薄膜電極、及びその製造方法
【課題】実効キャリアー濃度が増加し、物質間のエネルギーバンドギャップ調節によりショットキー障壁が減少し、高い透過率を有する、優れた電気的、光学的、熱的及び構造的特性を有する新概念のオーミック接触システムを提供する。
【解決手段】発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、Au、Pt、Pd、Ni、Ru、Rh、Re、C、Cu、及びIrからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第2電極層と、を含むことを特徴とする、薄膜電極である。
【解決手段】発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、Au、Pt、Pd、Ni、Ru、Rh、Re、C、Cu、及びIrからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第2電極層と、を含むことを特徴とする、薄膜電極である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(GaN)半導体を用いた青・緑色及び紫外線を発する短波長発光ダイオード(light emitting diode;LED)及びレーザーダイオード(laser diode;LD)の製造における核心技術の一つであるオーミック接触(Ohmic Contact)に関する。詳細には、低い抵抗及び高い透過率を有し、電流注入(current injection)及び電流拡がり能(spreading capability)が改善された良質のオーミック接触を形成する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード及びレーザーダイオード等のように窒化ガリウム半導体を用いる光素子(Photo−related devices)を実現するためには、半導体と電極との間に良質のオーミック接触を形成することが非常に重要である。
【0003】
従来、p型窒化ガリウムにおいては、ニッケル(Ni)を基本とする薄膜電極構造、即ち、ニッケル/金(Ni/Au)の金属薄膜がオーミック接触のための薄膜電極構造として広く使用されており、最近では、Ni/Pt/Au、Pt/Ni/Au、Pd/Au等のように多様な形態のオーミック接触金属システムが開発されている。
【0004】
しかし、現在でもp型窒化ガリウムを用いて良質のオーミック接触を形成するには、いくつか問題点がある。特に、p型窒化ガリウム形成時に使用される雰囲気ガスであるアンモニア(NH3)の水素(H)が、p型ドーパントであるMgと結合して電気的に絶縁性を有するMg−H複合体を形成し、実効キャリアー濃度が低下し、表面抵抗値が上昇する。その結果、良質のオーミック接触を形成することが困難となる。また、キャリアー(ホール)注入が低下するために、高品位の光素子を製造することが困難となる。
【0005】
p型窒化ガリウムのドーピング濃度を増加させるために、例えば、p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体を、Zrのような水素を吸蔵する能力を有する金属又は合金と共に熱処理し、窒化ガリウム結晶内に存在するp型ドーパントの活性化を促進させることによって、高いキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム系化合物半導体を得たという報告がある(特許文献1を参照)。また、例えば、窒化ガリウム上にニッケル、金−亜鉛合金、及び金(Ni/Au−Zn/Au)を順に薄膜蒸着させてオーミック接触を形成したという報告もある(特許文献2を参照)。
【0006】
しかし、現状では、短波長領域において高い透過率を有する良質のオーミック接触システムがないという問題もある。現在、LED工程で使用されているニッケル/金(Ni/Au)によるシステムは薄く(<〜100Å)、80%以上の透過率を得ている。このように、極度に薄い金属層を用いたオーミック接触は、高い透過率を得ることができる反面、電流注入及び電流拡がり能を向上させることが難しく、光素子の効率を低下させる原因ともなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−35796号公報
【特許文献2】大韓民国特許出願公開第2001−2265号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに本発明者らは、後述する5つの課題を達成するために、既存の技術とは異なる、Ni−X固溶体を用いた新規な概念に基づいて、高品位のオーミック接触を形成する技術を見出した。本発明者らが解決しようとした課題は以下の通りである:
(1)窒化ガリウム表面上での実効キャリアー濃度を増加させる:Ni−X固溶体の優れた水素親和力を利用し、Mg−H結合を破壊する;
(2)短波長領域における光透過率を高め、仕事関数を増大させる:酸化ニッケル(NiO)に少量のX元素を添加し、Ni−X酸化物(NipXqO)を形成させる(A. Azens et al., Thin Solid Films 422, 2002, 1);
(3)ドーピング効果を向上させる:Ni−X固溶体に可溶化されたX元素をアニールする(M. H. G. Jacobs, P. J. Spencer, J. Chem. Phys. 90, 1993, 167);
(4)多量のガリウム空孔を形成させる:マトリックス金属としてのNi、又はX元素と、ガリウムとを反応させて、化合物を形成させる;
(5)エネルギーバンドギャップの原理に基づいて、高品質のオーミック接触を形成する:蒸着されたNi系固溶体をアニールして酸化物を形成させる。これは、p型窒化ガリウムのオーミック接触を容易に形成することができる点で有利である。
【0009】
したがって、本発明は、実効キャリアー濃度が増加し((1)、(3)、(4))、物質間のエネルギーバンドギャップ調節によりショットキー(Schottky)障壁が減少し((5))、高い透過率を有する((2))、優れた電気的、光学的、熱的及び構造的特性を有する新概念のオーミック接触システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、高品質のオーミック接触システムの実現に向けて鋭意研究を重ねた。その結果、p型窒化ガリウム上にニッケル−X固溶体であるニッケル−マグネシウム固溶体をオーミック接触させて研究を実施した結果、既存の報告より非常に優れた結果が得られることを見出した。また、p型窒化ガリウム半導体上にニッケル系固溶体を蒸着させた後、マグネシウム(Mg)及び亜鉛(Zn)等の固溶された金属成分の融点付近の温度で熱処理すると、窒化ガリウム層の表面部位においてマグネシウム及び亜鉛等の優れたドーピング効果が得られ、ガリウムとの反応によって多量のガリウム空孔(Gallium vacancy)が形成されることにより窒化ガリウム層の表面付近の実効キャリアー濃度が増加し、或いは、窒化ガリウムと蒸着された酸化物質との間のエネルギーバンドが調節されうることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
これらが改善されることにより、優れた電流−電圧特性及び低い接触抵抗値を有し、かつ、短波長領域で高い透過率を有する高品位のオーミック接触システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい実施態様(第1の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。
【図2】本発明の好ましい実施態様(第2の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。
【図3】本発明の好ましい実施態様(第3の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。
【図4】本発明の実施態様による薄膜電極を製造するために用いられるニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体のXRDグラフである。図4(a)は、アニーリング前の結果を示し、図4(b)は、550℃で1分間アニーリング後の結果を示す。
【図5】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、アニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図6】本発明の実施態様による、コーニング(Corning)ガラス上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)を蒸着させ、550℃で1分間アニールした後に透過率を測定した結果を示すグラフである。
【図7】本発明の好ましい実施態様による薄膜電極を製造するために用いられるニッケル−マグネシウム固溶体のオージェ電子分光分析(AES)の結果を示すグラフである。図7(a)はアニーリング前の結果を示し、図7(b)は550℃で1分間アニーリングした後の結果を示す。
【図8】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/白金(Pt)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/パラジウム(Pd)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図10】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/ルテニウム(Ru)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図11】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にルテニウム(Ru)/ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図12】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図13】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル単体(Ni)/ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図14】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/ニッケル単体(Ni)/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記の課題を達成するために、本発明は、発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、Au、Pt、Pd、Ni、Ru、Rh、Re、C、Cu、及びIrからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第2電極層と、を含むことを特徴とする、薄膜電極を提供する。
