説明

車両の制御装置及び車両の制御方法

【課題】運転手によるブレーキ操作量又はマスタシリンダ内の流体圧を検出するためのセンサを用いなくても、車両のエンジンを自動的に停止させるタイミングを設定することができる。
【解決手段】ブレーキ用ECUは、加速度センサからの検出信号に基づき車体加速度Gを演算し、該車体加速度Gに基づきマスタシリンダ内のMC圧Pmcに対応するMC圧加速度Amcを演算する。また、ブレーキ用ECUは、路面の勾配に対応する勾配加速度Agを演算する。そして、ブレーキ用ECUは、MC圧加速度Amcの絶対値が勾配加速度Agの絶対値以上となった場合に、エンジンの自動的な停止を許可する停止制御を行う(第3のタイミングt13)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンを自動的に停止させるための停止制御及びエンジンを自動的に再始動させるための再始動制御を行う車両の制御装置及び車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の燃費向上などを目的として、車両の停止中又は停止直前にエンジンを自動的に停止させると共に、運転者による発進操作を契機にエンジンを自動的に再始動させる所謂アイドルストップ機能を有する車両の制御装置の開発が進められている。例えば、特許文献1に記載の車両の制御装置では、運転手によるブレーキペダルの踏力(操作量)に基づき、車両のエンジンを自動的に停止させる際の開始タイミングが設定される。
【0003】
また、特許文献2に記載の車両の制御装置では、運転手によるブレーキ操作をエンジンの負圧を利用してアシストするブースタの内圧が、ブースタ圧センサからの検出信号に基づき検出される。また、エンジンのスロットル開度に応じた吸気圧が、アクセル開度センサからの検出信号に基づき検出される。そして、検出されたブースタの内圧と吸気圧との差分が所定値未満となった場合に、エンジンが自動的に停止されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−324755号公報
【特許文献2】特許3536717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、車両の燃費向上だけではなく、車両の低コスト化が強く望まれている。アイドルストップ機能を有する車両において低コスト化を図る一つの方法としては、車両に搭載されるセンサの数を減らすことが考えられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の制御装置では、踏力を検出するためのセンサ(例えば、マスタシリンダ内の液圧(流体圧)を検出するための圧力センサ)が車両に搭載されない場合には、ブレーキペダルの踏力を検出できず、エンジンを自動的に停止させるタイミングを設定することができない。また、特許文献2に記載の制御装置では、ブースタ圧センサやマスタシリンダ内の液圧を検出するための圧力センサが車両に搭載されない場合には、ブースタの内圧を検出できず、エンジンを自動的に停止させる制御を開始させることができない。そこで、運転手によるブレーキペダルの踏力又はマスタシリンダ内の液圧を検出するためのセンサを車両に設けない場合、又は当該センサを用いない場合であっても、停止制御を適切なタイミングで開始させることができる技術が希求されていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、運転手によるブレーキ操作量又はマスタシリンダ内の流体圧を検出するためのセンサを用いなくても、車両のエンジンを自動的に停止させるタイミングを設定することができる車両の制御装置及び車両の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の車両の制御装置は、運転手によるブレーキ操作に応じた流体圧を発生するマスタシリンダ(25)と、該マスタシリンダ(25)に流路を介して連通され且つ内部に発生した流体圧に応じた制動力を車輪(FR,FL,RR,RL)に付与するホイールシリンダ(32a,32b,32c,32d)とを備えた車両の制御装置であって、車両に設けられた加速度センサ(SE7)から出力される信号に基づき車両の前後方向における加速度(G)を取得する加速度取得手段(55、S10)と、取得された前記前後方向における加速度(G)に基づき、前記マスタシリンダ(25)内の流体圧に対応する流体圧相当値(Amc)を取得する流体圧相当値取得手段(55、S13)と、路面の勾配に対応する路面勾配相当値(Ag)を取得する勾配取得手段(55、S14)と、車両のエンジン(12)を自動的に停止させるための停止制御及び前記エンジン(12)を自動的に再始動させるための再始動制御を行う制御手段(55)と、を備え、前記制御手段(55、S30,S31)は、前記流体圧相当値取得手段(55、S13)によって取得された流体圧相当値(Amc)が前記勾配取得手段(55、S14)によって取得された路面勾配相当値(Ag)よりも大きい場合に、前記停止制御を行うことを要旨とする。
【0009】
マスタシリンダ内の流体圧は、運転手によるブレーキペダルの操作量に応じた圧力、即ち車両の車輪に付与される制動力に応じた圧力となる。そして、加速度センサに基づき取得される車両の前後方向における加速度は、運転手によるブレーキペダルの操作量の変化に合わせて変動する。つまり、マスタシリンダ内の流体圧(即ち、車輪に対する制動力)と、加速度センサに基づき取得される車両の前後方向における加速度とには互いに対応関係にある。そこで、本発明では、加速度センサに基づき取得される車両の前後方向における加速度に基づき、マスタシリンダ内の流体圧に対応する流体圧相当値が取得される。取得された流体圧相当値が、路面の勾配に対応する路面勾配相当値よりも大きい場合には、車両が登坂路を走行する際にエンジンが停止されたとしても、運転手の意図しない車両の後方への移動、即ちずり下がりが発生する可能性が低い。そして、エンジンを停止させてクリープトルクが消滅しても、登坂路上に位置する車両のずり下がりが発生しないと判断されたタイミングで、エンジンを停止させるための停止制御が行われる。したがって、運転手によるブレーキ操作量又はマスタシリンダ内の流体圧を検出するためのセンサを用いなくても、車両のエンジンを自動的に停止させるタイミングを設定することができる。
【0010】
なお、クリープ現象とは、自動変速機を有する車両において、シフトレバーが走行位置にあるときにアクセルペダルを踏み込まなくても車両がゆっくりと前進する現象であり、この現象は、エンジンのアイドル時にも、自動変速機が備える流体継手が若干の動力を車輪側に伝達するために発生する。そして、車輪側に伝達される若干の動力のことを、「クリープトルク」という。
【0011】
本発明の車両の制御装置において、前記流体圧相当値取得手段(55、S13)は、前記加速度取得手段(55、S10)によって取得された前記前後方向における加速度(G)と、車両で発生されるクリープトルクに相当するクリープ相当値(Ac)と、車両に加わる走行抵抗に相当する走行抵抗相当値(Ar)とに基づき、流体圧相当値(Amc)を取得することが好ましい。
【0012】
減速する車両には、車輪に付与される制動力、車両で発生するクリープトルク及び走行抵抗に応じた力が付与される。加速度センサに基づき取得される車両の前後方向における加速度は、制動力、クリープトルク及び走行抵抗に応じた力の合力に相当する加速度である。そこで、本発明では、流体圧相当値は、加速度センサに基づき取得される車両の前後方向における加速度と、クリープトルクに相当するクリープ相当値と、車両に加わる走行抵抗に相当する走行抵抗相当値とに基づき取得される。そのため、クリープ相当値と走行抵抗相当値とを考慮せずに流体圧相当値を取得する場合と比較して、マスタシリンダ内の流体圧と流体圧相当値との対応関係を、より良好なものとすることができる。したがって、このように取得された流体圧相当値に基づき、エンジンを自動的に停止させた場合に、登坂路上に位置する車両のずり下がりが発生する可能性をより低くすることができる。
