車両の蓄電装置配設構造
【課題】蓄電装置51を車両1の前部に配設する場合に、蓄電装置51を、エンジンまたはモータからの熱の影響を受け難くかつ車両1の前面衝突時における衝撃吸収性能にできる限り影響を与えないような位置に配設する。
【解決手段】車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム5と、該両フロントサイドフレーム5の前端にそれぞれ配設されたクラッシュカン6と、電気を蓄電する蓄電装置とを備えた車両の蓄電装置配設構造であって、上記蓄電装置を、上記フロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側に配設するとともに、上記クラッシュカン6の前端部よりも後方側に配設する。
【解決手段】車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム5と、該両フロントサイドフレーム5の前端にそれぞれ配設されたクラッシュカン6と、電気を蓄電する蓄電装置とを備えた車両の蓄電装置配設構造であって、上記蓄電装置を、上記フロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側に配設するとともに、上記クラッシュカン6の前端部よりも後方側に配設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を蓄電する蓄電装置を備えた車両の蓄電装置配設構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両に、二次電池(例えば、ニッケル水素二次電池、ニッカド二次電池、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池)のような、電気を蓄電する蓄電装置を搭載することはよく知られている。この蓄電装置としては、二次電池以外にも、キャパシタが用いられることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような蓄電装置は、例えば特許文献2に示されているように、車両前部のエンジンルームまたはモータルーム(電動車両を駆動するモータが配設される)内に配設されることが多いが、特許文献1に示されているように、車室フロアの下側に配設される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−89040号公報
【特許文献2】特開2006−281806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電装置(特にキャパシタ)は熱を発生するものであるので、車両走行風によってできる限り冷却することが好ましい。しかし、上記特許文献1のように蓄電装置を車室フロアの下側に配設した場合には、車両走行風が蓄電装置に当たり難くなるため、蓄電装置を効率良く冷却することが困難になる。
【0006】
そこで、蓄電装置を車両の前部に配設することが好ましいが、上記従来例のようにエンジンルームやモータルーム内に配設した場合には、エンジンルーム内に配設されたエンジンまたはモータルーム内に配設されたモータからの熱の影響を受け易く、この場合も、蓄電装置を効率良く冷却することが困難になる。
【0007】
また、蓄電装置を車両の前部に配設する場合には、蓄電装置が車両の前面衝突時における衝撃吸収性能にできる限り影響を与えないようにする必要がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄電装置を車両の前部に配設する場合に、蓄電装置を、エンジンまたはモータからの熱の影響を受け難くかつ車両の前面衝突時における衝撃吸収性能にできる限り影響を与えないような位置に配設することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該両フロントサイドフレームの前端にそれぞれ配設されたクラッシュカンと、電気を蓄電する蓄電装置とを備えた車両の蓄電装置配設構造を対象として、上記蓄電装置は、上記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設されているとともに、上記クラッシュカンの前端部よりも後方側に配設された構成とした。
【0010】
上記の構成により、蓄電装置が、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側(つまり、エンジンルームまたはモータルームの外側)に配設されるので、蓄電装置がエンジンまたはモータからの熱の影響を受け難くなる。これにより、蓄電装置を、車両走行風によって効率良く冷却することが可能になる。また、蓄電装置が、上記クラッシュカンの前端部よりも後方側に配設されているので、車両の前面衝突時(軽衝突時)に、蓄電装置がクラッシュカンによる衝撃吸収作用を阻害するようなことはなく、しかも蓄電装置の破損も防止することができる。
【0011】
上記車両の蓄電装置配設構造において、蓄電装置の前端部が、上記クラッシュカンの後端部よりも後方側に配設されていることが望ましい。
【0012】
上記構成によれば、前面衝突時に上記蓄電装置が損傷するのを効果的に防止しつつ、上記クラッシュカンを充分に変形させて衝突荷重を効率よく吸収することができる。
【0013】
上記車両の蓄電装置配設構造において、蓄電装置の後端部が、前輪よりも前方側に配設されていることが望ましい。
【0014】
上記構成によれば、フロントサイドフレームの車幅方向外側に配設された上記蓄電装置と前輪とのレイアウト上における整合性を確保し、これらの干渉を確実に防止することができる。
【0015】
上記車両の蓄電装置配設構造において、上記蓄電装置は、車両正面視で、当該蓄電装置に近い側の前輪に対して車幅方向にずれた位置に配設されていることが好ましい。
【0016】
このことにより、車両の前面衝突時における重衝突(フロントサイドフレームが潰れるような衝突)時に蓄電装置が後退したとしても、その蓄電装置が前輪と干渉しないので、蓄電装置が、フロントサイドフレームによる衝撃吸収作用を阻害するようなことはなく、しかも蓄電装置の破損をできる限り抑制することができる。特に、蓄電装置がフロントサイドフレームに支持されている場合には、フロントサイドフレームの潰れに伴って蓄電装置が後退して前輪と干渉すると、フロントサイドフレームによる衝撃吸収性能に大きく影響を及ぼすことになる。しかし、上記蓄電装置を前輪に対して車幅方向にずれた位置に配置して前輪と干渉を防止しているので、フロントサイドフレームによる良好な衝撃吸収性能を確保することができる。
【0017】
上記車両の蓄電装置配設構造において、上記蓄電装置は、当該蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームに支持されていることが好ましい。
【0018】
このことで、蓄電装置を剛性の高いフロントサイドフレームからなる車体部材に支持することにより、蓄電装置の支持剛性を高めることができる。
【0019】
上記蓄電装置を当該蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームに支持する場合において、左右の前輪をそれぞれ支持するサスペンションクロスメンバを備え、該サスペンションクロスメンバは、上記蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームの下側にて該蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームに略沿って前方へ延びる前方延設部を有しており、上記蓄電装置は、上記蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームと上記サスペンションクロスメンバの前方延設部とに支持されていることが好ましい。
【0020】
すなわち、蓄電装置の蓄電容量をできる限り大きくしようとする場合、車両のデザイン性(オーバーハングや車幅)を考慮すると、蓄電装置が上下方向に長くなる。このような上下方向に長い蓄電装置の上部をフロントサイドフレームに支持し、下部をサスペンションクロスメンバの前方延設部に支持することで、その蓄電装置の支持剛性をより一層高めることができる。
【0021】
上記車両の蓄電装置配設構造において、上記蓄電装置は、上下2段に配列された複数の蓄電素子を有しているとともに、カバー部材で覆われていることが好ましい。
【0022】
