説明

車両および表示方法

【課題】モータからの動力で走行し、モータの温度tmが駆動制限開始温度t1以上であるときにはモータからモータの温度tmに基づく駆動制限の範囲内のトルクを出力しながら走行する電気自動車において、モータの温度の上昇を抑制する。
【解決手段】モータの回転数やトルク指令などに基づいてモータの熱収支EBを演算して(ステップS200〜S230)、モータ温度tmと駆動制限開始温度t1と熱収支EBとをモータの温度メータ60に表示する(ステップS240〜S280)。これにより、モータ温度tmが高温に至る前に運転者にモータの温度の上昇を抑制する運転を促すことができ、モータの温度の上昇を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両および表示方法に関し、特に、走行用の動力を出力可能な電動機を備える車両およびこうした車両において所定の情報を表示する表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、モータからの動力で車輪を駆動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、モータの温度が通常運転状態より高い温度に至ったときにディスプレイにモータが高温に至ったことを表示して、運転者に注意を促している。
【特許文献1】特開2004−23810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の車両では、モータが高温に至ってからその旨をディスプレイに表示するのみであり、モータが高温に至るまでにモータの温度に関する情報を表示することができないため、モータの温度の上昇を抑制することができない。
【0004】
本発明の車両および表示方法は、走行用の動力を出力可能な電動機を備える車両において、電動機の温度の上昇を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両および表示方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の車両は、
走行用の動力を出力可能な電動機を備える車両であって、
前記電動機の温度を検出する電動機温度検出手段と、
該電動機温度検出手段により検出された電動機の温度が所定温度未満であるときには前記電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行するよう前記電動機を制御し、前記電動機温度検出手段により検出された電動機の温度が前記所定温度以上であるときには前記検出された電動機の温度に基づく駆動制限の範囲内で前記電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行するよう前記電動機を制御する制御手段と、
前記電動機の駆動状態に基づいて前記電動機の熱収支を演算する熱収支演算手段と、
前記電動機温度検出手段により検出された電動機の温度と前記所定温度と前記演算された電動機の熱収支とを前記車両の運転席近傍に表示する表示手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の車両では、電動機の温度が所定温度未満であるときには電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行するよう電動機を制御し、電動機の温度が所定温度以上であるときには電動機の温度に基づく駆動制限の範囲内で電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行するよう電動機を制御する。そして、電動機の駆動状態に基づいて電動機の熱収支を演算し、電動機の温度と所定温度と演算された電動機の熱収支とを運転席近傍に表示する。これにより、電動機が高温に至る前に運転者に電動機の温度の上昇を抑制する運転を促すことができ、電動機の温度の上昇を抑制することができる。
【0008】
こうした本発明の車両において、前記表示手段は、前記演算された電動機の熱収支が所定値未満であるときには第1の色で前記演算された熱収支を表示し、前記演算された電動機の熱収支が前記所定値以上であるときには前記第1の色と異なる第2の色で前記演算された電動機の熱収支を表示する手段であるものとすることもできる。こうすれば、電動機の熱収支が所定値以上であることを視認性よく表示することができ、運転者に電動機の温度の上昇を抑制する運転を促すことができ、電動機の温度の上昇を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の車両において、前記電動機を冷却する電動機冷却手段を備え、前記制御手段は、運転者の操作に基づいて前記電動機から出力すべき目標トルクを設定し、該設定された目標トルクで前記電動機が駆動するよう該電動機を制御する手段であり、前記熱収支演算手段は、前記電動機の回転数と前記設定された目標トルクとに基づいて前記電動機の発熱量を演算すると共に車速と外気温と前記電動機冷却手段の駆動状態とに基づいて前記電動機の放熱量を演算し、前記演算された発熱量から前記演算された放熱量を減じて前記熱収支を演算する手段であるものとすることもできる。
