説明

矩形基板の載置位置矯正方法及び塗布装置

【課題】矩形の基板がステージ上で傾いて載置されても、当該基板を位置決めし直すことのできる矩形基板の載置位置矯正方法を提供する。
【解決手段】基板Wの左辺Lに二点で接触可能な一対の第一部材11及び第二部材12を前後方向基準線X0に平行な直線X1上に位置させ、基板Wの前辺Fに一点で接触可能な第三部材13、及び、基板Wの後辺Bに一点で接触可能な第七部材17を、基板Wの前後方向寸法bよりも広い間隔でかつ左右方向基準線を中心として位置させる。左側の前記二点及び右側の第五部材15と第六部材16とで基板Wを左右方向に挟むと共に、この左右方向に挟む動作の間に、基板Wを第四部材14及び第八部材18で、左右方向基準線Y0を中心として前後方向に挟む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形基板の載置位置矯正方法、及び、この方法を実行することができ基板にインクを塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、カラー液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、色形成の中核を成す部材としてカラーフィルタが用いられている。カラーフィルタは、ガラス基板上に微細なR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色が多数並べられて形成されている。
近年、このカラーフィルタを製造する装置として、ガラス基板上に形成された多数の微細な画素部に、R、G、Bの各インクをインクジェットヘッド(以下、ヘッドという)から吐出して、R、G、Bの色画素を形成する塗布装置(インクジェット装置)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記画素部は、画素形成用格子(ブラックマトリックス格子)により区画されることでガラス基板上に多数形成されていて、一つの画素部には例えば6〜8滴のインクが供給され、各画素部は色付けられる。
【0003】
このような塗布装置では、ステージ上にガラス基板を載置し、R,G,Bの各インクを、ヘッドからガラス基板上の微細な画素部毎に精度良く着弾させる必要がある。このために、塗布装置の制御部は、ステージ上のガラス基板とヘッドとの相対的な位置関係を精度良く管理する必要がある。そこで、ガラス基板にはアライメントマークが設けられていて、塗布装置が備えているカメラがこのマークを撮像することにより、ガラス基板の位置を確認し、ヘッドとの相対位置を微調整する制御を行う。この調整は、例えばステージを変位させる等して行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−173548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記カメラを用い、ガラス基板とヘッドとの相対位置の調整を行う際、ガラス基板が、ステージの平面上で大きく傾いて載置されていると、アライメントマークがカメラの撮像領域に存在せず、カメラはマークを撮像することができない。この場合、自動的にカメラを移動させてマークを検索する処理が行われる。しかし、この検索は時間を要し、塗布作業の開始が遅れ、生産効率が低下するおそれがある。したがって、カメラがガラス基板のアライメントマークを撮像する際、ガラス基板をステージ上で所定の位置に存在させておくのが好ましい。
そこで、本発明は、矩形の基板がステージ上で前後方向基準線及び左右方向基準線に対して傾いて載置されても、当該基板を位置決めすることのできる矩形基板の載置位置矯正方法、及び、この方法を実行することができる塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は、前後方向基準線及び左右方向基準線に対して傾いてステージ上に載置された矩形の基板を、当該基板の左辺が前記前後方向基準線に平行、かつ、前辺が前記左右方向基準線に平行となるように位置決めする、矩形基板の載置位置矯正方法であって、前記基板の左辺に二点で接触可能な一対の左側部材を前記前後方向基準線に平行な直線上に配置し、前記基板の前辺に一点で接触可能な前側部材、及び、前記基板の後辺に一点で接触可能な後側部材を、当該基板の前後方向寸法よりも広い間隔でかつ前記左右方向基準線を中心として位置させ、停止状態にある左側の前記二点及び右側の二点で前記基板を左右方向に挟むと共に、この左右方向に挟む動作の間に、当該基板を前記前側部材及び前記後側部材とは別である前側の一点及び後側の一点で、前記左右方向基準線を中心として前後方向に挟むことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、基板の左辺に二点で接触可能な一対の左側部材を前後方向基準線に平行な直線上に配置し、停止状態にある左側の前記二点及び右側の二点で基板を左右方向に挟むので、基板の左辺は前後方向基準線に平行となり、さらに、停止状態にある一対の前記左側部材に当該基板は接触することで位置規制がされて左右方向に関して所定位置に合わせされる。
