説明

自己形成光導波路の製造方法及びそれを備えた光デバイス

【課題】 PD等の光デバイスに対する厳密な位置合わせを必要とする光配線の位置ズレトレランスを上げ、より光結合効率の高い自己形成光導波路を簡易且つ安価に製造する方法、及びそのような自己形成光導波路を備えた光デバイスを提供する。
【解決手段】 光硬化性樹脂40に光5を照射することにより光5を透過させた部分を硬化させ、それによって光接続手段である光導波路を形成する自己形成光導波路3の製造方法において、レンズ35によって屈折させた光5を光硬化性樹脂40に照射することによって略テーパ形状の光接続手段である自己形成導波路3を形成することを特徴とするとし、光デバイスはそのような自己形成光導波路3を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己形成光導波路の製造方法及びそれを備えた光デバイスに関し、さらに詳しくは、VCSEL(面発光レーザ:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)やPD(Photo Diode)等の光デバイスと光接続するための光接続手段である自己形成光導波路の製造方法及びそれを備えた光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信技術の急速な発展によりネットワークでやり取りされる通信トラフィックは増大の一途を辿っている。それに伴い、コンピュータをはじめとする情報処理装置に搭載されている半導体素子の集積度も飛躍的に上昇している。そのため、これらの半導体素子を実装し、情報処理装置を構成する電子回路基板内の配線本数も半導体の集積度上昇に比例し増加している。しかし、従来の電気配線では、配線の高密度化が進むとクロストークや輻射等のボトルネックが浮き彫りになっていた。
【0003】
このような電気配線における問題を解決する手段として、光信号を用いる光配線技術の導入がある。光信号は相互干渉が非常に少なく、配線密度が上がっても配線同士の干渉によるノイズが少ないため、高品質で大容量の情報伝送に適している。基板内における配線は、基板上に実装したVCSEL等の光源(発光素子)と、PDなどの光検出器(受光素子)、光伝達手段である光導波路からなる。光源から出射した光信号は光導波路を伝わって伝送され光検出器に達する。
【0004】
しかし、電気配線と光配線では多くの相違点がある。例えば、素子と配線を接続する作業において、電気配線ならばハンダ等を用いて接触させれば簡単に接続が完了するが、光配線では光学素子と光導波路、または光導波路同士の接続の際には非常に精密な位置合わせ(調芯)が必要であり、その接続は困難である。よって、光学素子と光導波路や光導波路同士の光結合をどう行うかが重要な課題となる。
【0005】
上述の位置合わせの問題を解決する技術として自己形成光導波路技術による接続法がある。自己形成光導波路は、図1に示すように、コア層103の周囲にクラッド層101を備えた光ファイバ100の一方側の端部であって自己形成光導波路を形成させたい側の端部近傍に光硬化性樹脂110を配置する(図1(a))。そして、光ファイバ100の反対側の端部から光を入射し、入射した光が光硬化性樹脂110内を透過して基板200上に配置されたVCSEL140の開口部141に至るように照射する。これにより、光が照射された部分の屈折率が上がると共に硬化する(図1(b))。そして、未硬化の光硬化性樹脂を除去することにより光ファイバ100の端部に自己形成光導波路120を形成することができる(例えば、特開2003−131063号公報、特開2003−131064号公報)。このようにして既設の光導波路を伝搬する光によって自己形成光導波路を形成させれば、既設の光導波路や光学素子と自己形成光導波路の接続が容易となる。
【0006】
一方、他の自己形成光導波路製造方法の一つに、フォトマスク転写法がある。フォトマスクとはクロムなどの光を遮蔽する膜に光を透過させるために数箇所の開口部を設けたものであり、自己形成光導波路形成における「型」ともいえる。フォトマスク転写法による自己形成光導波路の形成手順は、図2に示すように、まずフォトマスク130の下部に硬化性樹脂110を充填する(図2(a))。そして、フォトマスク130の上部から光(紫外光)を照射することにより、光はフォトマスク130に複数設けられた開口部131を通過して硬化性樹脂110に照射される。照射された光は硬化性樹脂110内を透過し、透過した部分の硬化性樹脂110の屈折率が上がると同時に硬化する(図2(b))。そして、フォトマスク130を取り除き、未硬化の硬化性樹脂110を除去することによって自己形成光導波路120を形成することが出来る(例えば、特開2006−078606号公報)。
