説明

走行支援装置

【課題】渋滞走行時にはなるべく長くモーターによる走行を実現させるなどして、排気
ガスの減少や燃費の向上をより一層良好なものとするための、ハイブリッド電気自動車に
対する走行支援装置を提供すること。
【解決手段】ハイブリッド電気自動車に対する走行支援装置において、渋滞情報に基づ
いて、自車両の先の進路に渋滞が存在する、又は先の進路で渋滞が発生すると判断した場
合、モーター3による走行を抑制する走行抑制手段を装備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走行支援装置に関し、より詳細には、ハイブリッド電気自動車に対する走行支
援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモーターとを搭載し、エンジンによる走行とモーターによる走行とをできる
ようにしたハイブリッド電気自動車が実用化されている。図6は、ハイブリッド電気自動
車の駆動システムの要部を概略的に示したブロック図である。図中1は駆動輪を示してお
り、駆動輪1へはエンジン2からの動力とモーター3からの動力とが伝達され、駆動輪1
が駆動するようになっている。また、エンジン2からの動力は発電機4へも伝達され、発
電機4が駆動するようになっている。発電機4が駆動することによって得られた電力はモ
ーター3及びバッテリー5へ供給されるようになっている。
【0003】
このようなハイブリッド電気自動車では、発進時や低速走行時、エンジン2は停止し、
バッテリー5からの電力でモーター3が駆動し、モーター3からの動力で駆動輪1が駆動
するようになっている。これにより、渋滞走行時は、エンジン2による走行ではなく、モ
ーター3による走行となり、排気ガスが減少し、燃費が向上する。
【0004】
通常走行時、エンジン2は駆動し、エンジン2からの動力は駆動輪1と発電機4とへ伝
達される。発電機4で得られた電力はモーター3へ供給され、モーター3からの動力が駆
動輪1へ伝達される。従って、通常走行時、エンジン2からの動力とモーター3からの動
力とで駆動輪1が駆動するようになっている。このときに発生する余剰エネルギーについ
ては、バッテリー5に貯蔵される(通常充電)。一方、減速時には、モーター3が発電機
として機能することになり、回生エネルギーが回収されてバッテリー5に貯蔵される(回
生貯蔵)。これにより、発進時や低速走行時に使った電力の一部が回収される。
【0005】
バッテリーの充電制御の方法としては、例えば、「ピンポン制御」や「追従制御」と呼
ばれるものがある。図7は、ピンポン制御を説明するための説明図である。横軸は時間、
縦軸はバッテリー残存容量を示し、SUは上限値、SDは下限値、Sはバッテリー残存容量を示している。ピンポン制御では、バッテリー残存容量Sを検出しつつ、バッテリー残存容量Sが下限値SDまで低下すれば、充電が開始され、上限値SUに達した後は、充電が停止されるようになっている。
【0006】
図8は、追従制御を説明するための説明図である。横軸は時間、縦軸はバッテリー残存
容量を示し、STは目標値、Sはバッテリー残存容量を示している。追従制御では、バッテリー残存容量Sを検出しつつ、バッテリー残存容量Sが目標値STより低下すれば、充
電が開始され、目標値STを超えれば、充電が停止されるようになっている。
【0007】
ところで、排気ガスの減少や燃費の向上のためには、渋滞走行時において、エンジン2
を停止した状態で、出来るだけ長い時間モーター3だけによる走行が行われることが望ま
しい。しかしながら、バッテリー残存容量が少なくなれば、渋滞走行時であっても、エン
ジン2による走行を行わなければならず、排気ガスを減少させたり、燃費をよくすること
ができなかった。
【0008】
また、上記したように、バッテリー残存容量が少なくなれば、充電が開始されていた。
すなわち、バッテリー残存容量が少なくなれば、たとえ停止時や低速走行時であったとし
ても、エンジン2が駆動し、エンジン2からの動力が発電機4へ供給され、発電機4が駆
動するようになっていた。
【0009】
しかしながら、エンジン2や発電機4の駆動音は決して静かな音ではなく、停止時や低
速走行時に、エンジン2や発電機4が駆動することは、騒音問題の点からも決して好まし
いことではない。特に、夜間、閑静な住宅街で、エンジン2や発電機4が駆動することは
好ましくない。
【0010】
このような問題を解決するものとして、例えば、下記の特許文献1には、バッテリーの
