説明

画像形成装置

【課題】放電検出に要する時間を短縮し、使用者の利便性を高め、放電による感光体ドラムの損傷を減らして放電検出を頻繁に行っても印刷品質への影響を軽減する。
【解決手段】画像形成装置は、感光体ドラム9と、現像ローラ81と、回転位置の把握のための目印部材91と、を含む画像形成部3と、目印部材91の測定用のセンサ92と、現像ローラ81に電圧を印加する交流電圧印加部86と、現像ローラ−感光体ドラム間での放電発生を検出する検出部14と、感光体ドラム9及び現像ローラ81を回転させるモータと、制御部10と、ギャップが最も短くなる感光体ドラム9と現像ローラ81の回転位置を示す回転位置データを記憶する記憶部12と、を備え、放電検出時、制御部10は感光体ドラム9と現像ローラ81の回転位置をギャップが最も短くなる位置とした後、段階的にピーク間電圧を変化させ、放電を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ、ファクシミリ等のトナーを用いる画像形成装置には、感光体ドラムと、これに対向する現像ローラとが、ギャップを設けて配されるものがある。そして、例えば、現像ローラに直流と交流が重畳された、いわゆる現像バイアスが印加され、帯電したトナーが現像ローラから感光体ドラムに飛翔し、感光体ドラム上の静電潜像が現像され、現像されたトナー像が用紙に転写、定着されることで、印刷が行われる。
【0003】
そして、十分に帯電したトナーを感光体ドラムに供給し、形成される画像の濃度を確保し、現像効率を高めるには、現像ローラに印加する交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク)を大きくすればよいが、大きくしすぎると感光体ドラムと現像ローラ間のギャップで放電が発生する。放電が発生すると、感光体ドラム表面の電位変化により静電潜像が乱れ、形成される画像の品質が劣化する。又、感光体ドラムの特性によって、放電電流の流れる方向により、大電流が流れ、感光体ドラムに微少な穴(ピンホール)ができてしまう等の損傷を引き起こされる場合がある。従って、ピーク間電圧を大きくするにしても、放電が生じない範囲に留めなければならない。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、像担持体と現像領域において所要間隔を介して対向するトナー担持体を設け、このトナー担持体と像担持体との間に直流電圧と交流電圧とが重畳された現像バイアス電圧を印加させて、トナーを像担持体に供給して静電潜像を現像する現像装置において、像担持体とトナー担持体との間に印加させるリーク検知電圧を変化させるリーク発生手段と、リークを検知するリーク検知手段とを設け、リーク検知電圧と像担持体の表面電位との最大の電位差ΔVmaxを徐々に増加させて、像担持体とトナー担持体との間に流れる電流が連続して増加した場合、リーク検知手段によってリークと判断する現像装置が記載されている(例えば、特許文献1:請求項1等参照)。
【特許文献1】特許第3815356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、感光体ドラムや現像ローラには、取付の誤差や、製造上やむを得ず発生する誤差によるフレ(例えば、円筒、円柱形状等の理想的な形状からのずれ)がある。これらの誤差やフレによって、感光体ドラムと現像ローラを回転させると、ギャップ長は、微少に変化し続ける。一方で、現像ローラと感光体ドラムのギャップ長が短いほど、放電が生ずる電位差が低くなる。従って、放電の検出では、ギャップ長が短くなる状態が現れるようにするため、現像ローラに印加する交流電圧を一定にしたまま、感光体ドラムと現像ローラを複数回、回転させる。
【0006】
もし、放電が検出されなければ、例えば、ピーク間電圧を大きくした上で、再度、現像ローラに印加する交流電圧を一定にしたまま、感光体ドラムと現像ローラを複数回、回転させる。このような、ピーク間電圧の変更と、各回転体を回転及び一定時間の交流電圧の印加維持が、放電が検出されるまで繰り返されるので、放電が始まるピーク間電圧の検出に時間を要するという問題がある。特に、画像形成部は、カラー印刷のため、複数の感光体ドラムと現像ローラの組み合わせ(それぞれ異色のトナー像を形成)を有する場合があり、1つずつ順番に各画像形成部の放電検出を行えば、更に、放電が始まるピーク間電圧の検出に時間を要する。
【0007】
そして、放電検出は、工場での検査時や、顧客先での設置時や、感光体ドラムの交換時や、環境変化時(例えば、気温等)に複数回行われ得るので、放電検出に要する時間が長ければ、画像形成装置を生産する上での効率低下や、放電検出中は印刷できないため、使用者の利便性が損なわれるという問題がある。又、放電検出を頻繁に行うほど、放電検出に要する時間が長いことが大きな問題となり、更に、放電で感光体ドラムが損傷を受け、印刷の品質(画質)低下や、感光体ドラムの短命化を招きやすい点にも配慮する必要がある。尚、特許文献1には、放電検出に時間を要する等の上記問題点への言及や、解決策が何ら示されておらず、上記の問題を解決することができない。
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑み、放電が始まるピーク間電圧を探す放電検出に要する時間を短縮し、使用者の利便性を高め、放電検出を頻繁に行ったとしても印刷の品質への影響を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に係る画像形成装置は、感光体ドラムと、前記感光体ドラムへのトナーの供給のため印刷時にトナーを担持し、前記感光体ドラムにギャップが設けられつつ対向する現像ローラと、回転位置の把握のために前記感光体ドラムと前記現像ローラのそれぞれに設けられ、前記感光体ドラムと前記現像ローラに伴って回転する目印部材と、を含む画像形成部と、前記目印部材の測定を行うセンサと、前記現像ローラに電圧を印加する交流電圧印加部と、前記現像ローラと前記感光体ドラム間での放電発生を検出するための検出部と、前記感光体ドラム及び前記現像ローラを回転させるための1又は複数のモータと、前記交流電圧印加部と前記モータを制御し、又、前記検出部の出力に基づき放電発生を認識するとともに、前記センサの出力に基づき前記感光体ドラム及び前記現像ローラの回転位置を把握する制御部と、前記ギャップが最も短くなる前記感光体ドラムと前記現像ローラの回転位置を示す回転位置データを記憶する記憶部と、を備え、
前記現像ローラに印加する交流電圧のピーク間電圧を段階的に変化させ、前記感光体ドラムと前記現像ローラ間で放電が始まるピーク間電圧の検出を行う放電検出時、前記制御部は、前記回転位置データを参照し、前記感光体ドラムと前記現像ローラの回転位置を前記ギャップが最も短くなる位置とした後、段階的にピーク間電圧を変化させ、放電を検出することとした。
【0010】
この構成によれば、感光体ドラムと現像ローラ間のギャップ長が最も短いと認められる状態で放電検出を行うので、精度良く放電が始まるピーク間電圧の検出を行うことができる。又、ある大きさの交流電圧の印加中、ギャップ長が短くなるタイミングを設けるため、感光体ドラムと現像ローラを複数回、回転させる必要が無くなり、1段階における交流電圧の印加時間を短縮することができる。従って、放電検出に要する時間は短縮化され、工場での検査時間が短くて済み、画像形成装置の生産効率が上がる。又、画像形成装置の設置中や設置後に、放電検出を行う場合でも、セットアップ完了までの時間や、使用者が利用できない時間が短くなり、使用者の利便性が向上する。
【0011】
又、請求項2に係る発明は、請求項1の発明において、前記制御部は、前記感光体ドラムを停止させた状態で、前記現像ローラを回転させるとともに、前記現像ローラを少なくとも1回転させる間、ピーク間電圧を変化させないで交流電圧を印加させ、放電が検出されなければピーク間電圧を段階的に変化させ、放電が検出された時、前記現像ローラの回転位置を把握する動作と、又、前記現像ローラを停止させた状態で、前記感光体ドラムを回転させるとともに、前記感光体ドラムを少なくとも1回転させる間、ピーク間電圧を変化させないで交流電圧を印加させ、放電が検出されなければピーク間電圧を段階的に変化させ、放電が検出された時、前記感光体ドラムの回転位置を把握する動作の2つの動作で、前記回転位置データを取得し、前記記憶部に記憶させることとした。
【0012】
感光体ドラムや現像ローラには、フレや取付誤差等が存在し、回転させた際、厳密にはギャップ長が絶えず変化している。一方で、ギャップ長が短くなるほど、放電は生じやすくなる。そして、この構成では、感光体ドラムと現像ローラのうち、一方を回転させながら、他方を停止させ放電検出行うので、放電が発生した時点の感光体ドラムと現像ローラの回転位置が、ギャップ長が短くなる位置と推定でき、両方の結果を組み合わせれば、最もギャップ長が短くなる感光体ドラムと現像ローラの回転位置を回転位置データとして取得することができる。
【0013】