【0007】
フォトマスク転写法を用いることにより、1回のプロセスで複数のチャネルの自己形成光導波路を一括転写によって形成することができ、また、任意のスペーサを用いることにより自己形成光導波路の高さ(長さ)を調整することが出来る。また、開口部の形状を変化させることにより、様々な形状の自己形成光導波路を形成することができる。そのため、フォトマスク転写法は光配線の多層化に容易に対応することができる。
【0008】
図3はフォトマスク転写法を用いて実際に光デバイスであるVCSEL140の開口部141の上に自己形成光導波路120を形成した一例である。光電気混載基板に光デバイスを実装した際、光電気混載基板はその構成上、表面実装された光デバイスと光電気混載基板の内部に設けられた光導波路までの間にはどうしてもギャップ(距離)が生じてしまう。そのため、そのままでは発光素子(光デバイス)であるVCSEL140から出射した光は放射状に広がっていくので、そのギャップで光は大きく損失してしまう。この点、光デバイスの上に自己形成光導波路を形成することで光の出射広がりを抑えることができ、また光デバイスと光配線のギャップを無くすことができるため、高効率な光結合を可能とする。
【0009】
【特許文献1】特開2003−131063号公報
【特許文献2】特開2003−131064号公報
【特許文献3】特開2006−078606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、受光素子であるPD(Photo Diode)は、応答速度が早くなるにつれて受光面積が減少する。10GBitクラスの応答速度になると、受光径は20μmになるといわれている。機器内の信号処理はさらなる高速化が予想される。したがって、光配線の受信側では、受光面に対し集光作用のある自己形成光導波路の形成が必要となる。
【0011】
また、前述の通り、光配線と光デバイスの間を自己形成導波路によって接続するには、厳密な位置合わせを必要とする。よって、普及には、位置合わせにおける位置ズレトレランスを上げ、光配線の製造コストを下げる必要がある。
【0012】
そこで、本発明は、このような受信側での問題点に着目してなされたものであり、その目的は受信側の光デバイスであるPDと光配線間の接続において、より光結合効率の高い自己形成光導波路の簡易で安価な製造方法の確立を目的とする。
【0013】
具体的には、自己形成光導波路を受光素子に向かい直径が絞られていく円錐又は円錐台形状に代表されるテーパ形状にすることで上述の二つの問題を解決することができるが、従来の光ファイバまたはフォトマスク転写法による製造方法では、光ファイバ及びフォトマスク開口部から出射した光は回折現象により放射状に広がってしまうため、自己形成光導波路を受光素子に向かい直径が絞られていくテーパ形状にすることは困難であった。
そこで、レンズを利用することによってPDに向かって次第に直径が絞られていくテーパ形状を有する自己形成光導波路の製造方法及びそれを備えた光デバイスを提供することを目的とする。
また、本発明は、そのようなレンズを利用することによってPDのみならず種々の光デバイスに向かって次第に直径が絞られていくテーパ形状を有する自己形成光導波路の製造方法及びそれを備えた光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、光硬化性樹脂に光を照射することにより光を透過させた部分を硬化させ、それによって光接続手段である光導波路を形成する自己形成光導波路の製造方法において、レンズによって屈折させた光を光硬化性樹脂に照射することによって略テーパ形状の光接続手段である自己形成導波路を形成することを特徴とする。
レンズによって屈折させた光を光硬化性樹脂に照射すると、屈折した光が透過した部分はテーパ形状に硬化する。これにより、テーパ形状の自己形成光導波路を形成することができる。
【0015】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、基板上に実装された光接続が行われる光デバイスの上部側にレンズを配置する工程と、基板とレンズとの間に光の照射によって硬化する光硬化性樹脂を充填する工程と、レンズの上方から光を照射することによりレンズを通過する光を屈折させて光硬化性樹脂に照射し、それによって光デバイスとの間に光硬化性樹脂を略テーパ形状に硬化させた光接続手段である自己形成導波路を形成する工程と、そして、未硬化の光硬化性樹脂を除去し、さらにレンズを取り外す工程とを備えて構成されてなる自己形成光導波路の製造方法を提供する。
