説明

画像形成装置

【課題】過攪拌によるトナーの劣化に起因した画像不良の発生を従来にもまして有効に抑える。
【解決手段】感光体ドラム121と、トナーを攪拌するスパイラルフィーダ21を備えた現像装置20と、転写された用紙P上のトナー像に定着処理を施す定着部13と、これら感光体ドラム121、現像装置20および定着部13にギヤ列を介して駆動力を伝達する駆動モータ30とが内装され、各所への電力の供給をオン・オフする電源スイッチ170と、駆動モータ30の駆動力のスパイラルフィーダ21への伝達を入切するクラッチ50とが設けられ、定着部13の所定の部位の温度を検出する温度センサと、クラッチ50の入切を制御する制御手段60とが備えられ、制御手段60は、電源スイッチ170がオンされた後に温度センサの検出温度が予め設定された温度に到達するまでの間、クラッチ50へ向けて当該クラッチ50が切られるための制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置に設けられるトナーの攪拌部材の駆動を不必要なときに行わせないようにし、これによってトナーの劣化を抑制し得るように改良された画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、通常、トナーが充填された現像装置から、画像情報に基づく静電潜像が周面に形成された像担持体としての例えば感光体ドラムの周面に供給して当該感光体ドラムの周面にトナー画像を形成させ、このトナー画像を搬送されてきた用紙に転写した後、定着装置で用紙上のトナー像に加熱による定着処理を施した上で当該定着処理済みの用紙を外部に排出するように構成されている。
【0003】
現像装置には、充填された内部のトナーに攪拌処理を施すための攪拌軸と、この攪拌軸から径方向の外方に向けて同心で突設された攪拌フィンとを有する攪拌部材が設けられている。そして、適所に設けられた駆動モータの駆動による攪拌フィンの攪拌軸回りの駆動回転で現像装置内のトナーが攪拌され、これによって現像装置内のトナーは、その均質化や団塊の解砕等が行われる。
【0004】
ところで、駆動モータは、その駆動力を現像装置の攪拌部材にのみ与えるのではなく、ギヤ機構を介して近隣の各種の可動部材、例えば感光体ドラムや定着装置の定着ローラ等にも伝達されるようになされているのが一般的である。従って、現像装置からトナーが感光体ドラムに供給されるとき以外でも、他の可動部材が稼働しているときには攪拌部材が駆動され、これによってトナーは、その過攪拌に起因して劣化するという不具合が生じることがある。トナーが劣化すると、感光体ドラムの周面に適正なトナー像を形成させることができなくなるという問題点が生じる。
【0005】
かかる不都合を解消するものとして、特許文献1〜3に示すような方策が提案されている。
【0006】
まず、特許文献1に記載のトナー劣化に起因した画像不良の防止対策は、通常の画像形成処理を一時的に中断して現像装置から感光体ドラムの周面全面にベタ画像を形成させるようにし、これによる強制的なトナーの大量消費で現像装置内へ新たなトナーを供給するというものである。こうすることにより劣化していないトナーが新たに現像装置内へ充填されるため、この新たなトナーが感光体ドラムに供給されることになり、結果として劣化トナーによる画像不良が解消される。
【0007】
ついで、特許文献2に記載のトナー劣化に起因した画像不良の防止対策は、各色(例えばマゼンタ、シアン、イエローおよびブラックの4色)のトナーを対象とした複数台の現像装置、および各現像装置に対応した複数台の感光体ドラムが設けられてなる、いわゆるカラー印刷用の画像形成装置を対象とし、かかる画像形成装置でブラックトナーによるモノクロ印刷を行う場合に、他の色のトナーに係る現像装置のトナー攪拌部材への駆動モータの駆動力を伝達しないようにするというものである。こうすることで、画像形成処理に与らない他の色のトナーに係る現像装置のトナー攪拌部材が駆動しないため、これらトナーの劣化が防止される。
【0008】
さらに、特許文献3に記載のトナー劣化に起因した画像不良の防止対策も複数の色のトナーを使用してカラー印刷を行う用にしたカラー印刷用の画像形成装置を対象とするものであり、カラー印刷を実行するに際し、転写処理に係わっていない現像装置のトナー攪拌部材の駆動を停止させるようするというものである。こうすることで、カラー印刷中ではあるが現に用紙への転写処理に与らない色のトナーに係る現像装置のトナー攪拌部材が駆動しないため、その分トナーの劣化が防止される。
【特許文献1】特開平2−176685号公報
【特許文献2】特開2005−156779号公報
【特許文献3】特開2006−337568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載のトナー劣化に起因した画像不良の防止対策にあっては、所定時間毎にベタ印刷が実行されるため、トナーの消費量が増加し、ランニングコストが嵩むという問題点を有している。
【0010】
また、特許文献2および3に記載のトナー劣化に起因した画像不良の防止対策にあっては、並設された複数の現像装置の内で現に画像形成処理に関与していない現像装置の攪拌部材については、その駆動が停止されるため、その分トナーの劣化を抑制することができるが、通常、駆動モータの駆動力伝達は、現像装置だけではなく、近隣のその他の可動部材(例えば、感光体ドラムや定着装置の定着ローラ等)へも伝達されるようになされて入るのが一般的である。
【0011】
従って、特許文献2および3に記載のものは、現に現像処理が実行されていないにも拘わらず、これらの可動部材が駆動されていることで現像装置の攪拌部材も同伴駆動されることがあり、これについての考慮が払われたものではない。
【0012】
本発明は、従来の上記のような状況に鑑みなされたものであって、過攪拌によるトナーの劣化に起因した画像不良の発生を従来にもまして有効に抑えることが可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、静電潜像に沿ったトナー像が形成される像担持体と、前記像担持体にトナーを供給するトナー供給部材を備えた現像装置と、前記像担持体から転写された用紙上のトナー像に加熱による定着処理を施す定着ローラを備えた定着装置とが装置本体に内装されてなる画像形成装置において、前記定着ローラを加熱する加熱手段と、
前記定着ローラおよび前記トナー供給部材を回転させる駆動手段と、前記定着ローラの表面温度を検出する検出手段と、電源オン時またはスリープモードから前記定着ローラを第1の温度にするために当該定着ローラを加熱するとともに、前記定着ローラおよび前記トナー供給部材を回転させる予熱期間と、前記予熱期間中に前記定着ローラが、前記第1の温度よりも低い、第2の温度に到達した時点で、前記トナー供給部材の回転を停止するように制御する制御手段とを備えることを特徴とする特徴とするものである。
【0014】
かかる構成によれば、電源スイッチがオンされることによる画像形成装置がスタートアップしたときの定着装置の立ち上がり時に、あるいは画像形成装置においてスリープモードから通常モードにモード変更があったとき(このときも電源スイッチがオンされて通電発熱体への電力の供給が行われる)の定着装置の立ち上がり時に、当該定着装置は、加熱手段に電力が供給されることにより昇温される。
