説明

表面処理装置

【課題】電子ビーム照射部の窓を保護するとともに良好な表面処理結果を得ることができる表面処理装置を提供する。
【解決手段】表面処理装置1は、処理溶液81により処理対象物90の表面を処理するものであって、電子ビーム照射部10,溶液供給部20,ガス吹出部30,ガス吸引部40,ガス量調整部50および回転部60を備える。電子ビーム照射部10は、窓14を通過した電子ビームを処理対象物90表面上の処理溶液81に照射して、その処理溶液81を活性化させる。ガス吹出部30は、電子ビーム照射部10の窓14に対し略平行に不活性ガス82を吹き出す。ガス吸引部40は、ガス吹出部30から吹き出された不活性ガス82を吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物の表面を処理する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
処理対象物の表面を処理する装置として特許文献1に開示されたものが知られている。この文献に開示された表面処理装置は、処理対象物の表面に供給された処理溶液に対して電子ビームを照射して該処理溶液を活性化し、この活性化した処理溶液により処理対象物の表面を処理する。ここで、処理溶液を用いた処理対象物の表面処理としては、例えば、HF溶液を用いて半導体ウェハ表面のSiO膜を除去すること、機能水を用いて半導体ウェハ表面のレジスト膜を除去すること、および、機能水を用いて処理対象物表面の有機物等の不純物を除去すること、等が挙げられる。
【0003】
処理溶液に対して電子ビームを照射する電子ビーム照射部は、真空に保たれた内部で電子ビームを発生させ、内部から窓を経て外部へ電子ビームを出力させて、処理対象物の表面に供給された処理溶液に対して電子ビームを照射する。この電子ビーム照射部において電子ビームが通過する窓は例えばBe膜からなる。
【0004】
処理溶液に電子ビームが照射されると、その処理溶液が活性化されるだけでなく、その処理溶液からガスやイオンが発生し、また、雰囲気中の酸素からオゾンが発生する。これらのガス,イオンおよびオゾンは、電子ビーム照射部の窓の腐食の原因となる。また、処理溶液が窓に付着すると、その付着した処理溶液は電子ビームが照射されて活性化され、この活性化した処理溶液が電子ビーム照射部の窓の腐食の原因となる。さらに、電子ビームが窓を通過することにより窓の温度が上昇し、上記のような腐食が加速される。
【0005】
そこで、窓に対して不活性ガスが吹き付けられ、これらのガス,イオン,オゾンおよび処理溶液が窓に達しないようにされて、窓の腐食が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−053646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記のような表面処理装置を用いて処理対象物の表面を処理する場合に、その表面処理が良好に行われない場合があることを、本発明者は見出した。本発明者は、その原因について鋭意研究したところ、以下のことが原因であることを見出した。
【0008】
すなわち、良好な表面処理結果を得るには処理対象物の表面に処理溶液が所定厚(例えば100μm程度)で均一に保たれることが必要であるが、電子ビーム照射部の窓に対して不活性ガスが吹き付けられると、その吹き付けられた不活性ガスが処理対象物の表面に達して、処理対象物上の処理溶液の表面が歪められ、処理溶液の厚みが不均一となってしまう。このように処理対象物上の処理溶液の厚みが不均一となることにより、表面処理が良好に行われない場合がある。
【0009】
本発明は、上記の本発明者の知見に基づいて、上記問題点を解消する為になされたものであり、電子ビーム照射部の窓を保護するとともに良好な表面処理結果を得ることができる表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る表面処理装置は、処理対象物の表面を処理する装置であって、(1) 処理溶液を処理対象物の表面に供給する溶液供給部と、(2) 真空に保たれた内部で電子ビームを発生させ、内部から窓を経て外部へ電子ビームを出力させ、溶液供給部により処理対象物の表面に供給された処理溶液に電子ビームを照射して処理溶液を活性化する電子ビーム照射部と、(3) 電子ビーム照射部の窓に対し略平行に不活性ガスを吹き出すガス吹出部と、(4) ガス吹出部から吹き出された不活性ガスを吸引するガス吸引部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この表面処理装置では、溶液供給部により処理溶液が処理対象物の表面に供給される。