舶用脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに舶用脱硝システムの制御方法
【課題】脱硝用のアンモニアを生成するアンモニア生成器に供給する電力を省エネルギーにて供給可能とされた舶用脱硝システムを提供する。
【解決手段】船内電力系統30から電力が供給されるアンモニア生成器2と、排ガス脱硝を行うSCR触媒部4と、メインエンジン3の排ガスエネルギーを用いて発電し、船内電力系統30へ電力を供給するハイブリッド排気タービン過給機と、船内電力系統30へ電力を供給する発電運転が可能とされるとともに、船内電力系統30から供給された電力によって駆動されてプロペラ軸10を加勢する軸発電機モータ13と、アンモニア生成器2への供給電力、ハイブリッド排気タービン過給機の発電出力、並びに軸発電機モータ13への供給電力および発電出力を制御するパワーマネジメントシステム72とを備えている。
【解決手段】船内電力系統30から電力が供給されるアンモニア生成器2と、排ガス脱硝を行うSCR触媒部4と、メインエンジン3の排ガスエネルギーを用いて発電し、船内電力系統30へ電力を供給するハイブリッド排気タービン過給機と、船内電力系統30へ電力を供給する発電運転が可能とされるとともに、船内電力系統30から供給された電力によって駆動されてプロペラ軸10を加勢する軸発電機モータ13と、アンモニア生成器2への供給電力、ハイブリッド排気タービン過給機の発電出力、並びに軸発電機モータ13への供給電力および発電出力を制御するパワーマネジメントシステム72とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばディーゼルエンジンからの排ガスの脱硝に用いて好適な船舶に搭載される舶用脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに舶用脱硝システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶推進用のディーゼルエンジン(メインエンジン)から発生する窒素酸化物(NOx)を除去するために、船舶に脱硝装置が搭載される。
下記特許文献1には、脱硝触媒の還元剤として用いるアンモニアを船舶上にて生成可能とした発明が開示されている。アンモニアが船舶上で生成できるので、液体アンモニアを船舶へと運搬し、船舶内で貯蔵する必要がない。また、液体アンモニアは危険物として扱われるので、漏洩検知センサや二重配管といった特別な貯蔵設備を設ける必要があるが、船舶上にてアンモニアを必要量だけ生成すれば特別な貯蔵設備を設ける必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−292531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶上でアンモニアを生成するには水電気分解や搬送ポンプ等を駆動するための電気エネルギーが必要とされる。上記特許文献1では、補機としてのディーゼルエンジン発電機からの電力を利用することが示されている。
しかし、一般的にディーゼルエンジン発電機はメインエンジンよりも熱効率が低いため、ディーゼルエンジン発電機から電力を得るのでは、アンモニアを生成するためにエネルギーを更に浪費することになり、省エネルギーの観点から好ましくない。
【0005】
また、船内に余剰電力が発生した場合、その余剰電力を有効に利用することが望まれる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、脱硝用のアンモニアを生成するアンモニア生成器に供給する電力を省エネルギーにて安定的に供給可能とされた舶用脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに舶用脱硝システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の舶用脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに舶用脱硝システムの制御方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる舶用脱硝システムは、水から水素を製造する水素製造部、及び、空気から窒素を製造する窒素製造部を有し、前記水素製造部によって製造された水素および前記窒素製造部によって製造された窒素からアンモニアを生成するとともに、船内電力系統から電力が供給されるアンモニア生成器と、舶用推進用のメインエンジンの排ガス通路に設けられ、前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアとともに排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記メインエンジンの排ガスエネルギーを用いて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電機と、前記メインエンジンによって駆動されて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電運転が可能とされるとともに、前記船内電力系統から供給された電力によって駆動されてプロペラ軸を加勢する軸発電機モータと、前記アンモニア生成器への供給電力、前記発電機の発電出力、並びに前記軸発電機モータへの供給電力および発電出力を制御する発電出力制御部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
アンモニア生成器は、水から水素を製造する水素製造部と、空気から窒素を製造する窒素製造部とを有し、水素製造部および窒素製造によって製造された水素および窒素によってアンモニアを生成する。このように、水および空気を原料として船舶上にてアンモニアを生成できるので、液体アンモニア(例えばアンモニア水溶液)や尿素等の還元剤を貯蔵するスペースを船舶上に設ける必要がない。したがって、大きなスペースを確保することなく舶用脱硝システムを船舶内に設置することができる。
また、メインエンジンの排ガスエネルギーから回収された発電出力は、船内電力系統を介してアンモニア生成器に用いられる。これにより、アンモニア生成器を少ない消費エネルギーで運転することができるので、別途設けられたディーゼルエンジン発電機等の発電用補機の容量増大や増台を回避することができる。
また、プロペラ軸を加勢する軸発電機モータが設けられているので、メインエンジンの燃料消費率を低減させることができる。さらに、プロペラ軸を加勢する軸発電機モータは、船内電力系統から電力供給を受けるようになっているので、発電機によって排熱回収した電力を用いて軸発電機モータを駆動させることにより、熱効率の高いシステムを構築することができる。特に、排ガス脱硝が必要とされない海域を航行する場合にはアンモニア生成器に電力を供給する必要がないので、排熱回収によって得られた電力の余剰分を軸発電機モータに対して有効に利用することができる。
【0009】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記船内電力系統に接続された蓄電池を備えていることを特徴とする。
【0010】
船内電力系統に接続された蓄電池を備えているので、メインエンジンに負荷変動が生じて発電機の発電出力に変動が生じても、蓄電池の電力を用いることができる。特に、メインエンジンの低負荷時に発電機からの発電出力が十分に得られない場合に有用である。したがって、船内電力系統を介してアンモニア生成器に対して安定して電力を供給することができる。さらに、蓄電池は発電機と同様に船内電力系統に接続されているので、発電機で発生した余剰電力を蓄電することができる。また、メインエンジンの減速時に、蓄電池にて動力回収することとしても良い。
船舶に発電用エンジンが設けられている場合には、蓄電池を備えることによって負荷変動を抑えることができるので、発電用エンジンの容量およびサイズを低減することができる。
【0011】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記船内電力系統には、太陽光発電装置を接続することができる。
【0012】
電力系統に対して太陽光発電装置が接続されているので、太陽光発電装置の発電出力を蓄電池に供給することができる。これにより、さらに安定した電力供給が可能となる。
【0013】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記船内電力系統には、船舶の外部の電源から電力の供給を受ける外部電力入力部を接続することができる。
【0014】
船舶の外部の電源から電力の供給を受ける外部電力入力部が電力系統に接続されているので、例えば船舶の接岸時に外部(陸側)から電力の供給を受けることができる。これにより、船舶の接岸時には発電用エンジンを起動する必要がなくなり、いわゆるゼロエミッションを達成することができる。
【0015】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記脱硝触媒部に導入される排ガスを加熱する電気ヒータを備え、該電気ヒータに対して、前記船内電力系統から電力供給が行われることを特徴とする。
【0016】
脱硝触媒部として主に用いられている選択接触還元法(SCR)のSCR触媒では、排ガス温度が低温になるほど被毒のおそれがある。本発明によれば、電気ヒータによって排ガス温度が上昇するのでSCR触媒の被毒を防止することができる。
また、電気ヒータは、船内電力系統に接続されているので、軸発電機モータから電力供給を受けることができる。例えば、メインエンジン起動時には排ガスエネルギーが低く排熱回収できないので、この様な場合には軸発電機モータによって発電した電力を電気ヒータに供給することができるので有効である。
【0017】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記メインエンジンの排気タービン過給機の回転出力を得て発電する過給機側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
【0018】
メインエンジンの排気タービン過給機の回転出力を得て発電する過給機側発電機を備えた過給機として、ハイブリッド排気タービン過給機が知られている。この過給機側発電機を船内電力系統に電力供給する発電機として用いることとした。これにより、メインエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0019】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンによって発電するパワータービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
【0020】
メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンによって発電するパワータービン側発電機を船内電力系統に電力供給する発電機として用いることとした。これにより、メインエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0021】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する蒸気タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
【0022】
メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する蒸気タービン側発電機を船内電力系統に電力供給する発電機として用いることとした。これにより、メインエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0023】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービン、及び、前記メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する異種タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
【0024】
異種タービン側発電機には、パワータービン及び蒸気タービンといった異なる種類(異種)のタービンが接続されている。この異種タービン側発電機を用いることにより、メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンに加えて、メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンをも用いて発電することとしたので、さらにメインエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0025】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記メインエンジンのジャケットや空気冷却器の冷却水及び/または排ガスと熱交換した加熱水と熱交換され、蒸気化した熱媒体を駆動源とするタービンによって発電する熱媒体タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
前記熱媒体は、水よりも沸点の低い代替フロン(例えばR−245fa、R−134aなど)や、ペンタン、ブタンなどの有機熱媒体を使ったシステムが一般的に知られており、ランキンサイクルと呼ばれている。
【0026】
また、本発明の船舶は、船舶推進用のメインエンジンと、上記のいずれかに記載の舶用脱硝システムとを備えていることを特徴とする。
【0027】
上記のいずれかの舶用脱硝システムは、効率良く安定した電力供給が可能とされているので、船舶に搭載するのに好適である。
【0028】
また、本発明の舶用脱硝システムの制御方法は、水から水素を製造する水素製造部、及び、空気から窒素を製造する窒素製造部を有し、前記水素製造部によって製造された水素および前記窒素製造部によって製造された窒素からアンモニアを生成するとともに、船内電力系統から電力が供給されるアンモニア生成器と、舶用推進用のメインエンジンの排ガス通路に設けられ、前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアとともに排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記メインエンジンの排ガスエネルギーを用いて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電機と、前記メインエンジンによって駆動されて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電運転が可能とされるとともに、前記船内電力系統から供給された電力によって駆動されてプロペラ軸を加勢する軸発電機モータとを備えた舶用脱硝システムの制御方法であって、発電出力制御部によって、前記アンモニア生成器への供給電力、前記発電機の発電出力、並びに前記軸発電機モータへの供給電力および発電出力を制御することを特徴とする。
