説明

薄膜トランジスタ用の絶縁体または平坦化層としての低温ゾルゲルシリケート

【課題】薄膜トランジスタ用に低温処理可能なまたは溶液処理または印刷可能なゲート絶縁体として使用でき、また、薄膜トランジスタまたは他のエレクトロニクスデバイス用のステンレス鋼箔の平坦化にも使用できる配合物を提供すること。
【解決手段】135℃から250℃で硬化し、そのうえ、処理温度の低下にもかかわらず良好なリーク電流密度値(9×10-9A/cm2から1×10-10A/cm2)を与えるゾルゲルシリケート前駆体の特定の組み合わせを含んでなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2006年7月14日に出願された米国仮特許出願第60/831,161号の利益を主張する。この仮出願の開示内容を、参照することにより本願明細書に組み込んだものとする。
【0002】
本発明の主題は、参照することにより本願明細書に組み込んだものとする米国特許出願公開公報第2006/0097360号および米国特許出願第11/752,722号に関連する。
【0003】
本発明は、比較的低温でシリケート膜を提供する低温処理ゾルゲルシリカ含有配合物の使用に関する。1態様において、これらの配合物の低温処理から調製される膜は、薄膜トランジスタ(TFT)のゲート絶縁体または層間絶縁体として使用できる。他の態様において、これらの配合物のより高温の変種は、例えばステンレス鋼箔または基板(例えば、鋼箔上のTFT)の平坦化層として使用できる。
【背景技術】
【0004】
エレクトロニクス産業は、他を排除するものではないが、特にプリントトランジスタ用に低温および高温で薄膜トランジスタを製造するのに使用するための、迅速処理可能なゲート絶縁体、層間絶縁体および平坦化膜を探している。しかし、広範囲の条件および堆積技術に対する、かつ400℃以下の温度での材料の適合性、処理性および良好な電気的性質の必要性が重大な問題を呈してきた。この問題は解決するのが非常に困難であり、特に、望ましい反応(すなわち硬化)温度が、プラスティック上のTFT用のゲート絶縁体または層間絶縁材料には180℃未満、ガラス上のTFT用のゲート絶縁体または層間絶縁材料には250〜300℃以下である無機組成物(例えば、被膜形成組成物)ではそうである。類似の問題が、TFTあるいはプラスティック、他の有機物またはステンレス鋼上の他のエレクトロニクスデバイス用の基板の平坦化膜に存在する。耐溶媒性、プラスティック用の平坦化膜では180℃以下の、鋼用の平坦化膜では250℃付近またはそれ以上の、他の種類のTFT用のステンレス鋼用の平坦化膜では400℃以上の処理温度と共に、厚い均一な膜(1μmを超える)がしばしば必要とされる。有機基板上の平坦化膜として使用されるシリケートの処理温度は400℃未満のことがあり、典型的には250℃未満、より典型的には180℃未満である。
【0005】
したがって、エレクトロニクス産業には、伝統的な高温処理(400℃)シリカ、シリケートまたは窒化ケイ素系層間絶縁材料を、スピンコーティング、スロット押出、噴霧または印刷などの典型的な溶液キャスト技術により堆積可能な低い処理温度の材料に変える必要性が存在する。シリケートおよびその修飾版は、典型的には400〜450℃で処理され、化学蒸着またはスピンコーティング技術により通常堆積する。しかし、多くのTFT用途において、要求される処理温度は400℃よりはるかに低い。ゲート絶縁体または層間絶縁材料としてのシリカの代替物としてポリマー材料を使用することがあり、400℃より低い温度で堆積できるが、それらは、水を吸収する傾向によりTFT移動度の低下およびTFT性能の悪化を通常示し、それらは典型的には窒素(N2)または真空中で処理される。薄膜トランジスタまたは他のエレクトロニクスデバイス用の層間またはゲート絶縁体あるいは平坦化材料として試験されてきたポリマーの多くは、十分に架橋していないために、後の層の堆積に使用される他の溶媒との接触に耐える能力が欠けている。したがって、良好な耐溶剤性を与えるのに必要な架橋と組み合わせて上記の基準を満たす絶縁材料も望ましい。
【0006】
薄膜トランジスタおよびトランジスタアレイ(バックプレーンとしても知られる)の表示および画像化には好適な絶縁膜を必要とする。層間およびゲート絶縁膜は、典型的には、低いリーク電流密度、高い降伏電圧および130から180℃または250℃から300℃の硬化温度を持つことが求められる。これらの膜が硬化した後、耐溶剤性、低い吸湿性およびTFT中の他の層との適合性を有することが望ましい。
【0007】
ステンレス鋼などの基板のための平坦化膜は、180℃以上で処理できるが、250℃以上あるいは、低温ポリシリコン(LTPS)トランジスタに使用される場合、400℃と600℃の間でも処理されることがある。この用途のために報告されているシリケートもあるが、ほとんどのものは、ステンレス鋼がガラスに似るように十分な程度の平坦化を与えながら、1μmを超える厚さで1工程において堆積する能力に欠ける。平坦化膜が自己平坦化であるのが最も望ましいが、これは、その上にトランジスタアレイを載せるのに十分に滑らかであるために追加の機械的処理(例えば、化学的機械的平坦化すなわちCMP)が必要でないことを意味する。平坦化層は、有機基板および無機基板(例えば金属)の両方に対して必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、比較的低温で処理できるゾルゲルシリケート配合物を提供することにより従来の材料に関連した問題を解決する。本発明のシリケートは、広範囲の基板に塗布でき、例えば薄膜トランジスタ(TFT)におけるゲートまたは層間絶縁体として、またはいろいろな基板用の平坦化膜として使用できる。本発明のシリケートは、他の最終用途の中でも、例えばステンレス鋼および他の基板の平坦化のような広範囲の用途に使用すべきTFTにおける膜として配合物を適用する方法にも使用できる。
【0009】
本発明の1態様は、ゲートまたは層間絶縁体あるいは平坦化膜として使用できる、ゾルゲル前駆体、少なくとも1種の溶媒、少なくとも1種の酸および、任意に、少なくとも1種の塩基、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のポロゲン、少なくとも1種の流展剤(flow and levelling agent)またはこれらの混合物を含んでなる組成物に関する。この膜は、用途により、約400℃以上、約400℃以下、約250℃以下、約180℃以下の温度で効果的に処理または硬化できる。例えば、このような組成物を利用して、薄膜トランジスタまたは他のエレクトロニクスデバイスまたは用途のための絶縁膜または平坦化膜を提供できる。
【0010】
本発明の他の態様は、3.5未満の誘電率、許容できるリーク電流密度、および低い吸湿性を有する、ゾルゲルシリケートゲートまたは層間絶縁膜(空気中で約130℃から約300℃の温度で処理される)を備えた基板を提供する方法に関する。この方法は、本発明のゾルゲル配合物を、スピンコーティング、スロット押出、ドクターブレーディング、噴霧、印刷または他の溶液堆積方法のいずれかにより基板に適用する工程および得られた膜を、約300℃以下の、典型的には約250℃未満の、より典型的には180℃未満の温度で加熱し、典型的には全ての加熱を空気中で実施する工程を含んでなる。
【0011】
ゲート絶縁体、層間絶縁体および/または、特に平坦化膜が自己平坦化である場合の平坦化膜として、低温架橋ゾルゲル配合物の膜を含む薄膜トランジスタデバイスがさらに提供される。
【0012】
ゲートおよび/または層間絶縁体および/または平坦化膜として、本発明の低温処理されたゾルゲルシリケート配合物を含むエレクトロニクスデバイスがさらに提供される。
【0013】
本発明を限定するものでないが、代表的な実施例として作用する以下の図面を参照して本発明をさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
概略を説明すると、本発明は、ゲート絶縁体用途に比較的低温で、特に約250℃以下で、より詳細には約180℃以下で処理可能なゾルゲルシリケート配合物に関する。この同一または類似のゾルゲルシリケート配合物は、例えば約250℃以上、または約400℃以上のようなより高温で処理でき、平坦化膜として使用できる。本発明のシリケートは、広範囲の基板に適用でき、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)または他のエレクトロニクスデバイスにおけるゲートまたは層間絶縁体あるいは平坦化膜として利用可能である。この組成物は、望ましいリーク電流密度(例えば、約5×10-8A/cm2未満のリーク電流密度)を有する膜または層を形成できる。例えば薄膜トランジスタのようなエレクトロニクスデバイスで使用される場合、シリケートは、約300℃以下で硬化可能なゾルゲルシリカ含有配合物から調製される絶縁材料を含んでよい。本発明の1態様において、約300℃以下で、典型的には約250℃未満で、通常約180℃未満で硬化するゾルゲルシリカ含有配合物からゲート絶縁体または層間絶縁体を調製するための組成物が提供される。この組成物は、ゾルゲル処理可能な少なくとも1種のシリカ源、少なくとも1種の溶媒、水、少なくとも1種の酸および、任意に、少なくとも1種の塩基、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のポロゲン、少なくとも1種の流展剤またはその混合物を含んでなる。この組成物では、任意に、シリカ源内の炭素対ケイ素のモル比が少なくとも約0.5であってもよい。
