説明

車両の制御装置

【課題】最適な変速段への変速操作を車両状態に応じて適切に運転者に指示する。
【解決手段】フューエル残量QFUELが少ないと判定された場合には、要求変速段GREQとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段が車両10の走行状態に基づいて選択されるので、フューエル残量QFUELが少ないときには動力性能よりも燃費性能が優先される変速段への変速操作が運転者に指示され、その指示された変速段への変速操作が運転者により為されることにより、そのフューエル残量QFUELに応じた航続可能距離Dを伸ばすことが可能になる。加えて、フューエル残量QFUELが多いときには例えば動力性能と燃費性能とが両立させられる変速段への変速操作が運転者に指示され、その指示された変速段への変速操作が運転者により為されることにより、燃費を悪化させることなく動力性能を適切に確保することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機の最適な変速段或いは変速レンジへの変速操作を運転者に指示する変速指示装置を備える車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転者による変速操作が行われることで変速段或いは変速レンジ(以下、特に区別しない場合には変速段には変速レンジの概念を含むものとする)が切り換えられる変速機例えば自動変速機や手動変速モードを有する自動変速機等と、車両の走行状態に基づいて選択される最適な変速段への変速操作を運転者に指示する変速指示装置とを備える車両が良く知られている。例えば、特許文献1に記載されたものがそれである。この特許文献1には、要求されたトルクを生成することができる内燃機関の作動モードを考慮してトランスミッションのシフト情報をドライバに与えるシフト情報生成方法およびシフト情報ディスプレイが記載されている。
【0003】
また、効率の良い状態で車両を運転することに関し、例えば特許文献2には、タンク液位及び/または残余走行距離を表す値がしきい値を下回っている場合にはタンク低位ランプを点滅させ、駆動ユニットをできるだけ最適な効率になるように制御する駆動ユニットの制御方法および装置が記載されている。また、特許文献3には、バッテリの残容量が少なくなると運転者にシフトダウンを推奨するシフトダウン指示ランプを点灯し、それに応じて運転者がシフトダウンを実行することにより車両駆動力のエンジン側の負担を増加させてモータの負担を減少させる制御が行われるハイブリッド車両のシフト位置提示装置が記載されている。また、特許文献4には、現在のギヤの燃料消費量が目標ギヤの燃料消費量よりも大きい場合には、目標ギヤへの変速を指示する変速機の変速指示装置が記載されている。また、特許文献5には、エコ走行モードを実現するための変速方向を示す表示ランプと、スポーツ走行モードを実現するための変速方向を示す表示ランプとの両方を備える車両用手動変速操作指示装置が記載されている。また、特許文献6には、燃料タンクの残量に基づいて算出される到達可能距離と、燃料供給施設までの区間距離との差(すなわち走行可能距離の余裕)が所定値以下になると、駆動力特性を高燃費モードに切り換える例えば通常よりもハイギヤな変速段へ切り換える車両制御装置が記載されている。
【0004】
ここで、一般に、車両の走行状態に基づいて最適な変速段を選択する為の所謂変速線図は、例えばNO(窒素酸化物)等の排出ガスの排出量を規制する為の所謂排ガス規制における基準値を満足した上で、燃料消費(二酸化炭素(CO)排出量と同意)性能と走行性能(動力性能)とを両立させる変速段にて運転可能なように、言い換えれば車両の性能を充分引き出しつつ燃費の良い状態で運転可能なように、予め設定されている。従って、前記変速指示装置により指示された変速段を用いて走行することにより、すなわち運転者が変速指示装置の指示に従って変速操作を行うことにより、車両の性能を充分引き出しつつ燃費の良い状態で車両を運転することができる。つまり、上記変速線に従って変速が実行される自動変速機と同様の走行パターン(変速パターン)にて車両の走行が可能となり、燃費を向上することが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−19912号公報
【特許文献2】特開2000−221070号公報
【特許文献3】特開2001−27321号公報
【特許文献4】特開2008−215507号公報
【特許文献5】特開2007−283907号公報
【特許文献6】特開平10−9006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記変速線図は、例えば所定の排ガス基準値を下回ることを前提として、例えば動力性能や振動・騒音(NV)性能を犠牲にすることのない範囲で最良の燃費となる変速段が選択されるように設定されているので、動力性能等を犠牲にすることが許容される場合には必ずしも最良の燃費となる変速段とはならない可能性がある。また、前記変速指示装置では上記変速線図に基づいて一律に変速指示が為されるので、動力性能等を犠牲にしてでも燃費向上を最優先にした変速段を運転者が選択したい車両状態に対応できない可能性がある。このような課題は未公知であり、動力性能等を犠牲にしてでも燃費向上を最優先にした変速段への変速操作を運転者に指示することについて、未だ提案されていない。尚、COとNOとは、例えばエンジン作動域におけるそれぞれの良い領域が異なるためにトレードオフの関係となる場合があることから、無条件に最良の燃費となる変速段を設定するとNO等において所定の排ガス基準値を満足しなくなる可能性があり、あくまでも排ガス基準を満足するうちで最良の燃費となる変速段が設定されることは言うまでもない。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、最適な変速段或いは変速レンジへの変速操作を車両状態に応じて適切に運転者に指示することができる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) 運転者による変速操作が行われることで変速段或いは変速レンジが切り換えられる変速機と、車両の走行状態に基づいて選択される最適な変速段或いは変速レンジへの変速操作を運転者に指示する変速指示装置とを備える車両の制御装置であって、(b) 燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定された場合には、前記最適な変速段或いは変速レンジとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジを前記車両の走行状態に基づいて選択することにある。
【発明の効果】
【0009】
このようにすれば、燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定された場合には、前記最適な変速段或いは変速レンジとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジが前記車両の走行状態に基づいて選択されるので、燃料タンク内の残燃料の量が少ないときには動力性能よりも燃費性能が優先される変速段或いは変速レンジへの変速操作が運転者に指示され、その指示された変速段或いは変速レンジへの変速操作が運転者により為されることにより、その残燃料の量に応じた航続可能距離(走行可能距離)を伸ばすことが可能になる。加えて、その残燃料の量が多いときには例えば動力性能と燃費性能とが両立させられる変速段或いは変速レンジへの変速操作が運転者に指示され、その指示された変速段或いは変速レンジへの変速操作が運転者により為されることにより、燃費を悪化させることなく動力性能を適切に確保することが可能になる。このように、最適な変速段或いは変速レンジへの変速操作を車両状態例えば燃料タンク内の残燃料の量に応じて適切に運転者に指示することができる。
【0010】