又、請求項3に係る発明は、請求項1又は2の発明において、前記画像形成部を複数有し、前記画像形成部ごとに前記交流電圧印加部と前記検出部と前記センサが設けられ、前記記憶部は、前記画像形成部のうち、基準となる基準画像形成部と、他の前記画像形成部との、前記感光体ドラムと前記現像ローラ間で放電が始まるピーク間電圧の差分を示す差分データを記憶し、前記制御部は、前記基準画像形成部でのみ、放電が始まるピーク間電圧の検出を行い、検出されたピーク間電圧と、前記差分データに基づき、演算により、他の前記画像形成部の放電が始まるピーク間電圧を求めることとした。
【0014】
この構成によれば、基準画像形成部のみで放電が始まるピーク間電圧の検出を行えば、他の画像形成部については、放電検出を行うことなく放電が始まるピーク間電圧を演算で得ることができる。従って、放電検出に要する時間は、短縮化される。
【0015】
又、請求項4に係る発明は、請求項3の発明において、前記制御部は、所定のタイミングで、全ての前記画像形成部について、放電が始まるピーク間電圧の検出を行い、得られた検出結果に基づき、前記差分データを生成し、前記記憶部に記憶させることとした。この構成によれば、所定のタイミングで、一度は、全ての画像形成部に対して放電検出を行い、差分データを取得するので、以後の放電検出では、他の画像形成部では、放電検出を行う必要が無くなる。尚、所定のタイミングとは、放電検出を初めて行う場合、感光体ドラムや現像ローラを交換した場合、ある程度の枚数(例えば、数千枚)を行って感光体ドラムの摩耗が進んだ場合など、差分データがない場合や、新たに差分データを取得すべき場合にあわせて、任意に設定することができる。
【0016】
又、請求項5に係る発明は、請求項4の発明において、前記制御部は、放電検出時、前記交流電圧印加部が出力可能な最低値から、段階的にピーク間電圧を大きくさせて、放電の発生を検出し、前記所定のタイミングで実行された全ての前記画像形成部での放電が始まるピーク間電圧の検出結果に基づき、最も放電が始まるピーク間電圧の小さい前記画像形成部を前記基準画像形成部と定めることとした。最も放電が始まるピーク間電圧の小さい画像形成部は、他の画像形成部よりも放電検出が早く終了し、又、次回以降の放電検出でも放電が始まるピーク間電圧が最も小さいと推測されるので、この構成によれば、基準画像形成部に対する放電検出に要する時間さえも最短にすることができる。
【0017】
又、請求項6に係る発明は、請求項1〜5の発明において、前記感光体ドラムは、周面に、トナーが形成される領域である画像領域と、トナー像が形成されない領域である非画像領域を有し、前記現像ローラは、前記画像領域と前記非画像領域の両方に前記ギャップが設けられつつ対向し、前記非画像領域の感光層としての膜厚は、前記画像領域よりも厚く形成されていることとした。
【0018】
又、請求項7に係る発明は、請求項1〜5の発明において、前記現像ローラは、前記感光体ドラムでトナー像が形成されない非画像領域に対向する部分の方が、前記感光体ドラムでトナー像が形成される画像領域に対向する部分よりも、ギャップ長が短くなるように形成されていることとした。
【0019】
請求項6及び請求項7の構成によれば、非画像領域の方が、画像領域よりも感光体ドラムと現像ローラ間のギャップ長が短くなり、放電は、基本的に、非画像領域と現像ローラ間で生じる。従って、放電によりトナー像が形成される画像領域で放電が発生せず、画像領域にピンホール等の画像の品質を低下させる損傷が生じなくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の画像形成装置によれば、放電が始まるピーク間電圧を迅速、簡易に検出することができ、印刷時に現像ローラに印加する交流電圧をできるだけ大きくして現像効率を高めることができる。又、放電検出に要する時間が短いので、工場での検査に時間がかかることもなく、放電検出のため画像形成装置を使用できない状態が長時間続くこともなく、使用者の利便性を損なわない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係るプリンタの概略構成を示す断面図である。
【図2】実施形態に係る各画像形成部の拡大断面図である。
【図3】実施形態に係る現像バイアス印加と放電検出に関する構成を示す説明図である。
【図4】実施形態に係るプリンタのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図5】(a)は、実施形態に係る感光体ドラムと現像ローラを軸線方向から見た模式図である。(b)は、実施形態に係る感光体ドラムと現像ローラの構成を説明するための模式図である。
【図6】実施形態に係るプリンタでの全画像形成部に放電検出が実施される場合の制御の一例を示すフローチャートである。
【図7】実施形態に係る各現像ローラに印加する交流電圧の一例を示すタイミングチャートである。
【図8】(a)は、実施形態に係るプリンタでの差分データの生成制御の一例を示すフローチャートであり、(b)は、差分データの一例を示す。
【図9】実施形態に係るプリンタでの簡易的な放電検出の制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図1〜図9に基づき説明する。本実施形態では、電子写真方式でタンデム型のカラーのプリンタ1(画像形成装置に相当)を例に挙げ説明する。ただし、本実施形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0023】
(画像形成装置の概略構成)
まず、図1、図2を用いて、本発明の実施形態に係るプリンタ1の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ1の概略構成を示す断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る各画像形成部3の拡大断面図である。そして、本実施形態に係るプリンタ1は、図1に示すように、正面上部に操作パネル1aが、本体内にシート供給部2a、搬送路2b、画像形成部3、露光装置4、中間転写部5、定着装置6等が設けられる。
【0024】
操作パネル1aは、液晶表示部や、各種キーを備え、プリンタ1の状態(例えば、エラーやモード)の表示や、ユーザからの各種の入力を受け付ける。前記シート供給部2aは、例えば、コピー用紙、OHPシート、ラベル用紙等の各種シートを収容し、モータ等の駆動機構(不図示)により回転する給紙ローラ21で、シートを搬送路2bに送り出す。そして、搬送路2bは、シートを搬送し、シート供給部2aからのシートを、中間転写部5、定着装置6を経て排出トレイ22まで導く。搬送路2bには、搬送ローラ対23やガイド24及び搬送されてくるシートを中間転写部5の手前で待機させ、タイミングをあわせて送り出すレジストローラ対25等が設けられる。
【0025】
図1及び図2に示すように、プリンタ1は、形成すべき画像の画像データに基づき、トナー像を形成する部分として、複数の画像形成部3(4色分)を備える。具体的に、プリンタ1は、ブラックの画像を形成する画像形成部3a(帯電装置7a、現像装置8a、除電装置31a、清掃装置32a等を具備)と、イエローの画像を形成する画像形成部3b(帯電装置7b、現像装置8b、除電装置31b、清掃装置32b等を具備)と、シアンの画像を形成する画像形成部3c(帯電装置7c、現像装置8c、除電装置31c、清掃装置32c等を具備)と、マゼンタの画像を形成する画像形成部3d(帯電装置7d、現像装置8d、除電装置31d、清掃装置32d等を具備)と、を備える。
【0026】
ここで、図2に基づき、各画像形成部3a〜3dを詳述する。尚、各画像形成部3a〜3dは、形成するトナー像の色が異なるだけで、いずれも基本的に同様の構成である。そこで、以下の説明では、いずれの画像形成部3に属するか識別するためのa、b、c、dの符号は、特に説明する場合を除き省略する(尚、図2では、画像形成部3a、3b、3c、3d内の各部材に、識別的にa、b、c、dの符号を付すこととする。)
【0027】
各感光体ドラム9は、回転可能に支持され、モータM1からの駆動力を受けて回転し、周面にトナー像を担持し、例えば、アルミニウム製のドラムの基体の外周面上に感光層等を有し、駆動装置(不図示)によって所定のスピードで紙面反時計方向に回転駆動される。尚、本実施形態の各感光体ドラム9は、正帯電型である。
【0028】
各帯電装置7は、感光体ドラム9を一定の電位で帯電させる帯電ローラ71を有し、感光体ドラム9を一定の電位で帯電させる。各帯電ローラ71は、各感光体ドラム9に接して、回転する。又、各帯電ローラ71には、帯電電圧印加部72(図4参照)により直流と交流が重畳された電圧が印加され、感光体ドラム9の表面が所定の正極性の電位(例えば、200V〜300V、暗電位)に均一に帯電される。尚、帯電装置7は、コロナ放電装置等を用いて感光体ドラム9を帯電させるものでも良い。
【0029】