【0015】
本発明の他の態様において、約250℃以上、または約400℃以上で硬化するゾルゲルシリカ含有配合物から平坦化膜を調製するための類似または同一の組成物が提供される。この組成物は、ゾルゲル処理可能な少なくとも1種のシリカ源、少なくとも1種の溶媒、水、少なくとも1種の酸および、任意に、少なくとも1種の塩基、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のポロゲン、少なくとも1種の流展剤またはその混合物を含んでなる。この組成物は、任意に、シリカ源内の炭素対ケイ素のモル比が少なくとも約0.5であってもよい。
【0016】
本発明のさらなる態様において、ゾルゲル処理可能な少なくとも1種のシリカ源、少なくとも1種の溶媒、水、少なくとも1種の酸および、任意に、少なくとも1種の塩基、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のポロゲン、少なくとも1種の流展剤またはその混合物を含む組成物を利用して基板を平坦化する方法が提供される。この方法は、自己平坦化する膜も包含する。自己平坦化膜は、基板の種々の形状または不規則性を覆い、他の層、膜の第2のコーティングを加えたり、膜のさらなる機械的処理をほとんどまたは全く施したりすることなく、コーティングされた基板の表面に比較的低いrms粗さを提供するであろう。
【0017】
平滑度の測定に使用される一般的な尺度は、基板の25μm×25μm部分で得られるrms粗さである。二乗平均平方根(Rq)は、画像のZ値の標準偏差(すなわちrms粗さ)である。次の式により計算される:
【0018】
【数1】

【0019】
上式において、Zavgは画像中の平均Z値であり;ZiはZの現在値であり;Nは画像中のポイントの数である。この値は、画像の平面中の傾きに関しては補正されない。したがって、データの平面フィッティング(planefitting)または平坦化をするとこの値が変わるであろう。
【0020】
典型的には、基板に膜を堆積する前と後に、基板上の平坦化膜のrms粗さを測定する。フレキシブルディスプレイ基板に使用される膜の堆積前のステンレス鋼基板の通常のrms粗さは、200nmのrms粗さであり、良好な平坦化膜は、20nm未満のこの範囲のrms粗さを達成するものである。
【0021】
本発明の他の態様において、本発明の平坦化膜を含む種々のエレクトロニクスデバイスに使用すべき基板が提供される。このようなデバイスの具体的な例は薄膜トランジスタアレイであるが、本発明はこの種類のデバイスに限定されない。このようなデバイスの他の例には、薄膜トランジスタ、光電装置、太陽電池、表示装置、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、記憶装置、基本論理装置、集積回路、RFIDタグ、センサー、スマートオブジェクトまたはX線画像装置があるが、これらに限定されない。
【0022】
シリカ源として好適な材料には、ゾルゲル処理可能であり、以下の式の少なくとも1つにより表される化合物からなる群から選択される化合物を含んでなるシリカ源がある:
【0023】
i)RaSi(OR14-a(式中、Rは、独立に、水素原子、フッ素原子または一価有機基を表し;R1は一価有機基を表し;aは1または2の整数である);
【0024】
Si(OR24(式中、R2は一価有機基を表す);および
【0025】
ii)R3b(R4O)3-bSi−R7−Si(OR53-c6c(式中、R4およびR5は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価有機基を表し;R3およびR6は、同一でも異なっていてもよく;bおよびcは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ0から3の範囲の数であり;R7は、酸素原子、フェニレン基、ビフェニル、ナフタレン基または式−(CH2n−により表される基を表し、ここで、nは1から6の範囲の整数である)。これらの化合物は、
少なくとも1種の溶媒;
水;
少なくとも1種の酸;および、
任意に、少なくとも1種の塩基、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のポロゲン、少なくとも1種の流展剤またはその混合物
の少なくとも1つと任意に好適な方法により組み合わせることができる。
【0026】
すでに記載したとおり、本組成物は少なくとも1種のシリカ源を含むことができる。シリカ源は、例えば、加水分解重縮合または類似の手段によりゾルゲル処理可能である。例えばケイ素のような無機中心元素を有するモノマー性または予備縮合した、加水分解可能および縮合可能な化合物は、ゾルが形成し次いで通常pH活性触媒の添加または他の手段によりゲルへの縮合が実施されるまで、水および任意に触媒を添加して加水分解および予備縮合される。次いで、例えば熱、放射および/または電子線のような1種または複数のエネルギー源による処理で、ゲルを連続ネットワークに転化できる。本組成物は、約5%から約95重量%の、または約5%から約75重量%の、または約1%から約65重量%の少なくとも1種のシリカ源を含んでよい。「シリカ源」は、本願で使用する場合、例えば、ケイ素(Si)、酸素(O)、炭素(C)のうちの少なくとも1つおよび任意に、例えばH、B、Pまたはハロゲン原子の少なくとも1つ、例えばアルキル基またはアリール基のような有機基のような追加の構成要素を含んでいる。
【0027】
以下は、本願明細書に記載の組成物に使用するのに好適なシリカ源の非限定的な例である。以下の化学式およびこの文書全体の化学式全てにおいて、「独立に」という用語は、対象とするR基が、異なる上付文字を有する他のR基に対して独立に選択されるだけでなく、同じR基の追加種に対しても独立に選択されることを意味すると理解されたい。例えば式RaSi(OR14-aにおいて、式中の「a」が2である場合、2つのR基は互いに対しても、R1に対しても同一である必要がない。さらに、以下の式において、「一価有機基」という用語は、例えばSiまたはOのような対象とする元素に、C単結合により、すなわちSi−CまたはO−Cにより結合している有機基に関する。一価有機基の例は、アルキル基、アリール基、不飽和アルキル基および/またはアルコキシ、エステル、酸、カルボニルまたはアルキルカルボニル官能基により置換されている不飽和アルキル基を含む。アルキル基は、炭素原子数1から6の直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル基でもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル基である。一価有機基として好適なアリール基の例は、フェニル、メチルフェニル、エチルフェニルおよびフルオロフェニルを含むことができる。ある実施形態において、アルキル基中の1つまたは複数の水素が、例えばハロゲン原子(すなわちフッ素)または酸素原子のような追加原子により置き換わり、カルボニルまたはエーテル官能基を与えていてもよい。
【0028】
ある実施形態において、シリカ源は、次式:RaSi(OR14-aにより表すことができ、この式において、Rは、独立に、水素原子、フッ素原子または一価有機基を表し;R1は、独立に、一価有機基を表し;そしてaは1から2の整数である。