説明

自動車内側部品用軽量複合板材

本発明は、自動車内側部品用軽量複合板材に関し、さらに詳細には、熱可塑性繊維を基材として用い、熱可塑性有機繊維及び天然繊維を補強繊維として用いてこれらを種々の組成比率にて混合して多層構造を形成し、連続式複合板材製造装置により多層構造を圧縮・発泡して軽量化した複合板材である、天然繊維を含有した自動車内側部品用軽量複合板材に関する。熱可塑性繊維から構成された基材繊維と補強繊維としての天然繊維及び熱可塑性繊維を適切な割合にて強化して多層構造を設計し、熱溶着時に熱の分散を調節しながら連続式複合板材製造装置において圧縮及び発泡することにより製造された軽量化した軽量複合板材を自動車内側部品及び産業用材料として適用することにより、優れた騒音遮断及び騒音吸収性、断熱性、耐久性、軽量化、リサイクル性及び高い比強度を示す、環境にやさしい天然繊維を含有したパッケージトレイ、ドアトリム、ヘッドライナー、シートバックパネルなどの自動車内側部品用軽量複合板材や各種産業用材料として利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内側部品用軽量複合板材に関し、さらに詳細には、熱可塑性繊維を基材として用い、熱可塑性有機繊維及び天然繊維を補強繊維として用いてこれらを種々の組成比率にて混合して多層構造を形成し、連続式複合板材製造装置により多層構造を圧縮・発泡して軽量化した複合板材である、天然繊維を含有したパッケージトレイ、ドアトリム、ヘッドライナー及びシートバックパネルなどの自動車内側部品用軽量複合板材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、原油枯渇に対する憂慮感により代替エネルギーの開発と深刻な環境汚染の予防に国家的な運命をかけている。このため、自動車産業においても自動車の燃比改善と環境汚染の主原因である排気ガスの低減を目的として軽量化が推し進められるに伴い、金属に代わる物質として高分子複合材料の使用が急増している傾向にある。これまで自動車内側部品用複合素材としては、ポリプロピレンまたは熱可塑性オレフィン(TPO)などの高分子物質に補強材としてガラス繊維、炭素繊維などを用いて強化された高耐熱性・高剛性複合材料または不飽和ポリエステル(PET)系樹脂及び熱可塑性高分子のゴムで補強することによって得られる熱硬化性複合材料などの材料が金属を超える性能を有しており、種々の用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、このようなFRP(繊維強化プラスチック)は耐衝撃性と破壊靱性などの物性面で満足のいくものではなく、材料の変形時に許容可能な変形の幅が狭いとともに、リサイクルが不可能であって致命的な環境汚染の問題点を抱いている。このため、FRPの代替素材として、近年、熱可塑性高分子樹脂に補強材としてタルク、木粉、天然繊維、またはガラス繊維などを添加した射出成形品、熱可塑性繊維と天然繊維を混繊して不織布の形態に製造してその不織布に熱プレスを施すことによって得られる成形品が登場している。特に、後者の成形品は生分解性及び軽量化という理由から脚光を浴びており、既存のFRPとは異なり、金属の成形方法と同じスタンピング成形工法が適用可能である理由から生産性が高く、さらに、デザイン自由度が金属よりも優れているという長所を有していることから、各種の産業分野における採用が拡大しているのが現状である。
【0004】
しかしながら、上記熱可塑性繊維に天然繊維を混繊して製造される自動車内側部品用不織布は、熱可塑性高分子樹脂に強化繊維や木粉などの粉末を添加時に均一に分散させることが困難であるという問題点があり、安定した品質を有する高品質の製品を得ることは期待し難く、熱可塑性不織布の状態で製造及び販売されて、これを後発的に熱プレスを用いて高温において直接に成形することは表皮層と内部層との不均一な融着を誘発することがあるだけではなく、強度の向上にも限界がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の問題点を解消するための方法として、本発明は、熱可塑性繊維から構成された基材繊維と補強繊維としての天然繊維を適切な割合にて強化して多層構造を設計し、熱融着時に熱の分散を調節しながら連続式複合板材製造装置において圧縮及び発泡することにより軽量化した軽量複合板材を提供することにより、熱可塑性有機素材の低い耐熱性による自動車内側部品用途としての限界を天然繊維を含有するバルキーな多層構造の設計により克服し、熱可塑性有機繊維と天然繊維を用いることにより軽量化、耐久性、及びリサイクル性の効果があり、多層の構造設計及び熱融着時の熱分散を調節することにより同じ重量及び厚みの製品に対して様々な吸水率及び強度を有する複合板材の製造が可能であり、多層構造に設計された不織布から出願人