【0016】
例えば、基板上に実装された受光素子等の光デバイス上に平行に凸型のレンズを配置し、光デバイスとレンズの間に光硬化性樹脂を充填する。そして、レンズの上部側から光を照射することによって、レンズと光デバイスとの間に自己形成光導波路による光配線を形成する。そして、未硬化部の光硬化性樹脂を除去し、レンズを取り除けばレンズから光デバイス側に向かって直径が次第に絞り込まれたテーパ形状の自己形成光導波路を形成することができる。これにより、実装時におけるアライメントの精度が向上し、また、テーパ形状の自己形成光導波路の集光効果により、光結合効率が上昇する。尚、光デバイスの受光面や発光面に対する光接続のトレランス幅を広く許容させることからすれば光デバイス側に向かって直径が次第に狭くなる自己形成光導波路を形成することになるのでレンズは凸レンズを用いるのが好ましいが、凹レンズによってもテーパ形状の自己形成光導波路を形成することは可能である。
【0017】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の自己形成光導波路の製造方法において、レンズの配置工程は、1又は複数のレンズを備えた板状のレンズプレートであって、レンズ以外の部分は照射される光が透過しないようにマスクされたレンズプレートを配置することによって行われることを特徴とする。
レンズはレンズの部分以外をすべて金属蒸着によりマスクしたレンズプレートに配置する。そして、そのレンズプレートを光デバイスの上に配置し、上部側から光を照射すればレンズ上部から入射した光はレンズ部分のみを通過しそれ以外の光はマスクによって遮光される。これにより、自己形成光導波路の形状は光デバイス側に向かって次第に直径が絞られていくテーパ形状になる。また、レンズを一定の間隔で複数配置することで多チャンネル配置された光デバイスに対して多チャンネルの形状自己形成光導波路を一括形成することができる。
【0018】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項2又は3に記載の自己形成光導波路の製造方法において、レンズの口径、焦点距離又はレンズと基板までの距離を少なくともレンズの焦点距離より短い長さの範囲内でそれぞれ変更することにより、形成させるべき自己形成光導波路の形状を制御することを特徴とする。
レンズの口径、焦点距離を変更することで形成される自己形成光導波路の形状を変えることができる。また、レンズと基板までの距離をレンズの焦点距離よりも長くすると、収束した光は再び拡散し、形成される自己形成光導波路は徳利形状になってしまい、光の集光効果が減じてしまうおそれがある。そのため、レンズと基板までの距離は少なくともレンズの焦点距離より短い長さの範囲内とし、その範囲内で距離を調整することによって自己形成光導波路の形状を変えることができる。この場合、レンズと基板との間にスペーサを配置すると共に、スペーサの高さを適宜変更することで、自己形成光導波路のテーパ形状の制御を行うことができる。
【0019】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の自己形成光導波路の製造方法において、レンズは、マイクロレンズであることを特徴とする。
従来のフォトマスク転写法による自己形成光導波路の製造方法では、マスク開口部の回折現象により、受光面が比較的小さな光デバイスに向かって次第に直径が絞られていくテーパ形状の自己形成光導波路を形成することはできないが、マイクロレンズを使用することにより小さな光デバイスに向かって次第に直径が絞られていくテーパ形状の自己形成光導波路を形成することができる。また、従来のフォトマスク転写法では、マスク開口部を通過した光の光路の制御がなされていないため形成される自己形成光導波路の形状は、紫外光の照射時間や照射強度に依存し、バラつきが生じることが多かったが、マイクロレンズを使用する事により照射時間や照射強度に左右されることなくレンズの持つ特性に即してテーパ形状の自己形成光導波路光路を形成することができる。
【0020】