RaSi(OR14-aにより表される化合物の具体例は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピル錫−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ−n−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−tert−ブトキシシラン、イソプロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリイソプロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン;sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリイソプロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、tert−ブチルトリイソプロポキシシラン、tert−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、tert−ブチルトリフェノキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリ−n−プロポキシシラン、イソブチルトリイソプロポキシシラン、イソブチルトリ−n−ブトキシシラン、イソブチルトリ−sec−ブトキシシラン、イソブチルトリ−tert−ブトキシシラン、イソブチルトリフェノキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ペンチルトリイソプロポキシシラン、n−ペンチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ペンチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ペンチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ペンチルトリフェノキシシラン;sec−ペンチルトリメトキシシラン、sec−ペンチルトリエトキシシラン、sec−ペンチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ペンチルトリイソプロポキシシラン、sec−ペンチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ペンチルトリ−sec−ブトキシシラン、sec−ペンチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ペンチルトリフェノキシシラン、tert−ペンチルトリメトキシシラン、tert−ペンチルトリエトキシシラン、tert−ペンチルトリ−n−プロポキシシラン、tert−ペンチルトリイソプロポキシシラン、tert−ペンチルトリ−n−ブトキシシラン、tert−ペンチルトリ−sec−ブトキシシラン、tert−ペンチルトリ−tert−ブトキシシラン、tert−ペンチルトリフェノキシシラン、イソペンチルトリメトキシシラン、イソペンチルトリエトキシシラン、イソペンチルトリ−n−プロポキシシラン、イソペンチルトリイソプロポキシシラン、イソペンチルトリ−n−ブトキシシラン、イソペンチルトリ−sec−ブトキシシラン、イソペンチルトリ−tert−ブトキシシラン、イソペンチルトリフェノキシシラン、ネオペンチルトリメトキシシラン、ネオペンチルトリエトキシシラン、ネオペンチルトリ−n−プロポキシシラン、ネオペンチルトリイソプロポキシシラン、ネオペンチルトリ−n−ブトキシシラン、ネオペンチルトリ−sec−ブトキシシラン、ネオペンチルトリ−ネオブトキシシラン、ネオペンチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、δ−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、δ−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジフェノキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジイソプロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジフェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジフェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、メチルネオペンチルジメトキシシラン、メチルネオペンチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、n−プロピルジメトキシシラン、イソプロピルジメトキシシラン、n−ブチルジメトキシシラン、sec−ブチルジメトキシシラン、tert−ブチルジメトキシシラン、イソブチルジメトキシシラン、n−ペンチルジメトキシシラン、sec−ペンチルジメトキシシラン、tert−ペンチルジメトキシシラン、イソペンチルジメトキシシラン、ネオペンチルジメトキシシラン、ネオヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、n−プロピルジエトキシシラン、イソプロピルジエトキシシラン、n−ブチルジエトキシシラン、sec−ブチルジエトキシシラン、tert−ブチルジエトキシシラン、イソブチルジエトキシシラン、n−ペンチルジエトキシシラン、sec−ペンチルジエトキシシラン、tert−ペンチルジエトキシシラン、イソペンチルジエトキシシラン、ネオペンチルジエトキシシラン、ネオヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルジエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、トリ−tert−ブトキシシラン、トリフェノキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよび(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1要素を含むことができる。1種以上の任意の好適な化合物を使用してもよいが、有用な化合物の具体例は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランならびに式HSi(OR13の式のもの、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、トリ−tert−ブトキシシランおよびトリフェノキシシランのうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
シリカ源は、式Si(OR24を有する化合物(式中、R2は、独立に一価有機基を表す)を含んでよい。Si(OR24により表される化合物の具体例は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ(tert−ブトキシシラン)、テトラアセトキシシランおよびテトラフェノキシシランのうちの少なくとも1つを含む。有用な化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシランまたはテトラフェノキシシランのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0030】
シリカ源は、式R3b(R4O)3-bSi−(R7)−Si(OR53-c6cを有する化合物またはその組み合わせを含むことができる。この式において、R3およびR6は、独立に、水素原子、フッ素原子または一価有機基を表し;R4およびR5は、独立に、一価有機基を表し;bおよびcは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ0から2の範囲の数であり;R7は、酸素原子、フェニレン基、ビフェニル、ナフタレン基または式−(CH2n−により表される基を表し、nは1から6の範囲の整数である。式中のR7が酸素原子であるこれらの化合物の具体例は、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、ヘキサフェノキシジシロキサン、1,1,1,3,3−ペンタメトキシ−3−メチルジシロキサン、1,1,1,3,3−ペンタエトキシ−3−メチルジシロキサン、1,1,1,3,3−ペンタメトキシ−3−フェニルジシロキサン、1,1,1,3,3−ペンタエトキシ−3−フェニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエトキシ−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,1,3−トリメトキシ−1,3,3−トリメチルジシロキサン、1,1,3−トリエトキシ−1,3,3−トリメチルジシロキサン、1,1,3−トリメトキシ−1,3,3−トリフェニルジシロキサン、1,1,3−トリエトキシ−1,3,3−トリフェニルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサンおよび1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサンの群から選択される少なくとも1員を含む。有用な化合物は、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、ヘキサフェノキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3,−テトラメトキシ−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン;1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサンのうちの少なくとも1つを含むことができる。