説明

画像形成装置

【課題】現像装置部でのケーシングへのトナー固着を抑制し、長期にわたって使用可能で、基準パターン作成回数を低減させて、現像工程の下流での感光体クリーニング装置へのトナー入力や余剰なトナー消費を抑制する。
【解決手段】少なくとも両面印刷モード時には、像担持体上に基準濃度トナー像を作成し、現像長手方向の中心位置と端部位置でトナー付着量を検出し、その検出結果に基づいてケーシングに印加するバイアス電圧を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式の画像形成装置に関し、特に現像装置部の構造および制御の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機の高速化、省エネルギー化に伴い、低融点のトナーを使用する所謂トナーの低融点化が進んでいる。しかし、トナーをある程度以上低融点化すると、トナー凝集による現像不良、現像スリーブ上でのトナー固着など、様々な問題が発生する。特に複写機のデジタル化が進み電子文書等の出力では、現像スリーブ軸方向において、同一個所(特に余白部分)に非画像部が連続する場合が増え、その非画像部に対向する現像スリーブはトナー固着が発生しやすい。2成分現像法における現像スリーブのトナー固着は比較的最近特に注目されるようになった課題である。
【0003】
これに対応する技術として、例えば、特許文献1では、低融点トナーを用いた二成分現像の画像形成装置において、地肌ポテンシャル(像担持体帯電電位と現像バイアスの差)が絶対値で400V以上に設定し、また、所定のタイミングで現像スリーブの軸方向の端部領域でベタ画像を像担持体に現像することで現像スリーブへのトナー固着を未然に防いでいる。しかしながら、特許文献1の方法は、像担持体に現像したベタ画像がそのまま下流の転写機構や像担持体のクリーニング機構に入力され、それぞれのトナークリーニング機構への負荷が増え、余剰にトナーを消費してしまう不都合がある。
【0004】
これ以外にも、特許文献2には、現像スリーブにトナー回収部材を対向させ、その回収部材にバイアスを印加することで静電的に現像スリーブ上のトナーを取り除く構成の画像形成装置が提案されている。しかし、この特許文献2の構成は、部品点数の増加を伴い、機構が複雑になるため現像装置のコスト高を招く難点がある。
【0005】
ところで、画像形成装置においては、像担持体上に基準濃度パッチとして形成されたトナー像のトナー付着量を検出して、画像形成プロセスを制御する技術が周知で広く採り入れられている。この場合に、現像長手方向の中心位置と端部位置で検知し、当該検知トナー濃度に基づいて精度よく制御を行うことも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
特許文献4では、現像スリーブへのトナー固着に起因するトナー濃度制御の不具合を抑制する画像形成装置が提案されている。一般に、現像スリーブのトナー固着領域では、固着トナーが電荷を帯びているために実効的な現像ポテンシャルが増大する。したがって、通常どおりの制御を行った場合、像担持体上の付着量測定用パッチのトナー付着量が固着していないスリーブ領域と比較して多くなる結果、狙いの付着量にするためにトナー濃度を低めに制御してしまい、結果として画像濃度の低下を招いてしまう。よって、この点に対処すべく特許文献4開示の画像形成装置では、現像バイアス電位と潜像領域電位を同一になるように制御し、その状態でパッチの付着量を測定することでトナー固着による実効的な現像バイアスの上昇の有無を検知し、トナー濃度制御に反映するようにしている。
【0007】
しかしながら、とくに高速複写機については、現像スリーブの回転数も高いことから現像スリーブ上の温度も上昇しやすいので、低融点のトナーは現像スリーブに固着しやすい。さらに、非画像部については、トナーが現像スリーブに押し付けられるように静電気力が働くので、これが現像スリーブへのトナー固着を加速させる。
【0008】
像担持体の露光部分にトナーを付着させるネガ/ポジ・プロセス(以下、N/Pプロセスと言う)の場合には、トナーは現像バイアスと同極性に帯電しているため、トナー固着が発生している領域は、像担持体上での実効的な現像ポテンシャルが大きい状態と同様の現象を生ずる。従って、トナーが固着していない領域で十分な現像能力を確保しようとすると、トナーが固着している領域では現像能力過多となり余分なトナーが付着してしまい、地肌汚れ等の異常画像を発生させてしまう。
