説明

起動回路、スイッチング電源用IC及びスイッチング電源装置

【課題】起動回路を構成するJFETのピンチオフ維持のために生じる電力損失を低減できる起動回路、スイッチング電源用IC及びスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】起動電源(電源コンデンサ)と平滑コンデンサによる補助電源との間に接続され、起動電源による起動電流を平滑コンデンサに流すMOSFETと、ドレイン端子がMOSFETのドレイン端子に接続され、ソース端子が抵抗を介してMOSFETのゲート端子に接続されたJFETと、起動時にJFETのピンチオフ電圧が第1基準電圧値となるように制御し、起動後にJFETのピンチオフ電圧が第1基準電圧値未満の値である第2基準電圧値となるように制御するピンチオフ電圧制御部(可変電圧源)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置を起動する起動回路、これを用いたスイッチング電源用IC及びスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、起動能力を十分与え、安定動作範囲を広くできる電界効果型接合トランジスタ、スイッチング電源IC及びスイッチング電源が開示されている。一個のドレイン領域に対して複数個のソース領域を有するJFETは、そのソース電極を複数のグループに分けることで一つのJFETに等価的に複数のJFETを形成することができる。このJFETを適用したスイッチング電源の起動回路は、起動用のNch−MOSFETのゲート信号を与えるJFETと、当該起動用Nch−MOSFETを介して容量素子(平滑コンデンサ)に電流を供給するJFETとに役割分担させることで、起動電流供給能力の増大を図り、スイッチング電源の動作範囲を広げることができる。
【0003】
特許文献1には、駆動能力を十分与え、安定動作範囲を広くできることを目的とした電界効果型接合トランジスタ、スイッチング電源IC及びスイッチング電源が記載されている。図9は、特許文献1に記載された従来の起動回路133及びこれを用いたスイッチング電源装置100の構成を示す回路図である。このスイッチング電源装置100は、図9に示すように、交流電源101、ヒューズ102、整流器103、電源コンデンサ104、トランス105、ダイオード107、出力コンデンサ108、出力端子109、平滑コンデンサ110、ダイオード112、スイッチング電源用IC120、及びnMOSFET121により構成される。
【0004】
電源コンデンサ104と平滑コンデンサ110とに接続されるスイッチング電源用IC120は、起動回路133と制御回路129とを備えている。ここで、起動回路133は、等価的に複数のJFETを有するJFET10(JFET124,125)と、MOSFET127とを備えている。また、制御回路129は、MOSFET134を含む電源部131と、制御部132とを有している。
【0005】
交流電源101からヒューズ102を通して整流器103に交流電圧が印加され、整流器103から直流電圧が電源コンデンサ104に印加され、電源コンデンサ104は直流電源となる。この電源コンデンサ104は、直流電圧をトランス105の一次巻線106に印加する。また、電源用コンデンサ104は、スイッチング電源用IC120のJFET10(JFET124,125)のドレイン端子123に直流電圧を印加する。
【0006】
JFET124,125のゲート端子は接地され、グランドGNDに電位が固定されている。また、JFET124のソース端子203Aは、抵抗126を介してnMOSFET127のゲート端子206と制御回路129とに接続されている。JFET125のソース端子203Bは、nMOSFET127のドレイン端子に接続されている。さらに、nMOSFET127のソース端子は、制御回路129と平滑コンデンサ110とに接続されている。
【0007】
電源部131は、制御部132に電源を供給するためのものであり、平滑コンデンサ110が所定の電圧まで充電された際にオンされるnMOSFET134を有している。ここで、所定の電圧とは、制御回路129を安定に起動させることができる電圧である。また、電源部131には、ゲート端子206とnMOSFET127のソース端子とに接続され、JFET124,125のそれぞれに定電流を流すための図示されない定電流回路が設けられている。
【0008】
充電された電源コンデンサ104からJFET10のドレイン端子に電流が供給され、JFET124に定電流が流れる。ゲート端子206の電圧は、平滑コンデンサ110が所定の電圧に充電されるまでの起動回路出力電圧端子128の電圧レベルにおいて、nMOSFET127がオンを維持するためのしきい値電圧以上となるように設定されている。よって、nMOSFET127がオンし、JFET125及びnMOSFET127に定電流(起動電流)が流れ、平滑コンデンサ110を充電する。