【0010】
本発明の表示方法は、
走行用の動力を出力可能な電動機を備え、該電動機の温度が所定温度未満であるときには前記電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行すると共に前記電動機の温度が前記所定温度以上であるときには前記電動機の温度に基づく駆動制限の範囲内で前記電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行する車両において、所定の情報を表示する表示方法であって、
前記電動機の駆動状態に基づいて前記電動機の熱収支を演算し、
前記所定の情報として前記電動機の温度と前記所定温度と前記演算された電動機の熱収支とを前記車両の運転席近傍に表示する
ことを要旨とする。
【0011】
本発明の表示方法は、電動機の駆動状態に基づいて電動機の熱収支を演算し、所定の情報として電動機の温度と所定温度と演算された電動機の熱収支とを車両の運転席近傍に表示する。これにより、電動機が高温に至る前に運転者に電動機の温度の上昇を抑制する運転を促すことができ、電動機の温度の上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、駆動輪30a,30bにデファレンシャルギヤ31を介して連結された駆動軸32に動力を入出力可能な周知の同期発電電動機として構成されたモータ22と、モータ22を駆動するインバータ24を介してモータ22と電力のやりとりを行なうバッテリ26と、モータ22の潤滑と冷却とを行なう潤滑冷却媒体としてのオイルを循環させるモータ用冷却循環系34と、モータ22の温度を視認可能に表示するモータ温度メータ60と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット40とを備える。
【0014】
モータ用冷却循環系34は、車両前方に配置されて外気との熱交換によりオイルを冷却するオイルクーラ35と、オイルクーラ35とモータ22とにオイルを循環させるオイル循環路36と、モータ22からのオイルをオイルクーラ35側に圧送するオイルポンプ37とを備える。なお、オイルポンプ37は、電子制御ユニット40により駆動が制御されている。
【0015】
モータ温度メータ60は、液晶パネルで構成されモータ22の温度に関連した情報表示部62を指針64で指示することにより現在のモータ温度tmを視認可能に表示する指示計器として構成されており、運転席の近傍の運転者が視認可能な位置に設置されている。指針64は、電子制御ユニット40により制御される図示しないアクチュエータにより回転駆動される。
【0016】
電子制御ユニット40は、CPU42を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU42の他に処理プログラムを記憶するROM44と、データを一時的に記憶するRAM46と、図示しない入出力ポートを備える。電子制御ユニット40には、モータ22の回転位置を検出する回転位置検出センサ22aからの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータ22に印加される相電流,モータ22の温度を検出する温度センサ22bからのモータ温度tm,バッテリ26の温度を検出する温度センサ26aからのバッテリ温度,イグニッションスイッチ50からのイグニッション信号,シフトレバー51の操作位置を検出するシフトポジションセンサ52からのシフトポジションSP,アクセルペダル53の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル55の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ56からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ58からの車速V、外気温センサ59からの外気温toutなどが入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット40からは、モータ22を駆動制御するためのインバータ24のスイッチング素子へのスイッチング制御信号やモータ温度メータ60の情報表示部62への表示信号,モータ温度メータ60の指針64を駆動させる図示しないアクチュエータへの駆動信号,オイルポンプ37を駆動制御するための駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、電子制御ユニット40は、回転位置検出センサ22aにより検出されたモータ22の回転子の回転位置に基づいてモータ22の回転数Nmを演算している。
【0017】
こうして構成された実施例の電気自動車20では、運転者によるアクセルペダル53の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸に出力されるようモータ22が駆動制御される。
【0018】