【0013】
本発明の車両の制御装置において、前記制御手段(55、S41,S42,S43)は、前記エンジン(12)の停止中に前記流体圧相当値取得手段(55、S13)によって取得された流体圧相当値(Amc)に基づき、前記マスタシリンダ(25)内の流体圧が減圧中であると判定した場合に、前記再始動制御を行うことが好ましい。
【0014】
エンジンの停止中にマスタシリンダ内の流体圧が減圧される場合とは、運転手が車両を発進させる意志を有している可能性があると判断することができる。そこで、本発明では、マスタシリンダ内の流体圧が減圧していると判断できるような流体圧相当値の変動が検出された場合には、エンジンを再始動させるための再始動制御が行われる。したがって、運転手の意志に応じて車両を発進させることができる。
【0015】
本発明の車両の制御装置は、車両の車体速度(VS)を取得する車体速度取得手段(55、S11)をさらに備え、前記制御手段(55、S40,S41,S42,S43)は、前記エンジン(12)の停止中に前記車体速度取得手段(55、S11)によって取得された車体速度(VS)が、極低速領域であるか否かを判断するために設定された速度基準値(KVS)を超える場合において、前記流体圧相当値取得手段(55、S13)によって取得された流体圧相当値(Amc)に基づき、前記マスタシリンダ(25)内の流体圧が減圧中であると判定したときには、前記再始動制御を行う一方、前記エンジン(12)の停止中に前記車体速度取得手段(55、S11)によって取得された車体速度(VS)が前記速度基準値(KVS)以下である場合には、前記流体圧相当値取得手段(55、S13)によって取得された流体圧相当値(Amc)に基づき前記再始動制御を行うか否かを判定しないことが好ましい。
【0016】
車体速度が速度基準値未満である場合には、マスタシリンダ内の流体圧とは無関係に、加速度センサからの信号に基づき取得される車両の前後方向における加速度が変化する。そのため、マスタシリンダ内の流体圧と前後方向における加速度との間に、対応関係がなくなり、前後方向における加速度に基づきマスタシリンダ内の流体圧、即ち車輪に付与される制動力の大きさを推定することが困難となる。そこで、本発明では、車体速度が速度基準値以上である場合には、マスタシリンダ内の流体圧と前後方向における加速度とに対応関係があると判断し、流体圧相当値に基づき再始動制御を行うか否かが判定される。一方、車体速度が速度基準値未満である場合には、マスタシリンダ内の流体圧と前後方向における加速度との間に対応関係がなくなったと判断し、流体圧相当値に基づき再始動制御を行うか否かが判定されない。そのため、運転手の意図に反してエンジンが再始動されたり、エンジンの再始動の開始が遅れたりする可能性を低下させることができる。
【0017】
本発明の車両の制御装置において、前記制御手段(55、S44,S45,S46)は、前記停止制御を契機に前記エンジン(12)が停止された場合に、車両の走行中から、該車両に設けられた制動力低下抑制手段(35a,35b,37a,37b,37c,37d)を作動させて車輪(FR,FL,RR,RL)に対する制動力の低下を抑制する低下抑制制御を開始することが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、停止制御を契機にエンジンが停止された場合には、車輪に対する制動力の低下が抑制される。そのため、エンジンを再始動させるべく運転手によるブレーキペダルの操作が解消された場合、又は操作量が少なくなった場合でも、車輪に対する制動力の低下が抑制される。そのため、エンジンの再始動中に、運転手の意図しない車両の移動(例えば、ずり下がり)の発生を抑制できる。
【0019】
本発明の車両の制御装置において、前記制動力低下抑制手段は、前記マスタシリンダ(25)と前記ホイールシリンダ(32a,32b,32c,32d)とを連通させる流路に配置され、且つ該ホイールシリンダ(32a,32b,32c,32d)内の流体圧を調整すべく作動する調整弁(35a,35b,37a,37b,37c,37d)を有し、前記制御手段(55、S44,S45,S46)は、前記停止制御を契機に前記エンジン(12)が停止された場合に、車両の走行中から、前記調整弁(35a,35b,37a,37b,37c,37d)を作動させる前記低下抑制制御を開始することが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、低下抑制制御では、調整弁に対する電力の供給を制御することにより、ホイールシリンダ内の流体圧の低下を容易に抑制できる、即ち車輪に対する制動力の低下を容易に抑制できる。
【0021】
本発明の車両の制御方法は、車両のエンジン(12)を自動的に停止させる停止ステップ(S31)と、前記エンジン(12)を自動的に再始動させる再始動ステップ(S43)と、を有する車両の制御方法であって、車両に設けられた加速度センサ(SE7)からの信号に基づき、車両の前後方向における加速度(G)を取得させる加速度取得ステップ(S10)と、取得した前記前後方向における加速度(G)に基づき、車両に付与される制動力に対応する制動力相当値(Amc)を取得させる制動力相当値取得ステップ(S13)と、車両の位置する路面の勾配に対応する路面勾配相当値(Ag)を取得させる勾配取得ステップ(S14)と、さらに有し、前記制動力相当値取得ステップ(S13)で取得した制動力相当値(Amc)が前記勾配取得ステップ(S14)で取得した路面勾配相当値(Ag)以上である場合に、前記停止ステップ(S31)を行うことを要旨とする。
【0022】
加速度センサに基づき取得される車両の前後方向における加速度は、運転手によるブレーキペダルの操作に基づき車両に付与される制動力の変動に合わせて変動する。つまり、制動力と、加速度センサに基づき取得される車両の前後方向における加速度とには互いに対応関係にある。そこで、本発明では、加速度センサに基づき取得される車両の前後方向における加速度に基づき、制動力に対応する制動力相当値が取得される。取得された制動力相当値が、路面の勾配に対応する路面勾配相当値よりも大きい場合には、車両が登坂路を走行する際にエンジンが停止されたとしても、運転手の意図しない車両の後方への移動、即ちずり下がりが発生する可能性が低い。そして、エンジンを停止させてクリープトルクが消滅しても、登坂路上に位置する車両のずり下がりが発生しないと判断されたタイミングで、エンジンを停止させるための停止制御が行われる。したがって、運転手によるブレーキ操作量又はマスタシリンダ内の流体圧を検出するためのセンサを用いなくても、車両のエンジンを自動的に停止させるタイミングを設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の制御装置を搭載する車両の一例を示すブロック図。
【図2】制動装置の一例を示すブロック図。
【図3】アイドルストップ処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図4】エンジン停止処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図5】エンジン再始動処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図6】車両に加わる力の関係を示す作用図。
【図7】エンジンを自動的に停止及び再始動させる際におけるMC圧、車体加速度、エンジンの回転数、車体速度及びリニア電磁弁に対する電流値の変化を説明するタイミングチャート。
【図8】エンジンを自動的に再始動させる際におけるMC圧、車体加速度、エンジンの回転数、車体速度及びリニア電磁弁に対する電流値の変化を説明するタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図8に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。
