説明

膜面垂直通電(CPP)読み取りセンサの縦バイアス積層構造

【課題】膜面垂直通電(CPP)読み取りセンサの縦バイアス積層構造を提供する。
【解決手段】CPP読み取りセンサの検知層構造を安定化させるための、改良された縦バイアス積層構造を有する読み取りヘッドが提供される。縦バイアス積層構造は、2つの側部領域の各々において、絶縁層によってCPP読み取りセンサから分離され、絶縁層とCPP読み取りセンサとともに、読み取りヘッド内の上側および下側強磁性シールドの間に挟まれる。本発明の好ましい実施形態において、縦バイアス積層構造は主として、Fe−Pt縦バイアス層を含み、シード層を持たないため、絶縁層のみの厚さで、Fe−Pt縦バイアス層とCPP読み取りセンサの間の間隔が決定される。シード層を持たないFe−Pt縦バイアス層は、アニーリング後に良好な膜面内の硬磁性を呈し、間隔が狭いため、この安定化方式は有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読み取りヘッドにおける膜面垂直通電(CPP)トンネリング磁気抵抗(TMR)または巨大磁気抵抗(GMR)読み取りセンサの検知層構造を安定化させるための、改良された縦バイアス積層構造に関する。
【背景技術】
【0002】
広く使用されている数多くの不揮発性記憶装置の1つに、磁気ディスクドライブがある。磁気ディクスドライブは、回転可能な磁気ディスクと、読書きヘッドアセンブリを備える。読書きヘッドアセンブリは、サスペンションアーム上に装着されたスライダによって支持される。サスペンションアームを支持するアクチュエータは、サスペンションアームを揺動させて、スライダをその浮上面(ABS)により磁気ディスクの表面に上に位置づけることができる。
【0003】
磁気ディスクが回転すると、磁気ディスクの回転によって発生した空気流により、スライダは空気をクッションとして、磁気ディスク上を非常に低い高さ(浮上量)で飛ぶ。スライダが空気の上に乗っているとき、アクチュエータはサスペンションアームを移動させて、読書きヘッドアセンブリを磁気ディスク上の選択されたデータトラックの上方に位置づける。読書きヘッドは、磁気ディスク上のデータを読み取り、またこれにデータを書き込む。その後、読書きヘッドアセンブリに接続された処理回路がコンピュータプログラムにしたがって動作し、読書き機能を実行する。
【0004】
書込みヘッドは書込み磁極とリターン磁極を備え、これらはABSから離れた領域で相互に磁気的に接続され、導電性記録コイルにより包囲される。書込み工程では、導電性書込みコイルが書込み磁極とリターン磁極の中に磁束を誘起する。その結果、書込み磁場が書込み磁極から磁気ディスクへと、磁気ディスク表面に垂直な方向に発生する。書込み磁界は、磁気ディスクにデータを書き込み、その後、リターン磁極に戻るため、それ以前に書き込んだデータトラックを消去しない。
【0005】
読み取りヘッドは読み取りセンサを備え、このセンサは2つの側方領域において絶縁層により縦方向のバイアス積層体から電気的に分離されているが、上下の強磁性体シールドとは電気的に接続されている。読み取り工程では、読み取りヘッドが磁気ディスク上のデータトラックの磁化転移部を通過し、磁化転移部から発生される磁界が読み取りヘッドの読み取りセンサの抵抗を変調する。読み取りセンサの抵抗の変化は、読み取りセンサの中を流れる検知電流によって検出され、その後、電圧変化に変換されて、これが読み取り信号を発生する。その結果得られる読み取り信号を使って、データトラックの磁化転移部の符号化データが復号される。
【0006】
読み取りヘッドには、膜面垂直通電(CPP)トンネル磁気抵抗(TMR)または巨大磁気抵抗(GMR)読み取りセンサが一般的に使用される。CPP TMR読み取りセンサは、下側と上側のセンサ積層構造の間に挟まれた非磁性絶縁バリア層を含み、CPP GMR読み取りセンサは、下側と上側センサ積層構造の間に挟まれた非磁性導電スペーサ層を含む。バリアまたはスペーサ層の厚さは、CPP TMRまたはGMR読み取りセンサを通過する伝導電子の平均自由工程より小さくなるように選択される。下側センサ積層構造は、バッファ層、シード層、ピン止め層、キーパ層構造、反平行結合層、基準層構造を含み、上側センサ積層構造は、検知層構造とキャップ層を含む。キーパ層構造、反平行結合層、基準層構造は磁束還流を形成し、反平行結合層を通じて発生する反平行結合によって、キーパおよび基準層構造の磁化は、ABSから遠ざかるものとABSに向かうものという反対向きの横方向に向けられる。これに対して、基準層構造、バリアまたはスペーサ層、検知層構造は散乱ゾーンを形成し、このゾーンでは、バリアまたはスペーサ層を通じて発生する強磁性結合が、磁束還流から生じる消磁と均衡し、その結果、検知層構造の磁化の向きはABSに平行な縦方向となる。
【0007】
CPP TMRまたはGMR読み取りセンサの中を感知電流が通過する際、伝導電子はバリアまたはスペーサ層の上下の界面において散乱する。磁気ディスク上の磁化転移部から発生される磁界を受け取る際、基準層構造の磁化はピン止めされた状態のままであり、検知層構造の磁化は回転する。散乱は、検知層構造の磁化が基準層構造の磁化に向かって回転するにつれて減少するが、検知層構造の磁化が基準層構造の磁化から離れるように回転すると増大する。このような散乱のばらつきは、CPP TMRまたはGMR読み取りヘッドの抵抗が磁界の大きさ、すなわちcosθ(θは基準層と検知層構造の磁化の間の角度)に比例して変化する原因となる。次に、CPP TMRまたはGMR読み取りセンサの抵抗の変化は検知電流によって検出され、電圧変化に変換されると、この変化が検出されて、再生信号として処理される。
【0008】