各現像装置8は、トナーと磁性体のキャリアを含む現像剤(いわゆる2成分現像剤)を収納する(現像装置8aはブラック、現像装置8bはイエロー、現像装置8cはシアン、現像装置8dはマゼンタの現像剤を収納する)。各現像装置8は、現像ローラ81と、磁気ローラ82と、搬送部材83とを有する。現像ローラ81は、感光体ドラム9に所定のギャップ(例えば、1mm以下)が設けられつつ対向し、印刷時に帯電するトナーを担持し、感光体ドラム9へのトナーの供給のため、交流電圧印加部86(図3参照)が接続される。そして、各磁気ローラ82は、現像ローラ81に対向するとともに、磁気ローラバイアス部84(図4参照)に接続され、磁気ローラバイアス部84による直流電圧と交流電圧を重畳させた電圧印加により現像ローラ81にトナーを供給する。そして、各搬送部材83は、各磁気ローラ82の下方に設けられる。
【0030】
各現像ローラ81と各磁気ローラ82の各ローラ軸811、821は固定されて支軸部材(不図示)等で支持される。そして、各現像ローラ81と各磁気ローラ82の内部の各ローラ軸811、821には、軸線方向にのびる磁石813、823が取り付けられる。そして、各現像ローラ81と各磁気ローラ82は、それぞれ、磁石813、823を覆う円筒状のスリーブ812、822を有し、印刷時や放電検出時、不図示の駆動機構により、このスリーブ812、822が回転させられる。そして、現像ローラ81の磁石813と、磁気ローラ82の磁石823では、現像ローラ81と磁気ローラ82の対向位置で異極が向かい合う。
【0031】
これにより、各現像ローラ81と、各磁気ローラ82間には、磁性体キャリアで磁気ブラシが形成される。磁気ブラシと磁気ローラ82のスリーブ822の回転や磁気ローラ82への電圧印加等で、現像ローラ81に、トナーが供給され、現像ローラ81にトナーの薄層が形成される。又、現像後に残留したトナーは、磁気ブラシで現像ローラ81から引き剥がされる。各搬送部材83は、例えば、軸に対しスクリューが螺旋状に設けられ、現像剤を各現像装置8内で搬送、撹拌し、トナーとキャリアの摩擦等で、トナーを帯電させる(本実施形態では、トナーは正帯電)。
【0032】
各清掃装置32は、感光体ドラム9の清掃を行うため、感光体ドラム9の軸線方向に延び、例えば樹脂で形成されるブレード33や、感光体ドラム9表面を擦って残トナー等を除去する摺擦ローラ34を有する。ブレード33や摺擦ローラ34は、感光体ドラム9に当接して、転写後の残留トナーを等の汚れを掻き取って除去、清掃する。又、各清掃装置32の上方に、感光体ドラム9に対し光を照射して除電を行う除電装置31(例えば、アレイ状のLED)が設けられる。
【0033】
各画像形成部3の下方の露光装置4は、レーザ光を出力するレーザユニットであり、入力されるカラー色分解された画像信号に基づき、レーザ光(破線で図示)を各感光体ドラム9に出力し、帯電後の感光体ドラム9の走査露光を行って、静電潜像を形成する。例えば、露光装置4は、内部に、半導体レーザ装置(レーザダイオード)、ポリゴンミラー、ポリゴンモータ、fθレンズ、ミラー(不図示)等が設けられる。この構成で、レーザ光が露光装置4から各感光体ドラム9に照射され画像データに併せた静電潜像が感光体ドラム9上に形成される。具体的に、本実施形態の各感光体ドラム9は正帯電し、光の照射部分は電位が下がり(例えば、ほぼ0V)、電位の低下部分に正帯電トナーが付着する(例えば、ベタ塗り画像の場合、全ライン、全画素にレーザ光を照射)。尚、露光装置4は、多数のLEDからなるもの等を用いてもよい。
【0034】
尚、露光装置4には、レーザ光の照射範囲内、かつ、感光体ドラム9への照射範囲外に、受光素子(不図示)が設けられる。この受光素子は、レーザ光が照射されると、電流(電圧)を出力し、この出力は、例えば、後述のCPU11(Central Processing Unit)に入力されて放電発生の有無の検出時の同期信号として用いられる。
【0035】
図1に戻り説明を続ける。中間転写部5は、感光体ドラム9からトナー像の1次転写を受けて、シートに2次転写を行い、各1次転写ローラ51a〜51d、中間転写ベルト52、駆動ローラ53、従動ローラ54、55、56、2次転写ローラ57、ベルト清掃装置58等で構成される。各1次転写ローラ51は、各感光体ドラム9とで、無端状の中間転写ベルト52を挟み、転写電圧を印加する転写電圧印加部(不図示)に接続され、トナー像を中間転写ベルト52に転写する。
【0036】
中間転写ベルト52は、誘電体樹脂等で構成され、駆動ローラ53、従動ローラ54、55、56に張架され、モータ等の駆動機構(不図示)に接続される駆動ローラ53の回転駆動により図1の紙面時計方向に周回する。又、駆動ローラ53と2次転写ローラ57は、中間転写ベルト52を挟み、ニップ(2次転写部)を形成する。トナー像の転写では、各1次転写ローラ51に所定の電圧を印加し、各画像形成部3で形成されたトナー像(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各色)は、順次、ずれなく重畳されつつ中間転写ベルト52に1次転写される。そして、各色重ね合わされたトナー像は、所定の電圧を印加された2次転写ローラ57により、シートに転写される。尚、2次転写後に中間転写ベルト52上の残トナー等は、ベルト清掃装置58で除去されて回収される。
【0037】
定着装置6は、2次転写部よりもシート搬送方向下流側に配され、2次転写されたトナー像を加熱・加圧してシートに定着させる。そして、定着装置6は主として、発熱源を内蔵する定着ローラ61と、これに圧接される加圧ローラ62とで構成され、ニップが形成される。トナー像の転写されたシートは、ニップを通過すると加熱・加圧され、その結果、トナー像がシートに定着する。尚、定着後のシートは、排出トレイ22に排出され画像形成処理が完了する。
【0038】
(現像バイアス印加と放電検出用の構成)
次に、図3に基づき、現像バイアス印加と放電検出に関する構成を説明する。図3は、本発明の実施形態に係る現像バイアス印加と放電検出に関する構成を示す説明図である。尚、放電検出は、放電が始まるピーク間電圧を探し当てるために行う。
【0039】
ここで、図3は1つの画像形成部3についてのみ示し、画像形成部3ごとに直流電圧印加部85、交流電圧印加部86、検出部14、アンプ15が設けられる。ここで、直流電圧印加部85、交流電圧印加部86、検出部14、アンプ15のそれぞれについて、各画像形成部3の区別を示すa、b、c、dの符号を付しても良いが、各画像形成部3では同様のものが設けられるので、記載の煩雑さを回避するため、図3の説明では、a、b、c、dの符号は省略して説明する。
【0040】
図3に示すように、感光体ドラム9にギャップが設けられつつ対向する現像ローラ81は、ローラ軸811、キャップ814、トナーを担持するスリーブ812を有する。ローラ軸811はスリーブ812を挿通され、スリーブ812の両端に円形のキャップ814が嵌入される。又、現像ローラ81のローラ軸811には、感光体ドラム9へのトナーの供給のため、直流電圧印加部85と、交流電圧印加部86が接続される。
【0041】
直流電圧印加部85は、現像ローラ81に印加する直流成分を発生させる回路であり、その出力は交流電圧印加部86に入力される。そして、直流電圧印加部85は、出力制御部87を有し、出力制御部87は、直流電圧印加部85が出力するバイアスの値をCPU11の指示に応じて制御する。
【0042】
直流電圧印加部85は、プリンタ1内の電源装置16(図4参照)からの直流電力の供給を受け、CPU11の指示に応じ、出力制御部87の制御により、出力電圧が可変な回路である(例えば、DC−DCコンバータ等)。これにより、現像ローラ81に印加する交流電圧をバイアスさせることができる。
【0043】
又、交流電圧印加部86は、例えば、矩形波状(パルス状)であり、直流電圧印加部85が出力する直流電圧を平均値とする交流電圧を出力し、現像ローラ81に電圧を印加する回路である。そして、交流電圧印加部86は、Vpp制御部88およびデューティ比/周波数制御部89を有する。Vpp制御部88は、交流電圧のピーク間電圧(ピークトゥピーク)をCPU11の指示に応じて制御する。また、デューティ比/周波数制御部89は、交流電圧のデューティ比および周波数をCPU11の指示に応じて制御する。
【0044】
例えば、交流電圧印加部86は、複数のスイッチング素子等を備える電源回路であり、出力の正負をスイッチングで反転させ、交流電圧を出力する。そして、デューティ比/周波数制御部89は、例えば、交流電圧印加部86の出力の正負のスイッチングのタイミングを制御することで、交流電圧のデューティ比や周波数を制御することができる。又、Vpp制御部88は、現像ローラ81に印加すべき交流電圧のピーク間電圧とデューティ比とに基づき、電源装置16(図4参照)から入力される直流電圧の昇降圧等により、交流電圧における正側のピーク値と負側のピーク値を、CPU11の指示に応じ、可変させる。尚、交流電圧印加部86の構成や、交流電圧のピーク間電圧、デューティ比、周波数を可変させる構成は、ピーク間電圧、デューティ比、周波数を変化できればよい。
