説明

画像検査装置

【課題】画像検査装置において、被検体からの光を複数の波長帯域に分けて画像を取得して画像検査を行う場合に、簡素な構成により高精度な検査を行うことができるようにする。
【解決手段】画像検査装置50は、可視光Lと、赤外光Lとを、導体パターン2に照射する照明部4と、導体パターン2で反射された可視光Lおよび赤外光Lを結像する撮像光学系6と、撮像光学系6によって結像された像を撮像する撮像素子8と、導体パターン2と撮像素子8との間の光路上で進退可能に設けられ、可視光Lの透過を阻止するとともに赤外光Lを透過させる可視光カットフィルタ7bと、導体パターン2と撮像光学系6との間の光路上で進退可能に設けられ、赤外光Lの透過を阻止するとともに可視光Lを透過させる赤外光カットフィルタ7aと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置に関する。例えば、被検体からの光を複数の波長帯域に分けて画像を取得しそれらの画像を用いて画像検査を行う画像検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の画像を取得しこの画像により被検体の検査を行う画像検査装置が広く用いられている。このような画像検査装置では、被検体の明度や分光反射率特性などによっては、例えば、被検体と背景との境界が不明確になったりする場合があった。このため、被検体に応じて波長の異なる照明光を照射し、それぞれの波長光の反射光によって形成される画像を比較するなどして、画像検査を行うものが知られている。
このような画像検査装置として、例えば、特許文献1には、農水産物をカメラにより撮像して得られた画像を処理して外観検査をする農水産物の外観検査装置において、検査対象物からの反射光を2系統の光路に分光するハーフミラーと、一方の光路上に設置されて近赤外光領域のみを通過させる近赤外光フィルタと、他方の光路上に設置されて可視光領域のみを通過させる可視光フィルタと、両光路の端部にそれぞれ設置されたカメラと、一方のカメラにより撮像された近赤外光画像の形状から検査対象の形状特徴量を計測する手段と、他方のカメラにより撮像された可視光画像に2値化した近赤外光画像を用いたマスク処理を施して検査対象領域の画像のみを抽出する手段と、検査対象領域のみからなる可視光画像から検査対象物の表面特徴量を計測する手段と、を備えて円形の検査対象物の外観検査をすることを特徴とする農水産物の外観検査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−62839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の画像検査装置には以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、植物生体が表面で近赤外光を反射させやすいことを利用して、近赤外光による被検体画像から、背景に対応する領域を検出して、可視光による画像のマスク処理を行い、背景画像の除去を行っている。このため、被検体および背景からの反射光を可視光と近赤外光とに分光して、それぞれ、別々に用意されたCCDカメラによって、可視光画像および近赤外光画像を取得している。
このような構成では、2台のCCDカメラによって可視光画像と近赤外光画像とをそれぞれ別々に撮像するため、装置構成が複雑で大型化してしまうという問題がある。
また、各画像を位置合わせできるように、光学倍率やCCDカメラの設置位置などの調整を行う必要がある。このため、調整作業にたいへんな手間がかかるという問題がある。
また、このような調整を行っても、2台のCCDカメラのレンズ収差はそれぞれ異なるため、それぞれの画像を画像全体にわたって厳密に位置合わせすることは困難であり、例えば、基板上の配線パターンなど、微小な長さや形状を高精度に計測する必要がある場合には、測定誤差が大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、被検体からの光を複数の波長帯域に分けて画像を取得して画像検査を行う場合に、簡素な構成により高精度な検査を行うことができる画像検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、第1の波長帯域を有する第1波長光と、前記第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域を有する第2波長光とを、被検体に照射する照明部と、前記被検体で反射された前記第1波長光および前記第2波長光を結像する結像光学系と、該結像光学系によって結像された像を撮像する撮像素