説明

自動車用ドアトリム

【課題】 軽量性、剛性、断熱性、外観に優れ、かつ側突から乗員を保護する衝突エネルギー吸収性を有し、安価に製造でき、リサイクル性に優れた自動車ドアトリムを提供すること。
【解決手段】 自動車の側壁部ドア内側に装着されるドアトリムにおいて、該ドアトリムが熱可塑性樹脂の射出発泡成形体であり、発泡層と該発泡層の表面に形成される非発泡層からなる基材と、該基材の内側に一体成形された側突緩衝材とから構成されることを特徴とする自動車用ドアトリム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の側壁部ドア内側に装着されるドアトリムに関する。詳しくは、自動車側部からの衝撃から乗員を保護するための側突緩衝材がドアトリム基材と一体成形された側突対応自動車用ドアトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドアトリムは、装飾性と乗員の保護およびドアや窓ガラスの開閉操作を行うアームレスト、ハンドル、ボタンスイッチなどを取り付けることを目的に、自動車内の側壁部ドアに装着される自動車部品のひとつである。近年、省エネルギー、省資源の観点から自動車部品の軽量化が要求されている。とくに、自動車部品の中では大型の製品であり、複数使用されているため高重量となり、一層の軽量化が要求される。それ自身の形状保持やドアパネル等への取り付け時に変形しないように、十分な実用上の剛性も必要である。さらに、車室内の快適性を求めるために断熱性も要求されることがある。装飾性という点からは、外観に優れていることも必要である。
【0003】
一方、最近では自動車事故等により自動車側部からの衝突、すなわち側突から乗員を保護する必要性が高まってきている。これに対応するため、例えば、ドアトリム基材の内側、乗員の腰部または胸部に相当する位置に衝突エネルギー吸収性にすぐれた発泡ウレタン等からなる側突緩衝材を取り付けることが行われている(例えば、特許文献1)。
【0004】
上記軽量性に優れたドアトリム基材としては、高発泡モールド成形体(特許文献2)、樹脂ビーズ発泡成形体(例えば、特許文献3)などからなるドアトリムが提案されている。これらは発泡成形体から構成されているため、従来の非発泡樹脂成形体に比べて軽量で断熱性に優れる。しかし、これらは高発泡成形体からなる芯材(基材)、発泡シートからなる緩衝パッド材、外観にすぐれた表皮材を積層貼着して製造されるものであり、これら部材は予め別途作製しておく必要があり、製造コストが嵩む。
【0005】
また、軽量性、剛性、断熱性、外観に優れたドアトリムとして、ポリプロピレン系樹脂の射出発泡成形体を使用したドアトリムが提案されている(例えば特許文献4)。この方法によれば、表皮材、基材を別途作製しておく必要が無い。しかし、側突緩衝材は予め別工程で作製し、後工程でドアトリム基材の内側に接着剤等で貼り付ける必要があり、やはり作製コストが嵩むという問題があった。
【0006】
このような課題に対して、軽量化された基材と側突緩衝材を一体成形されたドアトリムも提案されている(例えば、特許文献5〜7)。しかし、これらは基材および側突緩衝材のいずれも硬質ウレタン発泡体からなるものであり、その原料は高価で均一発泡が難しく不良率が高いため得られた製品は高価となり、リサイクル性に問題があった。
【0007】
以上のように、軽量性、剛性、断熱性、外観に優れ、かつ作製工程を簡略化することにより安価に製造でき、リサイクル性に優れた側突対応自動車ドアトリムを得ることは困難であった。
【特許文献1】特開平3−28020号公報
【特許文献2】特開平4−169346号公報
【特許文献3】特開平5−229024号公報
【特許文献4】特開平11−179752号公報
【特許文献5】特開平6−191277号公報
【特許文献6】特開平6−191278号公報
【特許文献7】特開平6−270683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、軽量性、剛性、断熱性、外観に優れ、かつ作製工程を簡略化することにより安価に製造でき、リサイクル性に優れた自動車ドアトリムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、先に高発泡倍率の射出発泡成形を適用することにより、軽量性、剛性、断熱性、外観に優れた自動車用ドアトリムが得られることを見出した。今回さらに、該ドアトリム基材の内側に衝突エネルギー吸収性にすぐれた側突緩衝材を一体成形することにより、側突対応自動車用ドアトリムを安価に製造できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち本発明は、自動車の側壁部ドア内側に装着されるドアトリムにおいて、該ドアトリムが熱可塑性樹脂の射出発泡成形体であり、発泡層と該発泡層の表面に形成される非発泡層からなる基材と、該基材の内側に一体成形された側突緩衝材とから構成されることを特徴とする自動車用ドアトリムに関する。
