説明

自動車用アクセル踏み間違い時の暴走防止装置

【課題】オートマチック車では、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる暴走が起こり易く、これを防止する装置を提供する。
【解決手段】アクセルの踏み間違いにおいては、急な踏込みあるいは強い踏力によるアクセル操作となる為、スライドできるアクセルペダル9にペダルスイッチ19を設けスライド操作されてないOFFのとき、シフト位置検出手段8によるシフト位置が前進又は後退で、アクセルセンサー11がアクセルの急踏込み又は強踏込みを検出したときは、スロットルモータ6によりスロットルバルブ5を全閉にして、エンジン2の出力を制限して暴走を防ぐようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用アクセル踏み間違い時の暴走防止装置に係り、詳しくはブレーキと間違ってアクセルが踏込み操作されたときに、自動車の急発進、急加速を防止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
AT(オートマチック)車では、ブレーキと間違ってアクセルを操作した場合、MT(マニュアル)車のように同時にクラッチによるエンジンとの断続操作ができない為、自動車が暴走してしまうことが多い。
【0003】
このようなアクセルの誤操作に対して、特開2008−240595号公報は、アクセルペダルの右前方に設けたスイッチの操作有無で、ブレーキとアクセルの踏み間違いを判断して、踏み間違いのときはエンジン出力を制限して、暴走を防止するようにしている。又、実開平7−27928号公報は、ブレーキと連動した左右にスライドする、スライドペダルをアクセルペダルの上側に設け、スライドペダルを右方向にスライドさせないで、このペダルを踏んだ場合はブレーキが踏まれるようにして、暴走を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−240595号公報
【特許文献2】実開平7−27928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特開2008−240595号公報による、アクセルペダルの右前方のスイッチ操作有無で踏み間違いを判断する方法では、スイッチ操作を忘れるかあるいはスイッチから足が離れてしまうと、エンジンの出力を制限してしまうので、加速ができなくなってしまう。又、踏み間違いのとき、誤って一緒にスイッチを操作しやすく、この場合は暴走してしまうことになる。
【0006】
又、実開平7−27928号公報による、スライドペダルとブレーキを連動させる方法では、スライドペダルから足を離すと必ずブレーキのかかる状態にスライドペダルが移動するので、ブレーキとアクセルの踏み替えを頻繁に行う渋滞あるいは信号の多い場所では、運転者の負担が増すことになる。
【0007】
本発明は、このような課題に対してなされたものであって、その目的はブレーキと間違ってアクセルを踏んだ場合には、確実にこれを検出しエンジンの出力を制限するようにして、更に、運転者の負担を増すことなく、ブレーキとアクセルの踏み替えを頻繁に行えるようにした、アクセルの踏み間違い時の暴走を防止することができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、運転者によって選択された変速機のシフト位置を検出するシフト位置検出手段と、スライド可能なアクセルペダルのスライド位置を検出するスライド位置検出手段と、アクセルペダルの踏込み状態量を検出するアクセル状態検出手段と、前記シフト位置検出手段によるシフト位置が前進又は後退で且つ、前記スライド位置検出手段によるアクセルペダルの位置がスライド前の位置で且つ、前記アクセル状態検出手段によるアクセルペダルの踏込み状態量が所定値を超えたとき、自動車の走行を制限する運転制御手段を有することを特徴としている。
【0009】
ここで、スライド可能なアクセルペダルとは、2重構造のアクセルペダルで上側のペダルが、回転軸を中心にこれから離れた位置が左右に回転スライドするか、又は左右に平行スライドすることができるアクセルペダルのことをいう。又、スライド前の位置とは、スライド位置検出手段によって検出される上側のペダルの位置が、運転者によるスライド操作が完了して検出スイッチがONになる前までの位置のことである。
【0010】
アクセルペダルの踏込み状態量とは、急踏込みを判断する踏込み速度と、強踏込みを判断する踏込み量のことである。踏込み速度あるいは踏込み量のいずれかが夫々の所定値を超えたとき、踏込み状態量が所定値を超えたときとして、運転制御手段が働くようにしている。