子と、前記被検体と前記撮像素子との間の光路上で進退可能に設けられ、前記第1波長光の透過を阻止するとともに前記第2波長光を透過させる第1の波長カットフィルタと、前記被検体と前記撮像素子との間の光路上で進退可能に設けられ、前記第2波長光の透過を阻止するとともに前記第1波長光を透過させる第2の波長カットフィルタと、を備える構成とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の画像検査装置において、前記第1の波長カットフィルタおよび前記第2の波長カットフィルタを、前記光路上に選択的に切り換えて進出させる波長カットフィルタ切換部を備える構成とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の画像検査装置において、前記照明部は、前記第1波長光と前記第2波長光とを選択的に切り換えて前記被検体に照射する照明波長切換手段を備える構成とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の画像検査装置において、前記波長カットフィルタ切換部および前記照明波長切換手段の切換動作を、前記第1の波長カットフィルタが選択されるとともに前記第2波長光が選択され、前記第2の波長カットフィルタが選択されるとともに前記第1波長光が選択されるように、それぞれの選択動作を同期させる切換制御部を備える構成とする。
【0010】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の画像検査装置において、前記第1波長光は前記可視光であり、前記第2波長光は赤外光である構成とする。
【0011】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の画像検査装置において、前記第1および第2の波長カットフィルタは、前記結像光学系と前記撮像素子との間の光路上に進退可能に設けられた構成とする。
【0012】
請求項7に記載の発明では、一部が被覆部で覆われた被検体の画像検査を行う画像検査装置であって、前記被検体で反射されるとともに前記被覆部で吸収される第1の波長帯域を有する第1波長光と、前記被検体で反射されるとともに前記被覆部を透過する第2の波長帯域を有する第2波長光とを、被検体に照射する照明部と、前記被検体で反射された前記第1波長光および前記第2波長光を結像する結像光学系と、該結像光学系によって結像された像を撮像する撮像素子と、前記被検体と前記撮像素子との間の光路上で進退可能に設けられ、前記第1波長光の透過を阻止するとともに前記第2波長光を透過させる第1の波長カットフィルタと、前記被検体と前記撮像素子との間の光路上で進退可能に設けられ、前記第2波長光の透過を阻止するとともに前記第1波長光を透過させる第2の波長カットフィルタと、を備える構成とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像検査装置によれば、被検体と撮像素子との間で進退可能に設けられた第1および第2の波長カットフィルタを備えるため、結像光学系および撮像素子を変えることなく、被検体で反射された第1波長光および第2波長光のいずれかを選択的に撮像することができるため、被検体からの光を複数の波長帯域に分けて画像を取得して画像検査を行う場合に、簡素な構成により高精度な検査を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像検査装置の概略構成を示す模式的な正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る画像検査装置の測定に用いる被検体の一例を示す図1におけるA視の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る画像検査装置で取得する赤外光画像、可視光画像、および画像処理後の画像の例を示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る画像検査装置の概略構成を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0016】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る画像検査装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像検査装置の概略構成を示す模式的な正面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る画像検査装置の測定に用いる被検体の一例を示す図1におけるA視の平面図である。