【0045】
そして、交流電圧印加部86は、例えば、内部に昇圧用トランス等による昇圧回路を出力段に備えることができ、直流と昇圧後の交流の重畳された現像バイアスが、例えば、現像ローラ81のローラ軸811に印加される。これにより、スリーブ812にも現像バイアスが印加され、スリーブ812に担持される帯電トナーが飛翔する。
【0046】
検出部14は、現像ローラ81と感光体ドラム9間の放電発生を検出するための回路であり、放電発生時に流れる電流を電圧信号に変換し、放電の発生を検出する(放電検出信号)。そして、検出部14は、放電検出信号をアンプ15に出力する。アンプ15は、検出部14からの放電検出信号を増幅しCPU11に向けて出力する。
【0047】
A/D変換器17は、アンプ15のアナログ出力をデジタル変換してCPU11に入力する回路である。このA/D変換された検出部14(アンプ15)の出力から、CPU11は、放電の発生や、発生した放電の大きさ(現像ローラ81と感光体ドラム9間に流れた電流の大きさ)を認識することができる。
【0048】
(プリンタ1のハードウェア構成)
次に、図4に基づき、本発明の実施形態に係るプリンタ1のハードウェア構成を説明する。図4は、本発明の実施形態に係るプリンタ1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0049】
図4に示すように、本実施形態に係るプリンタ1は、内部に制御部10を有する。制御部10は、例えば、交流電圧印加部86が印加する交流電圧を制御するなど、装置の各部を制御するとともに、画像形成部3や各モータの動作を制御し、検出部14の出力に基づき放電発生を認識し、センサ92の出力に基づき感光体ドラム9及び現像ローラ81の回転位置を把握する。例えば、制御部10は、CPU11、記憶部12、計時部13等で構成される。又、制御部10の機能を複数の基板に分散させても良い。そして、CPU11は、中央演算処理装置であり、記憶部12に格納され、展開される制御プログラムに基づきプリンタ1の各部の制御や演算を行う。
【0050】
記憶部12は、ROM、RAM、フラッシュROM等の不揮発性と揮発性の記憶装置の組み合わせで構成される。例えば、記憶部12は、プリンタ1の制御プログラムのほか、制御データ等、各種データを記憶する。尚、本発明に関し、記憶部12は、放電を検出して印刷時に現像ローラ81に印加する電圧の設定用プログラム等を記憶する。又、記憶部12は、ギャップが最も短くなる感光体ドラム9と現像ローラ81の回転位置を示す回転位置データを記憶する(詳細は後述)。計時部13は、感光体ドラム9や現像ローラ81が1回転する時間や、放電検出時に現像ローラ81に現像バイアスを印加する時間を測定するなど、制御上必要な各種時間を計時する。尚、本発明の実施上、CPU11の計時機能を利用する場合は、計時部13は設けなくても良い。
【0051】
そして、制御部10は、シート供給部2a、搬送路2b、画像形成部3、露光装置4、中間転写部5、定着装置6等と接続され、記憶部12の制御プログラムやデータに基づき適切に画像形成が行われるように各部の動作を制御する。又、制御部10には、モータM1が接続され、モータM1は、各画像形成部3の各感光体ドラム9等を回転させるための駆動力を供給する。そして、制御部10は、印刷時や放電検出時に、モータM1を駆動させ、上記の各感光体ドラム9を回転させる。又、このモータM1と同一又は異なるモータM2の駆動を利用し、ギア、コロ等の駆動機構で現像ローラ81及び磁気ローラ82の各スリーブを回転させることができる。尚、図4では、感光体ドラム9とスリーブ812を回転させるモータがそれぞれ異なる場合を示す。
【0052】
又、制御部10には、I/F部18(インターフェイス部)を介し、印刷を行う画像データの送信元となるユーザ端末100(パーソナルコンピュータ等)等が接続され、制御部10は、受信した画像データを画像処理し、露光装置4は、その画像データを受信し、感光体ドラム9に静電潜像を形成する。
【0053】
又、制御部10(CPU11)には、検出部14(アンプ15)の出力が入力される。そして、放電検出時、CPU11は、現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧等を段階的に変える指示をいずれかの交流電圧印加部86に与え、検出部14(アンプ15)のA/D変換後の出力から、その画像形成部3での放電発生の有無の検出や、放電の大きさを判断する。又、各画像形成部3の各帯電装置7(帯電ローラ71)には、個別に帯電電圧印加部72が接続され、帯電ローラ71は感光体ドラム9に当接し、感光体ドラム9を帯電させる。
【0054】
(感光体ドラム9と現像ローラ81の詳細な構成)
次に、図5に基づき、本発明の実施形態に係る感光体ドラム9、現像ローラ81の詳細な構成を説明する。図5(a)は、本発明の実施形態に係る感光体ドラム9と現像ローラ81を軸線方向から見た模式図である。図5(b)は、本発明の実施形態に係る感光体ドラム9と現像ローラ81の構成を説明するための模式図である。
【0055】
まず、図5(a)に示すように、本実施形態の感光体ドラム9には、回転軸としてのドラム軸90が設けられる。尚、このドラム軸90にモータM1の駆動力が伝達され、感光体ドラム9は回転する。そして、ドラム軸90には、棒状(突起状)の目印部材91aが設けられ、目印部材91aは、感光体ドラム9とともに回転する。そして、目印部材91aの移動経路にセンサ92aが設けられる。このセンサ92aは、例えば、LED等の発光部とフォトダイオード等の受光部(図5(a)では、一方が不可視)が対向する透過型の光センサ92で構成でき、目印部材91aの通過を検出する。
【0056】
具体的には、発光部から受光部への光路を遮るように、目印部材91aが移動し、受光部への光を遮ったとき、受光部の出力電圧(電流)が変化する。そして、センサ92aは例えば、CPU11に接続され、CPU11は、センサ92aの(受光部の)出力変化で目印部材91aの通過した時点を認識する。即ち、目印部材91aは、感光体ドラム9の回転周期を把握する上での基準であり、センサ92aは、基準の通過を測定する。
【0057】
又、図5(a)に示すように、現像ローラ81のキャップ814にも、現像ローラ81の軸線方向と平行な方向に延びる目印部材91bが設けられる。目印部材91bは、キャップ814の回転に付随して回転する。そして、現像ローラ81でも同様に、目印部材91bの移動経路に、センサ92bが設けられる。センサ92bは、例えば、センサ92aと同様の透過型光センサ92であり、発光部と受光部を有し、この発光部と受光部の光路を目印部材91bが遮るように移動することで、目印部材91bの通過を検出する。又、センサ92bもCPU11に接続され、CPU11は、センサ92bの(受光部の)出力変化により、目印部材91aの通過した時点を認識する。即ち、目印部材91bは、現像ローラ81(厳密には、スリーブ812及びキャップ814の回転周期)の回転周期を把握する上での基準であり、センサ92bは、基準の通過を測定する。即ち、画像形成部3は、感光体ドラム9と現像ローラ81と目印部材91を含むものであって、目印部材91は、回転位置の把握のために感光体ドラム9と現像ローラ81のそれぞれに設けられ、感光体ドラム9と現像ローラ81に伴って回転し、この目印部材91の測定を行うセンサ92が設けられる。
【0058】
そして、感光体ドラム9や現像ローラ81は、一定の周長を有するように製造されるので、センサ92a、センサ92bの出力変化の間隔を計時部13で計測することにより、、CPU11は、モータM1を制御して、感光体ドラム9や現像ローラ81を任意の回転位置(位相)で停止させることができる。又、CPU11は、感光体ドラム9と現像ローラ81の周速度(=周長÷出力変化の間隔)を得ることもできる。
【0059】
次に、図5(b)に基づき、感光体ドラム9の周面及び現像ローラ81のスリーブ812について説明する。まず、図5(b)に示すように、感光体ドラム9と現像ローラ81は、一定のギャツプが設けられつつ(例えば、90μm〜150μm程度)、互いの軸線方向が平行となるように配される。
【0060】
そして、本実施形態の感光体ドラム9の周面には、正帯電する感光層が設けられる。この感光体ドラム9の周面は、露光装置4による露光が行われることにより、トナーが付着してトナー像が形成される画像領域F1(図5(b)において網掛にて図示)と、露光が行われず、トナー像が形成されない非画像領域F2が存在する。尚、非画像領域F2は、軸線方向における両端部分に設けられる。
【0061】
