説明

脈動軽減装置及び検査装置

【課題】特許文献1に記載の脈動軽減装置の場合には、メインチャンバーを補助チャンバーの高い位置に配置し、メインチャンバー内で空気が溶け込んで増量した液体を補助チャンバーへオーバーフローさせ、その液分を補助チャンバー内の空気で置換するため、例えば、半導体ウエハ等の被処理体の検査装置のように被処理体を載置体上で冷却する場合には、載置体内を循環させる冷媒がメインチャンバー内で気化し易く、液体の気化容量が液体への空気等の溶解容量を上回り、メインチャンバー内の気体の圧力が上昇し、脈動軽減機能を損なう。
【解決手段】本発明の脈動軽減装置10は、空間部を残して冷媒を貯留する第1タンク15Aと、第1タンク15Aにこれより高い位置に配置された状態で接続され且つ第1タンク15A内に冷媒を補充する補充タンク15Bと、第1タンク15Aと補充タンク15Bの空間部とを接続する気体抜き配管15Cとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈動軽減装置及び検査装置に関し、更に詳しくは、例えばポンプを用いて熱媒体等の液体を基台内に循環させる時の脈動に起因する基台の振動を軽減する脈動軽減装置及びこの脈動軽減装置を備えた検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の脈動軽減装置として、例えばダイヤフラム式、ブラダ式あるいはベローズ式等が実用化されている。しかしながら、これらの方式は、いずれも初期のセット圧が高く、低圧領域や負圧では円滑に動作し難い。また、これらの方式は、いずれも脈動を緩衝するためのばね定数が高く、微小な脈動を吸収することができない。更に、いずれの方式も、例えば−数10℃の低温領域では材料強度の関係で使用することができない。また、気体加圧方式の脈動軽減装置もあるが、封入気体が液中へ溶け込んだり、液体の気化や溶存気体の気化など液中からの気体分離等によって、あるいは循環液の圧力変化等によって、タンク内の液面高さを一定に保つことが難しい。
【0003】
また、特許文献1には、上記の各方式とは全く異なる方式で脈動を軽減する空気室の水位コントロール装置が記載されている。この空気室の水位コントロール装置は、往復動ポンプにおける空気室のエア補充の間隔を長くして、エア補充の手間の削減により省力化を図り、長期間安定運転、安定操業を持続できることを目的するものである。この装置の場合には、エアを封入した吸込エアチャンバー等の空気室をメインチャンバーとし、このメインチャンバーに、内部の液体をオーバーフローにより流出させ得る水位調整管を設け、この水位調整管に、エアが封入された補助チャンバーを接続する。当初は、液体が水位調整管から流出することなく、脈動減衰・クッション・容量補償の機能が正常に働く。次第にエアが液体に溶解消費され、水位が上昇すると、液体が水位調整管をオーバーフローして補助チャンバーへ流出し、この液分だけエアが押し出され、メインチャンバーへ置換補充され、長時間必要最小量のエア容量が確保される。
【0004】
【特許文献1】実開平6−403383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の脈動軽減装置の場合には、ポンプの吐出側の陽圧配管においてメインチャンバーを補助チャンバーの高い位置に配置し、メインチャンバー内で空気が溶け込んで増量した液体を補助チャンバーへオーバーフローさせ、オーバーフローして減量した液分を補助チャンバー内の空気で置換するものであり、メインチャンバー内での液体の気化等による昇圧を想定していない。例えば、半導体ウエハ等の被処理体の検査装置のように被処理体を載置台上で冷却し、検査時の被処理体を一定の温度に維持する場合には、載置台内を循環させる冷媒がメインチャンバー内で気化し易く、液体の気化容量が液体への空気等の溶解容量を上回り、メインチャンバー内の気体の圧力が上昇し、脈動軽減機能を損なうことになる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、液体が気化しても常に脈動を確実且つ安定的に軽減することができる脈動軽減装置及び検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の脈動軽減装置は、基台内に液体を循環させるポンプと、このポンプを介して循環する液体を貯留するタンクと、を備えた装置に用いられ、上記タンク内の液面上の空間部にある気体を緩衝体として、上記ポンプによる上記液体の脈動を軽減する装置であって、上記タンクには