説明

車両の制御システム

【課題】EV走行モードからの切り替えを運転者に対して十分に促すこと。
【解決手段】エンジン10の動力を用いたエンジン走行モード、モータ/ジェネレータ20の動力を用いたEV走行モード、又はエンジン10及びモータ/ジェネレータ20の双方の動力を用いたハイブリッド走行モード、を運転者に手動で選択させる走行モード選択装置と、走行モードに応じた前記動力を駆動輪WL,WR側に伝えると共に、EV走行モードが選択された際にニュートラル状態になる手動変速機30と、EV走行モードが選択された際にエンジン10を停止させ、EV走行モードの停止条件のときに当該EV走行モードのままエンジン10を始動させるハイブリッドECU100及びエンジンECU101と、を備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械エネルギを動力とする機械動力源と電気エネルギを変換した機械エネルギを動力とする電気動力源とを備え、機械動力源を用いたエンジン走行モードと、電気動力源を用いたEV走行モードと、機械動力源及び電気動力源を用いたハイブリッド走行モードと、を手動で切り替えさせる車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力源として機械動力源と電気動力源とを備えた車両が知られている。例えば、下記の特許文献1には、この種の車両において走行中に電池の充電量が低下したときに、電動機(電気動力源)への供給電流を断続制御して、車両が擬似的にノッキングを起こした状態を作り出し、手動変速機が高速段であることを運転者に気付かせてダウンシフト操作を促す技術が開示されている。この技術においては、ダウンシフト操作が実行されることによって、電動機の動力分担が減少し、内燃機関(機械動力源)の動力分担が増加するので、電池の電力消費量を抑えることができる。また、下記の特許文献2には、登坂路等の高負荷走行時に手動変速機のダウンシフト位置を表示し、ダウンシフト操作を運転者に促すことで、モータの動力分担を減らしてエンジンの動力分担を増加させ、電池の電力消費量を抑制させる技術が開示されている。また、下記の特許文献3には、手動変速機の変速操作部の変速段セレクト位置とモータ駆動モードセレクト位置とを運転者が切り替えることで、エンジン駆動モードとモータ駆動モードとの切り替えを実行させる技術が開示されている。この特許文献3の技術では、モータ駆動モードでモータトルクが不足するときに、エンジン駆動モードへの変更を警報やディスプレイへの表示によって運転者に促す。尚、下記の特許文献4には、運転者がアクセル操作の加減速の繰り返しによる波状運転を行ったときに、擬似的に生成するエンジン音の音圧を高くする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−153253号公報
【特許文献2】特開2001−027321号公報
【特許文献3】特開2005−028968号公報
【特許文献4】特開2007−310106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、電池の充電量が低下しているにも拘わらず、電動機への供給電流を断続制御することで擬似的なノッキングを車両に発生させるので、走行安定性を悪化させるだけでなく、電池の残存容量を更に低下させてしまう可能性がある。また、上記特許文献2及び3に記載の技術においては、運転者に知らせる手段として警報やディスプレイへの表示を利用しているので、例えばモータから十分な動力が出力できなくなるという事を運転者に認識させることができない可能性がある。ここで、特許文献1及び2に記載の車両であれば、モータと共にエンジンの動力も同時に利用されているので、車両の停止という事態を回避できる可能性はある。一方、特許文献3に記載の車両は、モータの動力だけで走行している状態なので、モータトルク不足によって走行が不可能になる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、EV走行モードからの切り替えを運転者に対して十分に促すことのできる車両の制御システムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、機械エネルギを動力にして駆動力を発生させる機械動力源の動力を用いたエンジン走行モード、電気エネルギを変換した機械エネルギを動力にして駆動力を発生させる電気動力源の動力を用いたEV走行モード、又は前記機械動力源及び前記電気動力源の双方の動力を用いたハイブリッド走行モード、を運転者に手動で選択させる走行モード選択装置と、走行モードに応じた前記動力を駆動輪側に伝えると共に、前記EV走行モードが選択された際にニュートラル状態になる変速機と、前記EV走行モードが選択された際に前記機械動力源を停止させ、前記EV走行モードの停止条件のときに当該EV走行モードのまま前記機械動力源を始動させるエンジン制御装置と、を備えることを特徴としている。
【0007】
ここで、前記エンジン制御装置は、前記機械動力源の始動後も前記EV走行モードが選択された状態ならば、該機械動力源の回転数を上昇させることが望ましい。
【0008】
また、前記変速機が運転者の手動操作によって変速比の切り替えが可能な手動変速機の場合、前記機械動力源の回転数は、運転者が前記エンジン走行モードでの走行時に前記変速機のアップシフト操作を望む大きさであることが望ましい。
【0009】
また、音響装置で車室内への前記機械動力源の擬似的なエンジン音の出力が可能な場合、前記EV走行モードの停止条件のときに、前記機械動力源を始動させることなく前記音響装置から擬似的なエンジン音を出力させることが望ましい。