感光体としては、例えば、アモルファスシリコンやOPC(有機感光体)を用いることができ、感光体ドラム9の基体への感光体の蒸着や塗布により、感光層が形成される。例えば、画像領域F1の感光層は、数十μm(例えば、20〜40μm)程度の膜厚である。そして、本実施形態の感光体ドラム9では、非画像領域F2の感光層の厚さ(膜厚)は、画像領域F1よりも厚く形成される。例えば、蒸着する場合は、非画像領域F2のみ蒸着時間を長くする。即ち、感光体ドラム9は、周面に、トナーが形成される領域である画像領域F1と、トナー像が形成されない領域である非画像領域F2を有し、現像ローラ81は、画像領域F1と非画像領域F2の両方にギャップが設けられつつ対向し、非画像領域F2の感光層としての膜厚は、画像領域F1よりも厚く形成される。
【0062】
一方、現像ローラ81を見ると、本実施形態の現像ローラ81は、感光体ドラム9の画像領域F1と非画像領域F2の両方に対向する長さとされ、支持される。そして、スリーブ812のうち、感光体ドラム9の非画像領域F2に対向する部分は、画像領域F1に対向する部分よりも厚く形成される。即ち、現像ローラ81は、感光体ドラム9でトナー像が形成されない非画像領域F2に対向する部分の方が、感光体ドラム9でトナー像が形成される画像領域F1に対向する部分よりも、ギャップ長が短くなるように形成される。
【0063】
従って、本実施形態のプリンタ1では、感光体ドラム9と現像ローラ81のギャップ長は、画像領域F1と非画像領域F2では異なり、非画像領域F2部分の方がギャップ長が短くなる。一般的、経験的に、ギャップ長が10μm程度短くなれば、放電が始まるピーク間電圧が50〜100V程度低くなるとされる。従って、本実施形態のプリンタ1では非画像領域F2部分のギャップ長が、画像領域F1部分のギャップ長よりも、平均的に、10μmほど短くなるように、感光体ドラム9の非画像領域F2の感光層の膜厚や、非画像領域F2に対向する部分のスリーブ812の厚さが調整される。
【0064】
尚、感光体ドラム9の非画像領域F2の膜厚のみを厚くすることや、現像ローラ81の非画像領域F2に対向する部分の厚さのみを調整して、非画像領域F2部分のギャップ長が、画像領域F1におけるギャップ長よりも10μmほど短くしてもよい。又、感光層の材料や、スリーブ812の材質やギャップ長の設計値により、ギャップ長の変化に対する放電が始まるピーク間電圧の変化も異なり得るので、感光体ドラム9の非画像領域F2や現像ローラ81の非画像領域F2に対向する部分を、画像領域F1や現像ローラ81の画像領域F1に対向する部分よりもどれほど厚くするかは、機種ごとに定めればよい。
【0065】
このように、非画像領域F2部分のギャップ長の方が短くされるので、現像ローラ81と非画像領域F2間で放電が発生するように仕向けられる。本実施形態のプリンタ1では、放電検出に要する時間が短くて済み、従来よりも頻繁に放電検出を行っても、使用者の利便性を妨げない。そして、従来よりも頻繁に放電検出を行う場合、放電による感光体ドラム9の損傷で画質や寿命に影響が出やすくなるが、本実施形態のプリンタ1では、非画像領域F2と現像ローラ81間で放電が生ずるから、頻繁に放電検出を行っても、画質や寿命に影響がない。
【0066】
(全画像形成部3での放電検出の実施)
次に、図6〜図7に基づき、本発明の実施形態に係るプリンタ1での全画像形成部3に放電検出が実施される場合を説明する。図6は、本発明の実施形態に係るプリンタ1での全画像形成部3に放電検出が実施される場合の制御の一例を示すフローチャートである。尚、図6で示す制御は、全画像形成部3を対象として、1つの画像形成部3ごとに順番に行われる(本実施形態のプリンタ1では、計4回)。
【0067】
図6に示す全画像形成部3での放電検出は、所定のタイミングで実施される。ここで、所定のタイミングとは、回転位置データ(詳細は後述)や差分データ(詳細は後述)を新たに設定、取得することが必要と認められる場合であり、任意に定めることができる。例えば、工場での検査時等の放電検出を初めて行う場合、感光体ドラム9や現像ローラ81を交換しギャップ長が変化した場合、ある程度の枚数(例えば、数千枚)の印刷が行われ感光体ドラム9の摩耗が進みギャップ長が変化した場合、使用者が操作パネル1aに放電検出を指示した場合などを、所定のタイミングと定めることができる。
【0068】
そのため、図6におけるスタートは、上述した所定のタイミングに到った時点である。次に、制御部10(CPU11)は、モータM1、M2や不図示の駆動機構を制御し、感光体ドラム9を停止させつつ、現像ローラ81を回転させる(ステップS1)。この現像ローラ81の駆動は、後述のステップS8まで、継続する。次に、CPU11の指示により、帯電電圧印加部72が、帯電装置7(帯電ローラ71)への電圧印加を開始する(ステップS2)。この帯電装置への電圧印加は、本制御が終了するまで、継続する。
【0069】
次に、条件変更状態に移行する(ステップS3)。条件変更状態とは、現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧を変更するための状態である(以下、同様)。そして、最初の条件変更状態であれば、制御部10は、例えば、交流電圧印加部86に、交流電圧印加部86が出力可能な最低のピーク間電圧で出力するように出力電圧を調整させる。これにより、次に述べる最初の放電検出状態で現像ローラ81に印加すべき交流電圧のピーク間電圧が設定される。2回目以降ならば、制御部10は、交流電圧印加部86に、原則として直前に印加した交流電圧のピーク間電圧を変化(例えば、ΔVaだけ増加)させる。
【0070】
その後、放電検出状態に移行し、制御部10(CPU11)は、アンプ15の出力電圧が所定の閾値を越えた回数をカウントする(ステップS4)。ここで、放電検出状態とは、画像領域F1の全面に対し、露光装置4が露光を行いつつ、設定されたピーク間電圧で現像ローラ81に実際に現像バイアスを印加する状態である(尚、ステップS4の段階では、感光体ドラムは停止しているので、露光や帯電をステップS9以降に開始してもよい)。そして、本制御では、現像ローラ81への現像バイアスの印加は、現像ローラ81が少なくとも1回転する間継続される。これにより、現像ローラ81のフレ等の存在によって、ギャップ長が最も短くなる状態が1度は訪れる。尚、現像ローラ81が1回転するために必要な時間は、目印部材91bとセンサ92bによって、制御部10は認識できる。
【0071】
ここで、図7に基づき、印刷時と放電検出時の現像バイアスについて説明しておく。図7は、本発明の実施形態に係る各現像ローラ81に印加する交流電圧の一例を示すタイミングチャートである。尚、図7では、上段に印刷時のタイミングチャートを、下段に、放電検出状態のタイミングチャートを示している。
【0072】
まず、印刷時のタイミングチャートにおける矩形波は、現像ローラ81に印加される現像バイアス(交流+直流)の波形の一例である。そして、「Vdc1」は、直流電圧印加部85のバイアスの電位を示す。「V0」は、露光装置4による露光後の感光体ドラム9の電位(ほぼ0V=明電位)を示す。「V1」は、感光体ドラム9の帯電後の電位(露光しない部分の電位。例えば、200〜300V程度)を示す。「V+1」は、V0と、印刷時の現像バイアスの正のピーク値との電位差を示す。「V-」は、V1と現像バイアスの負のピーク値との電位差を示す。「Vpp1」は、印刷時の現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧を示す。又、「T1」は、矩形波におけるHigh状態(正極性状態)の時間である。「T01」は、矩形波の周期を示す。
【0073】
一方、放電検出時(=放電検出状態)のタイミングチャートにおける矩形波は、放電検出時に、現像ローラ81に印加される現像バイアスの波形を示す。「Vdc2」は、検出時の直流電圧印加部85のバイアスの電位を示す。又、「V0」は、図7上段と同様、露光装置4による露光後の感光体ドラム9の電位(ほぼ0V)を示す。「V+2」は、検出時の現像バイアスの正のピーク値とV0との電位差を示す。「Vpp2」は、検出時の現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧を示す。「T2」は、矩形波におけるHigh状態(正極性状態)の時間である。「T02」は、矩形波の周期である。
【0074】
まず、放電検出時、CPU11の指示により、出力制御部87は直流電圧印加部85の出力を、放電発生検出用の設定値Vdc2(例えば、100V〜200V)となるように設定する。又、CPU11の指示で、Vpp制御部88は交流電圧印加部86の出力する交流電圧のVpp2を設定する(尚、Vpp2は、条件変更状態ごとに値が変化する)。又、CPU11の指示で、デューティ比/周波数制御部89は、交流電圧印加部86の出力する交流電圧のデューティ比D2(周期T02に対するHighの時間T2の比、T2/T02)を放電発生検出用の設定値に設定し、交流電圧印加部86の出力する交流電圧の周波数f2(=1/T02)を放電発生検出用の設定値に設定する(図7下段)。
【0075】