【0009】
また、現像装置のケーシングに導体を適用することで冷却効率の向上も図られている。このケーシングに導体を適用する場合には、現像バイアスのリークを防ぐ目的でケーシングと現像スリーブ表面とを導通させ、ケーシングが現像バイアスと同電位に保つ等の工夫がなされている。
【0010】
しかしながら、上記の構成では、現像スリーブ上にトナー固着が発生している領域でケーシングに対して局所的に電位差が発生し、現像スリーブ表面からケーシングにトナーが吸引され、ケーシングの現像スリーブに対向している箇所にトナー固着が発生してしまう。この場合、メンテナンス時等のタイミングで現像スリーブ上の固着トナーが除去された場合、ケーシングにトナー固着が発生している箇所では、ケーシング上の実効的な電位がスリーブ表面上の電位よりも高いため、結果としてケーシングと現像スリーブの間では、現像スリーブにトナーが引き寄せられる。その結果、像担持体上では非画像部でない箇所であっても、現像スリーブ表面にトナー固着が発生し画像不良に繋がってしまう。
【特許文献1】特開2001−312126号公報
【特許文献2】特開2002−278275号公報
【特許文献3】特開2007−232788号公報
【特許文献4】特開2002−278183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した如き実状に鑑みてなされたもので、現像装置部でのケーシングへのトナー固着を抑制し、長期にわたって不具合なく使用可能としつつも、基準パターン作成回数を低減させて、現像工程の下流での感光体クリーニング装置へのトナー入力や余剰なトナー消費を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、現像スリーブに対向するケーシングが導体であり、該現像スリーブと該ケーシングに対し、個別にバイアス電圧を印加可能である現像装置と、所定のタイミングで像担持体上に基準濃度トナー像を作成して現像長手方向の中心位置と端部位置でトナー付着量を検出する基準濃度パッチ評価手段とを含み構成され、該基準濃度パッチ評価手段の検出結果に基づいて前記ケーシングに印加するバイアス電圧を決定する画像形成装置において、該画像形成装置の印刷モードが両面印刷かどうかを検知する印刷モード検知手段とを具備し、該印刷モード検知手段の検知結果に基づいて、現像長手方向端部位置の基準濃度トナー像の作成可否を判断する制御部を具備したことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明では、請求項1記載の画像形成装置において、前記制御部は、更に当該画像形成装置の連続稼動時間長に基づいて、現像長手方向端部位置の基準濃度トナー像の作成可否を判断することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2記載の画像形成装置において、前記現像スリーブ上の軸方向中央部と端部に形成されて現像剤量を規制するギャップが、中央部と端部で規制量が異なることを特徴とする。また、請求項4に記載の発明では、請求項1または2記載の画像形成装置において、前記現像スリーブの表面粗さが、軸方向中央部と端部領域で異なることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明の画像形成装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、重量平均粒径が4〜10μm、且つ、4μm以下が60〜80個数%含まれているトナーを適用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、印刷モードが両面印刷かどうかを検知する印刷モード検知手段とを具備し、該印刷モード検知手段の検知結果に基づいて、現像長手方向端部位置の基準濃度トナー像の作成可否を判断することで、余剰なトナー消費を抑制した上で、現像スリーブ上のトナー固着を感知し制御することで、ケーシングへのトナー固着を抑制して、現像装置の交換周期を延長させることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、該画像形成装置の連続稼動時間に基づいて現像長手方向端部位置の基準濃度トナー像の作成可否を判断することで、余剰なトナー消費を抑制しつつ、現像スリーブ上のトナー固着を感知し、ケーシングへのトナー固着を抑制することで、現像装置の交換周期を延長させることができる。
