説明

表面処理装置

【課題】表面処理装置において、表面処理用原料流体が基板表面に沿って流されて排出される際に、処理済流体が流出部内壁に衝突して流れが乱れることを抑制することである。
【解決手段】表面処理装置10は、円筒状の周囲壁を形成する筐体部12の内部に円板状の試料保持台14が設けられる構成を有する装置である。筐体部12の上方側に設けられる円筒状部分22は原料流体供給流路部で、筐体部12において試料保持台14の側方に設けられ、円筒状部分22から見ると末広がりとなっている流路部は、流出流路部24である。流出流路部24は、試料保持台14の最外周上端の位置を焦点位置とし、焦点位置に対称的に向かい合う流出口上縁端の位置を基準位置とするパラボラ曲線等が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理装置に係り、特に、表面処理用原料流体が基板表面に沿って流される表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体素子等を製造するために、適当な反応ガス等の原料流体を基板上に供給して、基板上に半導体層や絶縁膜、導電体層等を形成し、あるいは、基板の表面をエッチングし、あるいはクリーニング処理し、あるいはコーティング材料を形成することが行われる。このような処理は半導体素子の製造以外にも広く行われており、これらの処理を広義の表面処理と呼ぶことができ、この表面処理を行う装置を広義の表面処理装置と呼ぶことができる。
【0003】
例えば、半導体ウェハあるいは絶縁体ウェハ等に半導体層をエピタキシャル成長させるエピタキシャル装置、半導体ウェハ上に適当な酸化膜等の薄膜を堆積させる気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)装置、半導体ウェハ上に形成された薄膜等を除去するドライエッチング装置等は、広義の表面処理装置である。
【0004】
表面処理装置には、表面処理用原料流体を基板の表面の方向に平行に供給する横型方式と、表面処理用原料流体を基板の表面にほぼ垂直な方向に供給する縦型方式とがある。後者は、表面処理の均一性を確保するために、基板をその表面に垂直な方向の軸の周りに回転させることが行われることが多い。
【0005】
このような縦型回転式表面処理装置は、様々な用途に用いられるが、以下の点で共通する特徴を有する。すなわち、(1)中心部に様々な形の被処理面を有する被処理物を設置してこれを回転させる、(2)原料である気体または液体は上方から流入し、回転によって被処理物の表面の近くで境界層が形成される、(3)相移転や化学反応は表面もしくは境界層内で生じ、表面処理の効果が得られる、(4)流体は後に遠心力によって中心から被処理物外縁部へ流出する。上記のように、縦型回転式表面処理装置においては、被処理物は、平坦な基板でなくてもよく、様々な形状を有するものに適用可能である。
【0006】
このように、縦型回転式表面処理装置の特徴としては、被処理物の回転によって形成された境界層内で、境界層厚さや温度・濃度などの物理量分布が均一となることが挙げられる。この均一な操作環境は、表面で一様な物理・化学反応を得ることができ、製品の均一性が向上する。
【0007】
例えば、特許文献1には、半導体基板の表面にエピタキシャル成長層を形成する気相成長装置において、ウェーハを毎分数百回転以上の高速で回転させることにより、ウェーハ近傍の気圧が低くなりウェーハ上方から送られる反応ガスをウェーハ表面に引き寄せる(ポンプ効果)と共に、エピタキシャル成長反応の進行するウェーハ表面直上の境界層を遠心力により均一化させて薄化し、反応ガスの供給効率を上げて、エピタキシャル成長速度の高速化を図ることが述べられている。
【0008】
ポンプ効果の解析に関し、非特許文献1には、流体中で、平板面に垂直な軸の周りに一定角速度ωで回転する円板の周囲の流れについて、ナビエ・ストークス方程式の厳密解の例が述べられている。ここでは、流体の動粘性係数νとして、境界層の厚さが(ν/ω)1/2に近似できることを示し、円板の半径方向の速度u、周方向速度v、軸方向速度wと、圧力pについて、軸方向に沿った距離zを無次元化したz/(ν/ω)1/2によって規格化した4元連立偏微分方程式を解くことが示されている。
【0009】
その計算結果によれば、ポンプ効果による流体の軸方向速度wは、軸方向に沿った距離が円板に近づくにつれ小さくなって円板表面でゼロになること、また、径方向速度uは、円板表面でゼロであるが、軸方向に沿った距離の円板から離れるに従って次第に増大し、さらに円板から遠くなると再びゼロに戻るような最大速度分布を有することが示されている。
【0010】
非特許文献1では、温度の効果を考慮していないが、非特許文献2には、回転する円板上のシリコン形成技術として、流体の熱伝導率を考慮した熱エネルギ方程式を非特許文献1に述べられている4元連立偏微分方程式に加えて、5元連立偏微分方程式を解くことが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−63966号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Dr.Hermann Schlichting(Translated by Dr.J.K.Kestin);Boundary−Layer Theory;Seventh Edition;USA;Mc Graw−Hill Book Company;1979;p102−104
【非特許文献2】Richard Pollard et.al.;silicon Deposition on a Rotating Disk;J.Electrochem.Soc.;Solid−State Science and Technology;USA;March 1980;vol.127,No.3;p744−745
