目標値算出方法及び装置
【課題】過渡運転状態におけるNOxを削減する。
【解決手段】本目標値算出方法は、排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得するステップと、取得された吸気酸素濃度の目標値と、排気を排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出するステップと、算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、エンジンの新気量の目標値を算出するステップとを含む。過渡状態におけるエンジン特性を向上させる。
【解決手段】本目標値算出方法は、排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得するステップと、取得された吸気酸素濃度の目標値と、排気を排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出するステップと、算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、エンジンの新気量の目標値を算出するステップとを含む。過渡状態におけるエンジン特性を向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、エンジンの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のディーゼルエンジンは、エンジン燃焼室内に噴射する燃料噴射量によってトルクが決まり、負荷によってエンジン回転数が決まるという比較的単純な機関であった。しかし、近年のディーゼルエンジンにおいては、エミッションの低減と燃費の向上を目的として、新気量(MAF:Mass Air Flow)と吸気圧(MAP:Manifold Air Pressure)を適切に制御して最適な燃焼状態を保つための吸気系コントローラが設置されている。
【0003】
図1に、近年におけるディーゼルエンジンの吸気系の構成を示す。吸気系には、可変ノズルターボVNT(Variable Nozzle Turbo)と排気循環器EGR(Exhaust Gas Recirculation)の2つの機器が備えられている。
【0004】
VNTは、十分な新気を燃焼室に送り込むことで燃焼を促進し、排気中のスス(PM:Particulate Matter)を低減するために使用される。EGRは、酸素の少ない不活性な排気ガスを燃焼室に送り込むことで燃焼温度と酸素濃度を抑制し、排気中の窒素酸化物(NOx)を低減するために使用される。
【0005】
図2に吸気制御系の構成例を示す。図2に示されているように、計画器1000には、燃料噴射量及びエンジン回転数の組み合わせで表される運転条件に対応付けて、定常時における目標EGRバルブ開度、定常時における目標新気量、定常時における目標吸気量及び定常時における目標VNTノズル開度が登録されている。そして、ある運転条件が計画器1000に入力されると、計画器1000は、当該運転条件に対応付けられている目標EGRバルブ開度、目標新気量、目標吸気圧及び目標VNTノズル開度を出力する。
【0006】
吸気系コントローラ1100は、目標新気量とエンジン1200の出力側における新気量MAFの測定結果との誤差に対して予め定められた制御処理を実施し、EGRバルブ開度の制御値として出力する。また、吸気系コントローラ1100は、目標吸気圧とエンジン1200の出力側における吸気圧MAPの測定結果との誤差に対して予め定められた制御処理を実施、VNTノズル開度の制御値として出力する。
【0007】
そして、計画器1000からの目標EGRバルブ開度と吸気系コントローラ1100からのEGRバルブ開度の制御値との和によって、EGRバルブ開度を制御する。同様に、計画器1000からの目標VNTノズル開度と吸気系コントローラ1100からのVNTノズル開度の制御値との和によって、VNTノズル開度を制御する。
【0008】
図2に模式的に示すように、計画器1000には、運転条件(燃料噴射量とエンジン回転数との組み合わせ)に応じた各目標値が、いわゆる2次元テーブルの状態で保存されており、その時々の運転条件に応じた目標値が出力される。ここで、各目標値は運転条件一定の定常運転状態における値であり、定常状態において使用するには問題ない。しかし、運転条件が連続的に変化する、いわゆる過渡運転状態の場合や、定常状態であっても外気温度やDPF(Diesel particulate filter)の詰まり具合による排気圧の変化など、外的な要因が変化する場合では最適とは言えない。従って、たとえ目標値に完全に追従したとしても、最終的なエミッションや燃費が悪化してしまうという問題点がある。
【0009】
例えば、一般に低負荷域では、希薄燃焼となるため、高負荷域に比べEGR管内の残留酸素が多く、EGRの効果を得るためにEGR率をやや高めにする。高負荷域では、EGR管内の残留酸素が少ないため、低負荷域から高負荷域への過渡運転状態においては、徐々にEGRを閉じていくことになる。しかしながら、低負荷域ではEGRにおける流量自体が少ないため、還流に時間がかかり、過渡運転後期において過渡運転初期の酸素濃度の高いEGRガスが遅れてインテークレシーバに入ってくるため、想定以上に吸気酸素濃度が上昇し、NOxが過剰に生成されてしまうことになる。
【0010】
また、DPFが詰まっている等の理由で排気圧力が増大した場合、エンジンの体積効率低下によりMAFが減少し、それを補うためにコントローラはEGRバルブを閉じてEGR流量を減少させる。しかし、これによって吸気酸素濃度が上昇し、NOxが過剰に生成されてしまうことになる。
【0011】
さらに、MAFセンサや燃料噴射量に誤差がある場合に、真の空気量の過不足とそれによる吸気酸素濃度の変化により、想定と異なる吸気酸素濃度となり、NOxの発生量が想定とずれてしまうことになる。
【0012】
なお、EGR制御については、EGR率を精度良く算出するための技術が存在している。しかしながら、EGRを介して排ガスを還流するのにかかる還流時間を考慮したものではない。
【0013】
また、タービン後の低圧な排気ガスをコンプレッサ・インタークーラを通して還流するLP−EGR(Low Pressure EGR)と呼ばれる吸気系の構成をとる場合、インタークーラから排気還流ガスが抜け出るのに長い時間がかかってしまい、新気量増大の時間的遅れが生ずるため、インタークーラをバイパスするバイパス通路を設ける技術が存在している。この技術においては、このようなバイパス通路の開閉を制御することでNOxを削減する。しかしながら、LP−EGRやバイパス通路が存在することが前提となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−339191号公報
【特許文献2】特開2010−203281号公報
【特許文献3】特開2007−162523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本技術の目的は、一側面において、エンジンの吸気制御系において、過渡運転状態におけるNOxを削減するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本技術の一側面に係る目標値算出方法は、(A)排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得するステップと、(B)取得された吸気酸素濃度の目標値と、排気を排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出するステップと、(C)算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、エンジンの新気量の目標値を算出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0017】
エンジンの吸気制御系において、過渡運転状態におけるNOxを削減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、エンジンの模式図である。
【図2】図2は、エンジンの従来の吸気制御系を説明するためのブロック線図である。
【図3】図3は、エンジン内部の気体の状態を示す模式図である。
【図4】図4は、本技術の実施の形態に係るエンジン及びエンジン制御装置を示す図である。
【図5】図5は、第1の実施の形態に係る計画器の構成を示す図である。
【図6】図6は、第1の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【図7】図7は、燃料噴射量の時間変化の一例を示す図である。
【図8】図8は、エンジン回転数の時間変化の一例を示す図である。
【図9】図9は、MAF目標値の時間変化の一例を示す図である。
【図10】図10は、MAP目標値の時間変化の一例を示す図である。
【図11】図11は、吸気酸素濃度の時間変化の一例を示す図である。
【図12】図12は、酸素量の時間変化の一例を示す図である。
【図13】図13は、EGR率の時間変化の一例を示す図である。
【図14】図14は、NOx濃度の時間変化の一例を示す図である。
【図15】図15は、第2の実施の形態に係る計画器の構成を示す図である。
【図16】図16は、第2の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【図17】図17は、第3の実施の形態に係る計画器の構成を示す図である。
【図18】図18は、第3の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【図19】図19は、第3の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【図20】図20は、エンジン制御装置をコンピュータで実装する場合のコンピュータの機能ブロック図である。
【図21】図21は、本実施の形態に係る目標値算出装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図3に、図1に示したエンジン内部の気体の状態を示す。本実施の形態に係るエンジンでは、排ガスの圧力によってVNTタービン1201を回して新気を取り入れる。新気を取り入れる側の外気圧をp1とし、排ガスを出力している側の外気圧をp4とする。また、空気中の酸素濃度がξo2であるものとする。
【0020】
さらに、VNTタービン1201によって圧縮された新気の質量流量をm*air(図3ではmの上にドットが付いているが、本文では上付きの*で代替する)とする。なお、m*とは、質量の時間微分値であり、質量の単位時間当たりの変化量を表す。さらに、EGR1205における排ガスの質量流量をm*egrとする。なお、EGR1205の断面積をAegrとし、排ガスをEGR1205を介して還流するのにかかる時間をEGR還流時間τegrとする。
【0021】
そして、外部から取り入れられた空気とEGR1205からの排ガスとはインテークレシーバ1202(吸気マニフォールド又はインテークマニホールドとも呼ぶ)で合流する。このインテークレシーバ1202における圧力をp2とし、インテークレシーバ1202の体積をVirとし、インテークレシーバ1202内の気体温度をθ2とし、インテークレシーバ1202内の酸素濃度をΨio2とする。
【0022】
さらに、インテークレシーバ1202からエンジン本体のシリンダ1203に流入する気体の質量流量をm*eとする。また、エンジン排気量をVdとし、エンジン回転数をωeとし、インテークレシーバ1202から流入する気体が排出されるまでの時間をシリンダ通過時間τcylとする。さらに、エンジン本体に供給される燃料噴射量をqとする。
【0023】
また、エンジン本体の後ろのエキゾーストレシーバ1204(Exhaust Receiver)内の圧力をp3とし、エキゾーストレシーバ1204の体積をVerとし、エキゾーストレシーバ1204の温度をθ3とし、エキゾーストレシーバ1204における排気酸素濃度をΨeo2とする。
【0024】
さらに、エキゾーストレシーバ1204からVNTタービン1201側に流れ出る排ガスの質量流量をm*tとする。VNTタービン1201側の管の断面積をAvntとし、VNTタービン1201の回転数をωtcとする。
【0025】
このような時に吸気酸素濃度Ψio2及び排気酸素濃度Ψeo2は以下のように表される。なお、これらの式は質量保存則に従っている。
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
【0028】
(1)式における右辺第1項は、外部から吸入された空気の酸素濃度についての項であり、右辺第2項は、EGR1205から送られてくる排ガスの酸素濃度についての項である。
【0029】
なお、Xegrは、EGR率(排気還流率とも呼ぶ)であり、以下のように表される。
【0030】
【数3】
【0031】
(2)式における右辺分子の第1項は、インテークレシーバ1202から流入する酸素濃度を表す項であり、右辺分子の第2項は、エンジンシリンダ1203における燃焼分を表す項である。なお、Lstは、理論空燃比を表す。(2)式における分母は、エンジンシリンダ1203に流入する気体の流量を表す。
【0032】
さらに(1)及び(2)式をそれぞれΨio2及びΨeo2について解くと以下のようになる。
【0033】
【数4】
【0034】
【数5】
【0035】
なお、空気過剰率λを測定するλセンサが存在する場合、排気酸素濃度は以下のように算出される。
【0036】
【数6】
【0037】
また、エンジン吸入空気量は、気体の状態方程式から、以下のように表される。
【0038】
【数7】
【0039】