【0009】
平滑コンデンサ110が所定の電圧に充電されると制御回路129が起動し、nMOSFET121が動作を開始する。nMOSFET121が動作を開始すると、トランス105の二次巻線111bからの電流がダイオード112を介して平滑コンデンサ110を充電し、nMOSFET121は動作を継続する。
【0010】
また、nMOSFET121が動作を開始すると、トランス105の二次巻線111aからの電流がダイオード107を介して出力コンデンサ108を充電し、この出力コンデンサ108は、出力端子109を通して直流電圧、直流電流を出力する。
【0011】
さらに、制御回路129が起動すると、電源部131のnMOSFET134をオンしてゲート端子206の電圧レベルをnMOSFET127のしきい値より低くするため、nMOSFET127はオフされる。nMOSFET127がオフされることにより、JFET125のソース端子の電圧レベルが高くなり、JFET125のドリフト領域(チャネル)がカットオフされドレイン電流(定電流)が遮断される。JFET124は、抵抗126によって電圧降下を発生し、ソース端子の電圧レベルが高くなり、ドレイン領域(チャネル)がピンチオフされドレイン電流が遮断される(ほとんど流れなくなる)。
【0012】
このように、図9に示すスイッチング電源装置100においては、ゲート端子206がnMOSFET127のドレイン端子と分離されているので、ゲート端子206の電圧レベルは、nMOSFET127のドレイン端子の電圧レベルと無関係になる。よって、JFET125のソース端子203Bの電圧レベルがnMOSFET127のソース端子の電圧レベルとほぼ同じ程度に低くできるため、平滑コンデンサ110の充電電圧のレベルを所定の充電電圧レベルとする場合、起動電流を大きくすることができる。さらに、JFET125のソース端子203Bの電圧レベルがnMOSFET127のソース端子の電圧レベルとほぼ同じ程度に低くできるため、所定の起動電流を流す場合、起動回路出力端子128の電圧レベルを高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−258554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に示すようなスイッチング電源は、上述したように、起動後にJFET124が所定の電圧でピンチオフされる。その際に、ピンチオフ電圧は、抵抗126に印加され、抵抗126に電流を流すことで電力損失を生じるという問題点を有する。
【0015】
すなわち、図9に示す起動回路133は、JFET124のピンチオフ電圧を利用してMOSFET127のゲートをオンさせ起動させる。しかしながら、VCC(平滑コンデンサ110の電圧)印加時にオンさせる必要があるために、ピンチオフ電圧Vpは、VCC+MOSFET127のしきい値電圧VTH、及びその間に接続されている各素子の電圧ドロップ分を追加した電圧以上の高い値が必要になる。
【0016】
また、起動後はMOSFET127をオフさせるために電源部131のnMOSFET134をオンしてMOSFET127のゲート電圧をほぼGNDレベルにするため、ピンチオフ電圧Vpが抵抗126に印加され、その時に流れる電流I(=Vp/R1、R1は抵抗126の抵抗値)が無駄な消費電流となってしまう。消費電力を抑えるためにピンチオフ電圧Vpを低く設定すると、VCC印加時にMOSFET127がオンせず、起動回路133は起動できなくなってしまう。
【0017】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、起動回路を構成するJFETのピンチオフ維持のために生じる電力損失を低減できる起動回路、スイッチング電源用IC及びスイッチング電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る起動回路は、上記課題を解決するために、起動電源と容量素子による補助電源との間に接続され、前記起動電源による起動電流を前記容量素子に流すMOSFETと、ドレイン端子が前記MOSFETのドレイン端子に接続され、ソース端子が抵抗を介して前記MOSFETのゲート端子に接続されたJFETと、起動時に前記JFETのピンチオフ電圧が第1基準電圧値となるように制御し、起動後に前記JFETのピンチオフ電圧が前記第1基準電圧値未満の値である第2基準電圧値となるように制御するピンチオフ電圧制御部とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るスイッチング電源用ICは、上記課題を解決するために、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の起動回路と、前記容量素子の充電電圧が所定値以上の場合に起動して、スイッチング素子を制御する制御回路とを同一半導体基板内に備えることを特徴とする。