電子ビーム照射部により、真空に保たれた内部で電子ビームが発生し、内部から窓を経て外部へ電子ビームが出力される。溶液供給部により処理対象物の表面に供給された処理溶液に電子ビームが照射されて、その処理溶液が活性化されて、この活性化された処理溶液により処理対象物の表面が処理される。また、ガス吹出部から電子ビーム照射部の窓に対し略平行に吹き出された不活性ガスにより窓が保護される。さらに、そのガス吹出部から吹き出された不活性ガスがガス吸引部により吸引されることにより、その不活性ガスが処理対象物表面上の処理溶液に達することが抑制され、処理対象物の表面における処理溶液が所定厚で均一に保たれることとなり、表面処理が良好に行われ得る。
【0012】
本発明に係る表面処理装置では、溶液供給部は、機能水,酸性溶液またはアルカリ性溶液を処理溶液として処理対象物の表面に供給するのが好適である。また、本発明に係る表面処理装置は、ガス吹出部におけるガス吹出量またはガス吸引部におけるガス吸引量を調整するガス量調整部を更に備えるのが好適である。
【0013】
本発明に係る表面処理装置では、ガス吹出部は、電子ビーム照射部の窓に対し垂直な方向に積層された複数の吹出口を有するのが好適である。また、ガス吹出部は、電子ビーム照射部の窓に対し略平行な方向に広がった吹出口を有し、その吹出口におけるガス吹出量分布を均一化する手段を含むのも好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る表面処理装置は、電子ビーム照射部の窓を保護するとともに良好な表面処理結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る表面処理装置1の構成を示す図である。
【図2】第2実施形態に係る表面処理装置2の構成を示す図である。
【図3】第3実施形態に係る表面処理装置に含まれるガス吹出管31Bおよびガス吸引管41Bの断面図である。
【図4】第3実施形態に係る表面処理装置に含まれるガス吹出管31Bの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
(第1実施形態)
【0018】
図1は、第1実施形態に係る表面処理装置1の構成を示す図である。この図に示される表面処理装置1は、処理溶液81により処理対象物90の表面を処理するものであって、電子ビーム照射部10,溶液供給部20,ガス吹出部30,ガス吸引部40,ガス量調整部50および回転部60を備える。
【0019】
電子ビーム照射部10は、真空容器11,カソード12,高電圧発生部13および窓14を含む。電子ビーム照射部10では、真空容器11内に入れられたカソード12に対して高電圧発生部13により負の高電圧が印加されて、カソード12から電子Eが放出される。そのカソード12から放出された電子Eのうち窓14を通過して外部に出たものは、電子ビームとして処理対象物90表面上の処理溶液81に照射される。窓14は、電子ビーム照射部10の下面に設けられていて、Be,Si,T1,Alなどの薄い箔で構成されている。
【0020】
溶液供給部20は、処理溶液81を処理対象物90の表面に供給するものであって、溶液供給管21および溶液タンク22を含む。溶液供給部20は、溶液タンク22に容れられた処理溶液を、溶液供給管21を介して処理対象物90の表面に供給する。供給される処理溶液81は、機能水,酸性溶液またはアルカリ性溶液である。機能水は、電解生成水(純水、水素水、イオン水、酸化還元水、各種ガス(窒素ガス、Arガス、Heガス、酸素ガス等)を含む水)およびオゾン水を含む概念のものである。酸性溶液は、例えば、弗酸、塩酸、硫酸および蟻酸などの溶液である。また、アルカリ性溶液は、例えば、アンモニアや水酸化ナトリウムなどの溶液である。
【0021】
回転部60は、処理対象物90を載置して回転させることで、溶液供給部20により処理対象物90の表面に供給された処理溶液81を所定厚(例えば100μm程度)で均一な膜とする。この処理対象物90の表面に供給された処理溶液81に対して電子ビーム照射部10から電子ビームが照射されると、その処理溶液81は活性化され、この活性化した処理溶液81により処理対象物90の表面が処理される。
【0022】
