素材もしくはスチール素材のものである。
【0008】
図14は、コード露出欠陥が形成されたタイヤ内側を撮影した画像の例を示す図である。図14(a)に示した画像100は、凹凸が少なく、広範囲に広がるコード露出欠陥101を示す画像であり、図14(b)に示した画像110は、凹凸が大きく、局所的に形成されるコード露出欠陥111を示す画像である。コード露出欠陥は、ゴムが薄くなって形成されるものである。図14(a)および図14(b)には、それぞれブラダーグルーブ102,112が示されている。
【0009】
第1の従来の技術として、特許文献1に記載されるタイヤ検査装置がある。このタイヤ検査装置は、波形処理の一種であるウェーブレット変換を用いてコード露出欠陥を検出するものである。ウェーブレット変換は、時間的に特徴が変化する信号の解析を可能にする周波数解析の変換処理である。すなわち、タイヤの位置を時間に対応させて、時間と周波数とを座標軸とする平面で、固有の広がりを有するウェーブレット(小さい波)を拡大縮小そして平行移動して足し合わせることによって、入力された信号波形を表現するものである。撮影信号は、コード露出欠陥に特有の周波数を中心周波数とする数値フィルタであるアナライジングウェーブレットによってウェーブレット変換され、変換結果に基づいてコード露出欠陥の判定が行われる。
【0010】
第2の従来の技術として、濃度射影平均を前処理とする2値化処理によって、または微分画像を2値化して微小エッジを除去した後、ハフ(Hough)変換を行うことによって、凹凸の直線性を検出する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−333531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、第1の従来の技術は、波形パターンであるウェーブレットおよび検査位置を変えて、取り込み画像と一致する欠陥があるか否かを検査するマッチング方法であるので、計算コストが非常に大きいという問題がある。第2の従来の技術は、タイヤの種類、たとえばタイヤの径、幅、および扁平率、タイヤの表面の状態、ならびに照明の位置関係が、画像に影響を与えるので、検査の安定性に欠け、検査精度も低いという問題がある。
【0013】
また、コード露出欠陥検査を行う第1の従来の技術と、凹凸の直線性を検出するための第2の従来の技術とでは、検査方法が異なるので、それぞれに検査時間が必要であり、タクトタイムがそれらの検査時間に大きく依存する。
【0014】
本発明の目的は、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、検査の安定化および検査精度の向上を図ることができる画像処理方法、画像処理装置、プログラムおよび記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の処理を行う画像処理装置で実行される画像処理方法であって、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開工程と、
フーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分を、コード露出帯域の周波数成分と、コード露出帯域の周波数成分を除いた残余の周波数成分とに判定する周波数判定工程と、
周波数判定工程でコード露出帯域の周波数成分を除いた残余の周波数成分を、逆フーリエ展開する逆フーリエ展開工程と、
濃度変換工程で求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開工程で求めた逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求める差分濃度算出工程と、
差分濃度算出工程で求めた差分濃度について、コード露出に相当する差分濃度であるか否かを判定するコード露出判定工程と、
コード露出判定工程で判定された差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定工程とを含むことを特徴とする画像処理方法である。
【0016】
また本発明は、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、
前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、
前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向に対して予め定める角度範囲内の複数の角度の方向であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記線状模様は、ブラダーグルーブであることを特徴とする。
また本発明は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換手段と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開手段と、
フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分とコード露出帯域の周波数成分を除いた周波数成分とに判定する周波数判定手段と、
周波数判定手段によって判定された残余の周波数成分を逆フーリエ展開する逆フーリエ展開手段と、
濃度変換手段によって求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度との差分濃度を求める差分濃度算出手段と、
差分濃度算出手段によって求めた差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定手段とを含むことを特徴とする画像処理装置である。
【0019】
また本発明は、コンピュータを、
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換手段、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開手段、
フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分とコード露出帯域の周波数成分を除いた周波数成分とに判定する周波数判定手段、
周波数判定手段によって判定された残余の周波数成分を逆フーリエ展開する逆フーリエ展開手段、
濃度変換手段によって求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度との差分濃度を求める差分濃度算出手段、および
差分濃度算出手段によって求めた差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定手段として機能させるためのプログラムである。
また本発明は、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フーリエ展開のヒストグラムでコード露出の候補を抽出し、射影変換濃度と逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求め、この差分濃度について一定以上の大きさの部分の積算値よってコード露出を判定するので、コード露出が連続している場合および局所的に存在している場合のいずれであっても、コード露出検査の弊害となるタイヤ表面のブラダーグルーブ、内面離型剤、表面形状といったノイズを除去して、高精度でコード露出欠陥を検出することができる。
【0021】
また、フーリエ展開処理、逆フーリエ展開処理および差分処理をこの順序で実行するので、検査対象物の種類、検査対象物の表面の状態、および検査時における検査対象物への照明の影響などを排除して、検査の安定化を図ることができる。
【0022】