検知層構造の磁化が読み取り工程中に安定して回転するようにするために、検知層構造の2つの端部に縦バイアス積層構造を用いて、検知層構造の中に静磁気相互作用を誘起する。縦バイアス積層構造は通常、シード層、縦バイアス層、キャップ層を含む。縦バイアス層は、検知層構造の2つの端部での実効電荷の均衡を通じて、さまざまな磁気が励起された後の検知層構造の磁化の反転を防止できるように十分に高い残留モーメント(MδLB、ただし、Mはその残留磁化、δLBはその厚さである)と、検知層構造全体を通じた静磁気相互作用により検知層構造の磁化をピン止めできるように十分に高い飽和保持力(H)を示さなければならない。この安定化方式は現在、幅50nmの読み取りヘッドにおいて、飽和モーメントが0.42memu/cm(2枚のCu膜に挟まれた厚さ6nmの強磁性80Ni−20Fe膜のそれに対応)の検知層構造を安定化するのに有効であるが、読み取りヘッドは、磁気記録の高密度化のためにますます小型化されるため、改良が求められる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、読み取りヘッドにおける膜面垂直通電(CPP)トンネル磁気抵抗(TMR)または巨大磁気抵抗(GMR)読み取りセンサの検知層構造を安定化させるための、改良された縦バイアス積層構造を提供する。縦バイアス積層構造は、2つの側部領域の各々において、Al絶縁層によってCPP読み取りセンサから分離され、Al絶縁層とCPP読み取りセンサとともに、読み取りヘッドの下側および上側強磁性シールドの間に挟まれる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、縦バイアス積層構造は主として、Fe−Pt縦バイアス層を含み、シード層を持たないため、先行技術で用いられているようなAl絶縁層とシード層の合計の厚さではなく、Al絶縁層の厚さによって、縦バイアス層とCPP読み取りセンサの間の間隔が決定される。シード層を持たないFe−Pt縦バイアス層は、アニーリング後に優れた膜面内硬磁性を呈し、間隔が狭い、この安定化方式は有効である。
【0011】
本発明の代替実施形態において、縦バイアス積層構造は主として、Fe−Pt縦バイアス層を含み、Al絶縁層の一部に代わる絶縁MgOシード層を有する。MgOシード層を持つFe−Pt縦バイアス層は、アニーリング後により優れた膜面内硬磁性を呈し、間隔が狭いままであるため、この安定化方式はさらに有効である。
【0012】
本発明の上記およびそれ以外の特徴と利点は、添付の図面を参照しながら、好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読むことにより明らかとなるであろう。図面全体を通じて、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【0013】
本発明の性質と利点ならびに好ましい使用形態をよりよく理解するために、以下の詳細な説明を、添付の図面を参照しながら読むべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明が具現化されている磁気ディスクドライブの概略図である。
【図2】先行技術に係る読み取りヘッドのABSの概略図である。
【図3】as−deposited状態の82Co−18Pt(24)/Cr(10)、Cr(4)/82Co−18Pt(24)/Cr(10)、80Cr−20Mo(4)/82Co−18Pt(24)/Cr(10)膜の磁化容易軸の応答を示すグラフである。
【図4】82Co−18Pt(24)/Cr(10)、Cr(4)/82Co−18Pt(24)/Cr(10)、80Cr−20Mo(4)/82Co−18Pt(24)/Cr(10)膜を280℃で5時間アニーリングした後の磁化容易軸の応答を示すグラフである。
【図5】Cr/82Co−18Pt(24)/Cr(10)と80Cr−20Mo/82Co−18Pt(24)/Cr(10)膜を280℃で5時間アニーリングする前と後のHとシード層の厚さ(δ)の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の好ましい実施形態に係る読み取りヘッドのABSの概略図である。
【図7】as−deposited状態のFe−Pt(24)膜の磁化容易軸の応答を示すグラフである。
【図8】Fe−Pt(24)膜を280℃で5時間アニーリングした後の磁化容易軸の応答を示すグラフである。
【図9】Fe−Pt膜を280℃で5時間アニーリングする前と後のHとPt含有量の関係を示すグラフである。
【図10】53.2Fe−46.8Pt膜を280℃で5時間アニーリングする前と後に撮影されたX線回折パターンを示すグラフである。
【図11】本発明の代替実施形態に係る読み取りヘッドのABSの概略図である。
【図12】as−deposited状態のFe−Pt(20)、MgO(1.6)/Fe−Pt(20)、MgO(1.6)/Ru(1.8)/Fe−Pt(20)膜の磁化容易軸の応答を示すグラフである。
【図13】Fe−Pt(20)、MgO(1.6)/Fe−Pt(20)、MgO(1.6)/Ru(1.8)/Fe−Pt(20)膜を280℃で5時間アニーリングした後の磁化容易膜の応答を示すグラフである。
【図14】MgO/Fe−Pt(20)、MgO(1.6)/Ru/Fe−Pt(2)、MgO(1.6)/Rh/Fe−Pt(2)、MgO(1.6)/Pt/Fe−Pt(2)膜のHとシード層の厚さの関係を示すグラフである。
【図15】Fe−PtとMgO(1.6)/Fe−Pt膜のHとFe−Pt膜の厚さの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明は、本発明を実施するために現時点で予測される最良の実施形態に関する。この説明は、本発明の一般的原理を説明することを目的としており、本願で特許請求する発明概念を限定するものではない。
【0016】
まず、図1を参照すると、本発明を実施した磁気ディスクドライブ100が示されている。図1に示されているように、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112がスピンドル114で支持され、ディスクドライブモータ118によって回転される。各磁気ディスク上への磁気記録は、磁気ディスク112の上の同心円状のデータトラック(図示せず)の環状パターンで行われる。
【0017】
