説明

負荷回路の過電流保護装置

【課題】電流値が上下に大きく変化する負荷を制御する場合であっても、確実に過電流の発生を検出し、過電流が検出された場合には負荷回路の電線、及びFET(Q1)を確実に過熱から保護することが負荷回路の過電流保護装置を提供する。
【解決手段】負荷電流に比例する大きさの参照電圧Vpを生成し、且つ、時定数回路を用いて参照電圧Vpの変動に対して低速で追随する低速追随電圧Vcを生成する。そして、低速追随電圧Vcが基準電圧Vref1を超えた場合、或いは参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えた場合に、過電流判定が満たされたものと判断して、各判定電圧との比較を行う。従って、車両に搭載されるホーンのように、電流値が上下に大きく変化する負荷を駆動する場合であっても、過電流の発生を高精度に検出し、且つ、むやみに負荷回路が遮断されるというトラブルの発生を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷、電子スイッチ、電線からなる負荷回路に過電流が発生した際に、該負荷回路に設けられる電線、及び電子スイッチを過電流から保護する過電流保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されるホーンやバックミラー傾倒用モータ、サンシェードモータ、パワーウィンド用モータ等の負荷は、電子スイッチ(例えば、MOSFET等)を介してバッテリに接続されており、電子スイッチのオン、オフを切り替えることにより、負荷の駆動、停止が制御される。
【0003】
また、負荷にショート故障等が発生して負荷回路に過電流が流れた場合には、負荷、及び接続用のハーネスが発熱により損傷することがあるので、従来より、過電流保護装置を搭載し、負荷回路に過電流が発生した場合にはいち早く電子スイッチを遮断として、負荷回路全体を過電流から保護するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来における過電流保護装置では、瞬間的な負荷電流の変動を検出し、負荷電流が過電流閾値を超えた場合に、負荷回路を遮断する。このため、例えばホーンのように、通常駆動時において電流値が上下に大きく変動する波形となる負荷を駆動する場合には、電流波形のピーク値が過電流閾値を超えない程度に、過電流閾値を設定する必要がある。
【0005】
このため、過電流閾値を比較的高い値に設定せざるを得ず、その分太い電線を使用することになり、ワイヤハーネスの重量増加の要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−48498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来における過電流保護装置では、負荷電流が所定の閾値電流を超えた場合に、過電流が発生したものと判断して電子スイッチを遮断するので、例えば車両に搭載されるホーンのように、通常電流が上下に大きく変動する波形となる負荷を制御する場合には、過電流の発生を高精度に検出することができないという欠点があった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電流値が上下に大きく変化する負荷を制御する場合であっても、確実に過電流の発生を検出し、過電流が検出された場合には負荷回路の電線及び電子スイッチが発熱する前の時点で確実に遮断することが可能な負荷回路の過電流保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、直流電源(VB)、負荷(RL)、電線、及び電子スイッチ(Q1)を備えた負荷回路に設けられ、前記負荷回路の電線を過電流から保護する過電流保護装置において、電流検出抵抗(Ris)を備え、前記負荷(RL)に流れる電流に比例する参照電流を流す参照電流生成回路と、前記参照電流が流れることにより前記電流検出抵抗に生じる参照電圧(Vp)の変化に対して、低速度で追随して変化する低速追随電圧(Vc)を生成する時定数回路と、前記時定数回路で生成された低速追随電圧(Vc)と、予め設定した第1基準電圧Vref1とを比較する第1比較手段(CMP1)と、前記電流検出抵抗(Ris)に生じる参照電圧と、予め設定され前記第1基準電圧Vref1よりも大きい第2基準電圧Vref2とを比較する第2比較手段(CMP2)と、前記第1比較手段で低速追随電圧が第1基準電圧Vref1を上回ったと判定された場合、または前記第2比較手段で参照電圧が第2基準電圧Vref2を上回ったと判定された場合に、基準信号を出力する基準判定手段(OR1)と、前記基準判定手段から基準信号が出力され、且つ、前記参照電圧が予め設定した過電流判定電圧を超え、その継続時間が予め設定した閾値時間を超えた場合に、前記電子スイッチを遮断する電子スイッチ制御手段(14)と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記電子スイッチ制御手段は、前記基準判定手段から基準信号が出力され、且つ、前記参照電圧が予め設定した過電流判定電圧を超え、更にその継続時間が予め設定した閾値を超えた場合に、前記電子スイッチを遮断することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記電子スイッチ制御手段は、前記基準信号が出力されているとき、前記参照電圧が前記過電流判定電圧を超えている時間が既定時間だけ継続し、且つ前記既定時間だけ継続した回数を計数し、この計数した回数が既定回数となった場合に、前記電子スイッチを遮断する機能を備え、更に、継続した回数を計数する際には、前記基準信号が停止し、その後所定時間(T4)以内に再度基準信号が出力された場合には前記繰り返し回数の計数を継続し、前記所定時間(T4)以内に再度基準信号が出力されない場合には前記繰り返し回数をリセットすることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記過電流判定電圧は、電圧値が異なる複数の判定電圧が設定され、前記電子スイッチ制御手段は、前記参照電圧が前記複数の判定電圧のうちの最大の電圧値となる判定電圧を超えたと判断された場合に、前記電子スイッチを即時に遮断することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記電子スイッチを投入してから所定時間の経過前と経過後で、前記過電流判定電圧を変更することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記電子スイッチは、ドレイン及びゲートが共通とされたメインFET及びサブFETからなるマルチソースFETの、前記メインFETであり、前記ドレインを前記直流電源に接続し、前記メインFETのソースを前記負荷に接続し、前記参照電流生成回路は、前記サブFETのソース電圧が前記メインFETのソース電圧と等しくなるように制御して前記電流検出抵抗に参照電流を流すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、参照電圧Vpが第2基準電圧(Vref2)を上回った場合、或いは、低速追随電圧(Vc)が第1基準電圧(Vref1)を上回った場合に、過電流判定を満たすものと判断し、この条件が満たされた場合に、基準信号が出力される。そして、基準信号が出力されているときに、過電流判定電圧(例えば、8倍電圧Vref8、4倍電圧Vref4、2倍電圧Vref2)と参照電圧Vpとを比較し、この比較結果に基づいて、電子スイッチを遮断するか否かを判断する。従って、負荷電流が脈動するような場合に、このピーク値を検出してむやみに電子スイッチをオフとすることや、電線が過熱する程度の脈動電流が流れているにも関わらず、電子スイッチが遮断されない等のトラブルを回避でき、負荷電流の大きさ、及びその継続時間に応じた極めて高精度な過電流保護を行うことができる。