したがって、画像処理によって、検査対象物であるたとえばタイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、直線性に特徴のあるコード露出欠陥を検出することができ、検査の安定化および高精度化を図ることができる。
【0023】
また本発明によれば、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向であるので、コード露出欠陥の直線性の方向がタイヤ回転方向と一致するとき、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、検査の安定化を図ることができる。
【0024】
また本発明によれば、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向に対して予め定める角度範囲内の複数の角度の方向であるので、コード露出欠陥の直線性の方向がタイヤ回転方向と一致しなくても、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、検査の安定化を図ることができる。
【0025】
また本発明によれば、前記線状模様は、ブラダーグルーブであるので、取込画像からブラダーグルーブを除去して、コード露出欠陥を検出することができる。
【0026】
また本発明によれば、フーリエ展開のヒストグラムでコード露出の候補を抽出し、射影変換濃度と逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求め、この差分濃度について一定以上の大きさの部分の積算値よってコード露出を判定するので、コード露出が連続している場合および局所的に存在している場合のいずれであっても、コード露出検査の弊害となるタイヤ表面のブラダーグルーブ、内面離型剤、表面形状といったノイズを除去して、高精度でコード露出欠陥を検出することができる。
【0027】
また、フーリエ展開処理、逆フーリエ展開処理および差分処理をこの順序で実行するので、検査対象物の種類、検査対象物の表面の状態、および検査時における検査対象物への照明の影響などを排除して、検査の安定化を図ることができる。画像処理によって、たとえば、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、コード露出欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0028】
また本発明によれば、プログラムによって、コンピュータを、濃度変換手段、フーリエ展開手段、周波数判定手段、逆フーリエ展開手段、差分濃度算出手段、および刻印文字判定手段として機能させることができる。
【0029】
また本発明によれば、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態である画像処理装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】濃度射影変換を説明するための図である。
【図3】欠陥のないタイヤ内側の取込画像30およびそれを濃度射影変換した変換画像31の一例を示す図である。
【図4】線状欠陥のあるタイヤ内側の取込画像35およびそれを濃度射影変換した変換画像36の一例を示す図である。
【図5】フーリエ展開の補充の仕方を説明するための図である。
【図6】フーリエ周波数ヒストグラムを示す図である。
【図7】周波数判定結果の具体例を示す図である。
【図8】自己相関値を説明するための図である。
【図9】相関差分値を説明するための図である。
【図10】ピーク位置およびピーク間隔を説明するための図である。
【図11】回転射影変換を説明するための図である。
【図12】制御部12が実行するコード露出欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】コード露出判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】凹凸欠陥およびコード露出欠陥が形成されたタイヤ内側を撮影した画像の例を示す図であり、図14(a)に示した画像100は、凹凸が少なく、広範囲に広がるコード露出欠陥101を示す画像であり、図14(b)に示した画像110は、凹凸が大きく、局所的に形成されるコード露出欠陥111を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の一実施形態である画像処理装置1の構成を示すブロック図である。画像処理装置1は、たとえばゴム、金属もしくは樹脂からなる成型品の表面検査を、画像処理を用いて検査する検査装置であり、以下、タイヤを検査する検査装置である画像処理装置1を例に説明する。本発明に係る画像処理方法は、たとえば画像処理装置1で実行される。
【0032】
画像処理装置1は、入力部11、制御部12、記憶部13および出力部14を含んで構成される。入力部11は、たとえばマウスおよびキーボードなどの入力装置、ならびに照明部および撮影部からなる撮影装置を含んで構成される。入力装置は、たとえば検査の開始および終了を指示する情報、および検査の条件などの情報を入力する装置であり、入力部11は、入力装置によって入力された情報を制御部12に送る。
【0033】
撮影装置は、タイヤの内側をライトなどの照明部によって照明し、照明光が照射されているタイヤ表面をカメラなどの撮影部によって撮影する。撮影装置は、タイヤの内側を1度に撮影することができないので、タイヤの内側の表面の位置を移動して順次撮影する。入力部11は、撮影装置によって撮影したタイヤの内側の表面の画像を制御部12に送る。
【0034】
制御部12は、たとえば中央処理装置(Central Processing Unit;略称CPU)によって構成され、記憶部13に記憶されるプログラムを実行することによって、入力部11および出力部14を制御し、本発明に係る線状欠陥検出処理を行う後述する複数の機能を実現する。記憶部13は、たとえば半導体メモリあるいはハードディスク装置などによって構成される読み書き可能な記憶装置であり、制御部12で実行されるプログラムおよび制御部12で用いられる情報を記憶する。
【0035】
出力部14は、情報を出力するディスプレイなどの表示装置あるいはプリンタなどの印刷装置によって構成され、制御部12から受け取る情報を出力する。あるいは、着脱可能な記録媒体への情報の読み書きが可能な記録再生装置、他の画像処理装置と情報の送受信を行う通信装置などを、入力装置兼出力装置とすることも可能である。制御部12は、入力部11から受け取る画像に基づいて線状欠陥の有無を判定し、判定結果に基づく検査結果を出力部14に出力する。
【0036】
制御部12は、線状欠陥、特にコード露出欠陥検出処理を第1〜第8ステップの8つのステップで処理する。制御部12は、第1ステップで「濃度射影変換」処理を行い、第2ステップで「フーリエ展開」処理を行い、第3ステップで「周波数判定」処理を行い、第4ステップで「逆フーリエ展開」処理を行い、第5ステップで「濃度差分」処理を行い、第6ステップで「コード露出判定」処理を行い、第7ステップで「刻印文字判定」処理を行い、第8ステップで「傾き変動」処理を行う。
【0037】
入力部11の撮影装置から受け取る画像(以下「取込画像」という)は、記憶部13に記憶される。取込画像は、予め定める第1の方向であるタイヤ回転方向と、タイヤ回転方向に垂直な方向とに配列された画素から構成される。すなわち、画素は、タイヤ回転方向に平行な複数のラインと、タイヤ回転方向に直交する方向に平行な複数のラインとの交点に配置されている。取込画像は、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様、たとえばブラダーグルーブが形成された画像である。ブラダーグルーブは、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様である。
【0038】
