説明

被加熱体の加熱方法、加熱炉、及びデバイスの製造方法

【課題】 本発明の目的は、被加熱体を減圧下で加熱乾燥するときに、より精度よく温度測定が可能な加熱方法、加熱炉、及びデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】 乾燥装置100に、ヒータ112と、このヒータ112の温度を校正する熱電対113と、被加熱体である基板12を支持する支持部としての第1支持部350と、この基板12を収容可能な槽体としての加熱部110を備えている。この第1支持部350が、第2支持部351と、第3支持部352とを有していて、この第3支持部352の中に熱電対113が備えられていて、基板12と間接的に接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱体の加熱方法、加熱炉、及びデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種の表示装置(電気光学装置)においては、カラー表示を可能にするためにカラーフィルタが設けられている。このカラーフィルタは、例えば、ガラスやプラスチックなどで構成された基板上に、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色のドット状のフィルタエレメントを、いわゆるストライプ配列、デルタ配列、モザイク配列などといった所定の配列パターンで配列させたものである。
【0003】
また、表示装置としては、液晶装置やEL(エレクトロルミネッセンス)装置などの電気光学装置を例として、ガラスやプラスチックなどで構成された基板上に、その光学状態を独立して制御可能な表示ドットを配列させたものがある。この場合、各表示ドットには液晶やEL発光部が設けられる。表示ドットの配列態様としては、例えば、縦横の格子(ドットマトリクス)状に配列させたのものが一般的である。
【0004】
カラー表示可能な表示装置においては、通常、例えば上記のR、G、Bの各色に対応する表示ドット(液晶やEL発光部)が形成され、全色に対応する例えば3個の表示ドットによって一つの画素(ピクセル)が構成される。そして、一つの画素内に含まれる複数の表示ドットの階調をそれぞれ制御することによってカラー表示を行うことが可能になる。
【0005】
例えば特許文献1に開示されているように、これらの表示装置の製造工程においては、感光性樹脂を基板上に塗布し、この感光性樹脂に露光処理及び現像処理を施すことにより、格子状の隔壁(バンク)を形成してから、この隔壁により画成された領域に、ヘッドなどによって吐出された液滴を着弾させ、乾燥させることによって表示要素(すなわち、上記のカラーフィルタのフィルタエレメントやEL発光部の表示ドットなど)を形成する場合がある。この方法では、フォトリソグラフィ法などによって表示要素を各色毎にパターニングする必要がないので、容易に製造することができるという利点がある。そして、基板上に塗布された液状材料の塗布膜を真空加熱乾燥して、膜の厚さを均一にしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−279245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来のカラーフィルタ或いは表示装置(電気光学装置)の製造方法においては、画素領域周辺にバンクと呼ばれる隔壁部を溌液性材料で形成しているのがほとんどであって、このバンク内に液状材料である機能液を配置して、塗布膜が均一になるように、炉内の温度制御をしながら真空度を変化させることができる加熱炉を用いて、機能液を乾燥していた。この加熱炉は、炉内を加熱するとともに、炉内の真空度を上げて(圧力を下げる)いくことができる減圧加熱乾燥法を採用していた。そして、この加熱炉は、ヒータに電気を流して炉内を加熱するもので、炉内の温度を加熱炉内に備えられた熱電対で検出していた。ところが、この熱電対がヒータの近傍に備えられていて、被加熱体とは離れていた。このため、ヒータの設定温度とヒータ近傍にある熱電対温度とはほぼ一致するものの、ヒータの設定温度と被加熱体温度とに違いが生じてしまった。そして、被加熱体を最適な温度条件で乾燥できなくなり、結果的に、機能液が塗布された被加熱体を乾燥して得られる膜の厚さを均一に形成できないことがあった。
【0008】
本発明の目的は、被加熱体を減圧下で加熱乾燥するときに、より精度よく温度測定が可能な加熱方法、加熱炉、及びデバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の加熱炉は、ヒータと、前記ヒータの温度を校正する熱電対と、被加熱体を支持する第1支持部と、前記被加熱体を収容可能な槽体と、を備え、前記第1支持部は、第2支持部と、前記第2支持部に保持された第3支持部とを有しており、前記熱電対が、前記第3支持部に有することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、加熱炉が、ヒータの温度を校正する熱電対と、被加熱体を支持する第1支持部と、被加熱体を収容可能な槽体とを備えていて、第1支持部が、第2支持部と、第2支持部に保持された第3支持部とを有しており、この第3支持部に備えられた熱電対が、被加熱体と接触しているので、被加熱体の温度測定が正確にできる。
【0011】
本発明の加熱炉は、前記第1支持部は、前記槽体内に複数個配置されており、前記複数個の第1支持部のうち少なくとも1つの前記第3支持部に前記熱電対が、備えられていることが望ましい。
【0012】
この発明によれば、熱電対と第1支持部とが、槽体内に複数個配置されており、被加熱体を支持するとともに、少なくとも1個以上の熱電対が配置されているから、被加熱体の温度測定ができる。
【0013】
本発明の加熱炉は、前記第2支持部と前記第3支持部とが、嵌め込み式で装着されていることが望ましい。
【0014】
この発明によれば、第2支持部と前記第3支持部とが、嵌め込み式で装着されているから、取り外しての交換が可能である。第2支持部を交換すれば、被加熱体と第2支持部との熱伝導率を近い値に選択できるから、熱伝導率の違いによる温度測定精度への影響を少なくすることができるので、被加熱体の温度をより正確に測定することができる。
【0015】
本発明の加熱炉は、前記第2支持部の熱伝導率が、前記第3支持部の熱伝導率より低いことが望ましい。
【0016】
この発明によれば、第2支持部の熱伝導率が、第3支持部の熱伝導率より低いから、第3支持部を通して槽体からの熱が第2支持部へ伝わりにくいので、被加熱体の温度を正確に測定することができる。
【0017】
本発明の加熱炉は、前記被加熱体と前記第3支持部とが、略同じ熱伝導率であることが望ましい。
【0018】
この発明によれば、被加熱体と第3支持部とが、略同じ熱伝導率であるから、熱伝導率の違いによる温度測定精度への影響を少なくすることができるので、被加熱体の温度を正確に測定することができる。
【0019】
本発明の加熱炉は、前記第2支持部の熱伝導率が、0.1以上5W/mK以下であることが望ましい。
【0020】
この発明によれば、第2支持部の熱伝導率が、0.1以上5W/mK以下であるから、金属製の槽体より熱伝導率が低い値になるので、槽体に蓄積された熱が第3支持部に伝わりにくくなる。したがって、被加熱体の温度をより正確に測定することができる。
【0021】
本発明の加熱炉は、前記第3支持部の先端形状が、凸曲面形状であることが望ましい。
【0022】
この発明によれば、第3支持部の先端形状が、凸曲面形状であるから、被加熱体を支える部分の接触面積が少なくなるので、被加熱体の損傷を低減できる。しかも、熱電対の支持は、被加熱体に間接的に接触している構造なので、槽体内に発生したガスなどの影響を受けにくくなるので、熱電対が損傷することもない。
【0023】
本発明の支持部は、被加熱体を支持する支持部であって、前記支持部としての第1支持部は、第2支持部と、前記第2支持部に保持された第3支持部と、を備え、前記第3支持部が、ヒータの温度を校正する熱電対を備えていることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、第1支持部が、第2支持部とこの第2支持部に保持された第3支持部とを備えていて、この第3支持部がヒータの温度を校正する熱電対を備えているから、被加熱体に近い所に熱電対があるので、被加熱体の温度を正確に測定することができる。しかも、第2支持部と第3支持部とがあって、被加熱体の熱伝導率にあわせて第3支持部を交換すれば精度のよい温度測定ができる。また、被加熱体の熱伝導率(材質)が変わっても、第3支持部を交換すればよいので簡単である。