尚、上記特許文献6に記載されているように、走行可能距離の余裕が小さくなったときに通常よりもハイギヤな変速段へ切り換えることが提案されているが、飽くまで通常に比較して高燃費となるだけであり、燃費向上を最優先にした変速段へ切り換えられるわけではない。すなわち、この特許文献6に記載されているような手動変速モードを有しない自動変速機にあっては、動力性能やNV性能の低下が著しい変速段へ自動で変速されると商品性が低下する為、動力性能等を犠牲にしてでも燃費向上を最優先にした変速段を選択することができない。それに対して、本発明では、選択された最適な変速段へ自動で変速するものではなく単に変速指示を行うものである為、最終的には運転者の判断でその変速段への変速操作が行われることから、動力性能等を犠牲にしてでも燃費向上を最優先にした変速段を選択することができる。
【0011】
ここで、好適には、動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジとは、前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定されない場合に選択される前記最適な変速段或いは変速レンジと比較して高車速側に予め設定された変速段或いは変速レンジである。このようにすれば、燃料タンク内の残燃料の量が少ないときには、前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定されない場合よりも高車速側の変速段或いは変速レンジへの変速操作が運転者に指示され易くなり、その指示された変速段或いは変速レンジへの変速操作が運転者により為されることにより、その残燃料の量に応じた航続可能距離(走行可能距離)を伸ばすことが確実に可能になる。
【0012】
また、好適には、前記燃料タンク内の残燃料の量が所定量以下の場合に、その残燃料の量が少ないと判定されることにある。このようにすれば、残燃料の量が少ないことが適切に判定されて、前記最適な変速段或いは変速レンジとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジが前記車両の走行状態に基づいて適切に選択される。
【0013】
また、好適には、前記燃料タンク内の残燃料の量が所定量以下でないときに、その残燃料の量に基づいて算出される航続可能距離が所定距離以下の場合には、その残燃料の量が少ないと判定されることにある。このようにすれば、残燃料の量が少ないことが一層適切に判定される。
【0014】
また、好適には、前記燃料タンク内の残燃料の量に基づいて算出される航続可能距離が所定距離以下の場合に、その残燃料の量が少ないと判定されることにある。このようにすれば、残燃料の量が少ないことが適切に判定されて、前記最適な変速段或いは変速レンジとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジが前記車両の走行状態に基づいて適切に選択される。
【0015】
また、好適には、前記航続可能距離が所定距離以下でないときか或いはその航続可能距離が算出されないときに、前記燃料タンク内の残燃料の量が所定量以下の場合には、その残燃料の量が少ないと判定されることにある。このようにすれば、残燃料の量が少ないことが一層適切に判定される。
【0016】
また、好適には、前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定された場合には、その残燃料の量が少ないことを運転者に知らせることにある。このようにすれば、残燃料の量が少ないことが運転者に確実に知らされ、現在の変速操作の指示内容が動力性能よりも燃費性能が優先される変速段或いは変速レンジへの変速操作とする指示であることが運転者に適切に知らされる。
【0017】
また、好適には、前記変速指示装置は、前記変速機の実際の変速段或いは変速レンジと前記最適な変速段或いは変速レンジとが異なっている場合に、その実際の変速段或いは変速レンジをその最適な変速段或いは変速レンジとする為の変速操作の指示を表示することにある。このようにすれば、車両の走行状態に基づいて選択される最適な変速段或いは変速レンジへの変速操作が運転者に適切に指示される。
【0018】
また、好適には、前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定された際に、前記最適な変速段或いは変速レンジとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジを前記車両の走行状態に基づいて表示する燃費優先表示制御を実行しないと判定された場合には、前記最適な変速段或いは変速レンジとして前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定されない場合の変速段或いは変速レンジを選択することにある。このようにすれば、動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジと、前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定されない場合の通常の変速段或いは変速レンジとが適切に指示される。
【0019】
また、好適には、前記燃費優先表示制御を実行するか否かを選択する為に操作されるキャンセルスイッチを備え、前記キャンセルスイッチが操作される場合に、前記燃費優先表示制御を実行しないと判定されることにある。このようにすれば、例えば運転者の志向に合わせて、動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジと、前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定されない場合の通常の変速段或いは変速レンジとが適切に指示される。
【0020】
また、好適には、前記変速操作の指示に対して運転者の実際の変速操作が追従していないと判定される場合に、前記燃費優先表示制御を実行しないと判定されることにある。このようにすれば、動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジと、前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定されない場合の通常の変速段或いは変速レンジとが適切に指示される。
【0021】
また、好適には、前記車両は、駆動力源の動力を前記変速機を介して駆動輪へ伝達するものである。また、前記変速機は、例えば運転者による変速操作により変速が実行される手動変速機、公知の手動変速モードを有して運転者による変速操作により変速段或いは変速レンジを切り換えることが可能な自動変速機などである。また、上記手動変速機は、例えば常時噛み合う複数対の変速ギヤを2軸間に備えてそれら複数対の変速ギヤのいずれかを同期装置によって択一的に動力伝達状態とする同期噛合型平行2軸式手動変速機などにより構成される。また、上記自動変速機は、例えば複数の変速段を有する公知の遊星歯車式自動変速機、上記同期噛合型平行2軸式変速機ではあるが油圧アクチュエータにより駆動される同期装置によって変速段が自動的に切換られることが可能な同期噛合型平行2軸式自動変速機、同期噛合型平行2軸式自動変速機であるが入力軸を2系統備えて各系統の入力軸にクラッチがそれぞれつながり更にそれぞれ偶数段と奇数段へと繋がっている型式の変速機である所謂DCT(Dual Clutch Transmission)、伝動ベルトが一対の可変プーリに巻き掛けられ変速比が無段階に連続的に変化させられる所謂ベルト式無段変速機、共通の軸心まわりに回転させられる一対のコーンとその軸心と交差する回転中心回転可能な複数個のローラがそれら一対のコーンの間で挟圧されそのローラの回転中心と軸心との交差角が変化させられることによって変速比が可変とされた所謂トラクション型無段変速機、エンジンからの動力を第1電動機及び出力軸へ分配する例えば遊星歯車装置で構成される差動機構とその差動機構の出力軸に設けられた第2電動機とを備えてその差動機構の差動作用によりエンジンからの動力の主部を駆動輪側へ機械的に伝達しエンジンからの動力の残部を第1電動機から第2電動機への電気パスを用いて電気的に伝達することにより電気的に変速比が変更される電気式無段変速機として機能する自動変速機、或いはエンジン軸や出力軸などに動力伝達可能に電動機が備えられる所謂パラレル式のハイブリッド車両に搭載される自動変速機などにより構成される。また、前記駆動力源としては、例えば燃料の燃焼によって動力を発生する内燃機関等のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等が好適に用いられるが、電動機等の他の原動機を単独で或いはエンジンと組み合わせて採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用される車両を構成する動力伝達機構、及びその車両に設けられた制御系統の要部の一例を説明する図である。