上記課題を解決するために請求項6に記載の本発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の特徴とする自己形成光導波路の製造方法において、光硬化性樹脂は、波長200〜400nmの紫外光照射によって硬化する紫外光硬化樹脂、又は、波長532nmのグリーンレーザ照射によって硬化する色素混合樹脂であり、照射する光は、紫外光硬化樹脂又は前記色素混合樹脂が最も良く吸収する波長の光であることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決するために請求項7に記載の本発明は、請求項1から6に記載の自己形成光導波路の製造方法によって製造された自己形成光導波路を備えた光デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る自己形成光導波路の製造方法及びそれを備えた光デバイスによれば、テーパ形状の自己形成光導波路の形成を可能としたので、PD等の光デバイスに向かって次第に直径が絞られていくテーパ形状の自己形成光導波路を設けることができ、それによって、光配線から出射した光信号を光デバイスに向かって集光させることが可能となり、高い光結合効率を得ることができるという効果がある。また、実装時における光配線と自己形成光導波路間の位置ズレ許容度が高くなり、アライメントの精度が向上するという効果がある。
また、自己形成光導波路の製造にマイクロレンズを用いることで、レンズの持つ特性に即したテーパ形状の自己形成光導波路光路を形成することができるので紫外光の強度や時間に依存することなく安定した形状の自己形成光導波路を形成することができるという効果がある。
さらに、異なる口径、焦点距離のレンズを使用することにより自己形成光導波路の形状を制御できるので光配線の基板厚の変化、多層化、高密度化に容易に対応できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る自己形成光導波路の製造方法及びそれを備えた光デバイスについて図面を参照にしつつ以下詳細に説明する。図4は本発明に係る自己形成光導波路の製造方法の好ましい一実施形態におけるフローチャート、図5から図9は各工程における概略説明図である。
【0024】
まず初めに、図5に示すように、光デバイスであるPD20が実装された基板10上に凸型形状のレンズであるマイクロレンズ35を備えたレンズプレート30をマイクロレンズ35がPD20の受光面21のなるべく真上にくるように位置させて配置し、スペーサ15を基板10とマイクロレンズ35の間に挟みこむ(ステップS1)。レンズプレート30は、マイクロレンズ35を1又は複数備えた平板上の部材であり、図10及び図11に示すように、マイクロレンズ35が配置されている部分は開口部31しているが、開口部31以外の部分はすべて金属蒸着によりマスク33が形成され、光の透過を阻止するようになっている。従って、光はマイクロレンズ35だけを通過して後述する光硬化樹脂40に照射される。図示されたレンズプレート30には縦に7列、横に4列の合計28個のマイクロレンズ35が配置されているが、基板10に配置されたPD20の数及び配置位置に応じて適宜設けることができる。そして、そのようなレンズプレート30をPD20の上に配置し、上部側から光を照射すると照射された光はマイクロレンズ35部分のみを通過しそれ以外の光はマスク33によって遮光される。これにより、自己形成光導波路3の形状はPD20側に向かって次第に直径が絞られていくテーパ形状となる。
【0025】
マイクロレンズ35の口径や焦点距離を変更することで形成すべき自己形成光導波路3の形状を適宜変更することができる。すなわち、焦点距離の長いマイクロレンズ35を使用すればPD20との距離を長くすることができ、口径の大きいマイクロレンズ35を使用すれば径の大きい自己形成光導波路3を形成することができる。また、マイクロレンズ35と基板10までの距離を少なくともマイクロレンズ35の焦点距離より短い長さの範囲内で適宜調整することによっても自己形成光導波路3の形状を変えることができる。例えば、スペーサ15の高さを調整してマイクロレンズ35と基板10までの距離をより短くすれば円錐の頂部が底部方向にマイクロレンズ35と基板10までの距離だけカットされた円錐台形の自己形成光導波路3を形成することができる。尚、マイクロレンズ35と基板10までの距離をマイクロレンズ35の焦点距離よりも長くしてしまうと、収束した光が再び拡散し、形成される自己形成光導波路が徳利形状になってしまい、光の集光効果が減じてしまうおそれがあるので、例えば、焦点距離100μmのマイクロレンズを使用する場合、使用するスペーサも少なくとも100μm厚以下のものを使用することが好ましい。
【0026】
ここで、マイクロレンズ35をPD20の受光面の真上に位置するように配置するためには、例えば、顕微鏡等の図示しない拡大鏡を用いてPD20の受光面を確認し、その位置を表示する図示しないディスプレイに印を付け、次にレンズプレート30を図示しない移動装置に取り付け、レンズプレート30を微動させつつ、マイクロレンズ35部分を印の場所に移動させるような位置決め装置によって行うことができる。このように、レンズプレート30を使用することによって任意の場所に容易にテーパ形状の自己形成光導波路3を形成することができる。
