説明

薄片試料作製方法および複合荷電粒子ビーム装置

集束イオンビーム312のスパッタリングエッチング加工を行って薄片を作製すると同時に、薄片の側壁に対して平行な方向から電子ビーム314の照射を行って走査電子顕微鏡観察をし、薄片の厚さを測定する。そして、薄片の厚さが所定の厚さになったことを確認して、集束イオンビーム312による加工を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
透過電子顕微鏡などの高分解能顕微鏡にて半導体デバイスや表示デバイス等の内部構造を観察するために、その試料として半導体デバイスや表示デバイスから薄片試料を作製する方法に関するものである。
【背景技術】
集束イオンビーム照射系と電子ビーム照射系とからなる複合装置を用いて、集束イオンビームにて試料表面の所望箇所をスパッタリングエッチング加工して薄片試料を作製し、作製した薄片試料を取り出し、取り出した薄片試料を透過電子顕微鏡にて観察する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−76437号公報
【特許文献2】特開平4−62748号公報
近年、半導体デバイスや表示デバイスなどの各種デバイスは、機能向上を実現するため、その構造は微細に、そして複雑になっている。特に、各デバイスを形成する素子や配線が数原子層レベルの薄膜を重ねた積層構造になっており、その構造を観察する需要は高い。この微細構造を観察するため透過電子顕微鏡を利用する。微細構造を高分解能顕微鏡観察するためには観察のための薄片試料作製を行う。この際に、集束イオンビームによるエッチング加工を行った際に薄片試料に残る損傷を最小限にすると同時に、薄片試料の形状確認を電子ビーム照射走査による走査電子顕微鏡観察にて行なうことが知られている。
薄片試料の厚さを均一にするために、試料を傾斜しながら加工することが知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、このような加工方法において、薄片の厚さを制御する方法は知られていない。
本発明は、上記問題点を解決し、試料表面の所望の箇所に薄片を形成する際に、薄片の厚さを正確に制御することによって、高分解能顕微鏡観察が容易な試料作製を行なうことにより、各種デバイスの発展に寄与することを目的になされている。
【発明の開示】
上記課題を解決するために、本願発明においては、集束イオンビームを用いて試料表面上方より集束イオンビームを照射して試料表面をエッチング加工し薄片試料を形成する方法において、形成した薄片部の側壁に対して平行な方向から電子ビームを走査照射して、薄片部の厚さを測定するものである。また、その厚みを確認しながら薄片部を形成するようにしたものである。
また、FIB−SEM複合ビーム装置を用い、そのステージのチルト方向を、試料ステージ面が各ビーム鏡筒を含む平面となす角度が変更可能な方向にした。このことを図4を用いて説明する。
通常は、図4(a)のように試料ステージ407は各ビーム鏡筒401、403を含む平面方向に傾斜するように構成されている。
それに対して、本発明においてはさらに、図4(b)に示すように少なくとも90度異なる軸に対して傾斜する構成を有する。このことにより集束イオンビームで側壁の傾斜角を補正して加工できると同時に、あるいはすぐさま電子ビームで薄片試料の厚みを測定することができる。あるいは、さらに上記両方向に傾斜することも含む。すなわち、FIB−SEM複合ビーム装置において、傾斜軸を2つ持つデュアルチルト構成となっている。
すなわち、本願発明薄片試料作製方法においては、まず第一に、試料表面に集束イオンビームを走査照射してエッチング加工することにより薄片部を形成し、該薄片部を取り出すことにより、薄片試料を作製する方法において、集束イオンビームのエッチング加工によって、薄片部を作製すると同時にまたは前記集束イオンビームの照射を一時中断して、前記作製された薄片部の側壁に対して平行な方向から電子ビームを走査照射して前記薄片の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片部の厚さを測定することを特徴とする。
第二に、前記薄片の厚さが所定の厚さになったことを確認してエッチング加工を終了することを特徴とする。
