説明

車両の回生制動制御装置

【課題】 前後輪のうち一方のみに対する回生制動時、悪路制動であるにもかかわらず車両挙動の安定化を図ることができる車両の回生制動制御装置を提供すること。
【解決手段】 前後輪のうち一方の左右輪のみに発電機が連結され、減速要求操作に基づき前記発電機を作動させることで回生制動を行う回生制動制御手段を備えた車両において、前記回生制動制御手段は、前後輪のうち一方のみに対する回生制動時、前記発電機が連結された駆動輪と発電機の連結がない従動輪との間で車輪速特性の差が発生する状況を検知したら、回生制動量を制限する手段とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後輪のうち一方の左右輪のみに発電機が連結され、減速要求操作に基づき発電機を作動させることで回生制動を行う車両(ハイブリッド車や電気自動車等)の回生制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が不均一な路面摩擦係数路を走行する状況において、車両全体の制動力の変動及び左右の車輪の制動力差の変動を低減する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−210046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、ABSの作動時にのみ制動力配分を行うようになっており、回生制動により車両挙動が乱れた場合では、本ABSによる車両挙動の改善制御を行わないものである。
【0004】
また、左右輪差動制限制御(LSD制御)や、前後輪差動制限制御(4WD制御)等は、悪路走行時に車両を安定させる効果があることが良く知られている。ただし、これらの技術も左右輪に車輪速差が発生したときにのみ制動制御を実施したり、また、前後輪に車輪速差が発生したときにのみ機能する技術である。したがって、前後制動配分を制御するものではなく、回生制動により車両挙動が乱れた場合は、寄与しない機能である。
【0005】
よって、例えば、前輪駆動の回生制動装置を有する車両においては、上記技術を用いたとしても、悪路走行時には作動する構成となっていないので、駆動輪でのみ回生制動を行っている悪路走行時、制動力配分が理想配分からかけ離れた状態での制動になり、結果的に車両挙動が乱れたりする、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、前後輪のうち一方のみに対する回生制動時、悪路制動であるにもかかわらず車両挙動の安定化を図ることができる車両の回生制動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明における車両の回生制動制御装置では、前後輪のうち一方の左右輪のみに発電機が連結され、減速要求操作に基づき前記発電機を作動させることで回生制動を行う回生制動制御手段を備えた車両において、
前記回生制動制御手段は、前後輪のうち一方のみに対する回生制動時、前記発電機が連結された駆動輪と発電機の連結がない従動輪との間で車輪速特性の差が発生する状況を検知したら、回生制動量を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明の車両の回生制動制御装置にあっては、回生制動制御手段において、前後輪のうち一方のみに対する回生制動時、発電機が連結された駆動輪と発電機の連結がない従動輪との間で車輪速特性の差が発生する状況を検知したら、回生制動量が制限される。すなわち、悪路の直線走行中に前後輪の一方のみに対して回生制動が実行される場合において、車輪速特性の差が発生する状況を予め検知したり、あるいは、車輪速特性の差が発生する状況を現実に検知すると、回生制動量が制限され、この回生制動量の制限により前後輪の制動力配分差が小さく抑えられる。よって、駆動輪側のみに大きな制動力が配分されるという制動力配分の片寄りを原因とし、駆動輪側を振れ中心とし、従動輪側が左右に振れるような車両挙動の発生が小さく抑えられることになる。この結果、前後輪のうち一方のみに対する回生制動時、悪路制動であるにもかかわらず車両挙動の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の車両の回生制動制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、ハイブリッド車の駆動系構成を説明する。
図1は実施例1の回生制動制御装置が適用されたハイブリッド車の駆動系を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1モータジェネレータMG1と、第2モータジェネレータMG2(発電機)と、出力スプロケットOS、動力分割機構TMと、を有する。
【0011】
前記エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。
【0012】
前記第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、パワーコントロールユニット3により作り出された三相交流を印加することによりそれぞれ独立に制御される。
前記両モータジェネレータMG1,MG2は、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。
【0013】
前記動力分割機構TMは、サンギヤSと、ピニオンPと、リングギヤRと、ピニオンキャリアPCと、を有する単純遊星歯車により構成されている。そして、単純遊星歯車の3つの回転要素(サンギヤS、リングギヤR、ピニオンキャリアPC)に対する入出力部材の連結関係について説明する。前記サンギヤSには、第1モータジェネレータMG1が連結されている。前記リングギヤRには、第2モータジェネレータMG2と出力スプロケットOSとが連結されている。前記ピニオンキャリアPCには、エンジンダンパEDを介してエンジンEが連結されている。なお、前記出力スプロケットOSは、チェーンベルトCBや図外のディファレンシャルやドライブシャフトを介して左右前輪に連結されている。
【0014】
上記連結関係により、図4に示す共線図上において、第1モータジェネレータMG1(サンギヤS)、エンジンE(プラネットキャリアPC)、第2モータジェネレータMG2及び出力スプロケットOS(リングギヤR)の順に配列され、単純遊星歯車の動的な動作を簡易的に表せる剛体レバーモデル(3つの回転数が必ず直線で結ばれる関係)を導入することができる。
ここで、「共線図」とは、差動歯車のギヤ比を考える場合、式により求める方法に代え、より簡単で分かりやすい作図により求める方法で用いられる速度線図であり、縦軸に各回転要素の回転数(回転速度)をとり、横軸に各回転要素をとり、各回転要素の間隔をサンギヤSとリングギヤRの歯数比λに基づく共線図レバー比(1:λ)になるように配置したものである。
【0015】
次に、ハイブリッド車の制御系を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、パワーコントロールユニット3と、バッテリ4(二次電池)と、ブレーキコントローラ5と、統合コントローラ6と、を有して構成されている。