【0029】
アンモニア生成器は、水から水素を製造する水素製造部と、空気から窒素を製造する窒素製造部とを有し、水素製造部および窒素製造によって製造された水素および窒素によってアンモニアを生成する。このように、水および空気を原料として船舶上にてアンモニアを生成できるので、液体アンモニア(例えばアンモニア水溶液)や尿素等の還元剤を貯蔵するスペースを船舶上に設ける必要がない。したがって、大きなスペースを確保することなく舶用脱硝システムを船舶内に設置することができる。
また、メインエンジンの排ガスエネルギーから回収された発電出力は、船内電力系統を介してアンモニア生成器に用いられる。これにより、アンモニア生成器を少ない消費エネルギーで運転することができるので、別途設けられたディーゼルエンジン発電機等の発電用補機の容量増大や増台を回避することができる。
また、プロペラ軸を加勢する軸発電機モータが設けられているので、メインエンジンの燃料消費率を低減させることができる。さらに、プロペラ軸を加勢する軸発電機モータは、船内電力系統から電力供給を受けるようになっているので、発電機によって排熱回収した電力を用いて軸発電機モータを駆動させることにより、熱効率の高いシステムを構築することができる。特に、排ガス脱硝が必要とされない海域を航行する場合にはアンモニア生成器に電力を供給する必要がないので、排熱回収によって得られた電力の余剰分を軸発電機モータに対して有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、脱硝用のアンモニアを生成するアンモニア生成器に供給する電力を省エネルギーにて安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる舶用脱硝システムが設けられたメインエンジンまわりを示した概略構成図である。
【図2】図1の排熱回収システムの具体的構成を示した概略構成図である。
【図3】図1に示したアンモニア生成器の概略を示した概略構成図である。
【図4】第1実施形態におけるメインエンジンの負荷に対する発電量を示したマップである。
【図5】船舶の運転時間に対して各制御量の変化を示したタイミングチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる排熱回収システムの具体的構成を示した概略構成図である。
【図7】第2実施形態におけるメインエンジンの負荷に対する発電量を示したマップである。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる排熱回収システムの具体的構成を示した概略構成図である。
【図9】第3実施形態におけるメインエンジンの負荷に対する発電量を示したマップである。
【図10】本発明の第4実施形態にかかる排熱回収システムの具体的構成を示した概略構成図である。
【図11】第4実施形態におけるメインエンジンの負荷に対する発電量を示したマップである。
【図12】本発明の第5実施形態にかかる排熱回収システムを示した概略構成図である。
【図13】第5実施形態におけるメインエンジンの負荷に対する発電量を示したマップである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1には、本実施形態にかかる舶用脱硝システム1が設けられたメインエンジン3まわりの概略構成が示されている。
船舶内には、船舶推進用のメインエンジン(例えばディーゼルエンジン)3と、メインエンジン3からの排ガスを脱硝するための脱硝システム1と、メインエンジン3の排ガスエネルギーを回収して発電する排熱回収システム17と、メインエンジン3の排ガスによって蒸気を生成する排ガスエコノマイザ(排ガスボイラ)11とを備えている。
【0033】
メインエンジン3の出力軸には軸発電機モータ13が接続されており、この軸発電機モータ13にはプロペラ軸10を介してスクリュープロペラ12が取り付けられている。
軸発電機モータ13は、船内電力系統30から電力を得てメインエンジン3を加勢するモータ運転を行う一方で、メインエンジン3によって駆動されて発電する発電運転を行うことが可能となっている。軸発電機モータ13の動作は、後述するパワーマネジメントシステム72によって制御される。
メインエンジン3の各気筒のシリンダ部の排気ポートは排ガス集合管としての排気マニホールド15に接続されている。排気マニホールド15は、排熱回収システム17と接続されている。
【0034】
図2には、排熱回収システム17の一例としてのハイブリッド排気タービン過給機5が示されている。
同図に示されているように、排気マニホールド15が、第1排気管L1を介してハイブリッド排気タービン過給機5のタービン部5aの入口側と接続されている。
一方、メインエンジン3の各シリンダ部の給気ポートと接続された給気マニホールドに対して、ハイブリッド排気タービン過給機5のコンプレッサ部5bが給気管K1を介して接続している。また、給気管K1には空気冷却器(インタークーラ)18が設置されている。
【0035】
ハイブリッド排気タービン過給機5は、タービン部5aと、コンプレッサ部5bと、ハイブリッド発電機モータ(過給機側発電機)5cとを備えている。タービン部5a、コンプレッサ部5b及びハイブリッド発電機モータ5cは、回転軸5dによって同軸にて連結されている。
ハイブリッド発電機モータ5cは、タービン部5aによって得られる回転出力を得て発電する一方で、船内電力系統30から電力を得てコンプレッサ部5bの回転を加勢する。ハイブリッド発電機モータ5cと船内電力系統30との間には、ハイブリッド発電機モータ5c側から順に、交流電力を直流電力に変換するコンバータ19と、直流電力を交流電力に変換するインバータ20と、開閉スイッチ21とが設けられている。
ハイブリッド発電機モータ5cによって発電された電力は、後述するように、船内電力系統30を介してアンモニア生成器2へと供給される。
【0036】
図1に示すように、船内電力系統30には、発電機62を備えた第1発電用ディーゼルエンジン61、発電機64を備えた第2発電用ディーゼルエンジン63、蓄電池67、太陽光発電装置69、外部電力入力部71が並列に接続されている。
蓄電池67としては、例えばリチウムイオン二次電池が好適に用いられる。蓄電池67には、第1発電用ディーゼルエンジン61、第2発電用ディーゼルエンジン63、太陽光発電装置69、ハイブリッド発電機モータ5cからの電力が蓄電されるようになっている。また、蓄電池67の放電および充電は、パワーマネジメントシステム72によって行われる。
外部電力入力部71には、船舶の外部(すなわち陸上)の電源から電力供給が行われるようになっている。外部電力入力部71から供給された電力によって、蓄電池67が充電される。
船内電力系統30は、アンモニア生成器2および後述する電気ヒータ73に接続されており、これらアンモニア生成器2および電気ヒータ73に電力が供給されるようになっている。
【0037】
排ガスエコノマイザ11は、排ガスエコノマイザ用排気管L5に接続されており、メインエンジン3から排出される排ガスと、給水管(図示せず)によって供給された水とを熱交換させて蒸気を発生させる。排ガスエコノマイザ11の上流側には、排ガスの流出入を制御する排ガスエコノマイザ用開閉弁22が設けられている。排ガスエコノマイザ用開閉弁22の切替タイミングは、エンジンメインコントローラ70によって決定される。
【0038】
舶用脱硝システム1は、アンモニア生成器2と、選択接触還元法(SCR;Selective Catalytic Reduction)に用いられるSCR触媒部4とを備えている。アンモニア生成器2及びSCR触媒部4は、ハイブリッド排気タービン過給機5の下流側の第2排気管L2に接続されており、排ガス流れの上流側にアンモニア生成器2が配置され、下流側にSCR触媒部4が配置されている。
図3に示されているように、アンモニア生成器2は、水から水素を製造する水素製造部81と、空気から窒素を製造する窒素製造部83と、水素および窒素からアンモニアを生成するアンモニア生成部80とを備えている。
水素製造部81に用いられる水は、船舶に搭載された造水機85によって海水から製造された真水を、更に、船舶に搭載された純水製造機87によって製造された純水が用いられる。水素製造部81には、電解質としてイオン交換膜を用いて純水を電気分解する固体高分子電解質膜法が用いられる。水素製造部81から発生した水素は、水素ドライヤー(図示せず)で脱湿された後、アンモニア生成部80へと送られる。
窒素製造部83では、PSA(Pressure Swing Adsorption)法等によって空気から窒素が得られる。窒素製造部83で得られた窒素は、アンモニア生成部80へと送られる。
アンモニア生成部80では、水素と窒素とが混合加熱され、ルテニウム触媒等の反応触媒の下でアンモニアが生成される。
【0039】
アンモニア生成器2では、水素製造部81の電気分解等のように電力を消費するため、この電力として、上述したハイブリッド発電機モータ5cからの電力が利用される。
アンモニア生成器2にて生成されたアンモニア(ガス)は、図1に示すように、アンモニア生成器用開閉弁24を介して、第2排気管L2に直接供給される。このように、生成されたアンモニアは、途中で貯留されることなく排ガス中に供給されるようになっている。アンモニア生成器用開閉弁24の切替タイミングは、エンジンメインコントローラ70によって決定される。
アンモニア生成器用開閉弁24の下流側には、アンモニア量を計測するための流量センサS1が設けられている。
【0040】
SCR触媒部4には、SCR用開閉弁26を介して第2排気管L2から排ガスが導入されるようになっている。SCR用開閉弁26の切替タイミングは、エンジンメインコントローラ70によって決定される。SCR触媒部4では、排ガス中のNOxが触媒により選択的に還元され、無害な窒素と水蒸気に分解される。
SCR触媒部4の上流側には、導入される排ガスを加熱するための電気ヒータ73が設けられている。電気ヒータ73には、船内電力系統30から電力が供給されるようになっている。
【0041】
SCR用開閉弁26と排ガスエコノマイザ用開閉弁22とは、択一的に選択されて開閉が行われる。すなわち、排ガスのNOx規制が厳格とされている海域(排ガス規制海域(Emission Control Area;以下「ECA」という。)を航行する際のように排ガス脱硝が必要な場合は、SCR用開閉弁26を開き、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を閉じる。一方、排ガスのNOx規制が比較的緩やかな海域(ECA外)を航行する際のように排ガス脱硝を行わない場合は、SCR用開閉弁26を閉じ、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を開ける。
なお、SCR用開閉弁26及び排ガスエコノマイザ用開閉弁22は、1つの三方弁で代用することも可能である。
【0042】
船舶全体を制御する制御部として、エンジンメインコントローラ70と、パワーマネジメントシステム(発電出力制御部;以下「PMS」という。)72とが設けられている。
【0043】
エンジンメインコントローラ70は、主としてメインエンジン3を制御する。エンジンメインコントローラ70には、メインエンジン3に設けられたエンジン負荷検出手段からのエンジン負荷信号LIと、メインエンジン3の回転数を検出する回転数検出手段からのエンジン回転数Nと、メインエンジン3の給気マニホールド内の掃気圧力を検出する掃気圧力検出手段からの掃気圧力Pとが入力される。
エンジンメインコントローラ70は、これら入力信号に基づいて所定の演算を行い、排ガスの脱硝に必要な目標アンモニア生成量を決定する。決定された目標アンモニア生成量は、アンモニア生成器2へと送信される。
【0044】
PMS72は、主として船内電力の制御を行う。PMS72には、エンジンメインコントローラ70からエンジン負荷信号LIと、船内電力周波数fが入力される。PMS72は、これら入力信号に基づいて所定の演算を行い、ハイブリッド排気タービン過給機5の発電量を決定する。このハイブリッド排気タービン過給機5の発電量の演算には、図4に示したマップが用いられる。PMS72の記憶部には、このマップの関係式または数値化したデータベースが格納されている。
図4において、横軸はエンジン負荷信号LIから得られるエンジン負荷(%)、縦軸は総発電量(kW)である。同図において、「DG1」は第1発電用ディーゼルエンジン61の発電機62を示し、「DG2」は第2発電用ディーゼルエンジン63の発電機64を示し、「SGM」は軸発電機モータ13を示し、「Hybrid T/C」はハイブリッド排気タービン過給機5の発電機5cを示す。同図に示されているように、エンジン負荷が低い場合は第1及び第2発電用ディーゼルエンジン61,63のみによって発電し、エンジン負荷が所定値を超えると、次に軸発電機モータ13による発電が開始され、その次にハイブリッド排気タービン過給機5による発電が開始され、徐々にその発電量が増大される。ハイブリッド排気タービン過給機5による発電が最後となるのは、メインエンジン負荷が所定値を超えないと、排熱回収できる程度にエンジンの排気エネルギーが大きくならないからである。なお、このマップは一例であって、船内の発電システムに応じて適宜決定される。
発電量は、船内電力周波数fが所定値にて一定となるように制御される。すなわち、船内電力周波数fが所定値から低下すると船内需要電力が増加したと判断し、発電量を増大させ、船内電力周波数fが所定値から増大すると船内需要電力が低下したと判断し、発電量を減少させる。このように、エンジン負荷と発電量が決まると、軸発電機モータ13とハイブリッド排気タービン過給機5の発電量が同図のマップから決定される。このように決定された発電量は、目標発電量として軸発電機モータ13およびハイブリッド排気タービン過給機5へと送信される。
【0045】
次に、上記構成の舶用脱硝システム1の制御方法について説明する。
メインエンジン3から排出された排ガスは、排気マニホールド15から第1排気管L1を介してハイブリッド排気タービン過給機5のタービン部5aへと導かれる。タービン部5aは、排ガスエネルギーを得て回転させられ、その回転出力を回転軸5dを介してコンプレッサ部5b及びハイブリッド発電機モータ5cへと伝達する。コンプレッサ部5bでは、吸入した空気(外気)を圧縮して空気冷却器18を介して給気マニホールドへと送る。
ハイブリッド発電機モータ5cでは、タービン部5aから得た回転出力によって発電し、PMS72の指示に基づいて、その発電出力を船内電力系統30へと供給する。供給されたハイブリッド発電機モータ5cからの電力は、アンモニア生成器2へと送られ、水素製造部81の電気分解や、中間生成ガスおよび生成されたアンモニアを搬送する搬送ポンプ等に用いられる。また、発電用ディーゼルエンジン61,63にて発電された電力も同様に船内電力系統30に供給される。