【0016】
また、デッドショート等により負荷電流が急激に上昇した場合には、即時に参照電圧Vpが第2基準電圧(Vref2)を上回って基準判定手段より基準信号が出力され、更に、即時に参照電圧が過電流判定電圧を超えるので、いち早く電子スイッチをオフとして負荷回路の電子スイッチ、及び電線を保護することができる。
【0017】
請求項2の発明では、基準信号が出力されているときに、過電流判定電圧と参照電圧Vpとの比較結果に加え、その継続時間に基づいて、電子スイッチを遮断するか否かを判断するので、より一層高精度な過電流保護が可能となる。
【0018】
請求項3の発明では、負荷電流が過電流となり、その後一旦定常電流となってから再度過電流となった場合には、定常電流となった時間が所定時間(T4)未満であれば、繰り返し回数の計数を継続し、所定時間(T4)以上であれば、繰り返し回数の計数をリセットするので、過電流発生時に短時間の電流低下が発生した場合であっても、負荷回路の電子スイッチ、及び電線が過熱する前の時点で電子スイッチを遮断することができる。また、長時間の電流低下が発生した場合には、再度繰り返し回数の計数が行われるので、電子スイッチをむやみに遮断することを防止できる。
【0019】
請求項4の発明では、参照電圧(Vp)が複数の判定電圧のうち、最大の電圧値となる判定電圧を超えた場合には、電子スイッチを即時に遮断するので、負荷回路にデッドショートが発生した場合には、負荷回路の電子スイッチ、及び電線を過電流による過熱から保護することができる。
【0020】
請求項5の発明では、電子スイッチを投入してから所定時間の経過前と経過後で、過電流判定電圧を変更するので、電子スイッチを投入した直後の突入電流発生時、及び暫く時間が経過した定常時の双方で、高精度に過電流の発生を検出し、負荷回路の電子スイッチ、及び電線を過電流による過熱から保護することができる。
【0021】
請求項6の発明では、マルチソースFET(Q1)の、メインFETを負荷の駆動、停止を制御する電子スイッチとして使用し、サブFETを参照電流生成用として使用するので、負荷電流に比例する大きさの参照電流を高精度に取得することができ、過電流検出の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置、及び過電流保護装置が接続される負荷回路の回路図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の処理動作を示すフローチャートの、第1の分図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の処理動作を示すフローチャートの、第2の分図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の、電子スイッチをオンとした直後での過電流と判定する電圧及び経過時間の関係を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の、過電流と判定する電圧及び経過時間の関係を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の、過電流と判定する電圧及び経過時間の関係を示すタイミングチャートである。
【図7】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変動を示す特性図である。
【図8】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変化と基準電圧Vref1、2倍電圧Vref2との関係を示す特性図である。
【図9】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変化と基準電圧Vref1、2倍電圧Vref2との関係を示す特性図である。
【図10】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変化と基準電圧Vref1の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る過電流保護装置100、及び負荷回路101を示す回路図である。図1に示すように、負荷回路101は、例えば車両に搭載されるホーンやサンシェードモータなどの負荷RLを駆動する回路であり、車両に搭載されるバッテリ(直流電源)VBと、該バッテリVBと負荷RLとの間に設けられるマルチソースFET(Q1;以下単に「FET」(Q1)という)、及びこれらを接続する電線を備えている。なお、本実施形態では、FET(Q1)としてN型MOSFETを用いているが、P型MOSFETを用いることも可能である。
【0024】
FET(Q1)は、メインFET(Q1a;電子スイッチ、以下単に「FET(Q1a)」という)と、サブFET(Q1b;以下単に「FET(Q1b)」という)の2個のFETを備えるマルチソース型のMOSFETであり、それぞれのドレイン、ゲートが共通とされている。
【0025】
過電流保護装置100は、アンド回路AND1と、該アンド回路AND1の出力端子に接続されたバッファ11とを有し、該バッファ11の出力端子は、外部接続端子B2を介してFET(Q1)のゲートに接続されている。また、バッファ11には、チャージポンプ13が接続されている。
【0026】
更に、アンド回路AND1の一方の入力端子は外部接続端子B1に接続され、他方の入力端子はフリップフロップ回路12のQ出力に接続されている。従って、外部接続端子B1にHレベルの信号が供給されると、フリップフロップ回路12の出力は通常時においてHレベルであるから、アンド回路AND1の出力信号がHレベルとなり、更に、バッファ11にて所定レベルの電圧が加えられてFET(Q1)のゲートに供給されるので、該FET(Q1)がオンとなり、負荷RLを駆動させることができる。
【0027】
また、過電流保護装置100は、アンプAMP1を備えており、該アンプAMP1のマイナス側入力端子は、外部接続端子B3を介してFET(Q1a)のソースに接続され、プラス側入力端子は外部接続端子B4を介してFET(Q1b)のソースに接続されている。アンプAMP1の出力端子は、N型のMOSFET(Q2)のゲートに接続され、MOSFET(Q2)のドレインは、外部接続端子B4を介してFET(Q1b)のソースに接続され、MOSFET(Q2)のソースは、外部接続端子B5を介して電流検出抵抗Risの一端に接続され、該電流検出抵抗Risの他端はグランドに接続されている。従って、電流検出抵抗Risの一端には、負荷電流I0に比例した電圧(以下、これを「参照電圧Vp」という)が発生することになる。
【0028】
更に、過電流保護装置100は、5個の比較器CMP1〜CMP5を備えており、このうち、比較器CMP5は、プラス側入力端子が電源Vtfに接続され、マイナス側入力端子は外部接続端子B3を介してFET(Q1a)のソースに接続されるので、FET(Q1a)のソース電圧Vsが電源Vtfの出力電圧を上回った際に、比較器CMP5の出力信号はLレベルからHレベルに変化する。この出力信号は、Vds検出回路16、及びオン故障検出回路17に出力される。
【0029】