ここで、vは回転制御数を表し、ここでは2である。また、Rは気体定数を表し、ηは体積効率を表す。体積効率は、エンジン回転数ωeとインテークレシーバ1202内の圧力p2とについて例えば2次元テーブルを予め用意しておき、当該2次元テーブルから該当する値を読み出すようにする。但し、簡単のため体積効率については「1」に設定するようにしても良い。
【0040】
さらに、EGR還流時間τegrは以下のように表される。
【0041】
【数8】
【0042】
ここで、VegrはEGR1205の管内容量を表し、pegrはEGR1205の管内圧力を表し、θegrはEGR1205の管内温度を表す。また、V*egr(上付けの*はVの上のドットを表すものとする)は、体積流量を表す。このように、τegrは、V*egrの体積流量の気体がVegrを通過する時間として表される。
【0043】
また、シリンダ通過時間τcylは、以下のように算出される。
【0044】
【数9】
【0045】
さらに、EGR流量m*egrはオリフィスの式によって以下のように表される。
【0046】
【数10】
【0047】
ここでcegrはオリフィス係数を表し、ΨegrはEGR1205のオリフィス効率を表す。具体的にオリフィス効率Ψは以下のように表される。
【0048】
【数11】
【0049】
以下、このような関係式に基づきMAF及びMAPの適切な目標値を算出する方法について具体的に説明する。
【0050】
[実施の形態1]
図4に、本技術の実施の形態に係るエンジンの一例としてディーゼルエンジンを示す。エンジン本体1には、エンジン本体1からの排ガスを供給する排気循環器EGRと、排ガスの圧力にてタービンを回して新気(Fresh Air)を圧縮してエンジン本体1に供給する可変ノズルターボVNTとが接続されている。可変ノズルターボVNTのノズル開度を調整することによって、可変ノズルターボVNTのタービンの回転が調整され、吸気圧(MAP)センサ101で測定される吸気圧(MAP)が調整される。一方、排気循環器EGRに設けられているEGRバルブのバルブ開度を調整することによって、新気量(MAF)センサ106で測定される新気量(MAF)が調整される。
【0051】
また、EGRバルブ及びVNTノズルの制御を行うエンジン制御装置100には、燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値が外部から入力されるようになっており、さらに、MAPセンサ101からの吸気圧測定値と、MAFセンサ106からの新気量測定値も入力されるようになっている。
【0052】
さらに、第1の実施の形態では、インテークレシーバ1202内における吸気温度センサ102により測定される吸気温度θ2が、エンジン制御装置100に入力されるようになっている。また、第2の実施の形態では、λセンサ105により測定される空気過剰率λも、エンジン制御装置100にさらに入力されるようになっている。さらに、第3の実施の形態では、排気温度センサ103により測定される、エキゾーストレシーバ1204内の排気温度θ3と、排気圧力センサ104により測定される、エキゾーストレシーバ1204内の排気圧力p3も、入力されるようになっている。
【0053】
エンジン制御装置100の上位レベルのブロック線図は、図2に示したものと同じである。但し、本実施の形態では、図2に示した計画器1000は、図5に示すような構成を有する。
【0054】
計画器1000は、吸気酸素濃度テーブル1010と、吸気酸素総量テーブル1020と、EGR還流時間算出部1030と、EGR率算出部1040と、エンジン吸入空気量算出部1050と、MAP算出部1060と、EGR流量算出部1070と、MAF算出部1070と、MAF算出部1080とを有する。
【0055】
吸気酸素濃度テーブル1010は、燃料噴射量q及びエンジン回転数ωeの組み合わせに対応付けて吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refが登録されているテーブルである。予め実験などにより測定した結果を、例えばテーブル化して登録しておく。この吸気酸素濃度テーブル1010の出力は、EGR率算出部1040とエンジン吸入空気量算出部1050とに入力される。
【0056】
吸気酸素総量テーブル1020は、燃料噴射量q及びエンジン回転数ωeの組み合わせに対応付けて吸気酸素総量の目標値μio2_refが登録されているテーブルである。予め実験などにより測定した結果を、例えばテーブル化して登録しておく。この吸気酸素総量テーブル1020の出力は、エンジン吸入空気量算出部1050に入力される。
【0057】
エンジン吸入空気量算出部1050は、吸気酸素濃度テーブル1010からの出力である吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refと、吸気酸素総量テーブル1020からの出力である吸気酸素総量の目標値μioe2_refとから、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refを算出する。EGR率算出部1040は、燃料噴射量qと、EGR還流時間τegrと、吸気酸素濃度テーブル1010からの吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refと、エンジン吸入空気量算出部1050からのエンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、EGR率の目標値Xegr_refを算出する。
【0058】
MAP算出部1060は、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refと、エンジン回転数ωeと、吸気温度センサ102の測定結果である吸気温度θ2とから、MAP目標値p2_refを算出する。EGR流量算出部1070は、EGR率の目標値Xegr_refとエンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、EGR流量の目標値m*egr_refを算出する。一方、MAF算出部1080は、EGR率の目標値Xegr_refとエンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、MAFの目標値m*air_refを算出する。
【0059】
EGR還流時間算出部1030は、吸気温度センサ102の測定結果である吸気温度θ2とEGR流量の目標値m*egr_refとMAP目標値p2_refとから、EGR還流時間τegrを算出する。
【0060】
次に、本実施の形態に係る計画器1000の処理内容について、図6を用いて説明する。エンジン制御装置100の計画器1000に、燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値を含む運転状態が入力されると、計画器1000は、吸気酸素濃度テーブル1010から吸気酸素濃度の目標値Ψio2_ref、吸気酸素総量テーブル1020から吸気酸素総量の目標値μio2_refを取得する(ステップS1)。取得された吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refは、エンジン吸入空気量算出部1050及びEGR率算出部1040に出力され、吸気酸素総量の目標値μio2_refはエンジン吸入空気量算出部1050に出力される。
【0061】
次に、エンジン吸入空気量算出部1050は、吸気酸素総量の目標値μio2_refを、吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refで除することにより、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refを算出する(ステップS3)。
【0062】
また、MAP算出部1060は、エンジン回転数ωeと、吸気温度センサ102の測定結果である吸気温度θ2と、エンジン吸入空気量算出部1050からのエンジン吸入空気量目標値m*e_refとを用い、所定の関係式に従って、MAP目標値p2_refを算出する(ステップS5)。
【0063】
所定の関係式は、以下に示すように、(6)式をp2_refの式に変形した(6b)式である。
【0064】
【数12】
【0065】
なお、体積効率η(ωe,p2)については、上でも述べたようにエンジン回転数及びインテークレシーバ1202内の圧力に応じた値となるが、今回は簡単のため常に1を設定している。
【0066】
そして、EGR率算出部1040は、エンジン吸入空気量目標値m*e_refと、燃料噴射量qと、吸気酸素濃度目標値Ψio2_refと、EGR還流時間τegrとから、所定の関係式に従って、EGR率の目標値Xegr_refを算出する(ステップS7)。
【0067】
所定の関係式は、以下に示すように、(3)式をXegr_refの式に変形した(3b)式である。
【0068】
【数13】
【0069】
エンジン吸入空気量m*eについては、エンジン吸入空気量目標値m*e_refを用いる。但し、τcyl+τegrだけ前の値を用いることになるので、エンジン吸入空気量算出部1050からのエンジン吸入空気量目標値m*e_refをメモリなどに蓄積しておき、ステップS7を実施する際に、該当する値を読み出して使用する。吸気酸素濃度Ψio2についても、吸気酸素濃度目標値Ψio2_refを用いる。そして、τcyl+τegrだけ前の値を用いることになるので、吸気酸素濃度テーブル1010からの吸気酸素濃度目標値Ψio2_refをメモリなどに蓄積しておき、ステップS7を実施する際に、対応する値を読み出して使用する。燃料噴射量qについても同様である。なお、ξo2及びLstについては定数である。
【0070】
その後、MAF算出部1080は、EGR算出部1040により算出されたEGR率の目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、MAFの目標値m*air_refを算出する(ステップS9)。具体的には、(1−Xegr_ref)*m*e_refで算出される。すなわち、EGR1205ではなくタービン側に流れてくる空気の質量流量としてMAFの目標値m*air_refを算出する。
【0071】
ステップS5及びS9で算出されたMAP目標値p2_ref及びMAF目標値m*air_refは、吸気系コントローラ1100に出力され、吸気系コントローラ1100は、従来どおりの制御を行う。
【0072】
ここで処理が終了する場合には(ステップS11:Yesルート)、そのまま処理を終了し、まだ処理を終了しない場合には(ステップS11:Noルート)、次のサイクルの前処理のため、ステップS13に移行する。
【0073】
具体的には、EGR流量算出部1070は、EGR率目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量目標値m*e_refとから、EGR流量の目標値m*egr_refを算出する(ステップS13)。具体的には、Xegr_ref*m*e_refで算出される。すなわち、MAF目標値m*air_refとEGR流量の目標値m*egr_refとを加算すれば、エンジン吸入空気量目標値m*e_refとなる。
【0074】
さらに、EGR還流時間算出部1030は、EGR流量目標値m*egr_refと、吸気温度θ2と、MAP目標値p2_refとから、(7)式に従ってEGR還流時間τegrを算出する(ステップS15)。なお、(7)式におけるθegrについては測定できないので、ここでは吸気温度θ2を代わりに用いる。また、エキゾーストレシーバ1204内における排気温度θ3が得られる場合には、吸気温度θ2と排気温度θ3の平均値を用いるようにしても良い。さらに、EGR1205内の圧力pegrもここでは得られないので代わりにMAP目標値p2_refを用いる。Vegr及びRは定数である。その後ステップS1に戻る。
【0075】
以上のように処理を実施すれば、EGR還流時間を考慮した上でEGR率が算出され、さらにMAF目標値も算出される。このようにすれば、例えば低負荷域から高負荷域への過渡運転時には、EGR還流時間を考慮して一時的にEGR率を高くするようになる。これによって、吸気酸素濃度及び酸素総量を低減させ、結果的にNOx増大を抑制することができるようになる。
【0076】
図7乃至図14を用いて、エンジン回転数一定で燃料噴射量を増加させた場合の状態変化を説明する。図7乃至図14において、横軸は時間を表している。図7において、縦軸は燃料噴射量[mm3/st]を表しており、燃料噴射量が増加していることが分かる。一方、図8において、縦軸はエンジン回転数[rpm]を表しており、エンジン回転数はほぼ一定である。このような場合に、本実施の形態によりMAF目標値[g/cyl]を算出すると、図9に示すようなMAF目標値の時間変化が得られる。図9において、縦軸はMAF目標値を表しており、従来技術によれば燃料噴射量に応じて増加していたが、本実施の形態によれば、一旦減少した後に急激に増加するようになっている。一方、図10に示すように、MAP目標値[kPa]については大きな変化はない。図10において、縦軸はMAP目標値を表しており、燃料噴射量の増加に応じてMAP目標値も増加している。
【0077】
さらに、図11に吸気酸素濃度の時間変化を示す。図11において、縦軸は吸気酸素濃度[%]を表しており、従来技術では一旦増加した後減少しているが、本実施の形態によれば、多少振動しているが、一旦増加するといったことはなく、全体的に減少するようになっている。すなわち、吸気酸素濃度が抑えられている。また、図12に酸素量の時間変化を示す。図12において、縦軸は酸素量[g]を表しており、図11と同様に従来技術によれば一旦増加している。一方、本実施の形態によれば、多少振動しているが、大幅に減少した後漸増している。但し、燃料噴射量が増加する前の値よりも増加することはない。このように、酸素量自体も抑えられている。
【0078】