【0025】
本発明の電気光学装置の製造方法は、前述の加熱炉を使用して電気光学装置を製造する製造方法であって、前記第3支持部に有する熱電対を用いて前記ヒータの温度を校正する工程と、前記被加熱体を加熱する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、第3支持部に有する熱電対を用いてヒータの温度を校正する工程と、被加熱体を加熱する工程とを備えているから、被加熱体に近い所にある熱電対によって校正された温度を加えることができるので、より温度精度が高い。また、温度精度が高いので、安定した品質の電気光学装置を製造できる。
【0027】
本発明の電気光学装置の製造方法は、前記ヒータの温度を校正する工程では、前記熱電対と前記第1支持部とが、前記槽体内に複数個配置されており、前記複数個の第1支持部のうち少なくとも1つの前記第3支持部に前記熱電対が、備えられていることが望ましい。
【0028】
この発明によれば、ヒータの温度を校正する工程では、熱電対と支持部とが槽体内に複数個配置されており、熱電対が、少なくとも1個以上配置されているから、熱電対によって校正された温度を加えることができるので、精度が高い。温度精度が高いので、安定した品質の電気光学装置を製造できる。
【0029】
本発明の電気光学装置の製造方法は、前記ヒータの温度を校正する工程では、前記第2支持部の熱伝導率が、前記第3支持部の熱伝導率より低いことが望ましい。
【0030】
この発明によれば、ヒータの温度を校正する工程では、第2支持部の熱伝導率が、第3支持部の熱伝導率より低いから、槽体からの熱が第3支持部へ伝わりにくいので、被加熱体の温度を正確に測定することができる。したがって、熱電対によって校正された正確な温度を加えることができるので、精度が高い。そして、温度精度が高いので、安定した品質の電気光学装置を製造できる。
【0031】
本発明の電気光学装置の製造方法は、前記ヒータの温度を校正する工程では、前記被加熱体と前記第3支持部とが、略同じ熱伝導率であることが望ましい。
【0032】
この発明によれば、ヒータの温度を校正する工程では、被加熱体と第3支持部とが、略同じ熱伝導率なので、熱伝導率の違いによる温度測定精度への影響を少なくすることができるので、被加熱体の温度を正確に測定することができる。したがって、熱電対によって校正された正確な温度を加えることができるので、精度が高い。そして、温度精度が高いので、安定した品質の電気光学装置を製造できる。
【0033】
本発明の電気光学装置の製造方法は、前記ヒータの温度を校正する工程では、前記第2支持部の熱伝導率が、0.1以上5W/mK以下であることが望ましい。
【0034】
この発明によれば、ヒータの温度を校正する工程では、前記第2支持部の熱伝導率が、0.1以上5W/mK以下であるから、金属製の槽体より熱伝導率が低い値なので、槽体に蓄積された熱が、第1支持部に伝わりにくくなるので、被加熱体の温度をより正確に測定することができる。したがって、熱電対によって校正された正確な温度を加えることができるので、精度が高い。そして、温度精度が高いので、安定した品質の電気光学装置を製造できる。
【0035】
本発明の電気光学装置の製造方法は、前記ヒータの温度を校正する工程では、前記第3支持部が、前記被加熱体に接触しており、前記第3支持部の先端形状が、凸曲面形状であることが望ましい。
【0036】
この発明によれば、ヒータの温度を校正する工程では、第3支持部が、被加熱体に接触しており、この第3支持部の先端が、凸曲面形状であるから、被加熱体を支える部分の接触面積が少なくなるので、被加熱体の損傷を低減できる。しかも、熱電対の支持は、被加熱体に間接的に接触している構造なので、槽体内に発生したガスなどの影響を受けにくくなるので、熱電対が損傷することもない。そして、第3支持部の長手方向中心位置に熱電対が挿入されていれば、位置精度がよくなるから、より正確な温度測定ができるので、熱電対によって校正されたより正確な温度を加えることができる。そして、温度精度が高いので、安定した品質の電気光学装置を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の被加熱体の加熱方法、加熱炉、及びデバイスの製造方法について実施形態を挙げ、添付図面に沿って詳細に説明する。なお、被加熱体としては基体上に液滴吐出方法によって機能液が塗布された基板を例に挙げて説明する。本発明の特徴的な構成及び方法について説明する前に、まず、液滴吐出方法で用いられる基体、液滴吐出法、液滴吐出装置、EL発光パネルの構造及び製造方法、カラーフィルタ基板の構造及び製造方法、について順次説明する。
<基体について>
【0038】
液滴吐出による表示装置の製造方法で使用される基体としては、ガラス、石英ガラス、プラスチックなど各種のものを用いることができる。
<液滴吐出法について>
【0039】
液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。ここで、帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0040】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液体材料の一滴の量は例えば1〜300ナノグラムである。
【0041】
<液滴吐出装置の構成>
次に、液滴吐出装置の構成について説明する。図1は、液滴吐出装置IJの全体構成を示す概略斜視図。図2は、液滴吐出装置の主要部を部分的に示す部分斜視図である。
【0042】
液滴吐出装置IJは、図1に示すように、液滴吐出ヘッドの一例としてヘッド22を備えたヘッドユニット26と、ヘッド22の位置を制御するヘッド位置制御装置17と、基板12の位置を制御する基板位置制御装置18と、ヘッド22を基板12に対して走査方向Xに走査移動させる走査駆動手段としての走査駆動装置19と、ヘッド22を基板12に対して走査方向と交差(直交)するY方向に送る送り駆動装置21と、基板12を液滴吐出装置IJ内の所定の作業位置へ供給する基板供給装置23と、この液滴吐出装置IJの全般の制御を司るコントロール装置24とを有する。
【0043】
上記のヘッド位置制御装置17、基板位置制御装置18、走査駆動装置19、送り駆動装置21の各装置は、ベース9の上に設置される。また、これらの各装置は、必要に応じてカバー15によって覆われる。
【0044】
図3は、ヘッドを示す図であり、同図(a)は概略斜視図、同図(b)は、ノズルの配列を示す図である。ヘッド22は、例えば、図3(a)に示すように、複数のノズル27が配列されてなるノズル列28を有する。ノズル27の数は例えば180であり、ノズル27の孔径は例えば28μmであり、ノズル27のピッチは例えば141μmである(図3(b)参照)。図3(a)に示す基準方向Sは、ヘッド22の標準の走査方向を示し、配列方向Tはノズル列28におけるノズル27の配列方向を示す。
【0045】
図4は、ヘッドの主要部の構成を示し、同図(a)は、概略斜視図、同図(b)は、断面図である。ヘッド22は、ステンレス等で構成されるノズルプレート29と、これに対向する振動板31と、これらを互いに接合する複数の仕切り部材32とを有する。このノズルプレート29と振動板31との間には、仕切り部材32によって複数の液材料室33と液溜り34とが形成される。これらの液材料室33と液溜り34とは通路38を介して互いに連通している。
【0046】
振動板31には、液材料供給孔36が形成されている。この液材料供給孔36には、材料供給装置37が接続される。この材料供給装置37は、R、G、Bのうちの一色、例えばR色のフィルタエレメント材料などで構成される液材料Mを液材料供給孔36へ供給する。このように供給された液材料Mは、液溜り34に充満し、さらに通路38を通って液材料室33に充満する。
【0047】
ノズルプレート29には、液材料室33から液材料Mをジェット状に噴出するためのノズル27が設けられている。また、振動板31の液材料室33に臨む面の裏面には、この液材料室33に対応させて液材料加圧体39が取り付けられている。この液材料加圧体39は、図4(b)に示すように、圧電素子41並びにこれを挟持する一対の電極42a及び42bを有する。圧電素子41は、電極42a及び42bへの通電によって矢印Cで示す外側へ突出するように撓み変形し、これにより液材料室33の容積が増大する。すると、増大した容積分に相当する液材料Mが液溜り34から通路38を通って液材料室33へ流入する。
【0048】