次に、こうして構成された実施例の電気自動車20の動作、特に、モータ温度メータ60にモータ温度tmを表示する際の動作について説明する。最初に、モータ22の駆動制御ルーチンについて説明し、続いて、モータ温度メータ60の表示制御について説明する。図2は、電子制御ユニット40により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0019】
駆動制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット40のCPU42は、アクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度Accや車速センサ58からの車速V,温度センサ22bからのモータ温度tmを入力する処理を実行し(ステップS100)、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動軸32に出力すべき要求トルクTd*を設定する(ステップS110)。ここで、要求トルクTd*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM44に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTd*を導出して設定するものとした。図3に要求トルク設定用マップの一例を示す。
【0020】
こうして要求トルクTd*を設定したら、モータ温度tmに基づいてモータ22の定格最大トルクTmaxを制限するための割合としての制限率kを設定し(ステップS120)、要求トルクTd*と定格最大トルクTmaxに制限率kを乗じたものとのうち小さい方の値をトルク指令Tm*として設定し(ステップS130)、トルク指令Tm*でモータ22が駆動するようインバータ24のスイッチング素子のスイッチング制御を行い(ステップS140)、続いて、モータ温度tmが高いほどモータ用冷却循環系34のオイルの吐出量が多くなるようモータ温度tmに基づいてオイルポンプ37の駆動指令To*を設定すると共に(ステップS150)、設定した駆動指令To*でオイルポンプ37が駆動するようオイルポンプ37を制御して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。図4にモータ温度tmと制限率kとの関係の一例を示す。制限率kには、図示するように、モータ温度tmがモータ温度tmに基づく駆動制限を開始するモータ22の温度として駆動制限開始温度t1(例えば、155℃,160℃,165℃などで、実施例では160℃)未満の範囲であるときには値1を設定し、モータ温度tmが駆動制限開始閾値t1を超えるとモータ温度tmが高くなるほど値1から徐々に小さくして、モータ温度tmがモータ22が高温であるためにモータ22の駆動を停止すべきと判断可能な温度の下限値として駆動停止温度t2(例えば、175℃,180℃,185℃などで、実施例では180℃)以下に至ったときに値0に設定するものとした。こうした制御により、モータ温度tmが駆動制限開始温度t1未満であるときにはモータ22から要求トルクTd*を出力しながら走行することができる。また、モータ温度tmが駆動制限開始温度t1以上であるときには、モータ22からモータ温度tmに基づく駆動制限の範囲内のトルクを出力しながら走行することができる。以上、駆動制御ルーチンについて説明した。
【0021】
続いて、表示制御ルーチンについて説明する。図5は電子制御ユニット40により駆動制御ルーチンに並行して実行される表示制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、図2に例示した駆動制御ルーチンに並行して、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0022】
表示制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット40のCPU42は、モータ22の回転数Nmやモータ22のトルク指令Tm*,温度センサ22bからのモータ温度tm,車速センサ58からの車速V,外気温センサ60からの外気温tout,オイルポンプの駆動指令To*など制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS200)。ここで、モータ22の回転数Nmは、回転位置検出センサ22aにより検出されたモータ22の回転子の回転位置に基づいて演算されたものを用いるものとした。また、モータ22のトルク指令Tm*やオイルポンプの駆動指令To*は、それぞれ図2に例示した駆動制御ルーチンで設定したものを用いるものとした。
【0023】
こうしてデータを入力すると、入力したモータ22の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてモータ22の発熱量(損失)CVを計算する(ステップS210)。ここで、発熱量CVは、モータ22の回転数Nmとトルク指令Tm*と発熱量CVとの関係を予め定めて発熱量設定用マップとしてROM44に記憶しておき、回転数Nmとトルク指令Tm*とが与えられると記憶した発熱量CVを導出して設定するものとし、回転数Nmが高くなるほど高くなり、トルク指令Tm*が大きくなるほど高くなるよう設定するものとした。このように設定するのは、モータ22の発熱が主として銅損や鉄損により生じていると考えられ、トルク指令Tm*が大きくモータ22のコイルを流れる電流が大きいほど銅損が大きくなり、回転数Nmが高くなるほど鉄損が高くなることに基づく。