【0011】
また、自動車の走行を制限する運転制御手段とは、スロットルモータによって制御する動力機関にあってこれの出力をアイドリング状態に制限するか、電子制御式燃料噴射装置によって制御する動力機関にあっては噴射量を制限するか、ワイヤー式スロットルによって制御する動力機関にあってはこれを停止するか、電子制御装置によるブレーキ・バイ・ワイヤー等を有するものにあっては制動装置を作動させるか、回生ブレーキを有するものにあってはこれを作動させて制動するかして自動車の走行を制限することである。また、自動車とは、ガソリンエンジン及び他の内燃エンジン、電動モータを動力源とした車でハイブリッド車も含む。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記スライド位置検出手段によるアクセルペダルのスライド後の位置が、左右いずれか一方の位置のときは、前記運転制御手段を解除することを特徴としている。
【0013】
ここで、アクセルペダルのスライド後の位置が左右いずれか一方の位置とは、上側のペダルが操作されて、踏まれない状態のペダル位置から右側にスライドさせる方法の場合は右に、左側にスライドさせる方法の場合は左に、スライド操作が完了してスライド位置検出手段の検出スイッチがONになった位置のことである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2において、運転者に表示する表示ランプをさらに備え前記シフト位置検出手段がシフト位置の前進又は後退を検出した場合は、表示ランプが点灯すること、及び前記運転制御手段が作動した時は表示ランプが点滅することを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかにおいて、運転者に報知する警報器をさらに備え前記運転制御手段が作動した時は、警報を発することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、シフト位置が前進又は後退であって、アクセルペダルのスライド操作がされていないときに、アクセルの急踏込みあるいは強踏込みをすると、確実に踏み間違いと判断して自動車の走行を制限するので、暴走を防ぐことができる。又、アクセルの急踏込みあるいは強踏込みが無い状態、つまり踏込み状態量が所定値以下での操作では、アクセルペダルのスライド操作がされていなくても、運転制御手段が作動しないので車の加速ができることおよび、渋滞あるいは信号の多い場所でブレーキとアクセルの踏み替えを頻繁に行って走行できるので、運転者の負担を増すことはない。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、アクセルペダルのスライド操作を行うことで、運転制御手段が作動しなくなるので、通常のアクセル操作ができ、急踏込みあるいは強踏込みをして加速することもできる。又、高速道路への進入、追い越し運転、信号での右折、登坂路等でも、加速やスピードを制限することなく走行することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、アクセルの急踏込み又は強踏込み操作があった場合は運転制御手段が作動することを、表示ランプの点灯によって、運転者に予告することができる。従って運転者はアクセルの踏み間違いをしないように注意しながら運転することができる。又、ブレーキとアクセルを踏み間違った場合は、表示ランプ点滅によって気付くことができるので、速やかに正常な運転に戻ることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、ブレーキとアクセルを踏み間違った場合は、警報によって気付くことができるので、速やかに正常な運転に戻ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】アクセル踏み間違い時の暴走防止装置を示す全体構成図。
【図2】2重構造のアクセルペダルの平面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】2重構造のアクセルペダルの操作状態を示す平面図。
【図5】図4のB−B断面図。
【図6】図4のC−C視図。
【図7】平行にスライドするアクセルペダルの平面図。
【図8】ECUによる暴走防止ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明を、自動車用アクセル踏み間違い時の暴走防止装置に具体化した一実施形態を図1〜図8によって説明する。
【0022】