【図2】変速指示器を含む表示器の一例を示す図である。
【図3】電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図4】要求変速段を算出する際に用いられる変速線図の一例を示す図である。
【図5】実変速段を算出する際に用いられる実変速段算出マップの一例を示す図である。
【図6】図4の変速線図と比較して、相対的に高車速側の要求変速段が選択されるように予め設定された変速線図の一例を示す図である。
【図7】電子制御装置の制御作動の要部すなわち最適な変速段への変速操作を車両状態に応じて適切に運転者に指示する為の制御作動を説明するフローチャートである。
【図8】図2等に示す変速指示器とは別の変速指示器を例示する図である。
【図9】手動変速モードを有する自動変速機に用いられるシフト操作装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明が適用される車両10を構成する動力伝達機構12、及びその車両10に設けられた制御系統の要部を説明する図である。図1において、動力伝達機構12は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両用のものであり、走行用の動力源としてのエンジン14と、エンジン14と手動変速機18との間の動力伝達を遮断するクラッチ16と、公知のシフトレバー68を介して運転者による変速操作が行われることで変速段が切り換えられる手動変速機18と、回転差を許容しつつ左右一対の駆動軸22を回転駆動する差動歯車装置20と、一対の駆動軸22と、一対の駆動輪(例えば前輪)24とを備えている。エンジン14で発生させられた動力は、クラッチ16、手動変速機18、差動歯車装置20、及び一対の駆動軸22等をそれぞれ介して、一対の駆動輪24へそれぞれ伝達される。
【0025】
変速指示器26は、運転席の近傍に設けられ、運転者に対するシフトレバー68による変速操作の指示を表示するものである。図2は、この変速指示器26を含む表示器28を示す図である。図2に示すように、表示器28は、変速指示器26の他に、車速V[km/h]を表示する速度計(スピードメータ)30、エンジン回転速度N[rpm]を表示する回転速度計(タコメータ)32、燃料メータ34、及び水温メータ36等を備えている。
【0026】
変速指示器26は、例えば運転者に対してアップシフトを指示する為のアップシフト指示灯38と、運転者に対してダウンシフトを指示する為のダウンシフト指示灯40とを備えている。アップシフト指示灯38は、例えば運転者から見て上方向すなわち図2の紙面の上方向に一角が向けられた三角形状をしており、後述の電子制御装置50からのアップシフト指示信号SUPの供給に応じて点灯させられる。また、ダウンシフト指示灯40は、例えば運転者から見て下方向すなわち図2の紙面の下方向に一角が向けられた三角形状をしており、電子制御装置50からのダウンシフト指示信号SDOWNの供給に応じて点灯させられる。また、アップシフト指示灯38及びダウンシフト指示灯40は、例えば電流を流すと発光する半導体素子すなわち発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)により表示される。尚、アップシフト指示灯38及びダウンシフト指示灯40が両方とも消灯している場合は、運転者に対して現在の変速段の維持を指示していることを意味する。
【0027】
燃料メータ34は、例えば運転者に対して燃料タンク64内の残燃料FUELの量(フューエル残量)QFUELを表示する為の指針42と、フューエル残量QFUELが少ないことを運転者に知らせる為のすなわち運転者に対してフューエル残量QFUELが少ないことを表示する為のフューエル残量ウォーニングランプ44とを備えている。指針42は、例えば電子制御装置50からの駆動信号の供給に応じて回転角度や方向や速度が制御されることで燃料メータ34内の目盛りに対する位置が変更させられてフューエル残量QFUELを表示する。また、フューエル残量ウォーニングランプ44は、例えば燃料供給スタンドを示すような形状をしており、電子制御装置50からの少残量警告信号SF−Lの供給に応じて点灯させられる。また、フューエル残量ウォーニングランプ44は、例えばLEDにより黄色で表示される。
【0028】
図1に戻って、車両10には、例えば手動変速機18と、変速指示器26を有して車両10の走行状態に基づいて選択される最適な変速段へのシフトレバー68を介した変速操作を運転者に指示する為の変速指示装置(GSI;Gear Shift Indicator)52とを備える車両の制御装置を含む電子制御装置50が備えられている。この電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置50は、エンジン14の出力制御や変速指示器26のアップシフト指示灯38及びダウンシフト指示灯40の点灯を制御する変速指示制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン14の出力制御用の制御部や変速指示器26の変速指示制御用の変速指示制御部54等に分けて構成される。
【0029】
変速指示装置52は、例えば変速指示器26及び変速指示制御部54を備えており、手動変速機18の入力軸回転速度NINに対応するエンジン回転速度Nと、手動変速機18の出力軸回転速度NOUTに対応する車速Vとに基づいて実際の変速段(ギヤ段)すなわち実変速段GREALを算出すると共に、車速V及びアクセル開度Accに基づいて要求変速段(目標変速段)GREQを算出し、実変速段GREALを要求変速段GREQとする為の変速操作の指示を表示するものである。
【0030】
図1に示すように、電子制御装置50には、出力軸回転速度NOUTに対応する車速Vを検出する車速センサ56、入力軸回転速度NINに対応するエンジン回転速度Nを検出するエンジン回転速度センサ58、アクセルペダル60の操作量すなわちアクセル開度Acc[%]を検出する為のアクセル開度センサ62、燃料タンク64内のフューエル残量QFUELを検出する為のフューエルセンダーゲージ66等から、車速V(出力軸回転速度NOUT)、エンジン回転速度N(入力軸回転速度NIN)、アクセル開度Acc、フューエル残量QFUEL等を表す信号が供給される。
【0031】
また、電子制御装置50からは、アップシフト指示灯38を点灯する為のアップシフト指示信号SUP、ダウンシフト指示灯40を点灯する為のダウンシフト指示信号SDOWN、フューエル残量ウォーニングランプ44を点灯する為の少残量警告信号SF−L等が出力される。
【0032】
図3は、電子制御装置50による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図3において、要求変速段算出部すなわち要求変速段算出手段70は、例えば図4に示すような車速軸とアクセル開度軸との二次元座標内において設定された複数本の変速線から構成される予め記憶された関係(変速線図、変速マップ)から、実際の車速V及びアクセル開度Accに基づいて手動変速機18が変速すべき最適な変速段としての要求変速段GREQを算出する。上記変速線図は、車両10の性能を充分引き出しつつ燃費の良い状態で運転可能なようにすなわち燃費性能と走行性能(動力性能)とを両立させる変速段にて運転可能なように、予め実験的に求められて設定されたものである。尚、要求変速段GREQの算出は、スロットル弁開度や吸入空気量や路面勾配などに基づいて行われる等、種々の態様が可能である。
【0033】