【0017】
本実施形態の画像検査装置50は、被検体の画像を取得し、この被検体の画像に基づいて画像検査を行うものである。
画像検査装置50の概略構成は、図1に示すように、被検体保持台11、照明部4、撮像部5、画像処理部9、およびモニタ10を備える。
【0018】
画像検査装置50を用いて検査する被検体としては、異なる波長帯域を有する2種類の波長光を照射したときに反射光によって異なる画像が取得される被検体であれば、特に限定されない。以下では、一例として、図2に示すプリント基板1上に形成された導体パターン2の場合の例で説明する。
導体パターン2は、例えば、配線部やランド部など、適宜形状のパターンを採用することができる。図2の例では、一例として、矩形状の金属薄膜からなる導体パターン2a、2bが並んで配列されている。
本実施形態では、プリント基板1、導体パターン2の材質として、それぞれ、ガラスエポキシ、金を採用している。
導体パターン2aは、プリント基板1上に形成され、プリント基板1の表面に露出しているものである。一方、導体パターン2bは、プリント基板1上に形成されているものの、レジスト3(被覆部)によって被覆されている。
【0019】
レジスト3の材質としては、適宜のものを採用することができるが、本実施形態では、光吸収率が、青色光の波長帯域、すなわちピーク波長がλ=470(nm)である第1の波長帯域で大きくなり、赤外光の波長帯域、例えば、近赤外光に分類されるピーク波長がλ=880(nm)である第2の波長帯域では小さくなる材質を採用している。このため、第2の波長帯域の光は、レジスト3にほとんど吸収されることなく、レジスト3を透過することができるようになっている。
これに対して、導体パターン2に用いた金は、第1および第2の波長帯域のいずれにおいても、レジスト3に比べて高い反射率を有している。
また、プリント基板1は、第1および第2の波長帯域のいずれにおいても、導体パターン2に用いた金に比べて、低い反射率を有している。
【0020】
このような状態は、例えば、プリント基板1上に導体パターン2a、2bを形成した後、それらを覆う範囲に層状にレジストをコーティングし、導体パターン2a、2bをエッチングするためのパターンを露光し、現像して露光領域のレジストが除去された段階での状態などに相当する。
【0021】
被検体保持台11は、プリント基板1を導体パターン2が鉛直上方に向いた状態で水平に載置して保持するものである。
被検体保持台11は、プリント基板1を水平方向に移動するため、例えば、エア吸着機構を備えるXYステージや、複数のプリント基板1を一定方向に搬送する水平搬送機構を備えていてもよい。これらの水平移動手段を備える場合、プリント基板1上の導体パターン2の検査位置を迅速に変更することができて効率的な検査を行うことができる。
【0022】
照明部4は、図1に示すように、ピーク波長がλの青色光である可視光L(第1波長光)を導体パターン2に照射する可視光照明部4aと、ピーク波長がλである赤外光L(第2波長光)を導体パターン2に向けて照射する赤外光照明部4bとを備え、被検体保持台11の上方の一定位置に配置されている。
照明部4の具体的な構成は、導体パターン2に対して、可視光照明部4a、赤外光照明部4bから出射される可視光L、赤外光Lを、検査すべき観察すべき欠陥の画像の検出に支障がない程度の照度ムラの範囲で照射することができれば、特に限定されない。
例えば、レーザやLEDなどで発生された可視光L、赤外光Lを光ファイバによって、導光して導体パターン2に照射する構成としてもよいし、ハロゲン光源で発生された白色光を、分光フィルタによって波長選択して可視光L、赤外光Lを生成して導体パターン2に照射する構成としてもよい。また、導体パターン2上の照度分布を調整するため、適宜の照明光学系や均一化光学系を備える構成としてもよい。
本実施形態では、一例として、水平面上の円周に沿ってピーク波長がλ、λのLEDを複数配置してリング状の発光部を形成したリング光源を採用している。
このように、本実施形態では、波長帯域の幅が狭いLEDを採用しているため、可視光Lの波長帯域と赤外光Lの波長帯域とは、波長帯域が異なるだけでなく、波長帯域の重なりもない場合の例となっている。
【0023】
撮像部5は、照明部4によって導体パターン2上に照射された可視光L、赤外光Lの反射光による像をそれぞれ撮像して、可視光L、赤外光Lによる検査画像を取得するものである。
撮像部5の概略構成は、撮像光学系6(結像光学系)、赤外光カットフィルタ7a(第2の波長カットフィルタ)、可視光カットフィルタ7b(第1の波長カットフィルタ)、撮像素子8、およびこれらを内部に収容する撮像部本体5aを備える。