このことにより、上下方向に長い蓄電装置において蓄電素子を効率良く配置して、蓄電装置の蓄電容量をできる限り大きくすることができる。このような上下方向に長い蓄電装置は、特に、上記のように上記蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームと上記サスペンションクロスメンバの前方延設部とに支持することが好ましい。さらに、蓄電装置がカバー部材で覆われていることで、蓄電装置が、エンジンまたはモータからの熱の影響をより一層受け難くなるとともに、蓄電装置が異物や水等によって損傷を被るようなこともない。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の車両の蓄電装置配設構造によると、蓄電装置を、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設するとともに、上記クラッシュカンの前端部よりも後方側に配設するように構成したことにより、蓄電装置が、エンジンまたはモータからの熱の影響を受け難くなるとともに、車両の前面衝突時における衝撃吸収性能にできる限り影響を与えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る蓄電装置配設構造が適用された車両の前部の要部を示す車両左斜め前側から見た斜視図である。
【図2】上記車両の前部の要部を示す平面図である。
【図3】上記車両の前部の要部を示す車両左側から見た側面図である。
【図4】上記車両のフロントサイドフレームおよびサスペンションクロスメンバを示す、車両左斜め前側かつ下側から見た斜視図である。
【図5】上記車両の前部の要部(車両左側部分)を示す正面図である。
【図6】上記車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す車両左斜め前側から見た斜視図である。
【図7】上記車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す拡大平面図である。
【図8】上記車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す車両左斜め後側から見た斜視図である。
【図9】カバー部材および支持部材を示す斜視図である。
【図10】カバー部材を水平方向に切断した断面斜視図である。
【図11】本発明に係る蓄電装置配設構造の別の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図3は、本発明の実施形態に係る蓄電装置配設構造が適用された車両1の前部の要部を示す。この車両1の前部におけるエンジンルーム2内には、不図示のエンジンが配設されており、このエンジンにより当該車両1の左右の前輪3が駆動されるようになっている。なお、図1および図2では、エンジンルーム2内に搭載されるエンジンおよびその他の搭載物の記載は省略している。以下、上記車両1についての前、後、左、右、上および下を、それぞれ単に前、後、左、右、上および下という。
【0026】
図4にも示すように、上記エンジンルーム2の車幅方向(左右方向)両端部には、前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム5が配設されている。各フロントサイドフレーム5の後部は、その高さ位置が後側に向かって徐々に低くなるキック部5a(図4参照)とされている。このキック部5aと略同じ前後位置には、上記エンジンルーム2と車室とを仕切るダッシュパネル9が設けられている(図4では、ダッシュパネル9の記載を省略している)。
【0027】
左右のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側の面には、ホイールハウスを構成するホイールハウスパネル12がそれぞれ固定され、左右のホイールハウスパネル12の上面には、サスペンションタワー13がそれぞれ設けられている(図2参照)。左右のホイールハウスパネル12の上端部には、前後方向に延びる左右一対のエプロンレインメンバー16がそれぞれ固定されており、左右のサスペンションタワー13の上端部は、左右のエプロンレインメンバー16にそれぞれ固定されている。
【0028】
上記車両1の前端部には、不図示のフロントバンパーが設けられ、このフロントバンパー内に、車幅方向に延びるバンパービーム18が設けられている。このバンパービーム18が、車両1の前面衝突時の衝突荷重を受ける。
【0029】
左右のフロントサイドフレーム5の前端には、クラッシュカン6がそれぞれ配設されている(図1等参照)。具体的には、各フロントサイドフレーム5の前端にフランジ部5bが形成され、クラッシュカン6の後端にもフランジ部6aが形成されている。これら互いのフランジ部5b,6aが合わされた状態で、締結部材7(ボルトおよびナット(以下、同じ))によって固定されている。なお、左右のクラッシュカン6の前後方向位置は同じである。また、上述した左右のサイドフレーム5およびクラッシュカン6等は、基本的に、車両1の車幅方向中央を通る中心線に対して左右対称の関係にある。
【0030】
上記バンパービーム18の左右両端部は、左右のクラッシュカン6の前端にそれぞれ締結固定されている。これら左右のクラッシュカン6は、バンパービーム18が車両の前面衝突時の衝突荷重を前側から受けたときに、前後方向に潰れることで、その衝撃吸収を行うようになっている。なお、軽衝突時には、クラッシュカン6およびフロントサイドフレーム5のうちクラッシュカン6のみが潰れることで衝撃吸収を行えるが、クラッシュカン6のみでは衝撃吸収を行えないような重衝突時には、フロントサイドフレーム5も前後方向に潰れることで衝撃吸収を行う。
【0031】
バンパービーム18の後方における左右のクラッシュカン6の間には、不図示のラジエータを支持する枠状のシュラウド20が配設されている。このシュラウド20の上側部分を構成するアッパーメンバー21が車幅方向外側かつ後方に延び、アッパーメンバー21の両端部が連結部材22を介して左右のエプロンレインメンバー16の前端にそれぞれ結合されている。これにより、シュラウド20は、左右のエプロンレインメンバー16に支持されることになる。
【0032】
上記シュラウド20の下側部分には、歩行者保護用のスティフナー25が前側に突出するように固定されている。このスティフナー25は、車両の前面に衝突した歩行者の脚部の下部に接触して該脚部を払うことで、該歩行者を車両側に転倒させ、これにより歩行者の脚部における骨折等の傷害の発生を可及的に防止するものである。なお、スティフナー25の前面は、上記フロントバンパーにより覆われている。
【0033】
サスペンションタワー13と略同じ前後位置には、車幅方向に延びかつ左右両端部にて左右の前輪3をそれぞれ支持するサスペンションクロスメンバ31が配設されている(図4参照)。このサスペンションクロスメンバ31は、車幅方向に延びる本体部31aと、この本体部31aの左右両端部の前縁から前方へ延びる左右の前方延設部31bとを有している。上記本体部31aの左右両端部に、不図示の左右の前輪サスペンションアーム(ロアアーム)がそれぞれ支持されており、該前輪サスペンションアームを介して前輪3がサスペンションクロスメンバ31に支持される。本体部31aの上面における左右両端部には、上方へ延びる上方延設部31cがそれぞれ設けられ、左右の上方延設部31cの上端部が、左右のフロントサイドフレーム5の下面にそれぞれ固定されている。
【0034】
左側の前方延設部31bは、左側のフロントサイドフレーム5の下側にて該左側のフロントサイドフレーム5に略沿って前方へ延びている。右側の前方延設部31bは、右側のフロントサイドフレーム5の下側にて該右側のフロントサイドフレーム5に略沿って前方へ延びている。左右の前方延設部31bは、車両1の車幅方向中央を通る中心線に対して左右対称の関係にある。
【0035】
左右の前方延設部31bの下面における前端部同士は、車幅方向に延びる連結クロスメンバ32によって連結されている。こうして、サスペンションクロスメンバ31の本体部31aおよび左右の前方延設部31b並びに連結クロスメンバ32により、平面視で略矩形枠状のペリメータフレーム(車体部材)が構成されている。
【0036】
上記各前方延設部31bの上面における前端部には、上方へ延びる円筒部材35がそれぞれ固定され、各円筒部材35の上端が、各フロントサイドフレーム5のフランジ部5bの下部において略水平状に折り曲げられて形成された固定部5cの下面にそれぞれ締結固定される(図5および図6参照)。また、各前方延設部31bの前端には、上記スティフナー25の左右両端部に結合される結合部材36が締結固定されている。
【0037】
上記スティフナー25の左端から左側のホイールハウスパネル12の前端にかけての部分(車両1の左前角部の下部)、およびスティフナー25の右端から右側のホイールハウスパネル12の前端にかけての部分(車両1の右前角部の下部)には、それぞれ、ホイールハウスパネル12と一体形成されたアンダーカバー41が配設されている(図1〜図3参照)。
【0038】