【0027】
次に、図6に示すように、基板10とレンズプレート30との間に光の照射によって硬化する光硬化性樹脂40を充填する(ステップS2)。光硬化性樹脂の一例としては、紫外光を照射することによって硬化する紫外光硬化樹脂があり、具体的には日本化薬株式会社(東京都千代田区)のDVD003等のアクリル系樹脂がある。もちろんこれに限定されるものではなく、他には、光硬化性樹脂に特定の波長の光を吸収する色素を混合させ、その色素が最も吸収する波長の光を照射することによって硬化させることが出来る色素混合樹脂というものもある。例えば、光硬化性樹脂が波長200〜400nmの紫外光照射によって硬化する紫外光硬化樹脂、又は、波長532nmのグリーンレーザ照射によって硬化する色素混合樹脂があり、この場合、照射する光は、それら紫外光硬化樹脂又は色素混合樹脂が最も良く吸収する波長の光を照射する。
【0028】
次に、図7に示すように、マイクロレンズ35の上部から例えば紫外光5を照射する。紫外光5を照射すると、紫外光5はレンズプレート30のマイクロレンズ35のみを通過して屈折し、屈折した紫外光5がマイクロレンズ35の真下に位置する光硬化性樹脂40を透過してPD20の受光面に達する。これにより紫外光5透過した部分が硬化してテーパ形状の自己形成光導波路3が形成される(ステップ3)。マイクロレンズ35に入射した紫外光5は集光されるため、自己形成光導波路3の形状は基板10に向かって次第に細くなったテーパ形状となる。
【0029】
光の照射点は、コリメートレンズを使用した場合、製造精度の視点からマイクロレンズ35より約1cmほど離すと良い。紫外光5の照射強度に関しては、使用する光硬化性樹脂40の性質にもよるが、上述のDVD003を使用して約250mW/cm2の強度の紫外光を約2.2秒照射したところ、レンズ側の直径が約84μm、基板側の直径が約64μm、長さが約112μmの自己形成光導波路を形成することができた。
【0030】
次に、図8に示すように、レンズプレート30を除去し、未硬化の光硬化性樹脂40を除去する。未硬化の光硬化性樹脂40を除去するには、例えば、エタノールを用いて洗い流すことにより簡易に行うことができる。
これにより、光デバイスであるPD20の真上にテーパ形状の自己形成光導波路3を形成することができる。また、マイクロレンズ35の光硬化性樹脂40と接する面にあらかじめ剥離材を塗布しておくことにより、マイクロレンズ35の剥離を容易に行わせることができる。
【0031】
また、図9に示すように、レンズプレート30を使用して形成したテーパ形状の自己形成光導波路3は、マイクロレンズ35の凸面部が光硬化性樹脂40側に位置するため、マイクロレンズ35側の形状は、マイクロレンズ35の面に沿った窪んだ形状となる。光配線から自己形成光導波路3に光信号が入射する際、この部分が凹レンズの効果を成し、光が拡散してしまう懸念があるが、自己形成光導波路3と光配線の間にマッチングオイル等を塗布することにより、窪みの部分における屈折率差を無くし、光の拡散を抑えることが出来る。窪みの部分は樹脂などを溜めるスペースの役割を果たす。例えば、窪みの部分に透明の接着剤を塗布することにより、機械的にも接続することができ、結合部分の機械的強度の向上も期待できる。また、図11に示すようなレンズプレート30を上下を入れ替えて使用すれば窪みを形成させないようにすることもできる。また、図12に示すような平板レンズプレート30’を用いることもできる。平板レンズプレート30’は、例えば、平面状のガラス基板にイオンの拡散を妨げるための金属マスクを蒸着し、そのマスクにフォトリソグラフィーによって小さな窓を開け、マスクされたガラス基板をイオン交換によりマスクの開口窓の付近で屈折率分布が形成されえるように溶融塩に浸す。これにより拡散されたイオンは高屈折率と部分的な膨らみを形成しレンズ効果を得ることができる。この平板レンズプレート30’を使用しても自己形成光導波路3の窪みを形成させないようにすることができる。
【0032】
このような、製造工程によって製造された光接続手段である自己形成光導波路を備えたPD20の実装モデルを図13に示す。