ここで、デューティ比D2は、印刷時のデューティ比D1(周期T01に対するHighの時間T1の比、T1/T01)より小さく設定される(例えば、D1=40%、D2=30%)。このように、デューティ比D2を設定するのは、現像ローラ81の電位が低い時(負側のピーク時)に放電が生ずると、本実施形態の感光体ドラム9は、大電流が流れる特性(ダイオード的特性)を有するため、できるだけ、負側のピークの電圧の絶対値を小さくするためである。そして、周波数f2は、交流電圧のプラス側時間が印刷時と放電検出時で同じとなるよう設定される(即ち、T1=T2。例えば、D1=40%、D2=30%の場合、印刷時の周波数f1=4kHzであれば、f2=3kHz)。これにより、印刷時と同じ時間、正極性の電圧が現像ローラ81に印加される。
【0076】
図6に戻り、制御の流れの説明を続ける。放電検出状態の後、次に、制御部10は、カウント数が0回かを確認し(ステップS5)、0回であれば(ステップS4のYes)、放電が検出されていないので、条件変更状態に移行し、制御部10(CPU11)は、Vpp制御部88が、交流電圧印加部86の出力する交流電圧のピーク間電圧を直前の値よりも所定の刻み幅ΔVa(例えば、10〜100Vなど)だけ大きくする指示、設定を行う(ステップS6)。その後、ステップS3に戻る。従って、放電が検出されるまで、条件変更状態と放電検出状態が繰り返される。
【0077】
一方、カウント数が0回で無ければ(ステップS5のNo)、放電が発生したので、制御部10(CPU11)は、放電が発生した時点の現像ローラ81(スリーブ812)の回転位置を把握する(ステップS7)。ギャップ長が短いほど、放電が発生しやすくなるので、放電が検出された時、最もギャップ長が短くなると推定できるためである。尚、放電が発生した時点の現像ローラ81の回転位置は、目印部材91bとセンサ92bで、現像ローラ81の回転速度や、目印部材91bの通過を検出してから放電が検出されるまでの時間に基づき、把握できる。言い換えると、制御部10は、現像ローラ81の周面が最も感光体ドラム9に接近する位相(スリーブ812の1周が1周期)を把握する。
【0078】
制御部10は、放電が発生した時点の現像ローラ81の回転位置(位相)を回転位置データとして記憶部12に記憶させ、現像ローラ81のスリーブ812の回転を停止させる(ステップS8)。次に、制御部10(CPU11)は、モータM1や不図示の駆動機構を制御して、現像ローラ81のスリーブ812の回転を停止させつつ、感光体ドラム9を回転させる(ステップS9)。この感光体ドラム9の駆動は、後述のステップS16まで、継続する。
【0079】
次に、条件変更状態に移行する(ステップS10)。そして、スリーブ812が停止して最初の条件変更状態であれば、制御部10は、例えば、交流電圧印加部86に、交流電圧印加部86が出力可能な最低のピーク間電圧で出力するように出力電圧を調整させる。これにより、次に述べるスリーブ812が停止して最初の放電検出状態で現像ローラ81に印加すべき交流電圧のピーク間電圧が設定される。スリーブ812が停止してから2回目以降ならば、制御部10は、交流電圧印加部86に、原則として直前に印加した交流電圧のピーク間電圧を変化させる。その後のステップS11〜S13は、上述のステップS4〜S6と同様であるので説明を省略する。尚、放電検出状態では、少なくとも感光体ドラム9は1回転され、感光体ドラム9が1回転するために必要な時間は、目印部材91aとセンサ92aによって、制御部10は認識できる。
【0080】
そして、カウント数が0回で無ければ(ステップS12のNo)、放電が発生したので、制御部10(CPU11)は、放電が発生した時点の感光体ドラム9の回転位置を把握する(ステップS14)。尚、放電が発生した時点の現像ローラ81の回転位置は、目印部材91aとセンサ92aを用いて、感光体ドラム9の回転速度や、目印部材91aの通過を検出してから放電が検出されるまでの時間に基づき把握できる。言い換えると、制御部10は、感光体ドラム9の周面が最も現像ローラ81に接近する位相(感光体ドラム9の1周が1周期)を把握する。そして、制御部10は、放電が発生した時点の感光体ドラム9の回転位置(位相)も回転位置データとして記憶部12に記憶させ、感光体ドラム9の回転を停止させる(ステップS15)。
【0081】
このように、制御部10は、感光体ドラム9を停止させた状態で、現像ローラ81を回転させるとともに、現像ローラ81を少なくとも1回転させる間、ピーク間電圧を変化させないで交流電圧を印加させ、放電が検出されなければピーク間電圧を段階的に変化させ、放電が検出された時、現像ローラ81の回転位置を把握する動作と、又、現像ローラ81を停止させた状態で、感光体ドラム9を回転させるとともに、感光体ドラム9を少なくとも1回転させる間、ピーク間電圧を変化させないで交流電圧を印加させ、放電が検出されなければピーク間電圧を段階的に変化させ、放電が検出された時、感光体ドラム9の回転位置を把握する動作の2つの動作で、回転位置データを取得し、記憶部12に記憶させる。
【0082】
その後、制御部10は、感光体ドラム9と現像ローラ81を回転させ、回転位置データに基づき、感光体ドラム9と現像ローラ81のギャップ長が最も短くなる位置で感光体ドラム9と現像ローラ81を停止させる(ステップS16)。これにより、ギャップ長が最も短くなる状態となる(厳密には、感光体ドラム9と現像ローラ81の対向する部分において、ギャップ長が最も短くなるポイントがある。)。即ち、現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧を段階的に変化させ、感光体ドラム9と現像ローラ81間で放電が始まるピーク間電圧の検出を行う放電検出時、制御部10は、回転位置データを参照し、感光体ドラム9と現像ローラ81の回転位置をギャップが最も短くなる位置とした後、段階的にピーク間電圧を変化させ放電を検出する(後述の簡易的な放電検出でも同様)。
【0083】
次に、条件変更状態に移行する(ステップS17)。そして、ステップS17は、ギャップ長が最も短くなる状態となってから最初の条件変更状態であるので、制御部10は、例えば、交流電圧印加部86に対し、交流電圧印加部86が出力可能な最低のピーク間電圧を出力するように指示する。その後のステップS18〜S20は、上述のステップS4〜S6及びステップS11〜13と同様であるので説明を省略する。尚、放電検出状態では、既にギャップ長が最短と認められる状態になっているから、現像ローラ81や感光体ドラム9を1回転させる必要はなく、放電検出状態で現像バイアスを印加する時間も、感光体ドラム9や現像ローラ81を回転させる場合よりも、極めて短くて良い。
【0084】
ステップS19でカウント数が0回でなければ(ステップS19のNo)、放電が検出されたので、現在カウントした交流電圧のピーク間電圧を、放電が始まるピーク間電圧と決定する(ステップS21)。その後、放電が始まると決定されたピーク間電圧Vpp2、周波数f2、デューティ比D2、バイアス設定値Vdc2から、図7に示す電位差V+2(放電検出時の感光体ドラム9と現像ローラ81の電位差)を求める(ステップS22)。
【0085】
ここで、V+2は容易に求めることができる。CPU11は、ピーク間電圧の大きさを指定してVpp制御部88に指示を出す。従って、制御部10は、放電発生を検出した場合、その時のVpp2を把握している。そして、設定値としてのデューティ比D2と、Vdc2を基準として、正側の面積と負側の面積を等しくすることに基づき、Vpp2の正側のピーク値とVdc2の電位差が求められる。この電位差に、Vdc2とV0との電位差(V0は、ほぼ0Vなので、Vdc2と扱える)を加えれば、V+2が求められる。
【0086】
具体的には、放電発生検出動作時のVpp2は、段階的に変更されるので、デューティ比D2、バイアス設定値Vdc2を一定とすれば、各Vpp2の大きさに応じ、予めV+2を算出しておき、ルックアップテーブルとしてデータ化し、CPU11がそのテーブルを参照し、V+2が求められても良い。尚、このテーブルは、例えば、記憶部12に記憶しておけばよい。
【0087】
次に、求められたV+2に基づき、CPU11は、図7に示したV+1と、V-がいずれも求められたV+2よりも、小さくなるように、印刷時に現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧(=感光体ドラム9が摩耗していない状態でのVpp1)を設定する(ステップS23)。具体的に、ピーク間電圧の決定方法は多様であるが、例えば、V+1とV-をV+2よりも、どれほど小さくすれば放電が発生しないか(マージンをどれほどとるべきか)は、使用トナー等を考慮して、開発時の実験に基づき、例えば、求められたV+2に対し、印刷時に放電が発生しないと認められるピーク間電圧の値をテーブル化し、CPU11がそのテーブルを参照し、ピーク間電圧が定められても良い。尚、このテーブルも記憶部12に記憶しておけばよい。
【0088】