【0011】
好ましい態様としては、
(1)前記基材の発泡倍率が2倍以上5倍以下であり、かつ発泡層の平均気泡径が500μm以下、非発泡層が厚み10μm以上1000μm以下であること、
(2)前記側突緩衝材の発泡倍率が6倍以上20倍以下であり、かつ発泡層の気泡の扁平率が2以上であること、
(3)前記熱可塑性樹脂が、メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分以下、メルトテンションが2cN以上で、かつ歪硬化性を示すポリプロピレン系樹脂からなること、
を特徴とする前記記載の自動車用ドアトリムに関する。
【0012】
本発明の第2は、発泡剤を含んでなる熱可塑性樹脂組成物の溶融物を、固定型と前進および後退が可能な可動型とから構成される金型内に射出充填し、次いで可動型を後退させて前記熱可塑性樹脂を発泡させることにより基材を成形する工程と、次いで固定型或いは可動型の少なくとも一方の側突緩衝材を取り付ける位置に設置した摺動可能なスライド型を後退させて前記基材より高発泡させた側突緩衝材を前記基材と一体成形する工程とからなる前記記載の自動車用ドアトリムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、軽量性、剛性、断熱性、外観に優れ、かつ側突から乗員を保護する衝突エネルギー吸収性を有し、かつリサイクル性に優れた自動車用ドアトリムを、工程数を低減して、提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の自動車用ドアトリムは、自動車の側壁部ドア内側に装着されるドアトリムにおいて、該ドアトリムが熱可塑性樹脂の射出発泡成形体であり、発泡層と該発泡層の表面に形成される非発泡層からなる基材と、該基材の内側に一体成形された側突緩衝材とから構成されることを特徴とする。
【0015】
前記基材の発泡層の平均気泡径は、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下であり、非発泡層の厚みは好ましくは10μm以上1000μm以下、さらに好ましくは100μm以上500μm以下である。発泡層の平均気泡径が500μmを越える場合は優れた剛性が得られない場合がある。非発泡層の厚みが10μm未満では優れた表面外観が得られず、剛性も低下する傾向があり、1000μmを越える場合は軽量性が得られにくい恐れがある。
【0016】
また、前記基材の発泡倍率は、好ましくは2倍以上5倍以下、更に好ましくは3倍以上4倍以下である。発泡倍率が2倍未満では十分な軽量性、断熱性が得られにくく、5倍を越える場合には剛性の低下が著しくなる傾向がある。ここでいう発泡倍率は、発泡剤を添加しない以外は発泡成形体と同条件で射出成形した非発泡成形体との比重の比から得られた値である。
【0017】
前記側突緩衝材の発泡倍率は、好ましくは6倍以上20倍以下であり、さらに好ましくは8倍以上15倍以下である。発泡倍率が6倍未満または20倍を超える場合には、十分なエネルギー吸収性が得られにくくなる傾向がある。
【0018】
また、前記側突緩衝材の発泡層の気泡の扁平率は好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。該扁平率が2未満の場合は十分なエネルギー吸収性が得られにくくなる傾向がある。ここでいう扁平率とは、気泡の長径を短径で除した値である。具体的には、側突緩衝材の断面写真の同一視野内からランダムに10個の気泡を選んで扁平率を計算し、平均値を求めることができる。
【0019】
本発明の自動車用ドアトリムの製造方法は、例えば、発泡剤を含んでなる熱可塑性樹脂組成物の溶融物を、固定型と前進および後退が可能な可動型とから構成される金型内に射出充填し、次いで可動型を後退させて前記熱可塑性樹脂を発泡させることにより基材を成形する工程と、次いで固定型或いは可動型の少なくとも一方の側突緩衝材を取り付ける位置に設置した摺動可能なスライド型を後退させて前記基材より高発泡させた側突衝突材を前記基材と一体成形する工程とからなる方法によって製造される。ここで、スライド型を後退させる方法としては、例えば油圧シリンダーを用いる方法がある。
【0020】
発泡剤を含んでなる熱可塑性樹脂組成物の溶融物を金型内に射出充填する場合、シルバーストリークあるいはスワールマークの発生による外観の低下を防止する目的で公知の方法が適用できる。例えば、金型キャビティクリアランスを発泡前の成形体厚みよりも小さい状態で射出充填したり、射出充填する前に予め金型内を0.1〜10MPaの不活性ガス等加圧流体(例えば空気、窒素、炭酸ガス等)で満たしておいてもよい。これらのうちでは、後者の方法がより外観に優れた成形体が得られる点で好ましい。
【0021】
次に、前記基材を成形する工程においては、前記熱可塑性樹脂の溶融物を金型キャビティに射出充填後、可動型を後退させて前記熱可塑性樹脂を発泡させるまでのタイミングは、射出充填直後でもよいし、射出充填直後に遅延時間を設けてもよい。さらに、可動型を後退させる場合においても、一段階で行っても良いし、二段階以上で速度を変えても良いし、途中に適宜遅延時間を設けて行っても良い。