充電がピンポン制御により行われるハイブリッド電気自動車のバッテリー充電制御装置に
おいて、前方に渋滞が検知されると、バッテリー残存容量の上限値を通常より大きくし、
渋滞の最後尾に追いついた時にちょうどその上限値まで充電されるようにした技術につい
て開示されている。
【0011】
しかしながら、バッテリー残存容量の上限値を通常より大きくしたとしても、渋滞の最
後尾に追いつくまでに、その上限値まで充電されているとは限らず、渋滞走行時において
、モーターによる走行ではなくエンジンによる走行する期間が増え、排気ガスの減少や燃
費の向上を実現することができないおそれがある。
【特許文献1】特開2000−134719号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0012】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、渋滞走行時にはなるべく長くモーター
による走行を実現させるなどして、排気ガスの減少や燃費の向上をより一層良好なものと
するための、ハイブリッド電気自動車に対する走行支援装置を提供することを目的として
いる。
【0013】
上記目的を達成するために本発明に係る走行支援装置(1)は、ハイブリッド電気自動
車に対する走行支援装置において、交通情報取得手段により取得された交通情報に基づい
て、モーターによる走行を抑制するための所定の抑制条件が満たされているか否かを判断
する抑制条件成立判断手段と、該抑制条件成立判断手段により、前記所定の抑制条件が満
たされていると判断された場合、所定の期間、モーターによる走行を抑制する走行抑制手
段とを備え、前記所定の抑制条件に、自車両の先の進路に渋滞が存在すること、又は前記
先の進路での渋滞の発生が予想されることが含まれていることを特徴としている。
【0014】
上記走行支援装置(1)によれば、前記自車両の先の進路(走行することが予想される
場所)に渋滞が存在することが検知、又は前記先の進路での渋滞の発生が予想されると、
すなわち、渋滞に遭遇することが予想されると、前記所定の期間、モーターによる走行が
抑制される。例えば、渋滞の最後尾に追いつくまでの間、モーターによる走行が禁止され
ることになる。これにより、渋滞に入るまで、バッテリー残存容量の減少を抑えることが
できる。従って、渋滞の大部分をモーターによる走行が可能となり、排気ガスの少ない、
また燃費の良い走行を実現することができる。
【0015】
なお、前記先の進路に渋滞が遭遇するか否かの判断については、例えば、交通情報の一
つである、渋滞情報から判断するといった方法が挙げられる。また、前記先の進路で渋滞
が発生するか否かの判断については、例えば、交通情報の一つである、通行止め情報や工
事情報などから判断するといった方法が挙げられる。通行止めはもちろん、工事があると
車線などが規制され、渋滞が発生する可能性が高くなる。
【0016】
また、本発明に係る走行支援装置(2)は、上記走行支援装置(1)において、前記先
の進路は、目的地へ到達するまでの前記自車両の走行ルートに基づいて決定されるように
構成されていることを特徴としている。
【0017】
上記走行支援装置(2)によれば、前記先の進路(走行することが予想される場所)が
、前記目的地へ到達するまでの前記自車両の走行ルートに基づいて決定されるので、前記
先の進路の予想精度を高めることができる。従って、渋滞に遭遇するか否かの判断をより
精度良く行うことができる。
【0018】
また、本発明に係る走行支援装置(3)は、上記走行支援装置(1)又は(2)におい
て、渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存容量を予想する残存容量予想手段と、
該残存容量予想手段により予想された、渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存容
量と、渋滞の長さとに基づいて、モーターによる走行での渋滞走破の可否を判断する渋滞
走破可否判断手段とを備え、前記所定の抑制条件に、前記渋滞走破可否判断手段によりモ
ーターによる走行での渋滞走破ができないと判断されることが含まれていることを特徴と
している。
【0019】
上記走行支援装置(3)によれば、モーターによる走行での渋滞走破ができないと判断
された場合、前記所定の期間(例えば、渋滞の最後尾に追いつくまでの間)、モーターに