図1に示すように、自動車1に搭載されたエンジン2の出力は、自動変速機4の変速段に応じて変速された後に、図示しないデファレンシャルギヤを介して駆動輪3に伝達される。エンジン2の吸気通路上には、吸気量を調節するスロットルバルブ5が設けられている。スロットルバルブ5はスロットルモータ6によってスロットルバルブ開度が調節される。自動車1の運転室7には、運転者の操作によって選択されるシフト位置を検出するシフト位置検出手段8と、2重構造で上側のペダルが回転軸を中心にこれから離れた位置が横方向に回転又は、平行にスライドできるアクセルペダル9を設ける。アクセルペダル9とアクセルロッド10とアクセル状態検出手段(以下、アクセルセンサーという)11を連結して設け、アクセルペダル9の操作状態と踏込み有無、踏込み速度、踏込み量を検出する。更に、アクセルペダル9には、ペダルのスライド位置検出手段として、後述するペダルスイッチ19を設ける。また、運転室7には、急な登坂路での発進又は悪路での段差乗越え時は、すばやいアクセルの操作をして走行できるようにする為、スロットルバルブ全閉固定解除用として解除スイッチ12を設ける。更に、運転室7には表示ランプ13を設け、アクセルの踏み間違いをしないよう注意喚起をするとともに、踏み間違いがあった場合は点灯から点滅に変わり運転者に知らせるようにする。更に、運転室7には、踏み間違いを報知する警報器14を設ける。
【0023】
又、自動車1にはエンジン2の運転制御を行う電子制御装置(以下、ECUという)15を設ける。スロットルモータ6、シフト位置検出手段8、アクセルセンサー11、解除スイッチ12、表示ランプ13、警報器14、ペダルスイッチ19は、ECU15に電気的に接続し検出信号および電気信号の入力と、ECU15から制御信号を出力する。ECU15は、燃料噴射制御、点火時期制御、スロットル制御等の公知の各種運転制御を行う。
【0024】
次に、スライド位置検出手段を有するアクセルペダル9について詳述する。
【0025】
図2、図3に示すように、アクセルペダル9はペダル上16とペダル下21を重ね合わせて、ペダル上16を上方に持ち上げる為のバネ30とペダル上16を左に回転させるリターンバネ31を組み込み座金32とネジ33で固定し構成する。ペダル上16、ペダル下21は、本一実施形態ではプラスチック成型品としているが、アルミ合金等の金型鋳造又は切削加工によってもよい。ペダル上16にはX点を中心にして横方向に回転できるよう回転軸17を設け又、右側(図2のY方向)に回転したときスライド操作が完了した位置に固定できるようにする為ストッパー18を設ける。又、ペダル上16には回転の範囲を制限し同時に電気接点a34を設ける為のペダルスイッチ19を設け、更にペダル上16の右辺にストッパー18と同じ高さの上鍔20を設けペダル上16からペダル下21に踏み力が伝わるようにする。ペダル上16と回転軸17、ストッパー18、ペダルスイッチ19、上鍔20は一体物として構成する。尚、アクセルペダル9の大きさは、操作する足のサイズの半分程度が好ましい。
【0026】
ペダル下21は、回転軸17を嵌め込む為の軸穴22とバネ用凹部23を形成するように部分的に厚くする。更にペダル下21には、ストッパー18と嵌め合う為の貫通したストッパー用穴24とリターンバネ31を取り付ける為のポケット25とリターンバネ用軸26を設ける。ペダル下21に設けた四角穴27はごみや小石等が溜まるのを防ぐ為に貫通してある。又、図2において四角穴27の右淵に沿ってポケット25と同じ高さの鍔28を設け、更にペダル下21の左辺には、下鍔29を設ける。下鍔29の高さの寸法はストッパー18の高さの寸法と同じとしてペダル上16からペダル下21に踏み力が伝わるようにする。ペダル下21、軸穴22、バネ用凹部23、ストッパー用穴24、ポケット25、リターンバネ用軸26、四角穴27、鍔28、下鍔29は一体物として構成する。尚、ペダル下21は、図示しない金具、ネジによってアクセルロッド10に固定される。
【0027】
ペダル上16が右側に回転したとき(図2のY方向)、ペダルスイッチ19に設けた電気接点a34と鍔28の接触位置に電気接点b35を設ける。以上のように、スライド位置検出手段は、ペダルスイッチ19と電気接点a34と電気接点b35によって検出スイッチとして構成され、ペダル上16のスライド位置を電気接点a34と電気接点b35の接触(接点のON)によって検出する。電気接点a34と電気接点b35は、夫々図示しない電線によってECU15に接続される。
【0028】