ガス吹出部30は、電子ビーム照射部10の窓14に対し略平行に不活性ガス82を吹き出すものであって、ガス吹出管31およびガスタンク32を含む。ガス吹出部30は、ガスタンク32に容れられた不活性ガス82を、ガス吹出管31を介して電子ビーム照射部10の窓14に対し略平行に吹き出す。ガス吹出管31の吹出口付近の部分は、電子ビーム照射部10の下面に接するように設けられている。ガス吹出管31の吹出口から不活性ガス82をやや上向きに(窓14に向けて)吹き出すように、吹出口付近の部分の下辺がやや上向きになっているのが好適である。ここで用いられる不活性ガス82は例えば窒素ガスである。
【0023】
ガス吸引部40は、ガス吹出部30から吹き出された不活性ガス82を吸引するものであって、ガス吸引管41および排気部42を含む。ガス吸引部40は、ガス吹出部30のガス吹出管31の吹出口から吹き出された不活性ガス82を、ガス吸引管41を介して排気部42により吸引する。ガス吸引管41の吸引口は、ガス吹出管31の吹出口と対向している。
【0024】
ガス量調整部50は、ガス吸引管41の途中に設けられたバルブを含み、このバルブの開度に応じてガス吸引部40におけるガス吸引量を調整する。ガス量調整部は、ガス吹出管31に途中に設けられたバルブの開度に応じてガス吹出部30におけるガス吹出量を調整してもよい。
【0025】
本実施形態に係る表面処理装置1の動作の一例は以下のとおりである。溶液タンク22に容れられていた処理溶液81は、溶液供給管21を経て、回転部60により回転されている処理対象物90の表面に連続的に供給される。処理対象物90の表面における処理溶液81は所定厚の膜となる。
【0026】
電子ビーム照射部10では、真空容器11内に入れられたカソード12に対して高電圧発生部13により負の高電圧が印加されて、カソード12から電子Eが放出される。そのカソード12から放出された電子Eのうち窓14を通過して外部に出たものは、電子ビームとして処理対象物90表面上の処理溶液81に照射される。
【0027】
例えば、カソード12に印加される負の高電圧が100kV〜150kVであるとする。カソード12から発生した電子ビームは、窓14により減速され、また、窓14の外部の雰囲気ガスにより減速されて、処理対象物90表面上の処理溶液81に照射される。この照射時の電子のエネルギは80kV〜140kVとなる。
【0028】
処理対象物90表面の処理溶液81に対して電子ビーム照射部10から電子ビームが照射されると、その処理溶液81は活性化されて、溶液種類に応じたラジカルやイオンが発生する。この活性化した処理溶液81により処理対象物90の表面が処理される。処理対象物90表面の処理溶液81の厚みが100μm程度であると、到達した電子ビームの殆どは処理溶液81により吸収され、処理溶液81は高効率に活性化される。処理対象物90表面の処理溶液81の厚みが50μm程度であると、電子ビーム照射により処理溶液81が活性化されるだけでなく、処理対象物90表面近傍の数十μmの範囲に電子ビームが照射されることによっても表面処理が行われる。
【0029】
ガスタンク32に容れられていた不活性ガス82は、ガス吹出管31を経て、電子ビーム照射部10の窓14に対し略平行に吹き出される。このガス吹出管31の吹出口から吹き出された不活性ガス82は、この吹出口と対向して配置される吸引口を有するガス吸引管41を経て、排気部42により吸引される。
【0030】
このとき、ガス量調整部50により、ガス吸引管41の途中に設けられたバルブの開度に応じてガス吸引部40におけるガス吸引量が調整されて、ガス吹出管31から吹き出された不活性ガス82の殆どがガス吸引管41により吸引されるように設定され、また、他のガスがガス吸引管41により出来る限り吸引されないように設定される。
【0031】
処理対象物90表面上の処理溶液81に電子ビームが照射されると、その処理溶液81が活性化されるだけでなく、その処理溶液81からガスやイオンが発生し、また、雰囲気中の酸素からオゾンが発生する。これらのガス,イオン,オゾンおよび処理溶液81は電子ビーム照射部10の窓14の腐食の原因となる。
【0032】
しかし、ガス吹出部30により窓14に対して不活性ガスが吹き付けられるので、これらのガス,イオン,オゾンおよび処理溶液81が窓に達しないようにされて、窓14の腐食が防止される。また、このガス吹出部30による不活性ガス82の吹き付けにより窓14が冷却される効果もある。
【0033】
また、ガス吹出部30から吹き出された不活性ガス82は、ガス吸引部40により吸引されるので、処理対象物90表面上の処理溶液81に達することが抑制される。これにより、処理対象物90表面における処理溶液81が所定厚で均一に保たれることとなり、表面処理が良好に行われ得る。このように、本実施形態に係る表面処理装置1は、電子ビーム照射部10の窓14を保護するとともに、良好な表面処理結果を得ることができる。