第三に、試料表面に集束イオンビームを走査照射してエッチング加工することにより薄片部を形成し、該薄片部を取り出すことにより、薄片試料を作製する方法において、集束イオンビームを用いて第一の集束イオンビーム条件で薄片とすべき領域の両側をエッチング加工する第一の工程と、前記第一の工程に続いて前記集束イオンビームを用いて前記第一の集束イオンビーム条件と比較して低加速電圧かつ/または低ビーム電流である第二の集束イオンビーム条件で薄片とすべき領域の第1の側壁あるいはその反対側の第2の側壁をエッチング加工するのと同時に、前記薄片とすべき領域の側壁に対して平行な方向から電子ビームを走査照射して前記薄片とすべき領域の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片とすべき領域の厚さを測定する第二の工程とからなることを特徴とする。
第四に、前記薄片とすべき領域の第一の側壁に対し前記第二の工程を施し、第一の所望の厚さに形成にした後、前記薄片とすべき領域の第二の側壁に対して前記第二の工程を施して、前記所定の厚さに形成することを特徴とする。
第五に、前記第二の工程において、前記薄片とすべき領域の側壁をエッチング加工する時に、前記集束イオンビームが該側壁にその傾斜を補正するように照射されるように前記試料を傾斜させることを特徴とする。
第六に、試料表面に集束イオンビームを走査照射してエッチング加工することにより薄片部を形成し、該薄片部を取り出すことにより、薄片試料を作製する方法において、集束イオンビームを用いて薄片とすべき領域の両側をエッチング加工して薄片部を作製する第一の工程と、前記薄片の第一の側壁にその傾斜を補正するように集束イオンビームが照射されるように前記試料を傾斜させて、集束イオンビームを走査照射してエッチングを行うのと同時に前記薄片部の側壁に概ね平行に電子ビームを走査照射して前記薄片部の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片部の厚さが第一の所定の厚さになることを確認してエッチング加工を終了する第二の工程と、前記薄片部の第二の側壁にその傾斜を補正するように集束イオンビームが照射されるように前記試料を傾斜させて、前記集束イオンビームを走査照射してエッチングを行うのと同時に前記薄片の側壁に概ね平行に電子ビームを走査照射して前記薄片部の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片部の厚さが第二の所定の厚さになることを確認してエッチングを終了する第三の工程と、前記第三の工程に続いて不活性イオンビームを照射して前記薄片部の両側をスパッタリングエッチング加工するのと同時に、前記薄片部の側壁に対して平行な方向から電子ビームを走査照射して前記薄片の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片部の厚さを測定し、前記薄片部の厚さが第三の所定の厚さになることを確認して前記不活性イオンビームによるスパッタリングエッチング加工を終了する第四の工程と、を含むことを特徴とする。
また本願発明における荷電粒子ビーム装置においては、イオン源から発生したイオンビームを集束して試料表面に走査照射する集束イオンビーム鏡筒と、電子源から発生した電子ビームを集束して試料表面に走査照射する電子ビーム鏡筒と、試料を載置して複数の駆動軸を持って三次元空間を移動させる試料ステージからなる集束イオンビーム及び電子ビーム複合装置において、両ビーム鏡筒は、前記集束イオンビーム鏡筒より照射された集束イオンビームと、前記電子ビーム鏡筒より照射された電子ビームとが前記試料ステージ上に載置された試斜表面の同一箇所に異なる角度で照射されるように配置され、前記試料ステージは、少なくとも前記集束イオンビーム鏡筒中心軸と電子ビーム鏡筒中心軸によって形成される第一の平面に対して直角に交差する第二の平面を基準として前記第一の平面に対する角度を変更可能に傾斜することを特徴とする。
さらに、本願発明における荷電粒子ビーム装置においては、イオン源から発生したイオンビームを集束して試料表面に走査照射する集束イオンビーム鏡筒と、電子源から発生した電子ビームを集束して試料表面に走査照射する電子ビーム鏡筒と、不活性イオン源から発生した不活性イオンビームを集束して試料表面に走査照射する不活性イオンビーム鏡筒と、試料を載置して複数の駆動軸を持って三次元空間を移動させる試料ステージからなる集束イオンビーム及び電子ビーム複合装置において、前記集束イオンビーム鏡筒より照射された集束イオンビーム、前記電子ビーム鏡筒より照射された電子ビーム、そして前記不活性イオンビーム鏡筒より照射された不活性イオンビームとが、前記試料ステージ上に載置された試料表面の同一箇所に異なる角度で照射されるように配置されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明による集束イオンビーム及び電子ビーム複合装置の一構成例である。