【0010】
また、前記変速機が運転者の手動操作によって変速比の切り替えが可能な手動変速機の場合、前記擬似的なエンジン音は、運転者が前記エンジン走行モードでの走行時に前記変速機のアップシフト操作を望む前記機械動力源の回転数に相当する大きさであることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両の制御システムは、EV走行モードの停止条件のときに、機械動力源を始動させてエンジン音や振動を車室内に伝える又は擬似的なエンジン音を出力させる。これが為、この制御システムは、EV走行モードからの変更が警報や表示部等への視覚情報で促されるよりも運転者に認識させやすくなり、EV走行モードからエンジン走行モード又はハイブリッド走行モードへの切り替え操作が実行される可能性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る車両の制御システムが適用されるハイブリッド車両の一例を示す図である。
【図2】図2は、走行モード選択装置の一例を示すニュートラル状態選択時の図である。
【図3】図3は、走行モード選択装置の一例を示すEV走行モード選択時の図である。
【図4】図4は、EV走行モードの停止条件のときの制御動作について示すフローチャートである。
【図5】図5は、EV走行モードの停止条件のときの他の制御動作について示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る車両の制御システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
[実施例]
本発明に係る車両の制御システムの実施例を図1から図5に基づいて説明する。
【0015】
本発明に係る制御システムの適用対象たる車両とは、機械エネルギを動力とする機械動力源と電気エネルギを変換した機械エネルギを動力とする電気動力源とを備え、機械動力源の動力のみを用いたエンジン走行モードと、電気動力源の動力のみを用いたEV走行モードと、機械動力源及び電気動力源の双方の動力を用いたハイブリッド走行モードと、を運転者が手動で切り替えることの可能なハイブリッド車両である。
【0016】
最初に、このハイブリッド車両の一例について図1を用いて説明する。この図1の符号1は、本実施例のハイブリッド車両を示す。
【0017】
このハイブリッド車両1は、機械動力源として、出力軸(クランクシャフト)11から機械的な動力(エンジントルク)を出力するエンジン10を備える。そのエンジン10としては、内燃機関や外燃機関等が考えられる。このエンジン10は、その動作がエンジン用の電子制御装置(以下、「エンジンECU」という。)101によって制御される。このエンジン10には、エンジンECU101によって始動時に駆動制御されるスタータモータ12が設けられている。ここでは、そのエンジンECU101と後述するハイブリッドECU100のエンジン制御に係る機能とによってエンジン制御装置(機械動力源制御装置)が構成される。
【0018】
また、このハイブリッド車両1は、電気動力源として、モータ、力行駆動可能なジェネレータ又は力行及び回生の双方の駆動が可能なモータ/ジェネレータを備える。ここでは、モータ/ジェネレータ20を例に挙げて説明する。このモータ/ジェネレータ20は、例えば永久磁石型交流同期電動機として構成されたものであり、その動作がモータ/ジェネレータ用の電子制御装置(以下、「モータ/ジェネレータECU」という。)102によって制御される。ここでは、そのモータ/ジェネレータECU102と後述するハイブリッドECU100のモータ/ジェネレータ制御に係る機能とによってモータ/ジェネレータ制御装置(電気動力源制御装置)が構成される。力行駆動時には、モータ(電動機)として機能して、二次電池25とインバータ26を介して供給された電気エネルギを機械エネルギに変換し、回転軸21から機械的な動力(モータ力行トルク)を出力する。一方、回生駆動時には、ジェネレータ(発電機)として機能して、回転軸21から機械的な動力(モータ回生トルク)が入力された際に機械エネルギを電気エネルギに変換し、インバータ26を介して電力として二次電池25に蓄える。
【0019】
このハイブリッド車両1には、その二次電池25の充電状態(SOC:state of charge)を検出する電池監視ユニット27が設けられている。その電池監視ユニット27は、検出した二次電池25の充電状態に係る信号(換言するならば、充電状態量(SOC量)に関する信号)をモータ/ジェネレータECU102に送信する。そのモータ/ジェネレータECU102は、その信号に基づいて二次電池25の充電状態の判定を行い、その二次電池25の充電の要否を判定する。
【0020】
また、このハイブリッド車両1は、有段の手動変速機30等からなる動力伝達装置を備えている。その動力伝達装置は、エンジン10やモータ/ジェネレータ20の動力(エンジントルクやモータ力行トルク)を駆動力として駆動輪WL,WRに伝えるものである。
【0021】
手動変速機30には、エンジントルクが入力される入力軸41と、この入力軸41に対して間隔を空けて平行に配置され、駆動輪WL,WR側にトルクを出力する出力軸42と、が設けられている。
【0022】