また、4個の比較器CMP1(第1比較手段)、CMP2(第2比較手段)、CMP3、CMP4は、負荷回路101に流れる過電流の度合いに応じた判定結果を出力するために設けており、比較器CMP2〜CMP4のプラス側入力端子は、MOSFET(Q2)のソースに接続され、比較器CMP1のプラス側入力端子は、抵抗Rcfを介してMOSFET(Q2)のソースに接続されている。更に、比較器CMP1のプラス側入力端子は、外部接続端子B6を介してコンデンサCfの一端に接続され、該コンデンサCfの他端はグランドに接続されている。従って、抵抗RcfとコンデンサCfで時定数回路が形成され、該時定数回路により上述の参照電圧Vpは平滑化されて、低速追随電圧Vcが生成される。
【0030】
比較器CMP1の出力端子、及び比較器CMP2の出力端子は、オア回路OR1(基準判定手段)の入力端子に接続されている。
【0031】
また、比較器CMP1のマイナス側入力端子には、予め設定した基準電圧Vref1(第1基準電圧)が供給され、比較器CMP2のマイナス側入力端子には、基準電圧Vref1を2倍した2倍電圧Vref2(第2基準電圧)が供給され、比較器CMP3のマイナス側入力端子には、基準電圧Vref1を4倍した4倍電圧Vref4が供給され、更に、比較器CMP4のマイナス側入力端子には、基準電圧Vref1を8倍した8倍電圧Vref8が供給される。
【0032】
また、オア回路OR1の出力端子はロジック回路14のIN-1に接続され、比較器CMP2の出力端子はロジック回路14のIN-2に接続され、比較器CMP3の出力端子はロジック回路14のIN-4に接続され、比較器CMP4の出力端子はロジック回路14のIN-8に接続されている。
【0033】
比較器CMP2〜CMP4の出力信号は、ロジック回路14に供給され、且つ、比較器CMP1とCMP2の出力信号は、オア回路OR1の2つの入力端子に供給され、該オア回路OR1の出力信号は、ロジック回路14に供給される。該オア回路OR1は、2つの入力信号のうち少なくとも一方がHレベルである場合に、Hレベルの出力信号(基準信号)を出力する。
【0034】
ロジック回路14には、前述した各比較器CMP2〜CMP4の出力信号、及びオア回路OR1の出力信号以外に、過電圧検出信号、クロック信号、及び外部接続端子B1より入力されるFET(Q1)の駆動信号が供給される。
【0035】
ロジック回路14は、後述するように、タイマ機能(T1〜T4)、及びカウント機能(Ct)を備えており、過電流が発生した場合に、過電流の継続時間、及び過電流が発生した回数をカウントする機能を備えている。更に、ロジック回路14の出力端子(OUT)はオア回路OR2が有する3つの入力端子のうちの一つに接続され、出力端子(OUT)の出力信号がHレベルとなった場合に、FET(Q1)の駆動信号をHレベルとする。即ち、ロジック回路14は、オア回路OR1(基準判定手段)より、Hレベルの信号(基準信号)が出力されており、且つ、参照電圧(Vp)が予め設定した過電流判定電圧(Vref2,Vref4,Vref8)を超え、その継続時間が予め設定した閾値時間を超えた場合に、FET(Q1a;電子スイッチ)を遮断する電子スイッチ制御手段としての機能を備える。また、ロジック回路14は、発振器18に接続され、該発振器18よりクロック信号が供給される。発振器18は、外部接続端子B7を介して、コンデンサCoscの一端に接続され、その他端はグランドに接続されている。更に、ロジック回路14は、過電圧検出器19に接続され、バッテリVBの電圧が過電圧となった場合に、負荷回路101を遮断して回路を保護すると共に、バッテリVBの電圧が正常に戻った場合には、遮断を解除して負荷RLを駆動させる。
【0036】
また、オア回路OR2の2つ目の入力端子はVBAモニタ回路15に接続され、3つ目の入力端子はVds検出回路16に接続されている。また、オア回路OR2の出力端子は、フリップフロップ回路12のリセット入力端子に接続されている。
【0037】
VBAモニタ回路15は、バッテリVBの電圧を監視する回路であり、過電流等によりバッテリVBの電圧が予め設定した閾値電圧以下に低下した場合に、過電流保護装置100を正常に駆動することができないと判断して電圧異常信号を出力する。この電圧異常信号によりフリップフロップ回路12をリセットするので、FET(Q1)をオフとして負荷RLの駆動を停止させる。
【0038】
Vds検出回路16は、比較器CMP5でFET(Q1a)のソース電圧Vsが基準電圧Vtfを超えたと判断された際に、FET(Q1)のドレイン・ソース間電圧Vdsが異常であると判断し、FET(Q1)をオフとして負荷RLの駆動を停止させる。
【0039】
オン故障検出回路17は、比較器CMP5の出力信号に基づいてFET(Q1)がオン故障したか否かを判定し、オン故障が発生した場合には外部接続端子B8にオン故障検出信号を出力する。
【0040】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る負荷回路の保護装置の動作について、図2、図3に示すフローチャートを参照して説明する。ここで、図2、図3でステップS11〜S32までの処理は、電源投入時の動作であり、ステップS33〜S58までの処理は、定常時の動作である。
【0041】
始めに、外部接続端子B1にFET(Q1)の駆動信号が供給されると、この駆動信号によりアンド回路AND1の出力はHレベルとなるので、バッファ11を介してFET(Q1)のゲートに、バッテリVBの電圧にチャージポンプ13の出力電圧が加算された駆動電圧が供給される。その結果、FET(Q1)がオンとなり(ステップS11)、FET(Q1a)を介して負荷RLに負荷電流I0が流れ、負荷RLが駆動する。
【0042】
また、負荷RLに負荷電流I0が流れると、アンプAMP1は、FET(Q1a)のソース電圧Vsと、FET(Q1b)のソース電圧が等しくなるようにFET(Q1b)に参照電流Irを流すので、この参照電流Irは、負荷電流I0に比例した大きさの電流となる。更に、この参照電流Irは電流検出抵抗Risを介してグランドに流れるので(Ris≪Rcf)、抵抗Risに生じる参照電圧Vpは、負荷電流I0に比例した大きさの電圧となる。本実施形態では、この参照電圧Vpと4種類の基準電圧Vref1、2倍電圧Vref2、4倍電圧Vref4、8倍電圧Vref8を対比することにより、過電流の大きさを判定する。そして、過電流の大きさと継続時間に応じて負荷回路101を遮断するか否かを決定する。
【0043】
ロジック回路14は、FET(Q1)の駆動信号が供給されると、時間T4(所定時間)を計時するT4タイマを作動させる(ステップS12)。なお、時間T4は、例えばランプ突入電流の発生時間よりも長い時間(例えば、2秒)に設定する。
【0044】
次いで、ロジック回路14は、比較器CMP1の出力信号、または比較器CMP2の出力信号の少なくとも一方がHレベルになったか否かを判断する。換言すれば、負荷電流I0に比例した参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を上回ったか、或いは参照電圧Vpを平滑化した電圧(低速追随電圧)Vcが基準電圧Vref1を上回ったか否かを判定する(ステップS13)。なお、以下ではステップS13の判定がYESとなることを「過電流判定を満たす」と称し、NOとなることを「過電流判定を満たさない」と称する。
【0045】
そして、負荷電流I0が過電流判定を満たさない場合(各比較器CMP1、CMP2の出力信号が共にLレベルである場合)には(ステップS13でNO)、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かが判定され(ステップS14)、時間T4が経過した場合には(ステップS14でYES)、後述するステップS33(図3)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS14でNO)、ステップS13の処理に戻る。