【0016】
前記統合コントローラ6には、アクセル開度センサ7と、車速センサ8と、エンジン回転数センサ9と、第1モータジェネレータ回転数センサ10と、第2モータジェネレータ回転数センサ11と、から入力情報がもたらされる。
【0017】
前記ブレーキコントローラ5には、前左車輪速センサ12(車輪速検出手段)と、前右車輪速センサ13(車輪速検出手段)と、後左車輪速センサ14(車輪速検出手段)と、後右車輪速センサ15(車輪速検出手段)と、操舵角センサ16(操舵角検出手段)と、マスタシリンダ圧センサ17と、ブレーキストロークセンサ18と、から入力情報がもたらされる。
【0018】
前記エンジンコントローラ1は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APとエンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neを入力する統合コントローラ6からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。
【0019】
前記モータコントローラ2は、レゾルバによる両モータジェネレータ回転数センサ10,11からのモータジェネレータ回転数N1,N2を入力する統合コントローラ6からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、第1モータジェネレータMG1のモータ動作点(N1,T1)と、第2モータジェネレータMG2のモータ動作点(N2,T2)と、をそれぞれ独立に制御する指令をパワーコントロールユニット3へ出力する。なお、このモータコントローラ2は、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリS.O.Cの情報を用いる。
【0020】
前記パワーコントロールユニット3は、図外のジョイントボックスと昇圧コンバータと駆動モータ用インバータと発電ジェネレータ用インバータとを有し、損失を抑えたより少ない電流で両モータジェネレータMG1,MG2への電力供給が可能な電源系高電圧システムを構成する。前記第2モータジェネレータMG2のステータコイルには、駆動モータ用インバータが接続され、前記第1モータジェネレータMG1のステータコイルには、発電ジェネレータ用インバータが接続される。また、前記ジョイントボックスには、力行時に放電し回生時に充電するバッテリ4が接続される。
【0021】
前記ブレーキコントローラ5は、低μ路制動時や急制動時等において、4輪のブレーキ液圧を独立に制御するブレーキ液圧ユニット19への制御指令によりABS制御を行い、また、ブレーキ踏み込み操作やアクセル足離し操作等による減速要求操作時、統合コントローラ6への制御指令とブレーキ液圧ユニット19への制御指令を出すことで回生協調ブレーキ制御を行う。このブレーキコントローラ5には、各車輪速センサ12,13,14,15からの車輪速情報や、操舵角センサ16からの操舵角情報や、マスタシリンダ圧センサ17やブレーキストロークセンサ18からの制動操作量情報が入力される。そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令を統合コントローラ6とブレーキ液圧ユニット19へ出力する。なお、前記ブレーキ液圧ユニット19には、前左車輪ホイールシリンダ20と、前右車輪ホイールシリンダ21と、後左車輪ホイールシリンダ22と、後右車輪ホイールシリンダ23と、が接続されている。なお、ブレーキ液圧ユニット19及び後左右車輪ホイールシリンダ22,23は、機械制動手段に相当する。
【0022】
前記統合コントローラ6は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、加速走行時等において、エンジンコントローラ1への制御指令によりエンジン動作点制御を行い、また、停止時や走行時や制動時等において、モータコントローラ2への制御指令によりモータジェネレータ動作点制御を行う。この統合コントローラ6には、各センサ7,8,9,10,11からのアクセル開度APと車速VSPとエンジン回転数Neと第1モータジェネレータ回転数N1と第2モータジェネレータ回転数N2とが入力される。そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令をエンジンコントローラ1とモータコントローラ2へ出力する。なお、統合コントローラ6とエンジンコントローラ1、統合コントローラ6とモータコントローラ2、統合コントローラ6とブレーキコントローラ5は、情報交換のためにそれぞれ双方向通信線24,25,26により接続されている。
【0023】
次に、駆動力性能について説明する。
実施例1のハイブリッド車の駆動力は、図2(b)に示すように、エンジン直接駆動力(エンジン総駆動力から発電機駆動分を差し引いた駆動力)とモータ駆動力(両モータジェネレータMG1,MG2の総和による駆動力)との合計で示される。その最大駆動力の構成は、図2(a)に示すように、低い車速ほどモータ駆動力が多くを占める。このように、変速機を持たず、エンジンEの直接駆動力と電気変換したモータ駆動力を加えて走行させることから、低速から高速まで、定常運転のパワーの少ない状態からアクセルペダル全開のフルパワーまで、ドライバの要求に対しシームレスに応答良く駆動力をコントロールすることができる(トルク・オン・デマンド)。
そして、実施例1のハイブリッド車では、動力分割機構TMを介し、エンジンEと両モータジェネレータMG1,MG2と左右前輪のタイヤとがクラッチ無しで繋がっている。また、上記のように、エンジンパワーの大部分を発電機で電気エネルギに変換し、高出力かつ高応答のモータで車両を走らせている。このため、例えば、アイスバーン等の滑りやすい路面での走行時において、タイヤのスリップやブレーキ時のタイヤのロック等で車両の駆動力が急変する場合、過剰電流からのパワーコントロールユニット3の保護、あるいは、動力分割機構TMのピニオン過回転からの部品保護を行う必要がある。これに対し、高出力・高応答のモータ特性を活かし、部品保護の機能から発展させて、タイヤのスリップを瞬時に検出し、そのグリップを回復させ、車両を安全に走らせるためのモータトラクションコントロールを採用している。
【0024】
次に、制動力性能について説明する。
実施例1のハイブリッド車では、ブレーキ踏み込み操作やアクセル足離し操作等による減速要求操作時には、モータとして作動している第2モータジェネレータMG2を発電機として作動させることにより、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリ4に回収し、再利用する回生ブレーキシステムを採用している。
この回生ブレーキシステムでの一般的な回生ブレーキ協調制御は、図3(a)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、要求制動力に大きさにかかわらず、算出された要求制動力を回生分と油圧分とで分担することで行われる。