本実施形態の撮像部5は、不図示の保持部材によって撮像部本体5aを保持することにより、照明部4の上方において照明部4のリング状の開口に臨む位置関係に配置されている。
【0024】
撮像光学系6は、導体パターン2に照射された可視光Lおよび赤外光Lの反射光を結像して、導体パターン2が形成されたプリント基板1の表面の画像を取得するための結像光学系であり、適宜枚数のレンズ群が鏡筒に収容されたものである。
撮像部本体5aの下面には、プリント基板1の表面からの反射光を撮像光学系6に入射させるための開口(不図示)が設けられている。
また、撮像光学系6は、不図示の移動機構によって撮像部本体5aの内部で鉛直軸に沿う方向に移動可能に設けられ、必要に応じて焦点調整ができるようになっている。
撮像光学系6は、単焦点の光学系でもズーム光学系でもよい。
【0025】
赤外光カットフィルタ7aは、赤外光Lの透過を阻止するとともに可視光Lを透過させる分光透過率特性を有するフィルタであり、撮像光学系6と撮像光学系6の像面との間の光路上に進退させる進退機構12に保持されている。
赤外光Lの透過率は0%、可視光Lの透過率は100%とすることが好ましいが、赤外光Lの透過光量が可視光Lによる画像のノイズ成分とならない程度であれば、可視光Lの透過率は100%より低くてもよく、赤外光Lの透過率は0%より高くてもよい。
進退機構12の具体的な構成としては、赤外光カットフィルタ7aを板状のスライダに保持して水平方向の一定方向に沿って往復移動させるスライド機構や、赤外光カットフィルタ7aを鉛直軸に平行な回動軸を中心に回動する円板上に保持して回動位置を切り換えるレボルバ機構などを好適に採用することができる。
本実施形態の進退機構12は、撮像部本体5aが外部に設けられたレバーやダイヤルなどの操作部を介して、進退位置を手動で切り換えられるようにしている。
【0026】
可視光カットフィルタ7bは、可視光Lの透過を阻止するとともに赤外光Lを透過させる分光透過率特性を有するフィルタであり、赤外光カットフィルタ7aと同様、進退機構12によって保持され、撮像光学系6と撮像光学系6の像面との間の光路上に進退可能に設けられている。可視光Lの透過率は0%、赤外光Lの透過率は100%とすることが好ましいが、可視光Lの透過光量が赤外光Lによる画像のノイズ成分とならない程度であれば、赤外光Lの透過率は100%より低くてもよく、可視光Lの透過率は0%より高くてもよい。
【0027】
なお、図1は見易さのため、赤外光カットフィルタ7aと可視光カットフィルタ7bとの進出位置は、光軸に沿う方向(図示上下方向)にずれているように描いているが、本実施形態では、赤外光カットフィルタ7aと可視光カットフィルタ7bとを、光路上に同時に進出させる必要はないため、赤外光カットフィルタ7aと可視光カットフィルタ7bとの進出位置は同一の位置であってもよい。
したがって、進退機構12としては、赤外光カットフィルタ7aと可視光カットフィルタ7bとのそれぞれに同様な進退機構を別々に設けた構成としてもよいが、本実施形態では、それぞれを共通のスライダや回動する円板上に保持させて、それぞれの移動位置や回動位置を切り換えることにより赤外光カットフィルタ7aおよび可視光カットフィルタ7bのいずれかが、光路上に選択的に配置される構成としている。
このため、進退機構12は、可視光カットフィルタ7bおよび赤外光カットフィルタ7aを、光路上に選択的に切り換えて進出させる波長カットフィルタ切換部を構成している。
【0028】
また、赤外光カットフィルタ7aおよび可視光カットフィルタ7bの光路長は、赤外光カットフィルタ7aと撮像光学系6とからなる光学系の可視光Lの波長光による共役長と、可視光カットフィルタ7bと撮像光学系6とからなる光学系の赤外光Lの波長光による共役長とが一致するように設定しておく。ここで「一致する」とは、共役長にわずかな差があっても共役長の差による倍率誤差が許容範囲に収まっている場合を含むものとする。
例えば、撮像光学系6が色消しレンズである場合には、赤外光カットフィルタ7aの可視光Lにおける光路長と、可視光カットフィルタ7bの赤外光Lにおける光路長とを一致させる。また、撮像光学系6が色収差を有する構成とし、色収差を補正できるように赤外光カットフィルタ7a、可視光カットフィルタ7bの光路長を変えることで共役長を略一致させてもよい。
【0029】
なお、倍率誤差の許容範囲は、画像検査に必要な検出精度に応じて適宜設定する。
例えば、欠陥抽出を行って欠陥の大きさや形状を検査する場合には、検査規格によって決まる検出精度が必要である。また、欠陥の情報から欠陥をリペアしたり除去したりする場合には、欠陥の大きさや位置がリペアや欠陥除去の支障とならない程度の検出精度が必要である。