【0046】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合(各比較器CMP1、CMP2の出力信号のうち少なくとも一方がHレベルである場合)には(ステップS13でYES)、負荷回路101に過電流が発生しているものと判断し、時間T1(T1<T4)を計時するT1タイマを作動させる(ステップS15)。
【0047】
ここで、例えば車両に搭載されるホーンを駆動する負荷回路101を例に挙げると、ホーンを駆動する際に負荷回路101に流れる電流は、図7の曲線q1に示すように、短時間に上下方向に大きく変動する波形となり、電流検出抵抗Risに生じる参照電圧Vpも同様に、曲線q1のように変化する。また、時定数回路を通過して得られる低速追随電圧Vcは、曲線q2に示すように、平滑化された波形となる。そして、曲線q1が2倍電圧Vref2を超えた場合、または、曲線q1が基準電圧Vref1を超えた場合に、オア回路OR1の出力信号がHレベルとなる(図2のステップS13の判定がYESとなる)。
【0048】
次いで、負荷電流I0に比例した参照電圧Vpと、8倍電圧Vref8を比較する(ステップS16)。その結果、参照電圧Vpが8倍電圧Vref8を超えていると判断した場合には(ステップS16でYES)、ロジック回路14はオア回路OR2に停止信号(Hレベルの信号)を出力し、該停止信号によりFET(Q1)の駆動信号をオフとする(ステップS32)。即ち、8倍電圧Vref8を超える程度の過大な負荷電流I0が負荷回路101に流れた場合には、即時にFET(Q1)を遮断して負荷回路101の電線、及びFET(Q1)を保護する。つまり、負荷回路101をオンとした直後(FET(Q1)のオン直後)には、該負荷回路101に突入電流が流れ、この突入電流は通常は、基準電圧Vref1に相当する電流値の8倍未満であるので(8倍以上となることはないので)、基準電圧Vref1の8倍電圧Vref8を超えた場合には、突入電流ではなく短絡電流が流れているものと判断して、時間T1の経過を待たず即時に負荷回路101を遮断する。
【0049】
他方、参照電圧Vpが8倍電圧Vref8を超えていないと判断した場合には(ステップS16でNO)、時間T1が経過したか否かを判断する(ステップS17)。つまり、過電流が発生しているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが8倍電圧Vref8に達していない程度である場合には、時間T1が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0050】
そして、時間T1が経過した場合には(ステップS17でYES)、前述したステップS13と同様に、ロジック回路14は負荷電流I0が過電流判定を満たすか否かを判断する(ステップS18)。つまり、時間T1が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0051】
そして、過電流判定を満たさないと判断した場合には(ステップS18でNO)、負荷電流I0は定常電流に戻ったものと判断し、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS19)、時間T4が経過した場合には(ステップS19でYES)、ステップS33(図3)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS19でNO)、ステップS18の処理に戻る。
【0052】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たすと判断した場合には(ステップS18でYES)、参照電圧Vpは8倍電圧Vref8よりも低いものの、依然として負荷回路101に過電流が発生しているものと判断し、時間T2(既定時間;T1<T2<T4)を計時するT2タイマを作動させる(ステップS20)。
【0053】
その後、参照電圧Vpと4倍電圧Vref4とを比較する(ステップS21)。その結果、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていると判断した場合には(ステップS21でYES)、ロジック回路14は、FET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(ステップS32)。即ち、FET(Q1)をオンとした直後であっても、4倍電圧Vref4を超える程度の過電流が時間T1を超えて継続して負荷回路101に流れた場合には、FET(Q1)を遮断して負荷回路101の電線、及びFET(Q1)を保護する。
【0054】
他方、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていないと判断した場合には(ステップS21でNO)、時間T2が経過したか否かを判断する(ステップS22)。つまり、負荷電流I0が過電流判定を満たしているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが4倍電圧Vref4に達していない大きさである場合には、時間T2が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0055】
そして、時間T2が経過した場合には(ステップS22でYES)、前述したステップS13、S18と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たすか否かを判断する(ステップS23)。つまり、FET(Q1)のオン後、時間(T1+T2)が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0056】
そして、負荷電流I0が過電流判定を満たさない場合には(ステップS23でNO)、負荷電流I0は定常電流に戻ったものと判断し、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS24)、時間T4が経過した場合には(ステップS24でYES)、ステップS33(図3)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS24でNO)、ステップS23の処理に戻る。
【0057】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合には(ステップS23でYES)、参照電圧Vpは4倍電圧Vref4よりも低いものの、依然として負荷回路101に過電流が発生しているものと判断し、時間T3(既定時間;T2<T3<T4)を計時するT3タイマを作動させ、且つ、カウント値Ct=0にセットする(ステップS25)。
【0058】
次いで、参照電圧Vpと2倍電圧Vref2を比較する(ステップS26)。その結果、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えていると判断した場合には(ステップS26でYES)、ロジック回路14はFET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(ステップS32)。即ち、2倍電圧Vref2を超える程度の過電流が時間(T1+T2)を超えて継続して負荷回路101に流れた場合には、FET(Q1)を遮断して負荷回路101の電線、及びFET(Q1)を保護する。
【0059】
他方、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えていないと判断した場合には(ステップS26でNO)、時間T3が経過したか否かを判断する(ステップS27)。つまり、過電流が発生しているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが2倍電圧Vref2に達していない程度である場合には、時間T3が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0060】