そして、前側部材と後側部材との間で基板の前後方向移動が制限された状態となり、前記左右方向に挟む動作の間に、基板を、前側部材及び後側部材とは別である前側の一点及び後側の一点で左右方向基準線を中心として前後方向に挟むことで、基板の前辺は左右方向基準線に平行となる。さらに、左右方向基準線に基板の左右方向中心線が一致するように位置矯正され、前後方向に関して所定位置に合わされる。
【0008】
そして、このような矩形基板の載置位置矯正方法を実行することができる塗布装置は、矩形の基板が載置されるステージと、前記ステージ上の前記基板にインクを塗布する塗布機構と、前記ステージ上で前後方向基準線及び左右方向基準線に対して傾いて載置された前記基板の載置位置を矯正する位置矯正機構とを備え、前記位置矯正機構は、前記基板の、左辺の前側及び後側に接触可能な第一部材及び第二部材、前辺の左側及び右側に接触可能な第三部材及び第四部材、右辺の前側及び後側に接触可能な第五部材及び第六部材、後辺の左側及び右側に接触可能な第七部材及び第八部材と、前記第一部材及び前記第二部材を、前記前後方向基準線に平行な直線上に位置させ、かつ、前記第三部材及び前記第七部材を、前記基板の前後方向寸法よりも広い間隔でかつ前記左右方向基準線を中心として位置させる仮位置決め機構部と、前記第五部材及び前記第六部材を前記第一部材及び前記第二部材に接近させると共に、前記第四部材及び前記第八部材を前記左右方向基準線を中心として相互接近させる本位置決め機構部とを有していることにより構成される。
【0009】
また、この塗布装置において、前記仮位置決め機構部と前記本位置決め機構部との内の一方又は双方は、前記第一部材から前記第八部材の内の、前記基板の角部を挟んで隣りに配置されることになる一対の部材を共に取り付けているアームと、前記アームを駆動することで前記一対の部材を同時に動かして所定部に位置させるアクチュエータとを有しているのが好ましい。位置矯正のために基板を押す部材は、第一部材から第八部材までの八つであるが、この構成によれば、アクチュエータの数を、この数(八つ)よりも減らすことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、矩形の基板がステージ上で傾いて載置されても、当該基板は左右方向及び前後方向に関して所定位置に合わせされるので、例えば、ステージ上の基板と、この基板にインクを塗布する塗布機構(インクジェットヘッド)との相対位置を調整するために、カメラによって基板に形成されているアライメントマークを撮像する際、当該アライメントマークがカメラの撮影領域に簡単に入るようにすることが可能となり、前記相対位置の調整処理を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の塗布装置の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】位置矯正機構の説明図であり、ステージを上から見た図である。
【図3】位置矯正機構の内の左前機構部の平面図である。
【図4】左前機構部の正面図である。
【図5】第一駆動源と第二駆動源とを説明する説明図である。
【図6】本位置決め機構部の説明図である。
【図7】他の実施形態にかかる塗布装置が備えている位置矯正機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の塗布装置(インクジェット装置)の実施の一形態を示す斜視図である。この塗布装置は、床面に置くベースフレーム1、このベースフレーム1上に設けられ矩形の基板Wが載置されるステージ2、塗布ガントリ3、カメラガントリ6及びこれらの各種動作を制御する制御装置9を備えている。