【0014】
本発明の薄膜電極は、前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含んでいてもよい。
【0015】
あるいは、本発明の薄膜電極は、前記第2電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第3電極層をさらに含んでいてもよい。
【0016】
本発明の薄膜電極は、前記第3電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第4電極層をさらに含んでいてもよい。
【0017】
本発明の他の態様によれば、発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、p型窒化ガリウム層上に積層され、Au、Pt、Pd、Ni、Ru、Rh、Re、C、Cu、及びIrからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第2電極層と、を含むことを特徴とする、薄膜電極が提供される。
【0018】
前記の態様の薄膜電極は、前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含んでいてもよい。
【0019】
あるいは、前記の態様の薄膜電極は、前記第2電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第3電極層、並びに、前記第3電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第4電極層をさらに含んでいてもよい。
【0020】
本発明のさらに他の態様によれば、発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第2電極層と、を含むことを特徴とする、薄膜電極が提供される。
【0021】
前記の態様の薄膜電極は、前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含んでいてもよい。
【0022】
本発明のさらに他の態様によれば、発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第2電極層と、を含むことを特徴とする、薄膜電極が提供される。
【0023】
本発明において用いられるNi−X固溶体は、ニッケル(Ni)をマトリックス金属とし、前記Xは第II族元素、第VI族元素、Sc、Y、Ge、Sn、及びSbからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0024】
前記第II族元素としては、Mg、Be、Ca、及びZnが挙げられる。
【0025】
前記第VI族元素としては、S、Se、及びTeが挙げられる。
【0026】
本発明において用いられるNi−X固溶体における前記X元素の含有量は、前記Ni−X固溶体全量に対して原子百分率で1〜49%であることが好ましい。
【0027】
本発明において、Ni−X固溶体を含有する電極層の厚さは1〜1000Åであることが好ましい。また、本発明において、第1、第2、第3、及び第4電極層を合わせた合計の厚さ(薄膜電極全体の厚さ)は1〜50000Åであることが好ましく、1〜10000Åであることがより好ましい。。
【0028】
本発明において用いられるp型窒化ガリウムは、好ましくは、AlxInyGazN(ただし、0<x,y,z<1、x+y+z=1)の組成を有する。
【0029】
本発明のさらに他の態様によれば、不純物を除去するために、窒化ガリウム半導体上に形成された炭素層及び酸素層を洗浄する工程と、2×10−6〜5×10−8torr(2.666×10−4〜6.665×10−6Pa)の減圧下において、電子ビーム蒸着、電子線蒸着、スパッタリング工程、プラズマレーザー蒸着、又は電気化学的工程によりニッケル系固溶体を蒸着させる工程と、250〜800℃で30秒〜1時間、空気、酸素雰囲気、又は窒素雰囲気下で、蒸着したニッケル系固溶体をアニールする工程と、を有する、p型窒化ガリウム層上の薄膜電極の製造方法が提供される。
【0030】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の好ましい実施態様(第1の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。
【0032】
図1によれば、前記薄膜電極は、第1電極層3と第2電極層4とを含み、これらの電極は、基板1上に形成された窒化ガリウム層2上にこの順に積層されている。
【0033】
また、図1によれば、p型窒化ガリウム層2上に積層された前記第1電極層3は、p型窒化ガリウム半導体のオーミック接触を形成するための電極である。ここで用いられる固溶体は、窒化ガリウム半導体中のMg−H結合を容易に破壊することができる元素を含み、アニールされることにより優れたドーピング効果を示してガリウム系窒化物を形成する。特に、前記固溶体は、アニールされることにより物質間のエネルギーバンドギャップ原理に基づいてショットキー障壁を低下させうる透明導電性酸化物を形成しうる物質であり、100Å以上の厚さにおいても、高い透過率を示す。
【0034】
このように窒化ガリウム半導体と接触している前記固溶体は、窒化ガリウム半導体中のMg−H結合を容易に破壊することができ、優れたドーピング効果を示し、あるいは、低温(800℃以下)でアニールされることにより、窒化ガリウム層の表面付近において多量のガリウム空孔を形成する。これにより、窒化ガリウム層の表面付近における実効キャリアー濃度を増加させる。
【0035】
窒化ガリウムの表面において実効キャリアー濃度が増加する(>1018cm−3)ことによって窒化ガリウム半導体と接触する金属電極の界面に存在するショットキー障壁が低下し、量子の概念に基づくトンネル効果を通じて、多くのキャリアー(ホール)によりキャリアー伝導性が向上する。
【0036】
上記のような要求を満足する固溶体の例としては、例えば、強い水素親和力を有するニッケル系(Ni−X)固溶体が挙げられる。ニッケル(マトリックス金属)中に添加されるX元素の例としては、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)等の第II族元素が挙げられ、これらの元素はp型窒化ガリウムのドーパントとしての役割を果たす成分である。これらの成分はニッケル(Ni)マトリックス中に添加されると、低温領域で化合物の状態ではなく固溶された形態で存在する。蒸着後に、添加された元素の融点付近の温度でアニールすると、これらの元素はドーパントとして機能し、又はガリウムと反応することにより化合物を形成して、多量のガリウム空孔を形成する。
【0037】
また、ニッケル(Ni)マトリックス金属に添加されるX元素としては、第VI族元素、即ち、硫黄(S)、セレン(Se)及びテルル(Te)も用いられうる。これらの元素もまた、窒化ガリウムの窒素(N)と置換しうるため、p型窒化ガリウムのドーパントとして機能し、ガリウムと反応することにより化合物を形成して、多量のガリウム空孔を形成する。したがって、優れた電気的特性を有する高品質のオーミック接触が容易に形成されうると考えられる。前記第II族元素及び第VI族元素の他にも、低温でガリウムと反応して化合物を形成しうるスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)、及びアンチモン(Sb)もまた、X元素として用いられうる。
【0038】
図1によれば、第2電極層4は薄膜電極の最外層であり、(1)発光ダイオード及びレーザーダイオードのような素子を製造するためのアニール工程中に起こる表面退化を抑制し、(2)ガリウム系化合物の形成を促進し、(3)窒素(N)の流出を防止し、(4)酸化及びワイヤー接着に対する優れた安定性を保持し、(5)高い透過率を維持する、という役割を果たす。
【0039】
上記のような要求を満足する第2電極層4として用いられる物質としては、例えば、(1)純金属、即ち、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、及びルテニウム(Ru)、(2)透明導電性酸化物(TCO)、即ち、インジウム錫酸化物(ITO)、ドープされた酸化亜鉛(ZnO)、及び酸化錫(SnO2)、並びに(3)透明導電性窒化物、即ちTiN、が挙げられる。
【0040】
図2は、本発明の好ましい実施態様(第2の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。
【0041】
図2によれば、前記薄膜電極は、第1電極層3、第2電極層4及び第3電極層5を含み、これらの電極は、基板1上に形成された窒化ガリウム層2上にこの順に積層されている。
【0042】
前記第1電極層3及び第2電極層4については、図2に示す態様においても、図1に示す態様と同様のものが用いられうる。したがって、図2に示す態様についての以下の説明では、第1電極層及び第2電極層についての詳細な説明は省略する。
【0043】
好ましくは、発光ダイオードの発光効率を最大化する目的で、前記第3電極層5については、一般的なLED構造とは逆の構造(Flip Chip:フリップチップ)が用いられる。この目的を達成するため、前記第3電極層5の材料としては、優れた光透過率を有する導電性酸化物又は窒化物が選択されうる。
【0044】
図3は、本発明の好ましい実施態様(第3の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。図3によれば、前記薄膜電極は、第1電極層3、第2電極層4、第3電極層5、及び第4電極層6を含み、これらの電極は、基板1上に形成された窒化ガリウム層2上にこの順に積層されている。
【0045】
前記第1電極層3、第2電極層4、及び第3電極層5については、図3に示す態様においても、図2に示す態様と同様のものが用いられうる。したがって、図3に示す態様についての以下の説明では、第1電極層、第2電極層、及び第3電極層についての詳細な説明は省略する。
【0046】
好ましくは、発光ダイオードの発光効率を最大化する目的で、前記第4電極層6については、一般的なLED構造とは逆の構造(Flip Chip:フリップチップ)が提供される。この目的を達成するため、前記第4電極層6の材料としては、短波長領域において高い反射率を有するAl、Ag、及びRh等の材料が選択されうる。
【0047】
図4は、本発明の実施態様による薄膜電極を製造するために用いられるニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体のXRDグラフである。図4(a)は、アニーリング前の結果を示し、図4(b)は、550℃で1分間アニーリング後の結果を示す。
【0048】
図4(a)のグラフによれば、アニーリングする前のXRDの結果として、p型窒化ガリウム(GaN)及びサファイア(Al2O3)基板のピークが観察された。さらに、ニッケルにマグネシウムを添加することにより調製されたニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体に対応するピークもまた確認された。
