説明

移動体始動システム

【課題】キーを廃し、ステアリングロック機構の解錠やエンジン等の推進力発生装置の始動許可を簡便に実施可能でかつ盗難防止効果も兼ね備えた移動体始動システムを得る。
【解決手段】推進力発生装置で移動する移動体に搭載された移動体搭載機2、移動体搭載機との間で無線通信を行う使用者が携帯する携帯機、使用者の操作に従って移動体搭載機に操作信号を出力する移動体側の操作スイッチ31、移動体側のステアリングロック機構の解錠を行うステアリングロック解錠手段521、移動体側の移動体の推進力発生装置制御装置8側への電力供給の制御を行う移動体電力供給制御手段6、を備え、移動体搭載機2が、携帯機との間の無線通信による認証処理を行う認証手段、認証手段により携帯機の認証が認められた後に、入力された操作信号に従ってステアリングロック解錠手段及び移動体電力供給制御手段の少なくとも一方に所定の処理を行わせる操作制御手段と含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体始動システム、特に二輪車、ATV(All Terrain Vehicle)、船舶、ジェット推進艇などのエンジンやモータを含む推進力発生装置で推進される移動体において、盗難を防止する効果も兼ね備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等のエンジン始動のためには、車両の正規の運転者のみに渡されたシリンダーキーを利用して、機械的にエンジン始動用のキースイッチをオンしている。従って、正規のキー無しではエンジン始動は不可能となり、車両の盗難を防止することができた。しかしながら、キーを頼りに車両の盗難防止を図っても、キーは比較的容易に複製可能なことから、必ずしも充分な盗難防止の効果を得ることはできなかった。
【0003】
そこで、盗難防止効果を強化するシステムとして、例えば、キーからキーシリンダに、当該車両のキーを特定する情報を送信し、キーシリンダ側は、送信されてきた情報を識別して正規な情報であるときのみエンジンの始動を許可するシステムがある。
【0004】
具体的には、キーシリンダ側のキー挿入孔周辺に配置された環状コアに巻回されたロータコイルに、キー挿入孔に挿入されるキーの内部の軸状コアに巻回されたキーコイルを接近させた一組の磁気回路を構成し、この磁気回路を介してキーとキーシリンダとの間でエンジン駆動のための情報の授受を行うものである(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特公平4−15141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のこの種の盗難防止機能を備えた車両始動システム装置は、上述のように車両盗難防止には一定の効果が得られるものの、依然として電気的なスイッチも兼ねるキーシリンダにキーを挿入して回すという労力が伴うという問題点があった。また、キーシリンダにキーを挿入して回すという行為が伴うことから、機械的な故障が生じ易いという問題点があった。
【0007】
また、運転者がキーシリンダにキーを挿入したまま車両から離れた隙に盗難されても、何ら防止する手段がないという問題点があった。
【0008】
また、夜間の始動時においては、暗闇の中でキーシリンダの挿入孔が見えず、始動に手間取るという問題点があった。この問題点を解決するために、キーシリンダ側にランプを設置するなどの対策がとられるが、特に安価である二輪車において、わざわざランプを設置することはコストがかかり好ましくなかった。
【0009】
さらに、キーシリンダが存在するために、運転席付近のデザインが制約されるという問題点があった。
【0010】
この発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、キー及びキーシリンダを廃して、キーを使用せずに、ステアリングロック機構の解錠やエンジン等の推進力発生装置の始動許可あるいは運転停止を簡便に行うことができる移動体始動システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、推進力発生装置により移動する移動体に搭載された移動体搭載機と、上記移動体搭載機との間で無線通信を行う使用者が携帯する携帯機と、使用者の操作に従って上記移動体搭載機に操作信号を出力する移動体側に設けられ操作スイッチと、移動体側に設けられたステアリングロック機構の解錠を行うステアリングロック解錠手段と、移動体側に設けられた移動体の推進力発生装置制御装置側への電力供給の制御を行う移動体電力供給制御手段と、を備え、上記移動体搭載機が、上記携帯機との間の無線通信による認証処理を行う認証手段と、上記認証手段により上記携帯機の認証が認められた後に、入力された上記操作信号に従って上記ステアリングロック解錠手段および移動体電力供給制御手段の少なくとも一方に予め定められた処理を行わせる操作制御手段と、を備えたことを特徴とする移動体始動システムにある。