ステージ2は、図示していない吸引ポンプによって基板Wをその上面に吸着して保持することができ、また、塗布ガントリ3に対する基板Wの位置決めを行うために、図示しない駆動機構及びガイド機構によって、ステージ2は、Z軸方向回りに回転駆動されるとともにY軸方向に駆動される。なお、Z軸方向は鉛直方向であり、X軸方向及びY軸方向は水平面上の方向であり、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は相互に直交する。なお、このステージ2上において、X軸方向に平行な前後方向基準線X0と、Y軸方向に平行な左右方向基準線Y0とが定義されている。この実施形態では、前後方向基準線X0と左右方向基準線Y0との交点は、ステージ2の中心点と一致している。
【0013】
塗布ガントリ3はヘッド搭載部3aを有していて、このヘッド搭載部3aは複数個のインクジェットヘッド4(以下、ヘッド4という)を整列させて有している。各ヘッド4は、その下面側に、図示しないが複数のノズルを有している。このノズルからインクが吐出される。また、塗布ガントリ3は、図示しない駆動機構、ガイド機構によってX軸方向に駆動される。塗布ガントリ3が移動することにより、ヘッド4は、ステージ2上の基板Wに対して移動可能となる。そして、この移動するヘッド4からインクを吐出することで基板Wにインクを塗布することができる。これら、塗布ガントリ3及び複数のヘッド4により、ステージ2上の基板Wにインクを塗布する塗布機構5が構成される。
【0014】
カメラガントリ6は、ヘッド4と基板Wとの相対的な位置調整のためのカメラ8a,8bを搭載していて、カメラガントリ6は、前記位置調整のために、図示しない駆動機構、ガイド機構によってX軸方向に移動することができる。また、カメラ8a,8bはそれぞれ、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、カメラガントリ6上をY軸方向に移動することができる。カメラ8a,8bは基板Wに設けられているアライメントマークM1,M2を検出するものであり、カメラ8a,8bによるマーク検出結果に基づいて、ステージ2を回転させたりY軸方向に移動させたりすることにより、ヘッド4と基板Wとの相対的な位置調整を行う。なお、X軸方向の誤差はヘッド4からのインクの吐出タイミングを調整することで解消することができる。
【0015】
このように、塗布装置では、ステージ2上の基板Wとヘッド4との相対的な位置関係を精度良く管理する必要があり、この管理は前記制御装置9によって行われる。そして、前記のとおり、カメラ8a,8bを用い、基板Wとヘッド4との相対位置の調整を行う際、基板Wがステージ2の平面上で大きく傾いて載置されていると、アライメントマークM1,M2がカメラ8a,8bの撮像領域に存在せず、カメラ8a,8bはマークM1,M2を撮像することができない。そこで、本発明の塗布装置は、ステージ2上で前後方向基準線X0及び左右方向基準線Y0に対して傾いて載置された基板Wの載置位置を矯正する位置矯正機構7を備えている。
【0016】
図2は位置矯正機構7の説明図であり、ステージ2を上から見た図である。また、図2(a)〜(d)では、この位置矯正機構7によって行われる基板Wの載置位置矯正方法を順番に説明している。位置矯正機構7はステージ2の周縁部に設けられている。すなわち、位置矯正機構7は、基板Wの左辺Lの前側及び後側に接触可能な第一部材11及び第二部材12、基板Wの前辺Fの左側及び右側に接触可能な第三部材13及び第四部材14、基板Wの右辺Rの前側及び後側に接触可能な第五部材15及び第六部材16、並びに、基板Wの後辺Bの左側及び右側に接触可能な第七部材17及び第八部材18を備えている。さらに、この位置矯正機構7は、第一部材11、第二部材12、第三部材13及び第七部材17を所定部まで移動させ、当該所定部で固定した状態とする仮位置決め機構部20と、第五部材15、第六部材16、第四部材14及び第八部材18を所定部まで移動させる本位置決め機構部30とを備えている。
【0017】
位置矯正機構7は、ステージ2の左前部に設けられている左前機構部Lf及びステージ2の左後部に設けられている左後機構部Lbを有していて、左前機構部Lfと左後機構部Lbとにより前記仮位置決め機構部20が構成されている。また、ステージ2の右前部に設けられている右前機構部Rf及びステージ2の右後部に設けられている右後機構部Rbを更に有していて、右前機構部Rfと右後機構部Rbとにより前記本位置決め機構部30が構成されている。これら四つの機構部は同様の構成であるため、左前機構部Lfを代表して説明する。図3は左前機構部Lfの平面図であり、図4は当該左前機構部Lfの正面図である。
【0018】