その入力軸41には、クラッチ50を介してエンジントルクが入力される。そのクラッチ50は、エンジン10の出力軸11と入力軸41とを係合させる係合状態と、その出力軸11と入力軸41とを係合状態から解放(非係合)させる解放状態(非係合状態)と、の切り替えができるように構成された例えば摩擦クラッチ装置である。ここで言う係合状態とは、その出力軸11と入力軸41との間でのトルクの伝達が可能な状態のことであり、解放状態(非係合状態)とは、その出力軸11と入力軸41との間でのトルクの伝達が行えない状態のことである。このクラッチ50は、その係合状態と解放状態の切り替え動作が運転者のクラッチペダル51の操作に従いリンク機構やワイヤー等を介して機械的に行われるものである。
【0023】
本実施例においては、その出力軸42にEVギアとしての歯車対60を介してモータ/ジェネレータ20を連結する。その歯車対60は、互いに噛み合い状態にある第1ギア61と第2ギア62とで構成する。その第1ギア61は、モータ/ジェネレータ20の回転軸21に一体となって回転するよう取り付ける。一方、第2ギア62は、その第1ギア61よりも大径に成形し、手動変速機30の出力軸42に一体となって回転するよう取り付ける。これにより、この歯車対60は、モータ/ジェネレータ20の回転軸21側からトルクが入力されることによって減速装置として動作する一方、手動変速機30の出力軸42側から回転トルクが入力されることによって増速装置として動作する。従って、そのモータ/ジェネレータ20を力行駆動させたときには、モータ力行トルクが減速装置として機能する歯車対60を介して手動変速機30に伝わる。これに対して、このモータ/ジェネレータ20を回生駆動させたときには、増速装置として機能する歯車対60を介して手動変速機30の出力軸42からの出力トルクがモータ/ジェネレータ20のロータに伝達される。ここで、その歯車対60は、後述するシフトレバー81aがシフトゲージ81b上のどの位置にあっても、つまり変速位置1〜4,R、EV走行モード選択位置EV又はニュートラル位置にあっても、噛み合い状態になっているものとする。尚、モータ/ジェネレータ20は、この歯車対60を介さずに、回転軸21を手動変速機30の出力軸42に直接連結してもよい。
【0024】
更に、ここで例示する手動変速機30は、前進4段、後退1段の変速段を有するものであって、前進用の変速段として第1速ギア段31,第2速ギア段32,第3速ギア段33及び第4速ギア段34を備え、且つ、後退用の変速段として後退ギア段39を備えている。前進用の変速段は、変速比が第1速ギア段31,第2速ギア段32,第3速ギア段33,第4速ギア段34の順に小さくなるよう構成している。尚、図1の手動変速機30はその構成を簡易的に説明したものであり、各変速段の配置については、必ずしも図1の態様になるとは限らない。
【0025】
本実施例の動力伝達装置においては、クラッチ50を係合状態にすることで、入力軸41に入力されたエンジントルクが各変速段(ギア段31〜34,39)の内の何れか1つで変速されて出力軸42に伝わる。また、この動力伝達装置においては、モータ力行トルクが歯車対60を介して出力軸42に伝わる。この動力伝達装置においては、その出力軸42から出力されたトルクが最終減速機構71で減速され、差動機構72を介して駆動力として駆動輪WL,WRに伝達される。
【0026】
ここで、第1速ギア段31は、互いに噛み合い状態にある第1速ドライブギア31aと第1速ドリブンギア31bの歯車対で構成する。その第1速ドライブギア31aは、入力軸41上に配置される一方、第1速ドリブンギア31bは、出力軸42上に配置される。第2速ギア段32から第4速ギア段34についても、第1速ギア段31と同様の第2速ドライブギア32a〜第4速ドライブギア34aと第2速ドリブンギア32b〜第4速ドリブンギア34bを有する。
【0027】
一方、後退ギア段39については、後退ドライブギア39aと後退ドリブンギア39bと後退中間ギア39cとで構成する。その後退ドライブギア39aは、入力軸41上に配置され、後退ドリブンギア39bは、出力軸42上に配置される。また、後退中間ギア39cは、後退ドライブギア39a及び後退ドリブンギア39bと噛み合い状態にあり、回転軸43上に配置される。
【0028】
この手動変速機30の構成においては、各変速段のドライブギアの内の何れかが入力軸41と一体になって回転するように配設される一方、残りのドライブギアが入力軸41に対して相対回転するように配設される。また、各変速段のドリブンギアは、その内の何れかが出力軸42と一体になって回転するように配設される一方、残りが出力軸42に対して相対回転するように配設される。
【0029】
また、入力軸41や出力軸42には、運転者の変速操作に従って軸線方向に移動するスリーブ(図示略)が配設されている。入力軸41上のスリーブは、その入力軸41と相対回転可能な2つの変速段の各ドライブギアの間に配置される。一方、出力軸42上のスリーブは、その出力軸42と相対回転可能な2つの変速段の各ドリブンギアの間に配置される。このスリーブは、変速操作装置81を運転者が操作した際に、その変速操作装置81に連結されている図示しないリンク機構やフォークを介して軸線方向への移動を行う。そして、移動後のスリーブは、移動された方向に位置する相対回転可能なドライブギアやドリブンギアを入力軸41や出力軸42と一体回転させる。この手動変速機30においては、そのスリーブが運転者の変速操作装置81の変速操作に対応した方向に移動し、これによりその変速操作に応じた変速段への切り替え又はニュートラル状態(つまり入力軸41と出力軸42との間でトルクの伝達が行えない状態)への切り替えが実行される。
【0030】