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、推進力発生装置により移動する移動体に搭載された移動体搭載機と、移動体搭載機との間で無線通信を行う使用者が携帯する携帯機と、使用者の操作に従って移動体搭載機に操作信号を出力する移動体側に設けられ操作スイッチと、の組合せにより、操作スイッチの操作だけで、移動体のステアリングロック機構の解錠やエンジン等の推進力発生装置の始動許可あるいは運転停止を簡便に行うことがで、かつ盗難防止効果も兼ね備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明は、エンジンやモータを含む推進力発生装置を設けた船舶や車両等を含む移動体全般に適用可能であるが、以下ではこの発明を例えば二輪車に適用した場合を例に挙げて説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態による移動体(車両)始動システムの携帯機と車載機の概略的構成を示すブロック図である。携帯機1は車両の使用者である例えば運転者が運転時に携帯するものであり、車載機2は車両に搭載されて携帯機1と例えば電磁波により通信を行う。携帯機1は、車載機2との間で例えばコイル状のアンテナ(図示省略)等を使用して無線通信を行う無線送信部10と無線受信部11、通信内容に従って所定の処理を行うロジック回路やマイクロコンピュータ等で構成される制御部12、後述する暗号コード等が記憶されたメモリからなる記憶部13、電源となるバッテリ14を備える。
【0014】
一方、車載機2は、携帯機1との間でアンテナ(図2参照)等を使用して無線通信を行う無線送信部20と無線受信部21、通信内容に従って所定の始動制御処理を行うロジック回路やマイクロコンピュータ等で構成される制御部22、後述する暗号コード等が記憶されたメモリからなる記憶部23、例えば押ボタン式スイッチ等からなる操作スイッチ31の操作に従ってこの操作スイッチ31から出力される操作信号を制御部22で処理し、その処理結果に基づく制御部22からの操作制御信号等を接続された装置(図2参照)に出力する出力部24、電源部26を備える。なお電源部26は車両側の電源(図2参照)を使用する。
【0015】
また図2は、この発明の移動体(車両)始動システムにおける車両側の概略的構成を示すブロック図である。車載機2は図1に示したものであり、制御部22の入力側(入力部を設けてもよい)にはステアリングロック解錠センサ51、車両盗難防止用の振動センサ56、運転者により操作される操作スイッチ31が、出力部24にはステアリングロック解錠手段521、表示ランプ53、ハザードリレー54、警報ブザー55、さらに車両の電源線PLに挿入されたシステムリレー6がそれぞれ接続されていることが示されている。
【0016】
エンジン制御装置8は、入力部83に入力される転倒センサ72、エンジン制御のための各種センサ73、ストップスイッチ74等からの信号に従って、エンジン制御部81で所定の処理を行い、出力部84から点火コイル、インジェクタ、燃料ポンプ等からなるアクチュエータ71に制御信号を出力する。エンジン制御装置8の電源部82は各アクチュエータ71と共にシステムリレー6が挿入された電源線PLを介して車両のバッテリ9からの電圧の供給を受ける。
【0017】
車載機2の左側の回路は車両側に設けられた回路で、スタータスイッチ32が運転者により操作されて閉じるとスタータリレー41がオンして、スタータモータ4にバッテリ9から電力が供給されてエンジン始動が開始されるものである。
【0018】
車載機2の制御部22に接続されたステアリングロック解錠センサ51、出力部24に接続されたステアリングロック解錠手段521は後述する図3のステアリングロック機構52に示されたものである。出力部24に接続された表示ランプ53は、ステアリングロックの解錠異常の表示、エンジン制御装置8の始動異常の表示、あるいは盗難時の警告等を行う。ハザードリレー54は、後述する暗号コードを照合した結果が一致した場合にこれのハザードランプ(図示省略)によるフラッシャランプをアンサーバックとして表示、あるいは盗難時に点滅して警告駆動させる。警報ブザー55は、盗難が発生した時に音で警告する。また制御部22に接続された振動センサ56は、エンジンの運転が不許可の状態において、車両の振動を検出して盗難の発生を感知する。