【0018】
特に、請求項3に記載の発明では、前述の構成に加えて、現像スリーブ上の現像剤量を規制するギャップを中央部と端部で異ならせることで、現像スリーブ上のトナー固着をより確実に感知し、ケーシングへのトナー固着を抑制することで、現像装置の交換周期を延長させることが可能となる。
【0019】
あるいは、請求項4に記載の発明のように、前述の構成に加えて、現像スリーブ表面粗さを中央部と端部で異ならせることで、現像スリーブ上のトナー固着をより確実に感知し、ケーシングへのトナー固着を抑制することによっても、現像装置の交換周期を延長させることが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明のように、前述した如き構成を持つ画像形成装置は、重量平均粒径が4〜10μm、4μm以下が60〜80個数%含まれているトナーを適用する場合にも、好適に作用して現像スリーブへのトナー固着を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、この発明に係る現像装置を備える画像形成装置の一実施形態であるレーザ複写機であり、その複写機内部機構の全体概略構成を示している。図2に、その要部の部分拡大構成を示す。図中符号10は、画像形成装置本体である。画像形成装置本体10内には、ドラム状の像担持体12を設けてある。像担持体12のまわりには、帯電装置13、現像装置14、転写・搬送装置15、クリーニング装置16、除電装置17などが配置される。また、帯電装置13の直近の下流に反射濃度センサ19が配設されている。これら各構成要素の上部に、レーザ書込み装置18を設けている。レーザ書込み装置18には、レーザダイオード等の光源20、走査用の回転多面鏡21、ポリゴンモータ22、fθレンズ等の走査光学系23などを備えてなる。クリーニング装置16の図中左側には、定着装置25を配置する。定着装置25には、ヒータを内蔵する定着ローラ26と、その定着ローラ26に下方から押し当てる加圧ローラ27を設ける。また、装置本体10内の上部には、原稿読取装置30を備える。原稿読取装置30には、光源31、複数のミラー32、結像レンズ33、CCD等のイメージセンサ34などを設ける。
【0022】
上述した現像装置14は、図2に拡大して示すように、現像タンク50と現像ホッパ60とからなる。現像タンク50では、第1現像ローラ51、第2現像ローラ52、パドルホイール53、攪拌ローラ54、搬送スクリュ55、セパレータ56、ドクタブレード57、トナー濃度センサ(Tセンサと称される)58などを現像ケース59内に設ける。そして、現像ケース59内には、キャリアとトナーとからなる二成分現像剤を収納する。現像ホッパ60内には、歯車状のトナー補給部材61、補給規制板62、アジテータ63などを設ける。この現像ホッパ60内には、トナーを収納してなる。
【0023】
そして、この現像装置14では、現像ケース59内の二成分現像剤を、攪拌ローラ54の回転により攪拌して摩擦帯電し、パドルホイール53の回転によって跳ね上げ、第1現像ローラ51および第2現像ローラ52内の磁石によってそれらの第1現像ローラ51および第2現像ローラ52に吸着する。第1現像ローラ51および第2現像ローラ52に吸着した現像剤は、それらの第1現像ローラ51および第2現像ローラ52外周のスリーブ(現像スリーブ)により搬送してドクタブレード57により余剰分を掻き落として後、現像バイアスにより像担持体12に付着してその像担持体12上の静電潜像を現像する。
【0024】
装置本体内に実装されている図示しない制御部には、モータを含む回転部や搬送機構の各駆動系、トナー濃度センサ58や反射濃度センサ(Pセンサと称される)19を含む各種センサ、RAMやROMからなるデータ記憶部、タッチパネル等から構成される操作表示部などが接続されており、これらを制御する。上記データ記憶部には、トナー濃度センサ58の出力目標である基準値VTrefなど、制御部で用いられるデータが格納されている。
【0025】
この制御部は、図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報に基づいて、除電装置(除電ランプ)17、帯電装置(帯電ローラ)13、上記光書き込みユニット、現像装置14、現像バイアス印加手段、上記給紙部、転写バイアス印加手段、転写ローラ等の駆動を制御して画像形成動作を実施させる。
【0026】
