説明

車両および懸架装置の減衰力制御機構

【課題】ユーザが行う入力操作の煩わしさを抑制しながらユーザが所望する減衰力特性を設定可能な車両を提供する。
【解決手段】この自動二輪車1(車両)は、減衰機構(圧縮側電子制御バルブ27、52、伸長側電子制御バルブ28、53)を含む懸架装置(右側フロントフォーク18、リヤサスペンション42)と、減衰機構の減衰力特性を電気的に制御するための制御部29aと、予め設定されている懸架装置の減衰機構の減衰力特性マップZ1が記憶されている記憶部29bとを備えている。制御部29aは、予め設定されている減衰力特性マップZ1の点Q0(設定値)がユーザにより変更された場合に、設定変更された点Q3(設定値)、および、予め設定されている減衰力特性Z1の設定変更された点Q0(設定値)以外の設定値を合成させた減衰力特性マップZ2になるように予め設定されている減衰力特性マップZ1を設定変更可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両および懸架装置の減衰力制御機構に関し、特に、減衰機構の減衰力特性を電気的に制御するように構成された車両および懸架装置の減衰力制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される懸架装置の減衰機構の減衰力特性を電気的に制御する減衰特性制御システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。上記特許文献1には、減衰力特性を調整可能な緩衝器(懸架装置の減衰機構)と、緩衝器の減衰特性を調整するECU(制御部)とを備えた緩衝器の減衰特性制御システムが開示されている。この減衰特性制御システムは、ユーザが所望する緩衝器の減衰特性を設定可能に構成されているとともに、緩衝器を適切な減衰力を有した状態で使用することが可能となるように、ユーザにより、複数の設定値が入力されることにより設定されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−62550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された緩衝器(懸架装置の減衰機構)の減衰特性制御システムでは、緩衝器を適切な減衰力を有した状態で使用することが可能となるように、複数の設定値を入力する必要がある。このため、上記減衰特性制御システムでは、設定値を入力するために、ユーザが入力する回数が多くなるという不都合があるため、ユーザが行う入力操作が煩わしいという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ユーザが行う入力操作の煩わしさを抑制しながらユーザが所望する減衰力特性を設定可能な車両および懸架装置の減衰力制御機構を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による車両は、車輪と、車体と、車輪と車体との間に設けられるとともに、車輪と車体とが相対的に移動するときの伸長方向および圧縮方向の少なくとも一方側の力を減衰させる減衰機構を含む懸架装置と、懸架装置の減衰機構の減衰力特性を電気的に制御するための制御部と、予め設定されている懸架装置の減衰機構の減衰力特性が記憶されている記憶部とを備え、制御部は、予め設定されている減衰力特性の少なくとも1つの設定値がユーザにより変更された場合に、設定変更された設定値、および、予め設定されている減衰力特性の設定変更された設定値以外の設定値を合成させた減衰力特性になるように予め設定されている減衰力特性を設定変更可能に構成されている。
【0007】
この第1の局面による車両では、上記のように、制御部を、予め設定されている減衰力特性の少なくとも1つの設定値がユーザにより変更された場合に、設定変更された設定値、および、予め設定されている減衰力特性の設定変更された設定値以外の設定値を合成させた減衰力特性になるように予め設定されている減衰力特性を設定変更可能に構成している。このように予め設定された減衰力特性を利用して設定変更することによって、少なくとも1つの設定値を変更するだけで減衰力特性を所望の減衰力特性に設定変更することができる。これにより、ユーザが行う入力操作が煩わしくなるのを抑制することができる。また、制御部を、設定変更された設定値、および、予め設定されている減衰力特性の設定変更された設定値以外の設定値を合成させた減衰力特性になるように構成することによって、予め設定されている減衰力特性を部分的に設定変更したとしても、設定変更された部分ともとの予め設定されている減衰力特性とがスムーズにつながるように、減衰力特性を変更することができる。
【0008】
また、この発明の第2の局面による懸架装置の減衰力制御機構は、懸架装置本体部と、懸架装置本体部の一方側部分と他方側部分とが相対的に移動するときの伸長方向および圧縮方向の少なくとも一方側の力を減衰させる減衰機構と、減衰機構の減衰力特性を電気的に制御するための制御部と、予め設定されている減衰機構の減衰力特性が記憶されている記憶部とを備え、制御部は、予め設定されている減衰力特性の少なくとも1つの設定値がユーザにより変更された場合に、設定変更された設定値、および、予め設定されている減衰力特性の設定変更された設定値以外の設定値を合成させた減衰力特性になるように予め設定されている減衰力特性を設定変更可能に構成されている。
【0009】
この第2の局面による懸架装置の減衰力制御機構では、上記のように、制御部を、予め設定されている減衰力特性の少なくとも1つの設定値がユーザにより変更された場合に、設定変更された設定値、および、予め設定されている減衰力特性の設定変更された設定値以外の設定値を合成させた減衰力特性になるように予め設定されている減衰力特性を設定変更可能に構成している。このように予め設定された減衰力特性を利用して設定変更することによって、少なくとも1つの設定値を変更するだけで減衰力特性を所望の減衰力特性に設定変更することができる。これにより、ユーザが行う入力操作が煩わしくなるのを抑制することができる。また、制御部を、設定変更された設定値、および、予め設定されている減衰力特性の設定変更された設定値以外の設定値を合成させた減衰力特性になるように構成することによって、予め設定されている減衰力特性を部分的に設定変更したとしても、設定変更された部分ともとの予め設定されている減衰力特性とがスムーズにつながるように、減衰力特性を変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。図2〜図6は、図1に示した一実施形態による自動二輪車の構成を詳細に説明するための図である。なお、本実施形態では、本発明の車両の一例として、自動二輪車について説明する。図中、矢印FWDは、自動二輪車の走行方向の前方を示している。以下、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による自動二輪車1の構成について詳細に説明する。
【0012】
本発明の一実施形態による自動二輪車1では、図1に示すように、ヘッドパイプ2の後方には、メインフレーム3が配置されている。また、メインフレーム3には、シートレール4が接続されている。これらのヘッドパイプ2、メインフレーム3およびシートレール4によって、車体フレームが構成されている。なお、ヘッドパイプ2、メインフレーム3およびシートレール4は、本発明の「車体」の一例である。
【0013】
また、ヘッドパイプ2には、ステアリングシャフト5が取り付けられている。このステアリングシャフト5の上部には、前輪6を操舵するためのハンドル7が取り付けられている。なお、前輪6は、本発明の「車輪」の一例である。また、ハンドル7には、図2に示すように、運転者の手が載置されるグリップ8が設けられており、グリップ8の近傍には、複数のスイッチ類が設けられている。
【0014】
具体的には、グリップ8に最も近い部分には、ヘッドライト10(図1参照)が照射する方向を調整するためのビーム切替スイッチ9aが設けられている。また、ビーム切替スイッチ9aの下方には、左右(矢印X1方向および矢印X2方向)の各フラッシャー(方向指示ランプ)11(図1参照)を点滅させるための方向指示スイッチ9bが設けられている。また、方向指示スイッチ9bの下方には、図示しないホーン(警笛)を鳴らすためのホーンスイッチ9cが設けられている。
【0015】
ここで、本実施形態では、ビーム切替スイッチ9aの右側(矢印X2方向側)には、後述する圧縮側電子制御バルブ27、圧縮側電子制御バルブ52、伸長側電子制御バルブ28および伸長側電子制御バルブ53の減衰力特性マップの設定変更を行うためのUP/DOWNスイッチ9dが設けられている。このUP/DOWNスイッチ9dは、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fにより構成されており、後述する予め定められた複数の減衰力特性マップ(たとえば、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップD)のうちいずれか1つの減衰力特性マップを選択する際などに操作されるように構成されている。なお、UP/DOWNスイッチ9dは、本発明の「スイッチ部」の一例である。また、UP/DOWNスイッチ9dの近傍には、UP/DOWNスイッチ9dにより選択した設定を決定するためのセレクトスイッチ9gが設けられている。なお、セレクトスイッチ9gは、本発明の「スイッチ部」の一例である。これらUP/DOWNスイッチ9dおよびセレクトスイッチ9gは、それぞれ、後述する表示パネル14とは異なる位置に配置されている。
【0016】
また、ヘッドパイプ2の前方には、図1に示すように、ヘッドパイプ2の前方を覆うフロントカウル12が設けられている。また、フロントカウル12の後部には、図1および図3に示すように、後述するエンジン38(図1参照)の回転数を表示する回転速度計13aが設けられている。また、回転速度計13aの矢印X1方向側には、図3に示すように、液晶パネルにより構成されている速度計13bが設けられている。また、回転速度計13aの矢印X2方向側には、液晶パネルにより構成されている表示パネル14が設けられている。なお、表示パネル14は、本発明の「表示部」の一例である。この表示パネル14は、自動二輪車1が走行した距離などを表示する機能を有するとともに、後述する圧縮側電子制御バルブ27、圧縮側電子制御バルブ52、伸長側電子制御バルブ28および伸長側電子制御バルブ53の減衰力特性マップの設定変更が行われる際の設定値(ストロークスピード・減衰力)、および、減衰力特性マップの変更が行われる際の減衰力特性マップなどを表示可能に構成されている。
【0017】
また、フロントカウル12の下方には、図1に示すように、前輪6の上方に配置されるフロントフェンダ15が配置されている。また、前輪6は、一対のフロントフォーク16の下端部に回転可能に取り付けられている。なお、フロントフォーク16は、本発明の「懸架装置」および「懸架装置本体部」の一例である。このフロントフォーク16は、前輪6と車体とが相対的に移動するときの伸縮する力を減衰させる機能を有する。
【0018】
また、フロントフォーク16は、図4に示すように、走行方向に向かって前輪6の左側に配置される左側フロントフォーク17と、走行方向に向かって右側に配置される右側フロントフォーク18とにより構成されている。この左側フロントフォーク17は、アウターチューブ19およびインナーチューブ20が軸方向に摺動して伸縮可能に設けられるとともに、右側フロントフォーク18は、アウターチューブ21およびインナーチューブ22が軸方向に摺動して伸縮可能に設けられることによって、テレスコピック型に構成されている。また、アウターチューブ19および21は、ステアリングシャフト5に固定されたアンダーブラケット23aおよびアッパーブラケット23bに固定されている。また、インナーチューブ20および21には、アクスルブラケット24および25がそれぞれ設けられているとともに、アクスルブラケット24および25には、前輪6の車軸6aが取り付けられている。
【0019】
また、左側フロントフォーク17には、左側フロントフォーク17の伸縮量を検出するための検出装置26が設けられている一方、右側フロントフォーク18には、右側フロントフォーク18の減衰力特性を調整可能に構成されている圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28が設けられている。なお、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28は、本発明の「減衰機構」の一例である。これら圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28は、それぞれ、ソレノイドバルブにより構成されており、通電する電流量を制御することによって、弁を流れるオイルの圧力を制御可能なように構成されている。
【0020】
また、検出装置26、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28は、それぞれ、ECU(電子制御ユニット)29と接続されている。このECU29は、フロントフォーク16および後述するリヤサスペンション42において発生される減衰力を制御する機能を有する。具体的には、ECU29は、図5に示すように、フロントフォーク16、後述するエンジン38およびリヤサスペンション42などを電気的に制御する制御部29aと、後述する圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28のそれぞれの減衰力特性マップなどが記憶されている記憶部29bとを含んでいる。また、ECU29の制御部29aには、メインスイッチ30が接続されており、ECU29は、メインスイッチ30をオンすることにより起動される。なお、ECU29の詳細な構成については、後ほど説明する。
【0021】