よる走行が抑制される。換言すれば、渋滞走行時において、排気ガスを出さない、また燃
費の良い走行が実現できる場合には、モーターによる走行は抑制されない。従って、必要
以上の抑制を防止することができ、より快適な走行を実現することができる。
【0020】
また、本発明に係る走行支援装置(4)は、上記走行支援装置(3)において、前記残
存容量予想手段が、バッテリー残存容量検出手段から得られる残存容量情報と、渋滞まで
の距離情報とに基づいて、渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存容量を予想する
ものであることを特徴としている。
【0021】
上記走行支援装置(4)によれば、前記残存容量情報と、渋滞までの距離情報とに基づ
いて、渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存容量が予想されるので、予想精度を
高めることができる。従って、モーターによる走行での渋滞走破の可否判断の精度につい
ても高めることができる。
【0022】
また、本発明に係る走行支援装置(5)は、ハイブリッド電気自動車に対する走行支援
装置において、バッテリー残存容量の減少を抑制するのに適した、目的地までの走行ルー
トを選定する走行ルート選定手段を備え、該走行ルート選定手段が、傾斜が緩やかな上り
下りが続く道路を優先して、前記走行ルートを選定するものであることを特徴としている

【0023】
上記走行支援装置(5)によれば、傾斜が緩やかな上り下りの続く道路が優先されて、
前記走行ルートが選定される。上りでは、バッテリーは消費されることとなるが、下りで
は、回生充電が行われる。上りが続いたり、急な傾斜を上ると、バッテリー残存容量は大
きく減ってしまうが、距離が短く、傾斜が緩やかな上りでは、バッテリー残存容量はあま
り大きくは減らない。従って、適当なタイミングで充放電が繰り返される道路が優先され
て、前記走行ルートが選定されるので、バッテリー残存容量の減少を抑制することができ
、モーターによる走行距離を延ばすことができる。
【0024】
また、本発明に係る走行支援装置(6)は、ハイブリッド電気自動車に対する走行支援
装置において、バッテリー残存容量の減少を抑制するのに適した、目的地までの走行ルー
トを選定する走行ルート選定手段を備え、該走行ルート選定手段が、渋滞情報、信号設置
情報、踏切情報、及び車線数情報のうちの少なくとも一つの情報を加味して、前記走行ル
ートを選定するものであることを特徴としている。
【0025】
上記走行支援装置(6)によれば、渋滞情報、信号設置情報、踏切情報、及び車線数情
報のうちの少なくとも一つの情報を加味して、前記走行ルートが選定される。例えば、渋
滞の無いルートや、渋滞距離の短いルート、信号設置数の少ないルート、踏切数の少ない
ルート、車線数の多いルートを優先して前記走行ルートとして選定することができる。
【0026】
渋滞走行時にはバッテリーの消費は多くなり、また、信号待ちや踏切待ちをすると、再
発進しなければならず、やはりバッテリーの消費は多くなる。しかしながら、渋滞の無い
ルートや、渋滞距離の短いルート、信号設置数の少ないルート、踏切数の少ないルートを
優先して前記走行ルートとすることによって、バッテリーの消費を抑制することができる

【0027】
また、ハイブリッド電気自動車の場合、バッテリー消費を抑制する走行方法があるが(
例えば、所定の速度を維持しての走行)、その走行方法では、車線が一車線の場合、交通
の流れを妨げてしまうおそれがある。しかしながら、車線数の多いルートを優先して前記
走行ルートとすることによって、バッテリー消費を抑制する走行を行うことができる。
【0028】
また、本発明に係る走行支援装置(7)は、上記走行支援装置(5)において、前記走
行ルート選定手段が、渋滞情報、信号設置情報、踏切情報、及び車線数情報のうちの少な
くとも一つの情報を加味して、前記走行ルートを選定するものであることを特徴としてい
る。
【0029】
上記走行支援装置(7)によれば、傾斜が緩やかな上り下りの続く道路が優先されるだ
けでなく、渋滞情報、信号設置情報、踏切情報、及び車線数情報のうちの少なくとも一つ
の情報を加味して、前記走行ルートが選定されるので、バッテリー残存容量の減少をより
一層抑制することができる。
【0030】
また、本発明に係る走行支援装置(8)は、上記走行支援装置(6)又は(7)におい
て、バッテリー残存容量検出手段から得られる残存容量情報に基づいて、渋滞情報、信号