その変速操作装置81は、図2に示す如く、運転者が変速操作する際に使用するシフトレバー81a、このシフトレバー81aを夫々の変速段毎にガイドする所謂シフトゲージ81b、上記のリンク機構やフォーク等を備えている。図2は、手動変速機30をニュートラル状態に操作するときのシフトレバー81aの位置を示している。尚、この図2のシフトゲージ81b上の「1〜4」と「R」は、夫々に第1速ギア段31〜第4速ギア段34と後退ギア段39の変速位置(セレクト位置)を示している。
【0031】
このハイブリッド車両1においては、その走行モードとして、エンジン走行モードとEV走行モードとハイブリッド走行モードとが少なくとも用意されている。
【0032】
このハイブリッド車両1では、シフトレバー81aがシフトゲージ81b上の変速位置1〜4,Rの内の何れかに位置しているときに、エンジン走行モード又はハイブリッド走行モードが選択される。
【0033】
一方、このハイブリッド車両1においては、EV走行モードが選択されるときに運転者によって操作されるEV走行モード切替装置を利用する。ここでは、そのEV走行モード切替装置としての機能を変速操作装置81にもたせることにする。つまり、本実施例の変速操作装置81は、運転者に手動変速機30の変速段を切り替えさせるだけでなく、運転者がEV走行モードに切り替える際のEV走行モード切替装置としての機能も兼ね備えている。例えば、この変速操作装置81は、変速位置1〜4,Rと同様のシフトレバー81aのセレクト位置であって、EV走行モードに切り替える為のEV走行モード選択位置EVをシフトゲージ81b上に備えている。本実施例のハイブリッド車両1においては、シフトレバー81aが図3に示す如くEV走行モード選択位置EVへと操作された際に、手動変速機30がスリーブ等によってニュートラル状態となり、且つ、走行モードがEV走行モードとなる。
【0034】
その変速操作装置81には、シフトレバー81aがEV走行モード選択位置EVに位置しているのか否かを検出するEV走行モード選択位置検出部82が設けられている。このEV走行モード選択位置検出部82とは、例えば、シフトレバー81aが図3に示す如くEV走行モード選択位置EVにあることを検出可能な位置情報検出センサ等である。このEV走行モード選択位置検出部82の検出信号は、車両全体の動作を統括的に制御する電子制御装置(以下、「ハイブリッドECU」という。)100に送信される。
【0035】
そのハイブリッドECU100は、エンジンECU101及びモータ/ジェネレータECU102との間で夫々に各種センサの検出信号や制御指令等の情報の授受ができる。本実施例においては、少なくともそのハイブリッドECU100、エンジンECU101及びモータ/ジェネレータECU102が車両の制御システムの構成要件となっている。
【0036】
また、この変速操作装置81は、シフトレバー81aがシフトゲージ81b上のどの変速位置1〜4,Rにあるのかについて、つまり運転者がどの変速段を選択したのか否かを検出する変速位置検出部83を備えている。その変速位置検出部83は、例えば、シフトレバー81aがどの変速位置1〜4,Rにあるのかを検出可能な位置情報検出センサ等を利用すればよい。その検出信号は、ハイブリッドECU100に送られる。このハイブリッドECU100は、その検出信号に基づいて、運転者の選択した変速段、現状の変速段を判断する。尚、ここでは、便宜上、その変速位置検出部83をEV走行モード選択位置検出部82とは別のものとして例示したが、これらを1つに統合したシフトレバー位置検出部(図示略)に置き換えてもよい。ここで、そのハイブリッドECU100には、この技術分野にて知られている周知の技術を利用して、エンジントルクや車輪速度等から現在の変速段を推定させてもよい。
【0037】
シフトレバー81aが変速位置1〜4,Rに操作されている場合、ハイブリッドECU100は、エンジン走行モード又はハイブリッド走行モードの内の何れか一方を選択する。例えば、このハイブリッドECU100は、設定した運転者の駆動要求(要求駆動力)、モータ/ジェネレータECU102から送られてきた二次電池25の充電状態の情報(SOC量)、車両走行状態の情報(図示しない車両横加速度検出装置により検出された車両横加速度、車輪スリップ検出装置により検出された駆動輪WL,WRのスリップ状態等の情報)に基づいて、エンジン走行モードとハイブリッド走行モードの切り替えを行う。
【0038】
ハイブリッドECU100は、エンジン走行モードを選択した場合、エンジントルクのみで要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101及びモータ/ジェネレータECU102に制御指令を送る。この場合には、エンジンECU101への制御指令として、例えば現状の変速段又は変速操作後の変速段でその要求駆動力を満足させるエンジントルクの情報が送信される。これにより、そのエンジンECU101は、そのエンジントルクを発生させるようにエンジン10の燃料噴射量等の制御を行う。一方、モータ/ジェネレータECU102には、モータ/ジェネレータ20をモータとしてもジェネレータとしても動作させないよう制御指令を送る。
【0039】
これに対して、このハイブリッドECU100は、ハイブリッド走行モードを選択した場合、エンジントルクとモータ/ジェネレータ20のモータ又はジェネレータとしての出力で要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101及びモータ/ジェネレータECU102に制御指令を送る。この場合、エンジントルクとモータ力行トルクの双方を用いるときには、エンジンECU101とモータ/ジェネレータECU102への制御指令として、例えば現状の変速段又は変速操作後の変速段でその要求駆動力を満足させるエンジントルクとモータ力行トルクの情報が夫々に送信される。これにより、そのエンジンECU101は、そのエンジントルクを発生させるようにエンジン10の制御を行い、モータ/ジェネレータECU102は、そのモータ力行トルクを発生させるようにモータ/ジェネレータ20への給電量を制御する。また、モータ/ジェネレータ20で電力の回生を行わせるときには、モータ/ジェネレータECU102に対してモータ/ジェネレータ20をジェネレータとして動作させるよう制御指令を送る。その際、例えば、エンジンECU101には、モータ回生トルクの分だけ増加させたエンジントルクの情報が送られる。