【0015】
そして、定着装置の温度を検出する温度センサが、予め設定された第1の温度を検出するまでは、定着装置および現像装置の双方がエージング(馴らし運転)され、第1の温度を超えてから少なくとも第2の温度に到達するまでの間、現像装置の攪拌部材は、制御手段の制御による駆動手段の動作で一旦停止されるため、定着装置が第2の温度に到達していないことで未だ機能する状態になっていないにも拘わらず攪拌部材の無駄な駆動でトナーを劣化させるような不都合が生じることはない。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記駆動手段は、前記像担持体、前記現像装置および前記定着装置にギヤ列を介して駆動力を伝達する1台の駆動モータと、前記駆動モータの駆動力の前記トナー供給部材への伝達を入切するクラッチとを備え、
前記制御手段は、前記クラッチの入切により前記トナー供給部材の回転を制御することを特徴とするものである。
【0017】
かかる構成によれば、制御手段の制御によるクラッチの入切動作でトナー供給部材の回転を制御することにより、像担持体および定着ローラの駆動を含めて1台の駆動モータで対応することができ、トナー供給部材の駆動を専用の駆動モータで行うようにした場合に比較し、部品点数の削減に貢献する。
【0018】
請求項3記載の発明は、静電潜像に沿ったトナー像が形成される像担持体と、前記像担持体に供給するべきトナーを攪拌するトナー供給部材を備えた現像装置と、前記像担持体から転写された用紙上のトナー像に加熱による定着処理を施すべく通電発熱体を備えた定着装置とが装置本体に内装されてなる画像形成装置において、前記通電発熱体への電力の供給をオン・オフする電源スイッチと、前記定着装置の所定の部位の温度を検出する温度センサと、前記トナー供給部材を駆動させたり停止させたりする駆動手段と、前記像担持体の周面に対して帯電処理を施す帯電手段と、前記駆動手段を制御する制御手段とが備えられ、前記制御手段は、前記電源スイッチがオンされた状態で前記帯電手段へ電力が供給されている間だけ、前記駆動手段へ向けて前記トナー供給部材を駆動させるための制御信号を出力することを特徴とするものである。
【0019】
かかる構成によれば、画像形成装置が通常モードに設定された状態において、帯電手段への電力供給で検出された、画像形成処理(具体的には像担持体の表面に静電潜像を形成させる処理)が行われている間だけ現像装置のトナー供給部材が駆動されるため、画像形成処理が行われていないにも拘わらずトナー供給部材の無駄な駆動でトナーが劣化するような不都合の発生が回避される。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記駆動手段は、前記像担持体、前記現像装置および前記定着装置にギヤ列を介して駆動力を伝達する1台の駆動モータと、前記駆動モータの駆動力の前記トナー供給部材への伝達を入切するクラッチとを備え、前記制御手段は、前記クラッチへ向けて入切の制御信号を出力することを特徴とするものである。
【0021】
かかる構成によれば、現像装置のトナー供給部材の駆動・停止をクラッチの入切操作により1台の駆動モータで対応することができ、トナー供給部材の駆動を専用の駆動モータで行うようにした場合に比較し、部品点数の削減に貢献する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る画像形成装置によれば、画像形成装置のスタートアップ時またはスリープモードから通常モードへのモード変更時であって、定着装置および現像装置のエージング(馴らし運転)が完了した後に定着装置が予め設定された所定の温度に到達しておらず、従って、定着装置がその機能を発揮し得ない状態であるときに、現像装置のトナー供給部材は駆動されないようになされているため、トナー供給部材の無駄な駆動でトナーが劣化するような不都合を回避することができ、結果として劣化したトナーで適正な画像形成処理を行うことができなくなるような不都合の発生を有効に防止することができる。
【0023】
また、画像形成装置が通常モードに設定された状態で帯電手段への電力供給が中断されて画像形成処理の実行されないときにもトナー供給部材が駆動されないため、トナー供給部材の無駄な駆動でトナーが劣化するような不都合の発生を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態の外観を示す斜視図であり、図2は、その内部構造の一実施形態を示す正面断面視の説明図である。なお、図1および図2においてX−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
【0025】
本実施形態で例示した画像形成装置10は、いわゆる胴内排紙型と称される複写機であり、装置本体11に画像形成部12(図2)と、定着部(定着装置)13(図2)と、用紙貯留部14と、排紙部15と、画像読取部16と、操作部17とがそれぞれ形成されている。そして、排紙部15は、画像読取部16の下部で装置本体11の一部が凹没されることによって形成され、これにより当該画像形成装置10が胴内排紙型と称されている。
【0026】
前記装置本体11は、外観視で直方体状を呈した下部本体111と、この下部本体111の上方に対向配置された扁平な直方体状を呈する上部本体112と、この上部本体112と前記下部本体111との間に介設された連結部113とを備えている。前記連結部113は、下部本体111と上部本体112との間に排紙部15を形成させた状態で両者を互いに連結するための構造物であり、下部本体111の左部から立設されている。前記上部本体112は、その左部がかかる連結部113の上端部に支持されている。
【0027】
そして、前記下部本体111には、画像形成部12、定着部13および用紙貯留部14が内装されているとともに、前記上部本体112には画像読取部16が装着されている。前記操作部17は、本実施形態においては、図1に示すように、上部本体112の前縁部から前方に向かって突設されている。
【0028】
用紙貯留部14は、装置本体11に対して挿脱自在の用紙カセット141を有している。この用紙カセット141には用紙束P1(図2)が貯留されている。そして、画像形成処理が行われるに際し、この用紙束P1から用紙Pが1枚ずつ繰り出され、画像形成部12へ送り込まれて当該用紙Pに画像形成処理(印刷処理)が施される。本実施形態では、用紙カセット141は2段で設けられている。
【0029】
前記排紙部15は、下部本体111と上部本体112との間に形成されている。かかる排紙部15は、下部本体111の上面に形成された胴内排紙トレイ151を有し、画像形成部12からのトナー画像が転写された用紙Pは、連結部113の下部からこの胴内排紙トレイ151へ向けて排出される。
【0030】
前記画像読取部16は、上部本体112の上面開口に装着された、原稿を載置するためのコンタクトガラス161と、このコンタクトガラス161に載置された原稿を押さえる開閉自在の原稿押さえカバー162と、コンタクトガラス161に載置された原稿の画像を走査する走査機構163(図2)とを備えている。