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に述べられているように、縦型回転式表面処理装置においては、ポンプ効果によって境界層が効果的に形成されて、表面処理の均一性の向上と生産性向上が期待される。また、非特許文献1,2に記載の内容を発展させて、さらに表面処理の均一性の向上を図ることが期待できる。
【0014】
ところで、縦型回転式表面処理装置では、上記のように、反応に用いられた流体がその後遠心力によって中心から被処理物外縁部へ流出する。したがって、処理済流体を外部に排出するための流出部は、被処理物の表面に平行な流れを導くものとなる。理想的には、その平行な流れを維持しながら外部に排出できればよいが、装置設計の都合上、あるいは装置設置の都合上、そのようにできないことも多い。それらの場合には流出部の形状が曲げられて、その結果、処理済流体が流出部の内壁に衝突して流れが乱れ、そこで処理済流体に含まれる表面処理用成分が流出部内壁において反応を生じさせることが起こる。例えば、エピタキシャル装置等では、半導体層が流出部内壁に付着し堆積することが生じる。
【0015】
同様な問題は、縦型回転式表面処理装置の流出部のみならず、表面処理用原料流体を基板の表面の方向に平行に供給する横型方式の表面処理装置の流出部においても生じる。
【0016】
本発明の目的は、表面処理用原料流体が基板表面に沿って流されて排出される際に、処理済流体が流出部内壁に衝突して流れが乱れることを抑制できる表面処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る表面処理装置は、周囲壁を形成する筐体部と、筐体部の内部に設けられ、試料を保持する試料保持台と、筐体部に設けられ、試料保持台の試料に対し原料流体を供給する原料流体供給流路部と、筐体部において試料保持台の側方に設けられる流路部であって、原料流体が試料表面に沿って流れながら試料に対し表面処理を行った後に処理済流体として試料保持台の側方の流出口を経由して外部に流出させる流出流路部と、を備え、流出流路部は、流出口断面に垂直な方向軸をx軸としてx軸に垂直に交わる任意の方向軸をy軸とし、流出口周縁端とy軸との交点の一方側の位置を焦点位置としてその位置をy軸の+aの位置とし、流出口周縁端とy軸の交点の他方側の位置であってx軸に対し焦点位置に対称的に向かい合う位置を基準位置としてその位置をy軸のゼロ位置とし、基準位置を挟んで焦点位置と対称の位置であるy軸の−aの位置に基準線を設定して、y軸に平行な任意の垂線が基準線と交わる点を垂線上端点とし、任意の垂線が焦点位置から延ばされた任意の線と交わる点を垂線下端点として、垂線上端点と垂線下端点との間の距離と、焦点位置と垂線下端点と間の距離とが等しくなる垂線下端点の軌跡によって形成され基準位置を通るパラボラ曲線またはパラボラ曲線を基本曲線とするパラボラ類似曲線である流路一方側曲線と、流路一方側形成線に向かい合う流路他方側曲線と、を含み、流路一方側曲線と流路他方側曲線とに基づいて流出流路部の形状が形成されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る表面処理装置は、筐体部を円筒状とし、試料保持台を筐体部の内部で回転駆動する構成とすることができる。すなわち、本発明に係る表面処理装置は、円筒状の周囲壁を形成する筐体部と、筐体部の内部に設けられ、試料を保持する試料保持台と、試料保持台を回転駆動する回転機構と、筐体部において試料保持台の上方側に設けられ、試料保持台の試料に対し原料流体を供給する原料流体供給流路部と、筐体部において試料保持台の側方に設けられる流路部であって、試料保持台の上方から試料に向かって縦型流として供給される原料流体が試料表面に沿って流れながら試料に対し表面処理を行った後に処理済流体として試料保持台の側方の流出口を経由して流出させる流出流路部と、を備え、流出流路部は、流出口断面に垂直な方向軸をx軸として、x軸に垂直に交わり試料保持台の上方から試料に向かって供給される原料流体の流れる方向軸をy軸とし、流出口下縁端である試料保持台最外周上端の位置を焦点位置としてその位置をy軸の+aの位置とし、x軸に対し焦点位置に対称的に向かい合う流出口上縁端の位置を基準位置としてy軸のゼロ位置とし、基準位置を挟んで焦点位置と対称の位置であるy軸の−aの位置に基準線を設定して、y軸に平行な任意の垂線が基準線と交わる点を垂線上端点とし、任意の垂線が焦点位置から延ばされた任意の線と交わる点を垂線下端点として、垂線上端点と垂線下端点との間の距離と、焦点位置と垂線下端点と間の距離とが等しくなる垂線下端点の軌跡によって形成され基準位置を通るパラボラ曲線またはパラボラ曲線を基本曲線とするパラボラ類似曲線である流路一方側曲線と、流路一方側形成線に向かい合う流路他方側曲線と、を含み、流路一方側曲線と流路他方側曲線とに基づいて流出流路部の形状が形成されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る表面処理装置において、流出流路部は、試料表面を流れる境界層の厚さと同じ開口高さ寸法を有する流出口を有することが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る表面処理装置において、流出流路部は、試料保持台の側方の流出口に角部形状を有することが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る表面処理装置において、試料保持台の外周側にさらに外側配置部材を備えるときは、外側配置部材は、試料保持台の高さ位置より段差をつけて下方に低くなる予め定めた所定の幅の頂上面と、その頂上面からさらに下方に延びる滑らかな凸形状とを含んで流路他方側曲線を形成し、所定の幅は、段差によって段差の設けられる方向に曲げられる流れが段差に沿って流れて向かい合う流出流路部に衝突しない程度に短く設定されることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る表面処理装置において、筐体は、中心軸をy軸に平行とする円筒状形状を有し、流出流路部は、流路一方側曲線を筐体の中心軸の周りに回転させた回転対称形の一方側流路面と、流路他方側曲線を筐体の中心軸の周りに回転させた回転対称形の他方側流路面と、一方側流路面と他方側流路面とを相互に接続する接続面と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