【0024】
続いて、外気温toutと車速Vとオイルポンプ37の駆動指令To*とに基づいて次式(1)によりモータ22の放熱量(冷却量)RHを計算する(ステップS220)。式(1)中、換算係数C1は外気温toutから外気によるモータ22の冷却量を換算するためのものであり、換算係数C2は車速Vから走行風によるモータ22の冷却量を換算するためのものであり、換算係数C3はオイルポンプ37の駆動指令To*からモータ用冷却循環系34によるモータ22の冷却量を換算するためのものであり、換算係数C1,C2,C3は、それぞれ予め実験により定めた値を用いるものとした。
【0025】
RH=C1・tout+C2・V+C3・To*・・・(1)
【0026】
こうしてモータ22の放熱量RHを計算すると、発熱量CVから放熱量RHを減じたものをモータ22の熱収支EBとして設定し(ステップS230)、設定した熱収支EBを温度tmが急激に上昇を始める熱量の下限値としての所定値Erefとを比較する(ステップS240)。熱収支EBが所定値Eref未満であるときには「モータ熱収支」の文字および演算した熱収支EBの値が青色で情報表示部62に表示されるようモータ温度メータ60に表示信号を送信し(ステップS240,S250)、熱収支EBが所定値Eref以上であるときには「モータ熱収支」の文字および演算した熱収支EBの値が赤色で情報表示部62に表示されるようモータ温度メータ60に表示信号を送信し(ステップS240,S260)、表示可能なモータ温度tmの範囲を示す温度範囲表示用バーや温度範囲表示用バーに表示可能なモータ温度tmの最低値,最高値をそれぞれ示す「C」「H」の文字,制限率kが値1から減少を始めてモータ22の定格最大トルクの制限を開始する駆動制限開始温度t1(160℃)を示す指示線および「160℃」の文字,制限率kが値0となる駆動停止温度t2(180℃)を示す指示線および「180℃」の文字がモータ温度メータ60の情報表示部62に表示されるよう表示信号を送信し(ステップS270)、範囲表示部の入力されたモータ温度tmに対応する位置を指針64が指示するよう指針64を駆動制御して(ステップS280)、本ルーチンを終了する。図6はモータ温度メータ60の情報表示部における表示の一例を示す説明図である。図中、バー66は、温度範囲表示用バーを示しており、線L1,L2は、それぞれ駆動制限開始温度t1(160℃),駆動停止温度t2(180℃)を示している。このようにモータ温度メータ60に現在のモータ温度tmと駆動制限開始温度t1,駆動停止温度t2と共に熱収支EBを表示するから、モータ温度tmが高温に至る前にこうした表示を見た運転者へアクセルペダル55の操作量を調整して熱収支EBが小さくなるような運転を促すことができ、モータ22の温度の上昇を抑制することができる。
【0027】
以上説明した実施例の電気自動車20によれば、モータ温度tmが駆動制限開始温度t1未満であるときにはモータ22から要求トルクTd*を出力しながら走行し、モータ温度tmが駆動制限開始温度t1以上であるときにはモータ22からモータ温度tmに基づく駆動制限の範囲内のトルクを出力しながら走行することができる。そして、モータ22の回転数Nmやトルク指令Tm*などに基づいてモータ22の熱収支EBを演算して、モータ温度tmと駆動制限開始温度t1や駆動停止温度t2と熱収支EBとをモータ温度メータ60に表示する。これにより、モータ温度tmが高温に至る前に運転者にモータ22の温度の上昇を抑制する運転を促すことができ、モータ22の温度の上昇を抑制することができる。また、熱収支EBが所定値Eref未満であるときと熱収支EBが所定値Eref以上であるときとで異なる色で熱収支EBの値を表示をしたから、熱収支EBが所定値Eref以上となったことを視認性よく表示することができ、運転者により適正にモータ22の温度の上昇を抑制する運転を促すことができ、モータ22の温度の上昇を抑制することができる。
【0028】
実施例の電気自動車20では、熱収支EBの値を熱収支EBが所定値Eref未満であるときと所定Eref値以上であるときとで異なる色で表示するものとしたが、3色以上の色で表示するものとしてもよいし、単色で表示するものとしてもよい。
【0029】
実施例の電気自動車20では、情報表示部62が液晶パネルとして構成されており、駆動制限開始温度t1を示す線L1や「160℃」の文字,制限率kが値0となる駆動停止温度t2を示す線L2,「180℃」の文字がモータ温度メータ60の情報表示部62に表示されるものとしたが、こうした線L1,L2などが情報表示部62に予め印刷などされているものとしてもよい。また、制限率kが値0となる駆動停止温度t2を示す線L2,「180℃」の文字を表示しないものとしてもよい。
【0030】
実施例の電気自動車20では、指針64は、図示しないアクチュエータにより回転駆動されるものとしたが、指針64の画像を情報表示部62に表示するものとしてもよい。また、実施例の電気自動車20では、熱収支EBの値を情報表示部62に表示するものとしたが、図示しないアクチュエータにより回転駆動をする指針を用いて表示するものとしてもよい。