制御部12は、記憶部13に記憶されるプログラムを実行することによって、濃度変換手段、フーリエ展開手段、周波数算出手段、逆フーリエ手段、濃度差分算出手段、コード露出判定手段、刻印文字判定手段および傾き変動処理手段などの機能を実現する。第1ステップは、濃度変換手段によって実行され、第2ステップは、フーリエ展開手段によって実行され、第3ステップは、周期算出手段によって実行され、第4ステップは、逆フーリエ展開手段によって実行され、第5ステップは、濃度差分算出手段によって実行され、第6ステップは、コード露出判定手段によって実行され、第7ステップは、刻印文字判定手段によって実行され、第8ステップは、傾き変動処理手段によって実行される。
【0039】
[第1ステップ](濃度射影変換)
第1ステップでは、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換は、1つの方向のライン上の画素の濃度を、そのライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換することである。具体的には、制御部12は、タイヤ回転方向に直交する方向のラインごとに、取込画像の各画素の濃度を、各画素が含まれるライン上の画素の濃度を平均した濃度に変換する。取込画像に照明による濃度むらがある場合は、取込画像から濃度むらを除去した画像に対して濃度射影変換を行う。濃度むらの除去方法については、特に限定されない。
【0040】
図2は、濃度射影変換を説明するための図である。図2(a)は、濃度射影変換を行う対象の取込画像20の一例である。取込画像20を構成する画素のうち、白色部分を構成する画素の濃度は、黒色部分を構成する画素の濃度よりも高い値を示す。取込画像20の横方向がX方向であり、縦方向がY方向である。図2(b)は、取込画像20のX方向のラインごとに、画素の濃度を加算した値を示すグラフ21である。すなわち、グラフ21は、取込画像20をX方向のラインごとに、画素の濃度を加算した値を示す。グラフ21の横方向が取込画像20のX方向のラインごとに画素の濃度を加算した合計であり、縦方向が取込画像20のY方向である。平均濃度は、各画素が含まれるライン上の画素の濃度を加算した濃度を、各画素を含むライン上の画素数で除算した値である。制御部12は、各画素の濃度を、各画素が含まれるラインの平均濃度に変換する。
【0041】
図3は、欠陥のないタイヤ内側の取込画像30およびそれを濃度射影変換した変換画像31の一例を示す図である。図3(a)は、取込画像30を示し、取込画像30には、ブラダーグルーブ301が示されている。取込画像30の横方向がタイヤ回転方向であり、取込画像30の縦方向がタイヤ回転方向に直交する方向である。ブラダーグルーブ301は、加硫時にタイヤに形成された複数の溝であり、取込画像30では、右上から左下への斜め方向の溝として示されている。図3(b)は、取込画像20の各画素の濃度を、縦方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換した変換画像31である。
【0042】
図4は、線状欠陥のあるタイヤ内側の取込画像35およびそれを濃度射影変換した変換画像36の一例を示す図である。図4(a)は、取込画像35を示し、取込画像35には、ブラダーグルーブ351および線状欠陥352の部分画像が示されている。図4(b)は、取込画像35の各画素の濃度を、縦方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換した変換画像36である。線状欠陥352に対応する位置に、周囲よりも暗い部分を含む部分画像362が示されている。
【0043】
濃度射影変換を行うことによって、濃度射影変換を行う方向以外の方向のノイズを緩和することができる。コード露出欠陥および凹凸欠陥は、タイヤ回転方向に直交する方向の直線性に特徴を有するので、濃度射影変換を行うことによって、タイヤ回転方向に直交する方向以外の方向のノイズ、たとえばブラダーグルーブおよび内面離型剤などのノイズを緩和することができる。
【0044】
[第2ステップ](フーリエ展開)
第2ステップでは、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。具体的には、制御部12は、濃度射影変換が行われた画像に対して、予め定める第1の方向、たとえばタイヤの回転方向のラインのうちの1つのライン上の画素について、画素の位置を変数xとし、各画素の濃度を関数f(x)として、フーリエ展開する。フーリエ展開した関数をF(x)とし、濃度の関数f(x)が0≦x≦1で求められたとすると、F(x)は、式(1)によって算出される。
F(x)=a0/2+Σ{an ×cos(n×π×x/L)
+bn×sin(n×π×x/L)} …(1)
【0045】
ここで、Σは、数列の総和を表す記号であり、総和Σの範囲は、n=1から無限大までの整数であるが、実際には、nの値は、いずれかの値で打ち切る必要がある。nは、欠陥の周波数、つまり欠陥の個数であり、nの値は、良品サンプルに関するデータをどこまで展開して復元することできるかによって定められる。
【0046】
また、係数anおよび係数bnは、それぞれ式(2),(3)によって求められる。
an=1/l×∫f(x)×cos(n×π×x/L)dx …(2)
bn=1/l×∫f(x)×sin(n×π×x/L)dx …(3)
ここで、∫は積分記号であり、積分∫の範囲は、−1≦x≦1である。
【0047】
式(1)での計算は、0≦x≦1の範囲でしか行っていないので、−1≦x<0の範囲のフーリエ展開を補充する必要がある。補充の仕方は、限定されるものではなく、どのように補充してもよい。
【0048】
図5は、フーリエ展開の補充の仕方を説明するための図である。図5(a)は、0≦x≦1で、f(x)=cxなる関数を示すグラフ41である。cは、係数である。図5(b)は、補充するための第1の関数f1(x)を示すグラフ42である。関数f1(x)は、−1≦x<0の範囲で、f1(x)=c(x+1)であり、0≦x≦1で、f1(x)=f(x)である。図5(c)は、補充するための第2の関数f2(x)を示すグラフ43である。関数f2(x)は、−1≦x<0の範囲で、f2(x)=−cxであり、0≦x≦1で、f2(x)=f(x)である。図5(d)は、補充するための第3の関数f3(x)を示すグラフ44である。関数f3(x)は、−1≦x≦1の範囲で、f3(x)=c(x+1)である。
【0049】
式(1)の右辺が連続関数の和であり、グラフ42に示した不連続な第1の関数f1(x)の値に収束しないので、xの範囲を0≦x≦1の範囲から−1≦x≦1の範囲に変えたグラフ44に示した第3の関数f3(x)で補充することもできる。いずれの関数を用いて補充するかは特に限定されないが、図5(c)に示した第2の関数f2(x)がよく用いられる。
【0050】
制御部12は、式(2)および式(3)で求めた係数から振幅「2×√(an2+bn2)」を求める。√は、平方根の演算記号である。
【0051】
[第3ステップ](周波数判定)
図6は、フーリエ周波数ヒストグラムを示す図である。フーリエ周波数ヒストグラムは、横軸が周波数であり、縦軸は振幅である。図6(a)は、コード露出欠陥のない場合のフーリエ周波数ヒストグラム51であり、図6(b)は、コード露出欠陥のある場合のフーリエ周波数ヒストグラム52である。
【0052】
フーリエ周波数ヒストグラム51には、ブラダーグルーブの周波数で振幅の高い部分511が示され、フーリエ周波数ヒストグラム52には、ブラダーグルーブの周波数で振幅の高い部分521、およびコード露出欠陥の周波数で振幅の高い部分522が示されている。コード露出欠陥の周波数で振幅の高い部分522は、ブラダーグルーブの周波数で振幅の高い部分521よりも高い周波数である。フーリエ周波数ヒストグラム51の部分512には、コード露出欠陥の周波数で振幅の高い部分はない。
【0053】
