説明

積層構造物及びその製造方法

【課題】
フォトリソグラフィー法により精細な接着剤パターンを形成し、各種部材に対する接着性、硬度や耐熱性、耐薬品性等の特性に優れる接着剤パターンの硬化物を形成できる組成物の硬化物を介して部材同士が接合された積層構造物の製造方法を提供する。
【解決手段】
1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物と常温で固体のグリシジル型エポキシ化合物と光酸発生剤と有機溶剤とを含む接着剤を被接着部材表面に塗布する工程と、
被接着部材表面に塗布された前記接着剤を活性エネルギー線によりパターン露光する工程と、
パターン露光した接着剤の未露光部を現像にて除去することによって接着剤パターンを形成する工程と、
接合すべき接着部材を前記接着剤パターンに圧着させる工程と、
前記接着剤パターンを熱硬化させる工程とを含むことを特徴とする積層構造物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、接着機能と共にスペーサー等の構造部材としての機能も有する接着剤パターンの硬化物を介して部材同士が接合されている積層構造物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の積層構造の形成に用いられる接着剤としては、一般に熱硬化型の接着剤が用いられている。例えば、従来のバックライト装置における光反射部の形成は、一般にバインダーとしての透明樹脂ワニスに酸化チタン等の反射材料を混入し、有機溶剤によって印刷に適した粘度に希釈したインクを、導光板の背面にドット状等所定のパターンでスクリーン印刷等により塗布して行なうか、あるいは、特許文献1に記載のように、白色のプラスチックシート(反射材シート)の片面に反射材料を含むインクを用いて反射パターンを印刷し、該反射パターン自体の接着性を利用して透明アクリル板(導光板)に接着することにより行われている。しかしながら、熱硬化型の接着剤の場合、印刷によって所定のパターン状に形成する必要があるため、精細な接着剤パターンの形成が困難である。
【0003】
また、精細な構造を作製してから、構造物に接着剤を塗布して積層構造を製造する方法では、特許文献2のようなカチオン重合性の材料を用いて、第1の部材の上にフォトリソグラフィー法によりスペーサー等の構造物を作り、その構造物に接着剤を塗布して、第2の部材を接着し、積層構造を作製している。しかしながら、前例と同等に接着剤の塗布を必要部分に選択的に行なうのは、非常に困難であり、積層構造物の精度を上げていくのは難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−194527号
【特許文献2】特開昭62−102242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フォトリソグラフィー法により形成された精細な接着剤パターンを介して、各種部材、例えば各種基板やその表面に積層される各種シート部材に対する接着性に優れると共に、硬度や耐熱性、耐薬品性等の特性に優れる接着剤パターンの硬化物を介して部材同士が接合された積層構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は鋭意研究した結果、カチオン重合でのフォトリソグラフィー法による高精度なパターン形成において、1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物と常温で固体であるグリシジル型エポキシ化合物を併用することで、パターン形成後の硬化物が熱圧着による接着性を有することを見出し、本発明の製造方法を想到するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物と常温で固体のグリシジル型エポキシ化合物と光酸発生剤と有機溶剤とを含む接着剤を被接着部材表面に塗布する工程と、被接着部材表面に塗布された前記接着剤を活性エネルギー線によりパターン露光する工程と、パターン露光した接着剤の未露光部を現像にて除去することによって接着剤パターンを形成する工程と、接合すべき接着部材を前記接着剤パターンに圧着させる工程と、前記接着剤パターンを熱硬化させる工程とを含むことを特徴とする積層構造物の製造方法である。
【0008】
また、本発明は、1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物と常温で固体のグリシジル型エポキシ化合物と光酸発生剤と有機溶剤とを含む接着剤を被接着部材表面に塗布する工程と、被接着部材表面に塗布された前記接着剤を活性エネルギー線によりパターン露光して光カチオン重合させる工程と、パターン露光した接着剤の未露光部を現像にて除去することによって接着剤パターンを形成する工程と、接合すべき接着部材を前記接着剤パターンに圧着させる工程と、前記接着剤パターンを加熱して、前記常温で固体のグリシジル型エポキシ化合物を熱硬化させる工程とを含むことを特徴とする積層構造物の製造方法である。
【0009】
さらに本発明は、上述の製造方法により、被接着部材と接着部材が接合されたことを特徴とする積層構造物を提供できる。
【0010】
なお、本明細書において、「積層構造物」とは、被接着部材上の接着剤パターンの硬化物を介して、被接着部材と接着部材が接合された構造体を意味する。前記被接着部材及び接着部材としては、各種絶縁性部材、各種導電性部材、各種透明もしくは半透明部材又は着色部材など、用途に応じた任意の性質の部材を用いることができる。また、被接着部材及び接着部材としては、ガラス、セラミックス、金属、プラスチック、紙等の各種材料から作製された成形品、板状成型品、シート等を用いることができ、所望の用途に応じて種々の部材を用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フォトリソグラフィー法により精細な接着剤パターンを形成し、各種部材、例えば各種基板やその表面に積層される各種シート部材に対する接着性に優れると共に、硬度や耐熱性、耐薬品性等の特性に優れる接着剤パターンの硬化物を介して部材同士が接合された積層構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】被接着部材と接着剤パターンと接着部材からなる構造体を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0014】