図4において、破線で示す減速側変速線(ダウンシフト線)は、減速側への変速タイミングを規定するものであり、各変速段間毎に定められている。すなわち、実際の車速V及びアクセル開度Accに基づいて変速線図上で特定される車両10の走行状態を示す位置が、減速側変速線の右側の領域から左側の領域へ移動すると、要求変速段算出手段70は、減速側へ変速すべきであると判定し、その減速側変速線に対応する変速段を要求変速段GREQとする。具体的には、実際の車速V及びアクセル開度Accに基づいて変速線図上で特定される位置が、例えば図4のうちの2→1変速線を右から左へ横切ると、要求変速段算出手段70は、第2変速段から第1変速段へ変速すべきであると判定し、第1変速段を要求変速段GREQとする。同様に、上記変速線図上で特定される位置が、3→2変速線、4→3変速線、又は5→4変速線を右から左へ横切ると、要求変速段算出手段70は、第2変速段、第3変速段、又は第4変速段を要求変速段GREQとする。
【0034】
また、図4において、実線で示す増速側変速線(アップシフト線)は、増速側への変速タイミングを規定するものであり、各変速段間毎に定められている。すなわち、実際の車速V及びアクセル開度Accに基づいて変速線図上で特定される車両10の走行状態を示す位置が、増速側変速線の左側の領域から右側の領域へ移動すると、要求変速段算出手段70は、増速側へ変速すべきであると判定し、その増速側変速線に対応する変速段を要求変速段GREQとする。具体的には、実際の車速V及びアクセル開度Accに基づいて変速線図上で特定される位置が、例えば図4のうちの1→2変速線を左から右へ横切ると、要求変速段算出手段70は、第1変速段から第2変速段へ変速すべきであると判定し、第2変速段を要求変速段GREQとする。同様に、上記変速線図上で特定される位置が、2→3変速線、3→4変速線、又は4→5変速線を左から右へ横切ると、要求変速段算出手段70は、第3変速段、第4変速段、又は第5変速段を要求変速段GREQとする。
【0035】
図3に戻って、実変速段算出部すなわち実変速段算出手段72は、例えば図5に示すようなエンジン回転速度軸とNVR軸との二次元座標内において設定された複数の判定領域から構成される予め実験的に求められて記憶された関係、すなわち実変速段算出マップから、実際のエンジン回転速度N及び車速Vに基づいて手動変速機18の実際の変速段すなわち実変速段GREALを算出する。図5において、横軸はエンジン回転速度Nを示しており、縦軸はエンジン回転速度Nを車速Vで除した値すなわちNVR値を示している。尚、エンジン回転速度N及び車速Vは、それぞれ手動変速機18の入力軸回転速度NIN及び出力軸回転速度NOUTに対応しており、実変速段算出手段72は、入力軸回転速度NIN及び出力軸回転速度NOUTをパラメータとして予め記憶された関係(マップ)から、実際の手動変速機18の入力軸回転速度NIN及び出力軸回転速度NOUTに基づいて実変速段GREALを算出する等、種々の態様が可能である。
【0036】
図5に示す実変速段算出マップにおいて、前記複数の判定領域は、各変速段毎に定められている。実際のエンジン回転速度N及び車速Vに基づいて実変速段算出マップ上で特定される位置が、例えば上記複数の判定領域のうちの第1変速段判定領域内にあれば、実変速段算出手段72は、手動変速機18の実変速段GREALが第1変速段であると判定し、第1変速段を実変速段GREALとする。同様に、上記実変速段算出マップ上で特定される位置が、第2変速段判定領域内、第3変速段判定領域内、第4変速段判定領域内、又は第5変速段判定領域内にあれば、実変速段算出手段72は、第2変速段、第3変速段、第4変速段、又は第5変速段を実変速段GREALとする。尚、図5の実変速段算出マップでは、第1変速段判定領域及び第2変速段判定領域を示しており、第3変速段判定領域乃至第5変速段判定領域の図示が省略されている。
【0037】
図3に戻って、変速指示判定部すなわち変速指示判定手段74は、例えば要求変速段算出手段70にて算出された要求変速段GREQ及び実変速段算出手段72にて算出された実変速段GREALに基づいて、予め定められた関係から、変速指示器26に対して所定信号の出力を行うか否かを判定する。上記所定信号としては、アップシフト指示灯38を点灯する為のアップシフト指示信号SUP又はダウンシフト指示灯40を点灯する為のダウンシフト指示信号SDOWNが相当する。具体的には、変速指示判定手段74は、実変速段GREALが要求変速段GREQに比較して小さい場合、変速指示器26に対してアップシフト指示信号SUPを出力する。また、変速指示判定手段74は、実変速段GREALが要求変速段GREQに比較して大きい場合、変速指示器26に対してダウンシフト指示信号SDOWNを出力する。つまり、変速指示装置52は、実変速段GREALと要求変速段GREQとが異なっている場合に、実変速段GREALを要求変速段GREQとする為の変速操作の指示を表示するのである。
【0038】
尚、変速指示判定手段74は、実変速段GREALが要求変速段GREQと同じである場合、変速指示器26に対してアップシフト指示信号SUP及びダウンシフト指示信号SDOWNを出力しない。これにより、アップシフト指示灯38及びダウンシフト指示灯40が両方とも消灯させられる。また、変速指示判定手段74は、実変速段GREAL又は要求変速段GREQの少なくとも一方が不定である場合、変速指示器26に対してアップシフト指示信号SUP及びダウンシフト指示信号SDOWNを出力しない。これにより、実変速段GREAL又は要求変速段GREQの少なくとも一方が不定である間は、変速指示器26による指示出力が一時的に停止させられる。
【0039】
ところで、図4に示すような変速線図は、上述したように車両10の性能を充分引き出しつつ燃費の良い状態で運転可能なように予め設定されたものである。従って、変速指示装置52では、例えば動力性能や振動・騒音(NV)性能を犠牲にすることのない範囲で最良の燃費となる変速段が指示されることになる。その為、動力性能等を犠牲にすることが許容される場合には必ずしも最良の燃費となる変速段とはならない可能性がある。また、変速指示装置52では、上記変速線図に基づいて一律に変速指示が為されるので、例えばフューエル残量QFUELが少ない車両状態のときに動力性能等を犠牲にしてでも燃費向上を最優先にした変速段を運転者に指示することができない。尚、本実施例では、運転者が変速指示器26による変速操作の指示に従わず、動力性能等を犠牲にしながら燃費をより向上させる運転をすることは可能である。しかしながら、このような場合には、運転者の意志に任せた運転(変速操作)となる為、自らの変速操作で本当に燃費がより向上するのか等の不安感などを抱く可能性がある。
【0040】
そこで、本実施例では、最適な変速段への変速操作をフューエル残量QFUELに応じて適切に運転者に指示する為に、フューエル残量QFUELが少ないと判定された場合には、要求変速段GREQとして動力性能よりも燃費性能が優先されるよう(例えば燃費性能が最優先されるように)に予め設定された変速段を車両10の走行状態に基づいて選択する。上記動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段とは、例えばフューエル残量QFUELが少ないと判定されない通常時の場合に図4に示すような変速線図(通常時変速線図)に基づいて選択される要求変速段GREQと比較して、例えば図6に示すような相対的に高車速側(ハイギヤ側)の変速段が選択されるように予め設定された変速線図(少残量時変速線図)に基づいて選択される相対的に高車速側の要求変速段GREQである。
【0041】
図6において、実線で示すアップシフト線は、上記通常時に用いられる例えば図4に示す通常時アップシフト線である。また、一点鎖線で示すアップシフト線は、フューエル残量QFUELが少ないと判定された場合に用いられる少残量時アップシフト線である。図6に示すように、少残量時アップシフト線(一点鎖線)は、通常時アップシフト線(実線)と比較して、例えば車速Vがより低い領域にて且つアクセル開度Accがより高い領域にて高車速側(ハイギヤ側)の変速段が選択されるようにすなわちより早くアップシフトが判定されるように、あたかも通常時アップシフト線を左側(低車速側)へずらした位置に通常時アップシフト線とは別に予め設定されている。尚、図6の変速線図では、アップシフト線のみを示しており、ダウンシフト線の図示が省略されている。このダウンシフト線において、少残量時ダウンシフト線は、通常時ダウンシフト線と比較して、例えば車速Vがより低い領域まで且つアクセル開度Accがより高い領域まで高車速側(ハイギヤ側)の変速段が選択されるようにすなわちより遅くダウンシフトが判定されるように、あたかも通常時ダウンシフト線を左側(低車速側)へずらした位置に通常時ダウンシフト線とは別に予め設定されている。