PD20は、電気配線層51と光配線層52が混載された光電気混載基板50に実装されている。光電気混載基板50は、電気配線層51の下部側に光導波路28による光配線層52が積層されて形成されている。光電気混載基板50の電気配線層51には、光デバイスであるVCSEL25の上に形成された自己形成光導波路3’が挿入されるスルーホール51aと、光デバイスであるPD20の受光面側に形成された自己形成光導波路3が挿入されるスルーホール51bを備えている。スルーホール51a、51bの真下にはそれぞれ45度ミラー面27が備えられている。そして、PD20の受光面側に形成された自己形成光導波路3をスルーホール51bに挿入することにより表面実装される。尚、26は電気配線層51に実装されたLSIである。
【0033】
上述した光電気混載基板50は、VICSEL25より出射された光はVICSEL開口部上に形成された自己形成光導波路3’に入射され、光配線層52まで伝わり、光配線層52に設けられた45度ミラー27によって90度光路変換され、光配線層52内の光導波路28内を伝播する。そして、光導波路28内を伝播した光はPD20の下部に設置されている45度ミラー27によって再び90度光路変換され、PD20開口部上に形成された自己形成光導波路3へ入射され、PD20の受光面へと導かれる。
【0034】
今回提案した自己形成光導波路の製造方法の有効性を示すために、本発明方法によって製造した自己形成光導波路を備えた光デバイスと光配線である光ファイバをモデル化し、光線追跡法による光結合トレランス解析を行った。図14はその解析モデルである。自己形成光導波路3は受光面に向かって直径が絞られていくテーパ形状(a)と、直線形状(b)の自己形成光導波路3’の2種類で解析を行った。(a)のモデルである自己形成光導波路3のサイズとしては、光ファイバ60側の直径は100μm、PD20側の直径は50μmであり、(b)のモデルである自己形成光導波路3’のサイズとしては光ファイバ60側の直径は50μm、PD20側の直径は50μmである。高さは(a)、(b)のモデル双方とも100μmと設定した。また、屈折率は光ファイバ60のクラッドを1.458、コアを1.459、自己形成光導波路3、3’を1.53と設定した。解析方法は光ファイバ60の位置をY軸方向に5μm毎変化させ、その光結合効率の変化を解析した。
【0035】
図15は光結合トレランス解析の結果である。横軸が光ファイバ変位量、縦軸が光結合効率である。上側の丸印のプロットが図14(a)のモデルの解析結果であり、下側の菱形印のプロットが図14(b)のモデルの解析結果である。グラフから明らかなように、PD20の受光面に向かって直径が絞られていくテーパ形状の自己形成光導波路3の方が直線形状の自己形成光導波路3’に比べ格段にトレランス幅が広いことが確認できる。よって、本発明方法によって製造された自己形成光導波路3は実装時におけるアライメント精度が格段に高いと言える。
【0036】
これまで説明したように、本発明に係る自己形成光導波路の製造方法及びそれを備えた光デバイスによれば、自己形成光導波路は光デバイスに向かって次第に直径が絞られていくテーパ形状をしているため、入射した光は集光し、高い光結合効率を得ることができる。また、光電気混載基板への光デバイスの実装は精密な位置合わせを必要とするが、本発明に係る自己形成光導波路の製造方法及びそれを備えた光デバイスによれば、自己形成光導波路をテーパ形状にすることで入射側の直径を大きくすることができ、多少の位置ズレが起きても大きな損失にならないという利点がある。
【0037】
以上のように、本発明の好ましい実施形態としてPDの受光面に向かってテーパ形状の自己形成光導波路3を形成させたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、PDに限らず光コネクタ等の種々の光デバイスとの接続に利用できるものであり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)、(b)は自己形成光導波路の製造を示す説明図である。
【図2】(a)、(b)はフォトマスク転写法による自己形成光導波路の製造を示す説明図である。
【図3】VCSEL上に形成した自己形成光導波路を示す概略断面図である。
【図4】本発明に係る本発明に係る自己形成光導波路の製造方法の好ましい一実施形態におけるフローチャートである。
【図5】PDの受光面の真上にマイクロレンズプレートを配置した状態を示す側面断面図である。
【図6】光硬化性樹脂を充填した状態を示す側面断面図である。
【図7】自己形成光導波路が形成される状態を示す側面断面図である。
【図8】マイクロレンズを剥離した状態を示す側面断面図である。
【図9】未硬化の光硬化性媒質を除去した状態を示す側面断面図である。
【図10】マイクロレンズプレートの平面図である。
【図11】図10のマイクロレンズプレートの側面図である。
【図12】平板マイクロレンズの一部断面斜視図である。