左前機構部Lfは、一つの左前アーム21と、このアーム21を水平方向に駆動する左前アクチュエータ22と、アーム21及びアクチュエータ22を搭載しているベース部25とを有している。さらに、左前機構部Lfは、ベース部25を上下方向に駆動する上下アクチュエータ(図示せず)を有していて、上下アクチュエータによって、左前機構部Lfを使用しない状態では、図4(a)に示しているように、ステージ上面2aよりも下に左前機構部Lfを位置させ、基板Wの載置位置矯正を行う際に、第一部材11及び第三部材13をステージ上面2aよりも上に位置させる(図4(b)参照)。
【0019】
アーム21には、基板Wの左前の角部E1(図3参照)を挟んで隣りに配置されることになる一対の第一部材11と第三部材13とが共に取り付けられている。アーム21は、ベース部25の第一支軸25aに揺動自在に取り付けられている。第一部材11及び第三部材13はローラからなり、アーム21に回転自在として取り付けられている。
左前アクチュエータ22は伸縮する流体シリンダ(エアシリンダ)からなり、一端部においてベース部25の第二支軸25bに揺動自在に取り付けられ、他端部においてアーム21の基端部と連結ピン25cによって上下方向の軸線回りに揺動自在に取り付けられている。この構成により、アーム21上の第一部材11と前記第三部材13とは、基板Wから離れていた位置から(図3(a)参照)、左前アクチュエータ22が短縮動作をすると、アーム21を駆動して第一部材11と第三部材13とを同時に動かして「所定部」に位置させる(図3(b)参照)。
【0020】
基板Wの位置矯正のために動作する部材は、第一部材11から第八部材18までの八つであるが、図2に示している実施形態では、前記仮位置決め機構部20と前記本位置決め機構部30との双方において、単一のアームに一対のローラからなる部材が取り付けられているので、アクチュエータを半数に減らすことができる。なお、図示しないが、前記仮位置決め機構部20と前記本位置決め機構部30との一方のみがこのような構成であってもよい。
【0021】
後に記載する基板Wの載置位置矯正方法でも説明するが、左前機構部Lfと左後機構部Lbとによる仮位置決め機構部20は、図2(a)から図2(b)に示しているように、各アーム21,23を各アクチュエータ22,24によって揺動させることで、第一部材11及び第二部材12を、前記「所定部」として、前後方向基準線X0に平行な直線X1上に位置させ、さらに、第三部材13及び第七部材17を、前記「所定部」として、両者間(図2の寸法K)を基板Wの前後方向寸法bよりも広い間隔で(K>b)、かつ、左右方向基準線Y0を中心として(左右方向基準線Y0を挟んで)前後対称に位置させる。なお、基板Wの前後方向寸法bは、基板製造上の寸法許容差を有している最大寸法である。
そして、右前機構部Rfと右後機構部Rbとによる本位置決め機構部30は、図2(b)から図2(c)の状態を経て図2(d)に示しているように、各アーム31,33を各アクチュエータ32,34によって揺動させることで、第五部材15及び第六部材16を、停止状態にある第一部材11及び第二部材12に対して接近させると共に、第四部材14及び第八部材18を左右方向基準線Y0を中心として相互接近させる。
【0022】
図5(a)は、仮位置決め機構部20が有する第一駆動源26と、本位置決め機構部30が有する第二駆動源36とを説明する説明図である。第一駆動源26及び第二駆動源36は共に、アクチュエータ22,24及びアクチュエータ32,34に作動流体(エア)を供給するポンプ(図示せず)や電磁弁からなる切替弁等を備えていて、第一駆動源26からの作動流体は分岐してアクチュエータ22,24に流れる。このため、アクチュエータ22,24の推力は同じである。同様に、第二駆動源36からの作動流体は分岐してアクチュエータ32,34に流れる。このため、アクチュエータ32,34の推力は同じである。
【0023】
以上のように構成された塗布装置によって実行される矩形の基板Wの載置位置矯正方法を説明する。
図示しない搬送装置によって、基板Wが、図2(a)に示しているように、塗布装置のステージ2上に載置される。図2(a)では、基板Wは、前後方向基準線X0及び左右方向基準線Y0に対して傾いてステージ2上に載置されている。この状態にある基板Wを、前記位置矯正機構7が以下の方法によって、左辺Lが前後方向基準線X0に平行、かつ、前辺Fが左右方向基準線Y0に平行となるように位置決めし直す。
【0024】