また、例えば、配線パターンの画像検査においては配線の線幅の許容誤差範囲を細分できる程度の寸法検出精度が必要である。
【0030】
撮像素子8は、撮像面8aに投影された光像を光電変換して、映像信号を取得するものであり、画像処理部9に電気的に接続され、取得された映像信号を画像処理部9に送出できるようになっている。
撮像面8aは、撮像光学系6と、赤外光カットフィルタ7aまたは可視光カットフィルタ7bとからなる光学系によって、プリント基板1の表面と共役となる位置に配置されている。このため、撮像素子8は、撮像光学系6によって結像されたプリント基板1の表面の像を撮像できるようになっている。
撮像素子8の具体的な構成としては、例えば、CCDやCMOS素子などを採用することができる。
【0031】
画像処理部9は、撮像素子8と電気的に接続され、撮像素子8から送出された映像信号から2次元画像データを取得し適宜の画像処理を施すものである。また、撮像素子8は、モニタ10に電気的に接続され、取得された2次元画像データおよび画像処理された2次元画像データに基づく画像をモニタ10に表示させるものである。
画像処理部9が行う画像処理としては、例えば、2値化処理や、画像間の差分演算処理や、欠陥を検出するための粒子解析処理などを挙げることができる。
画像処理部9の装置構成は、本実施形態では、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などを備えるコンピュータを採用している。
【0032】
次に、本実施形態の画像検査装置50の動作について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る画像検査装置の測定に用いる被検体の一例を示す図1におけるA視の平面図である。図3(a)、(b)、(c)は、それぞれ、本発明の第1の実施形態に係る画像検査装置で取得する赤外光画像、可視光画像、および画像処理後の画像の例を示す模式図である。
【0033】
画像検査装置50によって導体パターン2の画像検査を行うには、図1に示すように、プリント基板1を導体パターン2が鉛直上方に向けられた状態で水平に載置し、検査すべき導体パターン2が撮像光学系6の撮像範囲内に収まるように水平方向の位置を合わせる。
そして、照明部4を点灯し、可視光照明部4a、赤外光照明部4bから、それぞれ可視光L、赤外光Lをプリント基板1上に照射する。
可視光Lはピーク波長λの狭帯域光であり、導体パターン2では良好に反射されるものの、プリント基板1およびレジスト3では吸収されてほとんど反射されない。このため、プリント基板1上で露出された導体パターン2aにおいて反射された可視光Lが、照明部4の開口を通して撮像光学系6に入射する。
一方、赤外光Lはピーク波長λの狭帯域光であり、プリント基板1では吸収されてほとんど反射されないものの、導体パターン2では良好に反射される。また、レジスト3に対しては、ほとんど反射されることなく透過する。
このため、プリント基板1上で露出された導体パターン2aおよびレジスト3で被覆された導体パターン2bにおいて反射された赤外光Lが、照明部4の開口を通して撮像光学系6に入射する。
【0034】
したがって、撮像光学系6と撮像素子8との間の光路において、赤外光カットフィルタ7aを退避させて可視光カットフィルタ7bを進出させることにより、撮像面8a上に、導体パターン2a、2bで反射された赤外光Lによる像が結像される。
そして、図3(a)に示すように、導体パターン2a、2bの形状に対応した高輝度画像Ia、Ibと、導体パターン2a、2bを除くプリント基板1上の領域に対応する低輝度画像Idとからなる赤外光画像IL2が撮像素子8により撮像される。なお、図3(a)(図3(b)、(c)も同様)には、比較の便宜のため、レジスト3の平面視形状を二点鎖線Bによって表示している。
撮像素子8で撮像された映像信号は、画像処理部9に送出されて2次元画像データに変換され2値化処理される。これにより、高輝度画像Ia、Ibの領域が白画像Ia’、Ib’、低輝度画像Idの領域が背景の黒画像Id’となる2値画像IL2’が得られる。この2値化処理により、プリント基板1による反射光などの微弱光によるノイズが除去される。また、赤外光Lの照度ムラやレジスト3でわずかに発生する吸収など影響により発生する高輝度画像Ia、Ibの間の輝度差が解消される。
また、このように2値化処理を行うことで、可視光カットフィルタ7bの透過率特性が可視光Lをわずかに透過させるものであっても、可視光Lの影響を除去することができる。
【0035】