【0031】
実施例の電気自動車20では、駆動軸32に動力を入出力可能なモータ22を備える電気自動車に適用する場合を例示したが、走行用の動力を出力可能なモータを備える自動車であれば如何なるものにも適用でき、図7の変形例の電気自動車120に例示するように、エンジン122と、モータ124と、キャリアがエンジン22のクランクシャフトに接続されると共にサンギヤがモータ124に接続されリングギヤが駆動軸32に接続されたプラネタリギヤ126とを備えるものに適用するものとしてもよい。
【0032】
また、こうした自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の電車などの車両の形態やこうした車両において所定の情報を表示する表示方法の形態としてもよい。
【0033】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ22が「電動機」に相当し、温度センサ22bが「電動機温度検出手段」に相当し、モータ温度tmが駆動制限開始温度t1未満であるときにはモータ22から要求トルクTd*が出力されるようモータ22を制御すると共にモータ温度tmが駆動制限開始温度t1以上であるときにはモータ22からモータ温度tmに基づく駆動制限の範囲内のトルクが出力されるようモータ22を制御する図2の駆動制御ルーチンのステップS100〜S140の処理を実行する電子制御ユニット40が「制御手段」に相当し、モータの回転数Nmやトルク指令Tm*などに基づいてモータ22の熱収支EBを演算する図5の表示制御ルーチンのステップS210〜S230の処理を実行する電子制御ユニット40が「熱収支演算手段」に相当し、演算された熱収支EBやモータ温度tm,駆動制限開始温度t1や駆動停止温度t2を表示するための表示信号をモータ温度メータ60に送信する図5の表示制御ルーチンのステップS240〜S280の処理を実行する電子制御ユニット40とこうした表示信号に基づいた表示を実行するモータ温度メータ60が「表示手段」に相当する。モータ用冷却循環系34が「電動機冷却手段」に相当する。また、熱収支EBが所定値Eref未満であるときには熱収支EBを青色で表示すると共に熱収支EBが所定値Eref以上であるときには熱収支EBを赤色で表示するようモータ温度メータ60に表示信号を送信する図5の表示制御ルーチンのステップS240〜S260の処理を実行する電子制御ユニット40とこうした表示信号に基づいて表示を実行するモータ温度メータ60も「表示手段」に相当する。さらに、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定してモータ温度tmに基づく負荷率制限で要求トルクTr*を制限した値をモータ22のトルク指令Tm*として設定してトルク指令Tm*でモータ22が駆動するようモータ22を制御する図3の駆動制御ルーチンのステップS100〜S140を実行する電子制御ユニット40も「制御手段」に相当する。そして、モータ22の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてモータ22の発熱量CVを計算すると共に車速Vと外気温toutとオイルポンプ37の駆動指令To*とに基づいてモータ22の放熱量RHを計算し、計算した発熱量CVから放熱量RHを減じて熱収支EBを計算する図5の表示制御ルーチンのステップS210〜S230の処理を実行する図5の表示制御留^チンのステップS210〜S230の処理を実行する電子制御ユニット40も「熱収支演算手段」に相当する。ここで、「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「電動機温度検出手段」としては、温度センサ22bに限定されるものではなく、電動機の温度を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、モータ温度tmが駆動制限開始温度t1未満であるときにはモータ22から要求トルクTd*が出力されるようモータ22を制御すると共にモータ温度tmが駆動制限開始温度t1以上であるときにはモータ22からモータ温度tmに基づく駆動制限の範囲内のトルクが出力されるようモータ22を制御するものに限定されるものではなく、電動機温度検出手段により検出された電動機の温度が所定温度未満であるときには電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行するよう電動機を制御し、電動機温度検出手段により検出された電動機の温度が所定温度以上であるときには検出された電動機の温度に基づく駆動制限の範囲内で電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行するよう電動機を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「熱収支演算手段」としては、モータの回転数Nmやトルク指令Tm*などに基づいてモータ22の熱収支EBを演算するものに限定されるものではなく、電動機の駆動状態に基づいて電動機の熱収支を演算するものであれば如何なるものとしても構わない。