【0031】
そして、走査機構163によって読み取られた原稿画像のアナログ情報は、デジタル信号に変換された後に後述する露光装置123へ向けて出力され、画像形成処理に供される。
【0032】
前記操作部17は、画像形成処理に関する処理情報を入力操作するためのものであり、電源スイッチ170や、用紙Pの処理枚数等を入力するためのテンキー171(図1)やその他の各種の操作キー、タッチ入力を行ったりコメントを文字出力するためのLCD(Liquid crystal display)172、さらには画像形成処理の開始を告げるスタートキー173(図1)等が設けられている。そして、スタートキー173が押釦されることにより、原稿画像の読み取りから始まり、トナー像の転写された用紙Pの排出までの一連の具体的な画像形成処理が実行される。
【0033】
また、下部本体111の右面には、用紙貯留部14の直上位置に手差しトレイ18が設けられている。この手差しトレイ18は、下部が支持軸181回りに回動可能に軸支され、手差しの給紙口を閉止するべく起立した閉止姿勢と、右方へ向かって突出した開放姿勢との間で姿勢変更可能とされている。かかる手差しトレイ18は、開放姿勢に姿勢設定された状態で1枚ずつの用紙Pの手差しに供される。
【0034】
このような手差しトレイ18と後述する用紙縦搬送路101(図2)との間には搬送ユニット184(図2)と、中継ユニット185とが設けられ、手差しトレイ18から手差しで給紙された用紙Pは、これら搬送ユニット184および中継ユニット185を介して用紙縦搬送路101へ導入され、この用紙縦搬送路101を上昇して感光体ドラム(像担持体)121と後述する転写ローラ125との間のニップ部へ向けて送り出される。
【0035】
また、前記下部本体111の左面には、開閉可能なメンテナンス用のメンテナンスドアー19が設けられているとともに、このメンテナンスドアー19の直上位置には、開閉可能な胴外排紙トレイ152が設けられている。画像形成部12で印刷処理が完了した用紙Pは、この胴外排紙トレイ152および前記胴内排紙トレイ151のいずれかに選択的に排出される。
【0036】
以下、図2を基に画像形成装置10の内部構造について詳細に説明する。図2に示すように、前記画像形成部12には、その略中央部に感光体ドラム121が設けられている。この感光体ドラム121は、ドラム心回りに時計方向に向けて回転しながらその直ぐ右方位置に設けられた帯電器(帯電手段)122により周面が一様に帯電される。
【0037】
そして、前記画像読取部16で読み取られた原稿画像の画像情報に基づく露光装置123からのレーザビームにより感光体ドラム121の周面に静電潜像が形成される。この静電潜像に向けて感光体ドラム121の下方に設けられた現像装置20から現像剤(以下、トナーという)が供給され、これによって感光体ドラム121の周面に静電潜像に沿ったトナー像が形成される。
【0038】
因みに、現像装置20には、その上部にトナーカートリッジ25が着脱可能に装着されている。そして、現像装置20内のトナー量が予め設定された下限値を下回ると、そのことが現像装置20内に設けられたトナー下限値センサ71により検出され、この検出結果に基づきトナーがトナーカートリッジ25から予め設定された上限値を超えるまで現像装置20へ補給される。トナー量の上限値は、現像装置20内に設けられたトナー上限値センサ72によって検出される。これらトナー下限値センサ71およびトナー上限値センサ72は、後述する制御手段60によるクラッチ50の入切制御で重要な役割を果たすものである。
【0039】
トナー像が形成された感光体ドラム121には、用紙貯留部14のいずれかの用紙カセット141から送り出され、上下方向に延びた用紙縦搬送路101を上昇した用紙Pが、タイミングを取るためのレジストローラ対142を介して送り込まれる。そして、この用紙Pには、感光体ドラム121の左方で当該感光体ドラム121と対向配置された転写ローラ125の作用で感光体ドラム121の周面のトナー像が転写される。トナー像が転写された用紙Pは感光体ドラム121から分離されて定着部13へ送り込まれる。
【0040】
用紙Pに対するトナー像の転写処理が完了した感光体ドラム121は、時計方向へ向かう回転が継続されることにより、その直上位置に設けられたクリーニング装置126によってその周面が清浄化処理され、つぎの画像形成処理のために帯電器122へ向かうことになる。
【0041】
前記定着部13は、その筐体133の内部にハロゲンランプ等の通電発熱体(加熱手段)を備えた定着ローラ131と、左方でこの定着ローラ131と対向配置された加圧ローラ132とが設けられることにより構成されている。画像形成部12から送り込まれた用紙Pは、これら定着ローラ131と加圧ローラ132との間のニップ部を通過しながら熱を得てトナー像の定着処理が施される。
【0042】
筐体133の適所には、定着部13の定着ローラ131の表面の温度を検出するための定着部温度センサ(検出手段)73が設けられているとともに、感光体ドラム121の近傍には、画像形成処理を実行する上での環境温度を検出するための装置本体内温度センサ74が設けられている。これら定着部温度センサ73および装置本体内温度センサ74の検出温度は、後述する制御手段60によるクラッチ50のオン、オフ制御で重要な役割を果たすものである。
【0043】
定着処理後の用紙Pは、当該用紙Pが片面印刷用のものである場合には、定着部13の上方に設けられた排紙搬送路102を介して選択的に排紙部15の胴内排紙トレイ151へ排出されたり、胴外排紙トレイ152へ排出されたりする。
【0044】
一方、定着処理後の用紙Pが片面の印刷処理が完了した両面印刷用のものである場合には、排紙搬送路102の上方に設けられた往復搬送路103を介して前半が胴内排紙トレイ151の上方に形成された一時退避空間153に排紙されたのち前記メンテナンスドアー19内に設けられた上下方向に延びる逆送搬送路104を介して逆送され、表裏が反転した状態で再度画像形成部12に供給されて裏面側に印刷処理が施される。両面印刷が完了した用紙Pは、胴内排紙トレイ151または胴外排紙トレイ152へ排出される。
【0045】
メンテナンスドアー19には、前記逆送搬送路104の直ぐ右側に、画像形成部12の左面に対向されるカバー部材191が設けられている。このカバー部材191は、メンテナンスドアー19の右面側に包持されている。そして、メンテナンスドアー19が閉止姿勢に姿勢設定された状態で、カバー部材191の右面と画像形成部12の左面との間に用紙カセット141や手差しトレイ18から給紙された用紙Pを搬送するための前記用紙縦搬送路101の一部が形成されている。
【0046】
このようなメンテナンスドアー19が設けられるのは、画像形成部12の左面に対応した用紙縦搬送路101で紙詰りが生じたときに、メンテナンスドアー19を開放姿勢に姿勢変更させて詰まった用紙Pを外部に露出させ、これによって詰まった用紙Pを取り除くことができるようにするためである。
【0047】