本発明は、1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物と、常温で固体のグリシジル型エポキシ化合物を併用し、さらに光酸発生剤及び有機溶剤を含む接着剤パターン形成用組成物を用いているので、現像型フォトリソグラフィー法により被接着部材表面に精細な接着剤パターンを形成できると共に、この接着剤パターンに接合すべき接着部材を熱圧着させることができ、部材同士を極めて強固に接合することができる。
【0015】
さて、一般的に知られている光カチオン重合とは、光の照射で酸を発生する光酸発生剤にてエポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテルなどを重合させることである。カチオン重合は化合物により反応速度と反応率が大きく異なり、その速度と反応率を制御するために、光酸発生剤の種類や量、光照射後の温度などの調整がとられている。しかし、化合物の特徴を超える制御方法がなく、現像型フォトリソグラフィー法は精細なパターンを作製できるにもかかわらず、接着剤としては難しいものとなっている。
【0016】
通常、エポキシ化合物は一定以上の反応が進みにくく、得られる硬化物は低分子量であり、硬くもろくなりやすい。また、反応速度に関しては脂環式エポキシ化合物を選択することにより改善される傾向にあり、なかでも低粘度のものが反応しやすい傾向がある。オキセタン化合物はエポキシ化合物よりも硬化深度が高く、硬化物の分子量が大きくなる傾向があるので、強靭な硬化物が得られやすい特長がある。
【0017】
光カチオン重合を利用して、現像型フォトリソグラフィー法を行なうためには、硬化物が強い有機溶剤耐性を持つ必要がある。それは硬化前の組成物に易溶である有機溶剤を現像液として使用するためで、有機溶剤耐性を出すために、光照射により出された酸で充分に硬化させなければならない。しかしながら、光カチオン重合は前記の通り、制御が非常に難しいので、未反応を残さない硬化物となる。したがって、一般的な現像型フォトリソグラフィー法の光カチオン硬化物では十分な接着性が得られない。
【0018】
本発明では、1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物と常温で固体であるグリシジル型エポキシ化合物を併用することにより、現像型フォトリソグラフィー法の光カチオン硬化物でありながら、パターン形成後の硬化物が熱圧着での接着性を有することを見出した。
【0019】
これは1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物と常温で固体であるグリシジル型エポキシ化合物の反応速度、硬化深度の差が充分であり、互いに反応に寄与しているためと考えられる。つまり、現像型フォトリソグラフィー法の現像液耐性は1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物が硬化することにより充分得られると思われるが、常温で固体であるグリシジル型エポキシ化合物が未反応ではエポキシ化合物だけ現像液に流出してしまい、結局は現像液耐性が得られない。
【0020】
しかし、本発明の組成物では、1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物が硬化すると同時に、常温で固体であるグリシジル型エポキシ化合物も部分的に共に硬化していると考えられる。
【0021】
また、現像後に熱圧着による接着性が得られるのは、接着剤中の部分的未反応物となった常温で固体であるグリシジル型エポキシ化合物が軟化点を越えたことによる若干の溶融が起きていることと、溶融し粘度が低下したことと温度上昇により反応がさらに進むことが理由として考えられる。
【0022】
接着剤パターンを介した本発明の積層構造物の製造方法は、まず、被接着部材(図1:a)の表面に接着剤パターン形成用組成物の塗膜(図1:b)を形成する。
塗膜の形成は、必要に応じて有機溶剤などの希釈剤を添加して粘度を調整した後、スクリーン印刷法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法、及びスピンコーティング法などの適宜の塗布方法により所望の基板上に塗布し、例えば約60〜120℃の温度で仮乾燥することで組成物中に含まれる有機溶剤を除去し、塗膜を形成する。
【0023】
次いで、形成された光硬化型接着剤の塗膜をパターン露光する。
パターン露光は、塗膜の上に所定の露光ネガパターンを形成したフォトマスク(図1:c)を用いて、選択的に光を照射して露光する。あるいは、パターン通りにレーザー光線等により直接描画して露光する。照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプや、各種レーザー光線などが適当である。その他、電子線、α線、β線、γ線、X線、中性子線なども利用可能である。
【0024】
その後、未露光部を有機溶剤により現像することにより、所定の接着剤パターン(図1:d)が得られる。
なお、塗布、露光、現像の各工程を繰り返して所望の高さの接着剤パターンを形成することもできる。接着剤パターンとしては、所望の用途に応じて、点、線、面などの模様を構成する要素が任意の距離を隔てて配置されている模様、例えば縞状、斑点状、網目状などの種々の模様とすることができる。上記現像に用いる有機溶剤としては、硬化前の塗膜が可溶であればよく、本発明の組成物に含まれる有機溶剤が使用できる。現像方式はディップ現像、パドル現像、スプレー現像などの公知の方法を用いることができる。