【0020】
本発明に係るスイッチング電源装置は、上記課題を解決するために、スイッチング素子と、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の起動回路と、前記容量素子の充電電圧が所定値以上の場合に起動して、前記スイッチング素子を制御する制御回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、起動回路を構成するJFETのピンチオフ維持のために生じる電力損失を低減できる起動回路、スイッチング電源用IC及びスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1の形態の起動回路及びそれを用いたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施例2の形態の起動回路及びそれを用いたスイッチング電源の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の実施例2の形態の起動回路に用いられるJFETの平面図である。
【図4】本発明の実施例2の形態の起動回路に用いられるJFETのx1−x1線で切断した断面構造図である。
【図5】本発明の実施例2の形態の起動回路に用いられるJFETのy1−y1線で切断した断面構造図である。
【図6】従来のJFETのVD(ドレイン電圧)−VJS(ソース電圧)特性を示す図である。
【図7】本発明の実施例2の形態の起動回路に用いられるJFETのVD(ドレイン電圧)−VJS(ソース電圧)特性を示す図である。
【図8】本発明の実施例2の形態の起動回路及びそれを用いたスイッチング電源の別の構成例を示す回路図である。
【図9】従来の起動回路及びそれを用いたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の起動回路、スイッチング電源用IC及びスイッチング電源装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態の構成を説明する。図1は、本発明の実施例1の起動回路133a、スイッチング電源用IC120a、及びそれを用いたスイッチング電源装置100aの構成を示す回路図である。本発明のスイッチング電源装置100aは、少なくともスイッチング素子(MOSFET121)と起動回路133aと制御回路129とを備えている。図9に示す従来のスイッチング電源装置100と異なる点は、可変電圧源20を新たに備えている点と、起動回路133aの内部構成である。ただし、本実施例における可変電圧源20は、本発明における起動回路133aの一部を構成するものとする。
【0025】
電源コンデンサ104と平滑コンデンサ110とに接続されるスイッチング電源用IC120aは、起動回路133aと制御回路129とを同一半導体基板内に備えている。なお、制御回路129は、平滑コンデンサ110の充電電圧が所定値以上の場合に起動して、スイッチング素子(MOSFET121)を制御する。また、起動回路133aは、JFET124aとMOSFET127とを備えている。
【0026】
図9に示す従来の起動回路133におけるJFET124,125がゲート電極(Gate Poly−Si又はField Poly又はメタル電極)を接地させているのに対し、本実施例におけるJFET124aは、ゲート電極が可変電圧源20に接続されており、異なる電圧をゲートに印加することができる。なお、従来装置におけるJFET125は、本発明の本質ではないため図1においては記載されていないが、設けられていてもよい。
【0027】
MOSFET127は、起動電源と容量素子(平滑コンデンサ110)による補助電源との間に接続され、起動電源による起動電流を容量素子(平滑コンデンサ110)に流す。本実施例における起動電源とは、電源コンデンサ104を指すものとする。
【0028】
JFET124aは、ドレイン端子がMOSFET127のドレイン端子に接続され、ソース端子が抵抗126を介してMOSFET127のゲート端子に接続されている。
【0029】
可変電圧源20は、本発明のピンチオフ電圧制御部に対応し、起動時にJFET124aのピンチオフ電圧が第1基準電圧値となるように制御し、起動後にJFETのピンチオフ電圧が第1基準電圧値未満の値である第2基準電圧値となるように制御する(第1基準電圧値>第2基準電圧値)。
【0030】