図3は、現像装置20およびギヤ機構40の一実施形態を説明するための一部切り欠過斜視図である。また、図4は、図3のIV線視の正面図であり、図3には示さなかった定着部13も示している。なお、図3および図4におけるXおよびYによる方向表示は、図1の場合と同様(−X:左方、+X:右方、−Y:前方、+Y:後方)である。因みに、図3においては、図示されているギヤが駆動モータ(駆動手段)30の陰になって見難くなるのをなくすために、駆動モータ30を故意に現像装置20から離間させて描いている。
【0048】
まず、図3に示すように、現像装置20は、トナーを攪拌しつつ循環搬送するための前後方向に延びた左右方向一対のスパイラルフィーダ(攪拌部材)21と、このスパイラルフィーダ21の左方位置に配設された前後方向に延びる汲み上げローラ22と、この汲み上げローラ22の左上位置に配設された現像ローラ23とが前後方向に長尺の現像装置本体29に内装されてなる基本構成を有している。
【0049】
なお、本発明に係るトナー供給部材は、トナー攪拌部材であるスパイラルフィーダ21、トナーを汲み上げる汲み上げローラ22およびトナーを感光体ドラム121へ供給する現像ローラ23をそれぞれ含むこれらの上位概念の用語である。
【0050】
前記スパイラルフィーダ21は、現像装置本体29の前後の側板291を貫通したフィーダ軸211と、このフィーダ軸211に同心で外嵌された螺旋状のスパイラルフィン212とを備えている。左右のスパイラルフィン212は、螺旋の向きが同一に設定されている。そして、各スパイラルフィーダ21が互いに逆方向に向けて回転されることにより、現像装置本体29内のトナーは、各スパイラルフィン212によってそれぞれ逆方向に搬送され、現像装置本体29内を攪拌されつつ循環移動する。
【0051】
前記汲み上げローラ22は、当該汲み上げローラ22より左方上部に位置した現像ローラ23に向けてトナーを汲み上げる働きをするものである。かかる汲み上げローラ22は、左側のスパイラルフィーダ21に隣接して設けられた前後方向に延びるローラ軸221と、このローラ軸221に同心で一体回転可能に外嵌されたローラ本体222とを備えて構成されている。ローラ軸221の両端部は、現像装置本体29の各側板291に摺接状態で貫通されている。この汲み上げローラ22がローラ軸221回りに反時計方向に回転することにより、現像装置本体29内のトナーは、現像ローラ23へ向けて汲み上げられる。
【0052】
前記現像ローラ23は、現像ローラ23によって汲み上げられたトナーを感光体ドラム121へ向けて供給する働きをするものである。かかる現像ローラ23は、左側で汲み上げローラ22の左上位置で前後方向に延びるように配置されたローラ軸231と、このローラ軸231に同心で一体回転可能に外嵌された現像ローラ本体232とを備えて構成されている。ローラ軸231の両端部は、現像装置本体29の各側板291に摺接状態で貫通されている。かかる現像ローラ23がローラ軸231回りに反時計方向に回転することにより、現像ローラ本体232の周面に積層状態のトナーが感光体ドラム121の周面へ向けて供給されることになる。
【0053】
このような現像装置20は、駆動モータ30の駆動力が伝達されることによるスパイラルフィーダ21、汲み上げローラ22および現像ローラ23の回転により駆動されるとともに、駆動モータ30の駆動力は、ギヤ機構40を介して感光体ドラム121の駆動および定着部13の駆動にも伝達される。以下、図3および図4に基づきギヤ機構40について説明する。
【0054】
図3および図4に示すように、ギヤ機構40は、駆動モータ30の駆動力が直に伝達される駆動ギヤ41と、この駆動ギヤ41に噛合した第1アイドルギヤ421と、この第1アイドルギヤ421に対向配置された第1フィーダギヤ431と、この第1フィーダギヤ431および前記第1アイドルギヤ42間に介設されたクラッチ50と、前記第1フィーダギヤ43に噛合する第2フィーダギヤ432と、この第2フィーダギヤ432に噛合する第2アイドルギヤ422と、この第2アイドルギヤ422に噛合する汲み上げローラギヤ44と、この汲み上げローラギヤ44に噛合する第3アイドルギヤ423と、この第3アイドルギヤ423に噛合する現像ローラギヤ45と、前記駆動ギヤ41に噛合する第4アイドルギヤ424と、この第4アイドルギヤ424に噛合する第5アイドルギヤ425と、この第5アイドルギヤ425に噛合する第6アイドルギヤ426と、この第6アイドルギヤ426に噛合する第7アイドルギヤ427と、この第7アイドルギヤ427に噛合する感光体ギヤ46とを備えている。
【0055】
また、ギヤ機構40は、これらのギヤおよびクラッチ50に加えて、図4に示すように、前記駆動ギヤ41に同心で一体に付設された第1スプロケット471と、上部でこの第1スプロケット471と対向配置された第2第2スプロケット472と、これら第1および第2スプロケット471,472間に架設されたチェーン473と、前記第2第2スプロケット472に同心で一体回転可能に付設された第7アイドルギヤ427と、この第7アイドルギヤ427に噛合する定着ローラギヤ481と、この定着ローラギヤ481に噛合する加圧ローラギヤ482とを備えている。
【0056】
前記駆動モータ30は、現像装置20の現像装置本体29の右側の前方(図4の紙面の表側)の上方位置において、駆動軸31を前後方向(図4の紙面に直交する方向)に延びるように姿勢設定された状態で装置本体11の図略のフレームに固定されている。
【0057】
前記駆動ギヤ41および第1スプロケット471は、現像装置20の現像装置本体29の右側の前方(図4の紙面の表側)の上方位置において前記駆動軸31に同心で外嵌固定されている。
【0058】
前記第1アイドルギヤ421は、現像装置20の現像装置本体29の前方側の側板291から前方へ向けて突設された第1アイドル軸421a回りに相対回転可能に軸支されている。
【0059】
前記第1フィーダギヤ431は、前記クラッチ50を介してその下部で第1アイドルギヤ421と対向配置されている。かかる第1フィーダギヤ431は、側板291を貫通して前方へ突出した前記右側のスパイラルフィーダ21のフィーダ軸211に同心で一体回転可能に軸支されている。
【0060】
第1フィーダギヤ431に噛合する前記第2フィーダギヤ432は、第1フィーダギヤ431の左方位置で側板291を貫通して前方へ突出した前記左側のスパイラルフィーダ21のフィーダ軸211に同心で一体回転可能に軸支されている。
【0061】
第2フィーダギヤ432に噛合する前記第2アイドルギヤ422は、第2フィーダギヤ432の斜め左上に設けられている。かかる第2アイドルギヤ422は、側板291から前方に向けて突設された第2アイドル軸422a回りに相対回転可能に軸支されている。
【0062】
第2アイドルギヤ422に噛合する前記汲み上げローラギヤ44は、第2アイドルギヤ422の左方位置において前記側板291を貫通して前方へ突出した汲み上げローラ22のローラ軸221回りに一体回転可能に軸支されている。
【0063】