また、左側フロントフォーク17の検出装置26は、ストロークセンサにより構成されている。また、検出装置26は、検出された左側フロントフォーク17の伸縮量をECU29に送信可能に構成されている。そして、ECU29の制御部29aは、左側フロントフォーク17の伸縮量から左側フロントフォーク17が圧縮および伸長する際のそれぞれのストロークスピードを検出可能に構成されている。また、制御部29aは、記憶部29bに記憶されている減衰力特性に基づいて、検出したストロークスピードに対応した減衰力により右側フロントフォーク18を減衰させるように、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28に対して所定の電流を通電させる機能を有する。
【0022】
また、右側フロントフォーク18は、図4に示すように、アウターチューブ21に固定されたロッド部31と、ロッド部31の端部に設けられているピストン部32とを含んでいる。そして、右側フロントフォーク18の内部は、ピストン部32により、圧縮側オイル室18aと、伸長側オイル室18bとに隔てられている。この圧縮側オイル室18aには、オイル通路部33のオイル通路33aが接続されており、オイル通路部33は、圧縮側オイル室18aに充填されているオイルがオイル通路33aに流入され、圧縮側電子制御バルブ27、中間通路33b、33c、チェックバルブ34aおよびオイル通路33dを介して伸長側オイル室18bに流入可能に構成されている。また、伸長側オイル室18bには、オイル通路部33のオイル通路33dが接続されている。オイル通路部33は、伸長側オイル室18bに充填されているオイルがオイル通路33dに流入され、伸長側電子制御バルブ28、中間通路33e、33c、チェックバルブ34bおよびオイル通路33aを介して圧縮側オイル室18aに流入可能に構成されている。また、中間通路33b、33cおよび33eには、リザーバ35に接続されるオイル通路33fが設けられている。
【0023】
また、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28は、ECU29により、それぞれを通過するオイルの圧力を調整可能に構成されている。そして、圧縮側電子制御バルブ27は、通過するオイルの圧力を小さくするのに従って、右側フロントフォーク18が圧縮される際の減衰力が小さくされるように構成されているとともに、通過するオイルの圧力を大きくするのに従って、右側フロントフォーク18が圧縮される際の減衰力が大きくされるように構成されている。また、伸長側電子制御バルブ28は、通過するオイルの圧力を小さくするのに従って、右側フロントフォーク18が伸長される際の減衰力が小さくされるように構成されているとともに、通過するオイルの圧力を大きくするのに従って、右側フロントフォーク18が伸長される際の減衰力が大きくされるように構成されている。
【0024】
また、メインフレーム3の上部には、図1に示すように、燃料タンク36が配置されている。また、燃料タンク36の後方には、シート37が配置されている。また、メインフレーム3の下方には、エンジン38が取り付けられている。このエンジン38には、エンジン38の図示しないクランク軸の回転数を検出する回転センサ38a(図5参照)が設けられているとともに、エンジン38の図示しない所定のギヤの回転数を検出することにより、自動二輪車1の車速を検出する車速センサ38b(図5参照)が設けられている。また、エンジン38の前方には、エンジン38を冷却するためのラジエーター39が設けられている。また、メインフレーム3の後部には、図示しないピボット軸が設けられている。このピボット軸により、リヤアーム40の前端部が上下に揺動可能に支持されている。このリヤアーム40の後端部には、後輪41が回転可能に取り付けられている。なお、後輪41は、本発明の「車輪」の一例である。
【0025】
また、メインフレーム3の後部の上側には、支持部3aが設けられている。この支持部3aには、リヤサスペンション42の上部取付部43が軸部材44により取り付けられている。なお、リヤサスペンション42は、本発明の「懸架装置」および「懸架装置本体部」の一例である。また、リヤサスペンション42の下部取付部45は、メインフレーム3の後部の下側に設けられた支持部3bを中心として揺動可能に設けられた揺動部材46に取り付けられている。この揺動部材46の下部は、リヤアーム40の支持部40aに連結部材47によって連結されている。これにより、リヤアーム40が上下に揺動するにともなって、揺動部材46がメインフレーム3の支持部3bを中心として揺動するとともに、リヤサスペンション42を伸縮させることが可能となる。
【0026】
また、リヤサスペンション42は、図6に示すように、一方端部に上部取付部43が設けられたシリンダ部48と、シリンダ部48の内周面を摺動可能に設けられたピストン49と、一方端部がピストン49に取り付けられているとともに、他方端部が下部取付部45に取り付けられているロッド部50とを含んでいる。また、リヤサスペンション42には、リヤサスペンション42の伸縮量を検出するための検出装置51が設けられているとともに、リヤサスペンション42の減衰力特性を調整可能に構成されている圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53が設けられている。なお、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、本発明の「減衰機構」の一例である。これら圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、それぞれ、ソレノイドバルブにより構成されており、通電する電流量を制御することによって、弁を流れるオイルの圧力を制御可能なように構成されている。また、フロントフォーク16、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、ECU29、リヤサスペンション42、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53によって、本発明の「懸架装置の減衰力制御機構」が構成されている。
【0027】
また、検出装置51、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、それぞれ、フロントフォーク16の検出装置26、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28と同様、ECU(電子制御ユニット)29と接続されている。
【0028】
また、リヤサスペンション42の検出装置51は、ストロークセンサにより構成されている。また、検出装置51は、図5に示すように、検出されたリヤサスペンション42の伸縮量(ストローク)をECU29に送信可能に構成されている。そして、ECU29の制御部29aは、リヤサスペンション42の伸縮量からリヤサスペンション42が圧縮および伸長する際のそれぞれのストロークスピードを検出可能に構成されている。また、制御部29aは、記憶部29bに記憶されている減衰力特性に基づいて、検出したストロークスピードに対応した減衰力によりリヤサスペンション42を減衰させるように、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53に対して所定の電流を通電させる機能を有する。
【0029】
また、リヤサスペンション42の内部は、ピストン49により、圧縮側オイル室42aと、伸長側オイル室42bとに隔てられている。この圧縮側オイル室42aには、オイル通路部54のオイル通路54aが接続されており、オイル通路部54は、圧縮側オイル室42aに充填されているオイルがオイル通路54aに流入され、圧縮側電子制御バルブ52、中間通路54b、54c、チェックバルブ55aおよびオイル通路54dを介して伸長側オイル室42bに流入可能に構成されている。また、伸長側オイル室42bには、オイル通路部54のオイル通路54dが接続されており、オイル通路部54は、伸長側オイル室42bに充填されているオイルがオイル通路54dに流入され、伸長側電子制御バルブ53、中間通路54e、54c、チェックバルブ55bおよびオイル通路54aを介して圧縮側オイル室42aに流入可能に構成されている。また、中間通路54b、54cおよび54eには、リザーバ56に接続されるオイル通路54fが設けられている。
【0030】
また、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、ECU29により、それぞれを通過するオイルの圧力を調整可能に構成されている。そして、圧縮側電子制御バルブ52は、通過するオイルの圧力を小さくするのに従って、リヤサスペンション42が圧縮される際の減衰力が小さくされるように構成されているとともに、通過するオイルの圧力を大きくするのに従って、リヤサスペンション42が圧縮される際の減衰力が大きくされるように構成されている。また、伸長側電子制御バルブ53は、通過するオイルの圧力を小さくするのに従って、リヤサスペンション42が伸長される際の減衰力が小さくされるように構成されているとともに、通過するオイルの圧力を大きくするのに従って、リヤサスペンション42が伸長される際の減衰力が大きくされるように構成されている。
【0031】
また、本実施形態では、図5に示すように、制御部29aには、ECU29とパソコン80などとをUSBケーブル81を用いて接続可能な通信部57が接続されている。なお、パソコン80は、本発明の「外部機器」の一例である。この通信部57は、USB接続端子により構成されており、USBケーブル81を介してパソコン80のUSB接続端子に接続可能に構成されている。
【0032】
図7は、図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたフロントフォークまたはリヤサスペンションに設けられている電子制御バルブの減衰力特性を示したグラフである。図8〜図10は、図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性が設定される際のモードの移行を説明するためのモード遷移図である。図11〜図14は、図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性が設定される際における詳細設定変更モードを説明するための図である。図15は、図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性マップが変更される際の減衰力特性マップの修正方法を説明するための図である。次に、図5および図7〜図15を参照して、本発明の一実施形態による自動二輪車1のECU29の構成について詳細に説明する。
【0033】
図5に示すように、本実施形態による自動二輪車1のECU29は、上記したように、自動二輪車1の各部を電気的に制御する制御部29aと、右側フロントフォーク18の圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28、および、リヤサスペンション42の圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53のそれぞれの減衰力特性マップが予め記憶されている記憶部29bとを含んでいる。この記憶部29bに記憶されている減衰力特性マップは、サーキットマップA(CIRCUIT)、スポーツマップB(SPORTS)、ノーマルマップC(NORMAL)およびコンフォートマップD(COMFORT)(それぞれ図7参照)の走行状態に応じた減衰力特性マップによって構成されている。なお、減衰力特性マップは、フロントフォーク16およびリヤサスペンション42が相対的に伸縮する際のストロークスピードと、そのストロークスピードに対応して発生される減衰力との関係を表したマップである。また、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップD(それぞれ図7参照)は、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53について、それぞれ、別々に設けられている。すなわち、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップD(それぞれ図7参照)は、それぞれ、フロントフォーク16の圧側および伸び側の両方について設けられているとともに、リヤサスペンション42の圧側および伸び側の両方について設けられている。
【0034】
サーキットマップAは、図7に示すように、自動二輪車1をサーキットなどで走行させる際に最も適した減衰力特性を示す減衰力特性マップである。サーキットマップAは、ストロークスピードVに対応する減衰力FAが、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのそれぞれのストロークスピードVに対応する減衰力FB、FCおよびFDと比べて、大きくなるように構成されている。すなわち、サーキットマップAは、障害物を乗り越えた時の周期運動が素早く収束されるような特性を有しており、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDと比べて、自動二輪車1の姿勢を素早く安定させることが可能である。その一方、サーキットマップAは、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDと比べて、最も路面の凹凸が吸収され難い特性を有する。
【0035】
また、スポーツマップBは、自動二輪車1を高速走行させる際に最も適した減衰力特性を示す減衰力特性マップである。スポーツマップBは、ストロークスピードVに対応する減衰力FBが、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのそれぞれのストロークスピードVに対応する減衰力FCおよびFDと比べて、大きくなるように構成されている。すなわち、スポーツマップBは、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDと比べて、障害物を乗り越えた時の周期運動が素早く収束されるような特性を有しており、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDと比べて、自動二輪車1の姿勢を素早く安定させることが可能である。その一方、スポーツマップBは、サーキットマップAと比べて、路面の凹凸が吸収されやすい特性を有する。