また、軸発電機モータ13では、PMS72の指示に基づいて、メインエンジン3の駆動力を得て発電を行い、船内電力系統30に対して電力供給する。
発電用ディーゼルエンジン61,63でも、PMS72の指示に基づいて発電を行い、船内電力系統30に対して電力供給する。
アンモニア生成器2では、ハイブリッド発電機モータ5、軸発電機モータ13、発電用ディーゼルエンジン61,63からの電力を用いて、水素製造部81にて製造された水素と窒素製造部83にて製造された窒素とからアンモニアが生成される。
【0046】
ハイブリッド発電機モータ5c、軸発電機モータ13、発電用ディーゼルエンジン61,63からの発電出力は、船内電力系統30に接続された蓄電池67に供給される。
船内電力系統30には、太陽光発電装置69が接続されており、太陽光によって発電された電力が船内電力系統30に供給され、船内電力系統30に接続された図示しない負荷にて利用されるとともに、蓄電池67に充電される。
船舶が接岸した場合には、外部電力入力部71を介して陸上から電力の供給を受け、蓄電池67に充電される。この場合には、発電用ディーゼルエンジン61,63が停止されていることが好ましい。
【0047】
次に、図5を用いて、船舶の航行時における電力制御について説明する。図5(a)乃至(g)の各軸の横軸は運転時間を示し、出発地の港湾に接岸した状態から港湾内(ECA内)を航行した後、外洋上(ECA外)を航行し、目的地の港湾内(ECA内)に入り接岸されるまでを示している。
図5の(a)の縦軸はプロペラ軸10(図1参照)の出力(kW)を示し、(b)の縦軸は船内プラントのトータルでの熱効率向上(%)を示し、(c)の縦軸はアンモニア生成器2にて生成されるアンモニア生成量(Nm3/h)を示し、(d)の縦軸は船内プラントにて必要とされる必要電力(kW)を示し、(e)の縦軸は船内プラントの発生電力(kW)を示し、(f)の縦軸はSCR触媒部4上流側の排ガス温度(℃)を示し、(g)の縦軸はSCR触媒部4の触媒温度(℃)を示す。
【0048】
[出発港湾内(ECA内)]
ECA内である港湾を出発する際には、図5(a)に示すように、メインエンジン3が起動されてプロペラ軸出力が漸次増大させられる。このときに船舶を離岸させるためのサイドスラスタが起動されるので、図5(d)の領域Aに示すように必要電力が増大する。サイドスラスタに供給される電力は、図5(e)に示すように、領域Cの発電用ディーゼルエンジン(DG)61,63からの電力と、領域Bの蓄電池67に蓄電された電力が用いられる。このように、蓄電池67の電力をサイドスラスタの供給電力の一部として用いるので、発電用ディーゼルエンジン61,63の負荷を相対的に減らすことができる。また、蓄電池67には、前回の航行時に排熱回収された電力及び/または接岸時に予め陸上から供給した電力が蓄電されている。したがってメインエンジン3に比べて熱効率の低い発電用ディーゼルエンジン61、63の燃料消費を抑えることができるため、図5(b)の領域Dに示すように、離岸時に熱効率を向上させることができる。
なお、図5(d)の領域Eに示すように、運転時間にかかわらずある程度一定の船内消費電力は常に消費される。また、図5(d)の領域Lは電気ヒータ73に用いられる電力、領域Mはアンモニア生成器2に用いられる電力を示す。
【0049】
また、メインエンジン3によるプロペラ軸出力が増大するにつれて、排ガス中のNOxが増大するので、図5(c)に示すようにアンモニア生成量が増大する。一方、排ガス温度は、図5(f)に示すように所定値T1(℃)を示すが、SCR触媒部4が適切に作動する温度範囲(図5(g)の領域F参照)、即ち触媒が活性化しかつ劣化が防止される温度範囲に満たないので、電気ヒータ73(図1参照)によって排ガスを加熱し、所望温度T2(℃)まで上昇させる。このとき電気ヒータ73に供給される電力は、図5(e)の領域Gに示すように、軸発電機モータ(SGM)13の発電電力および排熱回収した電力(ハイブリッド排気タービン過給機5)が用いられる。これにより、図5(b)の領域Hに示すように熱効率が向上する。
メインエンジン3の出力が増大してプロペラ軸出力が増大すると、軸発電機モータ(SGM)13およびハイブリッド排気タービン過給機5による発電量が徐々に増大し、発電用ディーゼルエンジン61,63の負荷が徐々に減少する。
そして、時刻t1を経過すると、メインエンジン3の回転数は定格となり、アンモニア生成量が一定となる。
【0050】
港湾内(ECA内)を航行する場合には、以下のように排ガス脱硝を行う。この場合、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を閉とし、アンモニア生成器用開閉弁24及びSCR用開閉弁26を開とする。
ハイブリッド排気タービン過給機5のタービン部5aから排出された排ガスは、第2排気管L2を通り、アンモニア生成器2から供給されるアンモニア(ガス)と混合される。アンモニアと混合された排ガスは、SCR用開閉弁26を介してSCR触媒部4へと導かれる。SCR触媒部4へ導かれる前に、排ガス温度が所定値未満の場合には図示しない制御部によって電気ヒータ73が起動され、排ガスが加熱される。一方、排ガス温度が所定値以上の場合には、図示しない制御部によって電気ヒータ73が停止される。電気ヒータ73を通過した排ガスは、SCR触媒部4にて脱硝された後、図示しない煙突から外部へと排出される。
【0051】
[外洋航行(ECA外)]
外洋航行の際には、ECA外となるので、排ガス脱硝を行わない。この場合、図1に示すように、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を開とし、アンモニア生成器用開閉弁24及びSCR用開閉弁26を閉とする。ハイブリッド排気タービン過給機5のタービン部5aから排出された排ガスは、第2排気管L2を通り、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を介して、排ガスエコノマイザ11へと導かれる。排ガスエコノマイザ11では、蒸気が生成され、船内の各所にて使用される。排ガスエコノマイザ11から排出された排ガスは、煙突から外部へと排出される。
【0052】
排ガス脱硝を行わないので、図5(c)に示すように、アンモニア生成量は0となる。また、電気ヒータ73による加熱も停止するので、図5(f)に示すように排ガス温度はT1(℃)に低下し、図5(g)に示すようにSCR触媒温度も徐々に低下していく。
外洋航行では、軸発電機モータ13をモータとして駆動してメインエンジン3を加勢する。図5(a)の領域Jが軸発電機モータ13が負担するプロペラ軸出力となり、これによりメインエンジン3が負担する出力を低下させることができる。軸発電機モータ13へ供給する電力(図5(e)の領域K参照)としては、排熱回収して蓄電池67に蓄えられた余剰電力が用いられる。特に、アンモニア生成器2及び電気ヒータ73に電力を供給する必要がないので(図5(d)参照)、排熱回収によって得られた電力の余剰分を軸発電機モータ13に対して有効に利用することができる。これにより、図5(b)の領域Iに示すように熱効率が向上する。
【0053】
[目的地港湾内(ECA内)]
目的地の港湾内では、出発港湾内の逆の動作となる。
アンモニア生成器用開閉弁24及びSCR用開閉弁26を開とし、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を閉とする。
時刻t3となり目的地港湾内に入ると、排ガス脱硝を行うため、図5(c)に示すようにアンモニア生成を開始し、電気ヒータ73による排ガス加熱を開始する。そして、時刻t4を過ぎるとプロペラ軸出力を減少させるようにメインエンジン3の負荷を減少させる。これに伴い、図5(c)に示すようにアンモニア生成量も減少し、図5(e)に示すように排熱回収量も減少する。そして、接岸時にはサイドスラスタが起動する(図5(e)の領域B参照)ため、出発時と同様に蓄電池67の電力を用いることによって熱効率を向上させる(図5(b)の領域D参照)。
【0054】
上述の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
アンモニア生成器2により、水および空気を原料として船舶上にてアンモニアを生成できるので、液体アンモニア(例えばアンモニア水溶液)や尿素等の還元剤を貯蔵するスペースを船舶上に設ける必要がない。したがって、大きなスペースを確保することなく舶用脱硝システムを船舶内に設置することができる。
【0055】
メインエンジン3の排気ガスによって発電するハイブリッド排気タービン過給機5のハイブリッド発電機モータ5cの発電出力がアンモニア生成器2に対して供給されるので、アンモニア生成器2を少ない消費エネルギーで運転することができる。また、メインエンジン3の排気エネルギーを有効利用できるので、別途設けられたディーゼルエンジン発電機等の発電用補機の容量増大や増台を回避することができる。
【0056】
プロペラ軸10を加勢する軸発電機モータ13が設けられているので、メインエンジン3の燃料消費率を低減させることができる。さらに、プロペラ軸10を加勢する軸発電機モータ13は、船内電力系統30から電力供給を受けるようになっているので、排熱回収した電力を用いて軸発電機モータ13を駆動させることにより、熱効率の高いシステムを構築することができる。特に、排ガス脱硝が必要とされない海域(ECA外)を航行する場合にはアンモニア生成器2や電気ヒータ73に電力を供給する必要がないので、排熱回収によって得られた電力の余剰分を軸発電機モータに供給して有効に利用することができる。
【0057】
アンモニア生成器2に対して電力を供給する船内電力系統30に接続された蓄電池67を備えているので、ディーゼルエンジン3に負荷変動が生じてハイブリッド排気タービン過給機5の発電出力に変動が生じても、蓄電池67の電力を用いることができる。特に、ディーゼルエンジン3の低負荷時にハイブリッド排気タービン過給機5からの発電出力が十分に得られない場合に有用である。したがって、アンモニア生成器2に対して安定して電力を供給することができる。さらに、蓄電池67はハイブリッド排気タービン過給機5と同じ船内電力系統30に接続されているので、発電機で発生した余剰電力を蓄電することができる。
また、蓄電池を備えることによって負荷変動を抑えることができるので、発電用ディーゼルエンジン61,63の容量およびサイズを低減することができる。
【0058】
電気ヒータ73によってSCR触媒部4に流入する排ガス温度を上昇させることができるので、SCR触媒の被毒を防止することができる。さらに、電気ヒータ73には、メインエンジン3の排ガスから熱回収して発電した電力が用いられるので、省エネルギーにて電力を供給することができる。
【0059】
船内電力系統30に対して太陽光発電装置69を接続し、太陽光発電装置69の発電出力を蓄電池67に供給することとしたので、さらに省エネルギーにて電力供給が可能となる。
【0060】
陸上から電力の供給を受ける外部電力入力部71が船内電力系統30に接続されているので、船舶の接岸時に電力の供給を受けることができる。これにより、船舶の接岸時には蓄電池67からサイドスラスタに多くの電力を供給できるため、発電用ディーゼルエンジン61,63の負荷を減少させることができ、トータルでの熱効率が向上する。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図6及び図7を用いて説明する。上述した第1実施形態では、排熱回収システム17としてハイブリッド排気タービン過給機5(図2参照)を用いたのに対して、本実施形態では、パワータービン(ガスタービン)を用いる点が異なる。したがって、その他の共通する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
排気マニホールド15には、第3排気管L3が接続されており、この第3排気管L3を介してパワータービン7の入口側へとメインエンジン3の排ガスが導かれる。このように、メインエンジン3の排ガスの一部が、排気タービン過給機5’に供給される前に抽ガスされてパワータービン7に供給されるようになっている。この抽ガスされた排ガスによって、パワータービン7が回転駆動される。
パワータービン7の出口側から排出された排ガスは、第4排気管L4を介して、第2排気管L2(図1参照)へと導かれるようになっている。
【0063】
パワータービン7からの回転出力は、回転軸32を介して、パワータービン側発電機33に伝達されるようになっている。パワータービン側発電機33にて発電された出力は、周波数変換器35及び開閉スイッチ36を介して船内電力系統30へと供給されるようになっている。これにより、パワータービン側発電機33の出力電力がアンモニア生成器2へと供給される。
パワータービン側発電機33と周波数変換器35との間には、ロードバンク44が設けられている。ロードバンク44としては、負荷抵抗装置が用いられ、パワータービン側発電機33からの余剰電力を消費し、出力変動を低減するために用いられる。
【0064】
また、第3排気管L3には、パワータービン7に導入するガス量を制御する排ガス量調整弁37が設けられている。また、排ガス量調整弁37が遮断したときに、排気タービン過給機5’のタービン部への過過給(エンジンの最適運転圧力を超えての過給)を防止するためにバイパス弁40及びオリフィス42が、第3排気管L3と第4排気管L4との間に設けられている。
【0065】
図7(第1実施形態の図4に対応)に示すように、パワータービン7を用いて排熱回収しパワータービン側発電機33(P/T)にて発電する本実施形態では、メインエンジン3の負荷が所定値以上になった場合に、軸発電機モータ(SGM)13に次いでパワータービン7による発電が開始され、徐々にその発電量が増大される。これは、メインエンジン負荷が所定値を超えないと、排熱回収できる程度にエンジンの排気エネルギーが大きくならないからである。なお、このマップは一例であって、船内の発電システムに応じて適宜決定される。
図7に基づいて得られたパワータービン側発電機33の目標発電量は、図6に示した排ガス量調整弁37の開度によって制御される。
【0066】
本実施形態によれば、第1実施形態の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
メインエンジン3の排ガスを駆動源とするパワータービン7によって発電するパワータービン側発電機33の出力電力を、船内電力系統30を介してアンモニア生成器2に用いることとしたので、メインエンジン3の排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0067】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図8及び図9を用いて説明する。上述した第1実施形態では、排熱回収システム17としてハイブリッド排気タービン過給機5(図2参照)を用いたのに対して、本実施形態では、蒸気タービンを用いる点が異なる。したがって、その他の共通する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