によって設計された連続式複合板材製造装置を用いて微細な気孔層を有する高性能複合板材を製造し、成形性、断熱性、吸音性、及び衝撃吸収性に優れた天然繊維含有自動車内側部品用軽量複合板材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の如き目的を達成するために、本発明は、高性能軽量複合板材において、基材40〜90重量%と天然繊維10〜60重量%が一体的に形成されてなる内部層2と、前記内部層2の少なくとも一方の表面に貼り合わされた表皮層1、3で、基材60〜90重量%とポリエステル10〜40重量%または基材60〜80重量%、ポリエステル15〜25重量%及び天然繊維5〜15%が一体的に形成されてなる表皮層1、3と、からなる自動車内側部品用軽量複合板材を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、高性能軽量複合板材の製造方法において、
基材40〜90重量%と天然繊維10〜60重量%を均一に混合・開繊して第一混合繊維を形成し、基材60〜90重量%及びポリエステル10〜40重量%または基材60〜80重量%、ポリエステル15〜25重量%及び天然繊維5〜15重量%を均一に混合・開繊して第二混合繊維を形成するする混合・開繊工程と、
前記上記第一混合繊維と第二混合繊維を円筒状カード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成するカーディング工程と、
前記繊維状の薄いウェブを互いに重ねてウェブの多層構造を形成するダブリング工程と、
前記ウェブの多層構造をニードルパンチにより互いに接合して不織布を製造する工程と、
前記不織布を連続式複合板材製造装置に供給して予熱、熱融着、加圧、冷却、発泡、及び切断が連続工程により行われるようにして軽量複合板材を製造する工程と、を経て前記高性能自動車内側部品用軽量複合板材を製造する自動車内側部品用軽量複合板材の製造方法を提供する。
【0008】
好ましくは、前記第一混合繊維から形成されたウェブをダブリング工程において互いに重ねることによって形成されたウェブを内部層2とし、前記第二混合繊維から形成されたウェブをダブリング工程において互いに重ねることによって形成されたウェブを表皮層1、3として、前記ダブリング工程において前記内部層2の少なくとも一方の表面に表皮層1、3が貼り合わされるように重ねてダブリングする。
【0009】
さらに、本発明は、前記の方法により製造された天然繊維含有自動車内側部品用軽量複
【0010】
合板材を提供する。
【0011】
好ましくは、上記基材はポリプロピレンまたは高融点の芯成分と低融点の芯成分とから構成された芯鞘型複合繊維である。
【0012】
さらに、好ましくは、上記天然繊維は、大麻、黄麻、亜麻、ケナフ、アバカ及びバナナ繊維よりなる群から選ばれたいずれか一種である。
【0013】
さらに、好ましくは、上記芯鞘型複合繊維は融点が240〜270℃の芯成分50〜70重量%と融点が1l0〜180℃の鞘成分30〜50重量%とが配合されてなるものであり、鞘成分としてのポリエステル共重合体と芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としてのポリエステルグリコールと芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としての高密度ポリエチレンと芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としての高密度ポリエチレンと芯成分としてのポリプロピレンからなる複合繊維、鞘成分としてのポリプロピレンと芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維よりなる群から選ばれたいずれか一種である。
【0014】
さらにまた、本発明は、上記の自動車内側部品用軽量複合板材を用いた自動車用内側部品を提供する。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明に従って天然繊維を含有した自動車内側部品用軽量複合素材を提供することにより、熱可塑性有機繊維の低い耐熱性による自動車内側部品用途としての限界を天然繊維を含有するバルキーな多層構造の設計により克服し、熱可塑性有機繊維と天然繊維を用いることにより、軽量化、耐久性及びリサイクル性の効果があり、バルキーな多層構造に設計された不織布から、出願人によって設計された連続式複合板材製造装置を用いて微細な気孔層を有する高性能軽量複合板材を製造することが可能になる。
【0016】