【0025】
本実施形態の車両は、燃費性能やエミッション性能を向上させるべく、車両走行中に所定の停止条件の成立に応じてエンジンを自動的に停止させ、その後、所定の始動条件の成立に応じてエンジンを自動的に再始動させる所謂アイドルストップ機能を有している。そのため、この車両では、運転手によるブレーキ操作による減速中又は停車中に、エンジンが自動的に停止される。
【0026】
次に、アイドルストップ機能を有する車両の一例について説明する。
図1に示すように、車両は、複数(本実施形態では4つ)ある車輪(右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RL)のうち、前輪FR,FLが駆動輪として機能する所謂前輪駆動車である。こうした車両には、運転手によるアクセルペダル11の操作量に応じた駆動力を発生するエンジン12を有する駆動力発生装置13と、該駆動力発生装置13で発生した駆動力を前輪FR,FLに伝達する駆動力伝達装置14とを備えている。また、車両には、運転手によるブレーキペダル15の操作量に応じた制動力を各車輪FR,FL,RR,RLに付与するための制動装置16が設けられている。
【0027】
駆動力発生装置13は、エンジン12の吸気ポート(図示略)近傍に配置され、且つ該エンジン12に燃料を噴射するインジェクタを有する燃料噴射装置(図示略)を備えている。こうした駆動力発生装置13は、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを有するエンジン用ECU17(「エンジン用電子制御装置」ともいう。)の制御に基づき駆動する。このエンジン用ECU17には、アクセルペダル11の近傍に配置され、且つ運転手によるアクセルペダル11の操作量、即ちアクセル開度を検出するためのアクセル開度センサSE1が電気的に接続されている。そして、エンジン用ECU17は、アクセル開度センサSE1からの検出信号に基づきアクセル開度を演算し、該演算したアクセル開度などに基づき駆動力発生装置13を制御する。
【0028】
駆動力伝達装置14は、自動変速機18と、該自動変速機18の出力軸から伝達された駆動力を適宜配分して前輪FR,FLに伝達するディファレンシャルギヤ19と、自動変速機18を制御する図示しないAT用ECUとを備えている。自動変速機18は、流体継手の一例としてトルクコンバータ20aを有する流体式駆動力伝達機構20と、変速機構21とを備えている。
【0029】
なお、本実施形態の車両においてエンジン12から駆動輪(前輪FR,FL)へのトルク伝達経路には、トルクコンバータ20aが設けられているため、クリープ現象が発生する。このクリープ現象とは、自動変速機18を有する車両において、シフトレバーが走行位置にあるときにアクセルペダル11を踏み込まなくても車両がゆっくりと前進する現象であり、この現象は、エンジン12のアイドル時にも、トルクコンバータ20aが若干の動力を前輪FR,FL側に伝達するために発生する。そして、前輪FR,FL側に伝達される若干の動力のことを、「クリープトルク」という。
【0030】
制動装置16は、図1及び図2に示すように、マスタシリンダ25、ブースタ26及びリザーバ27を有する液圧発生装置28と、2つの液圧回路29,30を有するブレーキアクチュエータ31(図2では二点鎖線で示す。)とを備えている。各液圧回路29,30は、液圧発生装置28のマスタシリンダ25にそれぞれ接続されている。そして、第1液圧回路29には、右前輪FR用のホイールシリンダ32a及び左後輪RL用のホイールシリンダ32dが接続されると共に、第2液圧回路30には、左前輪FL用のホイールシリンダ32b及び右後輪RR用のホイールシリンダ32cが接続されている。
【0031】
液圧発生装置28においてブースタ26は、エンジン12の駆動時に負圧が発生する図示しないインテークマニホールドに接続されている。そして、ブースタ26は、インテークマニホールド内に発生する負圧と大気圧との圧力差を利用し、運転手によるブレーキペダル15の操作力を倍力する。
【0032】
マスタシリンダ25は、運転手によるブレーキペダル15の操作(以下、「ブレーキ操作」ともいう。)に応じた流体圧としてのマスタシリンダ圧(以下、「MC圧」ともいう。)を発生する。その結果、マスタシリンダ25からは、液圧回路29,30を介してホイールシリンダ32a〜32d内に流体としてのブレーキ液が供給される。すると、車輪FR,FL,RR,RLには、ホイールシリンダ32a〜32d内のホイールシリンダ圧(「WC圧」ともいう。)に応じた制動力が付与される。
【0033】
ブレーキアクチュエータ31において各液圧回路29,30は、連結経路33,34を介してマスタシリンダ25にそれぞれ接続されており、該各連結経路33,34には、常開型のリニア電磁弁(調整弁)35a,35bがそれぞれ設けられている。リニア電磁弁35a,35bは、弁座、弁体、電磁コイル及び弁体を弁座から離間する方向に付勢する付勢部材(例えば、コイルスプリング)を備えており、弁体は、後述するブレーキ用ECU55から電磁コイルに供給される電流値に応じて変位する。すなわち、ホイールシリンダ32a〜32d内のWC圧は、リニア電磁弁35a,35bに供給される電流値に応じた液圧で維持される。
【0034】
第1液圧回路29には、ホイールシリンダ32aに接続される右前輪用経路36aと、ホイールシリンダ32dに接続される左後輪用経路36dとが形成されている。また、第2液圧回路30には、ホイールシリンダ32bに接続される左前輪用経路36bと、ホイールシリンダ32cに接続される右後輪用経路36cとが形成されている。したがって、本実施形態では、連結経路33,34及び各経路36a〜36dにより、マスタシリンダ25とホイールシリンダ32a〜32dとを連結する流路が構成される。また、経路36a〜36dには、ホイールシリンダ32a〜32d内のWC圧の増圧を規制する際に作動する常開型の電磁弁である増圧弁37a,37b,37c,37dと、WC圧を減圧させる際に作動する常閉型の電磁弁である減圧弁38a,38b,38c,38dとが設けられている。
【0035】
また、液圧回路29,30には、ホイールシリンダ32a〜32dから減圧弁38a〜38dを介して流出したブレーキ液を一時貯留するためのリザーバ39,40と、モータ41の回転に基づき作動するポンプ42,43とが接続されている。リザーバ39,40は、吸入用流路44,45を介してポンプ42,43に接続されると共に、マスタ側流路46,47を介して連結経路33,34においてリニア電磁弁35a,35bよりもマスタシリンダ25側に接続されている。また、ポンプ42,43は、供給用流路48,49を介して液圧回路29,30における増圧弁37a〜37dとリニア電磁弁35a,35bとの間の接続部位50,51に接続されている。そして、ポンプ42,43は、モータ41が回転した場合に、リザーバ39,40及びマスタシリンダ25側から吸入用流路44,45及びマスタ側流路46,47を介してブレーキ液を吸引し、該ブレーキ液を供給用流路48,49内に吐出する。
【0036】
次に、ブレーキアクチュエータ31の駆動を制御するブレーキ用ECU55(「ブレーキ用電子制御装置」ともいう。)について説明する。
図2に示すように、制御手段としてのブレーキ用ECU55の入力側インターフェースには、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE3,SE4,SE5,SE6、及び車両の前後方向における加速度を検出するための加速度センサ(「Gセンサ」ともいう。)SE7が電気的に接続されている。また、ブレーキ用ECU55の入力側インターフェースには、ブレーキペダル15の近傍に配置され、且つブレーキペダル15が操作されているか否かを検出するためのブレーキスイッチSW1が電気的に接続されている。ブレーキ用ECU55の出力側インターフェースには、各弁35a,35b,37a〜37d,38a〜38d及びモータ41などが電気的に接続されている。なお、加速度センサSE7からは、車両の重心が後方に移動する際に正の値となるような信号が出力される一方、車両の重心が前方に移動する際に負の値となるような信号が出力される。