【0049】
即ち、このようなニッケル−マグネシウム固溶体は、強い水素親和力を有しているため、p型窒化ガリウム層上に接触するとMg−H結合を破壊し、これにより、窒化ガリウム層の表面におけるキャリアー濃度を増加させる。
【0050】
図4(b)によれば、550℃で1分間アニーリングした後のXRDの結果として、p型窒化ガリウム(GaN)に対応するピークに加えて、アニーリング前のニッケル−マグネシウム固溶体が酸化された状態であるニッケル−マグネシウム酸化物固溶体(Ni1−xMgxO)、及び、ニッケル−ガリウム化合物であるNiGaに対応するピークが観察される。
【0051】
詳細には、この酸化された固溶体は導電性酸化物であり、既存のニッケル/金(Ni/Au)構造のニッケル酸化物(NiO)より大きい仕事関数を有することが予想される。また、酸化された固溶体により窒化ガリウムの表面部位にキャリアーであるホールが多数供給され、同時にショットキー障壁が低下して、優れた電気的特性が発現しうる。さらに、アニーリングにより生成したこのようなニッケル−マグネシウム固溶体は、金属薄膜の透明性を増加させるのに主導的な役割を果たしていると推察される。
【0052】
図5は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、アニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0053】
アニーリング後の電流−電圧特性の測定は、空気中で1分間、450℃及び550℃の温度でアニールした後にそれぞれ行った。電流−電圧測定時のそれぞれの温度における接触抵抗は、8.45×10−6cm2(450℃)及び6.08×10−6cm2(550℃)であった。空気中でアニールして得られたグラフは直線を示し、これは明らかに優れたオーミック接触であることを意味する。一方、窒素中でアニールして得られたグラフは非線形を示し、これは整流性接触であることを意味する。
【0054】
図6は、本発明の実施態様による、コーニング(Corning)ガラス上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)を蒸着させ、550℃で1分間アニールした後に透過率を測定した結果を示すグラフである。
【0055】
蒸着されたニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)は、短波長領域である370〜450nmの範囲で80%以上の透過率を示した。透過率を測定するために蒸着される一般的な金属電極層及びキャッピング層の厚さは、100Å未満であるが、本発明において用いられる金属電極層及びキャッピング層の厚さは、合計で約200Åである。これだけ厚いにもかかわらず、本発明の電極層及びキャッピング層は80%以上の透過率を示したのである。ここで用いられる「キャッピング層」の語は、最外層の電極層を意味する。
【0056】
図7は、本発明の好ましい実施態様による薄膜電極を製造するために用いられるニッケル−マグネシウム固溶体のオージェ電子分光分析(AES)の結果を示すグラフである。図7(a)はアニーリング前の結果を示し、図7(b)は550℃で1分間アニーリングした後の結果を示す。なお、図7のグラフにおいて、縦軸は原子百分率を示し、横軸のスパッタリング時間は、試料の深さに対応する。
【0057】
図7(a)によれば、ニッケルと共に少量のマグネシウムが窒化ガリウム層の表面に存在していることがわかる。図7(a)には図示していないが、マグネシウムに関するAESデータから、マグネシウムは、ニッケルと反応することにより、化合物の形態ではなくニッケル金属に固溶された状態で存在していることがわかっている。また、図7(b)によれば、ニッケル−マグネシウム固溶体が形成されており、同時に極微量のマグネシウムが窒化ガリウムの表面に拡散し、分布していることが明らかに示されている。
【0058】
図8は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/白金(Pt)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0059】
蒸着されたNi−Mg固溶体/白金を450〜650℃で1分間アニールした後に、電流−電圧特性を測定した。その結果、明確な直線が得られた。この直線は、10−5〜10−6cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを意味している。
【0060】
図9は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/パラジウム(Pd)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0061】
蒸着されたNi−Mg固溶体/パラジウムを450℃で1分間アニールした後に、電流−電圧特性を測定した。その結果、明確な直線が得られた。この直線は、10−5cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを意味している。
【0062】
図10は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/ルテニウム(Ru)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0063】
図11は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にルテニウム(Ru)/ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0064】
図10及び図11に示される結果については、ニッケル/ルテニウム(Ni/Ru)及びルテニウム/ニッケル(Ru/Ni)の従来のオーム構造と比べる必要がある。詳細には、550℃で1分間アニールすると、ニッケル/ルテニウム(Ni/Ru)オーム構造の電流−電圧特性では、オーミック接触を形成することが困難であることが判明した。図10及び図11のグラフによれば、マグネシウムを添加することにより、10−5cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを示す直線が得られることがわかる。
【0065】
図12は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0066】
蒸着されたニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を500℃で1分間アニールした後に、電流−電圧特性を測定した。その結果、明確な直線が得られた。この直線は、10−5cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを意味している。
【0067】
図13は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル単体(Ni)/ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0068】
蒸着されたニッケル単体(Ni)/ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を500℃で1分間アニールした後に、電流−電圧特性を測定した。その結果、明確な直線が得られた。この直線は、10−6cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを意味している。
【0069】
図14は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/ニッケル単体(Ni)/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0070】
蒸着されたニッケル−亜鉛(Ni−Zn)/ニッケル単体(Ni)/金(Au)を500℃で1分間アニールした後に、電流−電圧特性を測定した。その結果、明確な直線が得られた。この直線は、10−6cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを意味している。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を用いて本発明の内容をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の内容を理解するために提示されるものであり、本発明の技術的範囲はこれらの実施例によって限定されない。
【0072】
(実施例1)
p型窒化ガリウム(GaN)層を超音波洗浄器(ultrasonic bath)中に入れ、トリクロロエチレン、アセトン、メタノール、及び蒸留水を用いて60℃の温度でそれぞれ5分ずつ洗浄した。その後、洗浄されたp型窒化ガリウム層に残留している水分を完全に除去するために、p型窒化ガリウム層を、100℃で10分間のハードベーキング(hard baking)工程に供した。次に、フォトレジストを4000rpmでp型窒化ガリウム層上にスピンコーティングした。その後、88℃で10分間のソフトベーキング(soft baking)工程に供した。p型窒化ガリウム層上のマスクパターンを現像するために、マスクと窒化ガリウム層とを並べ、22.8mWの強度でUVに10秒間露光させて、得られた試料を現像液と蒸留水との混合溶液(現像液:蒸留水=1:4)中に浸漬させて、15秒間程度現像した。
【0073】
その後、現像された試料上に残留している不純物を除去するために、試料をBOE溶液中に5分間浸漬させた。次いで、電子ビーム蒸着器を用いて、ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)をそれぞれ100Åの厚さで蒸着させた後、アセトンを用いたリフト−オフ(lift−off)工程に供した。得られた試料を急速加熱(Rapid Thermal Annealing:RTA)炉中に入れ、空気又は窒素雰囲気下において350〜550℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための高品質の薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図5〜図7に示す。
【0074】
(実施例2)
ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体を蒸着させる工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて白金(Pt)を100Åの厚さで蒸着させてキャッピング層を形成し、さらにアセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において450〜650℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図8に示す。