設置情報、踏切情報、及び車線数情報のうちのいずれかの情報を加味しての前記走行ルー
トの選定の要否を判断する選定要否判断手段を備え、該選定要否判断手段による判断結果
に基づいて、これら情報を加味しての前記走行ルートの選定が行われるように構成されて
いることを特徴としている。
【0031】
バッテリーの残存容量が多ければ、バッテリー残存容量の減少を抑制するための走行ル
ートを選定しなくても良い場合がある。上記走行支援装置(8)によれば、前記残存容量
情報に基づいて、渋滞情報や信号設置情報などを加味しての前記走行ルート(すなわち、
バッテリー残存容量の減少を抑制するのに適した走行ルート)の選定の要否が判断され、
その判断結果に基づいて、渋滞情報などを加味しての前記走行ルートの選定が行われる。
従って、必要以上に前記走行ルートの選定が行われるのを防止することができる。
【0032】
また、本発明に係る走行支援装置(9)は、上記走行支援装置(6)〜(8)のいずれ
かにおいて、渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存容量を予想する残存容量予想
手段と、該残存容量予想手段により予想された、渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリ
ー残存容量と、渋滞の長さとに基づいて、モーターによる走行での渋滞走破の可否を判断
する渋滞走破可否判断手段とを備え、該渋滞走破可否判断手段による判断結果に基づいて
、当該渋滞を避けた前記走行ルートの選定が行われるように構成されていることを特徴と
している。
【0033】
上記走行支援装置(9)によれば、モーターによる走行での渋滞走破ができないと判断
された場合、当該渋滞を避けた前記走行ルートの選定が行われる。換言すれば、渋滞走行
時において、排気ガスを出さない、また燃費の良い走行が実現できる場合には、渋滞を避
けたルートの選定はされない。従って、必要以上に遠回りとなるルートが選定されるのを
防止することができる。
【0034】
また、本発明に係る走行支援装置(10)は、ハイブリッド電気自動車に対する走行支
援装置において、バッテリー残存容量検出手段から得られる残存容量情報に基づいて、バ
ッテリー充電のためにエンジンを駆動させる駆動手段と、使用者が操作し得る操作手段か
ら得られる、バッテリー充電のためのエンジン駆動の要否に関する情報に基づいて、前記
駆動手段によるエンジン駆動を禁止する禁止手段とを備えていることを特徴としている。
【0035】
上記走行支援装置(10)によれば、バッテリー充電のためのエンジン駆動を行わせる
か否かを使用者が選択することができる。これにより、閑静な住宅街などで停止している
時や、低速で走行している時に、バッテリー充電が行われるのを防止することができる。
従って、閑静な住宅街などでエンジンや発電機の駆動音が鳴るのを防止することができる

【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係る走行支援装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、実
施の形態(1)に係る走行支援装置を含んで構成される走行支援システムの要部を概略的
に示したブロック図である。なお、図6に示したハイブリッド電気自動車の駆動システム
と同様の構成部分については、同符号を付している。
【0037】
図中11は、CPU(図示せず)などを含んで構成されるコントローラを示しており、
コントローラ11にはエンジン2、モーター3、及び発電機4が接続されており、コント
ローラ11でエンジン2、モーター3、及び発電機4を制御することができるようになっ
ている。また、コントローラ11には、バッテリー5の残存容量を検出する残存容量検出
手段12が接続されており、コントローラ11ではバッテリー5の残存容量を把握するこ
とができるようになっている。なお、エンジン2については、ガソリンを用いたエンジン
であっても、燃料電池を用いたものであっても良い。
【0038】
ナビゲーション装置13には、衛星からのGPS信号を受信するGPS受信機(図示せ
ず)が接続されており、ナビゲーション装置13では自車両の現在位置を把握することが
できるようになっている。また、ナビゲーション装置13には、図示しないFM多重受信
機、電波ビーコン受信機、及び光ビーコン受信機が接続されており、ナビゲーション装置