上記構成の少なくとも1つにより、表面処理装置は、筐体部において試料保持台の側方に設けられる流路部であって、原料流体が試料表面に沿って流れながら試料に対し表面処理を行った後に処理済流体として試料保持台の側方の流出口を経由して外部に流出させる流出流路部を備える。そして、流出流路部の形状は、流出口周縁端の一方側の位置を焦点位置とし、流出口周縁端の他方側の位置を基準位置として、基準位置を通る流路一方側曲線と、これに向かい合う流路他方側曲線とに基づいて形成される。
【0024】
ここで、流路一方側曲線は、次のようにして形成される。すなわち、基準位置を挟んで焦点位置と対称の位置に基準線を設定して、基準線に垂直な垂線の長さと、焦点位置から垂線に延ばされた任意の線の長さが等しくなる点の軌跡によって形成される。この曲線は、焦点から出た入射波が曲線に当たって反射するとき、いずれの反射波も垂線と平行となるいわゆる平行反射鏡に用いられるパラボラ曲線である。したがって、流出口周端縁の焦点位置から流出する流体は、この流路一方側曲線に当たって、その流体も互いに平行に流れる。これによって、表面処理用原料流体が基板表面に沿って流されて排出される際に、処理済流体が流出部内壁に衝突して流れが乱れることを抑制できる。
【0025】
また、上記構成の少なくとも1つにより、表面処理装置が縦型回転式表面処理装置のときは、試料保持台の上方から試料に向かって縦型流として供給される原料流体が試料表面に沿って流れながら試料に対し表面処理を行った後に処理済流体として試料保持台の側方の流出口を経由して流出させる流出流路部を備える。そして、流出流路部の形状は、流出口下縁端である試料保持台最外周上端の位置を焦点位置とし、流出口上縁端の位置を基準位置として、基準位置を通る流路一方側曲線と、これに向かい合う流路他方側曲線とに基づいて形成される。
【0026】
ここで、流路一方側曲線は、焦点から出た入射波が曲線に当たって反射するとき、いずれの反射波も垂線と平行となるいわゆる平行反射鏡に用いられるパラボラ曲線として形成される。したがって、流出口周端縁の焦点位置から流出する流体は、この流路一方側曲線に当たって、その流体も互いに平行に流れる。これによって、表面処理用原料流体が基板表面に沿って流されて排出される際に、処理済流体が流出部内壁に衝突して流れが乱れることを抑制できる。
【0027】
また、表面処理装置において、流出流路部は、試料表面を流れる境界層の厚さと同じ開口高さ寸法を有する流出口を有するので、流出口の寸法を最適に小さくすることができる。
【0028】
また、表面処理装置において、流出流路部は、試料保持台の側方の流出口に角部形状を有するので、流出流路部から試料保持台側への逆流を効果的に防止できる。
【0029】
また、表面処理装置において、試料保持台の外周側にさらに外側配置部材を備えるときは、外側配置部材は、試料保持台の高さ位置より段差をつけて下方に低くなる所定の幅の頂上面と、その頂上面からさらに下方に延びる滑らかな凸形状とを含んで配置される。そして、所定の幅は、段差によって段差の設けられる方向に曲げられる流れが段差に沿って流れて向かい合う流出流路部に衝突しない程度に短く設定される。この段差によって、処理済流体が下方側に曲がるので、排出部に流れやすくすることができる。そして、段差の幅を適切に設定することで、向かい合う流出流路部に衝突しないようにして、頂上面からさらに下方に延びる滑らかな凸形状に沿った流れとすることができる。
【0030】
また、表面処理装置において、筐体は、中心軸をy軸に平行とする円筒状形状を有し、流出流路部は、流路一方側形成線を筐体の中心軸の周りに回転させた回転対称形の一方側流路面と、流路他方側形成線を筐体の中心軸の周りに回転させた回転対称形の他方側流路面と、一方側流路面と他方側流路面とを相互に接続する接続面と、を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る実施の形態における表面処理装置の構成を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態における表面処理装置の断面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の表面処理装置において、流出流路部に流れ出す流れの様子を説明する図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、流出流路部の形状を形成する考えを説明する図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、流出流路部の曲線に用いられるパラボラ曲線を説明する図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、流出流路部の曲線に用いられるパラボラ曲線の形成の様子を説明する図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、試料保持台とその外側に配置される保護リングとの関係の様子を説明する図である。
【図8】本発明に係る実施の形態において、流出流路部の作用を説明する図である。
【図9】従来技術における代表的な表面処理装置について流出流路部の様子を説明する図である。
【図10】図9の従来技術における代表的な表面処理装置の流出流路部の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、表面処理装置として、回転する基板にほぼ垂直方向に表面処理用原料流体を供給して、その後基板の表面に沿って流体を流して基板に対し表面処理を行う縦型回転式表面処理装置を説明するが、これは説明のための1例であり、表面処理用原料流体が基板表面に沿って流される表面処理装置であればよい。例えば、最初から表面処理用原料流体を基板表面に沿って供給される横型表面処理装置であってもよい。