少なくとも1つのスライダ113が磁気ディスク112の付近に設置され、各スライダ113は、1つの読書きヘッドアセンブリ121を支持する。磁気ディスク112が回転すると、スライダ113はディスク表面122の上方で半径方向に内外に移動し、読書きヘッドアセンブリ121は磁気ディスク112の上の異なるデータトラックにアクセスできる。各スライダ113は、アクチュエータ119によって支持されるサスペンションアーム115に装着される。サスペンションアーム115は軽いスプリング力を提供し、これがスライダ113をディスク表面122に向かって付勢する。各アクチュエータ119はアクチュエータ手段127に取り付けられており、このアクチュエータ手段はボイスコイルモータ(VCM)であってもよい。VCMは、固定磁場内で移動可能なコイルを有し、コイルの運動の方向と速度はコントローラ129によって供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0018】
磁気ディスクドライブ100の動作中、磁気ディスク112の回転によってスライダ113とディスク表面122の間に空気軸受が生成され、これがスライダ113に上昇力または浮上力を与える。したがって、空気軸受はサスペンションアーム115の軽いスプリング力と釣り合い、センサの動作中、スライダ113をディスク表面122から、小さな略一定の間隔だけ離れた、少し上方の位置に支持する。
【0019】
磁気ディスクドライブ100の各種の構成要素は、動作中、制御ユニット129により発生される制御信号、たとえばアクセス制御信号および内部クロック信号によって制御される。一般に、制御ユニット129は、論理制御回路、記憶手段およびマイン路プロセッサを備える。制御ユニット129は、配線123上のドライブモータ制御信号や配線128上のヘッド位置およびシーク制御信号等、各種のシステム動作を制御するための制御信号を発生する。配線128上の制御信号は、スライダ113を磁気ディスク112の上の所望のデータトラックへと最適に移動させ、位置づけるための、所望の電流プロファイルを提供する。読書き信号は、記録チャネル125によって読書きヘッドアセンブリ121と通信される。
【0020】
一般的な読み取りヘッド200において、図2に示されるように、膜面垂直通電(CPP)トンネル磁気抵抗(TMR)または巨大磁気抵抗(GMR)読み取りセンサ201は、2つの側部領域で、絶縁層202によって縦バイアス積層構造204から電気的に絶縁され、検知電流が2つの側部領域で短絡することを防止しているが、下側および上側強磁性シールド206、208とは電気的に接続され、検知電流はCPP TMRまたはGMR読み取りセンサ201の膜面に対して垂直方向に流れることができる。
【0021】
一般的なCPP TMR読み取りセンサ201は、下側および上側センサ積層構造212、214の間に挟まれる電気的絶縁層210を含む。バリア層210は、厚さ0.4から1nmの範囲の非磁性酸素ドープMg(Mg−O)、Mg酸化物(MgO)またはMg−O/MgO/Mg−O(MgOx)膜で形成される。検知電流がMg−O、MgOまたはMgOxバリア層210で量子跳躍すると、CPP TMR読み取りセンサ201の抵抗変化はTMR効果によって検出される。
【0022】
一般的なCPP GMR読み取りセンサ201は、下側および上側センサ積層構造212、214の間に挟まれた導電スペーサ層210を含む。スペーサ層210は、厚さ1.6から4nmの範囲の非磁性Cuまたは酸素ドープCu(Cu−O)膜で形成される。検知電流がCuまたはCu−Oスペーサ層210の中を流れると、CPP GMR読み取りセンサの抵抗変化はGMR効果によって検出される。
【0023】
下側センサ積層構造212は、厚さ2nmの非磁性Ta膜で形成されるバッファ層216と、厚さ2nmの非磁性Ru膜で形成されるシード層218と、厚さ6nmの反強磁性23.2Ir−76.8Mn膜(組成は原子パーセント)で形成されるピン止め層220と、キーパ層構造222と、厚さ0.8nmの非磁性Ru膜で形成される反平行結合層226と、基準層構造224を含む。キーパ層222は、厚さ1.6nmの72.5Co−27.5Fe膜で形成される第一のキーパ層と、厚さ0.6nmの64.1Co−35.9Fe膜で形成される第二のキーパ層を含む。キーパ層構造222の厚さは、飽和モーメントが0.32memu/cm(2枚のCu膜の間に挟まれた厚さ4.6nmの強磁性80Ni−20Fe膜のそれに対応)になるように選択される。基準層構造224は、厚さ0.6nmの64.1Co−35.9Fe膜で形成される第一の基準層と、厚さ0.6nmの75.5Co−24.5Hf膜で形成される第二の基準層と、厚さ1.2nmの65.5Co−19.9Fe−14.6B膜で形成される第三の基準層と、厚さ0.3nmの46.8Co−53.2Fe膜で形成される第四の基準層を含む。基準層構造224の厚さは、飽和モーメントが0.30memu/cm(2枚のCu膜の間に挟まれた厚さ4.3nmの強磁性80Ni−20Fe膜のそれに対応)となるように選択される。
【0024】
上側センサ積層構造214は、検知層構造228と、厚さ6nmの非磁性Ru膜で形成されるキャップ層230を含む。検知層構造228は、厚さ0.4nmの強磁性87.5Cu−12.5Fe膜で形成される第一の検知層と、厚さ1.6nmの強磁性79.3Co−4.0Fe−16.7B膜で形成される第二の検知層と、厚さ2.8nmの強磁性87.1Co−12.9Hf膜で形成される第三の検知層を含む。検知層構造228の厚さは、飽和モーメントが0.42memu/cm(2枚のCu膜の間に挟まれた厚さ6nmの強磁性80Ni−20Fe膜のそれに対応)となるように選択される。
【0025】
各側部領域の一般的な絶縁層202は、厚さ3nmの非磁性アモルファスAl膜で形成される。各側部領域の一般的な縦バイアス積層構造204は、厚さ4nmの非磁性Cr膜で形成されるシード層232と、厚さ24nmの硬磁性82Co−18Pt膜で形成される縦バイアス層234と、厚さ10nmの非磁性Cr膜で形成されるキャップ層236を含む。Co−Pt縦層234の厚さは、MδLBが2.1memu/cm(2枚のCu層に挟まれた厚さ30nmの強磁性80Ni−20Fe膜のそれ、または検知層228の飽和モーメントの5倍に対応)となるように選択される。