R7が−(CH2n−により表されるこれらの化合物の具体例には、以下のものがある:ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジメトキシフェニルシリル)メタン、ビス(ジエトキシフェニルシリル)メタン、ビス(メトキシジメチルシリル)メタン、ビス(エトキシジメチルシリル)メタン、ビス(メトキシジフェニルシリル)メタン、ビス(エトキシジフェニルシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジメトキシフェニルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシフェニルシリル)エタン、1,2−ビス(メトキシジメチルシリル)エタン、1,2−ビス(エトキシジメチルシリル)エタン、1,2−ビス(メトキシジフェニルシリル)エタン、1,2−ビス(エトキシジフェニルシリル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,3−ビス(ジメトキシメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ジエトキシメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ジメトキシフェニルシリル)プロパン、1,3−ビス(ジエトキシフェニルシリル)プロパン、1,3−ビス(メトキシジメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(エトキシジメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(メトキシジフェニルシリル)プロパンおよび1,3−ビス(エトキシジフェニルシリル)プロパン。有用な化合物は、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジメトキシフェニルシリル)メタン、ビス(ジエトキシフェニルシリル)メタン、ビス(メトキシジメチルシリル)メタン、ビス(エトキシジメチルシリル)メタン、ビス(メトキシジフェニルシリル)メタンおよびビス(エトキシジフェニルシリル)メタンを含むことができる。
【0031】
本発明のある実施形態において、式RaSi(OR14-aのR1;式Si(OR24のR2;および式R3b(R4O)3-bSi−(R7)−Si(OR53-c6cのR4および/またはR5は、それぞれ独立に、以下の式の一価有機基であってもよい。
【0032】
【化1】

【0033】
上式において、nは0から4の整数である。これらの化合物の具体例は、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、n−プロピルトリアセトキシシラン、イソプロピルトリアセトキシシラン、n−ブチルトリアセトキシシラン、sec−ブチルトリアセトキシシラン、tert−ブチルトリアセトキシシラン、イソブチルトリアセトキシシラン、n−ペンチルトリアセトキシシラン、sec−ペンチルトリアセトキシシラン、tert−ペンチルトリアセトキシシラン、イソペンチルトリアセトキシシラン、ネオペンチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジエチルジアセトキシシラン、ジ−n−プロピルジアセトキシシラン、ジイソプロピルジアセトキシシラン、ジ−n−ブチルジアセトキシシラン、ジ−sec−ブチルジアセトキシシラン、ジ−tert−ブチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリアセトキシシランのうちの少なくとも1つを含むことができる。有用な化合物は、テトラアセトキシシランおよびメチルトリアセトキシシランを含むことができる。
【0034】
シリカ源の他の例は、例えば、参照することにより本願明細書に組み込んだこととする米国特許第6,258,407号に与えられるもののような少なくとも1種のフッ化シランまたはフッ化シロキサンを含むことができる。シリカ源の他の例は、脱離時にSi−H結合を生み出す化合物を含んでもよい。
【0035】
ある実施形態において、シリカ源は、Si原子に結合した少なくとも1つのカルボン酸エステルを含む。これらのシリカ源の例は、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシランおよびフェニルトリアセトキシシランの少なくとも1つを含む。本組成物は、カルボキシレート基が結合している少なくとも1つのSi原子を有する少なくとも1種のシリカ源に加え、Si原子にカルボキシレートが必ずしも結合していなくてよい追加のシリカ源をさらに含んでよい。
【0036】
ある実施形態において、親水性シリカと疎水性シリカの組み合わせが本組成物に使用される。「親水性」という用語は、本願で使用する場合、ケイ素原子が4個の結合を通じて架橋できる化合物を意味する。親水性源のいくつかの例は、アルコキシ官能基を有するアルコキシシランを含み、少なくとも部分的に架橋でき、例えば、4個の、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アセトキシなどの基を持つSi原子またはSi原子間に炭素または酸素結合がありSi原子上の他の官能基全てがアルコキシドである物質である。Si原子が完全に架橋しない場合、残存Si−OH基は末端基として存在し水を吸収することがある。「疎水性」という用語は、少なくとも1つのアルコキシ官能基がSi−CまたはSi−F結合により置換され、例えば、加水分解の後Si−OHを生じない他の化合物の中でも、Si−メチル、Si−エチル、Si−フェニル、Si−シクロヘキシルである化合物を意味する。これらのシリカ源において、末端基が反応しないまま残るならば、ケイ素は、加水分解およびSi−OHの縮合の結果として完全に架橋した場合でも4未満の結合により架橋するであろう。炭素(C)対ケイ素(Si)の比について語る場合、この比は、ケイ素原子に結合している加水分解可能なアルコキシ基の一部である炭素原子よりも、ケイ素原子に共有結合している炭素の比を意味する。任意に、C対Siモル比が0.5を超えるシリカ源が使用される。さらに、ある実施形態において、疎水性シリカ源対シリカ源の総量の比は、少なくとも約0.5モル比を構成してよく、約0.5から約100のモル比の範囲であり、または約0.5から約25のモル比の範囲である。ある実施形態において、疎水性シリカ源は、ケイ素原子に結合しているメチル基を含む。本発明の目的には、疎水性は、本発明の膜の硬化膜上の接触角測定の実施により測定される。
【0037】
本願明細書に開示される被膜形成組成物は、任意に少なくとも1種の溶媒を含んでよい。本願で使用する「溶媒」という用語は、どのような任意の液体も超臨界流体−水以外−も意味し、他の利点の中でも、以下の利点の少なくとも1つを提供する:i)反応物との溶解度、ii)膜厚の調整、iii)例えば、リソグラフィーなどの後の処理工程のための十分な光学透明度を提供、iv)硬化時に実質的に除去される。組成物に加えてよい溶媒の量は、約0%から約99重量%の範囲であり、または約0%から約90重量%の範囲である。被膜形成組成物に有用な典型的な溶媒は、アルコール、ケトン、アミド、アルコールエーテル、グリコール、グリコールエーテル、ニトリル、フラン、エーテル、グリコールエステルおよび/またはエステル溶媒のうちの少なくとも1つを含むことができる。溶媒は、ヒドロキシル、カルボニルまたはエステル官能基を有してもよい。ある実施形態において、溶媒は、1つまたは複数のヒドロキシルまたはエステル官能基を有し、例えば、次式を有する溶媒である:HO−CHR8−CHR9−CH2−CHR1011(式中、R8、R9、R10およびR11はCH3またはHであり得る);およびR12−CO−R13(式中、R12は炭素原子数3から6の炭化水素であり;R13は炭素原子数1から3の炭化水素である)。追加の典型的な溶媒は、炭素原子数4から6のアルコール異性体、炭素原子数4から8のケトン異性体、炭化水素が4から6の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖炭化水素アセテート、エチレンまたはプロピレングリコールエーテル、エチレンまたはプロピレングリコールエーテルアセテートを含む。使用できる他の溶媒は、1−プロパノール、1−ヘキサノール、1−ブタノール、エチルアセテート、ブチルアセテート、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、1−プロポキシ−2−プロパノール、2−へプタノン、4−へプタノン、1−tert−ブトキシ−2−エトキシエタン、2−メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ペンチルアセテート、1−tert−ブトキシ−2−プロパノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、1−メトキシ−2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−tert−ブトキシ−2−メトキシエタン、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メトキシエタノール、3−メチル−2−ペンタノール、1,2−ジエトキシエタン、1−メトキシ−2−プロパノール、1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルおよびγ−ブチロラクトンのうちの少なくとも1つを含む。さらに他の典型的な溶媒は、乳酸エステル、ピルビン酸エステルおよびジオールを含む。上記した溶媒は、単独でも、2つ以上の溶媒を組み合わせても使用できる。膜がスピンオン、スプレーオン、押出または印刷堆積により形成される特定の実施形態において、コーティングされた基板の膜厚は、組成物中に存在する溶媒の量を減らし組成物の固形分量を上昇させることにより、または膜をスピン、平坦化および/または乾燥するのに利用する条件を変えることにより、増加させることができる。