【0019】
エンジン制御装置8ではエンジン制御部81が、出力部84を介してエンジンの運転状態に基づき、点火コイル、インジェクタ及び燃料ポンプなどのアクチュエータ71を操作してエンジンの運転制御を行うエンジン運転制御手段を構成する。エンジン制御部81の入力部83には、エンジン制御に必要な吸気温、水温、吸入空気量等の検出センサやクランク角、スロットル開度等の検出センサからなる各種センサ73、車両の転倒を検出する転倒センサ72、エンジンだけを速やかに停止させるためのいわゆるキルスイッチと呼ばれるストップスイッチ74などが接続されている。また、エンジン制御装置8と車載機2は通信線100で接続され、信号(情報)を双方向に通信している。
【0020】
また図3には、上述のステアリングロック解錠手段521が設けられた車両側のステアリングロック機構52の一例(二輪車用)が示されている。なお、二輪車用等ではハンドルロック機構となる場合もあるが、この発明は二輪車等に限定されるものではないので、以下ではステアリングロック機構として説明する。図3の(a)はステアリングロック機構52のロック状態すなわち施錠状態を示しており、図2のステアリングロック解錠手段521である電磁ソレノイド521のストッパー522が外装528内でロックバー523の係止部524に係止されており、ロックバー523の端部525は(b)に示すようにステアリングの回転部材SRMに係止され、ステアリングが回転しないようにロックされている。この状態で電磁ソレノイド521が励磁されるとストッパー522がバネ522aの復元力に抗して上方に上がり、ロックバー523がバネ526の復元力で軸受け529を軸受けとしてステアリングロックボタン527方向(図面右方向)に移動して、端部525がステアリングの回転部材SRMの係止から外れて解錠される。
【0021】
ステアリングロック機構52のロックすなわち施錠は、ステアリングロックボタン527をバネ526の復元力に抗して運転者が押すことにより手動で行われ、ロックバー523が図3に示す位置に戻ると、バネ522aの復元力でストッパー522がロックバー523の係止部524に嵌って係止状態になる。さらに外装528に設けられた近接スイッチ等からなるステアリングロック解錠センサ51により、ロックバー523の凹部である係止部524の位置が検知されて、これからステアリングロック機構52の解錠が検出される(凹部である係止部524がステアリングロック解錠センサ51の下にくれば解錠状態検出)。
【0022】
なお、エンジンが推進力発生装置を構成し、エンジン制御装置8が推進力発生装置制御装置を構成し、車載機2が移動体搭載機を構成し、車載機2の制御部22が操作制御手段を構成し、制御部22と送信部20と受信部21が認証手段を構成し、システムリレー6が移動体(車両)電力供給制御手段を構成する。
【0023】
次に車両の始動時の基礎的動作を説明すると、運転者によって操作スイッチ31がオンされると、車載機2から送信部20を介して暗号照合するためのトリガ信号が、図1の符号102に示すように無線送信される。携帯機1を持った運転者がこの送信範囲に存在する場合、携帯機1の受信部11がこの信号を受信する。制御部12はこの受信した信号から暗号コードを送信するか否かを判定する。これはいわゆるIDコードを受信したか否かの判断で代用できる(ID認証)。つまり、送信されたIDコードがどの車両から送信されたものかを判断することにより、自車又は同じシステムを使用している車両から送信されたコードにのみ反応するものである。自車又は同じシステムを使用している車両から送信されたものと判断すると、制御部12は記憶部13から予め格納されている暗号コードを呼び出し、送信部10を介して図1の符号101に示すように無線送信する。
【0024】
なお、バッテリ14は各部分を動作させるための電源供給源であり、送信が終了して次の信号を受信するまでは電源を消費することがないように低消費モードにて受信信号待受状態になる。また、受信信号により起動し電源を供給できるように動作するため、バッテリの消費を抑制できる省エネタイプとなっている。そして制御部12は、受信部11で受信信号が予め定められた信号(所定のIDコード)である時のみ起動して記憶部13の暗号コードを送信する。このIDコードの判定は、例えば制御部12内にロジック回路で構成された信号発生回路(図示省略)の信号との比較等で行えばよい。
【0025】