上記液体を貯留する補充タンクを上記タンク内の液面より上記補充タンクの液面が高い位置になるように接続すると共に、上記タンクと上記補充タンクの空間部とを気体抜き配管を介して接続し、上記タンク内の液体が減少して上記タンク内の空間部と上記補充タンク内の空間部が上記気体抜き配管を介して連通した時、上記気体抜き配管を介して上記タンク内の気体を上記補充タンク内の空間部へ抜き取ると共に上記補充タンク内の液体を上記タンク内へ補充することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の脈動軽減装置は、請求項1に記載の発明において、上記タンク及び上記補充タンクを上記ポンプの吸入側にそれぞれ設けたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の脈動軽減装置は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記補充タンク内の気体の圧力でその空間部を大気に開放するリリーフバルブを設けたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の脈動軽減装置は、基台内に液体を循環させるポンプと、このポンプを介して循環する液体を貯留するタンクと、を備えた装置に用いられ、上記タンク内の液面上の空間部にある気体を緩衝体として、上記ポンプによる上記液体の脈動を軽減する装置であって、上記タンク内の液体の液面上限を検出する第1液面センサ及び上記タンク内の液体の液面下限を検出する第2液面センサをそれぞれ設け、上記第1、第2液面センサの検出信号に基づいて上記タンク内の液面の高さを所定の範囲内に制御することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載の脈動軽減装置は、請求項4に記載の発明において、上記第1液面センサの検出信号に基づいて上記タンク内へ気体を導入する第1バルブを設けると共に、上記第2液面センサの検出信号に基づいて上記タンク内の気体を排気する第2バルブを設けたことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項6に記載の脈動軽減装置は、請求項5に記載の発明において、上記第1、第2液面センサの検出信号に基づいて上記第1、第2バルブを開閉制御する制御装置を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項7に記載の脈流軽減装置は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の発明において、上記液体の蒸気圧が上記タンクと上記補充タンクの液面高さの差による圧力差より高い熱媒体であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項8に記載の検査装置は、被処理体を載置する載置台と、この載置台内に液体を循環させるポンプと、このポンプを介して循環する液体を貯留するタンクと、を備え、上記載置台上の被処理体の検査を行う検査装置において、上記タンク内の液面上の空間部にある気体を緩衝体として、上記ポンプによる上記液体の脈動を軽減する脈動軽減装置を少なくとも一つ設けたことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項9に記載の検査装置は、請求項8に記載の発明において、請求項1または請求項2に記載の脈動軽減装置及び/または請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の脈動軽減装置を有することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項10に記載の検査装置は、請求項8または請求項9に記載の発明において、上記液体の蒸気圧が上記タンクと上記補充タンクの液面高さの差による圧力差より高い熱媒体であることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の請求項11に記載の検査装置は、被処理体を載置する載置台と、この載置台内に液体を循環させるポンプと、このポンプを介して循環する液体を貯留するタンクと、を備え、上記載置台上の被処理体の検査を行う検査装置において、少なくとも上記ポンプの上記液体を吸入する側に上記ポンプによる上記液体の脈動を軽減する脈動軽減装置を設けたことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