また、上記制御部ではデータ記憶部に格納している基準画像データに基づいて、所定のタイミングで像担持体12上に周知の基準画像(基準濃度パッチ)を形成させ、反射濃度センサ19で検知し、その出力を評価して結果をプロセス制御に反映させる。すなわち、後で詳述するように、制御部は所定のタイミングで像担持体上に基準濃度パッチ(トナー像)を作成させ、現像長手方向の中心位置と端部位置でのトナー付着量を検出し、印刷モードが両面印刷かどうかの結果に基づいて、現像長手方向端部位置の基準濃度トナー像の作成可否を判断し、また、基準濃度トナー像の検出結果(反射濃度センサ出力)に基づいて、現像スリーブ等のバイアス電圧を適正なものに調節するプロセス制御を行う。
【0027】
なお、同じ制御部では、周知の機能として、プリント動作に伴って転写紙Pが上記転写ニップを通過した時点で、トナー濃度センサ58からの出力VTの値を検出(測定)する。そして、この出力VTの値と、データ記憶部に格納されている基準値VTrefとに基づいて、両者の差であるΔVT(=VTref−VT)を演算する。
【0028】
本実施形態におけるトナー濃度センサ58は、透磁率を検知する透磁率センサ等で構成され、現像剤のトナー濃度の増加に伴ってその出力VTの値を低下させる特性を有している。従って、「VTref−VT」の解であるΔVTの値がマイナス側に大きくなるほど、現像剤のトナー濃度は目標濃度よりも低くなっている状態にある。
【0029】
制御部は、ΔVTの演算結果に基づいて、現像剤のトナー濃度について目標濃度よりも低いと判断した場合には、該演算結果に応じたトナー補給時間t(モータ7cの駆動時間)を決定する。そして、決定したトナー補給時間tに基づいてモータ7cを回転駆動させて、必要量のトナーを現像装置3内に補給させる。
【0030】
基準濃度パッチを検知するための、前述した反射濃度センサ19は、発光ダイオード等からなる発光部と、フォトトランジスタなどのフォトセンサ等からなる受光部とで構成されている。この発光部からの照射光は、感光体ドラム1上に所定位置に照射され、その反射光量が受光部によって検出される。検出結果は、反射濃度センサ19から直流電圧として出力され、明示しないA/Dコンバータを経由して制御部に入力される。上記反射光量は像担持体12上の基準画像形成領域における単位面積あたりのトナー付着量[mg/cm2]によって変化するので、反射濃度センサ19からの出力Vspの値もこのトナー付着量[mg/cm2]によって変化する。なお、本装置においては、トナー付着量[mg/cm2]の増加に伴って出力値Vspを減少させる反射濃度センサを用いている。
【0031】
本実施形態では現像スリーブ、ケーシング59(アルミ製)に、それぞれ個別の電源装置(パワーパック)からバイアス電圧を印加している。現像スリーブには-650Vを印加、ケーシングには任意に決定されたバイアスを印加(以下ケーシングバイアスと記す)する。また、本実施形態の現像スリーブの線速は700mm/secである。この現像装置14では、像担持体12に付着してトナーを消費すると、その割合(トナー濃度)が減少する。そこで、現像剤中のトナー濃度がトナー濃度の目標値に対して所定値以下になると、アジテータ63を回転してトナーを攪拌するとともにトナー補給部材61へと搬送し、そのトナー補給部材61を回転して補給規制板62を揺動し、現像ホッパ60から現像タンク50内へとトナーを補給して現像剤中のトナー濃度を維持する。現像剤中のトナー濃度は、現像ケース59に取り付けるトナー濃度センサ58により測定する。
【0032】
本画像形成装置では、所定の印刷枚数毎に基準濃度パッチ潜像がレーザ光によって書き込まれ、所定の現像ポテンシャル(本実施形態では280V)となるよう、所定のバイアスを現像スリーブに印加し、基準濃度トナー像(以下濃度パッチ)が現像される。濃度パッチの反射濃度を反射濃度センサ19によって検知し、その反射濃度が一定範囲になるようにトナーホッパー60中のトナーが補給される。濃度パッチは、反射濃度センサ19によってその反射濃度(Vsp)を検知する。地肌濃度(Vsg0)は1ジョブ間のドラム起動時(現像起動前)の、ドラム上にまったくトナーが付着していない状態で検知する。本実施形態では、印刷状態が両面印刷の場合、その印刷ジョブ終了時に長手中央に加えて、現像長手方向端部に基準パッチを作成し、両者の検知値に基づいて、下ケーシングへの印加バイアスを制御する。
【0033】