具体的には、可変電圧源20は、平滑コンデンサ110の充電電圧が所定値未満の場合(起動時)にJFET124aのゲート端子に第1ゲート電圧を印加することでJFET124aのピンチオフ電圧が第1基準電圧値となるように制御する。また、可変電圧源20は、平滑コンデンサ110の充電電圧が所定値以上の場合(起動後)にJFET124aのゲート端子に第1ゲート電圧未満の第2ゲート電圧を印加することでJFET124aのピンチオフ電圧が第2基準電圧値となるように制御する(第1ゲート電圧>第2ゲート電圧)。
【0031】
本実施例において、平滑コンデンサ110の充電電圧が所定値未満であるか所定値以上であるかの判断は、制御回路129内の電源部131aにより行われる。例えば、電源部131aは、内部に図示されない比較器を有しており、起動回路出力電圧端子128の電圧と所定の電圧とを比較し、その比較結果を用いてMOSFET134のオン/オフを制御するとともに、可変電圧源20の電圧値を制御する。
【0032】
可変電圧源20は、電源部131aによる判断結果を受けて、JFET124aのゲート端子に印加する電圧値を決定する。
【0033】
なお、本実施例において、本発明のピンチオフ電圧制御部に対応する可変電圧源20は、上述したように平滑コンデンサ110の充電電圧値に基づいて起動時/起動後の判断を行い、JEFT124aのゲート端子に印加する電圧を変化させるものである。しかしながら、本発明のピンチオフ電圧制御部は、起動時・起動後の判断に際し、必ずしも平滑コンデンサ110の充電電圧値を利用する必要はない。
【0034】
例えば、本発明のピンチオフ電圧制御部は、起動時においてJFET124aのゲート端子に比較的高い第1ゲート電圧を印加し、起動後一定時間が経過した時に比較的低い第2ゲート電圧を印加するものとしてもよい(第1ゲート電圧>第2ゲート電圧)。
【0035】
その他の構成は、図9に示す従来のスイッチング電源装置100と同様であり、重複した説明を省略する。
【0036】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。まず、交流電源101からヒューズ102を通して整流器103に交流電圧が印加され、整流器103から直流電圧が電源コンデンサ104に印加され、電源コンデンサ104は直流電源となる。この電源コンデンサ104は、直流電圧をトランス105の一次巻線106に印加する。また、電源用コンデンサ104は、本発明における起動電源として、スイッチング電源用IC120a内のJFET124aのドレイン端子123(MOSFET127のドレイン端子でもある)に直流電圧を印加する。
【0037】
この時点において、平滑コンデンサ110の充電電圧が所定値未満(起動時)であるため、可変電圧源20は、JFET124aのゲート端子に第1ゲート電圧を印加することでJFET124aのピンチオフ電圧が第1基準電圧値となるように制御する。また、平滑コンデンサ110が所定の電圧まで充電されていないため、電源部131は、内部のMOSFET134をオフ状態に維持している。
【0038】
充電された電源コンデンサ104からJFET124aのドレイン端子123に電流が供給され、JFET124aに定電流が流れる。ゲート端子206の電圧は、平滑コンデンサ110が所定の電圧に充電されるまでの起動回路出力電圧端子128の電圧レベルにおいて、MOSFET127がオンを維持するためのしきい値電圧以上となるように設定されている。よって、MOSFET127がオンし、MOSFET127に定電流(起動電流)が流れ、当該起動電流は平滑コンデンサ110を充電する。
【0039】
平滑コンデンサ110が所定の電圧に充電されると制御回路129が起動し、制御回路129に制御されることでスイッチング素子(MOSFET121)は動作を開始する。MOSFET121が動作を開始すると、トランス105の二次巻線111bからの電流がダイオード112を介して平滑コンデンサ110を充電し、MOSFET121は動作を継続する。
【0040】
また、MOSFET121が動作を開始すると、トランス105の二次巻線111aからの電流がダイオード107を介して出力コンデンサ108を充電し、この出力コンデンサ108は、出力端子109を通して直流電圧、直流電流を出力する。
【0041】
また、平滑コンデンサ110の充電電圧が所定値以上(起動後)になると、可変電圧源20は、JFET124aのゲート端子に第1ゲート電圧未満の第2ゲート電圧を印加することでJFET124aのピンチオフ電圧が第2基準電圧値となるように制御する。すなわち、JFET124aのピンチオフ電圧は、第1基準電圧値から第2基準電圧値に低くなる。
【0042】