また、多層の構造設計及び熱融着時の熱分散を調節することにより、同じ重量及び厚みの製品に対して様々な吸水率及び強度を有する複合板材の製造が可能である。このように、様々な自動車内側部品及び仕切り、家具、合板などの建築用及び産業用素材として利用可能であり、多層複合構造及び高い気孔性により成形性、断熱性、吸音性、及び衝撃吸収性に優れている。天然繊維の利用は環境にやさしい複合板材を提供するだけではなく、コスト低減の効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0018】
本発明はポリプロピレンまたは高融点の芯成分と低融点の鞘成分からなる芯鞘型複合繊維から構成された基材と、ポリエステルまたは天然繊維から構成された補強材とを様々な組成比率にて混合して多層構造を形成し、連続式複合板材製造装置により多層構造を圧縮して軽量化した複合板材を提供する、自動車内側部品用軽量複合板材に関する。
【0019】
本発明は、まず第一に、熱可塑性有機素材の低い耐熱性による自動車内側部品用途としての限界を天然繊維を含有するバルキーな多層構造の設計により克服し、ポリプロピレン、ポリエステル繊維及び天然繊維を用いることにより自動車の軽量化、耐久性及びリサイクル性を有する環境にやさしい材料を提供する。第二に、本発明は、多層構造に設計された不織布から出願人によって設計された連続式複合板材製造装置を用いて、微細な気孔層を有する軽量で成形し易くて高性能の複合板材を提供する。第三に、本発明は、多層の適切な構造設計及び熱融着時の熱の分散を調節することにより、同じ重量の製品に対して1%から30%の様々な吸水率を有する各種の複合板材を提供することが可能になる。さらに、第四に、本発明は、上記多層の構造設計および熱融着時の熱分散を調節することにより、同じ重量の製品に対して25MPa未満の低強度、25ないし50MPaの中強度、さらに、50MPa超の高強度の複合板材を提供する。第五に、本発明により製造された複合板材は、多層複合構造及び高い気孔性により優れた成形性、断熱性、吸音性、及び衝撃吸収性などの特性を有しており、自動車用内側部品及び産業用材料などの種々の用途を有する。最後に、本発明の複合板材は、10〜50重量%の天然繊維を用いることによりコスト低減という経済的な価値を有する。
【0020】
上記のような特性を有する本発明は、基材繊維と補強繊維の様々な組成比率の選択により表皮層と内部層を設計することができ、組成比率に応じて複合板材の物性及び特性を異にする。本発明においては、表皮層1、3として、基材(好ましくは、ポリプロピレン(PP)または芯鞘型複合繊維)及びポリエステルまたは上記基材、ポリエステル及び天然繊維(好ましくは、大麻、黄麻、亜麻、ケナフまたはバナナ繊維)を互いに混合・開繊して薄いウェブ層を形成する。一方、内部層2として、ポリプロピレン(PP)及び天然繊維(好ましくは、大麻、黄麻、亜麻、ケナフまたはバナナ繊維)を一体に混合・開繊して薄いウェブ層を形成する。薄いウェブは互いに重ねて多層構造を形成するダブリング工程に供される。多層構造はニードルパンチにより互いに接合されて不織布が製造される。不織布は連続式複合板材製造装置に供給されて余熱、熱融着、加圧、冷却、発泡、及び切断の一連の工程により高性能軽量複合板材が製造される。
【0021】
本発明によれば、上記表皮層1、3は基材の割合が補強繊維より高くなるように、基材60〜90重量%とポリエステル10〜40重量%を混合するか、または、基材60〜80重量%とポリエステル15〜25重量%及び天然繊維5〜15重量%を混合して表皮層1、3の表面を滑らかでかつ均一できめ細かくなるようにする。表面がこのような特性を有するので、吸水に対する抵抗性、断熱性及び遮音効果を付与するとともに、仕上げ処理用不織布との接着性を向上させることができる。
【0022】
本発明によれば、上記内部層2は補強繊維の割合を表皮層より高めて、基材40〜90重量%と天然繊維10〜60重量%を混合する。これにより、補強繊維の割合を高めて強度を維持し、バルキー構造または多くの微細気孔を形成することにより、保温効果、断熱効果及び熱に対する安定性、及び吸音効果を付与するとともに、優れた衝撃吸収性を維持することができる。さらに、天然繊維の高い含水率と吸湿性によって、悪臭、カビの生成、及び脆化などの問題点を解決し、基材と補強材として用いられる天然繊維との間に均一な熱融着をもたらすことができる。
【0023】
一方、上記内部層2の天然繊維の割合を10重量%未満にする場合、気孔層の減少により、複合板材の吸音性及び衝撃吸収性などの悪化につながる。これは、熱可塑性複合板材の固有な特性を喪失させて経済的なコストを上昇させるという問題点がある。
【0024】
さらに、上記内部層2の天然繊維の割合を60重量%超にする場合、バインダーとして作用する基材の含量が相対的に低減して基材と天然繊維との結合力が弱くなるため、高い水分含量、強度低下、及び層間剥離などによって、基材と天然繊維との融着による含浸及び結合に問題を引き起こす。
【0025】