基板Wがステージ2上に置かれると、左前機構部Lf、左後機構部Lb、右前機構部Rf及び右後機構部Rbが、待機位置(図4(a))から上昇位置(図4(b))へと上昇する。そして、図2(b)に示しているように、左前アーム21及び左後アーム23を回転移動させ、基板Wの左辺Lに二点で接触可能な左側部材となる一対の第一部材11及び第二部材12を、前後方向基準線X0に平行な直線X1上に位置させ、アーム21,23が拘束又はアクチュエータ22,24の伸縮が拘束されることで、その位置に固定する(停止させる)。アーム21,23の移動を拘束する場合、所定部に達したアーム21,23それぞれと接触するストッパ(図示せず)が設けられている。なお、図2(b)の状態では、第一部材11は基板Wの左辺Lを押して当該基板Wの位置を少し右側へ動かしているが、第二部材12はまだ基板Wに接触していない。
これと同時に、左前アーム21及び左後アーム23の回転移動により、基板Wの前辺Fに一点で接触可能な前側部材となる第三部材13、及び、基板Wの後辺Bに一点で接触可能な後側部材となる第七部材17は、基板Wの前後方向寸法bよりも広い間隔(寸法B)でかつ左右方向基準線Y0を中心とする場所に位置し、その位置で固定される(停止させる)。第三部材13と第七部材17とは、前後方向同一線上でかつ左右方向基準線Y0を挟んで対称の配置となる。なお、図2(b)の状態では、第三部材13は基板Wの前辺Fを押して当該基板Wの位置を少し後ろ側へ動かしているが、第七部材17はまだ基板Wに接触していない。以上の第一部材11、第二部材12、第三部材13及び第七部材17によって行われる動作は、基板Wを最終的に位置決め(位置矯正)するための準備動作となる。
【0025】
次に、最終的に位置決め(位置矯正)するための本動作を行う。
図2(b)から図2(c)に示しているように、右前アーム31及び右後アーム33を回転移動させ、準備動作で位置固定した第一部材11及び第二部材12による左側の二点と、アーム31,33上の右側部材となる第五部材15及び第六部材16による右側の二点との間で、基板Wを左右方向に挟むと共に、この左右方向に挟む動作の間に、第三部材13とは別の前側部材である第四部材14と、第七部材17とは別の後側部材である第八部材18とによって、基板Wを、前側の一点及び後側の一点で、左右方向基準線X0を中心として前後方向に挟む。なお、右前機構部Rf及び右後機構部Rbは同じ構成であり、また、図5(a)に示しているように、右前機構部Rf及び右後機構部Rbは同期して動作可能な構成であるため、第五部材15と第六部材16とは同期して、つまり、前後方向基準線X0に対して平行を保ったまま移動し、さらに、第四部材14と第八部材18とは同期して、つまり、左右方向基準線Y0からのの距離を相互同じとして移動する。
【0026】
この本動作では、図2(c)に示しているように、第六部材16は基板Wの右辺Rを押して当該基板Wの位置を左側へ動かし、第五部材15はまだ基板Wに接触していないが、さらに、第四部材14は基板Wの前辺Fを押して当該基板Wの位置を後側へ動かし、第八部材18はまだ基板Wに接触していないが、やがて、基板Wが正規位置(図2(d)の状態)へと矯正されるにしたがって、第五部材15及び第八部材も基板Wと接触し、当該基板Wが正規位置へと位置する。このように、基準辺側となる第一部材11と第二部材12とに対して、反対の反基準辺側となる第五部材15と第六部材16とによって、基板Wを左右方向に押す。
【0027】
この本動作によれば、第一部材11と第二部材12とを前後方向基準線X0に平行な直線X1上に配置し、この左側の第一部材11及び第二部材12による二点と、右側の第五部材15及び第六部材16による二点とで基板Wを左右方向に挟むので、基板Wの左辺L及び右辺Rは前後方向基準線X0に平行となり、さらに、当該基板Wは、第一部材11と第二部材12との双方に二点で接触することで位置規制がされて左右方向に関して所定位置に合わせされる。
そして、第三部材13と第七部材17との間で、基板Wは、隙間を有して前後方向の移動が制限された状態となっており、前記左右方向に挟む動作の間に、この基板Wを、第四部材14と第八部材18とによって左右方向基準線Y0を中心として前後方向に挟むことで、第一部材11と第二部材12とに接触している基板Wの前辺F及び後辺Bは左右方向基準線Y0に平行となる。
さらに、左右方向基準線Y0に、基板Wの左右方向中心線yaが一致するように徐々に位置矯正され、前後方向に関して所定位置に合わされる。すなわち、図2(c)では、基板Wの前辺Fと第三部材13との隙間は小さく(又はゼロ)、基板Wの後辺Bと第七部材17との隙間は大きかったが、徐々に、前辺Fと第三部材13との隙間と、後辺Bと第七部材17との隙間とが同等となっていき、基板Wは前後方向に(左右方向基準線Y0に)自動調芯(センターリング)される。
