説明

窒化物半導体素子

【課題】窒化ガリウム系半導体素子のショットキ電極に関連するリーク電流を低減可能な構造を有する窒化ガリウム系半導体素子が提供される。
【解決手段】ショットキバリアダイオード11では、絶縁体領域15は、窒化ガリウム系半導体領域13の第1のエリア13bを覆うと共に第2のエリア13cに設けられた開口19を有する。第1の電極17は、ショットキ接合導体部17aおよびオーバーラップ導体部17bを含む。ショットキ接合導体部17aは、窒化ガリウム系半導体領域13にショットキ接合24を成す。オーバーラップ導体部17bは絶縁体領域15に位置している。絶縁体領域15は、開口19を規定しひさし形状の縁部15aを含む。庇の下に空隙23が設けられており、これによって、第1の電極17および絶縁体領域15が窒化ガリウム系半導体領域13の表面13cを部分的に覆われていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、AlGaN−GaN高電子移動度トランジスタが記載されている。高電子移動度トランジスタでは、ソース電極がフィールドプレートの絶縁膜を介してゲート電極を覆っている。また、非特許文献2には、窒化ガリウム系電界効果トランジスタのためのパッシベーション膜について記載されている。パッシベーション膜として絶縁体が用いられている。
【非特許文献1】W. Saito et al., “High BreakDown Voltage AlGaN-GaN Power HEMT Design and High Current Density Switching Behavior” IEEE Trans. Electron Devices, VOL. 50, NO. 20, Dec. pp.2528-2531 2001
【非特許文献2】信学技報(TECHNICAL REPORT OF IEICE)ED2003−204 MW2003−232(2004−1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、窒化ガリウム系半導体素子では、窒化ガリウム系半導体表面は、絶縁体からなるパッシベーション膜で覆われている。ショットキ電極は、パッシベーション膜の開口に設けられており、また窒化ガリウム系半導体表面にショットキ接合を成す。ショットキ電極のための開口に到達すると、窒化ガリウム系半導体とパッシベーション膜との界面が終端し、ショットキ電極の導電体はパッシベーション膜に接触しており、またこの終端の近くにショットキ接合のエッジが位置する。上記界面は、微小ながらも電流の経路となる。界面を流れる電流は、窒化ガリウム系半導体の表面に現れる多数の貫通転位に到達すると、これら貫通転位を通してさらに流れていく。この界面電流は、窒化ガリウム系半導体素子のリーク電流として測定され、窒化ガリウム系半導体素子のデバイス特性にとって好ましくないものである。
【0004】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、ショットキ電極からのリーク電流を低減可能な構造を有する窒化ガリウム系半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によれば、窒化物半導体素子は、(a)第1および第2のエリアを含む主面を有する窒化ガリウム系半導体領域と、(b)前記窒化ガリウム系半導体領域の前記第1のエリアを覆うと共に前記第2のエリアに設けられた開口を有する絶縁体領域と、(c)前記絶縁体領域の前記開口に設けられ前記窒化ガリウム系半導体領域に位置するショットキ接合導体部と、前記絶縁体領域上に設けられたオーバーラップ導体部とを含む第1の電極とを備え、前記絶縁体領域は前記開口を規定しひさし形状を有する縁部を含み、前記第1の電極および前記絶縁体領域が前記窒化ガリウム系半導体領域の表面を部分的に覆わないように、前記ひさしの下に空隙が設けられている。
【0006】
この窒化物半導体素子によれば、ひさし下の空隙において電極は絶縁体領域から離れているので、窒化ガリウム系半導体領域の表面の一部は、絶縁体領域によって覆われていない。絶縁体領域と窒化ガリウム系半導体領域との界面が開口の縁において終端するので、この界面を介してショットキ接合導体部が他の導体と接続されることはない。
【0007】