図8に示すように、蒸気タービン9は、排ガスエコノマイザ11によって生成された蒸気が第1蒸気管J1を介して供給されて回転駆動されるようになっている。
排ガスエコノマイザ11には、第2排気管L2を介して排出されるメインエンジン3の排ガスが導入されるようになっている。排ガスエコノマイザ11で生成された蒸気は第1蒸気管J1を介して蒸気タービン9に導入される。蒸気タービン9で仕事を終えた蒸気は、第2蒸気管J2によって排出されて図示しないコンデンサ(復水器)に導かれるようになっている。
【0069】
蒸気タービン9からの回転出力は、回転軸52を介して、蒸気タービン側発電機49(S/T)に伝達されるようになっている。蒸気タービン側発電機49にて発電された出力は、周波数変換器35及び開閉スイッチ36を介して船内電力系統30へと供給されるようになっている。これにより、蒸気タービン側発電機49の出力電力がアンモニア生成器2へと供給される。
【0070】
第1蒸気管J1には、蒸気タービン9に導入する蒸気量を制御する蒸気量調整弁54と、非常時に蒸気タービン9への蒸気の供給を遮断する非常停止用緊急遮断弁55とが設置されている。また、第1蒸気管J1と第2蒸気管J2との間には、蒸気タービン9をバイパスする蒸気流量を調整するための蒸気バイパス弁57が設けられている。
【0071】
図9(第1実施形態の図4に対応)に示すように、蒸気タービン9を用いて排熱回収し蒸気タービン側発電機49にて発電する本実施形態では、メインエンジン3の負荷が所定値以上になった場合に蒸気タービン9による発電が開始され、次いで軸発電機モータ(SGM)13による発電が開始され、徐々にその発電量が増大される。なお、このマップは一例であって、船内の発電システムに応じて適宜決定される。
図9に基づいて得られた蒸気タービン側発電機49の目標発電量は、図8に示した蒸気量調整弁54の開度によって制御される。
【0072】
本実施形態によれば、第1実施形態の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
メインエンジン3の排ガスを用いた排ガスエコノマイザ11によって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービン9をも用いて発電することとしたので、さらにメインエンジン3の排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0073】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について、図10及び図11を用いて説明する。上述した第2実施形態では、排熱回収システム17としてパワータービン7を用いた構成としたのに対して、本実施形態では、パワータービン及び蒸気タービンを用いる構成とした点が異なる。したがって、その他の共通する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
図10に示すように、蒸気タービン9は、排ガスエコノマイザ11によって生成された蒸気が第1蒸気管J1を介して供給されて回転駆動されるようになっている。
排ガスエコノマイザ11には、第2排気管L2を介してメインエンジン3から排出される排ガスと、パワータービン7の出口側から第4排気管L4を介して排出される排ガスとが、導入されるようになっている。排ガスエコノマイザ11で生成された蒸気は第1蒸気管J1を介して蒸気タービン9に導入される。蒸気タービン9で仕事を終えた蒸気は、第2蒸気管J2によって排出されて図示しないコンデンサ(復水器)に導かれるようになっている。
【0075】
パワータービン7と蒸気タービン9とは直列に結合されて異種タービン側発電機50を駆動するようになっている。すなわち、発電機50には、パワータービン7及び蒸気タービン9といった異なる種類(異種)のタービンが同軸上に接続されている。異種タービン側発電機50にて発電された出力は、周波数変換器35及び開閉スイッチ36を介して船内電力系統30へと供給されるようになっている。これにより、異種タービン側発電機50の出力電力がアンモニア生成器2へと供給される。
【0076】
蒸気タービン9の回転軸52は図示しない減速機およびカップリングを介して異種タービン側発電機50に接続され、また、パワータービン7の回転軸32は図示しない減速機およびクラッチ53を介して蒸気タービン9の回転軸52と連結されている。クラッチ53としては、所定の回転数にて嵌脱されるクラッチが用いられ、例えばSSS(Synchro-Self-Shifting)クラッチが好適に用いられる。
【0077】
第1蒸気管J1には、蒸気タービン9に導入する蒸気量を制御する蒸気量調整弁54と、非常時に蒸気タービン9への蒸気の供給を遮断する非常停止用緊急遮断弁55とが設置されている。また、第1蒸気管J1と第2蒸気管J2との間には、蒸気タービン9をバイパスする蒸気流量を調整するための蒸気バイパス弁57が設けられている。
【0078】
図11(第1実施形態の図4に対応)に示すように、パワータービン7及び蒸気タービン9を用いて排熱回収し異種タービン側発電機50にて発電する本実施形態では、メインエンジン3の負荷が所定値以上になった場合に蒸気タービン9による発電が開始され、さらにメインエンジン3の負荷が上昇した場合に軸発電機モータ(SGM)13、次いでパワータービン7による発電が開始され、徐々にそれらの発電量が増大される。なお、このマップは一例であって、船内の発電システムに応じて適宜決定される。
図11に基づいて得られた異種タービン側発電機50の目標発電量は、図10に示した排ガス量調整弁37及び蒸気量調整弁54の開度によって制御される。
【0079】
本実施形態によれば、第1実施形態および第2実施形態の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
メインエンジン3の排ガスを駆動源とするパワータービン7に加えて、メインエンジン3の排ガスを用いた排ガスエコノマイザ11によって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービン9をも用いて発電することとしたので、さらにメインエンジン3の排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0080】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について、図12及び図13を用いて説明する。上述した第2実施形態では、排熱回収システム17としてパワータービン7を用いた構成としたのに対して、本実施形態では、熱媒体タービンを用いる構成とした点が異なる。したがって、その他の共通する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
図12に示すように、第2冷却水管C2に、ジャケット水用熱交換器90が設けられている。ジャケット水用熱交換器90には、循環ポンプ48によって第1冷却水管C1およびシリンダ部13を通過して循環するジャケット水が導かれるようになっており、冷却水タンク46から導かれる冷却水を加熱するようになっている。
熱交換器89には、冷却水タンク46から循環ポンプ47により押し出され、熱交換器90及び第2冷却水管C2を介して第2空気冷却器16を通り段階的に加熱された冷却水が、第3冷却水管C3により導入される。
熱媒体タービン8は、熱交換器89によって蒸気化した熱媒体が第1熱媒体管R1を介して供給されて回転駆動するようになっている。熱媒体タービン8で仕事を終えた蒸気状の熱媒体は、エコノマイザ95で低温の熱媒体と熱交換した後、コンデンサ97で液化され、系内を循環ポンプ99で循環する。
なお、図12では、熱媒体はジャケット水用熱交換器90及び第2空気冷却器16を通過した冷却水と熱交換する構成としたが、エンジン排ガスと熱交換した加熱水と熱交換した構成としても良い。
【0082】
熱媒体タービン8からの回転出力は、回転軸91を介して、熱媒体タービン側発電機93に伝達されるようになっている。熱媒体タービン側発電機93にて発電された出力は、周波数変換器35及び開閉スイッチ36を介して船内系統30へと供給されるようになっている。これにより、熱媒体タービン側発電機93の出力電力がアンモニア生成器2へと供給される。
【0083】
上記構成では、熱媒体タービン側発電機9での発電量は常時最大限取り出し、その電力供給量が船内系統30の需要に対して不足する場合に、第1及び/または第2発電用ディーゼルエンジン61,63の負荷制御を行う。
【0084】
図13に示すように、熱媒体タービン8を用いて排熱回収し熱媒体タービン側発電機93(ORC)にて発電する本実施形態では、メインエンジン3の負荷が所定値以上になった場合に熱媒体タービン8による発電が開始され、徐々にその発電量が増大される。これは、メインエンジン負荷が所定値を超えないと、排熱回収できる程度にエンジン冷却水及び/または排気エネルギーが大きくならないからである。なおこのマップは一例であって、船内の発電システムに応じて適宜決定される。
【0085】
本実施形態によれば、上記各実施形態の作用効果に加え、以下の作用を奏する。
ディーゼルエンジン3の冷却水と熱交換され、蒸気化した熱媒体を駆動源とする熱媒体タービン8によって発電する熱媒体タービン側発電機93の出力電力を、船内系統30を介してアンモニア生成器2に用いることとしたので、ディーゼルエンジン3の低温排熱エネルギーを有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 舶用脱硝システム
2 アンモニア生成器
3 メインエンジン
4 SCR触媒部
5 ハイブリッド排気タービン過給機
5c ハイブリッド発電機モータ(過給機側発電機)
7 パワータービン
8 熱媒体タービン
9 蒸気タービン
11 排ガスエコノマイザ(排ガスボイラ)
30 船内電力系統
33 パワータービン側発電機
49 蒸気タービン側発電機
50 異種タービン側発電機
70 エンジンメインコントローラ
72 パワーマネジメントシステム(PMS;発電出力制御部)
73 電気ヒータ
81 水素製造部
83 窒素製造部
93 熱媒体タービン側発電機
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばディーゼルエンジンからの排ガスの脱硝に用いて好適な船舶に搭載される舶用脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに舶用脱硝システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶推進用のディーゼルエンジン(メインエンジン)から発生する窒素酸化物(NOx)を除去するために、船舶に脱硝装置が搭載される。
下記特許文献1には、脱硝触媒の還元剤として用いるアンモニアを船舶上にて生成可能とした発明が開示されている。アンモニアが船舶上で生成できるので、液体アンモニアを船舶へと運搬し、船舶内で貯蔵する必要がない。また、液体アンモニアは危険物として扱われるので、漏洩検知センサや二重配管といった特別な貯蔵設備を設ける必要があるが、船舶上にてアンモニアを必要量だけ生成すれば特別な貯蔵設備を設ける必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−292531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶上でアンモニアを生成するには水電気分解や搬送ポンプ等を駆動するための電気エネルギーが必要とされる。上記特許文献1では、補機としてのディーゼルエンジン発電機からの電力を利用することが示されている。
しかし、一般的にディーゼルエンジン発電機はメインエンジンよりも熱効率が低いため、ディーゼルエンジン発電機から電力を得るのでは、アンモニアを生成するためにエネルギーを更に浪費することになり、省エネルギーの観点から好ましくない。
【0005】
また、船内に余剰電力が発生した場合、その余剰電力を有効に利用することが望まれる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、脱硝用のアンモニアを生成するアンモニア生成器に供給する電力を省エネルギーにて安定的に供給可能とされた舶用脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに舶用脱硝システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の舶用脱硝システムおよびこれを備えた船舶ならびに舶用脱硝システムの制御方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる舶用脱硝システムは、水から水素を製造する水素製造部、及び、空気から窒素を製造する窒素製造部を有し、前記水素製造部によって製造された水素および前記窒素製造部によって製造された窒素からアンモニアを生成するとともに、船内電力系統から電力が供給されるアンモニア生成器と、舶用推進用のメインエンジンの排ガス通路に設けられ、前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアとともに排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記メインエンジンの排ガスエネルギーを用いて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電機と、前記メインエンジンによって駆動されて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電運転が可能とされるとともに、前記船内電力系統から供給された電力によって駆動されてプロペラ軸を加勢する軸発電機モータと、前記アンモニア生成器への供給電力、前記発電機の発電出力、並びに前記軸発電機モータへの供給電力および発電出力を制御する発電出力制御部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
アンモニア生成器は、水から水素を製造する水素製造部と、空気から窒素を製造する窒素製造部とを有し、水素製造部および窒素製造によって製造された水素および窒素によってアンモニアを生成する。このように、水および空気を原料として船舶上にてアンモニアを生成できるので、液体アンモニア(例えばアンモニア水溶液)や尿素等の還元剤を貯蔵するスペースを船舶上に設ける必要がない。したがって、大きなスペースを確保することなく舶用脱硝システムを船舶内に設置することができる。