【0033】
また、以下では、流出流路部の形状として、処理済流体を当初は基板に平行に流出させ、その後下方に向けて排出する下向き形状を説明するが、これは、上方から原料流体が供給される縦型回転式表面処理装置に適するようにしたものであって、例えば横型表面処理装置の流出流路部の形状はこれ以外のものとできる。例えば、基板表面に平行な面内で流れ方向を変更するものであってもよく、場合によっては上方に向けて排出する上向き形状を用いることができる。
【0034】
なお、以下では、表面処理装置の例として、シリコン単結晶のエピタキシャル成長装置を説明するが、これは例示である。ここでは、適当な反応ガス等の原料流体を基板上に供給して、基板上に半導体層や絶縁膜、導電体層等を形成し、あるいは、基板の表面をエッチングし、あるいはクリーニング処理し、あるいはコーティング材料を形成する表面処理装置であってもよい。
【0035】
また、以下では、シリコン単結晶成長のために、表面処理用の原料流体として、SiHCl3+H2の混合物としての反応ガスを説明するが、これは表面処理装置の例示の都合上このようになったものであって、表面処理の内容に応じ、他の種類の反応ガスであってもよい。また、他の液体等の原料流体であってもよい。例えば、噴霧状のエッチング液、レジスト液等であってもよい。また、以下では、基板を加熱してシリコン単結晶成長させることを説明するが、これは表面処理の一例であって、基板の加熱、非加熱にかかわらず、回転する基板に表面処理用原料流体を供給して、基板上に膜を生成する表面処理であればよい。
【0036】
なお、以下で説明する材料、寸法、形状、温度、流量等は説明のための例示であって、表面処理の内容に応じ、適宜変更が可能である。例えば、表面処理の対象としてウェハ状基板を説明するが、凹凸形状を有する物体であってもよい。
【0037】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0038】
図1は、表面処理装置10の構成を説明する図である。図2は、この表面処理装置10の断面図である。この表面処理装置10は、回転する基板16にほぼ垂直方向に表面処理用の原料流体40を供給して、その後基板16の表面に沿って流体を流して基板16に対し表面処理を行うもので、いわゆる縦型回転式と呼ばれる形式の表面処理装置である。具体的には、表面処理装置10は、半導体ウェハあるいは絶縁体ウェハ等の基板に、半導体層をエピタキシャル成長させるエピタキシャル装置である。
【0039】
なお、図1には、原料流体40が流れる方向に平行な方向軸をy軸とし、基板16の表面に平行な方向軸をx軸として示してある。以下で上方、下方というときは、y軸に沿った方向で、原料流体40が流れる上流側の方向が上方で、下流側の方向が下方である。一般的には、上方から下方に向かう方向が重力方向である。
【0040】
表面処理装置10は、円筒状の周囲壁を形成する筐体部12の内部に円板状の試料保持台14が設けられる構成を有する装置である。なお、図1には、表面処理装置10の構成要素ではないが、表面処理としてのシリコン単結晶エピタキシャル成長処理の対象としての基板16が図示されている。基板16は、シリコンウェハを用いることができる。
【0041】
筐体部12は、試料保持台14の上の試料である基板16を外部から隔離しながら、表面処理用の原料流体40である原料ガスを基板16に供給し、処理済流体42を外部に導き出す機能を有する反応容器である。
【0042】
筐体部12において試料保持台14の上方側に設けられる円筒状部分22は、試料保持台14の上の試料である基板16に対し原料流体40を供給する原料流体供給流路部である。
【0043】
筐体部12において試料保持台14の側方に設けられ、円筒状部分22から見ると末広がりとなっている流路部は、流出流路部24である。流出流路部24は、試料保持台14の上方から試料である基板16に向かって縦型流として供給される原料流体40が基板16の表面に沿って流れながら基板16に対し表面処理を行った後に処理済流体42として試料保持台14の側方の流出口を経由して流出させる機能を有する流路である。流出流路部24の形状等の詳細については後述する。
【0044】
筐体部12の円筒状部分22に接続される供給部30は、シリコン単結晶エピタキシャル成長処理のための原料流体40としての反応ガスを、一定の圧力と一定の流量で供給する機能を有するガス供給装置である。反応ガスとしては、SiHCl3+H2の混合ガスを用いることができる。
【0045】
筐体部12の流出流路部24に接続される排出部32は、流出流路部24から導かれる処理済流体42を適当な排出無害化処理を施して外部に排出する機能を有する排出処理装置である。排出部32には、使用済ガスを外部に導きやすくするための排出ポンプ等を含むことができる。排出無害化処理としては、希釈処理を用いることができ、また、処理済流体42に含まれる有害成分を沈殿反応等によって取り除く除去処理等を用いることができる。
【0046】
試料保持台14は、表面処理対象の試料である基板16を保持し、これを加熱しながら回転する機能を有する回転体である。試料保持台14は、下方側に凹部を有する天井付き円筒状の部材で、上面側に、基板16をしっかりと保持するための試料保持機構を有し、下方側の凹部の中にヒータ18が収納される。試料保持機構としては、ウェハ外形に合わせたくぼみを設けるものを用いることができ、そのほかに、機械的にウェハ外周等を固定する機構、真空でウェハを吸引して固定する機構等を用いることもできる。なお、試料保持機能は試料保持台14と共に回転するが、ヒータ18は回転しない。
【0047】