【0075】
(実施例3)
ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体を蒸着させる工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いてパラジウム(Pd)を100Åの厚さで蒸着させてキャッピング層を形成し、さらにアセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において450℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図9に示す。
【0076】
(実施例4)
ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体を60Åの厚さで蒸着させる工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて、ルテニウム(Ru)を40Åの厚さで蒸着させてキャッピング層を形成し、さらにアセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において450℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図10に示す。
【0077】
(実施例5)
窒化ガリウム層上に電極層を蒸着させる前の工程までは実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて、ルテニウム(Ru)、ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体をそれぞれ40Åおよび60Åの厚さで順に蒸着させ、アセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において350〜650℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図11に示す。
【0078】
(実施例6)
ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体を50Åの厚さで蒸着させる工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて、金(Au)を50Åの厚さで蒸着させてキャッピング層を形成し、さらにアセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において350〜650℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図12に示す。
【0079】
(実施例7)
窒化ガリウム層上に電極層を蒸着させる前の工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて、ニッケル(Ni)、ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体、及び金(Au)をそれぞれ20Å、30Å、及び50Åの厚さで順に蒸着させ、アセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において350〜650℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図13に示す。
【0080】
(実施例8)
ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体を30Åの厚さで蒸着させる工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて、ニッケル(Ni)及び金を(Au)をそれぞれ20Å及び50Åの厚さで蒸着させ、さらにアセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において350〜650℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図14に示す。
【0081】
本発明によれば、金属電極層として用いられるNi系固溶体が窒化ガリウム層上に蒸着され、次いでMgやZnのような可溶化された金属原子の融点付近の温度でアニールすると、窒化ガリウム層の表面においてMg及びZnの優れたドーピング効果が得られ、ガリウムとの反応により多数のガリウム空孔が形成されることによって、窒化ガリウム層の表面付近における実効キャリアー濃度が増加し、窒化ガリウムと蒸着された酸化金属との間のエネルギーバンドが調節されうる。これらが改善されることで、本発明によるオーミック接触システムは、電流−電圧特性に優れ、接触抵抗が低く、さらに短波長領域における透過率も高くなる。 加えて、オーミック接触を形成するための本発明の薄膜電極は、低い接触抵抗、優れた電流−電圧特性、優れた表面状態、及び高い透過率のような優れた電気的及び光学的特性を示すこと、特に、改善された電流注入及び電流拡がり能を示すことが期待される。よって、本発明の薄膜電極によれば、窒化ガリウム系の発光ダイオード及びレーザーダイオードの電気的及び光学的効率がかなり改善されうることから、本発明の薄膜電極は、高品質の発光ダイオード及びレーザーダイオードの今後の開発において用いられうる。
【符号の説明】
【0082】
1:基板、
2:p型窒化ガリウム層、
3:第1電極層、
4:第2電極層、
5:第3電極層、
6:第4電極層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(GaN)半導体を用いた青・緑色及び紫外線を発する短波長発光ダイオード(light emitting diode;LED)及びレーザーダイオード(laser diode;LD)の製造における核心技術の一つであるオーミック接触(Ohmic Contact)に関する。詳細には、低い抵抗及び高い透過率を有し、電流注入(current injection)及び電流拡がり能(spreading capability)が改善された良質のオーミック接触を形成する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード及びレーザーダイオード等のように窒化ガリウム半導体を用いる光素子(Photo−related devices)を実現するためには、半導体と電極との間に良質のオーミック接触を形成することが非常に重要である。
【0003】
従来、p型窒化ガリウムにおいては、ニッケル(Ni)を基本とする薄膜電極構造、即ち、ニッケル/金(Ni/Au)の金属薄膜がオーミック接触のための薄膜電極構造として広く使用されており、最近では、Ni/Pt/Au、Pt/Ni/Au、Pd/Au等のように多様な形態のオーミック接触金属システムが開発されている。
【0004】
しかし、現在でもp型窒化ガリウムを用いて良質のオーミック接触を形成するには、いくつか問題点がある。特に、p型窒化ガリウム形成時に使用される雰囲気ガスであるアンモニア(NH3)の水素(H)が、p型ドーパントであるMgと結合して電気的に絶縁性を有するMg−H複合体を形成し、実効キャリアー濃度が低下し、表面抵抗値が上昇する。その結果、良質のオーミック接触を形成することが困難となる。また、キャリアー(ホール)注入が低下するために、高品位の光素子を製造することが困難となる。
【0005】
p型窒化ガリウムのドーピング濃度を増加させるために、例えば、p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体を、Zrのような水素を吸蔵する能力を有する金属又は合金と共に熱処理し、窒化ガリウム結晶内に存在するp型ドーパントの活性化を促進させることによって、高いキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム系化合物半導体を得たという報告がある(特許文献1を参照)。また、例えば、窒化ガリウム上にニッケル、金−亜鉛合金、及び金(Ni/Au−Zn/Au)を順に薄膜蒸着させてオーミック接触を形成したという報告もある(特許文献2を参照)。
【0006】
しかし、現状では、短波長領域において高い透過率を有する良質のオーミック接触システムがないという問題もある。現在、LED工程で使用されているニッケル/金(Ni/Au)によるシステムは薄く(<〜100Å)、80%以上の透過率を得ている。このように、極度に薄い金属層を用いたオーミック接触は、高い透過率を得ることができる反面、電流注入及び電流拡がり能を向上させることが難しく、光素子の効率を低下させる原因ともなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−35796号公報
【特許文献2】大韓民国特許出願公開第2001−2265号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに本発明者らは、後述する5つの課題を達成するために、既存の技術とは異なる、Ni−X固溶体を用いた新規な概念に基づいて、高品位のオーミック接触を形成する技術を見出した。本発明者らが解決しようとした課題は以下の通りである:
(1)窒化ガリウム表面上での実効キャリアー濃度を増加させる:Ni−X固溶体の優れた水素親和力を利用し、Mg−H結合を破壊する;
(2)短波長領域における光透過率を高め、仕事関数を増大させる:酸化ニッケル(NiO)に少量のX元素を添加し、Ni−X酸化物(NipXqO)を形成させる(A. Azens et al., Thin Solid Films 422, 2002, 1);
(3)ドーピング効果を向上させる:Ni−X固溶体に可溶化されたX元素をアニールする(M. H. G. Jacobs, P. J. Spencer, J. Chem. Phys. 90, 1993, 167);
(4)多量のガリウム空孔を形成させる:マトリックス金属としてのNi、又はX元素と、ガリウムとを反応させて、化合物を形成させる;
(5)エネルギーバンドギャップの原理に基づいて、高品質のオーミック接触を形成する:蒸着されたNi系固溶体をアニールして酸化物を形成させる。これは、p型窒化ガリウムのオーミック接触を容易に形成することができる点で有利である。
【0009】
したがって、本発明は、実効キャリアー濃度が増加し((1)、(3)、(4))、物質間のエネルギーバンドギャップ調節によりショットキー(Schottky)障壁が減少し((5))、高い透過率を有する((2))、優れた電気的、光学的、熱的及び構造的特性を有する新概念のオーミック接触システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、高品質のオーミック接触システムの実現に向けて鋭意研究を重ねた。その結果、p型窒化ガリウム上にニッケル−X固溶体であるニッケル−マグネシウム固溶体をオーミック接触させて研究を実施した結果、既存の報告より非常に優れた結果が得られることを見出した。また、p型窒化ガリウム半導体上にニッケル系固溶体を蒸着させた後、マグネシウム(Mg)及び亜鉛(Zn)等の固溶された金属成分の融点付近の温度で熱処理すると、窒化ガリウム層の表面部位においてマグネシウム及び亜鉛等の優れたドーピング効果が得られ、ガリウムとの反応によって多量のガリウム空孔(Gallium vacancy)が形成されることにより窒化ガリウム層の表面付近の実効キャリアー濃度が増加し、或いは、窒化ガリウムと蒸着された酸化物質との間のエネルギーバンドが調節されうることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