【0037】
また、ブレーキ用ECU55は、図示しないCPU、ROM及びRAMなどから構成されるデジタルコンピュータ、各弁35a,35b,37a〜37d,38a〜38dを作動させるための図示しない弁用ドライバ回路、及びモータ41を作動させるための図示しないモータ用ドライバ回路を有している。デジタルコンピュータのROMには、各種制御処理(後述するアイドルストップ処理等)、及び各種閾値などが予め記憶されている。また、RAMには、車両の図示しないイグニッションスイッチがオンである間、適宜書き換えられる各種の情報などがそれぞれ記憶される。
【0038】
本実施形態の車両において、エンジン用ECU17及びブレーキ用ECU55を含むECU同士は、図1に示すように、各種情報及び各種制御指令を送受信できるようにバス56を介してそれぞれ接続されている。例えば、エンジン用ECU17からは、アクセルペダル11のアクセル開度に関する情報などがブレーキ用ECU55に適宜送信される一方、ブレーキ用ECU55からは、エンジン12を自動的に停止させる旨の制御指令(「停止指令」ともいう。)やエンジン12を自動的に再始動させる旨の制御指令(「再始動指令」ともいう。)などがエンジン用ECU17に送信される。
【0039】
次に、本実施形態のブレーキ用ECU55が実行するアイドルストップ処理ルーチンについて、図3〜図5に示すフローチャートと、図6に示す作用図と、図7及び図8に示すタイミングチャートとに基づき説明する。このアイドルストップ処理ルーチンは、エンジン12の自動的な停止を許可するタイミングやエンジン12の自動的な再始動を許可するタイミングを設定する処理ルーチンである。また、図7及び図8は、車両が登坂路を走行する場合のタイミングチャートである。
【0040】
さて、ブレーキ用ECU55は、予め設定された所定周期(例えば、0.01秒周期)毎にアイドルストップ処理ルーチンを実行する。このアイドルストップ処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU55は、加速度センサSE7からの検出信号に基づき、車両の前後方向における加速度(以下、単に「車体加速度」という。)Gを取得する(ステップS10)。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU55が、加速度取得手段としても機能する。また、ステップS10が、加速度取得ステップに相当する。
【0041】
続いて、ブレーキ用ECU55は、車両の車体速度VSを取得する(ステップS11)。具体的には、ブレーキ用ECU55は、各車輪速度センサSE3〜SE6からの検出信号に基づき各車輪FL,FR,RL,RRの車輪速度を演算し、該各車輪FL,FR,RL,RRの車輪速度のうち少なくとも一つの車輪速度を時間微分して車輪加速度を取得する。そして、ブレーキ用ECU55は、前回のタイミングで取得した車体速度に対して車輪加速度を積算し、該積算結果を車体速度VSとする。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU55が、車体速度取得手段としても機能する。そして、ブレーキ用ECU55は、ステップS11で取得した車体速度VSを時間微分して車体速度微分値DVSを取得する(ステップS12)。なお、ブレーキ用ECU55は、ステップS11での処理時に取得した車輪加速度を車体速度微分値DVSとしてもよい。
【0042】
続いて、ブレーキ用ECU55は、マスタシリンダ25内のMC圧Pmcに対応する加速度成分であるMC圧加速度(流体圧相当値、制動力相当値)Amcを演算する(ステップS13)。ここで、図6に示すように、アクセルペダル11が操作されていない車両が走行する場合、車両には、駆動輪(前輪FR,FL)に伝達されるクリープトルクと、車体に加わる重力のうち路面に沿った方向に作用する成分(以下、「重力相当力」ともいう。)とが付与される。また、車両には、車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力と、車両に加わる走行抵抗に基づく力とが付与される。
【0043】
なお、「重力相当力」は、車両の位置する路面が水平路である場合にはほぼ「0(零)」である一方、路面が坂路である場合には勾配が急勾配であるほど大きな値となる。そのため、重力相当力は、路面の勾配と対応関係のある力であるといってもよい。また、本実施形態において「走行抵抗」とは、車両の車体表面と空気との摩擦により発生する抵抗成分と、車輪FR,FL,RR,RLが転がる際の軸受部(図示略)の摩擦抵抗及び路面とタイヤとの間でのエネルギー損失により発生する抵抗を含む転がり抵抗成分とを有している。
【0044】
車両が登坂路を走行する場合、クリープトルクは、車両を前方に移動させるための推進力である一方、重力相当力、制動力及び走行抵抗は、車両の前方への移動を規制するための力として作用する。しかしながら、車両がエンジン12を停止させた状態で停車した場合、車両には、クリープトルク及び走行抵抗が付与されなくなる。このとき、重力相当力は、車両を後方へ移動させる、即ちずり下がらせる力として作用する一方、制動力は、車両のずり下がりを抑制する力として作用する。そのため、制動力よりも重力相当力のほうが大きい場合には、車両がずり下がることになる。つまり、エンジン12を停止させるための停止制御を行うタイミングを設定するためには、制動力又は該制動力に相当する値、即ち制動力相当値と、重力相当力又は該重力相当力に相当する値とを取得する必要がある。
【0045】
ところで、加速度センサSE7からの検出信号に基づき演算される車体加速度Gは、マスタシリンダ25内のMC圧の変動、即ち車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の変動に伴い変動する。そこで、本実施形態では、MC圧(即ち、制動力)と車体加速度Gとに対応関係があることに着眼し、車体加速度Gに基づきMC圧Pmcに対応する値としてMC圧加速度Amcが取得される。
【0046】
ここで、ステップS12で取得した車体速度微分値DVSは、制動力、クリープトルク、走行抵抗及び重力相当力を考慮した値である。そのため、車体速度微分値DVSは、車両が減速する場合には負の値になると共に、車両が停車した場合には「0(零)」となる。その一方で、車体加速度Gは、重力相当力を考慮していない値である。そのため、車体加速度Gは、登坂路で車両が停車した場合には、「0(零)」とはならず、正の値となる。そのため、車体加速度Gから、クリープトルクに相当する加速度成分であるクリープ加速度Acと、走行抵抗に相当する加速度成分である走行抵抗加速度Arとを除くことにより、MC圧加速度Amcが算出される。
【0047】
そこで、図3のフローチャートに戻り、ブレーキ用ECU55は、車両で発生するクリープトルクに相当するクリープ相当値としてクリープ加速度Ac、及び車両に加わる走行抵抗に相当する走行抵抗相当値として走行抵抗加速度Arを取得する。そして、ブレーキ用ECU55は、ステップS10で演算した車体加速度Gからクリープ加速度Acを減算し、該減算結果(=G−Ac)に走行抵抗加速度Arを加算し、該加算結果をMC圧加速度Amc(=G−Ac+Ar)とする。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU55が、流体圧相当値取得手段としても機能する。また、ステップS13が、制動力相当値取得ステップに相当する。
【0048】