図2は、本発明による集束イオンビーム及び電子ビーム複合装置に用いられる試料ステージの動作に関する説明図である。
図3は、本発明による方法の一実施例である。
図4は、試料ステージのチルト方向を示す説明図で、(a)は正面図、(b)はその側面図である。
図5は、本発明による集束イオンビーム及び電子ビーム複合装置の一構成例である。
図6は、本発明による集束イオンビーム及び電子ビーム複合装置に用いられる試料ステージの動作に関する説明図である。
図7は、本発明による方法の一実施例である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の装置の第一の実施例を図1を参照して説明する。
液体金属イオン源から発生するイオンを集束イオン光学系で集束し、試料表面に焦点を合わせて走査照射する集束イオンビーム鏡筒101と、エミッタチップから発生する電子を電子ビーム光学系で集束し、試料表面に焦点を合わせて走査照射する電子ビーム鏡筒102と、アルゴンなどの不活性イオンビームを発生して試料に照射する不活性イオンビーム鏡筒103が試料室104に取り付けられている。試料室内は、真空ポンプ105によって真空排気され、高真空状態を保持している。試料室104の内側には、試料106を載置して移動する試料ステージ7が設置されている。
集束イオンビーム鏡筒101と、電子ビーム鏡筒102と、不活性イオンビーム鏡筒103は、同一平面上に配置されている。そして、集束イオンビーム鏡筒101から発射される集束イオンビームと、電子ビーム鏡筒102から発射される電子ビームと、不活性イオンビーム鏡筒103から発射される不活性イオンビームは、試料ステージ107に載置された試料106の表面一箇所で交差するように調整されている。このとき、集束イオンビーム鏡筒101、電子ビーム鏡筒102、不活性イオンビーム鏡筒103の配置は、入れ替えても良い。
試料ステージ107は、複数の駆動軸を持っていて、試料106を載置して三次元空間を移動可能となっているが、図2に示すように、集束イオンビーム鏡筒101、電子ビーム鏡筒102、不活性イオンビーム鏡筒103を含む第一の平面201に対して直交する第二の平面202を基準とし、その交差角度が変更可能な構造になっている。その交差角度の変更可能範囲は、少なくとも±3度あれば良い。これは、試料の側壁を試料表面に対して垂直に立てるために設けられる傾斜角度である。実験的にこの程度の角度傾斜することができれば、目的を達成できる。すなわち、試料の側壁面の傾斜を補正することができる。
集束イオンビーム鏡筒101から発射されて試料表面を走査照射される集束イオンビームは、試料106の表面の被加工領域をスパッタリングエッチング加工する。同時に、電子ビーム鏡筒102から発射されて試料表面を走査照射される電子ビームは、試料106の表面の被加工領域を含む領域に走査照射される。そして、試料106表面から発生する電子などの二次荷電粒子を図1には図示されていない二次荷電粒子検出器にて検出し、同じく図示されていない装置制御システムにて走査電子顕微鏡像となる。
本装置を用いて薄片試料を作製する場合、集束イオンビームにてスパッタリングエッチング加工している状態を電子ビーム走査照射による走査電子顕微鏡像で観察し、薄片の厚さが設定された厚さになったところで、装置制御システムは集束イオンビームの試料への照射を終了する。
また、集束イオンビームにて薄片を所定の厚さに加工した後に、不活性イオンビーム鏡筒103から発射される不活性イオンビームを試料106表面の薄片周辺に照射してスパッタリングエッチング加工を行うのと同時に、電子ビームを走査照射して薄膜周辺を走査電子顕微鏡像で観察し、薄片の厚さが設定された厚さになったところで、装置制御システムは不活性イオンビームの試料への照射を終了する。
本発明による装置の第二の実施例を図5を参照して説明する。