【0036】
また、ノーマルマップCは、自動二輪車1を郊外路において走行させる際に最も適した標準的な減衰力特性を示す減衰力特性マップである。ノーマルマップCは、ストロークスピードVに対応する減衰力FCが、コンフォートマップDのストロークスピードVに対応する減衰力FDと比べて、大きくなるように構成されている。すなわち、ノーマルマップCは、コンフォートマップDと比べて、障害物を乗り越えた時の周期運動が素早く収束されるような特性を有しており、コンフォートマップDと比べて、自動二輪車1の姿勢を素早く安定させることが可能である。その一方、ノーマルマップCは、サーキットマップAおよびスポーツマップBと比べて、路面の凹凸が吸収されやすい特性を有する。
【0037】
また、コンフォートマップDは、自動二輪車1を石畳のような凹凸が多い路面において走行させる際に最も適した減衰力特性を示す減衰力特性マップである。コンフォートマップDは、ストロークスピードVに対応する減衰力FDが、サーキットマップA、スポーツマップBおよびノーマルマップCのそれぞれのストロークスピードVに対応する減衰力FA,FBおよびFCと比べて、小さくなるように構成されている。すなわち、コンフォートマップDは、サーキットマップA、スポーツマップBおよびノーマルマップCと比べて、路面の凹凸が吸収されやすい特性を有している。その一方、コンフォートマップDは、サーキットマップA、スポーツマップBおよびノーマルマップCと比べて、障害物を乗り越えた時の周期運動が素早く収束され難い特性を有する。
【0038】
ここで、制御部29aは、ユーザの操作に基づいて、上記サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのいずれか1つの減衰力特性マップの減衰力を調整可能に構成されている。そして、制御部29aは、いずれか1つの減衰力特性マップの減衰力が調整された減衰力特性マップに従って右側フロントフォーク18の圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28、および、リヤサスペンション42の圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53を制御可能に構成されている。次に、減衰力特性マップの減衰力が調整される際に、制御部29aにより制御される各モードについて説明する。
【0039】
図8に示すように、メインスイッチ30(図5参照)がオンされることにより、制御部29a(図5参照)は、記憶部29b(図5参照)より前回オフされた時点で実行されていた減衰力特性マップを呼び出すように構成されている。そして、エンジン38の車速センサ38b(図5参照)により検出された自動二輪車1の車速がαkm/h(約2km/h)未満であると制御部29a(図5参照)が判断した場合に、制御部29aは、記憶部29b(図5参照)に格納されているサーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDの4種類の減衰力特性マップのいずれか1つの減衰力特性マップを選択可能なマップ選択モードM1に移行するように構成されている。このマップ選択モードM1は、選択されたいずれか1つの減衰力特性マップを選択決定可能に構成されている。
【0040】
具体的には、制御部29aは、マップ選択モードM1において、UP/DOWNスイッチ9d(図2参照)のUPスイッチ9eがユーザにより押圧されることにより、コンフォートマップD、ノーマルマップC、スポーツマップBおよびサーキットマップAの順に減衰力特性マップを選択可能に構成されている。また、制御部29aは、DOWNスイッチ9fが押圧されることにより、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDの順に減衰力特性マップを選択可能に構成されている。この際、表示パネル14は、現在選択されている減衰力特性マップが点滅されるように構成されており、減衰力特性マップがサーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのいずれの減衰力特性マップが選択されているかを示す機能を有する。
【0041】
また、制御部29aは、マップ選択モードM1において、4種類の減衰力特性マップのいずれか1つの減衰力特性マップを選択決定した後に、セレクトスイッチ9gを所定の時間(約2秒間)以上押圧した場合、右側フロントフォーク18の圧縮側電子制御バルブ27(Front_comp)および伸長側電子制御バルブ28(Front_reb)、および、リヤサスペンション42の圧縮側電子制御バルブ52(Rear_comp)および伸長側電子制御バルブ53(Rear_reb)のいずれか1つのバルブを選択可能なバルブ選択モードM2に移行するように構成されている。このバルブ選択モードM2および後述する減衰力調整モードM3は、マップ選択モードM1において選択した減衰力特性マップを微調整するために設けられている。
【0042】
具体的には、バルブ選択モードM2では、制御部29a(図5参照)は、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9e(図5参照)がユーザにより押圧されることにより、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53の順に減衰力の調整を行いたいバルブを選択可能に構成されている。また、制御部29aは、伸長側電子制御バルブ53が選択されている状態において、さらにUPスイッチ9eが押圧された際には、圧縮側電子制御バルブ27が選択されるように構成されている。また、制御部29aは、DOWNスイッチ9f(図5参照)が押圧されることにより、伸長側電子制御バルブ53、圧縮側電子制御バルブ52、伸長側電子制御バルブ28および圧縮側電子制御バルブ27の順に減衰力の調整を行いたいバルブを選択可能に構成されている。また、制御部29aは、圧縮側電子制御バルブ27が選択されている状態において、さらにDOWNスイッチ9fが押圧された際には、伸長側電子制御バルブ53が選択されるように構成されている。この際、表示パネル14は、現在選択されているバルブが点滅されるように構成されており、バルブが圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53のいずれのバルブが選択されているかを示す機能を有する。そして、制御部29aは、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53のいずれか1つのバルブが選択された後に、セレクトスイッチ9g(図5参照)が押圧されることにより、上記4種類のバルブのいずれか1つのバルブを選択決定可能に構成されている。
【0043】
また、制御部29aは、バルブ選択モードM2において、上記4種類のバルブのいずれか1つのバルブを選択決定するためにセレクトスイッチ9gが押圧されることにより、上記4種類のバルブのいずれか1つのバルブを選択決定するとともに、選択されたいずれか1つのバルブの減衰力を、マップ選択モードM1において選択された減衰力特性マップを基準に−15%〜+15%の範囲で減衰力を調整可能な減衰力調整モードM3に移行するように構成されている。なお、バルブ選択モードM2において、バルブを選択することなくセレクトスイッチ9gを所定の時間(約2秒間)以上押圧した場合、制御部29aは、バルブ選択モードM2からマップ選択モードM1に移行するように構成されている。
【0044】
減衰力調整モードM3において、制御部29a(図5参照)は、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9e(図5参照)が押圧されることにより、選択されたバルブの減衰力を、基準値の減衰力から+1%刻みで最大+15%まで大きくなるように選択可能に構成されている。また、制御部29aは、DOWNスイッチ9fが押圧されることにより、選択されたバルブの減衰力を、基準値から−1%刻みで最小−15%まで小さくなるように選択可能に構成されている。この際、表示パネル14は、現在選択されている減衰力の基準値に対する増減率が点滅されるように構成されており、選択されている増減率が何%であるかを示す機能を有する。そして、制御部29aは、減衰力の基準値に対する増減率が選択された後に、セレクトスイッチ9g(図5参照)が押圧されることにより、選択された増減率を選択決定可能に構成されている。また、減衰力調整モードM3において増減率を選択決定するためにセレクトスイッチ9gが押圧されることにより、制御部29aは、減衰力の増減率を選択決定するとともに、バルブ選択モードM2に戻るように構成されている。
【0045】
また、本実施形態では、制御部29a(図5参照)は、上記マップ選択モードM1において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9e(図5参照)およびDOWNスイッチ9f(図5参照)のいずれか一方を所定の時間(約2秒間)以上押圧した場合に、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53(それぞれ図5参照)のそれぞれが後述するプログラム設定により設定された減衰力特性を有した状態で走行可能なプログラム走行モードP0に移行可能に構成されている。
【0046】
また、本実施形態では、プログラム走行モードP0の状態において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方が時間t1(約2秒間)以上押圧(入力)されると同時に、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧(入力)されることによって、エンジン38の車速センサ38bに検出された自動二輪車1の車速が車速αkm/h(約2km/h)未満であり、実質的に車両停止状態であると制御部29aが判断した場合に、制御部29aは、任意減衰特性設定モードP1(図9および図10参照)に移行可能に構成されている。このとき、制御部29aが車速αkm/h(約2km/h)以上であり、実質的に車両停止状態ではないと判断した場合には、制御部29aは、プログラム走行モードP0から任意減衰特性設定モードP1に移行しないように制御するように構成されている。この際、制御部29aは、前回使用されていた減衰力特性を記憶部29bから呼び出すように構成されている。この場合、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、前回使用されていた減衰力特性により作動するように構成されている。
【0047】
ここで、本実施形態では、任意減衰特性設定モードP1(マップ選択モードP2、バルブ選択モードP3、および詳細数値変更モードP4)は、図9および図10に示すように、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53(それぞれ図5参照)のそれぞれの減衰力特性を詳細に設定可能に構成されている。なお、任意減衰特性設定モードP1(マップ選択モードP2、バルブ選択モードP3、および詳細数値変更モードP4)は、マップ選択モードM1、バルブ選択モードM2および減衰力調整モードM3において減衰力特性マップの減衰力を全体的に上昇または減少させるように行われる減衰力調整と異なり、フロントフォーク16およびリヤサスペンション42がそれぞれ伸縮する際のストロークスピードに対応する減衰力を詳細に設定することが可能である。また、任意減衰特性設定モードP1は、記憶部29b(図5参照)に格納されているサーキットマップA(CIRCUIT)、スポーツマップB(SPORTS)、ノーマルマップC(NORMAL)およびコンフォートマップD(COMFORT)の4種類の減衰力特性マップのいずれか1つのマップ選択モードP2から開始されるように構成されている。
【0048】
マップ選択モードP2において、制御部29a(図5参照)は、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9e(図5参照)が押圧されることにより、コンフォートマップD、ノーマルマップC、スポーツマップBおよびサーキットマップAの順に減衰力特性マップを選択可能に構成されている。また、制御部29aは、DOWNスイッチ9f(図5参照)が押圧されることにより、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDの順に減衰力特性マップを選択可能に構成されている。この際、表示パネル14は、現在選択されている減衰力特性マップが点滅されるように構成されており、選択されている減衰力特性マップがサーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのいずれの減衰力特性マップが選択されているかを示す機能を有する。そして、制御部29aは、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのうち、いずれか1つの減衰力特性マップが選択された後に、セレクトスイッチ9g(図5参照)が押圧されることにより、4種類の減衰力特性マップのいずれか1つの減衰力特性マップを選択決定可能に構成されている。
【0049】