【0038】
別の実施形態において、本組成物は、添加された溶媒を実質的に含まず、または添加された溶媒を約0.01重量%以下含む。これに関して、本願に記載する組成物は、添加された溶媒を必要としなくても、例えばそこに含まれる化学反応物を可溶化できる。しかし、本組成物はその場(現場)で溶媒を生成することがある(例えば、他の相互作用の中でも、試薬の加水分解、試薬の分解、混合物中の反応により)。
【0039】
本願明細書に開示する被膜形成組成物は、通常水を含む。これらの実施形態において、本組成物に加えられる水の量は、約0.1%から約30重量%、または約0.1%から約25重量%の範囲である。加えることができる水の例は、脱イオン水、超純水、蒸留水、二回蒸留水および高速液体化学(HPLC)グレードの水または金属含量の低い脱イオン水を含む。
【0040】
ある実施形態において、エレクトロニクス産業の要件を満たす組成内および/または処理中にゲート絶縁体、層間絶縁体または平坦化膜を調製する組成物および/またはプロセスでは、組成物が、例えば、金属、ハロゲン化物および/または膜の電気的性質に悪影響を与える他の化合物などの汚染物質をほとんどまたは全く含まないことが要求される。これらの実施形態において、本願に記載の組成物は、典型的には、約100百万分率(ppm)未満、または約10ppm未満、または約1ppm未満の量で汚染物質を含む。1実施形態において、汚染物質は、例えばハロゲン含有鉱酸のような特定の試薬を組成物に添加するのを避けることにより低減できる。なぜなら、これらの汚染物質が望ましくないイオンを本願記載の材料に与えるからである。他の実施形態において、汚染物質は、金属またはハロゲン化物などの汚染物質を、約10ppm未満、または約1ppm未満、または約200十億分率(「ppb」)未満の量で含む溶媒を、組成内および/または処理中に使用して低減できる。さらに他の実施形態において、金属などの汚染物は、汚染金属を約10ppm未満、または約1ppm未満、または約200ppb未満の量で含む化学薬品を組成物に加える、かつ/あるいは処理中に使用することにより低減できる。これらの実施形態において、化学薬品が約10ppm以上の汚染金属を含む場合、化学薬品を組成物への添加前に精製できる。参照することにより本願明細書に組み込まれたものとする、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2004−0048960号は、皮膜形成組成物に使用できる好適な化学薬品およびそれを精製する方法の例を与えている。
【0041】
ある実施形態において、本組成物は、組成物中にミセルを形成できないポロゲンを任意に含むことがある。本願で使用する「ポロゲン」という用語は、得られた膜内に空隙容量を形成するために使用される少なくとも1種の化学試薬を含む。本発明の絶縁材料に使用するのに好適なポロゲンは、不安定な有機基、高沸点溶媒、分解性ポリマー、樹状ポリマー、ハイパーブランチポリマー、ポリオキシアルキレン化合物、小さな分子またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。皮膜形成溶液中のポロゲンの存在により、典型的には膜中に空隙が生成し、それにより膜の柔軟性が増し、基板上に塗布される場合約1μm以上の膜に亀裂(クラック)が生じるのを防止する。
【0042】
本発明のある実施形態において、ポロゲンは少なくとも1種の不安的な有機基を含んでよい。反応組成物中に不安定な有機基がいくつか存在する場合、不安定な有機基は、硬化工程の間に気体生成物に転化する十分な酸素を含むことがある。不安定な有機基を含む化合物の数例は、参照することによりそのまま本願明細書に組み込まれたものとする米国特許第6,171,945号に開示されている化合物を含む。
【0043】
本発明のある実施形態において、ポロゲンは、少なくとも1種の比較的高沸点の溶媒を含んでよい。この点について、溶媒は、一般的にマトリックス材料の架橋の少なくとも1部分の間に一般的に存在する。空隙形成を助けるために一般的に使用される溶媒は、比較的高い沸点(例えば、約170℃以上、または約200℃以上)を有する。本発明の組成物内でポロゲンとして使用するのに好適な溶媒は、例えば、参照することによりそのまま本願明細書に組み込まれたものとする米国特許第6,231,989号に開示の溶媒を含む。
【0044】
ある実施形態において、ポロゲンは、例えば、参照することにより本願明細書に組み込まれたものとする参考文献、Zhengらの“Synthesis of Mesoporous Silica Materials with Hydroxyacetic Acid Derivatives as Templates via a Sol−Gel Process”、J.Inorg.Organomet.Polymers、10巻、103−113ページ(2000年)に記載されているもののような小分子またはテトラブチルアンモニウムニトレートなどの第四級アンモニウム塩を含んでもよい。
【0045】
ポロゲンはまた、少なくとも1種の分解性ポリマーを含んでもよい。分解性ポリマーは、放射線分解性でもよいが、典型的には熱分解性である。本願で使用する「ポリマー」という用語は、特に断りがない限り、オリゴマーおよび/またはコポリマーという用語も含む。放射線分解性ポリマーは、他の源の中でも、イオン化放射源、例えば、紫外線、X線、電子線への暴露時に分解するポリマーである。熱分解性ポリマーは、シリカ源材料の縮合温度に近づく温度で熱分解を起こし、架橋の少なくとも1部分の間に存在できる。このようなポリマーは、ガラス化反応の型取り(templating)を促進し、空隙サイズを制御および規定し、かつ/または処理時の適切な時間に分解してマトリックスから拡散するものを含む。これらのポリマーの例は、ブロックコポリマー、例えば、ジブロック、トリブロックおよびマルチブロックコポリマー;スターブロックコポリマー;放射状ジブロックコポリマー;グラフトジブロックコポリマー;共グラフトコポリマー;ランダムコポリマー、デンドリグラフトコポリマー;テーパードブロックコポリマーおよびこれらの構造の組み合わせを含んでなるものなど三次元構造を提供する構造を有するポリマーを含む。分解性ポリマーのさらなる例は、参照によりそのまま本願に組み込まれる米国特許第6,204,202号に開示されている分解性ポリマーを含む。分解性ポリマーの具体例は、アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレートメタクリル酸コポリマー(PMMA−MMA)およびポリ(アルキレンカーボネート)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、他の不飽和炭素系ポリマーおよびコポリマー、ポリ(オキシアルキレン)、エポキシ樹脂およびシロキサンコポリマー)の少なくとも1つを含む。
【0046】
ポロゲンは、少なくとも1種のハイパーブランチポリマーまたは樹状ポリマーを含んでよい。ハイパーブランチポリマーおよび樹状ポリマーは、一般的に、高い分子量においても表面官能性および向上した溶解度により、比較的低い溶液粘度および溶融粘度、高い化学反応性を有する。好適な分解性ハイパーブランチポリマーおよび樹状ポリマーの非限定的な例は、参照によりそのまま本願に組み込まれる「Comprehensive Polymer Science」、第二増補版、Aggarwal、71〜132ページ(1996年)に開示されている。
【0047】
皮膜形成組成物内のポロゲンは、ポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤が組成物中でミセルを形成できないならば、ポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンポリマー、ポリオキシアルキレンコポリマー、ポリオキシアルキレンオリゴマーまたはこれらの組み合わせなどの少なくとも1種のポリオキシアルキレン化合物を含んでよい。このようなものの例は、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびそのコポリマーのような、C2からC6のアルキレン部分を含むポリアルキレンオキシドを含む。