の請求項12に記載の検査装置は、請求項11に記載の発明において、上記タンク内の液面上の空間部にある気体を緩衝体として、上記ポンプによる上記液体の脈動を軽減する脈動軽減装置を少なくとも一つ設けたことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の請求項13に記載の検査装置は、請求項11または請求項12に記載の発明において、上記脈動軽減装置は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の脈動軽減装置及び/または請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の脈動軽減装置を有することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の請求項14に記載の検査装置は、請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の発明において、上記液体の蒸気圧が上記タンクと上記補充タンクの液面高さの差による圧力差より高い熱媒体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1〜請求項14に記載の発明によれば、液体が気化しても常に脈動を確実且つ安定的に軽減することができる脈動軽減装置及び検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1〜図3に示す実施形態に基づいて本発明を説明する。尚、図1は本発明の脈動軽減装置を適用した検査装置を概念的に示すブロック図、図2は図1に示す検査装置の第1脈動軽減装置を示す構成図、図3は図1に示す検査装置の第2脈動軽減装置を示す構成図である。各図中、実線で示した矢印は冷媒の流れを示し、破線で示した矢印は気体の流れを示す。
【0023】
本実施形態の検査装置10は、例えば図1に示すように、被処理体(例えば、半導体ウエハ)Wを載置する載置台11と、載置台11と循環配管12を介して接続され且つ載置台11内へ冷媒を供給して循環させるポンプ13と、ポンプ13を介して載置台11から循環配管12を循環する昇温後の冷媒を元の温度まで冷却する熱交換器14と、を備え、載置台11上の半導体ウエハWを冷媒によって冷却して所定の温度で半導体ウエハWの電気的特性検査を行うように構成されている。載置台11は、検査の際に、半導体ウエハWとプローブカード(図示せず)とを接触させるために水平方向及び上下方向に移動するようになっている。
【0024】
載置台11は、冷媒によって冷却され、例えば−数10℃〜150℃の範囲内の適宜の温度で半導体ウエハWの電気的特性検査を行えるようしてある。この時に使用される冷媒としては、例えばフッ素系の不活性液体(住友スリーエム社製フロリナート(商標名)、ソルベイソレクシス社製ガルデン(商標名)等)を用いることができる。
【0025】
ポンプ13で冷媒を循環させる際に、冷媒の脈動で載置台11及び循環配管12が僅かに振動する。載置台11の振動は、半導体ウエハWとプローブカードの接触圧に影響し、半導体ウエハWの検査に悪影響を及ぼす虞がある。半導体ウエハWに形成された集積回路が高密度化して配線層や絶縁層が薄膜化するほど脈動の影響が顕著に現れる。そこで、本実施形態ではポンプ13による脈動を軽減するために、循環配管12に第1、第2脈動軽減装置15、16が設けられている。第1脈動軽減装置15は、ポンプ13によって冷媒を吸引する負圧側に配置され、第2脈動軽減装置16は、ポンプ13から冷媒を吐出する陽圧側に配置されている。
【0026】
第1脈動軽減装置15は、例えば図2に示すように、循環配管12に配設されて空間部を残して冷媒を貯留する第1タンク15Aと、第1タンク15Aと同様に循環配管12に接続されて空間部を残して第1タンク15Aへの補充用の冷媒を貯留する補充タンク15Bと、を備え、第1タンク15Aの空間部の空気等の気体が脈動を軽減する緩衝体として働くように構成されている。
【0027】
補充タンク15Bは、第1タンク15Aより液面が高い位置に配置されており、後述のように第1タンク15A内の冷媒が気化して空間部の圧力が高くなると共に液量が減少して液面が低下した時に第1タンク15A内へ冷媒を補充し、第1タンク15A内の冷媒の液面を一定に維持する。
【0028】