【0026】
読み取りヘッド200の製造工程においては、CPP TMRまたはGMR読み取りセンサ201をウェハ上に、スバッタリングシステムで、厚さ1μmの強磁性80Ni−80Fe膜で形成される下側強磁性シールド206とともに堆積させ、高真空炉の中で、50,000 Oeの磁界中、280℃で5時間アニーリングする。CPP TMRまたはGMR読み取りセンサ201を光リソグラフィ工程によってパターニングし、センサの前方および後方縁辺を形成し、次いで、別の写真工程でパターニングし、2つの側部領域にセンサ尾部を形成する。続いて、2つの端部領域に、Al絶縁層202、Crシード層232、Co−Pt縦バイアス層234、Crキャップ層236を逐次的に堆積させる。次に、フォトレジストを除去し、化学機械研磨工程を実行する。図2からわかるように、CPP TMRまたはGMR読み取りセンサ201は、Al絶縁層202によって縦バイアス積層構造204から分離される。その後、CPP TMRまたはGMR読み取りセンサ201、Al絶縁層202、縦バイアス積層構造204を、厚さ1μmの強磁性80Ni−20Fe膜で形成される上側強磁性シールド208、次に厚さ1μmの強磁性Al膜で形成されるギャップによって被覆する。読み取りヘッド製造工程完了後に、書き込みヘッドの製造工程が開始する。
【0027】
Al絶縁層202は、各側部領域において、CPP読み取りセンサ201の尾部を均一に被覆して、厚さはCPP読み取りセンサ201とCo−Pt縦バイアス積層構造204の間が完全に絶縁されるようにするのに十分でなければならない。その一方で、Al絶縁層202は、CPP読み取りセンサ201とCo−Pt縦バイアス積層構造204の間の間隔をできるだけ小さくし、CPP読み取りセンサ201とCo−Pt縦バイアス積層構造204の間の静磁気相互作用を向上させるために、十分に薄くなければならない。Al絶縁層202が最適な厚さ、約3nmであれば、CPP読み取りセンサ201の中に検知電流を十分に封じ込めることができ、Co−Pt縦バイアス層234が検知層構造228を安定化しやすくなる。
【0028】
Crシード層232は、各側部領域において、CPP読み取りセンサ201の尾部を均一に被覆し、また、体心立方格子(bcc){011}がAl絶縁層202とCrシード層232との界面に平行になるようにその多結晶粒が自由に成長できるように十分に厚くなければならない。この好ましい結晶集合組織により、Co−Pt縦バイアス層234の多結晶粒が、六方最密格子(hcp){0110}または{0111}平面がCrシード層232とCo−Pt縦バイアス層234の間の界面に平行となる状態で成長しやすく、その結果、c軸(磁化容易軸)が界面付近に位置するように方向づけられ、MとH等の膜面内硬磁性が改善される。その反面、Crシード層232は、CPP読み取りセンサ201とCo−Pt縦バイアス層234の間の間隔を最小限にして、CPP読み取りセンサ201とCo−Pt縦バイアス層234の間の静磁気相互作用を向上させるように十分に薄くなければならない。Crシード層232が最適な厚さ、約4nmであれば、Co−Pt縦バイアス層234の膜面内硬磁性を向上させることができ、Co−Pt縦バイアス層234が検知層構造228を安定化しやすくなる。
【0029】
検知層構造214を安定化させるためにMδLBとHを高くする必要があることに加え、Co−Pt縦バイアス層234は、各側部領域において、CPP読み取りセンサ201の尾部を均一に被覆し、検知層構造214の磁化の反転によって発生するサイドリーディングを防止できる高さのMδLBとなるように十分に厚くなければならない。これに対して、縦バイアス層234は、高い読み取り感度を保持できるようにMδLBを低くするのに十分に薄くなければならない。縦バイアス層234が最適な厚さ、約24nmであれば、MδLBは2.1memu/cm(2枚のCu膜に挟まれた厚さ30nmの強磁性80Ni−20Fe膜のそれまたは、検知層228の飽和モーメントの5倍に対応)となり、したがって、高い読み取り感度を維持しながら、検知層構造214を安定化できる。
【0030】
しかしながら、絶縁層202と縦バイアス積層構造204の合計の厚さは(41nm)はCPP読み取りセンサ201の厚さ(27.3nm)よりはるかに大きいため、その上に上側強磁性シールド208が堆積されることになる表面形状は急峻すぎるようになる。このように表面形状が急峻であると、読み取り解像度が低下する。したがって、絶縁層202、シード層232、縦バイアス層234の最適厚さを最小限にすることが重要である。特に縦バイアス層234については、MδLBを変えないようにしなければならないため、δLBは、Mを最大限にすることによってのみ最小化できる。M=SM(Sは直角度、Mは飽和磁化)であるため、Mを最大にするには、SまたはMを最大にすればよい。
【0031】
図3は、先行技術に係るas−deposited状態の82Co−18Pt(24)/Cr(10)、Cr(4)/82Co−18Pt(24)/Cr(10)、80Cr−20Mo(4)/82Co−18Pt(24)/Cr(10)膜(厚さはnm)の磁化容易軸の応答を示す。シード層がない状態で、Co−Pt縦バイアス層234は、Sが0.52と低く、Mは、強磁性80Ni−20Fe膜のそれ(700memu/cm)と比較して1,084memu/cmと高く、Hは1,241Oeと高い。Sが低いのは、Co−Pt縦バイアス層234のc軸がAl絶縁層202とCo−Pt縦バイアス層234との界面に垂直方向に向いていることによるものであり、その結果、MδLBは1.37memu/cmと低くなる。これに対して、CrとCr−Moシード層232がある場合、Co−Pt縦バイアス層234は、Sがそれぞれ0.84と0.82と高く、Hがそれぞれ1,438と1,795Oeと高い。Sが高いのは、Co−Pt縦バイアス層234のc軸がCrシード層232とCo−Pt縦バイアス層234の界面に略平行な方向であることによるものであり、その結果、MδLBは約2.1memu/cmと高くなる。これに対して、Hも、好ましい結晶集合組織から高くなる。MoをCr原子に加えることによってHがさらに高くなるのは、Cr−Moシード層232とCo−Pt縦バイアス層234の格子整合が改善されるからである。