本発明に係る窒化物半導体素子では、前記絶縁体領域は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に設けられた第2の絶縁層とを含み、前記第2の絶縁層は、前記第1の絶縁層の縁よりも前記開口に延出して前記ひさしを形成する延出部を有し、前記第1の絶縁層は第1のシリコン系無機化合物からなり、前記第2の絶縁層は前記第1のシリコン系無機化合物と異なる第2のシリコン系無機化合物からなる。
【0008】
この窒化物半導体素子によれば、適切なエッチング法を用いるとき、第1のシリコン系無機化合物のエッチングレートは第2のシリコン系無機化合物のエッチングレートと異なるので、ひさしを形成する延出部がエッチングにより形成される。
【0009】
本発明に係る窒化物半導体素子は、前記窒化ガリウム系半導体領域を搭載するIII族窒化物支持基体と、前記III族窒化物支持基体の裏面に設けられたカソード電極とを更に備えることができる。前記窒化ガリウム系半導体領域は、前記ショットキ接合導体部とショットキ接合を成すn型窒化ガリウム系半導体層を含み、当該窒化物半導体素子はショットキバリアダイオードを含み、このショットキバリアダイオードのアノードは前記第1の電極を含む。
【0010】
この窒化物半導体素子によれば、ショットキバリアダイオードのアノードが、絶縁体領域と窒化ガリウム系半導体領域との界面を介して他の電流経路に接続されることはない。また、窒化ガリウム系半導体領域およびIII族窒化物支持基体の貫通転位を介して、アノードからカソードに流れるリーク電流が低減される。
【0011】
本発明に係る窒化物半導体素子では、前記窒化ガリウム系半導体領域の前記主面は、前記第1および第2のエリアと異なる第3のエリアを含み、前記窒化ガリウム系半導体領域は、二次元電子ガスを生成可能なヘテロ接合を含み、前記絶縁体領域は前記第3のエリアに位置する別の開口を有する。当該窒化物半導体素子は、前記別の開口に設けられ前記第3のエリアにオーミック接合を成す第2の電極を更に備える。当該窒化物半導体素子はトランジスタを含み、前記第1の電極は前記トランジスタのゲート電極であり、前記第2の電極は前記トランジスタのソース電極およびドレイン電極のいずれか一方である。
【0012】
この窒化物半導体素子によれば、トランジスタのゲート電極は、絶縁体領域と窒化ガリウム系半導体領域との界面を介して他の導体と接続されることはない。
【0013】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、窒化ガリウム系半導体素子が提供され、この窒化ガリウム系半導体素子はショットキ電極からのリーク電流を低減可能な構造を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の窒化物半導体素子に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る窒化物半導体素子の一例であるショットキバリアダイオードの構造を示す図面である。ショットキバリアダイオード11は、窒化ガリウム系半導体領域13と、絶縁体領域15と、第1の電極17とを備える。窒化ガリウム系半導体領域13は主面13aを有しており、主面13aは第1のエリア13bおよび第2のエリア13cを含む。絶縁体領域15は、窒化ガリウム系半導体領域13の第1のエリア13bを覆うと共に第2のエリア13cに設けられた開口19を有する。第1の電極17は、ショットキ接合導体部17aおよびオーバーラップ導体部17bを含む。ショットキ接合導体部17aは、窒化ガリウム系半導体領域13にショットキ接合24を成す。また、ショットキ接合導体部17aは、窒化ガリウム系半導体領域13上に位置しており、絶縁体領域15の開口19に設けられている。オーバーラップ導体部17bは絶縁体領域15に位置している。絶縁体領域15は、開口19を規定すると共にひさし形状を有する縁部15aを含む。ひさし下に空隙23が設けられており、これによって、第1の電極17および絶縁体領域15が、窒化ガリウム系半導体領域13の表面13cを部分的に覆わない。第1の電極17は空隙23によって絶縁体領域15から離されているので、空隙23によって、ショットキ接合24と界面(窒化ガリウム系半導体と絶縁体との接合)25が接続されない。
【0017】