このため、高い比率の気孔層による吸音性、断熱性、及び衝撃性を維持するためには、内部層2は10〜60重量%の天然繊維を含有することが好ましい。
【0026】
さらに、上記内部層2は、基材としてのポリプロピレンまたは芯鞘型複合繊維40〜90重量%と天然繊維10〜60重量%の範囲内で基材50〜60重量%と天然繊維40〜50重量%とから構成された内部中層2−2、基材60〜70重量%と天然繊維20〜30重量%とから構成された内部上層2−1及び内部下層2−3というように、本発明は、内部上層と内部下層は、基材40〜90重量%及び天然繊維10〜60重量%の範囲内で、基材対天然繊維の成分比が等しく、内部中層の基材対天然繊維の成分比は内部上層及び内部下層とは異なっている自動車内側部品用軽量複合板材を提供する。
【0027】
本発明によれば、上記基材の一つとして用いられる芯鞘型複合繊維は、融点が110〜180℃である鞘成分が約30〜50重量%であり、融点が230〜270℃である芯成分は約50〜70重量%であるため、バインダー及び補強繊維としての機能を併せ持つ。このため、複合板材の製造時に加えられる180〜220℃の温度は、優先的に基材の鞘成分のみを徐々に溶融させて補強繊維との融着による三次元的なネットワーク構造を形成し、芯成分は鞘成分の部分的な熱遮断効果により急激な物性の低下を防止することが可能な特徴を有することにより、補強繊維としての役割を果たすことができる。このような芯鞘型複合繊維として、鞘成分としてのポリエステル共重合体と芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としてのポリエステルグリコールと芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としての高密度ポリエチレンと芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としての高密度ポリエチレンと芯成分としてのポリプロピレンからなる複合繊維、鞘成分としてのポリプロピレンと芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維よりなる群から選ばれたいずれか一種を用いることができる。
【0028】
さらに、補強繊維としては天然繊維を用いるが、複合板材の熱安定性、寸法安定性、耐衝撃性、強度及び軽量化を目的として、本発明において使用される天然繊維は、大麻、黄麻、亜麻、ケナフ、アバカ(abaca)及びバナナ繊維よりなる群から選ばれたいずれか一種である。
【0029】
本発明の軽量複合板材の製造方法は、圧縮状態の原反を解反し、層への要求特性に応じて基材繊維と補強材繊維を均一に混合・開繊する混合・開繊工程と、前記混合・開繊した繊維を円筒状カード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成するカーディング工程と、求められる製品の重量に応じて繊維状の薄いウェブを互いに重ねて多層構造を形成するダブリング段階と、前記多層構造をニードルパンチにより互いに接合して用途に応じて様々な組成及び重量を有する不織布を製造する工程と、前記不織布を連続式複合板材製造装置に供給して予熱、熱融着、加圧、冷却、発泡、及び切断が連続工程により行われるようにして軽量複合板材を製造する工程とからなる。
【0030】
本発明によれば、上記混合・開繊工程においては、基材(好ましくは、ポリプロピレン)40〜90重量%と天然繊維10〜60重量%を均一に混合・開繊して第一混合繊維を形成し、また、基材(好ましくは、ポリプロピレンまたは芯鞘型複合繊維)60〜90重量%及びポリエステル10〜40重量%もしくは前記基材60〜80重量%、ポリエステル15〜25重量%及び天然繊維5〜15重量%を均一に混合・開繊して第二混合繊維を形成する。このとき、第一混合繊維から形成されたウェブを内部層2とし、第二混合繊維から形成されたウェブを表皮層1、3とする。前記内部層2の少なくとも一方の表面に表皮層1、3が貼り合わされるように、ダブリング工程において繊維状の薄いウェブを互いに重ねて多層構造を形成する。
【0031】
本発明によれば、前記不織布の製造工程において製造された多層構造の複合不織布は連続式複合板材製造装置に供給される。その装置は「性能が改良された複合材料の製造方法及びその製造装置(国際出願番号PCT/KR02/00658号)」に開示されており、予熱部、熱融着部、加圧部、発泡部、冷却部、及び切断部から構成された連続工程により、用途に応じて、複合材料の密度、強度及び厚みを自由に調節することができることが特徴である。
【0032】