【0042】
より具体的には、図3に戻って、航続可能距離算出部すなわち航続可能距離算出手段76は、例えばフューエル残量QFUELに基づいて航続可能距離Dすなわち現在のフューエル残量QFUELにて走行できる走行可能距離を算出する。具体的には、航続可能距離算出手段76は、直近の燃費F[km/L]を逐次算出する。例えば、航続可能距離算出手段76は、エンジン14が起動している過去数分〜数時間分の走行距離の累積と燃料噴射量の累積とから、直近の燃費Fを逐次算出し、その算出結果を直近の走行履歴すなわち燃費履歴として逐次記憶する。そして、航続可能距離算出手段76は、その直近の燃費F[km/L]とフューエル残量QFUEL[L]とに基づいて、航続可能距離D(=F×QFUEL)を逐次算出する。
【0043】
少残量判定部すなわち少残量判定手段78は、例えばフューエル残量QFUELが少ないか否かを判定する。具体的には、少残量判定手段78は、判定航続可能距離算出手段76により算出された航続可能距離Dが所定距離D’以下か否かに基づいて、フューエル残量QFUELが少ないか否かを判定する。この所定距離D’は、例えばフューエル残量QFUELが少ないことを航続可能距離Dから判断する為の予め設定された判定閾値であって、例えば100[km/L]前後に設定される。また、少残量判定手段78は、フューエル残量QFUELが所定量Q’以下か否かに基づいて、フューエル残量QFUELが少ないか否かを判定する。この所定量Q’は、例えばフューエル残量QFUELが少ないことをそのフューエル残量QFUELの絶対値から直接的に判断する為の予め設定された判定閾値であって、例えば10[L]前後に設定される。また、少残量判定手段78は、フューエル残量QFUELが所定量Q’以下でないと判定したときに、航続可能距離Dが所定距離D’以下か否かに基づいてフューエル残量QFUELが少ないか否かを判定するようにしても良い。また、少残量判定手段78は、航続可能距離Dが所定距離D’以下でないと判定したときに、フューエル残量QFUELが所定量Q’以下か否かに基づいてフューエル残量QFUELが少ないか否かを判定するようにしても良い。
【0044】
距離算出可否判定部すなわち距離算出可否判定手段80は、例えば航続可能距離算出手段76による航続可能距離Dの算出が可能か否かを、例えば直近の燃費Fすなわち直近の燃費履歴が記憶されているか否かに基づいて判定する。例えば、車両走行開始後間もない新車や電子制御装置50に対するバッテリ電源の再接続後間もない車両10などでは、直近の燃費履歴が記憶されていないので、距離算出可否判定手段80により直近の燃費履歴が記憶されていないと判定される。
【0045】
少残量判定手段78は、距離算出可否判定手段80により航続可能距離算出手段76による航続可能距離Dの算出が可能でないと判定された場合には、フューエル残量QFUELが所定量Q’以下か否かに基づいてフューエル残量QFUELが少ないか否かを判定する。
【0046】
警告制御部すなわち警告制御手段82は、例えば少残量判定手段78によりフューエル残量QFUELが少ないと判定された場合には、フューエル残量ウォーニングランプ44に対して少残量警告信号SF−Lを出力し、そのフューエル残量ウォーニングランプ44を点灯させることによりフューエル残量QFUELが少ないことを運転者に知らせる。
【0047】
変速操作指示変更部すなわち変速操作指示変更手段84は、例えば少残量判定手段78によりフューエル残量QFUELが少ないと判定されない場合には、例えば図4に示すような通常時変速線図を用いて要求変速段GREQを算出する指令を要求変速段算出手段70へ出力する。一方で、変速操作指示変更手段84は、少残量判定手段78によりフューエル残量QFUELが少ないと判定された場合には、例えば図6の一点鎖線に示すような少残量時変速線図を用いて要求変速段GREQを算出する指令を要求変速段算出手段70へ出力する。従って、フューエル残量QFUELが少ないと判定されない場合には、変速指示装置52により車両10の性能を充分引き出しつつ燃費の良い状態で運転可能なように設定された通常時の変速段への変速操作が運転者に指示される。すなわち、フューエル残量QFUELが少ないと判定されない場合には、変速指示装置52により通常の変速操作指示が為される。一方で、フューエル残量QFUELが少ないと判定された場合には、変速指示装置52により動力性能よりも燃費性能が最優先されるように設定された少残量時の変速段への変速操作が運転者に指示される。例えば、フューエル残量QFUELが少ないと判定された場合には、変速指示装置52によりアップシフトを早める変速操作指示及びダウンシフトを遅らせる変速操作指示に切り替えられる。
【0048】
ここで、運転者によっては、フューエル残量QFUELが少なくなっても、通常通りの変速操作を指示されることを望む場合もある。例えば、動力性能等を犠牲にしたくないときや、燃料の供給施設までの距離が近いとき等には、通常の変速操作指示が望まれる場合もある。そこで、本実施例の車両10は、更に、前述した少残量時の変速段への変速操作指示を行う燃費優先表示制御(燃料消費量優先表示制御)を実行するか否か、すなわち通常の変速操作指示を少残量時の変速操作指示とするか否かを選択する為のモーメンタリ式の操作子としてのランプ兼用キャンセルスイッチ69(図3参照)を備える。このランプ兼用キャンセルスイッチ69は、燃費優先表示制御を実行していることを点灯により運転者に知らせる為のランプ(燃費優先表示制御ランプ)としても機能する。
【0049】
変速操作指示変更手段84は、少残量判定手段78によりフューエル残量QFUELが少ないと判定された場合には、ランプ兼用キャンセルスイッチ69に対してランプ兼用キャンセルスイッチ69を点灯させる為の点灯信号SL−ONを出力し、そのランプ兼用キャンセルスイッチ69を点灯させることにより燃費優先表示制御を実行していることを運転者に知らせる。
【0050】
燃費優先表示制御実行判定部すなわち燃費優先表示制御実行判定手段86は、変速操作指示変更手段84による燃費優先表示制御を実行させるか否かを判定する。例えば、燃費優先表示制御実行判定手段86は、ランプ兼用キャンセルスイッチ69のスイッチ操作に基づいて、変速操作指示変更手段84による燃費優先表示制御を実行させるか否かを判定する。具体的には、燃費優先表示制御実行判定手段86は、ランプ兼用キャンセルスイッチ69の点灯後にそのランプ兼用キャンセルスイッチ69がスイッチ操作された場合には、すなわちランプ兼用キャンセルスイッチ69からキャンセル信号Scancelを受け付けた場合には、変速操作指示変更手段84による燃費優先表示制御を実行させないと判定し、前記図6の一点鎖線に示すような少残量時変速線図を用いて要求変速段GREQを算出する指令を要求変速段算出手段70へ出力することを停止する停止指令を変速操作指示変更手段84へ出力する。変速操作指示変更手段84は、燃費優先表示制御実行判定手段86からの指令に従って、例えば上記少残量時変速線図を用いて要求変速段GREQを算出する指令に替えて、前記図4に示すような通常時変速線図を用いて要求変速段GREQを算出する指令を要求変速段算出手段70へ出力すると共に、ランプ兼用キャンセルスイッチ69に対する上記点灯信号SL−ONの出力を停止する。一方で、燃費優先表示制御実行判定手段86は、ランプ兼用キャンセルスイッチ69の点灯後にそのランプ兼用キャンセルスイッチ69のスイッチ操作が為されるまでは、変速操作指示変更手段84による燃費優先表示制御を実行させると判定し、上記停止指令を変速操作指示変更手段84へ出力しない。この場合には、変速操作指示変更手段84は、そのまま、要求変速段算出手段70への上記少残量時変速線図を用いて要求変速段GREQを算出する指令の出力を継続すると共に、ランプ兼用キャンセルスイッチ69への点灯信号SL−ONの出力を継続する。更に、燃費優先表示制御実行判定手段86は、上記停止指令の出力中にランプ兼用キャンセルスイッチ69がスイッチ操作された場合には、変速操作指示変更手段84による燃費優先表示制御を実行させると判定し、その停止指令の出力を停止する。この場合には、変速操作指示変更手段84は、上記少残量時変速線図を用いて要求変速段GREQを算出する指令を要求変速段算出手段70へ再度出力すると共に、ランプ兼用キャンセルスイッチ69へ点灯信号SL−ONを再度出力する。