このショットキバリアダイオード11によれば、ひさしの下の空隙23において第1の電極17は絶縁体領域15から離れているので、窒化ガリウム系半導体領域13の表面の一部が、絶縁体領域15によって覆われていない。絶縁体領域15と窒化ガリウム系半導体領域13との界面25が開口19の縁において終端するので、この界面25を介してショットキ接合導体部17aが他の導体と接続されることはない。界面25は潜在的なリーク経路であるけれども、ひさしの下の空隙23によって界面25が電極に接触しないので、リーク電流が低減される。
【0018】
絶縁体領域15には、第1の電極17のオーバーラップ導体部17bが位置するので、絶縁体領域15はフィールドプレートとして利用されている。フィールドプレート構造を有する縦型構造半導体デバイス、例えばショットキバリアダイオードでは、ショットキ電極から界面25を流れるリーク電流を低減することが求められる。縦型構造半導体デバイスでは、この界面リーク電流は、半導体の貫通転位を通して裏面電極に流れてしまう可能性がある。例えば、窒化ガリウムウエハには、大きな貫通転位密度を有するコアを呼ばれる第1の領域と、小さい貫通転位密度を有する第2の領域とを含むものがある。第1の領域は、ウエハの表面から裏面へ貫通するように設けられているので、コアと第1の電極17との間に、空隙23を設けることが好ましい。
【0019】
ショットキバリアダイオード11は、III族窒化物支持基体27を更に備えることができる。III族窒化物支持基体27は、窒化ガリウム系半導体領域13を搭載する。III族窒化物支持基体27は導電性を有している。III族窒化物支持基体27としては、例えばGaN、AlGaN、AlN等から成ることができる。窒化ガリウム系半導体領域13は、ショットキ接合導体部17aとショットキ接合を成すn型窒化ガリウム系半導体層29を含むことができ、必要な場合には、窒化ガリウム系半導体領域13は、バッファ層といった別のn型窒化ガリウム系半導体層を含むことができる。ショットキ接合導体部17aがn型窒化ガリウム系半導体層29にショットキ接合を成すとき、第1の電極17は、アノードとして働く。ショットキバリアダイオード11は、III族窒化物支持基体27の裏面27b上に設けられた第2の電極31を有する。第2の電極31は、III族窒化物支持基体27にオーミック接合を成す。第2の電極31は、カソードとして働く。一例のショットキバリアダイオード11では、窒化ガリウム系半導体領域13はIII族窒化物支持基体27とホモ接合を成すことが好ましく、例えば窒化ガリウム系半導体領域13およびIII族窒化物支持基体27が、共にGaNまたはAlGaNからなることができる。このショットキバリアダイオード11のアノードは、絶縁体領域15と窒化ガリウム系半導体領域13との界面25を介して他の導体と接続されることはない。
【0020】
絶縁体領域15は、複数の絶縁層を含むことができ、本実施例では、第1の絶縁層33および第2の絶縁層35とを含む。第2の絶縁層35は第1の絶縁層33上に設けられている。第2の絶縁層35は、ひさしを形成する延出部35aを有しており、この延出部35aは、第1の絶縁層33の縁33aよりも開口19に延出している。第1の絶縁層33は第1のシリコン系無機化合物からなることができる。第2の絶縁層35は第1のシリコン系無機化合物と異なる第2のシリコン系無機化合物からなることができる。第1のシリコン系無機化合物は、例えば、シリコン酸化物であり、また第2のシリコン系無機化合物は、シリコン窒化物である。第1のシリコン系無機化合物は、これに限定されることなく、例えばSiO、SiN、SiON、HfO、Ga等を用いることができ、また第2のシリコン系無機化合物は、これに限定されることなく、例えばSiO、SiN、SiON、HfO等を用いることができる。
【0021】
この窒化物半導体素子によれば、適切なエッチング法を用いるとき、第1のシリコン系無機化合物のエッチングレートは第2のシリコン系無機化合物のエッチングレートと異なるので、ひさしを形成する延出部35aがエッチングにより形成される。
【0022】
このような構成は、引き続き行われる説明から理解されるように、高電子移動度トランジスタのショットキゲート電極にも適用される。
【0023】
図2および図3を参照しながら、この実施の形態に係るショットキバリアダイオードを作製する方法を説明する。