その後、圧電素子41への通電を解除すると、この圧電素子41と振動板31とは共に元の形状に戻り、これにより、液材料室33も元の容積に戻るため、液材料室33の内部にある液材料Mの圧力が上昇し、ノズル27から液材料Mが液滴8となって噴出する。なお、ノズル27の周辺部には、液滴8の飛行曲りやノズル27の孔詰まりなどを防止するために、例えば、Ni−テトラフルオロエチレン共析メッキ層からなる撥液材料層43が設けられる。
【0049】
次に、図2を参照して、上記のヘッド22の周囲に配置された、ヘッド位置制御装置17、基板位置制御装置18、走査駆動装置19、送り駆動装置21、及び、その他の手段について説明する。図2に示すように、ヘッド位置制御装置17は、ヘッドユニット26に取り付けられたヘッド22を平面(水平面)内にて回転させるαモータ44と、ヘッド22を送り方向Yと平行な軸線周りに揺動回転させるβモータ46と、ヘッド22を走査方向Xと平行な軸線周りに揺動回転させるγモータ47と、ヘッド22を上下方向へ平行移動させるZモータ48とを有する。
【0050】
また、基板位置制御装置18は、基板12を載せるテーブル49と、このテーブル49を平面(水平面)内にて回転させるθモータ51とを有する。また、走査駆動装置19は、走査方向Xへ伸びるXガイドレール52と、例えばパルス駆動されるリニアモータを内蔵したXスライダ53とを有する。このXスライダ53は、例えば内蔵するリニアモータの稼動により、Xガイドレール52に沿って走査方向Xへ平行移動する。
【0051】
さらに、送り駆動装置21は、送り方向Yへ伸びるYガイドレール54と、例えばパルス駆動されるリニアモータを内蔵したYスライダ56とを有する。Yスライダ56は、例えば内蔵するリニアモータの稼動により、Yガイドレール54に沿って送り方向Yへ平行移動する。
【0052】
Xスライダ53やYスライダ56内においてパルス駆動されるリニアモータは、該モータに供給するパルス信号によって出力軸の回転角度制御を精密に行うことができる。したがって、Xスライダ53に支持されたヘッド22の走査方向X上の位置やテーブル49の送り方向Y上の位置などを高精度に制御できる。なお、ヘッド22やテーブル49の位置制御はパルスモータを用いた位置制御に限られず、サーボモータを用いたフィードバック制御やその他任意の方法によって実現することができる。
【0053】
上記テーブル49には、基板12の平面位置を規制する位置決めピン50a,50bが設けられている。基板12は、後述する基板供給装置23によって位置決めピン50a,50bに走査方向X側及び送り方向Y側の端面を当接させた状態で、位置決め保持される。テーブル49には、このような位置決め状態で保持された基板12を固定するための、例えば空気吸引(真空吸着)などの、公知の固定手段を設けることが望ましい。
【0054】
図2に示すように、液滴吐出装置IJにおいて、テーブル49の上方に複数組(図示例では2組)の撮像装置91R,91L及び92R,92Lが配置されている。ここで、撮像装置91R,91L及び92R,92Lは、図2において鏡筒のみを示し、他の部分及びその支持構造は省略してある。これらの観察手段である撮像装置としては、CCDカメラ等を用いることができる。なお、図1には、これらの撮像装置について図示を省略してある。
【0055】
図1に示すように、基板供給装置23は、基板12を収容する基板収容部57と、基板12を搬送するロボットなどの基板移載機構58とを有する。基板移載機構58は、基台59と、基台59に対して昇降移動する昇降軸61と、昇降軸61を中心として回転する第1アーム62と、第1アーム62に対して回転する第2アーム63と、第2アーム63の先端下面に設けられた吸着パッド64とを有する。この吸着パッド64は空気吸引(真空吸着)などによって基板12を吸着保持することができるように構成されている。
【0056】
また、ヘッド22の走査軌跡下であって、送り駆動装置21の一方の脇位置に、キャッピング装置76及びクリーニング装置77が配設されている。さらに、送り駆動装置21の他方の脇位置には電子天秤78が設置されている。ここで、キャッピング装置76はヘッド22が待機状態にあるときにノズル27(図3参照)の乾燥を防止するための装置である。クリーニング装置77は、ヘッド22を洗浄するための装置である。電子天秤78は、ヘッド22内の個々のノズル27から吐出される材料の液滴8の重量をノズル毎に測定する装置である。さらに、ヘッド22の近傍には、ヘッド22と一体に移動するヘッド用カメラ81が取り付けられている。
【0057】
また、コントロール装置24は、プロセッサを収容したコンピュータ本体部66と、キーボード等の入力装置67と、CRT等の表示装置68とを有する。コンピュータ本体部66には、図5に示すCPU(中央処理ユニット)69と、各種情報を記憶するメモリである情報記録媒体71とを備えている。
【0058】
図5は、液滴吐出装置IJの制御系のブロック図である。ヘッド位置制御装置17、基板位置制御装置18、走査駆動装置19、送り駆動装置21、及び、ヘッド22内の圧電素子41(図4(b)参照)を駆動するヘッド駆動回路72の各機器は、図5に示すように、入出力インターフェイス73及びバス74を介してCPU69に接続されている。また、基板供給装置23、入力装置67、表示装置68、キャッピング装置76、クリーニング装置77及び電子天秤78も、上記と同様に入出力インターフェイス73及びバス74を介してCPU69に接続されている。
【0059】
また、メモリ71は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などといった半導体メモリや、ハードディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MD(MiniDisc)、などのディスク型記録媒体で、これらを用いてデータを読み取る外部記憶装置などを含む概念である。機能的には、液滴吐出装置IJの動作の制御手順が記述されたプログラムソフトを記憶する記憶領域や、ヘッド22による材料の基板12内における吐出位置を座標データとして記憶するための記憶領域や、図2に示す送り方向Yへの基板12の送り移動量を記憶するための記憶領域や、CPU69のためのワークエリアやテンポラリファイルなどとして機能する領域や、その他各種の記憶領域が設定される。
【0060】
CPU69は、情報記憶媒体71であるメモリ内に記憶されたプログラムソフトに従って、基板12の表面の所定位置に、材料を吐出するための制御を行うものである。具体的な機能実現部としては、図5に示すように、クリーニング処理を実現するための演算を行うクリーニング演算部151、キャッピング処理を実現するためのキャッピング演算部152、電子天秤78を用いた重量測定を実現するための演算を行う重量測定演算部153、及び、液滴吐出によって材料を基板12の表面上に着弾させ、所定のパターンにて描画するための描画演算部154を有する。
【0061】
上記描画演算部154には、ヘッド22を描画のための初期位置へ設置するための描画開始位置演算部155、ヘッド22を走査方向Xへ所定の速度で走査移動させるための制御を演算する走査制御演算部156、基板12を送り方向Yへ所定の送り移動量だけずらすための制御を演算する送り制御演算部157、ヘッド22内の複数のノズル27のうちのいずれを作動させて材料を吐出するかを制御するための演算を行うノズル吐出制御演算部158などといった各種の機能演算部を有する。
【0062】
なお、上述の各機能を、CPU69を用いるプログラムソフトによって実現しているが、上述の各機能を、CPUを用いない電子回路によって実現できる場合には、そのような電子回路を用いても構わない。
【0063】
次に、液滴吐出装置IJの動作を、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。オペレータによる電源投入によって液滴吐出装置IJが作動すると、最初において初期設定が実現される(ステップS1)。具体的には、ヘッドユニット26や基板供給装置23やコントロール装置24などが予め決められた初期状態にセットされる。
【0064】
次に、重量測定タイミングが到来(ステップS2)すると、図2に示すヘッドユニット26を走査駆動装置19によって、図1に示す電子天秤78の所まで移動させる(ステップS3)。そして、ノズル27から吐出される液材料の量を、電子天秤78を用いて測定する(ステップS4)。さらに、このように測定されたノズル27の液材料吐出特性に合わせて、各ノズル27の圧電素子41に印加する電圧を調節する(ステップS5)。
【0065】