液体金属イオン源から発生するイオンを集束イオン光学系で集束し、試料表面に焦点を合わせて走査照射する集束イオンビーム鏡筒501と、エミッタチップから発生する電子を電子ビーム光学系で集束し、試料表面に焦点を合わせて走査照射する電子ビーム鏡筒502と、アルゴンなどの不活性イオンビームを発生して試料に照射する不活性イオンビーム鏡筒503が試料室504に取り付けられている。試料室内は、真空ポンプ505によって真空排気され、高真空状態を保持している。試料室504の内側には、試料506を載置して移動する試料ステージ507が設置されている。
集束イオンビーム鏡筒501と、電子ビーム鏡筒502と、不活性イオンビーム鏡筒503は、集束イオンビーム鏡筒501から発射される集束イオンビームと、電子ビーム鏡筒502から発射される電子ビームと、不活性イオンビーム鏡筒503から発射される不活性イオンビームは、試料ステージ507に載置された試料506の表面一箇所で交差するように調整されている。
試料ステージ507は、複数の駆動軸を持っていて、試料506を載置して三次元空間を移動可能となっているが、図6に示すように、集束イオンビーム鏡筒601、不活性イオンビーム鏡筒603を含む第一の平面608に対して直交する第二の平面609を基準とし、その交差角度が変更可能な構造になっている。不活性イオンビームを照射するにあたり、試料への入射角度を変更することにより、不活性イオンビームによるエッチングで発生した再付着物の試料表面の残存を最小限に抑制する。
本装置を用いて薄片試料を作製する場合、集束イオンビームにてスパッタリングエッチング加工している試料506の露出した断面の状態を該断面への電子ビーム走査照射による走査電子顕微鏡像で観察し、薄片の厚さが設定された厚さになったところで、装置制御システムは集束イオンビームの試料への照射を終了する。このとき、試料の厚さは、試料の厚さ、材質などと、電子ビームの加速電圧で決まる透過電子量の変化を測定することにより、測定する。通常、電子は試料を透過しないが、所定の加速電圧を超えたり、試料の厚さがある厚さ以下になったりすると、電子が試料を透過する。その結果、電子顕微鏡による観察像が透過電子の影響で変化する。この変化を見つけることにより試料の厚さを制御することができる。
また、集束イオンビームにて薄片を所定の厚さに加工した後に、試料506を載置した試料ステージ507を傾斜して、試料506の表面が電子ビーム鏡筒502と不活性イオンビーム鏡筒503とで形成される平面に対して概ね垂直になるようにする。不活性イオンビーム鏡筒503から発射される不活性イオンビームを試料506表面の薄片周辺に照射してスパッタリングエッチング加工を行うのと同時に、電子ビームを試料側壁に対して平行な方向から走査照射して薄膜周辺を走査電子顕微鏡像で観察し、薄片の厚さが設定された厚さになったところで、装置制御システムは不活性イオンビームの試料への照射を終了する。このとき、試料ステージ507を移動させて、不活性イオンビームの試料506への入射角度を変更し、試料に残るエッチングによる再付着物を最小限にする。
図3に本発明による第一の実施例に示した装置を用いた方法の実施例を説明する。
図3aに示すように、試料表面の薄片として残す領域301の周囲に、加工枠302a、302b、302c、302dを設定する。加速電圧が高く、エッチング速度の速い第一の集束イオンビーム条件にて集束イオンビーム311を用いたスパッタリングエッチング加工を行う。その結果、薄片として残す領域301を含んだ領域の周囲がエッチング加工される。
続いて、図3bに示すように、薄片として残す領域301の一方の側壁側に加工枠303を設定する。そして、試料を傾斜させて、第一の集束イオンビーム条件と比較してビーム径の小さい第二の集束イオンビーム条件にて集束イオンビーム312を走査照射してスパッタリングエッチング加工を行う。傾斜角度は、薄片の側壁が試料表面に対して垂直になるように設定するものとする。このとき同時に、薄片の側壁に対して平行な方向から電子ビーム314を走査照射して、薄片の表面を走査電子顕微鏡観察する。そして、薄片の厚さが所定の厚さになったところで、集束イオンビーム312の照射を終了する。
続いて、図3cに示すように、薄片として残す領域301のもう一方の側壁側に加工枠304を設定する。そして、試料を傾斜させて、第二の集束イオンビーム条件にて集束イオンビーム312を走査照射してスパッタリングエッチング加工を行う。このときの傾斜角度は他方の傾斜と同じ条件で決定する。図3bの工程と同様に、電子ビーム314を薄片の側壁に対して平行な方向から走査照射して、薄片の表面を走査電子顕微鏡観察する。そして、薄片の厚さが所定の厚さになったところで、集束イオンビーム312の照射を終了する。