また、メインエンジンの排ガスエネルギーから回収された発電出力は、船内電力系統を介してアンモニア生成器に用いられる。これにより、アンモニア生成器を少ない消費エネルギーで運転することができるので、別途設けられたディーゼルエンジン発電機等の発電用補機の容量増大や増台を回避することができる。
また、プロペラ軸を加勢する軸発電機モータが設けられているので、メインエンジンの燃料消費率を低減させることができる。さらに、プロペラ軸を加勢する軸発電機モータは、船内電力系統から電力供給を受けるようになっているので、発電機によって排熱回収した電力を用いて軸発電機モータを駆動させることにより、熱効率の高いシステムを構築することができる。特に、排ガス脱硝が必要とされない海域を航行する場合にはアンモニア生成器に電力を供給する必要がないので、排熱回収によって得られた電力の余剰分を軸発電機モータに対して有効に利用することができる。
【0009】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記船内電力系統に接続された蓄電池を備えていることを特徴とする。
【0010】
船内電力系統に接続された蓄電池を備えているので、メインエンジンに負荷変動が生じて発電機の発電出力に変動が生じても、蓄電池の電力を用いることができる。特に、メインエンジンの低負荷時に発電機からの発電出力が十分に得られない場合に有用である。したがって、船内電力系統を介してアンモニア生成器に対して安定して電力を供給することができる。さらに、蓄電池は発電機と同様に船内電力系統に接続されているので、発電機で発生した余剰電力を蓄電することができる。また、メインエンジンの減速時に、蓄電池にて動力回収することとしても良い。
船舶に発電用エンジンが設けられている場合には、蓄電池を備えることによって負荷変動を抑えることができるので、発電用エンジンの容量およびサイズを低減することができる。
【0011】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記船内電力系統には、太陽光発電装置を接続することができる。
【0012】
電力系統に対して太陽光発電装置が接続されているので、太陽光発電装置の発電出力を蓄電池に供給することができる。これにより、さらに安定した電力供給が可能となる。
【0013】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記船内電力系統には、船舶の外部の電源から電力の供給を受ける外部電力入力部を接続することができる。
【0014】
船舶の外部の電源から電力の供給を受ける外部電力入力部が電力系統に接続されているので、例えば船舶の接岸時に外部(陸側)から電力の供給を受けることができる。これにより、船舶の接岸時には発電用エンジンを起動する必要がなくなり、いわゆるゼロエミッションを達成することができる。
【0015】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記脱硝触媒部に導入される排ガスを加熱する電気ヒータを備え、該電気ヒータに対して、前記船内電力系統から電力供給が行われることを特徴とする。
【0016】
脱硝触媒部として主に用いられている選択接触還元法(SCR)のSCR触媒では、排ガス温度が低温になるほど被毒のおそれがある。本発明によれば、電気ヒータによって排ガス温度が上昇するのでSCR触媒の被毒を防止することができる。
また、電気ヒータは、船内電力系統に接続されているので、軸発電機モータから電力供給を受けることができる。例えば、メインエンジン起動時には排ガスエネルギーが低く排熱回収できないので、この様な場合には軸発電機モータによって発電した電力を電気ヒータに供給することができるので有効である。
【0017】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記メインエンジンの排気タービン過給機の回転出力を得て発電する過給機側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
【0018】
メインエンジンの排気タービン過給機の回転出力を得て発電する過給機側発電機を備えた過給機として、ハイブリッド排気タービン過給機が知られている。この過給機側発電機を船内電力系統に電力供給する発電機として用いることとした。これにより、メインエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0019】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンによって発電するパワータービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
【0020】
メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンによって発電するパワータービン側発電機を船内電力系統に電力供給する発電機として用いることとした。これにより、メインエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0021】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する蒸気タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
【0022】
メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する蒸気タービン側発電機を船内電力系統に電力供給する発電機として用いることとした。これにより、メインエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0023】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービン、及び、前記メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する異種タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
【0024】
異種タービン側発電機には、パワータービン及び蒸気タービンといった異なる種類(異種)のタービンが接続されている。この異種タービン側発電機を用いることにより、メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンに加えて、メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンをも用いて発電することとしたので、さらにメインエンジンの排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0025】
さらに、本発明の舶用脱硝システムによれば、前記メインエンジンのジャケットや空気冷却器の冷却水及び/または排ガスと熱交換した加熱水と熱交換され、蒸気化した熱媒体を駆動源とするタービンによって発電する熱媒体タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする。
前記熱媒体は、水よりも沸点の低い代替フロン(例えばR−245fa、R−134aなど)や、ペンタン、ブタンなどの有機熱媒体を使ったシステムが一般的に知られており、ランキンサイクルと呼ばれている。
【0026】
また、本発明の船舶は、船舶推進用のメインエンジンと、上記のいずれかに記載の舶用脱硝システムとを備えていることを特徴とする。
【0027】
上記のいずれかの舶用脱硝システムは、効率良く安定した電力供給が可能とされているので、船舶に搭載するのに好適である。
【0028】
また、本発明の舶用脱硝システムの制御方法は、水から水素を製造する水素製造部、及び、空気から窒素を製造する窒素製造部を有し、前記水素製造部によって製造された水素および前記窒素製造部によって製造された窒素からアンモニアを生成するとともに、船内電力系統から電力が供給されるアンモニア生成器と、舶用推進用のメインエンジンの排ガス通路に設けられ、前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアとともに排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、前記メインエンジンの排ガスエネルギーを用いて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電機と、前記メインエンジンによって駆動されて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電運転が可能とされるとともに、前記船内電力系統から供給された電力によって駆動されてプロペラ軸を加勢する軸発電機モータとを備えた舶用脱硝システムの制御方法であって、発電出力制御部によって、前記アンモニア生成器への供給電力、前記発電機の発電出力、並びに前記軸発電機モータへの供給電力および発電出力を制御することを特徴とする。
【0029】
アンモニア生成器は、水から水素を製造する水素製造部と、空気から窒素を製造する窒素製造部とを有し、水素製造部および窒素製造によって製造された水素および窒素によってアンモニアを生成する。このように、水および空気を原料として船舶上にてアンモニアを生成できるので、液体アンモニア(例えばアンモニア水溶液)や尿素等の還元剤を貯蔵するスペースを船舶上に設ける必要がない。したがって、大きなスペースを確保することなく舶用脱硝システムを船舶内に設置することができる。
また、メインエンジンの排ガスエネルギーから回収された発電出力は、船内電力系統を介してアンモニア生成器に用いられる。これにより、アンモニア生成器を少ない消費エネルギーで運転することができるので、別途設けられたディーゼルエンジン発電機等の発電用補機の容量増大や増台を回避することができる。
また、プロペラ軸を加勢する軸発電機モータが設けられているので、メインエンジンの燃料消費率を低減させることができる。さらに、プロペラ軸を加勢する軸発電機モータは、船内電力系統から電力供給を受けるようになっているので、発電機によって排熱回収した電力を用いて軸発電機モータを駆動させることにより、熱効率の高いシステムを構築することができる。特に、排ガス脱硝が必要とされない海域を航行する場合にはアンモニア生成器に電力を供給する必要がないので、排熱回収によって得られた電力の余剰分を軸発電機モータに対して有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、脱硝用のアンモニアを生成するアンモニア生成器に供給する電力を省エネルギーにて安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる舶用脱硝システムが設けられたメインエンジンまわりを示した概略構成図である。
【図2】図1の排熱回収システムの具体的構成を示した概略構成図である。
【図3】図1に示したアンモニア生成器の概略を示した概略構成図である。
【図4】第1実施形態におけるメインエンジンの負荷に対する発電量を示したマップである。
【図5】船舶の運転時間に対して各制御量の変化を示したタイミングチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる排熱回収システムの具体的構成を示した概略構成図である。
【図7】第2実施形態におけるメインエンジンの負荷に対する発電量を示したマップである。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる排熱回収システムの具体的構成を示した概略構成図である。
【図9】第3実施形態におけるメインエンジンの負荷に対する発電量を示したマップである。
【図10】本発明の第4実施形態にかかる排熱回収システムの具体的構成を示した概略構成図である。
【図11】第4実施形態におけるメインエンジンの負荷に対する発電量を示したマップである。
【図12】本発明の第5実施形態にかかる排熱回収システムを示した概略構成図である。
【図13】第5実施形態におけるメインエンジンの負荷に対する発電量を示したマップである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1には、本実施形態にかかる舶用脱硝システム1が設けられたメインエンジン3まわりの概略構成が示されている。
船舶内には、船舶推進用のメインエンジン(例えばディーゼルエンジン)3と、メインエンジン3からの排ガスを脱硝するための脱硝システム1と、メインエンジン3の排ガスエネルギーを回収して発電する排熱回収システム17と、メインエンジン3の排ガスによって蒸気を生成する排ガスエコノマイザ(排ガスボイラ)11とを備えている。
【0033】
メインエンジン3の出力軸には軸発電機モータ13が接続されており、この軸発電機モータ13にはプロペラ軸10を介してスクリュープロペラ12が取り付けられている。
軸発電機モータ13は、船内電力系統30から電力を得てメインエンジン3を加勢するモータ運転を行う一方で、メインエンジン3によって駆動されて発電する発電運転を行うことが可能となっている。軸発電機モータ13の動作は、後述するパワーマネジメントシステム72によって制御される。
メインエンジン3の各気筒のシリンダ部の排気ポートは排ガス集合管としての排気マニホールド15に接続されている。排気マニホールド15は、排熱回収システム17と接続されている。
【0034】
図2には、排熱回収システム17の一例としてのハイブリッド排気タービン過給機5が示されている。
同図に示されているように、排気マニホールド15が、第1排気管L1を介してハイブリッド排気タービン過給機5のタービン部5aの入口側と接続されている。
一方、メインエンジン3の各シリンダ部の給気ポートと接続された給気マニホールドに対して、ハイブリッド排気タービン過給機5のコンプレッサ部5bが給気管K1を介して接続している。また、給気管K1には空気冷却器(インタークーラ)18が設置されている。
【0035】
ハイブリッド排気タービン過給機5は、タービン部5aと、コンプレッサ部5bと、ハイブリッド発電機モータ(過給機側発電機)5cとを備えている。タービン部5a、コンプレッサ部5b及びハイブリッド発電機モータ5cは、回転軸5dによって同軸にて連結されている。
ハイブリッド発電機モータ5cは、タービン部5aによって得られる回転出力を得て発電する一方で、船内電力系統30から電力を得てコンプレッサ部5bの回転を加勢する。ハイブリッド発電機モータ5cと船内電力系統30との間には、ハイブリッド発電機モータ5c側から順に、交流電力を直流電力に変換するコンバータ19と、直流電力を交流電力に変換するインバータ20と、開閉スイッチ21とが設けられている。
ハイブリッド発電機モータ5cによって発電された電力は、後述するように、船内電力系統30を介してアンモニア生成器2へと供給される。