左側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(左側)つまりエンジンルーム2の左外側でかつ前後方向において前輪3とクラッシュカン6との間の位置(左側のアンダーカバー41の上側)には、電気を蓄電する蓄電装置51(図10参照)が配設されている。また、この蓄電装置51は、車両正面視で、左側の前輪3(蓄電装置51に近い側の前輪3)に対して車幅方向内側にずれた位置に配設されている(図5参照)。なお、蓄電装置51は、後述の如くカバー部材70により覆われており、車両1に搭載された状態では、後述の第1〜第5取付ブラケット53〜57しか見えない。
【0039】
上記蓄電装置51(蓄電素子52)は、車両1の減速時にオルタネータによって発生した電気を蓄電し、この蓄電装置51から、車両1に搭載された電装品(例えば空調装置、オーディオ装置、ナビゲーション装置、照明装置等)に、上記蓄電した電気(電力)が供給されるように構成されている。また、上記電装品では使い切れない余剰分の電気は、該電装品に電気(電力)を供給する鉛蓄電池に供給されて蓄電される。なお、蓄電装置51の蓄電電圧は、上記鉛蓄電池の電圧よりも高く設定されており、蓄電装置51から上記鉛蓄電池または上記電装品への電気供給時には、DC/DCコンバータにより降圧される。
【0040】
本実施形態では、上記鉛蓄電池はエンジンルーム2内に配設されるが、この鉛蓄電池を、右側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(右側)つまりエンジンルーム2の右外側でかつ前後方向において前輪3とクラッシュカン6との間の位置(右側のアンダーカバー41の上側)に配設してもよい。
【0041】
図10に示すように、上記蓄電装置51は、上下方向に延びる断面円形の複数の蓄電素子52を有している。本実施形態では、複数の蓄電素子52が上下2段に配列されており、蓄電装置51が上下方向に長い形状のものとなっている。すなわち、上記蓄電装置51には、上段および下段それぞれ5本ずつの合計10本の蓄電素子52が設けられている。これら蓄電素子52は、キャパシタからなる。そして、全蓄電素子52が、ユニット化された状態で、カバー部材70によって覆われている。このカバー部材70も、上下方向に長い形状のものとなっている。
【0042】
上記カバー部材70は、第1分割部70aと第2分割部70bとの2分割構造をなしている。これら第1分割部70aと第2分割部70bとは、カバー部材70を長手方向(上下方向)に沿って切断することで2分割されたものである。第1分割部70aおよび第2分割部70bの周縁部全周には、フランジ部70c,70dがそれぞれ形成されており、これら両フランジ部70c,70dがシール部材74(図7、図9および図10参照)を介して互いに合わされる。
【0043】
上記蓄電装置51は、左側のフロントサイドフレーム5(蓄電装置51に近い側のフロントサイドフレーム5)に支持されているとともに、サスペンションクロスメンバ31の左側の前方延設部31bに支持されることにより、平面視において、上記クラッシュカン6の前端部よりも後方側に配設され、より詳しくは上記カバー部材70内に収容された蓄電装置51の前端部がクラッシュカン6の後端部よりも後方側に配設されている。
【0044】
具体的に、図6〜図9に示すように、上記カバー部材70の外側には、金属製の板状の支持部材77が設けられている。この支持部材77は、カバー部材70の前側に位置する前側部77aと、カバー部材70の後側に位置する後側部77bと、カバー部材70の下側に位置し、前側部77aと後側部77bとを連結する下側部77cとを有している。前側部77aの右端部(前側に折れ曲がっている部分)が、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bの左端部(前側に折れ曲がっている部分)に締結部材78によって固定される。また、後側部77bの後端部が、固定部材79を介して左側の前方延設部31bの左側側面に固定される。固定部材79は、締結部材80によって、後側部77bの後端部と左側の前方延設部31bの左側側面とに固定される。上記下側部77cは、その上側にカバー部材70全体が載せられてカバー部材70全体を支持する。
【0045】
上記支持部材77は、カバー部材70を支持するとともに、カバー部材70内部の蓄電装置51を支持する役割も有している。すなわち、蓄電装置51は、カバー部材70の第1および第2分割部70a,70bのフランジ部70c,70dの合わせ面間を通って、カバー部材70内側から外側へ突出する金属製の板状の第1〜第5取付ブラケット53〜57(図7〜図10参照)を有している。なお、フランジ部70c,70dの合わせ面における第1〜第5取付ブラケット53〜57がそれぞれ通過する部分では、上記シール部材74の厚みが変形により薄くなっているが、当該部分のシール性能は確保されている。
【0046】
第1および第2取付ブラケット53,54は、カバー部材70の上下方向中央部および下端部の高さ位置にて前側へ突出して上記支持部材77の前側部77aに締結部材81によって固定される(図7および図9参照)。支持部材77の前側部77aは、上述の如く、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bに取り付けられるので、第1および第2取付ブラケット53,54は、車体部材である左側のフロントサイドフレーム5に取り付けられることになる。
【0047】
第3取付ブラケット55は、カバー部材70の下端部近傍(上記固定部材79の直ぐ下側)の高さ位置にて後側へ突出し、支持部材77の後側部77bに締結部材82により固定される(図9参照)。支持部材77の後側部77bは、上述の如く、固定部材79を介して左側の前方延設部31bに締結固定されるので、第3取付ブラケット55は、車体部材である左側の前方延設部31bに取り付けられることになる。なお、第1〜第3取付ブラケット53〜55は、カバー部材70の内部で一体化された状態で蓄電装置51に取付固定されている。
【0048】
第4取付ブラケット56は、カバー部材70の上端部の高さ位置にて後側へ突出している。カバー部材70の第1分割部70aの後側部分には、第4取付ブラケット56と略重なった状態で後方へ延びる上側突出部70eが形成されている。第4取付ブラケット56は、その上側突出部70eと共に左側のフロントサイドフレーム5の左側側面に締結部材83によって取付固定される。
【0049】
第5取付ブラケット57は、カバー部材70の上下方向中央部の高さ位置にて後側へ突出している。カバー部材70の第1分割部70aの後側部分における上記上側突出部70eよりも下側の位置には、第5取付ブラケット57と略重なった状態で後方へ延びる下側突出部70fが形成されている。第5取付ブラケット57は、その下側突出部70fと共に支持部材77の後側部77bに締結部材84によって固定される。支持部材77の後側部77bは、上述の如く、固定部材79を介して左側の前方延設部31bに締結固定されるので、第5取付ブラケット57は、左側の前方延設部31bに取り付けられることになる。
【0050】
第4および第5取付ブラケット56,57は、蓄電装置51に対して電気を入出力するためのターミナルを兼ねている。第4および第5取付ブラケット56,57の各先端部には、不図示の電気接続ケーブルが接続される接続部56a,57aとなるネジ孔が形成されている)。また、第1〜第5取付ブラケット53〜57は、蓄電装置51で発生した熱をカバー部材70の外側へ放熱する役割も有している。このことから、第4および第5取付ブラケット56,57は、剛性がある程度高く、かつ導電性および伝熱性が良好な金属(例えばアルミニウム)で形成することが好ましい。
【0051】
このように蓄電装置51は、第1〜第5取付ブラケット53〜57および支持部材77を介して、左側のフロントサイドフレーム5とサスペンションクロスメンバ31の前方延設部31bとに取り付けられて支持されることになる。また、カバー部材70は、上側突出部70eが直接左側のフロントサイドフレーム5に支持されるが、基本的には、支持部材77を介して、左側のフロントサイドフレーム5とサスペンションクロスメンバ31の前方延設部31bとに支持されることになる。
【0052】
上記のように蓄電装置51が、左側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(エンジンルーム2の外側)に配設されているので、蓄電装置51がエンジンからの熱の影響を受け難くなる。これにより、蓄電装置51を、車両走行風によって効率良く冷却することが可能になる。
【0053】
ここで、上記車両1において前面衝突が生じた場合、その前面衝突が、クラッシュカン6およびフロントサイドフレーム5のうちクラッシュカン6のみが潰れるような軽衝突であるときには、左右のクラッシュカン6がバンパービーム18から衝突荷重を受けて前後方向に潰れることで、その衝撃吸収が行われる。このとき、上記蓄電装置51がクラッシュカン6の前端部よりも後方側に配設されているので、車両の前面衝突時(軽衝突時)に、クラッシュカン6の変形が上記蓄電装置51により阻害されることがなく、上記クラッシュカン6を変形させることによる衝撃吸収作用を充分に発揮させることができる。しかも、上記前面衝突時の衝撃荷重による上記蓄電装置51の破損も効果的に防止することができる。