この後、クリーニングタイミングが到来(ステップS6)すれば、ヘッドユニット26を走査駆動装置19によってクリーニング装置77の所まで移動させ(ステップS7)、そのクリーニング装置77によってヘッド22をクリーニングする(ステップS8)。
【0066】
重量測定タイミングやクリーニングタイミングが到来しない場合、或いは、重量測定やクリーニングが終了した場合には、ステップS9において図1に示す基板供給装置23を作動させて基板12をテーブル49へ供給する。具体的には、基板収容部57内の基板12を吸着パッド64によって吸着保持し、昇降軸61、第1アーム62及び第2アーム63を移動させて基板12をテーブル49まで搬送し、さらにテーブル49の適所に予め設けてある位置決めピン50a,50b(図2参照)に押し付ける。
【0067】
次に、図2に示すように、撮像装置91R,91Lによって基板12を観察しながら、θモータ51の出力軸を微小角度単位で回転させることにより、テーブル49を平面(水平面)内にて回転させ、基板12を位置決めする(ステップS10)。より具体的には、基板12の左右両端にそれぞれ形成されたアライメントマークを、図2に示す上記一対の撮像装置91R,91L又は92R,92Lによってそれぞれ撮影し、これらのアライメントマークの撮像位置によって基板12の平面姿勢を演算して求め、この平面姿勢に応じてテーブル49を回転させて角度θを調整する。
【0068】
この後、図1に示すヘッド用カメラ81によって基板12を観察しながら、ヘッド22によって描画を開始する位置を演算によって決定する(ステップS11)。そして、走査駆動装置19及び送り駆動装置21を適宜に作動させて、ヘッド22を描画開始位置へ移動させる(ステップS12)。
【0069】
このとき、ヘッド22は、図3に示す基準方向Sが走査方向Xに合致した姿勢となるようにしてもよく、或いは、基準方向Sが所定角度で走査方向に対して傾斜する姿勢となるように構成してもよい。この所定角度は、ノズル27のピッチと、基板12の表面上において材料を着弾させるべき位置のピッチとが異なる場合が多く、ヘッド22を走査方向Xへ移動させるときに、配列方向Tに配列されたノズル27のピッチの送り方向Yの寸法成分が基板12の送り方向Yの着弾位置のピッチと幾何学的に等しくなるようにするための措置である。
【0070】
図6に示すステップS12でヘッド22が描画開始位置に置かれると、ヘッド22は走査方向Xへ一定の速度で直線的に走査移動される(ステップS13)。この走査中において、ヘッド22のノズル27からインクの液滴が基板12の表面上へ連続的に吐出される。
【0071】
なお、インクの液滴の吐出量は、一度の走査によってヘッド22がカバーすることのできる吐出範囲において全量が吐出されるように設定されていてもよいが、例えば、一度の走査によって本来吐出されるべき量の数分の一(例えば4分の一)の材料を吐出するように構成し、ヘッド22を複数回走査する場合に、その走査範囲が送り方向Yに相互に部分的に重なるように設定し、全ての領域において数回(例えば4回)材料の吐出が行われるように構成してもよい。
【0072】
ヘッド22は、基板12に対する1ライン分の走査が終了(ステップS14)すると、反転移動して初期位置へと復帰し(ステップS15)、送り方向Yに所定量(設定された送り移動量だけ)移動する(ステップS16)。その度、ステップS13で再び走査され、材料が吐出され、これ以降、上記の動作を繰り返し行って、複数ラインに亘って走査が行われる。ここで、1ライン分の走査が終了すると、そのまま送り方向Yに所定量移動し、反転して、逆向きに走査されるというように、交互に走査方向を反転させるように駆動してもよい。
【0073】
ここで、後述するように、基板12内に複数のカラーフィルタが形成される場合について説明すると、基板12内のカラーフィルタ領域一列分について全て材料の吐出が完了する(ステップS17)と、ヘッド22は所定量送り方向Yに移動し、再び上記と同様にステップS13〜ステップS16までの動作を繰り返す。そして、最終的に基板12上の全列のカラーフィルタ領域に対して材料の吐出が終了する(ステップS18)と、ステップS20において基板供給装置23又は別の搬出機構によって、処理後の基板12が外部へ排出される。その後、オペレータから作業終了の指示がない限り、上記のように基板12の供給と、材料吐出作業を繰り返し行う。ステップS18においてCF全列終了しなかったときには、次列CF域へ移動して、(ステップS19)再びステップS13〜ステップS18までの動作を繰り返す。
【0074】
オペレータから作業終了の指示がある(ステップS21)と、CPU69は図1においてヘッド22をキャッピング装置76の所まで搬送し、そのキャッピング装置76によってヘッド22に対してキャッピング処理を施す(ステップS22)。
【0075】
以上説明した液滴吐出装置は、本発明に係る配置方法や製造方法において用いることができるものであるが、本発明はこれに限られることはなく、液滴を吐出し、所定の着弾予定位置に着弾させることができるものであれば、如何なる装置を用いることも可能である。
【0076】
なお、本発明においては、上記液滴吐出装置のヘッドなどの液滴吐出ヘッドを、上記領域の長手方向(例えば、実質的に矩形状の領域若しくは開口部であればその長辺が伸びる方向、実質的に帯状の領域若しくは開口部であればその伸びる方向)に走査して複数の液滴を順次吐出させていくことが好ましい。
【0077】
<EL発光パネルの構造及びその製造方法>
次に、図7及び図8を参照して、EL発光パネル252及びその製造方法について説明する。ここで、図7(a)〜(h)は、EL発光パネル252の製造工程を示す工程断面図であり、図8は、EL発光パネル252の製造工程の手順を示す概略フローチャートである。
【0078】
図7(a)に示すように、EL発光パネル252を製造する場合には、透光性のガラスやプラスチック等で構成された基板12上に、第1電極201を形成する。EL発光パネル252がパッシブマトリクス型である場合には第1電極201は帯状に形成され、また、基板12上に図示しないTFD素子やTFT素子といった能動素子を形成してなるアクティブマトリクス型である場合には第1電極201は表示ドット毎に独立して形成される。これらの構造の形成方法としては、例えばフォトリソグラフィ法、真空蒸着法、スパッタリング法、パイロゾル法などを用いることができる。第1電極201の材料としてはITO(Indium−Tin・Oxide)、酸化スズ、酸化インジウムと酸化亜鉛との複合酸化物などを用いることができる。
【0079】
次に、図7(b)に示すように、第1電極201上に、上記カラーフィルタ基板の場合と同様に放射線感応性素材6A(ポジ型)を同様の方法で塗布する(図8のステップS31)。そして、図7(c)に示すように、上記と同様の方法で、放射線照射(露光)処理(図8のステップS32)及び現像処理(図8のステップS33)を行い、隔壁(バンク)6Bを形成する。
【0080】
このバンク6Bは、格子状に形成され、各表示ドットに形成された第1電極201の間を隔てるように、すなわち、表示ドットに対応するEL発光部形成領域7が構成されるように、形成される。また、上記カラーフィルタ基板の場合と同様に、遮光機能をも有することが好ましい。この場合には、コントラストの向上、発光材料の混色の防止、画素と画素との間からの光漏れなどを防止することができる。隔壁6Bの材料としては、基本的に上記カラーフィルタ基板の隔壁に採用された各種の素材を用いることができる。ただし、この場合には特に、後述するEL発光材料の溶媒に対して耐久性を有するものであることが望ましく、さらに、フロロカーボンガスプラズマ処理によりテトラフルオロエチレン化できること、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、感光性ポリイミドなどといった有機材料が好ましい。
【0081】
次に、機能性液状体としての正孔注入層用材料202Aを塗布する直前に、基板12に酸素ガスとフロロカーボンガスプラズマの連続プラズマ処理を行う。これにより、ポリイミド表面は撥水化され、ITO表面は親水化され、液滴を微細にパターニングするための基板側の濡れ性の制御ができる。プラズマを発生する装置としては、真空中でプラズマを発生する装置でも、大気中でプラズマを発生する装置でも同様に用いることができる。また、このプロセスとは別に、或いは、このプロセスの代りに、上記隔壁6Bに200℃程度にてベーク(焼成)処理を施す(図8のステップS34)。これによって、隔壁6Cが形成される。
【0082】
次に、図7(d)に示すように、正孔注入層用材料202Aを液滴8の形で吐出し、領域7に着弾させる(図8のステップS35)。この正孔注入層用材料202Aは、正孔注入層としての素材を溶媒などによって液状化したものである。