現像装置14では、重量平均粒径が5〜10μm、5μm以下が60〜80個数%含まれているトナーと重量平均粒径65ミクロンm以下のキャリアとを含む二成分系現像剤が用いられるように設計されている。トナーの構成として樹脂成分、着色剤からなり、さらに、ワックス成分や無機微粒子を添加した構成を採用する場合もある。製造方法は特に限定されるものではなく、粉砕方式、重合方式いずれを用いることも可能である。樹脂成分としては従来公知の樹脂全てを用いることができ、例えば、以下のものが挙げられる。スチレン、ポリ−α−スチルスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジェン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラート樹脂等が挙げられる。また、単独使用も可能であるが、二種類併用しても良い。着色剤としては公知のものとして、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコオイルブルー、オイルブラック、アゾオイルブラック等、特に限定はされない。ワックス成分としては公知のものとして、カルナウバワックス、ライスワックス、合成エステルワックスなど、特に限定されないものが用いられる。無機微粒子としては、公知のものとして、シリカ、酸化チタン微粉末などが用いられる。
【0034】
ところで、上述したとおり、像担持体12に付着したトナー(像)は、転写・搬送装置15によってシートに静電転写する。ところが、約10%のトナーは、シートに転写されず像担持体12上に残る。残留トナーは、クリーニング装置16に設けるクリーニングブレード65およびブラシローラ66によって像担持体12上から掻き落とす。クリーニング装置16によって像担持体12上から掻き落とされたトナーは、クリーニング装置16の回収タンク67内に入る。そして、回収スクリュ68によってクリーニング装置16の片側に搬送し、不図示の排出口から排出してトナーリサイクル装置へと導く。図2中で符号が付されたその他の部分については、本発明とは直接関係しないため説明は省略する。
【0035】
ところで、一般に現像装置が連続で稼動し続けると、スリーブ表面温度も上昇するが、本実施形態のように非常に高速な複写機である場合には、両面印刷時は、片面印刷時と比較して感光体表面温度が10deg程度上昇する。現像スリーブは感光体に近接して対向しているため、感光体表面温度が高くなると、それに合わせて現像スリーブ表面の温度も上昇してしまう。そのような状態で、印刷パターンの地肌部分のようにトナーが付着する状態が続くと、スリーブ表面へのトナー固着がより発生しやすくなる。したがって、このような状態が続く場合、現像ケーシングへのトナー固着も加速的に進行してしまう。
【0036】
そこで、本実施形態では、画像形成部と制御部が協働して具現化される基準濃度パッチ評価手段が、適宜間隔(例えば5kp毎のタイミング)で、基準濃度トナー像(以下、基準濃度パッチとも言う)を作成、その濃度を検出してプロセス制御に反映させるようになっているが、特に、少なくとも印刷状態が両面印刷の場合には、印刷モード検知手段が、印刷モードが両面印刷かどうかを検知して、制御部が判定結果に基づいて基準濃度トナー像の作成可否を判断する。もし、両面印刷処理であれば制御部は、その印刷ジョブ終了時に現像長手方向中央部と現像長手方向端部(作像方向の最下流端部)にて濃度パッチを作成、その濃度を検出して現像スリーブとこれに対向するケーシングに対し個別に印加するバイアス電圧を決定するようにしている。これは、現像長手方向端部は画像領域外もしくは余白に対応する場合が多いため、現像スリーブ表面のトナー固着による現像能力の上昇を検知できるためである。
【0037】
こうして、中央部の濃度パッチ検知結果と端部の濃度パッチ検知結果を比較し、その結果(差分)を基に印加すべきバイアス電圧値を決定してこの値にケーシングバイアスを制御することで、余剰に現像スリーブへトナーを付着させることなく、常に最適なケーシングバイアスを選択する(決定する)ことができる。図3に制御に用いられる、両部での濃度パッチ検知出力の差とケーシングバイアス設定値の関係をグラフで示す。このグラフの関係に対応するテーブルが、データ記憶部に記憶されていてケーシングバイアス設定値決定の際に参照される。こうして現像装置3の現像能力を適正化させて画像品質を安定化している。なお、制御部では、基準画像を検知する反射濃度センサからの出力と、Tセンサ3dからの出力VTの値とに基づいて、トナー濃度の制御にも反映させることができるが周知技術でありここでは触れない。
【0038】