これらが改善されることにより、優れた電流−電圧特性及び低い接触抵抗値を有し、かつ、短波長領域で高い透過率を有する高品位のオーミック接触システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい実施態様(第1の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。
【図2】本発明の好ましい実施態様(第2の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。
【図3】本発明の好ましい実施態様(第3の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。
【図4】本発明の実施態様による薄膜電極を製造するために用いられるニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体のXRDグラフである。図4(a)は、アニーリング前の結果を示し、図4(b)は、550℃で1分間アニーリング後の結果を示す。
【図5】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、アニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図6】本発明の実施態様による、コーニング(Corning)ガラス上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)を蒸着させ、550℃で1分間アニールした後に透過率を測定した結果を示すグラフである。
【図7】本発明の好ましい実施態様による薄膜電極を製造するために用いられるニッケル−マグネシウム固溶体のオージェ電子分光分析(AES)の結果を示すグラフである。図7(a)はアニーリング前の結果を示し、図7(b)は550℃で1分間アニーリングした後の結果を示す。
【図8】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/白金(Pt)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/パラジウム(Pd)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図10】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/ルテニウム(Ru)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図11】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にルテニウム(Ru)/ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図12】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図13】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル単体(Ni)/ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図14】本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/ニッケル単体(Ni)/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記の課題を達成するために、本発明は、発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、Au、Pt、Pd、Ni、Ru、Rh、Re、C、Cu、及びIrからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第2電極層と、を含むことを特徴とする、薄膜電極を提供する。
【0014】
本発明の薄膜電極は、前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含んでいてもよい。
【0015】
あるいは、本発明の薄膜電極は、前記第2電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第3電極層をさらに含んでいてもよい。
【0016】
本発明の薄膜電極は、前記第3電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第4電極層をさらに含んでいてもよい。
【0017】
本発明の他の態様によれば、発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、p型窒化ガリウム層上に積層され、Au、Pt、Pd、Ni、Ru、Rh、Re、C、Cu、及びIrからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第2電極層と、を含むことを特徴とする、薄膜電極が提供される。
【0018】
前記の態様の薄膜電極は、前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含んでいてもよい。
【0019】
あるいは、前記の態様の薄膜電極は、前記第2電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第3電極層、並びに、前記第3電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第4電極層をさらに含んでいてもよい。
【0020】
本発明のさらに他の態様によれば、発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第2電極層と、を含むことを特徴とする、薄膜電極が提供される。
【0021】
前記の態様の薄膜電極は、前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含んでいてもよい。
【0022】
本発明のさらに他の態様によれば、発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、前記第1電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第2電極層と、を含むことを特徴とする、薄膜電極が提供される。
【0023】
本発明において用いられるNi−X固溶体は、ニッケル(Ni)をマトリックス金属とし、前記Xは第II族元素、第VI族元素、Sc、Y、Ge、Sn、及びSbからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0024】
前記第II族元素としては、Mg、Be、Ca、及びZnが挙げられる。
【0025】
前記第VI族元素としては、S、Se、及びTeが挙げられる。
【0026】
本発明において用いられるNi−X固溶体における前記X元素の含有量は、前記Ni−X固溶体全量に対して原子百分率で1〜49%であることが好ましい。
【0027】
本発明において、Ni−X固溶体を含有する電極層の厚さは1〜1000Åであることが好ましい。また、本発明において、第1、第2、第3、及び第4電極層を合わせた合計の厚さ(薄膜電極全体の厚さ)は1〜50000Åであることが好ましく、1〜10000Åであることがより好ましい。。
【0028】
本発明において用いられるp型窒化ガリウムは、好ましくは、AlxInyGazN(ただし、0<x,y,z<1、x+y+z=1)の組成を有する。
【0029】
本発明のさらに他の態様によれば、不純物を除去するために、窒化ガリウム半導体上に形成された炭素層及び酸素層を洗浄する工程と、2×10−6〜5×10−8torr(2.666×10−4〜6.665×10−6Pa)の減圧下において、電子ビーム蒸着、電子線蒸着、スパッタリング工程、プラズマレーザー蒸着、又は電気化学的工程によりニッケル系固溶体を蒸着させる工程と、250〜800℃で30秒〜1時間、空気、酸素雰囲気、又は窒素雰囲気下で、蒸着したニッケル系固溶体をアニールする工程と、を有する、p型窒化ガリウム層上の薄膜電極の製造方法が提供される。
【0030】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の好ましい実施態様(第1の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。
【0032】
図1によれば、前記薄膜電極は、第1電極層3と第2電極層4とを含み、これらの電極は、基板1上に形成された窒化ガリウム層2上にこの順に積層されている。
【0033】
また、図1によれば、p型窒化ガリウム層2上に積層された前記第1電極層3は、p型窒化ガリウム半導体のオーミック接触を形成するための電極である。ここで用いられる固溶体は、窒化ガリウム半導体中のMg−H結合を容易に破壊することができる元素を含み、アニールされることにより優れたドーピング効果を示してガリウム系窒化物を形成する。特に、前記固溶体は、アニールされることにより物質間のエネルギーバンドギャップ原理に基づいてショットキー障壁を低下させうる透明導電性酸化物を形成しうる物質であり、100Å以上の厚さにおいても、高い透過率を示す。
【0034】
このように窒化ガリウム半導体と接触している前記固溶体は、窒化ガリウム半導体中のMg−H結合を容易に破壊することができ、優れたドーピング効果を示し、あるいは、低温(800℃以下)でアニールされることにより、窒化ガリウム層の表面付近において多量のガリウム空孔を形成する。これにより、窒化ガリウム層の表面付近における実効キャリアー濃度を増加させる。
【0035】
窒化ガリウムの表面において実効キャリアー濃度が増加する(>1018cm−3)ことによって窒化ガリウム半導体と接触する金属電極の界面に存在するショットキー障壁が低下し、量子の概念に基づくトンネル効果を通じて、多くのキャリアー(ホール)によりキャリアー伝導性が向上する。
【0036】
上記のような要求を満足する固溶体の例としては、例えば、強い水素親和力を有するニッケル系(Ni−X)固溶体が挙げられる。ニッケル(マトリックス金属)中に添加されるX元素の例としては、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)等の第II族元素が挙げられ、これらの元素はp型窒化ガリウムのドーパントとしての役割を果たす成分である。これらの成分はニッケル(Ni)マトリックス中に添加されると、低温領域で化合物の状態ではなく固溶された形態で存在する。蒸着後に、添加された元素の融点付近の温度でアニールすると、これらの元素はドーパントとして機能し、又はガリウムと反応することにより化合物を形成して、多量のガリウム空孔を形成する。