【0025】
次いで、接合すべき接着部材(図1:e)を接着剤パターンに圧着し、例えば約140〜200℃の温度、好ましくは約150℃前後に加熱して熱硬化させる。
これにより、非接着部材と接着剤パターンと接着部材からなる構造体(図1:f)が得られる。なお、圧着の圧力は、形成された接着剤パターンが崩れない程度の圧力であればよく、露光、現像後の接着剤パターンの硬度に応じて任意に設定できる。
【0026】
前記被接着部材及び接着部材としては、ガラス、セラミックス、金属、プラスチック、紙等の各種材料から作製された成形品、板状成型品、シート等を用いることができ、所望の用途に応じて種々の部材を用いることができる。特に被接着部材としては、ガラス板、ガラス−エポキシ基板、セラミックス基板、金属板、プラスチック板、これらの複合板あるいは他の材料との複合板などの各種基板を好適に用いることができ、所望の用途に応じて種々の材料を用いることができる。
【0027】
接合すべき接着部材としては、合成樹脂フィルム、金属フィルム、ガラスシート、紙、紙−合成樹脂複合フィルム、紙−金属箔−合成樹脂複合フィルムなどのシート部材を好適に用いることができ、所望の用途に応じて種々の材料を用いることができる。
これらの被接着部材や接着部材は、穴あけ加工等の機械加工が施されたものであってもよい。なお、これらの被接着部材及び接着部材は、熱硬化処理の温度に耐えられるものとする必要がある。
【0028】
本発明に用いる1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン等の2官能オキセタンや、3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート等を用いた共重合体の多官能オキセタン類の他、ノボラック樹脂類、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂をオキセタン化したエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタニル基を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。これらの中でも、フォトリソグラフィー法での現像液耐性の観点から、ノボラック樹脂類をオキセタン化したエーテル化合物である多官能オキセタン化合物が好ましい。
【0029】
本発明に用いる常温で固体であるグリシジル型エポキシ化合物としては、ジャパンエポキシレジン(株)製のjER1001、jER1004、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン1050、エピクロン1055、エピクロン2050、エピクロン3050、エピクロン4050、東都化成(株)製のエポトートYD−011、YD−013、YD−017、YD−901等のビスフェノールA型エポキシ化合物;ジャパンエポキシレジン製jER4004P、jER4005P、jER4007P、jER4010P、東都化成(株)製のエポトートYDF−2001、エポトートYDF−2004、エポトートYDF−2005RL等のビスフェノールF型エポキシ化合物;大日本インキ化学工業(株)製のEXA−1514等のビスフェノールS型エポキシ化合物;ジャパンエポキシレジン(株)製のjER157S等のビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物;ジャパンエポキシレジン(株)製のjER154、jER157S70、ダウケミカル(株)製のDEN438、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロンN−770、エピクロンN−775、エピクロンN−865、東都化成(株)製のエポトートYDCN−700−2、YDCN−700−3、YDCN−700−5、YDCN−700−7、YDCN−704、日本化薬(株)製のEPPN−501H、EPPN−502H、EOCN−1025、RE−306等のノボラック型エポキシ化合物;東都化成(株)製のエポトートST−4000D等の水添ビスフェノールA型エポキシ化合物;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−933、日本化薬(株)製のEPPN−501、EPPN−502等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物;ジャパンエポキシレジン(株)製のYX−4000、YL−6121H、YL−6640、YL−6677等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ化合物;日産化学(株)製のTEPIC等の複素環式エポキシ化合物;大日本インキ化学工業(株)製のHP−4700、HP−4770等のナフタレン基含有エポキシ化合物;大日本インキ化学工業(株)製のHP−7200、HP−7200H、HP−7200HH(以上、何れも商品名)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物;さらに、ブロム化エポキシ化合物、トリフェノールメタン型エポキシ化合物、テトラフェノールエタン型エポキシ化合物、ジグリシジルフタレート化合物、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ化合物、テトラグリシジルキシレノイルエタン化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物、トリアジン核含有エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ化合物、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ化合物等が挙げられる。これら常温で固体のエポキシ化合物の中でも、接着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ化合物が好ましい。