第3ステップでは、制御部12は、周波数判定処理を行う。具体的には、制御部12は、濃度射影変換を行う前の取込画像から自己相関値を算出し、算出した自己相関値の変動周期(以下「変動間隔」ともいう)を求めることによって、ブラダーグルーブの本数を算出する。
【0054】
ブラダーグルーブのように周期的変化に特徴がある画像の場合、自己相関値も周期的に変動する。したがって、自己相関値の変動間隔を求めることによって、ブラダーグルーブ本数を算出することができる。ブラダーグルーブ本数の算出は、第1〜第5手順で算出される。制御部12は、第1手順で、自己相関値を算出し、第2手順で、相関差分値を算出し、第3手順で、相関差分値のピーク位置を検出し、第4手順で、相関差分値のピーク間隔を算出し、第5手順で、ブラダーグルーブの本数を算出する。
【0055】
第1手順では、制御部12は、取込画像内に予め定める矩形のテンプレート領域を設定し、テンプレート領域内の画素と、テンプレート領域を移動させた領域中の画素との間の自己相関値を算出する。
【0056】
図7は、周波数判定結果の具体例を示す図である。コード露出の場合、前述の図6に示すように、フーリエ周波数ヒストグラムにはおおよその傾向が現れる。この性質を利用し、取込画像54の対象領域55について、周波数範囲56(図7の例では、40〜255)、強度下限57(図7の例では、030)および累積強度58(図7の例では、0035)によって、大まかに判定することができる。具体的には、周波数ヒストグラムの指定周波数範囲、たとえば「40」のデータについて、強度下限、たとえば「30」からの超過分を累計し、累計値、つまり累計強度が指定しきい値、たとえば「35」を超えた場合、コード露出等と判定する。
【0057】
強度に関しては、高周波数範囲のピーク値によって判定し、コード露出欠陥あり(NG)ならピーク値を超えた分のスペクトル値を累積加算し、NG強度の積算値によって判定する。この強度は、振幅(=√[an2+bn2])である。このような周波数判定では、コード露出以外に後述するように刻印文字が検出される。
【0058】
図8は、自己相関値を説明するための図である。対象領域61は、取込画像のうち、自己相関値を算出する画像の矩形の領域であり、図8の縦方向であるY方向の縦寸法が「H」であり、かつ図7の横方向であるX方向の横寸法が「W」である。テンプレート領域66は、A方向の縦寸法が「HT」であり、B方向の横寸法が「WT」である。対象領域61の左上の位置をXY座標の原点とする。
【0059】
制御部12は、対象領域61内の任意の位置にテンプレート領域66を設定する。テンプレート領域66の寸法HTは、対象領域61の寸法Hと一致し、テンプレート領域66の横寸法WTは、対象領域61の横寸法Wよりも小さい。次に、制御部12は、テンプレート領域66をX方向に移動させた位置に、相関値算出領域67を設定する。相関値算出領域67は、テンプレート領域66と同一の寸法であり、縦寸法が「HT」、横寸法が「WT」である。縦寸法および横寸法は、画素数で表される。
【0060】
制御部12は、テンプレート領域66と相関値算出領域67とを重ね合わせて、各画素の相関値を算出する。テンプレート領域66中の画素の位置を、テンプレート領域66の左上の位置を原点とする相対座標系で表して、座標(i,j)とし、相関値算出領域67の左上の画素の位置をXY座標系で座標(x,y)とすると、相関値算出領域67中の画素の位置は、XY座標系で(x+i,y+j)となる。
【0061】
本実施形態では、テンプレート領域66の画素の濃度と、相関値算出領域67の画素の濃度との相関値を、正規化相関法を用いて算出する。具体的には、テンプレート領域66の座標(i,j)の画素の濃度をT(i,j)とし、相関値算出領域67の座標(x+i,y+j)の画素の濃度を、I(x+i,y+j)とすると、相関値R(x,y)は、正規化相関法による式(4)で算出される。制御部12は、相関値算出領域67を対象領域61内でX方向に順次1画素ずつ移動させて、正規化相関値を算出する。
【0062】
【数1】
【0063】
ここで、R(x,y)は、正規化相関値(以下、単に「相関値」ともいう)であり、「IH」は、相関値算出領域67内の画素の濃度の平均値であり、「TH」は、テンプレート領域66内の画素の濃度の平均値であり、x∈{0,1,2,…,W−WT}、y∈{0,1,2,…,H−HT}、i∈{0,1,2,…,WT−1}、j∈{0,1,2,…,HT−1}である。
【0064】
式(4)に示すように、相関値R(x,y)は、各画素の濃度から濃度の平均値を引いた値の相関となっているので、取込画像の濃度が変動したとしても、相関値R(x,y)を安定して算出することができる。式(4)を展開すると、式(5)が得られる。
【0065】
【数2】
【0066】
ここで、「N」は、テンプレート領域のサイズであり、N=WT×HTである。
相関値R(x,y)は、−1≦R(x,y)≦1の範囲の値となり、R(x,y)=「1」が完全一致を示し、R(x,y)=「−1」が完全不一致、すなわち相関値算出領域67の画像がテンプレート領域66の画像の反転画像であることを示し、R(x,y)=「0」が無相関であることを示す。また、相関値R(x,y)は、整数として表現するために、たとえば「10,000」などの定数を乗じた値を、相関値として用いることがある。すなわち、−1.0〜1.0の範囲にある小数値を整数化するために1万倍している。
【0067】
また、本実施形態では、制御部12は、対象領域61内の任意の位置にテンプレート領域66を設定するが、他の実施形態では、たとえば対象領域61内のX方向中央部にテンプレート領域66を設定して、相関値を算出する構成であってもよい。
【0068】
第2手順では、制御部12は、第1手順で算出されたテンプレート領域66内の画素の自己相関値と、X方向に予め定める間隔をあける画素との自己相関値とを差分処理して相関差分値を算出する。具体的には、制御部12は、自己相関値R(x,y)から、式(6)を用いて相関差分値D(x,y)を算出する。
D(x,y)=R(x+Δx,y)−R(x,y) …(6)
【0069】
ここで、差分幅Δxは、予め定める間隔であり、たとえば「5」である。相関差分値は、自己相関値よりもフラットな値であるので、算出した相関差分値を用いて、ブラダーグルーブの本数の算出を容易かつ確実に行うことができる。フラットとは、グラフで表したとき、上昇下降が明確であり、ノイズに妨げられ難いという意味である。
【0070】
図9は、相関差分値を説明するための図である。図9(a)は、入力部11の撮影装置によって撮影された取込画像70を示す図である。図9(b)は、取込画像70内のグラフ71を抜き出した図である。取込画像70内にグラフ71が含まれているが、判別し難いので図9(b)に抜き出して示している。
【0071】
取込画像70には、対象領域61とテンプレート領域66とが示されている。グラフ71には、相関差分値のピーク位置の検出に用いる閾値である相関差分値閾値73、自己相関値を示す波形74、および相関差分値を示す波形75が示される。グラフ71において、横軸は、画素のX方向の位置を示し、縦軸は、自己相関値の値を示している。
【0072】
第3手順では、制御部12は、第2手順で算出された各相関差分値のピーク位置、すなわち極大位置を検出する。制御部12は、図8(b)に示したグラフ71内の相関差分値閾値73を上下方向に動的に移動させて、相関差分値の波形75が相関差分値閾値73のラインを超える位置を、相関差分値のピーク位置と判定する。第4手順では、制御部12は、第3手順で検出されたテンプレート領域中のピーク位置のうち、互いに隣接する各ピーク位置の間隔の平均値を算出する。
【0073】
図10は、ピーク位置およびピーク間隔を説明するための図である。図10(a)は、相関差分値の波形の一例であるグラフ81を示す図である。図10(b)は、グラフ81中の領域82を拡大して示す図である。
【0074】