【0051】
図7は、電子制御装置50の制御作動の要部すなわち最適な変速段への変速操作を車両状態に応じて適切に運転者に指示する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0052】
図7において、先ず、距離算出可否判定手段80に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、例えば直近の燃費Fすなわち直近の燃費履歴が記憶されているか否かに基づいて、航続可能距離Dの算出が可能か否かが判定される。このS10の判断が肯定される場合は航続可能距離算出手段76に対応するS20において、例えば直近の燃費F[km/L]とフューエル残量QFUEL[L]とに基づいて航続可能距離D(=F×QFUEL)が逐次算出される。
次いで、少残量判定手段78に対応するS30において、例えば上記S20にて算出された航続可能距離Dが所定距離D’以下か否かに基づいて、フューエル残量QFUELが少ないか否かが判定される。上記S10の判断が否定されるか或いは上記S30の判断が否定される場合は同じく少残量判定手段78に対応するS40において、例えばフューエル残量QFUELが所定量Q’以下か否かに基づいて、フューエル残量QFUELが少ないか否かが判定される。上記S30の判断が肯定されるか或いは上記S40の判断が肯定される場合は警告制御手段82及び変速操作指示変更手段84に対応するS50において、例えばフューエル残量ウォーニングランプ44に対して少残量警告信号SF−Lが出力され、そのフューエル残量ウォーニングランプ44が点灯させられる。同時に、ランプ兼用キャンセルスイッチ69に対して点灯信号SL−ONが出力され、そのランプ兼用キャンセルスイッチ69が点灯させられる。次いで、燃費優先表示制御実行判定手段86に対応するS60において、ランプ兼用キャンセルスイッチ69のスイッチ操作に基づいて上記燃費優先表示制御を実行させるか否かが判定される。このS60の判断が肯定される場合は変速指示制御部54及び変速操作指示変更手段84に対応するS70において、例えば図6の一点鎖線に示すような少残量時変速線図を用いて要求変速段GREQを算出する指令の出力が継続されると共に、ランプ兼用キャンセルスイッチ69への点灯信号SL−ONの出力が継続される。そして、動力性能よりも燃費性能が最優先されるように設定された少残量時の変速段への変速操作が変速指示器26により運転者に指示される。例えば、アップシフトを早める変速操作指示及びダウンシフトを遅らせる変速操作指示に切り替えられる。上記S40の判断が否定されるか或いは上記S60の判断が否定される場合は同じく変速指示制御部54及び変速操作指示変更手段84に対応するS80において、例えば図4に示すような通常時変速線図を用いて要求変速段GREQを算出する指令が出力されると共に、ランプ兼用キャンセルスイッチ69への点灯信号SL−ONが出力されているときにはその点灯信号SL−ONの出力が停止させられる。そして、車両10の性能を充分引き出しつつ燃費の良い状態で運転可能なように設定された通常時の変速段への変速操作が変速指示器26により運転者に指示される。すなわち、通常の変速操作指示が為される。
【0053】
上述のように、本実施例によれば、フューエル残量QFUELが少ないと判定された場合には、要求変速段GREQとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段が車両10の走行状態に基づいて選択されるので、フューエル残量QFUELが少ないときには動力性能よりも燃費性能が優先される変速段への変速操作が運転者に指示され、その指示された変速段への変速操作が運転者により為されることにより、そのフューエル残量QFUELに応じた航続可能距離Dを伸ばすことが可能になる。加えて、フューエル残量QFUELが多いときには例えば動力性能と燃費性能とが両立させられる変速段への変速操作が運転者に指示され、その指示された変速段への変速操作が運転者により為されることにより、燃費を悪化させることなく動力性能を適切に確保することが可能になる。このように、要求変速段GREQへの変速操作を車両状態例えばフューエル残量QFUELに応じて適切に運転者に指示することができる。
【0054】
また、本実施例によれば、動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段とは、フューエル残量QFUELが少ないと判定されない場合に選択される要求変速段GREQと比較して高車速側に予め設定された変速段であるので、フューエル残量QFUELが少ないときには、フューエル残量QFUELが少ないと判定されない場合よりも高車速側の変速段への変速操作が運転者に指示され易くなり、その指示された変速段への変速操作が運転者により為されることにより、そのフューエル残量QFUELに応じた航続可能距離Dを伸ばすことが確実に可能になる。
【0055】
また、本実施例によれば、フューエル残量QFUELが所定量Q’以下の場合に、そのフューエル残量QFUELが少ないと判定されるので、フューエル残量QFUELが少ないことが適切に判定されて、要求変速段GREQとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段が車両10の走行状態に基づいて適切に選択される。
【0056】
また、本実施例によれば、フューエル残量QFUELが所定量Q’以下でないときに、そのフューエル残量QFUELに基づいて算出される航続可能距離Dが所定距離D’以下の場合には、そのフューエル残量QFUELが少ないと判定されるので、フューエル残量QFUELが少ないことが一層適切に判定される。
【0057】
また、本実施例によれば、フューエル残量QFUELに基づいて算出される航続可能距離Dが所定距離D’以下の場合に、そのフューエル残量QFUELが少ないと判定されるので、フューエル残量QFUELが少ないことが適切に判定されて、要求変速段GREQとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段が車両10の走行状態に基づいて適切に選択される。
【0058】
また、本実施例によれば、航続可能距離Dが所定距離D’以下でないときか或いはその航続可能距離Dが算出されないときに、フューエル残量QFUELが所定量Q’以下の場合には、そのフューエル残量QFUELが少ないと判定されるので、フューエル残量QFUELが少ないことが一層適切に判定される。
【0059】
また、本実施例によれば、フューエル残量QFUELが少ないと判定された場合には、そのフューエル残量QFUELが少ないことを運転者に知らせるので、フューエル残量QFUELが少ないことが運転者に確実に知らされ、現在の変速操作の指示内容が動力性能よりも燃費性能が優先される変速段への変速操作とする指示であることが運転者に適切に知らされる。
【0060】
また、本実施例によれば、変速指示装置52は、手動変速機18の実変速段GREALと要求変速段GREQとが異なっている場合に、実変速段GREALを要求変速段GREQとする為の変速操作の指示を表示するので、車両10の走行状態に基づいて選択される要求変速段GREQへの変速操作が運転者に適切に指示される。
【0061】
また、本実施例によれば、フューエル残量QFUELが少ないと判定された際に、要求変速段GREQとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段を車両10の走行状態に基づいて表示する前記燃費優先表示制御を実行しないと判定された場合には、要求変速段GREQとしてフューエル残量QFUELが少ないと判定されない場合の変速段を選択するので、動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段と、フューエル残量QFUELが少ないと判定されない場合の通常の変速段とが適切に指示される。