一方、図13にEGR率の時間変化を示す。図13において、縦軸はEGR率[%]を表しており、従来技術によれば燃料噴射量とは反対にEGR率が減少しているが、本実施の形態によれば一旦増加した後減少するようになっている。このようにして排ガスを多めに還流させて酸素を減らした後に、酸素を増加させるようにEGR率が増加するようになっている。
【0079】
図14にNOx濃度の時間変化を示す。図14において、縦軸はNOx濃度[%]を表しており、従来技術によれば大きくNOx濃度が増加してしまっている。しかしながら、本実施の形態によれば、上で述べたような制御が行われるため、なだらかにNOx濃度は増加しているが、従来技術のように急激に増加することはない。
【0080】
このように、エミッションの低減が図られている。
【0081】
[実施の形態2]
第1の実施の形態では、燃料噴射量の値やMAPの値が正確に得られる場合を想定していたが、MAFセンサの測定値や燃料噴射量の値に誤差があると考えられる場合には、高精度に空気過剰率を測定可能なλセンサ105を導入することで対処できる。この場合の計画器1000bの構成を図15に示す。
【0082】
第1の実施の形態と異なる部分は、排気酸素濃度算出部1090を新たに導入し、EGR率算出部1040の代わりに第2EGR率算出部1040bを導入した部分である。
【0083】
すなわち、排気酸素濃度算出部1090は、λセンサ105で測定された空気過剰率から、(5)式に従って排気酸素濃度Ψeo2を算出する。そして、第2EGR率算出部1040bは、排気酸素濃度Ψeo2と、EGR還流時間τegrと、吸気酸素濃度目標値Ψio2_refとから、EGR率Xegr_refを算出する。他の構成要素については第1の実施の形態と同様であるから、説明を省略する。
【0084】
次に、第2の実施の形態に係る計画器1000bの処理内容を図16を用いて説明する。エンジン制御装置100の計画器1000bに、燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値を含む運転状態が入力されると、計画器1000bは、吸気酸素濃度テーブル1010から吸気酸素濃度の目標値Ψio2_ref、吸気酸素総量テーブル1020から吸気酸素総量の目標値μio2_refを取得する(ステップS21)。取得された吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refは、エンジン吸入空気量算出部1050及び第2EGR率算出部1040bに出力され、吸気酸素総量の目標値μio2_refはエンジン吸入空気量算出部1050に出力される。
【0085】
次に、エンジン吸入空気量算出部1050は、吸気酸素総量の目標値μio2_refを、吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refで除することにより、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refを算出する(ステップS23)。
【0086】
また、MAP算出部1060は、エンジン回転数ωeと、吸気温度センサ102の測定結果である吸気温度θ2と、エンジン吸入空気量算出部1050からのエンジン吸入空気量目標値m*e_refとを用い、所定の関係式に従って、MAP目標値p2_refを算出する(ステップS25)。所定の関係式は、第1の実施の形態と同様に、(6)式をp2_refの式に変形した(6b)式である。
【0087】
また、排気酸素濃度算出部1090は、λセンサ105からの空気過剰率λから排気酸素濃度Ψeo2を算出する(ステップS27)。具体的には、(5)式に従って算出する。
【0088】
そして、第2EGR率算出部1040bは、排気酸素濃度Ψeo2と、吸気酸素濃度目標値Ψio2_refと、EGR還流時間τegrとから、所定の関係式に従って、EGR率の目標値Xegr_refを算出する(ステップS29)。第1の実施の形態とは異なり、燃料噴射量q及びエンジン吸入空気量の目標値m*e_refの代わりに排気酸素濃度Ψeo2を用いる。
【0089】
本実施の形態における所定の関係式は、以下に示すように、(1)式をXegr_refの式に変形した(1b)式である。
【0090】
【数14】
【0091】
(1b)式から分かるように、排気酸素濃度Ψeo2については、EGR還流時間τegrだけ前の値を使用するので、排気酸素濃度算出部1090からの排気酸素濃度Ψeo2については、メモリなどに蓄積しておき、ステップS29を実施する際に、該当する値を読み出して使用する。ξo2は定数である。
【0092】
その後、MAF算出部1080は、第2EGR算出部1040bにより算出されたEGR率の目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、MAFの目標値m*air_refを算出する(ステップS31)。具体的には、(1−Xegr_ref)*m*e_refで算出される。すなわち、EGR1205ではなくタービン側に流れてくる空気の質量流量としてMAFの目標値m*air_refを算出する。
【0093】
ステップS25及びS31で算出されたMAP目標値p2_ref及びMAF目標値m*air_refは、吸気系コントローラ1100に出力され、吸気系コントローラ1100は、従来どおりの制御を行う。
【0094】
ここで処理が終了する場合には(ステップS33:Yesルート)、そのまま処理を終了し、まだ処理を終了しない場合には(ステップS33:Noルート)、次のサイクルの前処理のため、ステップS35に移行する。
【0095】
具体的には、EGR流量算出部1070は、EGR率目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量目標値m*e_refとから、EGR流量の目標値m*egr_refを算出する(ステップS35)。具体的には、Xegr_ref*m*e_refで算出される。すなわち、EGR率Xegr_refによって、エンジン吸入空気量目標値m*e_refが、MAF目標値m*air_refとEGR流量の目標値m*egr_refとに按分されている。
【0096】
さらに、EGR還流時間算出部1030は、EGR流量目標値m*egr_refと、吸気温度θ2と、MAP目標値p2_refとから、(7)式に従ってEGR還流時間τegrを算出する(ステップS37)。なお、(7)式におけるθegrについては測定できないので、ここでは吸気温度θ2を代わりに用いる。また、エキゾーストレシーバ1204内における排気温度θ3が得られる場合には、吸気温度θ2と排気温度θ3の平均値を用いるようにしても良い。さらに、EGR1205内の圧力pegrもここでは得られないので代わりにMAP目標値p2_refを用いる。Vegr及びRは定数である。その後ステップS21に戻る。
【0097】
このようにMAFセンサの測定値や燃料噴射量に誤差がある場合には、λセンサ105を導入することで、空気量の過不足を適切に把握することができ、第1の実施の形態と同様に、EGR還流時間を考慮した上でEGR率が算出されるようになる。そして、このEGR率に応じてMAF目標値も算出される。このようにすれば、過渡運転時における吸気酸素濃度及び酸素総量を低減させ、結果的にNOx増大を抑制することができるようになる。
【0098】
[実施の形態3]
例えばλセンサ105より外側に設けられるDPFが詰まっているような場合、排気圧が変化するが、このような場合にはエンジンの体積効率低下によりMAFが減少するという現象が生ずる。通常であれば、吸気系コントローラ1100はEGR流量を減らすように制御を行ってしまうが、そのため吸気酸素濃度が上昇してNOxが過剰に生成されるという問題がある。従って、本実施の形態では、第2の実施の形態を変形させることで、このような問題に対処する。
【0099】
本実施の形態に係る計画器1000cの構成を図17に示す。本実施の形態と第2の実施の形態との差は、吸気温度センサ102からの吸気温度θ2とエンジン回転数ωeとエンジン吸入空気量の目標値m*e_refからMAP目標値p2_refを算出するMAP算出部1060の代わりに、排気温度センサ103からの排気温度θ3と排気圧センサ104からの排気圧p3とEGR流量目標値m*egr_refとからMAP目標値p2_refを算出する第2MAP算出部1060bを導入している点である。他の構成要素については第2の実施の形態と同様であるから、説明を省略する。
【0100】
次に、第3の実施の形態に係る計画器1000cの処理内容を図18及び図19を用いて説明する。
【0101】
エンジン制御装置100の計画器1000cに、燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値を含む運転状態が入力されると、計画器1000cは、吸気酸素濃度テーブル1010から吸気酸素濃度の目標値Ψio2_ref、吸気酸素総量テーブル1020から吸気酸素総量の目標値μio2_refを取得する(ステップS51)。取得された吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refは、エンジン吸入空気量算出部1050及び第2EGR率算出部1040bに出力され、吸気酸素総量の目標値μio2_refはエンジン吸入空気量算出部1050に出力される。
【0102】
次に、エンジン吸入空気量算出部1050は、吸気酸素総量の目標値μio2_refを、吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refで除することにより、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refを算出する(ステップS53)。
【0103】
また、排気酸素濃度算出部1090は、λセンサ105からの空気過剰率λから排気酸素濃度Ψeo2を算出する(ステップS55)。具体的には、(5)式に従って算出する。
【0104】
そして、第2EGR率算出部1040bは、排気酸素濃度Ψeo2と、吸気酸素濃度目標値Ψio2_refと、EGR還流時間τegrとから、所定の関係式に従って、EGR率の目標値Xegr_refを算出する(ステップS57)。第2の実施の形態の説明で述べたように、所定の関係式は(1b)式である。
【0105】
その後、MAF算出部1080は、第2EGR算出部1040bにより算出されたEGR率の目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、MAFの目標値m*air_refを算出する(ステップS59)。具体的には、(1−Xegr_ref)*m*e_refで算出される。すなわち、EGR1205ではなくタービン側に流れてくる空気の質量流量としてMAFの目標値m*air_refを算出する。ここで処理は端子Aを介して図19の処理に移行する。
【0106】
図19の処理の説明に移行して、EGR流量算出部1070は、EGR率目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量目標値m*e_refとから、EGR流量の目標値m*egr_refを算出する(ステップS61)。具体的には、Xegr_ref*m*e_refで算出される。
【0107】
そして、第2MAP目標値算出部1060bは、排気温度センサ103からの排気温度θ3と排気圧センサ104の排気圧p3とEGR流量の目標値m*egr_refとから、所定の関係式に従って、MAP目標値p2_refを算出する(ステップS63)。
【0108】
所定の関係式は、(9)式をp2について解くことによって得られる(9b)式である。但し、本実施の形態では、0.5≦p2/p3<1の状態であるから、それを考慮して変形している。
【0109】
【数15】
【0110】
MAP目標値p2_ref及びMAF目標値m*air_refは、吸気系コントローラ1100に出力され、吸気系コントローラ1100は、従来どおりの制御を行う。
【0111】
ここで処理が終了する場合には(ステップS65:Yesルート)、そのまま処理を終了し、まだ処理を終了しない場合には(ステップS65:Noルート)、次のサイクルの前処理のため、ステップS67に移行する。
【0112】
具体的には、EGR還流時間算出部1030は、EGR流量目標値m*egr_refと、吸気温度θ2と、MAP目標値p2_refとから、(7)式に従ってEGR還流時間τegrを算出する(ステップS67)。なお、(7)式におけるθegrについては測定できないので、ここでは吸気温度θ2を代わりに用いる。また、エキゾーストレシーバ1204内における排気温度θ3が得られる場合には、吸気温度θ2と排気温度θ3の平均値を用いるようにしても良い。さらに、EGR1205内の圧力pegrもここでは得られないので代わりにMAP目標値p2_refを用いる。Vegr及びRは定数である。その後端子Bを介してステップS51に戻る。
【0113】
DPFが詰まっているような状態であっても、排気圧センサ104の測定値に応じてMAP目標値を算出するようになっている。これによって適切なEGR流量を確保して、エミッション排出量を抑制することができるようになる。
【0114】
なお、上で述べた実施の形態では、吸気酸素総量テーブル1020を設ける例を示したが、エンジン吸入空気量算出部1050と一体化して、エンジン吸入空気量テーブルを設けるようにしても良い。
【0115】
以上本技術の実施の形態を説明したが、本技術はこれらの実施の形態に限定されない。例えば、上で説明した機能ブロック図は、一例であって、必ずしも実際のプログラムモジュール構成と一致しない場合もある。処理フローについても、処理結果が変わらない限り、処理順番を入れ替えたり、並列実行することも可能である。
【0116】