【0024】
窒化ガリウム基板または窒化ガリウムエピタキシャル膜といった窒化ガリウム系半導体領域41上に、図2(a)に示されるように、シリコン系化合物膜43、45を形成する。これらの膜43,45は、例えば化学的気相成長(CVD)法またはスパッタ法等を用いて成長される。膜43、45としては、SiO、SiN、SiON等を用いることができる。シリコン系化合物膜43、45の膜質は互いに異なっており、あるエッチャントを用いるとき、シリコン系化合物膜45のエッチングレートはシリコン系化合物膜43のエッチングレートよりも小さい。一例は、シリコン系化合物膜43はシリコン酸化物であり、シリコン系化合物膜45は、シリコン酸窒化物であることができる。シリコン系化合物膜43の膜厚は、例えば0.0005マイクロメートル〜1マイクロメートルであり、またシリコン系化合物膜45の膜厚は、例えば0.001マイクロメートル〜10マイクロメートルである。
【0025】
絶縁体領域47上に、マスク49形成する。マスク49は、窒化ガリウム系半導体領域41のエリア41a上に位置する開口49aを有する。エリア41aには、ショットキ接合が形成される。マスク49は、例えばフォトレジストであることができる。
【0026】
図2(b)および図2(c)に示されるように、マスク49を用いてシリコン系化合物膜43、45をエッチングして、開口を有する絶縁体領域47aを形成する。絶縁体領域47aは、それぞれの開口を有するシリコン系化合物膜43a、45aを含む。一実施例では、互いに膜質の異なるケイ素系膜をバッファードフッ酸を用いてエッチングする。下層のケイ素系膜のエッチングレートが上層のケイ素系膜より大きいので、上層のケイ素系膜が開口51に延出して庇を形成する。シリコン系化合物膜43、45のエッチングを、単一のエッチング工程だけでなく、複数のエッチング工程を用いて行うことができる。シリコン系化合物膜43、45のエッチングが完了した後に、マスク49を除去する。
【0027】
窒化ガリウム系半導体領域41は、マスク40の開口にほぼ対応しており露出したエリア41aと、絶縁体領域47aで覆われたエリア41bと、エリア41aとエリア41bとの間に位置するエリア41cとを含む。エリア41cは帯形状を有する。本工程においては、エリア41cは絶縁体領域47aで覆われていない。
【0028】
次いで、ショットキ電極を形成する。まず、図3(a)に示されるように、例えば、ショットキ電極のためのマスク53を絶縁体領域47a上に形成する。マスク53は、絶縁体領域47aの開口51に位置合わせされた開口53aを有する。窒化ガリウム系半導体領域41にショットキ接合を成す導電膜を窒化ガリウム系半導体領域41、絶縁体領域47aおよびマスク53上に堆積する。導電膜としては、例えばAu、Ni/Au、Pt/Au、poly−Si等を用いることができる。
【0029】
堆積の後に、図3(b)に示されるように、例えばリフトオフ法を用いてショットキ電極55を形成する。ショットキ電極55は、ショットキ接合導体部55aおよびオーバーラップ導体部55bを含む。また、ショットキ接合導体部55aは、窒化ガリウム系半導体領域41上に位置しており、絶縁体領域47aの開口51に設けられている。オーバーラップ導体部55bは絶縁体領域47aに位置している。絶縁体領域47aは、開口51を規定しひさし形状を有する縁部47bを含む。ひさしの下に空洞57が設けられており、これによって、ショットキ電極55および絶縁体領域47が窒化ガリウム系半導体領域41のエリア41cを覆っていない。ショットキ電極55は空洞57によって絶縁体領域47aから離されているので、空洞57によって、ショットキ接合59aと界面(窒化ガリウム系半導体と絶縁体との接合)59bが接続されない。
【0030】
このショットキバリアダイオード61によれば、ひさしの下の空隙57においてショットキ電極55は絶縁体領域47から離れているので、窒化ガリウム系半導体領域41の表面の一部が、絶縁体領域47aによって覆われていない。絶縁体領域47aと窒化ガリウム系半導体領域41との界面59bが開口51の縁において終端するので、この界面59bを介してショットキ接合導体部55aが他の導体と接続されることはない。
【0031】
(第2の実施の形態)