【0054】
特に、上記実施形態(図3参照)では、蓄電装置51の前端部をクラッシュカン6の後端部よりも後方側に配設したため、前面衝突時にクラッシュカン6がその後端部まで変形した場合においてもその影響が上記蓄電装置51に及ぶことはなく、該蓄電装置51の損傷を確実に防止しつつ、上記クラッシュカン6を充分に変形させて衝突荷重を効率よく吸収することができる。
【0055】
また、上記実施形態に示すように、図3に示す側面視において、上記蓄電装置51の後端部を、前輪3よりも前方側に配設した場合には、上記フロントサイドフレーム5の車幅方向外側において上記カバー部材70内に配設された配設された上記蓄電装置51と前輪3とのレイアウト上における整合性を確保し、これらの干渉を確実に防止できるという利点がある。
【0056】
上記前面衝突が、クラッシュカン6およびフロントサイドフレーム5の両方が潰れるような重衝突時には、左右のフロントサイドフレーム5の前後方向の潰れによって、その衝撃吸収が行われる。このとき、左側のフロントサイドフレーム5の潰れに伴って蓄電装置51が後退する。この後退時に、蓄電装置51が左側の前輪3と干渉すると、フロントサイドフレーム5による衝撃吸収性能に大きく影響を及ぼすことになる。しかし、本実施形態では、蓄電装置51が、車両正面視で、左側の前輪3に対して車幅方向内側にずれた位置(図5に示すように車幅方向において左側の前輪3と左側のフロントサイドフレーム5との間の位置)に配設されているので、蓄電装置51が左側の前輪3と干渉することがなく、フロントサイドフレーム5による良好な衝撃吸収性能を確保することができる。
【0057】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、蓄電装置51を、左側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(左側)でかつ前後方向において前輪3とクラッシュカン6との間の位置(左側のアンダーカバー41の上側)に配設したが、右側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(右側)でかつ前後方向において前輪3とクラッシュカン6との間の位置(右側のアンダーカバー41の上側)に配設するようにしてもよい。この場合、蓄電装置51を、上記実施形態と同様に、右側のフロントサイドフレーム5(蓄電装置51に近い側のフロントサイドフレーム5)に支持するとともに、サスペンションクロスメンバ31の右側の前方延設部31bに支持するようにすればよい。或いは、2つの蓄電装置51を、上記左右の2箇所(左右のアンダーカバー41の上側)にそれぞれ配設するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、蓄電装置51を、左側のフロントサイドフレーム5とサスペンションクロスメンバ31の左側の前方延設部31bに支持するようにしたが、左側のフロントサイドフレーム5および左側の前方延設部31bのうちの一方に支持するようにしてもよい。但し、上記実施形態のように蓄電装置51が上下方向に長い形状のものであれば、その蓄電装置51を上記実施形態のように左側のフロントサイドフレーム5および左側の前方延設部31bの両方に支持することが好ましい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、蓄電装置51を車両正面視で左側の前輪3に対して車幅方向内側にずれた位置に配設したが、蓄電装置51を、車幅方向において左側の前輪3と略同じ位置に配設するようにしてもよい。但し、重衝突時に良好な衝撃吸収性能を確保する観点からは、上記実施形態のように、蓄電装置51を、車両正面視で、当該蓄電装置51に近い側の前輪3に対して車幅方向にずれた位置に配設することが好ましい。
【0061】
なお、図7に示すように、カバー部材70内に配設された蓄電装置51の前端部をクラッシュカン6の後端部よりも後方側に位置させてなる上記実施形態に代え、図11に示すように、上記クラッシュカン6の前端部よりも後方側において、該クラッシュカン6の後端部よりも前方側に蓄電装置51の前端部を配設した構造としてもよい。この構成においても、上記クラッシュカン6の後部まで変形することがない軽衝突時には、上記クラッシュカン6を変形させることによる衝撃吸収作用を充分に発揮させることができるとともに、上記軽衝突時の衝撃荷重による上記蓄電装置51の損傷を抑制することができる。
【0062】
また、上記のようにクラッシュカン6の後端部よりも前方側に蓄電装置51の前端部を配設した場合には、該蓄電装置51の後端部と前輪3との間隔を充分に確保することができる。したがって、必ずしも蓄電装置51を前輪3に対して車幅方向内側にずらせた位置に配設する必要はなく、正面視で該蓄電装置51と前輪3との一部をオーバラップさせた場合においても、車両の前突時に蓄電装置51が前輪3に干渉するのを確実に防止することができ、これによりフロントサイドフレーム5を変形させて衝撃吸収性能を充分に発揮させることができるとともに、上記蓄電装置51の損傷を確実に防止することができる。
【0063】
また、蓄電装置51の形状や形態はどのようなものであってもよく、キャパシタ以外のもの(例えば、ニッケル水素二次電池、ニッカド二次電池、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池等の二次電池)であってもよい。但し、キャパシタの方が、蓄電装置51に対する電気の入出力が素早く行えて好ましい。
【0064】
さらにまた、上記実施形態に係る車両1は、エンジンで駆動されるものであるが、車両前部のモータルーム内に配設されるモータで駆動される電動車両であってもよく、エンジンとモータとを併用するハイブリッド車両であってもよい。
【0065】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、電気を蓄電する蓄電装置を備えた車両の蓄電装置配設構造に有用であり、特に蓄電装置を車両の前部に配設する場合に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 車両
3 前輪
5 フロントサイドフレーム
6 クラッシュカン
31 サスペンションクロスメンバ
31b 前方延設部
51 蓄電装置
52 蓄電素子
70 カバー部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を蓄電する蓄電装置を備えた車両の蓄電装置配設構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両に、二次電池(例えば、ニッケル水素二次電池、ニッカド二次電池、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池)のような、電気を蓄電する蓄電装置を搭載することはよく知られている。この蓄電装置としては、二次電池以外にも、キャパシタが用いられることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような蓄電装置は、例えば特許文献2に示されているように、車両前部のエンジンルームまたはモータルーム(電動車両を駆動するモータが配設される)内に配設されることが多いが、特許文献1に示されているように、車室フロアの下側に配設される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−89040号公報
【特許文献2】特開2006−281806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電装置(特にキャパシタ)は熱を発生するものであるので、車両走行風によってできる限り冷却することが好ましい。しかし、上記特許文献1のように蓄電装置を車室フロアの下側に配設した場合には、車両走行風が蓄電装置に当たり難くなるため、蓄電装置を効率良く冷却することが困難になる。
【0006】
そこで、蓄電装置を車両の前部に配設することが好ましいが、上記従来例のようにエンジンルームやモータルーム内に配設した場合には、エンジンルーム内に配設されたエンジンまたはモータルーム内に配設されたモータからの熱の影響を受け易く、この場合も、蓄電装置を効率良く冷却することが困難になる。
【0007】