上述したように、本実施形態では、印刷状態が両面印刷の場合、その印刷ジョブ終了時に長手中央に加えて、現像長手方向端部に基準パッチを作成し、両者の検知値に基づいて、現像スリーブとそのケーシングへの印加バイアスを制御している。実施形態装置にて、300kp印刷実験にてケーシングへのトナー固着有無を確認する印刷実験を行った。比較として、毎印刷ジョブ終了時に現像長手方向中央部と端部に基準パッチを作成して同様の実験も行った。この印刷実験では、両面印刷と片面印刷の比率を6:4とし、画像面積率は6%としている。印刷時間については、1分〜60分の印刷ジョブを組み合わせて実施した。
【0039】
実験後の現像装置で再度印刷実験を行って、現像スリーブの実効バイアス上昇を調べた結果を図4に示す。この結果より、両面印刷時のみケーシングバイアス印加制御を実施することで、ケーシングへのトナー固着は発生せず、現像装置をそのまま継続使用可能であることが確認できた。
【0040】
濃度パッチ作成により発生する余剰トナー量を図5のグラフに示す。両面印刷時のみ端部濃度パッチを作成することで、常時作成に対して38%となり、余剰トナー消費を抑制しつつ、ケーシングへのトナー固着を防ぐことが可能となる。
【0041】
図6のグラフに、本実施形態装置の連続稼動時の現像装置温度上昇実験結果を示す。この結果を基に、連続稼動時間が40分以上の両面印刷ジョブ終了時に、現像長手方向端部の基準パッチ作成し、その検知結果に基づいて下ケーシングへの印加バイアスの制御を実施し同様な300kp印刷実験を行い、実験後の現像装置で再度印刷実験を行って、現像スリーブの実効バイアス上昇を調べた。こちらの場合は、やや実効バイアスの上昇があるが、実用上は問題ないレベルであり、現像装置はメンテナンス実施後再利用が可能なレベルであった。濃度パッチ作成により発生する余剰トナー量は、常時作成に対して13%と少なく、余剰トナーをさらに低減しつつ、ケーシングへのトナー固着を問題ないレベルに抑制できている。
【0042】
また、本実施形態のアルミ製現像スリーブでは、その表面の、現像長手方向端部にサンドブラスト加工を施すことで、現像長手方向中央部と端部の表面粗さを異ならせている。中央部の表面粗さは、Ra=0.4、Ry=3、Rz=2で端部では、Ra=5、Ry=30、Rz=20である。表面粗さを粗くすることで、現像スリーブ表面の現像剤輸送力が向上し、端部の端部の濃度パッチ現像能力を底上げされるので、中央部と端部の濃度パッチ検知差もより大きくなる。図7のグラフに、中央部と端部で上述した如くに表面状態を異ならせたときの、実効バイアス上昇に対する濃度パッチ検知差ΔVspを示す。
【0043】
なお、近年画像形成装置の高画質化達成のため、粒径の小さなトナーが適用されるようになってきている。そこで、実施形態装置において、重量平均粒径が4um以下のトナー含有率が異なるトナーで現像スリーブへのトナー固着による実効現像バイアスの上昇量を印刷実験にて確認した。実験結果を図8に示す。この結果から、含有率30%、45%のトナーと比較して、60%のトナーでは実効現像バイアスの上昇量が大きいことがわかる。したがって、本実施形態装置は、重量平均粒径が4um以下が60%以上含まれるトナーを用いて画像形成する場合に、とくに顕著に効果を発揮し得る。
【0044】
上述した実施形態において、更に、スリーブ表面の現像剤量規制ギャップについて、中央を0.6mm、端部を0.7mmとすると好ましい。このようにすることで、端部の端部の濃度パッチ現像能力を底上げし、トナー固着による実効バイアスの上昇を検知しやすくすることが可能となる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置は、現像スリーブに対向するケーシングが導体であり、現像スリーブとケーシングに対し、個別にバイアス印加可能である現像装置を適用し、所定のタイミングで像担持体上に基準濃度トナー像を作成し、現像長手方向の中心位置と端部位置でトナー付着量を検知する機構を具備し、該検知結果に基づいてケーシングに印加するバイアスを決定する画像形成装置であって、特に、該画像形成装置の印刷モードが両面印刷かどうかを検知する機構を具備し、該検知結果に基づいて、現像長手方向端部位置の基準濃度トナー像の作成可否を判断する構成となっているので、余剰なトナー消費を抑制しつつ、現像ケーシングへのトナー固着を抑制し、現像装置の交換周期を延長させることが可能となっている。
【0046】