そして、時間T3が経過した場合には(ステップS27でYES)、前述したステップS13、S18、S23と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS28)。つまり、FET(Q1)のオン後、時間(T1+T2+T3)が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0061】
そして、負荷電流I0が過電流判定を満たさない場合には(ステップS28でNO)、負荷電流I0は定常電流に戻ったものと判断し、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS29)、時間T4が経過した場合には(ステップS29でYES)、ステップS33(図3)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS29でNO)、ステップS28の処理に戻る。
【0062】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合には(ステップS28でYES)、参照電圧Vpは2倍電圧Vref2よりも低いものの、依然として負荷回路101に過電流が発生しているものと判断し(この場合は、CMP1の出力信号がHレベル、CMP2の出力信号がLレベルである)、カウント値Ct=4であるか否かを判断する(ステップS30)。そして、Ct≠4の場合には(ステップS30でNO)、カウント値Ctをインクリメントし(Ct=Ct+1とし)、且つ、T3タイマを作動させ(ステップS31)、ステップS26に処理を戻す。
【0063】
その後、ステップS30の処理でカウント値Ct=4(既定回数)となった場合には、FET(Q1)を遮断する(ステップS32)。つまり、ステップS26〜S31の処理では、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2よりも小さく、且つ負荷電流I0が過電流判定を満たす条件、即ち、比較器CMP1の出力信号のみがHレベルとなった場合に、この状態が時間T3だけ継続する回数が5回(Ct=0〜4の5回)に達した際に、FET(Q1)を遮断して負荷回路101の電線、及びFET(Q1)を保護する。また、カウント値Ct=4に達する前に時間T4が経過した場合には、ステップS33(図3)に処理を進める。
【0064】
ここまでの処理をまとめると、以下の通りである。
(a)FET(Q1)をオンとした後、負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが8倍電圧Vref8を超えた場合には、即時にFET(Q1)をオフとする。図4は時間経過に対する参照電圧Vpの変化を示すタイミングチャートであり、図4に示す時刻t0でFET(Q1)をオンとし、時刻t0〜t1の時間帯でVpがVref8を超えた場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0065】
(b)FET(Q1)をオンとした後、負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、過電流判定を満たしてから時間T1が経過した際に、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えている場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図4に示す時刻t1〜t2の時間帯でVpがVref4を超えた場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0066】
(c)上記の時間T1が経過し、更に時間T2が経過した際に、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えている場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図4に示す時刻t2〜t3の時間帯でVpがVref2を超えた場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0067】
(d)上記の時間T1が経過し、更に時間T2が経過した際に、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を下回っており、且つ負荷電流I0が過電流判定を満たしている時間がT3に達し、この回数が5回となった場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図4に示す時刻t2〜t5の時間帯(t3〜t4を除く)で、過電流判定を満たし、且つVpがVref2を下回る時間がT3に達し、更にこれが5回繰り返された場合に、FET(Q1)をオフとする。なお、途中で過電流判定を満たさない時間帯(t3〜t4)が存在しても、FET(Q1)をオンとしてからの経過時間がT4に達していなければ、カウント値Ctはリセットされないので、時刻t5までカウント値Ctのカウントが継続される。
【0068】
こうして、FET(Q1)をオンとした直後において、負荷電流I0の大きさと、その継続時間に応じてFET(Q1)をオフとするか否かを判断することにより、FET(Q1)のオン時に生じる突入電流による誤遮断を防止し、且つ、短絡事故等に起因して過電流が発生した場合には、FET(Q1)をオフとして負荷回路101の電線、及びFET(Q1)を保護することができる。
【0069】
一方、FET(Q1)がオンとされてから時間T4(例えば、2秒)が経過すると、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(図3の、ステップS33)。つまり、FET(Q1)のオン後、時間T4が経過した後に、過電流が発生しているか否かを判断する。
【0070】
そして、過電流判定を満たさないと判断した場合には(ステップS33でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS34)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS36)、ステップS33の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS35)、ステップS33の処理に戻る。即ち、ステップS33〜S36の処理では、FET(Q1)をオンとしてから時間T4が経過した後に(突入電流が収束して定常電流となった場合に)、再度T4タイマを作動させて時間T4の計時を開始し、過電流が発生しなければ(ステップS33でNOの状態が継続されれば)、ステップS33〜S36の処理が繰り返される。つまり、負荷回路101が定常電流で動作しているときには、この処理が繰り返されることで、FET(Q1)のオン状態が維持される。
【0071】
また、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合には(ステップS33でYES)、ロジック回路14のT5タイマ(T5<T4)を作動させ、且つ、T4タイマをリセットする。更に、カウント値Ct=0に設定する(ステップS37)。
【0072】