【0032】
図4は、先行技術に係る82Co−18Pt(24)/Cr(10)、Cr(4)/82Co−18Pt(24)/Cr(10)、80Cr−20Mo(4)/82Co−18Pt(24)/Cr(10)膜を280℃で5時間アニーリングした後の磁化容易軸の応答を示す。シード層を持たないCo−Pt縦バイアス層234は、Sが0.33と低く、Hは1.177Oeと高い。CrとCr−Moシード層232があると、Co−Pt縦バイアス層234は、Sがそれぞれ0.84と0.82と高く、Hはそれぞれ1,521、1,841Oeと低い。したがって、アニーリング後は、シード層がまったくないとSとHは若干低下するが、CrとCr−Moシード層232があると、若干増加する。
【0033】
図5は、先行技術に係るCr/82Co−18Pt(24)/Cr(10)、80Cr−20Mo/82Co−18Pt(24)/Cr(10)膜を280℃で5時間アニーリングする前と後のHとシード層の厚さ(δ)の関係を示す。as−deposited状態とアニーリング後の状態のCr/Co−Pt/Cr膜の両方に関して、Hは、Crシード層232の厚さが0から2nmに増大すると、約1,200から約880Oeに低下し、その後、厚さが3nmを超えると、上昇して1,400Oeを超える。as−deposited状態とアニーリング後の状態のCr−Mo/Co−Pt/Cr膜の両方に関して、Hは、Cr−Moシード層232の厚さが0から2nmに増大すると、約1,200から約660Oeに低下し、その後、厚さが3nmを超えると、上昇して1,700Oeを超える。図5は、したがって、CrとCr−Moシード層232のHに対する影響が、アニーリングの影響よりはるかに大きく、CrとCr−Moシード層232が好ましい結晶集合組織を得るのに十分な厚さである時のみ、好ましいことを示している。
【0034】
図6は、本発明の好ましい実施形態に係る読み取りヘッド600を示しており、各側部領域における改良された縦バイアス積層構造604が提案されている。読み取りヘッド600において、CPP TMRまたはGMR読み取りセンサ201は、図2に示されるものと同じまたはそれより小さく、2つの側部領域において、縦バイアス積層構造604から絶縁層202によって電気的に絶縁され、検知電流が2つの側部領域を通じて短絡することが防止されているが、下側および上側強磁性シールド206、208とは電気的に接続されているため、検知電流はCPP TMRまたはGMR読み取りセンサ201の膜面に垂直な方向に流れる。
【0035】
縦バイアス積層構造604は、厚さ20nmの硬磁性Fe−Pt膜で形成され、Pt含有量が44から50at%である縦バイアス層634と、厚さ60nmの非磁性Ru膜で形成されるキャップ層636を含む。Fe−Pt縦層634の厚さは、MδLBが1.68memu/cm(2枚のCu膜に挟まれた厚さ24nmの強磁性80Ni−20Fe膜のそれに対応)となるように選択される。シード層232をなくすことにより、Al絶縁層202の厚さ(3nm)だけで間隔が決まる。シード層を持たないFe−Pt縦バイアス層634は、後述のように、Hがアニーリング後に2,400Oeより高く、間隔が3nmと狭くなるため、改良された縦バイアス積層構造604は、これまでになく高い記録密度による磁気記録のためにますます小型化されるCPP読み取りセンサ201の検知層構造を安定化させるのにより有効となるであろう。
【0036】
図7は、as−deposited状態Fe−Pt(24)膜の磁化容易軸の応答を示す。Pt含有量が35.5、41.4、46.8、52.5、56.9at%のとき、Fe−Pt膜は、Hがそれぞれ56.0、43.5、32.8、30.7、38.4Oeと低い。このようなHの低い数値は、この安定化方式において縦バイアス層634として使用するには低すぎる。
【0037】
図8は、280℃で5時間、アニーリングした後のFe−Pt(24)膜の磁化容易軸の応答を示す。Pt含有量が35.5、41.4、46.8、52.5、56.9at%のとき、Fe−Pt膜は、Hの数値がそれぞれ140、898、2,687、794、50Oeである。Hは、Pt含有量を約46.8at%とし、アリーリングした場合のみ、この安定化方式に十分な高さとなる。さらに、53.2Fe−46.8Pt縦バイアス層634をアニーリングした後、そのSは0.96から0.91に低下し、Mは968から914memu/cmに減少する。したがって、53.2Fe−46.8Ptの縦バイアス層634をアニーリングすると、高いS、M、Hは高くなり、この安定化方式の縦バイアス層634として使用することができる。さらに、シード層をなくすと間隔が7から3nmに減少するため、求められるMδLBを実質的に低減させることができ、Hは実質的に高い。
【0038】
図9は、280℃で5時間アニーリングする前と後のFe−Pt膜のHとPt含有量の関係を示す。Pt含有量が40から54at%の狭い範囲で選択されたときだけ、アニーリングのHへの影響は非常に大きくなる。
【0039】
図10は、as−deposited状態とアニーリング後の状態の53.2Fe−46.8Pt膜で撮影されたX線回折パターンを示す。強い反射{111}fccおよび弱い反射{200}fccと{211}fcc反射(a=0.3799nm)を示す面心立方構造(fcc)相が、as−deposited状態のFe−Pt膜に見られる。このfcc相が不規則であると、as−deosited状態のFe−Pt膜のHは低いかもしれない。これに対して、強い反射{111}fcc、分離した反射{200}fctと{211}fct、新たに現れた反射{201}fct(a=0.3847nm,c=0.3714nm,c/a=0.9654)を示す面心正方構造(fct)相が、アニーリング後の状態のFe−Pt膜に見られる。このfcc相が等原子比、規則的であると、アニーリングされた状態のFe−Pt膜のHは非常に高いかもしれない。したがって、アニーリングによりHが大きく増大するのは、FeとPt含有量が約50at%の時だけ、不規則なfccがfct相に変化することに関係があるであろう。