【0048】
ある実施形態において、本組成物は、少なくとも1種の塩基を任意に含んでよい。これらの実施形態において、塩基は、組成物のpHを約0から約7の範囲に調整するのに十分な量で加えられる。ある実施形態において、塩基は、水の存在下でシリカ源からの構成要素の加水分解および/または2つのシリカ源の縮合を触媒してSi−O−Si結合を形成する。典型的な塩基は、例えばアンモニウムまたはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドのような第四級アンモニウム塩およびヒドロキシド、第一級、第二級および第三級アミンおよびアミンオキシドなどのアミンのうちの少なくとも1つを含む。
【0049】
ある実施形態において、本組成物は、例えば界面活性剤製造者から市販されているもののような少なくとも1種の流展剤を任意に含んでよい。本発明はこれらの製品に限定されず、これらは単に代表的な例であるが、使用できる一般的な流展剤は、Altana Group製造のByk 307およびByk 331である。
【0050】
他の実施形態において、薄膜トランジスタに使用するためのゾルゲルシリカ含有膜を製造する方法が提供される。この膜の形成方法によっては、本組成物は、流体として基板上に堆積できる。本願で使用する「流体」という用語は、組成物の液相、気相およびそれらの組み合わせ(例えば蒸気)を意味する。本願で使用する「基板」という用語は、好適な組成物であって、本発明の絶縁膜がこの組成物に塗布されること、および/またはその上に形成されることの前に形成される組成物を含む。本発明と関連して使用できる好適な基板は、例えばガリウムヒ素(「GaAs」)、ケイ素ならびに結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ドープドシリコン、エピタキシャルシリコン、二酸化ケイ素(「SiO2」)、シリカガラス、窒化ケイ素、溶融シリカ、ガラス、石英、ボロシリケートガラスおよびこれらの組み合わせなどの少なくとも1つなどのケイ素を含む組成物のような少なくとも1種の半導体材料を含むことができる。他の好適な基板は、クロム、モリブデン、ニッケル、ステンレス鋼ならびにエレクトロニクスデバイス、エレクトロニクスディスプレイ、半導体、フラットパネルディスプレイおよびフレキシブルディスプレイ用途に通常使用される他の金属の少なくとも1つを含むことができる。他の基板には、有機ポリマー、プラスティック、ペンタセンなどの有機導電性材料ならびに、限定はされないがインジウムスズ酸化物、亜鉛スズ酸化物および他の混合酸化物を含む他の導電性材料がある。組成物は、浸漬、ローリング、ブラッシング、噴霧、押出、スロット押出、スピンオン堆積、印刷、インプリンティング、型押し、他の溶液堆積法およびこれらの組み合わせの少なくとも1つを含む種々の方法により基板上に堆積できる。
【0051】
他の実施形態において、ゾルゲル処理可能であり、次式の少なくとも1つにより表される化合物からなる群から選択される化合物およびその混合物を含んでなるシリカ源が提供される:RaSi(OR14-a(式中、Rは、独立に、水素原子、フッ素原子または一価有機基を表し;R1は一価有機基を表し;aは1または2の整数である);Si(OR24(式中、R2は一価有機基を表す);R3b(R4O)3-bSi−R7−Si(OR53-c6c(式中、R4およびR5は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価有機基を表し;R3およびR6は、同一でも異なっていてもよく;bおよびcは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ0から3の範囲の数であり;R7は、酸素原子、フェニレン基、ビフェニル、ナフタレン基または式−(CH2n−により表される基を表し、nは1から6の範囲の整数である);少なくとも1種の溶媒;少なくとも1種の酸;水;および、任意に、少なくとも1種の塩基。任意に、本組成物は、少なくとも約0.5以上のシリカ源内に含まれる炭素対ケイ素のモル比を有する。任意に、本組成物は、ポロゲン、界面活性剤、流展剤およびその混合物を含んでもよい。
【0052】
他の態様において、以下の工程を含む、基板の少なくとも一部分上に、約3.5以下の誘電率を含む膜を作製するプロセスが提供される:ゾルゲル処理可能な少なくとも1種のシリカ源(例えば、場合によって少なくとも約0.5以上のシリカ源内の炭素対ケイ素のモル比を有する);少なくとも1種の溶媒;酸;水;任意に塩基;任意にポロゲン、界面活性剤または表面を平坦にする薬剤またはこれらの混合物を含んでいる組成物を提供する工程。通常、本組成物は、基板上に堆積してコーティングされた基板を形成し、コーティングされた基板を熱または放射源に曝す。
【0053】
さらなる態様において、約3.5以下の誘電率およびケイ素、炭素、水素および酸素の少なくとも1つを含む元素を含み、膜が加水分解可能なシリカ源から形成されるゲート絶縁体、層間絶縁体または平坦化膜が提供される。この膜または層は、比較的低い温度(例えば、本発明の組成物を約300℃以下で処理することにより(例えば、約130℃から約250℃の温度でシリケートを硬化することにより)形成できる。この膜または層は、約5×10-8A/cm2未満(例えば、約1×10-8A/cm2から約1×10-10A/cm2)のリーク電流密度も有する。
【0054】
他の態様において、基板の少なくとも一部分の上に、約3.5以下の誘電率を有するゲート絶縁体、層間絶縁体または平坦化材料を形成するための組成物が提供される。この組成物は、ゾルゲル処理可能な少なくとも1種のシリカ源(例えば、少なくとも約0.5以上のシリカ源内の炭素対ケイ素の任意のモル比を有する)を含む組成物を提供し、シリカ源が次式により表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物:
a.RaSi(OR14-a(式中、Rは、独立に、水素原子、フッ素原子または一価有機基を表し;R1は一価有機基を表し;aは1または2の整数である);
b.Si(OR24(式中、R2は一価有機基を表す);
c.R3b(R4O)3-bSi−R7−Si(OR53-c6c(式中、R4およびR5は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価有機基を表し;R3およびR6は、同一でも異なっていてもよく;bおよびcは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ0から3の範囲の数であり;R7は、酸素原子、フェニレン基、ビフェニル、ナフタレン基または式−(CH2n−により表される基を表し、nは1から6の範囲の整数である);
少なくとも1種の溶媒;
酸;
水;
任意に、塩基;
任意に、ポロゲン、界面活性剤または流展剤またはその混合物
を含んでなる。
【0055】
本発明は、硬化(架橋)条件におけるゾルゲルシリケートの使用も包含する。本発明のゾルゲル配合物は、少なくとも約130℃、典型的には約130℃から約250℃未満、通常約130℃から約180℃の温度に加熱することにより熱硬化できる。任意に、酸、塩基またはこれらの混合物からなる群から選択される触媒の存在下で架橋が引き起こされる。
【0056】
本発明のシリケートの1用途は、薄膜トランジスタまたは薄膜トランジスタアレイである。薄膜トランジスタは、基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、半導体層および任意に封止層または封入層を含んでなる。図1〜図4は、本発明に使用できる薄膜トランジスタにおけるこれらの層と電極の構造配置の実施形態である。これらの図面は、単に種々の層および電極の可能な構造の配置を表すものであり、限定的ではないとし、250℃以下、あるいは180℃以下の温度で硬化する。望まれる場合、1つまたは複数の層を、これらの図面に表されたものを含む種々の層および電極の間に配置してよい。
【0057】
図1は、本発明の膜を含む薄膜トランジスタ(TFT)を含んでなる1実施形態のマイクロエレクトロニクスデバイスを表す。図1は、基板1、その上に施され基板1と接触しているゲート電極2を含んでなるTFT1を示す。ゲート絶縁層3は、ゲート電極2および基板1の上に形成されている。半導体層4は、ゲート絶縁層3の上に堆積している。薄膜トランジスタは、2つの金属接点、ソース電極5およびドレイン電極6も含み、ゲート絶縁体上に堆積している。本発明の膜は、図1の層3を含む。
【0058】
図2は、基板7、基板7と接触しているゲート電極8ならびに基板およびゲート電極上に形成されているゲート絶縁層9を含むTFTを表している。2つの金属接点、ソース電極10およびドレイン電極11は、絶縁層9の上に堆積している。金属接点10および11の上および間に半導体層12がある。本発明の膜は、図2の層9を含む。
【0059】