13ではこれら受信機を介してVICS情報(例えば、渋滞情報)を取得することができ
るようになっている。
【0039】
また、コントローラ11にはナビゲーション装置13が接続されており、ナビゲーショ
ン装置13からコントローラ11へ、目的地へ到達するまでの走行ルート上における渋滞
情報(例えば、渋滞発生/解消情報、渋滞までの距離情報、渋滞の長さ情報)などが所定
のタイミングで送信されるようになっている。
【0040】
実施の形態(1)に係る走行支援装置を含んで構成される走行支援システムにおけるコ
ントローラ11の行う処理動作[1]を図2に示したフローチャートに基づいて説明する
。なお、この処理動作[1]はナビゲーション装置13から送信されてくる渋滞情報を受
信した場合に行われる動作である。
【0041】
まず、渋滞発生情報であるか否かを判断し(ステップS1)、渋滞発生情報であると判
断すれば、次に、渋滞までの距離情報に基づいて、渋滞の最後尾に追いつくまでに消費す
るバッテリー容量を算出し(ステップS2)、算出して得られた結果と、残存容量検出手
段12から得られるバッテリー5の残存容量情報とに基づいて、渋滞の最後尾に追いつい
た時のバッテリー残存容量Cを算出する(ステップS3)。なお、渋滞の最後尾に追いつ
くまでに消費するバッテリー容量の算出方法としては、例えば、走行距離と、通常走行時
におけるバッテリー消費量との関係を示したデータベースを用意し、そのデータベースに
基づいて算出するといった方法が挙げられる。
【0042】
次に、渋滞の長さ情報に基づいて、渋滞をモーター3による走行で通過するのに必要と
なるバッテリー容量Csを算出し(ステップS4)、算出したバッテリー容量Csがバッ
テリー残存容量C以下であるか否かを判断する(ステップS5)。なお、渋滞をモーター
3による走行で通過するのに必要となるバッテリー容量の算出方法としては、例えば、走
行距離と、低速走行時におけるバッテリー消費量との関係を示したデータベースを用意し
、そのデータベースに基づいて算出するといった方法が挙げられる。
【0043】
渋滞をモーター3による走行で通過するのに必要となるバッテリー容量Csが、渋滞の
最後尾に追いついた時のバッテリー残存容量C以下でない(すなわち、モーター3による
走行での渋滞走破ができない)と判断すれば、所定の期間(例えば、渋滞の最後尾へ追い
つくまでの間)、モーター3による走行を禁止し(ステップS6)、その後、モーター3
による走行を禁止したことを示す禁止フラグfを1にし(ステップS7)、そして処理動
作[1]を終了する。
【0044】
一方、バッテリー容量Csがバッテリー残存容量C以下である(すなわち、モーター3
による走行での渋滞走破ができる)と判断すれば、次に、禁止フラグfが1であるか否か
を判断し(ステップS8)、禁止フラグfが1であると判断すれば、モーター3による走
行禁止を解除し(ステップS9)、禁止フラグfを0に戻し(ステップS10)、そして
処理動作[1]を終了する。他方、禁止フラグfが1でない(すなわち、禁止フラグfは
0である)と判断すれば、そのまま処理動作[1]を終了する。
【0045】
また、ステップS1において、渋滞発生情報ではない(すなわち、渋滞解消情報である
)と判断すれば、次に、禁止フラグfが1であるか否かを判断し(ステップS11)、禁
止フラグfが1であると判断すれば、モーター3による走行禁止を解除し(ステップS1
2)、禁止フラグfを0に戻し(ステップS13)、そして処理動作[1]を終了する。
他方、禁止フラグfが1でない(すなわち、禁止フラグfは0である)と判断すれば、そ
のまま処理動作[1]を終了する。
【0046】
上記実施の形態(1)に係る走行支援装置によれば、前記自車両の先の進路(走行する
ことが予想される場所)に渋滞が存在することが検知されると、前記所定の期間、モータ
ー3による走行が抑制される。例えば、渋滞の最後尾に追いつくまでの間、モーター3に
よる走行が禁止されることになる。これにより、渋滞に入るまで、バッテリー残存容量の
減少を抑えることができる。従って、渋滞の大部分をモーター3による走行が可能となり
、排気ガスの少ない、また燃費の良い走行を実現することができる。
【0047】
なお、上記実施の形態(1)に係る走行支援装置では、前記自車両の先の進路に渋滞が
存在することが検知されると、モーター3による走行が抑制されるようになっているが、
別の実施の形態では、VICS情報(例えば、工事情報や通行止めなどの規制情報)に基