汲み上げローラギヤ44に噛合する前記第3アイドルギヤ423は、汲み上げローラギヤ44の直上位置に設けられている。かかる第3アイドルギヤ423は、側板291から前方に向けて突設された第3アイドル軸423a回りに相対回転可能に軸支されている。
【0064】
第3アイドルギヤ423に噛合する前記現像ローラギヤ45は、当該第3アイドルギヤ423の直ぐ左位置に設けられている。かかる現像ローラギヤ45は、側板291から前方へ向けて突設された前記現像ローラ23のローラ軸231に同心で一体回転可能に軸支されている。
【0065】
前記第4〜第7アイドルギヤ424〜427は、装置本体11の図略のフレームに設けられた前後方向に延びる第4〜第7アイドル軸424a〜427aにそれぞれ相対回転可能に軸支されている。これら第4〜第7アイドルギヤ424〜427は、直列状態で互いに噛合しているとともに、第4アイドルギヤ424は、駆動ギヤ41に噛合し、第6アイドルギヤ426は感光体ギヤ46に噛合している。
【0066】
前記感光体ギヤ46は、感光体ドラム121の中心位置に同心で一体的に設けられたドラム軸121aに一体回転可能に軸支されている。
【0067】
前記第1スプロケット471との間をチェーン473を介して連結された第2第2スプロケット472は、前記定着部13に対応して現像装置本体29の左斜め上に設けられている。かかる第2第2スプロケット472は、装置本体11の図略のフレームから前後方向に向けて突設されたスプロケット軸472a回りに相対回転可能に軸支されている。前記第7アイドルギヤ427は、かかる第2第2スプロケット472に同心で一体回転可能に連結されている。
【0068】
かかる第7アイドルギヤ427に噛合する定着ローラギヤ481は、装置本体11の図略のフレームに軸心回りに回転可能に支持された定着ローラギヤ軸481a回りに一体回転可能に軸委されているとともに、この定着ローラギヤ481に噛合する加圧ローラギヤ482は、同加圧ローラギヤ軸482a回りに一体回転可能に軸支されている。従って、定着ローラ131と加圧ローラ132とは、互いに逆方向に回転することになる。
【0069】
前記クラッチ50は、本実施形態においては、電磁作用によって回転力を伝達したり、遮断したりする、いわゆる電磁クラッチが採用されている。かかるクラッチ50は、上縁部に駆動ギヤ41の下部を挿入し得る上縁部開口を有するとともに、下縁部に第1フィーダギヤ431の上部を挿入し得る下縁部開口を備えた扁平な直方体状を呈するケーシング51と、このケーシング51に付設されたクラッチの入切を行う電磁コイル52とを備えている。
【0070】
前記ケーシング51には、第1アイドルギヤ421に噛合する図略のアイドルギヤ側クラッチギヤと、このクラッチギヤと同軸で設けられた図略のフィーダギヤ側クラッチギヤと、これら両クラッチギヤ間に介設された図略のクラッチ板とが内装されている。そして、普段は図略の付勢手段の付勢力でクラッチ板が両クラッチギヤを摩擦力により連結し、これによって両クラッチギヤが一体回転し得るようになっている。
【0071】
これに対し、後述する制御手段60から制御信号が電磁コイル52へ向けて出力されると、これによる当該電磁コイル52の励磁によって前記クラッチ板が吸着されることによりクラッチの連結が付勢手段の付勢力に抗して解除され、これによって第1アイドルギヤ421の駆動回転が第1フィーダギヤ431へ伝達されなくなる。従って、この状態では、駆動モータ30の駆動力は、クラッチ50を介して第1フィーダギヤ431へ伝達されることはない。
【0072】
このように構成されたギヤ機構40によれば、クラッチ50が入っている状態では、駆動モータ30の駆動力は、駆動ギヤ41、第1アイドルギヤ421およびクラッチ50を介して第1および第2フィーダギヤ431,432へ伝達され、これによって一対のスパイラルフィーダ21は互いに反対方向に回転し、現像装置20の現像装置本体29内のトナーを攪拌しながら循環搬送する。
【0073】
そして、第2フィーダギヤ432のフィーダ軸211回りの回転は、第2アイドルギヤ422を介して汲み上げローラギヤ44へ伝達されるとともに、この汲み上げローラギヤ44の回転は、第3アイドルギヤ423を介して現像ローラギヤ45に伝達される。これにより汲み上げローラ22は、ローラ軸221回りに反時計方向に回転するとともに、現像ローラ23もローラ軸231回りに反時計方向に回転し、これによってトナーは現像ローラ本体232の周面から感光体ドラム121の周面に向けて供給される。
【0074】
一方、駆動モータ30の駆動力は、駆動ギヤ41、第4〜第7アイドルギヤ424〜427および感光体ギヤ46を介して感光体ドラム121へ伝達されるため、当該感光体ドラム121は、ドラム軸121a回りに時計方向に向けて回転し、この回転している感光体ドラム121の周面に現像ローラ23からのトナーが供給されることになる。
【0075】
さらに、駆動モータ30の駆動力は、駆動ギヤ41,第1スプロケット471、チェーン473、第2第2スプロケット472および第7アイドルギヤ427を介して定着ローラギヤ481に伝達されるとともに、当該定着ローラギヤ481を介して加圧ローラギヤ482に伝達され、これによる定着ローラ131および加圧ローラギヤ482の定着ローラギヤ軸481aおよび加圧ローラギヤ軸482a回りの回転で定着ローラ131および加圧ローラ132は互いに反対方向へ向けて回転することになる。
【0076】
これに対し、後述の制御手段60からの制御信号が電磁コイル52へ向けて出力されていないときには、クラッチ50内のクラッチ板は、付勢手段の付勢力で両クラッチギヤを連結するため、駆動モータ30の駆動力は、現像装置20内のスパイラルフィーダ21、汲み上げローラ22および現像ローラ23に伝達されるとともに、感光体ドラム121並びに定着ローラ131および加圧ローラ132へも伝達される。
【0077】
そして、本発明においては、現像装置20内でトナーが過攪拌されると、当該トナーが劣化し、これによって適正なトナー像を形成することができなくなるのを防止するべく、画像形成処理において所定の条件が満たされたとき、制御手段60の制御によってスパイラルフィーダ21の駆動を停止させるようにしている。
【0078】
具体的にスパイラルフィーダ21の駆動を停止させるための第1の条件は、電源スイッチ170がオンされて所定のエージング処理(馴らし運転)が実行された後に、定着部温度センサ73が予め設定された所定の条件を満足する温度に到達するまでの間である。因みに、前記電源スイッチ170のオン操作は、画像形成装置10の運転に関し、電力消費を節約するべく、待機電力の供給のみを残して他への電力の供給をオフする、いわゆるスリープモードに設定された状態から通常モードにモード変更されたときの電源オン操作を含むものである。
【0079】
ついでスパイラルフィーダ21の駆動を停止させるための第2の条件は、画像形成装置10の運転モードが通常モードに設定され、かつ、具体的に画像形成処理が実行されつつあるときであって、帯電器122へ電力が供給されていない間である。
【0080】
そして、これら第1および第2の条件のいずれかが満たされたときには、制御手段60からの制御信号によって付勢手段の付勢力に抗してクラッチ50が切られ、これによって駆動モータ30の駆動力がスパイラルフィーダ21へ伝達されないようになされている。