【0034】
さらに、電子ビーム照射部10と処理対象物90との間の距離を短くすることができるので、勝利対象物90表面上の処理溶液81に照射される電子ビームの強度を大きくすることができ、これにより表面処理効率を向上させることができる。
【0035】
(第2実施形態)
【0036】
図2は、第2実施形態に係る表面処理装置2の構成を示す図である。この図に示される表面処理装置2は、処理溶液81により処理対象物90の表面を処理するものであって、電子ビーム照射部10,溶液供給部20,ガス吹出部30A,ガス吸引部40,ガス量調整部50および回転部60を備える。
【0037】
図1に示された第1実施形態に係る表面処理装置1の構成と比較すると、この図2に示される第2実施形態に係る表面処理装置2は、ガス吹出部30に替えてガス吹出部30Aを備える点で相違する。
【0038】
ガス吹出部30Aは、電子ビーム照射部10の窓14に対し略平行に不活性ガス82を吹き出すものであって、ガス吹出管31Aおよびガスタンク32を含む。ガス吹出部30Aは、ガスタンク32に容れられた不活性ガス82を、ガス吹出管31Aを介して電子ビーム照射部10の窓14に対し略平行に吹き出す。ガス吹出管31Aの吹出口付近の部分は、電子ビーム照射部10の下面に接するように設けられている。
【0039】
ガス吹出部30Aのガス吹出管31Aは、電子ビーム照射部10の窓14に対し垂直な方向に積層された複数の吹出口33,34を有する。ガス吹出管31Aの吹出口33,34から不活性ガス82をやや上向きに(窓14に向けて)吹き出すように、吹出口33,34付近の部分の下辺がやや上向きになっているのが好適である。
【0040】
第2実施形態に係る表面処理装置2は、第1実施形態に係る表面処理装置1と同様に動作し同様の効果を奏することができる。加えて、第2実施形態に係る表面処理装置2は、ガス吹出管31Aの複数の吹出口33,34から不活性ガス82を吹き出すことにより、以下のような効果をも奏することができる。
【0041】
第2実施形態では、ガス吹出管31の吹出口33,34からガス吸引管41の吸引口まで複数層の不活性ガス82の流れができる。処理溶液81や雰囲気中の酸素に電子ビームが照射されて生じるガス,イオンおよびオゾンは、窓14から遠い吹出口34から吹き出された不活性ガス82の流れに混入したとしても、窓14に近い吹出口33から吹き出された不活性ガス82の流れには入らない。したがって、より確実に窓14の腐食が防止され得る。
【0042】
(第3実施形態)
【0043】
第3実施形態に係る表面処理装置は、図1に示された第1実施形態に係る表面処理装置1の構成と略同様の構成を有するが、電子ビーム照射部10の窓14が一方向に長い矩形の形状を有していて、ガス吹出管31に替えてガス吹出管31Bを備える点で相違し、また、ガス吸引管41に替えてガス吸引管41Bを備える点で相違する。
【0044】
図3は、第3実施形態に係る表面処理装置に含まれるガス吹出管31Bおよびガス吸引管41Bの断面図である。図3は、ガス吹出管31Bおよびガス吸引管41Bに加えて窓14も示している。また、図4は、第3実施形態に係る表面処理装置に含まれるガス吹出管31Bの斜視図である。なお、説明の便宜のために図3および図4それぞれにおいてxyz直交座標系が示されている。
【0045】
窓14は、電子ビーム照射部10の下面に設けられていて、y方向に長い矩形の形状を有している。この窓14に対して−x側にガス吹出管31Bが設けられ、+x側にガス吸引管41Bが設けられている。ガス吹出管31Bの吹出し付近およびガス吸引管41Bの吸引口付近は、電子ビーム照射部10の下面に接合されている。
【0046】
ガス吹出管31Bは、y方向に広がった吹出口35を有する。吹出口35は、窓14のy方向幅と同程度のy方向幅を有する。吹出口35は、y方向に連続する1つの吹出口であってもよいし、図示のようにy方向に断続的に設けられた複数の吹出口であってもよい。また、ガス吸引管41Bは、y方向に広がった吸引口を有する。この吸引口は、窓14のy方向幅と同程度のy方向幅を有し、或いは、より広いy方向幅を有するのも好適である。
【0047】
ガス吹出管31Bは、吹出口35におけるガス吹出量分布を均一化する手段として、その内部に、y方向に配列された3個の阻止部71、y方向に配列された8個の阻止部72、y方向に配列された15個の阻止部73、および、y方向に配列された15個の仕切部74を含む。