これにより、印刷時、放電が発生しないできるだけ大きな交流電圧を印加できる。そして、このピーク間電圧の設定が完了すれば、1つの画像形成部3について、放電発生検出と印刷時のピーク間電圧の設定は終了する(エンド)。このように定められたピーク間電圧が、Vpp1となる。そして、他の画像形成部3で放電検出が行われていなければ、他の画像形成部3で、図6での制御が実施される。
【0089】
(差分データの生成)
次に、図8に基づき、本発明の実施形態に係るプリンタ1での差分データの生成制御の一例を説明する。図8のうち、(a)は、本発明の実施形態に係るプリンタ1での差分データの生成制御の一例を示すフローチャートであり、(b)は、差分データの一例を示す。ここで、差分データとは、上記の所定のタイミングで実施される放電検出での結果に基づき、1つの基準となる画像形成部3(以下、「基準画像形成部」という。)と、他の画像形成部3との、放電が始まるピーク間電圧の差分を示すデータである。尚、本説明では、放電が始まるピーク間電圧が最も小さい画像形成部3を基準画像形成部とする際の例を説明する。
【0090】
まず、本制御でのスタートは、図6を用いて説明した所定のタイミングでの放電検出が、全ての画像形成部3で終了した時点である。次に、制御部10は、全ての画像形成部3(本実施形態では4つ)のうち、放電が始まるピーク間電圧が最も小さい画像形成部3を認識する(ステップS31)。放電が始まるピーク間電圧が最も小さい画像形成部3を基準画像形成部と定める(ステップS32)。即ち、制御部10は、放電検出時、例えば、交流電圧印加部86が出力可能な最低値から、段階的にピーク間電圧を大きくさせて、放電の発生を検出し、所定のタイミングで実行された全ての画像形成部3での放電が始まるピーク間電圧の検出結果に基づき、最も放電が始まるピーク間電圧の小さい画像形成部3を基準画像形成部と定める。次に、基準画像形成部と、他の画像形成部3との放電が始まるピーク間電圧の差を演算する(ステップS33)。本説明では、差分は、正の値となる。
【0091】
その後、制御部10は、基準画像形成部がいずれの画像形成部3であるか、及び、基準画像形成部と他の画像形成部3との差分を、差分データとして記憶部12に記憶させる(ステップS34→エンド)。これにより、各画像形成部3での放電検出に基づき、差分データが取得される。このように、制御部10は、所定のタイミングで、全ての画像形成部3について、放電が始まるピーク間電圧の検出を行い、得られた検出結果に基づき、差分データを生成し、記憶部12に記憶(新規取得又は更新)させる。
【0092】
尚、上記の本説明では、基準画像形成部は、放電が始まるピーク間電圧が最も小さい画像形成部3とする例を述べたが、図8(b)では、各画像形成部3を基準画像形成部として扱えるように、全ての画像形成部3について差分データを演算、取得した際の例を示している。そして、図8(b)の例では、放電が始まるピーク間電圧が、画像形成部3a<画像形成部3b<画像形成部3c<画像形成部3dである場合を示し、具体的な差分の値については、X〜Zの記号を用いて変数的に示している。
【0093】
(簡易的な放電検出)
次に、図9に基づき、本発明の実施形態に係るプリンタ1での簡易的な放電検出の一例を説明する。図9は、本発明の実施形態に係るプリンタ1での簡易的な放電検出の制御の一例を示すフローチャートである。尚、本説明でも、基準画像形成部は、放電が始まるピーク間電圧が最も小さい画像形成部3であるとして説明する。
【0094】
まず、簡易的な放電検出について説明する。簡易的な放電検出は、迅速に印刷時に現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧を定めるために行われる。そして、簡易的な放電検出では、回転位置データや差分データを用いて、感光体ドラム9や現像ローラ81を回転させ続けず、又、基準画像形成部でのみ放電検出が行われる。又、簡易的な放電検出が実行されるタイミングは、例えば、プリンタ1の設置時でのセットアップ時、電源投入時、先の放電検出から一定枚数を印刷した時(例えば、数百枚)、使用者が操作パネル1aで実行を指示した時、などである。又、簡易的な放電検出は、所定のタイミングで実施される放電検出と放電検出の間で行われる放電検出ということもできる。
【0095】
従って、図9でのスタートは、簡易的な放電検出の実行タイミングに到った時点である。その後、制御部10は、記憶部12を参照し、いずれの画像形成部3が基準画像形成部であるかを確認し、基準画像形成部の回転位置データを確認する(ステップS41)。次に、制御部10は、モータM1等を制御して、基準画像形成部のギャップ長が最も短くなるように、感光体ドラム9及び現像ローラ81を回転させ、停止させる(ステップS42)。そして、条件変更状態に移行して、制御部10は、直流電圧印加部85やVpp制御部10等に指示を与え、交流電圧印加部86や直流電圧印加部85の出力を調整させる(ステップS43)。尚、ステップS43で、最初の条件変更状態であれば、制御部10は、例えば、交流電圧印加部86に、交流電圧印加部86が出力可能な最低のピーク間電圧で出力するように出力電圧を調整させる。これにより、最初の放電検出状態で現像ローラ81に印加すべき交流電圧のピーク間電圧が設定される。2回目以降ならば、制御部10は、交流電圧印加部86に、原則として直前に印加した交流電圧よりも出力するピーク間電圧を変化(例えば、ΔVaだけ増加)させる。
【0096】
その後、放電検出状態に移行し放電の発生の有無が確認されるが、図9でのステップS44〜S46は、図6で説明した、ステップS4〜S6、ステップS11〜13、S18〜S20と同様であり、それらの記載を援用するものとして、説明を省略する。
【0097】
そして、カウント数が0回で無ければ(=1回以上であれば、ステップS45のNo)、制御部10(CPU11)は、放電が検出されたので、直前にカウントした交流電圧のピーク間電圧を、基準画像形成部での放電が始まるピーク間電圧と決定する(ステップS47)。
【0098】
更に、制御部10は、差分データと、決定された基準画像形成部での放電が始まるピーク間電圧に基づき、基準画像形成部以外の画像形成部3(他の画像形成部3)での放電が始まるピーク間電圧を演算により求める(ステップS48)。具体的には、基準画像形成部での放電が始まるピーク間電圧に、他の画像形成部3と基準画像形成部との差分を加える。これにより、1つの画像形成部3で放電検出を実施するだけで、全ての画像形成部3について、放電が始まるピーク間電圧を得ることができる。
【0099】
即ち、画像形成部3を複数有し、画像形成部3ごとに交流電圧印加部86と検出部14とセンサ92が設けられる本実施形態のプリンタ1では、記憶部12は、画像形成部3のうち、基準となる基準画像形成部と、他の画像形成部3との、感光体ドラム9と現像ローラ81間で放電が始まるピーク間電圧の差分を示す差分データを記憶し、制御部10は、基準画像形成部でのみ、放電が始まるピーク間電圧の検出を行い、検出されたピーク間電圧と、差分データに基づき、演算により、他の画像形成部3の放電が始まるピーク間電圧を求める。
【0100】
その後、放電が始まると決定された各画像形成部3でのピーク間電圧Vpp2、周波数f2、デューティ比D2、バイアス設定値Vdc2(尚、周波数f2、デューティ比D2、バイアス設定値Vdc2は、全画像形成部3で共通でよい。)から、制御部10は、図7に示す電位差V+2を、各画像形成部3について求める(ステップS49)。
【0101】
ここで、V+2は容易に求めることができる。基準画像形成部については、CPU11は、ピーク間電圧の大きさを指定してVpp制御部88に指示を出すので、放電発生を検出した場合、その時のVpp2を把握している。他の画像形成部3のVpp2は、演算により求められる。そして、具体的な、各画像形成部3でのV+2の求め方は、図6で説明したステップS22と同様でよく、ステップS22についての記載を援用するものとして、説明を省略する。又、基準画像形成部と、その他の画像形成部3について求められたV+2に基づき、印刷時に現像ローラ81に印加する交流電圧のピーク間電圧が決定されるが(ステップS50)、ステップS50の内容は、図6で説明したステップS23と同様でよく、ステップS23についての記載を援用するものとして、説明を省略する。
【0102】
これにより、印刷時、放電が発生しないできるだけ大きな交流電圧を印加できる。このように、基準画像形成部での放電検出を行って、各種演算を行うだけで、印刷時のピーク間電圧の設定は終了する(エンド)。このように定められたピーク間電圧が、Vpp1となる。
【0103】
このようにして、本発明の構成によれば、感光体ドラム9と現像ローラ81間のギャップ長が最も短いと認められる状態で放電検出を行うので、精度良く放電が始まるピーク間電圧の検出を行うことができる。又、ある大きさの交流電圧の印加中、ギャップ長が短くなるタイミングを設けるため、感光体ドラム9と現像ローラ81を複数回、回転させる必要が無くなり、1段階における交流電圧の印加時間を短縮することができる。従って、放電検出に要する時間は、短縮化され、工場での検査時間が短くて済み、画像形成装置の生産効率が上がる。又、画像形成装置の設置中や設置後に、放電検出を行う場合でも、セットアップ完了までの時間や、使用者が利用できない時間が短くなり、使用者の利便性が向上する。