即ち、第1タンク15Aと補充タンク15Bとは気体抜き配管15Cを介して接続されている。気体抜き配管15Cの第1タンク15Aとの接続部は、通常、空間部のやや下方の冷媒中に位置し、気体抜き配管15Cの補充タンク15Bとの接続部は、常に空間部に位置している。このため、第1タンク15Aの空間部と補充タンク15Bの空間部は、通常遮断されている。しかし、第1タンク15A内の冷媒が気化し、液量が減少すると共に空間部の圧力が高くなって冷媒の液面が低下し、液面が気体抜き配管15Cとの接続部に達すると、第1タンク15Aの空間部と補充タンク15Bの空間部とが連通し、第1タンク15A内の気体が補充タンク15Bの空間部へ移動し、補充タンク15Bの空間部の圧力が上昇する。
【0029】
補充タンク15Bの空間部にはリリーフバルブ15Dが取り付けられ、このリリーフバルブ15Dは所定の圧力(例えば、0.1Kg/cmG)を超えると空間部を自動的に大気へ開放し、補充タンク15B内の気体(気化した冷媒を含む)を大気側へ放出する。気体の放出で補充タンク15B内の空間部の圧力が低下すると、リリーフバルブ15Dが自動的に閉じるようになっている。この際、補充タンク15Bは、第1タンク15Aより高い位置に配置されているため、第1タンク15A内の冷媒と補充タンク15B内の冷媒との液圧差で補充タンク15B内の冷媒が第1タンク15A内に補充され、第1タンク15A内の液面を元に戻し、気体抜き配管15Cとの接続部を封止し、第1タンク15Aと補充タンク15Bの空間部とを遮断する。
【0030】
また、第2脈動軽減装置16は、例えば図3に示すように、循環配管12に接続されて空間部を残して冷媒を貯留する第2タンク16Aと、第2タンク16A内の冷媒の液面を検出する第1、第2液面センサ16B、16Cと、第1、第2液面センサ16B、16Cに電気的に接続され且つこれらのセンサ16B、16Cからの検出信号に基づいて作動する空気制御装置16Dと、を備え、第2タンク16Aの空間部を満たす空気等の気体がポンプ13から冷媒を吐出する際の脈動を軽減する緩衝体として働くように構成されている。
【0031】
第2タンク16Aには空気配管16Eが接続され、後述するように空気配管16Eを介して工場内の乾燥空気を第2タンク16A内に導入すると共に第2タンク16A内の気体を外部へ排出する。即ち、空気配管16Eには上流から下流側に向けて調圧バルブ16F、第1、第2バルブ16G、16Hが順次配設され、調圧バルブ16Fによって乾燥空気を所定の圧力に調整し、第1、第2バルブ16G、16Hを介して第2タンク16A内へ乾燥空気を導入し、放出するようにしている。第1、第2バルブ16G、16Hの間には空気配管16Eと第2タンク16Aとを接続する分岐管が設けられている。この分岐管には絞り16Iが設けられ、絞り16Iによって分岐管を流れる空気の流量を制限している。第1、第2バルブ16G、16Hはいずれも空気制御装置16Dに電気的に接続され、空気制御装置16Dの制御下で開閉する。
【0032】
第1液面センサ16Bは、第2タンク16A内の液面が上がって上限に達し、その液面を検出すると、検出信号を空気制御装置16Dへ送信する。空気制御装置16Dは、第1液面センサ16Bの検出信号に基づいて第1バルブ16Gを開いて空気配管16E及びその分岐管を介して第2タンク16A内に乾燥空気を導入して加圧し、冷媒の液面を下げる。第2液面センサ16Cは、第2タンク16A内の液面が下がって下限に達し、その液面を検出すると、検出信号を空気制御装置16Dへ送信する。空気制御装置16Dは、第2液面センサ16Cの検出信号に基づいて第2バルブ16Hを開いて分岐管及び空気配管16Eを介して第2タンク16A内の気体を排出して減圧し、冷媒の液面を上げる。
【0033】
従って、空気制御装置16Dは、第1、第2液面センサ16B、16Cの検出信号に基づいて第1、第2バルブ16G、16Hを開閉して、第2タンク16A内の空間部の気体圧力を一定に維持することによって冷媒の液面高さを一定に維持している。尚、16Jは、第2タンク16A内の冷媒部と空間部を連通させる連通管で、この連通管16Jに第1、第2液面センサ16B、16Cが取り付けられている。
【0034】
次に、動作について説明する。半導体ウエハWの検査をする時には、ポンプ13が駆動して載置台11内に一定の流量で冷媒を循環させて載置台11を冷却する。載置台11が冷却されることで、その上の半導体ウエハWが検査時に発熱しても冷却され、所定の温度に維持される。ポンプ13で冷媒を吸引し、吐出する際に冷媒が脈動するが、本実施形態では第1、第2脈動軽減装置15、16が働いて、脈動を軽減し、もって載置台11及び循環配管12の振動を抑制し、防止することができ、検査の信頼性を高めることができる。