一方、平滑コンデンサ110の充電電圧が所定値以上(起動後)になると、電源部131aのMOSFET134をオンしてゲート端子206の電圧レベルをMOSFET127のしきい値より低くするため、MOSFET127はオフされる。
【0043】
JFET124aのピンチオフ電圧は、抵抗126に印加されるが、上述したように比較的低い第2基準電圧値に制御されているため、抵抗126に流れる電流も小さなものとなり、抵抗126における消費電力が抑えられる。
【0044】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る起動回路133a、スイッチング電源用IC120a、及びスイッチング電源装置100aによれば、起動回路133aを構成するJFET124aのピンチオフ維持のために生じる電力損失を低減することができる。
【0045】
すなわち、本実施例の起動回路133a、スイッチング電源用IC120a、及びスイッチング電源装置100aは、ピンチオフ電圧制御部たる可変電圧源20を備えているので、JFET124aのゲート端子に印加する電圧を制御することで、起動時にJFET124aのピンチオフ電圧が比較的高い第1基準電圧値となるように制御してMOSFET127をオンさせるとともに、起動後にJFETのピンチオフ電圧が比較的低い第2基準電圧値となるように制御して抵抗126における消費電力を低減することができる。
【0046】
ところで、起動後、MOSFET121の動作によって、二次巻線111bを介して流れる電流が不十分となり、平滑コンデンサ110の充電電圧が低下することがある。本実施例において、可変電圧源20が、平滑コンデンサ110の充電電圧に基づいて起動時/起動後を判断するように構成される場合、上記のような充電電圧の低下を抑制することができる。したがって、スイッチング電源用IC120a及びスイッチング電源装置100aの動作を安定化し、信頼性を改善することができる。
【実施例2】
【0047】
図2は、本発明の実施例2の起動回路133b、スイッチング電源用IC120b、及びそれを用いたスイッチング電源装置100bの構成を示す回路図である。本発明のスイッチング電源装置100bは、少なくともスイッチング素子(MOSFET121)と起動回路133bと制御回路129とを備えている。図1に示す実施例1のスイッチング電源装置100aと異なる点は、可変電圧源20を備えていない点と、起動回路133bの内部構成である。
【0048】
具体的には、起動回路133bは、ダブルゲートのJFET124bとMOSFET127とを備えている。すなわち、JFET124bは、ゲート端子として第1ゲート端子(Gate Poly−Si)と第2ゲート端子(P−SUB)とを有している。ここで、第1ゲート端子は、MOSFET127のゲート端子に接続されている。また、第2ゲート端子は接地されている。
【0049】
第1ゲート端子は、本発明のピンチオフ電圧制御部に対応し、起動時にJFET124aのピンチオフ電圧が第1基準電圧値となるように制御し、起動後にJFETのピンチオフ電圧が第1基準電圧値未満の値である第2基準電圧値となるように制御する(第1基準電圧値>第2基準電圧値)。
【0050】
図3は、本実施例の起動回路133bに用いられるJFET124bの平面図である。図3中において、Dはドレイン領域を指し、JSはソース領域を指す。また、図4は、図3に示すJFET124bをx1−x1線で切断した断面構造図である。さらに、図5は、図3に示すJFET124bをy1−y1線で切断した断面構造図である。図4,5におけるG1は第1ゲート端子を指し、G2は第2ゲート端子を指す。
【0051】
第1ゲート端子は、図4,5に示すように、JFET124bのドリフト領域上に絶縁膜ILを介して配置されたPoly−Si(ポリシリコン)を利用したものであり、特別に追加素子や追加面積等を必要としない。また、第2ゲート端子は、P型基板P−SUB及びP型のアイソレーション領域になる。なお、第1ゲート端子は、金属等の導電膜で構成されてもよい。
【0052】
JFET124bのピンチオフ電圧Vpは、N−EPIに電圧を印加した時(ドレインに電圧を印加した時)のN−EPIとP−SUBとの間に広がる空乏層で決まるが、N−EPI領域上部のPoly−Siに電圧を印加する事で空乏層の広がりを抑制しピンチオフ電圧Vpを上昇させる事ができる。
【0053】
このPoly−Si(第1ゲート端子)をMOSFET127のゲートに接続させることにより、起動回路133bは、起動時においてJFET124b自身のピンチオフ電圧Vp(MOSFET127のゲート電圧に等しい)がPoly−Siに印加されることにより、従来のようにPoly−SiをGNDに接続した場合に比して、JFET124bにより高いピンチオフ電圧Vpを印加することができる。
【0054】