【0022】
また、前記側突緩衝材を成形する工程において、前記固定型或いは可動型の少なくとも一方の側突緩衝材を取り付ける位置に設置した摺動可能なスライド型を後退させるタイミングは、前記基材成形と同時でも良いし、適宜遅延時間を設けて順次行っても良い。
【0023】
その他の成形条件は、使用する熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)、発泡剤の種類、成形機の種類あるいは金型の形状によって適宜調整すればよい。例えば、ポリプロピレン系樹脂を使用する場合は、通常、樹脂温度170〜250℃、金型温度10〜100℃、成形サイクル1〜60分、射出速度10〜300mm/秒、射出圧力10〜100MPa等の条件で行われる。
【0024】
本発明で使用できる発泡剤は、化学発泡剤、物理発泡剤など射出発泡成形に通常使用できるものであればとくに制限はない。化学発泡剤は、前記熱可塑性樹脂と予め混合してから射出成形機に供給され、シリンダー内で分解して炭酸ガス等の気体を発生するものである。化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタテトラミン等の有機系化学発泡剤があげられる。物理発泡剤は、成形機のシリンダー内の溶融樹脂にガス状または超臨界流体として注入され、分散または溶解されるもので、金型内に射出後、圧力開放されることによって発泡剤として機能する物である。物理発泡剤としては、プロパン、ブタン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素類、クロロジフルオロメタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、窒素、炭酸ガス、空気等の無機ガスがあげられる。これらは単独または2種以上混合して使用してよい。
【0025】
これらの発泡剤の中では、通常の射出成形機が安全に使用でき、均一微細な気泡が得られやすいものとして、化学発泡剤としては無機系化学発泡剤、物理発泡剤としては窒素、炭酸ガス、空気等の無機ガスが好ましい。これらの発泡剤には、発泡成形体の気泡を安定的に均一微細にするために必要に応じて、例えばクエン酸のような有機酸等の発泡助剤やタルク、炭酸リチウムのような無機微粒子等の造核剤を添加してもよい。通常、上記無機系化学発泡剤は取扱性、貯蔵安定性、前記熱可塑性樹脂への分散性の点から、10〜50重量%濃度の前記熱可塑性樹脂と同じ種類の樹脂を用いたマスターバッチとして使用されるのが好ましい。
【0026】
上記発泡剤の使用量は、前記熱可塑性樹脂の種類、最終製品の発泡倍率、発泡剤の種類や成形時の樹脂温度によって適宜設定すればよい。例えば、通常、無機系化学発泡剤の場合は、熱可塑性樹脂100重量部に対して好ましくは、0.1重量部以上20重量部以下、更に好ましくは0.5重量部以上10重量部以下の範囲で使用される。この範囲で使用することにより、経済的に発泡倍率が2倍以上、且つ均一微細気泡の発泡成形体が得られやすい。
【0027】
さらに必要に応じて、前記熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を併用してもよい。必要に応じて用いられるこれらの添加剤は、成形性や発泡性等を損なわない範囲で使用されるのはもちろんであるが、一般に前記熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上10重量部以下の範囲で使用される。
【0028】
前記熱可塑性樹脂としては、公知のものが使用でき、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂等があげられる。これらは複数組み合わせることもできる。これらの中では、軽量性、リサイクル性、成形性と物性のバランスに優れたポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂を使用する場合、成形性と発泡性を両立するために、好ましくはメルトフローレートが10g/10分以上100g/10分以下、さらに好ましくは20g/10分以上90g/10分以下であり、メルトテンションが好ましくは2cN以上、さらに好ましくは3cN以上で、かつ歪硬化性を示すことが好ましい。
【0030】
ここで、メルトフローレートとは、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したものを言い、メルトテンションとは、メルトテンション測定用アタッチメントを付けたキャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用して、230℃でφ1mm、長さ10mmの孔を有するダイスから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを1m/分で引き取り、安定後に40m/分で引き取り速度を増加させたとき、破断したときのロードセル付きプーリーの引き取り荷重を言う。