【0083】
次に、図7(e)に示すように、ベーク処理として真空(1〜0.01Pa)中、60℃、15分という条件で、発光層用材料と相溶しない正孔注入層202を形成する(図8のステップS36)。なお、上記条件では、正孔注入層202の膜厚は40nmであった。
【0084】
次に、図7(f)に示すように、各領域7内の正孔注入層202の上に、機能性液状体であるEL発光材料としてのR発光層用材料、G発光層用材料、B発光層用材料を上記と同様に液滴として導入する(図8のステップS37)。そして、これら発光層用材料の塗布後、ベーク処理として、真空(1〜0.01Pa)中、60℃、50分などという条件で溶媒を除去してR色発光層203R、G色発光層203G、B色発光層203Bを形成した(図8のステップS38)。熱処理により形成された発光層は溶媒に不溶である。なお、上記条件により形成されたR色発光層203R、G色発光層203G、B色発光層203Bの膜厚は50nmであった。
【0085】
なお、発光層を形成する前に正孔注入層202に酸素ガスとフロロカーボンガスプラズマの連続プラズマ処理を行っても良い。これにより、正孔注入層202上にフッ素化物層が形成され、イオン化ポテンシャルが高くなることにより正孔注入効率が増し、発光効率の高い有機EL装置を提供できる。
【0086】
図7(g)に示すように、B色発光層203Bを重ねて配置することにより、R、G、Bの3原色を形成するのみならず、R色発光層203RおよびG色発光層203Gとバンク6Cとの段差を埋めて平坦化することができる。これにより、上下電極間のショートを確実に防ぐことができる。一方、B色発光層203Bの膜厚を調整することで、B色発光層203BはR色発光層203RおよびG色発光層203Gとの積層構造において、電子注入輸送層として作用してB色には発光しない。以上のようなB色発光層203Bの形成方法としては、例えば湿式法として一般的なスピンコート法を採用することもできるし、あるいは、R色発光層203RおよびG色発光層203Gの形成法と同様の方法を採用することもできる。
【0087】
上記のR色発光層203R,G色発光層203G及びB色発光層203Bの配列態様としては、必要とされる表示性能に応じて、ストライプ配列、デルタ配列、モザイク配列などの公知のパターンを適宜用いることができる。
【0088】
次に、上記のように各表示ドットに正孔注入層202、及び、R色発光層203R,G色発光層203G又はB色発光層203Bが形成されたEL発光パネル252について、目視或いは顕微鏡等による観察、或いは、画像処理などによる検査を行う(図8のステップS39)。そして、この検査によって各表示ドット内のEL発光部(正孔注入層202と、R色発光層203R,G色発光層203G又はB色発光層203Bとの積層体によって構成される。)に不良(ドット抜け、積層構造の不良、発光部の材料の過多、塵埃等の異物の混入など)が発見された場合には、プロセスから排除される。
【0089】
図7(h)に示すように、この検査で不良が発見されない場合には、対向電極213を形成する(図8のステップS40)。対向電極213は、それが面電極である場合には、例えば、Mg、Ag、Al、Liなどを材料として、蒸着法、スパッタ法などといった成膜法を用いて形成できる。また、対向電極213がストライプ状電極である場合には、成膜された電極層をフォトリソグラフィ法などといったパターニング手法を用いて形成できる。最後に、図7(h)に示すように、対向電極213の上に保護層214が適宜の材料(樹脂モールド材、無機絶縁膜など)によって形成される(図8のステップS41)ことにより、目標とするEL発光パネル252が製造される。
【0090】
<カラーフィルタ基板の構造及びその製造方法>
図9(a)〜(f)は、カラーフィルタ基板の製造工程を示す工程断面図であり、図10は、カラーフィルタ基板の製造工程の手順を示す概略フローチャートである。
【0091】
図9(a)に示すように、透光性を有するガラスやプラスチック等で構成された基板12の表面上に、スピンコーティング(回転塗布)、流延塗布、ロール塗布などの種々の方法によって放射線感応性素材6Aを塗布する(図10に示すステップS51)。この放射線感応性素材6Aとしては、樹脂組成物であることが好ましい。塗布後における上記放射線感応性素材6Aの厚さは、通常0.1〜10μmであり、好ましくは0.5〜3.0μmである。
【0092】
この樹脂組成物は、例えば、(i)バインダー樹脂、多官能性単量体、光重合開始剤等を含有する、放射線の照射により硬化する放射線感応性樹脂組成物や、(ii)バインダー樹脂、放射線の照射により酸を発生する化合物、放射線の照射により発生した酸の作用により架橋し得る架橋性化合物等を含有する、放射線の照射により硬化する放射線感応性樹脂組成物などを用いることができる。これらの樹脂組成物は、通常、その使用に際して溶媒を混合して液状組成物として調製されるが、この溶媒は、高沸点溶媒でも低沸点溶媒でもよい。放射線感応性素材6Aとしては、特開平10−86456号公報に記載されているような、(a)ヘキサフルオロプロピレンと不飽和カルボン酸(無水物)と他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体、(b)放射線の照射により酸を発生する化合物、(c)放射線の照射により発生した酸の作用により架橋しうる架橋性化合物、(d)前記(a)成分以外の含フッ素有機化合物、並びに、(e)前記(a)〜(d)成分を溶解しうる溶媒、を含有する組成物であることが好ましい。
【0093】
次に、放射線感応性素材6Aに所定のパターンマスクを介して放射線を照射(露光)する(図10のステップS52)。なお、放射線とは、可視光、紫外線、X線、電子線などが含まれるが、波長が190〜450nmの範囲にある放射線(光)が好ましい。
【0094】
次に、放射線感応性素材6Aを現像する(図10のステップS53)ことによって、図9(b)に示す隔壁(バンク)6Bを形成する。この隔壁6Bは、上記パターンマスクに対応した形状(ネガパターン)に構成される。隔壁6Bの形状としては、例えば、方形状のフィルタエレメント形成領域7を平面上において縦横に配列させることのできるように画成する格子状であることが好ましい。なお、放射線感応性素材6Aを現像するのに用いられる現像液としては、アルカリ現像液が用いられる。このアルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硅素ナトリウム、メタ硅素ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン等の水溶液が好ましい。このアルカリ現像液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤等を適量添加することもできる。また、アルカリ現像液による現像後は、通常、水洗が行われる。
【0095】
次に、図9(c)に示すように、上記隔壁6Bは、例えば200℃程度にてベーク(焼成)されて隔壁6Cとなる(図10のステップS54)。この焼成温度は、上記の放射線感応性素材6Aに応じて適宜調整される。また、ベーク処理を要しない場合もあり得る。なお、本実施形態では、隔壁6Cは遮光性の素材で構成されているために、各領域7を画成する(区画する)文字通りの隔壁としての機能と、領域7以外の部分を遮光する遮光層としての機能とを併せ持つものとなっている。もっとも、隔壁としての機能のみを有するように構成しても構わない。この場合、隔壁とは別に、金属等で構成される遮光層を別途形成してもよい。
【0096】
次に、上記のようにして形成された隔壁6Cによって画成される各領域7に、アクリル樹脂等の基材に着色剤(顔料、染料など)を混入したフィルタエレメント材料13(図9の例では13R(赤の着色材)、13G(緑の着色材)、13B(青の着色材))を導入する。フィルタエレメント材料13を各領域7に導入する方法としては、フィルタエレメント材料13を、溶媒などを混合することによって液状材料(機能液)として形成し、この機能液を上記領域7に導入する。より具体的には、本実施形態では、後述する液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出によって機能液を液滴8の形態で領域7内に着弾させることによって材料の導入を行っている。
【0097】