車載機2はこの暗号コードを受信部21を介して受信し、制御部22は記憶部23に予め記憶している暗号コードを呼び出し、これらの暗号コードの照合を行う。照合した結果、暗号コードが一致した場合、ステアリングロック解錠センサ51からの信号から判断して図3のステアリングロック機構52が施錠状態にあれば、制御部22はこれを解錠するように操作制御信号27を出力部24からステアリングロック解錠手段521に出力する。これにより図3の電磁ソレノイド521に電力が供給され、ロックバー523の係止部524に係止されていたストッパー522が上方向(解除時方向)に外れるため、ロックバー523がバネ526の復元力でステアリングロックボタン527方向に移動して、端部525がステアリングの回転部材SRMの係止から外れて解錠される。なおこの時、暗号コードが不一致の場合は、制御部22は不動作である。暗号コードの照合結果は、ステアリングロック機構52等の実際の状態変化で認識することもできるし、ハザードリレー54で駆動されるフラッシャランプ(図示省略)で表示される。
【0026】
そしてこの状態で再度、運転者によって操作スイッチ31がオンされると、上記と同様に、車載機2が暗号コードを得るために携帯機1へIDコードを送り、携帯機1から得られた暗号コードと車載機2の暗号コードとの照合が行われる(暗号コード照合による携帯機の認証処理)。照合の結果、暗号コードが一致した場合、ステアリングロック解錠センサ51の信号から図3のステアリングロック機構52が解錠状態にあるので、制御部22は今度は出力部24からシステムリレー6へこれをONさせる操作制御信号を出力する。これによりエンジン制御装置8はバッテリ9から電力が供給されて起動状態になる。さらに制御部22はエンジン制御装置8へエンジン始動許可信号を通信線100を介して出力する。
【0027】
なお振動センサ56は、制御部22からエンジン制御装置8へのエンジン始動許可信号がないエンジン始動不許可状態であるとき、盗難時の車両の振動を検出し、これに従って例えばハザードリレー54のハザードランプ(図示省略)や警報ブザー55などで光、音などで警報を発する。
【0028】
次に、運転者がステアリングロック機構を解錠してエンジンを始動するまで、すなわちロック解錠モードからエンジン制御装置始動・エンジン運転許可モード、を経てエンジン始動に至るまでの動作を説明する。図4はこの発明の移動体始動システムの動作を示す状態遷移図ある。図4において、状態(1)は、システムの初期状態で、システムリレー6はOFF、ステアリングロック機構52は施錠状態にある。状態(1)において操作スイッチ31が短押しされることで(S01)、車載機2は上述の携帯機の認証処理を行い、携帯機1からの暗号コードと自らの暗号コードが一致した場合は、ステアリングロック機構52を解錠し、状態(2)に推移する。暗号コードが不一致の場合は状態(1)を継続する。なお“短押し”とは操作スイッチ31が押されている長さが所定時間長以下のものであり、後述する“長押し”とは操作スイッチ31が押されている長さが所定時間長を超えるものである。また以降、操作スイッチ31が押される度に上述の暗号コード照合による携帯機の認証処理が行われる。
【0029】
状態(2)では、システムリレーはOFF、ステアリングロック機構は解錠状態にある。この状態(2)において再度、操作スイッチ31が短押しされると(S02)、車載機2は携帯機の認証処理を行い、暗号コードが一致した場合は、システムリレー6をONさせ、エンジン制御装置8は始動状態になり、さらにエンジン運転が許可される。これによりシステムリレー6はON、ステアリングロック機構52は解錠状態、エンジンは停止状態の状態(3)(キーオン状態)に推移する。この時、エンジン制御装置8および点火コイル、インジェクタ及び燃料ポンプ等の各種アクチュエータ71に電力供給が開始されると同時に、車載機2の制御部22はエンジン制御装置8のエンジン制御部81に対し通信線100を介しエンジン始動許可信号を与え、各種アクチュエータ71は始動許可状態になる。また。状態(3)においてシステムリレー6をOFFしたい場合には、操作スイッチ31を長押しすることで(S03)、認証処理で暗号コードが一致すれば状態(2)に戻り、これによりエンジン始動不許可状態に戻る。
【0030】
また、状態(3)においてシステムリレー6がONの状態が所定時間(例えばT秒間:T=600秒)継続したまま別の状態への推移がない場合には、(5)ストップ判定をして状態(2)に戻る。さらに状態(3)において例えば運転者によりスタータスイッチ32がONされると(S05)、エンジンを始動させることができ、システムリレー6はON、ステアリングロック機構52は解錠状態、エンジンは始動状態の状態(4)に推移する。そして状態(4)において運転者によりストップスイッチ74がONされると(S06)、エンジン回転のみが停止して状態(3)に推移する。
【0031】