2値画像IL2’は、画像処理部9のメモリや外部記憶装置などに記憶されるとともに、画像処理部9からモニタ10に送出され、モニタ10の表示画面に表示される。
このため、検査者は、導体パターン2a、2bの形状を白画像Ia’、Ib’としてモニタ10上で観察することができ、導体パターン2a、2bの形状に異常がないかどうか検査したり、線幅の測定などの適宜の画像計測を行ったりすることができる。
図3(a)では示していないが、導体パターン2a、2bに導体の欠落による断線や貫通孔などの欠陥がある場合には、それらは黒画像となるため視認することができる。
このような欠陥は、画像処理部9によって、例えば粒子解析などの画像処理を行って抽出し、大きさや位置などを定量的に評価することもできる。
【0036】
また、撮像光学系6と撮像素子8との間の光路において、赤外光カットフィルタ7aを進出させて可視光カットフィルタ7bを退避させることにより、撮像面8a上に、導体パターン2a、2bで反射された可視光Lによる像が結像される。このとき、可視光Lはレジスト3に吸収されるため、導体パターン2bからの反射光は発生しない。
このため、図3(b)に示すように、導体パターン2aの形状に対応した高輝度画像Iaと、導体パターン2aを除くプリント基板1上の領域に対応する低輝度画像Idとからなる可視光画像IL1が撮像される。なお、図3(b)には、比較の便宜のため、導体パターン2bの平面視形状を二点鎖線Cによって表示している。
高輝度画像Ia、低輝度画像Idは、画像処理部9によって2値化処理され、それぞれ白画像Ia’、黒画像Id’に変換され、2値画像IL1’が得られる。
【0037】
2値画像IL1’は、画像処理部9のメモリや外部記憶装置などに記憶されるとともに、画像処理部9からモニタ10に送出され、モニタ10の表示画面に表示される。
このとき、本実施形態では、可視光カットフィルタ7bの代わりに赤外光カットフィルタ7aを光路中に進出させても、それぞれと撮像光学系6とで構成される光学系の共役長は、一致されているため、2値画像IL1’における白画像Ia’と、2値画像IL2’における白画像Ia’とは、同じ位置に同じ大きさで形成される。
このため、検査者は、プリント基板1上に露出された導体パターン2aのみの形状を2値画像IL1’の白画像Ia’としてモニタ10上で観察することができ、2値画像IL2’の場合と同様にして検査や評価を行うことができる。
【0038】
また、画像処理部9によって、2値画像IL2’と2値画像IL1’との差分を取る演算を行うことにより、図3(c)に示すように、2値画像IL2’から白画像Ia’を除去して、白画像Ib’と黒画像Id3'とからなる2値画像IΔ’を取得することができる。なお、図3(c)には、比較の便宜のため、導体パターン2aの平面視形状を二点鎖線Dによって表示している。
このため、検査者は、レジスト3に被覆された導体パターン2bのみの形状を2値画像IΔ’の白画像Ib’としてモニタ10上で観察することができ、2値画像IL2’の場合と同様にして検査や評価を行うことができる。
【0039】
ここで、赤外光カットフィルタ7aが進出された場合と、可視光カットフィルタ7bが進出された場合とで、共役長が異なると、共役長の違いによる倍率誤差が発生する。このため、2値画像IΔ’の二点鎖線Dの近傍、あるいは導体パターン2aに欠陥がある場合には二点鎖線Dで囲まれた領域内に、わずかに白画像が残る場合がある。
この場合、白画像の出現位置および大きさ(幅、面積)は、予測できるため、2値画像Ib’に含まれる欠陥の画像とは容易に区別できる。また、差分処理を行った後に、画像処理部9によって、倍率誤差の原因による白画像を除去する処理を行ってもよい。
【0040】
このように本実施形態の画像検査装置50によれば、被検体と撮像素子8との間で進退可能に設けられた可視光カットフィルタ7b、赤外光カットフィルタ7aを備えるため、撮像光学系6および撮像素子8を変えることなく、被検体で反射された可視光Lおよび赤外光Lのいずれかを選択的に撮像することができる。
すなわち、波長帯域ごとに複数の結像光学系や複数の撮像素子を用いて検査画像を取得する場合のように、結像光学系や撮像素子を複数設けたり、分光部材などの部材を備えたりしなくてもよいため、部品点数を削減することができ、低コスト化が可能である。また省スペース化を図ることができる。
また、複数の検査画像の位置や倍率を合わせる複雑な調整を行う必要もないため、検査の作業効率を向上することができる。
このように、画像検査装置50によれば、被検体からの光を複数の波長帯域に分けて画像を取得して画像検査を行う場合に、簡素な構成により高精度な検査を行うことができる。