これに対し、実施例1のハイブリッド車で採用している回生ブレーキ協調制御は、図3(b)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、算出された要求制動力に対し回生ブレーキを優先し、回生分で賄える限りは油圧分を用いることなく、最大限まで回生分の領域を拡大している。これにより、特に加減速を繰り返す走行パターンにおいて、エネルギ回収効率が高く、より低い車速まで回生制動によるエネルギの回収を実現している。
【0025】
次に、車両モードについて説明する。
実施例1のハイブリッド車での車両モードとしては、図4の共線図に示すように、「停車モード」、「発進モード」、「エンジン始動モード」、「定常走行モード」、「加速モード」を有する。
「停車モード」では、図4(a)に示すように、エンジンEと発電機MG1とモータMG2は止まっている。「発進モード」では、図4(b)に示すように、モータMG2鑿の駆動で発進する。「エンジン始動モード」では、図4(c)に示すように、エンジンスタータとしての機能を持つ発電機MG1によって、サンギヤSが回ってエンジンEを始動する。「定常走行モード」では、図4(d)に示すように、主にエンジンEにて走行し、効率を高めるために発電を最小にする。「加速モード」では、図4(e)に示すように、エンジンEの回転数を上げると共に、発電機MG1による発電を開始し、その電力とバッテリ4の電力を使ってモータMG2の駆動力を加え、加速する。
なお、後退走行は、図4(d)に示す「定常走行モード」において、エンジンEの回転数上昇を抑えたままで、発電機MG1の回転数を上げると、モータMG2の回転数が負側に移行し、後退走行を達成することができる。
【0026】
始動時には、イグニッションキーを回すことでエンジンEを始動させるが、エンジンEが暖機すると、直ぐにエンジンEを停止する。発進時やごく低速で走行する緩やかな坂を下る軽負荷時などは、エンジン効率の悪い領域は燃料をカットし、エンジンEは停止してモータMG2により走行する。通常走行時において、エンジンEの駆動力は、動力分割機構TMにより一方は左右前輪を直接駆動し、他方は発電機MG1を駆動し、モータMG2をアシストする。全開加速時は、バッテリ4からパワーが供給され、さらに駆動力を追加する。減速要求操作時には、左右前輪がモータMG2を駆動し、発電機として作用することで回生発電を行う。回収した電気エネルギはバッテリ4に蓄えられる。バッテリ4の充電量が少なくなると、発電機MG1をエンジンEにより駆動し、充電を開始する。車両停止時には、エアコン使用時やバッテリ充電時等を除き、エンジンEを自動的に停止する。
【0027】
次に、実施例1の回生制動制御装置について説明する。
図5は前記ブレーキコントローラ5内に制御プログラムとして組み込まれた実施例1の回生制動制御装置を示すブロック図である(回生制動制御手段)。
実施例1の回生制動制御装置は、図5に示すように、要求回生トルク演算モジュール30と、要求回生トルク制限演算部31と、要求回生トルク制限選択モジュール32と、を備えている。
【0028】
前記要求回生トルク演算モジュール30は、第1マスタシリンダ圧力(プライマリ)MCP1と第2マスタシリンダ圧力(セカンダリ)MCP2と第1ブレーキストロークSTROKE1と第2ブレーキストロークSTROKE2等を入力し、マスタシリンダ圧情報やブレーキペダルストローク情報により要求回生トルクREGEを演算する。
【0029】
前記要求回生トルク制限演算部31は、前左車輪速VWFL、前右車輪速VWFR、後左車輪速VWRL、後右車輪速NWRR、操舵角STRを入力し、旋回制動時における推定アンダーステア量、直進制動時における推定スプリットμによる車両挙動悪化量、直進制動時における推定悪路量に応じて回生トルク上限値REGELIMを演算する。
【0030】
前記要求回生トルク制限選択モジュール32は、要求回生トルクREGEと回生トルク上限値REGELIMとを入力し、セレクトローにより制限後回生トルクREGEMINを選択し、これに上限値と下限値によるフィルタをかけて最終送信回生トルクTXREGEを算出し、これを統合コントローラ5に出力する。
【0031】
前記要求回生トルク制限演算部31は、図6に示すように、前輪車輪速偏差演算モジュール311と、車体速演算モジュール312と、推定前輪速偏差演算モジュール313と、推定アンダーステア量演算モジュール314と、推定スプリットμによる車両挙動悪化量演算モジュール315と、推定悪路量演算モジュール316と、回生量上限値演算モジュール317と、を有して構成されている。
【0032】
前記前輪車輪速偏差演算モジュール311は、図7に示すように、直進制動時における車両挙動悪化量と旋回制動時における実旋回量を求めるために使用する左右の前輪車輪速偏差VWFDIFを演算するモジュールである。この前輪車輪速偏差演算モジュール311は、センサ信号による左右の前輪車輪速偏差(VWFR−VWFL)を演算する差分器311aと、左右の前輪車輪速偏差(VWFR−VWFL)に前輪車輪速偏差最大値mVWFDIFMAXと前輪車輪速偏差最小値mVWFDIFMINによりフィルタをかけて左右の前輪車輪速偏差VWFDIFを求めるリミッタ311bと、を有する。
【0033】
前記車体速演算モジュール312は、図8に示すように、旋回制動時に推定旋回量を算出するために使用する後輪の左右輪平均速(推定車体速)を演算するモジュールである。この車体速演算モジュール312は、センサ信号による左右の後輪車輪速VWRL,VWRRを加算して左右後輪車輪速加算値VWRLRSUMを求める加算器312aと、左右後輪車輪速加算値VWRLRSUMを2で割り左右後輪車輪速平均値VWAVEを求める除算器312bと、を有する。
【0034】
前記推定前輪速偏差演算モジュール313は、図9に示すように、操舵角STRと左右後輪車輪速平均値VWAVEによりグリップ旋回時に出ているであろう前輪車輪速偏差を推定するモジュールである。この推定前輪速偏差演算モジュール313には、操舵角STRと左右後輪車輪速平均値VWAVEと推定前輪速偏差ESTVWFDIFとをパラメータとし、実験値に基づき設定された前輪車輪速偏差推定マップmESTVWFDIFを有する。そして、操舵角STRと左右後輪車輪速平均値VWAVEを読み込み、前輪車輪速偏差推定マップmESTVWFDIF(実験値により算出)を検索することで、推定前輪速偏差ESTVWFDIFが求められる。
【0035】
前記推定アンダーステア量演算モジュール314は、図10に示すように、推定前輪速偏差ESTVWFDIFと前輪車輪速偏差VWFDIFとの差によりアンダーステア量を決定するモジュールである。この推定アンダーステア量演算モジュール314は、推定前輪速偏差ESTVWFDIFと前輪車輪速偏差VWFDIFとの差ESTVWFDIFを求める差分器314aと、この差ESTVWFDIFDIFによりアンダーステア量ESTUDRSTRを決定するアンダーステア量算出テーブルmESTUDRTRと、を有する。
【0036】