図3は、ソース電極14およびドレイン電極15に接触している基板13を含むTFTを表している。次いで、半導体層16がソース電極14およびドレイン電極15の上に形成されている。次いで、ゲート絶縁層17が半導体層16の上に形成されており、ゲート電極18がゲート絶縁層17の上に堆積している。本発明の膜は、図3の層17を含む。
【0060】
図4は、ゲート電極として作用するヘビードープn型シリコンウェハ19、ゲート電極19上に形成されているゲート絶縁層20、半導体層21ならびに半導体層21上に堆積しているソース電極22およびドレイン電極23を含むTFTを表す。
【0061】
本開示のある実施形態において、光学封止層または封入層も含まれる。このような光学封止層は、図1〜図4に示すトランジスタのそれぞれの上あるいはゲートまたは層間絶縁膜の上に組み込まれる。封止層は、ヘキサメチルジシラザンなどのケイ素含有疎水性物質であることが最も普通であるが、他の封止層も使用できる。
【0062】
図1〜図4に示すTFTに関する追加の詳細は、参照することにより本願明細書に組み込んだものとする米国特許出願公開第2006/0097360号に見いだすことができる。
【0063】
さらに、本発明は、上記で定義のケイ素含有ゾルゲル組成物を含んでなるミクロまたはマクロエレクトロニクスデバイスに関する。本発明の1態様において、ミクロエレクトロニクスデバイスは、ゲート絶縁体、層間絶縁体または平坦化層として硬化した形態でケイ素含有ゾルゲル組成物を含む。このようなデバイスの例には、薄膜トランジスタ、光電装置、太陽電池、表示装置、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、記憶装置、基本論理装置、集積回路、RFIDタグ、センサー、スマートオブジェクトまたはX線画像装置があるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の配合物から形成される膜は、典型的には約0.005μmから約1.5μmの厚さを有する。そのような膜は約5から約500nF/cm2のキャパシタンスおよび約3.5未満の誘電率を達成できる。
【0065】
本発明の配合物から得られる膜は、基板を平坦化するための平坦化膜(例えば、粗いステンレス鋼上のおよそ1.1μ平坦化膜)としても利用でき、基板には、ステンレス鋼、ポリマーまたは有機膜、金属、金属酸化物、ケイ素、シリカ、窒化ケイ素および他のケイ素含有基板があるが、これらに限定されない。これらの配合物は、約130℃以上の温度で硬化できるが、約250℃以上、または約400℃以上でも硬化できる。
【0066】
本発明の他の態様において、本発明の組成物は、参照することにより本願明細書に組み込んだものとする米国特許出願公開第2006/0011909号に示されているTFTにおける絶縁膜を形成するために利用できる。
【0067】
本発明を、以下の実施例にそってより詳細に説明するが、本発明がそれに限定されないことを理解されたい。
【実施例】
【0068】
LCDVリーク電流密度値測定は、以下に記載のHgプローブ法を利用して得た。
【0069】
水銀プローブはMSI Electronics製のHg−401型であった。水銀プローブの接触面積は0.7mm2と±2%の不確実性であった。電源および電流計はKeithley 6517Aである。水銀プローブは電気ノイズを減らすためファラデー箱に入れる。コントローラと水銀プローブの間の接続はBNCケーブルである。システムのノイズレベルは100fA未満である。
【0070】
薄膜は、測定の前に低抵抗ウェハ(0.01オーム)上にコーティングした。膜の厚さは約200nmから500nmであった。水銀が膜の表面に接触しもう1つの金属ディスクがウェハの裏面に接触するように、試料を、その表面を下にして水銀プローブ上に置いた。測定は、試料に定電圧を印加し、膜を通る電流を測定して実施した。ウェハと水銀プローブの絶縁板の間の荷電電流を防ぐため、報告するLCDVは膜への電圧印加の3分後に測定した電流である。
【0071】
実施例1:薄膜トランジスタ用のゲート絶縁体または層間絶縁体の製造およびキャラクタリゼーション
【0072】
0.94グラムのメチルトリメトキシシラン、0.96グラムのトリエトキシシランおよび0.13グラムの3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランを合わせ、2.50グラムのPGPEを加えて絶縁膜を調製した。この溶液を3分間振盪した。別な溶液において、1.2グラムの0.01MのHNO3および0.02gの0.1重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を合わせ、次いでシランと溶媒の混合物に加えた。溶液を1分間振盪すると均一になった。得られた溶液を6日間(周囲条件)熟成させ、その1mLを0.2μフィルターで濾過してから、500rpmで7秒、次いで1800rpmで40秒スピンコーティングしてシリコンウェハ上に堆積させた。シリケート含有ウェハはホットプレート上で3分間250℃であった。得られた0.6μ層のキャパシタンスを水銀プローブにより測定すると5nF/cm2であり、誘電率は3.22であった。この膜の屈折率は1.386であった。シリコンウェハ上のこの膜のリーク電流密度値は8.6×10-9A/cm2であった。
【0073】
実施例2:薄膜トランジスタの製造
【0074】
実施例1のシリケート前駆体溶液をスピンコーティングおよび印刷技術により利用して薄膜トランジスタを製造する。
【0075】
実施例3:ステンレス鋼箔の平坦化
【0076】
1.61gのメチルトリエトキシシラン、1.61gのテトラエトキシシラン、2.50gのプロピレングリコールプロピルエーテルおよび1.00gのTriton X−114を30gのバイアル中で混合した。この混合物に、1.71gの0.1M HNO3、次いで0.07gの2.4重量%のTMAHを加え、バイアルを2分間振盪した。この溶液を1日熟成させた後、2mLの溶液を500rpmで7秒および1800rpmで40秒のスピンスピードでのスピンコーティングにより、6インチ四方のステンレス鋼箔に塗布し、箔の上におよそ1.4μ平坦化膜を与えた。コーティングしていない箔は、25μ×25μ四方の面積で101nmの平均rms粗度を有した。次いで、ホットプレート上で基板を90℃に90秒、180℃に90秒、400℃に3分間加熱して、ゾルゲルシリケートを含むステンレス鋼箔を硬化させた。いまや平坦化された基板のrms粗度は、25μ×25μ四方の面積で平均13.25nmのrms粗度であった。
【0077】
実施例4:疎水性層による膜の後処理がリーク電流(LC)を改善する
【0078】
2.25グラムのメチリトリエトキシシラン、2.25グラムのテトラエトキシシランを混合し、5.8グラムのPGPEを加えて絶縁膜を調製した。別な溶液で、2.4グラムの0.1MのHNO3および0.2gの0.26Nの水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を合わせ、シランと溶媒の混合物に加えた。溶液を1分間振盪すると均一になった。得られた溶液を6日間熟成(周囲条件)させ、その1mLを0.2μフィルターで濾過してから、500rpmで7秒、次いで1800rpmで40秒スピンコーティングしてシリコンウェハ上に堆積させた。3つのシリケート含有ウェハをスピンした。膜4aをホットプレート上で250℃で3分ベーキングした。膜4bをホットプレート上で150℃で5分ベーキングした。次いで、濾過したヘキサメチルジシラザン(HMDS)3mlを膜の上に置き、500rpmで40秒、次いで1800で40秒スピンさせ、膜4bをHMDSで処理した。ついで、膜4bをホットプレート上で150℃で5分ベーキングした。膜4cをホットプレート上で250℃で3分ベーキングした。次いで、濾過したヘキサメチルジシラザン(HMDS)3mlを膜の上に置き、500rpmで40秒、次いで1800で40秒スピンさせ、膜4cをHMDSで処理した。次いで、膜4cをホットプレート上で250℃で3分ベーキングした。シリコンウェハ上のこの膜4aのリーク電流密度値(LCDV)は、N2中で測定した時1.9×10-9A/cm2であり、空気中で、71°Fおよび湿度42%の恒温恒湿(CTH)セットで測定したときLCDV値は8−10×10-7A/cm2であった。シリコンウェハ上のこの膜4bのリークLCDVは、N2中で測定した時3.1×10-6A/cm2であった。シリコンウェハ上のこの膜4cのLCDVはN2中で測定した時1.53×10-9A/cm2であり、CTHで空気中で測定した時4−10×10-9A/cm2であった。
【0079】
比較例1(親水性膜)
【0080】