また、画像形成装置の連続稼動時間に基づいて現像長手方向端部位置の基準濃度トナー像の作成可否を判断することで、余剰なトナー消費を抑制しつつ、現像ケーシングへのトナー固着を抑制することで、現像装置の交換周期を延長させることが可能となる。
【0047】
更に、現像スリーブ上の現像剤量を規制するギャップを中央部と端部で異ならせていることで、現像スリーブ上のトナー固着をより確実に感知することが可能となり、その結果ケーシングへのトナー固着を確実に抑制し、現像装置の交換周期を延長させることが可能となっている。
【0048】
また、現像スリーブ表面粗さを中央部と端部で異ならせていることで、現像スリーブ上のトナー固着をより確実に感知することが可能となり、その結果ケーシングへのトナー固着を確実に抑制し、現像装置の交換周期を延長させることが可能となっている。
【0049】
既述した構成に起因して、重量平均粒径が4〜10μm、4μm以下が60〜80個数%含まれているトナーを適用する画像形成装置においても、現像ケーシングへのトナー固着を未然に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る現像装置を備えるレーザ複写機であり、その複写機内部機構の全体概略構成図である。
【図2】その要部の部分拡大構成図である。
【図3】両部間での濃度パッチ検知差とケーシングバイアス設定値の関係を示すグラフである。
【図4】実施形態の現像装置で印刷実験を行って、現像スリーブの実効バイアス上昇を調べた結果を示す関係図である。
【図5】実施形態の現像装置で濃度パッチ作成により発生する余剰トナー量を示すグラフである。
【図6】実施形態装置の連続稼動時の現像装置温度上昇実験結果を示すグラフである。
【図7】実施形態において現像スリーブの表面状態を中央部と端部異ならせたときの濃度パッチ検知差を示すグラフである。
【図8】実施形態において現像スリーブへのトナー固着による実効現像バイアスの上昇量を示す実験値のグラフである。
【符号の説明】
【0051】
10 画像形成装置本体
12 像担持体
13 帯電装置
14 現像装置
15 転写・搬送装置
16 クリーニング装置
17 除電装置
19 反射濃度センサ
50 現像タンク
51 第1現像ローラ
52 第2現像ローラ(最下流現像ローラ)
58 トナー濃度センサ(Tセンサ)
59 ケーシング(現像ケース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像スリーブに対向するケーシングが導体であり、該現像スリーブと該ケーシングに対し、個別にバイアス電圧を印加可能である現像装置と、所定のタイミングで像担持体上に基準濃度トナー像を作成して現像長手方向の中心位置と端部位置でトナー付着量を検出する基準濃度パッチ評価手段とを含み構成され、
該基準濃度パッチ評価手段の検出結果に基づいて前記ケーシングに印加するバイアス電圧を決定する画像形成装置において、
該画像形成装置の印刷モードが両面印刷かどうかを検知する印刷モード検知手段とを具備し、該印刷モード検知手段の検知結果に基づいて、現像長手方向端部位置の基準濃度トナー像の作成可否を判断する制御部を具備したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、更に当該画像形成装置の連続稼動時間長に基づいて、現像長手方向端部位置の基準濃度トナー像の作成可否を判断することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像スリーブ上の軸方向中央部と端部に形成されて現像剤量を規制するギャップが、中央部と端部で規制量が異なることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像スリーブの表面粗さが、軸方向中央部と端部領域で異なることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像装置においては、重量平均粒径が4〜10μm、且つ、4μm以下が60〜80個数%含まれているトナーを適用することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−282213(P2009−282213A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133055(P2008−133055)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】