次いで、図4および図5を参照しながら、窒化物半導体素子の一例であるショット電極を有するトランジスタを説明する。図4は、本発明に係る窒化物半導体素子の一例である高電子移動度トランジスタのための主要な製造工程を示す図面である。
【0032】
図4(a)に示されるように、基板71上に第1の窒化ガリウム系半導体膜73および第2の窒化ガリウム系半導体膜75を形成する。第1の窒化ガリウム系半導体膜73および第2の窒化ガリウム系半導体膜75はヘテロ接合77aを成しており、また第1の窒化ガリウム系半導体膜73のバンドギャップは第2の窒化ガリウム系半導体膜75のバンドギャップより小さい。第1の窒化ガリウム系半導体膜73には、ヘテロ接合77aに沿って二次元電子ガス77bが形成される。第1の窒化ガリウム系半導体膜73としては例えばGaNであり、また第2の窒化ガリウム系半導体膜75としては例えばAlGaN、InGaNであり、また、InAlNといったIII族窒化物半導体膜であることもできる。第2の窒化ガリウム系半導体膜75上には、第1の実施の形態と同様に、シリコン系化合物膜43、45からなる絶縁体領域47を形成する。膜43、45としては、SiO、SiN、SiON等を用いることができる。基板71は、例えばGaN、AlGaN、AlN、InGaN、InAlN等のIII族窒化物からなることができる。基板71として、例えば半絶縁性を示すものを使用できる。
【0033】
図4(c)に示されるように、トランジスタの素子分離のためのメサ分離を可能にしメサ領域81を規定するマスク79aを形成する。マスク79aを用いて、シリコン系化合物膜43、45をエッチングして、シリコン系化合物膜43c、45cからなる絶縁体領域47cを形成する。シリコン系化合物膜のエッチングは、例えばウエットエッチングまたはドライエッチングを用いることができる。マスク79aを除去する。この後に、第1の窒化ガリウム系半導体膜73および第2の窒化ガリウム系半導体膜75をエッチングして、第1および第2の窒化ガリウム系半導体膜73c、75cを含むメサ81を形成する。メサ81は基板71c上に設けられる。窒化ガリウム系半導体のエッチングは、例えばドライエッチングを用いることができる。
【0034】
図5(a)に示されるように、トランジスタのソース電極およびドレイン電極を形成するためのマスク79bを形成する。マスク79bは、ソース電極およびドレイン電極の位置に対応するように設けられた開口を有する。マスク79bを用いて、シリコン系化合物膜43c、45cをエッチングして、開口を有するシリコン系化合物膜43d、45dを形成する。メサ領域81の表面は部分的に露出する。次いで、ソース電極およびドレイン電極のための導電膜をマスク79bおよびメサ領域81上に形成する。この形成のために、例えば蒸着法を用いることができる。
【0035】
図5(b)に示されるように、導電膜の形成後に、例えばリフトオフ法を用いてソース電極およびドレイン電極のための導電体を形成する。合金化処理を施して、メサ領域81にオーミック接合を成すソース電極83aおよびドレイン電極83bを形成する。
【0036】
図5(c)に示されるように、トランジスタのゲート電極を形成するためのマスク79cを形成する。マスク79cは、ゲート電極の位置に合わせた開口を有する。マスク79cを用いて、第1の実施の形態における図2(b)および図2(c)に示されるように、シリコン系化合物膜43c、45cをエッチングする。図5(c)および図6(a)では、マスク79cを用いてシリコン系化合物膜43d、45dをエッチングして、開口を有する絶縁体領域47eを形成する。絶縁体領域47eは、それぞれの開口を有するシリコン系化合物膜43e、45eを含む。この開口には、メサ領域81の表面が部分的に露出している。
【0037】
一実施例では、互いに膜質の異なるケイ素系膜をバッファードフッ酸を用いてエッチングする。下層のケイ素系膜のエッチングレートが上層のケイ素系膜より大きいので、上層のケイ素系膜が開口に延出する庇を形成する。シリコン系化合物膜43d、45dのエッチングが完了した後に、マスク79cを除去する。
【0038】
メサ領域81は、露出したエリア81aと、エッチングされた絶縁体領域47eで覆われたエリア81bと、エリア81aとエリア81bとの間に位置するエリア81cとを含む。エリア81cは帯形状を有する。本工程においては、エリア81cは絶縁体領域47eで覆われていない。