また、制御部29aは、マップ選択モードP2において、4種類の減衰力特性マップのいずれか1つの減衰力特性マップを選択決定した後に、右側フロントフォーク18の圧縮側電子制御バルブ27(Front_comp)および伸長側電子制御バルブ28(Front_reb)、および、リヤサスペンション42の圧縮側電子制御バルブ52(Rear_comp)および伸長側電子制御バルブ53(Rear_reb)のいずれか1つのバルブを選択および選択決定可能なバルブ選択モードP3に移行するように構成されている。具体的には、制御部29aは、マップ選択モードP2において減衰力特性マップが選択された後、セレクトスイッチ9gが押圧された際に、減衰力特性マップを選択決定するとともに、バルブ選択モードP3に移行するように構成されている。
【0050】
バルブ選択モードP3において、制御部29aは、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9eが押圧されることにより、伸長側電子制御バルブ53(Rear_reb)、圧縮側電子制御バルブ52(Rear_comp)、伸長側電子制御バルブ28(Front_rebおよび圧縮側電子制御バルブ27(Front_comp)の順に減衰力の調整を行いたいバルブを選択可能に構成されている。また、制御部29aは、圧縮側電子制御バルブ27が選択されている状態において、さらにUPスイッチ9eが押圧された際には、伸長側電子制御バルブ53が選択されるように構成されている。また、バルブ選択モードP3において、制御部29aは、DOWNスイッチ9fが押圧されることにより、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53の順に減衰力の調整を行いたいバルブを選択可能に構成されている。また、制御部29aは、伸長側電子制御バルブ53が選択されている状態において、さらにDOWNスイッチ9fが押圧された際には、圧縮側電子制御バルブ27が選択されるように構成されている。この際、表示パネル14は、現在選択されているバルブが点滅されるように構成されており、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53のいずれのバルブが選択されているかを示す機能を有する。そして、制御部29aは、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53のいずれか1つのバルブが選択された後に、セレクトスイッチ9gが押圧されることにより、上記4種類のバルブのいずれか1つのバルブを選択決定可能に構成されている。なお、バルブ選択モードP3においてセレクトスイッチ9gが押圧された場合(約2秒以内)、制御部29aは、バルブ選択モードP3からマップ選択モードP2に移行するように構成されている。
【0051】
そして、制御部29aは、バルブ選択モードP3において、上記4種類のバルブのいずれか1つのバルブを選択決定した後に、セレクトスイッチ9gが所定の時間(約2秒間)以上押圧されることにより、選択決定されたバルブの減衰力を詳細に設定変更可能な詳細数値変更モードP4(図10参照)に移行されるように構成されている。詳細数値変更モードP4は、図10に示すように、右側フロントフォーク18またはリヤサスペンション42が伸縮する際のストロークスピードを選択および選択決定可能なストロークスピード設定モードP41と、右側フロントフォーク18またはリヤサスペンション42が、ストロークスピード設定モードP41において設定されたストロークスピードに対応して発生させる減衰力を選択および選択決定可能な減衰力設定モードP42とにより構成されている。そして、詳細数値変更モードP4では、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53のそれぞれについて、ストロークスピードに対応して発生させる減衰力を詳細に設定可能に構成されている。
【0052】
制御部29aは、バルブ選択モードP3から詳細数値変更モードP4に移行された際に、ストロークスピード設定モードP41に移行されるように構成されている。また、制御部29aは、ストロークスピード設定モードP41において、減衰力を設定したいストロークスピードを、フロントフォーク16の場合、たとえば、0.1m/sから1.0m/sまで0.1m/s刻みの10段階で選択可能に構成されている。具体的には、制御部29aは、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9eが押圧されることにより、減衰力を設定したいストロークスピードを0.1m/s刻みで大きくなるように選択可能に構成されている。また、制御部29aは、DOWNスイッチ9fが押圧されることにより、減衰力を設定したいストロークスピードを0.1m/s刻みで小さくなるように選択可能に構成されている。この際、表示パネル14は、現在選択されているストロークスピードの値が点滅されるように構成されており、選択されているストロークスピードがいくらであるかを示す機能を有する。そして、制御部29aは、ストロークスピードが選択された後に、セレクトスイッチ9gが押圧(約2秒以内)されることにより、選択されたストロークスピードを選択決定可能に構成されている。また、ストロークスピードを選択決定後、制御部29aは、選択決定されたストロークスピード(たとえばストロークスピードV1)に対応する減衰力を設定可能な減衰力設定モードP42に移行するように構成されている。
【0053】
そして、制御部29aは、図10および図11に示すように、減衰力設定モードP42において、上記ストロークスピード(たとえばストロークスピードV1)を選択決定した後に、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9e(図5参照)が押圧されることにより、ストロークスピードV1に対応する減衰力(たとえば減衰力F1)を、フロントフォーク16の場合、たとえば、基準値の減衰力F1から+20N刻みで最大(F1+100)Nまで大きくなるように選択可能に構成されている。なお、リヤサスペンション42の場合、ストロークスピードV1に対応する減衰力(たとえば減衰力F1)を、基準値の減衰力F1から+50N刻みで最大(F1+250)Nまで大きくなるように選択することが可能である。また、制御部29aは、DOWNスイッチ9f(図5参照)が押圧されることにより、ストロークスピードV1に対応する減衰力F1を、フロントフォーク16の場合、たとえば、基準値の減衰力F1から−20N刻みで最小(F1−100)Nまで小さくなるように選択可能に構成されている。なお、リヤサスペンション42の場合、ストロークスピードV1に対応する減衰力(たとえば減衰力F1)を、基準値の減衰力F1から−50N刻みで最小(F1−250)Nまで小さくなるように選択することが可能である。この際、表示パネル14は、現在選択されている減衰力が点滅されるように構成されており、選択されている減衰力がいくらであるかを示す機能を有する。そして、制御部29aは、ストロークスピードV1に対応する減衰力が選択された後に、セレクトスイッチ9gが押圧されることにより、選択された減衰力を選択決定可能に構成されている。また、ストロークスピードV1に対応する減衰力を選択決定後、制御部29aは、ストロークスピード設定モードP41に戻るように構成されている。つまり、詳細数値変更モードP4は、ストロークスピード設定モードP41と減衰力設定モードP42との間を往復可能に構成されているため、減衰力特性を詳細に設定することが可能である。
【0054】
また、図10には、圧縮側電子制御バルブ27の詳細数値変更モードP4が示されているが、圧縮側電子制御バルブ27以外の伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53についても、詳細数値変更モードP4により上記のように設定することが可能である。
【0055】
このように本実施形態による詳細数値変更モードP4では、0.1m/s〜1.0m/sの間の10段階のストロークスピードにおいて、それぞれの減衰力を設定することが可能であるため、ストロークスピードに対応して発生させる減衰力を詳細に設定することが可能である。また、本実施形態では、マップ選択モードP2により選択された減衰力特性マップ(たとえば、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのいずれか1つ)に基づいて、ストロークスピードに対応する減衰力を設定することが可能であるので、減衰力特性マップが表示されていない状態から任意の減衰力特性マップを設定する場合と比べて、任意の減衰力特性マップを設定することが容易である。
【0056】
また、制御部29aは、詳細数値変更モードP4において、セレクトスイッチ9gが所定の時間(約2秒間)以上押圧されることにより、バルブ選択モードP3に移行可能に構成されている。このようにバルブ選択モードP3と、詳細数値変更モードP4とを切替可能に構成することによって、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53のそれぞれについて減衰力を詳細に設定することが可能である。
【0057】
また、本実施形態では、詳細数値変更モードP4において、制御部29aは、セレクトスイッチ9gが所定の時間(約2秒間)以上押圧されることにより、バルブ選択モードP3に移行されるのと同時に、選択されたバルブについて、詳細数値変更モードP4において詳細に設定変更されたストロークスピードに対応する減衰力の設定変更を確定するように構成されている。
【0058】
この場合において、本実施形態では、図12〜図14に示すように、制御部29aは、詳細数値変更モードP4において、予め設定されている減衰力特性マップZ1(たとえば、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのいずれか1つ)の少なくとも1つのストロークスピードV2に対応する減衰力F2(点Q0)(図15参照)がユーザにより減衰力F3(点Q3)(図15参照)に変更された場合に、設定変更された設定値(減衰力F3)およびその他の設定値(減衰力特性マップZ1上の点)を合成させた減衰力特性になるように予め設定されている減衰力特性マップZ1を減衰力特性マップZ2に設定変更可能に構成されている。なお、点Q0は、本発明の「第1座標点」の一例であり、点Q3は、本発明の「第3座標点」の一例である。
【0059】
具体的には、制御部29aは、減衰力特性マップZ1上のストロークスピードV2に対応する減衰力F2(点Q0)がユーザにより、減衰力F2よりも大きな減衰力F3(点Q3)に変更された状態で、詳細数値変更モードP4を終了させた場合にも、減衰力特性マップZ1からストロークスピードV2に対応する減衰力F3のみが突出した減衰力特性にならないように修正可能に構成されている。なお、予め設定された減衰力特性マップZ1を設定変更する際に実行される減衰力特性マップZ1の修正方法は、後ほど詳細に説明する。
【0060】
また、本実施形態では、制御部29aは、図15に示すように、減衰力特性マップZ1上に存在する少なくとも1つ以上の減衰力(座標点)を設定変更可能な閾値Y1を予め有している。そして、閾値Y1を超えるような減衰力F10(座標点)の設定が行われた場合、閾値Y1を超えるように設定が行われた減衰力F10は閾値Y1の境界線上の減衰力F10Aに設定される。また、制御部29aは、減衰力特性マップZ1上に存在する少なくとも1つ以上の減衰力(座標点)を設定変更可能な閾値Y2を予め有している。そして、閾値Y2を下回るような減衰力F11(座標点)の設定が行われた場合、閾値Y2を下回るように設定が行われた減衰力F11は閾値Y2の境界線上の減衰力F11Aに設定される。
【0061】
また、本実施形態では、任意減衰特性設定モードP1において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方が時間t2(約5秒間)以上押圧された場合、制御部29aは、任意減衰特性設定モードP1を終了するとともに、プログラム走行モードP0に移行可能に構成されている。この際、制御部29aは、マップ選択モードP2、バルブ選択モードP3、および詳細数値変更モードP4において設定した設定を確定するとともに、確定した設定を記憶部29bに保存するように構成されている。そして、任意減衰特性設定モードP1により設定された減衰力特性を有した状態で、自動二輪車1を走行させることが可能となる。なお、時間t2は、本発明の「第2の時間」の一例である。
【0062】
また、制御部29aは、車速が所定の車速αkm/h(約2km/h)未満の状態で、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53における減衰力特性の設定変更(任意の減衰力特性の入力および入力された減衰力特性の確定)を許可するように構成されている。具体的には、エンジン38の車速センサ38bに検出された自動二輪車1の車速がαkm/h(約2km/h)未満であると制御部29aが判断し、かつ、後述するエンジン38が停止している状態であると制御部が判断した場合、制御部29aは、任意減衰特性設定モードP1(マップ選択モードP2、バルブ選択モードP3、および詳細数値変更モードP4)に移行可能に構成されている。これにより、任意の減衰力特性を設定変更(任意の減衰力特性の入力および入力された減衰力特性の確定)することが可能となる。
【0063】
また、任意減衰特性設定モードP1(マップ選択モードP2、バルブ選択モードP3、および詳細数値変更モードP4)の状態である場合で、かつ、エンジン38の車速センサ38bに検出された自動二輪車1の車速がαkm/h(約2km/h)以上であり、実質的に車両停止状態ではないと制御部29aが判断した場合、制御部29aは、任意減衰特性設定モードP1を強制的に終了させるように構成されている。この際、制御部29aは、設定(入力)途中のデータを記憶部29bに保存するように制御するように構成されている。また、この際、制御部29aは、前回使用されていた減衰力特性を記憶部29bから呼び出すように構成されており、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、前回使用されていた(任意減衰特性設定モードP1に移行する前の)減衰力特性により作動するように構成されている。