前記推定スプリットμによる車両挙動悪化量演算モジュール315は、図11に示すように、前輪車輪速偏差VWFDIFと操舵角STRにより車両挙動悪化量ESTSPLITを決定するモジュールである。この車両挙動悪化量演算モジュール315は、仮車両挙動悪化量算出テーブルmESTSPLITを有する仮車両挙動悪化量算出器315aと、車両挙動悪化量ゲイン算出テーブルmESTSPLIT_gainを有する車両挙動悪化量ゲイン算出器315bと、仮車両挙動悪化量vESTSPLITと車両挙動悪化量ゲインESTSPLIT_gainとを掛け合わせる乗算器315cと、を備えている。前記仮車両挙動悪化量算出テーブルmESTSPLITは、前輪車輪速偏差VWFDIFをパラメータとし、前輪車輪速偏差VWFDIFが大きいほど大きな値による仮車両挙動悪化量vESTSPLITとする特性が設定されている。前記車両挙動悪化量ゲイン算出テーブルmESTSPLIT_gainは、操舵角STRをパラメータとし、操舵角STRが直線走行を保つ中立領域で高い一定値で、中立領域から離れるに従って低い値とする車両挙動悪化量ゲインESTSPLIT_gainの特性が設定されている。そして、前輪車輪速偏差VWFDIFを読み込み、仮車両挙動悪化量算出テーブルmESTSPLITを検索することで、仮車両挙動悪化量vESTSPLITが算出され、操舵角STRを読み込み、車両挙動悪化量ゲイン算出テーブルmESTSPLIT_gainを検索することで、車両挙動悪化量ゲインESTSPLIT_gainが算出され、仮車両挙動悪化量vESTSPLITと車両挙動悪化量ゲインESTSPLIT_gainとを掛け合わせて推定スプリットμによる車両挙動悪化量ESTSPLITが演算される。
【0037】
前記推定悪路量演算モジュール316は、図12に示すように、各車輪速VWFL,VWFR,VWRL,VWRRと操舵角STRにより推定悪路量ESTAKUROを決定するモジュールである。この推定悪路量演算モジュール316は、左右前輪車輪速VWFL,VWFRを加算する加算器316aと、左右前輪車輪速VWFL,VWFRの加算値に0.5を掛けて左右前輪車輪速平均値VWFAVEを求める乗算器316bと、左右後輪車輪速VWRL,VWRRを加算する加算器316a'と、左右後輪車輪速VWRL,VWRRの加算値に0.5を掛けて左右後輪車輪速平均値VWRAVEを求める乗算器316b'と、左右後輪車輪速平均値VWRAVEと左右前輪車輪速平均値VWFAVEとの差による従駆動輪偏差量VWFRDIFを求める偏差量演算器316cと、仮悪路量算出テーブルmESTAKUROを有する仮悪路量算出器316dと、悪路量ゲイン算出テーブルmESTAKURO_gainを有する悪路量ゲイン算出器316eと、仮悪路量vESTAKUROと悪路量ゲインESTAKURO_gainとを掛け合わせる乗算器316fと、を備えている。前記仮悪路量算出テーブルmESTAKUROは、従駆動輪偏差量VWFRDIFをパラメータとし、従駆動輪偏差量VWFRDIFが大きいほど大きな値による仮悪路量vESTAKUROとする特性が設定されている。前記悪路量ゲイン算出テーブルmESTAKURO_gainは、操舵角STRをパラメータとし、操舵角STRが直線走行を保つ中立領域で高い一定値で、中立領域から離れるに従って低い値とする悪路量ゲインESTAKURO_gainの特性が設定されている。そして、従駆動輪偏差量VWFRDIFを読み込み、仮悪路量算出テーブルmESTAKUROを検索することで、仮悪路量vESTAKUROが算出され、操舵角STRを読み込み、悪路量ゲイン算出テーブルmESTAKURO_gainを検索することで、悪路量ゲインESTAKURO_gainが算出され、仮悪路量vESTAKUROと悪路量ゲインESTAKURO_gainとを掛け合わせて推定悪路量ESTAKUROが演算される。
【0038】
前記回生量上限値演算モジュール317は、図13に示すように、左右の前輪車輪速偏差VWFDIFとアンダーステア量ESTUDRSTRと車両挙動悪化量ESTSPLITと推定悪路量ESTAKUROとにより回生トルク上限値REGELIMを決定するモジュールである。この回生量上限値演算モジュール317には、第1上限トルク算出テーブルmREGELIM1を有する第1上限トルク算出器317aと、第2上限トルク算出テーブルmREGELIM2を有する第2上限トルク算出器317bと、第3上限トルク算出テーブルmREGELIM3を有する第3上限トルク算出器317cと、第1回生トルク上限値REGELIM1と第2回生トルク上限値REGELIM2と第3回生トルク上限値REGELIM3のセレクトローにより回生トルク上限値REGELIMを決定する選択器317dと、を備えている。ここで、前記第1上限トルク算出テーブルmREGELIM1は、左右の前輪車輪速偏差VWFDIFとアンダーステア量ESTUDRSTRをパラメータとする二次元マップにて設定されている。また、第2上限トルク算出テーブルmREGELIM2は、車両挙動悪化量ESTSPLITをパラメータとし、車両挙動悪化量ESTSPLITがEST1までは一定の最大値(前輪制動力配分100%)による第2回生トルク上限値REGELIM2とし、EST1からEST2までは車両挙動悪化量ESTSPLITが大きくなるのに比例して第2回生トルク上限値REGELIM2を最大値から徐々に低下させ、EST2以上になると第2回生トルク上限値REGELIM2を一定値に維持して理想制動力配分を得るように設定されている。また、第3上限トルク算出テーブルmREGELIM3は、悪路量ESTAKUROをパラメータとし、悪路量ESTAKUROがEST1までは一定の最大値(前輪制動力配分100%)による第3回生トルク上限値REGELIM3とし、EST1からEST2までは悪路量ESTAKUROが大きくなるのに比例して第3回生トルク上限値REGELIM3を最大値から徐々に低下させ、EST2以上になると第3回生トルク上限値REGELIM3を一定値に維持して理想制動力配分を得るように設定されている。そして、左右の前輪車輪速偏差VWFDIFとアンダーステア量ESTUDRSTRを読み込み、第1上限トルク算出テーブルmREGELIM1を検索することで、第1回生トルク上限値REGELIM1が求められ、車両挙動悪化量ESTSPLITを読み込み、第2上限トルク算出テーブルmREGELIM2を検索することで、第2回生トルク上限値REGELIM2が求められ、悪路量ESTAKUROを読み込み、第3上限トルク算出テーブルmREGELIM3を検索することで、第3回生トルク上限値REGELIM3が求められ、第1回生トルク上限値REGELIM1と第2回生トルク上限値REGELIM2と第3回生トルク上限値REGELIM3とのセレクトローにより回生トルク上限値REGELIMが決定される。
【0039】
前記要求回生トルク制限選択モジュール32は、図14に示すように、前記要求回生トルク演算モジュール30からの要求回生トルクREGEと、前記要求回生トルク制限演算部31からの回生トルク上限値REGELIMとを入力し、セレクトローにより制限後回生トルクREGEMINを選択するセレクトローモジュール321と、制限後回生トルクREGEMINに回生トルク上限値mREGEMAXと回生トルク下限値mREGEMINによるフィルタをかけて最終送信回生トルクTXREGEを算出する最終送信回生トルク算出モジュール322と、を有する。
【0040】