なお、上で述べたエンジン制御装置100は、コンピュータ装置であって、図20に示すように、RAM(Random Access Memory)2501とプロセッサ2503とROM(Read Only Memory)2507とセンサ群2515とがバス2519で接続されている。本実施の形態における処理を実施するための制御プログラム(及び存在している場合にはオペレーティング・システム(OS:Operating System))は、ROM2507に格納されており、プロセッサ2503により実行される際にはROM2507からRAM2501に読み出される。状況に応じてプロセッサ2503は、センサ群101乃至106(場合によっては燃料噴射量測定部及びエンジン回転数測定部など。)を制御し、測定値を取得する。また、処理途中のデータについては、RAM2501に格納される。なお、プロセッサ2503は、ROM2507を含む場合もあり、さらに、RAM2501を含む場合もある。本技術の実施の形態では、上で述べた処理を実施するための制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能なリムーバブル・ディスクに格納されて頒布され、ROMライタによってROM2507に書き込まれる場合もある。このようなコンピュータ装置は、上で述べたプロセッサ2503、RAM2501、ROM2507などのハードウエアと制御プログラム(場合によってはOSも)とが有機的に協働することにより、上で述べたような各種機能を実現する。
【0117】
但し、エンジン制御装置全体をハードウエアのみにて実装することも可能である。
【0118】
以上述べた本実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0119】
本実施の形態にかかる目標値算出方法は、(A)排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得するステップと、(B)取得された吸気酸素濃度の目標値と、排気を排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出するステップと、(C)算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、エンジンの新気量の目標値を算出するステップとを含む。
【0120】
このように、排気を排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間を考慮した上で、排気還流率(すなわちEGR率)の目標値が算出されるので、インテークレシーバ側の吸気酸素濃度及び酸素総量を抑えることができ、NOx増大を適切に抑制することができるようになる。例えば、排気還流率の目標値は、エンジンのインテークレシーバにおける質量保存則に基づく式に従って算出される。
【0121】
なお、本目標値算出方法は、(D)取得されたエンジン吸入空気量目標値とエンジン回転数の設定値と吸気温度センサからの吸気温度とから、エンジンの吸気圧の目標値を算出するステップをさらに含むようにしても良い。これにより、吸気圧の目標値を適切に計算することができるようになる。エンジンの吸気圧の目標値は、例えばエンジンのシリンダについての気体の状態方程式に基づく式に従って算出される。
【0122】
また、本目標値算出方法は、(E)算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出するステップと、(F)排気循環器の温度に相当する温度と、算出されたエンジンの吸気圧の目標値と、算出された排気循環量の目標値とから、還流時間を算出するステップとをさらに含むようにしても良い。このようにすれば、適切に還流時間を算出することができる。排気循環器の温度に相当する温度としては、例えば吸気温度、吸気温度及び排気温度の平均値などであってもよい。また、還流時間は、例えば気体の状態方程式に基づく式に従って算出される。
【0123】
さらに、本目標値算出方法は、(G)算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出するステップと、(H)排気温度センサからの排気温度と、排気圧センサからの排気圧と、算出された排気還流流量の目標値とから、エンジンの吸気圧の目標値を算出するステップとをさらに含むようにしても良い。DPFの詰まりなどによって排気圧が変化しているような場合であっても、このような処理を実施すれば、吸気圧の目標値を適切に算出することができるようになる。
【0124】
さらに、本目標値算出方法は、(I)排気循環器の温度に相当する温度と、算出されたエンジンの吸気圧の目標値と、算出された排気還流流量の目標値とから、還流時間を算出するステップをさらに含むようにしても良い。
【0125】
また、排気還流率の目標値を算出するステップにおいて、エンジンの燃料噴射量の設定値とエンジン吸入空気量目標値と吸気酸素濃度の目標値とについて、還流時間とエンジンのシリンダを空気が通過するのにかかる通過時間との和だけ過去の値をさらに用いて、排気還流率の目標値を算出するようにしてもよい。
【0126】
さらに、排気還流率の目標値を算出するステップが、空気過剰率センサからの空気過剰率から排気酸素濃度を算出するステップと、還流時間だけ過去の排気酸素濃度をさらに用いて排気還流率の目標値を算出するステップとを含むようにしても良い。このようにすれば、燃料噴射量やMAFセンサに誤差があるような場合でも、空気過剰率センサを導入することで、適切に排気還流率の目標値を算出することができるようになる。すなわち、上で述べたように、NOxを抑制できるようになる。
【0127】
本実施の形態に係る目標値算出装置(図21:3000)は、(A)排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得する取得部(図21:3010)と、(B)取得された吸気酸素濃度の目標値と、排気を排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出する第1算出部(図21:3020)と、(C)算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、エンジンの新気量の目標値を算出する第2算出部(図21:3030)とを有する。第1算出部については、吸気酸素濃度の目標値などを格納するメモリを有する場合もある。
【0128】
なお、上記方法による処理をプロセッサに行わせるためのプログラムを作成することができ、当該プログラムは、例えばフレキシブルディスク、CD−ROM、光磁気ディスク、半導体メモリ、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体又は記憶装置に格納される。尚、中間的な処理結果はメインメモリ等の記憶装置に一時保管される。
【0129】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0130】
(付記1)
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得し、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出し、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する
処理をプロセッサに実行させるためのプログラム。
【0131】
(付記2)
取得された前記エンジン吸入空気量目標値と前記エンジン回転数の設定値と吸気温度センサからの吸気温度とから、前記エンジンの吸気圧の目標値を算出する
処理をさらにプロセッサに実行させるための付記1記載のプログラム。
【0132】
(付記3)
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出し、
前記排気循環器の温度に相当する温度と、算出された前記エンジンの吸気圧の目標値と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記還流時間を算出する
処理をさらに含む付記2記載のプログラム。
【0133】
(付記4)
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出し、
排気温度センサからの排気温度と、排気圧センサからの排気圧と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記エンジンの吸気圧の目標値を算出する
処理をさらに前記プロセッサに実行させるための付記1記載のプログラム。
【0134】
(付記5)
前記排気循環器の温度に相当する温度と、算出された前記エンジンの吸気圧の目標値と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記還流時間を算出する
処理をさらに前記プロセッサに実行させるための付記4記載のプログラム。
【0135】
(付記6)
前記排気還流率の目標値を算出する処理において、
前記エンジンの燃料噴射量の設定値と前記エンジン吸入空気量目標値と前記吸気酸素濃度の目標値とについて、前記還流時間と前記エンジンのシリンダを空気が通過するのにかかる通過時間との和だけ過去の値をさらに用いて、前記排気還流率の目標値を算出する
付記1乃至5のいずれか1つ記載のプログラム。
【0136】
(付記7)
前記排気還流率の目標値を算出する処理において
空気過剰率センサからの空気過剰率から排気酸素濃度を算出し、
前記還流時間だけ過去の排気酸素濃度をさらに用いて前記排気還流率の目標値を算出する
付記1乃至5のいずれか1つ記載のプログラム。
【0137】
(付記8)
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得し、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出し、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する
処理がプロセッサにより実行される目標値算出方法。
【0138】
(付記9)
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得する取得部と、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出する第1算出部と、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する第2算出部と、
を有する目標値算出装置。
【符号の説明】
【0139】
1010 吸気酸素濃度テーブル
1020 吸気酸素総量テーブル
1030 EGR還流時間算出部
1040 EGR率算出部
1050 エンジン吸入空気量算出部
1060 MAP算出部
1070 EGR流量算出部
1080 MAF算出部
1090 排気酸素濃度算出部
1040b 第2EGR率算出部
1060b 第2MAP算出部
【技術分野】
【0001】
本技術は、エンジンの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のディーゼルエンジンは、エンジン燃焼室内に噴射する燃料噴射量によってトルクが決まり、負荷によってエンジン回転数が決まるという比較的単純な機関であった。しかし、近年のディーゼルエンジンにおいては、エミッションの低減と燃費の向上を目的として、新気量(MAF:Mass Air Flow)と吸気圧(MAP:Manifold Air Pressure)を適切に制御して最適な燃焼状態を保つための吸気系コントローラが設置されている。
【0003】
図1に、近年におけるディーゼルエンジンの吸気系の構成を示す。吸気系には、可変ノズルターボVNT(Variable Nozzle Turbo)と排気循環器EGR(Exhaust Gas Recirculation)の2つの機器が備えられている。
【0004】
VNTは、十分な新気を燃焼室に送り込むことで燃焼を促進し、排気中のスス(PM:Particulate Matter)を低減するために使用される。EGRは、酸素の少ない不活性な排気ガスを燃焼室に送り込むことで燃焼温度と酸素濃度を抑制し、排気中の窒素酸化物(NOx)を低減するために使用される。
【0005】
図2に吸気制御系の構成例を示す。図2に示されているように、計画器1000には、燃料噴射量及びエンジン回転数の組み合わせで表される運転条件に対応付けて、定常時における目標EGRバルブ開度、定常時における目標新気量、定常時における目標吸気量及び定常時における目標VNTノズル開度が登録されている。そして、ある運転条件が計画器1000に入力されると、計画器1000は、当該運転条件に対応付けられている目標EGRバルブ開度、目標新気量、目標吸気圧及び目標VNTノズル開度を出力する。
【0006】
吸気系コントローラ1100は、目標新気量とエンジン1200の出力側における新気量MAFの測定結果との誤差に対して予め定められた制御処理を実施し、EGRバルブ開度の制御値として出力する。また、吸気系コントローラ1100は、目標吸気圧とエンジン1200の出力側における吸気圧MAPの測定結果との誤差に対して予め定められた制御処理を実施、VNTノズル開度の制御値として出力する。
【0007】
そして、計画器1000からの目標EGRバルブ開度と吸気系コントローラ1100からのEGRバルブ開度の制御値との和によって、EGRバルブ開度を制御する。同様に、計画器1000からの目標VNTノズル開度と吸気系コントローラ1100からのVNTノズル開度の制御値との和によって、VNTノズル開度を制御する。
【0008】
図2に模式的に示すように、計画器1000には、運転条件(燃料噴射量とエンジン回転数との組み合わせ)に応じた各目標値が、いわゆる2次元テーブルの状態で保存されており、その時々の運転条件に応じた目標値が出力される。ここで、各目標値は運転条件一定の定常運転状態における値であり、定常状態において使用するには問題ない。しかし、運転条件が連続的に変化する、いわゆる過渡運転状態の場合や、定常状態であっても外気温度やDPF(Diesel particulate filter)の詰まり具合による排気圧の変化など、外的な要因が変化する場合では最適とは言えない。従って、たとえ目標値に完全に追従したとしても、最終的なエミッションや燃費が悪化してしまうという問題点がある。