次いで、負荷電流I0に比例した参照電圧Vpと4倍電圧Vref4とを比較する(ステップS38)。その結果、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていると判断した場合には(ステップS38でYES)、ロジック回路14はオア回路2に停止信号を出力し、該停止信号によりFET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(図2の、ステップS32)。即ち、FET(Q1)をオンとしてしばらく時間が経過し、突入電流が収束した状態において、4倍電圧Vref4を超えるような過大な電流が負荷回路101に流れた場合には、即時にFET(Q1)を遮断して負荷回路101の電線、及びFET(Q1)を保護する。
【0073】
また、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていないと判断した場合には(ステップS38でNO)、時間T5(既定時間)が経過したか否かを判断する(ステップS39)。つまり、負荷電流I0が過電流判定を満たしているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を上回らない程度である場合には、時間T5が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0074】
そして、時間T5が経過した場合には(ステップS39でYES)、前述したステップS33と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS40)。つまり、時間T5が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0075】
そして、過電流判定を満たしていないと判断した場合には(ステップS40でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS41)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS43)、ステップS40の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS42)、時間T4が経過している場合には(ステップS42でYES)、ステップS33の処理に戻る。また、時間T4が経過していない場合には(ステップS42でNO)、ステップS40の処理に戻る。この処理では、過電流が発生していないと判定されていても、時間T4が経過していない場合にはカウント値Ct(後述のS44参照)の値を維持し、時間T4が経過した場合にはカウント値Ctをリセットすることになる。
【0076】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たしている場合には(ステップS40でYES)、カウント値Ct=1であるか否かを判断し(ステップS44)、初期的にはCt=0であるから(ステップS44でNO)、カウント値Ctをインクリメントし、且つ、T5タイマを作動させる(ステップS45)。その後、ステップS38に処理を戻す。
【0077】
その後、ステップS38〜S44の処理を繰り返し、ステップS40の処理でYESと判定した場合には、カウント値Ct=1(既定回数)となるので、ステップS44の処理がYES判定となる。つまり、負荷電流I0が過電流判定を満たし、且つ、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4に達しない状態が時間T5だけ継続され、更に、その回数が2回に達した場合には、ステップS44でYES判定となる。
【0078】
ステップS44でYES判定とされた場合には、前述したステップS33、S40と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS46)。つまり、カウント値Ct=1となった後、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0079】
そして、過電流判定を満たさない場合には(ステップS46でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS47)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS49)、ステップS46の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には(ステップS47でYES)、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS48)、時間T4が経過している場合には(ステップS48でYES)、ステップS33の処理に戻る。また、時間T4が経過していない場合には(ステップS48でNO)、ステップS46の処理に戻る。この処理では、過電流が発生していないと判定されていても、時間T4が経過していない場合にはカウント値Ctの値を維持し、時間T4が経過した場合にはカウント値Ctをリセットすることになる。
【0080】
他方、過電流判定を満たす場合には(ステップS46でYES)、T5タイマを作動させ、T4タイマをリセットし、カウント値Ct=0とする(ステップS50)。つまり、4倍電圧Vref4を下回る程度の過電流が時間T5だけ継続し、これが2回繰り返されてもなお過電流が発生している場合には、再度T5タイマを作動させ、且つ、T4タイマをリセットし、カウント値Ctをリセットする。
【0081】
その後、参照電圧Vpと2倍電圧Vref2を比較する(ステップS51)。その結果、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を上回っていると判断した場合には(ステップS51でYES)、ロジック回路14はオア回路OR2に停止信号を出力し、該停止信号によりFET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(図2の、ステップS32)。即ち、4倍電圧Vref4を下回る程度の過電流が時間T5の2回分の時間だけ継続し、その後、なお2倍電圧Vref2を超える程度の過電流が発生している場合には、FET(Q1)を遮断して負荷回路101の電線、及びFET(Q1)を保護する。
【0082】
他方、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えていないと判断した場合には(ステップS51でNO)、時間T5が経過したか否かが判断される(ステップS52)。つまり、過電流が発生しているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を下回る程度である場合には、時間T5が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0083】
そして、時間T5が経過した場合には(ステップS52でYES)、前述したステップS33、S40、S46と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS53)。
【0084】
その結果、過電流判定を満たさない場合には(ステップS53でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS54)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS56)、ステップS53の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には(ステップS54でYES)、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS55)、時間T4が経過している場合には(ステップS55でYES)、ステップS33の処理に戻る。また、時間T4が経過していない場合には(ステップS55でNO)、ステップS53の処理に戻る。この処理では、過電流が発生していないと判断されていても、時間T4が経過していない場合にはカウント値Ctの値を維持し、時間T4が経過した場合にはカウント値Ctをリセットすることになる。