【0062】
また、好適には、前記燃費優先表示制御を実行するか否かを選択する為に操作されるランプ兼用キャンセルスイッチ69を備え、ランプ兼用キャンセルスイッチ69が操作される場合に、前記燃費優先表示制御を実行しないと判定されるので、例えば運転者の志向に合わせて、動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段と、フューエル残量QFUELが少ないと判定されない場合の通常の変速段とが適切に指示される。
【0063】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0064】
前記実施例1における変速指示器26は、アップシフト指示灯38とダウンシフト指示灯40とを備え、運転者に対するシフトレバー68による変速操作の指示を表示するものであった。本実施例では、アップシフト指示灯38とダウンシフト指示灯40とに替えて、或いはアップシフト指示灯38とダウンシフト指示灯40とに加えて、実変速段GREAL及び要求変速段GREQを直接的に明示する為の変速段表示部106を備え、運転者に対するシフトレバー68による変速操作の指示を表示する種々の変速指示器を例示する。図8は、変速指示器26とは別の変速指示器を例示する図である。図8において、(a)に示す変速指示器100は、アップシフト指示灯38とダウンシフト指示灯40とに加えて、実変速段GREAL及び要求変速段GREQをそれぞれ明示する為の変速段表示部106を備えている。変速指示器100では、アップシフト指示灯38或いはダウンシフト指示灯40が点灯している側の変速段表示部106が要求変速段GREQを明示しており、それらが点灯していない側の変速段表示部106が実変速段GREALを明示している。また、(b)に示す変速指示器102は、アップシフト指示灯38とダウンシフト指示灯40とに加えて、実変速段GREAL及び要求変速段GREQをそれぞれ明示する為の変速段表示部106を備えている。変速指示器102では、点灯している変速段表示部106が要求変速段GREQを明示しており、点灯していない変速段表示部106が実変速段GREALを明示しており、アップシフトとダウンシフトとで向きが入れ替わる矢印がアップシフト指示灯38とダウンシフト指示灯40とに相当する。(c)に示す変速指示器104は、アップシフト指示灯38とダウンシフト指示灯40とに替えて、実変速段GREAL及び要求変速段GREQをそれぞれ明示する為の変速段表示部106を備えている。変速指示器104では、点灯している変速段表示部106が要求変速段GREQを明示しており、中央の変速段表示部106が実変速段GREALを明示している。
【実施例3】
【0065】
前述の実施例では、運転者による変速操作が行われることで変速段が切り替えられる変速機として手動変速機18を例示したが、運転者による変速操作が行われることで変速段が切り替えられる変速機としては他に例えば手動変速走行モード(手動変速モード)を有する自動変速機であっても良い。
【0066】
図9は、複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置として上記手動変速モードを有する自動変速機に用いられるシフト操作装置110の一例を示す図である。このシフト操作装置110は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択する為に操作されるシフトレバー112を備えている。
【0067】
このシフトレバー112は、自動変速機内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速機の出力軸をロックする為の駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行の為の後進走行ポジション「R(リバース)」、自動変速機内の動力伝達経路が遮断された中立状態とする為の中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速機の変速可能な変速段内或いは変速比の変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、又は手動変速モードを成立させて上記自動変速制御における高速側(高車速側)の変速段又は変速比の使用を制限する所謂マニュアルレンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジション及び「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、車両10を駆動不能とする動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択する為の非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジション、及び「M」ポジションは、車両10を走行させるときに選択される走行ポジションであって、車両10を駆動可能とする動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択する為の駆動ポジションでもある。
【0068】
特に、上記「M」ポジションは、例えば車両10の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両10の幅方向に隣接して設けられており、シフトレバー112が「M」ポジションへ操作されることにより、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかがシフトレバー112の操作に応じて変更される。具体的には、この「M」ポジションには、車両10の前後方向にアップシフト位置「+」、及びダウンシフト位置「−」が設けられており、シフトレバー112がそれ等のアップシフト位置「+」又はダウンシフト位置「−」へ操作されると、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかへ切り換えられる。これにより、シフトレバー112のユーザ操作に基づいて、所望のシフトレンジに切り換えられる。例えば、「M」ポジションにおける「D」レンジ乃至「L」レンジの複数のシフトレンジは、自動変速機の自動変速制御が可能な変速段或いは変速比の変化範囲における高速側(変速比が最小側)の変速段或いは変速比が異なる複数種類のシフトレンジであり、また自動変速機の変速が可能な最高速側変速段が異なるように変速段の変速範囲を制限するものである。また、シフトレバー112はスプリング等の付勢手段により上記アップシフト位置「+」およびダウンシフト位置「−」から、「M」ポジションへ自動的に戻されるようになっている。例えば、シフトレバー112の操作により「M」ポジションが選択された場合には、各シフトレンジにおいて使用が制限された高速側変速段を用いないように或いは使用が制限された変速比を越えないように、自動変速機の各シフトレンジで変速可能な変速段或いは変速比の範囲で自動変速制御される。
【0069】
尚、上記実施例では、シフトレバー112が「M」ポジションに操作されることにより、最高速側の変速レンジが設定される(シフトレンジ固定)ものであったが、シフトレバー112の操作に基づいて変速段(ギヤ段)が指定される(ギヤ段固定)ものであっても構わない。この場合、自動変速機ではマニュアルシフト操作される度にその操作に対応する所望の変速段となるように変速制御が実行される。
【0070】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0071】