【0009】
例えば、一般に低負荷域では、希薄燃焼となるため、高負荷域に比べEGR管内の残留酸素が多く、EGRの効果を得るためにEGR率をやや高めにする。高負荷域では、EGR管内の残留酸素が少ないため、低負荷域から高負荷域への過渡運転状態においては、徐々にEGRを閉じていくことになる。しかしながら、低負荷域ではEGRにおける流量自体が少ないため、還流に時間がかかり、過渡運転後期において過渡運転初期の酸素濃度の高いEGRガスが遅れてインテークレシーバに入ってくるため、想定以上に吸気酸素濃度が上昇し、NOxが過剰に生成されてしまうことになる。
【0010】
また、DPFが詰まっている等の理由で排気圧力が増大した場合、エンジンの体積効率低下によりMAFが減少し、それを補うためにコントローラはEGRバルブを閉じてEGR流量を減少させる。しかし、これによって吸気酸素濃度が上昇し、NOxが過剰に生成されてしまうことになる。
【0011】
さらに、MAFセンサや燃料噴射量に誤差がある場合に、真の空気量の過不足とそれによる吸気酸素濃度の変化により、想定と異なる吸気酸素濃度となり、NOxの発生量が想定とずれてしまうことになる。
【0012】
なお、EGR制御については、EGR率を精度良く算出するための技術が存在している。しかしながら、EGRを介して排ガスを還流するのにかかる還流時間を考慮したものではない。
【0013】
また、タービン後の低圧な排気ガスをコンプレッサ・インタークーラを通して還流するLP−EGR(Low Pressure EGR)と呼ばれる吸気系の構成をとる場合、インタークーラから排気還流ガスが抜け出るのに長い時間がかかってしまい、新気量増大の時間的遅れが生ずるため、インタークーラをバイパスするバイパス通路を設ける技術が存在している。この技術においては、このようなバイパス通路の開閉を制御することでNOxを削減する。しかしながら、LP−EGRやバイパス通路が存在することが前提となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−339191号公報
【特許文献2】特開2010−203281号公報
【特許文献3】特開2007−162523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本技術の目的は、一側面において、エンジンの吸気制御系において、過渡運転状態におけるNOxを削減するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本技術の一側面に係る目標値算出方法は、(A)排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得するステップと、(B)取得された吸気酸素濃度の目標値と、排気を排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出するステップと、(C)算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、エンジンの新気量の目標値を算出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0017】
エンジンの吸気制御系において、過渡運転状態におけるNOxを削減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、エンジンの模式図である。
【図2】図2は、エンジンの従来の吸気制御系を説明するためのブロック線図である。
【図3】図3は、エンジン内部の気体の状態を示す模式図である。
【図4】図4は、本技術の実施の形態に係るエンジン及びエンジン制御装置を示す図である。
【図5】図5は、第1の実施の形態に係る計画器の構成を示す図である。
【図6】図6は、第1の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【図7】図7は、燃料噴射量の時間変化の一例を示す図である。
【図8】図8は、エンジン回転数の時間変化の一例を示す図である。
【図9】図9は、MAF目標値の時間変化の一例を示す図である。
【図10】図10は、MAP目標値の時間変化の一例を示す図である。
【図11】図11は、吸気酸素濃度の時間変化の一例を示す図である。
【図12】図12は、酸素量の時間変化の一例を示す図である。
【図13】図13は、EGR率の時間変化の一例を示す図である。
【図14】図14は、NOx濃度の時間変化の一例を示す図である。
【図15】図15は、第2の実施の形態に係る計画器の構成を示す図である。
【図16】図16は、第2の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【図17】図17は、第3の実施の形態に係る計画器の構成を示す図である。
【図18】図18は、第3の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【図19】図19は、第3の実施の形態に係る処理フローを示す図である。
【図20】図20は、エンジン制御装置をコンピュータで実装する場合のコンピュータの機能ブロック図である。
【図21】図21は、本実施の形態に係る目標値算出装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図3に、図1に示したエンジン内部の気体の状態を示す。本実施の形態に係るエンジンでは、排ガスの圧力によってVNTタービン1201を回して新気を取り入れる。新気を取り入れる側の外気圧をp1とし、排ガスを出力している側の外気圧をp4とする。また、空気中の酸素濃度がξo2であるものとする。
【0020】
さらに、VNTタービン1201によって圧縮された新気の質量流量をm*air(図3ではmの上にドットが付いているが、本文では上付きの*で代替する)とする。なお、m*とは、質量の時間微分値であり、質量の単位時間当たりの変化量を表す。さらに、EGR1205における排ガスの質量流量をm*egrとする。なお、EGR1205の断面積をAegrとし、排ガスをEGR1205を介して還流するのにかかる時間をEGR還流時間τegrとする。
【0021】
そして、外部から取り入れられた空気とEGR1205からの排ガスとはインテークレシーバ1202(吸気マニフォールド又はインテークマニホールドとも呼ぶ)で合流する。このインテークレシーバ1202における圧力をp2とし、インテークレシーバ1202の体積をVirとし、インテークレシーバ1202内の気体温度をθ2とし、インテークレシーバ1202内の酸素濃度をΨio2とする。
【0022】
さらに、インテークレシーバ1202からエンジン本体のシリンダ1203に流入する気体の質量流量をm*eとする。また、エンジン排気量をVdとし、エンジン回転数をωeとし、インテークレシーバ1202から流入する気体が排出されるまでの時間をシリンダ通過時間τcylとする。さらに、エンジン本体に供給される燃料噴射量をqとする。
【0023】
また、エンジン本体の後ろのエキゾーストレシーバ1204(Exhaust Receiver)内の圧力をp3とし、エキゾーストレシーバ1204の体積をVerとし、エキゾーストレシーバ1204の温度をθ3とし、エキゾーストレシーバ1204における排気酸素濃度をΨeo2とする。
【0024】
さらに、エキゾーストレシーバ1204からVNTタービン1201側に流れ出る排ガスの質量流量をm*tとする。VNTタービン1201側の管の断面積をAvntとし、VNTタービン1201の回転数をωtcとする。
【0025】
このような時に吸気酸素濃度Ψio2及び排気酸素濃度Ψeo2は以下のように表される。なお、これらの式は質量保存則に従っている。
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
【0028】
(1)式における右辺第1項は、外部から吸入された空気の酸素濃度についての項であり、右辺第2項は、EGR1205から送られてくる排ガスの酸素濃度についての項である。
【0029】
なお、Xegrは、EGR率(排気還流率とも呼ぶ)であり、以下のように表される。
【0030】
【数3】
【0031】
(2)式における右辺分子の第1項は、インテークレシーバ1202から流入する酸素濃度を表す項であり、右辺分子の第2項は、エンジンシリンダ1203における燃焼分を表す項である。なお、Lstは、理論空燃比を表す。(2)式における分母は、エンジンシリンダ1203に流入する気体の流量を表す。
【0032】
さらに(1)及び(2)式をそれぞれΨio2及びΨeo2について解くと以下のようになる。
【0033】
【数4】
【0034】
【数5】
【0035】
なお、空気過剰率λを測定するλセンサが存在する場合、排気酸素濃度は以下のように算出される。
【0036】
【数6】
【0037】
また、エンジン吸入空気量は、気体の状態方程式から、以下のように表される。
【0038】
【数7】
【0039】
ここで、vは回転制御数を表し、ここでは2である。また、Rは気体定数を表し、ηは体積効率を表す。体積効率は、エンジン回転数ωeとインテークレシーバ1202内の圧力p2とについて例えば2次元テーブルを予め用意しておき、当該2次元テーブルから該当する値を読み出すようにする。但し、簡単のため体積効率については「1」に設定するようにしても良い。
【0040】
さらに、EGR還流時間τegrは以下のように表される。
【0041】
【数8】
【0042】
ここで、VegrはEGR1205の管内容量を表し、pegrはEGR1205の管内圧力を表し、θegrはEGR1205の管内温度を表す。また、V*egr(上付けの*はVの上のドットを表すものとする)は、体積流量を表す。このように、τegrは、V*egrの体積流量の気体がVegrを通過する時間として表される。
【0043】
また、シリンダ通過時間τcylは、以下のように算出される。
【0044】
【数9】
【0045】
さらに、EGR流量m*egrはオリフィスの式によって以下のように表される。
【0046】
【数10】
【0047】
ここでcegrはオリフィス係数を表し、ΨegrはEGR1205のオリフィス効率を表す。具体的にオリフィス効率Ψは以下のように表される。
【0048】
【数11】
【0049】
以下、このような関係式に基づきMAF及びMAPの適切な目標値を算出する方法について具体的に説明する。
【0050】
[実施の形態1]
図4に、本技術の実施の形態に係るエンジンの一例としてディーゼルエンジンを示す。エンジン本体1には、エンジン本体1からの排ガスを供給する排気循環器EGRと、排ガスの圧力にてタービンを回して新気(Fresh Air)を圧縮してエンジン本体1に供給する可変ノズルターボVNTとが接続されている。可変ノズルターボVNTのノズル開度を調整することによって、可変ノズルターボVNTのタービンの回転が調整され、吸気圧(MAP)センサ101で測定される吸気圧(MAP)が調整される。一方、排気循環器EGRに設けられているEGRバルブのバルブ開度を調整することによって、新気量(MAF)センサ106で測定される新気量(MAF)が調整される。
【0051】
また、EGRバルブ及びVNTノズルの制御を行うエンジン制御装置100には、燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値が外部から入力されるようになっており、さらに、MAPセンサ101からの吸気圧測定値と、MAFセンサ106からの新気量測定値も入力されるようになっている。
【0052】
さらに、第1の実施の形態では、インテークレシーバ1202内における吸気温度センサ102により測定される吸気温度θ2が、エンジン制御装置100に入力されるようになっている。また、第2の実施の形態では、λセンサ105により測定される空気過剰率λも、エンジン制御装置100にさらに入力されるようになっている。さらに、第3の実施の形態では、排気温度センサ103により測定される、エキゾーストレシーバ1204内の排気温度θ3と、排気圧力センサ104により測定される、エキゾーストレシーバ1204内の排気圧力p3も、入力されるようになっている。
【0053】
エンジン制御装置100の上位レベルのブロック線図は、図2に示したものと同じである。但し、本実施の形態では、図2に示した計画器1000は、図5に示すような構成を有する。
【0054】
計画器1000は、吸気酸素濃度テーブル1010と、吸気酸素総量テーブル1020と、EGR還流時間算出部1030と、EGR率算出部1040と、エンジン吸入空気量算出部1050と、MAP算出部1060と、EGR流量算出部1070と、MAF算出部1070と、MAF算出部1080とを有する。
【0055】
吸気酸素濃度テーブル1010は、燃料噴射量q及びエンジン回転数ωeの組み合わせに対応付けて吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refが登録されているテーブルである。予め実験などにより測定した結果を、例えばテーブル化して登録しておく。この吸気酸素濃度テーブル1010の出力は、EGR率算出部1040とエンジン吸入空気量算出部1050とに入力される。
【0056】
吸気酸素総量テーブル1020は、燃料噴射量q及びエンジン回転数ωeの組み合わせに対応付けて吸気酸素総量の目標値μio2_refが登録されているテーブルである。予め実験などにより測定した結果を、例えばテーブル化して登録しておく。この吸気酸素総量テーブル1020の出力は、エンジン吸入空気量算出部1050に入力される。
【0057】