【0031】
ここでいう歪硬化性は、溶融物の延伸歪みの増加に伴い粘度が上昇することとして定義され、例えば特開昭62−121704号公報に記載の方法、すなわち市販のレオメーターにより測定した伸長粘度と時間の関係をプロットすることで判定することができる。また、メルトテンション測定時の溶融ストランドの破断挙動からも歪硬化性を判定できる。すなわち、引き取り速度を増加させたときに急激にメルトテンションが増加し、切断に至るときは歪硬化性を示す場合である。
【0032】
前記メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分以下の範囲であると、ドアトリムのような大型の射出発泡成形体を製造する際に、金型キャビティのクリアランスが1〜2mm程度の薄肉部分を有する成形においてもショートショットになりにくく、連続して安定した成形が行いやすい。
【0033】
前記メルトテンションが2cN以上で、かつ歪硬化性を示す場合には、2倍以上の均一微細な気泡の発泡成形体が得られ、射出成形時の溶融樹脂流動先端部で破泡しやすくなることによっておこるシルバーストリークあるいはスワールマークも出にくくなるので表面外観に優れた発泡成形体が得られる傾向にあるので好ましい。
【0034】
このようなポリプロピレン系樹脂は、例えば線状ポリプロピレン系樹脂に放射線を照射するか、または線状ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合開始剤、共役ジエン化合物を溶融混合するなどの方法により得られる分岐構造あるいは高分子量成分を含有する改質ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。これらの中では、線状ポリプロピレン樹脂、ラジカル重合開始剤および共役ジエン化合物を溶融混合して得られる改質ポリプロピレン系樹脂が、高価な設備を必要としない点から安価に製造できる点から好ましい。
【0035】
前記線状ポリプロピレン系樹脂は、線状の分子構造を有しているポリプロピレン系樹脂であり、通常の重合方法、例えば担体に担持させた遷移金属化合物と有機金属化合物から得られる触媒系(例えば、チーグラー・ナッタ触媒)の存在下の重合で得られる。具体的には、プロピレンの単独重合体、ブロック共重合体およびランダム共重合体であって、結晶性の重合体があげられる。プロピレンの共重合体としては、プロピレンを75重量%以上含有しているものが、ポリプロピレン系樹脂の特徴である結晶性、剛性、耐薬品性などが保持されている点で好ましい。共重合可能なα−オレフィンは、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2または4〜12のα−オレフィン、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられる。これらのうち、エチレン、1−ブテンが耐寒脆性向上、安価等という点で好ましい。
【0036】
前記共役ジエン化合物としては例えばブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエンなどがあげられるが、これらを単独または組み合わせ使用してもよい。これらの中では、ブタジエン、イソプレンが安価で取り扱いやすく、反応が均一に進みやすい点からとくに好ましい。
【0037】
前記共役ジエン化合物の添加量としては、線状ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、20重量部以下が好ましく、0.05重量部以上、5重量部以下がさらに好ましい。0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また20重量部を越える添加量においては効果が飽和してしまい、経済的でない場合がある。
【0038】
前記共役ジエン化合物と共重合可能な単量体、たとえば塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルなどのメタクリル酸エステルなどを併用してもよい。
【0039】
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物、アゾ化合物などが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂や前記共役ジエン化合物からの水素引き抜き能を有するものが好ましく、一般にケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルなどの有機過酸化物が挙げられる。これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシンなどのジアルキルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上が挙げられる。