【0030】
常温で固体であるグリシジル型エポキシ化合物の配合割合としては、1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物との質量比率は、オキセタン化合物:エポキシ化合物とすると、99:1〜10:90であり、好ましくは95:5〜20:80、より好ましくは、90:10から30:70質量部である。
【0031】
本発明に用いる光酸発生剤としては、ユニオン・カーバイト社製のCYRACURE UVI−6950、UVI−6970、旭電化工業社製のオプトマーSP−150、SP−151、SP−152、SP−170、SP−171、日本曹達社製のCI−2855、デグサ社製のDegacere KI85B等のトリアリールスルホニウム塩や非置換又は置換されたアリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩が挙げられる。また、スルホン酸誘導体としては、みどり化学社製のPAI−101(以上、何れも商品名)等が挙げられる。
【0032】
これらの光酸発生剤の配合割合としては、1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物と常温で固体のエポキシ化合物の合計量100質量部当たり、2〜40質量部が適当である。2質量部よりも少ない場合には、活性エネルギー線の照射により生成する酸が少なく、パターン形成が困難になるとともに、撥水性材料の硬化性が著しく悪化する。一方、40質量部よりも多い場合には、光酸発生剤自身の光吸収により感度が低下し易くなるので好ましくない。また、より硬化度を向上させたい場合には、熱重合カチオン開始剤や光カチオン増感剤を併用してもよい。
【0033】
本発明に用いる有機溶剤は塗膜の形成のために使用し、組成物中の化合物成分を溶解させることができるものであれば良い。また、乾燥させることで塗膜のベタつきをとり、露光工程をしやすくする。例えば、メチルエチルケトンやシクロヘキサノン等のケトン類、トルエンやキシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブやメチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトー ル、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチルや酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、エタノールやプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、オクタンやデカン等の脂肪族炭化水素類、石油エーテルや石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤類、リモネン等のテルペン類などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。また、有機溶剤の配合量は、用途等に応じた任意の量とすることができる。
【0034】
また、本発明に用いる接着剤パターン形成用組成物には、必要に応じて各種顔料や導電性粒子を添加することができる。顔料としては、所望の用途に応じて、フタロシアニングリーン等の緑色顔料、フタロシアニンブルー等の青色顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料等の黄色顔料、モリブデン赤、べんがら等の赤色顔料、カーボンブラック、ランプブラック、ボーン黒、黒鉛、鉄黒、銅クロム系ブラック、銅鉄マンガン系ブラック、コバルト鉄クロム系ブラック、四三酸化コバルト等の酸化コバルト、酸化ルテニウム等の黒色顔料、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料など、従来公知の任意の顔料を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。導電性粒子としては、銅、銀、ニッケル、アルミニウム、錫、白金、タングステン、金、パラジウム、半田等の金属粒子や、化合物粒子に上記金属の層を被覆したもの等が挙げられる。
【0035】
このような顔料や導電性粒子の平均粒径は、解像度の点から20μm以下、好ましくは5μm以下が望ましい。また、これらの配合割合は、本発明の効果を損なわない限り、所望の用途に応じて任意の割合とすることができる。
【0036】
本発明に用いる接着剤パターン形成用組成物は、さらに塗膜の密着性、硬度等の特性を上げる目的で、あるいは所望の用途に応じて、ガラスフリットや、アルミナ、コージェライト、ジルコン等のセラミックス微粒子、硫酸バリウム、タルク、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等のフィラー成分を含有することができる。また、顔料や導電性粒子、フィラー成分の2次凝集防止、分散性の向上を目的として、安定化剤として作用する有機酸、無機酸又はリン酸化合物( 無機リン酸、有機リン酸)や、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等で予め表面処理したものを用いたり、組成物を調製する時点で上記処理剤の少量を添加したりすることができる。
【0037】