また、状態(4)のエンジン回転中にエンジンを停止させる場合は、操作スイッチ31を長押しすることで(S07)、状態(2)へ推移する。この時、システムリレー6がOFFされることでエンジン制御装置8側への電力供給がなくなりエンジンは停止するが、車載機2の制御部22からエンジン制御装置8のエンジン制御部81に対し通信線100を介してエンジン停止信号を与えるようにしてもよい。また状態(2)から状態(1)への移行は、例えば運転者が手動にてステアリングロックボタン527を押すだけである(S08)。また、状態(1)から一気に状態(3)すなわちキーオン状態にしたい場合には、操作スイッチ31を長押しすることで(S04)、ステアリングロック機構52の解錠とシステムリレー6のONをほぼ同時に行わせることができる。この時、車載機2の暗号コード照合による携帯機の認証処理は1回だけなので、時間の短縮が実現できる。
【0032】
図5は始動時に操作スイッチ31を短押しSPにより順次操作した時の、操作スイッチ31からの操作信号、車載機2での暗号コード比較、ステアリングロック機構52の施解錠状態、システムリレー6のON/OFF状態を示すタイムチャートである。操作スイッチ31を短押しSPして順次操作する場合には短押しSP後にそれぞれ車載機2での暗号コード比較を行い、一致した場合にそれぞれステアリングロック機構の解錠、システムリレーの起動(ON)を行ない、システムリレー起動後に操作スイッチ31の長押しLPをすることで、暗号コード比較後、システムリレーのOFFを行なう。
【0033】
一方、図6は始動時に操作スイッチ31を長押しLPにより操作した時の、操作スイッチ31からの操作信号、車載機2での暗号コード比較、ステアリングロック機構52の施解錠状態、システムリレー6のON/OFF状態を示すタイムチャートである。この場合、操作スイッチ31を長押しLPすることでステアリングロック機構の解錠とシステムリレーの起動がほぼ同時に行われる。これにより、車載機2での暗号コード比較は1回だけ行なわれ、エンジン制御装置8の始動モード(図4の状態(3))への移行の際の時間短縮を行なう。
【0034】
図7には車載機2の制御部22での概略的な動作フローチャートを示す。なおこの動作フローチャートには、エンジン制御装置8のエンジン制御部81等の動作も一部含まれる。図4の状態(1)に相当する、ステアリングロック解錠センサ51からステアリングロック機構52が施錠状態にあると判断されている状態で(S101)、操作スイッチ31が、押されている時間長が所定時間長以下の短押し(SP)されると(S102)、上述の認証処理で暗号コードが一致すれば(S103)、ステアリングロック機構52を解錠する(S104)。これは図4の状態(2)に相当し、まだエンジン始動許可状態にはない。この状態でさらに操作スイッチ31が短押し(SP)され(S105)、認証処理で暗号コードが一致すれば(S106)、システムリレー6をONする(S110)。これは図4の状態(3)に相当し、この状態では上述のように、エンジン制御装置8および点火コイル、インジェクタ及び燃料ポンプ等の各種アクチュエータ71に電力供給が開始されると同時に、図示は省略されているが、エンジン制御装置8に対し通信線100を介しエンジン始動許可信号を与え、各種アクチュエータ71は始動許可状態になる。
【0035】
一方、ステップS101の状態で、操作スイッチ31が、押されている時間長が所定時間長を超える長押し(LP)されると(S107)、認証処理で暗号コードが一致すれば(S108)、ステアリングロック機構52を解錠すると共に(S109)、システムリレー6をONし(S110)、一気にステップS110の状態になる。この時、上記と同様にエンジン制御装置8に対し通信線100を介しエンジン始動許可信号が与えられる。
【0036】
エンジン制御装置8では、ステップS110の状態でスタータスイッチ32がONされると(S111)、エンジンを始動する(S112)。これは図4の状態(4)に相当する。
【0037】
一方、車載機2の制御部22では、ステップS110の状態で操作スイッチ31が長押し(LP)され(S119)認証処理で暗号コードが一致する(S120)か、他の状態への移行がないままステップS110の状態が所定時間継続すると(S122)、システムリレー6をOFFし(S121)、ステップS104の状態に戻る。
【0038】
またエンジン制御装置8では、ステップS112のエンジンが始動されてエンジンが回転状態にある時に、ストップスイッチ74がONされると(S113)、エンジンを停止させて(S114)ステップS110の状態に戻る。
【0039】