【0040】
図11は、本発明の代替の実施形態に係る読み取りヘッド1100を示しており、各側部域においてさらに改良された縦バイアス積層構造1104が提案されている。読み取りヘッド1100において、CPP TMRまたはGMR読み取りセンサ201は、図2に示されるものと同じまくたはそれより小さく、2つの側部領域において縦バイアス積層構造1104から絶縁層1102によって電気的に絶縁され、2つの側部領域を通じて検知電流が短絡しないようになっている、下側および上側強磁性シールド206、208とは電気的に接続されて、検知電流がCPP TMRまたはGMR読み取りセンサ201の膜面に垂直な方向に流れる。
【0041】
絶縁層1102は、厚さ1.4nmの非磁性アモルファスAl膜で形成される。縦バイアス積層構造1104は、厚さ1.6nmの非磁性多結晶MgO膜で形成される絶縁シード層1132と、Pt含有量が44から50at%の範囲で、厚さ20nmの硬磁性Fe−Pt膜で形成される縦バイアス層634と、厚さ60nmの非磁性Ru膜で形成されるキャップ層636を含む。Fe−Pt縦層の厚さは、MδLBが1.68memu/cm(2枚のCuにより挟まれる厚さ24nmの強磁性80Ni−20Fe膜のそれに対応)となるように選択される。MgOシード層1132は、Al絶縁層1102の一部の代わりに使用され、別の絶縁層として機能する。その結果、Al絶縁層1102とMgOシード層1132の厚さの合計(3nm)によって間隔が決定されるため、間隔は狭いままである。さらに、同じ厚さで、2つの似ていない酸化物膜で形成される間隔は一般に、1枚の酸化物膜だけで形成される間隔より高い絶縁破壊電圧(絶縁特性を特徴づける)を示し、これは、堆積中の下側酸化物膜におけるピンホールの成長が、2つの似ていない酸化物膜の間の界面で中断されるからである。後述のように、MgOシード層1132を伴うFe−Pt縦バイアス層634では、Hがアニーリング後に3,200Oeを超える程度に高く、間隔が3nmと狭いままであるため、さらに改良された縦バイアス積層構造1104は、さらに高い記録密度での磁気記録のために一段と小型化されたCPP読み取りセンサ201の検知層構造228を安定化させることにおいて、より有効であることが期待される。
【0042】
さらに、本発明の好ましい実施形態と代替の実施形態のどちらにおいても、厚さ1.8nmの非磁性多結晶Ru膜で形成された追加の導電性シード層を、Fe−Pt縦バイアス層634の下に使用することができる。空間が1.8nm大きくなることは望ましくないが、MgOシード層1106と追加のRuシード層を伴うFe−Pt縦バイアス層634では、後述のように、アニーリング後にHが4,000Oeを超える程度に高くなる。したがって、この方法は、間隔を縮小するという本発明の原理に反しているが、Hが実質的に高いため、依然として容認可能で、魅力的である。
【0043】
図12は、as−deposited状態Fe−Pt(20)、MgO(1.6)/Fe−Pt(20)、MgO(1.6)/Ru(1.8)/Fe−Pt(20)膜の磁化容易軸の応答を示す。MgOとMgO/Ruシード層の使用によって、Hは29.1から、それぞれ25.5と34.2Oeに増大する。したがって、MgOとMgO/Ruシード層がas−deposited状態のFe−Pt膜のHに対する影響は、まったく魅力的ではない。このように低いHの数値は、この安定化方式で縦バイアス層634として使用するには低すぎる。
【0044】
図13は、Fe−Pt(20)、MgO(1.6)/Fe−Pt(20)、MgO(1.6)/Ru(1.8)/Fe−Pt(20)膜を280℃で5時間アニーリングした後の磁化容易軸の応答を示す。MgOとMgO/Ruシード層の使用によって、Hは2,291からそれぞれ3,306と4,010Oeに増大する。したがって、アニーリングがHに与える影響は非常に大きいだけでなく、アニーリングにより、MgOとMgO/Ruシード層がHに及ぼす影響も非常に重大となる。このようにHが非常に高いため、アニーリング後のFe−Pt膜は、MgOとMgO/Ruシード層とともに、この安定化方式での縦バイアス層634として使用することができる。
【0045】
図14は、MgO、MgO(1.6)/Ru、MgO(1.6)/Rh、MgO(1.6)/Ptシード層を伴うFe−Pt(20)膜のHとシード層の厚さの関係を示す。Hは、MgOとRuシード層の厚さの増加に伴って増大するが、RhとPtシード層の厚さが増大すると減少する。したがって、Ruシード層は、これら3つの導電シード層の中で最良のものと思われ、より重要な点としては、最大Hを達成するのに、先行技術では厚さが3nm超必要であったのに対し、厚さわずか1.8nmでよい。
【0046】
図15は、Fe−PtとMgO(1.6)/Fe−Pt膜のHとFe−Pt膜の厚さの関係を示す。両方ともに、Fe−Pt膜の厚さが増すにつれ、Hが上昇する。Hを2,000Oe超にするには、MgOシード層1132の有無を問わず、Fe−Pt膜の厚さはそれぞれ、12nm、14nmを超えればよい。このようにHが高ければ、薄いFe−Pt膜を縦バイアス層634として使用し、飽和モーメントを0.28memu/cm(2枚のCu膜に挟まれた厚さ4nmの強磁性80Ni−20Fe膜のそれに対応)として、検知層構造228を安定化させることができる。さらに、円滑な表面形状も期待できる。
【0047】
注目すべき点として、キャップ層もまた、高いHを実現する中で重要な役割を果たす可能性がある。表1に、各種のシード層を有するFe−Pt膜のH値を示す。Ruキャップ層がTaキャップ層の代わりに使用されるほど、Hは実質的に増大する。このことから、非磁性Ru膜でキャップ層を作製することが提案される。
【0048】
【表1】

【0049】