【0041】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る画像検査装置について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る画像検査装置の概略構成を示す模式的な正面図である。
【0042】
本実施形態の画像検査装置50Aは、上記第1の実施形態の画像検査装置50の進退機構12に代えて、波長カットフィルタ切換部21を備え、さらに、測定制御部20を追加したものである。以下、上記第1の実施形態の画像検査装置50と異なる点を中心に説明する。
【0043】
波長カットフィルタ切換部21は、上記第1の実施形態の進退機構12を電動駆動できるようにしたものであり、測定制御部20に電気的に接続され、測定制御部20から制御信号に基づいて、可視光カットフィルタ7bと赤外光カットフィルタ7aとの進出位置を選択的に切り換えられるようになっている。
例えば、進退機構12がスライド機構からなる場合には、スライド駆動を行うためのアクチュエータを備えた構成を採用することができる。また、進退機構12がレボルバ機構からなる場合には、モータ駆動により円板を回動させる構成を採用することができる。
【0044】
測定制御部20は、照明部4、および波長カットフィルタ切換部21に電気的に接続され、それぞれに対して制御信号を送出して、照明部4から照射される光の波長帯域を選択的に切り換えるとともに、可視光カットフィルタ7bおよび赤外光カットフィルタ7aを光路上に選択的に切り換えて進出させる制御を行うものである。
それぞれの切り換えは、可視光照明部4aを点灯させ赤外光照明部4bを消灯させる切り換え動作と、可視光カットフィルタ7bに代えて赤外光カットフィルタ7aを光路上に進出させる切り換え動作を同期して行う第1の切り換え動作と、可視光照明部4aを消灯させ赤外光照明部4bを点灯させる切り換え動作と、赤外光カットフィルタ7aに代えて可視光カットフィルタ7bを光路上に進出させる切り換え動作を同期して行う第2の切り換え動作とを選択的に行うようにする。
【0045】
測定制御部20の構成としては、第1および第2の切り換え動作に対応する制御信号を生成する適宜のスイッチング回路などのハードウェアを採用することができる。また、画像処理部9と同様、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などを備えるコンピュータを採用してもよい。
【0046】
測定制御部20は、第1波長光と第2波長光とを選択的に切り換えて被検体に照射する照明波長切換手段を構成している。また、波長カットフィルタ切換部および照明波長切換手段の切換動作を、第1の波長カットフィルタが選択されるとともに第2波長光が選択され、第2の波長カットフィルタが選択されるとともに第1波長光が選択されるように、それぞれの選択動作を同期させる切換制御部を構成している。
【0047】
画像検査装置50Aによれば、測定制御部20によって、第1の切り換え動作を行うことにより、画像検査装置50Aが可視光Lによって被検体の画像を取得できる状態に設定される。また、第2の切り換え動作を行うことにより、画像検査装置50Aが赤外光Lによって被検体の画像を取得できる状態に設定される
したがって、上記第1の実施形態と同様の画像検査を、迅速かつ円滑に行うことができる。
また、測定制御部20の第1および第2の切り換え動作を適宜タイミングで自動的に行い、これに連動して、画像処理部9が画像取得を行うようにすれば、自動的に検査画像が取得されてより迅速な画像検査を行うことができる。
また、画像検査装置50Aによれば、可視光Lと赤外光Lとが同時に被検体に照射されることがないため、照明部4の消費電力を低減することができる。
【0048】
なお、上記の説明では、赤外光カットフィルタ7a、可視光カットフィルタ7bを撮像光学系6と撮像素子8との間の光路上に進退させる場合の例で説明したが、赤外光カットフィルタ7a、可視光カットフィルタ7bは、撮像光学系6と被検体との間の光路上に進退される構成としてもよい。
【0049】
また、上記の説明では、第1の波長帯域と第2の波長帯域とが、互いに重なることのないように異なる場合の例で説明したが、2値化処理における誤差とならない程度の光量であれば、互いに一部が重なるような分光分布を有していてもよい。
【0050】
また、上記の説明では、一部が被覆部で覆われた被検体を画像検査する場合の例で説明したが、被検体は被覆部があるものには限定されない。例えば、被検体が、分光反射率が異なる複数の材質で構成されている場合や、同一材質であっても分光反射率が異なる複数の表面状態が形成されている場合にも好適に用いることができる。