グラフ81には、相関差分値の波形75、相関差分値閾値73、波形75の最大値83、ピーク位置84、および隣接するピーク位置の間隔であるピーク間隔Tが示されている。グラフ81の横軸は、相関差分値を算出した画素の位置Xであり、縦軸は、相関差分値Dである。相関差分値閾値73は、たとえば波形の最大値83に対する閾値の比率として閾値比率を設定することによって、「(相関差分値閾値73)=(波形の最大値83)×(閾値比率)」によって算出される。
【0075】
図10(b)には、ピーク位置84と、波形75が相関差分値閾値73を超えた位置である立上がり位置86と、波形75が相関差分値閾値73を下回った位置である立下がり位置87とが示されている。制御部12は、ピーク位置84を、「(ピーク位置84)={(立上がり位置86)+(立下がり位置87)}/2」によって算出する。さらに制御部12は、複数のピーク位置84のうち、互いに隣接するピーク位置84の間隔をそれぞれ算出してピーク間隔Tを求める。制御部12は、複数のピーク間隔Tの平均値を算出する。
【0076】
第5手順では、では、制御部12は、第4手順で算出したピーク間隔の平均値に基づいて、取込画像内のブラダーグルーブの合計本数を算出し、算出したブラダーグルーブの合計本数から取込画像中のブラダーグルーブの周期を算出する。
【0077】
他の実施形態では、制御部12は、第5手順での処理が終わった後、第1手順に戻り、テンプレート領域66をX方向に移動させて、新たにテンプレート領域66を設定して、再び第1〜第5手順の処理を行ってもよい。テンプレート領域66を移動させて、相関値を複数回算出するので、最初に設定したテンプレート領域66にゴミなどの異物が付着していても、新たなテンプレート領域66に異物が付着していなければ、ブラダーグルーブの本数を正確に算出することができる。したがって、制御部12は、ブラダーグルーブの本数の算出を、確実に行うことができる。
【0078】
表2は、フーリエ周波数による対象の分類を示す表である。欠陥部は、周波数が「1〜(z−1)」Hzである凹凸欠陥、および周波数が「40〜150」Hzであるコート゛露出欠陥である。非欠陥部は、周波数が「1〜(z−1)」Hzであるジョイント(凸ライン)および内面離型剤垂れ、周波数が「z〜39」Hzであるブラダーグルーブ、ならびに周波数が「40〜150」Hzである散布状内面離型剤および刻印文字である。周波数zは、ブラダーグルーフ゛の本数によって決まる値である。ブラダーグルーフ゛の本数がタイヤの種類およびカメラの角度によって異なるため、ブラダーグルーブ本数算出処理で算出した本数をzの値とする。
【0079】
【表2】
【0080】
欠陥の色は黒いが、内面離型剤垂れおよび散布状内面離型剤の色は白であるので、内面離型剤垂れおよび散布状内面離型剤は、別処理で、色によって欠陥判定が行われる。また、ジョイント(凸ライン)および刻印文字についても別途欠陥判定が行われる。ブラダーグルーブ以外の非欠陥部については、制御部12が第1ステップからの処理を行う前に、予め欠陥検査が行われ、ブラダーグルーブ以外の非欠陥部を有するタイヤについてはすでに除外されている。
【0081】
本実施形態では、ブラダーグルーブ本数の算出による周波数判定を第2ステップの後で行っているが、第2ステップの前で行ってもよいし、第1ステップの前で行ってもよい。
【0082】
[第4ステップ](逆フーリエ展開)
第4ステップでは、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行う。具体的には、制御部12は、フーリエ展開処理でフーリエ展開された中周波〜高周波数範囲(=40〜150)の周波数成分から、周波数判定処理で算出されたブラダーグルーブの周期を表す周波数成分を除去し、残余の周波数成分を逆フーリエ展開して射影変換濃度を再度生成する。すなわち、式(1)で求めた関数F(x)の項のうち、周波数z〜39Hzの項を除いて逆フーリエ展開する。この逆フーリエ展開によって、ブラダーグルーブが除去され、欠陥部を残した画像を得ることができる。
【0083】
[第5ステップ](濃度差分)
第5ステップでは、制御部12は、欠陥検出処理を行う。具体的には、制御部12は、第1ステップで求めた射影変換濃度と第4ステップで求めた逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求める。これが、欠陥部の射影変換濃度である。
【0084】
[第6ステップ](コード露出判定)
第6ステップでは、第5ステップで求めた差分濃度について、式(7)によって差分平均値を求める。
差分平均値=差分濃度合計/差分濃度データ数 …(7)
【0085】
次に、各画素の濃度が、式(7)で算出した差分平均値に上限許容値を加算した上限閾値以下であり、かつ差分平均値に下限許容値を減じた下限閾値以上であれば、欠陥ではない(OK)と判定し、上限閾値を超え、かつ下限閾値未満であれば、コード露出欠陥である可能性あり(NG)と判定して、次の処理を実行する。前記差分平均値に対する上限許容値および下限許容値は、たとえば40にそれぞれ選ばれる。
【0086】
すなわち、前述の第5ステップで求めた差分濃度について、絶対値(差分絶対値)を求め、さらにこの差分絶対値の最大位置を求める。
【0087】
次に、前記差分絶対値について、最大位置に上限許容値を加算した上限最大位置以下であり、かつ最大位置から下限許容値を減じた下限最大位置以上の範囲に存在する差分絶対値の和を求め、この差分絶対値の和が上限閾値以下であれば、コード露出欠陥ではない(OK)と判定し、上限閾値を超えると、コード露出欠陥あり(NG)と判定する。前記最大位置に対する上限許容値および下限許容値は、たとえば20にそれぞれ選ばれる。また、前記最大位置に対する上限許容値は、たとえば1000に選ばれる。
【0088】
[第7ステップ](刻印文字判定)
前述の第6ステップにおいて、コード露出欠陥ありと判定された場合、コード露出欠陥ありと判定された部分を基準テンプレートとして横方向に相関値を求める。この相関値に周期性が見られる場合は、コード露出欠陥と判定し、周期性が見られない場合は刻印文字と判定する。
【0089】
[第8ステップ](傾き変動)
制御部12は、第1〜第6ステップによるコード露出欠陥検出処理で、濃度射影変換を行う傾きをタイヤ回転方向に直交する方向として実行したが、コード露出欠陥の方向が、タイヤ回転方向に直交する方向に一致するとは限らず、若干傾いている可能性がある。コード露出欠陥の方向と、濃度射影変換を行う方向とが一致していないと、第1〜第6ステップによるコード露出欠陥検出処理では、コード露出欠陥を検出することができない。
【0090】
そこで、制御部12は、濃度射影変換を行う方向を、タイヤ回転方向に直交する方向に対して傾けて、第1〜第6ステップによるコード露出欠陥検出処理を実行する。この場合、フーリエ展開を行うラインの方向も同じ角度だけ傾けてフーリエ展開する。傾ける角度は、予め定める角度範囲、たとえば±5度の範囲である。濃度射影変換を行う方向をタイヤ回転方向に直交する方向に対して傾けて、濃度射影変換を行うことを、以下、回転射影変換という。
【0091】
図11は、回転射影変換を説明するための図である。取込画像90の横方向がタイヤ回転方向であり、取込画像90の縦方向がタイヤ回転方向に直交する方向である。タイヤ回転方向に直交する方向をD1方向と、濃度射影変換を行う方向をD2方向とし、D1方向に対するD2方向の角度をK度とする。シフト幅W1は、取込画像90の上端部および下端部において、D1方向の画素とD2方向の画素との間の距離であり、1画素単位で表される。取込画像90のD1方向の画素数をMとすると、tanK=W1/(M/2)である。
【0092】