続いて、図3dに示すように、試料を傾斜して、第三の集束イオンビーム条件にて集束イオンビーム313を走査照射してスパッタリングエッチング加工を行う。そして、薄片306を試料から切り離し、TEM観察用グリッド307に移す。
薄片306に残る集束イオンビームのスパッタリングエッチング加工による損傷が、透過電子顕微鏡による観察に影響する場合、第二の集束イオンビーム条件において、加速電圧を10kV以下の低い電圧に設定して行なっても良い。
続いて、図3eに示すように、薄片306をTEM観察用グリッド307に移し、薄片306を含む領域305に不活性イオンビーム315を照射して、薄片周辺をスパッタリングエッチング加工する。そのとき、不活性イオンビーム315は薄片306の側壁に概ね平行な方向から照射する。そして、薄片周辺に薄片306の側壁に対して平行な方向から電子ビーム314を走査照射して、薄片306の表面を走査電子顕微鏡観察し、薄片の厚さが所定の厚さになったところで、不活性イオンビーム315の照射を終了する。また、このとき、不活性イオンビーム315の照射角度が変わるよう試料ステージを移動させても良い。
図7に本発明による第二の実施例に示した装置を用いた方法の実施例を説明する。
図7aに示すように、試料表面の薄片として残す領域701の周囲に、加工枠702a、702b、702c、702dを設定する。加速電圧が高く、エッチング速度の速い第一の集束イオンビーム条件にてスパッタリングエッチング加工を行う。その結果、薄片として残す領域701を含んだ領域の周囲がエッチング加工される。
続いて、図7bに示すように、薄片として残す領域701の一方の側壁側に加工枠703を設定する。そして、試料を傾斜させて、第一の集束イオンビーム条件と比較してビーム径の小さい第二の集束イオンビーム条件にて集束イオンビーム712を走査照射してスパッタリングエッチング加工を行う。傾斜角度は、薄片の側壁が試料表面に対して垂直になるように設定するものとする。このとき同時に、薄片の側壁に対しで垂直な方向から電子ビーム714を走査照射して、薄片の側壁を走査電子顕微鏡観察する。そして、透過電子量の相違から起きる観察像の明るさの変化から薄片の厚さを判断し、所定の厚さになったところで、集束イオンビーム712の照射を終了する。
続いて、図7cに示すように、薄片として残す領域701のもう一方の側壁側に加工枠704を設定する。そして、試料を傾斜させて、第二の集束イオンビーム条件にて集束イオンビーム712を走査照射してスパッタリングエッチング加工を行う。このときの傾斜角度は他方の傾斜と同じ条件で決定する。図7bの工程と同様に、電子ビーム714を薄片の側壁に対して垂直な方向から電子ビームを走査照射して、薄片の表面を走査電子顕微鏡観察する。そして、透過電子量の相違から起きる観察像の明るさの変化から薄片の厚さを判断し、所定の厚さになったところで、集束イオンビーム712の照射を終了する。
続いて、図7dに示すように、試料を傾斜して、第三の集束イオンビーム条件にて集束イオンビーム713を走査照射してスパッタリングエッチング加工を行う。そして、薄片706を試料から切り離し、TEM観察用グリッド707に移す。
薄片706に残る集束イオンビームのスパッタリングエッチング加工による損傷が、透過電子顕微鏡による観察に影響する場合、第二の集束イオンビーム条件において、加速電圧を10kV以下の低い電圧に設定して行なっても良い。
続いて、図7eに示すように、薄片706をTEM観察用グリッド707に移し、薄片706を含む領域705に不活性イオンビーム715を照射して、薄片周辺をスパッタリングエッチング加工する。そのとき、不活性イオンビーム715は薄片706の側壁に概ね平行な方向から照射する。そして、薄片周辺に薄片706の側壁に対して垂直な方向から電子ビーム714を走査照射して、薄片706の表面を走査電子顕微鏡観察する。そして、透過電子量の相違から起きる観察像の明るさの変化から薄片の厚さを判断し、所定の厚さになったところで、集束イオンビーム712の照射を終了する。
また、このとき、不活性イオンビーム715の照射角度が変わるよう試料ステージを移動させても良い。
産業上の利用性