【0051】
また、上記の各実施形態で説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり、削除したりして実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 プリント基板
2、2a、2b 導体パターン(被検体)
3 レジスト(被覆部)
4 照明部
4a 可視光照明部
4b 赤外光照明部
5 撮像部
6 撮像光学系(結像光学系)
7a 赤外光カットフィルタ(第2の波長カットフィルタ)
7b 可視光カットフィルタ(第1の波長カットフィルタ)
8 撮像素子
9 画像処理部
10 モニタ
12 進退機構(波長カットフィルタ切換部)
20 測定制御部(照明波長切換手段、切換制御部)
21 波長カットフィルタ切換部
50、50A 画像検査装置
可視光(第1波長光)
赤外光(第2波長光)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長帯域を有する第1波長光と、前記第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域を有する第2波長光とを、被検体に照射する照明部と、
前記被検体で反射された前記第1波長光および前記第2波長光を結像する結像光学系と、
該結像光学系によって結像された像を撮像する撮像素子と、
前記被検体と前記撮像素子との間の光路上で進退可能に設けられ、前記第1波長光の透過を阻止するとともに前記第2波長光を透過させる第1の波長カットフィルタと、
前記被検体と前記撮像素子との間の光路上で進退可能に設けられ、前記第2波長光の透過を阻止するとともに前記第1波長光を透過させる第2の波長カットフィルタと、
を備えることを特徴とする画像検査装置。
【請求項2】
前記第1の波長カットフィルタおよび前記第2の波長カットフィルタを、前記光路上に選択的に切り換えて進出させる波長カットフィルタ切換部を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像検査装置。
【請求項3】
前記照明部は、
前記第1波長光と前記第2波長光とを選択的に切り換えて前記被検体に照射する照明波長切換手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記波長カットフィルタ切換部および前記照明波長切換手段の切換動作を、前記第1の波長カットフィルタが選択されるとともに前記第2波長光が選択され、前記第2の波長カットフィルタが選択されるとともに前記第1波長光が選択されるように、それぞれの選択動作を同期させる切換制御部を備えることを特徴とする請求項3に記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記第1波長光は前記可視光であり、前記第2波長光は赤外光であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の画像検査装置。
【請求項6】
前記第1および第2の波長カットフィルタは、前記結像光学系と前記撮像素子との間の光路上に進退可能に設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像検査装置。
【請求項7】
一部が被覆部で覆われた被検体の画像検査を行う画像検査装置であって、
前記被検体で反射されるとともに前記被覆部で吸収される第1の波長帯域を有する第1波長光と、前記被検体で反射されるとともに前記被覆部を透過する第2の波長帯域を有する第2波長光とを、被検体に照射する照明部と、
前記被検体で反射された前記第1波長光および前記第2波長光を結像する結像光学系と、
該結像光学系によって結像された像を撮像する撮像素子と、
前記被検体と前記撮像素子との間の光路上で進退可能に設けられ、前記第1波長光の透過を阻止するとともに前記第2波長光を透過させる第1の波長カットフィルタと、
前記被検体と前記撮像素子との間の光路上で進退可能に設けられ、前記第2波長光の透過を阻止するとともに前記第1波長光を透過させる第2の波長カットフィルタと、
を備えることを特徴とする画像検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−123019(P2011−123019A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283036(P2009−283036)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】