エンジン吸入空気量算出部1050は、吸気酸素濃度テーブル1010からの出力である吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refと、吸気酸素総量テーブル1020からの出力である吸気酸素総量の目標値μioe2_refとから、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refを算出する。EGR率算出部1040は、燃料噴射量qと、EGR還流時間τegrと、吸気酸素濃度テーブル1010からの吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refと、エンジン吸入空気量算出部1050からのエンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、EGR率の目標値Xegr_refを算出する。
【0058】
MAP算出部1060は、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refと、エンジン回転数ωeと、吸気温度センサ102の測定結果である吸気温度θ2とから、MAP目標値p2_refを算出する。EGR流量算出部1070は、EGR率の目標値Xegr_refとエンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、EGR流量の目標値m*egr_refを算出する。一方、MAF算出部1080は、EGR率の目標値Xegr_refとエンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、MAFの目標値m*air_refを算出する。
【0059】
EGR還流時間算出部1030は、吸気温度センサ102の測定結果である吸気温度θ2とEGR流量の目標値m*egr_refとMAP目標値p2_refとから、EGR還流時間τegrを算出する。
【0060】
次に、本実施の形態に係る計画器1000の処理内容について、図6を用いて説明する。エンジン制御装置100の計画器1000に、燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値を含む運転状態が入力されると、計画器1000は、吸気酸素濃度テーブル1010から吸気酸素濃度の目標値Ψio2_ref、吸気酸素総量テーブル1020から吸気酸素総量の目標値μio2_refを取得する(ステップS1)。取得された吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refは、エンジン吸入空気量算出部1050及びEGR率算出部1040に出力され、吸気酸素総量の目標値μio2_refはエンジン吸入空気量算出部1050に出力される。
【0061】
次に、エンジン吸入空気量算出部1050は、吸気酸素総量の目標値μio2_refを、吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refで除することにより、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refを算出する(ステップS3)。
【0062】
また、MAP算出部1060は、エンジン回転数ωeと、吸気温度センサ102の測定結果である吸気温度θ2と、エンジン吸入空気量算出部1050からのエンジン吸入空気量目標値m*e_refとを用い、所定の関係式に従って、MAP目標値p2_refを算出する(ステップS5)。
【0063】
所定の関係式は、以下に示すように、(6)式をp2_refの式に変形した(6b)式である。
【0064】
【数12】
【0065】
なお、体積効率η(ωe,p2)については、上でも述べたようにエンジン回転数及びインテークレシーバ1202内の圧力に応じた値となるが、今回は簡単のため常に1を設定している。
【0066】
そして、EGR率算出部1040は、エンジン吸入空気量目標値m*e_refと、燃料噴射量qと、吸気酸素濃度目標値Ψio2_refと、EGR還流時間τegrとから、所定の関係式に従って、EGR率の目標値Xegr_refを算出する(ステップS7)。
【0067】
所定の関係式は、以下に示すように、(3)式をXegr_refの式に変形した(3b)式である。
【0068】
【数13】
【0069】
エンジン吸入空気量m*eについては、エンジン吸入空気量目標値m*e_refを用いる。但し、τcyl+τegrだけ前の値を用いることになるので、エンジン吸入空気量算出部1050からのエンジン吸入空気量目標値m*e_refをメモリなどに蓄積しておき、ステップS7を実施する際に、該当する値を読み出して使用する。吸気酸素濃度Ψio2についても、吸気酸素濃度目標値Ψio2_refを用いる。そして、τcyl+τegrだけ前の値を用いることになるので、吸気酸素濃度テーブル1010からの吸気酸素濃度目標値Ψio2_refをメモリなどに蓄積しておき、ステップS7を実施する際に、対応する値を読み出して使用する。燃料噴射量qについても同様である。なお、ξo2及びLstについては定数である。
【0070】
その後、MAF算出部1080は、EGR算出部1040により算出されたEGR率の目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、MAFの目標値m*air_refを算出する(ステップS9)。具体的には、(1−Xegr_ref)*m*e_refで算出される。すなわち、EGR1205ではなくタービン側に流れてくる空気の質量流量としてMAFの目標値m*air_refを算出する。
【0071】
ステップS5及びS9で算出されたMAP目標値p2_ref及びMAF目標値m*air_refは、吸気系コントローラ1100に出力され、吸気系コントローラ1100は、従来どおりの制御を行う。
【0072】
ここで処理が終了する場合には(ステップS11:Yesルート)、そのまま処理を終了し、まだ処理を終了しない場合には(ステップS11:Noルート)、次のサイクルの前処理のため、ステップS13に移行する。
【0073】
具体的には、EGR流量算出部1070は、EGR率目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量目標値m*e_refとから、EGR流量の目標値m*egr_refを算出する(ステップS13)。具体的には、Xegr_ref*m*e_refで算出される。すなわち、MAF目標値m*air_refとEGR流量の目標値m*egr_refとを加算すれば、エンジン吸入空気量目標値m*e_refとなる。
【0074】
さらに、EGR還流時間算出部1030は、EGR流量目標値m*egr_refと、吸気温度θ2と、MAP目標値p2_refとから、(7)式に従ってEGR還流時間τegrを算出する(ステップS15)。なお、(7)式におけるθegrについては測定できないので、ここでは吸気温度θ2を代わりに用いる。また、エキゾーストレシーバ1204内における排気温度θ3が得られる場合には、吸気温度θ2と排気温度θ3の平均値を用いるようにしても良い。さらに、EGR1205内の圧力pegrもここでは得られないので代わりにMAP目標値p2_refを用いる。Vegr及びRは定数である。その後ステップS1に戻る。
【0075】
以上のように処理を実施すれば、EGR還流時間を考慮した上でEGR率が算出され、さらにMAF目標値も算出される。このようにすれば、例えば低負荷域から高負荷域への過渡運転時には、EGR還流時間を考慮して一時的にEGR率を高くするようになる。これによって、吸気酸素濃度及び酸素総量を低減させ、結果的にNOx増大を抑制することができるようになる。
【0076】
図7乃至図14を用いて、エンジン回転数一定で燃料噴射量を増加させた場合の状態変化を説明する。図7乃至図14において、横軸は時間を表している。図7において、縦軸は燃料噴射量[mm3/st]を表しており、燃料噴射量が増加していることが分かる。一方、図8において、縦軸はエンジン回転数[rpm]を表しており、エンジン回転数はほぼ一定である。このような場合に、本実施の形態によりMAF目標値[g/cyl]を算出すると、図9に示すようなMAF目標値の時間変化が得られる。図9において、縦軸はMAF目標値を表しており、従来技術によれば燃料噴射量に応じて増加していたが、本実施の形態によれば、一旦減少した後に急激に増加するようになっている。一方、図10に示すように、MAP目標値[kPa]については大きな変化はない。図10において、縦軸はMAP目標値を表しており、燃料噴射量の増加に応じてMAP目標値も増加している。
【0077】
さらに、図11に吸気酸素濃度の時間変化を示す。図11において、縦軸は吸気酸素濃度[%]を表しており、従来技術では一旦増加した後減少しているが、本実施の形態によれば、多少振動しているが、一旦増加するといったことはなく、全体的に減少するようになっている。すなわち、吸気酸素濃度が抑えられている。また、図12に酸素量の時間変化を示す。図12において、縦軸は酸素量[g]を表しており、図11と同様に従来技術によれば一旦増加している。一方、本実施の形態によれば、多少振動しているが、大幅に減少した後漸増している。但し、燃料噴射量が増加する前の値よりも増加することはない。このように、酸素量自体も抑えられている。
【0078】
一方、図13にEGR率の時間変化を示す。図13において、縦軸はEGR率[%]を表しており、従来技術によれば燃料噴射量とは反対にEGR率が減少しているが、本実施の形態によれば一旦増加した後減少するようになっている。このようにして排ガスを多めに還流させて酸素を減らした後に、酸素を増加させるようにEGR率が増加するようになっている。
【0079】
図14にNOx濃度の時間変化を示す。図14において、縦軸はNOx濃度[%]を表しており、従来技術によれば大きくNOx濃度が増加してしまっている。しかしながら、本実施の形態によれば、上で述べたような制御が行われるため、なだらかにNOx濃度は増加しているが、従来技術のように急激に増加することはない。
【0080】
このように、エミッションの低減が図られている。
【0081】
[実施の形態2]
第1の実施の形態では、燃料噴射量の値やMAPの値が正確に得られる場合を想定していたが、MAFセンサの測定値や燃料噴射量の値に誤差があると考えられる場合には、高精度に空気過剰率を測定可能なλセンサ105を導入することで対処できる。この場合の計画器1000bの構成を図15に示す。
【0082】
第1の実施の形態と異なる部分は、排気酸素濃度算出部1090を新たに導入し、EGR率算出部1040の代わりに第2EGR率算出部1040bを導入した部分である。
【0083】
すなわち、排気酸素濃度算出部1090は、λセンサ105で測定された空気過剰率から、(5)式に従って排気酸素濃度Ψeo2を算出する。そして、第2EGR率算出部1040bは、排気酸素濃度Ψeo2と、EGR還流時間τegrと、吸気酸素濃度目標値Ψio2_refとから、EGR率Xegr_refを算出する。他の構成要素については第1の実施の形態と同様であるから、説明を省略する。
【0084】
次に、第2の実施の形態に係る計画器1000bの処理内容を図16を用いて説明する。エンジン制御装置100の計画器1000bに、燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値を含む運転状態が入力されると、計画器1000bは、吸気酸素濃度テーブル1010から吸気酸素濃度の目標値Ψio2_ref、吸気酸素総量テーブル1020から吸気酸素総量の目標値μio2_refを取得する(ステップS21)。取得された吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refは、エンジン吸入空気量算出部1050及び第2EGR率算出部1040bに出力され、吸気酸素総量の目標値μio2_refはエンジン吸入空気量算出部1050に出力される。
【0085】
次に、エンジン吸入空気量算出部1050は、吸気酸素総量の目標値μio2_refを、吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refで除することにより、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refを算出する(ステップS23)。
【0086】
また、MAP算出部1060は、エンジン回転数ωeと、吸気温度センサ102の測定結果である吸気温度θ2と、エンジン吸入空気量算出部1050からのエンジン吸入空気量目標値m*e_refとを用い、所定の関係式に従って、MAP目標値p2_refを算出する(ステップS25)。所定の関係式は、第1の実施の形態と同様に、(6)式をp2_refの式に変形した(6b)式である。
【0087】
また、排気酸素濃度算出部1090は、λセンサ105からの空気過剰率λから排気酸素濃度Ψeo2を算出する(ステップS27)。具体的には、(5)式に従って算出する。
【0088】
そして、第2EGR率算出部1040bは、排気酸素濃度Ψeo2と、吸気酸素濃度目標値Ψio2_refと、EGR還流時間τegrとから、所定の関係式に従って、EGR率の目標値Xegr_refを算出する(ステップS29)。第1の実施の形態とは異なり、燃料噴射量q及びエンジン吸入空気量の目標値m*e_refの代わりに排気酸素濃度Ψeo2を用いる。
【0089】
本実施の形態における所定の関係式は、以下に示すように、(1)式をXegr_refの式に変形した(1b)式である。
【0090】
【数14】
【0091】
(1b)式から分かるように、排気酸素濃度Ψeo2については、EGR還流時間τegrだけ前の値を使用するので、排気酸素濃度算出部1090からの排気酸素濃度Ψeo2については、メモリなどに蓄積しておき、ステップS29を実施する際に、該当する値を読み出して使用する。ξo2は定数である。
【0092】