【0040】
ラジカル重合開始剤の添加量としては、線状ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下が好ましく、0.05重量部以上2重量部以下がさらに好ましい。0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また10重量部を越える添加量では、改質の効果が飽和してしまい経済的でない場合がある。
【0041】
線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、およびラジカル重合開始剤を反応させるための装置としては、ロール、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型撹拌機、ダブルヘリカルリボン撹拌機などの縦型撹拌機、などが挙げられる。これらのうち、混練機を使用することが好ましく、とくに押出機が生産性の点から好ましい。
【0042】
線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、およびラジカル重合開始剤を混合、混練(撹拌)する順序、方法にはとくに制限はない。線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、およびラジカル重合開始剤を混合したのち溶融混練(撹拌)してもよいし、ポリプロピレン系樹脂を溶融混練(撹拌)したのち、共役ジエン化合物あるいはラジカル開始剤を同時にあるいは別々に、一括してあるいは分割して混合してもよい。混練(撹拌)機の温度は130〜300℃が、線状ポリプロピレン系樹脂が溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。またその時間は一般に1〜60分が好ましい。
【0043】
このようにして、本発明に用いるのに好適なポリプロピレン系樹脂を製造することができる。該ポリプロピレン系樹脂の形状、大きさに制限はなく、ペレット状でもよい。
【0044】
また、前記ポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記線状ポリプロピレン系樹脂と同じものを混合することができる。混合方法は特に限定はなく、公知の方法で行うことが出来、例えば、ペレット状の樹脂をブレンダー、ミキサー等を用いてドライブレンドする、溶融混合する、溶剤に熔解して混合する等の方法が挙げられる。本発明においてはドライブレンドした上で射出発泡成形に供する方法が、熱履歴が少なくて済み、メルトテンションの低下が少なくなる為、好ましい。
【実施例】
【0045】
次に、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の自動車用ドアトリムの一例を示した斜視図である。また、図2は、図1のA−A’線断面図および基材のB部分、側突緩衝材5のC部分の拡大図、図3は本発明のドアトリムを使用したドアの断面図、図4は自動車内に設置した一例である。
【0046】
本発明の自動車用ドアトリム1は、自動車の側壁部ドア内側に装着されるものである。通常は、乗員の肘があたる場所を凹ませており、これによりアームレスト2が形成されている。このアームレスト2には、窓ガラスの開閉操作を行うボタンスイッチなどを取り付けることが多い。また、ドアトリム上方にはドア開閉操作のためのインサイドハンドル用開口部4がある。フロント側のドアトリム下方にはスピーカーを取り付けるためのスピーカーグリル3を備える場合がある。必要に応じて、アームレスト2周辺には、装飾のため不織布やソフトレザー等を貼り付けてもよい。さらに部分的または全面を塗装してもよい。
【0047】
本発明のドアトリム1は、熱可塑性樹脂の射出発泡成形体からなることを特徴とする。図1のA−A’線断面図である図2の基材B部分の拡大図6および側突緩衝材5のC部分の拡大図9は、該ドアトリム1が発泡層と、該発泡層の表面に形成される非発泡層とを有する、熱可塑性樹脂の射出発泡成形体であることを示している。さらに、本発明の側突緩衝材5は基材と一体成形されており、拡大図9から側突緩衝材5の気泡が、側突時の衝撃エネルギーが加わる方向、すなわちドアトリム1の面に垂直な方向に引き伸ばされている扁平構造を有していることがわかる。
【0048】
図3は本発明のドアトリム1の使用例である。図3において、12は自動車用ドアで、このドア12は、ドアアウターパネル13、ドアインナーパネル14、ドアトリム1、ドアガラス15を基本構成としている。板金製のドアアウターパネル13とドアインナーパネル14とを最中状に接合され、その上部にはドアガラス15、ウェザーストリップ16が取り付けられている。ドアインナーパネル14の室内側の面に本発明のドアトリム1が装着されている。なお、ドア12にドアトリム1を装着させる方法については、とくに制限はなく、公知の方法を使用することができ、例えば複数のクリップを用いた方法などが用いられる。この場合、車室内に雨水等が浸入しないようにドアスクリーンフィルム等のシートをドアインナーパネル14とドアトリム1の間に介在させても良い。