【0035】
即ち、ポンプ13が駆動して冷媒を吸引すると、冷媒が第1脈動軽減装置15の第1タンク15Aを通る際に、第1タンク15A内の空間部の空気等の気体が緩衝体となって、ポンプ13の吸引側の脈動を軽減する。また、ポンプ13から冷媒を吐出すると、冷媒が循環配管12を介して熱交換器14を通り、ここで冷媒が冷却された後、第2脈動軽減装置16の第2タンク16Aを通る。冷媒が第2タンク16Aを通る際に、第2タンク16A内の空間部の空気等の気体が緩衝体となって、ポンプ13の吐出側の脈動を軽減する。
【0036】
このようにポンプ13による冷媒の吸引、吐出動作によって冷媒が脈動しても、第1脈動軽減装置15によって吸引側の脈動を軽減し、第2脈動軽減装置16によって吐出側の脈動を軽減するために、載置台11及び循環配管12の脈動による振動を格段に抑制し、あるいは防止することができ、半導体ウエハWの検査の信頼性を高めることができる。
【0037】
ところで、検査を継続すると第1脈動軽減装置15では、第1タンク15A内でポンプ吸入圧の陰圧の作用により冷媒が気化し、徐々に冷媒が減少すると共に空間部の圧力が上昇して液面が低下する。第1タンク15A内で冷媒の液面が低下し、気体抜き配管15Cとの接続部に達すると、第1タンク15Aの空間部と補充タンク15Bの空間部とが連通する。第1タンク15Aの空間部は、補充タンク15Bの空間部より圧力が高いため、第1タンク15A内の気体が補充タンク15B内の空間部へ移動し、補充タンク15Bの空間部の圧力が上昇する。
【0038】
補充タンク15Bではリリーフバルブ15Dが作動して空間部が大気側に開放され、空間部の気体を放出すると共に第1タンク15Aへ冷媒を補充する。気体の放出によって補充タンク15B内の空間部の圧力が低下し、リリーフバルブ15Dが閉じる。これに伴って、補充タンク15B内の冷媒と第1タンク15A内の冷媒との液面高さの差で補充タンク15Bから第1タンク15A内へ冷媒が補充される。第1タンク15Aでは液面が上昇し、初期の液面高さに戻ると共に気体抜き配管15Cとの接続部を封止して補充タンク15Bとの間を遮断し、通常の脈動軽減作用を持続する。
【0039】
また、第2脈動軽減装置16では第1脈動軽減装置15と逆に第2タンク16A内でポンプ吐出圧の陽圧の作用により気体が冷媒に溶解する。第2タンク16A内で気体の溶解により冷媒の液面が上昇し、第1液面センサ16Bがその液面を検出すると、空気制御装置16Dは第1液面センサ16Bからの検出信号に基づいて第1バルブ16Gを開き、空気配管16Eから乾燥空気を第2タンク16A内に導入し、液面を低下させる。液面が元に戻り、第1液面センサ16Bからの検出信号がなくなると、空気制御装置16Dは第1バルブ16Gを閉じ、乾燥空気の導入を停止する。
【0040】
また、ポンプ13の吐出量が変動した場合にも第2タンク16A内の冷媒の液面高さが変動する。吐出量が増加して第2タンク16A内で冷媒の液面が上昇し、第1液面センサ16Bがその液面を検出すると、空気制御装置16Dは第1液面センサ16Bからの検出信号に基づいて第1バルブ16Gを開き、空気配管16Eから乾燥空気を第2タンク16A内に導入し、液面を低下させる。液面が元に戻り、第1液面センサ16Bからの検出信号がなくなると、空気制御装置16Dは第1バルブ16Gを閉じ、乾燥空気の導入を停止する。逆に吐出量が減少して液面が低下すると、第2液面センサ15Cが作動し、空気制御装置16Dを介して第2バルブ16Hを開き、第2タンク16A内の気体を排気して液面を上げる。
【0041】
以上説明したように本実施形態によれば、ポンプ13の冷媒吸引側に第1脈動軽減装置15を設け、第1脈動軽減装置15は、空間部を残して冷媒を貯留する第1タンク15Aと、第1タンク15Aにこれより高い位置に配置された状態で接続され且つ第1タンク15A内に冷媒を補充する補充タンク15Bと、第1タンク15Aと補充タンク15Bの空間部とを接続する気体抜き配管15Cと、を備え、第1タンク15A内の空間部にある気体を緩衝体として、ポンプ13による冷媒の脈動を軽減している時に、第1タンク15A内の冷媒が気化して減少すると共に空間部の圧力が上昇して液面が低下し、第1タンク15A内の空間部と補充タンク15B内の空間部が気体抜き配管15Cを介して連通した時、気体抜き配管15Cを介して第1タンク15A内の気体を補充タンク15B内の空間部へ抜き取ると共に液圧差に基づいて補充タンク15B内の冷媒を第1タンク内15Aへ補充するようにしたため、第1タンク15A内の気体は気体抜き配管15Cを介して補充タンク15Bと連携して常に一定の圧力に維持され、常に脈動を確実且つ安定的に軽減することができる。