本発明により、試料表面に薄片を形成する際に、その薄片の厚さを正確に制御することができる。また、実施例などで説明してないが、薄片の側壁に対して平行な方向から電子ビームを走査照射して薄片の厚さを観察していることから、薄片の上部のみならず、下部に至るまでの厚さの均一性も確認することができると言う効果を得ることができる。
又、側壁に垂直な方向から電子ビームを照射して厚みを測定することにより走査電子顕微鏡像の分解能によらず、膜厚を管理することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料表面に集束イオンビームを走査照射してエッチング加工することにより薄片試料を作製する方法において、集束イオンビームのエッチング加工によって薄片部を作製すると同時にまたは前記集束イオンビームの照射を一時中断して、前記作製された薄片部の側壁に対して平行な方向から電子ビームを走査照射して前記薄片の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片部の厚さを測定することを特徴とする薄片試料作製方法。
【請求項2】
前記薄片試料の厚さが所定の厚さになったことを確認してエッチング加工を終了することを特徴とする請求項1記載の薄片試料作製方法。
【請求項3】
試料表面に集束イオンビームを走査照射してエッチング加工することにより薄片試料を作製する方法において、
集束イオンビームを用いて第一の集束イオンビーム条件で薄片とすべき領域の両側をエッチング加工する第一の工程と、
前記第一の工程に続いて前記集束イオンビームを用いて前記第一の集束イオンビーム条件と比較して低加速電圧かつ/または低ビーム電流である第二の集束イオンビーム条件で薄片とすべき領域の側壁に平行な方向から集束イオンビームを照射することにより前記側壁をエッチング加工するのと同時に、前記薄片とすべき領域の側壁に平行な方向から電子ビームを走査照射して前記薄片とすべき領域の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片とすべき領域の厚さを測定する第二の工程とからなることを特微とする薄片試料作製方法。
【請求項4】
前記薄片とすべき領域の第一の側壁に対し前記第二の工程を施し、第一の所望の厚さに形成にした後、前記薄片とすべき領域の第二の側壁に対して第二の工程を施して、前記所定の厚さに形成することを特徴とする請求項3記載の薄片試料作製方法。
【請求項5】
前記第二の工程において、前記薄片とすべき領域の側壁をエッチング加工する時に、前記集束イオンビームが該側壁にその傾斜を補正するように照射されるように前記試料を傾斜させることを特徴とする請求項3または4記載の薄片試料作製方法。
【請求項6】
試料表面に集束イオンビームを走査照射してエッチング加工することにより薄片試料を作製する方法において、
集束イオンビームを用いて薄片とすべき領域の両側をエッチング加工して薄片部を作製する第一の工程と、
前記薄片の第一の側壁にその傾斜を補正するように集束イオンビームが照射されるように前記試料を傾斜させて、集束イオンビームを走査照射してエッチングを行うのと同時にまたは前記集束イオンビームの照射を一時中断して、前記薄片部の側壁に概ね平行に電子ビームを走査照射して前記薄片部の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片部の厚さが第一の所定の厚さになることを確認してエッチング加工を終了する第二の工程と、
前記薄片部の第二の側壁にその傾斜を補正するように集束イオンビームが照射されるように前記試料を傾斜させて、前記集束イオンビームを走査照射してエッチングを行うのと同時にまたは前記集束イオンビームの照射を一時中断して、前記薄片の側壁に概ね平行に電子ビームを走査照射して前記薄片部の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片部の厚さが第二の所定の厚さになることを確認してエッチングを終了する第三の工程と、
前記第三の工程に続いて不活性イオンビームを照射して前記薄片部の両側をスパッタリングエッチング加工するのと同時にまたは前記不活性イオンビームの照射を一時中断して、前記薄片部の側壁に平行に電子ビームを走査照射して前記薄片の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片部の厚さを測定し、前記薄片部の厚さが第三の所定の厚さになることを確認して前記不活性イオンビームによるスパッタリングエッチング加工を終了する第四の工程と、
を含むことを特徴とする薄片試料作製方法。