【0040】
また、シフトレバー81aがEV走行モード選択位置EVに操作されている場合、ハイブリッドECU100は、モータ力行トルクのみで要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101及びモータ/ジェネレータECU102に制御指令を送る。この場合には、モータ/ジェネレータECU102への制御指令として、その要求駆動力を満足させるモータ力行トルクの情報が送信される。手動変速機30がニュートラル状態のときにエンジン10が動いていると、燃費を悪化させてしまうので、エンジンECU101には、燃費を向上させるべく、エンジン10の動作を停止させる制御指令を送る。更に、このEV走行モードにおいては、運転者がアクセルペダル91から足を離したとき又はブレーキ操作等でハイブリッド車両1の減速要求を行ったときに、モータ/ジェネレータECU102に対して回生制動できるよう制御指令を送らせてもよい。
【0041】
本実施例のハイブリッド車両1においては、運転者によるクラッチ50の操作と変速操作装置81の操作を契機にして、エンジン走行モード又はハイブリッド走行モードとEV走行モードとの間の切り替えが実行される。つまり、本実施例のクラッチ50、クラッチペダル51及び変速操作装置81は、運転者に走行モードを手動で選択させる為の走行モード選択装置であるとも云える。運転者は、エンジン走行モード又はハイブリッド走行モードからEV走行モードへと切り替える際、クラッチ50の解放操作、シフトレバー81aの変速位置1〜4からEV走行モード選択位置EVへの操作、クラッチ50の係合操作を順に行う。その際、ハイブリッドECU100の受信する検出信号は、変速位置検出部83の検出信号からEV走行モード選択位置検出部82の検出信号に変わる。一方、EV走行モードからエンジン走行モード又はハイブリッド走行モードへと切り替える際には、クラッチ50の解放操作、EV走行モード選択位置EVからシフトレバー81aの変速位置1〜4への操作、クラッチ50の係合操作が順に行われる。その際にハイブリッドECU100の受信する検出信号は、EV走行モード選択位置検出部82の検出信号から変速位置検出部83の検出信号に変わる。
【0042】
ところで、EV走行モードで走行しているときには、回生制御が実行されないと二次電池25の電力が消費され続ける。これが為、EV走行モードが続くときには、二次電池25の残存容量(SOC量)の低下によって、何れEV走行モードでの走行が継続できなくなる。従って、この制御システムにおいては、そのような事態を防ぐ為に、二次電池25の残存容量が必要以上に低下しないようEV走行モードの停止条件が予め設定されている。その停止条件とは、二次電池25の残存容量が閾値としての所定残存容量を下回った状態のことである。その所定残存容量は、二次電池25の残存容量不足による車両の停止という事態を回避する為の設定値である。例えば、この所定残存容量は、停止条件該当時からの残りの目標EV走行時間や目標EV走行距離に基づいて設定すればよい。その残りの目標EV走行時間等は路面の勾配によっても変わるので、その所定残存容量は、それについても考慮した一定の値に予め設定しておいてもよく、登坂路の勾配が大きくなるほど短い目標EV走行時間等にするよう路面の勾配に応じてその都度設定してもよい。その路面の勾配の情報は、勾配検出装置95によって取得する。その勾配検出装置95としては、例えば、車両前後加速度の検出を行う前後加速度センサ、自車位置情報と地図情報の把握が可能なカーナビゲーションシステム等を利用すればよい。
【0043】
また、登坂路においては、緩斜面よりも急斜面の方が登坂に大きな駆動力を必要とする。そして、モータ/ジェネレータ20の容量(出力)等の車両の仕様にもよるが、モータ力行トルクだけでは、急斜面の登坂に必要な駆動力を発生させることができない可能性もある。これが為、ここでは、登坂路の勾配が閾値としての所定勾配よりも大きくなっている状態についてもEV走行モードの停止条件として設定する。その所定勾配は、モータ力行トルクの不足による登坂性能の低下という事態を回避する為の設定値である。例えば、この所定勾配は、最大乗員時及び最大積載時の車両重量、モータ/ジェネレータ20の容量、歯車対60のギア比等に基づいて得られるEV走行で登坂性能を低下させない勾配の最大値に予め設定すればよい。
【0044】
また、大きな駆動力は、そのような路面の勾配に拘わらず、アクセルペダル91が大きく踏み込まれたとき、車両側の駆動力制御で求められたときにも必要とされる。そして、モータ力行トルクだけでは、運転者や車両側の要求駆動力を発生させることができない可能性もある。これが為、ここでは、要求駆動力が閾値としての所定駆動力よりも大きくなっている状態についてもEV走行モードの停止条件として設定する。その所定駆動力は、モータ力行トルクの不足による加速性能等の走行性能の低下という事態を回避する為の設定値である。例えば、この所定駆動力は、最大乗員時及び最大積載時の車両重量、モータ/ジェネレータ20の容量、歯車対60のギア比等に基づいて得られるEV走行で走行性能を低下させない駆動力の最大値に予め設定すればよい。要求駆動力については、アクセル操作に伴うのであればアクセル開度センサ等のアクセル操作量検出装置92の検出値に基づいて演算し、車両側の駆動力制御実行時であればハイブリッドECU100の持つ要求駆動力の情報を利用する。