回転部34は、試料保持台14を回転中心軸の周りに予め設定された角速度ωで回転駆動する機能を有する回転機構である。回転中心軸は、試料保持台14の表面に垂直で、天井付き円筒形状の中心軸とすることができる。また、回転中心軸は、筐体部12の円筒状部分22の中心軸とできるだけ同軸となるようにすることが好ましい。かかる回転部34としては、電動機と、試料保持台14の天井付き円筒形状の外周と電動機とを接続するための動力伝達機構を用いることができる。動力伝達機構としては、歯車機構、ベルト機構等を用いることができる。
【0048】
加熱部36は、試料保持台14の内部に収容されて保持されるヒータ18を通電制御して、基板16を予め定めた反応温度とするための加熱制御装置である。加熱制御には、ヒータ18の温度を検出する温度センサのデータに基づいて行うことができる。
【0049】
試料保持台14の外周に設けられる保護リング19は、試料保持台14が回転する際の外周の保護等の機能を有する外側配置部材である。保護リング19は、図2に示されるように流出流路部24の一部を構成し、その外周側の側壁が、流出流路部24の内側内壁となる。つまり、処理済流体42は、保護リング19の側壁と、傘状に広がっている流出流路部24の外側部分の内壁との間を流れる。
【0050】
次に、流出流路部24の形状等について詳細に説明する。流出流路部24は、上記のように、試料保持台14の側方の流出口を経由して排出部32に、処理済流体42を導く流路である。したがって、流出流路部24の上流側の始まりは試料保持台14の側方の流出口であり、下流側の終わりは排出部32に接続される接続口である。
【0051】
流出流路部24は、図1に示されるように、筐体部12の下側部分であり、筐体部12の上側部分の円筒状部分22から見て、概略として傘形状あるいはスカート状に末広がりとなる回転対称体の形状を有している。すなわち、流出流路部24は、天井付き円筒状の試料保持台14および保護リング19の外周を取り囲むように、試料保持台14の外周端の全周に渡って周方向に開口する環状の流出口から、以下に述べる曲線部を有する曲面流路を経て、下方に向かって環状に開口する末広がり環状の流路である。
【0052】
なお、排出部32との接続口は必ずしも環状でなくてもよく、流出流路部24の終端部を環状に閉じた形状としてその閉じた形状の一部に開口を設けてこれを排出部32との接続口とすることができる。
【0053】
流出流路部24は、その中に処理済流体42を流す機能を有する流路であるが、処理済流体42は、基板16の表面に沿って基板16の径方向に流れるので、様々な方向から流れ込んでくる流れの集合体である。流出流路部24の形状は、この様々な方向から流れ込んでくる流れの集合体について、できるだけ相互に平行に流れるようにし、流れの乱れを抑制できるように形成される。流出流路部24の外観形状は、上記のように概略として傘形状であるが、その形状の具体的な形成方法については後述する。
【0054】
図2は、上記のように表面処理装置10の断面図である。図2に示されるように、筐体部12は、円筒状部分22と、傘形状の流出流路部24を有し、円筒状部分22と傘形状の流出流路部24とが接続されるところは、角形状部分13となっている。この角形状部分13と試料保持台14との間の空間が、基板16の表面に沿って基板16の径方向に流れる流れの流出口に当る。また、保護リング19は試料保持台14が回転可能であるのに対し、筐体部12に対し固定位置を有する。
【0055】
図3は、流出口付近において、流出流路部24に流れ出す流れの様子を説明する図である。表面処理装置10は、上記のように、回転する基板16にほぼ垂直方向に表面処理用の原料流体40を供給して、その後基板16の表面に沿って流体を流して基板16に対し表面処理を行うものであるので、流出口付近では、基板16の表面に沿った流れとなっている。図3には、厚さδの流れが形成されるように流れの条件等を設定される場合に、試料保持台14または基板16の外周端における径方向速度であるuについて、軸方向にどのような分布を有するかが示されている。図3に示されるように、径方向の速度uは、基板16の表面でゼロであるが、zが基板16から離れるに従って次第に増大し、さらに基板16から遠くなると再びゼロに戻るような最大速度u(max)を有する。
【0056】
このように、基板16の表面付近では、基板16の表面から軸方向にある幅を有して、径方向速度が存在する。換言すれば、基板16の表面から軸方向に沿ってある高さの幅の範囲で、処理済流体42が基板16の外周端から径方向に流出する。この流出する処理済流体42の最大速度はu(max)である。図3では、この径方向に流出する流れの軸方向に沿った高さの幅の範囲をh0として示されているが、このh0を流出流路部24の入口高さとすることができる。適当な閾値速度を設定して定義された境界層厚さδを、この高さh0として用いることができる。
【0057】
次に、このようにして流出口から流れ出す流れを滑らかに排出部32に導くのに適した流出流路部24の形状、特に、傘状に広がる外側形状について説明する。上記のように、流出流路部24の形状は、この様々な方向から流れ込んでくる流れの集合体について、できるだけ相互に平行に流れるようにし、流れの乱れを抑制できるように形成される。そのような流れを形成できる流路形状として、パラボラ曲線に基く回転対称体形状を用いることができる。
【0058】
パラボラ曲線とは、いわゆる平行反射鏡に用いられる曲線で、焦点から出た入射波が曲線に当たって反射するとき、いずれの反射波も垂線と平行となる曲線である。図4は、パラボラ曲線60を流出流路部24の形状とする場合の原理的な考えを説明する図である。なお、図4で示したx軸、y軸は、図1で説明したx軸、y軸と同じである。ここでは、試料保持台14の外周端をパラボラ曲線60の焦点位置50とし、図3で説明した流出口の高さh0だけ試料保持台14の上面から上方に離れた位置をパラボラ曲線60の開始位置である基準位置としてある。
【0059】