【0037】
また、ニッケル(Ni)マトリックス金属に添加されるX元素としては、第VI族元素、即ち、硫黄(S)、セレン(Se)及びテルル(Te)も用いられうる。これらの元素もまた、窒化ガリウムの窒素(N)と置換しうるため、p型窒化ガリウムのドーパントとして機能し、ガリウムと反応することにより化合物を形成して、多量のガリウム空孔を形成する。したがって、優れた電気的特性を有する高品質のオーミック接触が容易に形成されうると考えられる。前記第II族元素及び第VI族元素の他にも、低温でガリウムと反応して化合物を形成しうるスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)、及びアンチモン(Sb)もまた、X元素として用いられうる。
【0038】
図1によれば、第2電極層4は薄膜電極の最外層であり、(1)発光ダイオード及びレーザーダイオードのような素子を製造するためのアニール工程中に起こる表面退化を抑制し、(2)ガリウム系化合物の形成を促進し、(3)窒素(N)の流出を防止し、(4)酸化及びワイヤー接着に対する優れた安定性を保持し、(5)高い透過率を維持する、という役割を果たす。
【0039】
上記のような要求を満足する第2電極層4として用いられる物質としては、例えば、(1)純金属、即ち、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、レニウム(Re)、及びルテニウム(Ru)、(2)透明導電性酸化物(TCO)、即ち、インジウム錫酸化物(ITO)、ドープされた酸化亜鉛(ZnO)、及び酸化錫(SnO2)、並びに(3)透明導電性窒化物、即ちTiN、が挙げられる。
【0040】
図2は、本発明の好ましい実施態様(第2の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。
【0041】
図2によれば、前記薄膜電極は、第1電極層3、第2電極層4及び第3電極層5を含み、これらの電極は、基板1上に形成された窒化ガリウム層2上にこの順に積層されている。
【0042】
前記第1電極層3及び第2電極層4については、図2に示す態様においても、図1に示す態様と同様のものが用いられうる。したがって、図2に示す態様についての以下の説明では、第1電極層及び第2電極層についての詳細な説明は省略する。
【0043】
好ましくは、発光ダイオードの発光効率を最大化する目的で、前記第3電極層5については、一般的なLED構造とは逆の構造(Flip Chip:フリップチップ)が用いられる。この目的を達成するため、前記第3電極層5の材料としては、優れた光透過率を有する導電性酸化物又は窒化物が選択されうる。
【0044】
図3は、本発明の好ましい実施態様(第3の態様)による薄膜電極の構造を示す模式図である。図3によれば、前記薄膜電極は、第1電極層3、第2電極層4、第3電極層5、及び第4電極層6を含み、これらの電極は、基板1上に形成された窒化ガリウム層2上にこの順に積層されている。
【0045】
前記第1電極層3、第2電極層4、及び第3電極層5については、図3に示す態様においても、図2に示す態様と同様のものが用いられうる。したがって、図3に示す態様についての以下の説明では、第1電極層、第2電極層、及び第3電極層についての詳細な説明は省略する。
【0046】
好ましくは、発光ダイオードの発光効率を最大化する目的で、前記第4電極層6については、一般的なLED構造とは逆の構造(Flip Chip:フリップチップ)が提供される。この目的を達成するため、前記第4電極層6の材料としては、短波長領域において高い反射率を有するAl、Ag、及びRh等の材料が選択されうる。
【0047】
図4は、本発明の実施態様による薄膜電極を製造するために用いられるニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体のXRDグラフである。図4(a)は、アニーリング前の結果を示し、図4(b)は、550℃で1分間アニーリング後の結果を示す。
【0048】
図4(a)のグラフによれば、アニーリングする前のXRDの結果として、p型窒化ガリウム(GaN)及びサファイア(Al2O3)基板のピークが観察された。さらに、ニッケルにマグネシウムを添加することにより調製されたニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体に対応するピークもまた確認された。
【0049】
即ち、このようなニッケル−マグネシウム固溶体は、強い水素親和力を有しているため、p型窒化ガリウム層上に接触するとMg−H結合を破壊し、これにより、窒化ガリウム層の表面におけるキャリアー濃度を増加させる。
【0050】
図4(b)によれば、550℃で1分間アニーリングした後のXRDの結果として、p型窒化ガリウム(GaN)に対応するピークに加えて、アニーリング前のニッケル−マグネシウム固溶体が酸化された状態であるニッケル−マグネシウム酸化物固溶体(Ni1−xMgxO)、及び、ニッケル−ガリウム化合物であるNiGaに対応するピークが観察される。
【0051】
詳細には、この酸化された固溶体は導電性酸化物であり、既存のニッケル/金(Ni/Au)構造のニッケル酸化物(NiO)より大きい仕事関数を有することが予想される。また、酸化された固溶体により窒化ガリウムの表面部位にキャリアーであるホールが多数供給され、同時にショットキー障壁が低下して、優れた電気的特性が発現しうる。さらに、アニーリングにより生成したこのようなニッケル−マグネシウム固溶体は、金属薄膜の透明性を増加させるのに主導的な役割を果たしていると推察される。
【0052】
図5は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、アニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0053】
アニーリング後の電流−電圧特性の測定は、空気中で1分間、450℃及び550℃の温度でアニールした後にそれぞれ行った。電流−電圧測定時のそれぞれの温度における接触抵抗は、8.45×10−6cm2(450℃)及び6.08×10−6cm2(550℃)であった。空気中でアニールして得られたグラフは直線を示し、これは明らかに優れたオーミック接触であることを意味する。一方、窒素中でアニールして得られたグラフは非線形を示し、これは整流性接触であることを意味する。
【0054】
図6は、本発明の実施態様による、コーニング(Corning)ガラス上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)を蒸着させ、550℃で1分間アニールした後に透過率を測定した結果を示すグラフである。
【0055】
蒸着されたニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)は、短波長領域である370〜450nmの範囲で80%以上の透過率を示した。透過率を測定するために蒸着される一般的な金属電極層及びキャッピング層の厚さは、100Å未満であるが、本発明において用いられる金属電極層及びキャッピング層の厚さは、合計で約200Åである。これだけ厚いにもかかわらず、本発明の電極層及びキャッピング層は80%以上の透過率を示したのである。ここで用いられる「キャッピング層」の語は、最外層の電極層を意味する。
【0056】
図7は、本発明の好ましい実施態様による薄膜電極を製造するために用いられるニッケル−マグネシウム固溶体のオージェ電子分光分析(AES)の結果を示すグラフである。図7(a)はアニーリング前の結果を示し、図7(b)は550℃で1分間アニーリングした後の結果を示す。なお、図7のグラフにおいて、縦軸は原子百分率を示し、横軸のスパッタリング時間は、試料の深さに対応する。
【0057】
図7(a)によれば、ニッケルと共に少量のマグネシウムが窒化ガリウム層の表面に存在していることがわかる。図7(a)には図示していないが、マグネシウムに関するAESデータから、マグネシウムは、ニッケルと反応することにより、化合物の形態ではなくニッケル金属に固溶された状態で存在していることがわかっている。また、図7(b)によれば、ニッケル−マグネシウム固溶体が形成されており、同時に極微量のマグネシウムが窒化ガリウムの表面に拡散し、分布していることが明らかに示されている。
【0058】
図8は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/白金(Pt)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0059】
蒸着されたNi−Mg固溶体/白金を450〜650℃で1分間アニールした後に、電流−電圧特性を測定した。その結果、明確な直線が得られた。この直線は、10−5〜10−6cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを意味している。
【0060】
図9は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/パラジウム(Pd)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0061】
蒸着されたNi−Mg固溶体/パラジウムを450℃で1分間アニールした後に、電流−電圧特性を測定した。その結果、明確な直線が得られた。この直線は、10−5cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを意味している。
【0062】
図10は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/ルテニウム(Ru)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0063】
図11は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にルテニウム(Ru)/ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0064】
図10及び図11に示される結果については、ニッケル/ルテニウム(Ni/Ru)及びルテニウム/ニッケル(Ru/Ni)の従来のオーム構造と比べる必要がある。詳細には、550℃で1分間アニールすると、ニッケル/ルテニウム(Ni/Ru)オーム構造の電流−電圧特性では、オーミック接触を形成することが困難であることが判明した。図10及び図11のグラフによれば、マグネシウムを添加することにより、10−5cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを示す直線が得られることがわかる。
【0065】