次に、作用を説明する。
[悪路での直進制動時の車両挙動について]
例えば、4輪が接地する路面が凹凸の無い良路での直進制動時、回生制動量を全く制限することなく左右前輪のみに対し回生制動を実行した場合、左右前輪からそれぞれ路面に対して伝達される回生制動力が同じになるし、左右後輪も常に接地状態を保つことで車輪速変動が小さく、車両挙動が乱れることのない直進制動となる。これに対し、路面が凹凸を有する悪路での直進制動時、回生制動量を全く制限することなく左右前輪のみに対し回生制動を実行した場合、駆動輪である左右前輪側のみに大きな制動力が配分され、左右後輪の制動力はゼロという制動力配分の片寄りを原因とし、左右前輪側を振れ中心とし、左右後輪側が左右に振れるような車両挙動を示す。これは、以下の理由による。
【0041】
まず、制動時の前輪制動力と後輪制動力との制動力前後配分は、一般的な車両(プロポーショニングバルブや電子制御制動力配分システムEBDを有さない車両)の制動力前後配分は、図15に示すように、制動力最大になるための理想配分線に近似する直線特性に沿った制動力前後配分としている。しかしながら、ハイブリッド車において、制動力前後配分を理想制動力配分にしてしまうと、発電機の連結がない左右後輪には油圧ブレーキを作動させる必要があり、回生分は油圧分を差し引いた残りの分となるため、エネルギ回収量が低減し、燃費向上には不利となる。
【0042】
そこで、実施例1のハイブリッド車では、図18に示すように、回生分にて賄える要求制動力までは、その全てを回生分により得る、つまり、前輪のみに回生制動力を付与することで、できる限り燃費を向上させるようにしている。この場合、図15に示す制動力前後配分特性でみると、左右後輪の制動力配分がゼロとなり、矢印に示すように、一般の車両での後輪制動力分が前輪制動力に加算され、前輪制動力比率が過多となる。
【0043】
一方、左右前輪のスリップ率に対するコーナリングパワーの特性をみると、高μ路(ドライ路)や低μ路では、最大のコーナリングパワーが得られるスリップ率を過ぎてスリップ率が上昇すると、コーナリングパワーが低下してゆく特性を示す。これに対し、悪路では、最大のコーナリングパワーが得られるスリップ率を過ぎてスリップ率が上昇してもコーナリングパワーがほとんど低下しない特性を示す。すなわち、高μ路や低μ路での回生制動時には、前輪制動力比率が過多となりスリップが発生すると、スリップの発生にしたがって制動力も低下し、前後輪制動力配分の偏りが修正されるが、悪路での回生制動時には、前輪制動力比率が過多となりスリップが発生し、スリップ率が上昇しても制動力の低下はほとんどなく、前後輪制動力配分の片寄りが修正されることがない。
【0044】
そこで、悪路での直進制動時の車両挙動をみると、理想前後配分に沿った液圧制動力を付与する通常のブレーキの場合には、図17に示すように、左右前輪のみではなく左右後輪にも制動力が出ることで、前輪が路面凹部を通過することで浮いた状態となっても回生制動力により車輪空転は抑えられるし、後輪が路面凹部を通過することで浮いた状態となっても回生制動力により車輪空転は抑えられるというように、前輪の車輪速特性(図19の実線特性)、及び、後輪の車輪速特性(図19の1点鎖線特性)は、いずれも変動が小さい車輪速特性を示し、車両挙動は安定している。
【0045】
一方、左右前輪のみで回生協調制御を行うハイブリッド車において、悪路での直進制動時の車両挙動をみると、回生制動力が付与される左右前輪に対し、左右後輪には制動力の付与が無いというように、前後輪制動力配分としては、前輪のみに制動力が片寄った配分となるし、スリップ率が上昇しても前後輪制動力配分の片寄りが修正されることがない。したがって、回生制動力が付与されている左右前輪の車輪速特性をみると、図19の実線特性に示すように、車輪が路面凹部を通過することで浮いた状態となっても回生制動力により車輪空転は抑えられ、変動が小さい車輪速特性を示す。これに対し、制動力の付与が無い左右後輪の車輪速特性をみると、図19の破線特性に示すように、車輪が路面凹部を通過する浮いた状態で空転により急加速し、路面凸部に接する状態で制動により急減速するという動作が繰り返され、変動が極めて大きい車輪速特性を示す。この片効き制動のため、左右前輪側を振れ中心とし、左右後輪側が左右に振れるような不安定な車両挙動を示す。
【0046】
[悪路での直進制動時における回生トルク制限作用]
これに対し、実施例1のハイブリッド車の回生制動制御装置では、直線走行を意図する操舵状態で左右前輪に対する回生制動時、第2モータジェネレータMG2が連結された左右前輪と第2モータジェネレータMG2の連結がない左右後輪との間で車輪速特性の差が発生する状況を検知したら、回生制動トルクを制限することで、悪路制動であるにもかかわらず車両挙動の安定化を図るようにした。
【0047】
すなわち、悪路での直進制動時における回生トルク制限作用を説明すると、図5に示すように、要求回生トルク演算モジュール30において、マスタシリンダ圧情報やブレーキペダルストローク情報により要求回生トルクREGEを演算し、要求回生トルク制限演算部31において、推定悪路量ESTAKUROに応じて第3回生トルク上限値REGELIM3(=回生トルク上限値REGELIM)を演算する。そして、要求回生トルク制限選択モジュール32において、前記要求回生トルクREGEと前記回生トルク上限値REGELIMとを入力し、セレクトローにより制限後回生トルクREGEMINを選択することで、最終送信回生トルクTXREGEを算出し、最終送信回生トルクTXREGEを統合コントローラ5に出力する。そして、統合コントローラ5において、第2モータジェネレータMG2を発電機として用い、指令された最終送信回生トルクTXREGEを得る制動回生が実行されることになる。
【0048】
前記要求回生トルク制限演算部31の詳しい作用を図6に基づき説明すると、推定悪路量演算モジュール316においては、従駆動輪偏差量VWFRDIFと操舵角STRにより推定悪路量ESTAKUROを決定する。その後、回生量上限値演算モジュール317において、推定悪路量ESTAKUROにより回生トルク上限値REGELIMを決定する。
【0049】
ここで、本発明において、悪路量をどのように推定するかの考え方について説明する。まず、左右前輪が接地する路面が凹凸を有する悪路での直進制動時に回生制動が実行されると、左右前輪は路面凹部を浮いて通過したり路面凸部に接触する動作を繰り返す。つまり、路面に伝達される回生制動力は、路面の凹凸形状や車速に応じて変動するが、路面凹部を浮いて通過するときも、左右前輪の動きを抑制する回生制動力が常に加わっていることで、図19の実線特性に示すように、左右前輪の車輪速特性としては、車輪速変動が小さい特性を維持する。
【0050】
一方、左右後輪についてみると、左右後輪も路面凹部を浮いて通過したり路面凸部に接触する動作を繰り返すが、左右後輪の動きを抑制する制動力の付与が無いことで、路面凹部を浮いて通過するときに急激に加速し、逆に、路面凸部に接触するときには急激に減速するというように、左右後輪の動きを抑制する制動力の付与が無いことで、図19の破線特性に示すように、左右後輪の車輪速特性としては、車輪速変動が左右前輪に比べて遙かに大きい特性を示す。