この場合に、パラボラ曲線60は、試料保持台14の上面から上方に2h0だけ離れた基準線54に垂直に下ろした垂線の長さと、焦点位置50までの長さが等しくなる点の軌跡として求めることができる。このようにして求められるパラボラ曲線60は、その曲線の特性から、上記のように、焦点位置50からから出た流れが入射波に相当し、その流れが曲線に当たって反射するとき、反射波に相当するいずれの流れも、基準線54に下ろした垂線と平行となるようにできる。すなわち、流出流路部24の形状としてパラボラ曲線60を用いると、試料保持台14の外周端から水平に流れ出すいずれの流れも、y方向を向いて相互に平行となり、交わることがないようにできる。
【0060】
図5は、パラボラ曲線60を説明する図である。図5において示されるx軸、y軸は、パラボラ曲線60の説明に用いられる直交軸であるが、図1で説明したx軸とy軸をそのまま用いることができる。ここで、焦点位置50は、xy座標で(0,a)で示される。パラボラ曲線60の頂点は基準位置52とできるので、xy座標で(0,0)で示される。パラボラ曲線60を得るために必要なものとして、基準線54がある。基準線54は、基準位置52を挟んで焦点位置50と対称となる点(0,−a)を通り、x軸に平行な線である。
【0061】
パラボラ曲線60は、y軸に平行な任意の垂線62が基準線54と交わる点を垂線上端点56とし、任意の垂線62が焦点位置50から延ばされた任意の線64と交わる点を垂線下端点58として、垂線上端点56と垂線下端点58との間の距離である垂線62の長さと、焦点位置50と垂線下端点58と間の距離である任意の線64の長さとが等しくなる垂線下端点58の軌跡として与えられる。
【0062】
数学的には、次のように説明できる。パラボラ曲線60の上の垂線下端点58の位置を一般的に(x,y)とすると、垂線62の長さ=任意の線64の長さである。垂線62の長さは、(y+a)で与えられ、任意の線64の長さは、{x2+(a−y)21/2で与えられる。この2つを等しいとすることで、x2=4ayとなる。この式は方物曲線の式、つまりパラボラ曲線の式である。
【0063】
図6は、図5におけるパラボラ曲線60を流出流路部24に適用するときの様子を説明する図である。パラボラ曲線60を流出流路部24に適用するには、流出口断面に垂直な方向軸をx軸として、x軸に垂直に交わり試料保持台14の上方から基板16に向かって供給される原料流体の流れる方向軸をy軸とする。このx軸、y軸の設定は、図1で説明した内容の通りである。そして、流出口下縁端である試料保持台14の最外周上端の位置を焦点位置50とし、そのxy座標を(0,a)とする。また、x軸に対し焦点位置50に対称的に向かい合う流出口上縁端の位置を基準位置52とし、そのxy座標を(0,0)とする。
【0064】
すなわち、試料保持台14の最外周の側方に設けられる開口部としての流出口は、上縁が基準位置52で、下縁が焦点位置50である。換言すれば、焦点位置50と基準位置52の間の距離aが、流出口のy方向開口長さである。すなわち、図3で説明したh0をaとすることができる。
【0065】
そして、仮想的に(0,−a)の点を通り、x軸に平行な基準線54を設定し、図5で説明したように、y軸に平行な任意の垂線62が基準線54と交わる点を垂線上端点56とし、任意の垂線62が焦点位置50から延ばされた任意の線64と交わる点を垂線下端点58として、垂線上端点56と垂線下端点58との間の距離である垂線62の長さと、焦点位置50と垂線下端点58と間の距離である任意の線64の長さとが等しくなる垂線下端点58の軌跡を求めれば、それがパラボラ曲線60となる。
【0066】
パラボラ曲線60の作用は、パラボラ曲線60上の任意の点におけるパラボラ曲線60の接線66に対し、焦点位置50とその任意の点とを結ぶ線64がなす角度が、その任意の点を通り基準線54に垂直な垂線62の延長線68となす角度と同じとなることである。図6では、これらの角度をθとして示してある。このことから、焦点位置50から入射波が出てパラボラ曲線60に当たって反射することを考えると、入射波が線64として、入射波がパラボラ曲線60に当たる点がその任意の点となり、反射波が垂線62の延長線68となる。ここで任意の点は、上記の垂線下端点58に相当する。
【0067】
したがって、焦点位置50から出た入射波がパラボラ曲線60に当たって反射する反射波は、基準線54に垂直な方向となる。このことは、パラボラ曲線60上の全ての点について成立するので、焦点位置50から出た入射波の方向に関係なく、反射波は全て基準線54に垂直方向となり、いずれの反射波も垂線と平行となる。この作用により、パラボラ曲線60は平行反射鏡の鏡面の曲線として用いることができる。
【0068】
このようにして、流出流路部24の外側の基本的な形状をパラボラ曲線60に基いて形成することで、試料保持台14の外周端から水平に流れ出すいずれの流れも、y方向を向いて相互に平行となり、交わることがないようにできる。ここで、筐体部12の円筒状部分22から排出部32に至る流出路は、流出流路部24の外側形状の内壁と、試料保持台14の外側に設けられる保護リング19の側壁とで構成される。この2つの壁面をそれぞれ流路一方側壁面、流路他方側壁面と呼ぶことにすると、パラボラ曲線は流路一方側壁面に用いる曲線であるので、これを流路一方側曲線と呼ぶことができる。同様に、他方側壁面である保護リング19の側壁に用いる曲線を流路他方側曲線と呼ぶことができる。流路他方側曲線は、流路一方側曲線に向かい合う曲線であるので、流路一方側曲線を考慮して形成することがよい。
【0069】
図7は、試料保持台14と、保護リング19の周辺を示す図である。ここで、保護リング19は、ここでは試料保持台14の外周側に配置される外側配置部材に相当する。流路他方側曲線は、保護リング19の外形を規定する曲線である。図7では、保護リング19の頂上面を規定する直線部分と、頂上面から下方になだらかに延びる曲線部分が流路他方側曲線である。図7に示されるように、保護リング19は、試料保持台14の高さ位置より段差Hをつけて低くなる頂上面を有する。段差部分の幅寸法がWとして示されているが、このWの直線部分を含んで、頂上面より下方になだらかに延びる滑らかな凸形状の側壁曲線が流路他方側曲線を構成する。
【0070】