【0045】
更に、例えば電力消費量が多くなる等の理由からEV走行モードよりもエンジン走行モードやハイブリッド走行モードの方が燃費の点で優れている場合もあり得る。これが為、ここでは、EV走行モードの燃費よりもエンジン走行モードやハイブリッド走行モードの燃費の方が優れている状態についてもEV走行モードの停止条件として設定する。例えば、EV走行モードの燃費は、二次電池25の電力消費量に基づいた燃費の指標値として表す。また、エンジン走行モードの燃費は、エンジン10の燃料消費量に基づいた燃費の指標値として表す。また、ハイブリッド走行モードの燃費は、二次電池25の電力消費量とエンジン10の燃料消費量とに基づいた燃費の指標値として表す。
【0046】
また、エンジン10の停止状態が長く続くと、エンジン温度(水温や油温)が低下する。そして、エンジン温度が下がり過ぎた場合には、エンジン10の再始動時や再始動後に暖機が終わるまでの間にエンジン10の排気性能が悪化する。これが為、ここでは、エンジン温度が所定温度よりも低下している状態についてもEV走行モードの停止条件として設定する。その所定温度は、エンジン温度の低下によるエンジン10の再始動時や再始動後の排気性能の悪化という事態を回避する為の設定値である。例えば、この所定温度は、エンジン10の再始動時や再始動後に排気性能を悪化させてしまうエンジン温度よりも高温側に設定する。そのような排気性能の悪化を招くエンジン温度に所定温度を設定すると、エンジン10の再始動時や再始動後に暖機が終わるまでの間にエンジン10の排気性能が悪化してしまうからである。エンジン温度は、水温計96や油温計97の情報を利用すればよい。
【0047】
この制御システムにおいては、EV走行モードの停止条件に該当したときに、車両がそのような状態にあることを運転者に認識させ、EV走行モードからエンジン走行モードやハイブリッド走行モードへの切り替え操作を促す。その為に、この制御システムでは、EV走行モードを維持したままスタータモータ12でエンジン10を始動させ、そのエンジン音や振動によってエンジン走行モードやハイブリッド走行モードへの切り替え操作を運転者に促す。また、この制御システムでは、それでも運転者が切り替え操作を行わない場合に対応させるべく、エンジン回転数を上昇させることでエンジン音を大きくして、エンジン走行モードやハイブリッド走行モードへの切り替え操作を運転者に促す。手動変速機30の搭載された車両の運転者は、その経験上、エンジン回転数の上昇やエンジン音の増大によって、感覚的にエンジン音の低下や無駄な燃料消費の抑制を求めて変速操作(アップシフト操作)を行うからである。
【0048】
具体的に、ハイブリッドECU100は、EV走行モードでの走行中に図4のフローチャートに示す演算処理動作を行う。
【0049】
先ず、ハイブリッドECU100は、上述したEV走行モードの停止条件に該当しているのか否かの判定を行う(ステップST5)。この判定の際には、先に例示した夫々の停止条件の内の1つでも該当したときに、EV走行モードの停止条件になっているとの判定を行う。
【0050】
ハイブリッドECU100は、EV走行モードの停止条件でなければ、EV走行モードが終わるまでステップST5の判定を繰り返す。
【0051】
一方、ハイブリッドECU100は、EV走行モードの停止条件に該当している場合、エンジンECU101に指令を送ってエンジン10を始動させる(ステップST10)。この始動後のエンジン10のエンジン回転数は、燃料消費量の増加を抑えるべく例えばアイドル回転数に制御することが好ましいが、運転者によるエンジン始動の認識率を高めるべくアイドル回転数よりも高回転側に制御してもよい。このエンジン10の始動に伴い、車室内には、エンジン音やエンジン10の振動が伝わる。
【0052】
その後、このハイブリッドECU100は、シフトレバー81aがどのセレクト位置に操作されているのかを判断する(ステップST15)。この判断は、EV走行モード選択位置検出部82と変速位置検出部83の検出信号に基づき行う。また、この判断は、エンジン10の始動後所定時間の経過後に実行させることが好ましい。その所定時間は、短くともエンジン10の始動を認識した運転者がシフトレバー81aをEV走行モード選択位置EVから変速位置1〜4の内の何れかへと操作し終えるまでの時間に設定しておく。
【0053】
運転者がエンジン音や振動によってエンジン10の始動に気が付いて、シフトレバー81aをEV走行モード選択位置EVから変速位置1〜4の内の何れかへと操作した場合、ハイブリッドECU100は、シフトレバー81aのセレクト位置が変速位置1〜4の内の何れかにあることを把握するので、この演算処理を終了させる。この場合、ハイブリッドECU100は、走行モードをエンジン走行モード又はハイブリッド走行モードに切り替える。
【0054】
一方、運転者がエンジン10の始動に気が付いたのか否かは定かではないが、シフトレバー81aがEV走行モード選択位置EVのまま動かされなかった場合、ハイブリッドECU100は、走行モードの変更をより明確に促すべく、エンジンECU101に指令を送り、エンジン回転数をステップST10の始動後の回転数よりも上昇させる(ステップST20)。これにより、車室内では、エンジン音やエンジン10の振動が増加する。
【0055】