一方、車載機2の制御部22では、ステップS112の状態で、操作スイッチ31が長押し(LP)され(S115)認証処理で暗号コードが一致すれば(S116)、制御部22はエンジン制御装置8のエンジン制御部81に対し通信線100を介してエンジン停止信号を与えエンジンを停止させる(S117)と共にシステムリレー6をOFFし(S118)、ステップS104の状態に戻る。これにより車載機2の制御部22はエンジン始動不許可の状態に戻る。なお、ステップS111〜S114はエンジン制御装置8のエンジン制御部81の動作に係わるものである。
【0040】
なお、エンジン制御装置8が、電力供給の有無により自動的にエンジンの始動許可状態、始動不許可状態に切り替わるものであり、かつ電力供給が途絶えることによりエンジン制御が不可能になりエンジンが自動的に停止することで、その後の制御に支障がないものであれば、車載機2の制御部22とエンジン制御装置8のエンジン制御部81との間で通信線100を介して信号をやりとりしなくてもよい。
【0041】
以上のように、キー及びキーシリンダを廃し、携帯機と車載機と操作スイッチの組合せによりステアリングロック機構の解錠、システムリレーのON/OFFを行うため、キーシリンダにキーを挿入して回すという労力を必要とせず、車両に取り付けられた一つのボタン(操作スイッチ)を押すだけで簡便に、ステアリングロック機構の解錠、エンジン制御装置への給電制御およびエンジンの運転許可、運転停止の指示を行うことができる。また、キーシリンダにキーを挿入することによる機械的な故障も防止することができる。
【0042】
また、携帯機により解錠を行うため、運転者が携帯機を所持している以上、他の人はステアリングロック機構の解錠やエンジンの始動許可を与えることができず、運転者がキーシリンダにキーを挿入したまま車両から離れた隙に盗難されるといった事態を防止することができる。
【0043】
また、キーシリンダにキーを挿入する必要がないため、夜間の始動時において、暗闇の中でキーシリンダの挿入孔を探すという行為をする必要はなく、簡便にステアリングロック機構の解錠、エンジンの始動を行うことができる。また、キーシリンダにランプをつけるなどのコストがかかる対策を施す必要がなく、低コストのシステムを提供することができる。また、キーシリンダを廃することができるため、運転席付近のデザイン自由度を高めることができる。
【0044】
また、制御部でエンジン運転不許可の状態であるとき、振動センサで盗難時の車両の振動を検出して、ハザードランプや警報ブザーなど、光、音などで警報を発するので、運転者及び周囲の人に確実に盗難発生を知らせることができ、盗難防止機能をさらに向上させることができる。
【0045】
また、エンジンが運転状態(図4の状態(4))から停止状態(図4の状態(2))へ移行したことに基づいてエンジンの運転を不許可とするので、エンジンの停止後、速やかにエンジンの再始動を禁止させ、盗難防止機能をさらに向上させることができる。
【0046】
また、エンジンの始動が許可されてから、エンジン停止状態が所定期間以上継続している場合に、システムリレーや信号でエンジンの始動を不許可とするので、エンジンの始動許可状態で運転者が車両から短時間離れた隙に盗難されるといったことをより困難にすることができ、盗難防止機能をさらに向上させることができる。
【0047】
なお、上記実施の形態では、この発明によるシステムを二輪車に適用した場合について説明を行ったが、ATV、船舶、ジェット推進艇、車両などの内燃機関やモータ等の推進力発生装置で推進される各種移動体等に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の一実施の形態による移動体(車両)始動システムの携帯機と車載機の概略的構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施の形態による移動体(車両)始動システムにおける車両側の概略的構成を示すブロック図である。
【図3】(a)はこの発明によるステアリングロック解錠手段が設けられた車両側のステアリングロック機構の一例(二輪車用)を示す図、(b)はステアリングロック機構とステアリングの回転部材との関係を示す図である。
【図4】この発明の移動体(車両)始動システムの動作を示す状態遷移図ある。