そこでPoly−Siに電圧が印加された時のピンチオフ電圧Vpを、VCC(平滑コンデンサ110の電圧)印加時に動作可能な値に設定すれば、オフ時(MOSFET134オン時)のピンチオフ電圧Vpをより小さくすることができ、起動後の消費電力を抑える事ができる。
【0055】
その他の構成は、図1に示す実施例1のスイッチング電源装置100aと同様であり、重複した説明を省略する。
【0056】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。まず、交流電源101からヒューズ102を通して整流器103に交流電圧が印加され、整流器103から直流電圧が電源コンデンサ104に印加され、電源コンデンサ104は直流電源となる。この電源コンデンサ104は、直流電圧をトランス105の一次巻線106に印加する。また、電源用コンデンサ104は、本発明における起動電源として、スイッチング電源用IC120a内のJFET124bのドレイン端子123(MOSFET127のドレイン端子でもある)に直流電圧を印加する。
【0057】
この起動時において、平滑コンデンサ110が所定の電圧まで充電されていないため、電源部131は、内部のMOSFET134をオフ状態に維持している。そこで、上述したように、JFET124bのPoly−Si(第1ゲート端子)をMOSFET127のゲートに接続させているため、起動回路133bは、起動時においてJFET124b自身のピンチオフ電圧Vpを高く上昇させる。言い換えれば、第1ゲート端子は、上述した構成を有することによりピンチオフ電圧制御部としての機能を有し、JFET124bのピンチオフ電圧が第1基準電圧値となるように制御する。
【0058】
充電された電源コンデンサ104からJFET124bのドレイン端子123に電流が供給され、JFET124bに定電流が流れる。よって、MOSFET127がオンし、MOSFET127に定電流(起動電流)が流れ、当該起動電流は平滑コンデンサ110を充電する。
【0059】
平滑コンデンサ110が所定の電圧に充電されると制御回路129が起動し、制御回路129に制御されることでスイッチング素子(MOSFET121)は動作を開始する。MOSFET121が動作を開始すると、トランス105の二次巻線111bからの電流がダイオード112を介して平滑コンデンサ110を充電し、MOSFET121は動作を継続する。
【0060】
また、nMOSFET121が動作を開始すると、トランス105の二次巻線111aからの電流がダイオード107を介して出力コンデンサ108を充電し、この出力コンデンサ108は、出力端子109を通して直流電圧、直流電流を出力する。
【0061】
また、平滑コンデンサ110の充電電圧が所定値以上(起動後)になると、MOSFET134がオンしてゲート端子206の電圧が低下するので、JFET124bの第1ゲート端子は、JFET124bのピンチオフ電圧が第2基準電圧値となるように制御する。すなわち、JFET124bのピンチオフ電圧は、第1基準電圧値から第2基準電圧値に低くなる。また、MOSFET127はオフされる。
【0062】
JFET124bのピンチオフ電圧は、抵抗126に印加されるが、上述したように比較的低い第2基準電圧値に制御されているため、抵抗126に流れる電流も小さなものとなり、抵抗126における消費電力が抑えられる。
【0063】
図6は、従来のJFETのVD(ドレイン電圧)−VJS(ソース電圧)特性を示す図である。また、図7は、本実施例の起動回路133bに用いられているダブルゲートJFET124bのVD(ドレイン電圧)−VJS(ソース電圧)特性を示す図である。
【0064】
図7に示すように、ダブルゲートJFET124bでは、JFET124bのドリフト領域上のPoly−Siに印加される電圧(すなわち第1ゲート端子に印加される電圧)Vpoが0Vの場合(起動後に相当)において、ピンチオフ電圧Vpは17Vである。一方、第1ゲート端子に印加される電圧Vpoが25Vの場合(起動時に相当)において、ピンチオフ電圧Vpは32Vである。すなわち、本実施例の起動回路133bは、起動後の消費電力を従来タイプの約半分にすることができる。
【0065】
なお、図7においては、第1ゲート端子に印加される電圧Vpoが0Vの場合まで記載されているが、さらに負電圧を印加することもできる。この場合には、起動回路133bは、さらにピンチオフ電圧Vpを下げることができ、抵抗126で消費される電力をさらに低減することができる。
【0066】
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係る起動回路133b、スイッチング電源用IC120b、及びスイッチング電源装置100bによれば、実施例1と同様に、起動回路133bを構成するJFET124bのピンチオフ維持のために生じる電力損失を低減することができる。