ハイブリッドECU100は、例えばステップST15と同等の所定時間の経過後、シフトレバー81aがどのセレクト位置に操作されているのかを判断する(ステップST25)。
【0056】
ここで、ステップST20のエンジン回転数の上昇は、燃料消費量を増加させる。これが為、燃料消費量の増加を抑えるべく、ハイブリッドECU100は、ステップST20でエンジン回転数を所定回転数(例えば数百回転や千回転等)上昇させ、その後のステップST25の判断でEV走行モード選択位置EVからの変更が検知されなければ、再びステップST20に戻ってエンジン回転数を更に所定回転数上昇させる。ハイブリッドECU100は、ステップST25でEV走行モード選択位置EVからの変更が検知されるまで、これを繰り返し、レブリミット(最高エンジン回転数)を超えない範囲内でエンジン回転数を規定回転数まで所定回転数毎上昇させる。
【0057】
その規定回転数は、変速位置1〜4の内の何れかへの変更を運転者が感覚的に望むような高回転寄りのエンジン回転数に設定する。例えば、規定回転数は、車速等に拘わらず予め設定したおいた一定のエンジン回転数であってもよく、車速とギア比に応じてその都度変更させたエンジン回転数であってもよい。そのギア比とは、例えば、エンジン走行モードでの走行が今の実際の車速で行われていると仮定し、そのときに運転者が手動変速機30のアップシフト操作を感覚的に望む変速段(ギア段31〜34の内の何れか)のギア比のことである。そのアップシフト操作を感覚的に望む変速段とは、運転者の嗜好にもよるが、例えば、エンジン音が不快と思えるほどの高いエンジン回転数や、燃料が無駄に消費されていると思えるほどの高いエンジン回転数となる変速段である。故に、このようなエンジン回転数を後者の規定回転数と定めてもよい。
【0058】
ハイブリッドECU100は、シフトレバー81aのセレクト位置が変速位置1〜4の内の何れかにあることを検知した場合、この演算処理を終了させる。
【0059】
このように、この制御システムは、EV走行モードの停止条件となったときに、そのことについてエンジン10を始動させて運転者に知らせるので、EV走行モードからの変更が警報や表示部等への視覚情報で促されるよりも運転者に認識させやすくなり、EV走行モードからエンジン走行モード又はハイブリッド走行モードへの切り替え操作が実行される可能性が高い。また、この制御システムは、次の段階として、エンジン回転数を上昇してエンジン音や振動の増加を図るので、EV走行モードからの変更を警報や視覚情報よりも運転者の感性に訴えることができ、運転者がEV走行モードからエンジン走行モード又はハイブリッド走行モードへの切り替え操作を実行する可能性が高くなる。特に、運転者が感覚的にシフトレバー81aの操作を行いたくなる回転数にまでエンジン回転数を上昇させることによって、この制御システムは、その切り替え操作を運転者に実行させる可能性を高めることができる。
【0060】
更に、この制御システムは、EV走行モードのままでエンジン10の始動やエンジン回転数の上昇を行うので、エンジントルクを駆動輪WL,WRに伝えない。従って、この制御システムは、駆動力を変化させることなく走行安定性を保ったまま運転者に対するEV走行モードからの切り替え操作を促すことができる。
【0061】
ここではエンジン回転数を規定回転数まで徐々に上昇させるものとして例示したが、ステップST20においては、その規定回転数まで一気にエンジン回転数を上昇させてもよい。これにより、エンジン回転数を幾度となく繰り返し上昇させるよりも、短時間の内に運転者に対してEV走行モード選択位置EVからの変更を意識させることができる可能性が高くなるので、却って燃料消費量の増加の抑制が可能になる場合もある。
【0062】
また、エンジン回転数を規定回転数まで上昇させても尚運転者が走行モードの切り替え操作を行わない場合、ハイブリッドECU100は、その規定回転数を保ったまま一定の時間の間運転者に対して走行モードの切り替え操作を促し続けてもよく、更に所定回転数ずつレブリミットまでエンジン回転数を上昇させてもよい。それでも尚運転者が走行モードの切り替え操作を行わない場合、ハイブリッドECU100には、例えば、警報や視覚情報を併用して運転者に走行モードの切り替え操作を促してもよい(本制御はエンジン回転数を規定回転数まで上昇させても運転者が走行モードの切り替え操作を行わない場合においても実行可)。
【0063】
ここで、この例示では、実際にエンジン10を動かしている。これが為、如何に制御形態を調整しても、燃料は、消費されてしまう。そこで、EV走行モードの停止条件となったときには、図5のフローチャートに示すように、擬似的なエンジン音を車室内に出力させるようにしてもよい。
【0064】
この場合、ステップST5でEV走行モードの停止条件と判定されたときに、ハイブリッドECU100は、車両の音響装置98を制御して、擬似的なエンジン音を出力させる(ステップST11)。そのエンジン音は、予め録音しておいた実際の音であってもよく、予め生成しておいたものであってもよく、周波数を変えてその都度生成するものであってもよい。このときのエンジン音は、ステップST10のエンジン10の始動に伴い車室内に伝搬しているエンジン音と同等の大きさとする。
【0065】
このハイブリッドECU100は、所定時間の経過の後、ステップST15の判断を行い、EV走行モード選択位置EVからの変更が行われていなければ、エンジン音を増大させる(ステップST21)。ここでは、エンジン音を徐々に大きくしていってもよいが、エンジン10の燃料消費量について考える必要が無いので、所定の大きさにまでエンジン音を一度に増大させることが望ましい。このステップST21においては、例えば、ステップST15を経て最初にエンジン音の増大を行う場合、上述した規定回転数に相当する大きさにまで増大させる。そして、これでもEV走行モード選択位置EVからの変更が行われていなければ、ステップST25の判断を経た後、例えばレブリミットに相当する大きさにまでエンジン音を増大させる。