【0039】
次いで、ショットキ電極を形成する。例えば、まず、図6(b)に示されるように、ショットキ電極のためのマスク79dを絶縁体領域47e上に形成する。マスク79dは、絶縁体領域47eの開口に位置合わせされた開口85を有する。窒化ガリウム系半導体領域75c、絶縁体領域47eおよびマスク79d上に、窒化ガリウム系半導体領域75cにショットキ接合を形成するための導電膜を堆積する。導電膜としては、例えばAu、Ni/Au、Pt/Au、poly−Si等を用いることができる。
【0040】
堆積の後に、図6(c)に示されるように、例えばリフトオフ法を用いてショットキ電極87を形成する。ショットキ電極87は、ショットキ接合導体部87aおよびオーバーラップ導体部87bを含む。また、ショットキ接合導体部87aは、窒化ガリウム系半導体領域75c上に位置しており、また絶縁体領域47eの開口に設けられている。オーバーラップ導体部87bは絶縁体領域47e上に位置している。絶縁体領域47eは、ひさし形状を有する縁部47fを含む。庇の下には空洞89が設けられており、これによって、ショットキ電極87および絶縁体領域47eがメサ領域81のエリア81cを覆っていない。ショットキ電極87は空洞89によって絶縁体領域47eから離されているので、空洞89によって、ショットキ接合91aと界面(窒化ガリウム系半導体と絶縁体との接合)91bが接続されない。このため、ひさしの下の空洞89においてゲート電極87は絶縁体領域47eから離れているので、窒化ガリウム系半導体からなるメサ領域81の表面81cが、絶縁体領域47eによって覆われていない。絶縁体領域47eとメサ領域81との界面91bが開口の縁において終端するので、この界面91bを介してショットキ接合導体部87aが他の導体(例えば、ソース電極またはドレイン電極)と接続されない。界面91bは潜在的なリーク経路であるけれども、ひさしの下の空洞89によって界面91bが電極87に接触しない。また、絶縁体領域47eには、ゲート電極87のオーバーラップ導体部87bが位置するので、絶縁体領域47eはフィールドプレートをして利用されている。フィールドプレート構造を有する横型構造半導体デバイス、例えば高電子移動度トランジスタでは、界面91bを流れるリーク電流を低減することが求められる。貫通転位はウエハの表面から裏面へ貫通するけれども、ゲート電極87に隣接して空洞89を設けることによって界面リーク電流を低減できる。
【0041】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明に係る窒化物半導体素子の一例であるショットキバリアダイオードの構造を示す図面である。
【図2】図2は絶縁体領域に庇を形成するための処理工程を示す図面である。
【図3】図3(a)は、ショットキ電極のためのマスクを形成する工程を示す図面である。図3(b)は、ショットキバリアダイオードのショットキ電極を形成する工程を示す図面である。
【図4】図4(a)は、高電子移動度トランジスタを作製する工程フローにおける、ヘテロ接合のための窒化ガリウム系半導体膜および絶縁体領域を基板上に形成する工程を示す図面である。図4(b)は、素子分離のためのマスクを形成する工程と示す図面である。図4(c)は、素子分離のためのエッチングを行う工程と示す図面である。
【図5】図5(a)は、高電子移動度トランジスタを作製する工程フローにおける、ソース電極およびドレイン電極のためのマスクを形成する工程を示す図面である。図5(b)は、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程を示す図面である。図5(c)は絶縁体領域に庇を形成するためのエッチング工程を示す図面である。
【図6】図6(a)は、高電子移動度トランジスタを作製する工程フローにおける、絶縁体領域に庇を形成する工程を示す図面である。図6(b)は、ゲート電極のためのマスクを形成する工程を示す図面である。図6(c)は、高電子移動度トランジスタの構造を示す図面である。
【符号の説明】
【0043】
11…ショットキバリアダイオード、13…窒化ガリウム系半導体領域、13b、13c…窒化ガリウム系半導体領域13のエリア、15…絶縁体領域、17…第1の電極、17a…ショットキ接合導体部、17b…オーバーラップ導体部、