なお、クリープ加速度Acは、クリープトルクを車両の重量で除算した値であって、エアコンを使用時のほうが未使用時よりも大きな値となる。また、走行抵抗加速度Arは、走行抵抗を取得できれば一義的に設定できる値である。
【0049】
そして、ブレーキ用ECU55は、ステップS10で演算した車体加速度GからステップS12で取得した車体速度微分値DVSを減算し、該減算結果を勾配加速度(路面勾配相当値)Agとする(ステップS14)。車両が坂路を走行する場合、車体加速度Gと車体速度微分値DVSとの間には、上述したように、路面の勾配に相当する差分が生じる。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU55が、勾配取得手段としても機能する。また、ステップS14が、勾配取得ステップに相当する。続いて、ブレーキ用ECU55は、エンジン用ECU17から受信した情報に基づき、エンジン12が駆動中であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0050】
この判定結果が肯定判定である場合、ブレーキ用ECU55は、エンジン12が駆動中であるため、図4で詳述するエンジン停止処理を行う(ステップS16)。このエンジン停止処理は、所定の停止条件が成立した場合に、エンジン12の自動的な停止を許可する停止制御を行う処理である。その後、ブレーキ用ECU55は、アイドルストップ処理ルーチンを一旦終了する。一方、ステップS15の判定結果が否定判定である場合、ブレーキ用ECU55は、エンジン12が停止中であるため、図5で詳述するエンジン再始動処理を行う(ステップS17)。このエンジン再始動処理は、所定の再始動条件が成立した場合に、エンジン12の自動的な再始動を許可する再始動処理を行う処理である。その後、ブレーキ用ECU55は、アイドルストップ処理ルーチンを一旦終了する。
【0051】
次に、上記ステップS16のエンジン停止処理ルーチンについて、図4に示すフローチャートに基づき説明する。
さて、エンジン停止処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU55は、上記ステップS13で演算したMC圧加速度Amcの絶対値が上記ステップS14で演算した勾配加速度Agの絶対値を超えたか否かを判定する(ステップS30)。ここで、MC圧加速度Amcは、車両を停車させるべく車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力に相当する値である。一方、勾配加速度Agは、車両に加わる重力相当力(図6参照)に相当する値である。すなわち、勾配加速度Agの値が大きいほど、路面の勾配が急勾配であることを意味し、車両を後方にずり下がらせる力が大きいことを意味している。
【0052】
そして、MC圧加速度Amcの絶対値が勾配加速度Agの絶対値を超える場合とは、車輪FR,FL,RR,RLにクリープトルクすら伝達されない状態、即ちエンジン12が停止された状態となっても、車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力が重力相当力よりも大きい状態である。そのため、この状態でエンジン12が停止されたとしても、登坂路に位置する車両が後方に移動する、即ちずり下がる可能性は限りなく低い。
【0053】
ステップS30の判定結果が否定判定(Amcの絶対値≦Agの絶対値)である場合、ブレーキ用ECU55は、この状態でエンジン12を停止させた場合には運転手の意図しない車両の移動が発生すると判断し、エンジン停止処理ルーチンを終了する。すなわち、エンジン12の自動的な停止を許可する停止制御が行われない。
【0054】
一方、ステップS30の判定結果が肯定判定(Amcの絶対値>Agの絶対値)である場合、ブレーキ用ECU55は、この状態でエンジン12を停止させても、運転手の意図しない車両の移動が発生しないと判断し、エンジン12の自動的な停止を許可する停止制御を行い(ステップS31)、エンジン停止処理ルーチンを終了する。したがって、本実施形態では、ステップS31が、停止ステップに相当する。その後、ブレーキ用ECU55は、停止指令をエンジン用ECU17に送信する。そして、エンジン用ECU17は、停止指令を受信した場合に、エンジン12の駆動を停止させると共に、該停止処理が完了した旨の信号をブレーキ用ECU55に送信する。エンジン用ECU17から信号を受信したブレーキ用ECU55は、エンジン12の停止が完了したと判断する。
【0055】
すなわち、図7のタイミングチャートに示すように、運転手によるブレーキ操作が行われていない第1のタイミングt11では、マスタシリンダ25内のMC圧Pmc(図7では一点鎖線で示す。)は、ほぼ「0(零)MPa」である。このとき、車両は登坂路を走行中であるため、車輪FR,FL,RR,RLに制動力が付与されなくても、車両の車体速度VSは、徐々に低速になる。そして、運転手がブレーキ操作すると、運転手によるブレーキペダル15の操作量の増加に伴い、マスタシリンダ25内のMC圧Pmcが増大される。その結果、ブレーキスイッチSW1がオンになった第2のタイミングからは、車両の車体加速度Gが徐々に小さくなる。すると、MC圧加速度Amcの絶対値は、徐々に大きな値となる。このとき、MC圧加速度Amcに基づきMC圧の推定値Pmcs(図7では実線で示す。)を算出した場合、該MC圧の推定値Pmcsは、マスタシリンダ25内のMC圧Pmcとほぼ同一値となる。
【0056】
そして、第3のタイミングt13では、MC圧加速度Amcの絶対値が勾配加速度Agの絶対値を超え、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力が、重力相当力よりも大きくなる。その結果、停止制御が開始される。すると、エンジン12の回転数が急激に少なくなり、第4のタイミングt14からは、エンジン12の回転数の低下に伴いクリープトルクが小さくなる。そして、エンジン12の回転数が「0(零)」となる第5のタイミングt15では、クリープトルクが完全に消滅する。なお、第4のタイミングt14から第5のタイミングt15までの間では、クリープトルクが小さくなるに連れて、クリープ加速度Acの値が小さくなる。
【0057】
次に、上記ステップS17のエンジン再始動処理ルーチンについて、図5に示すフローチャートに基づき説明する。
さて、エンジン再始動処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU55は、ステップS11で演算した車体速度VSが予め設定された極低速基準値KVSを超えているか否かを判定する(ステップS40)。車体速度VSが極低速基準値KVS以下となる場合は、車輪速度センサSE3〜SE6からの検出信号の誤差成分が大きくなり、該検出信号に基づき演算される車輪速度及び車体速度VSの精度が急激に悪化する。また、車体速度VSが極低速領域に入ると、マスタシリンダ25内のMC圧Pmcとは無関係に、車体加速度Gの値が変動する(図8参照)。具体的には、車体加速度Gは、勾配加速度Agに接近する。そのため、車体加速度Gを用いて取得されたMC圧加速度AmcとMC圧Pmcとの間には、対応関係がほぼなくなる。そこで、極低速基準値KVSは、車体速度VSが極低速領域内に入っていないか否かを判断するための基準値として予め設定される。
【0058】
ステップS40の判定結果が肯定判定(VS>KVS)である場合、ブレーキ用ECU55は、車体速度VSが極低速領域内に入っていないと判断し、エンジン12の再始動の可否を判断するための基準値である再始動基準値KAmcを設定する(ステップS41)。この再始動基準値KAmcは、MC圧加速度Amcの減少に基づきエンジン12の再始動を許可するか否かを判断するための基準値である。本実施形態において、再始動基準値KAmcは、ステップS14で演算した勾配加速度Agの絶対値が大きいほど、即ち路面勾配が大きいほど大きな値に設定される。
【0059】