制御部12は、最初、シフト幅W1=0で、第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を実行し、次に、シフト幅W1に「1」を加算して、第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を実行し、以後、K=5になるまで、シフト幅W1に「1」を順次加算して、第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を繰り返し実行する。角度0度〜角度−K度についても同様に計算する。D2方向のラインが、図10の横方向で隣接する2つの画素を通る場合は、画素の中心位置がD2方向のラインに最も近い画素をD2方向のライン上にある画素として回転射影変換を行う。
【0093】
上述した実施形態では、制御部12は、取込画像全体について、回転射影変換を行って、第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を繰り返し実行したが、第1ステップの濃度射影変換で、取込画像全体について濃度射影変換を行うと、濃度を加算する画素数が多いために欠陥部が消されてしまう可能性がある。そこで、取込画像を、タイヤ回転方向に切断して、タイヤ回転方向に直交する方向に複数のブロックに分割し、ブロックごとに、回転射影変換を行って、第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を繰り返し実行することが好ましい。この場合、各ブロックが、対象領域61に対応する。
【0094】
図12は、制御部12が実行するコード露出欠陥検出処理の処理手順を示すフローチャートである。入力部11の入力装置から検査の開始を指示する情報が入力され、制御部12が入力部11の撮影装置から取込画像を受け取ると、ステップA1に移る。
【0095】
濃度変換工程であるステップA1では、制御部12は、濃度射影変換処理を行う。濃度射影変換処理は、上述した第1ステップでの処理である。フーリエ展開工程であるステップA2では、制御部12は、フーリエ展開処理を行う。フーリエ展開処理は、上述した第2ステップでの処理である。周波数判定工程であるステップA3では、制御部12は、ブラダーグルーブ本数算出処理を行う。ブラダーグルーブ本数算出処理は、上述した第3ステップでの処理である。
【0096】
ステップA4では、制御部12は、逆フーリエ展開処理を行い、フーリエ展開処理でフーリエ展開された中周波〜高周波数範囲の周波数成分から、周波数判定処理で算出されたブラダーグルーブの周期を表す周波数成分を除去し、残余の周波数成分を逆フーリエ展開して射影変換濃度を再度生成する。この逆フーリエ展開によって、ブラダーグルーブが除去され、欠陥部を残した画像を得ることができる。
【0097】
ステップA5では、制御部12は、欠陥検出処理を行い、第1ステップで求めた射影変換濃度と第4ステップで求めた逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求める。次に、ステップA6では、ステップA5で求めた差分濃度について、前述の式(7)によって差分平均値を求める。
【0098】
ステップA7では、前述のステップA6において、コード露出欠陥ありと判定された場合、コード露出欠陥ありと判定された部分を基準テンプレートとして横方向に相関値を求める。この相関値に周期性が見られる場合は、コード露出欠陥と判定し、周期性が見られない場合は刻印文字と判定する。
【0099】
ステップA8において、コード露出欠陥の方向がタイヤ回転方向に直交する方向に一致するとは限らず、若干傾いている可能性があるため、制御部12は、濃度射影変換を行う方向を、タイヤ回転方向に直交する方向に対して傾けて、第1〜第6ステップによるコード露出欠陥検出処理を実行する。
【0100】
ステップA8では、制御部12は、傾き範囲が終了したか否かを判定する。第1〜第8ステップによるコード露出欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図10に示した角度Kが−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行していないとき、傾き範囲は終了していないと判定し、ステップA1に戻る。第1〜第5ステップによるコード露出欠陥検出処理を、回転射影変換を行って図11に示した角度Kが−5度〜5度の範囲内の角度で繰り返し実行したとき、傾き範囲が終了したと判定し、ステップA9に進む。ステップA9では、制御部12は、全ブロック終了したか否かを判定する。全ブロック終了していなければ、ステップA1に戻り、全ブロック終了していれば、コード露出欠陥検出処理を終了する。
【0101】
図13は、コード露出判定処理の手順を示すフローチャートである。ステップB1で、前述のステップA5で求めた差分濃度について、前述の式(7)によって差分平均値(=差分濃度合計/差分濃度データ数)を求める。次に、ステップB2で、各画素の濃度が差分平均値に上限許容値を加算した上限閾値以下であり、かつ差分平均値に下限許容値を減じた下限閾値以上であるか否かを判定する。各画素の濃度が差分平均値に上限許容値を加算した上限閾値以下であり、かつ差分平均値に下限許容値を減じた下限閾値以上であれば、ステップB3で欠陥ではない(OK)と判定し、上限閾値を超え、かつ下限閾値未満であれば、コード露出欠陥である可能性あり(NG)と判定して、次のステップB4に移る。
【0102】
前記ステップB4では、前述のステップB2で求めた差分濃度について、絶対値(差分絶対値)を求め、さらにこの差分絶対値の最大位置を求める。次に、ステップB5で、前記差分絶対値について、最大位置に上限許容値を加算した上限最大位置以下であり、かつ最大位置から下限許容値を減じた下限最大位置以上の範囲に存在する差分絶対値の和を求める。ステップB6では、前述のステップB5で求めた差分絶対値の和が上限閾値以下であれば、ステップB3でコード露出欠陥ではない(OK)と判定し、上限閾値を超えると、ステップB7でコード露出欠陥あり(NG)と判定する。
【0103】
上述した実施形態では、制御部12が記憶部13に記憶されるプログラムをコンピュータによって実行することによって、入力部11および出力部14を制御するとともに、上述した機能を実現するが、上述した機能を実現するためのプログラムは、記憶部13に記憶されることに限定されるものではなく、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体は、たとえば図示しない外部記憶装置としてプログラム読取装置を画像処理装置1に設け、そこに記録媒体を挿入することによって読取り可能な記録媒体であってもよいし、あるいは他の装置の記憶装置であってもよい。
【0104】
いずれの記録媒体であっても、記憶されているプログラムがコンピュータからアクセスされて実行される構成であればよい。あるいはいずれの記録媒体であっても、プログラムが読み出され、読み出されたプログラムが、記憶装置のプログラム記憶エリアに記憶されて、そのプログラムが実行される構成であってもよい。
【0105】
画像処理装置1と分離可能に構成される記録媒体は、たとえば磁気テープ/カセットテープなどのテープ系の記録媒体、フレキシブルディスク/ハードディスクなどの磁気ディスクもしくはCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)/MO(Magneto Optical disk)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disk)/CD−R(Compact
Disk Recordable)/ブルーレイディスクなどの光ディスクのディスク系の記録媒体、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系の記録媒体、またはマスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)/フラッシュROMなどの半導体メモリを含む固定的にプログラムを担持する記録媒体であってもよい。
【0106】