さらに、この安定化方式を実行する方法も提案される。読み取りヘッド作製工程終了後に、読み取りヘッド600を高真空炉の中で、センサの前方および後方縁辺に垂直な50,000Oeの磁界中、280℃で5時間アニーリングし、その後、室温で、センサの前方および後方縁辺に平行な50,000Oeの磁界中で再磁化する。アニーリングと再磁化ステップを行うと、CPP読み取りセンサ201のキーパと基準層222、224の磁化は、センサの前方および後方縁辺に垂直で、相互に反対方向に向き、Fe−Pt縦バイアス層434の磁化は、センサの前方と後方縁辺に対して平行となる。
【0050】
各種の実施形態について説明したが、これらは限定ではなく、例としてのみ提示されたものと理解するべきである。本発明の範囲内に入るその他の実施形態もまた、当業者にとって明らかかもしれない。したがって、本発明の幅と範囲は、上記の実施形態のいずれによっても限定されるべきでなく、以下の特許請求範囲およびその等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0051】
100 磁気ディスクドライブ
112 磁気ディスク
113 スライダ
114 スピンドル
115 サスペンションアーム
118 ディスクドライブモータ
119 アクチュエータ
121 読み取りヘッド
122 ディスク表面
125 記録チャネル
127 アクチュエータ手段
128 ライン
129 コントローラ
200 読み取りヘッド
201 読み取りセンサ
202 絶縁層
204 縦バイアス積層構造
206 下側強磁性シールド
208 上側強磁性シールド
210 絶縁バリア層
212 下側センサ積層構造
214 上側センサ積層構造
216 バッファ層
218 シード層
220 ピン止め層
222 キーパ層構造
224 基準層構造
226 反平行結合層
228 検知層構造
232 シード層
234 縦バイアス層
236 キャップ層
434 Fe−Pt縦バイアス層
600 読み取りヘッド
604 縦バイアス積層構造
634 縦バイアス層
636 キャップ層
1100 読み取りヘッド
1104 縦バイアス積層構造
1106 MgOシード層
1132 シード層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側と下側強磁性シールドの間に挟まれ、第一と第二の側部を有する膜面垂直通電(CPP)トンネル磁気抵抗(TMR)または巨大磁気抵抗(GMR)読み取りセンサと、
前記読み取りセンサの第一と第二の側部上及び前記下側強磁性シールドの一部上の絶縁層と、
前記絶縁層上で、これと接触する縦バイアス層と、
を含む読み取りヘッド。
【請求項2】
前記絶縁層は、厚さが1〜5nmの非磁性アモルファスAl(アルミナ)膜で形成される、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項3】
前記縦バイアス層は、Pt含有量が40〜54at%であり、厚さが10〜40nmの硬磁性多結晶Fe−Pt膜で形成される、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項4】
前記縦バイアス層上のキャップ層をさらに含み、
前記キャップ層は、厚さが1〜10nmの非磁性多結晶Pt、RhまたはRu膜で形成される、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項5】
下側強磁性シールドを形成するステップと、
前記下側強磁性シールド上にCPP読み取りセンサを堆積させるステップと、
前記CPP読み取りセンサに前端と後端を形成するステップと、
前記CPP読み取りセンサに第一と第二の側部を形成するステップと、
前記CPP読み取りセンサの第一と第二の側部上及び前記下側強磁性シールドの一部上に絶縁層を堆積させるステップと、
前記絶縁層上に硬磁性Fe−Pt膜で形成される縦バイアス層を堆積させるステップと、
上側強磁性シールドを形成するステップと、
を含む、読み取りヘッドを作製する方法。
【請求項6】
前記読み取りヘッドを、高真空炉の中で、前記CPP読み取りセンサの前端と後端に垂直な50,000Oeの磁界中、280℃で5時間、アニーリングするステップと、
前記読み取りヘッドを、前記CPP読み取りセンサの前端と後端に平行な50,000Oeの磁界中で再磁化するステップと、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
下側と上側の強磁性シールドの間に挟まれ、第一と第二の側部を有する膜面垂直通電(CPP)読み取りセンサと、
前記CPP読み取りセンサの第一と第二の側部上及び前記下側強磁性シールドの一部上の絶縁層と、
縦バイアス積層構造であって、前記絶縁層上のシード層と、前記シード層上のFe−Ptを含む縦バイアス層と、前記縦バイアス層上のキャップ層と、を含む縦バイアス積層構造と、
を含む読み取りヘッド。
【請求項8】
前記絶縁層は、厚さが1〜5nmの非磁性アモルファスAl(アルミナ)膜で形成される、
請求項7に記載の読み取りヘッド。
【請求項9】
前記シード層は、厚さが1〜4nmの非磁性多結晶Ru膜で形成される、
請求項7に記載の読み取りヘッド。
【請求項10】
前記縦バイアス層は、Pt含有量が40〜54at%で、厚さが10〜40nmの硬磁性多結晶Fe−Pt膜で形成される、
請求項7に記載の読み取りヘッド。
【請求項11】
前記キャップ層は、厚さが1〜10nmの非磁性多結晶Pt、RhまたはRu膜で形成される、
請求項7に記載の読み取りヘッド。
【請求項12】
下側強磁性シールドを形成するステップと、
前記下側強磁性シールド上にCPP読み取りセンサを堆積させるステップと、
前記CPP読み取りセンサに前端と後端を形成するステップと、
前記CPP読み取りセンサに第一と第二の側部を形成するステップと、
前記CPP読み取りセンサの第一と第二の側部上及び前記下側強磁性シールドの一部上に絶縁層を堆積させるステップと、
前記絶縁層上に非磁性多結晶Ru膜で形成されるシード層を堆積させるステップと、