そして、ブレーキ用ECU55は、ステップS13で演算したMC圧加速度Amcの絶対値がステップS41で設定した再始動基準値KAmc以下であるか否かを判定する(ステップS42)。この判定結果が否定判定(Amcの絶対値>KAmc)である場合、ブレーキ用ECU55は、エンジン再始動処理ルーチンを終了する。
【0060】
一方、ステップS42の判定結果が肯定判定(Amcの絶対値≦KAmc)である場合、ブレーキ用ECU55は、エンジン12の自動的な再始動を許可する再始動制御を行い(ステップS43)、エンジン再始動処理ルーチンを一旦終了する。したがって、本実施形態では、ステップS43が、再始動ステップに相当する。その後、ブレーキ用ECU55は、再始動指令をエンジン用ECU17に送信する。そして、エンジン用ECU17は、再始動指令を受信した場合に、エンジン12を再始動させると共に、該再始動処理が完了した旨の信号をブレーキ用ECU55に送信する。エンジン用ECU17から信号を受信したブレーキ用ECU55は、エンジン12の再始動が完了したと判断する。
【0061】
すなわち、図7のタイミングチャートに示すように、エンジン12を停止した車両が登坂路を惰性で走行する場合において、運転手によるブレーキペダル15の操作量が少なくなると、マスタシリンダ25内のMC圧Pmcが減圧される(第6のタイミングt16)。すると、第6のタイミングt16以降では、MC圧加速度Amcの絶対値が次第に小さな値となる。そして、第7のタイミングt17では、MC圧加速度Amcの絶対値が再始動基準値KAmc以下となると、現時点で車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力では、車両の停車後にずり下がりが発生すると判断される。その結果、再始動制御が行われ、エンジン12が再始動される。その後の第8のタイミングt18では、クリープトルクが前輪FR,FLに伝達されるようになる。
【0062】
図5のフローチャートに戻り、ステップS40の判定結果が否定判定(VS≦KVS)である場合、ブレーキ用ECU55は、車体速度VSが極低速領域内に入っていると判断し、車両が停車したか否かを判定する(ステップS44)。車両が停車する直前では、車体加速度Gが大きく変動することがある(図8に示す第2のタイミングt22)。これは、車両の停車時に車両の重心が前後方向に揺れるためである。こうした現象を「揺り返し」ともいう。そこで、本実施形態では、ブレーキ用ECU55は、揺り返しを検出した場合に、車両が停車したと判定する。
【0063】
ステップS44の判定結果が否定判定である場合、ブレーキ用ECU55は、車両が未だ停車していないと判断し、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の低下を抑制する低下抑制制御の一例として第1弁制御を行う(ステップS45)。具体的には、ブレーキ用ECU55は、リニア電磁弁35a,35bに対する電流値Iを第1電流値Ia(図8参照)に設定し、ホイールシリンダ32a〜32d内のWC圧の減圧を抑制させる。第1電流値Iaは、ホイールシリンダ32a〜32d内のWC圧の減圧を完全に規制するために必要な第2電流値Ib(図8参照)よりも十分に小さい値に予め設定されている。そのため、第1弁制御の実行中においては、運転手によるブレーキ操作によって車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の大きさが調整可能である。したがって、本実施形態では、リニア電磁弁35a,35bが、制動力低下抑制手段として機能する。その後、ブレーキ用ECU55は、その処理を後述するステップS47に移行する。
【0064】
一方、ステップS44の判定結果が肯定判定である場合、ブレーキ用ECU55は、車両が停車したと判断し、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の低下を抑制する低下抑制制御の一例として第2弁制御を行う(ステップS46)。具体的には、ブレーキ用ECU55は、リニア電磁弁35a,35bに対する電流値Iを第2電流値Ib(図8参照)に設定し、ホイールシリンダ32a〜32d内のWC圧を保圧させる。その後、ブレーキ用ECU55は、その処理を次のステップS47に移行する。
【0065】
ステップS47において、ブレーキ用ECU55は、ブレーキスイッチSW1がオフであるか否かを判定する。この判定結果が肯定判定(SW1=オフ)である場合、ブレーキ用ECU55は、運転手によるブレーキ操作が解消されたと判断し、その処理を前述したステップS43に移行する。すなわち、本実施形態では、車体速度VSが極低速基準値KVS以下になった場合において、車輪FR,FL,RR,RLに制動力が付与されなくなったときには、再始動制御が行われる。一方、ステップS47の判定結果が否定判定(SW1=オン)である場合、ブレーキ用ECU55は、運転手によるブレーキ操作が解消されていないため、再始動制御が行われることなく、エンジン再始動処理ルーチンを終了する。
【0066】
すなわち、図8のタイミングチャートに示すように、エンジン12が停止された状態で車両の車体速度VSが極低速基準値KVS以下になると、第1弁制御が開始される(第1のタイミングt21)。この第1のタイミングt21では、リニア電磁弁35a,35bに対する電流値Iが「0(零)」から第1電流値Iaとなるため、該リニア電磁弁35a,35bが作動する。その結果、第1のタイミングt21から第2のタイミングt22までの間で、運転手によるブレーキ操作が解消されたとしても、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力が「0(零)」になることが回避される。
【0067】
また、第1のタイミングt21以降では、MC圧加速度Amcとマスタシリンダ25内のMC圧Pmcとの間での対応関係がなくなる。その結果、MC圧加速度Amcに基づき推定されるMC圧の推定値Pmcsは、マスタシリンダ25内の実際のMC圧Pmcとは徐々に乖離してしまう。そのため、MC圧加速度Amcを用いても、適切なタイミングで再始動制御を開始させることが困難となる。
【0068】
また、車両が停車する第2のタイミングt22では、リニア電磁弁35a,35bに流れる電流値Iが第1電流値Iaから第2電流値Ibに変更される(第2弁制御)。その結果、第2のタイミングt22以降で運転手によるブレーキ操作が解消されたとしても、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力が保持される。その後、ブレーキスイッチSW1がオフになると、運転手によるブレーキ操作が解消されたため、エンジン12が再始動される(第3のタイミングt23)。また、エンジン12の再始動を契機として、リニア電磁弁35a,35bに供給される電流値Iは、徐々に低下される。
【0069】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)マスタシリンダ25内のMC圧Pmcは、運転手によるブレーキペダル15の操作量に応じた圧力となる。そして、加速度センサSE7からの検出信号に基づき演算される車体加速度Gは、運転手がブレーキ操作する場合、車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力に相当する加速度成分を含んだ値となる。つまり、MC圧Pmcと車体加速度Gとには互いに対応関係にある。そこで、本実施形態では、車体加速度Gに基づき、MC圧Pmcに対応するMC圧加速度Amcが取得される。そして、取得されたMC圧加速度Amcの絶対値が勾配加速度Agの絶対値以上である場合には、車両が坂路を走行する状態でエンジン12が停止されてクリープトルクが消滅しても、運転手の意図しない車両の移動が発生しないと判断される。そのため、エンジン12の自動的な停止を許可する停止制御が行われ、エンジン12が停止される。すなわち、運転手の意図しない車両の移動が発生しないと判断できたタイミング以降に、エンジン12が自動的に停止される。したがって、運転手によるブレーキ操作量又はMC圧Pmcを検出するためのセンサを用いなくても、車両のエンジン12を自動的に停止させるタイミングを設定することができる。