上記のフィルタエレメント材料13は、機能液として領域7内に導入され、その後に、乾燥若しくは低温(例えば60℃)での焼成によるプレベーク(仮焼成)を行うことによって、仮固化若しくは仮硬化される。例えば、フィルタエレメント材料13Rの導入を行い(図9(c)及び図10のステップS55))、その後に、フィルタエレメント材料13Rのプレベークを行ってフィルタエレメント3Rを形成し(図10のステップS56)、次に、フィルタエレメント材料13Gの導入を行い(図9(d)及び図10のステップS57)、フィルタエレメント材料13Gのプレベークを行ってフィルタエレメント3Gを形成し(図10のステップS58)、さらに、フィルタエレメント材料13Bの導入を行い(図9(e)及び図10のステップS59)、しかる後に、フィルタエレメント材料13Bのプレベークを行ってフィルタエレメント3Bを形成する(図9(f)及び図10のステップS60)。このようにして、全ての色のフィルタエレメント材料13が各領域7に導入され、仮固化若しくは仮硬化された表示要素であるフィルタエレメント3(3R,3G,3B)が形成されることにより、表示素材(カラーフィルタ基板CF)が形成される。
【0098】
次に、上記のようにして構成された表示素材であるカラーフィルタ基板CFを検査する(図10のステップS61)。この検査は、例えば、肉眼若しくは顕微鏡等で、上記隔壁6C及び表示要素であるフィルタエレメント3を観察する。この場合、カラーフィルタ基板CFを撮影し、その撮影画像に基づいて自動的に検査を行っても構わない。この検査によって、表示要素であるフィルタエレメント3に欠陥が見つかった場合には、そのカラーフィルタ基板CFを除材し、基体再生工程に移行させる。
【0099】
ここで、フィルタエレメント3の欠陥とは、フィルタエレメント3が欠如している場合や(いわゆるドット抜け)、フィルタエレメント3が形成されているが、領域7内に配置された材料の量(体積)が多すぎたり少なすぎたりしている場合や、フィルタエレメント3が形成されているが、塵埃等の異物が混入していたり付着していたりする場合などである。
【0100】
上記検査において表示素材に欠陥が発見されなかった場合には、例えば200℃程度の温度でベーク(焼成)処理を行い、カラーフィルタ基板CFのフィルタエレメント3(3R、3G、3B)を完全に固化若しくは硬化させる(図10のステップS62)。欠陥が発見された場合は、除材される。このベーク処理の温度はフィルタエレメント材料13の組成等によって適宜に決定できる。また、特に高温に加熱することなく、単に通常とは異なる雰囲気(窒素ガス中や乾燥空気中等)などで乾燥若しくはエージングさせるだけでもよい。最後に、図9(f)に示すように、上記フィルタエレメント3の上に透明な保護層14が形成される。
(実施形態)
【0101】
次に、以上説明したEL発光パネルや、カラーフィルタ基板の製造工程において適用可能な本発明のベーク処理に関する要部について詳細に説明する。図11は、乾燥装置100の全体構成を示す概略図である。同図(a)は、概略平面図であり、同図(b)は、概略断面図である。
【0102】
図11(a)(b)に示すように、乾燥装置100は、ヒータ112を有する槽体(加熱炉)としての加熱部110と、基板12を搬送可能な基板供給装置130と、乾燥装置100を操作するための操作パネル140とで構成されている。そして、基板供給装置130には、基板12を上下方向(Y2方向)に送るための空圧シリンダ133と、基板12を左右方向(X2方向)に送って、加熱部110に設けられた収容室119の中に基板12を収容するための図示しない空圧シリンダとを有する。また、X2方向にスライドできるようにリニアガイド136がある。
【0103】
基板供給装置130は、基板12が配置された軸132とテーブル131とが接続されている。そして、空圧シリンダ133が、テーブル131に係合されているとともに、架台135上に固定されている。
【0104】
加熱部110は、その扉114を開くことで、基板供給装置130から送られてきた基板12を収容室119の中に収容できる。収容室119の中には、基板12を載せるための台111が配置されている。そして、この収容室119には、基板12の上に複数のヒータ112が配置されている。このヒータ112の通電をONにすることによって、収容室119内と基板12とが加熱される。また、基板12の近傍には、収容室119内の温度を監視するための熱電対113が、配置されている。
【0105】
収容室119内の真空度を確保するためには、減圧ポンプ116を作動させて収容室119内を大気圧から減圧していく。この減圧ポンプ116は、架台120の上に配置されている。また、この減圧ポンプ116を作動させると、収容室119内に存在するガスが、乾燥装置100の外側に排気されるようになっている。そして、減圧ポンプ116が作動することで、収容室119内が減圧される。このガスを排気するための排気ダクト115が、減圧ポンプ116と接続されていて、図示しない方法で架台120に固定されている。
【0106】
さらに、乾燥装置100は、その操作するための操作パネル140が、図示しない方法で架台120に固定されている。
【0107】
図12は、乾燥装置100の制御系のブロック図である。
【0108】
図12に示すように、操作パネル140、入出力装置141、温度制御演算部142の各機器は、入出力インターフェイス143及びバス144を介してCPU145と、RAM146とに接続されている。また、減圧ポンプ116と、基板供給装置130と、入出力装置141とが接続されている。また、ヒータ112と、熱電対113と、温度制御演算部142とが接続されている。
【0109】
乾燥装置100の構成は以上のようであって、乾燥装置100を使用して、基板12を乾燥する乾燥方法(ベーク)について説明する
【0110】
図13は、乾燥装置100の動作手順を示す概略フローチャートである。
【0111】
作業開始の指示をすると、CPU145は、入出力装置141に信号を送り、基板供給装置130が作動して、基板12を台111の所まで搬送し、ヒータ112によって基板12に対して減圧下で乾燥処理を施す(図11(a)(b)参照)。より具体的な乾燥方法について、詳細を以下に記す。
【0112】
乾燥装置100に備えられた操作パネル140を操作して、ヒータ112の通電をONにして、炉内ヒータをONにする(図13のステップS71)。その後に、収容室119内の温度が、設定温度に到達したかどうかを熱電対113にて検出する(図13のステップS72)。検出温度が設定温度(この場合60℃)に達していなければ、加熱を継続する。次に、ヒータ112の通電をOFFにして、炉内ヒータをOFFにする(図13のステップS73)。
【0113】
収容室119内の温度が、設定温度に到達したら、扉114が開いている状態で、入出力装置141に備えられた基板供給装置130が作動して、空圧シリンダ133が上下方向(Y2方向)に移動し、さらに、図示しない空圧シリンダが、左右方向(X2方向)に移動して、収容室119内に備えられた台111の上に基板12を配置して、扉114を閉じて基板供給する(図13のステップS74)。
【0114】
次に、減圧ポンプ116が作動して、収容室119内を大気圧から減圧していき、圧力制御を開始する(図13のステップS75)。
【0115】
そして、収容室119内が減圧ポンプ116によって減圧され、同時に温度制御を開始する(図13のステップS76)。次に、所定の真空度が維持された収容室119内で基板12を所定の時間だけ乾燥処理する(図13のステップS77)。そして、所定の時間乾燥処理した後に、ヒータ112の通電をOFFにして温度制御を停止する(図13のステップS78)。同時に、減圧ポンプ116を停止(昇圧)して圧力制御を停止する(図13のステップS79)。
【0116】
最後に、乾燥装置100の扉114を開いて、収容室119内から基板12を排出する(図13のステップS80)。
【0117】
なお、図12に示す基板12と収容室119内の温度を検出するための熱電対113と、基板12を加熱するためのヒータ112と接続されている温度制御演算部142は、熱電対113の検出結果によって、収容室119内を温度制御できる。そして、減圧ポンプ116と接続されている入出力装置141は、収容室119内の圧力を変更できる。これらの機能を、CPU145を用いるプログラムソフトによって実現している。また、RAM146は、乾燥装置100の動作の制御手順が記述されたプログラムソフトを記憶する記憶領域や、収容室119内の温度や圧力などのデータを記録できる。
【0118】
図14は、加熱部110の主要部を部分的に示す図である。
【0119】