23…空隙、24…ショットキ接合、25…窒化ガリウム系半導体と絶縁体との界面、27…III族窒化物支持基体、29…n型窒化ガリウム系半導体層、33…第1の絶縁層、33a…絶縁層の縁、35…第2の絶縁層、35a…延出部、41…窒化ガリウム系半導体領域、41a、41b、41c…窒化ガリウム系半導体領域のエリア、43、45、43c、45c、43d、45d、43e、45e…シリコン系化合物膜、47、47a、47c、47e…絶縁体領域、47f…ひさし形状を有する縁部、49…マスク、51…開口、53…マスク、55…ショットキ電極、55a…ショットキ接合導体部、55b…オーバーラップ導体部、57…空洞、59a…ショットキ接合、59b…窒化ガリウム系半導体と絶縁体との界面、71、71c…基板、73、75、73c、75c…窒化ガリウム系半導体膜、77a…ヘテロ接合、77b…二次元電子ガス、79a、79b、79c、79d…マスク、81…メサ領域、81a、81b、81c…メサ領域のエリア、83a…ソース電極、83b…ドレイン電極、87…ショットキ電極、87a…ショットキ接合導体部、87b…オーバーラップ導体部、89…空洞、91a…ショットキ接合、91b…窒化ガリウム系半導体と絶縁体との界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2のエリアを含む主面を有する窒化ガリウム系半導体領域と、
前記窒化ガリウム系半導体領域の前記第1のエリアを覆うと共に前記第2のエリアに設けられた開口を有する絶縁体領域と、
前記絶縁体領域の前記開口に設けられ前記窒化ガリウム系半導体領域に位置するショットキ接合導体部と、前記絶縁体領域上に設けられたオーバーラップ導体部とを含む第1の電極と
を備え、
前記絶縁体領域は前記開口を規定しひさし形状を有する縁部を含み、
前記第1の電極および前記絶縁体領域が前記窒化ガリウム系半導体領域の表面を部分的に覆わないように、前記ひさしの下に空隙が設けられている、ことを特徴とする窒化物半導体素子。
【請求項2】
前記絶縁体領域は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に設けられた第2の絶縁層とを含み、
前記第2の絶縁層は、前記第1の絶縁層の縁よりも前記開口に延出して前記ひさしを形成する延出部を有し、
前記第1の絶縁層は第1のシリコン系無機化合物からなり、
前記第2の絶縁層は前記第1のシリコン系無機化合物と異なる第2のシリコン系無機化合物からなる、ことを特徴とする請求項1に記載された窒化物半導体素子。
【請求項3】
前記窒化ガリウム系半導体領域を搭載するIII族窒化物支持基体と、
前記III族窒化物支持基体の裏面に設けられたカソード電極と
を更に備え、
前記窒化ガリウム系半導体領域は、前記ショットキ接合導体部とショットキ接合を成すn型窒化ガリウム系半導体層を含み、
当該窒化物半導体素子はショットキバリアダイオードを含み、
このショットキバリアダイオードのアノードは前記第1の電極を含む、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された窒化物半導体素子。
【請求項4】
前記窒化ガリウム系半導体領域の前記主面は、前記第1および第2のエリアと異なる第3のエリアを含み、
前記窒化ガリウム系半導体領域は、二次元電子ガスを生成可能なヘテロ接合を含み、
前記絶縁体領域は前記第3のエリアに位置する別の開口を有し、
当該窒化物半導体素子は、前記別の開口に設けられ前記第3のエリアにオーミック接合を成す第2の電極を更に備え、
当該窒化物半導体素子はトランジスタを含み、
前記第1の電極は前記トランジスタのゲート電極であり、
前記第2の電極は前記トランジスタのソース電極およびドレイン電極のいずれか一方である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された窒化物半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−258504(P2008−258504A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100947(P2007−100947)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】