また、蓄電装置を車両の前部に配設する場合には、蓄電装置が車両の前面衝突時における衝撃吸収性能にできる限り影響を与えないようにする必要がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄電装置を車両の前部に配設する場合に、蓄電装置を、エンジンまたはモータからの熱の影響を受け難くかつ車両の前面衝突時における衝撃吸収性能にできる限り影響を与えないような位置に配設することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該両フロントサイドフレームの前端にそれぞれ配設されたクラッシュカンと、電気を蓄電する蓄電装置とを備えた車両の蓄電装置配設構造を対象として、上記蓄電装置は、上記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設されているとともに、上記クラッシュカンの前端部よりも後方側に配設された構成とした。
【0010】
上記の構成により、蓄電装置が、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側(つまり、エンジンルームまたはモータルームの外側)に配設されるので、蓄電装置がエンジンまたはモータからの熱の影響を受け難くなる。これにより、蓄電装置を、車両走行風によって効率良く冷却することが可能になる。また、蓄電装置が、上記クラッシュカンの前端部よりも後方側に配設されているので、車両の前面衝突時(軽衝突時)に、蓄電装置がクラッシュカンによる衝撃吸収作用を阻害するようなことはなく、しかも蓄電装置の破損も防止することができる。
【0011】
上記車両の蓄電装置配設構造において、蓄電装置の前端部が、上記クラッシュカンの後端部よりも後方側に配設されていることが望ましい。
【0012】
上記構成によれば、前面衝突時に上記蓄電装置が損傷するのを効果的に防止しつつ、上記クラッシュカンを充分に変形させて衝突荷重を効率よく吸収することができる。
【0013】
上記車両の蓄電装置配設構造において、蓄電装置の後端部が、前輪よりも前方側に配設されていることが望ましい。
【0014】
上記構成によれば、フロントサイドフレームの車幅方向外側に配設された上記蓄電装置と前輪とのレイアウト上における整合性を確保し、これらの干渉を確実に防止することができる。
【0015】
上記車両の蓄電装置配設構造において、上記蓄電装置は、車両正面視で、当該蓄電装置に近い側の前輪に対して車幅方向にずれた位置に配設されていることが好ましい。
【0016】
このことにより、車両の前面衝突時における重衝突(フロントサイドフレームが潰れるような衝突)時に蓄電装置が後退したとしても、その蓄電装置が前輪と干渉しないので、蓄電装置が、フロントサイドフレームによる衝撃吸収作用を阻害するようなことはなく、しかも蓄電装置の破損をできる限り抑制することができる。特に、蓄電装置がフロントサイドフレームに支持されている場合には、フロントサイドフレームの潰れに伴って蓄電装置が後退して前輪と干渉すると、フロントサイドフレームによる衝撃吸収性能に大きく影響を及ぼすことになる。しかし、上記蓄電装置を前輪に対して車幅方向にずれた位置に配置して前輪と干渉を防止しているので、フロントサイドフレームによる良好な衝撃吸収性能を確保することができる。
【0017】
上記車両の蓄電装置配設構造において、上記蓄電装置は、当該蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームに支持されていることが好ましい。
【0018】
このことで、蓄電装置を剛性の高いフロントサイドフレームからなる車体部材に支持することにより、蓄電装置の支持剛性を高めることができる。
【0019】
上記蓄電装置を当該蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームに支持する場合において、左右の前輪をそれぞれ支持するサスペンションクロスメンバを備え、該サスペンションクロスメンバは、上記蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームの下側にて該蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームに略沿って前方へ延びる前方延設部を有しており、上記蓄電装置は、上記蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームと上記サスペンションクロスメンバの前方延設部とに支持されていることが好ましい。
【0020】
すなわち、蓄電装置の蓄電容量をできる限り大きくしようとする場合、車両のデザイン性(オーバーハングや車幅)を考慮すると、蓄電装置が上下方向に長くなる。このような上下方向に長い蓄電装置の上部をフロントサイドフレームに支持し、下部をサスペンションクロスメンバの前方延設部に支持することで、その蓄電装置の支持剛性をより一層高めることができる。
【0021】
上記車両の蓄電装置配設構造において、上記蓄電装置は、上下2段に配列された複数の蓄電素子を有しているとともに、カバー部材で覆われていることが好ましい。
【0022】
このことにより、上下方向に長い蓄電装置において蓄電素子を効率良く配置して、蓄電装置の蓄電容量をできる限り大きくすることができる。このような上下方向に長い蓄電装置は、特に、上記のように上記蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームと上記サスペンションクロスメンバの前方延設部とに支持することが好ましい。さらに、蓄電装置がカバー部材で覆われていることで、蓄電装置が、エンジンまたはモータからの熱の影響をより一層受け難くなるとともに、蓄電装置が異物や水等によって損傷を被るようなこともない。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の車両の蓄電装置配設構造によると、蓄電装置を、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設するとともに、上記クラッシュカンの前端部よりも後方側に配設するように構成したことにより、蓄電装置が、エンジンまたはモータからの熱の影響を受け難くなるとともに、車両の前面衝突時における衝撃吸収性能にできる限り影響を与えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る蓄電装置配設構造が適用された車両の前部の要部を示す車両左斜め前側から見た斜視図である。
【図2】上記車両の前部の要部を示す平面図である。
【図3】上記車両の前部の要部を示す車両左側から見た側面図である。
【図4】上記車両のフロントサイドフレームおよびサスペンションクロスメンバを示す、車両左斜め前側かつ下側から見た斜視図である。
【図5】上記車両の前部の要部(車両左側部分)を示す正面図である。
【図6】上記車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す車両左斜め前側から見た斜視図である。
【図7】上記車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す拡大平面図である。
【図8】上記車両における蓄電装置の取付部分の周辺を示す車両左斜め後側から見た斜視図である。
【図9】カバー部材および支持部材を示す斜視図である。
【図10】カバー部材を水平方向に切断した断面斜視図である。
【図11】本発明に係る蓄電装置配設構造の別の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図3は、本発明の実施形態に係る蓄電装置配設構造が適用された車両1の前部の要部を示す。この車両1の前部におけるエンジンルーム2内には、不図示のエンジンが配設されており、このエンジンにより当該車両1の左右の前輪3が駆動されるようになっている。なお、図1および図2では、エンジンルーム2内に搭載されるエンジンおよびその他の搭載物の記載は省略している。以下、上記車両1についての前、後、左、右、上および下を、それぞれ単に前、後、左、右、上および下という。
【0026】
図4にも示すように、上記エンジンルーム2の車幅方向(左右方向)両端部には、前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム5が配設されている。各フロントサイドフレーム5の後部は、その高さ位置が後側に向かって徐々に低くなるキック部5a(図4参照)とされている。このキック部5aと略同じ前後位置には、上記エンジンルーム2と車室とを仕切るダッシュパネル9が設けられている(図4では、ダッシュパネル9の記載を省略している)。
【0027】
左右のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側の面には、ホイールハウスを構成するホイールハウスパネル12がそれぞれ固定され、左右のホイールハウスパネル12の上面には、サスペンションタワー13がそれぞれ設けられている(図2参照)。左右のホイールハウスパネル12の上端部には、前後方向に延びる左右一対のエプロンレインメンバー16がそれぞれ固定されており、左右のサスペンションタワー13の上端部は、左右のエプロンレインメンバー16にそれぞれ固定されている。