【0028】
また、この本動作のための、基板Wに対する、第四部材14、第五部材15、第六部材16及び第八部材18の推力は、前記準備動作のための、基板Wに対する、第一部材11、第二部材12、第三部材13及び第七部材17の推力よりも小さく設定されている。このために、図5(a)に示しているように、本位置決め機構部30が有しているアクチュエータ32,34と、仮位置決め機構部20が有しているアクチュエータ22,24とはすべて構成が同じであるが、アクチュエータ32,34の駆動力が、アクチュエータ22,24の駆動力よりも小さくなるように構成されている。これを実現するために、図5(a)の場合では、第二駆動源36による作動流体の圧力P2が、第一駆動源26による作動流体の圧力P1よりも小さくなるように設定されている(P2<P1)。
なお、図5(b)は図5(a)の変形例であり、作動流体の圧力をP1=P2と同じとし、アクチュエータ32,34のシリンダ径が、アクチュエータ22,24のシリンダ径よりも小さくなるように構成してもよい。
これにより、第四部材14、第五部材15、第六部材16及び第八部材18は、基板Wを強制的に押すが、弱い力で押すことができ、基板Wの損傷を防止する。これに対して、第一部材11、第二部材12、第三部材13及び第七部材17の推力を大きくすることで、基板Wからの反力を受けても、これら部材はその位置で拘束される。
【0029】
また、本動作の際に、基板Wの損傷を防止するために、第四部材14、第五部材15、第六部材16及び第八部材18によって基板Wを押す力は、徐々に小さくなるように構成するのが好ましい。このために、図6(a)に示しているように、基板Wを正規位置へと押すにしたがって、アクチュエータ32(34)の伸張方向が、アーム31を支持している第一支軸35aと、アクチュエータ32(34)を支持している第二支軸35bとを結ぶ直線と一致していくように動作する構成とすればよい。又は、図6(b)(c)に示しているように、アーム31とアクチュエータ32との連結ピン35c側と、ベース部35との間に引っ張りバネ35dを介在させ、図6(b)の状態にある第四部材14及び第五部材15が、基板Wを正規位置へと押すにしたがって(図6(c))、バネ35dによる引っ張り力が小さくなるように構成してもよい。
このように構成することで、基板Wが大きくずれていても、位置決め開始時には、大きな力で基板Wを押して迅速に移動させ、さらに、位置決め完了付近では、押す力を弱めることができ、基板Wが損傷するのを防止することができる。
【0030】
また、ステージ2上に置かれる基板Wは矩形であり、基板Wの長手方向がX軸方向に向けて置かれる第一(縦置き)の場合(図7では基板Wを破線で示している)と、基板Wの長手方向がY軸方向に向けて置かれる第二(横置き)の場合(図7では基板Wを実線で示している)とがある。図2は、第一の場合に対応した位置矯正機構7であり、双方の場合に対応するために、図7に示しているように、前記構成の位置矯正機構7を二組設け、一方を縦置き用の位置矯正機構とし、他方を横置き用の位置矯正機構としている。この図7の実施形態によれば、基板Wが置かれる向きに応じて、図4に示したように、使用される位置矯正機構のベース部25が待機位置から選択的に上昇するように構成されている。
【0031】
以上の各実施形態の本発明によれば、矩形の基板Wがステージ2上で前後方向基準線X0及び左右方向基準線Y0に対して傾いて載置されていても、基板Wは左右方向及び前後方向に関して所定位置に合わせされるので、例えば、図1において、基板Wと、この基板Wにインクを塗布するヘッド4との相対位置を調整するために、カメラ8a,8bによって基板Wに形成されているアライメントマークM1,M2を撮像する際、当該マークM1,M2がカメラ8a,8bの撮影領域に簡単に入るようにすることが可能となり、前記相対位置の調整処理を迅速に行うことができる。
また、異なる寸法の基板W(寸法誤差を有する基板W)がステージ2に載置されても、当該基板Wの位置合わせが可能となり、また、左前機構部Lf、左後機構部Lb、右前機構部Rf及び右後機構部Rbのアクチュエータの数を増やさないで、実現することができる。
【0032】