【0070】
(2)減速する車両には、車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力、車両で発生するクリープトルク及び走行抵抗に応じた力が付与される。また、加速度センサSE7に基づき演算される車体加速度Gは、制動力、クリープトルク及び走行抵抗に応じた力の合力に相当する加速度である。そこで、本実施形態では、MC圧加速度Amcは、車体加速度Gからクリープ加速度Acを減算し、該減算結果に走行抵抗加速度Arを加算した値である。そのため、クリープ加速度Acと走行抵抗加速度Arとを考慮せずにMC圧加速度Amcを取得する場合と比較して、マスタシリンダ25内のMC圧PmcとMC圧加速度Amcとの対応関係を、より良好なものとすることができる。したがって、このように取得されたMC圧加速度Amcに基づき、エンジン12を自動的に停止させた場合に、運転手の意図しない車両の移動が発生する可能性をより低くすることができる。
【0071】
(3)エンジン12が停止された状態で、マスタシリンダ25内のMC圧Pmcが減圧される場合とは、運転手が車両を発進させるべくブレーキペダル15の操作量を少なくしている可能性がある。そこで、本実施形態では、MC圧Pmcが減圧していると判断できるようなMC圧加速度Amcの変動が検出された場合には、エンジン12の再始動が許可される。したがって、運転手の意志に応じて車両を速やかに発進させることができる。
【0072】
(4)車体速度VSが極低速基準値KVS以下である場合には、マスタシリンダ25内のMC圧Pmcとは無関係に、車体加速度Gが変化する。そのため、MC圧Pmcと車体加速度Gとの間に対応関係がなくなり、MC圧加速度Amcは、MC圧Pmc、即ち車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力に対応した値であると言い難い。そこで、本実施形態では、車体速度VSが極低速基準値KVSを超える場合には、MC圧加速度AmcとMC圧Pmcとの間に対応関係があると判断され、MC圧加速度Amcに基づき再始動制御を行うか否かが判定される。一方、車体速度VSが極低速基準値KVS以下である場合には、MC圧加速度AmcとMC圧Pmcとの間に対応関係がないと判断され、MC圧加速度Amcを用いて再始動制御を行うか否かが判定されない。そのため、運転手の意図に反してエンジン12が再始動されたり、エンジン12の再始動の開始が遅れたりする可能性を低下させることができる。
【0073】
(5)停止制御を契機にエンジン12が停止された場合には、リニア電磁弁35a,35bの作動によって、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の低下が抑制される。そのため、エンジン12を再始動させるべく運転手によるブレーキペダル15の操作が解消された場合、又は操作量が少なくなった場合でも、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の低下が抑制される。そのため、エンジン12の再始動中に、運転手の意図しない車両の移動の発生を抑制できる。
【0074】
(6)また、本実施形態では、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の低下を図る調整弁としてのリニア電磁弁35a,35bは、マスタシリンダ25内のMC圧Pmcとホイールシリンダ32a〜32d内のWC圧との差圧を調整する差圧制御弁である。そのため、リニア電磁弁35a,35bに対する電流値Iの大きさを調整することにより、WC圧、即ち制動力の変動を容易に許容させたり(第1のタイミングt21〜第2のタイミングt22)、WC圧、即ち制動力の変動を容易に規制したり(第2のタイミングt22〜第3のタイミングt23)することができる。
【0075】
(7)また、リニア電磁弁35a,35bは、車両安定性制御装置やアンチロックブレーキ制御などのブレーキアクチュエータに一般的に設けられるものである。そのため、ブレーキアクチュエータに、新たな部品を設けることなく、エンジン12の再始動中に、運転手の意図しない車両の移動の発生を抑制できる。
【0076】
(8)本実施形態では、車体速度VSが極低速基準値KVS未満となったタイミングで第1弁制御が行われる。そのため、車体速度VSが極低速基準値KVS未満となったタイミングから第2弁制御が行われる場合とは異なり、運転手のブレーキペダル15の操作量の変化に応じて、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の大きさを変更することができる。したがって、車両の挙動を運転手の意図に沿ったものとすることができる。
【0077】
(9)また、エンジン12の再始動中でもリニア電磁弁35a,35bに電流が流れている。そのため、エンジン12の再始動に伴う車両の急激な発進を抑制できる。
なお、実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0078】
・実施形態において、第1弁制御を、エンジン12を停止させてから車体速度VSが極低速基準値KVS以下となるまでの間の任意のタイミングで開始してもよい。
また、第1弁制御を、第1のタイミングt21と第2のタイミングt22との間の任意のタイミングで開始してもよい。
【0079】
・実施形態において、第1弁制御では、リニア電磁弁35a,35bに供給する電流値Iを徐々に大きくしてもよいし、電流値Iを段階的に大きくしてもよい。
・実施形態において、ステップS44,S45の各処理を省略してもよい。この場合、車体速度VSが極低速基準値KVS未満となったタイミングで、第2弁制御を行ってもよい。この場合、リニア電磁弁35a,35bの代わりに、増圧弁37a〜37dを制動力低下抑制手段として用いてもよい。
【0080】
・実施形態において、車両が電動パーキングブレーキ装置を備えている場合、第1弁制御及び第2弁制御の代わりに、電動パーキングブレーキ装置を用いて車輪に制動力を付与させてもよい。電動パーキングブレーキ装置を制動力低下抑制手段として作動させる低下抑制制御を実行させた場合であっても、運転手によるブレーキ操作の解消時における車輪に対する制動力の低下を抑制できる。
【0081】
・実施形態において、エンジン12の停止中では、車体速度VSの値の大きさに関係なく、ブレーキ操作が解消されたタイミングで、再始動制御を行わせてもよい。
・クリープトルクや走行抵抗が、車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力よりも十分に小さい力である場合には、クリープ加速度Acや走行抵抗加速度Arを加味することなく、MC圧加速度Amcを演算してもよい。この場合、車体加速度GがMC圧加速度Amcと一致することになる。
【0082】
・実施形態において、ブレーキスイッチSW1がオンになる直前の車体加速度G(以下、「基準加速度」ともいう。)と、現時点の車体加速度Gとの差分を演算し、該差分に基づき流体圧相当値を取得してもよい。これは、ブレーキ操作に伴う車体加速度Gの変動量が、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の変動量に対応していることに着眼している。このように構成しても、上記実施形態の効果(1)と同等の効果を得ることができる。
【0083】
・実施形態において、車体速度VSを、車両に搭載されるナビゲーション装置から取得してもよい。
・実施形態において、アイドルストップ処理ルーチンを、エンジン用ECU17に実行させてもよい。この場合、ブレーキ用ECU55で取得された各種情報(車体速度VS及び車体加速度Gなど)を、エンジン用ECU17に送信させてもよい。