【0081】
図5は、制御手段60によるスパイラルフィーダ21の駆動および停止の制御を説明するためのブロック図である。図5に示すように、制御手段60は、いわゆるマイクロコンピュータによって形成されており、演算処理装置であるCPU(Central processing unit)61と、このCPU61に付設され、かつ、プログラムや不変定数などが記憶された読み出し専用の記憶装置であるROM(Read only memory)62と、CPU61に付設され、かつ、演算処理に必要な中間的な数値等を一時的に記憶するための読み書き自在の記憶装置であるRAM(Randam accses memory)63とを備えている。
【0082】
前記CPU61は、電源投入判別部611、画像形成処理中判別部612および制御信号出力部613とを備えている。
【0083】
前記電源投入判別部611は、前記電源スイッチ170が操作されて電源が投入(スリープモードに設定されていたときに通常モードへ戻すべく行われる電源オンを含む)されたことを電源スイッチ170からの信号により判別し、引き続きクラッチ50を入れるタイミングを判別するものである。このクラッチ50入切の判別は、電源スイッチ170がオン操作されたときを始点として前記定着部温度センサ73(図2)が検出した定着部13の温度(定着部温度T1)が予め設定された一定温度(第1の温度)Tuを超えるか否かと、定着部温度T1と前記装置本体内温度センサ74(図2)が検出した現像装置本体29内の画像形成環境の温度(装置本体内温度T2)との差が予め設定された閾値T0を超えるか否か(定着部温度T1が第2の温度(装置本体内温度T2+閾値T0)を超えるか否か)とによって行われる。閾値T0は、本実施形態においては、10℃に設定されている。
【0084】
そして、定着部温度T1が一定温度Tuを超えていないとき(ステップS1でNO)は、定着部温度T1と装置本体内温度T2との差が閾値T0を超えていない場合(「0<T1−T2≦T0」のとき)にクラッチ50が入れられたままとされるため、駆動モータ30の駆動力は、クラッチ50を介してスパイラルフィーダ21へ伝達され、これによって現像装置本体29内のトナーは、スパイラルフィーダ21により攪拌されることになる。
【0085】
ついで、「T1−T2」の値が閾値T0の値を超えると(ステップS2でNO)、現像装置20におけるエージング処理が完了したと判断されてクラッチ50が切られ(ステップS4)、ステップS1へ戻される。
【0086】
そして、ステップS1へ戻されて定着部温度センサ73の検出温度Tが一定温度Tuを超えた(「T>Tu」)とき(ステップS1でYES)、電源投入判別部611は、定着処理が可能になるまで定着部13の温度が上げられたと判断し、このことを示す指令信号を制御信号出力部613へ向けて出力するため、これを受けた制御信号出力部613は、電磁コイル52へ向けてクラッチ50をいれるべき制御信号を出力する。以後、クラッチ50が入れられた状態で画像形成処理が実行される。
【0087】
以上のように、電源投入判別部611は、電源スイッチ170が押釦されること(スリープモードから通常モードにモード変更される場合を含む)によって画像形成処理が行い得るように関連する各機器が立ち上がるときに実行されるクラッチ50の入切を制御するためのものであるのに対し、画像形成処理中判別部612は、通常モードにおいて次々と画像形成処理が実行されつつある場合におけるクラッチ50の入切を制御するためのものである。
【0088】
以下、画像形成処理中判別部612による制御について説明する。画像形成処理の実行中においては、帯電器122に対して電力が供給されているか否かの信号が当該帯電器122から画像形成処理中判別部612へ向けて常時出力されている。そして、電力が帯電器122へ供給されている間に限って画像形成処理中判別部612は、クラッチ50の電磁コイル52へ向けて制御信号出力部613を介して制御信号を出力し、これによってクラッチ50を入れるようになされている。
【0089】
また、画像形成処理中判別部612は、現像装置20へトナーカートリッジ25からトナーが補給されつつあるときは、クラッチ50が入れられる。このようにされるのは、トナーカートリッジ25からトナーが現像装置20内へ補給されている間は、トナーを現像装置本体29内に均等に行き渡らせる必要があり、そのためにスパイラルフィーダ21が駆動されるのである。
【0090】
このような制御を行うために、現像装置本体29内には、前記トナー下限値センサ71およびトナー上限値センサ72(図2、図3)が設けられている。そして、トナー下限値センサ71がトナーの下限値を検出した検出信号(この検出信号に基づき排紙部15から現像装置20へトナーが補給される制御が行われるが、ここではその詳細な説明は省略する)に基づき、画像形成処理中判別部612は、トナー上限値センサ72がトナーの上限を検出するまでの間、制御信号出力部613を介して電磁コイル52へクラッチ50を入れるための制御信号が出力される。トナー上限値センサ72がトナーの上限を検出したときは、画像形成処理中判別部612は、制御信号出力部613を介して電磁コイル52へクラッチ50を切るための制御信号を出力する。
【0091】
以下、図6および図7を基に、制御手段60によるクラッチ50の入切制御の作用について説明する。図6は、制御手段60の電源投入判別部611によるクラッチ50の入切制御の作用を説明するためのフローチャートであり、図7は、制御手段60の画像形成処理中判別部612によるクラッチ50の入切制御の作用を説明するためのフローチャートである。これらのフローチャートにおいては、電源スイッチ170がオンされたときをスタート時点としている。
【0092】
まず、図6に示す電源投入判別部611による制御においては、まず、ステップS1で定着部温度センサ73の検出信号による定着部温度T1と、予め設定された一定温度Tuとが比較される。そして、定着部温度T1が一定温度Tuより低いときは、定着部温度T1から装置本体内温度T2を差し引いた値が閾値T0より低いか否かが判別される(ステップS2)。「T1−T2」が閾値T0より低いか等しいとき、すなわち定着部13の温度が十分に上がり切っていないとき(ステップS2でYES)は、クラッチ50が入れられ(ステップS3)、ステップS2へ戻される。
【0093】
一方、定着部温度T1から装置本体内温度T2を差し引いた値が閾値T0を超えたとき、すなわち定着部13が十分に昇温されたとき(ステップS2でNO)、クラッチ50が切られ(ステップS4)、引き続きステップS1へ戻される。
【0094】
そして、定着部温度T1が一定温度Tuよりも高くなっているとき(ステップS1でYES)、すなわち、定着部13が十分に高温になっているとき(ステップS1でYES)は、切られていたクラッチ50が入れられることになる(ステップS5)。
【0095】