【0064】
また、制御部29aは、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53における減衰力特性の設定変更(任意の減衰力特性の入力および入力された減衰力特性の確定)を実質的にエンジン38が停止している状態で許可するように構成されている。具体的には、エンジン38の回転センサ38aに検出された自動二輪車1の図示しないクランク軸の回転数がβr/min(0r/min)以上であると制御部29aが判断した場合、制御部29aは、任意減衰特性設定モードP1(マップ選択モードP2、バルブ選択モードP3、および詳細数値変更モードP4)に移行可能に構成されている。これにより、任意の減衰力特性を設定変更(任意の減衰力特性の入力および入力された減衰力特性の確定)することが可能となる。
【0065】
また、任意減衰特性設定モードP1(マップ選択モードP2、バルブ選択モードP3、および詳細数値変更モードP4)の状態である場合で、かつ、エンジン38の回転センサ38aに検出された自動二輪車1の図示しないクランク軸の回転数がβr/min(0r/min)以上であると制御部29aが判断した場合、制御部29aは、任意減衰特性設定モードP1を強制的に終了させるように構成されている。つまり、エンジン38が動作している際には、任意減衰特性設定モードP1が強制的に終了される。この際、制御部29aは、設定途中のデータを記憶部29bに保存するように制御するように構成されている。また、この際、制御部29aは、前回使用されていた減衰力特性を記憶部29bから呼び出すように構成されており、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、前回使用されていた(任意減衰特性設定モードP1に移行する前の)減衰力特性により作動するように構成されている。
【0066】
また、制御部29aは、実質的に車両停止状態であるか否かを所定の時間間隔t3(約10msec〜約50msec)で確認するように構成されている。具体的には、制御部29aは、時間間隔t3(10msec〜50msec)毎に自動二輪車1の車速センサ38bに基づいて車速を検出するように構成されており、車速がαkm/h(約2km/h)以上である場合に、減衰力特性の詳細な設定(任意の減衰力特性の入力および入力された減衰力特性の確定)を行うことができないように構成されている。すなわち、制御部29aは、任意の減衰力特性の入力を行うことが可能な状態であるか否かを判断するように構成されている。この際、制御部29aは、自動二輪車1の車速がαkm/h(約2km/h)未満である場合、回転センサ38aに基づいてエンジン38の回転数も検出するように構成されている。
【0067】
また、本実施形態では、制御部29aは、ウェブ上に公開されている予め設定されている減衰力特性の情報を、パソコン80、USBケーブル81および通信部57を介してダウンロード可能に構成されている。また、制御部29aは、ダウンロードされた減衰力特性を利用して、ユーザが所望する減衰力特性に変更可能に構成されている。また、制御部29aは、パソコン80により設定された任意の減衰力特性の情報をパソコン80からUSBケーブル81および通信部57を介して受信可能に構成されている。
【0068】
また、本実施形態では、制御部29aは、記憶部29bに記憶されている予め設定されている減衰力特性(たとえば、後述するサーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップD)を任意の減衰力特性(たとえば、後述する減衰力特性マップZ2)に設定変更した減衰力特性の情報を、通信部57およびUSBケーブル81を介してパソコン80に送信可能に構成されている。
【0069】
図16および図17は、図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性マップが変更される際の減衰力特性マップの修正方法を説明するための図である。次に、図15〜図17を参照して、予め設定された減衰力特性を設定変更する際に実行される減衰力特性の修正方法の一例について詳細に説明する。
【0070】
まず、予め設定された減衰力特性マップZ1のストロークスピードV2に対応する減衰力F2を減衰力F3に変更した場合について説明する。
【0071】
本実施形態による具体的な修正方法の一例としては、図15に示すように、制御部29aにより、減衰力F3(点Q3)からストロークスピードV2の正方向および負方向の両方に、それぞれ、減衰力特性マップZ1に向かって直線L1およびL2が形成される。このとき、直線L1の傾きは、直線L1と減衰力特性マップZ1との交点Q1において直線L1と減衰力特性マップZ1とがなす角が角θになるように修正されるとともに、直線L2の傾きは、直線L2と減衰力特性マップZ1との交点Q2において直線L2と減衰力特性マップZ1とがなす角が角θになるように修正される。つまり、制御部29aは、設定変更された点Q3と、設定変更された点Q3前後の交点とを結んだ直線L1およびL2が所定の傾きの範囲内に収まっていない場合、直線L1およびL2が所定の傾きの範囲内に収まるように設定変更された点Q3と設定変更された点Q3近傍の交点Q1およびQ2とを結ぶように修正するように構成されている。そして、減衰力特性マップZ1の交点Q1と交点Q2との間の減衰力特性が直線L1および直線L2に入れ替わることにより、予め設定された減衰力特性マップZ1を設定変更した減衰力特性マップZ2を形成することが可能となる。また、上記のような減衰力特性の修正を行うことにより、1つの減衰力F2を減衰力F3に変更しただけでも、スムーズな減衰力特性マップZ2に設定変更することが可能となる。
【0072】
次に、予め設定された減衰力特性マップZ1のストロークスピードV2に対応する減衰力F2(点Q0)を減衰力F3(点Q3)に変更するのに加えて、ストロークスピードV3に対応する減衰力F4(点Q4)を減衰力F5(点Q5)に変更する場合について説明する。なお、点Q4は、本発明の「第2座標点」の一例であり、点Q5は、本発明の「第4座標点」の一例である。
【0073】
図16に示すように、制御部29aにより、直線L1の傾きは、上記したように、直線L1と減衰力特性マップZ1との交点Q1において直線L1と減衰力特性マップZ1とがなす角が角θになるように形成される。なお、直線L1は、本発明の「第2線」の一例である。また、直線L2は、上記したように、直線L2と減衰力特性マップZ1との交点Q2において直線L2と減衰力特性マップZ1とがなす角が角θになるように形成される。なお、交点Q1および交点Q2は、本発明の「第5座標点」の一例である。
【0074】
また、本実施形態では、点Q3と点Q5とを結ぶ直線L3が形成される。なお、直線L3は、本発明の「第1線」の一例である。この直線L3と減衰力特性マップZ1との交点Q6において、直線L3と減衰力特性マップZ1とがなす角θaが角θよりも大きい場合に、制御部29aは、点Q5を消去するように構成されている。つまり、制御部29aは、点Q3と点Q5とを結ぶ直線L3の傾きが点Q3と点Q1とを結ぶ直線L1の傾きよりも大きい場合に、点Q5を消去するように構成されている。なお、直線L3と減衰力特性マップZ1との交点Q6において、直線L3と減衰力特性マップZ1とがなす角θaが角θ以下である場合、図17に示すように、点Q5は、消去されない。具体的には、直線L3は、点Q3と点Q5とを結ぶように形成され、点Q5には、減衰力特性マップZ1に向かって延びる直線L4が新たに形成される。なお、減衰力特性マップZ1と直線L4との交点Q7において、直線L4と減衰力特性マップZ1とがなす角は、角θになるように形成されている。
【0075】
図18は、図1に示した一実施形態による自動二輪車が走行していない場合における各モードの処理フローを説明するためのフローチャートである。また、図19〜図25は、図1に示した一実施形態による自動二輪車が走行していない場合における各モードについて詳細に説明するためのフローチャートである。次に、図5、図10および図15〜図25を参照して、各モードにおける制御部29aの処理動作について詳細に説明する。
【0076】
まず、図18に示すように、ステップS1において、制御部29a(図5参照)により、車速がαkm/h(約2km/h)未満であるか否かが判断される。そして、ステップS1において、車速がαkm/h(約2km/h)以上であると判断された場合には、自動二輪車1が走行中であると判断され、走行中のモードに移行される。なお、走行中のモードでは、詳細な減衰力調整を行うことができないように制御される。また、ステップS1において、車速がαkm/h(約2km/h)未満であると判断された場合には、自動二輪車1が停車中であると判断され、ステップS2に進む。
【0077】
その後、ステップS2において、減衰力調整モードM3における減衰力の調整幅(b)を1%刻みに調整するように設定されるとともに、減衰力の最大調整幅(c)が15に設定された後、ステップS3に進む。そして、ステップS3において、現在いずれのモードに属しているかが確認される。具体的には、制御部29aにより、ステップS10のマップ選択モードM1、ステップS20のバルブ選択モードM2、ステップS30の減衰力調整モードM3、ステップS40のプログラム走行モードP0、ステップS50の任意減衰特性設定モードP1のマップ選択モードP2、ステップS60の任意減衰特性設定モードP1のバルブ選択モードP3およびステップS70の任意減衰特性設定モードP1の詳細数値変更モードP4のいずれに属しているかが確認される。
【0078】
そして、ステップS3において、上記いずれかのモードに属していることが確認され、属しているモードに進んだ後、属しているモードの処理が終了されることにより、自動二輪車が走行していない場合における各モードの処理フローが終了される。この処理は、上記したように時間間隔t3(10〜50msec)毎に実行されるため、車両走行時に、このような処理が実行されるのを抑制することが可能となる。
【0079】
次に、ステップS10のマップ選択モードM1における制御部29aの処理動作について詳細に説明する。
【0080】
まず、図19に示すように、ステップS11において、制御部29a(図5参照)により、いずれの減衰力特性マップが選択および選択決定されているかが確認される。具体的には、制御部29aにより、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのいずれかが選択および選択決定されているかが確認される。そして、ステップS11において、上記いずれかのマップが選択および選択決定されていることが確認され、ステップS12に進む。
【0081】
そして、ステップS12において、制御部29aにより、セレクトスイッチ9gがオンされたか否かが判断される。そして、ステップS12において、セレクトスイッチ9gがオンされていないと判断された場合には、後述するステップS15に進む。また、ステップS12において、セレクトスイッチ9gがオンされたと判断された場合には、ステップS13に進む。次に、ステップS13において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧された状態であるか否かが判断される。そして、ステップS13において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧されていないと判断された場合には、後述するステップS15に進む。また、ステップS13において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧されていると判断された場合には、ステップS14に進み、マップ選択モードM1からバルブ選択モードM2に移行されて、マップ選択モードM1における制御部29aの処理動作が終了される。
【0082】
また、ステップS15において、制御部29aにより、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9e(図5参照)およびDOWNスイッチ9f(図5参照)のいずれか一方がオンされたか否かが判断される。そして、ステップS15において、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方がオンされていないと判断された場合には、マップ選択モードM1の状態のままで、マップ選択モードM1における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS15において、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方がオンされたと判断された場合には、ステップS16に進む。次に、ステップS16において、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方が時間t1(約2秒間)以上押圧された状態であるか否かが判断される。そして、ステップS16において、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方が時間t1(約2秒間)以上押圧されていないと判断された場合には、マップ選択モードM1の状態のままで、マップ選択モードM1における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS16において、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方が時間t1(約2秒間)以上押圧されていると判断された場合には、ステップS17に進み、マップ選択モードM1からプログラム走行モードP0に移行されて、マップ選択モードM1における制御部29aの処理動作が終了される。
【0083】
次に、ステップS20のバルブ選択モードM2における制御部29aの処理動作について詳細に説明する。
【0084】