【0067】
特に、実施例1のように可変電圧源20やJEFTに対する追加素子、追加面積等を必要としないため、低コストで実現することができ、実施例1と同様の消費電力低減効果を期待できる。
【0068】
なお、本発明の本質は、JFETに対して起動時に高いゲートバイアスを印加し、起動後に低いゲートバイアスを印加する点であるため、これが実現できるような他の構成を用いてもよい。例えば、図8に示すように、実施例1の起動回路133aにおけるJFET124aに代わり、実施例2の起動回路133bにおけるJFET124bを適用してもよい。この場合、JFET124bの第1ゲート端子は可変電圧源20に接続され、第2ゲート端子は接地される。このように構成される起動回路、スイッチング電源用IC、及びスイッチング電源装置によれば、実施例1,2と同様の効果が得られる。また、第2ゲート端子は、負電圧源に接続されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る起動回路、スイッチング電源用IC、及びスイッチング電源装置は、電気機器等に使用されるスイッチング電源等に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 JFET
20 可変電圧源
100,100a,100b スイッチング電源装置
101 交流電源
102 ヒューズ
103 整流器
104 電源コンデンサ
105 トランス
106 一次巻線
107 ダイオード
108 出力コンデンサ
109 出力端子
110 平滑コンデンサ
111a,111b 二次巻線
112 ダイオード
120 スイッチング電源用IC
121 MOSFET
123 ドレイン端子
124a,124b,125 JFET
126 抵抗
127 MOSFET
128 電源端子
129 制御回路
131,131a 電源部
132 制御部
133,133a,133b 起動回路
203A,203B ソース端子
206 ゲート端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起動電源と容量素子による補助電源との間に接続され、前記起動電源による起動電流を前記容量素子に流すMOSFETと、
ドレイン端子が前記MOSFETのドレイン端子に接続され、ソース端子が抵抗を介して前記MOSFETのゲート端子に接続されたJFETと、
起動時に前記JFETのピンチオフ電圧が第1基準電圧値となるように制御し、起動後に前記JFETのピンチオフ電圧が前記第1基準電圧値未満の値である第2基準電圧値となるように制御するピンチオフ電圧制御部とを備え、
前記JFETは、ゲート端子として第1ゲート端子と接地された第2ゲート端子とを有し、
前記ピンチオフ電圧制御部は、前記MOSFETのゲート端子に接続された前記第1ゲート端子により構成されることを特徴とする起動回路。
【請求項2】
前記ピンチオフ電圧制御部は、前記容量素子の充電電圧が所定値未満の場合に前記第1ゲート端子に第1ゲート電圧を印加することで前記JFETのピンチオフ電圧が第1基準電圧値となるように制御するとともに、前記容量素子の充電電圧が所定値以上の場合に前記第1ゲート端子に第1ゲート電圧未満の第2ゲート電圧を印加することで前記JFETのピンチオフ電圧が第2基準電圧値となるように制御する可変電圧源により構成されることを特徴とする請求項1記載の起動回路。
【請求項3】
前記第1ゲート端子は、半導体基板上に絶縁膜を介して配置された導電膜であり、前記第2ゲート端子は、前記半導体基板であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の起動回路。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の起動回路と、
前記容量素子の充電電圧が所定値以上の場合に起動して、スイッチング素子を制御する制御回路と、
を同一半導体基板内に備えることを特徴とするスイッチング電源用IC。
【請求項5】
スイッチング素子と、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の起動回路と、
前記容量素子の充電電圧が所定値以上の場合に起動して、前記スイッチング素子を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−138387(P2012−138387A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287671(P2010−287671)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】