づいて、前記自車両の先の進路での渋滞の発生が予想される(すなわち、渋滞が発生する
可能性が高いと判断した場合)と、モーター3による走行を抑制するようにしても良い。
また、走行を抑制すべき期間については、工事の長さや規制区間長に基づいて求めるよう
にしても良い。これにより、工事や交通規制などに起因して片側通行などになって、車両
走行の流れが悪くなり、突然の渋滞に遭遇したとしても、渋滞の発生を予想して、予めバ
ッテリーを蓄えているので、万一の場合にも対応が可能となる。
【0048】
また、さらに別の実施の形態に係る走行支援装置を含んで構成される走行支援システム
では、図3に示したように、自車両の停止時における、バッテリー充電のためのエンジン
駆動の要否を使用者が選択するための操作手段14を設け、操作手段14から得られる前
記要否に関する情報に基づいて、コントローラ11Aが前記自車両の停止時におけるエン
ジン駆動を禁止する構成にしても良い。これにより、閑静な住宅街などでバッテリー充電
のためにエンジン2や発電機4の駆動音が鳴るのを防止することができる。
【0049】
図4は、実施の形態(2)に係る走行支援装置を含んで構成される走行支援システムの
要部を概略的に示したブロック図である。図中21は、図6に示したような駆動システム
を有したハイブリッド電気自動車に装備される走行支援装置を示しており、走行支援装置
21はCPU(図示せず)などを含んで構成されるコントローラ22と、地図データや施
設データなどが記憶されたDVD−ROM23から地図データなどを読み出すためのDV
Dドライブ24と、ボタンスイッチ25aを有したリモコン25と、ディスプレイ26と
を含んで構成されている。なお、この地図データには、道路上に設置されている信号の座
標情報や、踏切の座標情報、車線数情報、道路の勾配情報などが含まれている。
【0050】
コントローラ22に接続されているGPS受信機27は、アンテナ28を介して衛星か
らのGPS信号を受信するものであり、コントローラ22はGPS信号に基づいて自車両
の現在位置を割り出すことができるようになっている。また、コントローラ22には自車
の速度に関するデータを検出するための車速センサ29と、自車両の水平面内における方
位に関するデータを検出するためのジャイロセンサ30とが接続されている。
【0051】
また、コントローラ22に接続されているFM多重受信機31、電波ビーコン受信機3
2、及び光ビーコン受信機33は、FM多重アンテナ34、電波ビーコン受信アンテナ3
5、光ビーコン受光部36それぞれを介してVICS情報(例えば、渋滞情報)を受信す
るものであり、コントローラ22はVICS情報を取得することができるようになってい
る。また、コントローラ22には、バッテリー5の残存容量を検出する残存容量検出手段
12が接続されており、コントローラ22ではバッテリー5の残存容量を把握することが
できるようになっている。
【0052】
実施の形態(2)に係る走行支援装置21におけるコントローラ22の行う処理動作[
2]を図5に示したフローチャートに基づいて説明する。なお、この処理動作[2]はリ
モコン25などの入力手段を通じて、使用者により目的地Gが設定された場合に行われる
動作である。
【0053】
まず、GPS信号に基づいて、自車両の現在位置情報を取得し(ステップS21)、次
に、現在位置情報に基づいて、目的地Gへ到達するまでの走行ルートを複数探索し(ステ
ップS22)、各走行ルートに対し、所定の条件を加味して使用者へ推奨すべき推奨順位
を決定する(ステップS23)。例えば、走行ルート上に信号や踏切が存在すれば、「+
500m」といった距離の増加を行い、また、車線数が複数以上ある道路や、傾斜が緩や
かな上り下りが続く道路については、「×70%」といった距離の減少を行い、バッテリ
ー残存容量の減少を抑制することのできる走行ルートの距離が短縮されるようにする。
【0054】
次に、カウンタnを1にして初期化し(ステップS24)、その後、交通情報に基づい
て、推奨順位n番目の走行ルート(すなわち、前記所定の条件を加味した結果の走行距離
がn番目に短い走行ルート)上に、渋滞が存在するか否かを判断し(ステップS25)、
渋滞が存在しないと判断すれば、当該走行ルートを使用者へ提供すべき走行ルートに決定
する(ステップS26)。
【0055】
一方、走行ルート上に渋滞が存在すると判断すれば、次に、渋滞までの距離情報に基づ