【0042】
また、第1タンク15A内の空間部と補充タンク15B内の空間部とが連通した時、補充タンク15B内の気体の圧力でその空間部を大気に開放するリリーフバルブ15Dを設けたため、補充タンク15B内の冷媒を第1タンク15Aへ補充して第1タンク15A内の空間部の気体の圧力を一定に維持することができ、更に安定した脈動軽減作用を維持することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、ポンプ13の冷媒吐出側に第2脈動軽減装置16を設け、第2脈動軽減装置16は、空間部を残して冷媒を貯留する第2タンク16Aと、第2タンク16A内の冷媒の液面上限を検出する第1液面センサ16Bと、第2タンク16A内の冷媒の液面下限を検出する第2液面センサ16Cと、を備え、第1、第2液面センサ16B、16Cの検出信号に基づいて第2タンク16A内の液面の高さを所定の範囲内に制御するようにしたため、第2タンク16A内の液面上の空間部にある気体を緩衝体として、ポンプ13による冷媒の脈動を軽減している時に、第2タンク16A内でポンプ吐出圧の陽圧の作用により気体が冷媒に溶解するなどして液面が上昇しても第1、第2液面センサ16B、16Cの検出信号に基づいて第2タンク16A内の冷媒の液面高さを一定にして空間部の気体の圧力一定に維持して常に脈動を確実且つ安定的に軽減することができる。
【0044】
また、第1液面センサ16Bの検出信号に基づいて第2タンク16A内へ乾燥空気を導入する第1バルブ16Gを設けると共に、第2液面センサ16Cの検出信号に基づいて第2タンク16A内の気体を排気する第2バルブ16Hを設け、更に、第1、第2液面センサ16B、16Cの検出信号に基づいて第1、第2バルブ16G、16Hを開閉制御する空気制御装置16Dを設けたため、第2タンク16A内の空間部の気体の圧力をより確実に一定に維持することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、検査装置10の冷媒の循環配管12のポンプ13の吸引側及び吐出側それぞれに第1、第2脈動軽減装置15、16を設けたため、載置台11及び循環配管12の振動を確実に抑制し、あるいは防止して半導体ウエハWの検査の信頼性を高めることができる。
【0046】
尚、上記実施形態では第1、第2脈動軽減装置15、16を検査装置10に設けた場合について説明したが、本発明は上記実施形態に何等制限されるものではなく、半導体ウエハW等の被処理体の温度を制御する載置台を備えた半導体製造装置や、基台内に熱媒体等の液体が循環させる液体循環回路に広く適用することができる
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、半導体製造装置、例えば検査装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の脈動軽減装置を適用した検査装置を概念的に示すブロック図である。
【図2】図1に示す検査装置の第1脈動軽減装置を示す構成図である。
【図3】図1に示す検査装置の第2脈動軽減装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0049】
10 検査装置
11 載置台(基台)
13 ポンプ
15 第1脈動軽減装置
15A 第1タンク
15B 補充タンク
15C 気体抜き配管
15D リリーフバルブ
16 第2脈動軽減装置
16A 第2タンク
16B 第1液面センサ
16C 第2液面センサ
16D 空気制御装置
16G 第1バルブ
16H 第2バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台内に液体を循環させるポンプと、このポンプを介して循環する液体を貯留するタンクと、を備えた装置に用いられ、上記タンク内の液面上の空間部にある気体を緩衝体として、上記ポンプによる上記液体の脈動を軽減する装置であって、
上記タンクには上記液体を貯留する補充タンクを上記タンク内の液面より上記補充タンクの液面が高い位置になるように配置して接続すると共に、上記タンクと上記補充タンクの空間部とを気体抜き配管を介して接続し、
上記タンク内の液体が減少して上記タンク内の空間部と上記補充タンク内の空間部が上記気体抜き配管を介して連通した時、上記気体抜き配管を介して上記タンク内の気体を上記補充タンク内の空間部へ抜き取ると共に上記補充タンク内の液体を上記タンク内へ補充することを特徴とする脈動軽減装置。