ついで、図7に示す画像形成処理中判別部612による制御においては、まず、ステップS11において帯電器122がオンされて、実際に画像形成処理が開始されると(ステップS11でYES)、同時にクラッチ50が入れられ(ステップS12)、ステップS11へ戻され、以後両ステップ間でループされる。これによって実際に画像形成処理が実行されている間、駆動モータ30の駆動力は、クラッチ50を介してスパイラルフィーダ21に伝達され、これによって現像装置本体29内のトナーに攪拌処理が施される。
【0096】
そして、このループ中にステップS11で帯電器122がオフされ(ステップS11でNO)、そのジョブにおける画像形成処理が終了すると、クラッチ50が切られる(ステップS13)ため、トナーに対する不必要な攪拌処理が行われることはない。
【0097】
ついで、ステップS14においてトナー下限値センサ71からの検出信号により、現像装置20内のトナー量が下限値以下になっているか否かが問われ、下限値以下になっていないとき、すなわち現像装置20内には現像処理に供されるべきトナーが存在するとき(ステップS14でNO)には、クラッチ50が切られた状態(ステップS15)を維持しつつステップS11へ戻される。
【0098】
これに対し、現像装置20内のトナー量が下限値以下にまで減少したとき、すなわちトナー不足で画像形成処理を実行することができないとき(ステップS14でYES)には、ステップS16でクラッチ50が入れられ(具体的には、電磁コイル52への電力の供給が停止され、図略の付勢手段の付勢力でクラッチが入れられ)、制御が終了する。
【0099】
以上詳述したように、本実施形態に係る画像形成装置10においては、制御手段60によるクラッチ50の入切制御に関し、CPU61に設けられた電源投入判別部611による制御およびCPU61に設けられた画像形成処理中判別部612による制御の2種類の制御を行うように構成されている。これらの制御で共通している前提事項として、駆動モータ30の駆動力のスパイラルフィーダ21への伝達を入切するクラッチ50が設けられているということを挙げることができる。
【0100】
そして、まず電源投入判別部611による制御においては、定着部13の所定の部位の温度を検出する定着部温度センサ73と、クラッチ50の入切を制御する制御手段60とが備えられ、制御手段60は、電源スイッチ170がオンされた後、エージング処理(馴らし運転(予熱運転))のためにクラッチ50が入れられた状態とされ、これによるスパイラルフィーダ21の駆動で現像装置20内のトナーは攪拌される。この姿勢変更手段50が入れられた状態は、定着部温度センサ73の検出温度(定着部温度T1)が予め設定された第1の温度(「定着部温度T1−装置本体内温度T2≦閾値T0」の関係を満足するT1の値)に到達するまでの間継続される。そして、定着部温度T1が装置本体内温度T2に閾値T0の値を加えた温度を超えたときに、電源投入判別部611からクラッチ50へ向けて当該クラッチ50が切られるための制御信号を出力するようになされている。
【0101】
かかる構成によれば、電源スイッチ170がオンされることにより、画像形成装置がスタートアップしたときの立ち上がりのエージング処理時に、定着部13に電力が供給されて予め設定された所定の温度にまで昇温される。
【0102】
そして、定着部13の温度を検出する定着部温度センサ73が、予め設定された第1の温度を検出するまでの間は、制御手段60から出力された制御信号により現像装置20のスパイラルフィーダ21に設けられたクラッチ50が入れられたままとされるため、現像装置20のエージング処理が実行されることになる。そして、定着部温度センサ73が定着部13の第1の温度を検出すると、次の第2の温度(一定温度Tu)を検出するまでの間クラッチ50は切られるため、駆動手段の駆動力がスパイラルフィーダ21に伝達されることはない。
【0103】
従って、スパイラルフィーダ21は、定着部13の温度が第1の温度から第2の温度に到達するまでの間について駆動することがないため、画像形成処理において現像装置20が未だトナーを感光体ドラム121へ供給する状態になっていないにも拘わらずスパイラルフィーダ21の無駄な駆動でトナーが劣化するような不都合を回避することができ、結果として劣化したトナーで適正な画像形成処理を行うことができなくなるような不都合の発生を有効に防止することができる。
【0104】
また、画像形成処理中判別部612による制御においては、画像形成ユニットに設けられ感光体ドラム121の周面に対して帯電処理を施す帯電器122と、クラッチ50の入切を制御する制御手段60とが備えられ、電源スイッチ170がオンされた状態で制御手段60は、帯電器122へ電力が供給されている間だけ、クラッチ50へ向けて当該クラッチ50が入れられるための制御信号を出力するようになされている。
【0105】
かかる構成によれば、電源スイッチ170がオンされて帯電器122へ電力が供給されている間、すなわち実際に画像形成処理が実行される間だけ制御手段60は、クラッチ50が入れられるための制御信号を出力するため、画像形成処理の実行中には、駆動モータ30の駆動力は、クラッチ50を介して現像装置20のスパイラルフィーダ21に伝達され、これによるスパイラルフィーダ21の駆動で現像装置20内のトナーは攪拌される。
【0106】
そして、帯電器122への電力の供給が中断されて画像形成処理の実行が中断されたとき、制御手段60は、現像装置20のスパイラルフィーダ21のクラッチ50を切るための制御信号を出力するため、たとえ駆動モータ30が駆動して他の可動部材に駆動力を伝達している状態であっても、当該駆動モータ30の駆動力がクラッチ50を介してスパイラルフィーダ21に伝達されることはないため、スパイラルフィーダ21の無駄な駆動でトナーが劣化するような不都合の発生を有効に防止することができる。
【0107】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0108】
(1)上記の実施形態においては、画像形成装置10として複写機を例に挙げて説明したが、本発明は、画像形成装置が複写機であることに限定されるものではなく、プリンタであってもよいし、ファクシミリ装置で宛てもよい。
【0109】
(2)上記の実施形態においては、画像形成装置10としてモノクロ印刷用のものを例に挙げて説明したが、本発明は、画像形成装置がモノクロ印刷用のものである限定されるものではなく、異なった色のトナー用の感光体ドラム121が複数並設されたカラー印刷用のものであってもよい。
【0110】
(3)上記の実施形態においては、像担持体として感光体ドラム121が適用されているが、感光体ドラム121に代えて無端ベルトを採用してもよい。
【0111】
(4)上記の実施形態におけるギヤ機構40は、図2に示すような画像形成処理用の各機器の配置レイアウトが採用され、かつ、図3に示すような現像装置20が採用された場合のローカルコンディションに応じたものを例示しただけであり、従って、当然のことながら各種の機器の配置レイアウトや現像装置のタイプによってギヤ機構の具体的な構成は異なってくる。しかしながら、いかなるギヤ機構が採用されたとしても、駆動モータ30と現像装置20のスパイラルフィーダ21との間にクラッチ50が介設され、かつ、所定の条件下で駆動モータ30の駆動力が、クラッチ50が切られることでスパイラルフィーダ21に伝達されないようにし、これによってトナーの過攪拌による劣化を防止し得るような構造のものは、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0112】