【0084】
また、アイドルストップ処理ルーチンを、アイドルストップ機能に関する制御を専用に行うアイドルストップ用ECUに実行させてもよい。
・実施形態において、ステップS31では、AT用ECUに対して、自動変速機18の変速機構21の図示しないクラッチを解放させる旨の制御指令を送信させてもよい。この場合、自動変速機18がニュートラル状態となるため、駆動輪にクリープトルクが伝達されなくなる。また、ステップS43では、AT用ECUに対して、ステップS31の処理によって解放状態とされたクラッチを係合状態にさせる旨の制御指令を送信させてもよい。
【0085】
・実施形態において、マスタシリンダ25からホイールシリンダ32a〜32d内に供給される流体は、液体に限らず、窒素などの気体であってもよい。
次に、上記実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0086】
(イ)前記流体圧相当値取得手段(55)は、運転手によるブレーキ操作が開始される前に前記加速度取得手段(55、S10)によって取得された前記前後方向における加速度(G)を基準とした該加速度の変化量に基づき、流体圧相当値(Amc)を取得することを特徴とする車両の制御装置。
【符号の説明】
【0087】
12…エンジン、25…マスタシリンダ、32a〜32d…ホイールシリンダ、35a,35b…調整弁、制動力低下抑制手段としてのリニア電磁弁、37a〜37d…調整弁、制動力低下抑制手段としての増圧弁、55…制御手段、加速度取得手段、流体圧相当値取得手段、勾配取得手段、車体速度取得手段としてのブレーキ用ECU、Ac…クリープ相当値としてのクリープ加速度、Ag…勾配相当値としての勾配加速度、Amc…流体圧相当値としてのMC圧加速度、Ar…走行抵抗相当値としての走行抵抗加速度、FR,FL,RR,RL…車輪、G…車体加速度、KVS…速度基準値としての極低速基準値、SE7…加速度センサ、VS…車体速度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転手によるブレーキ操作に応じた流体圧を発生するマスタシリンダ(25)と、該マスタシリンダ(25)に流路を介して連通され且つ内部に発生した流体圧に応じた制動力を車輪(FR,FL,RR,RL)に付与するホイールシリンダ(32a,32b,32c,32d)とを備えた車両の制御装置であって、
車両に設けられた加速度センサ(SE7)から出力される信号に基づき車両の前後方向における加速度(G)を取得する加速度取得手段(55、S10)と、
取得された前記前後方向における加速度(G)に基づき、前記マスタシリンダ(25)内の流体圧に対応する流体圧相当値(Amc)を取得する流体圧相当値取得手段(55、S13)と、
路面の勾配に対応する路面勾配相当値(Ag)を取得する勾配取得手段(55、S14)と、
車両のエンジン(12)を自動的に停止させるための停止制御及び前記エンジン(12)を自動的に再始動させるための再始動制御を行う制御手段(55)と、を備え、
前記制御手段(55、S30,S31)は、前記流体圧相当値取得手段(55、S13)によって取得された流体圧相当値(Amc)が前記勾配取得手段(55、S14)によって取得された路面勾配相当値(Ag)よりも大きい場合に、前記停止制御を行うことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記流体圧相当値取得手段(55、S13)は、前記加速度取得手段(55、S10)によって取得された前記前後方向における加速度(G)と、車両で発生されるクリープトルクに相当するクリープ相当値(Ac)と、車両に加わる走行抵抗に相当する走行抵抗相当値(Ar)とに基づき、流体圧相当値(Amc)を取得することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段(55、S41,S42,S43)は、前記エンジン(12)の停止中に前記流体圧相当値取得手段(55、S13)によって取得された流体圧相当値(Amc)に基づき、前記マスタシリンダ(25)内の流体圧が減圧中であると判定した場合に、前記再始動制御を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
車両の車体速度(VS)を取得する車体速度取得手段(55、S11)をさらに備え、
前記制御手段(55、S40,S41,S42,S43)は、
前記エンジン(12)の停止中に前記車体速度取得手段(55、S11)によって取得された車体速度(VS)が、極低速領域であるか否かを判断するために設定された速度基準値(KVS)を超える場合において、前記流体圧相当値取得手段(55、S13)によって取得された流体圧相当値(Amc)に基づき、前記マスタシリンダ(25)内の流体圧が減圧中であると判定したときには、前記再始動制御を行う一方、
前記エンジン(12)の停止中に前記車体速度取得手段(55、S11)によって取得された車体速度(VS)が前記速度基準値(KVS)以下である場合には、前記流体圧相当値取得手段(55、S13)によって取得された流体圧相当値(Amc)に基づき前記再始動制御を行うか否かを判定しないことを特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段(55、S44,S45,S46)は、前記停止制御を契機に前記エンジン(12)が停止された場合に、車両の走行中から、該車両に設けられた制動力低下抑制手段(35a,35b,37a,37b,37c,37d)を作動させて車輪(FR,FL,RR,RL)に対する制動力の低下を抑制する低下抑制制御を開始することを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記制動力低下抑制手段は、前記マスタシリンダ(25)と前記ホイールシリンダ(32a,32b,32c,32d)とを連通させる流路に配置され、且つ該ホイールシリンダ(32a,32b,32c,32d)内の流体圧を調整すべく作動する調整弁(35a,35b,37a,37b,37c,37d)を有し、
前記制御手段(55、S44,S45,S46)は、
前記停止制御を契機に前記エンジン(12)が停止された場合に、
車両の走行中から、前記調整弁(35a,35b,37a,37b,37c,37d)を作動させる前記低下抑制制御を開始することを特徴とする請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
車両のエンジン(12)を自動的に停止させる停止ステップ(S31)と、前記エンジン(12)を自動的に再始動させる再始動ステップ(S43)と、を有する車両の制御方法であって、
車両に設けられた加速度センサ(SE7)からの信号に基づき、車両の前後方向における加速度(G)を取得させる加速度取得ステップ(S10)と、
取得した前記前後方向における加速度(G)に基づき、車両に付与される制動力に対応する制動力相当値(Amc)を取得させる制動力相当値取得ステップ(S13)と、
車両の位置する路面の勾配に対応する路面勾配相当値(Ag)を取得させる勾配取得ステップ(S14)と、さらに有し、
前記制動力相当値取得ステップ(S13)で取得した制動力相当値(Amc)が前記勾配取得ステップ(S14)で取得した路面勾配相当値(Ag)以上である場合に、前記停止ステップ(S31)を行うことを特徴とする車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−11934(P2012−11934A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151882(P2010−151882)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】