【0036】
図1に示すように、船内電力系統30には、発電機62を備えた第1発電用ディーゼルエンジン61、発電機64を備えた第2発電用ディーゼルエンジン63、蓄電池67、太陽光発電装置69、外部電力入力部71が並列に接続されている。
蓄電池67としては、例えばリチウムイオン二次電池が好適に用いられる。蓄電池67には、第1発電用ディーゼルエンジン61、第2発電用ディーゼルエンジン63、太陽光発電装置69、ハイブリッド発電機モータ5cからの電力が蓄電されるようになっている。また、蓄電池67の放電および充電は、パワーマネジメントシステム72によって行われる。
外部電力入力部71には、船舶の外部(すなわち陸上)の電源から電力供給が行われるようになっている。外部電力入力部71から供給された電力によって、蓄電池67が充電される。
船内電力系統30は、アンモニア生成器2および後述する電気ヒータ73に接続されており、これらアンモニア生成器2および電気ヒータ73に電力が供給されるようになっている。
【0037】
排ガスエコノマイザ11は、排ガスエコノマイザ用排気管L5に接続されており、メインエンジン3から排出される排ガスと、給水管(図示せず)によって供給された水とを熱交換させて蒸気を発生させる。排ガスエコノマイザ11の上流側には、排ガスの流出入を制御する排ガスエコノマイザ用開閉弁22が設けられている。排ガスエコノマイザ用開閉弁22の切替タイミングは、エンジンメインコントローラ70によって決定される。
【0038】
舶用脱硝システム1は、アンモニア生成器2と、選択接触還元法(SCR;Selective Catalytic Reduction)に用いられるSCR触媒部4とを備えている。アンモニア生成器2及びSCR触媒部4は、ハイブリッド排気タービン過給機5の下流側の第2排気管L2に接続されており、排ガス流れの上流側にアンモニア生成器2が配置され、下流側にSCR触媒部4が配置されている。
図3に示されているように、アンモニア生成器2は、水から水素を製造する水素製造部81と、空気から窒素を製造する窒素製造部83と、水素および窒素からアンモニアを生成するアンモニア生成部80とを備えている。
水素製造部81に用いられる水は、船舶に搭載された造水機85によって海水から製造された真水を、更に、船舶に搭載された純水製造機87によって製造された純水が用いられる。水素製造部81には、電解質としてイオン交換膜を用いて純水を電気分解する固体高分子電解質膜法が用いられる。水素製造部81から発生した水素は、水素ドライヤー(図示せず)で脱湿された後、アンモニア生成部80へと送られる。
窒素製造部83では、PSA(Pressure Swing Adsorption)法等によって空気から窒素が得られる。窒素製造部83で得られた窒素は、アンモニア生成部80へと送られる。
アンモニア生成部80では、水素と窒素とが混合加熱され、ルテニウム触媒等の反応触媒の下でアンモニアが生成される。
【0039】
アンモニア生成器2では、水素製造部81の電気分解等のように電力を消費するため、この電力として、上述したハイブリッド発電機モータ5cからの電力が利用される。
アンモニア生成器2にて生成されたアンモニア(ガス)は、図1に示すように、アンモニア生成器用開閉弁24を介して、第2排気管L2に直接供給される。このように、生成されたアンモニアは、途中で貯留されることなく排ガス中に供給されるようになっている。アンモニア生成器用開閉弁24の切替タイミングは、エンジンメインコントローラ70によって決定される。
アンモニア生成器用開閉弁24の下流側には、アンモニア量を計測するための流量センサS1が設けられている。
【0040】
SCR触媒部4には、SCR用開閉弁26を介して第2排気管L2から排ガスが導入されるようになっている。SCR用開閉弁26の切替タイミングは、エンジンメインコントローラ70によって決定される。SCR触媒部4では、排ガス中のNOxが触媒により選択的に還元され、無害な窒素と水蒸気に分解される。
SCR触媒部4の上流側には、導入される排ガスを加熱するための電気ヒータ73が設けられている。電気ヒータ73には、船内電力系統30から電力が供給されるようになっている。
【0041】
SCR用開閉弁26と排ガスエコノマイザ用開閉弁22とは、択一的に選択されて開閉が行われる。すなわち、排ガスのNOx規制が厳格とされている海域(排ガス規制海域(Emission Control Area;以下「ECA」という。)を航行する際のように排ガス脱硝が必要な場合は、SCR用開閉弁26を開き、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を閉じる。一方、排ガスのNOx規制が比較的緩やかな海域(ECA外)を航行する際のように排ガス脱硝を行わない場合は、SCR用開閉弁26を閉じ、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を開ける。
なお、SCR用開閉弁26及び排ガスエコノマイザ用開閉弁22は、1つの三方弁で代用することも可能である。
【0042】
船舶全体を制御する制御部として、エンジンメインコントローラ70と、パワーマネジメントシステム(発電出力制御部;以下「PMS」という。)72とが設けられている。
【0043】
エンジンメインコントローラ70は、主としてメインエンジン3を制御する。エンジンメインコントローラ70には、メインエンジン3に設けられたエンジン負荷検出手段からのエンジン負荷信号LIと、メインエンジン3の回転数を検出する回転数検出手段からのエンジン回転数Nと、メインエンジン3の給気マニホールド内の掃気圧力を検出する掃気圧力検出手段からの掃気圧力Pとが入力される。
エンジンメインコントローラ70は、これら入力信号に基づいて所定の演算を行い、排ガスの脱硝に必要な目標アンモニア生成量を決定する。決定された目標アンモニア生成量は、アンモニア生成器2へと送信される。
【0044】
PMS72は、主として船内電力の制御を行う。PMS72には、エンジンメインコントローラ70からエンジン負荷信号LIと、船内電力周波数fが入力される。PMS72は、これら入力信号に基づいて所定の演算を行い、ハイブリッド排気タービン過給機5の発電量を決定する。このハイブリッド排気タービン過給機5の発電量の演算には、図4に示したマップが用いられる。PMS72の記憶部には、このマップの関係式または数値化したデータベースが格納されている。
図4において、横軸はエンジン負荷信号LIから得られるエンジン負荷(%)、縦軸は総発電量(kW)である。同図において、「DG1」は第1発電用ディーゼルエンジン61の発電機62を示し、「DG2」は第2発電用ディーゼルエンジン63の発電機64を示し、「SGM」は軸発電機モータ13を示し、「Hybrid T/C」はハイブリッド排気タービン過給機5の発電機5cを示す。同図に示されているように、エンジン負荷が低い場合は第1及び第2発電用ディーゼルエンジン61,63のみによって発電し、エンジン負荷が所定値を超えると、次に軸発電機モータ13による発電が開始され、その次にハイブリッド排気タービン過給機5による発電が開始され、徐々にその発電量が増大される。ハイブリッド排気タービン過給機5による発電が最後となるのは、メインエンジン負荷が所定値を超えないと、排熱回収できる程度にエンジンの排気エネルギーが大きくならないからである。なお、このマップは一例であって、船内の発電システムに応じて適宜決定される。
発電量は、船内電力周波数fが所定値にて一定となるように制御される。すなわち、船内電力周波数fが所定値から低下すると船内需要電力が増加したと判断し、発電量を増大させ、船内電力周波数fが所定値から増大すると船内需要電力が低下したと判断し、発電量を減少させる。このように、エンジン負荷と発電量が決まると、軸発電機モータ13とハイブリッド排気タービン過給機5の発電量が同図のマップから決定される。このように決定された発電量は、目標発電量として軸発電機モータ13およびハイブリッド排気タービン過給機5へと送信される。
【0045】
次に、上記構成の舶用脱硝システム1の制御方法について説明する。
メインエンジン3から排出された排ガスは、排気マニホールド15から第1排気管L1を介してハイブリッド排気タービン過給機5のタービン部5aへと導かれる。タービン部5aは、排ガスエネルギーを得て回転させられ、その回転出力を回転軸5dを介してコンプレッサ部5b及びハイブリッド発電機モータ5cへと伝達する。コンプレッサ部5bでは、吸入した空気(外気)を圧縮して空気冷却器18を介して給気マニホールドへと送る。
ハイブリッド発電機モータ5cでは、タービン部5aから得た回転出力によって発電し、PMS72の指示に基づいて、その発電出力を船内電力系統30へと供給する。供給されたハイブリッド発電機モータ5cからの電力は、アンモニア生成器2へと送られ、水素製造部81の電気分解や、中間生成ガスおよび生成されたアンモニアを搬送する搬送ポンプ等に用いられる。また、発電用ディーゼルエンジン61,63にて発電された電力も同様に船内電力系統30に供給される。
また、軸発電機モータ13では、PMS72の指示に基づいて、メインエンジン3の駆動力を得て発電を行い、船内電力系統30に対して電力供給する。
発電用ディーゼルエンジン61,63でも、PMS72の指示に基づいて発電を行い、船内電力系統30に対して電力供給する。
アンモニア生成器2では、ハイブリッド発電機モータ5、軸発電機モータ13、発電用ディーゼルエンジン61,63からの電力を用いて、水素製造部81にて製造された水素と窒素製造部83にて製造された窒素とからアンモニアが生成される。
【0046】
ハイブリッド発電機モータ5c、軸発電機モータ13、発電用ディーゼルエンジン61,63からの発電出力は、船内電力系統30に接続された蓄電池67に供給される。
船内電力系統30には、太陽光発電装置69が接続されており、太陽光によって発電された電力が船内電力系統30に供給され、船内電力系統30に接続された図示しない負荷にて利用されるとともに、蓄電池67に充電される。
船舶が接岸した場合には、外部電力入力部71を介して陸上から電力の供給を受け、蓄電池67に充電される。この場合には、発電用ディーゼルエンジン61,63が停止されていることが好ましい。
【0047】
次に、図5を用いて、船舶の航行時における電力制御について説明する。図5(a)乃至(g)の各軸の横軸は運転時間を示し、出発地の港湾に接岸した状態から港湾内(ECA内)を航行した後、外洋上(ECA外)を航行し、目的地の港湾内(ECA内)に入り接岸されるまでを示している。
図5の(a)の縦軸はプロペラ軸10(図1参照)の出力(kW)を示し、(b)の縦軸は船内プラントのトータルでの熱効率向上(%)を示し、(c)の縦軸はアンモニア生成器2にて生成されるアンモニア生成量(Nm3/h)を示し、(d)の縦軸は船内プラントにて必要とされる必要電力(kW)を示し、(e)の縦軸は船内プラントの発生電力(kW)を示し、(f)の縦軸はSCR触媒部4上流側の排ガス温度(℃)を示し、(g)の縦軸はSCR触媒部4の触媒温度(℃)を示す。
【0048】
[出発港湾内(ECA内)]
ECA内である港湾を出発する際には、図5(a)に示すように、メインエンジン3が起動されてプロペラ軸出力が漸次増大させられる。このときに船舶を離岸させるためのサイドスラスタが起動されるので、図5(d)の領域Aに示すように必要電力が増大する。サイドスラスタに供給される電力は、図5(e)に示すように、領域Cの発電用ディーゼルエンジン(DG)61,63からの電力と、領域Bの蓄電池67に蓄電された電力が用いられる。このように、蓄電池67の電力をサイドスラスタの供給電力の一部として用いるので、発電用ディーゼルエンジン61,63の負荷を相対的に減らすことができる。また、蓄電池67には、前回の航行時に排熱回収された電力及び/または接岸時に予め陸上から供給した電力が蓄電されている。したがってメインエンジン3に比べて熱効率の低い発電用ディーゼルエンジン61、63の燃料消費を抑えることができるため、図5(b)の領域Dに示すように、離岸時に熱効率を向上させることができる。
なお、図5(d)の領域Eに示すように、運転時間にかかわらずある程度一定の船内消費電力は常に消費される。また、図5(d)の領域Lは電気ヒータ73に用いられる電力、領域Mはアンモニア生成器2に用いられる電力を示す。
【0049】
また、メインエンジン3によるプロペラ軸出力が増大するにつれて、排ガス中のNOxが増大するので、図5(c)に示すようにアンモニア生成量が増大する。一方、排ガス温度は、図5(f)に示すように所定値T1(℃)を示すが、SCR触媒部4が適切に作動する温度範囲(図5(g)の領域F参照)、即ち触媒が活性化しかつ劣化が防止される温度範囲に満たないので、電気ヒータ73(図1参照)によって排ガスを加熱し、所望温度T2(℃)まで上昇させる。このとき電気ヒータ73に供給される電力は、図5(e)の領域Gに示すように、軸発電機モータ(SGM)13の発電電力および排熱回収した電力(ハイブリッド排気タービン過給機5)が用いられる。これにより、図5(b)の領域Hに示すように熱効率が向上する。
メインエンジン3の出力が増大してプロペラ軸出力が増大すると、軸発電機モータ(SGM)13およびハイブリッド排気タービン過給機5による発電量が徐々に増大し、発電用ディーゼルエンジン61,63の負荷が徐々に減少する。
そして、時刻t1を経過すると、メインエンジン3の回転数は定格となり、アンモニア生成量が一定となる。
【0050】
港湾内(ECA内)を航行する場合には、以下のように排ガス脱硝を行う。この場合、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を閉とし、アンモニア生成器用開閉弁24及びSCR用開閉弁26を開とする。
ハイブリッド排気タービン過給機5のタービン部5aから排出された排ガスは、第2排気管L2を通り、アンモニア生成器2から供給されるアンモニア(ガス)と混合される。アンモニアと混合された排ガスは、SCR用開閉弁26を介してSCR触媒部4へと導かれる。SCR触媒部4へ導かれる前に、排ガス温度が所定値未満の場合には図示しない制御部によって電気ヒータ73が起動され、排ガスが加熱される。一方、排ガス温度が所定値以上の場合には、図示しない制御部によって電気ヒータ73が停止される。電気ヒータ73を通過した排ガスは、SCR触媒部4にて脱硝された後、図示しない煙突から外部へと排出される。
【0051】
[外洋航行(ECA外)]
外洋航行の際には、ECA外となるので、排ガス脱硝を行わない。この場合、図1に示すように、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を開とし、アンモニア生成器用開閉弁24及びSCR用開閉弁26を閉とする。ハイブリッド排気タービン過給機5のタービン部5aから排出された排ガスは、第2排気管L2を通り、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を介して、排ガスエコノマイザ11へと導かれる。排ガスエコノマイザ11では、蒸気が生成され、船内の各所にて使用される。排ガスエコノマイザ11から排出された排ガスは、煙突から外部へと排出される。