次に、アクセルペダル9の通常の操作について、図4、図5、図6によって説明する。図4はペダル上16に足をのせて軽く右に回転しスライドさせた状態でありストッパー18は、ストッパー用穴24と位置が一致する。図5に示すようにペダル上16は足で押されているので、バネ30が圧縮されてストッパー18は、ストッパー用穴24に嵌った状態になる。従って、ペダル上16は足がのっている状態では、ストッパー18の移動は固定されるので、図4の状態から左に戻ることはない。また、図4に示すようにペダルスイッチ19も右に回転し電気接点a34と電気接点b35が接触してONとなる。尚、図6のようにこの時上鍔20、下鍔29はペダル上16とペダル下21の接触面から外れて、踏み力が伝わるのを妨げないようにする。
【0029】
ペダル上16から足を離すと、バネ30が復元してペダル上16は押し上げられ、ストッパー用穴24からストッパー18が外れる。そうするとリターンバネ31の復元でペダル上16は図2の状態に戻され、同時にペダルスイッチ19がOFFになる。
【0030】
急な登坂路での発進あるいは悪路での段差の乗越え等で、すばやいアクセルペダル9の操作をするときは、解除スイッチ12をONにして図2の状態でペダル上16を踏めば操作状態はストッパー18、上鍔20、下鍔29を介してペダル下21に伝わりアクセルロッド10に作用させることができる。
【0031】
ペダル上は、図7に示すように横方向(Z方向)に平行にスライドさせても良い。この場合、ペダル上と一体の移動軸36は角形にして、ペダル下の長方形のスライド穴37に沿って移動するようにする。ペダル下とペダル上の間には、板バネ38を設け前記のバネ30と同じ機能を有するようにする。又、本一実施形態は、右側に回転あるいは平行スライドする方法であるが、アクセルペダル9を図2あるいは図7と対称形にして、左側に回転あるいは平行スライドする方法でも良い。
【0032】
次に、アクセルの正常操作時及び誤操作時の処理について、図8のフローチャートに従って説明する。
【0033】
運転者によって選択されるシフト位置は、シフト位置検出手段8によって検出されてその信号は、ステップ(以下Sと略記する)101でECU15に常時入力される。次に、S102でシフト位置が前進又は後退であるか否かを判断し、前進又は後退である場合は(YES)、S103に進んで表示ランプ13を点灯し踏み間違いをしないよう注意喚起する。
次に、S104で解除スイッチ12がONに操作されたか否かを判断する。ONに操作されていないときは(NO)、S105に進んでペダル上16が横方向に回転してスライド又は、平行スライドしてペダルスイッチ19がONになったかを判断する。S105でONでない場合は(NO)、S106でアクセルセンサー11からの信号でアクセル踏込み速度が所定値のVsをオーバしたか否かを判断する。アクセルの踏み間違いの場合は急踏込みがなされることから、本一実施形態ではVsを2cm/秒としている。S106で否と判断された場合は(NO)、S107に進み踏込み量が所定量Waをオーバしたか否かを判断する。踏み間違いにおいては最大量まで踏込む所謂ベタ踏み状態までアクセルペダルを踏んでしまう事が多い為この直前の状態をWaとしている。Waが所定量より大きくなった場合は(YES)、S108に進む。尚、Waは踏まれていないアクセルペダル位置からベタ踏みの直前までの距離としているが、本一実施形態では直前の位置を0.3cmとしてWaを5cmとしている。また、Waの代わりにベタ踏み検出センサーを用いても良い。また、S106でアクセルの踏み込み速度がVsより大きい場合は(YES)踏み間違いと判断されS108に進む。
【0034】
S106又はS107で肯定判断された場合は(YES)、S108でスロットルモータ6を制御してスロットルバルブ5の開度を全閉に固定して、エンジンの出力をアイドリング状態に制限する。次に、S109でECU15からの信号により表示ランプ13を点灯から点滅に変えると同時に警報器14により警報を発し運転者に報知する。次にS110でアクセルがフリーであるか否かを判断する。ここで、アクセルがフリーとは、アクセルペダル9から足を離して踏込みが無い状態のことである。S110でアクセルがフリーでないときは(NO)、スロットルバルブ全閉固定のS108に戻り、S108とS109の状態を維持する。運転者が踏み間違いに気がついてアクセルペダル9から足を離すとS110でアクセルがフリーとなり(YES)、S111に進む。S111でスロットルバルブ全閉固定を解除し次にS112で警報器14の警報を停止して、シフト位置が前進又は後退であるか否かを判断するS102に戻る。
【0035】
S106およびS107で否と判断された場合は(NO)、アクセルの踏み間違いではないので、シフト位置が前進又は後退であるか否かを判断するS102に戻り、このルーチンを維持し自動車の走行をする。
【0036】