いて、渋滞の最後尾に追いつくまでに消費するバッテリー容量を算出し(ステップS27
)、算出して得られた結果と、残存容量検出手段12から得られるバッテリー5の残存容
量情報とに基づいて、渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存容量Cを算出する(
ステップS28)。
【0056】
次に、渋滞の長さ情報に基づいて、渋滞をモーター3による走行で通過するのに必要と
なるバッテリー容量Csを算出し(ステップS29)、算出したバッテリー容量Csがバ
ッテリー残存容量C以下であるか否かを判断し(ステップS30)、バッテリー容量Cs
がバッテリー残存容量C以下である(すなわち、モーター3による走行での渋滞走破がで
きる)と判断すれば、当該走行ルートを使用者へ提供すべき走行ルートに決定する(ステ
ップS31)。
【0057】
一方、渋滞をモーター3による走行で通過するのに必要となるバッテリー容量Csが、
渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存容量C以下でない(すなわち、モーター3
による走行での渋滞走破ができない)と判断すれば、次に、カウンタnに1を加算し(ス
テップS32)、推奨順位n番目の走行ルートが存在するか否かを判断する(ステップS
33)。
【0058】
推奨順位n番目の走行ルートが存在すると判断すれば、ステップS25へ戻って、推奨
順位n番目の走行ルート上に、渋滞が存在するか否かを判断する。一方、推奨順位n番目
の走行ルートは存在しないと判断すれば、推奨順位1番目の走行ルートを使用者へ提供す
べき走行ルートに決定する(ステップS34)。
【0059】
上記実施の形態(2)に係る走行支援装置によれば、傾斜が緩やかな上り下りの続く道
路や、渋滞の無いルート、渋滞距離の短いルート、信号設置数の少ないルート、踏切数の
少ないルート、車線数の多いルートが優先されて、目的地Gまでの走行ルートが選定され
る。従って、バッテリー5の残存容量の減少を抑制することができ、モーター3による走
行距離を延ばすことができる。
【0060】
なお、別の実施の形態に係る走行支援装置では、残存容量検出手段12から得られるバ
ッテリー5の残存容量情報に基づいて、バッテリー5の残存容量が少ない場合に限り、渋
滞情報や信号設置情報、踏切設置情報、車線数情報などを加味して、走行ルートを選定す
るようにしても良い。これにより、必要以上に遠回りとなるルートが選定されるのを防止
することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態(1)に係る走行支援装置を含んで構成される走行支援システムの要部を概略的に示したブロック図である。
【図2】実施の形態(1)に係る走行支援装置を含んで構成される走行支援システムにおけるコントローラの行う処理動作を示したフローチャートである。
【図3】別の実施の形態に係る走行支援装置を含んで構成される走行支援システムの要部を概略的に示したブロック図である。
【図4】実施の形態(2)に係る走行支援装置を含んで構成される走行支援システムの要部を概略的に示したブロック図である。
【図5】実施の形態(2)に係る走行支援装置におけるコントローラの行う処理動作を示したフローチャートである。
【図6】従来のハイブリッド電気自動車の駆動システムの要部を概略的に示したブロック図である。
【図7】バッテリー充電のピンポン制御を説明するための説明図である。
【図8】バッテリー充電の追従制御を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 駆動輪
2 エンジン
3 モーター
4 発電機
5 バッテリー
11、11A、22 コントローラ
12 残存容量検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド電気自動車に対する走行支援装置において、
交通情報取得手段により取得された交通情報に基づいて、モーターによる走行を抑制す
るための所定の抑制条件が満たされているか否かを判断する抑制条件成立判断手段と、
該抑制条件成立判断手段により、前記所定の抑制条件が満たされていると判断された場
合、所定の期間、モーターによる走行を抑制する走行抑制手段とを備え、
前記所定の抑制条件に、自車両の先の進路に渋滞が存在すること、又は前記先の進路で