例えば、上記の実施形態においては、第1アイドルギヤ421をと第1フィーダギヤ431との間にクラッチ50が設けられているが、こうする代わりに駆動モータ30の駆動力をクラッチを介して第1フィーダギヤ431へ直接伝達するようにしてもよい。
【0113】
また、上記の実施形態においては、駆動モータ30の駆動力を、第1および第2スプロケッ471,472間に張設されたチェーン473を介して定着ローラギヤ481へ伝達するようになされているが、こうする代わりに例えば第6アイドルギヤ426と定着ローラギヤ481との間に複数のギヤを介設し、ギヤのみによって駆動モータ30の駆動力を定着ローラギヤ481へ伝達するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の内部構造の一実施形態を示す正面断面視の説明図である。
【図3】現像装置およびギヤ機構の一実施形態を説明するための一部切り欠過斜視図である。
【図4】図3のIV線視の正面図である。
【図5】制御手段によるスパイラルフィーダの駆動および停止の制御を説明するためのブロック図である。
【図6】制御手段によるクラッチの入切制御の作用を説明するためのフローチャートである。
【図7】制御手段の画像形成処理中判別部によるクラッチの入切制御の作用を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0115】
10 画像形成装置 101 用紙縦搬送路
102 排紙搬送路 103 往復搬送路
104 逆送搬送路 11 装置本体
111 下部本体 112 上部本体
113 連結部 12 画像形成部
121 感光体ドラム(像担持体)
121a ドラム軸 122 帯電器(帯電手段)
123 露光装置 125 転写ローラ
126 クリーニング装置 13 定着部(定着装置)
131 定着ローラ 132 加圧ローラ
133 筐体 14 用紙貯留部
141 用紙カセット 142 レジストローラ対
15 排紙部 151 胴内排紙トレイ
152 胴外排紙トレイ
153 一時退避空間 16 画像読取部
161 コンタクトガラス 162 原稿押さえカバー
163 走査機構 17 操作部
170 電源スイッチ 171 テンキー
172 LCD 173 スタートキー
18 手差しトレイ 181 支持軸
184 搬送ユニット 185 中継ユニット
19 メンテナンスドアー 191 カバー部材
20 現像装置 21 スパイラルフィーダ(トナー供給部材)
211 フィーダ軸 212 スパイラルフィン
22 汲み上げローラ(トナー供給部材)
221 ローラ軸 222 汲み上げローラ本体
23 現像ローラ(トナー供給部材)
231 ローラ軸 232 現像ローラ本体
25 トナーカートリッジ 29 筐体
291 側板 30 駆動モータ(駆動手段)
31 駆動軸 40 ギヤ機構
41 駆動ギヤ 421〜427 第1〜第7アイドルギヤ
421a〜427a 第1〜第7アイドル軸
43 フィーダギヤ 431 第1フィーダギヤ
432 第2フィーダギヤ 44 汲み上げローラギヤ
45 現像ローラギヤ 46 感光体ギヤ
471 第1スプロケット 472 第2スプロケット
472a スプロケット軸 473 チェーン
481 定着ローラギヤ 481a 定着ローラギヤ軸
482 加圧ローラギヤ 482a 加圧ローラギヤ軸
50 クラッチ 51 ケーシング
52 電磁コイル 60 制御手段
61 CPU 611 電源投入判別部
612 画像形成処理中判別部 613 制御信号出力部
71 トナー下限値センサ 72 トナー上限値センサ
73 定着部温度センサ(検出手段)
74 装置本体内温度センサ P 用紙
P1 用紙束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像に沿ったトナー像が形成される像担持体と、前記像担持体にトナーを供給するトナー供給部材を備えた現像装置と、前記像担持体から転写された用紙上のトナー像に加熱による定着処理を施す定着ローラを備えた定着装置とが装置本体に内装されてなる画像形成装置において、
前記定着ローラを加熱する加熱手段と、
前記定着ローラおよび前記トナー供給部材を回転させる駆動手段と、
前記定着ローラの表面温度を検出する検出手段と、
電源オン時またはスリープモードから前記定着ローラを第1の温度にするために当該定着ローラを加熱するとともに、前記定着ローラおよび前記トナー供給部材を回転させる予熱期間と、
前記予熱期間中に前記定着ローラが、前記第1の温度よりも低い、第2の温度に到達した時点で、前記トナー供給部材の回転を停止するように制御する制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記像担持体、前記現像装置および前記定着装置にギヤ列を介して駆動力を伝達する1台の駆動モータと、前記駆動モータの駆動力の前記トナー供給部材への伝達を入切するクラッチとを備え、
前記制御手段は、前記クラッチの入切により前記トナー供給部材の回転を制御することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
静電潜像に沿ったトナー像が形成される像担持体と、前記像担持体に供給するべきトナーを攪拌するトナー供給部材を備えた現像装置と、前記像担持体から転写された用紙上のトナー像に加熱による定着処理を施すべく通電発熱体を備えた定着装置とが装置本体に内装されてなる画像形成装置において、
前記通電発熱体への電力の供給をオン・オフする電源スイッチと、
前記定着装置の所定の部位の温度を検出する温度センサと、
前記トナー供給部材を駆動させたり停止させたりする駆動手段と、
前記像担持体の周面に対して帯電処理を施す帯電手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段とが備えられ、
前記制御手段は、前記電源スイッチがオンされた状態で前記帯電手段へ電力が供給されている間だけ、前記駆動手段へ向けて前記トナー供給部材を駆動させるための制御信号を出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記像担持体、前記現像装置および前記定着装置にギヤ列を介して駆動力を伝達する1台の駆動モータと、前記駆動モータの駆動力の前記トナー供給部材への伝達を入切するクラッチとを備え、
前記制御手段は、前記クラッチへ向けて入切の制御信号を出力することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−300740(P2009−300740A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155221(P2008−155221)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】