S105でペダルスイッチ19がONのとき(YES)、つまり運転者がペダル上16に軽く足をのせて図2のY方向に回転させたとき、あるいは図7のZ方向にスライドさせたときは、S113に進みスロットルバルブ全閉固定を解除しS114で表示ランプ13を消灯する。次にS115でアクセルがフリーでないときは(NO)、アクセルペダル9に足がのせてあり通常のアクセル操作であるので、S113に戻ってこの状態を維持する。
【0037】
S115でアクセルペダル9から足を離すとアクセルがフリーとなり(YES)、シフト位置が前進又は後退であるか否かを判断するS102に戻る。又、ペダル上16は図2あるいは図7の状態になる。
【0038】
尚、S102でシフト位置が前進又は後退でないときは(NO)、このルーチンを終了する。
【0039】
又、急な登坂路での発進あるいは悪路での段差の乗越え等の場合は、アクセルをすばやく急踏込みあるいは強踏込みの操作が必要でありこの場合は、S104で解除スイッチ12をONにして(YES)、S116に進む。S116でスロットルバルブ全閉固定を解除して、ペダル上16を図2のY方向に回転しないで、あるいは図7のZ方向にスライドさせないで急踏込みあるいは強踏込みのアクセル操作が出来るようにする。続いて、S117で表示ランプ13を点滅させて、慎重に運転するように注意喚起する。S118で運転者が解除スイッチ12をOFFにしないときは(NO)、S116に戻ってこの状態を維持する。
【0040】
S118で運転者が解除スイッチ12をOFFにしたときは(YES)、S119で表示ランプ13を点灯して、ペダルスイッチ19がONであるか否かを判断するS105に進む。
【0041】
次に、詳述した本一実施形態が有する作用、効果を以下列記する。
【0042】
(1)シフト位置が前進又は後退に選択されると、表示ランプ13が点灯して運転者はブレーキとアクセルの操作をより注意して行うことになるので、踏み間違いを起こしにくくなる。
【0043】
(2)通常走行時は、アクセルの操作をペダル上16に軽く足をのせて回転あるいは平行にスライドさせから行うことになるので、踏み間違いはしないようになる。又、スライド操作が行われれば、ペダルスイッチ19がONになってスロットルバルブ5の全閉固定を解除するので、この場合は急踏込みまたは強踏込みを行ってもエンジンの出力を制限しないので、通常の運転での急加速や、高速道路への進入、追い越し運転、信号等での右折での急加速、登坂路での走行等ができる。
【0044】
(3)前進あるいは後退で発進時ブレーキを踏むつもりで、誤ってアクセルを急踏込みまたは強踏込みした場合は、ペダルスイッチ19がONになっていないので、スロットルバルブ5を全閉に固定し、エンジン2の出力を制限するので、暴走を防止することができる。
【0045】
(4)走行中ブレーキを踏む場合は、一旦アクセルから足を離しブレーキに移動して踏むという動作となり、ペダル上16は元に戻りペダルスイッチ19がOFFになるので、このとき間違ってアクセルを踏めば、急踏込みまたは強踏込みに対してスロットルバルブ5を全閉に固定し、エンジン2の出力を制限するので、暴走を防止することができる。
【0046】
(5)駐停車時ブレーキを踏む場合は、アクセルから足が離れておりペダルスイッチ19がOFFなので、このとき間違ってアクセルを踏めば、急踏込みまたは強踏込みに対してスロットルバルブ5を全閉に固定し、エンジン2の出力を制限するので、暴走を防止することができる。
【0047】
(6)アクセルの踏み間違いは、急踏み込みの場合と強踏込みによる最大位置まで踏み込む場合のケースがあるので、踏込み速度及び踏込み量を判断することによって、いずれかの場合でもスロットルバルブ5を全閉に固定し、エンジン2の出力を制限するので暴走を防止することができる。
【0048】
(7)ペダルのスライド操作を忘れたときあるいはスライド操作をしないときは、ペダルスイッチ19がOFFであるが、この場合でもアクセルの急踏込みまたは強踏込みでない操作であれば、スロットルバルブ5の全閉固定をしないで、動力機関の出力調節をすることができる。従って通常の運転ができ又、渋滞あるいは信号の多い場所でブレーキとアクセルの踏み替えを頻繁に行っても、運転者の負担を増すことはない。
【0049】
(8)急な登坂路での発進あるいは悪路での段差乗越え時は、ブレーキから急いでアクセルに足を移して操作する必要があり、この場合は解除スイッチ12をONにして、スロットルバルブ5の全閉固定を解除して、ペダルのスライド操作をしないで急踏込みまたは強踏込みをして走行ができる。又、表示ランプ13を点滅に変えて、運転者に対して注意喚起をするので誤操作を防ぐことができる。
【0050】
次に、前記一実施形態以外の実施形態を列記する。
【0051】