このように、保護リング19の頂上面を試料保持台14の高さ位置より段差Hをつけて低くする理由は、処理済流体42が試料保持台14を出たところで下方側に吸引し、処理済流体42の流れを下向きに向きやすくするためである。このように、保護リング19の段差部分の幅Wが過大であると、処理済流体42の流れは保護リング19の段差部分に衝突して向きを変えるが、そのまま段差部分の表面に沿って進み、流路一方側曲線の壁面に衝突することが生じる。段差部分の幅Wを適当に狭くすることで、この衝突を避け、かつ段差Hを有する回転保持台14の側面回転が処理済流体42に与える流体引き込み効果によって、保護リング19の側壁に沿って下方に向かって流れるようにできる。したがって、保護リング19の側壁の曲線である流路他方側曲線は、滑らかで、流路一方側曲線に比べ、より下方に向かう曲線とすることが好ましい。
【0071】
上記のように流路他方側曲線として、保護リング19の頂上面を試料保持台14からHの段差を付けて下方に配置し、段差部分の幅Wを適当に狭くし、その段差部分である頂上面から下方にパラボラ曲線よりは小さな曲率半径を有する曲線で構成するものとできる。このようにすることで、処理済流体を保護リング19の側壁に沿って下方へ導き、流路一方側曲線の壁面への衝突時期を遅らせることができる。これによって、処理済流体が流路一方側曲線に衝突するときの流速を低速化でき、また、処理済流体の温度を低温化できる。したがって、処理済流体42による流路一方側曲線の壁面に付着する堆積物を低減できる。
【0072】
また、流路一方側曲線をパラボラ曲線とし、処理済流体42の流線を下向きに平行とできるので、処理済流体の流れが逆流する可能性が低減される。仮に逆流が何かの理由で生じたとしても、流出口のところの角形状部分13によって、逆流を食い止めることができる。逆流を効果的に食い止めるには、流出口のところは滑らかでないことがよく、図4に示されるように、明確に角度が付けられた形状であることがよい。逆流の1つの可能性は、排出部32からの逆流であるが、上記のように、処理済流体42はパラボラ曲線等によって、下方側に整流されて流れるので、この流れによって、排出部32からの逆流を抑制することができる。
【0073】
図8は、パラボラ曲線60を流出流路部24に適用した様子を説明する図である。ここでは、試料保持台14の端部を中心としたxy断面図が示されている。図8に示されるように、流出口は、試料保持台14の最外周上端の位置である焦点位置50と、y方向に沿って、焦点位置50に対応する基準位置52との間の開口部である。図6で説明したパラボラ曲線60は、この基準位置52を始めの位置として、流路一方側曲線26として利用される。なお、パラボラ曲線60は、流体が完全反射すると考えるときは最適な曲線であるが、実際に流体が流れる状況は、必ずしも完全反射するわけではないので、その流れの状況に応じて、パラボラ曲線60を基本にしたパラボラ類似曲線とすることができる。
【0074】
流路一方側曲線26に向かい合う流路他方側曲線28は、図7で説明したように、試料保持台14から段差Hを有する保護リング19が配置され、その頂上面を含んで、パラボラ曲線60よりも小さな曲率半径で形成される。なお、段差Hの部分の径方向に沿った寸法である幅寸法は、予め定めた所定の幅寸法Wに設定される。
【0075】
この流路一方側曲線26が、図1で説明したスカート状の末広がり環状の流出流路部24の上面側の曲面のxy断面上の曲線になる。すなわち、流路一方側曲線26を筐体部12の中心軸の周りに回転させて得られる回転対称形の一方側流路面が、環状の流出流路部24の上面側の曲面となる。同様に、流路他方側曲線28は、このスカート状の末広がり環状の流出流路部24の下面側の曲面のxy断面上の曲線になる。流出流路部24を試料保持台14の周囲を囲む環状流路として形成するために、一方側流路面と他方側流路面とを相互に接続する接続面が設けられ、これらによって、環状の流出流路部24が形成される。
【0076】
図8には、このように設定された流出流路部24における処理済流体42の流れの様子が模式的に示されている。ここに示されているように、処理済流体42の流れは、保護リング19の段差Hの作用によって下向きに曲げられ保護リング19に沿って流れる比較的流速の速い流れ41と、流路一方側流路26に沿っ手流れる比較的流速の遅い流れ43とを含む。このように、基板16の表面に沿って流れてきた様々の流れは、相互に平行に流れ、流れの乱れは流出口の上端部付近を除けば生じていない。したがって、流出流路部24の内壁に、反応生成物が付着する可能性が低減される。
【0077】
図9は、従来技術における代表的な表面処理装置の流出流路部25について、流れの乱れの様子を説明する図である。従来技術における代表的な表面処理装置の流出流路部25は、図8で説明した流線型の流路ではなく、傾斜壁を一部に有する直線的な流路であるので、処理済流体は、流出口上端部付近の逆流70の他に、基板16の表面を流れてきた流れが流出流路部25の直線的流路の斜面に激しく衝突し、上流側に戻る逆流72と、下流側に流れる排出流74とに分離することが生じる。このような逆流72は、逆流70と合流する恐れがある。
【0078】
図10は、従来技術による流出流路部25における処理済流体の流れの様子をシミュレーション計算によって求めた結果を示す図である。図9の説明に対応するように、流出口上端部付近の広範囲な逆流70と、流出流路部25の直線的斜面に衝突し、無理やり流れが曲げられた排出流74と、排出側に生じた逆流76が示されている。図8と図10とを比較すれば分かるように、パラボラ曲線60を適用した流出流路部24は、従来技術の流出流路部25に比較し、基板16の表面に沿って流れてきた様々の流れが、相互に平行に流れ、処理済流体が流出部内壁に衝突して流れが乱れることを効果的に抑制している。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る表面処理装置は、適当な反応ガス等の原料流体を基板上に供給して、基板上に半導体層や絶縁膜、導電体層等を形成し、あるいは、基板の表面をエッチングし、あるいはクリーニング処理し、あるいはコーティング材料を形成する表面処理を行うものに利用できる。