【0048】
3個の阻止部71それぞれのx方向幅は同一である。8個の阻止部72それぞれのx方向幅は同一である。15個の阻止部73それぞれのx方向幅は同一である。15個の仕切部74それぞれのx方向幅は同一である。3個の阻止部71と8個の阻止部72との間にはy方向に連なる空間が存在する。8個の阻止部72と15個の阻止部73との間にはy方向に連なる空間が存在する。15個の阻止部73と15個の仕切部74との間にはy方向に連なる空間が存在する。
【0049】
3個の阻止部71のうち、隣り合う2つの阻止部71の間にはx方向に不活性ガス82の流れを導く空間が存在し、両端の阻止部71の外側にもx方向に不活性ガス82の流れを導く空間が存在する。8個の阻止部72のうち、隣り合う2つの阻止部72の間にはx方向に不活性ガス82の流れを導く空間が存在し、両端の阻止部72の外側にもx方向に不活性ガス82の流れを導く空間が存在する。15個の阻止部73のうち、隣り合う2つの阻止部73の間にはx方向に不活性ガス82の流れを導く空間が存在し、両端の阻止部73の外側にもx方向に不活性ガス82の流れを導く空間が存在する。また、15個の仕切部74のうち隣り合う2つの仕切部74の間が吹出口35となっている。
【0050】
このガス吹出管31Bは、吹出口35におけるガス吹出量分布を均一化する手段として、阻止部71〜73からなるラビリンス構造を有している。すなわち、ガスタンク32から送られて来た不活性ガス82は、3個の阻止部71により4個の流れに分配され、8個の阻止部72により9個の流れに分配され、15個の阻止部73により16個の流れに分配されて、15個の仕切部74により区分される16個の引出口35から吹き出される。これにより、ガス吹出管31Bの吹出口35における不活性ガス82のy方向吹出量分布は均一化され、y方向に長い窓14の全体が保護され得る。
【符号の説明】
【0051】
1,2…表面処理装置、10…電子ビーム照射部、11…真空容器、12…カソード、13…高電圧発生部、14…窓、20…溶液供給部、21…溶液供給管、22…溶液タンク、30,30A…ガス吹出部、31,31A,31B…ガス吹出管、32…ガスタンク、33〜35…吹出口、40…ガス吸引部、41,41B…ガス吸引管、42…排気部、50…ガス量調整部、60…回転部、81…処理溶液、82…不活性ガス、90…処理対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物の表面を処理する装置であって、
処理溶液を前記処理対象物の表面に供給する溶液供給部と、
真空に保たれた内部で電子ビームを発生させ、前記内部から窓を経て外部へ前記電子ビームを出力させ、前記溶液供給部により前記処理対象物の表面に供給された処理溶液に前記電子ビームを照射して前記処理溶液を活性化する電子ビーム照射部と、
前記電子ビーム照射部の前記窓に対し略平行に不活性ガスを吹き出すガス吹出部と、
前記ガス吹出部から吹き出された不活性ガスを吸引するガス吸引部と、
を備えることを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記溶液供給部が、機能水,酸性溶液またはアルカリ性溶液を前記処理溶液として前記処理対象物の表面に供給する、ことを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記ガス吹出部におけるガス吹出量または前記ガス吸引部におけるガス吸引量を調整するガス量調整部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記ガス吹出部が、前記電子ビーム照射部の前記窓に対し垂直な方向に積層された複数の吹出口を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記ガス吹出部が、前記電子ビーム照射部の前記窓に対し略平行な方向に広がった吹出口を有し、その吹出口におけるガス吹出量分布を均一化する手段を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−9527(P2011−9527A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152376(P2009−152376)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】