前記シード層上に硬磁性Fe−Pt膜で形成される縦バイアス層を堆積させるステップと、
前記縦バイアス層上に非磁性Pt、RhまたはRu膜で形成されるキャップ層を堆積させるステップと、
上側強磁性シールドを形成するステップと、
を含む、読み取りヘッドを作製する方法。
【請求項13】
前記読み取りヘッドを、高真空炉の中で、前記CPP読み取りセンサの前端と後端に垂直な50,000Oeの磁界中、280℃で5時間、アニーリングするステップと、
前記読み取りヘッドを、前記CPP読み取りセンサの前端と後端に平行な50,000Oeの磁界中で再磁化するステップと、
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
下側と上側の強磁性シールドの間に挟まれ、第一と第二の側部を有する膜面垂直通電(CPP)読み取りセンサと、
前記CPP読み取りセンサの第一と第二の側部上及び前記下側強磁性シールドの一部上の絶縁層と、
縦バイアス積層構造であって、前記絶縁層上の電気絶縁シード層と、前記電気絶縁シード層上の縦バイアス層と、前記縦バイアス層上のキャップ層と、を含む縦バイアス積層構造と、
を含む読み取りヘッド。
【請求項15】
前記絶縁層は、厚さが1〜5nmの非磁性アモルファスAl(アルミナ)膜で形成される、
請求項14に記載の読み取りヘッド。
【請求項16】
前記電気絶縁シード層は、厚さが1〜4nmの非磁性多結晶MgO膜で形成される、
請求項14に記載の読み取りヘッド。
【請求項17】
前記縦バイアス層は、Pt含有量が40〜54at%で、厚さが10〜40nmの硬磁性多結晶Fe−Pt膜で形成される、
請求項14に記載の読み取りヘッド。
【請求項18】
前記キャップ層は、厚さが1〜10nmの非磁性多結晶Pt、RhまたはRu膜で形成される、
請求項14に記載の読み取りヘッド。
【請求項19】
下側強磁性シールドを形成するステップと、
前記下側強磁性シールド上にCPP読み取りセンサを堆積させるステップと、
前記CPP読み取りセンサに前端と後端を形成するステップと、
前記CPP読み取りセンサに第一と第二の側部を形成するステップと、
前記CPP読み取りセンサの第一と第二の側部上及び前記下側強磁性シールドの一部上に絶縁層を堆積させるステップと、
前記絶縁層上に、非磁性多結晶MgO膜で形成された電気絶縁シード層を堆積させるステップと、
前記電気絶縁シード層上に、硬磁性Fe−Pt膜で形成された縦バイアス層を堆積させるステップと、
前記縦バイアス層上に、非磁性Pt、RhまたはRu膜で形成されたキャップ層を堆積させるステップと、
上側強磁性シールドを形成するステップと、
を含む、読み取りヘッドを作製する方法。
【請求項20】
前記読み取りヘッドを、高真空炉の中で、前記CPP読み取りセンサの前端と後端に垂直な50,000Oeの磁界中、280℃で5時間、アニーリングするステップと、
前記読み取りヘッドを、前記CPP読み取りセンサの前端と後端に平行な50,000Oeの磁界中で再磁化するステップと、
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
下側と上側の強磁性シールドの間に挟まれ、第一と第二の側部を有する膜面垂直通電(CPP)読み取りセンサと、
前記CPP読み取りセンサの第一と第二の側部上及び前記下側強磁性シールドの一部上の絶縁層と、
縦バイアス積層構造であって、前記絶縁層上の電気絶縁シード層と、前記電気絶縁シード層上の導電シード層と、前記導電シード層上の縦バイアス層と、前記縦バイアス層上のキャップ層と、を含む縦バイアス積層構造と、
を含む読み取りヘッド。
【請求項22】
前記絶縁層は、厚さが1〜5nmの非磁性アモルファスAl(アルミナ)膜で形成される、
請求項21に記載の読み取りヘッド。
【請求項23】
前記電気絶縁シード層は、厚さが1〜4nmの非磁性多結晶MgO膜で形成される、
請求項21に記載の読み取りヘッド。
【請求項24】
前記導電シード層は、厚さが1〜4nmの非磁性多結晶Ru膜で形成される、
請求項21に記載の読み取りヘッド。
【請求項25】
前記縦バイアス層は、Pt含有量が40〜54at%で、厚さが10〜40nmの硬磁性多結晶Fe−Pt膜で形成される、
請求項21に記載の読み取りヘッド。
【請求項26】
前記キャップ層は、厚さが1〜10nmの非磁性多結晶Pt、RhまたはRu膜で形成される、
請求項1に記載の読み取りヘッド。
【請求項27】
下側強磁性シールドを形成するステップと、
前記下側強磁性シールド上にCPP読み取りセンサを堆積させるステップと、
前記CPP読み取りセンサに前端と後端を形成するステップと、
前記CPP読み取りセンサに第一と第二の側部を形成するステップと、
前記CPP読み取りセンサの第一と第二の側部上及び前記下側強磁性シールドの一部上に電気絶縁層を堆積させるステップと、
前記絶縁層上に、非磁性多結晶MgO膜で形成される電気絶縁シード層を堆積させるステップと、
前記電気絶縁シード層上に、非磁性多結晶Ru膜で形成される導電シード層を堆積させるステップと、
前記導電シード層上に、硬磁性Fe−Pt膜で形成される縦バイアス層を堆積させるステップと、
前記縦バイアス層上に、非磁性Pt、RhまたはRu膜で形成されるキャップ層を堆積させるステップと、
上側強磁性シールドを形成するステップと、
を含む、読み取りヘッドを作製する方法。
【請求項28】
前記読み取りヘッドを、高真空炉の中で、前記CPP読み取りセンサの前端と後端に垂直な50,000Oeの磁界中、280℃で5時間、アニーリングするステップと、
前記読み取りヘッドを、前記CPP読み取りセンサの前端と後端に平行な50,000Oeの磁界中で再磁化するステップと、
をさらに含む、請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−210357(P2011−210357A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65519(P2011−65519)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】