例えば、前述の実施例では、燃費優先表示制御実行判定手段86(図7のステップS60)は、ランプ兼用キャンセルスイッチ69のスイッチ操作に基づいて、変速操作指示変更手段84による燃費優先表示制御を実行させるか否かを判定したが、スイッチ操作以外に基づいて燃費優先表示制御を実行させるか否かを判定しても良い。例えば、燃費優先表示制御実行判定手段86(図7のステップS60)は、変速指示装置52による変速操作の指示に対して運転者の実際の変速操作が追従しているか否かに基づいて、燃費優先表示制御を実行させるか否かを判定しても良い。具体的には、燃費優先表示制御実行判定手段86は、変速指示装置52による変速操作の指示が表示されている時間Tshとエンジンが起動している時間Tengとの比(=Tsh/Teng)が、運転者の実際の変速操作が変速指示装置52による変速操作の指示に追従していると判定する為の予め求められた所定の指示時間比よりも小さいか否かに基づいて、変速指示装置52による変速操作の指示に対して運転者の実際の変速操作が追従しているか否かを判定する。そして、燃費優先表示制御実行判定手段86は、変速指示装置52による変速操作の指示に対して運転者の実際の変速操作が追従していないと判定した場合には、前記燃費優先表示制御を実行しないと判定する。一方、燃費優先表示制御実行判定手段86は、変速指示装置52による変速操作の指示に対して運転者の実際の変速操作が追従していると判定した場合には、前記燃費優先表示制御を実行すると判定する。このようにしても、前述の実施例と同様に、動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段と、フューエル残量QFUELが少ないと判定されない場合の通常の変速段とが適切に指示される。
【0072】
また、前述の実施例では、どの走行路でも一律に前記燃費優先表示制御を実行するものであったが、例えば車速Vや停車を挟まない連続走行時間やナビ情報等に基づいて一般道と高速道とを判断し、所定距離D’や所定量Q’を変更しても良い。
【0073】
また、前述の実施例では、ランプ兼用キャンセルスイッチ69の点灯後にそのランプ兼用キャンセルスイッチ69がスイッチ操作されたか否かを判断したが、モーメンタリ式でないロック可能なキャンセルスイッチを備え、そのスイッチが点灯前後に拘わらずスイッチ操作されているか否かを判断しても良い。
【0074】
また、前述の実施例では、少残量判定手段78は、航続可能距離Dが所定距離D’以下か否か、及びフューエル残量QFUELが所定量Q’以下か否かの何れかの成立によりフューエル残量QFUELが少ないか否かを判定したが、両者が何れも成立するか否かによりフューエル残量QFUELが少ないか否かを判定しても良い。
【0075】
また、前述の実施例では、少なくとも通常時の燃費優先表示制御を実行することを前提とするものであったが、これを前提としない場合には、例えばユーザの希望でその通常時の燃費優先表示制御を実行しないことも可能である。そして、このように通常時の燃費優先表示制御を実行しない場合に、フューエル残量QFUELが少ないと判定された際には、強制的に少残量時の燃費優先表示制御を実行することも可能である。
【0076】
また、前述の実施例では、航続可能距離Dの算出に直近の燃費F[km/L]を用いたが、電子制御装置50に対するバッテリ電源接続後又は燃費データのリセット後の、走行距離の累積と燃料噴射量の累積とから算出した平均燃費FAVE[km/L]を用いても良いなど、種々の対応が可能である。
【0077】
また、前述の実施例では、変速操作の為のシフトレバー68,112を備えていたが、そのシフトレバー68,112に替えて、例えば押しボタン式のスイッチやスライド式スイッチ等の変速操作可能なスイッチ、或いは手動操作に因らず運転者の音声に反応して変速操作可能な装置や足の操作により変速操作可能な装置等であっても良い。
【0078】
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
10:車両
18:手動変速機(変速機)
50:電子制御装置(制御装置)
52:変速指示装置
69:ランプ兼用キャンセルスイッチ(キャンセルスイッチ)
64:燃料タンク
FUEL:残燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による変速操作が行われることで変速段或いは変速レンジが切り換えられる変速機と、車両の走行状態に基づいて選択される最適な変速段或いは変速レンジへの変速操作を運転者に指示する変速指示装置とを備える車両の制御装置であって、
燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定された場合には、前記最適な変速段或いは変速レンジとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジを前記車両の走行状態に基づいて選択することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジとは、前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定されない場合に選択される前記最適な変速段或いは変速レンジと比較して高車速側に予め設定された変速段或いは変速レンジであることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記燃料タンク内の残燃料の量が所定量以下の場合に、該残燃料の量が少ないと判定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記燃料タンク内の残燃料の量が所定量以下でないときに、該残燃料の量に基づいて算出される航続可能距離が所定距離以下の場合には、該残燃料の量が少ないと判定されることを特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記燃料タンク内の残燃料の量に基づいて算出される航続可能距離が所定距離以下の場合に、該残燃料の量が少ないと判定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記航続可能距離が所定距離以下でないときか或いは該航続可能距離が算出されないときに、前記燃料タンク内の残燃料の量が所定量以下の場合には、該残燃料の量が少ないと判定されることを特徴とする請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定された場合には、該残燃料の量が少ないことを運転者に知らせることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記変速指示装置は、前記変速機の実際の変速段或いは変速レンジと前記最適な変速段或いは変速レンジとが異なっている場合に、該実際の変速段或いは変速レンジを該最適な変速段或いは変速レンジとする為の変速操作の指示を表示することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定された際に、前記最適な変速段或いは変速レンジとして動力性能よりも燃費性能が優先されるように予め設定された変速段或いは変速レンジを前記車両の走行状態に基づいて表示する燃費優先表示制御を実行しないと判定された場合には、前記最適な変速段或いは変速レンジとして前記燃料タンク内の残燃料の量が少ないと判定されない場合の変速段或いは変速レンジを選択することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記燃費優先表示制御を実行するか否かを選択する為に操作されるキャンセルスイッチを備え、
前記キャンセルスイッチが操作される場合に、前記燃費優先表示制御を実行しないと判定されることを特徴とする請求項9に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記変速操作の指示に対して運転者の実際の変速操作が追従していないと判定される場合に、前記燃費優先表示制御を実行しないと判定されることを特徴とする請求項9に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−127640(P2011−127640A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284602(P2009−284602)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】