本発明によれば、前記連続式複合板材製造装置を用いた軽量複合板材の製造に際して、8〜l2個/インチのケン縮数を有する短繊維(基材繊維と補強繊維:50〜80mm)は繊維解繊器の解繊シリンダーにより解繊され、解繊された繊維はスプリッタにより均一に分散及び混合される混合・開繊工程を経て、混合・開繊された繊維はランダムでかつ一軸方向を有する複合繊維板材を製造するために、物理的な性質(すなわち、引張強度や衝撃強度など)を改良する役割を果たす除塵機を通らせる。前記混合・開繊した繊維は円筒状カード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成し、このような繊維状の薄いウェブは、ウェブを互いに重ねてウェブの多層構造を形成するダブリング工程に供される。前記ウェブの多層構造は搬送ベルトにより加圧ローラーを経てニードルパンチ装置に搬送され、ニードルパンチにより不織布が製造される。ニードルパンチ装置は、供給されるウェブの厚み調節及び密度調節に重要な役割を果たす装置であり、もし、ウェブがニードルパンチ装置を通らせなければ、まるで綿のように膨らんでいる状態となり、加熱板を通るときにヒーターと接触してヒーターが損傷されたり、繊維が発火したりする恐れが極めて高くなる。ニードルパンチにより、予熱ゾーンと加熱板を通るときに発生する繊維固有の収縮を大幅に低減することで複合板材の均一性を高めることができ、繊維の体積の縮小の結果として、複合板材がヒーターに損傷を与えたり、あるいは、複合板材がヒーターと接触して発火を引き起こしたりする危険性を極力抑えることが可能になる。
【0033】
前記ニードルパンチにより製造された複合不織布は、連続式複合板材製造装置に搬送される。連続式複合板材製造装置は、一次及び二次予熱ゾーン、一次、二次及び三次溶融加圧/発泡ゾーン、冷却ゾーン、及び切断部を備えている。まず、前記複合不織布は一次予熱ゾーンと二次予熱ゾーンを通らせて不織布の内部へまで熱を伝えて、熱可塑性有機繊維、すなわち、ポリプロピレンまたは芯鞘型複合繊維を溶融加圧/発泡ゾーンで容易に補強繊維の間に浸透可能にする。不織布を予熱工程に供することにより、補強繊維の表面への樹脂の濡れ性が向上し、樹脂は複合板材の内部へまで含浸されるので、高強度の複合板材を製造することができる。予熱された複合不織布は溶融/加圧ゾーンの加圧ローラーを通過して溶融・加圧されて一定の厚みの複合板材として製造される。すなわち、1次溶融加圧/発泡ゾーンを通過した複合不織布は加圧ローラーにより一定の厚みを維持しながら、コンベヤベルトの熱が複合不織布に伝導されることによって溶融されながら加圧される。二次溶融加圧/発泡ゾーンにおいて、基材としての熱可塑性有機繊維は溶融されて補強繊維に含浸される。さらに、三次溶融加圧/発泡ゾーンを通りながら、不織布の温度はその状態を維持し、圧力だけを加えて、繊維の空隙率を最小にするために、熱可塑性樹脂の含浸性及び濡れ性が十分な状態にされる。さらに、不織布が上記加熱/加圧工程を経て冷却される場合、高性能を有する複合板材が製造可能である。不織布を再加熱して冷却ゾーンの上下ローラー間の隙間を広げる場合、補強繊維自体の弾性により擬似発泡型高性能軽量複合板材が製造可能である。
【発明を実施するための最良の態様】
【0034】
以下、本発明を実施例を挙げて説明する。
<実施例1>
ポリプロピレン(PP)80重量%と黄麻20重量%、ポリプロピレン(PP)70重量%と黄麻30重量%、ポリプロピレン(PP)60重量%と黄麻40重量%、ポリプロピレン(PP)50重量%と黄麻50重量%、または、ポリプロピレン(PP)40重量%と黄麻60重量%をそれぞれ混合・開繊した後、各混合繊維を円筒状カード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成して内部層2を得た。また、ポリプロピレン(PP)70重量%、ポリエステル(PET)22重量%及び黄麻8重量%を均一に混合・開繊した後、その混合繊維を同じカード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成して表皮層1、3を得た。前記表皮層1、3が内部層2の上下両方の表面に貼り合わされるように配置して、それぞれの層が重なるようにダブリングし、その多層をニードルパンチにより接合した。ニードルパンチにより製造された複合不織布の重量は2100g/m2であり、この不織布を連続式複合板材製造装置を6m/分の速度で通らせて厚み2.5±0.1mmの複合板材を製造した。連続式複合板材製造装置の内部は、予熱部、溶融加圧部/発泡部、冷却部、及び切断部より構成されており、予熱部の温度は180℃に維持され、溶融加圧部/発泡部はさらに4ゾーンより構成されてこれらの温度は210〜250℃に維持され、冷却部はまた2ゾーンより構成されてそれぞれ60℃と30℃に温度が自動調節された。前記複合板材の内部層2における天然繊維(黄麻)の含量による物性の変化を下記表1に示す。
【0035】