【0104】
又、感光体ドラム9や現像ローラ81には、フレや取付誤差等が存在し、回転させた際、厳密にはギャップ長が絶えず変化している。一方で、ギャップ長が短くなるほど、放電は生じやすくなる。そして、この構成では、感光体ドラム9と現像ローラ81のうち、一方を回転させながら、他方を停止させ放電検出行うので、放電が発生した時点の感光体ドラム9と現像ローラ81の回転位置が、ギャップ長が短くなる位置と推定でき、両方の結果を組み合わせれば、最もギャップ長が短くなる感光体ドラム9と現像ローラ81の回転位置を回転位置データとして取得することができる。
【0105】
又、基準画像形成部のみで放電が始まるピーク間電圧の検出を行えば、他の画像形成部3については、放電検出を行うことなく放電が始まるピーク間電圧を演算で得ることができる。従って、放電検出に要する時間は、短縮化される。又、所定のタイミングで、一度は、全ての画像形成部3に対して放電検出を行い、差分データを取得するので、以後の放電検出では、他の画像形成部3では、放電検出を行う必要が無くなる。尚、所定のタイミングとは、放電検出を初めて行う場合、感光体ドラム9や現像ローラ81を交換した場合、ある程度の枚数(例えば、数千枚)を行って、感光体ドラム9の摩耗が進んだ場合など、差分データがない場合や、新たに差分データを取得すべき場合にあわせて、任意に設定することができる。
【0106】
又、最も放電が始まるピーク間電圧の小さい画像形成部3は、他の画像形成部3よりも放電検出が早く終了し、又、次回以降の放電検出でも放電が始まるピーク間電圧が最も小さいと推測されるので、この構成によれば、基準画像形成部に対する1回の放電検出に要する時間を最短にすることができる。又、非画像領域F2の方が、画像領域F1よりも感光体ドラム9と現像ローラ81間のギャップ長が短くなり、放電は、基本的に、非画像領域F2と現像ローラ81間で生じる。従って、放電によりトナー像が形成される画像領域F1で放電が発生せず、画像領域F1にピンホール等の画像の品質を低下させる損傷が生じなくなる。
【0107】
次に、他の実施形態について説明する。上記の実施形態では、各感光体ドラム9から中間転写ベルト52に1次転写し、その後、シートに2次転写する例を挙げたが、各感光体ドラム9からシートに直接トナー像を転写する構成においても、本発明を適用することができる(例えば、各感光体ドラム9に転写ローラが直接接し、シートがそのニップを通過する態様や、搬送用ベルトが各感光体ドラム9に接し、シートを搬送用ベルトに載せ、シートがそのニップを通過する態様など)。又、上記の実施形態では、正帯電の感光体ドラム9やトナーを例に挙げて説明したが、本発明は負帯電の感光体ドラム9やトナーを用いた場合にも適用することができる。
【0108】
上記の説明では、所定のタイミングで実施される放電検出において、放電が始まるピーク間電圧が最も小さい画像形成部3を基準画像形成部と定めたが、これに限られず、いずれの画像形成部3を基準画像形成部としてもよい。又、画像形成部3ごとに差分データを取得しておき(図8(b)参照)、簡易的な放電検出ごとに制御部10は、基準画像形成部を切り替えるようにしてもよい。これにより、放電検出が行われる画像形成部3が分散され、放電によるダメージが1つの感光体ドラム9に集中して蓄積されにくくなる。従って、感光体ドラム9の寿命が長くなる。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、複数の画像形成部3を有する画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 プリンタ(画像形成装置) 10 制御部
12 記憶部 14 検出部
3(3a、3b、3c、3d) 画像形成部
9(9a、9b、9c、9d) 感光体ドラム
81(81a、81b、81c、81d) 現像ローラ
86 交流電圧印加部 91 目印部材(91a、91b)
92(92a、92b) センサ F1 画像領域
F2 非画像領域 M1、M2 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムと、前記感光体ドラムへのトナーの供給のため印刷時にトナーを担持し、前記感光体ドラムにギャップが設けられつつ対向する現像ローラと、回転位置の把握のために前記感光体ドラムと前記現像ローラのそれぞれに設けられ、前記感光体ドラムと前記現像ローラに伴って回転する目印部材と、を含む画像形成部と、
前記目印部材の測定を行うセンサと、
前記現像ローラに電圧を印加する交流電圧印加部と、
前記現像ローラと前記感光体ドラム間での放電発生を検出するための検出部と、
前記感光体ドラム及び前記現像ローラを回転させるための1又は複数のモータと、
前記交流電圧印加部と前記モータを制御し、又、前記検出部の出力に基づき放電発生を認識するとともに、前記センサの出力に基づき前記感光体ドラム及び前記現像ローラの回転位置を把握する制御部と、
前記ギャップが最も短くなる前記感光体ドラムと前記現像ローラの回転位置を示す回転位置データを記憶する記憶部と、を備え、
前記現像ローラに印加する交流電圧のピーク間電圧を段階的に変化させ、前記感光体ドラムと前記現像ローラ間で放電が始まるピーク間電圧の検出を行う放電検出時、
前記制御部は、前記回転位置データを参照し、前記感光体ドラムと前記現像ローラの回転位置を前記ギャップが最も短くなる位置とした後、段階的にピーク間電圧を変化させ、放電を検出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記感光体ドラムを停止させた状態で、前記現像ローラを回転させるとともに、前記現像ローラを少なくとも1回転させる間、ピーク間電圧を変化させないで交流電圧を印加させ、放電が検出されなければピーク間電圧を段階的に変化させ、放電が検出された時、前記現像ローラの回転位置を把握する動作と、
又、前記現像ローラを停止させた状態で、前記感光体ドラムを回転させるとともに、前記感光体ドラムを少なくとも1回転させる間、ピーク間電圧を変化させないで交流電圧を印加させ、放電が検出されなければピーク間電圧を段階的に変化させ、放電が検出された時、前記感光体ドラムの回転位置を把握する動作の2つの動作で、前記回転位置データを取得し、前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成部を複数有し、
前記画像形成部ごとに前記交流電圧印加部と前記検出部と前記センサが設けられ、
前記記憶部は、前記画像形成部のうち、基準となる基準画像形成部と、他の前記画像形成部との、前記感光体ドラムと前記現像ローラ間で放電が始まるピーク間電圧の差分を示す差分データを記憶し、
前記制御部は、前記基準画像形成部でのみ、放電が始まるピーク間電圧の検出を行い、検出されたピーク間電圧と、前記差分データに基づき、演算により、他の前記画像形成部の放電が始まるピーク間電圧を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、所定のタイミングで、全ての前記画像形成部について、放電が始まるピーク間電圧の検出を行い、得られた検出結果に基づき、前記差分データを生成し、前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、放電検出時、前記交流電圧印加部が出力可能な最低値から、段階的にピーク間電圧を大きくさせて、放電の発生を検出し、
前記所定のタイミングで実行された全ての前記画像形成部での放電が始まるピーク間電圧の検出結果に基づき、最も放電が始まるピーク間電圧の小さい前記画像形成部を前記基準画像形成部と定めることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記感光体ドラムは、周面に、トナーが形成される領域である画像領域と、トナー像が形成されない領域である非画像領域を有し、
前記現像ローラは、前記画像領域と前記非画像領域の両方に前記ギャップが設けられつつ対向し、
前記非画像領域の感光層としての膜厚は、前記画像領域よりも厚く形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記現像ローラは、前記感光体ドラムでトナー像が形成されない非画像領域に対向する部分の方が、前記感光体ドラムでトナー像が形成される画像領域に対向する部分よりも、ギャップ長が短くなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−224071(P2010−224071A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69265(P2009−69265)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】