まず、図20に示すように、ステップS21において、制御部29a(図5参照)により、いずれの電子制御バルブが選択および選択決定されているかが確認される。具体的には、制御部29aにより、圧縮側電子制御バルブ27(フロント圧側)、伸長側電子制御バルブ28(フロント伸び側)、圧縮側電子制御バルブ52(リア圧側)および伸長側電子制御バルブ53(リア伸び側)のいずれかが選択および選択決定されているかが確認される。そして、ステップS21において、上記いずれかの電子制御バルブが選択および選択決定されていることが確認され、ステップS22に進む。
【0085】
そして、ステップS22において、制御部29aにより、セレクトスイッチ9gがオンされたか否かが判断される。そして、ステップS22において、セレクトスイッチ9gがオンされていないと判断された場合には、後述するステップS26に進む。また、ステップS22において、セレクトスイッチ9gがオンされたと判断された場合には、ステップS23に進む。次に、ステップS23において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧された状態であるか否かが判断される。そして、ステップS23において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧されていないと判断された場合には、ステップS24に進み、セレクトスイッチ9gがオンされたスイッチオンフラグを記憶部29bに格納した後、バルブ選択モードM2の状態のまま、バルブ選択モードM2における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS23において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧されていると判断された場合には、ステップS25に進み、バルブ選択モードM2からマップ選択モードM1に移行されて、バルブ選択モードM2における制御部29aの処理動作が終了される。
【0086】
また、ステップS26において、制御部29aにより、セレクトスイッチ9gがオンされたスイッチオンフラグが記憶部29bに記憶されているか否かが判断される。そして、ステップS26において、記憶部29bにスイッチオンフラグが記憶されていないと判断された場合には、バルブ選択モードM2の状態のままで、バルブ選択モードM2における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS26において、記憶部29bにスイッチオンフラグが記憶されていると判断された場合には、ステップS27に進む。そして、ステップS27において、バルブ選択モードM2から減衰力調整モードM3に移行されて、ステップS28に進む。その後、ステップS28において、記憶部29bに記憶されているスイッチオンフラグが消去された後、バルブ選択モードM2における制御部29aの処理動作が終了される。
【0087】
次に、ステップS30の減衰力調整モードM3における制御部29aの処理動作について詳細に説明する。
【0088】
まず、図21に示すように、ステップS31において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9e(図5参照)およびDOWNスイッチ9fが押圧されることにより、減衰力調整モードM3における減衰力の設定値が受け付けられている。その後、ステップS32において、制御部29aにより、セレクトスイッチ9gがオンされたか否かが判断される。そして、ステップS32において、セレクトスイッチ9gがオンされていないと判断された場合には、減衰力調整モードM3の状態のまま、減衰力調整モードM3における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS32において、セレクトスイッチ9gがオンされていると判断された場合には、ステップS33に進み、減衰力調整モードM3からバルブ選択モードM2に移行されて、減衰力調整モードM3における制御部29aの処理動作が終了される。
【0089】
次に、ステップS40のプログラム走行モードP0における制御部29aの処理動作について詳細に説明する。
【0090】
まず、図22に示すように、ステップS41において、制御部29a(図5参照)により、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方のみが時間t1(約2秒間)以上オンされたか否かが判断される。そして、ステップS41において、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方のみが時間t1(約2秒間)以上オンされていると判断された場合には、ステップS42に進み、プログラム走行モードP0からマップ選択モードM1に移行されて、プログラム走行モードP0における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS41において、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方が時間t1(約2秒間)以上オンされていないと判断された場合には、ステップS43に進む。次に、ステップS43において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方と、セレクトスイッチ9gとが時間t1(約2秒間)以上オンされたか否かが判断される。そして、ステップS43において、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方と、セレクトスイッチ9gとが時間t1(約2秒間)以上押圧されていないと判断された場合には、プログラム走行モードP0の状態のまま、プログラム走行モードP0における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS43において、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方と、セレクトスイッチ9gとが時間t1(約2秒間)以上押圧されていると判断された場合には、ステップS44に進み、プログラム走行モードP0から任意減衰特性設定モードP1のマップ選択モードP2に移行されて、プログラム走行モードP0における制御部29aの処理動作が終了される。
【0091】
次に、ステップS50の任意減衰特性設定モードP1のマップ選択モードP2における制御部29aの処理動作について詳細に説明する。
【0092】
まず、図23に示すように、ステップS51において、制御部29a(図5参照)により、いずれの減衰力特性マップが選択および選択決定されているかが確認される。具体的には、制御部29aにより、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのいずれかが選択および選択決定されているかが確認される。そして、ステップS51において、上記いずれかの電子制御バルブが選択および選択決定されていることが確認され、ステップS52に進む。
【0093】
そして、ステップS52において、制御部29aにより、セレクトスイッチ9gがオンされたか否かが判断される。そして、ステップS52において、セレクトスイッチ9gがオンされたと判断された場合には、ステップS53に進み、任意減衰特性設定モードP1のマップ選択モードP2からバルブ選択モードP3に移行されて、任意減衰特性設定モードP1のマップ選択モードP2における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS52において、セレクトスイッチ9gがオンされていないと判断された場合には、ステップS54に進む。次に、ステップS54において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方が時間t2(約5秒間)以上オンされたか否かが判断される。そして、ステップS54において、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方が時間t2(約5秒間)以上押圧されていないと判断された場合には、マップ選択モードP2の状態のまま、マップ選択モードP2における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS54において、UPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方が時間t2(約5秒間)以上押圧されていると判断された場合には、ステップS55に進み、任意減衰特性設定モードP1のマップ選択モードP2からプログラム走行モードP0に移行されて、任意減衰特性設定モードP1のマップ選択モードP2における制御部29aの処理動作が終了される。
【0094】
次に、ステップS60の任意減衰特性設定モードP1のバルブ選択モードP3における制御部29aの処理動作について詳細に説明する。
【0095】
まず、図24に示すように、ステップS61において、制御部29a(図5参照)により、いずれの電子制御バルブが選択および選択決定されているかが確認される。具体的には、制御部29aにより、圧縮側電子制御バルブ27(フロント圧側)、伸長側電子制御バルブ28(フロント伸び側)、圧縮側電子制御バルブ52(リア圧側)および伸長側電子制御バルブ53(リア伸び側)のいずれかが選択および選択決定されているかが確認される。そして、ステップS61において、上記いずれかの電子制御バルブが選択および選択決定されていることが確認され、ステップS62に進む。
【0096】
そして、ステップS62において、制御部29aにより、セレクトスイッチ9gがオンされたか否かが判断される。そして、ステップS62において、セレクトスイッチ9gがオンされていないと判断された場合には、後述するステップS66に進む。また、ステップS62において、セレクトスイッチ9gがオンされたと判断された場合には、ステップS63に進む。次に、ステップS63において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧された状態であるか否かが判断される。そして、ステップS63において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧されていないと判断された場合には、ステップS64に進み、セレクトスイッチ9gがオンされたスイッチオンフラグを記憶部29bに格納した後、任意減衰特性設定モードP1のバルブ選択モードP3の状態のまま、バルブ選択モードP3における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS63において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧されていると判断された場合には、ステップS65に進み、任意減衰特性設定モードP1のバルブ選択モードP3から任意減衰特性設定モードP1の詳細数値変更モードP4に移行されて、バルブ選択モードP3における制御部29aの処理動作が終了される。
【0097】
また、ステップS66において、制御部29aにより、セレクトスイッチ9gがオンされたスイッチオンフラグが記憶部29bに記憶されているか否かが判断される。そして、ステップS66において、記憶部29bにスイッチオンフラグが記憶されていないと判断された場合には、任意減衰特性設定モードP1のバルブ選択モードP3の状態のままで、バルブ選択モードP3における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS66において、記憶部29bにスイッチオンフラグが記憶されていると判断された場合には、ステップS67に進む。そして、ステップS67において、任意減衰特性設定モードP1のバルブ選択モードP3からマップ選択モードP2に移行されて、ステップS68に進む。その後、ステップS68において、記憶部29bに記憶されているスイッチオンフラグが消去された後、バルブ選択モードP3における制御部29aの処理動作が終了される。
【0098】
次に、ステップS70の任意減衰特性設定モードP1の詳細数値変更モードP4における制御部29aの処理動作について詳細に説明する。
【0099】
まず、図25に示すように、ステップS71において、ストロークスピード設定モードP41(図10参照)および減衰力設定モードP42(図10参照)においてユーザが所望する設定値が受け付けられている。その後、ステップS72において、制御部29a(図5参照)により、減衰力確定スイッチが入力されたか否かが判断される。すなわち、セレクトスイッチ9gが約2秒間以上オンされたか否かが判断される。そして、ステップS72において、セレクトスイッチ9gが約2秒間以上オンされていないと判断された場合には、後述するステップS78に進む。また、ステップS72において、セレクトスイッチ9gが約2秒間以上オンされたと判断された場合には、ステップS73に進む。
【0100】
次に、ステップS73において、制御部29aにより、入力された減衰力が閾値Y1およびY2の間の領域内であるか否かが判断される。そして、ステップS73において、入力された減衰力が閾値Y1およびY2の間の領域内であると判断された場合には、後述するステップS75に進む。また、ステップS73において、入力された減衰力が閾値Y1およびY2の間の領域内でないと判断された場合には、ステップS74に進み、入力された減衰力を閾値Y1またはY2上に移動させるように減衰力が補正され、ステップS75に進む。
【0101】
次に、ステップS75において、制御部29aにより、入力された減衰力が、図15〜図17に示した一例のように、減衰力特性の修正を行う必要がある設定値であるか否かが判断される。そして、ステップS75において、入力された減衰力が減衰力特性の修正を行う必要がある設定値でないと判断された場合には、後述するステップS77に進む。また、ステップS75において、入力された減衰力が減衰力特性の修正を行う必要がある設定値であると判断された場合には、ステップS76に進み、入力された減衰力に基づいて減衰力特性が修正され、ステップS77に進む。