【0051】
また、悪路による車両挙動の乱れとは、左右前輪と左右後輪との車輪速特性が同じ特性である場合の車両挙動を基準とし、左右前輪車輪速特性と左右後輪車輪速特性との差の大きさに応じて車両挙動が不安定になってゆく現象であるため、悪路での直進制動時に回生制動が実行された場合の左右前輪車輪速特性と左右後輪車輪速特性との車輪速偏差(制御上は最大偏差)は、そのまま推定悪路量であるとみなすことができる。
【0052】
そこで、実施例1では、図12に示すように、推定悪路量演算モジュール316の仮悪路量算出器316dにおいて、従駆動輪偏差量VWFRDIFを読み込み、仮悪路量算出テーブルmESTAKURO(従駆動輪偏差量VWFRDIFが大きいほど大きな値による仮悪路量vESTAKUROとする特性)を検索することで、仮悪路量vESTAKUROを算出する。一方、悪路量ゲイン算出器316eにおいて、操舵角STRを読み込み、悪路量ゲイン算出テーブルmESTAKURO_gain(操舵角STRが直線走行を保つ中立領域で高い一定値で、中立領域から離れるに従って低い値とする悪路量ゲインESTAKURO_gainの特性)を検索することで、悪路量ゲインESTAKURO_gainを算出する。そして、乗算器316fにおいて、仮悪路量vESTAKUROと悪路量ゲインESTAKURO_gainとを掛け合わせて推定悪路量ESTAKUROを演算するようにしている。
【0053】
したがって、良路での直進走行時に回生制動が実行された場合、操舵角STRが中立位置領域で高ゲインに設定されても、従駆動輪偏差量VWFRDIFが略0であり、仮悪路量vESTAKUROが略0となることで、仮悪路量vESTAKUROと悪路量ゲインESTAKURO_gainとを掛け合わせた推定悪路量ESTAKUROは略0となり、悪路量を誤推定することがない。
【0054】
加えて、左右前輪のみに回生制動力を付与しての悪路走行時に特有の現象であり、悪路制動に入ると直ちに変動する左右前輪と左右後輪の車輪速特性の差に基づく悪路量の推定であると共に、悪路の程度が高くなるほど従駆動輪偏差量VWFRDIFが大きくなるため、悪路での直進走行時に回生制動が実行された場合、従駆動輪偏差量VWFRDIFに基づき、応答良く、かつ、正確に悪路量を推定することができる。
【0055】
例えば、車両の重心回りのヨーレートをヨーレートセンサにて検出し、このヨーレート検出値により悪路制動を推定しようとする場合、まず、前輪車輪速特性と後輪車輪速特性とに差が発生し、その後、車輪速特性差により左右後輪側が左右に振れることで車両の重心回りにヨーレートが発生し、発生したヨーレートをセンサにて検出するというメカニズムとなる。このため、悪路量の推定タイミングが大幅に遅れる。
【0056】
上記のように、実施例1では、ヨーレートに基づく悪路量の推定に比べ、応答良く、かつ、正確に悪路量の程度を推定し、回生制動による車両挙動の不安定度合いが高くなるほど低い値による回生トルク上限値REGELIMを決定することで回生制動量を制限するため、わずかでも車輪速特性差が発生すると回生制動量の制限により、左右前輪と左右後輪との制動力配分の片寄りを抑制するという作用を示し、直線走行を意図する操舵状態で、かつ、左右前輪のみに対する回生制動時、悪路制動であるにもかかわらず車両挙動の安定化を図ることができる。
【0057】
また、実施例1では、例えば、ストップランプスイッチ等の信号に基づき、制動判定を行い、図20に示すように、制動判定中は制動中フラグを立て、制動判定がセットされている間は、推定悪路量ESTAKUROの最大値をデータ更新により保持するようにしている。このため、常に車両挙動を良くする方向での推定悪路量ESTAKUROの保持ができ、路面の細かな変動に対して前後輪の制動力配分を変えないため、車両挙動を安定させることができ、よりロバストな制御が可能になる。
さらに、制動判定が解除されると、図20に示すように、推定悪路量ESTAKUROの最大値の保持も同時に解除するようにしているため、路面の細かな変動に対して、悪路条件を解除したり、再介入したり、ロジックの繰り返し動作を防ぐことができ、車両挙動を安定させることができる。
【0058】
加えて、実施例1では、悪路の誤推定を低減するために、予め駆動輪と従動輪との車輪速差が発生することが分かっている旋回シーンにおいては、敢えて回生をカットしなくても良いので、悪路量ゲイン算出器316eに示すように、操舵角STRが直線走行を保つ中立領域で高い一定値で、中立領域から離れるに従って低い値とする悪路量ゲイン算出テーブルmESTAKURO_gainを設定している。この場合、悪路の誤推定を低減することができるばかりでなく、悪路であれば直進制動時も旋回制動時も回生制動量を制限する場合に比べ、燃費の低減量を緩和することができる。
【0059】
[回生協調ブレーキ制御作用]
実施例1のハイブリッド車の回生制動制御装置は、左右後輪に液圧制動力(機械制動力)を発生するブレーキ液圧ユニット19及び後左右車輪ホイールシリンダ22,23(機械制動手段)を備えている。
【0060】
そこで、悪路での直進制動時、推定悪路量ESTAKUROにより回生トルク上限値REGELIMに制限された場合、一般的な回生協調ブレーキ制御によれば、要求回生トルクREGEに対し、制限された低減補正分(要求回生トルクREGE−回生トルク上限値REGELIM)だけ左右後輪にブレーキ液圧を付与して左右後輪に液圧制動力を発生させることで、トータルとして要求回生トルクREGEを得るものとなる。この場合、左右後輪に液圧制動力が発生することで、上記のように、車両挙動としては安定化方向となる。
【0061】
これに対し、実施例1での回生協調ブレーキ制御では、悪路での直進制動時、推定悪路量ESTAKUROにより回生トルク上限値REGELIMに制限された場合、前輪回生制動力と後輪液圧制動力による前後輪の制動力配分比が理想配分比となるように、第2モータジェネレータMG2の連結がない左右後輪の液圧制動力を制御するという改善を加えている。
ちなみに、第3上限トルク算出器317cに設定されている第3上限トルク算出テーブルmREGELIM3は、推定悪路量ESTKUROが大きければ大きいほど、回生制動を制限し、理想制動力配分に近づけるマップである。
したがって、悪路での直進制動時、大きな推定悪路量ESTAKUROにより回生トルク上限値REGELIMに制限される場合、前輪先ロックが無く制動力が最大になり、制動距離を最短にすることができる。
【0062】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両の回生制動制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0063】
(1) 前後輪のうち一方の左右輪のみに発電機が連結され、減速要求操作に基づき前記発電機を作動させることで回生制動を行う回生制動制御手段を備えた車両において、前記回生制動制御手段は、前後輪のうち一方のみに対する回生制動時、前記発電機が連結された駆動輪と発電機の連結がない従動輪との間で車輪速特性の差が発生する状況を検知したら、回生制動量を制限するため、前後輪のうち一方のみに対する回生制動時、悪路制動であるにもかかわらず車両挙動の安定化を図ることができる。