また、画像処理装置1を通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して上記プログラムを供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、たとえば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、VAN(Value Added Network)、CATV(Community Antenna Television)通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、または衛星通信網など通信ネットワークが利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、たとえば、IEEE1394、USB(Universal Serial Bus)、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDA(Infrared Data Association)あるいはリモートコントロールで用いられる赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(High
Data Rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網などの無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0107】
このように、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様、すなわちコード露出欠陥を有する検査対象物を撮像した画像の処理を行う画像処理装置1によって画像処理を実行するにあたって、図12に示したステップA1では、各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。図12に示したステップA2では、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、図12に示したステップA1で変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。図12に示したステップA3では、前記線状模様の周期を算出する。図12に示したステップA4では、図12に示したステップA2でフーリエ展開された周波数成分から、図12に示したステップA3で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する。そして、逆フーリエ展開された画素に予め定める濃度範囲に含まれない濃度の画素があると、欠陥があると判定する。
【0108】
したがって、画像処理によって、たとえば、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、コード露出欠陥など直線性に特徴のある欠陥を検出することができ、検査の安定化および高精度化を図ることができる。
【0109】
さらに、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向であるので、コード露出欠陥の直線性の方向がタイヤ回転方向と一致するとき、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、検査の安定化を図ることができる。
【0110】
このように、前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向に対して予め定める角度範囲内の複数の角度の方向であるので、コード露出欠陥の直線性の方向がタイヤ回転方向と一致しなくても、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、検査の安定化を図ることができる。
【0111】
さらに、前記線状模様は、ブラダーグルーブであるので、取込画像からブラダーグルーブを除去して、コード露出欠陥を検出することができる。
【0112】
さらに、濃度変換手段は、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される検査対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する。フーリエ展開手段は、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開する。周期算出手段は、前記線状模様の周期を算出する。逆フーリエ展開手段は、フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分から、周波数算出工程で算出された周波数の周波数成分を除いた残余の周波数成分を逆フーリエ展開する。そして、欠陥検出手段は、逆フーリエ展開手段によって逆フーリエ展開された画素に予め定める濃度範囲に含まれない濃度の画素があると、欠陥があると判定する。
【0113】
したがって、画像処理によって、たとえば、タイヤの種類、タイヤ表面の状態および照明の位置関係に依存することなく、コード露出欠陥など直線性に特徴のある欠陥を検出することができ、検査の安定化を図ることができる。
【0114】
さらに、プログラムによって、コンピュータを、予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換手段、第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開手段、フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分とコード露出帯域の周波数成分を除いた周波数成分とに判定する周波数判定手段、周波数判定手段によって判定された残余の周波数成分を逆フーリエ展開する逆フーリエ展開手段、濃度変換手段によって求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度との差分濃度を求める差分濃度算出手段、および差分濃度算出手段によって求めた差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定手段として機能させることができる。
【0115】
さらに、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として提供することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 画像処理装置
11 入力部
12 制御部
13 記憶部
14 出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の処理を行う画像処理装置で実行される画像処理方法であって、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開工程と、
フーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分を、コード露出帯域の周波数成分と、コード露出帯域の周波数成分を除いた残余の周波数成分とに判定する周波数判定工程と、
周波数判定工程でコード露出帯域の周波数成分を除いた残余の周波数成分を、逆フーリエ展開する逆フーリエ展開工程と、
濃度変換工程で求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開工程で求めた逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求める差分濃度算出工程と、
差分濃度算出工程で求めた差分濃度について、コード露出に相当する差分濃度であるか否かを判定するコード露出判定工程と、
コード露出判定工程で判定された差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定工程とを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、