ここで、MDは、製品が製造される機械の進行方向を示し、AMDは、製品が製造される機械の進行方向に対して垂直の方向を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
<実施例2>
ポリプロピレン(PP)60重量%と黄麻40重量%を混合・開繊した後、その混合繊維を円筒状カード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成して内部層2を得た。また、ポリプロピレン(PP)70重量%、ポリエステル(PET)22重量%及び黄麻8重量%を均一に混合・開繊した後、その混合繊維を同じカード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成して表皮層1、3を得た。前記表皮層1、3が内部層2の上下両方の表面に貼り合わされるように配置して、それぞれの層が重なるようにダブリングし、その多層をニードルパンチにより接合した。ニードルパンチにより製造された複合不織布の重量は、1600g/m2、1800g/m2、2l00g/m2、2500g/m2、3200g/m2であり、これらの不織布を連続式複合板材製造装置を6m/分の速度にて通らせて厚み3.0±0.1mmの複合板材を製造した。連続式複合板材製造装置の内部は、予熱部、溶融加圧部/発泡部、冷却部、及び切断部より構成されており、予熱部の温度は180℃に維持され、溶融加圧部/発泡部はさらに4ゾーンより構成されてこれらの温度は200〜240℃に維持され、冷却部はまた2ゾーンより構成されてそれぞれ60℃と30℃に温度が自動調節された。前記複合板材の重量に応じた物理的な特性を下記表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
<実施例3>
ポリプロピレン(PP)60重量%と黄麻40重量%を混合・開繊した後、その混合繊維を円筒状カード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成して内部層2を得た。また、ポリプロピレン(PP)70重量%、ポリエステル(PET)22重量%及び黄麻8重量%を均一に混合・開繊した後、その混合繊維を同じカード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成して表皮層1、3を得た。前記表皮層1、3が内部層2の上下両方の表面に貼り合わされるように配置して、それぞれの層が重なるようにダブリングし、その多層をニードルパンチにより接合した。ニードルパンチにより製造された複合不織布の重量は1800g/m2であり、この不織布を連続式複合板材製造装置を6m/分の速度で通らせて複合板材を製造した。連続式複合板材製造装置の内部は、予熱部、溶融加圧部/発泡部、冷却部、及び切断部より構成されており、予熱部の温度は180℃に維持され、溶融加圧部/発泡部はさらに4ゾーンより構成されてこれらの温度は200〜240℃に維持され、冷却部はまた2ゾーンより構成されてそれぞれ60℃と30℃に温度が自動調節された。このとき、溶融加圧部/発泡部及び冷却部に設けた上下ローラー及びベルトの隙間を調節することにより、複合板材の厚み及び密度を調節した。その結果を下記表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
<実施例4>
芯鞘型低融点ポリエステル繊維(LM;韓国ヒュービス社製)50重量%と天然繊維50重量%を混合・開繊した後、その混合繊維を円筒状カード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成して基材の内部中層2−2を得、芯鞘型低融点ポリエステル繊維(LM)65重量%と天然繊維35重量%から同じようにして繊維状の薄いウェブを形成して基材の内部上層2−1及び内部下層2−3を得た。また、芯鞘型低融点ポリエステル繊維(LM)80重量%、ポリエステル(PET)15重量%、及び天然繊維5重量%を均一に混合・開繊した後、その混合繊維を同じカード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成して表皮層1、3を得た。これは、5個の多層より構成されている。前記表皮層1、3が基材の内部層2−1、2−2、2−3の上下両方の表面に貼り合わされるように配置して、それぞれの層が重なるようにダブリングし、この5層からなる多層をニードルパンチにより接合した。ニードルパンチにより製造された複合不織布の重量は2100g/m2であり、この不織布を連続式複合板材製造装置を6m/分の速度で通らせて厚み2.6±0.1mmの複合板材を製造した。連続式複合板材製造装置の予熱部の温度は180℃に維持され、溶融加圧部/発泡部はさらに4ゾーンより構成されてこれらの温度は210〜250℃に維持され、冷却部はまた2ゾーンより構成されてそれぞれ60℃と30℃に温度が自動調節された。上記複合板材の天然繊維の種類、すなわち、黄麻、ケナフ、及びアバカの使用による物理的な特性を下記表4に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