【0085】
他方、過電流判定を満たす場合には(ステップS53でYES)、カウント値Ct=4であるか否かを判断し、Ct=4でない場合には(ステップS57でNO)、カウント値Ctをインクリメントし、且つ、T5タイマを作動させて(ステップS58)、ステップS51の処理に戻る。
【0086】
また、カウント値Ct=4(既定回数)であると判断した場合には(ステップS57でYES)、FET(Q1)を遮断して負荷回路101の電線、及びFET(Q1)を保護する(ステップS32)。
【0087】
ここで、図3に示すステップS33以降の処理をまとめると、以下の(e)〜(g)のようになる。
【0088】
(e)突入電流が収束している状態で負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えた場合には、即時にFET(Q1)をオフとする。図5は突入電流の収束後においての、時間経過に対する参照電圧Vpの変化を示すタイミングチャートであり、図5に示す時刻t0で過電流が発生し、VpがVref4を超えた場合には、即時にFET(Q1)をオフとする。
【0089】
(f)負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を下回る程度の過電流が時間T5だけ継続し、更にこれが2回繰り返され、その後、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超える場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図5に示す時刻t0〜t1の時間帯(時間T5が2回繰り返される時間)でVpがVref4を下回り、その後(時刻t1の後)VpがVref2を超える場合には、FET(Q1)をオフとする。
【0090】
(g)負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を下回る程度の過電流が時間T5だけ継続し、更にこれが5回(Ct=0〜4の5回)繰り返された場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、例えば、図5に示す時刻t1〜t2の時間帯で過電流の発生する時間T5が3回繰り返され、その後、時刻t2〜t3の時間帯で定常電流に戻り、更に、時刻t3から過電流の発生する時間T5が2回繰り返された場合(但し、時刻t2〜t3の時間Tpは、Tp<T4)には、この時刻t4でカウント値Ct=4となって、FET(Q1)をオフとする。他方、図6に示すように、時刻t2で定常電流に戻り、再度過電流が検出される時刻t5までの経過時間TpがTp>T4である場合には、図3のステップS55の処理でステップS33の処理に戻るので、カウント値Ctがリセットされる。従って、時刻t5〜t6の時間帯(時間T5が7回繰り返された時間)で過電流が検出された場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0091】
こうして、負荷回路101に流れる突入電流が収束した後において、負荷電流I0の大きさ及びその継続時間に応じて、FET(Q1)のオフとするか否かを判断することにより、負荷回路101に生じる短絡事故等に起因して過電流が発生した場合には、FET(Q1)をオフとして負荷回路101の電線、及びFET(Q1)を保護することができる。
【0092】
次に、本発明の特徴的な構成である、オア回路OR1の出力信号を用いて過電流判定を行うことによる作用について、図8〜図10を参照して詳細に説明する。
【0093】
前述したように、本実施形態では参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えた場合に比較器CMP2の出力信号がHレベルとなり、参照電圧Vpを平滑化して得られる低速追随電圧Vcが基準電圧Vref1を超えた場合に比較器CMP1の出力信号がHレベルとなる。更に、これらのうちの少なくとも一方がHレベルになると、オア回路OR1の出力信号がHレベルとなって、過電流判定を満たすことになる。
【0094】
つまり、図8に示す曲線q11のように脈動する負荷電流I0が流れた場合には、参照電圧Vpのピーク値は2倍電圧Vref2を超えないので、比較器CMP2の出力信号はLレベルである。
【0095】
他方、低速追随電圧Vcは、曲線q12に示すように平滑化されるので、負荷電流I0の脈動の影響が軽減され、基準電圧Vref1を超えず、比較器CMP1の出力信号はLレベルとなり、オア回路OR1の出力信号は継続してLレベルとなる。即ち、過電流判定を満たさないことになる。従って、このような場合には、FET(Q1)は遮断されることなく、負荷RLの駆動が継続されることになる。
【0096】
これに対して、本発明の特徴的な構成要件である時定数回路を使用せずに、直接参照電圧Vpを比較器CMP1の入力端子(+端子)に供給し、基準電圧Vref1と比較するように構成すると(つまり、参照電圧Vpが基準電圧Vref1を超えることを過電流判定の条件に設定すると)、図8に示す時刻t2〜t3間では比較器CMP1の出力信号はLレベルとなるが、時刻t1〜t2の間では比較器CMP1の出力信号はHレベルとなり、過電流判定を満たしてしまい、FET(Q1)が遮断されてしまう。
【0097】
この問題を回避するためには、図10に示すように、基準電圧Vref1を大きい値とし、図8に示した2倍電圧Vref2と同等のレベルに設定しなければならない。この場合には、図10に示す符号q13のように、基準電圧Vref1を若干下回る程度の電流が継続して流れた場合には、FET(Q1)は遮断されないが、負荷回路101の電線温度が上昇して過熱するというトラブルが発生してしまう。
【0098】
即ち、本発明では、比較器CMP1、CMP2の出力のうち少なくとも一方がHレベルとなった場合に、過電流判定を満たすので、図7の符号q1に示したような脈動電流が継続して流れた場合でも、FET(Q1)を誤遮断することがなく、また、低めの過電流が継続して流れた場合には、これを検出してFET(Q1)を遮断することができる。
【0099】
更に、図9に示すように、時刻t4の時点で負荷回路101にデッドショートが発生した場合には、負荷回路101に短絡電流が流れるので、図9に示す曲線q12(低速追随電圧Vc)は時定数をもって緩やかに上昇するのに対して、曲線q11(参照電圧Vp)は急激に上昇し、瞬時に2倍電圧Vref2を上回り、更に、4倍電圧Vref4を上回る。即ち、低速追随電圧Vcが基準電圧Vref1を超えるよりも早く、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を上回るので、瞬時に過電流判定が満たされることになり、その後4倍電圧Vref4を上回った時点で、FET(Q1)を遮断して負荷回路101の電線、及びFET(Q1)を保護することができる。
【0100】
このようにして、本実施形態に係る負荷回路の過電流保護装置では、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を上回った場合、或いは、時定数回路を通過して得られる低速追随電圧Vcが基準電圧Vref1を上回った場合に、過電流判定を満たすものと判断し、この条件が満たされた場合に、各判定電圧(8倍電圧Vref8、4倍電圧Vref4、2倍電圧Vref2)と参照電圧Vpとを比較し、参照電圧Vpの大きさと継続時間に基づいて、FET(Q1)を遮断するか否かを判断する。