前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、
前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向に対して予め定める角度範囲内の複数の角度の方向であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記線状模様は、ブラダーグルーブであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像処理方法。
【請求項5】
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換手段と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開手段と、
フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分とコード露出帯域の周波数成分を除いた周波数成分とに判定する周波数判定手段と、
周波数判定手段によって判定された残余の周波数成分を逆フーリエ展開する逆フーリエ展開手段と、
濃度変換手段によって求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度との差分濃度を求める差分濃度算出手段と、
差分濃度算出手段によって求めた差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定手段とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換手段、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開手段、
フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分とコード露出帯域の周波数成分を除いた周波数成分とに判定する周波数判定手段、
周波数判定手段によって判定された残余の周波数成分を逆フーリエ展開する逆フーリエ展開手段、
濃度変換手段によって求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度との差分濃度を求める差分濃度算出手段、および
差分濃度算出手段によって求めた差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定手段として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項1】
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の処理を行う画像処理装置で実行される画像処理方法であって、
各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換工程と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換工程で変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開工程と、
フーリエ展開工程でフーリエ展開された周波数成分を、コード露出帯域の周波数成分と、コード露出帯域の周波数成分を除いた残余の周波数成分とに判定する周波数判定工程と、
周波数判定工程でコード露出帯域の周波数成分を除いた残余の周波数成分を、逆フーリエ展開する逆フーリエ展開工程と、
濃度変換工程で求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開工程で求めた逆フーリエ展開濃度との差分濃度を求める差分濃度算出工程と、
差分濃度算出工程で求めた差分濃度について、コード露出に相当する差分濃度であるか否かを判定するコード露出判定工程と、
コード露出判定工程で判定された差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定工程とを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、
前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記画像は、タイヤ内側を撮影した画像であり、
前記予め定める第1の方向は、タイヤ回転方向に対して予め定める角度範囲内の複数の角度の方向であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記線状模様は、ブラダーグルーブであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像処理方法。
【請求項5】
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換手段と、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開手段と、
フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分とコード露出帯域の周波数成分を除いた周波数成分とに判定する周波数判定手段と、
周波数判定手段によって判定された残余の周波数成分を逆フーリエ展開する逆フーリエ展開手段と、
濃度変換手段によって求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度との差分濃度を求める差分濃度算出手段と、
差分濃度算出手段によって求めた差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定手段とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
予め定める第1の方向に延びる互いに平行な複数のラインと、第1の方向に直交する第2の方向に延びる互いに平行な複数のラインとの交点に配列される複数の画素から構成される画像であって、周期性のある線状の凹部または凸部からなる線状模様が形成される対象物を撮像した画像の各画素の濃度を、各画素が含まれる第2の方向のライン上の画素の濃度を平均した平均濃度に変換する濃度変換手段、
第1の方向のラインのうちの1つのラインについて、各画素の位置を変数として、濃度変換手段によって変換された各画素の濃度をフーリエ展開するフーリエ展開手段、
フーリエ展開手段によってフーリエ展開された周波数成分からコード露出帯域の周波数成分とコード露出帯域の周波数成分を除いた周波数成分とに判定する周波数判定手段、
周波数判定手段によって判定された残余の周波数成分を逆フーリエ展開する逆フーリエ展開手段、
濃度変換手段によって求めた射影変換濃度と、逆フーリエ展開手段によって求めた逆フーリエ変換濃度との差分濃度を求める差分濃度算出手段、および
差分濃度算出手段によって求めた差分濃度について、周期性があればコード露出と判定し、周期性がなければ刻印文字と判定する刻印文字判定手段として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図14】
【図2】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図14】
【公開番号】特開2011−137657(P2011−137657A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296228(P2009−296228)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
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