【図5】この発明の一実施の形態による移動体(車両)始動システムにおける始動時の操作スイッチの短押し操作の場合の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図6】この発明の一実施の形態による移動体(車両)始動システムにおける始動時の操作スイッチの長押し操作の場合の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図7】この発明の一実施の形態による移動体(車両)始動システムにおける車載機の制御部の概略的な動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 携帯機、2 車載機(移動体搭載機)、4 スタータモータ、6 システムリレー(移動体電力供給制御装置)、8 エンジン制御装置(推進力発生装置制御装置)、9 バッテリ、11 無線受信部、12 制御部、13 記憶部、14 バッテリ、20 無線送信部、21 無線受信部、22 制御部、23 記憶部、24 出力部、27 操作制御信号、31 操作スイッチ、32 スタータスイッチ、41 スタータリレー、51 ステアリングロック解錠センサ、52 ステアリングロック機構、53 表示ランプ、54 ハザードリレー、55 警報ブザー、56 振動センサ、71 アクチュエータ(点火コイル、インジェクタ、燃料ポンプ)、72 転倒センサ、73 各種センサ、74 ストップスイッチ、81 エンジン制御部、82 電源部、83 入力部、84 出力部、100 通信線、521 ステアリングロック解錠手段(電磁ソレノイド)、522 ストッパー、523 ロックバー、524 係止部、525 端部、526 バネ、527 ステアリングロックボタン、528 外装、529 軸受け、SRM 回転部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進力発生装置により移動する移動体に搭載された移動体搭載機と、
上記移動体搭載機との間で無線通信を行う使用者が携帯する携帯機と、
使用者の操作に従って上記移動体搭載機に操作信号を出力する移動体側に設けられ操作スイッチと、
移動体側に設けられたステアリングロック機構の解錠を行うステアリングロック解錠手段と、
移動体側に設けられた移動体の推進力発生装置制御装置側への電力供給の制御を行う移動体電力供給制御手段と、
を備え、
上記移動体搭載機が、
上記携帯機との間の無線通信による認証処理を行う認証手段と、
上記認証手段により上記携帯機の認証が認められた後に、入力された上記操作信号に従って上記ステアリングロック解錠手段および移動体電力供給制御手段の少なくとも一方に予め定められた処理を行わせる操作制御手段と、
を備えたことを特徴とする移動体始動システム。
【請求項2】
上記操作信号が操作スイッチのオン期間の長さに対応した信号であり、
上記操作制御手段が、所定時間長以下の上記操作信号が入力された時に上記ステアリングロック解錠手段に解錠を行わせ、解錠後、続いて上記所定時間長以下の上記操作信号が入力された時に上記移動体電力供給制御手段に電力供給制御を行わせることを特徴とする請求項1に記載の移動体始動システム。
【請求項3】
上記操作信号が操作スイッチのオン期間の長さに対応した信号であり、
上記操作制御手段が、所定時間長を超えた上記操作信号が入力された時に上記ステアリングロック解錠手段に解錠を行わせると共に上記移動体電力供給制御手段に電力供給制御を行わせることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体始動システム。
【請求項4】
上記操作制御手段が、上記操作信号が入力される度に上記認証手段に認証処理を行わせ、上記携帯機の認証が認められた場合に入力された上記操作信号に従って上記ステアリングロック解錠手段および移動体電力供給制御手段の少なくとも一方に予め定められた処理を行わせることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の移動体始動システム。
【請求項5】
上記移動体搭載機が移動体の推進力発生装置制御装置と通信線を介して通信を行い、上記操作制御手段が入力された上記操作信号に従って上記推進力発生装置制御装置に推進力発生装置停止信号を出力することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の移動体始動システム。
【請求項6】
上記操作スイッチが押ボタン式スイッチであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の移動体始動システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−117202(P2006−117202A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310016(P2004−310016)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】