【0028】
上記車両1の前端部には、不図示のフロントバンパーが設けられ、このフロントバンパー内に、車幅方向に延びるバンパービーム18が設けられている。このバンパービーム18が、車両1の前面衝突時の衝突荷重を受ける。
【0029】
左右のフロントサイドフレーム5の前端には、クラッシュカン6がそれぞれ配設されている(図1等参照)。具体的には、各フロントサイドフレーム5の前端にフランジ部5bが形成され、クラッシュカン6の後端にもフランジ部6aが形成されている。これら互いのフランジ部5b,6aが合わされた状態で、締結部材7(ボルトおよびナット(以下、同じ))によって固定されている。なお、左右のクラッシュカン6の前後方向位置は同じである。また、上述した左右のサイドフレーム5およびクラッシュカン6等は、基本的に、車両1の車幅方向中央を通る中心線に対して左右対称の関係にある。
【0030】
上記バンパービーム18の左右両端部は、左右のクラッシュカン6の前端にそれぞれ締結固定されている。これら左右のクラッシュカン6は、バンパービーム18が車両の前面衝突時の衝突荷重を前側から受けたときに、前後方向に潰れることで、その衝撃吸収を行うようになっている。なお、軽衝突時には、クラッシュカン6およびフロントサイドフレーム5のうちクラッシュカン6のみが潰れることで衝撃吸収を行えるが、クラッシュカン6のみでは衝撃吸収を行えないような重衝突時には、フロントサイドフレーム5も前後方向に潰れることで衝撃吸収を行う。
【0031】
バンパービーム18の後方における左右のクラッシュカン6の間には、不図示のラジエータを支持する枠状のシュラウド20が配設されている。このシュラウド20の上側部分を構成するアッパーメンバー21が車幅方向外側かつ後方に延び、アッパーメンバー21の両端部が連結部材22を介して左右のエプロンレインメンバー16の前端にそれぞれ結合されている。これにより、シュラウド20は、左右のエプロンレインメンバー16に支持されることになる。
【0032】
上記シュラウド20の下側部分には、歩行者保護用のスティフナー25が前側に突出するように固定されている。このスティフナー25は、車両の前面に衝突した歩行者の脚部の下部に接触して該脚部を払うことで、該歩行者を車両側に転倒させ、これにより歩行者の脚部における骨折等の傷害の発生を可及的に防止するものである。なお、スティフナー25の前面は、上記フロントバンパーにより覆われている。
【0033】
サスペンションタワー13と略同じ前後位置には、車幅方向に延びかつ左右両端部にて左右の前輪3をそれぞれ支持するサスペンションクロスメンバ31が配設されている(図4参照)。このサスペンションクロスメンバ31は、車幅方向に延びる本体部31aと、この本体部31aの左右両端部の前縁から前方へ延びる左右の前方延設部31bとを有している。上記本体部31aの左右両端部に、不図示の左右の前輪サスペンションアーム(ロアアーム)がそれぞれ支持されており、該前輪サスペンションアームを介して前輪3がサスペンションクロスメンバ31に支持される。本体部31aの上面における左右両端部には、上方へ延びる上方延設部31cがそれぞれ設けられ、左右の上方延設部31cの上端部が、左右のフロントサイドフレーム5の下面にそれぞれ固定されている。
【0034】
左側の前方延設部31bは、左側のフロントサイドフレーム5の下側にて該左側のフロントサイドフレーム5に略沿って前方へ延びている。右側の前方延設部31bは、右側のフロントサイドフレーム5の下側にて該右側のフロントサイドフレーム5に略沿って前方へ延びている。左右の前方延設部31bは、車両1の車幅方向中央を通る中心線に対して左右対称の関係にある。
【0035】
左右の前方延設部31bの下面における前端部同士は、車幅方向に延びる連結クロスメンバ32によって連結されている。こうして、サスペンションクロスメンバ31の本体部31aおよび左右の前方延設部31b並びに連結クロスメンバ32により、平面視で略矩形枠状のペリメータフレーム(車体部材)が構成されている。
【0036】
上記各前方延設部31bの上面における前端部には、上方へ延びる円筒部材35がそれぞれ固定され、各円筒部材35の上端が、各フロントサイドフレーム5のフランジ部5bの下部において略水平状に折り曲げられて形成された固定部5cの下面にそれぞれ締結固定される(図5および図6参照)。また、各前方延設部31bの前端には、上記スティフナー25の左右両端部に結合される結合部材36が締結固定されている。
【0037】
上記スティフナー25の左端から左側のホイールハウスパネル12の前端にかけての部分(車両1の左前角部の下部)、およびスティフナー25の右端から右側のホイールハウスパネル12の前端にかけての部分(車両1の右前角部の下部)には、それぞれ、ホイールハウスパネル12と一体形成されたアンダーカバー41が配設されている(図1〜図3参照)。
【0038】
左側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(左側)つまりエンジンルーム2の左外側でかつ前後方向において前輪3とクラッシュカン6との間の位置(左側のアンダーカバー41の上側)には、電気を蓄電する蓄電装置51(図10参照)が配設されている。また、この蓄電装置51は、車両正面視で、左側の前輪3(蓄電装置51に近い側の前輪3)に対して車幅方向内側にずれた位置に配設されている(図5参照)。なお、蓄電装置51は、後述の如くカバー部材70により覆われており、車両1に搭載された状態では、後述の第1〜第5取付ブラケット53〜57しか見えない。
【0039】
上記蓄電装置51(蓄電素子52)は、車両1の減速時にオルタネータによって発生した電気を蓄電し、この蓄電装置51から、車両1に搭載された電装品(例えば空調装置、オーディオ装置、ナビゲーション装置、照明装置等)に、上記蓄電した電気(電力)が供給されるように構成されている。また、上記電装品では使い切れない余剰分の電気は、該電装品に電気(電力)を供給する鉛蓄電池に供給されて蓄電される。なお、蓄電装置51の蓄電電圧は、上記鉛蓄電池の電圧よりも高く設定されており、蓄電装置51から上記鉛蓄電池または上記電装品への電気供給時には、DC/DCコンバータにより降圧される。
【0040】
本実施形態では、上記鉛蓄電池はエンジンルーム2内に配設されるが、この鉛蓄電池を、右側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(右側)つまりエンジンルーム2の右外側でかつ前後方向において前輪3とクラッシュカン6との間の位置(右側のアンダーカバー41の上側)に配設してもよい。
【0041】
図10に示すように、上記蓄電装置51は、上下方向に延びる断面円形の複数の蓄電素子52を有している。本実施形態では、複数の蓄電素子52が上下2段に配列されており、蓄電装置51が上下方向に長い形状のものとなっている。すなわち、上記蓄電装置51には、上段および下段それぞれ5本ずつの合計10本の蓄電素子52が設けられている。これら蓄電素子52は、キャパシタからなる。そして、全蓄電素子52が、ユニット化された状態で、カバー部材70によって覆われている。このカバー部材70も、上下方向に長い形状のものとなっている。
【0042】
上記カバー部材70は、第1分割部70aと第2分割部70bとの2分割構造をなしている。これら第1分割部70aと第2分割部70bとは、カバー部材70を長手方向(上下方向)に沿って切断することで2分割されたものである。第1分割部70aおよび第2分割部70bの周縁部全周には、フランジ部70c,70dがそれぞれ形成されており、これら両フランジ部70c,70dがシール部材74(図7、図9および図10参照)を介して互いに合わされる。
【0043】
上記蓄電装置51は、左側のフロントサイドフレーム5(蓄電装置51に近い側のフロントサイドフレーム5)に支持されているとともに、サスペンションクロスメンバ31の左側の前方延設部31bに支持されることにより、平面視において、上記クラッシュカン6の前端部よりも後方側に配設され、より詳しくは上記カバー部材70内に収容された蓄電装置51の前端部がクラッシュカン6の後端部よりも後方側に配設されている。
【0044】
具体的に、図6〜図9に示すように、上記カバー部材70の外側には、金属製の板状の支持部材77が設けられている。この支持部材77は、カバー部材70の前側に位置する前側部77aと、カバー部材70の後側に位置する後側部77bと、カバー部材70の下側に位置し、前側部77aと後側部77bとを連結する下側部77cとを有している。前側部77aの右端部(前側に折れ曲がっている部分)が、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bの左端部(前側に折れ曲がっている部分)に締結部材78によって固定される。また、後側部77bの後端部が、固定部材79を介して左側の前方延設部31bの左側側面に固定される。固定部材79は、締結部材80によって、後側部77bの後端部と左側の前方延設部31bの左側側面とに固定される。上記下側部77cは、その上側にカバー部材70全体が載せられてカバー部材70全体を支持する。