【0066】
このように、この場合の制御システムは、EV走行モードの停止条件となったときに、そのことについて擬似的なエンジン音で運転者に知らせるので、EV走行モードからの変更が警報や表示部等への視覚情報で促されるよりも運転者に認識させやすくなり、EV走行モードからエンジン走行モード又はハイブリッド走行モードへの切り替え操作が実行される可能性が高い。また、この場合の制御システムは、次の段階として、エンジン回転数の上昇に相当するエンジン音の増大を図るので、EV走行モードからの変更を警報や視覚情報よりも運転者の感性に訴えることができ、運転者がEV走行モードからエンジン走行モード又はハイブリッド走行モードへの切り替え操作を実行する可能性が高くなる。特に、運転者が感覚的にシフトレバー81aの操作を行いたくなるエンジン回転数に相当するエンジン音まで増大させることによって、この制御システムは、運転者にエンジン10が高回転で回っていると錯覚させることができるので、その切り替え操作を運転者に実行させる可能性を高めることができる。
【0067】
更に、この場合の制御システムは、駆動力を変化させることなく走行安定性を保ったまま運転者に対するEV走行モードからの切り替え操作を促すことができる。また更に、この場合の制御システムは、エンジン10を停止させたままなので、走行モードの変更を運転者に促す際の燃費の悪化を抑えることもできる。
【0068】
ここで、この擬似的なエンジン音によるものは、エンジン10の振動を車室内の運転者に伝えることができない。これが為、より実際にエンジン10が動いていると運転者に錯覚させる為に、ハイブリッドECU100には、モータ/ジェネレータECU102に指令を送り、走行安定性を損なわせない範囲内でモータ/ジェネレータ20のトルクを変動させ、エンジン10が回っているときのような細かい振動を発生させてもよい。但し、その実現が難しいときには、エンジン10をアイドル回転数等の低回転で実際に動かして振動を発生させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明に係る車両の制御システムは、EV走行モードからの切り替えを運転者に対して十分に促すことのできる技術に有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 ハイブリッド車両
10 エンジン
12 スタータモータ
20 モータ/ジェネレータ
30 手動変速機
50 クラッチ
51 クラッチペダル
60 歯車対(EVギア)
81 変速操作装置
81a シフトレバー
81b シフトゲージ
82 EV走行モード選択位置検出部
83 変速位置検出部
98 音響装置
100 ハイブリッドECU
101 エンジンECU
102 モータ/ジェネレータECU
EV EV走行モード選択位置
WL,WR 駆動輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械エネルギを動力にして駆動力を発生させる機械動力源の動力を用いたエンジン走行モード、電気エネルギを変換した機械エネルギを動力にして駆動力を発生させる電気動力源の動力を用いたEV走行モード、又は前記機械動力源及び前記電気動力源の双方の動力を用いたハイブリッド走行モード、を運転者に手動で選択させる走行モード選択装置と、
走行モードに応じた前記動力を駆動輪側に伝えると共に、前記EV走行モードが選択された際にニュートラル状態になる変速機と、
前記EV走行モードが選択された際に前記機械動力源を停止させ、前記EV走行モードの停止条件のときに当該EV走行モードのまま前記機械動力源を始動させるエンジン制御装置と、
を備えることを特徴とした車両の制御システム。
【請求項2】
前記エンジン制御装置は、前記機械動力源の始動後も前記EV走行モードが選択された状態ならば、該機械動力源の回転数を上昇させることを特徴とした請求項1記載の車両の制御システム。
【請求項3】
前記変速機は、運転者の手動操作によって変速比の切り替えが可能な手動変速機であり、
前記機械動力源の回転数は、運転者が前記エンジン走行モードでの走行時に前記変速機のアップシフト操作を望む大きさであることを特徴とした請求項1又は2に記載の車両の制御システム。
【請求項4】
音響装置で車室内への前記機械動力源の擬似的なエンジン音の出力が可能な場合、前記EV走行モードの停止条件のときに、前記機械動力源を始動させることなく前記音響装置から擬似的なエンジン音を出力させることを特徴とした請求項1記載の車両の制御システム。
【請求項5】
前記変速機は、運転者の手動操作によって変速比の切り替えが可能な手動変速機であり、
前記擬似的なエンジン音は、運転者が前記エンジン走行モードでの走行時に前記変速機のアップシフト操作を望む前記機械動力源の回転数に相当する大きさであることを特徴とした請求項4記載の車両の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−61898(P2012−61898A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206056(P2010−206056)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】