その後、MAF算出部1080は、第2EGR算出部1040bにより算出されたEGR率の目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、MAFの目標値m*air_refを算出する(ステップS31)。具体的には、(1−Xegr_ref)*m*e_refで算出される。すなわち、EGR1205ではなくタービン側に流れてくる空気の質量流量としてMAFの目標値m*air_refを算出する。
【0093】
ステップS25及びS31で算出されたMAP目標値p2_ref及びMAF目標値m*air_refは、吸気系コントローラ1100に出力され、吸気系コントローラ1100は、従来どおりの制御を行う。
【0094】
ここで処理が終了する場合には(ステップS33:Yesルート)、そのまま処理を終了し、まだ処理を終了しない場合には(ステップS33:Noルート)、次のサイクルの前処理のため、ステップS35に移行する。
【0095】
具体的には、EGR流量算出部1070は、EGR率目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量目標値m*e_refとから、EGR流量の目標値m*egr_refを算出する(ステップS35)。具体的には、Xegr_ref*m*e_refで算出される。すなわち、EGR率Xegr_refによって、エンジン吸入空気量目標値m*e_refが、MAF目標値m*air_refとEGR流量の目標値m*egr_refとに按分されている。
【0096】
さらに、EGR還流時間算出部1030は、EGR流量目標値m*egr_refと、吸気温度θ2と、MAP目標値p2_refとから、(7)式に従ってEGR還流時間τegrを算出する(ステップS37)。なお、(7)式におけるθegrについては測定できないので、ここでは吸気温度θ2を代わりに用いる。また、エキゾーストレシーバ1204内における排気温度θ3が得られる場合には、吸気温度θ2と排気温度θ3の平均値を用いるようにしても良い。さらに、EGR1205内の圧力pegrもここでは得られないので代わりにMAP目標値p2_refを用いる。Vegr及びRは定数である。その後ステップS21に戻る。
【0097】
このようにMAFセンサの測定値や燃料噴射量に誤差がある場合には、λセンサ105を導入することで、空気量の過不足を適切に把握することができ、第1の実施の形態と同様に、EGR還流時間を考慮した上でEGR率が算出されるようになる。そして、このEGR率に応じてMAF目標値も算出される。このようにすれば、過渡運転時における吸気酸素濃度及び酸素総量を低減させ、結果的にNOx増大を抑制することができるようになる。
【0098】
[実施の形態3]
例えばλセンサ105より外側に設けられるDPFが詰まっているような場合、排気圧が変化するが、このような場合にはエンジンの体積効率低下によりMAFが減少するという現象が生ずる。通常であれば、吸気系コントローラ1100はEGR流量を減らすように制御を行ってしまうが、そのため吸気酸素濃度が上昇してNOxが過剰に生成されるという問題がある。従って、本実施の形態では、第2の実施の形態を変形させることで、このような問題に対処する。
【0099】
本実施の形態に係る計画器1000cの構成を図17に示す。本実施の形態と第2の実施の形態との差は、吸気温度センサ102からの吸気温度θ2とエンジン回転数ωeとエンジン吸入空気量の目標値m*e_refからMAP目標値p2_refを算出するMAP算出部1060の代わりに、排気温度センサ103からの排気温度θ3と排気圧センサ104からの排気圧p3とEGR流量目標値m*egr_refとからMAP目標値p2_refを算出する第2MAP算出部1060bを導入している点である。他の構成要素については第2の実施の形態と同様であるから、説明を省略する。
【0100】
次に、第3の実施の形態に係る計画器1000cの処理内容を図18及び図19を用いて説明する。
【0101】
エンジン制御装置100の計画器1000cに、燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値を含む運転状態が入力されると、計画器1000cは、吸気酸素濃度テーブル1010から吸気酸素濃度の目標値Ψio2_ref、吸気酸素総量テーブル1020から吸気酸素総量の目標値μio2_refを取得する(ステップS51)。取得された吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refは、エンジン吸入空気量算出部1050及び第2EGR率算出部1040bに出力され、吸気酸素総量の目標値μio2_refはエンジン吸入空気量算出部1050に出力される。
【0102】
次に、エンジン吸入空気量算出部1050は、吸気酸素総量の目標値μio2_refを、吸気酸素濃度の目標値Ψio2_refで除することにより、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refを算出する(ステップS53)。
【0103】
また、排気酸素濃度算出部1090は、λセンサ105からの空気過剰率λから排気酸素濃度Ψeo2を算出する(ステップS55)。具体的には、(5)式に従って算出する。
【0104】
そして、第2EGR率算出部1040bは、排気酸素濃度Ψeo2と、吸気酸素濃度目標値Ψio2_refと、EGR還流時間τegrとから、所定の関係式に従って、EGR率の目標値Xegr_refを算出する(ステップS57)。第2の実施の形態の説明で述べたように、所定の関係式は(1b)式である。
【0105】
その後、MAF算出部1080は、第2EGR算出部1040bにより算出されたEGR率の目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量の目標値m*e_refとから、MAFの目標値m*air_refを算出する(ステップS59)。具体的には、(1−Xegr_ref)*m*e_refで算出される。すなわち、EGR1205ではなくタービン側に流れてくる空気の質量流量としてMAFの目標値m*air_refを算出する。ここで処理は端子Aを介して図19の処理に移行する。
【0106】
図19の処理の説明に移行して、EGR流量算出部1070は、EGR率目標値Xegr_refと、エンジン吸入空気量目標値m*e_refとから、EGR流量の目標値m*egr_refを算出する(ステップS61)。具体的には、Xegr_ref*m*e_refで算出される。
【0107】
そして、第2MAP目標値算出部1060bは、排気温度センサ103からの排気温度θ3と排気圧センサ104の排気圧p3とEGR流量の目標値m*egr_refとから、所定の関係式に従って、MAP目標値p2_refを算出する(ステップS63)。
【0108】
所定の関係式は、(9)式をp2について解くことによって得られる(9b)式である。但し、本実施の形態では、0.5≦p2/p3<1の状態であるから、それを考慮して変形している。
【0109】
【数15】
【0110】
MAP目標値p2_ref及びMAF目標値m*air_refは、吸気系コントローラ1100に出力され、吸気系コントローラ1100は、従来どおりの制御を行う。
【0111】
ここで処理が終了する場合には(ステップS65:Yesルート)、そのまま処理を終了し、まだ処理を終了しない場合には(ステップS65:Noルート)、次のサイクルの前処理のため、ステップS67に移行する。
【0112】
具体的には、EGR還流時間算出部1030は、EGR流量目標値m*egr_refと、吸気温度θ2と、MAP目標値p2_refとから、(7)式に従ってEGR還流時間τegrを算出する(ステップS67)。なお、(7)式におけるθegrについては測定できないので、ここでは吸気温度θ2を代わりに用いる。また、エキゾーストレシーバ1204内における排気温度θ3が得られる場合には、吸気温度θ2と排気温度θ3の平均値を用いるようにしても良い。さらに、EGR1205内の圧力pegrもここでは得られないので代わりにMAP目標値p2_refを用いる。Vegr及びRは定数である。その後端子Bを介してステップS51に戻る。
【0113】
DPFが詰まっているような状態であっても、排気圧センサ104の測定値に応じてMAP目標値を算出するようになっている。これによって適切なEGR流量を確保して、エミッション排出量を抑制することができるようになる。
【0114】
なお、上で述べた実施の形態では、吸気酸素総量テーブル1020を設ける例を示したが、エンジン吸入空気量算出部1050と一体化して、エンジン吸入空気量テーブルを設けるようにしても良い。
【0115】
以上本技術の実施の形態を説明したが、本技術はこれらの実施の形態に限定されない。例えば、上で説明した機能ブロック図は、一例であって、必ずしも実際のプログラムモジュール構成と一致しない場合もある。処理フローについても、処理結果が変わらない限り、処理順番を入れ替えたり、並列実行することも可能である。
【0116】
なお、上で述べたエンジン制御装置100は、コンピュータ装置であって、図20に示すように、RAM(Random Access Memory)2501とプロセッサ2503とROM(Read Only Memory)2507とセンサ群2515とがバス2519で接続されている。本実施の形態における処理を実施するための制御プログラム(及び存在している場合にはオペレーティング・システム(OS:Operating System))は、ROM2507に格納されており、プロセッサ2503により実行される際にはROM2507からRAM2501に読み出される。状況に応じてプロセッサ2503は、センサ群101乃至106(場合によっては燃料噴射量測定部及びエンジン回転数測定部など。)を制御し、測定値を取得する。また、処理途中のデータについては、RAM2501に格納される。なお、プロセッサ2503は、ROM2507を含む場合もあり、さらに、RAM2501を含む場合もある。本技術の実施の形態では、上で述べた処理を実施するための制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能なリムーバブル・ディスクに格納されて頒布され、ROMライタによってROM2507に書き込まれる場合もある。このようなコンピュータ装置は、上で述べたプロセッサ2503、RAM2501、ROM2507などのハードウエアと制御プログラム(場合によってはOSも)とが有機的に協働することにより、上で述べたような各種機能を実現する。
【0117】
但し、エンジン制御装置全体をハードウエアのみにて実装することも可能である。
【0118】
以上述べた本実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0119】
本実施の形態にかかる目標値算出方法は、(A)排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得するステップと、(B)取得された吸気酸素濃度の目標値と、排気を排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出するステップと、(C)算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、エンジンの新気量の目標値を算出するステップとを含む。
【0120】
このように、排気を排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間を考慮した上で、排気還流率(すなわちEGR率)の目標値が算出されるので、インテークレシーバ側の吸気酸素濃度及び酸素総量を抑えることができ、NOx増大を適切に抑制することができるようになる。例えば、排気還流率の目標値は、エンジンのインテークレシーバにおける質量保存則に基づく式に従って算出される。
【0121】
なお、本目標値算出方法は、(D)取得されたエンジン吸入空気量目標値とエンジン回転数の設定値と吸気温度センサからの吸気温度とから、エンジンの吸気圧の目標値を算出するステップをさらに含むようにしても良い。これにより、吸気圧の目標値を適切に計算することができるようになる。エンジンの吸気圧の目標値は、例えばエンジンのシリンダについての気体の状態方程式に基づく式に従って算出される。
【0122】
また、本目標値算出方法は、(E)算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出するステップと、(F)排気循環器の温度に相当する温度と、算出されたエンジンの吸気圧の目標値と、算出された排気循環量の目標値とから、還流時間を算出するステップとをさらに含むようにしても良い。このようにすれば、適切に還流時間を算出することができる。排気循環器の温度に相当する温度としては、例えば吸気温度、吸気温度及び排気温度の平均値などであってもよい。また、還流時間は、例えば気体の状態方程式に基づく式に従って算出される。
【0123】
さらに、本目標値算出方法は、(G)算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出するステップと、(H)排気温度センサからの排気温度と、排気圧センサからの排気圧と、算出された排気還流流量の目標値とから、エンジンの吸気圧の目標値を算出するステップとをさらに含むようにしても良い。DPFの詰まりなどによって排気圧が変化しているような場合であっても、このような処理を実施すれば、吸気圧の目標値を適切に算出することができるようになる。
【0124】
さらに、本目標値算出方法は、(I)排気循環器の温度に相当する温度と、算出されたエンジンの吸気圧の目標値と、算出された排気還流流量の目標値とから、還流時間を算出するステップをさらに含むようにしても良い。
【0125】