【0045】
上記支持部材77は、カバー部材70を支持するとともに、カバー部材70内部の蓄電装置51を支持する役割も有している。すなわち、蓄電装置51は、カバー部材70の第1および第2分割部70a,70bのフランジ部70c,70dの合わせ面間を通って、カバー部材70内側から外側へ突出する金属製の板状の第1〜第5取付ブラケット53〜57(図7〜図10参照)を有している。なお、フランジ部70c,70dの合わせ面における第1〜第5取付ブラケット53〜57がそれぞれ通過する部分では、上記シール部材74の厚みが変形により薄くなっているが、当該部分のシール性能は確保されている。
【0046】
第1および第2取付ブラケット53,54は、カバー部材70の上下方向中央部および下端部の高さ位置にて前側へ突出して上記支持部材77の前側部77aに締結部材81によって固定される(図7および図9参照)。支持部材77の前側部77aは、上述の如く、左側のフロントサイドフレーム5のフランジ部5bに取り付けられるので、第1および第2取付ブラケット53,54は、車体部材である左側のフロントサイドフレーム5に取り付けられることになる。
【0047】
第3取付ブラケット55は、カバー部材70の下端部近傍(上記固定部材79の直ぐ下側)の高さ位置にて後側へ突出し、支持部材77の後側部77bに締結部材82により固定される(図9参照)。支持部材77の後側部77bは、上述の如く、固定部材79を介して左側の前方延設部31bに締結固定されるので、第3取付ブラケット55は、車体部材である左側の前方延設部31bに取り付けられることになる。なお、第1〜第3取付ブラケット53〜55は、カバー部材70の内部で一体化された状態で蓄電装置51に取付固定されている。
【0048】
第4取付ブラケット56は、カバー部材70の上端部の高さ位置にて後側へ突出している。カバー部材70の第1分割部70aの後側部分には、第4取付ブラケット56と略重なった状態で後方へ延びる上側突出部70eが形成されている。第4取付ブラケット56は、その上側突出部70eと共に左側のフロントサイドフレーム5の左側側面に締結部材83によって取付固定される。
【0049】
第5取付ブラケット57は、カバー部材70の上下方向中央部の高さ位置にて後側へ突出している。カバー部材70の第1分割部70aの後側部分における上記上側突出部70eよりも下側の位置には、第5取付ブラケット57と略重なった状態で後方へ延びる下側突出部70fが形成されている。第5取付ブラケット57は、その下側突出部70fと共に支持部材77の後側部77bに締結部材84によって固定される。支持部材77の後側部77bは、上述の如く、固定部材79を介して左側の前方延設部31bに締結固定されるので、第5取付ブラケット57は、左側の前方延設部31bに取り付けられることになる。
【0050】
第4および第5取付ブラケット56,57は、蓄電装置51に対して電気を入出力するためのターミナルを兼ねている。第4および第5取付ブラケット56,57の各先端部には、不図示の電気接続ケーブルが接続される接続部56a,57aとなるネジ孔が形成されている)。また、第1〜第5取付ブラケット53〜57は、蓄電装置51で発生した熱をカバー部材70の外側へ放熱する役割も有している。このことから、第4および第5取付ブラケット56,57は、剛性がある程度高く、かつ導電性および伝熱性が良好な金属(例えばアルミニウム)で形成することが好ましい。
【0051】
このように蓄電装置51は、第1〜第5取付ブラケット53〜57および支持部材77を介して、左側のフロントサイドフレーム5とサスペンションクロスメンバ31の前方延設部31bとに取り付けられて支持されることになる。また、カバー部材70は、上側突出部70eが直接左側のフロントサイドフレーム5に支持されるが、基本的には、支持部材77を介して、左側のフロントサイドフレーム5とサスペンションクロスメンバ31の前方延設部31bとに支持されることになる。
【0052】
上記のように蓄電装置51が、左側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(エンジンルーム2の外側)に配設されているので、蓄電装置51がエンジンからの熱の影響を受け難くなる。これにより、蓄電装置51を、車両走行風によって効率良く冷却することが可能になる。
【0053】
ここで、上記車両1において前面衝突が生じた場合、その前面衝突が、クラッシュカン6およびフロントサイドフレーム5のうちクラッシュカン6のみが潰れるような軽衝突であるときには、左右のクラッシュカン6がバンパービーム18から衝突荷重を受けて前後方向に潰れることで、その衝撃吸収が行われる。このとき、上記蓄電装置51がクラッシュカン6の前端部よりも後方側に配設されているので、車両の前面衝突時(軽衝突時)に、クラッシュカン6の変形が上記蓄電装置51により阻害されることがなく、上記クラッシュカン6を変形させることによる衝撃吸収作用を充分に発揮させることができる。しかも、上記前面衝突時の衝撃荷重による上記蓄電装置51の破損も効果的に防止することができる。
【0054】
特に、上記実施形態(図3参照)では、蓄電装置51の前端部をクラッシュカン6の後端部よりも後方側に配設したため、前面衝突時にクラッシュカン6がその後端部まで変形した場合においてもその影響が上記蓄電装置51に及ぶことはなく、該蓄電装置51の損傷を確実に防止しつつ、上記クラッシュカン6を充分に変形させて衝突荷重を効率よく吸収することができる。
【0055】
また、上記実施形態に示すように、図3に示す側面視において、上記蓄電装置51の後端部を、前輪3よりも前方側に配設した場合には、上記フロントサイドフレーム5の車幅方向外側において上記カバー部材70内に配設された配設された上記蓄電装置51と前輪3とのレイアウト上における整合性を確保し、これらの干渉を確実に防止できるという利点がある。
【0056】
上記前面衝突が、クラッシュカン6およびフロントサイドフレーム5の両方が潰れるような重衝突時には、左右のフロントサイドフレーム5の前後方向の潰れによって、その衝撃吸収が行われる。このとき、左側のフロントサイドフレーム5の潰れに伴って蓄電装置51が後退する。この後退時に、蓄電装置51が左側の前輪3と干渉すると、フロントサイドフレーム5による衝撃吸収性能に大きく影響を及ぼすことになる。しかし、本実施形態では、蓄電装置51が、車両正面視で、左側の前輪3に対して車幅方向内側にずれた位置(図5に示すように車幅方向において左側の前輪3と左側のフロントサイドフレーム5との間の位置)に配設されているので、蓄電装置51が左側の前輪3と干渉することがなく、フロントサイドフレーム5による良好な衝撃吸収性能を確保することができる。
【0057】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、蓄電装置51を、左側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(左側)でかつ前後方向において前輪3とクラッシュカン6との間の位置(左側のアンダーカバー41の上側)に配設したが、右側のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(右側)でかつ前後方向において前輪3とクラッシュカン6との間の位置(右側のアンダーカバー41の上側)に配設するようにしてもよい。この場合、蓄電装置51を、上記実施形態と同様に、右側のフロントサイドフレーム5(蓄電装置51に近い側のフロントサイドフレーム5)に支持するとともに、サスペンションクロスメンバ31の右側の前方延設部31bに支持するようにすればよい。或いは、2つの蓄電装置51を、上記左右の2箇所(左右のアンダーカバー41の上側)にそれぞれ配設するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、蓄電装置51を、左側のフロントサイドフレーム5とサスペンションクロスメンバ31の左側の前方延設部31bに支持するようにしたが、左側のフロントサイドフレーム5および左側の前方延設部31bのうちの一方に支持するようにしてもよい。但し、上記実施形態のように蓄電装置51が上下方向に長い形状のものであれば、その蓄電装置51を上記実施形態のように左側のフロントサイドフレーム5および左側の前方延設部31bの両方に支持することが好ましい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、蓄電装置51を車両正面視で左側の前輪3に対して車幅方向内側にずれた位置に配設したが、蓄電装置51を、車幅方向において左側の前輪3と略同じ位置に配設するようにしてもよい。但し、重衝突時に良好な衝撃吸収性能を確保する観点からは、上記実施形態のように、蓄電装置51を、車両正面視で、当該蓄電装置51に近い側の前輪3に対して車幅方向にずれた位置に配設することが好ましい。