以上の実施例の試験から明らかなように、出願人によって設計された連続式複合板材製造装置は、同じ重量に対して様々な厚み及び物性(低強度、中強度、高強度など)を有する板材を製造することができる。自動車内側部品の中でもヘッドライナー(headliner)などには低強度で衝撃吸収性に優れた板材が適用可能であり、パッケージトレイなどには中強度板材を適用することができ、ドアトリム(door trim)、シートバックパネル(seat back panel)などには高剛性の物性が要求されるために高強度の板材が適用可能である。特に、鉄に代わり得る材料から製造されるバックビーム(back beam)、フェンダー(fender)などの自動車外板用のものには高剛性という物性が不可欠であるといえる。
【0044】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、前記基材として用いられるポリプロピレンと類似する物性を有する芯鞘型複合繊維を基材として用いても、同じ効果が得られる。また、前記補強繊維として用いられる黄麻と同じ物性を有する大麻、亜麻、ケナフ、アバカまたはバナナ繊維を補強繊維として用いても同じ効果が得られる。
【0045】
本発明の前記連続式複合板材製造装置により製造された軽量複合板材は、自動車内側部品用成形器を用いて製品化されて、パッケージトレイ(package tray)、ドアトリム、ヘッドライナー、シートバックパネルなどの自動車内側部品及び仕切り、家具、合板などの建築用及び産業用の素材としても用いられる。本発明の軽量複合板材の製造方法によれば、多層の構造設計及び熱融着時の熱分散を調節することにより、同じ重量の製品に対して、25MPa未満の低強度、25ないし45MPaの中強度、または45MPa超の高強度の複合板材を製造することができる。さらに、本発明の複合板材は各種の産業分野に応用可能であり、軽量化、高い比強度、非弾性化及び向上した機械的特性により、航空機や船舶や自動車部品や精密電気・電子製品など、製品の強度と剛性と靱性などにおいて優れた特性が要求される種々の産業分野に広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1は、本発明による2層構造の自動車内側部品用複合板材の断面図である。
【0047】
図2は、本発明による3層構造の自動車内側部品用複合板材の断面図である。
【0048】
図3は、本発明による5層構造の自動車内側部品用複合板材の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1、3 表皮層
2 内部層
2−1 内部上層
2−2 内部中層
2−3 内部下層
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高性能軽量複合板材であって、
基材40〜90重量%及び天然繊維10〜60重量%が一体的に形成されてなる内部層(2)と、
前記内部層(2)の少なくとも一方の表面に貼り合わされた表皮層(1、3)で、基材60〜90重量%及びポリエステル10〜40重量%または基材60〜80重量%、ポリエステル15〜25重量%及び天然繊維5〜15重量%が一体的に形成されてなる表皮層(1、3)と、
からなる自動車内側部品用軽量複合板材。
【請求項2】
前記内部層(2)は、内部上層(2−1)、内部中層(2−2)及び内部下層(2−3)からなる3層構造を有し、基材40〜90重量%及び天然繊維10〜60重量%の範囲内で基材対天然繊維の成分比が内部上層(2−1)と内部下層(2−3)とは互いに等しく、内部中層(2−2)の基材対天然繊維の成分比は内部上層(2−1)及び内部下層(2−3)とは異なっている請求項1に記載の自動車内側部品用軽量複合板材。
【請求項3】
前記内部上層(2−1)と内部下層(2−3)は基材60〜70重量%及び天然繊維30〜40重量%から構成され、前記内部中層(2−2)は基材50〜60重量%及び天然繊維40〜50重量%から構成されている請求項2に記載の自動車内側部品用軽量複合板材。
【請求項4】
前記基材は、ポリプロピレンまたは高融点の芯成分及び低融点の鞘成分から構成された芯鞘型複合繊維である請求項1に記載の自動車内側部品用軽量複合板材。
【請求項5】
前記天然繊維は、大麻、黄麻、亜麻、ケナフ、アバカ及びバナナ繊維よりなる群から選ばれたいずれか一種である請求項1に記載の自動車内側部品用軽量複合板材。
【請求項6】