図14に示すように、加熱部110には収容室119が備えられており、この収容室119内には、基板12を加熱するためのヒータ112と、温度を測定するための熱電対113が備えられている。そして、この熱電対113は、第3支持部352の中に挿入されており、図示しない方法で第3支持部352に固定されている。そして、第2支持部351と第3支持部352とで構成される支持部としての第1支持部350は、台111上にあるレール355に固定されている。そして、第3支持部352は、第2支持部351に嵌め込まれており、固定されている。また、熱電対113にリード線354が結線されている。
【0120】
図15は、基板12を支持する支持部としての第1支持部350を部分的に示す部分斜視図である。
【0121】
図15に示すように、第3支持部352の中に熱電対113が挿入されている。この熱電対113は、第3支持部352の軸部352Bのなるたけ先端の位置にくるように配置されている。なお、この軸部352Bの先端部分は、凸曲面形状である。そして、基板12に軸部352Bの先端部分が接触している。この軸部352Bの先端部分が、凸曲面形状であるから、軸部352Bの先端部分は、基板12と接触する面積が少ない。また、軸部352Aを矢印Z方向に移動することによって、穴部351Bに挿入可能な構成になっている。そして、穴部351Bに軸部352Aを嵌め込み固定することができる。一方、軸部351Aはレール355に設けた穴に固定することができる。また、熱電対113は、第3支持部352の長手方向中心線上に配置されている。熱電対113の後端から引き出されているリード線354が、収容室119内を通過して図14に示すように、加熱部110の外部へ引き出される。そして、リード線354が制御装置へ配線される(図示省略)。
【0122】
図16は、収容室119内に配置した基板12を示す斜視図である。
【0123】
図16に示すように、第1支持部350が複数配置されており、レール355に埋設されている。そして、このレール355は、台111に固定されている。基板12は第1支持部350に備えられている第3支持部352に支えられている。また、熱電対113は、これら複数の第1支持部350の中に挿入されている(より、具体的には、第3支持部352の中)。なお、熱電対113の配置する数は、第1支持部350と同じ数量配置されている。ここでは、基板12の温度の面内分布がわかるように、第1支持部350をX3方向に5箇所、Y3方向に4箇所配置した(計20箇所)。熱電対113の数は、第1支持部350の数と同数配置したが(この場合20箇所)、これに限らない。熱電対113の配置する数は、必要に応じて減らしてもよいし、増やしてもよい。熱電対113の数量を減らすことによって、第1支持部350の数が少なくできるから、乾燥装置100の製造コストがかからなくなるので、経済的である。一方、熱電対113の数量を増やすことによって、測定個所が増えるので、基板12の温度をより精度よく測定できる。なお、基板12の温度の面内分布を事前に取得しておけば、熱電対113の配置の方法や、数量も任意に決めることができる。
【0124】
熱電対113の取り付け方法、数量、及び配置方法は以上のようであって、基板12の温度測定方法について以下に説明する。
【0125】
乾燥装置100で乾燥する基板12は、材質がガラスであって、1000×1200×0.7mmのサイズのものを使用した。また、基板12を収容できる加熱部110と収容室119内に備えられた台111とレール355との材質が、SUS(ステンレス)である。そして、収容室119は、基板12を収容できる十分の大きさを有していた。図15に示す、第2支持部351と第3支持部352との材質が、ガラスである。ここで、SUSの熱伝導率は約15W/mKであり、ガラスの熱伝導率は約1W/mKである。SUSに比べてガラスの方が熱伝導率の値が低い。つまり、第2支持部351と第3支持部352は、加熱部110と収容室119内に備えられた台111とレール355とに比べて熱が伝わりにくい。
【0126】
第3支持部352の中に挿入された熱電対113は、元線の径が約320μmで、先端には約400μm径の球が付着している一般的なものを選択した。そして、この元線の被覆は、耐熱性のあるガラス繊維であって、この被覆を含む熱電対113の外径は約1.5mmのものを採用した。この熱電対113は、常用で約400℃の測定が可能である。そして、この熱電対113を第3支持部352の中に挿入して、基板12の温度測定を行った。なお、基板12と第3支持部352とが接触しているから、熱電対113は、基板12により近い位置で温度を測定できる。そして、基板12の温度を測定することで、収容室119内の温度もわかる。
【0127】
図17は、目標温度に対するヒータ112の設定温度を示す図である。
【0128】
図17に示すように、目標温度に対するヒータ112の設定温度について、従来方法と本実施形態とで比較を行った。ヒータ112に通電をして常温から温度を上げていき、収容室119内を加熱していく。同時に、収容室119内に置かれた基板12も加熱される。同図、60℃〜250℃までの間において、測定点1〜5の5種類を選択した。この1〜5の各測定点における目標温度を熱電対113で検出した。なお、同図に示す破線が目標温度であり、二点鎖線が従来方法によるヒータ112の設定温度であり、実線が本実施形態によるヒータ112の設定温度である。
【0129】
従来方法では、測定点1においては、ヒータ112の設定温度65℃に対して、目標温度は60℃であった。また、測定点2においては、ヒータ112の設定温度150℃に対して、目標温度は100℃であった。同様に、測定点5においては、ヒータ112の設定温度300℃に対して、目標温度は250℃であった(測定点3と測定点4については傾向が同じであったので、説明を省略する)。つまり、従来方法では、目標温度に対してヒータ112の設定温度の差が、5〜50℃あった。
【0130】
次に、本実施形態では、測定点1においては、ヒータ112の設定温度60℃に対して、目標温度は60℃であった。また、測定点2においては、ヒータ112の設定温度102℃に対して、目標温度は100℃であった。同様に、測定点5においては、ヒータ112の設定温度252℃に対して、目標温度は250℃であった(測定点3と測定点4については傾向が同じであったので、説明を省略する)。つまり、本実施形態では、目標温度に対してヒータ112の設定温度の差が、約2℃であった。したがって、従来方法と本実施形態とを比較すると、本実施形態の方法によれば、誤差が少ないことがわかる。
【0131】
以上のような実施形態では、次のような効果が得られる。
【0132】
(1)第3支持部352の中に熱電対113を挿入して、被加熱体である基板12の近傍に配置したことによって、基板12の温度を精度よく検出できる。さらに、第3支持部352の中に熱電対113が挿入されているから、外力や、被加熱体から発生するガスなどの影響から守られた構造になっているので、熱電対113が損傷しにくい。
(2)基板12の温度を精度よく検出できるから、基板12に塗布された機能液に対して、より均一に温度管理ができるので、塗布膜の膜厚がより均一にできる。
【0133】
以上、好ましい実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含み、本発明の目的を達成できる範囲で、他のいずれの具体的な構造および形状に設定できる。
【0134】
(変形例1)前述の実施形態で使用される乾燥装置100において、第1支持部350を第2支持部351と第3支持部352との2部品に分割しておいて、各々を嵌め合わせることができるような構成にしたが、これに限らない。例えば、第2支持部351と第3支持部352との2部品構成でなく、第1支持部350だけでも構わない。このようにすれば、部品点数が少なくなるので、コストが低減し、経済的である。しかも、第2支持部351と第3支持部352とを組み立てる必要がなくなるので、合理的である。
【0135】
(変形例2)前述の第3支持部352の先端形状を凸曲面形状にしたが、これに限らない。例えば、第3支持部352の先端の外周部分を面取りしてもよい。このようにすれば、加工するのに面倒な凸曲面形状にしなくてもよいので、部品の製造コストが低減し、経済的である。
【0136】
(変形例3)前述の第2支持部351に有する穴部351Bに、第3支持部352に有する軸部352Aを挿入する構成にしたが、これに限らない。例えば、これら軸と穴の構成を逆にして、第2支持部351に軸部を設け、第3支持部352に穴部を設けて嵌め合わせてもよい。このようにしても、実施形態と同様な効果が得られる。
【0137】
(変形例4)熱電対113が第3支持部352に取り付けられた第1支持部350を有する構成の乾燥装置100が製造に使用されるのは、前述の基板に限らない。例えば、基板以外の固形物でもよい。このようにすれば、色々な形状の物を温度精度よく加熱乾燥ができる方法及び装置なので、乾燥装置100の用途は広い。