さらに、本発明に用いる接着剤パターン形成用組成物には、必要に応じて、安定したペーストとするために顔料や導電性粒子、フィラー成分に適した分散剤を添加したり、また、公知慣用の熱重合禁止剤、増粘剤、可塑剤、流動性付与剤、安定剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤等を本発明の効果を損なわない量的割合で添加したりすることができる。分散剤としては、カルボキシル基、水酸基、酸エステルなどの顔料やフィラー成分と親和性のある極性基を有する化合物や高分子化合物、例えばリン酸エステル類などの酸含有化合物や、酸基を含む共重合物、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドと酸エステルの塩などを用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではないことはもとよりである。
【0039】
実施例1〜2及び比較例1〜2の配合:
表1に従って1〜7の各成分を配合、攪拌して溶解した後、8の光酸発生剤を添加、攪拌してそれぞれ、組成物を作製した。表中の数字は、質量部を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
1.オキセタン化合物:アロンオキセタン PNOX−1009(東亞合成製)フェノールノボラック型多官能オキセタン化合物(常温で固体)
2.エポキシ化合物1:jER1001(ジャパンエポキシレジン製)ビスフェノールA型2官能エポキシ化合物(常温で固体)
3.エポキシ化合物2:jER1004(ジャパンエポキシレジン製)ビスフェノールA型2官能エポキシ化合物(常温で固体)
4.エポキシ化合物3:jER828(ジャパンエポキシレジン製)ビスフェノールA型2官能エポキシ化合物(常温で液体)
5.エポキシ化合物4:EHPE3150(ダイセル化学工業製)多官能脂環式エポキシ化合物(常温で固体)
6.有機溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
7.レベリング剤:BYK−361N(ビックケミー・ジャパン製)
8.光酸発生剤:SP−152(ADEKA製)
【0042】
各組成物をスピンコート法に適するように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで粘度調整し、6インチのシリコンウエハーに厚み20ミクロンになるようにスピンコーターで塗布した。次に、80℃のホットプレートに10分間載せて乾燥し、ラインアンドスペース200μmのネガ型のフォトマスクを用いて、プリント配線板用の露光機で1500mJ/cmの積算光量で露光した。次に80℃のホットプレートに5分間載せて硬化促進を行なった。さらに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルによりパドル現像を行ない、接着剤パターンを作製した。
このようにして作製した接着剤パターンのパターニング性について評価を行った。その結果を表2に示す。
【0043】
次に、作製した接着剤パターンの上に20cm×20cmの大きさの表2に示す各基材を載せて、10kgの加重になるように、平らな板とおもりを置き、150℃で60分間加熱して積層された構造物を得た。
このようにして得られた積層構造物について、接着部材と被接着部材を手で引っ張り、接着面でのはがれを観察して接着性を評価した。その結果を表2に併せて示す。
【0044】
上述したパターニング性と接着性の評価基準は以下の通りである。
(パターニング性)
○・・・パターニングできたもの
×・・・パターニングできなかったもの
(接着性)
○・・・接着面ではがれたもの
×・・・接着面ではがれなかったもの
【0045】
【表2】

【0046】
表2で明らかな通り、多官能オキセタン化合物と固体のエポキシ化合物を併用することで、フォトリソグラフィー法によるパターニングが可能、かつ接着性に優れる積層構造物が得られることがわかる。一方、多官能オキセタンと液状のエポキシ化合物、及び脂環式エポキシ化合物の組み合わせや、多官能オキセタンのみでは、パターニングはできるものの接着性が得られない。
【符号の説明】
【0047】
a・・・被接着部材
b・・・塗膜
c・・・フォトマスク
d・・・接着剤パターン
e・・・接着部材
f・・・構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物と常温で固体のグリシジル型エポキシ化合物と光酸発生剤と有機溶剤とを含む接着剤を被接着部材表面に塗布する工程と、
被接着部材表面に塗布された前記接着剤を活性エネルギー線によりパターン露光する工程と、
パターン露光した接着剤の未露光部を現像にて除去することによって接着剤パターンを形成する工程と、
接合すべき接着部材を前記接着剤パターンに圧着させる工程と、
前記接着剤パターンを熱硬化させる工程とを含むことを特徴とする積層構造物の製造方法。
【請求項2】
1分子中に複数のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物と常温で固体のグリシジル型エポキシ化合物と光酸発生剤と有機溶剤とを含む接着剤を被接着部材表面に塗布する工程と、
被接着部材表面に塗布された前記接着剤を活性エネルギー線によりパターン露光して光カチオン重合させる工程と、
パターン露光した接着剤の未露光部を現像にて除去することによって接着剤パターンを形成する工程と、
接合すべき接着部材を前記接着剤パターンに圧着させる工程と、
前記接着剤パターンを加熱して、前記常温で固体のグリシジル型エポキシ化合物を熱硬化させる工程とを含むことを特徴とする積層構造物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法により、被接着部材と接着部材が接合されたことを特徴とする積層構造物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−39297(P2011−39297A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186662(P2009−186662)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】