図12は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0066】
蒸着されたニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を500℃で1分間アニールした後に、電流−電圧特性を測定した。その結果、明確な直線が得られた。この直線は、10−5cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを意味している。
【0067】
図13は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル単体(Ni)/ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0068】
蒸着されたニッケル単体(Ni)/ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/金(Au)を500℃で1分間アニールした後に、電流−電圧特性を測定した。その結果、明確な直線が得られた。この直線は、10−6cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを意味している。
【0069】
図14は、本発明の実施態様による、5×1017のキャリアー濃度を有するp型窒化ガリウム層上にニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体/ニッケル単体(Ni)/金(Au)を蒸着させた後の、空気中でのアニーリング前後の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0070】
蒸着されたニッケル−亜鉛(Ni−Zn)/ニッケル単体(Ni)/金(Au)を500℃で1分間アニールした後に、電流−電圧特性を測定した。その結果、明確な直線が得られた。この直線は、10−6cm2のレベルで得られたオーミック接触抵抗が優れたオーミック接触であることを意味している。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を用いて本発明の内容をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の内容を理解するために提示されるものであり、本発明の技術的範囲はこれらの実施例によって限定されない。
【0072】
(実施例1)
p型窒化ガリウム(GaN)層を超音波洗浄器(ultrasonic bath)中に入れ、トリクロロエチレン、アセトン、メタノール、及び蒸留水を用いて60℃の温度でそれぞれ5分ずつ洗浄した。その後、洗浄されたp型窒化ガリウム層に残留している水分を完全に除去するために、p型窒化ガリウム層を、100℃で10分間のハードベーキング(hard baking)工程に供した。次に、フォトレジストを4000rpmでp型窒化ガリウム層上にスピンコーティングした。その後、88℃で10分間のソフトベーキング(soft baking)工程に供した。p型窒化ガリウム層上のマスクパターンを現像するために、マスクと窒化ガリウム層とを並べ、22.8mWの強度でUVに10秒間露光させて、得られた試料を現像液と蒸留水との混合溶液(現像液:蒸留水=1:4)中に浸漬させて、15秒間程度現像した。
【0073】
その後、現像された試料上に残留している不純物を除去するために、試料をBOE溶液中に5分間浸漬させた。次いで、電子ビーム蒸着器を用いて、ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体/金(Au)をそれぞれ100Åの厚さで蒸着させた後、アセトンを用いたリフト−オフ(lift−off)工程に供した。得られた試料を急速加熱(Rapid Thermal Annealing:RTA)炉中に入れ、空気又は窒素雰囲気下において350〜550℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための高品質の薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図5〜図7に示す。
【0074】
(実施例2)
ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体を蒸着させる工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて白金(Pt)を100Åの厚さで蒸着させてキャッピング層を形成し、さらにアセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において450〜650℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図8に示す。
【0075】
(実施例3)
ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体を蒸着させる工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いてパラジウム(Pd)を100Åの厚さで蒸着させてキャッピング層を形成し、さらにアセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において450℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図9に示す。
【0076】
(実施例4)
ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体を60Åの厚さで蒸着させる工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて、ルテニウム(Ru)を40Åの厚さで蒸着させてキャッピング層を形成し、さらにアセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において450℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図10に示す。
【0077】
(実施例5)
窒化ガリウム層上に電極層を蒸着させる前の工程までは実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて、ルテニウム(Ru)、ニッケル−マグネシウム(Ni−Mg)固溶体をそれぞれ40Åおよび60Åの厚さで順に蒸着させ、アセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において350〜650℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図11に示す。
【0078】
(実施例6)
ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体を50Åの厚さで蒸着させる工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて、金(Au)を50Åの厚さで蒸着させてキャッピング層を形成し、さらにアセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において350〜650℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図12に示す。
【0079】
(実施例7)
窒化ガリウム層上に電極層を蒸着させる前の工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて、ニッケル(Ni)、ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体、及び金(Au)をそれぞれ20Å、30Å、及び50Åの厚さで順に蒸着させ、アセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において350〜650℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図13に示す。
【0080】
(実施例8)
ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)固溶体を30Åの厚さで蒸着させる工程までは前記実施例1と同様に行った。その後、電子ビーム蒸着器を用いて、ニッケル(Ni)及び金を(Au)をそれぞれ20Å及び50Åの厚さで蒸着させ、さらにアセトンを用いたリフト−オフ工程に供した。得られた試料を急速加熱炉中に入れ、空気雰囲気下において350〜650℃で1分間アニールし、オーミック接触を形成するための薄膜電極を製造した。本実施例により得られた薄膜電極の特性を図14に示す。
【0081】
本発明によれば、金属電極層として用いられるNi系固溶体が窒化ガリウム層上に蒸着され、次いでMgやZnのような可溶化された金属原子の融点付近の温度でアニールすると、窒化ガリウム層の表面においてMg及びZnの優れたドーピング効果が得られ、ガリウムとの反応により多数のガリウム空孔が形成されることによって、窒化ガリウム層の表面付近における実効キャリアー濃度が増加し、窒化ガリウムと蒸着された酸化金属との間のエネルギーバンドが調節されうる。これらが改善されることで、本発明によるオーミック接触システムは、電流−電圧特性に優れ、接触抵抗が低く、さらに短波長領域における透過率も高くなる。 加えて、オーミック接触を形成するための本発明の薄膜電極は、低い接触抵抗、優れた電流−電圧特性、優れた表面状態、及び高い透過率のような優れた電気的及び光学的特性を示すこと、特に、改善された電流注入及び電流拡がり能を示すことが期待される。よって、本発明の薄膜電極によれば、窒化ガリウム系の発光ダイオード及びレーザーダイオードの電気的及び光学的効率がかなり改善されうることから、本発明の薄膜電極は、高品質の発光ダイオード及びレーザーダイオードの今後の開発において用いられうる。
【符号の説明】
【0082】
1:基板、
2:p型窒化ガリウム層、
3:第1電極層、
4:第2電極層、
5:第3電極層、
6:第4電極層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、
p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、
前記第1電極層上に積層され、Au、Pt、Pd、Ni、Ru、Rh、Re、C、Cu、及びIrからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第2電極層と、
を含むことを特徴とする、薄膜電極。
【請求項2】
前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含む、請求項1に記載の薄膜電極。
【請求項3】
前記第2電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第3電極層をさらに含む、請求項1に記載の薄膜電極。
【請求項4】