また、本発明は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。前記実施形態では、アクチュエータをエアシリンダとして説明したが、これ以外に、サーボモータ等の電気的に動かす構成であってもよい。この場合、左前機構部Lf及び左後機構部Lbにおける第一部材11及び第二部材12を前後方向基準線X0に平行な直線X1上に停止させる制御は、サーボモータの機能によって実現することができる。また、右前機構部Rf及び右後機構部Rbでは、サーボモータによってトルク制御を行うことで、第五部材15等が基板Wを押す力の制御をしてもよい。
基板Wの形状は、四角形の内で全ての角が直角である形状であり、矩形には正方形が含まれる。また、前記実施形態では、X軸方向を前後方向として説明したが、Y軸方向を前後方向と定義してもよい。
また、前記実施形態では、カラーフィルタの製造に用いられる塗布装置について説明したが、有機ELを含むフラットパネルディスプレイや太陽電池等の製造に用いられる塗布装置であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
2:ステージ、 5:塗布機構、 7:位置矯正機構、 11:第一部材(左側部材)、 12:第二部材(左側部材)、 13:第三部材(前側部材)、 14:第四部材(前側部材)、 15:第五部材(右側部材)、 16:第六部材(右側部材)、 17:第七部材(後側部材)、 18:第八部材(後側部材)、 20:仮位置決め機構部、 21:左前アーム、 22:左前アクチュエータ、 23:左後アーム、 24:左後アクチュエータ、 30:本位置決め機構部、 31:右前アーム、 32:右前アクチュエータ、 33:右後アーム、 34:右後アクチュエータ、 X0:前後方向基準線、 Y0:左右方向基準線、 W:基板、 L:左辺、 F:前辺、 R:右辺、 B:後辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向基準線及び左右方向基準線に対して傾いてステージ上に載置された矩形の基板を、当該基板の左辺が前記前後方向基準線に平行、かつ、前辺が前記左右方向基準線に平行となるように位置決めする、矩形基板の載置位置矯正方法であって、
前記基板の左辺に二点で接触可能な一対の左側部材を前記前後方向基準線に平行な直線上に配置し、
前記基板の前辺に一点で接触可能な前側部材、及び、前記基板の後辺に一点で接触可能な後側部材を、当該基板の前後方向寸法よりも広い間隔でかつ前記左右方向基準線を中心として位置させ、
停止状態にある左側の前記二点及び右側の二点で前記基板を左右方向に挟むと共に、この左右方向に挟む動作の間に、当該基板を前記前側部材及び前記後側部材とは別である前側の一点及び後側の一点で、前記左右方向基準線を中心として前後方向に挟むことを特徴とする矩形基板の載置位置矯正方法。
【請求項2】
矩形の基板が載置されるステージと、
前記ステージ上の前記基板にインクを塗布する塗布機構と、
前記ステージ上で前後方向基準線及び左右方向基準線に対して傾いて載置された前記基板の載置位置を矯正する位置矯正機構と、を備え、
前記位置矯正機構は、
前記基板の、左辺の前側及び後側に接触可能な第一部材及び第二部材、前辺の左側及び右側に接触可能な第三部材及び第四部材、右辺の前側及び後側に接触可能な第五部材及び第六部材、後辺の左側及び右側に接触可能な第七部材及び第八部材と、
前記第一部材及び前記第二部材を、前記前後方向基準線に平行な直線上に位置させ、かつ、前記第三部材及び前記第七部材を、前記基板の前後方向寸法よりも広い間隔でかつ前記左右方向基準線を中心として位置させる仮位置決め機構部と、
前記第五部材及び前記第六部材を前記第一部材及び前記第二部材に接近させると共に、前記第四部材及び前記第八部材を前記左右方向基準線を中心として相互接近させる本位置決め機構部と、
を有していることを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
前記仮位置決め機構部と前記本位置決め機構部との内の一方又は双方は、
前記第一部材から前記第八部材の内の、前記基板の角部を挟んで隣りに配置されることになる一対の部材を共に取り付けているアームと、
前記アームを駆動することで前記一対の部材を同時に動かして所定部に位置させるアクチュエータと、を有している請求項1に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−238953(P2010−238953A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85969(P2009−85969)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】