【符号の説明】
【0080】
10 表面処理装置、12 筐体部、13 角形状部分、14 試料保持台、16 基板、18 ヒータ、19 保護リング、22 円筒状部分、24 流出流路部、25 (従来技術の)流出流路部、26 流路一方側曲線、28 流路他方側曲線、30 供給部、32 排出部、34 回転部、36 加熱部、40 原料流体、41,43 流れ、42 処理済流体、50 焦点位置、52 基準位置、54 基準線、56 垂線上端点、58 垂線下端点、60 パラボラ曲線、62 垂線、64 (焦点位置から延ばされた)線、66 接線、68 延長線、70,72,76 逆流、74 排出流。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲壁を形成する筐体部と、
筐体部の内部に設けられ、試料を保持する試料保持台と、
筐体部に設けられ、試料保持台の試料に対し原料流体を供給する原料流体供給流路部と、
筐体部において試料保持台の側方に設けられる流路部であって、原料流体が試料表面に沿って流れながら試料に対し表面処理を行った後に処理済流体として試料保持台の側方の流出口を経由して外部に流出させる流出流路部と、
を備え、
流出流路部は、
流出口断面に垂直な方向軸をx軸としてx軸に垂直に交わる任意の方向軸をy軸とし、
流出口周縁端とy軸との交点の一方側の位置を焦点位置としてその位置をy軸の+aの位置とし、
流出口周縁端とy軸の交点の他方側の位置であってx軸に対し焦点位置に対称的に向かい合う位置を基準位置としてその位置をy軸のゼロ位置とし、
基準位置を挟んで焦点位置と対称の位置であるy軸の−aの位置に基準線を設定して、y軸に平行な任意の垂線が基準線と交わる点を垂線上端点とし、
任意の垂線が焦点位置から延ばされた任意の線と交わる点を垂線下端点として、垂線上端点と垂線下端点との間の距離と、焦点位置と垂線下端点と間の距離とが等しくなる垂線下端点の軌跡によって形成され基準位置を通るパラボラ曲線またはパラボラ曲線を基本曲線とするパラボラ類似曲線である流路一方側曲線と、
流路一方側形成線に向かい合う流路他方側曲線と、
を含み、流路一方側曲線と流路他方側曲線とに基づいて流出流路部の形状が形成されることを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
円筒状の周囲壁を形成する筐体部と、
筐体部の内部に設けられ、試料を保持する試料保持台と、
試料保持台を回転駆動する回転機構と、
筐体部において試料保持台の上方側に設けられ、試料保持台の試料に対し原料流体を供給する原料流体供給流路部と、
筐体部において試料保持台の側方に設けられる流路部であって、試料保持台の上方から試料に向かって縦型流として供給される原料流体が試料表面に沿って流れながら試料に対し表面処理を行った後に処理済流体として試料保持台の側方の流出口を経由して流出させる流出流路部と、
を備え、
流出流路部は、
流出口断面に垂直な方向軸をx軸として、x軸に垂直に交わり試料保持台の上方から試料に向かって供給される原料流体の流れる方向軸をy軸とし、
流出口下縁端である試料保持台最外周上端の位置を焦点位置としてその位置をy軸の+aの位置とし、
x軸に対し焦点位置に対称的に向かい合う流出口上縁端の位置を基準位置としてy軸のゼロ位置とし、
基準位置を挟んで焦点位置と対称の位置であるy軸の−aの位置に基準線を設定して、y軸に平行な任意の垂線が基準線と交わる点を垂線上端点とし、
任意の垂線が焦点位置から延ばされた任意の線と交わる点を垂線下端点として、垂線上端点と垂線下端点との間の距離と、焦点位置と垂線下端点と間の距離とが等しくなる垂線下端点の軌跡によって形成され基準位置を通るパラボラ曲線またはパラボラ曲線を基本曲線とするパラボラ類似曲線である流路一方側曲線と、
流路一方側形成線に向かい合う流路他方側曲線と、
を含み、流路一方側曲線と流路他方側曲線とに基づいて流出流路部の形状が形成されることを特徴とする表面処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表面処理装置において、
流出流路部は、
試料表面を流れる境界層の厚さと同じ開口高さ寸法を有する流出口を有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の表面処理装置において、
流出流路部は、
試料保持台の側方の流出口に角部形状を有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の表面処理装置において、
試料保持台の外周側にさらに外側配置部材を備えるときは、
外側配置部材は、
試料保持台の高さ位置より段差をつけて下方に低くなる予め定めた所定の幅の頂上面と、その頂上面からさらに下方に延びる滑らかな凸形状とを含んで流路他方側曲線を形成し、
所定の幅は、段差によって段差の設けられる方向に曲げられる流れが段差に沿って流れて向かい合う流出流路部に衝突しない程度に短く設定されることを特徴とする表面処理装置。
【請求項6】
請求項2に記載の表面処理装置において、
筐体は、中心軸をy軸に平行とする円筒状形状を有し、
流出流路部は、
流路一方側曲線を筐体の中心軸の周りに回転させた回転対称形の一方側流路面と、
流路他方側曲線を筐体の中心軸の周りに回転させた回転対称形の他方側流路面と、
一方側流路面と他方側流路面とを相互に接続する接続面と、
を有することを特徴とする表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−204952(P2011−204952A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71493(P2010−71493)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】