前記第3電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第4電極層をさらに含む、請求項3に記載の薄膜電極。
【請求項5】
発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、
p型窒化ガリウム層上に積層され、Au、Pt、Pd、Ni、Ru、Rh、Re、C、Cu、及びIrからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第1電極層と、
前記第1電極層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第2電極層と、
を含むことを特徴とする、薄膜電極。
【請求項6】
前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含む、請求項5に記載の薄膜電極。
【請求項7】
前記第2電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第3電極層、並びに、前記第3電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第4電極層をさらに含む、請求項5に記載の薄膜電極。
【請求項8】
発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、
p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、
前記第1電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第2電極層と、
を含むことを特徴とする、薄膜電極。
【請求項9】
前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含む、請求項8に記載の薄膜電極。
【請求項10】
発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、
p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、
前記第1電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第2電極層と、
を含むことを特徴とする、薄膜電極。
【請求項11】
前記Ni−X固溶体はニッケル(Ni)をマトリックス金属とし、前記X元素は第II族元素、第VI族元素、Sc、Y、Ge、Sn及びSbからなる群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の薄膜電極。
【請求項12】
前記第II族元素は、Mg、Be、Ca及びZnである、請求項11に記載の薄膜電極。
【請求項13】
前記第VI族元素は、S、Se及びTeである、請求項11に記載の薄膜電極。
【請求項14】
前記Ni−X固溶体における前記X元素の含有量は、前記Ni−X固溶体全量に対して原子百分率で1〜49%である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の薄膜電極。
【請求項15】
前記Ni−X固溶体を含有する電極層の厚さは1〜1000Åであり、薄膜電極全体の厚さが1〜50000Åである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の薄膜電極。
【請求項16】
前記p型窒化ガリウムは、AlxInyGazN(ただし、0<x,y,z<1、x+y+z=1)の組成を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の薄膜電極。
【請求項17】
不純物を除去するために、窒化ガリウム半導体上に形成された炭素層及び酸素層を洗浄する工程と、
2×10−6〜5×10−8torr(2.666×10−4〜6.665×10−6Pa)の減圧下において、電子ビーム蒸着、電子線蒸着、スパッタリング工程、プラズマレーザー蒸着、又は電気化学的工程によりニッケル系固溶体を蒸着させる工程と、
250〜800℃で30秒〜1時間、空気、酸素雰囲気、又は窒素雰囲気下で、蒸着したニッケル系固溶体をアニールする工程と、
を有する、p型窒化ガリウム層上の薄膜電極の製造方法。
【請求項1】
発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、
p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、
前記第1電極層上に積層され、Au、Pt、Pd、Ni、Ru、Rh、Re、C、Cu、及びIrからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第2電極層と、
を含むことを特徴とする、薄膜電極。
【請求項2】
前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含む、請求項1に記載の薄膜電極。
【請求項3】
前記第2電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第3電極層をさらに含む、請求項1に記載の薄膜電極。
【請求項4】
前記第3電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第4電極層をさらに含む、請求項3に記載の薄膜電極。
【請求項5】
発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、
p型窒化ガリウム層上に積層され、Au、Pt、Pd、Ni、Ru、Rh、Re、C、Cu、及びIrからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第1電極層と、
前記第1電極層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第2電極層と、
を含むことを特徴とする、薄膜電極。
【請求項6】
前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含む、請求項5に記載の薄膜電極。
【請求項7】
前記第2電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第3電極層、並びに、前記第3電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第4電極層をさらに含む、請求項5に記載の薄膜電極。
【請求項8】
発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、
p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、
前記第1電極層上に積層され、透明導電性酸化物及び透明導電性窒化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含有する第2電極層と、
を含むことを特徴とする、薄膜電極。
【請求項9】
前記第2電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第3電極層をさらに含む、請求項8に記載の薄膜電極。
【請求項10】
発光ダイオード又はレーザーダイオードにおいてオーミック接触を形成するための薄膜電極において、
p型窒化ガリウム層上に積層され、Ni−X固溶体を含有する第1電極層と、
前記第1電極層上に積層され、Al、Ag、及びRhからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含有する第2電極層と、
を含むことを特徴とする、薄膜電極。
【請求項11】
前記Ni−X固溶体はニッケル(Ni)をマトリックス金属とし、前記X元素は第II族元素、第VI族元素、Sc、Y、Ge、Sn及びSbからなる群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の薄膜電極。
【請求項12】
前記第II族元素は、Mg、Be、Ca及びZnである、請求項11に記載の薄膜電極。
【請求項13】
前記第VI族元素は、S、Se及びTeである、請求項11に記載の薄膜電極。
【請求項14】
前記Ni−X固溶体における前記X元素の含有量は、前記Ni−X固溶体全量に対して原子百分率で1〜49%である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の薄膜電極。
【請求項15】
前記Ni−X固溶体を含有する電極層の厚さは1〜1000Åであり、薄膜電極全体の厚さが1〜50000Åである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の薄膜電極。
【請求項16】
前記p型窒化ガリウムは、AlxInyGazN(ただし、0<x,y,z<1、x+y+z=1)の組成を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の薄膜電極。
【請求項17】
不純物を除去するために、窒化ガリウム半導体上に形成された炭素層及び酸素層を洗浄する工程と、
2×10−6〜5×10−8torr(2.666×10−4〜6.665×10−6Pa)の減圧下において、電子ビーム蒸着、電子線蒸着、スパッタリング工程、プラズマレーザー蒸着、又は電気化学的工程によりニッケル系固溶体を蒸着させる工程と、
250〜800℃で30秒〜1時間、空気、酸素雰囲気、又は窒素雰囲気下で、蒸着したニッケル系固溶体をアニールする工程と、
を有する、p型窒化ガリウム層上の薄膜電極の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−199319(P2011−199319A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143316(P2011−143316)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【分割の表示】特願2004−104946(P2004−104946)の分割
【原出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(509156538)サムソン エルイーディー カンパニーリミテッド. (114)
【出願人】(504127739)光州科學技術院 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【分割の表示】特願2004−104946(P2004−104946)の分割
【原出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(509156538)サムソン エルイーディー カンパニーリミテッド. (114)
【出願人】(504127739)光州科學技術院 (9)
【Fターム(参考)】
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