【請求項7】
試料表面に集束イオンビームを走査照射してエッチング加工することにより薄片試料を作製する方法において、
集束イオンビームを用いて薄片とすべき領域の両側をエッチング加工して薄片部を作製する第一の工程と、
前記薄片の第一の側壁にその傾斜を補正するように集束イオンビームが照射されるように前記試料を傾斜させて、集束イオンビームを走査照射してエッチングを行うのと同時にまたは前記集束イオンビームの照射を一時中断して、前記簿片部の側壁に概ね垂直に電子ビームを走査照射して前記薄片部を透過する電子量を測定し、前記電子量の変化から前記薄片部の厚さが第一の所定の厚さになることを確認してエッチング加工を終了する第二の工程と、
前記薄片部の第二の側壁にその傾斜を補正するように集束イオンビームが照射されるように前記試料を傾斜させて、前記集束イオンビームを走査照射してエッチングを行うのと同時にまたは前記集束イオンビームの照射を一時中断して、前記薄片の側壁に概ね垂直に電子ビームを走査照射して前記薄片部を透過する電子量を測定し、前記電子量の変化から前記薄片部の厚さが第二の所定の厚さになることを確認してエッチングを終了する第三の工程と、
前記第三の工程に続いて不活性イオンビームを照射して前記薄片部の両側をスパッタリングエッチング加工するのと同時にまたは前記不活性イオンビームの照射を停止して、前記薄片部の側壁に平行に電子ビームを走査照射して前記薄片の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片部の厚さを測定し、前記薄片部の厚さが第三の所定の厚さになることを確認して前記不活性イオンビームによるスパッタリングエッチング加工を終了する第四の工程と、
を含むことを特徴とする薄片試料作製方法。
【請求項8】
試料表面に集束イオンビームを走査照射してエッチング加工することにより薄片試料を作製する方法において、
集束イオンビームを用いて薄片とすべき領域の両側をエッチング加工して薄片部を作製する第一の工程と、
前記薄片の第一の側壁にその傾斜を補正するように集束イオンビームが照射されるように前記試料を傾斜させて、集束イオンビームを走査照射してエッチングを行うのと同時にまたは前記集束イオンビームの照射を一時中断して、前記薄片部の側壁に概ね平行な方向から薄片部表面に電子ビームを走査照射して前記薄片部の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片部の厚さが第一の所定の厚さになることを確認してエッチング加工を終了する第二の工程と、
前記薄片部の第二の側壁にその傾斜を補正するように集束イオンビームが照射されるように前記試料を傾斜させて、前記集束イオンビームを走査照射してエッチングを行うのと同時にまたは前記集束イオンビームの照射を一時中断して、前記薄片の側壁に概ね垂直に電子ビームを走査照射して前記薄片部を透過する電子量を測定し、前記電子量の変化から前記簿片部の厚さが第二の所定の厚さになることを確認してエッチングを終了する第三の工程と、
前記第三の工程に続いて不活性イオンビームを照射して前記薄片部の両側をスパッタリングエッチング加工するのと同時にまたは前記不活性イオンビームの照射を一時中断して、前記薄片部の側壁に平行に電子ビームを走査照射して前記薄片の表面部分を顕微鏡観察し、前記薄片部の厚さを測定し、前記薄片部の厚さが第三の所定の厚さになることを確認して前記不活性イオンビームによるスパッタリングエッチング加工を終了する第四の工程と、
を含むことを特徴とする薄片試料作製方法。
【請求項9】
試料表面に集束イオンビームを走査照射してエッチング加工することにより薄片試料を作製する方法において、
集束イオンビームを用いて薄片とすべき領域の両側をエッチング加工して薄片部を作製する第一の工程と、
前記薄片の第一の側壁にその傾斜を補正するように集束イオンビームが照射されるように前記試料を傾斜させて、集束イオンビームを走査照射してエッチングを行うのと同時にまたは前記集束イオンビームの照射を一時中断して、前記薄片部の側壁に概ね垂直に電子ビームを走査照射して前記薄片部を透過する電子量を測定し、前記電子量の変化から前記薄片部の厚さが第一の所定の厚さになることを確認してエッチング加工を終了する第二の工程と、