「表示手段」としては、演算された熱収支EBやモータ温度tm,駆動制限開始温度t1や駆動停止温度t2を表示するものに限定されるものではなく、電動機温度検出手段により検出された電動機の温度と所定温度と演算された電動機の熱収支とを車両の運転席近傍に表示するものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0034】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例の電子制御ユニット40により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】モータ温度tmと制限率kとの関係の一例を示す説明図である。
【図5】実施例の電子制御ユニット40により実行される表示制御ルーチンの一例を示す説明図である
【図6】モータ温度メータ60の表示の一例を示す説明図である。
【図7】変形例の電気自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0037】
20,120 電気自動車、22 モータ、22a 回転位置検出センサ、22b,26a 温度センサ、24 インバータ、26 バッテリ、30a,30b 駆動輪、31 デファレンシャルギヤ、32 駆動軸、34 モータ用冷却循環系、35 オイルクーラ、36 オイル循環路、37 オイルポンプ、40 電子制御ユニット、42 CPU、44 ROM、46 RAM、50 イグニッションスイッチ、51 シフトレバー、52 シフトポジションセンサ、53 アクセルペダル、54 アクセルペダルポジションセンサ、55 ブレーキペダル、56 ブレーキペダルポジションセンサ、58 車速センサ、60 モータ温度メータ、62 情報表示部、64 指針、66 バー、122 エンジン、124 モータ、126 遊星歯車機構、L1,L2 指示線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を出力可能な電動機を備える車両であって、
前記電動機の温度を検出する電動機温度検出手段と、
該電動機温度検出手段により検出された電動機の温度が所定温度未満であるときには前記電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行するよう前記電動機を制御し、前記電動機温度検出手段により検出された電動機の温度が前記所定温度以上であるときには前記検出された電動機の温度に基づく駆動制限の範囲内で前記電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行するよう前記電動機を制御する制御手段と、
前記電動機の駆動状態に基づいて前記電動機の熱収支を演算する熱収支演算手段と、
前記電動機温度検出手段により検出された電動機の温度と前記所定温度と前記演算された電動機の熱収支とを運転席近傍に表示する表示手段と、
を備える車両。
【請求項2】
前記表示手段は、前記演算された電動機の熱収支が所定値未満であるときには第1の色で前記演算された熱収支を表示し、前記演算された電動機の熱収支が前記所定値以上であるときには前記第1の色と異なる第2の色で前記演算された電動機の熱収支を表示する手段である請求項1記載の車両。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両であって、
前記電動機を冷却する電動機冷却手段を備え、
前記制御手段は、運転者の操作に基づいて前記電動機から出力すべき目標トルクを設定し、該設定された目標トルクで前記電動機が駆動するよう該電動機を制御する手段であり、
前記熱収支演算手段は、前記電動機の回転数と前記設定された目標トルクとに基づいて前記電動機の発熱量を演算すると共に車速と外気温と前記電動機冷却手段の駆動状態とに基づいて前記電動機の放熱量を演算し、前記演算された発熱量から前記演算された放熱量を減じて前記熱収支を演算する手段である
車両。
【請求項4】
走行用の動力を出力可能な電動機を備え、該電動機の温度が所定温度未満であるときには前記電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行すると共に前記電動機の温度が前記所定温度以上であるときには前記電動機の温度に基づく駆動制限の範囲内で前記電動機から運転者の操作に基づく駆動力を出力して走行する車両において、所定の情報を表示する表示方法であって、
前記電動機の駆動状態に基づいて前記電動機の熱収支を演算し、
前記所定の情報として前記電動機の温度と前記所定温度と前記演算された電動機の熱収支とを前記車両の運転席近傍に表示する
表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−278833(P2009−278833A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129869(P2008−129869)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】