また、排気還流率の目標値を算出するステップにおいて、エンジンの燃料噴射量の設定値とエンジン吸入空気量目標値と吸気酸素濃度の目標値とについて、還流時間とエンジンのシリンダを空気が通過するのにかかる通過時間との和だけ過去の値をさらに用いて、排気還流率の目標値を算出するようにしてもよい。
【0126】
さらに、排気還流率の目標値を算出するステップが、空気過剰率センサからの空気過剰率から排気酸素濃度を算出するステップと、還流時間だけ過去の排気酸素濃度をさらに用いて排気還流率の目標値を算出するステップとを含むようにしても良い。このようにすれば、燃料噴射量やMAFセンサに誤差があるような場合でも、空気過剰率センサを導入することで、適切に排気還流率の目標値を算出することができるようになる。すなわち、上で述べたように、NOxを抑制できるようになる。
【0127】
本実施の形態に係る目標値算出装置(図21:3000)は、(A)排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得する取得部(図21:3010)と、(B)取得された吸気酸素濃度の目標値と、排気を排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出する第1算出部(図21:3020)と、(C)算出された排気還流率の目標値と取得されたエンジン吸入空気量目標値とから、エンジンの新気量の目標値を算出する第2算出部(図21:3030)とを有する。第1算出部については、吸気酸素濃度の目標値などを格納するメモリを有する場合もある。
【0128】
なお、上記方法による処理をプロセッサに行わせるためのプログラムを作成することができ、当該プログラムは、例えばフレキシブルディスク、CD−ROM、光磁気ディスク、半導体メモリ、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体又は記憶装置に格納される。尚、中間的な処理結果はメインメモリ等の記憶装置に一時保管される。
【0129】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0130】
(付記1)
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得し、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出し、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する
処理をプロセッサに実行させるためのプログラム。
【0131】
(付記2)
取得された前記エンジン吸入空気量目標値と前記エンジン回転数の設定値と吸気温度センサからの吸気温度とから、前記エンジンの吸気圧の目標値を算出する
処理をさらにプロセッサに実行させるための付記1記載のプログラム。
【0132】
(付記3)
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出し、
前記排気循環器の温度に相当する温度と、算出された前記エンジンの吸気圧の目標値と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記還流時間を算出する
処理をさらに含む付記2記載のプログラム。
【0133】
(付記4)
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出し、
排気温度センサからの排気温度と、排気圧センサからの排気圧と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記エンジンの吸気圧の目標値を算出する
処理をさらに前記プロセッサに実行させるための付記1記載のプログラム。
【0134】
(付記5)
前記排気循環器の温度に相当する温度と、算出された前記エンジンの吸気圧の目標値と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記還流時間を算出する
処理をさらに前記プロセッサに実行させるための付記4記載のプログラム。
【0135】
(付記6)
前記排気還流率の目標値を算出する処理において、
前記エンジンの燃料噴射量の設定値と前記エンジン吸入空気量目標値と前記吸気酸素濃度の目標値とについて、前記還流時間と前記エンジンのシリンダを空気が通過するのにかかる通過時間との和だけ過去の値をさらに用いて、前記排気還流率の目標値を算出する
付記1乃至5のいずれか1つ記載のプログラム。
【0136】
(付記7)
前記排気還流率の目標値を算出する処理において
空気過剰率センサからの空気過剰率から排気酸素濃度を算出し、
前記還流時間だけ過去の排気酸素濃度をさらに用いて前記排気還流率の目標値を算出する
付記1乃至5のいずれか1つ記載のプログラム。
【0137】
(付記8)
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得し、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出し、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する
処理がプロセッサにより実行される目標値算出方法。
【0138】
(付記9)
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得する取得部と、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出する第1算出部と、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する第2算出部と、
を有する目標値算出装置。
【符号の説明】
【0139】
1010 吸気酸素濃度テーブル
1020 吸気酸素総量テーブル
1030 EGR還流時間算出部
1040 EGR率算出部
1050 エンジン吸入空気量算出部
1060 MAP算出部
1070 EGR流量算出部
1080 MAF算出部
1090 排気酸素濃度算出部
1040b 第2EGR率算出部
1060b 第2MAP算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得し、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出し、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する
処理をプロセッサに実行させるためのプログラム。
【請求項2】
取得された前記エンジン吸入空気量目標値と前記エンジン回転数の設定値と吸気温度センサからの吸気温度とから、前記エンジンの吸気圧の目標値を算出する
処理をさらにプロセッサに実行させるための請求項1記載のプログラム。
【請求項3】
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出し、
前記排気循環器の温度に相当する温度と、算出された前記エンジンの吸気圧の目標値と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記還流時間を算出する
処理をさらに含む請求項2記載のプログラム。
【請求項4】
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出し、
排気温度センサからの排気温度と、排気圧センサからの排気圧と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記エンジンの吸気圧の目標値を算出する
処理をさらに前記プロセッサに実行させるための請求項1記載のプログラム。
【請求項5】
前記排気循環器の温度に相当する温度と、算出された前記エンジンの吸気圧の目標値と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記還流時間を算出する
処理をさらに前記プロセッサに実行させるための請求項4記載のプログラム。
【請求項6】
前記排気還流率の目標値を算出する処理において、
前記エンジンの燃料噴射量の設定値と前記エンジン吸入空気量目標値と前記吸気酸素濃度の目標値とについて、前記還流時間と前記エンジンのシリンダを空気が通過するのにかかる通過時間との和だけ過去の値をさらに用いて、前記排気還流率の目標値を算出する
請求項1乃至5のいずれか1つ記載のプログラム。
【請求項7】
前記排気還流率の目標値を算出する処理において
空気過剰率センサからの空気過剰率から排気酸素濃度を算出し、
前記還流時間だけ過去の排気酸素濃度をさらに用いて前記排気還流率の目標値を算出する
請求項1乃至5のいずれか1つ記載のプログラム。
【請求項8】
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得し、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出し、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する
処理を含む目標値算出方法。
【請求項9】
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得する取得部と、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出する第1算出部と、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する第2算出部と、
を有する目標値算出装置。
【請求項1】
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得し、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出し、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する
処理をプロセッサに実行させるためのプログラム。
【請求項2】
取得された前記エンジン吸入空気量目標値と前記エンジン回転数の設定値と吸気温度センサからの吸気温度とから、前記エンジンの吸気圧の目標値を算出する
処理をさらにプロセッサに実行させるための請求項1記載のプログラム。
【請求項3】
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出し、
前記排気循環器の温度に相当する温度と、算出された前記エンジンの吸気圧の目標値と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記還流時間を算出する
処理をさらに含む請求項2記載のプログラム。
【請求項4】
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、排気還流流量の目標値を算出し、
排気温度センサからの排気温度と、排気圧センサからの排気圧と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記エンジンの吸気圧の目標値を算出する
処理をさらに前記プロセッサに実行させるための請求項1記載のプログラム。
【請求項5】
前記排気循環器の温度に相当する温度と、算出された前記エンジンの吸気圧の目標値と、算出された前記排気還流流量の目標値とから、前記還流時間を算出する
処理をさらに前記プロセッサに実行させるための請求項4記載のプログラム。
【請求項6】
前記排気還流率の目標値を算出する処理において、
前記エンジンの燃料噴射量の設定値と前記エンジン吸入空気量目標値と前記吸気酸素濃度の目標値とについて、前記還流時間と前記エンジンのシリンダを空気が通過するのにかかる通過時間との和だけ過去の値をさらに用いて、前記排気還流率の目標値を算出する
請求項1乃至5のいずれか1つ記載のプログラム。
【請求項7】
前記排気還流率の目標値を算出する処理において
空気過剰率センサからの空気過剰率から排気酸素濃度を算出し、
前記還流時間だけ過去の排気酸素濃度をさらに用いて前記排気還流率の目標値を算出する
請求項1乃至5のいずれか1つ記載のプログラム。
【請求項8】
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得し、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出し、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する
処理を含む目標値算出方法。
【請求項9】
排気循環器及び可変ノズルターボを有するエンジンに対する燃料噴射量の設定値及びエンジン回転数の設定値に対応する吸気酸素濃度の目標値及びエンジン吸入空気量目標値を取得する取得部と、
取得された前記吸気酸素濃度の目標値と、排気を前記排気循環器を介して還流させるのにかかる還流時間とに基づき、排気還流率の目標値を算出する第1算出部と、
算出された前記排気還流率の目標値と取得された前記エンジン吸入空気量目標値とから、前記エンジンの新気量の目標値を算出する第2算出部と、
を有する目標値算出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−241667(P2012−241667A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114786(P2011−114786)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(391008559)株式会社トランストロン (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(391008559)株式会社トランストロン (30)
【Fターム(参考)】
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