前記薄片部の第二の側壁にその傾斜を補正するように集束イオンビームが照射されるように前記試料を傾斜させて、前記集束イオンビームを走査照射してエッチングを行うのと同時にまたは前記集束イオンビームの照射を一時中断して、前記薄片の側壁に概ね垂直に電子ビームを走査照射して前記薄片部を透過する電子量を測定し、前記電子量の変化から前記薄片部の厚さが第二の所定の厚さになることを確認してエッチングを終了する第三の工程と、
前記第三の工程に続いて不活性イオンビームを照射して前記薄片部の両側をスパッタリングエッチング加工するのと同時にまたは前記不活性イオンビームの照射を停止して、前記薄片部の側壁に概ね垂直に電子ビームを走査照射して前記薄片部を透過する電子量を測定し、前記電子量の変化から前記薄片部の厚さを測定し、前記薄片部の厚さが第三の所定の厚さになることを確認して前記不活性イオンビームによるスパッタリングエッチング加工を終了する第四の工程と、
を含むことを特徴とする薄片試料作製方法。
【請求項10】
イオン源から発生したイオンビームを集束して試料表面に走査照射する集束イオンビーム鏡筒と、電子源から発生した電子ビームを集束して試料表面に走査照射する電子ビーム鏡筒と、試料を載置して複数の駆動軸を持って三次元空間を移動させる試料ステージからなる集束イオンビーム及び電子ビーム複合装置において、
前記集束イオンビーム鏡筒より照射された集束イオンビームと、前記電子ビーム鏡筒より照射された電子ビームは、前記試料ステージ上に載置された試料表面の同一箇所に異なる角度で照射されるように配置され、前記試料ステージは、少なくとも前記集束イオンビーム鏡筒と電子ビーム鏡筒によって形成される第一の平面に対して直角に交差する第二の平面を基準として前記第一の平面に対する角度を変更可能に傾斜することを特徴とする複合荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
イオン源から発生したイオンビームを集束して試料表面に走査照射する集束イオンビーム鏡筒と、電子源から発生した電子ビームを集束して試料表面に走査照射する電子ビーム鏡筒と、不活性イオン源から発生した不活性イオンビームを集束して試料表面に走査照射する不活性イオンビーム鏡筒と、試料を載置して複数の駆動軸を持って三次元空間を移動させる試料ステージからなる集束イオンビーム及び電子ビーム複合装置において、
前記集束イオンビーム鏡筒と、前記電子ビーム鏡筒と、前記不活性イオンビーム鏡筒は同一平面上に配置され、
前記集束イオンビーム鏡筒より照射された集束イオンビームと、前記電子ビーム鏡筒より照射された電子ビーム、前記不活性イオンビーム鏡筒より照射された不活性イオンビームは、前記試料ステージ上に載置された試料表面の同一箇所に異なる角度で照射されるように配置され、前記試料ステージは、少なくとも前記集束イオンビーム鏡筒と電子ビーム鏡筒と不活性イオンビーム鏡筒によって形成される第一の平面に対して直角に交差する第二の平面を基準として前記第一の平面に対する角度を変更可能に傾斜することを特徴とする複合荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
イオン源から発生したイオンビームを集束して試料表面に走査照射する集束イオンビーム鏡筒と、電子源から発生した電子ビームを集束して試料表面に走査照射する電子ビーム鏡筒と、不活性イオン源から発生した不活性イオンビームを集束して試料表面に走査照射する不活性イオンビーム鏡筒と、試料を載置して複数の駆動軸を持って三次元空間を移動させる試料ステージからなる集束イオンビーム及び電子ビーム複合装置において、
前記集束イオンビーム鏡筒より照射された集束イオンビームと、前記電子ビーム鏡筒より照射された電子ビーム、前記不活性イオンビーム鏡筒より照射された不活性イオンビームは、前記試料ステージ上に載置された試料表面の同一箇所に異なる角度で照射されるように上記各ビーム鏡筒が配置されていることを特徴とする複合荷電粒子ビーム装置。

【国際公開番号】WO2005/003736
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【発行日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511434(P2005−511434)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009870
【国際出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】