の渋滞の発生が予想されることが含まれていることを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記先の進路は、目的地へ到達するまでの前記自車両の走行ルートに基づいて決定され
るように構成されていることを特徴とする請求項1記載の走行支援装置。
【請求項3】
渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存容量を予想する残存容量予想手段と、
該残存容量予想手段により予想された、渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存
容量と、渋滞の長さとに基づいて、モーターによる走行での渋滞走破の可否を判断する渋
滞走破可否判断手段とを備え、
前記所定の抑制条件に、前記渋滞走破可否判断手段によりモーターによる走行での渋滞
走破ができないと判断されることが含まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2
記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記残存容量予想手段が、バッテリー残存容量検出手段から得られる残存容量情報と、
渋滞までの距離情報とに基づいて、渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存容量を
予想するものであることを特徴とする請求項3記載の走行支援装置。
【請求項5】
ハイブリッド電気自動車に対する走行支援装置において、
バッテリー残存容量の減少を抑制するのに適した、目的地までの走行ルートを選定する
走行ルート選定手段を備え、
該走行ルート選定手段が、傾斜が緩やかな上り下りが続く道路を優先して、前記走行ル
ートを選定するものであることを特徴とする走行支援装置。
【請求項6】
ハイブリッド電気自動車に対する走行支援装置において、
バッテリー残存容量の減少を抑制するのに適した、目的地までの走行ルートを選定する
走行ルート選定手段を備え、
該走行ルート選定手段が、渋滞情報、信号設置情報、踏切情報、及び車線数情報のうち
の少なくとも一つの情報を加味して、前記走行ルートを選定するものであることを特徴と
する走行支援装置。
【請求項7】
前記走行ルート選定手段が、渋滞情報、信号設置情報、踏切情報、及び車線数情報のう
ちの少なくとも一つの情報を加味して、前記走行ルートを選定するものであることを特徴
とする請求項5記載の走行支援装置。
【請求項8】
バッテリー残存容量検出手段から得られる残存容量情報に基づいて、渋滞情報、信号設
置情報、踏切情報、及び車線数情報のうちのいずれかの情報を加味しての前記走行ルート
の選定の要否を判断する選定要否判断手段を備え、
該選定要否判断手段による判断結果に基づいて、これら情報を加味しての前記走行ルー
トの選定が行われるように構成されていることを特徴とする請求項6又は請求項7記載の
走行支援装置。
【請求項9】
渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存容量を予想する残存容量予想手段と、
該残存容量予想手段により予想された、渋滞の最後尾に追いついた時のバッテリー残存
容量と、渋滞の長さとに基づいて、モーターによる走行での渋滞走破の可否を判断する渋
滞走破可否判断手段とを備え、
該渋滞走破可否判断手段による判断結果に基づいて、当該渋滞を避けた前記走行ルート
の選定が行われるように構成されていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかの項に
記載の走行支援装置。
【請求項10】
ハイブリッド電気自動車に対する走行支援装置において、
バッテリー残存容量検出手段から得られる残存容量情報に基づいて、バッテリー充電の
ためにエンジンを駆動させる駆動手段と、
使用者が操作し得る操作手段から得られる、バッテリー充電のためのエンジン駆動の要
否に関する情報に基づいて、前記駆動手段によるエンジン駆動を禁止する禁止手段とを備
えていることを特徴とする走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−109577(P2006−109577A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291053(P2004−291053)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】