前記芯鞘型複合繊維は融点が240〜270℃の芯成分50〜70重量%と融点が1l0〜180℃の鞘成分30〜50重量%とが配合されてなるものであり、鞘成分としてのポリエステル共重合体及び芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としてのポリエステルグリコール及び芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としての高密度ポリエチレン及び芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としての高密度ポリエチレン及び芯成分としてのポリプロピレンからなる複合繊維、鞘成分としてのポリプロピレン及び芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維よりなる群から選ばれたいずれか一種である請求項4に記載の自動車内側部品用軽量複合板材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の自動車内側部品用軽量複合板材を用いた自動車用内側部品。
【請求項8】
高性能軽量複合板材の製造方法であって、
基材40〜90重量%及び天然繊維10〜60重量%を均一に混合・開繊して第一混合 繊維を形成し、基材50〜80重量%及びポリエステル20〜50重量%または基材60〜80重量%、ポリエステル15〜25重量%及び天然繊維5〜15重量%を均一に混合・開繊して第二混合繊維を形成する混合・開繊工程と、
前記第一混合繊維と第二混合繊維を円筒状カード機を通らせて繊維状の薄いウェブを形成するカーディング工程と、
前記繊維状の薄いウェブを互いに重ねてウェブの多層構造を形成するダブリング工程と、
前記ウェブの多層構造をニードルパンチにより互いに接合して不織布を製造する工程と、
前記不織布を連続式複合板材製造装置に供給して予熱、熱融着、加圧、冷却、発泡、及び切断が連続工程により行われるようにして軽量複合板材を製造する工程と、を経て請求項1に記載の高性能自動車内側部品用軽量複合板材を製造する自動車内側部品用軽量複合板材の製造方法。
【請求項9】
前記第一混合繊維から形成されたウェブをダブリング工程において互いに重ねることによって形成されたウェブを内部層(2)とし、前記第二混合繊維から形成されたウェブをダブリング工程において互いに重ねることによって形成されたウェブを表皮層(1、3)として、前記ダブリング工程において前記内部層(2)の少なくとも一方の表面に表皮層(1、3)が貼り合わされるように重ねてダブリングする請求項8に記載の自動車内側部品用軽量複合板材の製造方法。
【請求項10】
前記基材はポリプロピレンまたは高融点の芯成分及び低融点の芯成分から構成された芯鞘型複合繊維である請求項8に記載の自動車内側部品用軽量複合板材の製造方法。
【請求項11】
前記天然繊維は、大麻、黄麻、亜麻、ケナフ、アバカ及びバナナ繊維よりなる群から選ばれたいずれか一種である請求項8に記載の自動車内側部品用軽量複合板材の製造方法。
【請求項12】
前記芯鞘型複合繊維は融点が240〜270℃の芯成分50〜70重量%及び融点が1l0〜180℃の鞘成分30〜50重量%とが配合されてなるものであり、鞘成分としてのポリエステル共重合体及び芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としてのポリエステルグリコール及び芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としての高密度ポリエチレン及び芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維、鞘成分としての高密度ポリエチレン及び芯成分としてのポリプロピレンからなる複合繊維、鞘成分としてのポリプロピレン及び芯成分としてのポリエステルからなる複合繊維よりなる群から選ばれたいずれか一種である請求項10に記載の自動車内側部品用軽量複合板材の製造方法。
【請求項13】
請求項8から12のいずれかに記載の方法により製造された自動車内側部品用軽量複合板材。
【請求項14】
請求項13に記載の自動車内側部品用軽量複合板材を用いた自動車用内側部品。

【公表番号】特表2008−531325(P2008−531325A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556078(P2007−556078)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000569
【国際公開番号】WO2006/112599
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(507265166)リ アンド エス カンパニー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】