【請求項2】
上記タンク及び上記補充タンクを上記ポンプの吸入側にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1に記載の脈動軽減装置。
【請求項3】
上記補充タンク内の気体の圧力でその空間部を大気に開放するリリーフバルブを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脈動軽減装置。
【請求項4】
基台内に液体を循環させるポンプと、このポンプを介して循環する液体を貯留するタンクと、を備えた装置に用いられ、上記タンク内の液面上の空間部にある気体を緩衝体として、上記ポンプによる上記液体の脈動を軽減する装置であって、
上記タンク内の液体の液面上限を検出する第1液面センサ及び上記タンク内の液体の液面下限を検出する第2液面センサをそれぞれ設け、
上記第1、第2液面センサの検出信号に基づいて上記タンク内の液面の高さを所定の範囲内に制御することを特徴とする脈動軽減装置。
【請求項5】
上記第1液面センサの検出信号に基づいて上記タンク内へ気体を導入する第1バルブを設けると共に、上記第2液面センサの検出信号に基づいて上記タンク内の気体を排気する第2バルブを設けたことを特徴とする請求項4に記載の脈動軽減装置。
【請求項6】
上記第1、第2液面センサの検出信号に基づいて上記第1、第2バルブを開閉制御する制御装置を設けたことを特徴とする請求項5に記載の脈動軽減装置。
【請求項7】
上記液体の蒸気圧が上記タンクと上記補充タンクの液面高さの差による圧力差より高い熱媒体であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の脈動軽減装置。
【請求項8】
被処理体を載置する載置台と、この載置台内に液体を循環させるポンプと、このポンプを介して循環する液体を貯留するタンクと、を備え、上記載置台上の被処理体の検査を行う検査装置において、上記タンク内の液面上の空間部にある気体を緩衝体として、上記ポンプによる上記液体の脈動を軽減する脈動軽減装置を少なくとも一つ設けたことを特徴とする検査装置。
【請求項9】
上記脈動軽減装置は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の脈動軽減装置及び/または請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の脈動軽減装置を有することを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
上記液体の蒸気圧が上記タンクと上記補充タンクの液面高さの差による圧力差より高い熱媒体であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の検査装置。
【請求項11】
被処理体を載置する載置台と、この載置台内に液体を循環させるポンプと、このポンプを介して循環する液体を貯留するタンクと、を備え、上記載置台上の被処理体の検査を行う検査装置において、少なくとも上記ポンプの上記液体を吸入する側に上記ポンプによる上記液体の脈動を軽減する脈動軽減装置を設けたことを特徴とする検査装置。
【請求項12】
上記タンク内の液面上の空間部にある気体を緩衝体として、上記ポンプによる上記液体の脈動を軽減する脈動軽減装置を少なくとも一つ設けたことを特徴とする請求項11に記載の検査装置。
【請求項13】
上記脈動軽減装置は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の脈動軽減装置及び/または請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の脈動軽減装置を有することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の検査装置。
【請求項14】
上記液体の蒸気圧が上記タンクと上記補充タンクの液面高さの差による圧力差より高い熱媒体であることを特徴とする請求項11〜請求項13のいずれか1項に記載の検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−26157(P2007−26157A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208292(P2005−208292)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】