【0102】
その後、ステップS77において、予め設定された減衰力特性(たとえば、減衰力特性マップZ1)の設定変更が確定され、ステップS78に進む。
【0103】
そして、ステップS78において、制御部29aにより、セレクトスイッチ9gがオンされたか否かが判断される。そして、ステップS78において、セレクトスイッチ9gがオンされていないと判断された場合には、後述するステップS82に進む。また、ステップS78において、セレクトスイッチ9gがオンされたと判断された場合には、ステップS79に進む。次に、ステップS79において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧された状態であるか否かが判断される。そして、ステップS79において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧されていないと判断された場合には、ステップS80に進み、セレクトスイッチ9gがオンされたスイッチオンフラグを記憶部29bに格納した後、任意減衰特性設定モードP1の詳細数値変更モードP4の状態のまま、詳細数値変更モードP4における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS79において、セレクトスイッチ9gが時間t1(約2秒間)以上押圧されていると判断された場合には、ステップS81に進み、任意減衰特性設定モードP1の詳細数値変更モードP4から任意減衰特性設定モードP1のバルブ選択モードP3に移行されて、詳細数値変更モードP4における制御部29aの処理動作が終了される。
【0104】
また、ステップS82において、制御部29aにより、セレクトスイッチ9gがオンされたスイッチオンフラグが記憶部29bに記憶されているか否かが判断される。そして、ステップS82において、記憶部29bにスイッチオンフラグが記憶されていないと判断された場合には、任意減衰特性設定モードP1の詳細数値変更モードP4の状態のままで、詳細数値変更モードP4における制御部29aの処理動作が終了される。また、ステップS82において、記憶部29bにスイッチオンフラグが記憶されていると判断された場合には、ステップS83に進む。そして、ステップS83において、任意減衰特性設定モードP1の詳細数値変更モードP4のままで、ストロークスピード設定モードP41と減衰力設定モードP42とが入れ替わり、ステップS84に進む。その後、ステップS84において、記憶部29bに記憶されているスイッチオンフラグが消去された後、詳細数値変更モードP4における制御部29aの処理動作が終了される。
【0105】
次に、図5および図6を参照して、本発明の一実施形態による自動二輪車1のリヤサスペンション42の動作について説明する。
【0106】
まず、リヤサスペンション42(図6参照)に伸長する方向の力が作用した場合について説明する。リヤサスペンション42に伸長する方向の力が作用すると、リヤサスペンション42が伸長されることにより、減衰力が発生する。
【0107】
具体的には、図6に示すように、ピストン49が伸長側オイル室42bの方に移動されると、伸長側オイル室42bの油圧が上昇する。そして、伸長側オイル室42b内のオイルが、オイル通路部54のオイル通路54dに流入され、伸長側電子制御バルブ53に流入される。このとき、リヤサスペンション42の伸長側へのストロークスピードに応じて、ECU29の制御部29a(図5参照)が所定の電流を伸長側電子制御バルブ53に通電するように制御することにより、伸長側電子制御バルブ53の弁圧が調整される。これにより、伸長側電子制御バルブ53を通過するオイルの圧力が調整されるので、伸長側電子制御バルブ53で発生される減衰力が調整される。そして、伸長側電子制御バルブ53を通過したオイルは、中間通路54eおよび中間通路54cを介してチェックバルブ55bに流入され、チェックバルブ55bに流入されたオイルは、オイル通路54aを介して圧縮側オイル室42aに流入される。
【0108】
次に、リヤサスペンション42に圧縮する方向の力が作用した場合について説明する。リヤサスペンション42に圧縮する方向の力が作用すると、リヤサスペンション42が短縮されることにより、減衰力が発生する。
【0109】
具体的には、ピストン49が圧縮側オイル室42aの方に移動されると、圧縮側オイル室42aの油圧が上昇する。そして、圧縮側オイル室42a内のオイルが、オイル通路部54のオイル通路54aに流入され、圧縮側電子制御バルブ52に流入される。このとき、リヤサスペンション42の圧縮側へのストロークスピードに応じて、ECU29の制御部29a(図5参照)が所定の電流を圧縮側電子制御バルブ52に通電するように制御することにより、圧縮側電子制御バルブ52の弁圧が調整される。これにより、圧縮側電子制御バルブ52を通過するオイルの圧力が調整されるので、圧縮側電子制御バルブ52で発生される減衰力が調整される。そして、圧縮側電子制御バルブ52を通過したオイルは、中間通路54bおよび中間通路54cを介してチェックバルブ55aに流入され、チェックバルブ55aに流入されたオイルは、オイル通路54dを介して伸長側オイル室42bに流入される。
【0110】
次に、図4および図5を参照して、本発明の一実施形態による自動二輪車1の右側フロントフォーク18の動作について説明する。
【0111】
まず、右側フロントフォーク18(図4参照)に伸長する方向の力が作用した場合について説明する。右側フロントフォーク18に伸長する方向の力が作用すると、右側フロントフォーク18が伸長されることにより、減衰力が発生する。
【0112】
具体的には、図4に示すように、ピストン32が伸長側オイル室18bの方に移動されると、伸長側オイル室18bの油圧が上昇する。そして、伸長側オイル室18b内のオイルが、オイル通路部33のオイル通路33dに流入され、伸長側電子制御バルブ28に流入される。このとき、右側フロントフォーク18の伸長側へのストロークスピードに応じて、ECU29の制御部29a(図5参照)が所定の電流を伸長側電子制御バルブ28に通電するように制御することにより、伸長側電子制御バルブ28の弁圧が調整される。これにより、伸長側電子制御バルブ28を通過するオイルの圧力が調整されるので、伸長側電子制御バルブ28で発生される減衰力が調整される。そして、伸長側電子制御バルブ28を通過したオイルは、中間通路33eおよび中間通路33cを介してチェックバルブ34bに流入され、チェックバルブ34bに流入されたオイルは、オイル通路33aを介して圧縮側オイル室18aに流入される。
【0113】
次に、右側フロントフォーク18に圧縮する方向の力が作用した場合について説明する。右側フロントフォーク18に圧縮する方向の力が作用すると、右側フロントフォーク18が短縮されることにより、減衰力が発生する。
【0114】
具体的には、ピストン32が圧縮側オイル室18aの方に移動されると、圧縮側オイル室18aの油圧が上昇する。そして、圧縮側オイル室18a内のオイルが、オイル通路部33のオイル通路33aに流入され、圧縮側電子制御バルブ27に流入される。このとき、右側フロントフォーク18の圧縮側へのストロークスピードに応じて、ECU29の制御部29a(図5参照)が所定の電流を圧縮側電子制御バルブ27に通電するように制御することにより、圧縮側電子制御バルブ27の弁圧が調整される。これにより、圧縮側電子制御バルブ27を通過するオイルの圧力が調整されるので、圧縮側電子制御バルブ27で発生される減衰力が調整される。そして、圧縮側電子制御バルブ27を通過したオイルは、中間通路33bおよび中間通路33cを介してチェックバルブ34aに流入され、チェックバルブ34aに流入されたオイルは、オイル通路33dを介して伸長側オイル室18bに流入される。
【0115】
本実施形態では、上記のように、制御部29aを、予め設定されている減衰力特性マップZ1の少なくとも1つの設定値(点Q0)がユーザにより点Q3に変更された場合に、設定変更された設定値(点Q3)、および、予め設定されている減衰力特性Z1の設定変更された設定値(点Q0)以外の設定値を合成させた減衰力特性マップZ2になるように予め設定されている減衰力特性マップZ1を設定変更可能に構成している。このように予め設定された減衰力特性マップZ1を利用して設定変更することによって、少なくとも1つの設定値(点Q0)を変更するだけで減衰力特性マップZ1を所望の減衰力特性マップZ2に設定変更することができる。これにより、ユーザが行う入力操作が煩わしくなるのを抑制することができる。また、制御部29aを、設定変更された設定値(点Q3)、および、予め設定されている減衰力特性Z1の設定変更された設定値(点Q0)以外の設定値を合成させた減衰力特性マップZ2になるように構成することによって、設定変更された設定値(点Q3)と、予め設定されている減衰力特性マップZ1とがスムーズにつながるように、上記実施形態のように、減衰力特性マップZ2を変更することができる。
【0116】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29aを、予め設定されている減衰力特性マップZ1上に存在する点Q0が設定変更された後に、設定変更された点Q3と、設定変更された点Q3の前後の点とを結んだ直線L1およびL2が所定の傾きの範囲内に収まっていない場合、設定変更された点Q3を通る直線L1およびL2が所定の傾きの範囲内に収まるように設定変更された点Q3と予め設定されている点Q3近傍の交点Q1およびQ2とを結ぶように修正可能に構成している。これにより、設定変更された減衰力特性マップZ2を、点Q3のみが減衰力特性マップZ1から突出するような減衰力特性マップにすることなく、直線L1およびL2により、点Q3と減衰力特性マップZ1とをスムーズに接続するように形成することができる。
【0117】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29aを、予め設定されている減衰力特性マップZ1上に存在する点Q0と点Q4とがそれぞれ任意の値を有する点Q3と点Q5とに設定変更された後に、設定変更された点Q3と設定変更された点Q5とを結ぶ直線L3の傾きが、点Q3と減衰力特性マップZ1上に存在する交点Q1とを結ぶ直線L3の傾きが点Q3と点Q1とを結ぶ直線L1の傾きよりも大きい場合に、点Q5を消去するように構成している。これにより、点Q5を境に急激に減衰力が変化するのを抑制することができる。
【0118】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29aを、減衰力特性Z1上に存在する減衰力(座標点)を設定変更可能な閾値Y1およびY2を予め有しており、閾値Y1およびY2を超えるような減衰力F10およびF11(座標点)の設定が行われた場合、閾値Y1およびY2を超えるように設定が行われた減衰力F10およびF11(座標点)は閾値Y1およびY2の境界線上の減衰力F10AおよびF11Aに設定されるように構成している。これにより、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53が発生し得る減衰力特性を超えるような減衰力特性の設定変更が行われるのを抑制することができる。
【0119】
また、本実施形態では、上記のように、UP/DOWNスイッチ9dおよびセレクトスイッチ9gを、表示パネル14以外に配置している。このように、自動二輪車1に搭載するような小さな表示パネル14にタッチパネル機能を持たせるとともに、タッチパネル機能により減衰力特性の設定変更作業をユーザに行わせた場合には、誤操作する場合がある一方で、本実施形態のように、UP/DOWNスイッチ9dおよびセレクトスイッチ9gを、表示パネル14以外に配置することによって、容易に、減衰力特性の設定変更作業を行うことができる。
【0120】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29aを、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ9eおよびDOWNスイッチ9fのいずれか一方側と同時にセレクトスイッチ9gを時間t1(約2秒間)以上押圧した場合に、減衰力特性を設定変更可能な任意減衰特性設定モードP1を開始可能に構成されているとともに、UP/DOWNスイッチ9dを時間t2(約5秒間)以上押圧した場合に、減衰力特性を設定変更可能な任意減衰特性設定モードP1を終了可能に構成している。これにより、ユーザが誤ってUP/DOWNスイッチ9dおよびセレクトスイッチ9gを押圧した場合に、任意減衰特性設定モードP1が開始および終了されるのを抑制することができる。
【0121】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29aを、パソコン80からUSBケーブル81および通信部57を介して、ウェブ上に公開されている予め設定されている減衰力特性の情報をダウンロード可能に構成している。これにより、ユーザが所望する減衰力特性を、容易に、設定することができる。また、ダウンロードされた減衰力特性を利用して、さらにユーザが所望する減衰力特性に設定することができる。
【0122】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29aを、パソコン80により設定された任意の減衰力特性の情報をパソコン80からUSBケーブル81および通信部57を介して受信可能に構成している。これにより、容易に、パソコン80により設定変更された減衰力特性を、自動二輪車1に設定することができる。
【0123】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29aを、予め設定されている減衰力特性マップZ1を任意の減衰力特性に設定変更した減衰力特性マップZ2の情報を、通信部57およびUSBケーブル81を介してパソコン80に送信可能に構成されている。これにより、ユーザにより設定変更された減衰力特性マップを、パソコン80に保存することができるので、設定変更された減衰力マップを消去する必要がなくなる。