【0138】
(変形例5)熱電対113が第3支持部352に取り付けられた第1支持部350を有する構成の乾燥装置100が製造に使用されるのは、ガラスに限らない。例えば、ガラス以外のセラミックスや金属など各種素材に適用してもよい。このようにすれば、温度精度よく加熱乾燥ができる方法及び装置なので、乾燥装置100の用途は広い。
【0139】
(変形例6)熱電対113が第3支持部352に取り付けられた第1支持部350を有する構成の乾燥装置100を製造に使用するのは、上述のEL装置や、カラーフィルタに限定されるものではない。例えば、FED(Field・Emission・Display:フィールドエミッションディスプレイ)などの電子放出装置、PDP(Plasma・Disply・Panel:プラズマディスプレイパネル)、電気泳動装置すなわち荷電粒子を含有する機能性液状体である材料を各画素の隔壁間の凹部に吐出し、各画素を上下に挟持するように配設される電極間に電圧を印加して荷電粒子を一方の電極側に寄せて各画素での表示をする装置、薄型のブラウン管、CRT(Cathode―Ray・Tube:陰極線管)ディスプレイなど、基板(基材)を有し、その上方の領域に所定の層を形成する工程を有する様々な表示装置(電気光学装置)に用いることができる。このようにすれば、温度精度よく加熱乾燥ができる方法及び装置なので、個々の製品の特性に応じてヒータ112の温度を設定すればよいので、狙った品質を確保することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】液滴吐出装置の全体構成を示す概略斜視図。
【図2】液滴吐出装置の主要部を部分的に示す部分斜視図。
【図3】ヘッドを示す図であり、(a)は概略斜視図、(b)はノズルの配列を示す図。
【図4】ヘッドの主要部を部分的に示す図であり、(a)は概略斜視図、(b)は概略断面図。
【図5】液滴吐出装置の制御系のブロック図。
【図6】液滴吐出装置の動作手順を示す概略フローチャート。
【図7】(a)〜(h)は、EL発光パネルの製造工程を示す工程断面図。
【図8】EL発光パネルの製造工程の手順を示す概略フローチャート。
【図9】(a)〜(f)は、カラーフィルタ基板の製造工程を示す工程断面図。
【図10】カラーフィルタ基板の製造工程の手順を示す概略フローチャート。
【図11】本実施形態の乾燥装置の全体構成を示す概略図であり、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図。
【図12】乾燥装置の制御系のブロック図。
【図13】乾燥装置の動作手順を示す概略フローチャート。
【図14】乾燥装置の主要部を部分的に示す図。
【図15】基板を支持する支持部を部分的に示す部分斜視図。
【図16】収容室内に配置した基板を示す斜視図。
【図17】目標温度に対するヒータの設定温度を示す図。
【符号の説明】
【0141】
1…基板としてのカラーフィルタ、3(3R、3G、3B)…表示要素及び表示層としてのフィルタエレメント、6A…放射線感応性素材、6(6B、6C)…隔壁、8…液滴、12…被加熱体としての基板、100…乾燥装置、110…槽体としての加熱部、111…台、112…ヒータ、113…熱電対、114…扉、116…減圧ポンプ、119…収容室、130…基板供給装置、140…操作パネル、141…入出力装置、142…温度制御部、145…CPU、146…RAM、350…支持部としての第1支持部、351…第2支持部、351A…軸部、351B…穴部、352…第3支持部、352A…軸部、352B…軸部、354…リード線、355…レール、202…表示要素を構成する正孔注入層、203…EL発光層、252…表示装置としてのEL表示装置、X3…X方向、Y3…Y方向、Z…Z方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉であって、
ヒータと、
前記ヒータの温度を校正する熱電対と、
被加熱体を支持する第1支持部と、
前記被加熱体を収容可能な槽体と、を備え、
前記第1支持部は、第2支持部と、前記第2支持部に保持された第3支持部とを有しており、
前記熱電対が、前記第3支持部に有することを特徴とする加熱炉。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱炉において、
前記第1支持部は、前記槽体内に複数個配置されており、
前記複数個の第1支持部のうち少なくとも1つの前記第3支持部に前記熱電対が、備えられていることを特徴とする加熱炉。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の加熱炉において、
前記第2支持部と前記第3支持部とが、嵌め込み式で装着されていることを特徴とする加熱炉。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の加熱炉において、
前記第2支持部の熱伝導率が、前記第3支持部の熱伝導率より低いことを特徴とする加熱炉。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の加熱炉において、
前記被加熱体と前記第3支持部とが、略同じ熱伝導率であることを特徴とする加熱炉。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の加熱炉において、
前記第2支持部の熱伝導率が、0.1以上5W/mK以下であることを特徴とする加熱炉。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の加熱炉において、
前記第3支持部の先端形状が、凸曲面形状であることを特徴とする加熱炉。
【請求項8】
被加熱体を支持する支持部であって、
前記支持部としての第1支持部は、第2支持部と、前記第2支持部に保持された第3支持部と、を備え
前記第3支持部が、ヒータの温度を校正する熱電対を備えていることを特徴とする支持部。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の加熱炉を使用して電気光学装置を製造する製造方法であって、
前記第3支持部に有する熱電対を用いて前記ヒータの温度を校正する工程と、
前記被加熱体を加熱する工程と、
を備えていることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記ヒータの温度を校正する工程では、
前記熱電対と前記第1支持部とが、前記槽体内に複数個配置されており、
前記複数個の第1支持部のうち少なくとも1つの前記第3支持部に前記熱電対が、備えられていることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記ヒータの温度を校正する工程では、
前記第2支持部の熱伝導率が、前記第3支持部の熱伝導率より低いことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項12】
請求項9又は請求項10に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記ヒータの温度を校正する工程では、
前記被加熱体と前記第3支持部とが、略同じ熱伝導率であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項13】
請求項9又は請求項10に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記ヒータの温度を校正する工程では、
前記第2支持部の熱伝導率が、0.1以上5W/mK以下であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項14】
請求項9〜請求項12のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記ヒータの温度を校正する工程では、
前記第3支持部が、前記被加熱体に接触しており、
前記第3支持部の先端形状が、凸曲面形状であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−170534(P2006−170534A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364103(P2004−364103)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】