【0064】
(2) 前記回生制動制御手段は、減速要求操作に応じて要求回生トルクREGEを演算する要求回生トルク演算モジュール30と、前後輪のうち一方のみに対する回生制動時、前記発電機が連結がない従動輪に発生する車輪速変動特性に基づく悪路量の推定値に応じて回生トルクを制限した回生トルク上限値REGELIMを演算する要求回生トルク制限演算部31と、前記要求回生トルクREGEと前記回生トルク上限値REGELIMとのセレクトローにより制限後回生トルクREGEMINを決定する要求回生トルク制限選択モジュール32と、を備えたため、悪路走行時に回生制動を実行した場合、片効き制動により、駆動輪側を振れ中心とし、従動輪側が左右に振れるような不安定な車両挙動を抑制することができる。
【0065】
(3) 前記要求回生トルク制限演算部31は、前記発電機が連結された駆動輪の車輪速と発電機の連結がない従動輪の車輪速との車輪速偏差に基づき、従動輪に発生する車輪速変動による悪路量を推定し、該悪路量推定値ESTAKUROが大きいほど低い値による回生トルク上限値REGELIMを演算するため、悪路走行時に回生制動を実行した場合、応答良く、かつ、正確に悪路量の大きさを推定することができる。
【0066】
(4) 操舵角STRを検出する操舵角センサ16と、左右前輪の車輪速VWFL,VWFRと左右後輪の車輪速VWRL,VWRRを検出する車輪速センサ12,13,14,15と、を設け、前記要求回生トルク制限演算部31は、操舵角STRが直線走行領域にあるとき、従駆動輪車輪速偏差VWFRDIFが大きいほど大きな値による推定悪路量ESTAKUROを演算する推定悪路量演算モジュール316と、前記推定悪路量ESTAKUROが大きいほど低い値による回生トルク上限値REGELIMを演算する回生量上限値演算モジュール317と、を有するため、悪路での直進走行時に回生制動を実行した場合、操舵角情報と車輪速情報のみにより、応答良く、かつ、正確に悪路量の大きさを推定し、従動輪側が左右に振れるような不安定な車両挙動を抑制することができる。
【0067】
(5) 第2モータジェネレータMG2の連結がない左右後輪にて液圧制動力を発生するブレーキ液圧ユニット19及び後左右車輪ホイールシリンダ22,23を設け、前記回生制動制御手段は、直線走行を意図する操舵状態で回生制動を制限するとき、前輪側の回生制動力と後輪側の液圧制動力による前後輪の制動力配分比が理想配分比となるように、前記ブレーキ液圧ユニット19による液圧制動力を制御する回生協調制御を行うため、前輪先ロックが無く制動力が最大になり、制動距離を最短にすることができる。
【0068】
(6) 前記要求回生トルク制限演算部31は、左右前輪に対する回生制動判定がセットされている間は、悪路量推定値ESTAKUROの最大値をデータ更新により保持するため、路面の細かな変動に対して前後輪の制動力配分を変えることがなく、車両挙動を安定させたロバストな制御を行うことができる。
【0069】
(7) 前記要求回生トルク制限演算部31は、左右前輪に対する回生制動判定のセットが解除されると、悪路量推定値ESTAKUROの最大値の保持を解除するため、路面の細かな変動に対して、悪路条件を解除したり、再介入したり、ロジックの繰り返し動作を防ぐことができ、車両挙動を安定させることができる。
【0070】
以上、本発明の車両の回生制動制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0071】
実施例1では、回生制動制御手段として、推定悪路量に応じて回生トルクを制限した回生トルク上限値により回生制動量を制限する例を示したが、推定悪路量に応じて要求回生トルクを低減補正する補正値を求める等、回生制動量を制限(回生制動量がゼロの回生制動禁止を含み、段階的な回生制動量の制限、無段階による回生制動量の制限等)であれば、他の手段であっても含まれる。
【0072】
実施例1では、回生制動制御手段として、左右後輪の車輪速平均値と左右前輪の車輪速平均値との前後輪車輪速偏差の大きさに基づき悪路程度を推定し、推定悪路量の大きさに応じて回生制動を制限する例を示したが、平均値ではなく各車輪毎の車輪速をそのまま用いて前後輪車輪速偏差を求めて悪路程度を推定しても良い。さらに、左右後輪の車輪加速度平均値と左右前輪の車輪加速度平均値との前後輪車輪加速度偏差の大きさに基づき悪路程度を推定しても良いし、加速度平均値ではなく各車輪毎の車輪加速度をそのまま用いて前後輪車輪加速度偏差を求めて悪路程度を推定しても良い。要するに、駆動輪の車輪速特性と従動輪の車輪速特性の差を抽出して悪路程度を推定するものであれば、上記の手法に限定されるものではない。
【0073】
実施例1では、回生制動制御手段として、駆動輪の車輪速特性と従動輪の車輪速特性の差を現実に検知したら回生制動量を制限する例を示したが、悪路走行であることを路面凹凸の検出やインフラ情報等により制動前に予め検知し、回生制動量を制限するようにしても良い。
【0074】
実施例1では、直線走行を意図する操舵状態を、操舵角情報により検知する例を示したが、ヨーレイトセンサからのヨーレイト情報や横加速度センサからの横加速度情報等により直線走行を意図する操舵状態を検知するようにしても良い。
【0075】
実施例1では、機械制動手段として、ブレーキ液圧により液圧制動力を得る手段の例を示したが、電気モータ式ブレーキ(EMB)等の回生制動力以外により機械制動力を得るものであっても含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
実施例1では、1つのエンジンと2つのモータジェネレータと動力分割機構を備えた前輪駆動のハイブリッド車への適用例を示したが、本発明の回生制動制御装置は、他のパワーユニット構造を備えた前輪駆動あるいは後輪駆動によるハイブリッド車や電気自動車や燃料電池車等、要するに、前後輪のうち一方の左右輪のみに発電機が連結され、減速要求操作に基づき発電機を作動させることで回生制動を行う回生制動制御手段を備えた車両であれば適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1の回生制動制御装置が適用されたハイブリッド車を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の回生制動制御装置が適用されたハイブリッド車における駆動力性能特性図と駆動力概念図である。
【図3】実施例1の回生制動制御装置が適用されたハイブリッド車における回生協調による制動力性能をあらわす対比特性図である。
【図4】実施例1の回生制動制御装置が適用されたハイブリッド車における各車両モードを示す共線図である。
【図5】実施例1の回生制動制御装置を示す全体制御ブロック図である。
【図6】実施例1の回生制動制御装置のうち要求回生トルク制限演算部を示すブロック図である。
【図7】実施例1の要求回生トルク制限演算部のうち前輪車輪速偏差演算モジュールを示すブロック図である。
【図8】実施例1の要求回生トルク制限演算部のうち車体速演算モジュールを示すブロック図である。