2.25gのテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を1オンスのポリボトルに量り入れた。2.50gのプロピレングリコールプロピルエーテル(PGPE)または1−プロポキシ−2−プロパノールを加えた。混合物を簡単に振盪した。96%の0.1M硝酸および4%0.26Mテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を含む溶液の1.25gを加えた。混合物を約1分間振盪した。溶液を一晩周囲条件で熟成(ambient aged)させ、次いで、4インチのプライムPタイプ1−0−0低抵抗Siウェハ上に1500rpmで1分間スピンし、溶液を約1mlチャージし、塗布時に0.2μmシリンジフィルターで濾過した。得られた膜の付いたウェハを、ホットプレート上で、90℃で1.5分、180℃で1.5分、次いで400℃で3分焼成した。次いで、膜をSentech SE800エリプソメーターで分析した:厚さ−496.86nm、多孔度−4.5%、屈折率−1.44。次いで、膜を水銀プローブで分析した。平均リーク電流密度は、N2中で測定した時1.5MV/cmで4.5×10-4A/cm2であった。ウェハ上の他の2つの位置が電圧印加時に破壊された。
【0081】
実施例5:疎水性層での膜の後処理および接触角測定
【0082】
以下の配合物を下記の表に列挙したようにして調製した。
【0083】
【表1】

【0084】
実施例1に記載の方法と類似の方法で各配合物を調製した。得られた溶液を0.2μフィルター(1mL)で濾過してから、500rpmで7秒、次いで1800rpmで40秒スピンコーティングしてシリコンウェハ上に堆積させた。2つの膜を5aおよび5bからスピンした。シリケート含有ウェハをホットプレート上で250℃で3分間ベーキングした。5aおよび5bの両方の膜をスピナーに載せ、2.5mlのヘキサメチルジシラザン(HMDS)を各ウェハに堆積させた。スピナーを30秒間500rpmに増やし、次いで35秒間1500rpmに増加させた。これらの2つの膜をそれぞれホットプレート上で250℃で3分間再びベーキングした。各膜の上の水の接触角を測定すると、5a=92°、5b=22°、5c=120°、5aプラスHMDS=120、5bとHMDS=57°であった。この場合、これらの膜の上の水の高い接触角の値は、膜がより疎水性であることと関連がある。
【0085】
【表2】

【0086】
本発明の特定の態様を、ある実施形態に関連して本願で説明および記載しているが、添付する特許請求の範囲が、示した詳細に限定されるものではない。むしろ、当業者によりこれらの詳細に種々の変形が加えられることが期待されるが、それらの変形も特許請求の範囲に記載される内容の精神および範囲内にあり、これらの特許請求の範囲がそのように解釈されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の膜を含む薄膜トランジスタの1実施形態を示した断面図である。
【図2】本発明の膜を含む薄膜トランジスタの第2の実施形態を示した断面図である。
【図3】本発明の膜を含む薄膜トランジスタの第3の実施形態を示した断面図である。
【図4】本発明の膜を含む薄膜トランジスタの第4の実施形態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート電極
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタのゲート絶縁層または層間絶縁層であって、この層が約250℃未満の温度で処理されたゾルゲルシリカ含有配合物を含んでなる、薄膜トランジスタのゲート絶縁層または層間絶縁層。
【請求項2】
前記層がシリカ含有ゾルゲル組成物を含み、該組成物が、
i)少なくとも1種のシリカ源、
ii)次式の少なくとも1つにより表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物:
aSi(OR14-a(式中、Rは、独立に、水素原子、フッ素原子または一価有機基を表し;R1は一価有機基を表し;aは1または2の整数である);
Si(OR24(式中、R2は一価有機基を表す);および
3b(R4O)3-bSi−R7−Si(OR53-c6c(式中、R4およびR5は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価有機基を表し;R3およびR6は、同一でも異なっていてもよく;bおよびcは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ0から3の範囲の数であり;R7は、酸素原子、フェニレン基、ビフェニル、ナフタレン基または式−(CH2n−により表される基を表し、ここで、nは1から6の範囲の整数である);
iii)少なくとも1種の溶媒;
iv)水;
v)少なくとも1種の酸;
vii)任意に、少なくとも1種の塩基;および
viii)任意に、界面活性剤、ポロゲン、流展剤またはその混合物;
を含んでなる、請求項1に記載のゲート絶縁層。
【請求項3】
C対Siのモル比が0.5以上であるシリカ源を含有する、請求項2に記載のゲートまたは層間絶縁体。
【請求項4】
基板用の平坦化膜であって、この膜が、1コーティング工程により約1μmを超える平坦化膜を形成するゾルゲルシリカ含有配合物を含んでなる、平坦化膜。
【請求項5】
薄膜トランジスタ基板用に使用され、前記膜が請求項2の組成物を含んでなる、請求項4に記載の平坦化膜。
【請求項6】
前記膜が、90nmを超えるrms粗さの基板上で、約20nm未満のrms粗さを有する、請求項5に記載の平坦化膜。
【請求項7】
ステンレス鋼を平坦化する、請求項5に記載の平坦化膜。
【請求項8】
プラスティックを平坦化する、請求項5に記載の平坦化膜。
【請求項9】
400℃で硬化する、請求項5に記載の平坦化膜。
【請求項10】
ゲート電極;
請求項2に記載のシリカ含有ゾルゲル組成物を含むゲート絶縁層;
ソース電極;
ドレイン電極;および
半導体層;
を含んでなる薄膜トランジスタ。
【請求項11】
ゲートまたは層間絶縁体用の前記シリカ源が0.5以上のC対Siのモル比を有する、請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項12】
ゲート電極;
請求項1に記載のゾルゲル組成物を含むゲート絶縁層;
ソース電極;
ドレイン電極;
半導体層;
を含んでなり、前記絶縁層が約3.5未満の誘電率を有する、薄膜トランジスタ。
【請求項13】
前記絶縁層が、約5nF/cm2を超えるキャパシタンスを有する、請求項12に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項14】
前記絶縁層が、約5×10-8A/cm2未満のリーク電流密度を有する、請求項12に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項15】
前記シリカ含有ゾルゲル組成物が硬化膜として存在し、該硬化膜が、約135℃と約250℃の間で硬化し、約3.5未満の誘電率を有し、そして約5nF/cm2を超えるキャパシタンスを有する、請求項12に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項16】
基板の少なくとも一部分の上に、約3.5未満の誘電率を有する平坦化膜を作製する方法であって、この方法が、
ゾルゲル処理可能でありゾルゲル組成物を含む少なくとも1種のシリカ源であって、該シリカ源として好適な材料が、ゾルゲル処理可能でありかつ次式の少なくとも1つにより表される化合物からなる群から選択される化合物を含むシリカ源を含んでなる、シリカ源:
aSi(OR14-a
(上式において、Rは、独立に、水素原子、フッ素原子または一価有機基を表し;R1は一価有機基を表し;aは1または2の整数である);
Si(OR24(式中、R2は一価有機基を表す);
3b(R4O)3-bSi−R7−Si(OR53-c6c
(上式において、R4およびR5は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ一価有機基を表し;R3およびR6は、同一でも異なっていてもよく;bおよびcは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ0から3の範囲の数であり;R7は、酸素原子、フェニレン基、ビフェニル、ナフタレン基または式−(CH2n−により表される基を表し、ここで、nは1から6の範囲の整数である);
少なくとも1種の溶媒;
水;
少なくとも1種の酸;
任意に、少なくとも1種の塩基;
任意に、界面活性剤、ポロゲン、流展剤またはその混合物;
を含んでなる組成物を提供する工程を含み、
前記膜を空気中で130℃と250℃の間で硬化させる、平坦化膜を作製する方法。
【請求項17】
請求項4に記載の平坦化膜を含むエレクトロニクスデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−124431(P2008−124431A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−185644(P2007−185644)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】