【0052】
排ガス脱硝を行わないので、図5(c)に示すように、アンモニア生成量は0となる。また、電気ヒータ73による加熱も停止するので、図5(f)に示すように排ガス温度はT1(℃)に低下し、図5(g)に示すようにSCR触媒温度も徐々に低下していく。
外洋航行では、軸発電機モータ13をモータとして駆動してメインエンジン3を加勢する。図5(a)の領域Jが軸発電機モータ13が負担するプロペラ軸出力となり、これによりメインエンジン3が負担する出力を低下させることができる。軸発電機モータ13へ供給する電力(図5(e)の領域K参照)としては、排熱回収して蓄電池67に蓄えられた余剰電力が用いられる。特に、アンモニア生成器2及び電気ヒータ73に電力を供給する必要がないので(図5(d)参照)、排熱回収によって得られた電力の余剰分を軸発電機モータ13に対して有効に利用することができる。これにより、図5(b)の領域Iに示すように熱効率が向上する。
【0053】
[目的地港湾内(ECA内)]
目的地の港湾内では、出発港湾内の逆の動作となる。
アンモニア生成器用開閉弁24及びSCR用開閉弁26を開とし、排ガスエコノマイザ用開閉弁22を閉とする。
時刻t3となり目的地港湾内に入ると、排ガス脱硝を行うため、図5(c)に示すようにアンモニア生成を開始し、電気ヒータ73による排ガス加熱を開始する。そして、時刻t4を過ぎるとプロペラ軸出力を減少させるようにメインエンジン3の負荷を減少させる。これに伴い、図5(c)に示すようにアンモニア生成量も減少し、図5(e)に示すように排熱回収量も減少する。そして、接岸時にはサイドスラスタが起動する(図5(e)の領域B参照)ため、出発時と同様に蓄電池67の電力を用いることによって熱効率を向上させる(図5(b)の領域D参照)。
【0054】
上述の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
アンモニア生成器2により、水および空気を原料として船舶上にてアンモニアを生成できるので、液体アンモニア(例えばアンモニア水溶液)や尿素等の還元剤を貯蔵するスペースを船舶上に設ける必要がない。したがって、大きなスペースを確保することなく舶用脱硝システムを船舶内に設置することができる。
【0055】
メインエンジン3の排気ガスによって発電するハイブリッド排気タービン過給機5のハイブリッド発電機モータ5cの発電出力がアンモニア生成器2に対して供給されるので、アンモニア生成器2を少ない消費エネルギーで運転することができる。また、メインエンジン3の排気エネルギーを有効利用できるので、別途設けられたディーゼルエンジン発電機等の発電用補機の容量増大や増台を回避することができる。
【0056】
プロペラ軸10を加勢する軸発電機モータ13が設けられているので、メインエンジン3の燃料消費率を低減させることができる。さらに、プロペラ軸10を加勢する軸発電機モータ13は、船内電力系統30から電力供給を受けるようになっているので、排熱回収した電力を用いて軸発電機モータ13を駆動させることにより、熱効率の高いシステムを構築することができる。特に、排ガス脱硝が必要とされない海域(ECA外)を航行する場合にはアンモニア生成器2や電気ヒータ73に電力を供給する必要がないので、排熱回収によって得られた電力の余剰分を軸発電機モータに供給して有効に利用することができる。
【0057】
アンモニア生成器2に対して電力を供給する船内電力系統30に接続された蓄電池67を備えているので、ディーゼルエンジン3に負荷変動が生じてハイブリッド排気タービン過給機5の発電出力に変動が生じても、蓄電池67の電力を用いることができる。特に、ディーゼルエンジン3の低負荷時にハイブリッド排気タービン過給機5からの発電出力が十分に得られない場合に有用である。したがって、アンモニア生成器2に対して安定して電力を供給することができる。さらに、蓄電池67はハイブリッド排気タービン過給機5と同じ船内電力系統30に接続されているので、発電機で発生した余剰電力を蓄電することができる。
また、蓄電池を備えることによって負荷変動を抑えることができるので、発電用ディーゼルエンジン61,63の容量およびサイズを低減することができる。
【0058】
電気ヒータ73によってSCR触媒部4に流入する排ガス温度を上昇させることができるので、SCR触媒の被毒を防止することができる。さらに、電気ヒータ73には、メインエンジン3の排ガスから熱回収して発電した電力が用いられるので、省エネルギーにて電力を供給することができる。
【0059】
船内電力系統30に対して太陽光発電装置69を接続し、太陽光発電装置69の発電出力を蓄電池67に供給することとしたので、さらに省エネルギーにて電力供給が可能となる。
【0060】
陸上から電力の供給を受ける外部電力入力部71が船内電力系統30に接続されているので、船舶の接岸時に電力の供給を受けることができる。これにより、船舶の接岸時には蓄電池67からサイドスラスタに多くの電力を供給できるため、発電用ディーゼルエンジン61,63の負荷を減少させることができ、トータルでの熱効率が向上する。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図6及び図7を用いて説明する。上述した第1実施形態では、排熱回収システム17としてハイブリッド排気タービン過給機5(図2参照)を用いたのに対して、本実施形態では、パワータービン(ガスタービン)を用いる点が異なる。したがって、その他の共通する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
排気マニホールド15には、第3排気管L3が接続されており、この第3排気管L3を介してパワータービン7の入口側へとメインエンジン3の排ガスが導かれる。このように、メインエンジン3の排ガスの一部が、排気タービン過給機5’に供給される前に抽ガスされてパワータービン7に供給されるようになっている。この抽ガスされた排ガスによって、パワータービン7が回転駆動される。
パワータービン7の出口側から排出された排ガスは、第4排気管L4を介して、第2排気管L2(図1参照)へと導かれるようになっている。
【0063】
パワータービン7からの回転出力は、回転軸32を介して、パワータービン側発電機33に伝達されるようになっている。パワータービン側発電機33にて発電された出力は、周波数変換器35及び開閉スイッチ36を介して船内電力系統30へと供給されるようになっている。これにより、パワータービン側発電機33の出力電力がアンモニア生成器2へと供給される。
パワータービン側発電機33と周波数変換器35との間には、ロードバンク44が設けられている。ロードバンク44としては、負荷抵抗装置が用いられ、パワータービン側発電機33からの余剰電力を消費し、出力変動を低減するために用いられる。
【0064】
また、第3排気管L3には、パワータービン7に導入するガス量を制御する排ガス量調整弁37が設けられている。また、排ガス量調整弁37が遮断したときに、排気タービン過給機5’のタービン部への過過給(エンジンの最適運転圧力を超えての過給)を防止するためにバイパス弁40及びオリフィス42が、第3排気管L3と第4排気管L4との間に設けられている。
【0065】
図7(第1実施形態の図4に対応)に示すように、パワータービン7を用いて排熱回収しパワータービン側発電機33(P/T)にて発電する本実施形態では、メインエンジン3の負荷が所定値以上になった場合に、軸発電機モータ(SGM)13に次いでパワータービン7による発電が開始され、徐々にその発電量が増大される。これは、メインエンジン負荷が所定値を超えないと、排熱回収できる程度にエンジンの排気エネルギーが大きくならないからである。なお、このマップは一例であって、船内の発電システムに応じて適宜決定される。
図7に基づいて得られたパワータービン側発電機33の目標発電量は、図6に示した排ガス量調整弁37の開度によって制御される。
【0066】
本実施形態によれば、第1実施形態の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
メインエンジン3の排ガスを駆動源とするパワータービン7によって発電するパワータービン側発電機33の出力電力を、船内電力系統30を介してアンモニア生成器2に用いることとしたので、メインエンジン3の排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0067】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図8及び図9を用いて説明する。上述した第1実施形態では、排熱回収システム17としてハイブリッド排気タービン過給機5(図2参照)を用いたのに対して、本実施形態では、蒸気タービンを用いる点が異なる。したがって、その他の共通する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
図8に示すように、蒸気タービン9は、排ガスエコノマイザ11によって生成された蒸気が第1蒸気管J1を介して供給されて回転駆動されるようになっている。
排ガスエコノマイザ11には、第2排気管L2を介して排出されるメインエンジン3の排ガスが導入されるようになっている。排ガスエコノマイザ11で生成された蒸気は第1蒸気管J1を介して蒸気タービン9に導入される。蒸気タービン9で仕事を終えた蒸気は、第2蒸気管J2によって排出されて図示しないコンデンサ(復水器)に導かれるようになっている。
【0069】
蒸気タービン9からの回転出力は、回転軸52を介して、蒸気タービン側発電機49(S/T)に伝達されるようになっている。蒸気タービン側発電機49にて発電された出力は、周波数変換器35及び開閉スイッチ36を介して船内電力系統30へと供給されるようになっている。これにより、蒸気タービン側発電機49の出力電力がアンモニア生成器2へと供給される。
【0070】
第1蒸気管J1には、蒸気タービン9に導入する蒸気量を制御する蒸気量調整弁54と、非常時に蒸気タービン9への蒸気の供給を遮断する非常停止用緊急遮断弁55とが設置されている。また、第1蒸気管J1と第2蒸気管J2との間には、蒸気タービン9をバイパスする蒸気流量を調整するための蒸気バイパス弁57が設けられている。
【0071】
図9(第1実施形態の図4に対応)に示すように、蒸気タービン9を用いて排熱回収し蒸気タービン側発電機49にて発電する本実施形態では、メインエンジン3の負荷が所定値以上になった場合に蒸気タービン9による発電が開始され、次いで軸発電機モータ(SGM)13による発電が開始され、徐々にその発電量が増大される。なお、このマップは一例であって、船内の発電システムに応じて適宜決定される。
図9に基づいて得られた蒸気タービン側発電機49の目標発電量は、図8に示した蒸気量調整弁54の開度によって制御される。
【0072】
本実施形態によれば、第1実施形態の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
メインエンジン3の排ガスを用いた排ガスエコノマイザ11によって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービン9をも用いて発電することとしたので、さらにメインエンジン3の排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0073】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について、図10及び図11を用いて説明する。上述した第2実施形態では、排熱回収システム17としてパワータービン7を用いた構成としたのに対して、本実施形態では、パワータービン及び蒸気タービンを用いる構成とした点が異なる。したがって、その他の共通する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
図10に示すように、蒸気タービン9は、排ガスエコノマイザ11によって生成された蒸気が第1蒸気管J1を介して供給されて回転駆動されるようになっている。
排ガスエコノマイザ11には、第2排気管L2を介してメインエンジン3から排出される排ガスと、パワータービン7の出口側から第4排気管L4を介して排出される排ガスとが、導入されるようになっている。排ガスエコノマイザ11で生成された蒸気は第1蒸気管J1を介して蒸気タービン9に導入される。蒸気タービン9で仕事を終えた蒸気は、第2蒸気管J2によって排出されて図示しないコンデンサ(復水器)に導かれるようになっている。
【0075】
パワータービン7と蒸気タービン9とは直列に結合されて異種タービン側発電機50を駆動するようになっている。すなわち、発電機50には、パワータービン7及び蒸気タービン9といった異なる種類(異種)のタービンが同軸上に接続されている。異種タービン側発電機50にて発電された出力は、周波数変換器35及び開閉スイッチ36を介して船内電力系統30へと供給されるようになっている。これにより、異種タービン側発電機50の出力電力がアンモニア生成器2へと供給される。
【0076】
蒸気タービン9の回転軸52は図示しない減速機およびカップリングを介して異種タービン側発電機50に接続され、また、パワータービン7の回転軸32は図示しない減速機およびクラッチ53を介して蒸気タービン9の回転軸52と連結されている。クラッチ53としては、所定の回転数にて嵌脱されるクラッチが用いられ、例えばSSS(Synchro-Self-Shifting)クラッチが好適に用いられる。
【0077】
第1蒸気管J1には、蒸気タービン9に導入する蒸気量を制御する蒸気量調整弁54と、非常時に蒸気タービン9への蒸気の供給を遮断する非常停止用緊急遮断弁55とが設置されている。また、第1蒸気管J1と第2蒸気管J2との間には、蒸気タービン9をバイパスする蒸気流量を調整するための蒸気バイパス弁57が設けられている。
【0078】
図11(第1実施形態の図4に対応)に示すように、パワータービン7及び蒸気タービン9を用いて排熱回収し異種タービン側発電機50にて発電する本実施形態では、メインエンジン3の負荷が所定値以上になった場合に蒸気タービン9による発電が開始され、さらにメインエンジン3の負荷が上昇した場合に軸発電機モータ(SGM)13、次いでパワータービン7による発電が開始され、徐々にそれらの発電量が増大される。なお、このマップは一例であって、船内の発電システムに応じて適宜決定される。
図11に基づいて得られた異種タービン側発電機50の目標発電量は、図10に示した排ガス量調整弁37及び蒸気量調整弁54の開度によって制御される。
【0079】
本実施形態によれば、第1実施形態および第2実施形態の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