【0101】
従って、車両に搭載されるホーンのように、負荷電流I0が短時間に上下方向に大きく変動する負荷を駆動する場合等においては、負荷電流I0が定常電流であるにも関わらずむやみにFET(Q1)をオフとすることや、負荷回路101に影響を及ぼす程度の負荷電流が流れているにも関わらず、FET(Q1)が遮断されない等のトラブルを回避でき、負荷電流の大きさ、及びその継続時間に応じた極めて高精度な過電流保護を行うことができる。
【0102】
また、負荷電流I0が過電流となり、その後一旦定常電流となってから再度過電流となった場合には、定常電流となった時間が所定時間(T4)未満であれば、過電流発生回数のカウント値Ctはリセットされずに継続されるので、過電流発生時に短時間の電流低下が発生した場合であっても、負荷回路の電線、或いはFET(Q1)が過熱する前の時点で確実にFET(Q1)を遮断して負荷回路101の電線、及びFET(Q1)を保護することができる。反対に、定常電流となった時間が所定時間以上であれば、過電流継続時間の計時がリセットされ、次回過電流が発生した場合にはカウント値Ctが0からカウントされるので、FET(Q1)がむやみに遮断されることを防止できる。
【0103】
更に、FET(Q1)をオンとした直後の突入電流発生時には、負荷電流I0が8倍電流Iref8を超えた場合に即時にFET(Q1)を遮断し、突入電流が収束した後においては、負荷電流I0が4倍電流Iref4を超えた場合に即時にFET(Q1)を遮断するので、ショート故障等による過電流と、通常電流或いは突入電流とを区別することができ、負荷電流の状態に応じた高精度な過電流保護が可能となる。
【0104】
また、本実施形態では、マルチソースFET(Q1)の、メインFET(Q1a)を負荷の駆動、停止を制御する電子スイッチとして使用し、サブFET(Q1b)を参照電流生成用として使用するので、負荷電流I0に比例する大きさの参照電流Irを高精度に取得することができ、過電流検出の精度を向上させることができる。
【0105】
以上、本発明の負荷回路の過電流保護装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0106】
例えば、本実施形態では、第1基準電圧をVref1とし、第2基準電圧Vref2をVref1の2倍の電圧としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1基準電圧よりも第2基準電圧の方が大きければ良い。
【0107】
更に、本実施形態では、4倍電圧Vref4、及び8倍電圧Vref8を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、FET(Q1)を遮断するためのカウント値Ctの条件を、2回、5回などに設定したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、車両に搭載される負荷を駆動する負荷回路の過電流保護に利用することができる。
【符号の説明】
【0109】
11 バッファ
12 フリップフロップ回路
13 チャージポンプ
14 ロジック回路
15 VBAモニタ回路
16 Vds検出回路
17 オン故障検出器
18 発振器
19 過電圧検出器
VB バッテリ(直流電源)
Q1 マルチソースFET
Q1a メインFET
Q1b サブFET
CMP1〜CMP5 比較器
AMP1 アンプ
OR1 オア回路(基準判定手段)
OR2 オア回路
AND1 アンド回路
Ris 電流検出用抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源、負荷、電線、及び電子スイッチを備えた負荷回路に設けられ、前記負荷回路に設けられる電線を過電流から保護する過電流保護装置において、
電流検出抵抗を備え、前記負荷に流れる電流に比例する参照電流を流す参照電流生成回路と、
前記参照電流が流れることにより前記電流検出抵抗に生じる参照電圧の変化に対して、低速度で追随して変化する低速追随電圧を生成する時定数回路と、
前記時定数回路で生成された低速追随電圧と、予め設定した第1基準電圧とを比較する第1比較手段と、
前記電流検出抵抗に生じる参照電圧と、予め設定され前記第1基準電圧よりも大きい第2基準電圧とを比較する第2比較手段と、
前記第1比較手段で低速追随電圧が第1基準電圧を上回ったと判定された場合、または前記第2比較手段で参照電圧が第2基準電圧を上回ったと判定された場合に、基準信号を出力する基準判定手段と、
前記基準判定手段から基準信号が出力され、且つ、前記参照電圧が予め設定した過電流判定電圧を超えた場合に、前記電子スイッチを遮断する電子スイッチ制御手段と、
を有することを特徴とする負荷回路の過電流保護装置。
【請求項2】
前記電子スイッチ制御手段は、前記基準判定手段から基準信号が出力され、且つ、前記参照電圧が予め設定した過電流判定電圧を超え、更にその継続時間が予め設定した閾値を超えた場合に、前記電子スイッチを遮断することを特徴とする請求項1に記載の負荷回路の過電流保護装置。
【請求項3】
前記電子スイッチ制御手段は、前記基準信号が出力されているとき、
前記参照電圧が前記過電流判定電圧を超えている時間が既定時間だけ継続し、且つ前記既定時間だけ継続した回数を計数し、この計数した回数が既定回数となった場合に、前記電子スイッチを遮断する機能を備え、
更に、継続した回数を計数する際には、
前記基準信号が停止し、その後所定時間以内に再度基準信号が出力された場合には前記繰り返し回数の計数を継続し、前記所定時間以内に再度基準信号が出力されない場合には前記繰り返し回数をリセットすること
を特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の負荷回路の過電流保護装置。
【請求項4】
前記過電流判定電圧は、電圧値が異なる複数の判定電圧が設定され、
前記電子スイッチ制御手段は、前記参照電圧が前記複数の判定電圧のうちの最大の電圧値となる判定電圧を超えたと判断された場合に、前記電子スイッチを即時に遮断することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の負荷回路の過電流保護装置。
【請求項5】
前記電子スイッチを投入してから所定時間の経過前と経過後で、前記過電流判定電圧を変更することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の負荷回路の過電流保護装置。
【請求項6】
前記電子スイッチは、ドレイン及びゲートが共通とされたメインFET及びサブFETからなるマルチソースFETの、前記メインFETであり、前記ドレインを前記直流電源に接続し、前記メインFETのソースを前記負荷に接続し、
前記参照電流生成回路は、前記サブFETのソース電圧が前記メインFETのソース電圧と等しくなるように制御して前記電流検出抵抗に参照電流を流すことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の負荷回路の過電流保護装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−166869(P2011−166869A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23995(P2010−23995)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】