【0124】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0125】
たとえば、上記実施形態では、減衰機構を含む懸架装置を備えた車両の一例として自動二輪車を示したが、本発明はこれに限らず、減衰機構を含む懸架装置を備えた車両であれば、自動車、自転車、三輪車、ATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)などの他の車両にも適用可能である。
【0126】
また、上記実施形態では、リヤサスペンションおよびフロントフォークに設けられた電子制御バルブを、それぞれ、伸長側および圧縮側の両方で設けることにより、伸長方向および圧縮方向の両方の減衰力特性を任意の減衰力特性に設定変更可能に構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、伸長方向および圧縮方向のいずれか一方の減衰力特性を任意の減衰力特性に設定変更可能に構成してもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、リヤサスペンションおよびフロントフォークの両方に任意の減衰力特性に設定変更可能な電子制御バルブを設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、リヤサスペンションおよびフロントフォークのいずれか一方に任意の減衰力特性に設定変更可能な電子制御バルブを設けるようにしてもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、UPスイッチ、DOWNスイッチおよびセレクトスイッチを押圧することにより、減衰力特性マップ上の点(座標点)を設定変更した例について示したが、本発明はこれに限らず、上下左右に押圧可能な十字スイッチを別途設けるとともに、十字スイッチおよびセレクトスイッチを押圧することにより、減衰力特性マップ上の点を設定変更するように構成してもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、通信部をUSB接続端子により構成するとともに、通信部とパソコンとをUSBケーブルにより接続可能に構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、通信部をUSB接続端子以外の、たとえば、IEEE1394接続端子により構成するとともに、通信部とパソコンとをIEEE1394ケーブルにより接続可能に構成してもよい。また、制御部とパソコンとをブルートゥースなど、無線通信により接続するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の一実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。
【図2】図1に示した一実施形態による自動二輪車のスイッチ部周辺を示した斜視図である。
【図3】図1に示した一実施形態による自動二輪車の表示パネル周辺を示した図である。
【図4】図1に示した一実施形態による自動二輪車のフロントフォークの構成を説明するための図である。
【図5】図1に示した一実施形態による自動二輪車の構成を示すブロック図である。
【図6】図1に示した一実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構成を説明するための図である。
【図7】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたフロントフォークまたはリヤサスペンションに設けられている電子制御バルブの減衰力特性を示したグラフである。
【図8】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性が設定される際のモードの移行を説明するためのモード遷移図である。
【図9】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性が設定される際のモードの移行を説明するためのモード遷移図である。
【図10】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性が設定される際のモードの移行を説明するためのモード遷移図である。
【図11】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性が設定される際における詳細数値変更モードを説明するための図である。
【図12】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載された表示パネルに表示される減衰力特性マップの一例を示した図である。
【図13】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載された表示パネルに表示される減衰力特性マップの一例を示した図である。
【図14】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載された表示パネルに表示される減衰力特性マップの一例を示した図である。
【図15】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性マップが変更される際の減衰力特性マップの修正方法を説明するための図である。
【図16】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性マップが変更される際の減衰力特性マップの修正方法を説明するための図である。
【図17】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性マップが変更される際の減衰力特性マップの修正方法を説明するための図である。
【図18】図1に示した一実施形態による自動二輪車が走行していない場合における各モードの処理フローを説明するためのフローチャートである。
【図19】図1に示した一実施形態による自動二輪車が走行していない場合におけるマップ選択モードについて説明するためのフローチャートである。
【図20】図1に示した一実施形態による自動二輪車が走行していない場合におけるバルブ選択モードについて説明するためのフローチャートである。
【図21】図1に示した一実施形態による自動二輪車が走行していない場合における減衰力調整モードについて説明するためのフローチャートである。
【図22】図1に示した一実施形態による自動二輪車が走行していない場合におけるプログラム走行モードについて説明するためのフローチャートである。
【図23】図1に示した一実施形態による自動二輪車が走行していない場合における任意減衰特性設定モードのマップ選択モードについて説明するためのフローチャートである。
【図24】図1に示した一実施形態による自動二輪車が走行していない場合における任意減衰特性設定モードのバルブ選択モードについて説明するためのフローチャートである。
【図25】図1に示した一実施形態による自動二輪車が走行していない場合における任意減衰特性設定モードの詳細数値変更モードについて説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0131】
1 自動二輪車(車両)
2 ヘッドパイプ(車体)
3 メインフレーム(車体)
4 シートレール(車体)
6 前輪(車輪)
9d UP/DOWNスイッチ(スイッチ部)
9e UPスイッチ(スイッチ部)
9f DOWNスイッチ(スイッチ部)
9g セレクトスイッチ(スイッチ部)
14 表示パネル(表示部)
16 フロントフォーク(懸架装置、懸架装置本体部)
18 右側フロントフォーク(懸架装置、懸架装置本体部)
27、52 圧縮側電子制御バルブ(減衰機構)
28、53 伸長側電子制御バルブ(減衰機構)
29a 制御部
29b 記憶部
41 後輪(車輪)
42 リヤサスペンション(懸架装置、懸架装置本体部)
57 通信部
80 パソコン(外部機器)
F2、F3、F4、F5 減衰力
L1 直線(第2線)
L3 直線(第1線)
P1 任意減衰特性設定モード(設定変更可能なモード)
Q0 点(第1座標点)
Q1 交点(第5座標点、座標点)
Q2 交点(第5座標点、座標点)
Q3 点(第3座標点、座標点)
Q4 点(第2座標点、座標点)
Q5 点(第4座標点、座標点)
t1 時間(第1の時間)
t2 時間(第2の時間)
V2、V3 ストロークスピード
Y1、Y2 閾値
Z1 減衰力特性マップ(予め設定されている減衰力特性)
Z2 減衰力特性マップ(設定変更された減衰力特性)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、
車体と、
前記車輪と前記車体との間に設けられるとともに、前記車輪と前記車体とが相対的に移動するときの伸長方向および圧縮方向の少なくとも一方側の力を減衰させる減衰機構を含む懸架装置と、
前記懸架装置の減衰機構の減衰力特性を電気的に制御するための制御部と、
予め設定されている前記懸架装置の減衰機構の減衰力特性が記憶されている記憶部とを備え、
前記制御部は、前記予め設定されている減衰力特性の少なくとも1つの設定値がユーザにより変更された場合に、前記設定変更された設定値、および、前記予め設定されている減衰力特性の前記設定変更された設定値以外の設定値を合成させた減衰力特性になるように前記予め設定されている減衰力特性を設定変更可能に構成されている、車両。
【請求項2】
前記減衰力特性は、前記懸架装置の伸長方向および圧縮方向のいずれか一方側のストロークスピードと、前記懸架装置の減衰機構により発生される伸長方向および圧縮方向のいずれか一方側の減衰力との関係を表す減衰力特性マップにより構成されている、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記予め設定されている減衰力特性上に存在する少なくとも1つ以上の座標点が設定変更された後に、前記設定変更された座標点と、前記設定変更された座標点の前後の座標点とを結んだ線が所定の傾きの範囲内に収まっていない場合、前記設定変更された座標点を通る線が所定の傾きの範囲内に収まるように前記設定変更された座標点と前記予め設定されている座標点近傍の座標点とを結ぶように修正可能に構成されている、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記予め設定されている減衰力特性上に存在する第1座標点と第2座標点とがそれぞれ任意の値を有する第3座標点と第4座標点とに設定変更された後に、前記設定変更された第3座標点と前記設定変更された第4座標点とを結ぶ第1線の傾きが、前記第3座標点と前記減衰力特性上に存在する第5座標点とを結ぶ第2線の前記所定の傾きよりも大きい場合に、前記第4座標点を消去するように構成されている、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記制御部は、前記減衰力特性上に存在する少なくとも1つ以上の座標点を設定変更可能な閾値を予め有しており、前記閾値を超えるような座標点の設定が行われた場合、前記閾値を超えるように設定が行われた座標点は前記閾値に設定されるように構成されている、請求項2に記載の車両。
【請求項6】
前記減衰力特性上の座標点の設定変更を行うためのスイッチ部と、
前記減衰力特性上の座標点の設定変更の状況を表す表示部とをさらに備え、
前記スイッチ部は、前記表示部以外に配置されている、請求項1に記載の車両。
【請求項7】
前記制御部は、前記スイッチ部を第1の時間以上押圧した場合に、前記減衰力特性を設定変更可能なモードを開始可能に構成されているとともに、前記スイッチ部を第2の時間以上押圧した場合に、前記減衰力特性を設定変更可能なモードを終了可能に構成されている、請求項6に記載の車両。
【請求項8】
外部機器と通信可能な通信部をさらに備え、
前記制御部は、前記外部機器から前記通信部を介して、前記予め設定されている減衰力特性の情報をダウンロード可能に構成されている、請求項1に記載の車両。
【請求項9】
前記制御部は、前記外部機器により設定された任意の減衰力特性の情報を前記外部機器から前記通信部を介して受信可能に構成されている、請求項8に記載の車両。
【請求項10】
前記制御部は、前記予め設定されている減衰力特性を任意の減衰力特性に設定変更した減衰力特性の情報を、前記通信部を介して前記外部機器に送信可能に構成されている、請求項8に記載の車両。
【請求項11】
前記懸架装置は、フロントフォークと、リヤサスペンションとをさらに含み、
前記制御部は、前記フロントフォークと前記リヤサスペンションとの少なくとも一方における減衰力特性の設定を変更可能に構成されている、請求項1に記載の車両。
【請求項12】
懸架装置本体部と、
前記懸架装置本体部の一方側部分と他方側部分とが相対的に移動するときの伸長方向および圧縮方向の少なくとも一方側の力を減衰させる減衰機構と、
前記減衰機構の減衰力特性を電気的に制御するための制御部と、
予め設定されている前記減衰機構の減衰力特性が記憶されている記憶部とを備え、
前記制御部は、前記予め設定されている減衰力特性の少なくとも1つの設定値がユーザにより変更された場合に、前記設定変更された設定値、および、前記予め設定されている減衰力特性の前記設定変更された設定値以外の設定値を合成させた減衰力特性になるように前記予め設定されている減衰力特性を設定変更可能に構成されている、懸架装置の減衰力制御機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−132223(P2009−132223A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308747(P2007−308747)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】