【図9】実施例1の要求回生トルク制限演算部のうち推定前輪速偏差演算モジュールを示すブロック図である。
【図10】実施例1の要求回生トルク制限演算部のうち推定アンダーステア量演算モジュールを示すブロック図である。
【図11】実施例1の要求回生トルク制限演算部のうち推定スプリットμによる車両挙動悪化量演算モジュールを示すブロック図である。
【図12】実施例1の要求回生トルク制限演算部のうち推定悪路量演算モジュールを示すブロック図である。
【図13】実施例1の要求回生トルク制限演算部のうち回生上限値演算モジュールを示すブロック図である。
【図14】実施例1の回生制動制御装置のうち回生トルク選択部を示すブロック図である。
【図15】回生協調時の制動力前後配分をあらわす制動力配分特性図である。
【図16】高μ路と低μ路と悪路におけるタイヤのスリップ率に対するコーナリングパワー特性図である。
【図17】制動力の理想前後配分による通常のブレーキ状態を示す図である。
【図18】FF車での回生協調(0.2G)相当のブレーキ状態を示す図である。
【図19】悪路走行時に前輪のみに制動力を付与した場合と前輪と後輪に制動力を付与した場合における前輪車輪速特性と制動有りの後輪車輪速特性と制動無しの後輪車輪速特性の一例を示す車輪速特性図である。
【図20】実施例1の回生制動制御装置における悪路制動時における車輪速・推定悪路量・制動中フラグの各特性を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0078】
E エンジン
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 第2モータジェネレータ(発電機)
OS 出力スプロケット
TM 動力分割機構
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 パワーコントロールユニット
4 バッテリ
5 ブレーキコントローラ
6 統合コントローラ
7 アクセル開度センサ
8 車速センサ
9 エンジン回転数センサ
10 第1モータジェネレータ回転数センサ
11 第2モータジェネレータ回転数センサ
12 前左車輪速センサ(車輪速検出手段)
13 前右車輪速センサ(車輪速検出手段)
14 後左車輪速センサ(車輪速検出手段)
15 後右車輪速センサ(車輪速検出手段)
16 操舵角センサ(操舵角検出手段)
17 マスタシリンダ圧センサ
18 ブレーキストロークセンサ
19 ブレーキ液圧ユニット
20 前左車輪ホイールシリンダ
21 前右車輪ホイールシリンダ
22 後左車輪ホイールシリンダ
23 後右車輪ホイールシリンダ
30 要求回生トルク演算モジュール
31 要求回生トルク制限演算部
311 前輪車輪速偏差演算モジュール
312 車体速演算モジュール
313 推定前輪速偏差演算モジュール
314 推定アンダーステア量演算モジュール
315 推定スプリットμによる車両挙動悪化量演算モジュール
316 推定悪路量演算モジュール
317 回生量上限値演算モジュール
32 要求回生トルク制限選択モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後輪のうち一方の左右輪のみに発電機が連結され、減速要求操作に基づき前記発電機を作動させることで回生制動を行う回生制動制御手段を備えた車両において、
前記回生制動制御手段は、前後輪のうち一方のみに対する回生制動時、前記発電機が連結された駆動輪と発電機の連結がない従動輪との間で車輪速特性の差が発生する状況を検知したら、回生制動量を制限することを特徴とする車両の回生制動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両の回生制動制御装置において、
前記回生制動制御手段は、
減速要求操作に応じて要求回生トルクを演算する要求回生トルク演算モジュールと、
前後輪のうち一方のみに対する回生制動時、前記発電機が連結がない従動輪に発生する車輪速変動特性に基づく悪路量の推定値に応じて回生トルクを制限した回生トルク上限値を演算する要求回生トルク制限演算部と、
前記要求回生トルクと前記回生トルク上限値とのセレクトローにより制限後回生トルクを決定する要求回生トルク制限選択モジュールと、
を備えたことを特徴とする車両の回生制動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載された車両の回生制動制御装置において、
前記要求回生トルク制限演算部は、前記発電機が連結された駆動輪の車輪速と発電機の連結がない従動輪の車輪速との車輪速偏差に基づき、従動輪に発生する車輪速変動による悪路量を推定し、該悪路量推定値が大きいほど低い値による回生トルク上限値を演算することを特徴とする車両の回生制動制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両の回生制動制御装置において、
操舵角を検出する操舵角検出手段と、
各輪の車輪速を検出する車輪速検出手段と、を設け、
前記要求回生トルク制限演算部は、操舵角検出値が直線走行領域にあるとき、前記発電機が連結された駆動輪の車輪速と発電機の連結がない従動輪の車輪速との車輪速偏差が大きいほど大きな値による推定悪路量を演算する推定悪路量演算モジュールと、前記推定悪路量が大きいほど低い値による回生トルク上限値を演算する回生量上限値演算モジュールと、を有することを特徴とする車両の回生制動制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載された車両の回生制動制御装置において、
前記発電機の連結がない左右輪にて機械制動力を発生する機械制動手段を設け、
前記回生制動制御手段は、直線走行を意図する操舵状態で回生制動を制限するとき、回生制動力と機械制動力による前後輪の制動力配分比が理想配分比となるように、前記機械制動手段による制動力を制御する回生協調制御を行うことを特徴とする車両の回生制動制御装置。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか1項に記載された車両の回生制動制御装置において、
前記要求回生トルク制限演算部は、前後輪のうち一方のみに対する回生制動判定がセットされている間は、悪路量推定値の最大値をデータ更新により保持することを特徴とする車両の回生制動制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載された車両の回生制動制御装置において、
前記要求回生トルク制限演算部は、前後輪のうち一方のみに対する回生制動判定のセットが解除されると、悪路量推定値の最大値の保持を解除することを特徴とする車両の回生制動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−204073(P2006−204073A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16089(P2005−16089)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】