前記一実施形態において、電子制御式燃料噴射装置を有する自動車の場合は、S108でスロットルバルブ全閉固定の代わりに噴射量制限の電気信号を送り、S111、S113、S116でスロットルバルブ全閉固定解除の代わりに噴射量制限解除の電気信号を送ってエンジンの出力制御を行うようにしてもよい。これによっても、前記一実施形態の(1)から(8)の各効果が得られる。
【0052】
前記一実施形態において、スロットルバルブを鋼索等で機械的に調節するワイヤー式スロットルの自動車の場合は、S108でスロットルバルブ全閉固定の代わりに、イグニッション電源回路を遮断してエンジンを止め、S109で表示ランプ点滅及び警報を実行して、図8のルーチンを終了するようにしてもよい。これによっても、前記一実施形態の(1)から(8)の各効果が得られる。
【0053】
前記一実施形態において、ブレーキシステムが電子制御装置を有するブレーキ・バイ・ワイヤー式の自動車の場合は、S108でスロットルバルブ全閉固定と同時にブレーキ作動の電気信号を送り、S111、S113、S116でスロットルバルブ全閉固定解除と同時にブレーキ作動解除の電気信号を送って、自動車の運転をするようにしてもよい。これによって、ブレーキとアクセルの踏み間違い時は、自動車の制動ができることとおよび前記一実施形態の(1)から(8)の各効果が得られる。
【0054】
前記一実施形態において、ハイブリッド車や電気自動車の場合は、S108でスロットルバルブ全閉固定の代わりに回生ブレーキを作動させる電気信号を送り、S111、S113、S116でスロットルバルブ全閉固定解除の代わりに回生ブレーキ作動解除の電気信号を送って、自動車の運転をするようにしてもよい。これによって、走行中の踏み間違いのときはエネルギーの回収ができること、自動車の制動ができることおよび前記一実施形態の(1)から(8)の各効果が得られる。
【符号の説明】
【0055】
1 自動車
2 エンジン
3 駆動輪
4 自動変速機
5 スロットルバルブ
6 スロットルモータ
7 運転室
8 シフト位置検出手段
9 アクセルペダル
10 アクセルロッド
11 アクセル状態検出手段(アクセルセンサー)
12 解除スイッチ
13 表示ランプ
14 警報器
15 電子制御装置(ECU)
16 ペダル上
17 回転軸
18 ストッパー
19 ペダルスイッチ
20 上鍔
21 ペダル下
22 軸穴
23 バネ用凹部
24 ストッパー用穴
25 ポケット
26 リターンバネ用軸
27 四角穴
28 鍔
29 下鍔
30 バネ
31 リターンバネ
32 座金
33 ネジ
34 電気接点a
35 電気接点b
36 移動軸
37 スライド穴
38 板バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって選択された変速機のシフト位置を検出するシフト位置検出手段と、スライド可能なアクセルペダルのスライド位置を検出するスライド位置検出手段と、アクセルペダルの踏込み状態量を検出するアクセル状態検出手段と、前記シフト位置検出手段によるシフト位置が前進又は後退で且つ、前記スライド位置検出手段によるアクセルペダルの位置がスライド前の位置で且つ、前記アクセル状態検出手段によるアクセルペダルの踏込み状態量が所定値を超えたとき、自動車の走行を制限する運転制御手段を有することを特徴とする自動車用アクセル踏み間違い時の暴走防止装置。
【請求項2】
請求項1において、前記スライド位置検出手段によるアクセルペダルのスライド後の位置が、左右いずれか一方の位置のときは、前記運転制御手段を解除することを特徴とする自動車用アクセル踏み間違い時の暴走防止装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、運転者に表示する表示ランプをさらに備え前記シフト位置検出手段がシフト位置の前進又は後退を検出した場合は、表示ランプが点灯すること、及び前記運転制御手段が作動した時は表示ランプが点滅することを特徴とする自動車用アクセル踏み間違い時の暴走防止装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、運転者に報知する警報器をさらに備え前記運転制御手段が作動した時は、警報を発することを特徴とする自動車用アクセル踏み間違い時の暴走防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−121539(P2012−121539A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293866(P2010−293866)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(510043490)
【Fターム(参考)】