【図13】本発明に係る自己形成光導波路の製造方法によって形成された自己形成光導波路3を備えた光デバイスを光電気混載基板に実装した状態を示す側面断面図である。
【図14】(a)、(b)は光線追跡法による光結合トレランス解析におけるモデル図である。
【図15】光結合トレランス解析における解析結果を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
3 自己形成光導波路
5 紫外光
10 基板
15 スペーサ
20 PD
21 受光面
30 レンズプレート
31 開口部
33 マスク
35 マイクロレンズ
40 光硬化性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性樹脂に光を照射することにより光を透過させた部分を硬化させ、それによって光接続手段である光導波路を形成する自己形成光導波路の製造方法において、
レンズによって屈折させた光を前記光硬化性樹脂に照射することによって略テーパ形状の光接続手段である自己形成導波路を形成することを特徴とする自己形成光導波路の製造方法。
【請求項2】
基板上に実装された光接続が行われる光デバイスの上部側にレンズを配置する工程と、
前記基板と前記レンズとの間に光の照射によって硬化する光硬化性樹脂を充填する工程と、
前記レンズの上方から光を照射することにより当該レンズを通過する光を屈折させて光硬化性樹脂に照射し、それによって前記光デバイスとの間に前記光硬化性樹脂を略テーパ形状に硬化させた光接続手段である自己形成導波路を形成する工程と、そして、
未硬化の前記光硬化性樹脂を除去し、さらに前記レンズを取り外す工程と、
を備えて構成されてなる自己形成光導波路の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自己形成光導波路の製造方法において、
前記レンズの配置工程は、1又は複数のレンズを備えた板状のレンズプレートであって、当該レンズ以外の部分は照射される光が透過しないようにマスクされたレンズプレートを配置することによって行われることを特徴とする光接続手段を備えた自己形成光導波路の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の自己形成光導波路の製造方法において、
前記レンズの口径、焦点距離又は前記レンズと前記基板までの距離を少なくとも前記レンズの焦点距離より短い長さの範囲内でそれぞれ変更することにより、形成させるべき自己形成光導波路の形状を制御することを特徴とする自己形成光導波路の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の自己形成光導波路の製造方法において、
前記レンズは、マイクロレンズであることを特徴とする自己形成光導波路の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の特徴とする自己形成光導波路の製造方法において、
前記光硬化性樹脂は、波長200〜400nmの紫外光照射によって硬化する紫外光硬化樹脂、又は、波長532nmのグリーンレーザ照射によって硬化する色素混合樹脂であり、
照射する光は、前記樹紫外光硬化樹脂又は前記色素混合樹脂が最も良く吸収する波長の光であることを特徴とする自己形成光導波路の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6に記載の自己形成光導波路の製造方法によって製造された自己形成光導波路を備えた光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−299180(P2008−299180A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146741(P2007−146741)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年1月10日 株式会社 インターナショナルランゲージアンドカルチャーセンター発行の「シービーティー2007 インターナショナルシンポジウム オン コンテンポラリーフォトニクステクノロジー予稿集別冊」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年4月18日 社団法人 エレクトロニクス実装学会発行の「シービーティー2007 インターナショナルカンファレンス オン エレクトロニクスパッケージング予稿集」に発表
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】