【0061】
なお、図7に示すように、カバー部材70内に配設された蓄電装置51の前端部をクラッシュカン6の後端部よりも後方側に位置させてなる上記実施形態に代え、図11に示すように、上記クラッシュカン6の前端部よりも後方側において、該クラッシュカン6の後端部よりも前方側に蓄電装置51の前端部を配設した構造としてもよい。この構成においても、上記クラッシュカン6の後部まで変形することがない軽衝突時には、上記クラッシュカン6を変形させることによる衝撃吸収作用を充分に発揮させることができるとともに、上記軽衝突時の衝撃荷重による上記蓄電装置51の損傷を抑制することができる。
【0062】
また、上記のようにクラッシュカン6の後端部よりも前方側に蓄電装置51の前端部を配設した場合には、該蓄電装置51の後端部と前輪3との間隔を充分に確保することができる。したがって、必ずしも蓄電装置51を前輪3に対して車幅方向内側にずらせた位置に配設する必要はなく、正面視で該蓄電装置51と前輪3との一部をオーバラップさせた場合においても、車両の前突時に蓄電装置51が前輪3に干渉するのを確実に防止することができ、これによりフロントサイドフレーム5を変形させて衝撃吸収性能を充分に発揮させることができるとともに、上記蓄電装置51の損傷を確実に防止することができる。
【0063】
また、蓄電装置51の形状や形態はどのようなものであってもよく、キャパシタ以外のもの(例えば、ニッケル水素二次電池、ニッカド二次電池、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池等の二次電池)であってもよい。但し、キャパシタの方が、蓄電装置51に対する電気の入出力が素早く行えて好ましい。
【0064】
さらにまた、上記実施形態に係る車両1は、エンジンで駆動されるものであるが、車両前部のモータルーム内に配設されるモータで駆動される電動車両であってもよく、エンジンとモータとを併用するハイブリッド車両であってもよい。
【0065】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、電気を蓄電する蓄電装置を備えた車両の蓄電装置配設構造に有用であり、特に蓄電装置を車両の前部に配設する場合に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 車両
3 前輪
5 フロントサイドフレーム
6 クラッシュカン
31 サスペンションクロスメンバ
31b 前方延設部
51 蓄電装置
52 蓄電素子
70 カバー部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該両フロントサイドフレームの前端にそれぞれ配設されたクラッシュカンと、電気を蓄電する蓄電装置とを備えた車両の蓄電装置配設構造であって、
上記蓄電装置は、上記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設されているとともに、上記クラッシュカンの前端部よりも後方側に配設されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両の蓄電装置配設構造において、
上記蓄電装置は、その前端部が上記クラッシュカンの後端部よりも後方側に配設されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両の蓄電装置配設構造において、
上記蓄電装置は、その後端部が前輪よりも前方側に配設されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の蓄電装置配設構造において、
上記蓄電装置は、車両正面視で、当該蓄電装置に近い側の前輪に対して車幅方向にずれた位置に配設されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の蓄電装置配設構造において、
上記蓄電装置は、当該蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームに支持されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項6】
請求項5記載の車両の蓄電装置配設構造において、
左右の前輪をそれぞれ支持するサスペンションクロスメンバを備え、
該サスペンションクロスメンバは、上記蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームの下側にて該蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームに略沿って前方へ延びる前方延設部を有しており、
上記蓄電装置は、上記蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームと上記サスペンションクロスメンバの前方延設部とに支持されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両の蓄電装置配設構造において、
上記蓄電装置は、上下2段に配列された複数の蓄電素子を有しているとともに、カバー部材で覆われていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項1】
車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該両フロントサイドフレームの前端にそれぞれ配設されたクラッシュカンと、電気を蓄電する蓄電装置とを備えた車両の蓄電装置配設構造であって、
上記蓄電装置は、上記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配設されているとともに、上記クラッシュカンの前端部よりも後方側に配設されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両の蓄電装置配設構造において、
上記蓄電装置は、その前端部が上記クラッシュカンの後端部よりも後方側に配設されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両の蓄電装置配設構造において、
上記蓄電装置は、その後端部が前輪よりも前方側に配設されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の蓄電装置配設構造において、
上記蓄電装置は、車両正面視で、当該蓄電装置に近い側の前輪に対して車幅方向にずれた位置に配設されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の蓄電装置配設構造において、
上記蓄電装置は、当該蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームに支持されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項6】
請求項5記載の車両の蓄電装置配設構造において、
左右の前輪をそれぞれ支持するサスペンションクロスメンバを備え、
該サスペンションクロスメンバは、上記蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームの下側にて該蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームに略沿って前方へ延びる前方延設部を有しており、
上記蓄電装置は、上記蓄電装置に近い側のフロントサイドフレームと上記サスペンションクロスメンバの前方延設部とに支持されていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両の蓄電装置配設構造において、
上記蓄電装置は、上下2段に配列された複数の蓄電素子を有しているとともに、カバー部材で覆われていることを特徴とする車両の蓄電装置配設構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−144242(P2012−144242A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249863(P2011−249863)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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