【0049】
自動車室内に本発明のドアトリム1を使用したドア12(フロント側)を設置する場合、図4に例示するように、通常のドアを設置する場合と同様に取り付けることができる。本発明のドアトリム1は、発泡層と、該発泡層の表面に形成される非発泡層とを有する、熱可塑性樹脂からなる高発泡倍率の射出発泡成形体であることから、十分な軽量性と剛性を有しているので、車体重量の低減に貢献することができる。
【0050】
一方、本発明のドアトリム1は外観にも優れているので、インストールメントパネル22など他の内装部品との連続感、一体感を損なうことがない。必要に応じて、前記のように装飾のために不織布やソフトレザー等の表皮材を貼り付けてもよい。さらに部分的または全面を塗装してもよい。
【0051】
本発明のドアトリム1は発泡体であることから断熱性にもすぐれているが、このような不織布やソフトレザー等を貼り付けることによって、断熱性がさらに向上する場合がある。
【0052】
また、従来は別工程で作製していた側突緩衝材をドアトリム1基材の内側に一体成形することにより、側突対応自動車用ドアトリムを安価に製造できる。側突緩衝材は熱可塑性樹脂を原料としているので、発泡ウレタン等の熱硬化性樹脂によるものに比べてリサイクル性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明ドアトリムの一例を示した斜視図である。
【図2】図1のA−A’線断面図および基材のB部分、側突緩衝材のC部分の拡大図である。
【図3】本発明のドアトリムを用いた自動車ドアの一例である。
【図4】本発明ドアトリムの使用形態の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ドアトリム
2 アームレスト
3 スピーカーグリル
4 インサイドハンドル用開口部
5 一体成形された側突緩衝材
6 基材B部分の拡大図
7 基材の発泡層
8 基材の非発泡層
9 側突緩衝材C部分の拡大図
10 側突緩衝材の発泡層
11 側突緩衝材の非発泡層
12 ドア(フロント側)
13 ドアアウターパネル
14 ドアインナーパネル
15 ドアガラス
16 ウェザーストリップ
17 ドア(リヤ側)
18 シート
19 ルーフサイド・インナー・ガーニッシュ
20 センターピラー・ガーニッシュ
21 フロントピラー・ガーニッシュ
22 インストールメントパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の側壁部ドア内側に装着されるドアトリムにおいて、該ドアトリムが熱可塑性樹脂の射出発泡成形体であり、発泡層と該発泡層の表面に形成される非発泡層からなる基材と、該基材の内側に一体成形された側突緩衝材とから構成されることを特徴とする自動車用ドアトリム。
【請求項2】
前記基材の発泡倍率が2倍以上5倍以下であり、かつ発泡層の平均気泡径が500μm以下、非発泡層が厚み10μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ドアトリム。
【請求項3】
前記側突緩衝材の発泡倍率が6倍以上20倍以下であり、かつ発泡層の気泡の扁平率が2以上であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ドアトリム。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、メルトフローレートが10g/10分以上100g/10分以下、メルトテンションが2cN以上で、かつ歪硬化性を示すポリプロピレン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3何れか一項に記載の自動車用ドアトリム。
【請求項5】
発泡剤を含んでなる熱可塑性樹脂組成物の溶融物を、固定型と前進および後退が可能な可動型とから構成される金型内に射出充填し、次いで可動型を後退させて前記熱可塑性樹脂を発泡させることにより基材を成形する工程と、次いで固定型或いは可動型の少なくとも一方の側突緩衝材を取り付ける位置に設置した摺動可能なスライド型を後退させて前記基材より高発泡させた側突緩衝材を前記基材と一体成形する工程とからなる請求項1〜4何れか一項に記載の自動車用ドアトリムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−260416(P2008−260416A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104736(P2007−104736)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】