メインエンジン3の排ガスを駆動源とするパワータービン7に加えて、メインエンジン3の排ガスを用いた排ガスエコノマイザ11によって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービン9をも用いて発電することとしたので、さらにメインエンジン3の排気エネルギーを有効に利用することができる。
【0080】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について、図12及び図13を用いて説明する。上述した第2実施形態では、排熱回収システム17としてパワータービン7を用いた構成としたのに対して、本実施形態では、熱媒体タービンを用いる構成とした点が異なる。したがって、その他の共通する構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
図12に示すように、第2冷却水管C2に、ジャケット水用熱交換器90が設けられている。ジャケット水用熱交換器90には、循環ポンプ48によって第1冷却水管C1およびシリンダ部13を通過して循環するジャケット水が導かれるようになっており、冷却水タンク46から導かれる冷却水を加熱するようになっている。
熱交換器89には、冷却水タンク46から循環ポンプ47により押し出され、熱交換器90及び第2冷却水管C2を介して第2空気冷却器16を通り段階的に加熱された冷却水が、第3冷却水管C3により導入される。
熱媒体タービン8は、熱交換器89によって蒸気化した熱媒体が第1熱媒体管R1を介して供給されて回転駆動するようになっている。熱媒体タービン8で仕事を終えた蒸気状の熱媒体は、エコノマイザ95で低温の熱媒体と熱交換した後、コンデンサ97で液化され、系内を循環ポンプ99で循環する。
なお、図12では、熱媒体はジャケット水用熱交換器90及び第2空気冷却器16を通過した冷却水と熱交換する構成としたが、エンジン排ガスと熱交換した加熱水と熱交換した構成としても良い。
【0082】
熱媒体タービン8からの回転出力は、回転軸91を介して、熱媒体タービン側発電機93に伝達されるようになっている。熱媒体タービン側発電機93にて発電された出力は、周波数変換器35及び開閉スイッチ36を介して船内系統30へと供給されるようになっている。これにより、熱媒体タービン側発電機93の出力電力がアンモニア生成器2へと供給される。
【0083】
上記構成では、熱媒体タービン側発電機9での発電量は常時最大限取り出し、その電力供給量が船内系統30の需要に対して不足する場合に、第1及び/または第2発電用ディーゼルエンジン61,63の負荷制御を行う。
【0084】
図13に示すように、熱媒体タービン8を用いて排熱回収し熱媒体タービン側発電機93(ORC)にて発電する本実施形態では、メインエンジン3の負荷が所定値以上になった場合に熱媒体タービン8による発電が開始され、徐々にその発電量が増大される。これは、メインエンジン負荷が所定値を超えないと、排熱回収できる程度にエンジン冷却水及び/または排気エネルギーが大きくならないからである。なおこのマップは一例であって、船内の発電システムに応じて適宜決定される。
【0085】
本実施形態によれば、上記各実施形態の作用効果に加え、以下の作用を奏する。
ディーゼルエンジン3の冷却水と熱交換され、蒸気化した熱媒体を駆動源とする熱媒体タービン8によって発電する熱媒体タービン側発電機93の出力電力を、船内系統30を介してアンモニア生成器2に用いることとしたので、ディーゼルエンジン3の低温排熱エネルギーを有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 舶用脱硝システム
2 アンモニア生成器
3 メインエンジン
4 SCR触媒部
5 ハイブリッド排気タービン過給機
5c ハイブリッド発電機モータ(過給機側発電機)
7 パワータービン
8 熱媒体タービン
9 蒸気タービン
11 排ガスエコノマイザ(排ガスボイラ)
30 船内電力系統
33 パワータービン側発電機
49 蒸気タービン側発電機
50 異種タービン側発電機
70 エンジンメインコントローラ
72 パワーマネジメントシステム(PMS;発電出力制御部)
73 電気ヒータ
81 水素製造部
83 窒素製造部
93 熱媒体タービン側発電機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水から水素を製造する水素製造部、及び、空気から窒素を製造する窒素製造部を有し、前記水素製造部によって製造された水素および前記窒素製造部によって製造された窒素からアンモニアを生成するとともに、船内電力系統から電力が供給されるアンモニア生成器と、
舶用推進用のメインエンジンの排ガス通路に設けられ、前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアとともに排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、
前記メインエンジンの排ガスエネルギーを用いて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電機と、
前記メインエンジンによって駆動されて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電運転が可能とされるとともに、前記船内電力系統から供給された電力によって駆動されてプロペラ軸を加勢する軸発電機モータと、
前記アンモニア生成器への供給電力、前記発電機の発電出力、並びに前記軸発電機モータへの供給電力および発電出力を制御する発電出力制御部と、
を備えていることを特徴とする舶用脱硝システム。
【請求項2】
前記船内電力系統に接続された蓄電池を備えていることを特徴とする請求項1に記載の舶用脱硝システム。
【請求項3】
前記船内電力系統に接続された太陽光発電装置を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の舶用脱硝システム。
【請求項4】
前記船内電力系統には、船舶の外部の電源から電力の供給を受ける外部電力入力部が接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項5】
前記脱硝触媒部に導入される排ガスを加熱する電気ヒータを備え、
該電気ヒータに対して、前記船内電力系統から電力供給が行われることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項6】
前記メインエンジンの排気タービン過給機の回転出力を得て発電する過給機側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項7】
前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンによって発電するパワータービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項8】
前記メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する蒸気タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項9】
前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービン、及び、前記メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する異種タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項10】
前記メインエンジンのジャケットや空気冷却器の冷却水及び/または排ガスと熱交換した加熱水と熱交換され、蒸気化した熱媒体を駆動源とするタービンによって発電する熱媒体タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項11】
船舶推進用のメインエンジンと、
請求項1から10のいずれかに記載の舶用脱硝システムと、
を備えていることを特徴とする船舶。
【請求項12】
水から水素を製造する水素製造部、及び、空気から窒素を製造する窒素製造部を有し、前記水素製造部によって製造された水素および前記窒素製造部によって製造された窒素からアンモニアを生成するとともに、船内電力系統から電力が供給されるアンモニア生成器と、
舶用推進用のメインエンジンの排ガス通路に設けられ、前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアとともに排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、
前記メインエンジンの排ガスエネルギーを用いて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電機と、
前記メインエンジンによって駆動されて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電運転が可能とされるとともに、前記船内電力系統から供給された電力によって駆動されてプロペラ軸を加勢する軸発電機モータと、
を備えた舶用脱硝システムの制御方法であって、
発電出力制御部によって、前記アンモニア生成器への供給電力、前記発電機の発電出力、並びに前記軸発電機モータへの供給電力および発電出力を制御することを特徴とする舶用脱硝システムの制御方法。
【請求項1】
水から水素を製造する水素製造部、及び、空気から窒素を製造する窒素製造部を有し、前記水素製造部によって製造された水素および前記窒素製造部によって製造された窒素からアンモニアを生成するとともに、船内電力系統から電力が供給されるアンモニア生成器と、
舶用推進用のメインエンジンの排ガス通路に設けられ、前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアとともに排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、
前記メインエンジンの排ガスエネルギーを用いて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電機と、
前記メインエンジンによって駆動されて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電運転が可能とされるとともに、前記船内電力系統から供給された電力によって駆動されてプロペラ軸を加勢する軸発電機モータと、
前記アンモニア生成器への供給電力、前記発電機の発電出力、並びに前記軸発電機モータへの供給電力および発電出力を制御する発電出力制御部と、
を備えていることを特徴とする舶用脱硝システム。
【請求項2】
前記船内電力系統に接続された蓄電池を備えていることを特徴とする請求項1に記載の舶用脱硝システム。
【請求項3】
前記船内電力系統に接続された太陽光発電装置を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の舶用脱硝システム。
【請求項4】
前記船内電力系統には、船舶の外部の電源から電力の供給を受ける外部電力入力部が接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項5】
前記脱硝触媒部に導入される排ガスを加熱する電気ヒータを備え、
該電気ヒータに対して、前記船内電力系統から電力供給が行われることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項6】
前記メインエンジンの排気タービン過給機の回転出力を得て発電する過給機側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項7】
前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービンによって発電するパワータービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項8】
前記メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する蒸気タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項9】
前記メインエンジンの排ガスを駆動源とするパワータービン、及び、前記メインエンジンの排ガスを用いた排ガスボイラによって生成された蒸気を駆動源とする蒸気タービンによって発電する異種タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項10】
前記メインエンジンのジャケットや空気冷却器の冷却水及び/または排ガスと熱交換した加熱水と熱交換され、蒸気化した熱媒体を駆動源とするタービンによって発電する熱媒体タービン側発電機を、前記発電機として用いることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の舶用脱硝システム。
【請求項11】
船舶推進用のメインエンジンと、
請求項1から10のいずれかに記載の舶用脱硝システムと、
を備えていることを特徴とする船舶。
【請求項12】
水から水素を製造する水素製造部、及び、空気から窒素を製造する窒素製造部を有し、前記水素製造部によって製造された水素および前記窒素製造部によって製造された窒素からアンモニアを生成するとともに、船内電力系統から電力が供給されるアンモニア生成器と、
舶用推進用のメインエンジンの排ガス通路に設けられ、前記アンモニア生成器によって生成されたアンモニアとともに排ガス脱硝を行う脱硝触媒部と、
前記メインエンジンの排ガスエネルギーを用いて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電機と、
前記メインエンジンによって駆動されて発電し、前記船内電力系統へ電力を供給する発電運転が可能とされるとともに、前記船内電力系統から供給された電力によって駆動されてプロペラ軸を加勢する軸発電機モータと、
を備えた舶用脱硝システムの制御方法であって、
発電出力制御部によって、前記アンモニア生成器への供給電力、前記発電機の発電出力、並びに前記軸発電機モータへの供給電力および発電出力を制御することを特徴とする舶用脱硝システムの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−47096(P2012−47096A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189505(P2010−189505)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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